No.49 Jun 2015 ました! 行ってき 宮城 県角 田市 市 の 南 北 に 阿 武 隈 川 が 流 れ 、豊 か な 自 然 に 恵 ま れ た かくだ 宮 城 県 角 田 市 。ブックス タ ートは 社 会 福 祉 協 議 会 が 中 心 と なり、3 ∼ 5 か 月 児 健 診 で 実 施して い ま す 。明 る い 陽 射し が 差し 込 む 会 場 で 赤 ちゃん を 待って い る の は 、 や さし い 笑 顔 の ボ ラ ン ティア 。親 子 の 幸 せ を 願 い な が ら 、絵 本 の 楽しい ひとときを 届 け て い ます 。 【ブックスタート開 始年月】 2 007年 9月 【 対象月齢 】 3∼5か月 【 年 間出生数 】約18 0人 【 実施会場 】 3∼5か月児健診 【 事 務局 】 社 会福祉協議 会 【 連 携体制 】社会福祉協議会、健康推進課、子育て支援課、図書館、 主任児童委員、ボランティア 会場の様子 親子の出迎え 受付カードに記入 案 内 係 が 親 子 を ブッ 保 護 者 に 赤 ちゃ ん の ク ス タ ート 会 場 に 誘 名 前 な ど を 記 入して 導。 「こんにちは。健 診 もらいます 。そ の 間 は お 疲 れ 様 でした 」スタ ボ ランティア が 赤 ちゃ ッフ が 笑 顔 で 迎 え ま んを抱っこ。 「 〇 〇ちゃ す。 ん 、今 日 はどうぞ よろ しくね」 絵本 の 体験 親 子 が 暮らす 地 区 の 子 育 て 支 援 情 報 などを 丁 寧 に 紹 介 。 そ の 後 、絵 本 を 介した 楽しい ひとときを 体 験して もら い 、パックを 手 渡します 。 次 は 何 が 出 てくる か な? ゆったり、心 地 よ い 時 間 が 流 れ ま す 。 すくすく元 気 に 育って ね 。 ブックスタート・ニュースレターNo.49 (1) ュー タビ イン お 話 をうか が い ました ! 角田市社会福祉協議会 佐藤真梨子さん ◎ 誰もが暮らしやすいまちを目指して 市社会福祉協議会は、誰もが幸せに、安心して暮らせるまちづくりのために活動しています。これまで行っ てきた事業の多くは、高齢者や障がい者を対象としたものでした。しかしこれからは、若い世代や未来を担う 子ども達にも目を向けていくことで、安心して子育てができ、子ども達が健やかに育つまち、ひいては、誰もが 暮らしやすいまちをつくることができるのではないかと考えました。そこで、地域の皆で子育てを応援する事 業として、ブックスタートに取り組むことにしました。 「ブックスタートは親子の幸せを願う活動。単なる絵本のプレゼント事業ではない」ということは、開始当 時から事業に関わる皆で共有してきました。これからも行政やボランティアと協力しながら、一組一組の親子 に寄り添っていきたいと思っています。 ◎ 財源は「赤い羽根共同募金」の配分金 ブックスタートの財源は、赤い羽根共同募金の配分金です。保護者にパックを手渡すときは、財源について も紹介し、この事業が地域の皆さんのあたたかな厚意に支えられていることも伝えています。また、市内全戸 に配布している社協だよりでは、共同募金が地域の赤ちゃんのために使われていることを報告しています。 ◎ 親子と地域をつなぐために 市ではブックスタートを通じて、親子と地域をつないでいくことを大切 に考えています。そのため、親子にはなるべく同じ地区に暮らしているボ ランティアが対応し、その地区の子育て広場を紹介したり、身近な相談相 手として、地区ごとに主任児童委員がいることなどを伝えています。 ボランティアには、読みきかせや子育て支援など、様々な活動に携 わっている方が多くいます。ブックスタートの後も、そうした場で子ども たちと再会できることは、皆さんが活動を続けていく原動力にもなって いるようです。 角田市健康推進課 保健師 佐藤久美子さん ◎ ホッとした笑顔で健診を終えられる 我が子の初めての集団健診で、少し緊張気味の保護者もいます。で も、ブックスタートでは、保護者とボランティアが赤ちゃんを囲んで ゆったりと世間話を楽しんでいる様 子がよく見られるんですよね。 ホッとした笑顔で帰宅する親子を見ると、私も安心し、嬉しい気持ち になります。 (2) ブックスタート・ニュースレターNo.49 人気! 