H24年度「うつ」勉強会 (毎月1日実施) 「うつ」は特別な病理などではなく、わたしたちのすぐ隣に在るものです。 なぜ?ではなく、今できることは何か?を探る視点をもって さまざまな事例をもとに、社会・環境・医学および心理的などの観点から 理解を深めていきたいと今年度のテーマにして学んできました。 この学びは、周囲との人間関係を円滑にし、 また、いまだに数の減少が見られない自殺に対しての ゲートキーパーの役割もはたせる力になるのではないかと考えました。 これまでの流れ 5月、6月と、参加者の体験談や、感じていることを中心に勉強会をしてきました。 家族や、友人、職場の同僚など、ゆううつな気分の範疇から、 精神科や心療内科での診断の出ているケースなど 様々な条件の中で、どんな気持ちになったのか、どんな対応をしてどうなったのかなど、 ケースごとに違った状況の話がきけ、深い学びを得ることが出来ました。 7月は、民生委員の立場から、地域の中でかかわったケースについての ケーススタディーによるディスカッションを行いました。 これまでの多様な体験談とは違い、ひとつのケースをじっくり 参加者全員で掘り下げていく勉強会になりました。 9月は、特殊な事例ではありますが、一番どの人も関わり、 身近にある産後や更年期のうつについて、勉強会を行いました。 母、妻、娘、嫁、孫娘、皆お産に関わります。父、夫、息子、婿、祖父として、 全く関わりのないように見えて深くかかわっており、 知らないことも多く、認識を新たにしました。 ここまでで、ほぼ「うつ」の概要を理解するところへ至ったので、 ここからは、バラバラの様々なケースも入り口、きっかけが違うだけで、 源は同じなのではないかという視点を持って見直してみようということになりました。 そこで11月は当団体の顧問で社会評論家の芹沢俊介氏に「うつ」と生きるをテーマにし、 12月は同顧問であり精神科医の高岡健氏に「うつ」を考えるをテーマにまとめていただきました。 1月は、顧問講座から学んだことを自分たちの言葉でとらえ直す研修会を、 2月には臨床心理士の山川久恵氏による傾聴講座「うつに出会ったとき」をテーマに勉強会を行う予定 です。 【うつ講演報告】 (1) 芹沢俊介氏 講演報告 H24.11.17 人が落ち込む時、その気持ちは「悲哀」と「メランコリー(うつ)」に大別される。(フロイト) 悲哀とメランコリーの違いは何か? 気持ちが落ち込んだ時、いつもの様子とは違ってきます。 不機嫌、深刻な状態、世界に対する無気力、育児ができない、愛する能力の喪失 意欲の喪失、ひきこもる、など。 メランコリー 自分が失ったもの、失われたものが何なのかわかっていない。 理解できていない。そして、その喪失は自分の中、内側にある。励ましはダメ。 悲哀 自分が失ったものをわかっている。理解している。 喪失は自分の外にある。励ましは有効。 ★「自分を激しく責める・自分をあざける」「自我感情の低下」この1点に関しては 悲哀にはなく、メランコリーにはある。 (例) 悲哀の場合 愛する人、祖国、仕事を失った時、落ち込みはするが、仕方がないと受け入れ ることができる。 これは、健全な反応であり、克服できる。 ★喪失が内にあるか、外にあるかが大きな違いであり、特徴である。 (喪失は、失うと同時に解放でもある。) ★置き換え現象 自分を責めているようでいて、人を責めている。人を責めているようでいて、自分を責めている。 人は、他者を同一視しやすく、行ったり来たりの置き換えが起きてしまうことが、うつの時によくみられ る。 自己非難が相手に対する非難になったり自分への非難に変わってしまったりする。 ?なぜ責めるのか?自分を受け入れられないために、自分を責めたり、人を責めたりする。 では、自分を受け入れるには、どうしたらよいのか?どうしたら、その場合、自分を受け入れていくこと ができるようになるのか? 相手の話を聞いていく。・・・その時はどうだったの?・・・自己対象化することで、立ち直りが良くなって いく。自分を自分で自覚していく。自分を好きになる。 ★悲哀に身を任せる(半年くらい)ことをしないと、うつに捉えられることが多いように思う。 ★自己処罰 (理由がわかるなど、納得ができると変わる) 母が、呼んでも来ない。 ・・・外側からの困難に対して対応できない時の対応の仕方に「爪噛み、指しゃぶり」がある。爪噛みや 指しゃぶりをして耐える。兄弟と比較される。他の兄弟が責められるなど。 ・・・自我の葛藤、自分の中の葛藤に耐えられない時の対応に「口唇を噛む」がある。 唇をかんで耐える。 ★事例 しっかりと仕事をこなしていた有望な職員が、配置換えになった。その後、人けの無い階段で ひとりため息をついている姿が・・・うつ状態へ。それに気づいた上司がサポート、配置を戻すと以前の ように有能に仕事ができる状態に戻った例もある。 ★過去視と未来視による「うつ」 ・過去のことを「あの時こういえばよかった」「ああしたらうまくいったかも・・・」という考えにとらわれる。 ・未来にまだ起こっていないことを考えて、不安になり、希望を失う。 (2) 高岡健氏 講演報告 H24.12.2 初めに、「産後のうつ」に関しては、全く他の「うつ」とは別格であるので、先にふれておく。 ★産後のうつ 産後のうつは、自殺と赤ん坊殺しが起きる。 高い確率で医療が介入する必要があり、医療が入れば、高い確率で回復する。 「軽いうつ病ですから様子を見ましょう」はダメ。 「重いうつ病ですが、治療で完全に治ります」と言うこと。 赤ん坊と二人きりにしない。必ず誰かが居ること。一人だと自殺、二人だと赤ん坊殺しがおきる。 空白の30分で、赤ん坊殺しが起きてしまった事例がある。薬物療法と徹底した休養が必要。 ★うつ病とは・・・ 几帳面でまじめな人がうつになる。悲しいことだけでなく、一般的に嬉しいとされる事でも うつになることもある。男女差が大きい。 ・係長から課長へ…昇進うつ病 ・家を新築し引っ越し・・・引っ越しうつ病 ・重荷をおろした時・・・荷おろしうつ病など 気分が沈む。考えが後ろ向き。自分で自分のコントロールがきかない。 治療・・・薬物療法・休養。エネルギーを蓄える・・・ダラダラすること。 ★キーワード ①軽症化 逃避型抑うつ・・・診断書で休養を繰り返す。中年に多い。 短期反復性欠勤・・・数週間毎のうつ。若い人に多い。 「京大の笠原先生の5月病説」・・・いかに満足した生活を送れるかが鍵。 現代型うつ病は症状が軽い。行動やスピードは遅くなるが、気分の沈み方が軽い。 ローテクのところで、能力とは別にひっそりと・・・快かった体験(リズム)を思い出してもらい、休養の時 はそのようにして過ごして貰う。 *正常な人の悲しみは、失われたものの本質が解っている。正常でもうつ状態はある。 うつ病の悲しみは、失われたものの本質が解っていない。 うつ病は、自分に跳ね返ってきて自分を責めてしまう。 ただし、自分を責めているようでいて、相手を責めていたりするので注意。 *統合失調症・・・自分と集団との折り合いに悩む人。 *うつは・・・・・・・・自分と自分との折り合いに悩む人。不食、過食、不眠、過眠。 *ヒステリー・・・・・自分と特定の他者との間の折り合いに悩む人。 *中間に生きる・・・転換性障害・ヒステリー 解離性障害・二重人格。 ②非定型化 非定型うつ・・・少し褒められると気分が舞い上がる。 鉛のような体の重さ。うつやヒステリーの境目の人がなる ディスチミア親和型うつ・・・自責他責は表裏。気分失調症。ダラダラしてしまう。 集団との関係で悩む。 ➂双極Ⅱ型 気分、行動、思考は少しずつずれている。 これが絡みあい、気分が落ちている時に行動の動きが良いと自殺へ。 ★うつ病を無くす為にはどんな社会が良いか? 逃避型の人も 今までは、うまく生活できていたが終身雇用が無くなった今、難しくなっている。 ★ 自殺 古典的自殺者は、死なないで・・・と約束すると思いとどまる。 約束することが大切。 非定型も、少しはお願いしておくと良い。 パラサイトは、やめてとたのんでもだめ。 定義 積極的・消極的 直接的・間接的、 当人が、その結果を予想しているか、予想していないか。 リストカットの気持ち・・・前、最中、後と感情の変化を丁寧に聞いていく。 その中には、ポジティブな感情もある。 生きていることが、確認できる。 ピアス・刺青 ・・・・文化の側面もある。共通性・共同性を復活させる。 自分を傷つけることで、逆転していこうとする。 リストカットとの共通性もあることがある。 うつ病診断の仕方について・・・自分で気づく。人に言われて。 ダムに水が溜まっていくのを待つ姿勢が大切。 その後は、以前とは違った対応をした方が良い。 自分から、関わろうとしない・・・古典的なうつの人に多い。 軽症化・・・自分から関わる。 双極化・・・両方のパターンあり。周囲からは、ポジティブな評価が多い。 文責: 宗方
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