スクウェア・エニックス・ホールディングス ( 9684 )

岡三レーティング情報
2015 年 11 月 9 日
スクウェア・エニックス・ホールディングス
( 9684 )
16/3 期は大型 IP 勝負へ、中期的には IP とデジタルビジネスの加速で利益成長へ
レーティング
中 立
◆アナリストの視点
(前回:強気)
目標株価
−
円
(前回:4,300 円)
16/3 期 2Q 累計の連結営業利益は 48%増。中期的には、IP を軸とし
たスマートデバイス向け展開、さらに世界的なデジタルビジネス展開に
よって利益成長が加速すると予想している。しかし、スマートフォン向け
アプリ市場と欧米のゲームソフト市場の競争激化を考慮すると、短期
的には収益性の低下が懸念される局面もあると想定される。
16/3 期 2Q 累計の連結営業利益は 48%増。通期は 70%増を予想
3,175 円 (15/11/06)
3,410 円 (15/08/12)
2,081 円 (14/11/10)
1,563
株
価
52 週高値
52 週安値
T O P I X
P
E
R
21.5 倍 (16/3 予)
19.4 倍 (17/3 予)
16.8 倍 (18/3 予)
P
R
B
O
R
E
2.4 倍 (15/9)
11.1% (16/3 予)
時価総額
発行済株式数
3,872億円
121,966千株
16/3 期第 2 四半期(2Q)累計の連結営業利益は 126 億円(48%増)。
16/3 期 2Q の連結営業利益は 47 億円(36%増)だが、コンテンツ
制作勘定の評価損の計上や広告宣伝費の先行投資等で、営業利益率
が 1Q 比で低下した。16/3 期連結営業利益は 280 億円(70%増)を
予想するが、会社計画には織り込まれていないコンテンツ制作勘定
の評価損の計上を織り込んだ。
「ファイナルファンタジー(以下、FF)」や「ドラゴンクエスト」
等の大型 IP を軸とした HD ゲームと大型 IP のスマートデバイスや
オンラインゲームでの展開、そして、海外での地域的拡大が中期的
な利益成長を実現させると予想する。また、オンラインプラットフ
ォームでのダウンロード販売はロングテールと新興国需要を取り
込み、拡大する可能性が高いと考えられ、中期的な利益成長に寄与
すると予想される。
レーティングの根拠
企業調査部
森田 正司
担当セクター:
レジャー・アミューズメント
インターネット・ゲーム
中期的な利益成長の可能性に対する岡三証券の見方には変化がな
いものの、日本のスマートフォン向けアプリ市場と欧米市場の競争
激化によって短期的に収益性が低下する可能性がある点を考慮す
ると、バリュエーションが上昇することは見込みづらい。このため、
レーティングを「中立」に引き下げる。
<連結業績>日本基準
決算期
14/3
15/3
16/3(予)
17/3(予)
18/3(予)
会 社
岡三前回
岡三今回
岡三前回
岡三今回
岡三前回
岡三今回
(単位:百万円、円)
売上高
155,023
167,891
210,000
247,000
257,000
260,000
275,500
280,000
296,500
営業利益
10,543
16,426
21,000
28,000
28,000
32,000
29,500
35,000
35,000
経常利益
12,534
16,984
21,000
28,000
28,000
32,000
29,500
35,000
35,000
当期利益
6,598
9,831
14,500
18,000
18,000
21,000
20,000
23,000
23000
EPS
57.3
84.3
118.9
147.6
147.6
172.2
164.0
188.6
188.6
配 当
30.0
30.0
37.5
44.0
44.0
52.0
49.0
57.0
57.0
16/3 期会社計画はレンジ形式の開示のため、その中央値を記載。
会社予想の 16/3 期の期末配当金は 20.0∼35.0 円(2Q 末に 10.0 円の配当を実施している)
。
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巻末に記載した重要な注意事項と併せご参照下さい。
1−6
岡三レーティング情報
16/3 期 2Q 累計の連結営業利益は
48%増
コード:9684
16/3 期 2Q 累計の連結業績は、売上高 864 億円(18%増)
、営業利
益は 126 億円(48%増)
。スマートデバイス向けアプリが好調に推移
したことが増益の主因。
なお、16/3 期 2Q の連結営業利益は 47 億円(36%増)。連結営業利
益率が 16/3 期 1Q の 19%から同 2Q では 11%へ低下した理由は、ス
マートデバイス・PC ブラウザ向けゲームに係るコンテンツ制作勘定
の評価損 15 億円を計上したことや広告宣伝費の先行投資のため。
15/9 末のコンテンツ制作勘定は 469 億円(15/3 期末は 351 億円)
に増加した。日本と海外で半分の割合。16/3 期 2Q のコンテンツ制作
勘定の評価損には HD ゲームは含まれていないもようであり、会社側
は 3Q 以降に発売予定の HD ゲームタイトルの開発費を投資回収でき
