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146
日本写真学会誌 2007 年 70 巻 3 号:146–180
特
集
2006 年の写真の進歩
技術委員会
進歩レビュー分科会
2006 年の写真の進歩は,一昨年に引き続き技術委員会の進歩レビュー分科会が担当します.本学会の技術委員会は各研究会の
独自の研究活動とともに,年次大会の実行委員および本レビューを担当し,日本写真学会の中核として活動しております.本レ
ビューは現在の写真技術の実態に即した分野のレビューを目指したものです.しかし,技術委員会でカバーできない分野につき
ましては外部の方にお願いしました.本レビューの分類と担当研究会,執筆者は次の通りです.レビュー全体は最小限の統一性
をもたせましたが,内容については各分野,各執筆者を尊重しました.
2006 年は写真の分野では,激動の年であり一部の事業からの撤退や名称の変更等がありました.この変化に伴って社名の変更
があり,本来ならば変更時の前後でこの同期を取る必要がありますが,この変更が該当部分のレビューの内容に影響を及ぼさな
い部分については,レビュー内での名称の一致を優先し新しい名称に統一させていただきました.
1.
写真産業界の展望 ・・・・・・・・市川泰憲
2.
銀塩感光材料
2.1
146
理論および技術
9.
科学写真
9.1
3D 表示 ・・・・・・・・・・・・・・・ 科学写真研(久保田敏弘)
169
9.2
文化財 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 科学写真研(城野誠治)
170
・・・・・・・・・光機能性材料研(久下謙一,大関勝久)
157
9.3
天体写真 ・・・・・・・・・・・・・・ 科学写真研(山野泰照)
171
2.2
感光材料用結合素材 ・・・・・ゼラチン研(大川祐輔)
160
10.
画像入力(撮影機器)・・・ カメラ技術研(長
倫生)
172
3.
光機能性材料 ・・・・・・・・・・・・光機能性材料研(共編)
161
11.
画像出力
4.
画像評価・解析 ・・・・・・・・・・画像評価研(藤野
真)
162
11.1
プリンタ ・・・・・・・・・・・・・ 画像評価研(藤野
真)
174
5.
分光画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・分光画像研(羽石秀昭)
163
11.2
印刷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 小関健一
175
6.
画像保存
12.
写真芸術 ・・・・・・・・・・・・・・ 西垣仁美
176
13.
写真家から見た画像技術の進歩
14.
工業規格 ・・・・・・・・・・・・・・ 甘利孝三
6.1
6.2
画像保存関連技術 ・・・・・・・画像保存研(金沢幸彦)
165
展示・修復・保存関係 ・・・画像保存研(山口孝子)
166
7.
映画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内山高夫
167
8.
医用画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・松本政雄
168
本レビューは主に写真,画像に関する表 1 に示す学術雑誌,
表 2 に示す学会等の催しの発表から各分野での進歩をまとめ
たものです.本文中では表中に示したような略称が用いられ
ています.表にないものについては,本文中に略称を用いず
に記してあります.
組織名,所属については,一般的に広く使われている略称
が用いられています.
2006 年中に発表されたものについては年号が記されてい
ません.今年度もここで引用された文献リストを作成し,本
文とともに電子情報として日本写真学会のホームページに掲
載します.有用にご利用ください.
内田孝幸(東京工芸大学)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 表現と技術研(矢部國俊)
178
179
表1 「2006年の写真の進歩」
で引用した主な学術雑誌およびその略号
日写誌
JSPSTJ
JIST
:
日本写真学会誌
:
:
日本写真学会誌(英文論文)
Journal of Imaging Science and Technology
JPST
:
Journal of Photopolymer Science and Technology
ISJ
:
Imaging Science Journal
光学
:
光学
日画誌
日印誌
:
:
日本画像学会誌
日本印刷学会誌
色材
:
色材協会誌
情報メ誌
SMPTE
:
映像情報メディア学会誌
SMPTE Journal
写真工業
PSPIE
:
:
写真工業
Proceedings of SPIE
医画情誌
:
医用画像情報学会誌
:
1. 写真産業界の展望
市川泰憲(写真工業出版社)
本の写真産業界にとっては過去に例がないほどの激震に見舞
われた年であった.前年 2005 年には京セラが 1983 年にヤシ
1.1 概況
カから引き継いだカメラ・光学事業を撤退したのに対し,コ
2006 年は,年頭の 1 月 19 日にコニカミノルタがカメラお
ニカミノルタは,2003 年に両社が合併する以前からのそれぞ
よび写真感光材料事業からの撤退を表明したことにより,日
れ歴史ある企業の創業事業を終了するというのだから根本的
2006 年の写真の進歩
147
表 2 「2006 年の写真の進歩」で引用した主な学会等の催しおよびその略号
日本写真学会主催のもの
日写春
80 周年
光機能
: 光機能性材料セミナー(6/14)
,東工大
サマーセミナー
: サマーセミナー(8/24 ~ 8/26)
,湘南国際村
画像保存
: 画像保存セミナー(11/2)
,東京都写真美術館
カメラ技術
: カメラ技術セミナー(11/17)
,発明会館
日写秋
: 日本写真学会秋季研究報告会(12/6)
,東工大
: デジタル写真基礎講座(10/17 ~ 10/18)
,東京工芸大中野
デジタル
他学会主催のもの
: 日本写真学会年次大会研究発表講演会(6/2 ~ 6/3),千葉大
: 80 周年記念講演会(6/3),千葉大
ゼラチンシンポジウム : 第 12 回ゼラチンシンポジウム(12/6)
,東工大
NIP22
: International Conference on Digital Technolgies 22 (9/19–20, 2006), Denver, Colorado
SPIE
: IS&T/SOIE 8th International Symposium on Multispectral Color Science (1/15–19,
2006), San Jose, California
JIST
CGIV
CIC
ICIS’06
: Journal of Imaging Science and Technology 50 (2006)
: Proc. of The Third European Conference on Colour in Graphics, Imaging and Vision
(2006)
: Proc. of 14 Color Imaging Conference (11/6–10), Scottsdale, Arizona (2006)
: International Congress of Imaging Science 2006
に異なった流れといえるだろう.ヤシカは京セラという企業
表3
を得て合併から撤退まで 22 年間事業を継続することができ
総出荷の状況(経済産業省化学工業統計に基づく)
品
たわけだ.それに対し,コニカミノルタは合併に伴い次のス
目
テップとして,わずかな時間経過で自ら事業を終息させたの
X 線用フィルム
だから事情は異なることになる.それは,見方を変えればコ
印刷・業務用フィルム
平成18年数量
(千 m2)
前年比
(%)
平成18年金額
(百万円)
129,264
105
100,186
86,361
100
37,738
ンシューマー写真事業からの撤退であり,コンシューマー向
白黒フィルム計
215,625
103
137,924
けの事業を持たない画像情報機器企業としての再スタートと
映画用フィルム
31,771
29,657
117
75
18,650
43,443
29,279
75
41,271
378
61
2,172
1,195
62
11,180
1,124
63
9,711
71
43
1,469
3,267
73
11,017
65,890
90
84,290
281,515
99
222,214
いうことになるのだろう.
一方で,これらの動きを受けて,2006 年はソニー,松下電
器産業など,いわゆる家電メーカーが一眼レフカメラ事業に
参入したことだ.前者はコニカミノルタから技術ならびに人
的な資産を引き継いで,後者はフォーサーズというデジタル
カメラの新規格での参入であり,共同開発企業としてのオリ
ンパスとの関係は無視できない.わずか数年前デジタルカメ
ロールフィルム
内 35 mm など
内 24 mm
レンズ付フィルム
内 35 mm など
内 24 mm
その他フィルム
カラーフィルム計
ラが今日の隆盛を迎える過程で,コンパクトカメラは電気
フィルム計
メーカーの参入があっても,一眼レフは既存のカメラ・光学
白黒印画紙計
機器メーカーならではのものといわれていたが,カメラ・光
カラー印画紙計
学機器メーカーとの関係においてスタートした家電 2 社の一
印画紙計
眼レフカメラはどのようなポジションを得るのか,今後のカ
写真感光材料計
メラ産業の展開として大いに注目される.
同様な事例は,写真と密接な関係にある複写機,ビデオカ
メラなどにも見ることができる.日本における複写機工業は
オリエンタル写真工業に始まり,その発展過程においてカメ
3,587
85
5,374
294,050
105
56,982
297,637
105
62,356
579,152
102
284,570
2
(注)レンズ付フィルムの m 表示について
経済産業省化学工業統計及び財務省貿易統計では,
「レンズ付フィル
ム」は本数で表示されている.本稿(表 3 ~ 5)では他の製品と統一
的に見るため,代表サイズで m2 換算してある.
(写真感光材料工業会提供)
ラ・光学機器メーカーに加え多くの電気メーカーが参入し,
時間の経過とともに今日の地位をキヤノン,リコー,コニカ
ミノルタ,富士ゼロックスなどが得ている.一方民生用のビ
以上のようなことを踏まえて,1996 年に発表・発売された
製品ならびに関連企業の動きを紹介してみよう.
デオカメラは,家電各社の分野に対し,ほとんどのカメラ・
1.2
光学機器メーカーがある時期参入したが,現在残っているの
1.2.1 統計
はキヤノンだけで,その電気メーカーも極めて限られた企業
①銀塩感光材料
に収れんしている.
表 3 ~ 5 に 2006(平成 18)年 1 月から 12 月までの銀塩写
工業生産
いずれにしても,写真産業をどのように位置づけるかは時
真感光材料に関する総出荷,輸出,輸入の状況を示す.総出
代に応じた技術構成によって変わることになるが,写真の画
荷は経済産業省化学工業統計,輸出と輸入は財務省貿易統計
像品質と大きく関連しているだろうと考えている.
を基に写真感光材料工業会が算出したものである.
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
148
表4
品
輸出の状況(財務省貿易統計に基づく)
目
表5
平成18年数量
(千 m2)
前年比
(%)
平成18年金額
(百万円)
73,239
116
32,768
X 線用フィルム
前年比
(%)
X 線用フィルム
平成18年金額
(百万円)
95
6,635
118,773
19,245
102
10,536
151,541
白黒フィルム計
30,365
99
17,171
映画用カラーフィルム
3,951
107
1,847
ロールカラーフィルム
レンズ付フィルム
514
691
72
70
1,500
6,224
その他フィルム
774
112
1,767
203,410
101
276,649
105
映画用フィルム
29,052
116
16,761
ロールフィルム
21,880
29
81
161
29,146
232
588
82
4,435
カラーフィルム計
平成18年数量
(千 m2)
11,120
白黒フィルム計
その他フィルム
目
印刷・業務用フィルム
印刷・業務用フィルム
レンズ付フィルム
品
輸入の状況(財務省貿易統計に基づく)
カラーフィルム計
51,549
97
50,574
5,930
98
11,338
フィルム計
328,198
104
202,115
フィルム計
36,295
99
28,509
白黒印画紙計
2,365
129
526
白黒印画紙計
269
73
127
166,010
112
27,774
16,512
78
2,372
カラー印画紙計
印画紙計
168,375
112
28,300
写真感光材料計
496,573
106
230,415
カラー印画紙計
印画紙計
16,781
78
2,499
写真感光材料計
53,076
91
31,008
(写真感光材料工業会提供)
表6
(写真感光材料工業会提供)
スチルカメラ等生産出荷実績表
上段:数量(個)
,下段:金額(千円)
生
区
分
FP カメラ
LS カメラ
中・大判カメラ
スチールカメラ計
35 mm 用レンズ
デジタル専用レンズ
一眼レフ用交換レンズ計
その他交換レンズ
カメラ用交換レンズ計
累計
1~12月
産
総出荷
前年同期比
(%)
累計
1~12月
国内出荷
前年同期比
(%)
累計
1~12月
輸
前年同期比
(%)
累計
1~12月
出
前年同期比
(%)
227,655
43.9
230,732
42.5
25,259
45.0
205,473
42.2
3,977,668
55.4
4,102,271
42.7
1,097,677
40.7
3,004,594
43.5
1,308,119
28.5
1,400,987
29.0
100,827
41.5
1,300,160
28.3
3,271,931
27.7
4,070,136
28.8
679,243
41.8
3,390,893
27.1
3,854
66.0
4,822
60.7
2,065
61.1
2,757
60.4
373,124
71.8
622,204
65.9
249,138
71.7
373,066
62.5
1,539,628
30.1
1,636,541
30.4
128,151
42.4
1,508,390
29.7
7,622,723
39.1
8,794,611
35.6
2,026,058
43.4
6,768,553
33.8
3,322,579
92.4
3,304,041
93.1
464,853
82.4
2,839,188
95.1
77,580,034
114.0
105,903,509
118.1
16,135,151
96.0
89,768,358
123.2
5,634,311
153.1
5,446,426
155.8
614,861
141.8
4,831,565
157.8
83,058,817
200.7
92,972,831
194.1
13,987,657
183.8
78,985,174
196.0
8,956,890
123.1
8,750,467
124.2
1,079,714
108.2
7,670,753
126.9
160,638,851
146.8
198,876,340
144.6
30,122,808
123.4
168,753,532
149.2
17,093
155.5
19,964
104.4
6,689
68.0
13,275
142.9
1,074,782
179.5
1,546,988
126.4
409,938
67.6
1,137,050
184.0
8,973,983
123.1
8,770,431
124.2
1,086,403
107.8
7,684,028
126.9
161,713,633
147.0
200,423,328
144.4
30,532,746
122.0
169,890,582
149.3
(注)カメラ用交換レンズには交換式の標準レンズを含む.(24 ミリ専用交換レンズを除く)
このうち,すべての分類を総出荷のベースでみると,印刷・
業務用フィルムが前年並みとなっているが,印刷分野におい
(カメラ映像機器工業会統計より)
ないかと考えられる.
同様に,映画用フィルムとカラー印画紙が伸ばしている.
てはフィルムレスで刷版を作る CTP(Computer To Plate)印
特に映画用フィルムは 2005(平成 17)年は前年度比 121%で
刷がまだまだ受け入れられていない状況を示すのであろう.
あったが,2006(平成 18)年も前年度比 117%の伸びを示し
また,X 線用フィルムならびに映画用フィルムは前年に引
ているのが目に付く.映画館数は減ったものの,昨今のシネ
き続き増加している.X 線用フィルムは診断時の撮影カット
マコンプレックス方式映画館の流行によりスクリーン数の増
数との関係に加え,最終的な診断材料がまだまだフィルム画
加などが影響を与えているのだろうか.
像で行われていることなどが少なからず影響しているのでは
レンズ付フィルムとカラーフィルムの減少傾向は昨今のデ
2006 年の写真の進歩
表7
149
デジタルスチルカメラ生産出荷実績表
上段:数量(個)
,下段:金額(千円)
生
区
分
600 万画素未満
画素数区分
累計
1~12月
出
前年同期比
(%)
荷
累計
1~12月
国内出荷
前年同期比
(%)
累計
1~12月
輸出
前年同期比
(%)
累計
1~12月
前年同期比
(%)
19,459,525
43.7
20,347,501
44.2
1,782,464
31.1
18,565,037
46.0
256,504,084
34.2
301,360,619
33.2
32,458,431
24.0
268,902,188
34.9
600 万画素以上
47,901,569
48,055,746
6,151,799
41,903,947
800 万画素未満
811,899,972
1,005,253,902
145,155,168
860,098,734
800 万画素以上
デジタルスチルカメラ計
レンズ一体型
タイプ区分
産
レンズ交換式
一眼レフタイプ
10,271,408
10,578,182
1,489,918
9,088,264
334,918,625
467,743,143
66,686,489
401,056,654
77,632,502
122.1
78,981,429
121.9
9,424,181
111.6
69,557,248
123.5
1,403,322,681
110.0
1,774,357,664
113.8
244,300,088
105.1
1,530,057,576
115.4
72,403,498
121.2
73,717,388
120.9
8,706,791
110.3
65,010,597
122.5
1,152,004,603
108.1
1,436,437,557
110.7
199,036,037
102.6
1,237,401,520
112.1
5,229,004
135.5
5,264,041
138.8
717,390
130.1
4,546,651
140.3
251,318,078
119.4
337,920,107
129.4
45,264,051
117.8
292,656,056
131.4
(カメラ映像機器工業会統計より)
表8
民生用 A4 未満フォトプリンター出荷実績表
上段:数量(個)
,下段:金額(千円)
出
区
分
A4 未満フォトプリンター計
累計
1 ~ 12 月
荷
国内出荷
前年同期比
(%)
累計
1 ~ 12 月
輸
前年同期比
(%)
累計
1 ~ 12 月
出
前年同期比
(%)
2,320,492
—
594,014
—
1,726,478
—
23,295,160
—
6,378,168
—
16,916,992
—
※調査対象製品:民生用の A4 未満で,かつ PictBridge を標準搭載したフォトプリンター
(カメラ映像機器工業会統計より)
ジタルカメラの影響だと考えられるが,一方でカラー印画紙
このうち表 8 は過去に本展望には未掲載の部分であった
はデジタルカメラからのプリントがフィルムからのプリント
が,統計が 2006 年 1 月から開始され,ようやく 1 年間の実
分をカバーし,さらにカラー印画紙そのものの海外生産の見
績ができあがったので掲載することとしたが,前年度との比
直しが図られ,日本国内へ生産を集約したことなどが影響を
較は 2007 年 12 月を経過した時点でないとできない.また,
与えているのかもしれない.
ここでいう A4 未満フォトプリンターとは,Pict Bridge を標
このほか注目したいのが白黒フィルムで,2005(平成 17)
準搭載したインクジェットプリンター,昇華型プリンター等
年は前年度比 102%であったが,2006(平成 18)年も前年度
を指す.サンプリングは CIPA 統計参加企業によるものだが,
比 103%の伸びを示していることである.これは白黒フィル
すべての関連企業が参加しているわけではなく,外国企業に
ムの需要層がある程度固まったと見ることができる.
おいては国内市場にのみ限って資料提出しているものもある
一方で,最終的な写真の鑑賞形態であるプリントの素材で
ある白黒印画紙の総出荷が前年度比 85%であったことは,三
が,年度単位で見るとプリンターの市場動向がわかり,今後
は価値あるデータとなるだろう.
菱製紙の白黒印画紙からの撤退,さらにはフィルムで撮って
表 6 はスチルカメラ等すなわち銀塩フィルムカメラの生産
インクジェットプリンターで白黒出力するというような新し
出荷実績表である.FP(フォーカルプレン)カメラ,LS(レ
いプリントスタイルが静かに広まっていることと無関係では
ンズシャッター)カメラ,中・大判カメラとも前年に比べて
なさそうであるが,しかしこれはあくまでも推測の域をでて
総出荷で約 164 万台,前年比 30.4%への減少である.特に LS
ないことをお断りしておく.
カメラは 140 万台で前年同期比 29%まで大きく落ち込んでお
いずれにしても,写真感光材料総出荷が 102%と微増なが
らプラスに転じたのは明るい話題といってもいいだろう.
り,この減少傾向は今後も続くと考えられる.CIPA では今後
とも需要はあるものの,その予測は難しいということから,
②カメラ・交換レンズ・フォトプリンター出荷実績
2007 年度からは実績だけを取り扱うとしている.表 6 の内,
表 6 には 2006 年スチルカメラ等生産出荷実績表,表 7 に
一眼レフ用の交換レンズはデジタル専用が総出荷で前年度比
は 2006 年デジタルスチルカメラ生産出荷実績表,表 8 には
155.5%と大幅な伸びを見せており,レンズ交換式デジタル一
A4 未満フォトプリンター出荷実績表を示す.いずれも,カメ
眼レフカメラの好調さを示している.
ラ映像機器工業会(CIPA)統計資料からの引用である.
表 7 はデジタルスチルカメラの生産出荷実績表である.画
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
150
図1
2000 年から 2006 年の銀塩カメラとデジタルカメラの出荷推移
(CIPA より)
図2
銀塩カメラ 50 年の出荷推移(CIPA より)
素区分は昨今の大画素化に伴い,前年に見直しが図られ,大
コダックは,プロ用のカラーネガフィルムシリーズの性能
分類で 600 万画素未満,600 ~ 800 万画素,800 万画素以上
を向上させた 160VC,160NC,400VC,400NC を 9 月に発表
となったばかりである.そのために 600 万画素未満は生産が
した.VC は鮮やか,NC は自然な発色を意味し,粒状性,ミッ
減少したのではなく,高画素品へと生産がシフトしたと見る
クス光源特性,スキャニング特性を向上させたという.
のが妥当である.なお,前年同期比との比較は画素区分の変
富士フイルムは,ピールアパートタイプの黒白インスタン
更から不可能で,唯一総生産・総出荷とも前年同期比約 120
トフィルム「FP-400B SPEEDY」を 11 月に発売した.従来か
%という値が,前年よりの伸びを示していることがわかる.
らの FP-400B SUPER の後継品で,階調性,粒状性はそのま
図 1 は CIPA 発表の 2000 年から 2006 年までの銀塩カメラ
とデジタルカメラとのカメラ総出荷台数推移の統計データだ
まに,引き剥がし時間が 30 秒から 15 秒へと短縮された.価
格は 1 パック 2,037 円,20 パック 39,784 円.
が,2002 年の時点で銀塩とデジタルの出荷が逆転し,2006 年
ポラロイド SX-70 BLEND フィルム.ISO 感度 150 のポラ
では 98%がデジタルカメラになっていることを示し,急激な
ロイド SX-70 ランドフィルムは製造開始後 34 年経った 2006
デジタル化への移行を裏付けている.同様に図 2 は,銀塩カ
年の在庫をもって販売が終了された.今後も SX-70 カメラを
メラ過去 50 年間の総出荷台数をグラフ化したものだが,1997
使うためには ISO 感度 640 のポラロイド 600 フィルムと ND
年が銀塩カメラのピークで,出荷台数= 36,671 千台,出荷金
フィルターを使う必要があったが,ポラロイド 600 フィルム
額= 375,017 百万円であったが,2006 年のデジタルカメラは
カセットに ND フィルターを最初からセットして,ISO 感度
銀塩カメラのピーク時に対し,出荷台数で約 2.2 倍,出荷金
150 フィルム用の SX-70 カメラに装填したときにベストにな
額で約 4.7 倍にも達しており,急激な銀塩からデジタルへの
るように調整されたフィルムが「ポラロイド SX-70 BLEND
置き換わりが進んでいることがわかる.
フィルム」として製造販売されることになった.製造・販売
いずれにしても,デジタルカメラは新技術の導入,低価格
はポラロイド社ではなく,ポラロイド社からブランドごとラ
化などによりまだまだ需要は喚起されるだろうから,今後も
イセンスを受けたオーストリア UNVERKAEUFLICH handles
なだらかながら進展は続けていくだろうと予測される.
GmbH の社長フローリアン・キャプス氏で,日本の代理店は
1.2.2 新製品
1 パック 10 枚入り 2 本ツインパック 5,880 円.
エー・パワー社.
①銀塩写真関連
三菱製紙は,カラー印画紙の新製品「三菱グレイスカラー
〈銀塩フィルム&印画紙〉
ペーパー MG-1000 シリーズ」を 12 月に発売した.特徴は,
富士フイルムは,高感度 ISO400 のカラーリバーサルフィ
デジタル / アナログの露光適正に対応,白さとクリアさが向
ルムを常用フィルムとして使ってもらうようにと,ISO 感度
上,シャドーバランスの向上で階調が滑らか,潜像安定性が
100 並の高彩度と色再現性,RMS 粒状度 13 の「フジクロー
向上したなどである.
ムプロビア 400X」を 4 月上旬に発売した.従来品は RMS 粒
状度 11.価格は 135–24 枚撮り 1,197 円,36 枚撮り 1,575 円,
120 サイズ 1,008 円(120 の発売は秋).
〈銀塩フィルムカメラ〉
フィルムカメラの新製品は,ここ数年極端に少なくなって
しまった.唯一,フィルム供給元である富士フイルムのコン
富士フイルムは,手ぶれ,被写体ぶれに強い ISO1600・
パクトカメラとレンジファインダー機を発売するコシナだけ
シャッター速度1/200秒の135フィルムタイプのレンズ付フィ
にとどまっている.また,特殊カメラを駒村商会が 2 機種発
ルム「写ルンです1600 Hi Speed Flash27/39」を5月に発売した.
売しているが,このうち,パノラマカメラは中国市場で大変
コダックは,一般用カラーネガフィルムの名称を日本国内
はコダックマックスビューティーとしていたが,7 月から世
界統一のブランド「コダックウルトラマックス」にした.
好評をもって迎えられていると伝えられている.
富士フイルムは,高感度フィルムとの組み合わせでフラッ
シュを使わずに自然光での撮影を行える 2 倍ズーム 28 ~
2006 年の写真の進歩
151
56 mm F2.8 ~ 5.4 レンズ付きの「ナチュラクラシカ」を 3 月
できる liveMOS 搭載の「オリンパス E-330」を 2 月に発売し
に発売した.価格はオープンで推定 3 万円.またシンプル仕
た.価格はオープンで,ボディのみ推定 12 万円,14 ~ 45 mm
様の「NATURA NS」を 4 月に発売した.2 倍ズーム 28 ~
レンズ付き推定 13 万円.
56 mm F2.8 ~5.4 レンズ付き.価格はオープンで推定2.3万円.
駒村商会は,120 サイズフィルム使用の 6×17 cm 判のパノ
ラマカメラ「ホースマン 617 プロ」を 5 月に発売した.レン
ズホルダー交換式でシュナイダースーパーアンギュロン XL
富士フイルムは,5.1 Mp スーパー CCD ハニカム V HR,3 倍
ズーム付きの「フジファインピックス A500」をオープン推定
2 万円で 2 月に発売した.
