中心力・極座標での運動方程式

2011 年度 3EC 応用物理 I (力学) 補助プリント No.8
中心力を受けた場合の運動
群馬高専 一般教科 (自然科学) 小林晋平
2011. 10. 19. (ver.2)
講義内容のまとめ
1
• ケプラーの 3 法則
• 極座標と運動方程式
• 中心力と面積速度一定則
• 楕円の式の極座標表示
• 万有引力の法則(逆 2 乗則)を導くこと
演習問題と簡単な説明
2
2.1
ケプラーの惑星運動に関する 3 法則
(1) ケプラーの惑星運動に関する3つの法則とはどのようなものか,述べよ.
(2) 質量がそれぞれ M, m であるような二つの物体が距離 r 離れて置かれているとき,二つの物体の間に働く
万有引力の大きさ F はいくらか.万有引力定数は G とせよ.
(3) 前問で,質量 M の物体を座標原点,質量 m の物体を位置ベクトルが r = (x, y, z) で表される点 P にお
く.万有引力を F とするとき,F を G, M, m, r および r を使って表せ.
(4) 近日点,遠日点とはどのようなものか調べよ.
(5) 近日点,遠日点から太陽までの距離をそれぞれ ra , rb とし,近日点を通過する際の地球の速さを va とす
る.ケプラーの3法則のうち第2法則を用いて,遠日点を通過する際の地球の速さ vb を求めよ.
2.2
平面(2 次元)極座標と運動方程式
座標系 = 物体の場所を表す方法
• (x, y) で表す = 2 次元デカルト座標
• (r, ϕ) で表す = 2 次元極座標
• r : 座標原点から物体までの距離
• ϕ : 座標原点と物体を結んだ線(動径)が x 軸となす角(方位角という)
r, ϕ と x, y の関係は以下の通り.
x = r cos ϕ
y = r sin ϕ
)
⇔
1
(
p
r = x2 + y 2
ϕ = tan−1 xy
y
PSfrag replacements
P
y
r
ϕ
0
x
x
図 1: デカルト座標と極座標の関係
2.3
楕円の極座標表示
• 楕円の定義式 : r + r 0 = 2a
• 余弦定理より,r 02 = r 2 + (2c)2 − 2 · r · 2c cos(π − ϕ)
これらから楕円の式を極座標で表したものとして
b2
ただし ` = ,
a
`
PSfrag replacements
r=
1 + ε cos ϕ
c
ε= =
a
r
b2
1− 2
a
!
(2.1)
が得られる.
y
b
P(x, y)
ϕ
π−ϕ
−a
0
F (−c, 0)
`
0
a
F(c, 0)
x
−b
図 2: 楕円と極座標
[問題] 上で述べた楕円の極座標表示を導け.
2.4
中心力と極座標での運動方程式
(1) 質量 m の物体に対する極座標での運動方程式は
(
r 方向: mr̈ = Fr
(Fr , Fϕ は r, ϕ 方向の力)
ϕ 方向: mϕ̈ = Fϕ
ではない.その理由を述べよ.ここでドットは時間微分を表す(ẋ =
2
dx
dt , ẍ
=
(2.2)
d2 x
dt2
など).
F(c, 0)
F (−c, 0)
0
a
r
(2) 図 3 のように,物体に中心力
b F = f (r)er = f (r) のみが働くときを考える(er = r/r は動径方向の単
r
−a
位ベクトル).x, y 方向の運動方程式が
−b
(
x 方向: mẍ = Fx = f (r) cos ϕ
P(x, y)
(2.3)
y 方向: mÿ = Fy = f (r) sin ϕ
ϕ
π−ϕ
となることを図を使って説明せよ.
`
y
0
f (r) sin ϕ
f (r)
eϕ
f (r) cos ϕ
er
ϕ
x
0
図 3: 中心力と極座標での運動方程式
(3) 前問の運動方程式を使うと
m(ẍ cos ϕ + ÿ sin ϕ) = f (r)
m(ÿ cos ϕ − ẍ sin ϕ) = 0
· · · (a)
· · · (b)
(2.4)
が得られることを示せ.
(4) 前問の (a), (b) はそれぞれ動径方向 (r 方向),方位角方向(ϕ 方向)の運動方程式であると考えられる.
その理由を説明せよ.
(5) x = r cos ϕ, y = r sin ϕ を微分すると
ẋ = ṙ cos ϕ − r ϕ̇ sin ϕ
(2.5)
ẏ = ṙ sin ϕ + r ϕ̇ cos ϕ
(2.6)
ẍ = r̈ cos ϕ − 2ṙ ϕ̇ sin ϕ − r ϕ̇2 cos ϕ − r ϕ̈ sin ϕ
ÿ = r̈ sin ϕ + 2ṙ ϕ̇ cos ϕ − r ϕ̇2 sin ϕ + r ϕ̈ cos ϕ
(2.7)
となることを示せ.