るものと考えている。しかし、競争が激化する欧米のゲーム市場や
日本のスマートフォン向けネイティブアプリの動向を考慮すると、
16/3 期中に発売したタイトルの収益性が低下する可能性や 16/3 期
末には評価損が発生する可能性があろう。
16/3 期連結営業利益は 70%増を
予想
16/3 期 連 結 業 績 に つ い て 、 会 社 計 画 は 据 え 置 か れ 、 売 上 高
2,000-2,200 億円、営業利益 170-250 億円の予想。HD ゲームやスマ
ートフォン向けネイティブアプリのリスクとアップサイドポテンシ
ャルを織り込んだとみられる。
岡三証券では、16/3 期連結業績について、売上高 2,570 億円(53%
増)
、営業利益 280 億円(70%増)を予想。なお、たな卸資産評価損
の発生を予想に織り込んでいる。前回予想(15 年 8 月 7 日付け岡三
レーティング情報)より売上高を上方修正したのは、スマートデバ
イス向けビジネスの伸長を予想したため。一方で、スマートデバイ
ス向けビジネスの開発費の上昇、競争激化、広告宣伝費の増加等で
利益率が低下すると予想しており、営業利益は前回予想を据え置い
た。なお、16/3 期 3Q 累計の連結営業利益は 230 億円(55%増)を予
想する。
大型 IP では、11 月発売予定の「RISE OF THE TOMB RAIDER」、12
月発売予定の「JUST CAUSE 3」、2016 年 2 月発売予定の「DEUS EX :
MANKIND DIVIDED」、2016 年 3 月発売予定の「HIT MAN」等が注目され
る。日本では、
「ドラゴンクエストヒーローズⅡ」
、
「スターオーシャ
ン 5」の発売を織り込んだ。
スマートフォン向けネイティブアプリでは、足元では、
「星のドラ
ゴンクエスト」が 400 万ダウンロード、
「ファイナルファンタジー ブ
レイブエクスヴィアス」が 300 万ダウンロードと好調に推移してお
り、3Q は 2Q よりも売上高が伸長しよう。また、アーケード向けでは、
11 月から「DISSIDIA FINAL FANTASY」を稼働開始予定。
充実した今後のパイプライン
17/3 期には、
「WORLD OF FF」と「FF XV」の発売を予想する。18/3
期には「FFⅦ」のフルリメイク作品や「ドラゴンクエスト 11」、
「KINGDOM HEARTS Ⅲ」の発売を予想する。また、アーケード向けで
は「ドラゴンクエスト モンスターバトルスキャナー」が 2016 年に
サービス開始される予定。
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巻末に記載した重要な注意事項と併せご参照下さい。
2−6
岡三レーティング情報
コード:9684
連結セグメント別業績推移とゲームソフトの数量推移
(出所:会社資料、ヒアリング、16/3期以降は予想、単位:億円、万本)
15/3期2Q 16/3期2Q
13/3期
14/3期
15/3期
16/3期
16/3期
17/3期
18/3期
累計
累計
会社
岡三
岡三
岡三
731
864
1,480
1,550
1,679
2,100
2,570
2,755
2,965
895
946
1,119
1,570
1,963
2,183
2,422
438
602
443
470
407
400
450
410
385
213
190
62
50
111
102
115
100
118
125
125
19
26
33
38
40
30
40
40
40
-1
-4
-1
-5
-3
0
-1
-3
-7
85
126
-61
105
164
210
280
295
350
0
107
173
235
285
305
366
79
129
-4
45
36
40
50
46
40
24
22
18
11
25
23
32
20
25
24
24
6
9
7
11
12
5
10
10
10
-42
-45
-89
-81
-89
-90
-90
-90
-90
683
698
1,900
1,723
1,796
2,260
2,750
3,180
3,400
159
232
574
460
476
480
600
600
800
315
245
609
820
759
1,020
1,300
1,500
1,500
191
178
691
408
505
740
800
1,000
1,000
18
43
26
34
56
20
50
80
100
売上高
デジタルエンタテインメント
アミューズメント
出版
ライツ・プロパティ等
消去又は全社
営業利益
デジタルエンタテインメント
アミューズメント
出版
ライツ・プロパティ等
調整額/消去又は全社
販売本数
日本
北米
欧州
アジア他
デジタルエンタテインメント売上高の内訳
スマートデバイス・PCブラウザゲーム等
176
281
227
272
442
MMO
114
191
111
200
233
HDゲーム
148
129
556
473
444
*端数処理の関係で合計が一致しない場合がある。
*16/3期会社計画はレンジの中間値の数値。
*15/3期1Qより販売本数はディスク販売本数+当期と前期に発売されたタイトルの当期ダウンロード本数。