ペンタックスは 2 月に PMA(Photo Marketing Association)
72 mm など 6 種類が用意されている.価格は 72 mm キットが
にてコダック社製 1.8 Mp 大型 CCD を使用する「ペンタック
898,000 円.
ス 645 デジタル」を参考展示した.
エー・パワー社は,1 つのフィルムに 3 つのピンホールの
キヤノンは,コンパクトデジタルカメラの A シリーズのエ
画像を撮影できる「ピンホールブレンダー 35」カメラを 7 月
ントリーモデル機として 4 Mp,4 倍ズーム付きの「キヤノン
に発売した.昨年 8 月に発売された 120 判フィルム用に引き
パワーショット A430」を 3 月にオープン価格,推定 1.8 万円
続くもので,35 mm フィルム用.価格は 12,600 円.
で発売.
駒村商会は,35 mm フィルムを使うステレオカメラ「ホー
オリンパスは,5 Mp CCD,3 倍ズーム付きの「オリンパス
スマン 3D」を 8 月に発売した.原型は富士フイルムのパノラ
キャメディア FE150」をオープン価格推定 2 万円で 3 月に発
マカメラ TX2 で,画面を左右 2 分割して,35 mm コンパクト
売した.
カメラのレンズを 2 個装着してパノラマとしている.AE・
AF・フィルム自動給送の全自動モデルである.
コシナは,ライカ M バヨネットマウントの広角専用カメラ
キヤノンは APS-C,8.2 Mp の一眼レフカメラ「キヤノン
EOS30D」を 3 月に発売した.従来からの EOS20D の後継機
といった位置づけで,価格はオープン,推定で 16 万円.
として「ツァイス・イコン SW」を 9 月に発売した.既存の
オリンパスは,7.1 Mp CCD,3 倍ズーム付きで,水中 3 m
レンジファインダー機ツァイス・イコンから距離計部分を省
までの防水機能と,高さ 1.5 m までの落下に耐えられるとい
略したもの.価格は 10.5 万円.
う堅牢なコンパクトデジタルカメラ「オリンパス µ 720SW」
富士フイルムは,12 月 1 日から 8,000 台と数量限定で 35 mm
をオープン価格の推定 4 万円後半で 3 月に発売した.また
コンパクトカメラ「クラッセ W」を発売した.レンズは 5 群
8 Mp CCD,3 倍ズーム付きで,内蔵のジャイロがブレの軌跡
6 枚構成の 28 mm F2.8,暗所でもフラッシュなしで撮影でき
を記録,撮影後に画像データを補正する電子手ブレ補正機能
るナチュラフォトシステムにも対応.価格は 9.5 万円(税別).
搭載の「オリンパス µ 810」を,価格オープンの推定 5 万円
②デジタルイメージング関連
〈デジタルカメラ〉
一眼レフは普及タイプで 1 千万画素超機が登場し,ボディ
で 3 月に発売した.
セイコーエプソンは,ライカ M バヨネットマウントに対応
した APS-C 判レンジファインダー機「エプソン R-D1s」を 3
内に手ブレ補正機構を内蔵させたり,価格も交換レンズを含
月 24 日に発売した.2004 年に発売した R-D1 の後継機で,
めて 10 万円をどこまで切れるかが争点となってきた.一方,
ファームウェアアップにより,クイックレビュー,RAW+
フォーサーズシステムは背面液晶から撮影画面を覗けるライ
JPEG 同時撮影,長時間露光ノイズ低減モード,AdobeRGB に
ブビュー技術を前面にだして差別化を図ろうとしている.
対応させた.
デジタルカメラは,コンパクト,一眼スタイルレンズ非レ
キヤノンは,12 倍ズームを搭載し,6 Mp CCD を採用した
ンズ交換式電子ビューファインダーカメラ,そしてライブ
一体型デジタルカメラ「パワーショット IS 3」を 4 月に発売
ビュー一眼,通常一眼レフと分類できるが,コンパクト機と
した.価格はオープンだが,推定で 5.5 万円.
一眼スタイル非レンズ交換式電子ビューファインダーカメラ
ソニーは 7.4 Mp CCD,12 倍の ズーム レン ズ と高感度
は背面液晶によるライブビュー機能をすでに持っているわけ
ISO1000 と光学式手ブレ補正機能を組み込み,最大 16 m まで
で,そのようななかで今後,一眼システムにライブビューは
の到達距離を持つ大光量ストロボを搭載した「サイバー
必須技術となるのだろうか.
ショット DSC-H5」を 5 月に発売した.価格はオープンだが
ライカカメラ社は,従来フィルムカメラの最右翼であった
ライカ M シリーズの新型「ライカ M8」をデジタルとしたこ
とが注目される.
コンパクトは,手ぶれ補正機能に加え,顔認識で AF・AE
を行うのが一般化しつつあり,一方でズーム付きで 2 万円を
推定で 6 万円.
富士フイルムは,ISO3200 相当の高感度撮影が可能なコン
パクトデジタルカメラ 6.3 Mp スーパー CCD ハニカム HR を
採用し,3 倍ズーム付きの「ファインピックス F30」を 5 月
に発売した.価格はオープンだが,推定 5 万円.
切る機種が登場したり,高感度対応,水中でも使える防水モ
ハッセルブラッド社のシュリロトレーディングは,66 判一
デル,広角から望遠までの高倍率ズーム搭載,さらには一眼
眼レフの 503CW をベースにした一体型中判デジタルカメラ
レフ並みの 1 千万画素超機が登場などと話題性も豊富だ.
オリンパスは,フォーサーズシステムの一眼レフで 7.5 Mp,
一眼レフカメラでありながら液晶モニターでライブビューの
「ハッセルブラッド 503CWD」を 5 月に発売した.撮像素子
は 36.7×36.7 mm,16 Mp,CCD.価格は 195.3 万円.また,ハッ
セルブラッド用のデジタルカメラバックとして同じ撮像素子
152
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
を採用したデジタルカメラバック「ハッセルブラッド CVF」
も発売した.価格は 178.5 万円.
FZ10」を 8 月に発売した.価格はオープンだが,推定 7.3 万円.
キヤノンは,10 Mp CCD,3 倍ズーム搭載の「IXY デジタ
ソニーはミノルタ α マウントを採用したレンズ交換式一眼
ル 1000」を推定価格 5.3 万円で発売.チタン外装,AF・AE
レフ「ソニー α 100」6 月 6 日に発表,7 月 21 日から発売し
に顔認識,高感度 ISO3200 機能を採用している.また,レン
た.α 100 は,10 Mp CCD を搭載,ボディ内手ブレ補正機構
ズシフト手ブレ補正機能の 28 mm 相当画角の 3.8 倍ズームを
と手ブレ補正機構を応用したホコリ振り払い機構を特徴とす
搭載した 7 Mp CCD の「IXY デジタル 900 IS」を推定価格 5
る.価格はオープンだが,ボディのみ推定 10 万円,18 ~
万円で発売.また,光学ファインダーを装備し,アナログ感
70 mm レンズセットが推定 12 万円.同時に交換レンズシス
覚の操作性を重視した 10 Mp CCD,6 倍ズーム付きの「パワー
テムとして,カール・ツァイスレンズ 3 本,ソニー G レンズ
ショット G7」を推定価格 6 万円で発売.外部ストロボも使用
3 本,ソニーレンズ 13 本,コンバーターレンズ 2 本が発表さ
可能で,往年の F-1 と T90 の音をサンプリングしている.さ
れた.
らに角度を自由に変えられるバリアングル液晶を搭載した 4
ニコンは,2004 年に発売された D2X の後継機として,
「ニ
倍ズーム付きで 10 Mp CCD の「パワーショット A640」
(推定
コン D2Xs」を 6 月に発売した.撮像素子は APS-C のニコン
価格 4.5 万円),8 Mp CCD の「パワーショット A630」(推定
DX フォーマットの CMOS で,12.4 Mp.JPEG モードの 8 コ
価格 4 万円)を発売した.発売時期はいずれも 9 月.
マ / 秒撮影の場合,連続 38 コマの撮影が可能などレスポンス
が向上している.価格はオープンだが推定 50 万円.
ニコンは,APS-C サイズ 10.2 Mp CCD の一眼レフ「D80」
を 9 月に発売した.価格はオープンだが,推定で 12 万円.
ニコンカメラ販売は,撮影したデジタル画像に改変や改ざ
ニコンは,スイバルデザイン採用で,6 Mp CCD,10 倍ズー
んが加えられていないか確認できる「画像真正性ソフトウェ
ム付きの「クールピクス S10」を 9 月に発売した.シャッター
ア」をニコン D2Xs 用に 6 月に発売した.価格はオープンだ
速度 2 段分の効果がある CCD シフト方式の手ブレ補正機構,
が,推定 7 万円.
顔認識による AF・AE を搭載している.価格はオープンで,
ペンタックスは,独自の手ブレ補正機構を内蔵したレンズ
推定 5 万円.
交換式デジタル一眼レフカメラ「ペンタックス K100D」を 7
キヤノンは,APS-C デジタル一眼レフ EOS Kiss Digital シ
月に発売した.手ブレ補正機能はマニュアルフォーカス式の
リーズの新モデルとして「EOS Kiss Digital X」を 9 月に発売
交換レンズにも利用可能.さらにマウントアダプターを介す
した.撮像板はキヤノン独自の CMOS で 10 Mp,普及タイプ
ることで旧型の各社 M42 レンズでも手ブレ補正を機能させ
一眼も高画素化されることになる.価格はオープンだが,推
ることができるという特徴を持っている.APS-C フォーマッ
定ボディのみで 9 万円,18 ~ 55 mm ズーム付きで 11 万円.
トで,6.1 Mp CCD.価格はオープンだが,ボディのみで推定
7.5 万円.18 ~ 55 mm レンズセットで推定 9 万円.
富士フイルムは,6.3 Mp スーパー CCD ハニカム V HR,3
ペンタックスは,7 Mp CCD,3 倍ズーム付き,水深 1.5 m
で 30 分間の水中撮影が可能なコンパクトデジタルカメラ「オ
プティオW20」を9月に発売.価格はオープンだが,推定4万円.
倍ズーム付き,顔検出機能の「顔キレイナビ」を搭載した
富士フイルムはレンズ一体型一眼レフスタイルデジタルカメ
「ファインピックス F31fd」を 11 月に発売.価格はオープン
ラ「ファインピックス S9100」と「ファインピックス S6000fd」
だが推定 4.7 万円.また同時期に,6.25 Mp スーパー CCD ハ
を 9 月に発売.S9100 は,9 Mp CCD,28 ~ 300 mm 相当画角
ニカム V HR,3 倍ズーム付きの「ファインピックス A600」
6000fd は,
6 Mp CCD,
の 10.7 倍ズーム,
価格は推定で 7.5 万円.
を発売した.価格はオープンだが推定 1.9 万円.
10.7 倍ズーム付きで,高感度 ISO3200 での撮影が可能.価格
松下電器産業はフォーサーズシステム一眼レフ「ルミック
は推定で 6 万円.
ス DMC-L1」を 7 月に発売した.撮像素子はオリンパス E-
オリンパスは,ISO6400 相当の高感度撮影が可能な 10 Mp
330 と同じ 7.5 Mp の liveMOS センサー,
レンズはライカ D バ
CCD 搭載で 3 倍ズーム付きの「µ 1000」を 10 月に発売した.
リオエルマリート 14 ~ 50 mm F2.8 ~ 3.5.価格は推定で 25
価格はオープンで,推定 4.5 万円.
万円.
ペンタックスは,10 Mp CCD を搭載したレンズ交換式デジ
ペンタックスは,7 Mp CCD,3 倍ズーム搭載のコンパクト
タル一眼レフカメラ「K10D」を 10 月に発売した.すでに発
デジタルカメラ「オプティオ S7」を 8 月に発売した.顔認識
売されている K100D の高画素機ともいえるが,デザイン的に
の AF・AE 機能組み込みで,人物の顔をきれいに撮れるのが
も高級化が施され,手ブレ補正機構,ゴミ取り機能が強化さ
特徴.価格はオープンだが推定 3.5 万円.
れ,今後予定される超音波モーターレンズの電源端子を備え
松下電器産業は,10 Mp,16:9 の CCD を搭載した,28 mm
相当画角からの 4 倍ズーム付きコンパクトデジタルカメラ
「ルミックス DMC-LX2」を 8 月に発売した.価格はオープン
だが,推定 6 万円.
ている.価格はオープンだが,推定でボディのみ 12 万円.
シグマは,CMOS センサーで色フィルターを使用しないで,
シリコンの深さ方向で RGB の 3 色を取り出せる FOVEON X3
センサーを使った「SD14」を 11 月に発売すると発表した.
松下電器産業は,12 倍の高倍率ズームに 10 Mp CCD を搭
今回の SD14 は第 3 世代の FOVEON X3 センサーで,2,652×
載し,ダイヤル・リングによるマニュアルズームとフォーカ
1,762×3 層で 14 Mp 相当の画像が撮影できる.撮影は従来
スが可能な一眼スタイルデジタルカメラ「ルミックス DMC-
RAW モードだけであったが,JPEG 記録ができるようになっ
2006 年の写真の進歩
た.光学ローパスフィルターを使用していないためシャープ
組み入れてシステムを拡充中である.
コシナはカール・ツァイス社「プラナー T * 50 mm F1.4 レ
な画像が得られる.価格はオープンだが,推定で 20 万円.
(その後発売が延期され,実際発売されたのは 2007 年の 3 月
である)
シグマは,フォトキナ 2006 にてデジタル一眼レフ SD14 と
153
ンズ」をニコン Ai-S マウント互換の ZF と M42 スクリュー
マ ウ ントの ZS を 58,800 円で 2 月 に発 売,「プラナー T
*
85 mm F1.4ZF」を 117,600 円で 4 月に発売した.フィルム・
同じ FOVEON X3 センサーを採用したコンパクトデジタルカ
デジタルに共用で使用できるというもので,MF という条件
メラ「DP1」を参考展示した.発売時期,価格は未定だが,
はあるものの,ニコンのボディにカール・ツァイスのレンズ
高画質コンパクトカメラとして注目を集めている.
が使えるというわけで好評に受け入れられた.
ライカカメラジャパンは,フォーサーズシステムを採用し
宮崎光学は35 mmレンジファインダーカメラ用の交換レン
たデジタル一眼レフカメラ「デジルックス 3」(推定 33.8 万
ズとしてライカスクリューとニコン S マウントに対応する完
円)を 10 月に発売した.7.5 Mp の live MOS センサーを使用,
全ゾナータイプの交換レンズ「MS-MODE S 50 mm F1.3」を
パナソニック Lumix DMC-L1 と同等品で,レンズは「ライカ
200 本 2 月から限定生産予約販売した.価格は 10 万円.
D バリオエルマリート 14 ~ 50 mm F2.8 ~ 3.5ASPH.」.
オリンパスは,水深5 mまでの防水機能を備えた
「µ 725SW」
ニコンは,マクロレンズに手ブレ補正機能を付けた「AF-S
VR マイクロニッコール ED105 mm F2.8G(IF)」を 3 月 24 日
を 11 月に発売した.3 倍ズーム付き 7.1 Mp CCD,レンズ表
に発売した.画面サイズはフルサイズに対応.価格は 124,950
面に付着した水滴を簡単に拭き取れる撥水コートも施されて
円.
いる.価格はオープンだが,推定 4.7 万円.
シュリロトレーディングは,画面サイズ 48×36 mm で,
シグマは,従来からの DC(デジタル APS-C 用)並びに DG
(デジタルフルサイズ用)シリーズをフォーサーズ一眼レフシ
22 Mp と 39 Mp の 2 モデルをそろえた「ハッセルブラッド
ステム用とした,「アポ 50 ~ 500 mm F4 ~ 6.3EX DG HSM」
H3D」を 11 月に発売した.バック交換でフィルム撮影も可能
価格 173,250 円・6 月発売,「30 mm F1.4EX DC HSM」価格
だが,新たな機能として,ウルトラフォーカス機能によりレ
57,750 円・8 月発売,
「アポマクロ 150 mm F2.8EX DG HSM」
ンズやセンサーの特性に合わせ絞り値の違いによるフォーカス
価格 103,950 円・9 月発売,
「マクロ 105 mm F2.8EX DG」価格
の微妙なずれを補正したり,デジタル APO 補正ではレンズ特
68,250 円・9 月発売,「18 ~ 50 mm F2.8EX DC」価格 73,500
性に合わせて 1 ショットごとに自動的に色補正,歪曲補正を
円・11 月発売の 5 本を加え,合計 10 本のラインナップとした.
かけることもできる.価格は H3D22:3,727,500 円,H3D39:
462 万円,ウエストレベルファインダー 50,400 円.
ニコンは,6.1 Mp CCD,APS-C フォーマットで小型・軽量
コシナはレンジファインダーカメラのツァイス・イコン用
に「カール・ツァイス C ゾナー T * 50 mm F1.5ZM」を発売
した.C はクラシックの意味.価格は 110,250 円.
のデジタル一眼レフ「D40」をボディのみ推定 6 万円,18 ~
シグマは大口径望遠ズームとして「シグマアポ 70 ~ 200
55 mm レンズ付きセットを 7 万円で 12 月に発売.従来から
mm F2.8EX DG HSM」を発売した.SLD,ELD ガラスを採用
のボディ内モーターを廃し,AF 撮影を行おうとすると,レ
し,軸上,倍率の色収差を補正.最短 100 cm,1 : 3.5 の撮影
ンズ内に駆動源をもつ D/G タイプに限定し,小型・軽量化と
が可能.価格は 162,750 円.
低価格化を達成している.
コシナは,ドイツのカール・ツァイス社で製造される「ゾ
ライカカメラジャパンは,レンジファインダーライカのデ
ナー T * 85 mm F2ZM」を 6 月に発売開始した.ライカ M バ
ジタル機として「M8」を 12 月に発売した.光学ローパスフィ
ヨネットマウントと共通のレンジファインダーカメラ「ツァ
ルターは省略されており,撮像素子はコダック製 APS-H サイ
イス・イコン」用の交換レンズだが,発表時から発売が延び
ズの 1,030 画素 CCD で,ライカ判 24×36 mm に対して,1.33
ていた.価格は 25 万円.フード 1.2 万円.
倍焦点距離相当の画角となる.M8 の発売に伴い,交換レン
シグマは,APS-C 画面サイズデジタル一眼レフに使用する
ズにはビネッティングコントロールを電気的に行う6 bitコー
と 105 mm 相当の画角となる 35 mm フルサイズ対応の「シグ
ドが付加され,ボディ側で検出するが,既存のレンズもその
ママクロ 70 mm F2.8EX DG」を 8 月に発売した.SLD ガラス
まま問題なく使える.価格はボディのみで,577,500 円.ま
により色収差を補正.価格は 94,995 円.
た,M8 発売とともに,エルマリート M28 mm F2.8ASPH.
(価格
シグマは,35 mm 判で 180°の円周画像が得られる「シグマ
179,550 円)とトリエルマー M16-18-21 mm F4(価格 427,350
8 mm F3.5 EX DG サーキュラーフィッシュアイ」レンズを 8
円,専用ファインダー 96,600 円)が発売された.
月に発売した.被写体の立体角と画面上の面積が比例関係に
〈交換レンズ〉
デジタル一眼レフの伸張に支えられ,交換レンズのデジタ
なる等立体射影方式を採用しているので,学術用途での使用
が可能.価格は 89,250 円.
ル対応化はほぼ一巡した感がある.一方で,一部メーカーか
トキナーは,ペンタックスと共同開発によるズーム式の対
ら高級マニュアルフォーカスレンズがわずかずつラインナッ
角魚眼レンズ「トキナー AT-X107DX フィッシュアイ(AF10
プされている.デジタル専用には,ズーム倍率約 14 倍とい
~ 17 mm F3.5 ~ 4.5)
」を 9 月に発売した.撥水・撥油性の高
う高倍率のものも発表された.またデジタル専用に開発され
い WR コートが施されている.価格は 86,100 円.
たフォーサーズ一眼レフシステムは,交換レンズメーカーを
キヤノンは,非球面レンズを 1 枚使用した大口径単焦点標
154
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
準レンズとして「EF50 mm F1.2L USM」を 11 月に発売と発
処理量の店舗を対象として Dry to Dry で 1 分 22 秒という超
表した(2007 年 1 月に発売延期).価格は 194,250 円.また,
迅速処理を達成し,デジカメプリント L 判 24 枚なら 2 分 47
同時 期 に蛍 石 1 枚,UD レ ン ズ 2 枚 を 使 用 し た「EF70 ~
秒の高速処理が可能で,注文を受けたその場で渡せるサービ
200 mm F4 L USM」を 11 月に発売.価格は 165,900 円.
スを可能としている.発売は 7 月.システム価格は 1,306 万
シグマは,フォトキナ 2006 にて,デジタル一眼専用大口
5 千円(税別).
径ズーム「18 ~ 50 mm F2.8EX DC マクロ」(発売 10 月,価
エプソンは,8 色光沢顔料タイプインクを採用したインク
格 63,000 円),手ブレ補正機構を搭載したデジタル一眼専用
ジェットプリンターで A3 機「PX-G5100」
(価格オープン,推
レンズ「18 ~ 200 mm F3.5 ~ 6.3DC OS」
(35 mm 判フルサイ
定 6 万円後半)と A4 機の「PX-G930」(価格オープン,推定
ズで 28 ~ 300 mm 画角相当)を発表した.また,フォーサー
4 万円後半)を 2 月から発売した.
ズシステム用に従来からのレンズ24 mm F1.8EX DGアスフェ
富士フイルムは,インクジェットペーパー画彩シリーズに,
リカルマクロ(63,000 円),アポ 135 ~ 400 mm F4.5 ~ 5.6DG
従来からの Pro に加え,スタンダードの「写真仕上げ Hi」と
(81,900 円)
,アポ 300 ~ 800 mm F5.6EX DG HSM(892,500 円)
エコノミータイプの「写真仕上げ Value」を 2 月に追加した.
と 18 ~ 50 mm F2.8EX DC マクロを発表したが,発売は未定.
タムロンは,フォトキナ 2006 にて APS-C デジタル一眼専
サイズは L ~ A3 まで,価格はいずれもオープン.
エプソンは 6,400 dpi の解像度を持つフラットベッドス
用ズームとして約 14 倍の「AF18 ~ 250 mm F3.5 ~ 6.3Di II
キャナー「GT-X900」を 3 月に発売.A4 までの反射原稿の他,
LD」を参考展示.35 mm 判相当 28 ~ 450 mm 相当の画角が
35 mm ~ 8×10 インチまでの透過原稿に対応.35 mm ~ブ
得られる.
ローニーフィルムまでは専用レンズを採用し高画質化を目指
オリンパスは,フォサーズ用に ED ガラスを使用して高画
質化を達成し,小型・軽量化を図った標準ズームとして「ズ
イコーデジタル ED40 ~ 150 mm F4 ~ 5.6」を 11 月に発売し
た.価格は 39,270 円.
松下電器産業は,フォーサーズシステム一眼レフ L1 とセッ
す.ゴミ・キズをとる Digital ICE 機能を搭載.価格はオープ
ンで,推定 4 万円後半.
キヤノンは家庭用インクジェットプリンター“ピクサスシ
リーズ”として A3,A3 ノビ出力に対応した複合機「MP830」
(9,600×1,200 dpi,Fax 機能付き,推定 5 万円),
「MP450」
(4,800
ト販売しかしなかった「ライカ D バリオエルマリート 14 ~
×1,200 dpi,推定 2 万円),シングルプリンターの「iX5000」
50 mm F2.8 ~ 3.5ASPH.」をレンズ単体で 12 月から発売する
(A3 ノビ対応,推定 4 万円),
「iP5200」
(A4,無線 LAN 対応,
ことになった.価格は 157,500 円.
〈プリンター&スキャナー〉
推定 3 万円),「iP2200」(低価格 A4,推定 1.1 万円)を 3 月
に発売した.
デジタル時代のプリンター技術は,大きく分けると銀写真
ノーリツ鋼機は,新開発エンジンを搭載したコンパクトミ
プリントお店プリント用のミニラボ機,家庭・業務用途のイ
ニラボの低価格機「QSS-3501i」を 4 月から全世界で発売し
ンクジェットプリンターに大別できる.ミニラボ機は店頭で
た.本機は富士フイルムとのフォトフィニッシング分野で提
待っている間に処理を可能とした超迅速機の登場.インク
携した第 1 弾となるもので,超迅速処理薬品フジカラーシン
ジェットプリンターは,業務・家庭用とも顔料インクタイプ
プルイット E(CP-49E)に対応できるのが特徴.処理能力は
の登場が目に付く.顔料タイプは,耐候性が高いとされてい
フィルム / デジカメプリントとも L 判で毎時約 600 枚,解像
るが,鮮やかさと光沢プリントという点では,染料タイプに
度は 300×300 dpi.
比べるといまひとつで,今後の課題となる.一般ユーザーレ
キヤノンは,12 色顔料インクシステムを採用し,A2 サイ
ベルではフィルムで撮影してインクジェットプリンターで黒
ズまでの大型出力を可能としたインクジェットプリンター
白出力するのが広まりつつある.その点において,フィルム
「imagePROGRAF iPF5000」を 4 月に発売.価格は 24 万円.