親子に 取材を終えて・・・ 角田市子ども図書館 2011年、市立図書館隣に子ども図書館が開館。木のぬ くもりあふれる館内は、じゅうたん敷きの部屋もあり、 赤ちゃんものびのび過ごせます。ブックスタートをきっ かけに利用するようになった親子も多くいます。 保護者に語りかける言葉、赤ちゃんをやさし く見つ め るま な ざし。皆 さん の 様 子からは 、 「いつもそばで見守っているよ」という、親子 を大きく包み込むあたたかな思いを、ひしひし と感じました。 子育 て支 援 から始まる、誰もが暮らしやす ブックスタートで絵 本を受け取った仲良 し兄妹。今日もたく いまちづくり。今日出会った赤ちゃん達が、地 域の人たちに見守られながら、すくすくと元気 に育っていく。そして、彼らが大人になった時、 さ ん の 本 を 借 り て、 これまでたくさんの人から受け取った愛情を、 おうちで楽しむそう 今度は次の世代へと伝えていく……。そんな様 です。 子が目に浮かぶようでした。 (桐生) 私のまちのブックスタート 寄稿 赤ちゃんに心 地よい空間を 京都府 南山城村図書室 室長 豊田素大/職員 高嶋美和子 京都府の最東南端に位置する南山城村は、奈良県・ たよ。なつかしいなあ」などと、保護者の談笑が続く姿 三重県・滋賀県に隣接し、奈良・京都・大阪・名古屋に が見られました。村では、家と家が離れているため、同 は 40 分∼ 2 時間以内の通勤圏にあります。しかし、近年 じ悩みや不安を持つ母親どうしの交流が少なくなりがち 就職や結婚を契機に若い世代が村を離れ、人口 3,000 人 ですが、ブックスタートを通じて、保護者のつながりが深 を切る状態になっています。 まり、安心感とゆとりを持ってもらえたように感じました。 高齢化率 40.6%、2014 年度の出生数 6 人という少 また、四世代同居のご家庭では、おおばあちゃん(曾 子高齢化の進む村において、村に残って子育てをしよう 祖母)が絵本を開いていっしょに楽しんでおられるそうで としている若い夫婦や、自然豊かでのどかな村でゆった す。おおばあちゃんは「本の後ろから『ばあ』と顔をの りと子育てしたいと移住されてくる家族を応援し、子ど ぞかせたりしているだけで、読みきかせなんて大そうなこ もを地域ぐるみで大切に育むため、2014 年 7 月からブッ とはできませんよ。ただ本を開いているだけでも、ひ孫が、 クスタート事業を開始しました。出生数が少なく、子育 ページにあいている穴に指を入れて『きゃっきゃっ』と喜 て世代が集まる機会が少ないことから、乳幼児健診の際 んでくれるのですよ」とうれしそうに話してくださいました。 に、会場の一角に絵本を自由に楽しめるコーナーを設け、 「ブックスタート」を出発させることにしました。 絵本のプレゼントは、世代を越えて子育てに関わる人たちが、 赤ちゃんを大切に見守り育 スタッフが絵本を読みきかせると、赤ちゃんがじっと見 む、心地よい空間を広げ たり、なめようとしたり、触ったりするしぐさに、保護者 ていると感じています。 は「赤ちゃんも読みきかせしてもらうのが好きなのです ね」「まだわからないと思っていました」と驚いたり、「こ の本喜ぶよ」と紹介し合ったり。 「私の子どもの頃にもあっ ブックスタート・ニュースレターNo.49 (3) 特 集 今の子育て事情や親子をより深く理解するために ∼ 私のおススメ本を紹介します ∼ 発達心理の研究者、臨床発達心理士、保育士。それぞれの立場から、長年親子を見つめて来た専門家の方々 による、ブックスタートに携わる皆さんにおすすめ書籍の紹介です。 詳しい の心に 研究者 ん 赤ちゃ 理の 発達心 遠藤 利彦 さん 東京大学大学院 教育学研究科 教育心理学コース 教授。研究テーマは、子どもと養育者 の関係性及び子どもの社会情緒的発達について。共著に『赤ちゃん学を学ぶ人のために』 (世界思想社)、『乳幼児のこころ 子育ち・子育ての発達心理学』(有斐閣)など。 『哲 学する赤ちゃん』 アリソン・ゴプニック著 青木玲訳 亜紀書房 2010 年 当代きっての発達心理学者が一般読者に向けて、赤ちゃんの様々な不思議さについてまとめ た一冊です。タイトルにある「哲学する」という言葉は、私たちがイメージする「赤ちゃん」 の姿からはほど遠い感じがするかもしれません。しかし、読み進めるうちに赤ちゃんの驚く べき力がわかり、きっとそれに納得することでしょう。 