競争が激化する日本のスマートフ
ォン向けネイティブアプリ市場と欧
米のゲーム市場
700
300
963
750
320
1,113
800
330
1,292
日本のスマートフォン向けネイティブアプリ市場においては、タ
イトル数の増加や大型 IP を用いた展開、有力パブリッシャーの参入
など競争が激化しているとみられる。当社の「ファイナルファンタ
ジー」や「ドラゴンクエスト」等の有力 IP を題材としたタイトルは
上位となっているものの、同じ IP のアプリ間において自社競合も懸
念される。
欧米市場では、ホリデーシーズンにかけて大型タイトルが相次い
で発売される予定となっており、ハードの普及が進み、市場が拡大
する中で競争が激化しているとみられる。
ゲームソフトやスマートフォン向けアプリの開発期間が長期化し
ている中で、このような市場の変化が生じると、開発の意思決定当
初と異なる外部環境になり、発売後、サービス開始後に想定される
売上高や利益が当初の見込みとは異なるようになる可能性がある。
結果として、実際に発売後に期待された利益が得られない場合や売
上高や利益の想定を引き下げた場合には、これまでキャッシュ・ア
ウトされた金額を資産計上しているコンテンツ制作勘定の評価損の
計上が行われる可能性が高まっているといえる。
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巻末に記載した重要な注意事項と併せご参照下さい。
3−6
岡三レーティング情報
コード:9684
中国での電子コミック配信を開始
中国 NetEase 社と協業し、当社のマンガの中国での電子書籍配信
を開始。配信開始から 2 年間は無料で提供する予定だが、スマート
デバイス向けゲームとのメディアミックス展開を図ることでマネタ
イズする方針。NetEase 社は当社の「乖離性ミリオンアーサー」を 8
月から中国で展開しており、ある程度の成功を収めている。今後、
アプリだけではなく、メディアミックス展開により、コンテンツの
人気化を加速させるものとみられる。
ダウンロード販売でロングテールの
取り込みと新興国展開へ
この数年で当社の販売本数はダウンロード比率が高まっている
が、STEAM や PlayStation Network、Xbox Live!等のオンラインプ
ラットフォーム向けのダウンロード販売は、消費者のロングテール
を取り込んで売上高が伸長する可能性がある。特に、PC 向け STEAM
においては、新興国等へもリーチできる点等において、今後利益が
上乗せされるプラットフォームになる可能性が高いと考える。
中期的な連結営業利益の見通し
会社側は中期的な連結営業利益に関して、「早期の過去最高更新」
を目指している。この達成のためには、大型 IP の HD ゲームの収益
性の向上やスマートデバイス向けビジネスの安定的な成長が必要と
なると考える。大型 IP の HD ゲームに関しては、発売の有無で業績
のボラティリティが生じることになるが、スマートデバイス向けビ
ジネスによって、そのボラティリティを緩和させることが可能にな
ると予想する。スマートデバイス向けでは、
「新しい遊び方」を提案
することに成功した場合、国内でも新たなヒットの可能性があり、
さらに、海外展開の利益寄与のポテンシャルも高いと考えられる。
出版事業に関しては、電子書籍の売上高が伸長しており、消費者
の新しい読書スタイルに対応した展開が期待される。また、アジア
を中心とした海外にも展開する予定。さらに、VR や AR との技術的な
融合も出版のあり方を変えることになる可能性がある点は継続的に
注目したい。
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巻末に記載した重要な注意事項と併せご参照下さい。
4−6
岡三レーティング情報
コード:9684
レーティングの基準など
強
中
弱
気:今後6ヵ月以内の目標株価が現在の株価を10%以上上回ると判断される銘柄
立:今後6ヵ月以内の目標株価と現在の株価の差が±10%未満と判断される銘柄
気:今後6ヵ月以内の目標株価が現在の株価を10%以上下回ると判断される銘柄
目標株価の定義と未達成リスクについて
目標株価は、アナリストによる当該企業の業績予想を基に、マルチプル法やDCF法等の岡三証券企業調査
部が妥当と考える方法により算出したもので、対象期間は 6 ヵ月以内です。目標株価達成を阻むリスク要因
としては、当該企業の主要市場における競合状況(企業買収・訴訟なども含む)、製品・商品・サービス需
要の変動、原材料及び燃料価格の変動のほか、当該企業を取り巻く経済状況、為替相場の変動、国内外の金
融・不動産市場の状況、各種規制変更、事故・災害(人災含む)、社会的責任などが考えられます。なお、
これらの要因以外にも、現時点で予想できないリスクが将来的に発生し、その結果として目標株価達成が妨
げられるおそれがあります。
本資料における個別銘柄に関する注記事項
・ 個別銘柄のレーティングについては、執筆アナリストの変更があった場合でも、岡三証券としての個別銘
柄のレーティングの継続性を保つため、前任者の付与したレーティングを「前回」レーティングとして記