画像をデジタルデータにするフィルムスキャナーが反射原稿
キヤノンは,A3 ノビ,半切サイズの出力ができるインク
との兼用機である安価なフラットベットスキャナーに依存す
ジェットプリンター「キヤノンピクサス Pro 9000」と「キヤ
る時代となりつつある.
ノンピクサス Pro 9500」を発売すると 2 月に発表.Pro 9000
ノーリツ鋼機は,2 月 26 日に開催された PMA2006 にて
(価格オープン,推定 6 万円)は 8 色染料インクタイプ,Pro
「QSS-3501/3502」コンパクトデジタルミニラボ機を出展し
9500(価格オープン,推定 8 万円)は 10 色顔料インクタイ
た.両機種とも 300×600 dpi レーザーエンジンを搭載し,標
プである.写真サイズを大幅に取り入れ,モノクロ出力も視
準で 610 mm までの長尺プリントに対応.処理能力は 135 フィ
野に入れたモデル.なお,Pro 9000 は 9 月に発売,Pro 9500
ルム,デジカメプリントとも QSS-3501 は L 判相当約 600 枚,
はその後 2007 年 5 月まで発売が延期された.
QSS-3502 は約 1,090 枚.また,米国市場向けにコダックケミ
キヤノンは,最大 60 インチ幅の用紙に対応した 12 色顔料
カルの超迅速処理のみに対応したフィルム,デジカメプリン
インクシステム「imagePROGRAF iPF9000」
(7 月発売,199.8
トとも 毎 時 約 2,400 枚 の 処理 能 力 を 実 現 し た「QSS-3412
万円),染料インクに顔料マットブラックのインクを加えた 5
Digital」も発表した.
色インクシステムで,最大 A0 の「imagePROGRAF iPF700」
富士フイルムは,PIE2006 にてフルデジタルミニラボの第
(6 月発売,39.8 万円),最大 A1 ノビの「同 iPF600」(4 月発
2 世代機として「フロンティア 550E」を出品した.標準的な
売,27.8 万円),最大 A2 ノビの「同 iPF500」
(5 月発売,19.8
2006 年の写真の進歩
万円)を発売した.
155
富士フイルムイメージングは,2 月 1 日からプロ用カラー
キヤノンは,フラットベッドスキャナーを 9 月に新モデル
ネガフィルム,黒白フィルム,黒白印画紙,黒白薬品の出荷
に一新した.4,800 dpi・48 ビット入力の「キヤノスキャン
価格を需要の減少,主要原材料の高騰などの理由から値上げ
8600F」,「キヤノスキャン 4400F」,コンタクトイメージセン
した.
サー仕様で 4,800 dpi の「キヤノスキャン LiDE600F」と 2,400
日本カメラ博物館は 2 月 7 日から 6 月 18 日まで「ペンタッ
dpi の「キヤノスキャン LiDE70」の 4 機種.8600F は 35 mm
クス展」を開催した.副題は“独創技術の玉手箱”クイック
フィルム 12 コマの連続スキャンとブローニー6×22 cm まで,
リターンミラー,TTL-AE など数々の新技術を開発したペン
4400F と LiDE600F は 35 mm フィルム 6 コマのスキャンがで
タックスらしいタイトルであった.
きる.価格はいずれもオープンだが,推定で 8600F は 2.5 万
写真関連 4 団体(カメラ映像機器工業会,写真感光材料工
円,4400F は 16,000 円,LiDE600F は 2 万円,LiDE70 は 1 万円.
業会,日本カラーラボ協会,日本写真映像用品工業会)主催
キヤノンは,ピクサスインクジェットプリンター 2006 年
による「PIE2006」が,3 月 23 日から 26 日まで東京・有明の
秋モデルとして,複合機「MP960」A4・7 色インク,推定価
東京ビックサイトにて開催された.世界 17 カ国から 150 社
格 3.6 万円,
「MP810」A4・5 色インク,推定 3.6 万円,
「MP600」
(850 小間)が参加,展示にあわせて多彩なセミナーが行われ
A4・5 色インク,推定 28,000 円,
「MP510」A4・4 色インク,
推定 23,000 円,「MP460」A4・4 色インク,インクジェット
プリンター単能機「iP6700D」A4・6 色インク,推定 3 万円,
た.来場者は目標の 10 万人を上回る 103,825 を記録.
コニカミノルタは,カメラ事業ならびに写真事業の終了に
伴い,3 月 8 日,証明写真関連事業を行うコニカミノルタア
「iP4300」A4・5 色インク,推定 1.8 万円,
「iP3300」A4・4 色
イデーイメージングと写真関連商品の国内販売会社であるコ
インク,推定 1.3 万円,
「iP1700」A4・4 色インク,推定 1 万
ニカミノルタマーケティングを大日本印刷(DNP)へ譲渡す
円,「mini260」はがき・4 色,推定 2 万円,「mini220」はが
ると発表した.
き・3 色,推定 1.6 万円を,10 月に発売した.
富士フイルム,イーストマン・コダック,コニカミノルタ
エプソンは,カラリオインクジェットプリンターの 2006 年
PI は,新世代のデジタル画像管理規格「EVERPLAY」を 3 月
秋モデルとして複合機「PM-T990」A4・6 色インク,推定 5
に発表,無償ライセンスプログラムの提供を開始した.この
万円後半,「PM-A970」A4・6 色インク,推定 4 万円後半,
規格は 2004 年 9 月から 3 社が策定に取り組んできた「PASS
「PM-A920」A4・6 色インク,推定 3 万円後半,「PM-A820」
(仮称)」規格を完成,正式化したもの.詳細は,http://www.
A4・6 色インク,推定 2 万円後半,
「PM-A720」A4・4 色イン
ク,推定 1 万円後半,インクジェットプリンター「PX-5800」
everplay-spec.org/ を参照のこと.
富士フイルムとノーリツ鋼機は,フォトフィニッシング分
A4・4 色インク,推定 2 万円後半,「PX-5800」A2・9 色イン
野において「お店プリント」の拡大を目指してグローバルに
ク,価格 198,000 円,
「PM-D870」A4・6 色インク,推定 2 万
提携していくことで 3 月 13 日に合意した.
円前半,
「PM-G4500」A3 ノビ・6 色インク,推定 3 万円後半,
「PM-G850」A4・6 色インク,推定 1 万円後半を 10 ~ 11 月
に発売した.
キヤノンは 44 インチ幅の用紙に対応した 12 色顔料インク
の大型インクジェットプリンター「imagePROGRAF iPF8000」
を 11 月に発売した.価格は 64.8 万円.
1.3
企業・団体・人の動き
三菱製紙は,GEKKO ブランドの白黒印画紙,処理剤を安
定した品質の生産が行えないとの理由により,3 月をもって
製造を終了した.月光の発売は 1950(昭和 25)年で,半世
紀以上にわたる歴史に幕を閉じたことになる.三菱カラー印
画紙は引き続き製造・販売される.
キヤノン販売は,従来からのハードウェア依存の卸売業か
ら情報サービス企業へと経営の変革を図ってきたことによ
キヤノンは,EOS シリーズの交換レンズである EF レンズ
り,実情と社名がそぐわなくなってきたということから,社
を,1987 年の開始以来,累計製造本数が 1 月で 3,000 万本を
名を「キヤノンマーケティングジャパン株式会社」に 4 月 1
達成したと発表.超広角から超望遠,特殊レンズを含め 60 種
日より変更した.
類近くがラインナップされている.
ソニーは,コニカミノルタから譲渡されたレンズ交換式の
キヤノンは,大分県東国東郡安岐町にある大分キヤノン安
デジタルカメラの商品名を「α」に決定と 4 月 20 日に発表し
岐事業所内に急増する一眼レフ用交換レンズの生産増強を目
た.すでに 1,600 万本の交換レンズ資産を持つ α マウントシ
的とした工場棟を新たに建設する計画を 1 月に発表した.同
ステムに準拠した,新しいデジタル一眼レフシステムと交換
じ事業所内でカメラから交換レンズまでの一貫生産体制を構
レンズを夏に発売するというもの.このために新たに AMC
築し,急成長するデジタル一眼レフの需要拡大に対応させる.
(アルファ・マウント・カメラ)事業部を設置,コニカミノル
着工は 3 月,生産開始は 2007 年 5 月を予定.
コニカミノルタホールディングスは 1 月 19 日,カメラ事
タから約 170 人が移籍,大阪に事業所を設けた.
セイコーエプソンは,インクジェットプリント技法の「ピ
業,フォト事業から撤退すると発表.カメラ事業は 3 月末で
エゾグラフ」を用いて,原画が現存しない「いわさきちひろ」
終了し,デジタル一眼レフカメラの一部資産はソニーが取得
の作品をちひろ美術館と協業して復元することに成功し,3
し,
「α マウント」に準拠したデジタル一眼レフカメラを発売
月 1 日から 5 月 9 日まで,長野県・安曇野ちひろ美術館で
すると発表.
「幻のいわさきちひろ作品展―ピエゾグラフで蘇る失われた
156
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
ちひろ作品」と題して展示した.
「カメラのきむら」と「キタムラ」は 4 月 18 日,カメラの
きむらの株式をキタムラが譲り受けて 6 月末をめどに協業
し,1 年以内には「カメラのきむら」の完全子会社化を目指
すと発表した.
クと社名変更.11 月 1 日には,コダックデジタルカメラ,プ
リンター,周辺アクセサリーを含むコンシューマー写真製品
を包括的に扱う代理店契約を締結した.
時代を記録した写真原板の散逸を防ぎ,保存管理し活用を
図る目的で「日本写真保存センター設立推進連盟」が旗揚げ
富士フイルムは,4 月 12 日に神奈川県足柄郡開成町「富士
され 7 月に説明会が開かれた.連盟代表は国会議員の森山眞
フイルム先進研究所」をオープンした.この研究所は,富士
弓氏,副代表は田沼武能日本写真家協会会長.設立に当初必
フイルムグループの R&D の中核基地として位置づけられ,全
要とされる総予算は 1 億円,施設規模 3,300 m2,職員 4 ~ 6
社横断的な先端基礎研究,新規事業 / 新製品の基盤となるコ
人,として文化庁に働きかける.事務局は当面,日本写真家
ア技術開発を担当する.
協会内に設けられる.
マミヤ・オーピーは 4 月 21 日,コスモデジタルイメージ
ケンコーは,7 月 7 日付けでプロ機材専用ルートへの販売
ングへ光学機器部門の譲渡を決めたと発表した.コスモデジ
会社「株式会社ケンコープロフェッショナルイメージング」
タルイメージングは,8 月 15 日にマミヤデジタルイメージン
を設立した.新会社は従来ケー・エフ・シーが発売していた
グへと社名変更し,マミヤ・オーピーの光学機器部門が移管
ジッツオ三脚を除くバルカー製品などプロ機材の販売を引き
された.
継ぐ形でスタートした.
ライカカメラジャパンは,4 月 22 日に「ライカ銀座店」を
日本カメラ博物館は,「マミヤカメラ展-発明と工夫の歩
オープンした.ライカカメラ社の直営店としては世界初で,
み」と題して,1940(昭和 15)年に間宮精一氏と菅原恒二氏
ショールーム,販売,修理,サロンで写真展示が行われる.
等が設立したマミヤ光機製作所が手がけたマミヤシックスか
富士写真フイルムは 4 月 27 日,10 月 1 日付けで持ち株会
ら歴代主要製品 200 点のほかモックアップ,資料などを,2006
社制に移行し,社名を「富士フイルムホールディングス」に
変更し,事業子会社「富士フイルム」を設立,新会社と富士
ゼロックスを傘下にすると発表した.
年 11 月 21 日から 2007 年 3 月 4 日まで特別展を行った.
大日本印刷とコニカミノルタグループは,DNP がコニカミ
ノルタのカラー印画紙を製造する小田原サイトの土地 12,440
キヤノン(株)は,代表取締役会長兼社長の御手洗冨士雄
坪,建物,カラー印画紙の製造事業を譲受することで合意し
氏の経団連会長就任に伴い,代表取締役副社長の内田恒二氏
たと 7 月に発表した.DNP はカラー印画紙の製造を継続しな
を代表取締役社長に,御手洗冨士雄氏を代表取締役社長にす
がらその技術を活かして昇華型熱転写材料の製造を行う.ま
るとした人事を 5 月 23 日付けで発令した.内田氏は 1965 年
た,DNP は 7 月にコニカミノルタからの 2 事業の譲渡を受け
のキヤノンカメラ入社以来,カメラ畑を歩いてきた.
て「株式会社 DNP アイディーイメージング」,
「株式会社 DNP
カメラ雑誌 12 誌で構成するカメラ記者クラブは,カメラ
フォトイメージング」を設立した.コニカミノルタの小田原
グランプリ 2006 に「ニコン D200」を選定した.プロだけで
サイトは,1933 年に設置された昭和写真工業の富水工場
なくハイアマチュアを対象としながらAPS-Cデジタル一眼初
(1944 年小西六写真工業に合併)を引き継ぐ印画紙工場で
の 10.2 Mp CCD の搭載,高速起動,5 コマ / 秒の高速連写な
あった.
どレスポンスの高いカメラ機能が評価された.またカメラ記
カメラ映像機器工業会は,9 月 12 日,すでに 1 月 31 日に
者クラブ特別賞には「リコー GR デジタル」と「ツァイス・
公表した平成 18 ~ 20 年カメラ等品目別出荷見通しの見直し
イコン」が選ばれ,6 月 1 日写真の日に贈呈式が行われた.
検討を 8 月に実施.その結果,2006 年前半の実績をふまえ,
コダックは,日本国内向けカラーネガフィルムを 6 月 1 日
の出荷分から 10 ~ 17%値上げした.
当年度デジタルカメラの当初予測の前年比 4.0%増から 12.7
%増に変更.また銀塩カメラの総出荷について当初予測は前
富士フイルムは,写真事業の安定的供給と原材料の高騰な
年比 38%減であったが,前年 7ヵ月の実績では前年比 67.1%
どを理由に,6 月以降世界規模で写真感光材料の価格改定を
減となり,国内外市場とも減少傾向が顕著になったと発表し
行った.値上げ幅は主要製品で 3 ~ 20%.国内市場は 7 月 1
た.
日に実施された.
フォーサーズ規格のカメラ・交換レンズを販売するオリン
日本カメラ博物館は,6 月 27 日~ 11 月 12 日まで,「富士
パス,シグマ,松下電器産業は,3 社共同で 1 冊にまとめた
フイルム展―映像と文化の創造」を開催した.今回の展示は
「交換レンズ総合カタログ」を 10 月に発行した.フォーサー
カメラが主で,1948 年カメラ製造へ進出の時代から約 250 台
ズ規格に準拠した全交換レンズ 24 本が網羅されている.
のカメラとアクセサリー,用品,資料が展示された.展示の
コニカミノルタは,メセナ協議会が実施する「メセナアワー
期間中の 9 月 30 日には,富士写真フイルム(株)元代表取
ド 2006」において,コニカミノルタプラザの運営により,メ
締役副社長の上田博造氏による「銀塩写真システム」と「ディ
セナ大賞部門で「写真文化賞」を受賞した.51 年間にわたる
ジタル写真システム」と題した講演会が開かれた.
ギャラリー運営により,若手写真家の育成,日本の写真表現
加賀電子傘下の樫村は,コダックの写真用フィルムと印画
紙の日本における総代理店になることでコダックと合意,7
月 1 日に移管した.その後,樫村は 10 月 1 日に加賀ハイテッ
の歴史に寄与するとともに,映像文化の浸透に貢献したこと
が評価された.受賞発表は 10 月 21 日.
富士フイルムホールディングスの古森重隆代表取締役社
2006 年の写真の進歩
157
長・CEO は,2003 年から日独協会会長を務め「日本におけ
度測定に基づく単分散粒子の成長速度の解析手法を用いて,
るドイツ年 2005/2006」で多大な貢献をしたとのことから「ド
ゼラチンの物理抑制機構を検証した.不純物やゼラチンが吸
イツ連邦共和国功労勲章大功労十字章」を 11 月に受賞した.
着することで表面析出過程を抑制するという,従来の物理抑
コダックと加賀ハイテックは,コダクローム 64 とコダク
制機構は妥当であるとした(日写春,88).
ローム 64 プロフェッショナルの国内処理設備のサポート維
杉本(東北大)は,光機能性単分散ナノ粒子のサイズ形態
持が困難になったことから,在庫がなくなり次第日本国内で
制御という観点から,単分散ナノ粒子のサイズと形態制御の
の販売を終了すると 12 月に発表した.国内処理は 2007 年 12
一般原理を概観し,単分散塩化銀ナノ粒子のマイクロエマル
月 20 日受付分をもって終了,以後は米国で行われる.
ジョン中での合成等を解説した(日写誌,69(2),97).
日本ポラロイド社は,国内市場でのデジタル家電参入商品
Duenkel ら(Berlin 応用科学大学)は,ホログラム撮影用
第 1 弾として,地上デジタル放送に対応したワイド液晶テレ
として開発された超微粒子乳剤である DESA 乳剤の技術的特
ビ 2 機種(32 型と 20 型)を家電量販店のコジマから 12 月に
徴について概観した(Proceedings of SPIE,6136,F1-F8).
日笠ら(林原生物化学研究所)は,保護コロイド能を付与
発売した.
ペンタックスと HOYA は,2007 年 10 月 1 日をもって合併
企業統合するということで合意したと,12 月 21 日に発表し
た.
(その後,合併企業統合に反対する動きがペンタックスサ
した両荷電性プルラン誘導体を合成し,ゼラチンの代わりに
用いたときの乳剤調製について報告した(日写春,52).
2.1.3 物性
久下謙一(千葉大学)
イドに起こり,ペンタックス代表取締役社長浦野文夫氏が退
任するなど,4 月末日現在合併の詳細は不確定である)
1.4
占部ら(東京工芸大,富士フイルム)は,転位と乳剤調製,
写真特性との関係についての研究を,結晶構造の観点からま
終わりに
本稿を執筆するにあたり,感光材料,カメラ等はそれぞれ
の工業会の資料から,新製品,業界の動向は月刊「写真工業」,
とめている.
高ヨウ素含有のヨウ臭化銀コアからなるコア・シェル粒子
週刊「カメラタイムズ」からの引用であるが,内容は各社
の結晶構造と写真特性を調べた.多数の転位線の存在を見い
ニュースレリーズの範囲を超えているものではないために,
だし,これが物性と写真特性を決定していて,高い写真感度
個々の項目への引用は省略してある.詳しくは各社ホーム
を実現していた(日写誌,69,105).
また,ヨウ臭化銀などの混晶ハロゲン化銀粒子中に生じる
ページ等を参照いただきたい.
双晶転位,刃状転位の制御法を考案した.銀イオンとハロゲ
2. 銀塩感光材料
ン化物イオンを,ハロゲン化銀微粒子の添加により供給し,
オストワルド熟成により粒子成長させると,転位の発生が防
2.1
止された.これより転位が写真特性に与える効果を調べた.
理論および技術
久下謙一(千葉大学),大関勝久(富士フイルム)
双晶転位は写真的効果が少ないが,刃状転位は効率的電子ト
ラップとなり,潜像形成効率を増加させた(日写誌,69,340).
2.1.1 概観
久下謙一(千葉大学)
さらに,刃状転位の生成を制御した乳剤の粒子構造,電子・
感光理論の分野は報告が少なく,研究全体が縮小している.
イオン物性,写真特性を調べた.刃状転位は有効な電子トラッ
ヨーロッパでは旧共産圏を除いてほとんど報告が無かった.
プとなり,イオン伝導度を上昇させて感度を上昇させ,相反
アメリカでは熱現像感光材料の研究が中心である.中国はま
則不軌のない硫黄増感を可能とするが,一方,露光前圧力減
だ活発であるが,日本で一番活発に広範囲の分野で発表が
感を引き起こした(日写誌,70,52,(2007).
あった.ただ,報告の多くは,これまでの結果のまとめとい
うものが多く,新規の研究展開に基づくものは少ない.
その中で,写真を応用した新しい利用方法の開発への展開
2.1.4 感光理論
久下謙一(千葉大学)
Ohzeki ら(富士フイルム)は,種々の条件で調製した乳剤
が見られる.超微粒子乳剤についての報告がいくつかある.
での現像速度を測定して,現像中心の現像可能性について解
これを使用した熱現像(光熱写真)感光材料の研究と,ホロ
析した.Marcus 理論をベースに,現像中心の電子受容レベル
グラム記録と関連した高解像度感光材料としての研究であ
に依存した現像剤からの電子移動が現像を引き起こすと考察
る.
して,このレベルのサイズ,化学組成,偶奇性等への依存性
熱現像(光熱写真)感光材料の研究はまだ盛んで,報告の
を考察した.N&G モデルに基づくシュミレーションとの比
数も多い.感光機構そのものの研究もある.ヨウ化銀の熱現
較から,最小サイズの現像中心を見積もり,最小のかぶり中
像感光材料としての有用性が見いだされたのに伴い,ヨウ化
心は Au2,最小の潜像中心は,金増感がある場合 Ag2Au,金
銀粒子の研究が展開された.
増感がない場合 Ag4 と見積もった(JIST,50,386).
2.1.2 乳剤調製
ヨウ化銀は熱現像時の加熱により溶解して消失することか
久下謙一(千葉大学)
この分野の研究は少なかった.
柴ら(千葉大)は,微粒子成長速度論をベースに,過飽和
ら,ヨウ化銀乳剤の特性が注目されている.
Tani(富士フイルム)は,塩化銀,臭化銀,ヨウ化銀の 3
種のハロゲン化銀からなる乳剤の物性と写真特性を系統的に
158
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
調べ,写真特性の違いを説明した.マイクロ波時間分解光導
ゴゲン増感での潜像中心形成効率を,Rh3+ をドープした乳剤
電,ラジオ波時間分解光導電,イオン伝導度測定,センシト
や,電子捕獲型減感色素をつけた乳剤,増感色素での固有減
メトリーの手法で調べた.ヨウ化銀は,光電子の活性が低く,
感で調べた.感度はテルル>セレン>硫黄となり,また同じ
正孔の活性が高いので低感度となると考察した(ICIS’06,
順で潜像中心の集中化が促進され,効率よく潜像中心が形成
52).
された.この序列は増感中心の電子トラップ深さの順と一致
Mifune ら(富士フイルム)は,ヨウ化銀乳剤の特性を,同
した(日写春,100).
じく光導電測定,イオン伝導度測定と,酸化還元浴による潜
Sechkarev ら(ロシア,Kemerovo 州立大)は,二重構造粒
像中心の酸化電位測定で調べ,臭化銀と比較した.ヨウ化銀
子への[IrCl6]3– のドーピング効果について調べた.二重構造
は銀イオン濃度は大であるが,移動度は小さいので,イオン
の境界付近にドープした場合,感度と高照度相反則不軌の減
伝導度はほぼ同じとなる.光電子濃度が小で,光正孔濃度が
少が得られた(ISJ,54,46).
大なので,容易に再結合を引き起こす.潜像中心の酸化電位
Zhi ら(中国科学院)は,併用不可能な還元増感と金+硫
はネガティブで酸化されやすい.pAg を低くすることで,感
黄増感を,コア・シェル粒子のそれぞれ別々の部位に施すこ
度を有するようになった.ヨウ化銀は銀イオン濃度の増加に
とを試みた.立方体 AgBr・AgBrI 粒子で,コアを還元増感,
よる感度上昇が大であると考察した(ICIS’06,224).
シェルを金+硫黄増感した.コアの還元増感はきわめて有効
さらに谷は,電子構造を UPS で調べた.ヨウ化銀乳剤で銀
であり,ヨウ化物イオンはコアの還元増感に影響しない.コ
イオン濃度を増加させると,価電子帯の頂が低くなった.こ
アの還元増感は正孔トラップ,シェルの金+硫黄増感は電子
のとき正孔の活性が上昇するので,周囲物質と反応して除去
の集中作用と,異なるメカニズムで働くので,有効な増感方
されて,感度が上昇すると考察した(日写春,98).
法である(ISJ,54,53).
熱現像(光熱写真)感光材料に使われているナノサイズ粒
2.1.6 分光増感
子の特性と,脂肪酸銀が感光過程に与える影響について調べ
られている.
久下謙一(千葉大学)
谷(富士フイルム)は,光機能性有機薄膜界面の電子構造
キムラら(コニカミノルタ,他)は,粒径を段階的に変化
とキャリヤーの移動現象の解析の一環として,色素薄膜とハ
させたナノサイズのハロゲン化銀結晶と脂肪酸銀とを混合し
ロゲン化銀界面の電子構造と電子移動について解説した.臭
たモデル系で,写真特性と光分解銀クラスターの拡散反射ス
化銀と色素の蒸着膜の UPS 測定による電子構造の測定結果
ペクトルを測定した.脂肪酸銀の存在により銀クラスター形
から,電子エネルギー準位図を得て,増感色素と減感色素の
成が促進された.,また吸光度の粒径依存性が逆転して,小さ
違いを説明した(日写誌,69,35).
い粒子ほど多くの銀クラスターが形成された.これより,脂
Yang ら(中国 Hebei 大)は,色素 J 凝集体からハロゲン化
肪酸銀から供給される銀イオンの関与を考察した(日写誌,
銀への早い電子移動過程をピコ秒時間分解蛍光スペクトルの
69,197).
解析で調べた.蛍光は指数関数で減衰する 2 つの成分を持ち,
さらにイオン伝導度とマイクロ波光導電を測定して,銀イ
オンの挙動を解析した.脂肪酸銀から供給される高濃度の銀
イオンにより,銀クラスターの形成が促進されると考察した
早い減衰がハロゲン化銀への電子移動によるとした(Chinese
Physics,15,1055;ICIS’06,63).