『間 違いだらけの 子育て 子育ての常 識を変える10 の 最 新ル ール』 ポー・ブロンソン & アシュリー・メリーマン著 小松淳子訳 インターシフト 2011 年 タイトルからも想像できるように、この本は、私たちが常識的にいいだろうと思っている子 育てのやり方が、実は科学的に見るとあまり効果がなかったり、かえって逆効果だったりす るということを 10 章にわたって平易に解説しています。ハウツーではなく子育ての基本的 な考え方にふれるつもりで、気楽に読んでみるとよいでしょう。 『赤ちゃんの 科 学 ヒトはどのように生まれてくるのか』 マーク・スローン著 早川直子訳 NHK 出版 2010 年 米国の著名な小児科医が、妊娠から出産に至るまでの道筋を具体的な事例を交えながらまと めています。子どもがお母さんのお腹の中で体験していることのすごさを知ると、目の前の 赤ちゃんのことがもっと愛おしく思えてくるかもしれません。パパの心構えについてふれて いる章もあり、子育て支援に役立つ一冊と言えるでしょう。 わる 健に携 母子保 理士 発達心 臨床 田丸 尚美 さん 広島都市学園大学子ども教育学部 教授。25 年間、鳥取市保健センターで心理相談に従事。 現在は、 大学で教員や保育士の養成に携わっている。書著に『乳幼児健診と心理相談』 (大月書店) 、 共著に『僕たちだって遊びたい 障害児・気になる子の遊びを見つめ直す』 (ささら書房)など。 『子育てと出会うとき』 大日向雅美著 NHK 出版 1999 年 長年「母性」の研究に取り組み、母親たちの気持ちをリアルに代弁してきた著者による、包括 的な子育て論。育児不安や子育ての困難さが社会問題として見つめられるようになった時代 を受けて出版され、豊富な事例を元に掘り下げられた考察は、年月を経てもなお、子育て支 援のあり方を考える基本的な知見です。 (4) ブックスタート・ニュースレターNo.49 『「育てにくい」と感じたら 親・保育 者 のための 子育て応 援 B O O K 』 近藤直子著 ひとなる書房 2014 年 発達上のしんどさを抱えながらも育ちゆく子どもたちや、子どもをかわいいと思えずに悩む親 たちと向き合ってきた、保健所相談員の温かいメッセージ。心地よい活動の中で育つ、大好き な人との共感関係が、子どもが幸せに生きていく上で欠かせないというヒントは、ブックスター トで大事にしている親と子の共感体験に通じます。育てる上での悩みに応じる Q&A も、生活 感があって学ぶことが多いです。 『ちゃんと泣ける子に育てよう 親には 子どもの 感 情を育てる義 務がある』 大河原美以著 河出書房新社 2006 年 「よい」子育てを志向するのは、親なら自然なこと。それが、「よい」経験で満たしたい(「よ くない」ものを排除したい)と勢いが増すほど、「よく」育てなくてはと、親自身も子どもを も追いつめていく事態が生じます。心理臨床に携わる著者が、子どもたちの感情の育ちを取り 戻すための親の関わりを、具体的な対話事例によって描き出しています。 詳しい 絵本に 保育士 中村 柾子 さん 10 年間幼稚園に勤務した後、保育士として私立保育園に。保育の中での読みきかせを通し、 長年子どもたちと絵本の出会いを見守ってきた。著書に『絵本の本』、 『 絵本はともだち』 (ともに福音館書店)など。 『子どもはみんな問 題 児 。』 中川李枝子著 新潮社 2015 年 中川さんが親子に向ける眼差しはいつもあたたかい。子どもはききわけが悪くて、待ったが きかなくて、べとべとした手で抱きつくし、実に手がかかる。でもお母さんが大好き!と、 子育てに不安を抱える父母にあたたかいエールを送ります。困ったなと思えることも、じっ と見ていれば解決の糸口があるものだ、と。おおらかになれそうです。 『泣き虫ハァちゃん』 河合隼雄著 岡田知子絵 新潮社 2007 年 深層心理療法で著名な学者ですが、柔らかな人柄と文体で、縦横に人の魅力や複雑さを語っ てくれる方でした。本書によれば、子ども時代の隼雄さんは泣き虫で意気地がなくて、みん なに笑われたりもしたとか。自身の幼い頃を克明に思い起こせるからこそ、人間に対する愛 情や想像力が豊かだったのでは?家族愛に満ちた本でもあります。 『松 居 直のすすめる50の 絵 本 大 人のための 絵 本入 門 』 松居直著 教文館 2008 年 良質な絵本とは?