平成23年12月 第696号 ICAO CAEP(国際民間航空機関 航空環境保全会議) 2011年ステアリンググループ会議に参加して 1.初めに 当会からはMHIの高見氏にWG3 CO2TG(タ ICAO CAEP(国際民間航空機関 航空環境 スクグループ)への参加・活動をお願いして 保全会議)は、3年ごとに本会議が開催され いるところであり、下記の数々の会議、さら ており、その間は年に一回SG(ステアリング にその間に行われる日本では夜間となる国際 グループ会議)が開催されて、各WG(ワー 電 話 会 議 で の 議 論 な ど に 積 極 的 に 参 画 し、 キンググループ)からの問題提起に対して意 ICCAIAの一員としての国際的責務を果たし 思決定を行い、CAEP本会議に上程する仕組 てきている。 みとなっている。 ICAOおよびCAEPの概略組織については 「航空と宇宙 2010年12月号」を参照願います。 2.CO2関連(CO2 Task Group(CO2TG)) 航空機のCO2排出基準策定を目的として 2010年CAEP8にて航空機のCO2排出基準を CAEP/9で新たに設立されたWG3 CO2 Task 2013年のCAEP9までに設定することが決定さ Group(CO2TG)は、2011 年 だ け で も 3 回 の れており、今回のSGはちょうどその中間点と WG会議(米国ジョージア州サバンナ:3月、 もいう時期に差し掛かっており、5日間にわ ジュネーブ:5月、米国コネチカット州ハー たる会議日程の大半がCO2基準に関する議事 トフォード:7月)と2回のワークショップ(ボ に充てられた。 ン:5月、ジュネーブ:5月)を開催しており、 今回は、9月12日∼16日の5日間、北京のペ ニンシュラホテルを会場に開催され、日本か これらのすべてに当会から高見委員が参加し てきた。 らは、国土交通省 航空局安全部 航空機安全 これらの活動の中では特にCO2排出基準指 課 航空機技術基準企画室長以下2名、JAXA3 標(燃費効率指標)について検討が進められ 名JAL1名、などからの参加があった。CAEP ており、現時点で指標は、①SAR : Specific のメンバーである22ヵ国(ナイジェリアと Air Range(航続率)と②MF/D : Mission Fuel/ チュニジアは欠席)のほか、発言権のあるオ Distance(想定運航パターンに基づく燃費) ブザーバーである各種団体(ICCAIA、IATA、 の二案に絞り込まれてきている。 ICSA、CANSO、ACI、ACAC、等)を 加 え、 150名ほどが参加した。 日本航空宇宙工業会は、ICCAIA(国際航 一方、IMO(国際海事機関)でも同様に船 舶のCO2排出基準策定作業が進められてお り、本年7月には一応の合意に達している。 空宇宙工業会協議会)の一員として、当会 このため航空でも基準策定の加速が望まれる CAEP委員会のメンバーでWG1(航空機騒音) 状況にあった。 担当のIHI 大石氏、WG3(航空機エンジン排 このような状況の中で今年9月北京におい 出物)担当のMHI 高見氏(CO2削減検討分科 て開催されたSteering Group 2011では日本、イ 会 機体部会長を兼務)、事務局担当の飯島 ギリス、カナダ、ブラジル、CO2TGタスクグ がICCAIAのメンバーとして参加した。 ループ長、SG、議長国(オランダ)から成る 35 工業会活動 「Small Group」が議長発案で構成され、細部 にわたる検討が集中して進められた。 4.NOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質) (1)NOx関連 その結果、CO2TGに対する今後の方向性を 今回はCO2 排出基準に関わる議論が主とな 示すと共に、スケジュールについて以下の2 り、NOxについては目立った議論はなかった 点が合意された。 が、以下に、NOx規制に関する動きの現状を (1)2012年2月末までに燃料効率指標を最終 まとめる。 的に選定する。 (2)当初の計画通り2013年末までに航空機の CO2排出基準を完成することを目指す。 懸案であるStaged Combustor(低負荷時と高 負荷時の燃焼モードを使い分けている燃焼 器)の巡航時とLTO(Landing and Takeoff:離 当会では、引き続き上記CO2TGの活動に参 発着)サイクルにおけるNOx排出量の関係に 画し、ICCAIAおよび国土交通省を通じ、航 ついて、7月のWG3-CTG(Certification Task 空機のCO2排出基準策定に貢献していく。 Group)ミーティングにてICCAIAより報告が 行われた。これによれば、Staged燃焼器であ 3.騒音関連 る CFM56 の DAC(Dual Annular Combustor、 騒音規制強化オプションの環境便益及び経 CFM56用)は、エンジン推力とEmissionの関 済 的 分 析 に 関 す る M D G(M o d e l i n g a n d 係カーブが従来型燃焼器と比較して大きく異 Databases Group)お よ び FESG(Forecasting なるが、LTOと巡航時の排出レベルの関係は and Economic Analysis Support Group)報告を 従来型と類似しているとの結果であった。