〒100022 中国北京市朝陽区建国門外大街甲 6 号 SK ビル 36/37 層 36-37/F, SK Tower, 6A Jianguomenwai Avenue, Beijing 100022, People’ s Republic of China http://www.zhonglun.com Tel: (8610)5957-2288 Fax:(8610)5957-2211 北京 Beijing・ 上海 Shanghai・ 深圳 Shenzhen・ 広州 Guangzhou・ 東京 Tokyo・ 武漢 Wuhan・ 香港 Hong kong・ 成都 Chengdu・ London・ New York 2014 年 3 月 24 日 中倫弁護士事務所 弁護士 李海容 弁護士 李敬花 新「消費者権益保護法」について はじめに 近年、中国経済の市場化、グローバル化が加速するなか、電子商取引の活発化や、 消費者の権利保護意識の向上、新しいニーズ、新しいビジネスモデルの次々の創出 とともない、消費をめぐる紛争も頻発するようになった。 一方、1993 年に制定され、1994 年 1 月 1 日より施行の「中華人民共和国消費者 権益保護法」 (以下は、 「旧法」という)は、2009 年の第 1 次改正が行われたものの、 上記のような消費者をとりまく環境の変化に対応し切れなくなった。 新しく変化した消費環境に応えるべく、2013 年 4 月 25 日、第十二次全国人民代 表大会常務委員会(以下は、 「全人大常委会」という)第 2 回会議において、 「中華 人民共和国消費者権益保護法修正案(案)」の審議をスタート、その後、2 回にわた ってのパブリック・コメントの募集、全人大常委会における 2 回にわたる審議を経 て、2013 年 10 月 25 日に第十二次全人大常委会第 5 回会議にて可決され、同日「中 華人民共和国消費者権益保護法」(以下、「新法」という)を公布、2014 年 3 月 15 日より施行された。 新法の施行は、中国でのビジネス、とりわけ、中国国内の消費者をターゲットに 商品の販売やサービスを提供している日系企業を含む経営者は特に注目すべきで あると理解される。 以下では、七つのカテゴリに分類し、新法の改正ポイントを中心に述べながら、 弁護士コメントの形で、企業に与え得る影響、企業としての注意点などについて、 整理している。 一、消費者の個人情報保護制度 従来から、通信等限定された範囲内での個人情報保護に関する規定は散見するも、 1 新法においては、消費者が商品やサービスの提供を受ける際において、その個人情 報につき保護を受けるとされている。新法における消費者の個人情報保護制度は、 主に、以下の五つの内容から構成される。 (1)個人情報保護の明確化 消費者は、商品の購入及び使用並びにサービスを受ける際に、人格の尊厳、民族 の風習が尊重される権利があり、法に従って個人情報の保護を受ける権利を有する とされ、消費者の個人情報は法律の保護を受ける旨を明確にした(新法第 14 条)。 (2)経営者による個人情報の収集・使用の規範化 経営者は、消費者の個人情報の収集・使用にあたって、以下の条件を満たす必要 がある(新法第 29 条第1項) 。 適法性、正当性、必要性を原則とする。 情報の収集、使用の目的、方法、範囲を明示し、消費者の同意を得る。 収集、使用の規則を公開する。 法律法規の規定、経営者と消費者との約定に違反しない。 (3)経営者及びその従業員の守秘義務 経営者及びその従業員は、収集した消費者の個人情報について、以下に掲げる義 務がある(新法第 29 条第 2 項) 。 経営者及びその従業員は、守秘義務を厳守し、漏洩、販売又は違法に他人へ提 供しない。 経営者は、技術的及びその他の必要な措置を講じ、情報の安全化を確保し、消 費者の個人情報の漏洩、紛失を防止し、漏洩又は紛失の場合、又はそのおそれ がある場合、直ちに救済措置をとる。 【弁護士コメント】 守秘義務の対象には、経営者のみならず、従業員も含まれているため、日頃の従 業員に対する教育等を重視する必要がある。また、情報の販売はもちろんながら、 他人への無料提供行為の場合も規制対象となっていることに留意されたい。 (4)情報発信禁止 経営者は、消費者からの同意もしくは要求がない場合、又は明確に拒否された場 合、商業情報を発信してはならない(新法第 29 条第 3 項)。 