と人に訊いても納得のいく答えが簡単に返ってくるものではありません。 ではどうすればよいか。松居氏が勧める絵本を一望すると、絵本に何を求めているかが見え てきます。物語の確かさや楽しさ、言葉の美しさ、お話を語る絵、などなど。自分の中に確 かな軸を持ちたいと願うなら、優れた絵本を読むしかないようです。 ブックスタート・ニュースレターNo.49 (5) コラム お母さんこそ楽しんで 欲しいブックスタート 埼玉県 三芳町立図書館 館長 NPOブックスタート理事 代田 知子 ざわついた4か月児健診会場の一角で、初対面の保護者 いったい何のことかとよく聞いてみれば、彼女が小学1 に「赤ちゃんと絵本を楽しみましょう」とすすめる三芳町の 年生のとき、司書の私がブックトーク訪問で教室に行き、 ブックスタート。当初は、興味が無いと面倒がられたりした 『ぐりとぐら』 (中川李枝子文・大村百合子絵・福音館書 らどうしようと不安でした。でも、始めてみれば、いやがる 店)を読んだ、と言うのです。 「絵本を読んでもらったから、 保護者などおらず、むしろ赤ちゃんより喜んでくれるお母さ 思い出した」。彼女の言葉に、私はびっくり仰天。だって、 んがたくさんいたのです。 たった一度、教室で『ぐりとぐら』を読んだ図書館の人のこ あるお母さんは、 『じゃあじゃあびりびり』 (まついのりこ 作絵・偕成社)に息をはずませ喜ぶわが子を見て、 「分かる んだ!」と大喜び。特に「みず、じゃあ、じゃあ」の場面を好 むので、赤ちゃんによって好きな場面や音が違うと伝える とを、ちゃんと覚えていてくれたのですから。 目を丸くする私に彼女は、 「家に『ぐりとぐら』があって、大 好きな絵本だったから、学校で読んでくれたのがすごく嬉し かった」と、ぼそぼそと、でも一生懸命に話してくれました。 と、 「もう好みが分かれるのね」と笑い、 「今日は、この子と 「すごいわねえ。子どもは、好きな本を読んでくれた人を はじめておしゃべりができた気がする。ちゃんと心があるこ 忘れないとよく言うけれど、あなたが証明したわね」という とも分かった。嬉しい記念日です!」と話してくれました。 と、彼女は笑ってうなずきました。 「他人のことだって覚え もう一人、忘れられないお母さんがいます。あの日、赤 ちゃんを抱き、下を向いて私の前に座ったのは、ぼさぼさな ているのだもの。赤ちゃんは、大好きなお母さんが読んでく れた本を絶対に忘れないわよ。たくさん読んであげてね」 茶髪が目立つ10代のお母さんでした。痩せて、だるそうで 何とか頑張って赤ちゃんを育てようとしているこの若い 無表情。一目で苦労している日常が想像できました。でも、 お母さんを、今、子ども時代の幸せな思い出が応援している。 こうして赤ちゃんを健診に連れて来たのです。えらい!頑 そう思えてなりませんでした。 張った!と褒めてあげたくて、思わず、 「いいお母さんねえ。 連れて来るのは大変だったでしょう?」と声を掛けました。 すると、彼女は顔を上げて私の顔を見、それから無言のま ま、私が読む『いないいないばあ』 (松谷みよ子文・瀬川康 夫絵・童心社)をじっと聞き始めたのです。そして読み終わ ると、ぼそっと、 「ぐりとぐら、読んだよね」 三芳町ブックスタート ◀ の様子 訪問記録 4月 3日 徳島県吉野川市 10日 愛知県田原市 15日 栃木県野木町 23日 埼玉県三郷市 5月 8日 群馬県前橋市 14日 佐賀県武雄市 21日 静岡県御殿場市 27日 宮城県仙台市* * 宮城県教育委員会主催 ブックスタート講座 「ブックスタート研修会in静岡」を開催します 日時:2015年10月19日(月)10:30∼16:00(予定) 会場:静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ ※ 詳細は決まり次第お知らせします (6) ブックスタート・ニュースレターNo.49 ■ 宮城県教育委員会主催 ブックスタート講座 ( 5月27日 宮城県庁 ) NPOブックスタートからの基本情報紹介に続き、宮城県 川崎町 (子育て支援センターを中心に実施) 、石巻市 (東日 本大震災を乗り越え、市民とともに実施)の担当者及び ボランティアより、事例報告がありました。
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