2.1.7 現像
(日写秋,22).
久下謙一(千葉大学)
2.1.5 化学増感
草野ら(林原生物化学研究所)は,現像処理の各薬液をし
久下謙一(千葉大学)
増感の研究報告は比較的数が多かった.1 個の光量子から
2 個の電子を生じる,2 電子増感について,引き続き研究さ
れている.
み込ませたシートに,露光済み印画紙を順に貼り付け,圧着
加熱することにより,カラー現像が行われるシステムを開発
した.この方法では液体廃液を生じない(日写春,50).
2.1.8
熱現像感光材料
Ma ら(中国科学院)は,ギ酸をハロゲン化銀粒子内にドー
久下謙一(千葉大学)
プした立方体粒子乳剤の感度上昇効果を調べた.ドープ位置
ICIS’06 では熱現像感光材料のセッションが組まれ,この分
が表面に近いほど高感度となり,金+硫黄増感,色素増感と
野では数多くの発表があった.上述のように感光理論の分野
併用可能であった.ギ酸は正孔トラップとして作用している
でも関連した報告が多い.
と考察した(JIST,50,394).
高感度の熱現像感光材料システムが提案されている.
Pawlik ら(Kodak)は,2 電 子増 感を 起 こ す 新 し い FED
Roberts ら(Kodak)は,現像生成物が次の段階のかぶり現
(Fragmentable electron donor)化合物を開発した.置換基を
像を抑制する 2 段階現像により,ダイレクトポジ像が得られ
変えて酸化電位を変えたアミノ酸構造を持つ配位子と Os
る熱現像感光材料システムを構築した.2 段目のかぶり現像
(CN)5 と Ir(Cl)5 との錯体を,ハロゲン化銀粒子中にドープ
過程での増幅を強めることで,ISO24000 の高感度を得た
した.EPR でこの FED の作用を調べた.0.1 logE 以上の感度
上昇を得た(ICIS’06,59).
森村ら(富士フイルム)は,硫黄,セレン,テルルのカル
(ICIS’06,220).
Funakubo ら(富士フイルム)は,平板状のヨウ化銀大粒子
を用いて,X 線フィルムとして使用可能な高感度の熱現像感
2006 年の写真の進歩
159
光材料を開発した.ヨウ化銀のコーナーに臭化銀ゲスト粒子
防止および増感色素の吸着強化を実現した.本カラーペー
を方位配向成長させ,さらにテルル増感により,湿式処理感
パーを CP49E 処理剤を用いたフロンティア 570 で現像するこ
光材料と同等の感度が得られた(ICIS’06,230).
Sahyun は,熱現像感光材料の像形成過程について概観し
た.水系塗布と溶媒系塗布感光材料での違いを,潜像形成過
程,現像過程について詳細に検討した(ICIS’06,203).
とで,Dry to Dry 処理時間を 3 分 45 秒から 1 分 22 秒に短縮
した(ICIS’06,255,257).
Ueda ら(富士フイルム)は,新高感度・高彩度カラーリ
バーサルフィルム PROVIA 400X を発表した.本製品では表
Mifune ら(富士フイルム)は,熱現像感光材料としてのヨ
面積 / 体積比の大きな(薄い)平板粒子を用いることで,粒
ウ化銀ナノ粒子の写真特性を調べた.ヨウ化銀は熱現像時の
子サイズの低減による像構造画質(粒状性)の向上と高感度
加熱でベヘン酸銀に溶解し,これはヨウ化銀と錯体を作るフ
を両立した.薄い平板粒子を得るためには,ハロゲン化銀平
タラジンの共存で促進された(ICIS’06,227).
板粒子中にヨウド局在相を導入できず高感度化を妨げたが,
Whitcomb ら(Kodak,他)は,ステアリン酸銀のミセルの
エピタキシャル部を粒子のコーナーに導入する技術で解消し
形成初期段階を,低温電子顕微鏡で観察した.ステアリン酸
た.また,新カプラ-により高彩度を実現するとともに暗保
塩と臭化銀粒子の交換反応により,ステアリン酸銀のミセル
存性とマゼンタ光堅牢性が向上した.さらに多重色補正層技
が生じた.臭化銀の{111}面が核形成サイトとなり,ミセ
術により,インターレイヤー効果をハイライト領域に重点的
ル状ステアリン酸銀の方位配向成長が起こった(ICIS’06,
に用い高彩度と肌色再現性を両立した(ICIS’06,44;日写春,
237).
92).
Akahori ら(コニカミノルタ,他)は,水素結合の強さを
Bodden ら(Kodak)は,低感度映画用フイルム,KODAK
置換基で調節したビスフェノール誘導体から 3C60 *への電子
VISION2 50D Color Negative Film 5201 および KODAK VISION
移動速度を,レーザ閃光光分解法で追跡した.これより,ビ
2 Color Negative Film 7201 の技術について発表した.本製品
スフェノール現像剤の構造設計による,現像速度の精密なコ
では粒状性とシャープネスを高めるために,小サイズ化され
ントロールを試みた(ICIS’06,208).
た平板粒子が用いられた.感度を維持するために,ヨウド構
Chen ら(Kodak)は,フタラジントナーが現像銀形成に与
造とドーパント使用レベルが最適化された.さらに,現像時
える影響を,ラマンスペクトル測定と TEM で調べた.銀粒
には現像促進剤が用いられた.また,BGR 各層の分離を改良
子の周囲に吸着フタラジンによる有機物のコアを形成してい
するとともに,層間に固体分散色素を用いることで混色を防
た(ICIS’06,211).
止した(ICIS’06,40).
Whitcomb ら(Kodak)は,各種のフタル酸誘導体と銀の錯
2.1.10 ハロゲン化銀感光材料の応用展開
久下謙一(千葉大学)
体の現像銀形成における役割について調べた(ICIS’06,215).
米澤ら(大阪市大,積水化学工業)は,カルボキシメチル
Kuge ら(千葉大)は,金沈着現像法により形成される金微
セルロースの銀塩膜の光分解により,照射条件に依存した鏡
粒子のサイズや光学特性を超微粒子乳剤で調べ,金微粒子成
面状銀膜やナノサイズの銀粒子を得た(日写秋,34)
.
長速度を解析した.
ハロゲン化銀粒子サイズが小さくなると,
Robello ら(Kodak)は,カラーの熱現像感光材料に用いう
粒径分布のそろった金微粒子が得られた.金微粒子形成過程
る,加熱で保護基が分解してカラー現像主薬を放出する機能
におけるハロゲン化銀粒子の間隔の関与を示唆した(JIST,
を持つ置換基のついたスチレン系ポリマーを種々合成した
51,96,(2007)).
さらに,サイズの異なるハロゲン化銀粒子からなる微粒子
(Macromolecules,39,5686).
Kong ら(Kodak)は,樹枝状とフィラメント状現像銀の比
乳剤を用いて,金沈着現像法により形成された金微粒子のサ
較をもとに,形態とサイズの違いによるカバーリングパワー
イズ特性と,金微粒子分散膜の光学特性を調べた(日写秋,
へ の 影 響 を 計 算 す る モ デ ル を 構 築 し,実 際 と 比 較 し た
30).
高解像度を活かした応用展開として,ホログラム用感光材
(ICIS’06,205).
料に関する報告がある.
2.1.9 製品
大関勝久(富士フイルム)
Iwasaki ら(京工大,他)は,赤色光に感度を持つ新しいホ
Takeuchi ら,Yoshida ら(富士フイルム)は,Cystal Archive
ログラム用感光材料 P7000(コニカミノルタオプト)に,He-
Paper Type II およびフロンティア 570 デジタルミニラボシス
Ne レーザでホログラムを記録した.得られたホログラムの回
テムについて発表した.本カラーペーパーには 1,1-dioxo-
折効率などの特性を評価した(Proceedings of SPIE,6136,
1,2,4-benzothiadiazine イ エ ロ ー カ プ ラ- お よび 1H-pyrolo
J1–J8).
[1,2b]
[1,2,4]triazol シアンカプラ-が用いられ,色再現性が
Kuge ら(千葉大)は,金の薄膜の凹凸からなる回折格子で
向上した.また,ハロゲン化銀粒子中には徐放時間の異なる
ホログラムを記録する方法を提案した.金沈着現像法を用い
3 種類(Fe あるいは Ru 錯体,Ir 錯体および Rh 錯体)が最適
て,金微粒子分散膜の回折格子を作製し,これを焼成してゼ
の添加量ドーピングされ,それぞれ感度,高照度相反則不軌
ラチンの燃焼除去と金微粒子の溶融により,金膜の格子を得
およびコントラストを改良している.さらに表面にヨウドを
た.4000 本 /mm の格子が確認された.金膜の反射型で 2%弱
導入して,塩化銀含有率アップ,高感度化,内部潜像の形成
の回折効率が得られた(J. Appled Phys.,100,013102(1-5)).
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
160
また,この方法でイメージホログラムを作製できることを
いても重要な研究テーマと位置づけられている.しかし,銀
示した.磁器製の皿等に乳剤を塗布した自製感光材料で,曲
塩感剤の技術的成熟と急速なデジタル化による銀塩市場の縮
面上にもホログラムが作製できた.さらに,ホログラム作製
小のため,写真応用を意識したゼラチンの研究が表に出るこ
における現像と焼成条件を検討した(日写誌,69,276;日
とは少なくなった.ゼラチンのもつ多彩な機能は写真感剤の
写春,56;日写秋,28).
みならず,多くの応用価値を秘めていると考えられ,全体と
被曝の少ない重粒子線を用いたがん治療では,重粒子線の
しての研究ポテンシャルは下がっていないものの,本学会の
核破砕反応による被曝が生じる.炭素イオンビームの核破砕
フィールドにおける研究はここ数年明らかに減少している.
反応により生じる軽いイオンの飛跡を高解像度の原子核乳剤
ゼラチンに関する優れた研究業績等に対して,本学会では
で検出して,被曝量を正確に見積もる試みがなされている.
学会賞の一つとしてゼラチン賞を設けている.2006 年度のゼ
Toshito ら(名古屋大,他)は,原子核乳剤を用いた OPERA
ラチン賞は株式会社ニッピの伊藤政人氏に贈られた.氏はゼ
フィルムに,Li,Be,B,C のイオンビームを照射して生じ
ラチンをゲル化させるときの温度履歴に着目し,冷却条件等
た飛跡を,高温多湿の条件で潜像退行させるリフレッシュ処
によってゲルの構造が変化することを熱分析や X 線回折の手
理により段階的に消去することにより,各イオンの飛跡を識
法を通して明らかにした.これらの研究業績に加え,ゼラチ
別した.
(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research
ン研究会の設立,運営,さらにはゼラチンに関する多くの学
A,556,482).
術的,
技術的,さらには啓蒙活動等を評価されての受賞となっ
さらに,久保田ら(名古屋大,他)は,これらの飛跡を金
た.
沈着現像法で検出し,飛跡上の銀粒子密度であるグレインデ
2006 年度のゼラチンシンポジウムは,学会秋季研究報告会
ンシティを測定することにより,各イオンを識別することを
と併催され,4 件の講演が行われた.根守(富士フイルム)
は生体中のコラーゲン分解酵素活性の分布を可視化するFilm
試みた(日写春,94).
久下ら(千葉大,放医研,他)は,OPERA フィルムに C
in situ zymography の開発と応用について解説した.コラーゲ
と He イオンビームを照射して生じた飛跡を,通常現像法と
ンあるいはタンパクの分解酵素(プロテアーゼ)活性は,ガ
金沈着現像法でそれぞれ検出し,グレインデンシティの比較
ン細胞の活性と深い関係があり,ゼラチン(あるいは他の適
から金沈着現像法のイオン識別への有用性を検証した(日写
当なタンパク)皮膜と組織片を密着させることで,フィルム
誌,70,44(2007)).
上にプロテアーゼ活性の分布を写し取ることができ,細胞レ
さらに,ハロゲン化銀粒子のサイズが異なると付与される
ベルでの可視化が可能になる.これは医療上にも有用な技術
エネルギーが異なり,放射線感度が異なることから,サイズ
である.鐘ヶ江(明治製菓)は健康食品として注目を集める
の異なる微粒子乳剤それぞれで検出しうるイオンの違いで,
コラーゲンペプチドが,皮膚に対する抗加齢効果を持つこと
イオンを識別することを試みた(日写秋,24).
について,経口摂取されたコラーゲンの作用機序仮説を含め
また,核種の分解能が高いが,Li 以上の重いイオンしか検
た解説を行った.健康食品としてのコラーゲンの有用性は多
出できないプラスチック飛跡検出器 CR-39 と,すべてを検出
くの研究がなされており,今後より詳細な理解が進むと期待
できるが分解能が低い OPERA フィルムを重ねた複合系を構
される.谷(富士フイルム)は銀塩写真材料におけるゼラチ
築し,両者の飛跡の対応からイオンの弁別を試みた(ICIS’06,
ンの特性と機能について,俯瞰的な解説を行った.写真工業
69).
において永く不動の立場を得ているゼラチンは,多くの研究
谷は,塩化銀を用いた太陽光エネルギー変換システムにつ
によってその機能の本質が理解されるようになってきたもの
いて,ハロゲン化銀の物性と感光機構に基づいて考察し,そ
の,現在に至るもブラックボックスの部分も残り,その中で
の高い変換効率を説明した(日写秋,20).
感剤技術がどのようにゼラチンを使いこなしてきたかが述べ
小林ら(三菱製紙)は,銀塩感光材料の拡散転写により,
られた.田村(関西大学)はゼラチンを連続的に乾式紡糸法
バインダーを含まない導電性銀パタンを形成した.高い導電
で繊維状に成型する技術について解説した.ゼラチンを非常
性と解像力を有し,フレキシブル・シースルーな回路材など
に単純な方法で繊維形状に加工できることが示され,これを
に利用可能である(日写春,96)
.
利用した新たな機能材料としての応用展開が期待される.
2.2
写真におけるゼラチンの重要性に,ハロゲン化銀製造時の
感光材料用結合素材
大川祐輔(千葉大学)
保護コロイド・結晶成長制御効果がある.柴ら(千葉大)は
銀塩写真感剤は感光材料であるハロゲン化銀微粒子や発色
ゼラチンの物理抑制性に対して,微粒子成長速度論に基づい
等の機能をもつ有機化合物をゼラチンを結合材料(バイン
た解析を試みた.これまでの物理抑制度測定では核形成過程
ダー)として基材上に固定化した構造を基本としており,結
と成長過程の両方があわさった最終的な結果しかわからな
合材料の特性は感剤の多くの性質と密接に関係している.結
かったため,ゼラチン間の物理抑制性の差がどのようなもの
合材料としては歴史的にゼラチンがすぐれた特性を示すこと
であるか,不明確であったものを,コントロールドダブル
が知られており,現在の感剤製造技術のほとんどはゼラチン
ジェット法を用いて制御された条件下で粒子を形成すること
の存在と使用を前提にしている.そのため,ゼラチン研究は
で,これらの分離が可能であることを示した(日写春).ゼラ
写真の研究において常に重要な問題であり続け,本学会にお
チン以外で写真適性のある保護コロイド材料は長く探索され
2006 年の写真の進歩
161
てきたが,十分な性能を持つものは見出されていない.日笠
い,水蒸気透過性,力学的性質,および溶解性に対する可塑
ら(林原生物化学研究所)はプルランを化学修飾によって両
剤としてのグリセロールの効果を調べた(Food Chem.,103,
性電解質化し,この誘導体化プルランを保護コロイドとして
295).Venkateswarlu ら(インド Central Leather Research
用いて銀塩感光材料を調製し,一定レベルの性能のハロゲン
Institute)は鶏卵白とゼラチンの混合系にメタクリル酸メチ
化銀粒子が調製できることを示した.ゼラチンの保護コロイ
ルをグラフトすることで,丈夫で水を吸収しにくい皮膜を得
ド性には,その両性電解質としての性質が重要な意味を持っ
た(J. Appl. Polymer Sci.,100,318).Bertoldo ら(イタリア
ていると考えられるが,そのことに対しても示唆に富む結果
Pisa 大)は 1,6- ジイソシアナトヘキサンによるゼラチンの化
であるといえる(日写春).
学修飾とこれを利用した繊維との複合化について報告した
ゼラチン中で無機材料を合成することが写真感剤以外の系
(Macromol. Biosci.,7,328).
でも検討されている.麻田ら(京都工繊大)はゾルゲル法に
生体中の無機成分(典型的には歯や骨)はタンパク等との
よる酸化チタン透明薄膜調製において,前駆体ゾルの安定化
複合によってその高い強度が得られている面がある.ナノレ
にフィッシュゼラチンを用いることを報告した(日写秋).魚
ベルでの生体材料と無機材料の複合(bio-nanocomposite)は
由来のゼラチンは,従来の牛,豚由来のものとは異なった性
近年注目を集めている分野であるが,Darder ら(スペイン
質を持っており,その有効利用は今後も注目される.Teng ら
Instituto de Ciencia de Materiales de Madrid)はゼラチンと層
(中国科学院)はゼラチンゲルを利用したリン酸カルシウム類
状無機化合物(モンモリロナイトやペロブスカイト)との複
の調製について報告した(Biointerfaces,49,87).ゼラチン
合材料の特性を調べ,ゲル転移温度やフィルム形成能,粘弾
ゲルを反応基質(カルシウムとリン酸)の供給源とし,拡散
性,力学的性質,誘電的性質に対する影響について述べた
モードと結晶成長の制御が行われていると考えられる.反応
(Current Nanoscience,2,231).写真の系でもハロゲン化銀
条件を変えることで組成,結晶形,粒子形状の異なるリン酸
微粒子を含めて無機材料を複合化する場面は多く,これらの
カルシウム類が得られている.Liu ら(Oklahoma 大)は写真
知見を共有できる可能性がある.
現像の原理を利用して,ゼラチンの存在下で臭化銀平板結晶
ゼラチンの基本的な物性や反応性についても,現在もいろ
から室温で銀のナノワイアを調製した(J. Solid State Chem.,
いろな 観 点 か ら 研 究 が 続 いている.Abete ら(イタリア
179,696).写真現像においてゼラチンは潜像核での選択的
University of Naples “Federico II”)はゼラチンの化学架橋過程
銀還元をコントロールする因子として働いていることは知ら
において,2 つの異なった時間スケールで起こる変化がある
れているが,この系でもゼラチンが同様の機能を果たすこと
ことを認め,モンテカルロシミュレーションの結果とあわせ
で,長いナノワイア形成を可能にしていると考えられる.
てゲル化の速度論を議論した(J. Chem. Phy.,125,174903/1)
.
さまざまな添加物や他材料との複合化が検討されている.
Hellio ら(フランス ESPCI)は化学的,物理的およびその混
大川ら(千葉大)はカラギーナンとゼラチンの混合ゲルを粘
合で架橋されたゼラチンゲルの粘弾性と構造について,ラン
弾性測定によって研究した.冷却条件の制御により,各成分
ダムな架橋の理論モデルと関連させて議論した(Macromol.
の架橋程度を制御した結果,提案している相分離構造モデル
Symp.,241,23)
.Cao ら(中国科学院)は フェルラ酸あるい
と矛盾しない弾性率変化を得た(日写春).さらに高速噴射法
はタンニン酸で架橋したゼラチン皮膜の物性を調べた(Food
によってカラギーナンの分子量を変化させることでゲル形成
Hydrocolloids,21,575).三町ら(大阪大)はゼラチンの膨
能を変化させて混合ゲルを調製し,やはりモデルと矛盾しな
潤過程を陽電子消滅寿命スペクトルと示差走査熱量分析に
い結果を得た(菊地ら(千葉大,スギノマシン,日写秋)).
よって調べ,ゲルのへリックスに水分子が取り込まれる様子
Fang
ゼラチン-κ-カラギーナン系での相分離現象については,
について議論した(Radioisotopes,55,525).
ら(Unilever)らも検討している(Langmuir,22,9532).一
保存の問題と関連して,Abrusci ら(スペイン,マドリード
方,Aliste ら(ブラジル Cidade 大)は電離性放射線の照射後
コンプルテンス大)はスペイン国内のアーカイブの映画フィ
に見られる粘弾性の異常挙動から,ゼラチンとカラギーナン
ルムに付着しているカビによるゼラチンの分解挙動を粘度測
の混合ゲル中での複合体形成を示唆している(Mol. Cryst.
定によって調べ,フィルムゼラチン層への影響を論じた
Liquid Cryst.,448,781).Pranoto ら(インドネシア Gadjah
(International Biodeterioration Biodegradation,58,142).
Mada 大)は魚ゼラチンの物性改善を目的にジェランあるい
は κ- カラギーナンを混合した皮膜の性質を調べ,これらの添
加によりゲルの融点の上昇,皮膜強度と水蒸気に対するバリ
3.
光機能性材料
光機能性材料研究会
ア能の向上が見られるとした(LWT-Food Sci. Technol.,40,
766).Brink ら(スエーデン食品・バイオテクノロジー研究
光による微細加工,微粒子形成,および有機半導体の応用
所)は乳清タンパクとゼラチンの混合ゲルについて,大きな
に関する話題を紹介する.Suyama(阪府大)らは DBU を発
変 形 を 与 え た と き の 構 造,物 性 の 変 化 を 調 べ た(Food
生する新規な光塩基発生剤として 8-(4'-ベンゾイルフェニル
Hydrocolloids,21,409).Kolodziejska ら(ポーランド Gdansk
メチル)-8-アザニア-1-アザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7
工科大)は魚ゼラチンにキトサンを混合し,トランスグルタ
のベンゾイルギ酸塩を合成した.この化合物は有機溶媒によ
ミナーゼあるいは水溶性カルボジイミドで架橋した皮膜を用
く溶け,熱的な安定性も高く,ポリグリシジルメタクリレート
162
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
の膜に添加して,254 nm の光を照射し,加熱すると架橋して
4. 画像評価・解析
不溶化した(“Journal of Photopolymer Science and Technology”,
藤野
真(セイコーエプソン)
以下 JPST と略記,19,81).この研究グループの光酸発生剤
および光塩基発生剤の研究がまとめられている(JPST,19,
像構造,階調・色再現が画像評価の基本であるが,近年こ
65).Dean と Stark(Sematech)は,193 nm 液浸 EUV レジス
れに加えて質感・画像の意図等より観点からの評価・解析な
ト関係の課題についてまとめ,高屈折率の液とレンズの重要
らびに画像処理による画質の改善活動が行われている.
性を指摘した(JPST,19,487).Ando(東工大)は,VUV-
4.1
DUV 域の透明性が期待される含フッ素有機化合物 166 種の屈
湯浅(室蘭工大)らは,測定条件の変動に不感で,安定的
像構造
折 率 と そ の 分 散 を 密 度 汎 関 数 理 論 に 基 づ い て 計 算 し た.
な画像計測の行える網点面積率測定方法について検討を行
193 nm の屈折率は 589 nm の屈折率に比例し,屈折率の分散
い,この安定性を立証した.測定光強度分布の変曲点となる
を示す Abbe 数の計算値も 589 nm の屈折率の計算値に比例し
光強度を網点画像の閾値とするという基準を用い,経験的な
た(JPST,19,351).
パラメータを用いずに自動的に閾値を得,汎用性・安定性の
T. Yamaguchi と H. Yamaguchi(NTT)は,スチレンとメタ
ある評価手法としている(日画誌,45(1),30).松井(群馬
クリル酸メチル(MMA)のブロック共重合体のラメラの層を
大学)は,協調視覚モデル応答に基づいて導出された 2 種類
基板に垂直に立てる方法を報告した.シリコン基板を α メチ
の画像ノイズ評価値の評価方法をインクジェットプリントに
ルスチレンと MMA の交互共重合体からなる膜で被覆し,こ
適用した.同評価方法は,従前研究にて電子写真プリントに
れに上記のブロック共重合体のトルエン溶液を塗布した後ア
適応可能であったが,これに加えて本研究でインクジェット
ニールすると,指紋状のミクロ相分離構造を呈した.一方,
プリントにも適用可能であることを確認した(日画誌,45
ネガ型電子線レジストのシルセスキオキサンを用いて 30 nm
(1),11).羽生田(千葉大学)らは,デジタルカメラのノイ
程度の厚さの周期的な壁を作った後,ブロック共重合体を塗
ズ評価方法を提案した.同指標では,画素 RGB 値の標準偏
布すると,この壁にほぼ平行に層状の相分離構造が形成され
差に 3 種の周波数のパワースペクトルの対数を用いて導出し
た(JPST,19,385).
た重みを乗じている(日写春).笠原(セイコーエプソン)ら
米澤(阪市大)らは,亜臨界水~超臨界水中での酸化チタ
は,インクジェットプリンタの種々の特性をパラメータとし
ンナノ粒子による銀イオン光還元・銀ナノ粒子析出反応を検
て,出力画像の粒状性,バンディングといった微細構造特性
討し,高温高圧水中においても酸化チタンの光触媒作用が有
をエミュレートする方法を提案した.同エミュレートモデル
効であることを明らかにした.析出銀の形態は,光照射温度
は,ドット着弾位置予測部,インク厚み分布予測部,光の吸
により表面プラズモン吸収をもつナノ粒子から銀クラスター
収・産卵予測部の 3 つの部分から構成され,ドットの振る舞
へと変化した(日化春,3G2-49).