載しています。
・ 株価は日付日の終値。52週高値・安値は権利落ち修正後で、各取引所の立会市場の売買立会時(前場・
後場)における約定値段を用いています。
・ 上場市場は東京証券取引所の場合、記載せず、複数市場上場の場合は売買高の多い市場を記載しています。
・ TOPIX、時価総額など、特に日付を記していない場合は、個別銘柄の株価日付に同じです。
・ PBR の根拠となる BPS は直近決算期末時点の会社公表数値を用いていますが、必要に応じて岡三証券が算出
しています。
・ ROE の根拠となる自己資本は必要に応じて純資産から新株予約権と少数株主持分の金額を控除した金額を
用いています。
・ 予想 EPS は当期利益(会社計画、前回予想を含む)を記載の発行済株式数で除して計算しています。なお、
払い込み前の公募、権利落ち前の株式分割等は考慮しておりません。
・ 時価総額は記載の株価と発行済株式数で計算しています。
・ 発行済株式数は自己株を含んでおりません。株式数は直近決算期末時点の会社公表数値を原則として用い
ておりますが、株式分割、公募増資、自己株買入れなど必要に応じて岡三証券の推定による試算値を用い
る場合があります。
・ 日本基準の連結当期利益は、親会社株主に帰属する当期純利益です(平成 27 年4月1日以後開始する連結
会計年度の期首から適用)
。
・ 米国会計基準の当期利益は、当社株主に帰属する当期純利益です。
・ 国際会計基準(IFRS)の当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益です。
(平成 27 年 4 月改訂)
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5−6
岡三レーティング情報
コード:9684
手数料およびリスクについての重要な注意事項
・ この資料は、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、個々の投資家の特
定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。また、過去の実績は必ずしも将来の成果
を示唆するものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願
いします。
・ 株式は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の変動による株価の変動によって損失
が生じるおそれがあります。また、発行体やその他の者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部
評価の変化等により、株価が変動することによって損失が生じるおそれがあります。
・ 本資料は、岡三証券が信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成されたものですが、その情
報の正確性、完全性を保証するものではありません。企業が過去の業績を訂正する等により、過去に言及
した数値等を修正することがありますが、その責を負うものではありません。また、本資料に記された意
見や予測等は、資料作成時点での岡三証券の判断であり、今後予告なしに変更されることがあります。な
お、本資料は、日本証券業協会「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則」のアナリスト・レポー
トとして審査されたものです。
・ 岡三証券およびその関係会社、役職員が、本資料に記載されている証券もしくは金融商品について、自己
売買または委託売買取引を行う場合があります。岡三証券の大量保有報告書の提出状況については、岡三
証券のホームページ(http://www.okasan.co.jp/)をご参照ください。
・ 自然災害等不測の事態により金融商品取引市場が取引を行えない場合は売買執行が行えないことがありま
す。
・ 金融商品取引のご契約にあたっては、あらかじめ当該契約の「契約締結前書面」
(もしくは目論見書及びそ
の補完書面)または「上場有価証券等書面」の内容を十分にお読みいただき、ご理解いただいたうえでご
契約ください。
・ 株式の売買取引には、約定代金(単価×数量)に対し、最大 1.242%(税込み)
(手数料金額が 2,700 円を下
回った場合は 2,700 円(税込み))の売買手数料をいただきます。ただし、株式累積投資は一律 1.242%(税
込み)の売買手数料となります。国内株式を募集等により購入いただく場合は、購入対価のみをお支払い
いただきます。
・ 本資料は岡三証券が発行するものです。本資料の著作権は岡三証券に帰属し、その目的のいかんを問わず
無断で本資料を複写、複製、配布することを禁じます。
岡三証券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 53 号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
(平成 27 年 7 月改訂)
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6−6