【弁護士コメント】 経営者が消費者に対し、キャンペーン等の商業上の情報を送る場合でも、消費者 の事前の承諾が必要であることに留意されたい。 (5)罰則 経営者が消費者の個人情報の保護を受ける権利を侵害した場合、違法所得の没収、 違法所得の 1 倍以上 10 倍以下の過料、違法所得がない場合は 50 万元以下の過料、 情状が重大な場合は、営業停止、営業許可証の抹消処分が命じられる(第 56 条第 9 号)。 2 【弁護士コメント】 消費者の個人情報の漏洩等侵害行為があった場合、違法所得がない場合でも罰則 の対象になることに留意されたい。 二、品質責任に関する規定 1.「三包責任」の拡大 旧法においても、国家規定がある場合、又は消費者との約定がある場合に限って 経営者が、商品の修理・交換・返品の責任、いわゆる「三包責任」 (以下、 「三包責 任」という)を負うとされている。 また、 「一部商品の修理・交換・返品の責任に関する規定」(1995 年 8 月 25 日発 布・施行)をはじめ、 「家庭用車製品の修理・交換・返品の責任規定」(2012 年 12 月 29 日発布、2013 年 1 月 1 日施行)等によれば、「三包責任」の対象は、自転車、 テレビ、ビデオカメラ、洗濯機等の家電製品や、家庭用車等に限定されていた。 そこで、新法では、国家規定や約定がない場合においても、経営者はその提供し た商品又はサービスに対し、 「三包責任」を負うとされ、 「三包責任」の対象範囲を 商品又はサービス全般に拡大した。その主な内容は、以下のとおりである(新法第 24 条) 。 (1)対象範囲 旧法では、国家規定又は消費者と約定がある場合のみを「三包責任」の対象範囲 としていたが、新法では、 「提供する商品又はサービスが要求されている品質を満 たさない場合」も対象にされている。 (2)返品可能期限 旧法では、返品可能な期限を明確に定めていないが、新法では、国の規定又は当 事者間の約定がない場合、消費者は商品を受領した日から7日以内であれば返品す ることができるとされる。 また、7日を超えた場合でも、契約の法定解除要件を満たす場合、経営者は交換、 修理等の義務があるとされている。 ご参考に、 「中華人民共和国契約法」 (以下は、 「契約法」という)第 94 条によれ ば、以下のいずれかの事由に該当する場合、当事者は契約を解除することができる とされる。 ① 不可抗力により契約の目的が実現不能になったとき。 ② 履行期限満了前に、一方当事者が主要な債務の不履行を明示し、又は自己の 行為をもって表明したとき。 ③ 一方当事者が主要な債務の履行を遅延し、催告を経た後なお合理的な期間内 に履行しなかったとき。 ④ 一方当事者による債務履行の遅延、又はその他の違約行為により、契約の目 的が実現不能になったとき。 3 ⑤ 法律で規定するその他の事由。 上記の規定かからみると、新法における契約の法定解除要件は、上記④の経営者 の違約行為(品質問題)により、消費者が契約の目的を実現できなくなった場合が 該当するだろうと理解される。 【弁護士コメント】 従来は、国が定める「三包責任」対象商品リスト等に含まれている商品に限られて いたのが、新法により、品質問題がある商品及びサービス全般が、「三包責任」対 象となったため、中国国内で商品やサービスを提供しているすべての経営者、特に 今までの法令に基づき「三包責任」の対象商品に該当しなかった商品のほか、消費 者にサービスを提供している経営者は、新法の規定に基づき、予め予防・対応策等 を講じ、リスクをヘッジする必要がある。 (3)経営者による送料等の負担 上記(2)に基づき、返品、交換、修理を行う場合、かかる送料等の費用は、経 営者の負担となる。 2.リコール対象の拡大 (1)適用対象 従来から、中国法においては、 「中華人民共和国不法行為責任法」 (2009 年 12 月 26 日発布、2010 年 7 月 1 日施行。以下、 「不法行為責任法」という。 ) (第 46 条) に一般規定として定められているほか、「食品のリコール管理規定」 (2007 年 8 月 27 日発布・施行) 、 「児童玩具のリコール管理規定」 (2007 年 8 月 27 日発布・施行)、 「薬品のリコール管理弁法」(2007 年 12 月 10 日発布・施行)、「医療器械のリコー ル管理弁法(試行) 」 (2011 年 5 月 20 日発布、2011 年 7 月 1 日施行)、 「欠陥自動車 産品のリコール管理規定」 (2012 年 10 月 22 日発布、2013 年 1 月 1 日施行)等の個 別法令において、特定の製品に対してのみリコール制度が義務化されていたが、新 法によって、すべての商品及びサービスがリコール制度の適用対象となった(新法 第 19 条) 。 (2)具体的な措置 経営者が自身の提供する商品又はサービスに欠陥が存在し、人身又は財産の安全 に危険を及ぼすことを発見した場合、以下の対策を講じるべきとされている(新法 第 19 条)。 直ちに関連行政機関に報告する。 直ちに消費者に告知する。 販売中止、警告、リコール、無害化処理、廃棄、生産又はサービスの中止等の 措置を講じる。 リコールによって消費者が支出した費用を負担する。 (3)行政処罰 経営者が行政部門から命じられた販売中止、警示、リコール、無害化処理、廃棄、 生産又はサービスの中止等の措置を拒否又は遅延した場合、さらに、下記の行政処 4 罰が課されるとされている。 是正、情状を勘案し、警告の単科又は併科、違法所得の没収、違法所得の 1 倍以 上 10 倍以下の過料を、違法所得がない場合は 50 万元以下の過料、情状が重い場合 は、営業停止、営業許可証の抹消処分が課されるとされている(新法第 56 条第 1 項)。 【弁護士コメント】 警告、リコール等の救済措置をとる義務に関し、上記のとおり、従来から、中国 法においては、 「不法行為責任法」(第 46 条)に一般規定として定められているほ か、一部の個別法令において、特定製品に対してのみ定めがあったが、新法では、 消費者向けのすべての商品とサービスがリコール制度の適用対象となる。 三、通信販売制度の規範化 1.クーリングオフ制度の新設 新法では、初のクーリングオフ制度が導入された(新法第 25 条)。具体的内容は、 以下のとおりである。 (1)適用対象 経営者がインターネット、テレビ、電話、郵便等の方法により販売した商品が対 象となる。 (2)返品期限 消費者は商品を受け取った日から 7 日以内に、理由を説明することなく、商品を 返品する権利を有する。 (3)適用除外品 以下の商品は例外とされる。 ① 消費者の注文によって作られた商品 ② 腐敗しやすい生鮮品 ③ オンラインでダウンロードし又は消費者が開封した音楽・映像製品、コンピ ューターソフトウェア等のデジタル商品 ④ 交付済みの新聞、定期刊行物 ⑤ その他の商品の性質上返品に適さないことを消費者が購入時に確認した商 品 (4)返品商品の状態 消費者が返品する商品は、完全な状態である必要がある。 (5)送料 商品を返品する際の送料について、別途の約定がない限り、消費者が負担する。 2.経営者の情報開示義務 インターネット、テレビ、電話、郵便等の方法を用いて商品又はサービスを提供 する経営者及び証券、保険、銀行等の金融サービスの経営者は、消費者に対し、経 5 営住所、連絡方法、商品又はサービスの数量及び品質、価格又は費用、履行期限及 び方法、安全注意事項及び危険警告、アフターサービス、民事責任等の情報を提供 すべきとされている(新法 28 条)。 3.トレーディング・プラットフォーム提供者の賠償責任 オンラインショッピングモール等のトレーディング・プラットフォーム(以下、 「トレーディング・プラットフォーム」という)を通じて商品又はサービスを受け た場合、アフターサービスを受けられない、責任を追及できない等の諸問題が存在 する事実を受け、新法では、トレーディング・プラットフォームの提供者に対し責 任を追及できる体制を整備した。 (1)賠償責任 下記の条件を満たす場合、消費者はトレーディング・プラットフォームの提供者 に対し損害賠償を請求することができるとされている(新法第 44 条第 1 項)。 ・消費者が当該トレーディング・プラットフォームを通じ、商品又はサービスの提 供を受け、かつ損害を蒙った場合 ・販売者又はサービスの提供者の真の名称、住所、有効な連絡方法を提供できない 場合 (2)連帯責任 トレーディング・プラットフォームの提供者が、販売者又はサービスの提供者が 自ら提供するトレーディング・プラットフォームを利用して消費者の合法的権益を 侵害する事実を知り、又は知るべきであったにも関わらず、必要な措置をとらなか った場合は、法により、販売者又はサービスの提供者と連帯責任を負うとされてい る(新法第 44 条第 2 項)。 (3)その他の義務 トレーディング・プラットフォームの提供者が、消費者に対しより有利な承諾を した場合、その承諾に従い、履行しなければならない(新法第 44 条第 1 項)。 【弁護士コメント】 今回の改正は、特に、他地域におけるオンラインショッピングにおいて、販売者 との間にトラブルが生じ、その販売者に連絡が取れなくなった場合の消費者の損害 賠償請求権の保護につながる。トレーディング・プラットフォームの提供者は、販 売者又はサービス提供者の逃避によって消費者が不利益を蒙らないための予防措 置、例えば販売者やサービス提供者に対する事前審査・確認を確実に行う必要があ ると考える。 四、広告の経営者、発信者等の責任 新法は、旧法における広告経営者による連帯責任に加え、広告の発信者も連帯責 任の対象とされている。また、旧法に定める広告の経営者が、商品やサービス提供 者の真の名称、住所を提供できなかった場合、賠償責任を負うとされることに加え、 有効な連絡先を提供できない場合も規制対象とされている。詳細は、以下のとおり である。 6 (1)広告の経営者、発信者の責任 ① 生命・健康にかかわる商品又はサービスに関する連帯責任 広告の経営者、発信者が消費者生命・健康にかかわる商品又はサービスに関し虚 偽の広告をデザイン、製作、発信し、消費者に損害を与えた場合、当該商品又はサ ービスを提供した経営者と連帯責任を負う(新法第 45 条第 2 項)。 ② その他消費者の合法的権益にかかわる商品又はサービスに関する賠償責任 消費者が経営者の虚偽の広告又はその他虚偽の宣伝方法で提供した商品又はサ ービスによりその合法的権益が損害を受けた場合、広告の経営者、発信者が経営者 の真実の名称、住所及び有効な連絡方法を提供できなかった際は、広告の経営者、 発信者が賠償責任を負う(新法第 45 条第 3 項)。 (2)社会団体又はその他組織、個人の連帯責任 広告の経営者及び発信者以外の社会団体やその他組織、個人が、消費者生命・健 康にかかわる商品又はサービスの虚偽広告又は他の虚偽広報において、消費者に商 品又はサービスを推薦し、消費者に損害を与えた場合、当該商品又はサービスを提 供した経営者と連帯責任を負う(新法第 45 条第 3 項)。 【弁護士コメント】 当然ながら虚偽の広告を行うことはあってはならない。ただし、広告業務の従事 者にとっては、虚偽の広告であることを知らずに、虚偽の広告、発信をしてしまう こともあり得ることから、予防対策として、広告の設計、製作、発信業務の依頼者 の営業許可証や身分証明証等を確認する等その身元確認を確実にしておくべきで ある。 五、約款規制の強化 「中華人民共和国契約法」 (1999 年 3 月 15 日発布、1999 年 10 月 1 日施行)(以 下、 「契約法」という)第 39 条よれば、約款とは、当事者が繰り返して利用するた めに、あらかじめ作成し、かつ、契約の締結に際して相手方との協議を経ていない 条項を指し、約款を提供する側には、①公正原則に基づき当事者間の権利義務を確 定することの義務、②責任の免除又は制限条項についての注意喚起義務と説明義務 があるとだけ規定しているのに対し、新法は、経営者の約款の使用に関してはじめ て詳細かつ明確に規定している。その内容は下記のとおりである。 (1)注意喚起・説明義務 約款を使用する経営者は、明確な方法で、商品又はサービスの数量、品質、価格 又は費用、履行期限及び方法、安全注意事項及び危険警告、アフターサービス、民 事責任等、消費者と重大な利害関係を有する内容に関し、消費者に対する注意喚起 の義務があるともに、消費者から要求があった場合は、前述内容に関し説明する義 務がある(新法第 26 条第 1 項) 。 (2)無効要件 不公平、不合理な規定(消費者の権利を排除、制限し、又は経営者の責任を免除 7 し、消費者の責任を加重する場合等)や、約款を利用し、技術手段をもって、取引 を強要する内容は、無効とする(新法第 26 条第 2 項、第 3 項)。 