いを良好に予測している(日画年大会,105).黄(日本工業
内田(工芸大)らは,赤,緑,青に発光する 3 つの透明な
大)らは,網点周期,網点角度,濃度差,照度,観察距離が,
有機 EL 層を積層したフルカラーピクセルを作成し,各層別
画像中の輪郭の知覚に与える影響を評価し,前述の条件によ
の色光と,3 層同時発光による白色発光を観測した(日写誌,
り輪郭知覚の状態が変動することがあることを確認した(日
69,55).
画年大会,189).
第 3 回光機能性材料セミナー「有機半導体中のキャリア輸
4.2
階調・色再現
送:基礎と応用デバイス」が開催され,講演の内容が写真学
近年は,自発光型ディスプレイ表示と反射物とを比較評価
会誌 69 巻 5 号に特集としてまとめられている.井口(宇航
する作業が多くある.日本印刷学会標準化委員会第二分科会
研)は有機半導体発見物語と題して,発見当時の体験談を交
では,前記作業における観察条件を評価するためのガイドラ
えつつ,有機半導体の基本概念と面白さについて解説した(日
インを作成した.周辺条件,観察条件,およびこれらの条件
写誌,69,309).時任(NHK)は有機 EL デバイスの動作機
設定の手順例が丁寧に説明されている(日画誌,45(1),62).
構と発光効率改善について,デバイスの基本構造,代表的な
山脇(千葉大)らは,印象を重視した顔部肌色の測色法を検
有機材料,燐光材料を用いた研究に言及しつつ解説した(日
討した.顔画像のオリジナルと前記画像を一色相としたもと
写誌,69,315).相原(NHK)は,光の三原色夫々にのみ感
で比較し,代表となりうる色を選出した.結果顔全体の平均
度をもつ有機光電変換膜を積層した単板カラー撮像デバイス
値を代表色として用いるのが妥当であることを見出した(日
の開発研究について紹介した.有機材料の選択により光の三
写春,58).山田(富士フイルム)らは,中間調再現特性も
原色にほぼ対応した感度と,ハイビジョンにも対応可能な高
含めた色再現評価指標として,CIELUV 色差を画像間の色差
解像度が得られた(日写誌,69,320).斉藤(産総研)らは,
に応用した評価尺度を提案し,官能評価実験を通じてその有
高効率バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池について,特に
効性の確認を実施した.画像色差の算出においては,観察者
高分子塗布系セルに焦点を絞って,高効率化に関する最近の
の視覚の順応効果を考慮する必要があることを実験により明
研究動向と今後の展望を紹介した(日写誌,69,327).
らかにした.適切な白色点を用いて画像色差を算出すること
で,より見た目にあった視野角評価指標が得られることが期
待される(日画年大会,53).茂木(凸版印刷)は,従来か
2006 年の写真の進歩
163
らの濃度値による評価と組み合わせて工程管理や標準化につ
技法・考え方を紹介した(日画年大会,171).会津(キヤノ
ながる実用的な評価方法について説明した.ISO12642 チャー
ン)らは,インクジェットプリンタにおける画像設計,色処
トの測色値を Lab 空間上に投影比較することで課題を明確に
理技術について報告をした.インク数が増した場合,天文学
することの有効性を述べた(日印誌,43(4),295).近藤(富
的にインク分解の組み合わせ数が増してしまう課題が発生す
士フイルム)は,ICC プロファイルのバージョン 2 から 4 で
る.同課題に対して,ハイライト域に対しては粒状性を,高
変更された概念について,色に関する国際標準規格との対応
彩度域に対しては色域を,シャドー域に対しては階調性を重
関係を含め説明を行った.バージョン 4 では,従来曖昧とさ
視することで,最適解を求めている(日画年大会,177).大
れていた PCS の概念が明確に定義された点が重要である(日
塚(富士フイルム)は,画像再現においては,画像シーンの
印誌,43(5),372).岩城(富士フイルム)は,シーンの色
描画意図を把握すること,再現デバイスとしての表現能力を
を忠実に取得するカメラを試作し,種々の被写体の撮影を行
向上することの双方が重要であることを述べ,近年の顔検出
い,実 シ ー ン の ガ マ ッ ト を 確 認 し た.低 明 度 域 で は,
技術が,光源推定,階調設定等を適切に行うのに有効に活用
AdobeRGB やポインターのガマットを超える領域があるこ
されていることを説明した(日画年大会,181).貴志(ノー
と,半透過物体では最明色を超える場合があることなど,今
リツ鋼機)は,画像品質評価を行う際の項目を 17 種挙げ,こ
後 Secene Refered 画像を扱っていく上での課題を抽出した
れを定義した.これらは,階調系,色彩系,鮮鋭系,その他
(サマーセミナー,17).
の 4 種に大別される.ここで,総合評価という項目を独立し
4.3 質感
て設け,違和感を感じる突出した要素を排除することが重要
北野(富士ゼロックス)らは,電子写真におけるマット紙
であると述べた(日画年大会,187).古市(シャープ)らは,
での画像表面形成プロセスを解析し,同紙でのグロス発生が
特定の色のみを選択的に好みの色に近づける手法を紹介し
プロセス印刷のそれと異なるメカニズムを明らかにした.定
た.均等色空間上に,楕円体を設け,さらに前記同楕円体内
着プロセスを経ることで,用紙上の低周波の起伏が変化し,
部に修正の主点を設ける.楕円体内部で前記主点位置を移動
表面形状に影響を与えていた(日画誌,45(6),504).平林
させることで,他の領域に影響を与えずに修正を行った(日
(キヤノン)らは,電子写真出力像に対して,三次元計測を行
画年大会,197).佐藤(千葉大)らは,銀塩カラー写真,イ
い,同形状をもとに光線追跡を適用することで出力画像の表
ンクジェットプリント,液晶ディスプレイ等の 5 つのメディ
面反射成分による光沢度を計算・解析し,実測値の比較を行っ
アで再現された評価画像を用い,学生,高齢者を対象とする
た.さらには,手持ちで眺める感覚を再現する仮想印字物シ
印象評価を行った.各メディアによって「メリハリ感」,
「クッ
ステムも試作した.(日画誌,45(2),109)また,モンテカ
キリ感」,「親近感」が異なっており,また高齢者と学生の間
ルロ法を用いた変角分光シミュレーション計算を行い,電子
写真像における反射色・光沢について解析を行った(日画年
でその感じ方が異なっていることを統計的に明らかにした
(日写誌,69(5),347).
大会,271).村山(セイコーエプソン)らは,顔料系インク
志村(東京大)は,アサヒカメラのニューフェース診断室
ジェットインク印刷物の 3 次元表面形状像より表面画素の傾
で採用されている評価項目について紹介をした(サマーセミ
きの度数分布曲線を求めることで,写像性と極めて相関の高
ナー,1).
い評価を行うことが可能であることを確認した(日画年大
会,97).画像学会シンポジウムでは,質感表現に対するパ
5. 分光画像
ネルディスカッションが行われた.忠実であることが必ずし
も質感が高いこととは言えず,質感には画像の内容・意図に
羽石秀昭
(千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター)
踏み込んだ概念が含まれているとの意見が交わされた(日画
誌,45(5),479).
4.4
画質改善・総合評価
分光画像に関する研究は従来に引き続きコンスタントな発
表がなされている.特に国際会議では,ヨーロッパで隔年開
物部(松下電器)らは,局所空間処理オペレーターによる
催されている CGIV において 10 件以上の講演がなされている
ダイナミックレンジ圧縮方法の基本動作原理を詳説し,同手
し,CIC でも 8 件以上の発表がある.内容を見てみると,画
法が従来の Retinex モデルによる手法に対して,バンディン
像データフォーマットや圧縮法,多原色ディスプレイ関連,
グが発生しない点等で優位になることを示した(日画誌,45
デジタルアーカイブや医療への応用,スペクトルの推定問題
(1),11).松岡(千葉大)らは,画像データの有する色域と
などがカバーされており,例年並みの傾向と言える.国内で
再現デバイスの色域を比較し,
「圧縮」,
「伸張」を自動判定す
は写真学会誌,写真学会年次大会,カラーフォーラム JAPAN
るアルゴリズムを検討し,同アルゴリズムにより,デバイス
などにおいてわずかな発表があっただけであった.国内の研
毎に色域が有効に活用された再現が行われていることを確認
究者が,同分野の各国研究者が集まる国際会議を発表の場と
した(日画誌,45(2),97).小寺(小寺イメージング研究室)
することが多いためと思われる.
は,知的画像処理の一端として,適応的画像鮮鋭化,Retinex
分光画像システムの研究開発を国家プロジェクトで進めて
モデルによる明暗の見えの改善,視覚的階調変換によるコン
きたナチュラルビジョンは 2006 年 3 月で終了した.プロジェ
トラストの改善,シーン参照型色再現モデルといった種々の
クトからの多数の研究成果は,他の研究者・技術者あるいは
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
164
今後の研究開発に有用な知見を与えるものと考えるが,本格
信号の連続性の点で従来法より改善されている.
的な実用化までを目標とするならば,まだ研究開発は道半ば
一方,Boosmann は観測者の個人差を考慮して信号値をマ
と言わざるを得ない.このような経緯から(独)情報通信研
トリクスで決定する方法を示している(CGIV,463).マトリ
究機構の委託研究として「マルチスペクトル映像収集・伝送
クス変換は計算コストの点で実用性が高いが単一のマトリク
技術に関する研究開発」が 2006 年 9 月より開始され,受託
スでは色刺激全体をカバーできないため,4 つのマトリクス
者である NTT データ,オリンパス,東工大,千葉大が,普
を組み合わせる方法を提案している.
及に向けたシステムのコンパクト化を第一義として取り組ん
5.3
美術品等のデジタルアーカイブ・色材分析
でいる.
デジタルアーカイブに向けた取り組みが,引き続き報告さ
分光画像の実利用のために必要な作業のひとつは標準化で
れている.Nakaguchi らは偏角分光イメージング法における
ある.CIE TC8-07 にて議論されている分光画像の標準化に関
カメラと照明の方向の最適化を提案した(CGIV,287).3 次
しては,研究用途のデータ交換を期待する研究者と商用化を
元物体のデジタルアーカイブには形,分光反射率,光沢等の
イメージする企業関係者とでは,思惑が一致しないこともあ
情報が必要であり,その記録には多大な時間を要する.この
り進展が見られていない.国内からはナチュラルビジョンプ
問題に対し,遺伝的アルゴリズムを用いてカメラと照明の配
ロジェクトのメンバーが中心となり標準化に向けた活動を継
置を最適化することを提案し,その有効性を示している.
続している.標準化関連では,http://www.multispectral.org/ に
データベースなどが公開されている.
絵画など平面物体に対するデジタルアーカイブや色材分析
および修復も報告されている.Cotte らは,レオナルドダビ
前置きが長くなったが,以下より,分光画像関連の文献に
ンチのモナリザの分光画像からニスの経年変化による色変化
ついて,いくつかのカテゴリーに分けながら紹介していく.
を取り除く挑戦を行っている(CGIV,311).画像データは
測色値との互換性・高速な画像アクセスに向けた工夫
ヨーロッパの CRISATEL プロジェクトの下で開発された同期
Derhak らは分光情報を測色値 L*a*b* 3 成分+追加 3 成分
照明付きの高解像度スキャナーで収集された.色の修正の信
で表現することを提案している(JIST,50(1),53).追加 3
頼性については吟味が必要と考えるが,非常に著名な被写体
成分を P,Q,R と呼び,まとめて LabPQR と命名している.
を用いており,デモとして強烈である.
5.1
分光情報をマルチバンドのまま表現すると,測色値のみで十
河野らは,岩絵の具を用いた絵画のマルチスペクトル画像
分 な ユ ー ザ ー に と っ て は 面 倒 な 変 換 処 理 が 必 要 と な る.
収集とセグメンテーション応用を提案している(日写誌,69
Derhak らの方法は,測色値のみ必要なユーザーが容易にそれ
別冊,10 および カラーフォーラム JAPAN2006,113).天然
を抽出できるようになっている.このような考え方はすでに
鉱物を顔料として作成された仏画や壁画など日本やアジアに
CIE TC8-07 などでも多くの研究者間で共有していたが,原著
おける文化遺産等を対象としてマルチスペクトル収集および
論文として現れたことは資料として価値が高いと言えよう.
その解析に向けたセグメンテーション方法を研究している
なおTsutsumiらは分光的カラーマネージメントのためにPQR
が,そのような例は少なく今後の展開が期待される.
の空間をどのように選ぶべきかについて調べている(CIC,
5.4
246).
Nakaguchi らはダイナミックバンドイメージングと呼ぶ電
医療応用
Yu らもまた,マルチスペクトル画像の圧縮法の研究の中
子内視鏡の画像強調方法を提案した(CIC,3).RGB 画像か
で,labplus なる概念を導入し,3 チャネルを L*a*b* 値とし,
ら分光反射率を推定した上で,わずかな色の違いを明確に区
それ以外について KL 変換に基づいたスペクトル画像の圧縮
別できるように色を強調するものである.特に,人間の目が
を提案している(Optical Review,13(5),346).やはり測色
静止した刺激より動的な刺激に対してより敏感であることに
値利用者との互換性を考慮した方法であり,この概念は色に
注目して色の変化を動的に与えることでこの強調を可能にし
関するスケーラビリティーの導入といえよう.
ている.
Hauta-Kasari らは分光画像を高速に閲覧するための画像
Yamaguchi らは,マルチバンド動画像を用いた肌病変の色
フォーマットについて検討している(JIST,50(6),572).こ
再現性の評価実験結果を報告している(CIC,8).6 バンド動
こでは多原色ディスプレイ,RGB ディスプレイ(CRT およ
画カメラおよび 6 原色ディスプレイを用いたスペクトルベー
び液晶),携帯情報端末などを想定し,それぞれに対して提示
スの色再現が遠隔医療において有効かどうかを,皮膚科を対
すべき画像の構造として,空間的なサブサンプリングとスペ
象に実験している.実際に病院で実証実験を行い,色再現の
クトル方向の主成分分析とを組み合わせたアーキテクチャを
正確性,病変の見落としの少なさ,医師の満足度などの点で
示している.実用性を考えたときに必要になる技術に着目し
マルチバンド動画像が優れていることを示している.
た例と言える.
5.2
多原色ディスプレイ
5.5
分光反射率の推定
少ないバンド数の画像から分光反射率や分光放射輝度を推
表示系では,多原色ディスプレイのための信号分割方法の
定する問題は長い期間研究されているが,分光反射率データ
論文が出されている.Kang らは,線形化された LAB 空間に
ベースを用いた新しい知見や動画マルチバンド画像を扱った
おいて 3 次元ルックアップテーブルを用いる色信号分離方法
研究など,いまなお研究成果の報告がなされている.Valero
を提案した(JIST,50(4),357).提案方法は計算効率と色
らは,ナチュラルシーンを対象にしたマルチスペクトル画像
2006 年の写真の進歩
165
データベースを用いて,RGB3 バンドから直接分光放射輝度
D45 標準光源に近似するとしている.そしてキセノンによる
をどの程度正確に推定できるかを調べている(CGIV,195).
耐光試験においては,室内の分光分布に合わせるため適当な
シミュレーションベースのため,現実より良い条件設定と
UV カットフィルターを採用するのが妥当としている(JIST,
なっているが,3 バンドからでも高精度の推定が可能である
50(4),309)
.
ことを示している.一方 Morovic らはマルチスペクトル動画
実際の自然経時劣化との対応については,Juerg Reber ら
像からの分光反射率について研究を行った(CIC,131).6 バ
(Ilford)が,染料系インクジェットと多孔質メディアの組み
ンド動画カメラを題材に複数の分光反射率推定法のパフォー
合わせ材料に対する,ビル内の実経時劣化とオゾン加速試験
マンスを比較している.特に 3 バンドから 6 バンドへのマル
との対応について,公表されている屋外オゾンガス濃度をも
チバンド化によって高精度化がもたらされることを示してい
とに比較している.それによると,実経時における CMY の
る.
劣化変動は,オゾン加速試験における褪色挙動とよく一致し
5.6
ており,染料の劣化の主要因は,オゾンであるとしている.
照明の推定
Tominaga らは,ミラーボールを用いた全方位シーン照明の
また,屋内のオゾン濃度は,部屋の換気率で大きく変動する
推定を提案している(JIST,50(3),217).この問題はコン
ことから,オゾン耐性を一義的に定量化するのは難しいとも
ピュータビジョンや画像処理,画像再現等の分野への応用が
述べている(NIP22,231)
.一方,林雅史ら(大日本印刷)も,
考えられる.類似の先行研究もあるが,著者らは測定システ
各種デジタルプリント材料を一年自然経時した後の画像劣化
ムを厳密にキャリブレーションすることで従来より精度を向
と,各種加速試験(オゾンガス試験,蛍光灯試験,湿熱試験)
上させるとともに,RGB 色分布でなくスペクトル推定までを
の結果について比較を行っている.それによると,インク
行うことを提案している.
ジェットプリントの自然経時劣化は,オゾンガスと光劣化の
また Tominaga は,昼光と蛍光灯が混在した照明の分光分
複合であるのに対し,昇華型プリントは,一年経時では殆ど
布をマルチスペクトル画像から推定する方法を提案している
画像劣化は見られず,しいて言えば光劣化の度合いに合致す
(CIC,125).蛍光灯のスペクトルが輝線スペクトルの波長の
るとしている.また,昇華型プリントのオーバーコートにつ
集合に注目することで 3 つのクラスに分けられることを見出
いては,オゾンや高湿耐性を付与していることが考えられる
し,そのいずれのクラスかの判定とそれに続く分光分布推定
としている(NIP22,261).
耐光性に関しては,Douglas Bugner ら(Eastman Kodak)が,
という 2 段階の方法でこれを可能にしている.
様々なインクジェットプリントにおける耐光性の相反則性を
6.
画像保存
調査している(例:Xe の 50 klux と 5.4 klux).各種インクと
メディアを組み合わせた試料で調べても,相反則係数 Rf(=
6.1
低照度での濃度変化 / 高照度での濃度変化)は凡そ 1 に近く,
画像保存関連技術
金沢幸彦
(富士フイルム・アドバンスト
マーキング研究所)
それ程相反則不軌は考慮しなくても良いという結果を得てい
る(NIP22,235).
画像保存の評価としては,自然経時劣化をより正しくシ
ガス耐性評価では,金沢ら(富士フイルム)が,ガス耐性
ミュレートする加速試験方法の探求が,昨年に続き各種プリ
に関する文献のレビューを行っている.自然経時劣化を単独
ント材料共通の課題となっている.そのため,基本データと
ガス試験結果と対比させる場合,屋内における大気汚染ガス
なる家庭内の実環境を調査した文献や,各社で異なる評価方
濃度をパッシブサンプラーにより実測し,その累積濃度と自
法を,統一的なものに是正する動きがみられた.国内外の規
然経時劣化から相関性を解析する手法や,O3,NO2,SO2 の
格委員会では,各種デジタルプリント材料の保存性試験方法
3 種混合ガス試験の,試験法としての問題点を究明した結果
の制定に向け活発な議論が交わされ,国内においても,よう
について,あらためて紹介している(日写誌,69(2),91).
やく画像保存性の試験方法に,統一性をもたせられる見通し
インクジェットプリントの画像保存性に関しては,加藤真
がでてきた.以下に 2006 年の主だった報告内容について,項
一ら(セイコーエプソン)が,インクジェット記録物の耐ガ
目別に紹介する.
ス性の進歩について報告している.インクジェット用染料系
家庭内の実環境を調査することは,画像が実際にかざされ
分子は,オゾンにより酸化分解して褪色されやすいが,染料
る劣化要因の度合いを知る上で,また正しい加速試験法を設
系分子に電子吸引基を導入し,酸化されにくい構造に改良す
定する上で非常に重要である.従来からこの件に関する報告
ることでオゾンガス耐性は急激に良化し,褪色バランスも向
はされてきたが,今回 Douglas Bugner ら(Eastman Kodak)
上したとしている(日写誌,69(2)
,88)
.また,原正人ら(日
は,世界の代表的な 8 都市の各 8 家庭における環境(温度・
本大学)は,最近の黒白インクジェットプリントの画像保存
相対湿度・照度・分光分布)を,ほぼ年間を通して測定する
性に関する試験結果を報告している.黒白プリントはグレー
調査を行った.それによると,年間平均温湿度は従来の知見
バランスが重要であり,画像保存性においてはカラーバラン
C,54±9.9%RH)
と大差ないが(21.1±3.3°
,照度は通念より低
スに変化がないことがよりシビアに要求されるとしている
いと提唱している.また,窓越しに外光が入る家庭内の分光
分布についても,その平均的な分布を求めており,それは
(日写春,22).
アナログおよびデジタルによるアーカイブの現状と課題に
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
166
ついては,画像保存セミナーで講演がなされた.谷(東京大
スの研究目的利用に期待している(月刊 IM,45(11),10).
学史料編纂所)や井上(奈良文化財研究所)らは,昨今,一
資料の状態調査と改善に関して,小島(東京大学経済学部
部感材メーカーがアナログ写真関連製品から撤退したことに
資料室)は,所属する資料室所蔵資料の劣化状況の調査結果
触れ,アナログ材料による保存においては,機材や材料の入
とその保存対策の成果をまとめた.保存対策を考える上で,
手が不安定になってきたことに加え,白黒フィルムの現像所
データ分析には既存の調査結果との比較が重要とし,今回,
まで減り,インフラが崩壊しつつあることに強い懸念を示さ
基準・根拠をしめした上で元データを公開したことの意義を
れた.一方,将来に向け,再生の永続性が約束されていない
述べ,多くの図書館や資料館に科学的な批判や分析ができる
デジタルに,貴重な研究資源や文化財写真を託すことに対す
ように元データの公開を呼びかけた(月刊 IM,45(6),10).
る不安感ももたれており,現在アーカイブに携わる方々に共
修復については,平林ら(
(有)フォトグラファーズ・ラボ
ラトリー)が,退色ポジフィルムの RGB の 3 色分解露光か
通する問題と解釈できる.
規格動向に関しては,林広子(セイコーエプソン)がサマー
らポジマスクを作製し,濃度低下した部分を補うことで近似
セミナーにおいて講演している.その中で,実環境での実力
的な復元ポジフィルムができると報告した(日写春,24).ま
を見極められる信頼性の高い加速試験方法の開発と,評価方
た,適正な写真画像の保護処置や修復を行うには,その写真
法の統一の重要性を説かれている.また,ISO 規格において
技法に熟知していることが不可欠であるが,画像保存セミ
は,デジタルプリント材料のガス耐性試験方法として,オゾ
ナーでは,オスターマン(ジョージ・イーストマン・ハウス
ンガス試験が採用されたこと,及び耐光性試験においては,
国際写真博物館)が,湿板写真や鶏卵紙をはじめとする歴史
あらたに UV カットフィルターや IR カットフィルターの採用
的技法の研究と実践からその意義を解説した(画像保存,1).
が検討されていることを紹介している(サマーセミナー,8).
カビとゼラチンについての報告が 1 件あった.Abruscia
以上,実環境における実態調査や,自然経時劣化と各種劣
(Universidad Complutense de Madrid)は,スペイン内の各施
化要因との相関性解析など,より自然経時をシミュレートす
設に保存されている映画フィルムから同定・分離された糸状
る評価法の探求が進められており,そのことがプリント材料
菌を使用したゼラチン溶液の粘性により,写真用ゼラチンの
の保存性評価法の規格へも反映されつつあるのが,この 2006
生物劣化を研究している.菌類が付着したフィルムが不適当
年における進歩である.
な保存状態に置かれた場合や高湿度にさらされると低温度
6.2
展示・修復・保存関係
山口孝子(東京都写真美術館)
適正な資料の保存方法を見いだすためには,今置かれてい
C)に保っていても生物劣化を引き起こす危険性があると
(4°
した(International Biodeterioration & Biodegradation,58,
142).
る資料がどのような状態にあるかを把握し,何を改善すれば
紙に関しては 2 件の報告があった.紙の酸性度は自身を劣
よいのかを検討することが重要である.ここ数年,資料の劣
化させる重要な要因としてよく知られているが,吉田(東京
化度調査や展示室・収蔵庫の環境調査の報告が毎年あり,そ
文化財研究所)らは,日本工業規格やアメリカ紙パルプ技術
の調査方法や改善方法の詳報は,他の施設においても生かす
協会標準規格,ISO 国際規格やアメリカ材料試験協会規格で
ことが出来ると考えている.また,2006 年は,紙の酸性化,
定められたそれぞれの冷水抽出法や熱水抽出法による pH 値
退色ポジフィルムの復元,ゼラチンに生じるカビの同定,展
や表面 pH 測定法で得られた値を比較検討し,各方法の問題
示照明に関する報告あり,マイクロフィルムからのデータ
点と特性を示した(文化財保存修復学会,51,59).文化財
ベース化についての事例報告も多く見られた.
展示収蔵施設などでは,臭化メチル製剤を作品の新規収蔵時
年々進むデジタルアーカイブに関しては 4 件あり,諏訪市
や定期的な収蔵品の燻蒸剤として繰り返し使用してきた.間
図書館は,マイクロフィルム化されている郷土新聞の 9 万コ
渕ら(東京文化財研究所)は,燻蒸した紙資料への加速劣化
マを PDF ファイル形式による電子映像データに変換した.岩
処理後に,残留臭素の測定,pH 測定,色測定をおこない,繰
崎(諏訪市図書館)は,この保存資料のデジタル化事業計画
り返し燻蒸によって臭素が蓄積して,この残留薬剤が経年劣
の経過と効果について述べている(月刊 IM,45(3),10).檜
化による紙の酸性化や黄変を促進することを明らかにした
山((株)ミウラ)は,都電荒川線の図面・資料のデジタル化
および情報の共有化に伴う検索システムの導入・活用を解説
(文化財保存修復学会,51,70).
