見解書”本文 - 日本ビジネス航空協会

「ビジネス航空の適した枠組みのあり方に関する調査」に関しての見解
平成 21 年 3 月 27 日
日本ビジネス航空協会
ビジネスジェットの利用促進調査の一環として現在行われている標記調査は、ビジネス航
空を構成する主要項目及び項目間の関連を洗い出した上で、我が国での利用促進に必要な
制度について整理する事を目論むものであり、当協会としてもきわめて重要と考えており
ます。
調査が行われている段階ではありますが、当協会といたしましても本調査に関し要望、見
解を述べさせていただくべきと考え以下にまとめましたのでよろしくお取り計らいいただ
きますようお願い申し上げます。
これらはいずれも欠かすことのできない問題であり、全体としての制度的解決がビジネス
航空の利用促進に資するものと考えております。
下記は当協会の見解として基本となる重要事項についてまとめたものであります。さらに
詳細な事項につきましては、今後必要に応じ別途要望、見解を述べさせていただく機会を
いただけますれば幸いです。
記
1.ビジネス航空の定義
今回の調査で取り上げられておりますビジネス航空の定義ですが、当協会としては下記の
ように定義しております。
“ビジネス航空とは、企業、団体、或いは個人が、そのビジネス遂行上の手段として利用
する飛行機及び回転翼航空機による航空運送であり、利用者が航空機を所有する自家用
機及び利用者が自己の目的の為に個別にチャーターする(オンデマンド・チャーター)
事業機を使用して行なわれる”
NBAA はより単純に“ビジネス目的での General
Aviation 航空機の使用(すなわち飛行
機および回転翼航空機をビジネス目的で使用する General
Aviation)”と定義しています。
当協会が加盟しているIBAC等ではそれをさらに以下のように分類しております
(1) Business Aviation Commercial
商用事業免許を有するオペレーターによって、ビジネス目的に使用される航空機によ
る運航(オンデマンド・チャーター)
(2) Corporate Aviation Operation
会社の事業を遂行する上で役立つ、旅客又は物品の輸送を目的に行われる会社による
非商用運航、あるいは航空機の使用。会社により雇用されたプロフェショナルな乗組
員により運航される。
(3)
Owner Operated
ビジネスを目的として、ビジネス・オーナー自身によって運航される航空機の運航。
一方、ここで“ビジネスとは具体的に何か”は特に定義していないので、実際にはビジネ
ス航空は幅を持った定義になっております。
例えばオンデマンド・チャーターや Owner Operated の場合はビジネス目的と、個人目的
やレジャー目的との区別がつきにくいことがあり、ビジネス航空か否かの判断がある程度
主観的にならざるを得ません。
従ってこの定義はレギュレーションには馴染まないと言うことで、今回の ICAO ANNEX 6
PartⅡでもビジネス航空関連として新しく Corporate Aviation Operation(上記(2)項、
ICAO ANNEX 6 PartⅡ Section 1 CHAPTER 1.1 Definitions 参照)が定義されるに止まりました 。
安全規制の適用については、幅を広げたほうが理にかなっておりますが、ビジネス目的のために
特に便宜を図るための取り決めの場合には(126 条の但し書き申請手続きなど)厳密な解釈が求
められます。又数あるビジネス航空の実績数値を比較する場合にもこの点留意する必要がありま
す。
参考
航空の区分
運航を行う者
目的、用途
①
軍
軍、警察等
人員物資の輸送
②
定期航空
航空会社
貨客の運送
対価
名称
(Military)
有償
エアーライン
有償
チャーター
貨客の運送
(観光などビジネス
③
不定期航空
チャーター事業者
目的以外)
有償
貨客の運送
ビジネス航空
(ビジネス目的)
無償
ジェネラル・アビエーシ
ョン
④
①~③以外の者
レジャーなど
無償
農薬散布など
有償
(①~③以外の航空)
自家用
使用事業
(Aerial Operation)
2. 制度構築検討に当たっての要望事項及び見解
本件に関しての当協会の要望事項、見解は下記の通りです。
(1) 航空運送事業以外の航空機に関する運航基準の設定
ある一定の安全レベルを確保するため、早期に世界的標準運航基準である ICAO
6
Annex
PartⅡ(全面改定、2008/7/20 発効、2010/11/18 適用)と同様の運航基準の導入を行
う必要があると考えます。
・
米国においては、FAR
Part91 等によりすでに ICAO Annex6 PartⅡ改定の
かなりの部分がルール化されていますが、日本においては従来 PartⅡが未整備だ
ったこともあり、今回の大幅改定部分(特に大型自家用ビジネス航空機の運航基
準(Sec3)を中心に)についてはまだあまり規定化されていません。基礎部分に
なるこの PartⅡ改定の早期導入(日本におけるルール化)が必要です。
・
特に
Sec3が導入されれば、ビジネスジェット機の運航にはその使われ方に
関係なくある程度網をかぶせることができ、最低限の安全は確保されると考えて
います。
これにより現在問題になっている運航責任の所在等もかなり明確になるはずです。
又 SMS の導入等も促進されます。
・
本件は基本的には安全性向上への施策ですが、下記のフラクショナル・オーナ
シップ導入の前提としても重要です。
(注)-
新ルールは従来の PartI関連と異なりできれば一つのルール(単一の通達
等)で出していただくことを利用者側として希望いたします。
-
新 ICAO Annex6 PartⅡをそのまま日本に導入した場合、大きな不都合、混