(6) 前問と同様にして,
を示せ.
(7) 前問の ẍ, ÿ の式を (a), (b) に代入すると
r 方向の運動方程式: m(r̈ − r ϕ̇2 ) = f (r)
ϕ 方向の運動方程式: m(2ṙ ϕ̇ + r ϕ̈) = 0
· · · (c)
· · · (d)
(2.8)
が得られることを示せ.
(8) 式 (d) から
が言えることを示せ.
d 2 r ϕ̇ = 0
dt
すなわち
3
ϕ̇ =
h
r2
(h は定数)
(2.9)
(9) 楕円の極座標表示を変形した式
を微分し,同時に ϕ̇ =
`
= 1 + ε cos ϕ
r
(2.10)
h
を使って ϕ̇ を消去することで
r2
r̈ =
h2
h2
−
r3
`r 2
(2.11)
が得られることを示せ.
(10) 前問の結果を式 (c) に代入し,
mh2 1
· 2
`
r
となることを示せ.またこの結果について物理的考察を加えよ.
f (r) = −
2.5
極座標の運動方程式と逆2乗則から楕円軌道を導く
前節とは逆に,逆2乗則を仮定すると惑星の軌道が楕円になることを導く.すなわち以下では f (r) = −
として考えよ. G, M, m はそれぞれ万有引力定数,太陽の質量,惑星の質量だと思えばよい.
(1)
GM m
r2
du
1
dr
= −h
を示せ.ただし u = である.また前節で得られた式 ϕ̇ = h/r 2 も使ってよい.
dt
dϕ
r
(2) 前問の結果を使って
れることを示せ.
(3)
(2.12)
d2 u
GM
d2 r
を計算し,動径方向の運動方程式が
u
を使って
+ u = 2 と書き換えら
dt2
dϕ2
h
d2 u
GM
+ u = 2 を解いて一般解を求めると
dϕ2
h
u = A cos(ϕ − ϕ0 ) +
GM
h2
(2.13)
となることを示せ.ここで A, ϕ0 は定数である.
(ヒント:z = u −
GM
h2
として z についての微分方程式を作ると,単振動タイプになることがわかる.
)
(4) 前問の一般解で積分定数を適当にとれば, 楕円の式が得られることを示せ.
(5) h を G, M などで表せ.
1
(6) 楕円の面積を面積速度 h で割ることで物体の周期 T を求めよ.ただし楕円の長半径を a, 短半径を b と
2
する.ここで面積速度とは動径が単位時間あたりに掃く面積を表す物理量である(詳しくは角運動量につ
いての講義で説明).
(7)
2.6
T2
を計算し,それが m によらない量であることを確かめよ.
a3
万有引力とエネルギー積分
(1) r 2 ϕ̇ = h を動径方向の運動方程式に代入し,それを使ってエネルギー積分(動径方向の運動方程式の両辺
を積分したもの)が
GM m
m 2 h2
ṙ + 2 −
=E
2
r
r
となることを示せ.ここで E は適当な積分定数である.
4
(2) 左辺第 2, 3 項をまとめて
GM m mh2
+
r
2r 2
と書く.W (r) の概形を図示せよ.極値など,詳細な値は求めなくてよいので,おおよその形を書くこと.
W (r) = −
(3) W (r) の最小値を Wmin として Wmin < E < 0 のとき,物体はどのような運動をすると考えられるか.グ
ラフを使って答えよ.
(4) E > 0 のとき,r = ∞ から中心力に引かれてやってきた物体は,その後どのような運動をするか.
(5) 再び E < 0 のとき,運動方程式を ṙ について解くと,
r
p
−2E (r − r1 )(r2 − r)
dr
=±
ṙ =
dt
m
r
となることを示せ.ただし,r1 , r2 は 2 次方程式
r2 +
mh2
GM m
r−
=0
E
2E
の解である.
(6) r1 , r2 は,物理的には何を表しているか.
(7) 変数変換 r = a(1 − ε cos ϕ), r1 = a(1 − ε), r2 = a(1 + ε) と,dr/dt を使って
a
dt = ± p
(1 − ε cos ϕ)dϕ
−2E/m
を示せ.ここで a は楕円の長半径, ε は離心率である.
(8) 初期条件 ϕ = 0(t = 0 のとき) のもと上の式を積分し,
を示せ.
a
t = ±p
(ϕ − ε sin ϕ)
−2E/m
(9) 以下,上の式の正符号の場合のみ考える.周期とは,ϕ が 0 から 2π まで変化するのに掛かる時間である
ことを考慮し,この運動の周期 T を求めよ.
(10) 平均の角速度 ω を求め,それを使って
ωt = ϕ − ε sin ϕ
が成り立つことを示せ.この平均角速度 ω は平均運動 (mean motion) と呼ばれる.また,この方程式
はケプラーの方程式という.
[参考]
[1] 戸田盛和『力学』(物理入門コース 1), 岩波書店
5