展示照明については 1 件の報告があった.木下(東京国立
した(月刊 IM,45(9),10).平澤(東京大学史料編纂所)
博物館)は,展示照明と間接照明の手法や「展示物がもとも
は,入唐求法巡礼行記の総合的なデータベースの構築と公開
とあった本来の場所の光」と「博物館・美術館において展示
検索システム・管理情報システムの開発過程を紹介した.研
物を見せる光」との兼ね合いを通した事例を挙げ,解説をし
究成果の公開・継続的運用のあり方や画像デジタル化に伴う
た.これは,文化財を安全に配置し,照明制限の展示条件を
情報公開と著作権・所蔵権保護のためのセキュリティ対策,
満たしながら,なお美しく見せるための照明デザイナーの役
デジタル化した資料の保存・管理に考慮したという(月刊 IM,
割を示す(照明学会誌,90,739).
45(10),10).薄井(大潟村干潟博物館)は,八郎潟干拓事
6 月に開催された文化財修復学会第 28 回大会研究発表は,
業に係わる 26 年間分の新聞記事のデータベース化とマイク
セッション 29 件,ポスターにおいては 102 件にのぼり,活
ロフィルムの保存事業について解説し,新聞記事データベー
発な意見交換の場となった.平成 16 年度末の臭化メチル全
2006 年の写真の進歩
廃を受け,虫害への取り組みや燻蒸剤の影響に関する多くの
167
7. 映画
報告がなされた.また,紙資料の劣化度調査や原本の材料調
査,展示ケースの性能と改善,展示室・収蔵庫の環境調査と
内山高夫
(富士フイルム株式会社 R&D 統括本部イメージング材料研究所)
改善方法,被災資料の救済方法や被災した文化財の修復支援
活動についてなど,様々な発表があった.ここではセッショ
ン報告のみを取り上げる.括弧内に大会要旨のページのみ記
載した.
松田(福島県立博物館)は所属館における IPM(総合的害
虫管理)の導入にあたり,収蔵庫・展示室のみならず事務室,
7.1
概況
2006 年の日本国内における映画興行収入は,洋画邦画合わ
せて 2029 億円(前年比 102.4%),公開作品数 821 本(前年
より 90 本増),入場者数 1 億 6458 万人(前年比 102.6%)で
あった.
図書室にいたる建物の全域について,虫やカビの種類や数,
邦画の公開作品数は 417 を数え,興行収入は初めて 1000 億
進入経路を調査した(18).園田ら(国立民族学博物館)は,
円を突破し,洋画とのシェアが 21 年ぶりに逆転するなど,ま
所属館における IPM として,虫害の早期発見,被害報告の徹
さに日本映画復活の年となった.その背景としては,シネコ
底,生物生息調査の蓄積データを活用した被害の発生や再発
ンの普及,デジタル技術の普及に加え,
「LIMIT OF LOVE 海
の防除の取り組みを概説した(20).鳥越(九州国立博物館)
猿」,「THE 有頂天ホテル」,「デスノート the Last name」な
らは,低酸素濃度法と簡易調湿方法を用いた二酸化炭素殺虫
どのヒット作に代表されるように,テレビ局の映画製作への
法を提案した(22)
.木川(東京文化財研究所)らは,燻蒸剤
参加が挙げられる.
がタンパク質材質(標本,膠,絹)に及ぼす影響を検討する
洋画で興収 100 億円を突破したのは,2005 年 11 月から公
ために,試料の電気泳動や IR 分析をおこなった.その結果か
開されていた「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」を除け
ら,タンパク質の種類や構造の違いによって燻蒸剤の影響に
ば,
「パイレーツ・オブ・カリビアン / デッドマンズ・チェス
差が認められたとした(26).神庭(東京国立博物館)らは,
ト」1 作品のみであり,また,近年勢いのあった韓国映画本
振動計を用いて包装形態や輸送手段,輸送ルートによって異
数は半数近くに減少するなど,外国映画人気に陰りが見えた
なる振動・衝撃のデータを採取した.それらの測定データの
1 年であった.
蓄積から文化財輸送の安全性向上システムの開発をおこなっ
スクリーン数は,昨年から 136 増え,3062 となった.その
た(44)
.関(高知県立紙産業技術センター)らは,科学的根
内,シネコンのスクリーンシェアは 73%(前年比 106%)に
拠に基づいた客観的な紙資料の劣化度測定方法として官能評
達している.
価試験を考案し,得られた値が紙の物理的試験や化学的測定
文化庁は,日本映画・映像の創造,流通促進,任材育成と
とどのような相関関係が成り立つのかを検討した(68)
.坂本
普及,フィルムの保存・継承の推進を目的とした「日本映画・
((有)PHILIA)らはスマトラ沖大津波によって被災した土地
映像振興プラン」の平成 19 年度予算を,前年とほぼ同額の
台帳の修復活動,今後の支援について述べた(74).西尾(ニ
シオ・コンサーベーション・スタジオ)は,現在の修復理念
や科学技術を後世に伝えるため,また,貴重な資料となると
して「葡萄図屏風」
(ガードナー美術館所蔵)の保存修復過程
の映像記録を製作した(76).
約 22 億円とした.
米国の映画興行収入は,94 億 9000 万ドル(前年比 105.5
%)と 3 年ぶりに上昇し,公開本数は 607 本であった.
7.2
フィルム
2006 年は,映画フィルムの新技術・新製品の発表はなかっ
また,平成 18 年に,新しく 5 点のダゲレオタイプが重要
た.今後,銀塩フィルム性能の更なる高品質化,デジタル技
文化財に指定されたことにより,月刊文化財において写真と
術との融合などにより,銀塩フィルムの特長をより活かすこ
文化財の特集が組まれた.川瀬(文化庁)は,写真と文化財
とができる技術や製品の出現に期待したい.
のその目的と概要および仏像写真家と彫刻写真について,松
本(文化庁)は写真資料の重要文化財指定について,金子(写
7.3
撮影機器
16 mm フィルムカメラは,スズキエンタープライズ(株)
真史家・東京都写真美術館)は文化財としての写真について,
からスタンダード 16 とスーパー 16 兼用低消費電力型フィル
高橋(日本大学)は文化財としての写真の保存と取り扱い,
ムカメラ「ATTON Xtera」,
(株)ナックイメージテクノロジー
佐々木は壬申検査と写真について,岡塚(東京都庭園美術館)
から35 mmフィルムカメラに近いスタイルでの撮影が可能な
は小川一眞の近畿宝物調査写真について,金井(京都国立博
スーパー 16 専用フィルムカメラ「アリフレックス 416」が発
物館)は文化財写真技師の必要性について,森村(奈良国立
表・発売された.
博物館)は,博物館での撮影現場における写真資料の収集・
デジタルハイスピードカメラは,HD フル解像度での 3 倍
整理,記録保存の管理方法の重要性について,野久保(元東
速スローを実現したソニー(株)の HD スーパーモーション
京国立文化財研究所)は 45 年間に及ぶ銀塩写真を使用した
カメラシステム「HDC-3300/HDCU-3300」をはじめ,西華産
文化財写真について,井上(神奈川県立歴史博物館)は所属
業(株)から CTT 社のフル HD 対応スーパースローモーショ
館での調査研究のための写真について,杉浦(名古屋市博物
ンカメラ「KINOR」
,
(株)ノビテックからビジョンリサーチ社
館)は写真専門職の業務について述べている(月刊文化財,
のスーパースローカメラ「Phantom HD」
,
(株)三和映材社から
10).
はP+S Technik社のデジタルハイスピードカメラ
「WEISSCAM」
,
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
168
(株)ナックイメージテクノロジーからは自社開発の高感度
7.5
(ISO 2400)ハイスピードカメラ「MEMRECAM K4」の 5 機
コダック(株)は,撮影したフィルムをスキャンし,プリ
種が発売・レンタル開始された.
映像・映写管理システム
プロダクションからポストプロダクションまでの各セクショ
HD カメラは,池上通信機(株)から 2/3 型 220 万画素 3CCD
ンにおいて,撮影監督が創造したルックを管理・伝達するた
搭載フルデジタル HDTV ワンピースカメラ「HDL-45」,日本
めのカラーマネージメントシステムソフト「コダック ルック
電気(株)から HDTV 対応の 220 万画素 CCD 搭載 HD カメラ
マネージャー システム(KLMS)Version2.1 英語版」及び「コ
「NC-H1000」,松下電器産業(株)から 2/3 型 3CCD 搭載 P2HD
ダック ディ スプ レ イ マ ネージ ャー システム(KDMS)
シリーズ「AG-HPX500」
,ソニー(株)から 2/3 型 220 万画素
Version4.1 英語版」を発売した.これにより,プリント仕上
PowerHAD FIT 3CCD 搭載「HDW-F900R」が発表・発売され
がりのシミュレーションや設定数値のファイルエクスポート
た.
が可能となり,撮影監督が撮影前に決定したルックを,ラボ
シネレンズは,
(株)ナックイメージテクノロジーから,ア
まで一貫して統一できるという(映テレ,654,32–33).
ンジェニュー社スーパー 35 対応「Optimo15-40/T2.6」,カー
ルツァイス社「マスタプライムレンズ(全 12 種)」,同社スー
8. 医用画像
パー 35 対応ワイドレンズ「ツァイスウルトラプライム 8R/
松本政雄(大阪大学大学院医学系研究科)
8 mm」
,同社 16 mm フィルムカメラ用「ツァイス ウルトラ 16」
が発表・発売された.
デジタルシネマ用レンズは,
(株)ナックイメージテクノロ
ジーから,カールツァイス社のテレフォト HD ズーム「デジ
ズーム 17-112 mm/T1.9」が発表された(映テレ,654,24–30).
7.4
デジタルシネマ
8.1
医用画像の基礎
①医用画像の変革
本田(コニカミノルタエムジー)は,7 月 2 日に東京で開
催したシンポジウム「乳房撮影におけるアナログ画像とディ
ジタル画像の現状と将来」の特集にあたって,
「医用 X 線画
2005 年 7 月に発表された DCI(Digital Cinema Initiative)の
像のアナログからディジタルへの変革と写真学会の改革」と
推奨基準や,米国においてビジネスモデル VPF(Virtual Print
題して,医用 X 線画像ではディジタル化が進展しており,現
Fees)が確立・展開されたことを受け,2006 年はデジタルシ
在,乳房画像だけがアナログ画像として残っており,この領
ネマが急速に普及した.2006 年,DCI・2K/4K 推奨基準を満
域でもディジタル化が急速に進行し始めていること,また,
たしているデジタルシネマスクリーン数は,全世界で 3000 ス
写真学会の改革の一環として,写真材料や機器を開発し「提
クリーンを突破し,前年の約 3 倍に増えている(全世界の映
供する立場」の写真学会とそれらを「使用する立場」の日本
画スクリーン数は,12 ~ 15 万と言われている).
放射線技術学会との交流を深めることで,学会活動を活性化
米国の DCI・2K/4K 推奨基準デジタルシネマスクリーン数
することを目的として行ったシンポジウムの内容のうちで,
は 2000 を越え,世界のデジタルシネマ導入の牽引役となっ
本学会が担当した午前の部の「乳房撮影技術の現状と将来」
ており,各シネマチェーンが発表している計画を包括すると,
で講演された岩崎(富士フイルム)の「乳房画像入力技術」,
10 年後には 30000 スクリーンを超える(米国の全スクリーン
大石(コニカミノルタエムジー)の「乳房画像出力技術」,藤
数の約 9 割に達する)予想となる.
田(岐阜大院)の「乳房画像処理技術」と最後の松本(大阪
欧州の DCI・2K /4K 推奨基準デジタルシネマスクリーン数
は 500 に及び,2005 年初頭の 63 スクリーンから確実に増加
している.EC 圏では VPF の研究と導入検討が成されており,
今後スクリーン数の大幅増が予想される.
大院)の司会の「パネルディスカッション」を簡単に解説し
ている(日写誌,69,2).
岩崎(富士フイルム)は,「乳房画像
入力技術について」
と題して,アナログシステムであるフイルム / スクリーンシ
アジアの DCI・2K /4K 推奨基準デジタルシネマスクリーン
ステムの変遷と現在のフィルム / スクリーン システムを解説
数は約 270 を数える.その内の約 100 スクリーンがある韓国
し,ディジタルシステムとして,その特徴,標本化,量子化
では,KOFIC(韓国映画振興委員会)が「デジタルシネマ推
について解説した後,画像形成プロセスとしてディジタルマ
進委員会」を設立するなど,官民一体となってデジタルシネ
ンモグラフィの画像検出方式として,Computed Radiography
マの普及に取り組んでいる.一方,中国やインドでは比較的
(CR)方式,PCM 方式(CR 方式の応用),直接方式の Flat
安価な E-Cinema が普及しており,今後もこの傾向が続くと
Panel Detector(FPD),間接方式の Flat Panel Detector(FPD),
予想される.
Slot Scan 方式の各種ディジタル検出器を解説し,アナログ方
日本の DCI・2K/4K 推奨基準デジタルシネマスクリーン数
式とディジタル方式の今後の展開として,空間分解能のよい
は,約 70 まで増加したが,国内全スクリーン数の約 2%相当
アナログシステムはまだまだ重要な地位にあり続けると予想
であり,世界各地域よりも普及が遅れている.米国でのビジ
するが,QC(Quality Control 品質管理)がアナログ画像の画
ネスモデルの進捗状況を確認しつつ,運用面,保守管理面で
質を決定するので重要であると解説している.これに対して
の体制を整えながら,日本独自の慎重さを加味して普及して
ディジタルシステムは簡単な QC で一定の品質が得られやす
いくものと予想される.
く,画像処理が魅力で,CAD(コンピュータによる支援診断)
の利用も可能であると解説している(日写誌,69,3).
2006 年の写真の進歩
169
大石(コニカミノルタエムジー)は,
「デジタルマンモグラ
羽石ら(千葉大院)は,胃がんの切除手術に応用する RI 集
フィーの画像出力技術」と題して,最初に画質設計の面から
積センチネルリンパ節(SN)の視認性向上のための小型ガン
マンモグラフィ出力画像における階調と空間周波数の設計指
マカメラ(GC)と光学カメラ(OC)の画像合成法を提案し,
針について解説し,実際の画像出力装置の概要を紹介して,
胃摘出切片を用いて実験を行い,被写体が平面で近似できる
特にレーザイメージャと液晶ディスプレイに焦点をあてて,
場合に良好な結果を得たと報告し,今後は被写体が平面で近
ディジタルマンモグラフィ画像に関連付けて特徴を比較し
似できない場合への対処法について検討する必要があると報
て,現時点ではレーザイメージャによるハードコピーと液晶
告している(日写誌,69(別),74).
ディスプレイによるソフトコピーのそれぞれの特徴を十分に
中野ら(千葉大)は,全身 PET/MRI 融合画像の作成をルー
把握した上で活用していくことが必要であると解説している
チン化する目的で,相互情報量最大化法を用いた multimodality image fusion software(Fusion Viewer)により PET 画像と
(日写誌,69,10).
藤田(岐阜大院)は,
「乳房撮影技術の現状と将来―乳房画
全身 MRI 画像を自動融合させて,全身 PET/MRI 融合画像の
像処理技術―」と題して,ディジタルマンモグラフィのため
作成する方法として,全身を一括で融合させる whole body
の画像処理技術として,前処理,画像処理法として,各メー
fusion(WBF)法と新たに考案した全身を頭頸部と体幹部に
カが行っている階調処理,ダイナミックレンジ圧縮処理及び
分けて融合する partial body fusion(PBF)法を比較し,その
空間周波数処理を解説し,さらに,CAD の現状,問題点及び
精度について評価・検討した結果,Fusion Viewer と PBF 法
展望を解説して,ディジタルマンモグラフィは,モニターを
を組み合わせることにより,これまで難しいとされていた全
利用して画像処理と CAD をいかに有効に利用するかに,そ
身 PET/MRI 融合画像が簡便な位置合わせで可能になり,
ルー
の有効性が依存していると解説している(日写誌,69,16;
チン検査として実施できる精度を実現できたと報告している
(日写誌,69(別),76).
医画情誌,23,19).
日本放射線技術学会・日
高山ら(千葉大院)は,消化管疾患の診断での電子内視鏡
本写真学会共同開催シンポジウム「乳房撮影におけるアナロ
システムによる色補正が,現在,異なる症例に対して同一の
グ画像とディジタル画像の現状と将来」―パネルディスカッ
色補正手法,あるいは同一のパラメータによって行っている
ションの報告―」と題して,シンポジウムで講演されたメン
のに対し,ヘモグロビン濃度指数を用いた色補正手法を提案
バーと会場とのパネルディスカッションのやり取りについて
し,開発段階で医師の協力のもと疾患ごとに異なる色補正パ
報告している(日写誌,69,23).
ラメータを容易に決定するためのシステムを構築して,実際
松本(大阪大院)は,「第 1 回
②画質評価
笠井ら(コニカミノルタエムジー)は,CR(Computed Radio-
の内視鏡画像に適用した結果,照明ムラを強調せずに効果的
な色補正が行えたと報告し,今後は,消化管疾患の症例別,
graphy)方式の画像システムにおいて,X 線画像の画質の向
癌の組織型別に多くの色補正と解析を行い,最適なパラメー
上を目指し,輝尽性蛍光体プレート用に CsBr 蛍光体の実用
タを導出する必要があると報告している(日写誌,69(別),
化を検討し,CsBr 蛍光体を用いた蒸着型 CR プレートを開発
78).
して,従来の塗布型プレートに比べて,ファントム画像の画
梁川ら(千葉大)は,X 線 CT 心電同期撮影の心臓動態ファ
像視認性が向上し,画像鮮鋭性と粒状性に優れ,画像性能の
ントムを使用して,食道癌診断を想定した周辺臓器浸潤の判
指標である DQE(Detective Quantum Efficiency)が 2 倍以上
定のための脂肪層 LDB(Low Density Band)の心電同期再構
向上したと報告している(日写誌,69(別),82).
成画像の物理特性を検討し,モーションアーチファクト面積
本田ら(コニカミノルタエムジー)は,X 線画像における
を測定することによって,時間分解能を予想することが出来
位相コントラストによるエッジ効果に起因する画像の鮮鋭度
たので,周辺臓器浸潤の指標となる LDB の評価では,時間
の向上のシミュレーション評価を 8.5 mm 径のプラスチック
分解能の影響を受けていることを念頭において診断する必要
ファイバーの撮影実験により定量的に確認したと報告し,こ
があると報告している(日写誌,69(別),80).
こでの画像の辺縁部にのみ得られる現象での鮮鋭度の向上の
物理表記が今後の課題であると報告している(秋要集,26;
9.
科学写真
医画情誌,23,27).
8.2
医用画像の応用
①医用画像出力
9.1
3D 表示
久保田敏弘(京都工芸繊維大学名誉教授)
吉岡ら(富士フイルム)は,水溶媒で塗布する医用ドライ
ホログラフィを含む 3 次元画像表示に関する研究が引き続
フィルム DRYPIX7000/DI-HL システムは,超微粒子高感度ハ
いて行なわれている.3 次元画像表示一般については 3 次元
ロゲン化銀乳剤技術,迅速熱現像技術,色調調整技術や画像
画像コンファレンス 2006(3D コンファレンスと略)で広範
安定化技術などの多くの技術を集大成し,迅速処理と画像安
囲にわたる分野の研究発表が行われ,
「光学」で特集が組まれ
定性を両立させることに成功した画期的なドライフィルムで
た.ホログラフィに関しては SPIE のシンポジウム(Practical
あると報告している(日写誌,69(別),86).
Holography XX: Materials and Applications,その Proceeding は
②医療診断
SPIE の Vol. 6136 として出版された)を初め,国内では写真
170
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
学会の年次大会,秋季研究報告会などにおいても研究発表が
ついてその特性を報告した.P5600 が緑,青感用の銀塩写真
行なわれた.
乾板であるのに対しこの材料は赤感用であり,平均粒子サイ
3 次元映像は究極の映像表示技術であり,最近ではハイビ
ズは P5600 と同じ 40 nm 程度である.反射方ホログラムに対
ジョン普及後の次世代映像技術として立体ディスプレイに対
して種々の現像液と漂白液の組み合わせに対する回折効率と
する関心が高まってきている.
「裸眼で見る立体映像」と題し
再生波長を求め,150–500 mJ/cm2 の露光量で 50%を超える回
てめがねなどを用いない表示技術に関する特集が「光学」に
折効率が得られることを報告した.
おいて組まれた.高木(東京農工大)がフラットパネル型に
小関(千葉大)らは,光重合型フォトポリマーに透過型ホ
ついて報告し(光学,35,400),圓道(名大)が赤外パルス
ログラムを記録し,光重合に伴うネットワーク形成過程とホ
レーザーを集光させ空気をプラズマ化して発光させる技術を
ログラム特性との相関について報告した.反応性,屈折率と
含む全周観察型について(光学,35,410),平山(東芝)が
もに高いアクリレートモノマーと,反応性,屈折率ともに低
平置き型について(光学,35,416),最近の技術動向につい
いメタクリレートモノマという性質の異なった 2 種類のモノ
て解説した.また,舘(東大)が省スペースで臨場感あふれ
マーからなる材料を使い実験を行った結果,回折効率などの
る立体映像シアターや新型ゲーム機,立体テレビ電話などへ
ホログラム特性は材料の組成だけでなく,重合速度すなわち
のバーチャルリアリティーの応用について(光学,35,423),
ポリマーネットワークの形成速度などを決定するプロセス条
谷本(名大)が 3 次元テレビの展望について(光学,35,428)
件によりコントロールできることを明らかにした(日写誌,
紹介した.
335).
立体表示の方式は種々あるが,奥行き融合型 3 次元表示は
重クロム酸ゼラチンは低感度,湿気に弱いなどの短所はあ
複数面の画像を奥行き方向に積層する表示方式である.伊達
るが,回折効率や SN 比が極めて高いホログラム記録材料で
(NTT)らは,2 つの積層されたスクリーンにプロジェクター
ある.龍頭(千葉大)らは,この材料の前硬膜がホログラム
2 台でそれぞれ画像を投影する方式を採用することにより,
の画質に及ぼす影響について研究しており,光架橋の程度が
液晶パネルの積層において課題であった大画面化と背景が透
前硬膜の程度にどの程度影響するかについて,溶出ゼラチン
けて見えるシースルー表示化を検討,表現能力の向上を図っ
量を測定することによって比較した(日写春,90).
た(3D コンファレンス,105).同じグループの陶山(NTT)
液晶パネルなどの電子デバイスに干渉縞を表示する電子ホ
らは,焦点距離を高速に変化できる可変焦点レンズを利用し
ログラフィはリアルタイムの 3 次元動画像表示が可能であ
たこの方式について研究を行っており,多焦点レンズを用い
る.永井(北大)らは,複数の光源を持つ再生照明光源と液
た方式を新たに提案し基本動作を確認し画像の解像度の劣化
晶パネル,および電子シャッターから構成されるシステムに
が抑えられることを明らかにした(3D コンファレンス,13).
おいて,それらを制御装置により同期させることによって広
末廣(日本ビクター)らは,自社で開発した反射型液晶表示
視野,広視域を実現する方法を提案した(3D コンファレンス,
素子である D-ILA デバイスの応用として写真技術の一つであ
93).
る Integral photography の方式のディスプレイとレンズ系を用
フェムト秒レーザーを用いてホログラムを記録することに
いた投射型の 3 次元映像システムを提案しており,実用的な
より光の伝播の様子を連続な動画像として観察することがで
解像度をもつ自然な 3 次元ディスプレイが低コストで実現で
きる.葛原(京工繊大)らは,回折格子で回折され伝搬する
きる可能性を示した(3D コンファレンス,219).
パルス光の 3 次元像の記録と観察について報告した(3D コン
光硬化性樹脂を用いた微小立体構造物の造形に関して,木
村(工芸大)らはフェムト秒光照射による導電性高分子を用
ファレンス,89).
藤原(兵庫県立大)らは,反射型液晶パネルを用いて位相
いた 3 次元情報の記録・表示を目指した研究を行っており,
シフトを実現し,3 原色のレーザー光でカラーホログラムを
ルテニウム錯体の多光子吸収を利用してピロールの光重合及
記録し像再生を確認した(3D コンファレンス,183).
びパターン形成を試み,ポリビニール基板への析出が改善で
きたことを報告した(日写春,42).
ホログラフィにおける記録材料に関しては,久下(千葉大)
9.2
文化財
城野誠治(東京文化財研究所)
文化財の分野における科学写真の役割は多岐に及ぶ.美術
らは写真感光材料を用いた金微粒子分散ゼラチン膜の作製法
史的な見地による人間科学の研究資料として,また文化財の
について研究している.ホログラフィ用乾板に干渉縞を記録
状態観察や潜在情報の抽出,内部構造の考察など,自然科学
し金沈着現像を行い焼成することにより薄い金膜からなるホ
的な調査の情報など,文化財の保存や歴史的遺産の意義を継
ログラムを作製することができる.コニカミノルタ P-5600 乾
承するために重要な役割を担っている.
