イースター上のグラフィック

月例報告書
籔 和弥
この 3 月は、Spring Break と Easter Break が重なり、比較的休みの多い月と
なりました。また、留学も残すところあと 1 ヶ月弱となり、帰国を意識するよ
うになりましたが、気を引き締めて残り 1 ヶ月弱、頑張っていきたいと思いま
す。これまでの報告書では、アメリカの良いところや日本との違いなどを中心
にご紹介させて頂いたと思いますが、今回は、
「留学の現実」という大きなテー
マで、僕がアメリカ留学に来てから苦労していることを少し共有させて頂きた
いと思います。何で苦労していますか?と聞かれればおそらく 50 個は簡単に答
えることができますが、今回はその中でも 1 つだけ紹介します。
テーマとしては、
「あなたが出せる価値は何ですか?」
です。
“あなたが出せる価値は何ですか?”
初めての留学において、1 番大変なのは、普通の留学生であれば間違いなく、言
語の壁です。僕は、こちらに来て、既に 8 ヶ月ほど経過していますが、
「言語に
対するフラストレーション」を一日も感じなかったことは、未だにないです。
伝えたいことは伝えられるようになった。と言うには、程遠いと感じています
し、テーマや、状況によっては、まだまだ「流暢」とは言えないレベルだと思
います。と、その言語に関しては、次のテーマに譲りまして、今回ここで述べ
たいのは、では現地の人と同じ言語を使えないとはどういうことか?というこ
とです。
お金を持った観光客ではなく、語学学校の留学生の中の1人の生徒でもなく、
現地の人と(僕の場合は学生として)平等に戦うということはどういうことか?
あくまでも、戦うという表現を使いましたが、現地の学生と同じ土俵で、同じ
基準で戦うとはどういうことか?というのを問われ続けたのがこの 1 年でした。
“お前がこの授業で出せる価値は何なんだ?”
日本であれば、頭の中にある浅い知識や記憶でも、言葉にして、何だかんだそ
の場をごまかすことができました。しかし、語学にディスアドバンテージがあ
る僕としては、頭の中でクリアに整理されていない情報を、相手が納得してく
れるレベルでアウトプットすることはほぼ無理に等しかったのです。言葉で納
得させるには語学のスキルが不足していたのです。
そういう状況の中で、アメリカでは常に「どういうアウトプットができるか?」
ということが問われますし、逆にそこに応えられない生徒は、無価値と言って
も過言ではないのです。
人間関係においても同じです。友達を作るという、これまで生まれた瞬間から
常に自然と、営まれてきた人間の行動も、大抵の場合、僕自身に何かしらのメ
リットがなければ、当然「友達」という関係も成り立たないわけです。しかし、
言語というディスアドバンテージを背負っているということは、その関係を成
り立たせるコミュニケーションツールが不十分なため、相手にストレスを与え
かねないのです。そのストレスを与えられかねないという条件を考慮した上で、
更にこの人間とは深く長く関わっていきたいと思ってもらえた際に、平等な人
間関係が築かれると僕は考えています。
話を戻しますと、言語のスキル不足というディスアドバンテージを背負った状
態で、授業や、人間関係において、問われることは、自分自身何ができるのか?
どういう価値を相手に提供できるのか?ということです。
これは、日本の社会(言語が簡単に通じる社会)においても同じことです。し
かし、言語というコミュニケーションツールがスムーズに使えるが故に、少し
隠れていただけであり、アメリカにおいては、それがより一層クリアになった
だけの話でした。
自分は、どこがユニークなのか?
自分は、他人が持っていないどういう価値をこの社会
に提供できるのか?
これをしっかり意識させるきっかけを頂けたという意味で非常に良い機会でし
た。この問いは、時に残酷で、
「自分が何も持っていない」と気付かされること
にもなりうるのです。
僕の場合は、
「ダンス」と「WEB」という 2 つのスキルが幸いありました。
(日
本語というのも自分の価値の一つになります。)もちろんこのスキルも、僕がど
ういう社会に属しているかということによって、Talent(才能)かどうかが決
まります。価値は絶対的なものではなく、その社会の相対的な評価で決まるか
らです。
ここで 1 つ例を挙げます。
僕は、WEB デザインというグラフィックデザインのクラスを取っているのです
が、そのクラスでは、
「新しい技術を使いながら 1 つ WEB サイトを完成させる」
というのが今学期のテーマでした。
授業の最初は、サイトのアイデア出し、コンセプト決め、ユーザー決定など比
較的言語に依存するタスクが多く、僕の中でぼんやりとした答えがあっても、
なかなか満足いくように伝えることができませんでした。
その中で、僕は一つ自分の中で決意のようなものができました。
“サイトのクオリティでは絶対に誰にも負けない。”
“プロダクトでアッと言わせる。”
という決意でした。
もちろん僕ができるレベルは、プロの方々と比べれば、
足下にも及びませんが、僕が今戦っている小さい社会においては負けるわけに
はいかなかったのです。口で勝てないならば、手を動かすしかないと決意しま
した。
そして、プロトタイプの発表の時には誰よりも早く、誰よりも優れた WEB サ
イトを作りました。改善の余地はあれど、他の授業などに多くのリソースを割
かれてしまう中で、あのクオリティで出せたのは、比較的満足しています。
そして、ここで言いたいのは、言語以外で価値を出すことが、異国の地で戦う
ために重要だと言うことです。僕の WEB サイトのクオリティを見て、
「作り方
を教えて欲しい!」と友達が言ってくれたり、先生から、
「このことに関しては
どう思う?」と意見を尋ねられたり、価値を出すことで求められるきっかけを
作ることができるのです。
まとめます。
この「自分の価値は何なのか?」というシビアな問いに対しては、やはり真剣
に向き合っていかないといけないし、これがクリアになるのが留学の醍醐味だ
と思っています。もちろん友達の作り方なんて多様だと思いますが、こうやっ
て自分の価値を相手に提供しながら、関係を作っていくことも友達の作り方の
一つだと思っています。だからこそ、これから留学を志す子や、今留学をして
いる子達は、こういうことに気をつけて準備や、留学生活を送るといいのかも
しれないと思います。
残り一ヶ月弱となりますが、よろしくお願い致します。