乱を生じる恐れがある事項については別途具申させていただきたいと考え
ております。
(2) 航空運送事業の内オンディマンド・チャーター運航に関する基準の設定
商用ビジネス航空としてのオンデマンド・チャーター機の運航基準を、定期航空運送
を対象とした定めとは別に、その特性に特化した基準として制定することが必要と考
えます。
具体的には FAR Part 135 相当基準の検討ですが、これにつきましては当協会が 2005
年 4 月 27 日に規制緩和要望の一環として要望いたしているものであります。
(ETOPS
等については解決済み)
Part135 のような一括ルールの導入として行うか、あるいはすでに発行されている個々
のルール(含運航規程の認可基準)の個別見直しでの対応が考えられますが早期実現
のためには後者の方が現実的かと思われます。
又上記運航基準とは別に、ビジネスジェット機等小型機によるオンデマンド・チャー
ターに特化して航空運送事業に参入しようとする場合、定期航空とは別のビジネス航
空の特性に配慮した基準で、参入、運航にあたっての審査、許可をいただけるように
していただくこともビジネス航空の発展のためにはきわめて重要になってくると思慮
致します。
(3) フラクショナル・オーナーシップの導入。
これから需要が増すと考えられている複数オーナーの場合のための、フラクショナル・
オーナーシップ(以下フラクショナル)制度及びその関連ルールの確立、導入が必要と
考えます。
この制度の我が国への導入にあたっては、具体的には米国 FAR Part 91K
がその為の
雛型になると考えます。フラクショナルの定義、運航責任の明確化、運航・整備を受
託するプログラムマネージャーや認定施設の要件、及び安全要件の強化が検討のポイ
ントになりますが、安全要件の強化につきましては上記(1)及び(2)と密接な関係があり
単に subpart K だけを導入する事は出来ないと考えます。
(4) 整備や運航に係る基本的要件
以上に述べた運航要件の基盤となっている耐空性の継続、確認とその為の整備員の資格、
予備品証明、など整備関係の問題や、機長資格や運航管理者など運航関連の問題、などの
見直しにつき 2005 年 4 月 27 日付けで要望いたしました。
これは大部分が定期航空とも共通した問題ですが、日本国籍のビジネスジェットの運航コ
ストに係る重要な問題であります。上記(1)~(3)においては規制が強化される面があります
ので、基本要件をそのままにして(1)~(3)を導入すると今以上に重い規制となり適切でない
懼れがあります。
(5) 航空機の所有について
ビジネス航空先進国である米国では航空機の所有については、上記(3)の分割所有や、リー
ス、レンタル、の様々な形態があり、それによって機材の有効利用が図られています。
また同一機材を自家用機から(へ)商用事業機へ(から)登録切り替えを随時行うことで
の効率化も行われています。さらには財産信託を通じて国籍を跨いだ利用も行われていま
す。日本においても導入の早期検討(特にオーナー所有機を、オーナーが使用しない時に
事業会社が容易に借用してチャーター等に活用できるようにするための、自家用機から
(へ)商用事業機へ(から)簡便な登録切替等)が必要です。
ただこれらは利用の柔軟性とコスト低減をもたらしますが、その裏側で運航責任、機体
の耐空性維持責任等が曖昧にならないようにするための検討も合わせて行う必要があると
考えます。
(6) 空港問題
空港問題、とりわけ首都圏の空港問題は我が国のビジネス航空にとって死活問題であり、
これについては 2008 年 12 月 16 日に要望書を提出いたしました。(発着枠、CIQ、FB
O等に関する)
更に一般的な枠の運用制度として発着枠、駐機場、定置場の割り当ての随時の公示及び枠
の取得申請のための簡便な手続き制度などが望まれます。
(7) FBO
上記(6)との関連ですが、FBO をビジネス航空先進国では必須の存在となっており、触媒的
存在としてわが国おいても機能強化が望まれます。
現実には業務内容も様々でありますが、FBO を定義した上で、航空との係わりにおける制
度的位置づけの要不要、資格の要不要などの検討が必要と考えます。
単なる 2 次サービスに止まらず、空港内施設の運営、搭乗・搭載・航空機地上取扱の各業
務、も含めて行うとするかどうかも検討のポイントであります。
(8) ビジネス航空機に関する航行援助費用、着陸料、施設利用料など料金制度の合理的見直
し。
本件については 2005 年 4 月 27 日の要望書に含めていますが、それに拘わらず、再度見直
しが必要と考えています。ポイントとしては大型機料金との合理的整合性を図ること、又
サービス提供側にも魅力のある体系の指向にあると考えます。
(9) サービス提供に係る運営形態-チャーターブローカー
ビジネス航空先進国では様々なチャーターブローカー(defined fleet broker ,open fleet
broker)が運航者と利用者の間をつなぐサービスを提供しています。又決済方式について
も、プリペイド・カード会員プログラムも普及しております。
わが国においても、将来、こうした幅広いサービスが普及する基盤作りが望まれます。
しかしその裏側で運航責任や、利用者と運送契約を締結する主体が曖昧にならないような
制度上の検証が必要と考えます。
(10) 外国籍自家用機の飛来、国内移動に関する法規
航空法 126 条及び 127 条に関連する問題は外国籍ビジネス機の我が国での運用の柔軟性を
左右する問題であり、緩和について 2005 年 4 月 27 日の要望書に含めていますが、実施時
期については他の((1)~(9)利用促進策による我が国ビジネス航空の発展にあわせて検討
することが必要と考えます。
以上