板と磁性皿を支持基板とする自製の塗布乾板を用いたイメー
人間科学,自然科学では要求されることがらは異なるが,
ジホログラムの作製結果について報告した.この方法によっ
特に自然科学的な見地で画像を記録する場合は,撮影時に起
て芸術的な鑑賞対象となるホログラムが作製可能であること
る光学的な問題,例えば,レンズの収差やデジタル記録媒体
を報告した(日写誌,276;日写春,56).また回折効率を向
では深刻な光の干渉作用による色ズレといった弊害を排除し
上させるための焼成条件について検討した(日写秋,28).
て,鮮鋭度の高い画像を得ることは必須の要件である.2006
岩崎(京工繊大)らは,新しく開発されたコニカ P7000 に
年は文化財における科学写真の分野でめざましい進歩は見受
2006 年の写真の進歩
171
けられないことから,本項目では情報としての精度を高める
まっている.谷添は 3 原色広色域ディスプレイがすでに
ため,画像品質の向上と問題点を踏まえたまとめとした.
AdobeRGB を超える色再現域を備え,sRGB 相当のディスプ
安井(大日本インキ(株))はインクジェットプリンタ用の
レイでは再現不可能であった広色域画像データの持つ色を再
水性顔料インクについて,現状と問題点を述べている.デジ
現できるとしながらも,輝度効率の低下といった問題点を指
タル化が進む中で,パーソナルなレベルで利用出来るインク
摘し,これに対応する技術として,6 原色 FS 方式 LED バッ
ジェットプリンタによる印刷が一般化し,銀塩写真に代わる
クライトディスプレイの試作機を紹介している.美術館など
ものとして写真画質という点でも一般用途で扱われる場合に
で行っているバーチャル展示では,オリジナルの色情報の再
は十分満足のいくものとして普及している.しかし染料イン
現に広色域ディスプレイが有効なことは言及するまでもな
クでは耐光性や耐水性といった点で,耐久性に問題があり,
い.科学写真として記録した画像は研究を目的とする場合が
それに優るインクとして顔料インクの改良が望まれてきた.
多く,ハードコピーやディスプレイでの観察においても高画
安井は顔料インクの耐光性は銀塩写真を超えるレベルを実現
質で正確な色彩の再現が望まれる.現状でも高解像度で
しているとしながらも,光沢系メディアへの浸透についての
AdobeRGB を再現する広色域ディスプレイは販売されている
問題点を挙げ,染料インクが実現している耐光性でコン
が,一部の製品を除き非常に高額で,誰もが常用出来るレベ
シューマー用途では十分であり,染料インクの方がメディア
ルではない.今まで実現不可能であった正確な色再現へ向け
の持つ光沢感をアピールできるとする動きもあることを指摘
た,さらなる発展と実用性も踏まえた製品の開発が期待され
している.しかし,作品の保存安定性を考えるとプロユース
る(日写誌,69(6),378).
としては顔料インクの高耐光性が保存や展示には必要であ
DVD や CD 等の媒体はデジタル情報の記録には欠かせない
り,光沢メディア内部へ浸透させようとすると粒子を細かく
メディアである.撮影や顕微鏡観察などに用いる光学レンズ
しなければならず,そうすると耐光性が落ちるという厳しい
の開発も,コンピュータによるレンズ設計の自動化やガラス
状況について言及した.文化財写真の分野でもデジタル化さ
素材の開発,加工技術の向上により,諸収差の補正も飛躍的
れた画像データからハードコピーを作成することは,画像の
に向上した.
品質,保存性などの諸条件を満たす事が出来ず問題が多い.
昨今,デジタル化された情報がアーカイブの多くを占める
印刷原稿や研究用資料として用いる A4 サイズ以下のサイズ
ようになったが,媒体への正確な情報移行において,本論文
から美術館での展示で用いる数メートルにも及ぶ大判サイズ
で指摘している光記録用のアプラナティック単レンズにおけ
のプリントまで様々な需要があり,記録紙のマテリアルに浸
る偏心収差による諸問題とその対応への指針は記録する情報
透性の影響を受けない高い耐久性の顔料系インクの開発と,
の保全には重要な事項である(光学,35(11),588).
マゼンタインクなど粒子の大きな色素の浸透を妨げる樹脂
城野(東京文化財研究所)は文化財の画像取得について,
コートにかわる耐水性と光沢を兼ね備えた出力紙や,カラー
現在行っている最新の手法を紹介すると共に撮影時の注意点
コントロールが容易に行える CMYK の 4 色を基本としたシン
や問題点を述べた.まず,文化財の調査は非破壊非接触が前
プルな構成のプリンター(ドライバーソフト)の開発および
提であり,撮影時に最も注意しなければならないのは温湿度
発展が望まれる(日印誌,43(3),164).
など環境の変化と光による劣化である.そこで,その要因と
山崎(キヤノン)は X 線写真の特徴,最新の診断 X 線撮影
して光りの劣化に着目し現在用いられている撮影光源の分光
装置とその技術,X 線画像の画質評価,画像処理と今後の展
特性を示し,その注意点を述べている.また,現在行ってい
望について解説している.X 線撮影も現像廃液の問題などか
る撮影手法について科学的な撮影技法を挙げ,その有効性に
ら,急速にデジタル化がすすめられている.文化財の分野で
ついて言及している.近赤外線撮影では光源にバンド幅の狭
は彫刻や漆工品,金工品などの立体物を中心として,広いレ
い LED を用い,物質固有の吸収特性をとらえる試みを行っ
ンジの情報が記録出来るイメージングプレートが調査で利用
ている.近赤外域の蛍光撮影などデジタル技術によって安定
される機会も多くなっている.ここでも述べられているよう
的な撮影が可能となった技法も多く,撮影条件が厳しい場合
に,画質的には従来の撮影法によって得られた画像を超える
においても高画質の画像が得られるため,自然科学に寄与す
高解像度が実現されているため,より精密な分析が行える可
る情報化では今後の可能性が期待できる(非破壊検査,55
能性が高まっている.診断に必要な画質を得るための画像処
理についても言及されているが,形状にばらつきのある文化
財の分野ではさらに検討が必要な部分ではないかと思われる
(日画誌,45(4),344).
(7),330).
9.3
天体写真
山野泰照(天体写真家)
2006 年も天体写真の世界ではデジタル化が進展し,飛躍的
谷添(三菱電機(株)
)は従来の sRGB を超える広色域を達
な発展や進歩というよりは,確実に撮影機材や画像処理技術
成するディスプレイの開発について,その開発における課題
が進化した年であった.撮影機材の面では,デジタル一眼レ
と展開について述べている.印刷や DTP といった分野にお
フカメラの新製品の登場が相次ぎ,いずれも高感度設定にお
けるワークフローのデジタル化に伴い,リバーサルフィルム
ける対ノイズ性能が向上した.撮像素子の面積が 35 mm フル
が果たしていた色見本の役割をディスプレイに求め,色管理
サイズあるいは APS サイズと大きく,画素数が 1000 万前後
の基準として広色域ディスプレイの開発と応用に期待が高
もあることから,広角撮影や高精細撮影に威力を発揮するよ
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
172
うになってきた結果,天文雑誌における投稿写真のコーナー
でもデジタル一眼レフカメラの割合が急速に伸びてきた.ま
業を終了することを発表.
1 月:株式会社ニコンがフィルムカメラ製品のラインナップ
た,これまでは冷却 CCD カメラのような観測専用機材の独
見直しを行いフィルムカメラとしては 2 機種のみ継続し
壇場であった彗星観測においても,ラブジョイ彗星(C/2007
デジタルカメラに経営資源を集中することを発表.
E2)の発見が,市販のデジタル一眼レフカメラによってなさ
4 月:マミヤ・オーピー株式会社が中判カメラを含む光学機
れたことは注目に値する.相対的な性能比較,特にノイズの
器事業部門のコスモ・デジタル・イメージング株式会社
面で,デジタル一眼レフカメラは冷却 CCD カメラに及ばな
への営業譲渡を発表.
いものの,画像鑑賞だけでなく実用的な観測においても威力
を発揮するレベルにまでになったことが証明された事例であ
8 月:米 Kodak がデジタルカメラの開発の一部・設計・製造を
Flextronics International に移管すると発表.
以上のように,2006 年はフィルムからデジタルへの開発力
る.
また,本格的な観測機材に目を向けると,天文衛星を含め
集中と電機メーカーのデジタル一眼レフカメラへの進出が更
て,可視光領域だけでなく,X 線,赤外線などの異なる波長
に顕著になってきている.このような中でフィルムカメラは
領域での観測装置を連携させた研究が進み,新しい発見に繋
ほとんど登場せず,デジタルカメラもコンパクトタイプでは
がっている.X 線天文衛星「すざく」とすばる望遠鏡の同時
製品サイクルが一層短くなりコストだけではなく新しい付加
観測を実現することで,ブラックホールへ流れ込んでいたガ
価値を模索した数多くの製品が登場している.また,デジタ
スが逆に外へ噴出する「宇宙ジェット」現象の瞬間をとらえ
ル一眼レフカメラも普及機の登場が活発となっている.研究
ることができたのも,そういう成果の例である.今後,さま
や製品開発に関した発表は日本写真学会の大会や会誌などで
ざまな波長の観測により,新しい天文学の世界が広がること
活発になされ,デジタル技術や周辺技術に関した多岐にわた
が期待されている.
る成果の数々が報告された.
画像処理あるいはソフトウェアの面では,より暗い天体を
①カメラ
確実にとらえるために複数枚の画像をコンポジットすること
研究・開発ではデジタルカメラのノイズ低減や画像処理を
で S/N を高めるというような性能面の向上だけでなく,新天
含めた撮像素子・画像関連技術,さらに昨年同様に手ぶれ防
体発見とその報告という目的に特化した,ワークフロー全体
止技術などの周辺技術が報告された.フイルムカメラの研究
を管理する,機能面に特徴を持ったソフトウェア(アストロ
報告は無かった.
アーツ
ステラハンター)が登場した.
連続撮影した画像を,移動する天体の動きに合わせて重ね
デジタルカメラ関連の報告では多くの報告がされており,
田丸(富士フイルム)はデジタルカメラにおけるノイズ低減,
て,1 枚の画像では確認できなかった彗星・小惑星の発見を
ダイナミックレンジ拡大等の高画質画像処理技術について報
目指したり,多くの画像をコンポジットして S/N を改善し暗
告した(日写春,2).佐藤,山本,中村(松下電器)はアス
い天体を検出可能にしているだけでなく,発見した天体が小
ペクト比 16 : 9 の CCD 撮像素子を採用したワイド対応カメラ
惑星であれば,情報データベースの情報と連動させることに
DMC-LX1 の特徴とホームエンターテイメントの核として AV 機
より,迅速に既知のものか未知のものかを判定する機能まで
器との連携に関し報告した(日写誌,69,191).古都(キヤ
有している.未知のものであれば発見報告を,既知のもので
ノン)はデジタル一眼レフカメラ EOS 20 Da で実現した天体
あれば観測報告が自動的に送られるため,撮影後の作業効率
写真撮影に要求される仕様および製品化を可能とした C-
が大幅に向上した.今後,このようなワークフローの改善を
MOS イメージャの特性と実力について報告した(日写誌,69,
目指した統合ソフトウェアの進化が期待されている.
187)
(日本光学会).小川(ニコン)はデジタル一眼レフカメ
ユーザーに目を向けると,一般的な写真と同様,団塊の世
ラ D2X で実現した新画像処理,クロップ高速機能,画像合
代の参加が目立つようになってきた.優秀なデジタル撮影機
成,無線 LAN を利用したコントロールシステムについて報告
材やソフトウェアの入手が容易になった一方で,撮影経験,
した(日写誌,69,183).松澤(オリンパス)はレンズ交換
画像処理経験の少ないユーザーが増えたため,撮影手順や画
式デジタル一眼レフとして初めて常時使用できるライブ
像処理手順の容易さが求められるようになってきた.普及期
ビュー機能を搭載した E-330 について報告した(日写誌,69,
に見られる現象として注目される.
178)(カメラ技術,12).
手ぶれ防止技術を中心に周辺技術やシミュレーション技術
10. 画像入力(撮影機器)
でも盛んに報告されており,中山(ニコン)は WiFi 機能搭載
長
倫生(富士フイルム)
のDSCが提供するデジタル写真の新しい楽しみについて報告
した(サマーセミナー,41)
.林(松下)は手振れ補正技術の
2006 年は前年に続きデジタルカメラ市場の成熟化が一層
進み,業界の再編が更に進んだ.以下にその流れを示す.
歴史と屈曲光学系と沈胴光学系を組合わせた複合光学系によ
りコンパクトかつ高倍率を実現した TZ1 について報告した
1 月:コニカミノルタフォトイメージング株式会社が共同開
(カメラ技術,22).杉森(キヤノン)はデジタルカメラに不
発先であったソニー株式会社へデジタル一眼レフカメラ
満を持つフイルムユーザーに答える EOS 5D とピクチャース
システムの一部資産を譲渡し,カメラ事業及びフォト事
タイルについて報告した(カメラ技術,23).高橋(富士フ
2006 年の写真の進歩
173
イルム)は 3D 電磁場解析光学シミュレータによるスミアの
キヤノンからは 28 mm 広角 3.8 倍,光学手振れ補正を搭載し
解析について報告した(富士フイルム研究報告,51,1).
たIXY DIGITAL 900 IS,1000万画素CCD搭載,チタンボディー
フィルムカメラでは市場縮小が進み,極端に登場機種数が
の IXY DIGITAL 1000,1000 万画素 CCD,光学手振れ補正 6
減少している.一眼レフとしては新機種の発表は無く,レンジ
倍ズームレンズ搭載の PowerShot G7 をはじめ IXY DIGITAL
ファインダー機で BESSA R3M,R2M の 2 機種,コンパクト
70,80,800 IS,PowerShot A430,A530,A540,A700,S3 IS,
カメラでも富士 NATURA CLASSICA,NATURA NS,KLASSE
A640,A630 等多数の機種が登場した.コダックからは広角
W の 3 機種の登場にとどまっている.
23 mmと39–117 mmの2つの屈曲光学系を搭載したEasyShare
デジタルカメラは一眼レフで普及機から高級機まで幅広い
V705,載せてプリントする ImageLink 対応の EasyShare C533,
層で 10 機種が登場したがフルサイズ撮像素子搭載の新機種
をはじめ EasyShare V603 等が登場した.三洋からは HD 動画
の登場は無かった.
記録が可能な Xacti DMX-HD1,電子式手ぶれ補正搭載の Xacti
ペンタックス *ist DL2 は有効 610 万画素の 23.5 mm×15.7
DMX-CG6 が登場した.ソニーからはタッチパネル 3 型液晶
mm CCD を装備し,単 3 形電池対応で簡単操作の小型・軽量
搭載のCyber-shot DSC-T30等の多数の光学手振れ補正屈曲光
機種として登場した.キヤノン EOS 30D は EOS 20D の後継
学系搭載機種,1000 万画素 CCD,タッチパネル 3 型液晶搭
機種で,有効 820 万画素の 22.5 mm×15.0 mm CMOS センサー
載の Cyber-shot DSC-N2 をはじめ H5,T10,W50,N2 等薄
を搭載しハイアマチュア向けに基本性能を充実させた.オリ
型モデルを中心に投入された.ニコンからは無線 LAN,電子
ンパス E-400 は日本未発売であるが,有効 1000 万画素の
式手ブレ補正を搭載した屈曲光学系搭載の COOLPIX S7c,ス
17.3 mm×13.0 mm の CCD を装備し,ダストリダクションを
イバルデザインの 10 倍ズーム機 COOLPIX S10 をはじめ,P3,
搭載しながら 375 g の小型軽量を実現した.ニコン D2Xs は
P4,S5,S6,L3,L2,S7,S8,L6 等多数の機種が登場した.
有効 1240 万画素の 23.7 mm×15.7 m CMOS センサーを装備し
パナソニックからは広角 28 mm 3.6 倍,光学手振れ補正を搭
画像真正性検証ソフトに対応したフラグシップモデルとして
載した Lumix DMC-FX01,屈曲・沈胴光学系により小型なが
登場した.ペンタックス K100D は有効 610 万画素の 23.5 mm
ら 10 倍ズームを達成した Lumix DMC-TZ1 をはじめ,LZ5,
×15.7 mm CCD を装備し,手振れ補正機構を本体内に搭載し
FZ7,LS2 等全機種に手振れ補正を搭載した特徴的なライン
たスタンダードモデルとして登場した.ソニー α 100 は有効
ナップが投入された.富士フイルムからは顔検出機能,フル
1020 万画素の 23.6 mm×15.8 mm CCD を装備し,ボディー内
画素で ISO3200 の高感度を特徴とする FinePix F31fd,同じく
手振れ補正,アンチダスト機能を特徴とし,一眼レフ市場に
顔検出機能を搭載した薄型スタイリッシュモデル FinePix
参入した.ニコン D80 は有効 1020 万画素の 23.6 mm×15.8 mm
Z5fd をはじめ,A500,V10,F30,Z3,S9100,S6000fd,A600
CCD を装備し,0.94 倍ファインダー,3D マルチパターン測
等多くの機種が登場した.リコーからは 28–200 mm の Caplio
光 II,11 点測距 AF を搭載して登場した.キヤノン EOS KISS
R4,R5,防水防塵の Caplio 500G wide,500SE model B 等が
DIGITAL X は有効 1010 万画素の 22.2 mm×14.8 mm CMOS セ
登場した.各社とも各ラインナップ毎に多くの機種を投入し,
ンサーを装備し,小型・軽量の普及型デジタル一眼レフとして
画素数・デザイン性・高機能化でしのぎを削っている.
登場した.ペンタックス K10D は有効 1020 万画素の 23.5 mm
②レンズ
×15.7 mm CCD を装備し,手振れ補正機構,防塵防滴構造,
光学系の研究・開発でもデジタルカメラに対する光学系の
ゴミ付着を防ぐ DR を搭載した中級機として登場した.パナ
特長についての報告が主となっている.泉水,臼井(ニコン)
ソニック LUMIX DMC-L1 は 4/3 型 750 万画素 LiveMOS セン
は手振れ補正技術を搭載するマイクロレンズについて,光学
サーを搭載し,ライブビューとノンダストシステムを搭載し,
技術と防振技術の両側面を報告した(カメラ技術,4).鈴木,
一眼レフ市場に参入した.ニコン D40 は有効 610 万画素の
臼井(ニコン)は高倍率で小型のズームレンズ設計における
23.7 mm×15.6 mm CCD を装備し,0.18 秒の起動時間と連続
光学技術と防振技術の設計留意点について報告した(日本光
100 コマまでの高速連続撮影を実現したエントリーモデルと
学会).平川(ペンタックス)はデジタルカメラ用の魚眼ズー
して登場した.
ムレンズについて報告した(カメラ技術,8).
コンパクトタイプでは高感度化や手振れ補正機能の搭載が
一眼レフの交換レンズは,昨年同様に広角系のズームレン
一般化し,低価格機も含めて小型薄型化が進んだ.一方,小
ズや,カメラメーカーだけでなくレンズ専業メーカーからも
型ながら高倍率レンズを搭載したカメラも登場した.画素数
デジタルカメラ専用仕様の製品が多く登場した.
はついに 1000 万画素を突破した.
フルサイズ用としてはキヤノン EF85 mm F1.2L II USM,
オリ ン パ ス か ら は水 中 3 m 防 水,1.5 m 対落 下衝撃 の
EF50 mm F1.2L USM,EF70–200 mm F4L IS USM,ニ コ ン
µ 720SW,世界最小の 5 倍ズーム機 µ 750,1000 万画素 CCD
AF-S VR Micro Nikkor ED 105 mm F2.8G(IF),ニコン AF-S VR
搭載の µ 1000 をはじめ µ 710,µ 810,FE150,SP-320,FE180,
Zoom Nikkor ED 70–300 mm F4.5–5.6G(IF),ソニー 75–300
FE190,FE200,SP-510UZ,µ 730,µ 725SW 等多数の機種が
mm F4.5–5.6,50 mm F1.4,50 mm F2.8 Macro,100 mm F2.8
2
登場した.カシオからは 1200 cd/m の明るい液晶を搭載した
Macro,70–200 mm F2.8G,300 mm F2.8G,レンズ専業メー
EX-Z600,1000 万画素 CCD 搭載の EXILIM EX-1000 をはじめ
カーからはシグマ 170–500 mm F5–6.3 DG,APO 70–200 mm
Z850,Z60,Z700,S770 等薄型ラインナップが投入された.
F2.8 EX DG MACRO HSM,APO 100–300 mm F4 EX DG HSM,
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
174
APO 135–400 mm F4.5–5.6 DG,8 mm F3.5 EX DG 円周魚眼,
ンズ)らは,オンデマンド印刷機用に搭載された薄膜インク
70 mm F2.8 EX DG,AF 28–200 F3.8–5.6 XR Di Aspherical[IF]
ジェットラインヘッドの構造,インクジェットヘッドの主要
Macro,AF 70–300 mm F4–5.6 Di LD Macro 1:2,トキナー AT-
技術について紹介した.ヘッドは,アクチュエータ,圧力室,
X 840D 80–400 mm F4.5–5.6,AF 70–300 mm F4–5.6 Di LD
共通液室,ノズルから構成されている.インクは共通液室か
Macro 1:2,ATX-X 535 PRO DX 50–135 mm F2.8 が登場した.
ら供給孔を通じて個別の圧力室~ノズルまで充填される.圧
APS-C サイズ,フォーサーズ等デジタル一眼レフ専用では,
力室上部に厚さ 3 µm のピエゾ薄膜で形成されたアクチュ
オリンパス Zuiko Digital ED 14–42 mm F3.5–5.6,Zuiko Digital
エータを配置し,厚み方向に電圧を印加することでアクチュ
ED 40–150 mm F4–5.6,ソニーDT 11–18 mm F4.5–5.6,DT 18–
エータが振動し,圧力室内のインクに圧力を加え,ノズルよ
70 mm F3.5–5.6,DT 18–200 mm F3.5–6.3,キヤノン EF-S 17–
りインクが吐出される(日画年大会,79).
55 mm F2.8 IS USM,AF-S DX Zoom Nikkor ED 18–135
放送のデジタル化に伴い,データ放送サービスが広がって
mm F3.5–5.6G(IF),AF-S DX Zoom Nikkor ED 18–55 mm F3.5–
きている.前記データ放送を通じて視聴者にもたらされる情
5.6G II,パ ナ ソ ニ ッ ク VARIO-ELMARIT 14–50 mm F2.8-3.5
報は文書や画像情報が含まれ,さらに,写真が扱われること
OIS,ペンタックス smc PENTAX-DA 21 mm F3.2AL Limited,
となるのは自然な流れである.北澤(キヤノン)は,このよ
smc PENTAX-DA 70 mm F2.4 Limited,シグマ 17–70 mm F2.8–
うな多様な情報の印刷を可能とし,データ放送の付加価値向
4.5 DC MACRO,17–70 mm F2.8–4.5 DC MACRO,APO 150
上に資するプリンタの取り組みを紹介した(日画年大会,
mm F2.8 EX DC HSM,18–50 mm F2.8 EX DC Macro,30 mm
67).林(セイコーエプソン)は,インクジェットインクへ
F1.4 EX DC(フォーサーズ専用),タムロン SP AF 17-50mm
の要求特性,高信頼性,高画質化の課題と顔料インクの取り
F2.8 XR Di II,SP 17–50 mm F2.8 XR Di II LD Aspherical[IF],
組みについて説明した.
「高光沢・高発色の写真プリント」
「プ
トキナー AF 10–17 mm F3.5–4.5 魚眼ズーム等が登場した.
ロフェッショナル写真に耐えうる光源依存性低減・機体間バ
昨年同様に主として広角系のズームレンズや魚眼レンズが
あり,光学式手ぶれ補正機構搭載製品も充実してきた.
ラツキ抑制」「普通紙の印刷品質向上」の 3 種のコンセプト
に対して,それぞれ開発したインクの設計ポイントとその特
性について述べた(日画誌,45(4),444).堤(花王)は,顔
11. 画像出力
料系インクジェット用着色剤として最近発展が目覚しいマイ
クロカプセル型顔料分散体の特徴を述べた.元来,顔料イン
クは高い堅牢性,迅速な色安定性を有していたが,これにマ
11.1 プリンタ
藤野
真(セイコーエプソン)
イクロカプセル化技術で,さらに機能を付与可能となり,結
本項では,写真画質に出力を当てたハードコピーテクノロ
果,特に印刷品質の改善に寄与していることを説明した(日
ジーに関し,2006 年の動向を述べる.ハードコピーテクノロ
画誌,45(5),451).安井(大日本インキ)は,インクジェッ
ジーでは,高画質,高速出力が基本的要請となるが,Print On
ト用水性顔料インクの現状について述べた.ポスター,サイ
Demand の流れを受けて,インクジェットヘッドのライン化
ン,壁紙等産業用途においては水性顔料から溶剤インク・UV
が活発になってきている.