し 受け、オプションや適用年の絞り込み等、今 かしながら、下記の理由により本件は引き続 後の検討の方向づけをすることが主な目的 き調査・検討が必要な状況となっている。 だったが、モデル化の不備などもあり予定し ていた議論は出来ず2012年 SG(2012年6月 ロ シア サンクトペテルブルグで開催予定)まで 作業は持越しとなった。 すなわち2010年のSG(2010年11月)にて決 ① DACのNOx排出量は巡航時に最適化さ れているわけではない。 ② 最新のGEnx用燃焼器データが近いうち に出る。 まった騒音規制強化オプション(Chapter4に ③ 従来型RQL(燃料過濃燃焼急速冷)燃 対 し、3d B、5d B、7d B、9d B a n d 11d B 焼器でも最新型では部分予混合が適用さ Cumulative Margin)および適用想定年(2017 れ、NOx特性が異なる。 年または2020年)は維持したうえで、MDGお よびFESGによる環境便益及び経済的分析が 継続される。 騒音規制強化オプションの検討とは別に二 次的な対策として、離陸機体重量8,618㎏以下 の低重量機材に対する現状フラットなChapter4 基準レベルを見直すことが合意された。 本SGの結論としては、「予備検討がなされ た段階だが、CTGは2012年SGで結論を報告す べく、引き続き活動を行っていく」と総括さ れる。 NOx 低 減 技 術 に つ い て は、仏 Toulouse で 2011年10月20日にCAEPセッションが実施さ れた他、10月25日∼27日のANERS(Aircraft Noise and Emissions Reduction Symposium 仏国 36 平成23年12月 第696号 マルセイユ)においても最新技術動向・規制 の方向につき議論されている。 (3)Alternative Fuel関連 航空機に代替燃料を使用する場合の環境へ の影響調査を実施し、CAEP9で報告されるこ (2)PM(粒子状物質)関連 とが確認された。また、10月18日∼20日には 実機エンジン試験のための予算不足は相変 ICAO 本 部(モ ン ト リ オ ー ル)に て Aviation わらずで、昨年のSGで訴えたにもかかわらず、 and Sustainable Alternative Fuels Workshopが開 現在でも追加予算はなかった。この状況下で、 催され、代替燃料全般について議論された。 担当のSAE(米国自動車工学会)-International E31委員会は、試作サンプルシステムで4回の 試 験(R R e n g i n e、C F M56-2C1 e n g i n e、 5.おわりに Aviation Week 誌 8 月 12 日 号 に「Aircraft CFM56-5C/PW4168、APUをそれぞれ使用)を Emissions Standards Hard To Craft」と い う 実施、小さなエンジンから大きなエンジンで、 CAEPの動きに関する記事が掲載されたこと 様々な条件にて不揮発性のPM計測が基本的 により、メンバーおよびオブザーバーに対し に可能であることを実証した。しかし、未解 て、議事内容および配布資料に関しての守秘 決/未実証の技術課題が多く、これらの解決 義務が注意喚起された。したがって本報告も のためには適正な予算割り当てが欠かせない 詳細に関する記述は控え会議の大きな流れを ことが今回のSGでも強く訴えられた。また、 報告するに止めている。 現状を鑑み、(追加予算が出る前提で)1年遅 れのスケジュールが再設定された。 CO2排出基準策定に関する会議は継続して おり、11月にはロンドンで開催されており、 すなわち、もともとはCAEP9 meetingで不 本SGで合意された「2012年2月までに燃料効 揮発性PM認証要求を提示することが目標で 率指標を最終的に決定する」ために、2012年 あったが、CAEP9ではARP 規格(Aerospace 1月には事前に北米、ヨーロッパ、日本の地 Recommended Practice)のドラフトにとどめ、 域ごとにメンバーが集まり、テレビ会議が開 CAEP9(2013年)の1年後までに不揮発性PM 催されることが決まった。 の認証要求を提示し、CAEP10(2016年)に 当会では、引き続きICCAIAのメンバーと おいて不揮発性PMのStandardを制定するとい して参画すると同時に、入手した情報をタイ うものである。 ムリーに会員企業に配信し、情報の共有を 図っていきたい。 〔(社)日本航空宇宙工業会 技術部部長 飯島 澄〕 この事業は、競輪の補助金を 受けて実施したものです。 http://www.ringring-keirin.jp 37
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