六、公益訴訟制度 新法では、はじめて、多くの消費者の権益を侵害する行為について、全国レベル で設置している中国消費者協会及び省、自治区、直轄市レベルで設置している消費 者協会により人民法院に対して訴訟を提起することができると規定している(新法 第 47 条)。 【弁護士コメント】 公益訴訟となった場合、企業は風評被害により、企業イメージがダウンするだけ でなく、業績等の面でダメージを受ける可能性も予測され、消費者への対応をはじ めとする危機対応策を練る等事前対策が必要と理解される。 七.その他 1.詐欺行為に対する賠償責任の強化 粉ミルク事件、地溝油事件等社会的問題になっており、「新法」では、消費者へ の欺瞞行為についての経営者の民事責任を強化した。 (1)賠償額の増加 旧法では、経営者の消費者に対する詐欺行為につき、経営者は消費者が蒙った損 害に、購入した商品の値段又は享受したサービスの費用と同額の賠償を上乗せする とされている(旧法第 49 条)に対し、新法では、上乗せ額を、商品又はサービス の対価の 3 倍額とし、当該額が 500 人民元未満の場合は、最低 500 人民元とすると されている(新法第 55 条第 1 項) (2) 懲罰性賠償額の明確化 旧法では懲罰性賠償責任についての規定を設けていない。また、中国「不法行為 責任法」第 47 条によれば、商品に瑕疵が存在していることを明白に知ったにもか かわらず、商品を生産、販売することによって他人の死亡又は健康に重大な損害を 与えた場合、権利を侵害された者は相応な懲罰性賠償責任を求める権利を有する。」 とされ、懲罰性賠償責任に関して規定しているものの、具体的な範囲については定 めがない。 一方、新法では、懲罰性賠償責任を規定し、はじめて懲罰性賠償額を明確にした。 具体的には、経営者が商品又はサービスに欠陥が存在することを知ったにもかかわ らず、消費者に提供し、消費者又はその他の被害者を死亡させ又は健康に重大な損 害を与えた場合、被害者は、損害賠償請求のほか、損害額の 2 倍額以下の懲罰性賠 償を請求することができるとされる(新法第 55 条第 2 項)。 (3)損失範囲の拡大 消費者に生じた損失には、人身損害、財産損害のみならず、精神的な損害も含ま れている(新法第 49 条、第 51 条)。 8 2.経営者の立証責任 「中華人民共和国民事訴訟法」 (2012 年改正)第 64 条第 2 項によれば、当事者は 自らの主張に対し証拠を提供する責任があるとされ、一般的に、主張側が立証責任 を負うこととなる。 しかしながら、消費者は経営者に比べて、情報収集や経済力等の面で弱い立場に あることに鑑み、経営者が提供する機動車、コンピューター、テレビ、冷蔵庫、エ アコン等の耐用商品、又は装飾、内装等のサービスに関し、消費者が商品又はサー ビスを享受した日から 6 ヶ月以内に瑕疵を発見し、紛争が生じた場合は、経営者が かかる瑕疵についての立証責任を負うとされている(新法第 23 条第 3 項)。 【弁護士コメント】 「機動車、コンピューター、テレビ、冷蔵庫、エアコン等の耐用商品」の提供業 務、又は「装飾、内装等のサービス」業務に従事する経営者は、商品の販売又はサ ービスの提供後の 6 ヶ月以内に消費者から当該商品等に瑕疵が存在すると主張され た場合、かかる経営者が立証責任を負うとされることから、これら業務に従事する 経営者は、危機管理の一貫として、予防策等を講じる等して事前対策が必要である 理解される。 3.経営者の安全保障義務の明確化 経営者の安全保障義務に関しては、「人身損害賠償事件の審理に適用する法律若 干問題についての解釈(六) 」 (2003 年 12 月 29 日発布、2004 年 5 月 1 日施行) 、 「不法行為責任法」等において定めがあるが、今回の新法により、経営者の当該義 務を再確認した形となった。安全保障義務を負う経営者として、ホテル、デパート、 飲食店、銀行、空港、映画館等を経営する者が挙げられている(新法第 18 条第 2 項)。 まとめ 本稿は、新法のうち、経営者として注意すべき法律制度のポイントを触れつつ、 適宜従来の規制との比較も入れながら、弁護士コメントという形で企業が注意すべ きポイントにつき助言するものである。ただし、規定上明確でない部分も多々あり、 今後、かかる実施細則の制定及び実務運用について注目すべきと考える。 9
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