硬化インクへの移行,オフィス・ホーム用途には高耐光染料
①インクジェット
インクの台頭という現状を踏まえ,耐水性・被覆という水性
野坂(ダイマティックス)は,同社のインクジェットプリ
顔料ならではの特徴を活かすことの重要性を説いた(日印誌,
ントヘッドの構造,動作原理,および同ヘッドシステムの最
43(3),164).山本(富士フイルム)は,最高級写真画質イ
適化・微調整方法について説明をした.同ヘッドはピエゾ素
ンクジェットペーパーに用いられている,高光沢感・高黒濃
子をシアーモードで利用するもので,またノズルプレートの
度実現技術について報告をおこなった.高光沢を得るにあ
表面コントロールを撥水に頼らず能動的に行えること,ヘッ
たっては,用紙凹凸の周波数と光沢感との対応をとり,用紙
ドアングルを変更することで任意の解像度を実現できる等の
に対して最適な平滑化をとった.また黒濃度をあげるにあ
特徴を紹介した(日印誌,43(3)
,173)
.東山(キヤノン)は,
たっては,インク浸透能力に影響を与えずに光散乱を抑制す
バブルジェットヘッドに関して,吐出からリフィルに至る一
るように用紙構造を改善させた(日写年大会,48).柴田(き
連のノズル内の流れ場をマイクロ PIV 法により測定する手法
もと)は,水系インクと溶剤系インクの双方を同時に印字で
を確立した.領域内の最大流速,リフィル時の流れ場の反転
きる透明フィルムメディア開発の報告を行った.両インクの
現象等,これまで測定が不可能であった種々の現象を観察可
成分分析に基づき樹脂選択を行い,変性ポリビニルアルコー
能とした(日画年大会,101).
ル)
,変性ポリアクリルアミドを選出してインク受容層を形成
甕(キヤノン)らは,ヘッド固定の 1 パス印刷で写真画質
を印刷するラインヘッドのインクジェットプリントシステム
し,これらが両インクに対する良好な印字特性を有すること
を確認した(日画年大会,91).
について検討した.同システム実現するための課題として,
村山(セイコーエプソン)らは,顔料インク専用メディア
吐出量・吐出方向の安定化,ヘッド―紙間距離の短縮,高速・
への浸透挙動の理論を構築し,微小接触角および動的走査吸
高精度用紙搬送を挙げ,それぞれについての解決方法を述べ
液計により現象の確認を試みた.顔料インクに含まれる固形
た(日画年大会,87).冨田(パナソニックコミュニケーショ
分によって形成される堆積物の圧力損失を考慮することで,
2006 年の写真の進歩
175
浸透速度式を導くことが可能であり,また前記堆積物の比抵
いて固定化できたことから,従来にない意匠性の高い印刷が
抗も評価可能であった(日画年大会,93).
期待できる(日印誌,43,125).宗像(国立印刷局)らは,
③サーマル
UV 硬化と酸化重合を併用したインキに用いられる,アクリ
玉置(ノーリツ鋼機)らは,MYTIS(Multi Yield Transfer
レートとアルキド樹脂系の硬化挙動を,オンラインメチル化
Inkjet System)プリントの紹介を行った.このプリントは,
熱分解 GC-MS 法や顕微 FT-IR イメージング装置などにより
銀塩写真の特徴である高画質,忠実な色再現性と,インク
解析している(日印誌,43,112,日印誌,43,178).小関
ジェットプリントの操作が簡便で,多品種少量処理に向く特
(千葉大)らは,ラジカル重合反応を用いた UV 硬化型ジェッ
長と,さらに屋外で 3 年~ 5 年の耐候性を兼ね備えるもので
トインクの硬化性とプラスチック基板に対する接着特性との
ある.同技術では,フィルムへのプリントは転写紙にミラー
関係を,多官能モノマーの分子構造との関係で議論し,イン
印刷し,プリント面をフィルムに加圧密着させて加熱昇華さ
クの表面張力が接着特性に大きな影響を及ぼすとしている
せている.ここでメディア素材には,あらかじめインク受容
(日印誌,43,272).北野(富士ゼロックス)らは,マット
層がコーティングされるため,昇華転写のわずらわしい工程
コート紙にオフセット印刷し,転移後のインキのミクロな挙
が省略され,飛躍的に生産効率が向上している.さらに,非
動を解析している.インキの粘度とグロスの時間変化,紙の
接触過熱でフィルムメディアの表面艶を損なうことなく高品
表面形状とミクロな明度分布などの解析結果から,グロスの
位のプリントを得ることができるシステムである(日画年大
発現メカニズムを提案している(日印誌,43,346).尾崎
会,63).廣田(大日本印刷)は,昇華プリントにおける高
(国立印刷局)らは,インキビヒクルの非塗工紙への浸透性を
光沢への取り組み,セミグロスへの取り組みについて説明し
客観的に評価するため,蛍光染色ー共焦点レーザ顕微鏡法を
た.前者においては,ベースフィルムの平滑化,保護層に添
用いて求めた光学断面像を解析し,インキビヒクルの浸透深
加する微粒子の粒径,添加量で制御可能であること,後者に
さの数値評価を行い,用紙の平滑性との相関を明らかにして
ついては,凹凸柄を持った表面を昇華転写印画物に型押しす
いる(日印誌,43,448).
る考え方があることを説明した(日画年大会,75)
.寺尾(ア
後藤(富士フイルム)らは,新聞印刷用サーマルネガ CTP
ルプス電気)らは,接触圧力の解析に必要な各部材の粘弾性
システムを開発し,
露光後の加熱処理が不要であることから,
特性の測定を行い,得られた測定値を用いて粘弾性解析を行
初版の製版時間やシステムの安定性が向上したことを報告し
うことによって,サーマルヘッドの接触圧力分布を明らかに
ている(日印誌,43,40).川邊(理想科学工業)らは,定
した.同解析結果に基づいてサーマルヘッド設計を行い,安
性的に環境に与える負荷が少ないと言われる,デジタル孔版
定した印刷特性が得られることを確認した(日画誌,45(4),
印刷システムの定量的な環境負荷をライフサイクルインベン
トリ分析に基づき求めている(日印誌,43,191)
.このよう
308).
④電子写真・印刷
な解析は,印刷界全体で必要であろう.
川田(東洋インキ製造)は,印刷業界の色標準に関してそ
グラビアの版は使用後に再度メッキなどの処理をすること
の考え方や概要を紹介するとともに,印刷物の付加価値を更
で繰り返し使うことができる.阿部(凸版印刷)らは,メッ
に高めるべく印刷における色再現域拡大の取り組みについて
キ液の添加剤濃度とメッキ被膜の伸び率などの物性との間に
説明した.RGB ワークフローが要請を受け,色再現範囲の拡
相関があることや,彫刻適性との関係などについて報告して
大が望まれている.その手法としてプロセスインキの補色
いる(日印誌,43,288;日印誌,43,364).
(レッド,グリーン,ブルー)を用いた多色印刷と,従来プロ
網点面積率は印刷において重要なパラメータであるが,安
セスインキのままで,インキの高濃度化・網点の微細化を行
定的な測定法がない.湯浅(室蘭工大)らは,考案した自動
う手法を紹介した(日画年大会,35).篠原(富士ゼロック
しきい値決定法が,有効な網点面積率計測であると報告して
ス)は,電子写真で写真品質を実現するために開発された冷
いる(日印誌,43,30).湯浅(室蘭工大)らは,Database
却剥離による光沢付与機構 MACS(Melt,Adhere,Cooling
AMPAC に対応する最適制御情報導出支援アプリケーション
before Stripping)について述べた.同機構では,Heat Roll と
を開発し,これにより印刷関連蓄積情報の有効活用が行える
PressureRoll からなる NIP 部において熱と圧力を用いて表面
としている(日印誌,43,279).
の平滑性を得,その後高光沢ベルトによる冷却剥離を行うこ
佐藤(東京工芸大)らは,スクリーン印刷により両面発光
とで光沢性を得る.ベルトの表面エネルギーが最適な状態に
する分散型無機 EL パネルを作製し,電気的特性を評価して
なるようベルト材料と剥離温度等の最適化トナーと相容性の
いる(日印誌,43,436).印刷技術がディスプレイを始めと
良い樹脂塗布用紙の開発により,定着像は銀塩写真と比較し
するエレクトロニクス関連分野に,今後ますます利用される
ても遜色ない平滑性を得ており,さらに用紙表面に構造を持
ことを期待する.
たないために自然な表面性が得られる(日画年大会,71).
11.2 印刷
小関健一(千葉大学大学院融合科学研究科)
高橋(共同印刷)らは,強磁場(5T)による非磁性パール
顔料の配向制御を試み,その配向状態を UV 硬化性樹脂を用
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
176
12. 写真芸術
デオのみで構成されていた.同じ被写体が過去から現在ま
西垣仁美(日本大学芸術学部)
での時の流れの変化と同時に,多くの写真家の前で別人の
ような変貌をとげる.女優であり演じること以上に,それ
12.1 概況
ぞれの写真家の持つ技量や特徴が表現されていて非常に興
2006 年は,ここ数年続いてきた写真のデジタル化という話
味深かった.
題が沈静した年であった.ようやくデジタル写真が特別視さ
12.3 「東京写真月間 2006」開催
れなくなった.そして銀塩写真もまた通常の写真として存在
第 11 回を迎えた「東京写真月間 2006」が,
「東京写真月間
し,共存の状態である.つまりここ数年,写真展で殊更にデ
2006」実行委員会と社団法人日本写真協会,東京都写真美術
ジタル写真であると表記することや,デジタルであるがゆえ
館の主催で,6 月 1 日の「写真の日」を中心に開催された.
に巨大なプリントによる写真展や,和紙など特別な紙にプリ
今回のメイン企画は「地域と写真文化」であった.前回の
ントしたり,絵画のように額に入れてみたりという特殊なこ
写真史を展望する垂直の視点に対し,現代における日本各地
とを試みた写真展が目立つ時期があったのだが,そういった
で行われている「写真」を用いた「地域・村おこし」,地域の
傾向が見られなくなった.デジタルが写真の一制作方法でし
枠をこえ写真を通じて行われている文化交流に視点をあてた
かないと認知されたことが分かる.
水平の企画が実施された.
逆に銀塩写真の存在が一般にアピールされていた.書籍店
沖縄名護市の「写真まつり」や宮崎の「ドキュメンタリー
などでもフィルムカメラのフェアが行われ,同時にトイカメ
写真祭」をはじめ各地で多くの催しが開かれているが,その
ラの流行も起こった.旧共産圏のカメラであった LOMO(ロ
中から,
『写真の町』を 1985 年に宣言した北海道東川町が国
モ)や HOLGA(ホルガ)などが取り上げられ,手頃な値段
内外の優れた写真制作とその作家を顕彰する目的で毎年夏に
で種類も多く,フィルムでの制作を楽しむ傾向も出てきたよ
行う国際写真フェスティバル「東川町フォトフェスタ」の活
うだ.ホルガによる写真集の出版や写真展の企画もあり,愛
動から「東川賞海外作家コレクション展」
(東京都写真美術館
好者の多さがうかがえる.
3F 展示室,6 月 1 日~ 18 日),山口県周南市がアマチュア写
プロ写真家の世界では,若手が久しぶりに目立った.特に
真家の資質の向上と振興を目的に行っている「林忠彦賞」に
本城直季や梅佳代などが雑誌,テレビに取り上げられて,一
よる「林忠彦受賞作品展」
(ペンタックスフォーラム,5 月 19
般にも話題になったのが印象深い.
日~ 25 日),神奈川県相模原市が新たな時代を担うプロ写真
12.2 写真展
家の顕彰とアマチュアに作品発表の場を提供する「総合写真
・川田喜久治「見えない都市」(フォト・ギャラリー・イン
祭フォトシティさがみはらの活動から「アマチュアの部入賞
ターナショナル,10 月 12 日~ 11 月 10 日)川田喜久治展
作品展」
(新宿ニコンサロン bis21,5 月 30 日~ 6 月 5 日),山
「ATLAS 1998–2006 全都市」
(エプサイト,12 月 1 日~ 2007
形県酒田市が写真文化,写真芸術の振興及び奨励を目的とし
年 1 月 21 日)
た「土門拳文化賞」から「土門拳文化賞受賞作品展」
(新宿ニ
VIVO の創設メンバーの 1 人として,また「地図」
「ラス
コンサロン,5 月 30 日~ 6 月 5 日)を開催した.これらは過
ト・コスモロジー」などで知られる川田は,写真生活 50 年
去の受賞作品を一堂に会したもので,時代の変遷もみてとれ
を超え,なお新作を発表し続けている.新作は 2001 年~
興味深い写真展であった.
2006 年にかけて制作されており,デジタルを駆使しダブル
今回で 3 回目を迎える「アジアの写真家たち」はベトナム
イメージによって都市の新しい視覚を創り上げている.最
の 21 人の写真家により,現代のベトナムの活気と人々の暮
新の機材をもちい,新境地を切り開いていく,非常に若々
らしぶりが紹介された.ホアン・リーンは「ハノイ・エモー
しい感性が素晴らしいと感じられる作品群であった.
ション」
(コニカミノルタプラザ,5 月 19 日~ 29 日)で首都
第 25 回土門拳賞受賞作品展「JAPAN UNDER-
ハノイに暮らす人々を,そしてド・ジーエン・カーンは「イ
GROUND III」
「東京デーモン」
(銀座ニコンサロン,4 月 24
メージ&シャドウーベトナム中部の風」
(キヤノンギャラリー
日~ 5 月 13 日)
銀座,5 月 29 日~ 6 月 3 日)で都市郊外ののどかな田園地帯
・内山英明
土門拳賞受賞作品展なので,素晴らしいのは当然なのだ
が,
「JAPAN UNDERGROUND」は日本中の都市の地下で実
在しているにもかかわらず想像をこえた光景に驚いた.
「東
での人々を捉えていた.バ・ハーンによる「輝くまなざし」
(オリンパスギャラリー,6 月 1 日~ 7 日)は子供をテーマに
したものであった.
「古都フエの情景—フエの写真家たち」は,
京デーモン」は独自の視点と色で,UNDERGROUND に通
世界遺産都市フエで活躍する写真家たちが,フエの風景や伝
ずる印象であり,共に力強さを感じる作品であった.
統文化,祭,歴史的建造物などを紹介した.
「かもめ女性写真
・イザベル・ユペール展(東京都写真美術館,7 月 1 日~ 8 月
6 日)
2005 年ニューヨークで始まり,世界巡回中の写真展であ
家グループ展」(アイデムフォトギャラリー「シリウス」,6
月 1 日~ 7 日)はホーチミン市を中心に活動する女性写真家
たちの写真展であった.
る.内容は女優イザベル・ユペールのみを被写体にカルティ
「日本写真協会賞」は日本の写真文化の国際交流や,写真界
エ=ブレッソンやアベドン,R・フランク,杉本博司など
への貢献・功労のあった個人や団体,地域において写真文化
古今東西の写真家 72 名が撮影した彼女のポートレート,ビ
の振興発展に寄与した個人や団体,写真作家活動や写真研究
2006 年の写真の進歩
活動に顕著な業績を残した写真家・研究者,将来を嘱望され
177
・新人賞:小栗昌子
る新人写真家に贈られるもので,その「日本写真協会受賞作
「百年のひまわり」は遠野の山間で暮らす初老の姉弟の日常
品展」
(富士フォトサロン,6 月 2 日~ 8 日)が開催され,そ
を 3 年間取材した作品である.写真の古典的な手法を積み重
の表彰式が 6 月 1 日,笹川記念会館で行われた.
ねることによって,なお新鮮な表現を可能にし,現代のお伽
・国際賞:EU・ジャパンフォトフェスト日本委員会
噺というような物語をつむいだ.
13 人の新進写真家を中心に,それぞれの個性を生かした
眼 差し で EU 25カ 国 を撮り お ろ し た 写 真 集シ リ ー ズ「In
・新人賞:尾中浩二
「背高泡立草のある町」のシリーズから新宿,ラトヴィア,
Between」(全 13 冊+別巻 1 冊)が日本の写真文化を国際的
スペインの近作まで,どの町を撮っても,人間が言葉を発す
に広めていく方途と可能性をしめした.
る以前の視覚が感じられる静穏な独自の視線による作品であ
・功労賞:長野重一
る.
「週刊サンニュース」編集部,「岩波写真文庫」写真部を経
・新人賞:風間謙介
て,1954 年からフリーランスとして活動.強いメッセージ性
「夕張」の第一章で雑多な混合集落の生活風景を美的なまで
をもつ作品で新しい時代のドキュメンタリー写真を制作.ま
に昇華させると同時に,第 2 章で全く逆の世の無情を感じさ
た映画やコマーシャルでも賞を受賞するなど幅広い活動をし
せる寂しさの両局面を表現した.人間の心の奥に潜む過去を
ている.自分の視線で社会や人間の営みを見極め切りこんで
懐かしむ感情と光を望む本能を探り,独自の表現を展開して
いる.
いる.
・功労賞:西宮正明
鋭敏な洞察力と感性から作り出された作品は,ゆるぎない
前回から始まった〈「写真の日」記念写真展・2006〉
(新宿
パークタワー・アトリウム,5 月 31 日~ 6 月 8 日)は,13 歳
座軸から生まれた独自なものであり,同時に多くの試みが見
から 85 歳まで全国から 905 名の応募があった.男性比が 44
られるにも拘らず,どの作品にも西宮の不変な心象風景が表
%と前回より増えている.応募点数は 2092 点とやはり前回
現されている.また写真論をまじえて若いアーティストの育
よりも増加した.中から外務大臣賞 1 名,最優秀賞 1 名,優
成にも尽力している.
秀賞 10 名,準優秀賞 10 名,レディース賞 10 名,協賛会社
・文化振興賞:植田正治写真美術館
賞 74 名,入選 255 名が選ばれ展示された.
植田正治の作品,ネガ,関係資料を総括的に収蔵し,植田
恒例の〈1000 人の写真展「わたしのこの一枚」〉
(新宿パー
の新しい局面を提示し続けた.また福山雅治との交流を軸に
クタワー・アトリウム,5 月 26 日~ 29 日)も行われた.今
紹介した写真展では新たな観客層を開拓した.他に植田の作
回からグループでの展示が可能になり,フォトクラブとして
品を,日本に止まらずヨーロッパ巡回展を行い,日本の写真
参加し,作品を展示することができるようになった.
文化発展と紹介の拠点となっている.
・文化振興賞:相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら
実行委員会
12.4
出版
・写真集「small planet」本城直季著,リトルモア
4 月 12 日~ 5 月 12 日は代官山のギャラリーで,5 月 22 日
写真の記録性を重視したドキュメンタリー写真を中心にし
~ 6 月 12 日は青山ブックセンターで同名の写真展が行われ
たフォトフェスティバルとして独自の活動を行っている.知
ていた.2006 年に最も話題性のあった写真集であった.現実
られざるアジアの写真家の紹介と国内のプロ写真家の顕彰,
の世界をミニチュア世界のように撮影するということで,写
新進写真家の発掘,そしてアマチュアに作品を発表する機会
真の本質である真実の記録の部分を巧みに操ったことで多く
を提供しプロアマが一堂に会する写真展の企画を行った.ま
の人の目をひいた.シティバンクのポスターでも目にする機
た各種企画で地域の文化振興にも寄与した.
会が多かった.
・学芸賞:岡井耀毅
・写真集「at Home」上田義彦著,リトルモア
「土門拳の格闘」で,徹底した事実の検証で,土門拳に肉薄
3 月 22 日~ 4 月 30 日までエプサイトで写真展があった 2006
した作品となっている.写真家のドキュメンタリーでありな
年には上田は他の作品も数多く発表しているが,この写真集
がら自己を照射し,写真家評伝の規範を示した.
は妻,桐島かれんの日記も合わせて掲載され,10 年以上にわ
・年度賞:内山英明
たる家族の写真である.2 人だけの生活から第 4 子誕生後ま
13 年にわたり大都市の地下世界を撮影し続けている.そし
で含む日々の記録である.作品制作ではなく撮りたいから撮
て「JAPAN UNDERGROUND」の 3 部作が完結した.日常目
るというプライベートな,幸せの記録である.どの家族にも
にすることのない,地下世界を幻想的かつリアルに表現した.
重ねあわすことのできる普遍的な日々が,幸せな気分にさせ
・作家賞:石内都
てくれた.
29 年の作家活動を通じて,粗粒子で表現した横須賀の町,
アパート等を経て,女性の手足や男性の体,傷跡の接写,そ
・写真集「Mémoires 1983」古屋誠一著,赤々舍
この写真集もプライベートな家族の写真であり,妻クリス
して母の記憶をまとめた「マザーズ 2000–2005 未来の刻印」
ティーネの手記を合わせて掲載と上記の上田の写真集と同様
まで一見異なった作風であるが,一貫して私的でありながら
の形体ではある.しかしクリスティーネが 1985 年に自殺し,
も人間の存在と尊厳に対し透徹した視点を示してきた.
1983 年から異常な言動が目立ち始め入院した年であるとい
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
178
う事実を知っていると,微笑みのある日常の裏に潜む悲しみ
ポイントになり,CD や DVD などのメディアでは容量が少な
が感じられ,人間の誰もがもつ生死,悲喜が表裏一体となっ
い為にハードディスクに保存するユーザーが多いからだ.
て見え,考えさせられる写真集であった.
・写真集「うみまーる~水の惑星の仲間たち~」井上慎也著,
実際に,様々なカメラマンにデータの保管をどうしている
か聞いてみると,ほぼ全員ハードディスクであった.反面,
そのハードディスクをどう管理しているかを聞くと,ただ保
東方出版
「うみまーる」は「海」と沖縄の言葉で,島や集落の人達が
お互いに助け合うことを意味する「ゆいまーる」の造語だと
いう.海中を主としているが,それだけでなく地上の生物,
存しているだけで,ほぼ記憶に頼るのが現状であり,あまり,
使いこなしているとは言えない状況だ.
アップルレイドや,CaldDigit などの製品では,外付け HD
風景もまじえ地球上のかけがえのない生命,自然の美しさと,
とは思えないほど高速の保存を達成しており,実用にして十
生物達の徹底したかわいらしさを写し出しており,見ていて
分過ぎるとも言える機能を備える.使いこなす側がもう少し
幸せになれる写真集であった.
技術的なステップアップを図れるようにならないと,ハード
ウエアの今後のステップアップはなかなか進まないであろ
13. 写真家から見た画像技術の進歩
矢部國俊(写真家,光藝工房)
う.
プリンタなどでは,エプソン,キヤノン,ヒューレットパッ
カードともに頑張っているが,エプソンの優位性は揺らがな
今年は,デジタル技術の飽和も相まって,あまり大きな動
い.実際テストしてみた感覚から見ても,ダントツと言える.
きは見られず安定期に入ったと言える.それだけに,逆に各
演色 / マテリアル / 出力のしやすさなど様々な側面でチェッ
技術の細分化や煮詰めが起こっているとも言え,興味深い推
クしてみて,すばらしい.特に PX-5800 など,技術的にはさ
移をしている.
13.1 全体について
ここ最近の経済動向として,写真業界は景気が悪い.景気
ほどかわらないものの細部を見直したことで信頼性の高い高
品質を達成している.
キヤノンや hp では,RGB 系のインクを採用して,すこし
の話は一見すると画像技術にはあまり関係なさそうである
演色がかわった製品が特徴的と言える.これらの製品の大き
が,売れなければ作れない,という図式から逃れられない為,
なポイントはカラーマネージメント的な立ち位置よりむしろ
やはり目立った商材がでてこなかった.どこを見渡しても地
ファイナルプルーフとしていかにきれいか,と言ったところ
味なものが多い.
にフューチャーしているように感じる.
各メーカーの方とお話をしても,ビデオなどスチール方面
カラーマネージメントツールでは,カラービジョンのプリ
ではないコンテンツの話はよくでるものの,スチールではあ
ントフィックスが新たにリリースされてかなりいい.簡単な
まりお金にならない為にかなり消極的な話が多かった.
プロファイルリンクも可能だし,モノクロのコントロールも
反面,新しい技術と言うよりも新しい使い方,のようなも
のはたくさんでてきたとも言える.それらもいくつか紹介し
よう.
できる.
モニタが AdobeRGB 対応の安い商材でサムソンからリリー
スされた.ちょっと微妙な商品ではあるが,AdobeRGB の気
具体的な話は敢えて避けるが,アンチデジタルともいえる
運が高まると言う意味でかつてのニコン D1 のような大きな
気運がいまだに焼け木杭のように存在する.デジタルでは写
きっかけになると良いなぁと思う.機能的には,ナナオの同
真ではないと言った強弁をされ困り果てると言った相談が枚
機能モニタがかなり優れている.
挙にいとまがない.これは日本だけではなくて世界的にそう
余談で,話が前後してしまうのだが,中判系のデジタルカ
いう傾向が否定できないようだ.デジタルが当たり前の時代
メラが比較的元気なようである.新しい商材はでていないの
になってきて,それを使う人間が追いつかない,とも言える
だが,ユーザー側が一眼レフデジタルで当たり前になってき
のであろう.
て,もう少し大きな画素のものを要求している為,レンタル
13.2 ハードウエアについて
ハードウエアでは特に目立った動きはなかった.相変わら
などで忙しいようだ.
13.3
ソフトウエア
ずコンシューマーデジタルカメラはかなり元気がいいが,高
ソフトウエアでは,デジタルアーカイブ機能を持ったソフ
級機になるほど地味な動きしかしていないと言える.様々な
トウエアがかなり前面に出てきている感じで元気がいい.
カメラメーカーで,コンシューマーの括りに入る一眼レフが
フォトショップ CS3,フォトショップエレメンツ,ライトルー
多数リリースされたくらいであろうか.
ムなどのアドビ製品群はかなり活発な動きをしている.中で
カメラ以外のハードウエアでも,目立ったのはアップルの
も一番使いやすくてリーズナブルなのはエレメンツであろ
インテル Macintosh ぐらいである.敢えて言うならば,ハー
う.プロでもこの性能で十分満足してしまう人は多いはずだ.
ドディスクが安くなってきたことで,レイド系のハードディ
アップルのリリースするアパーチャーもかなりいい.ハー
スクが一般向けにリリースされるようになってきたことがお
ドウエアを選ぶものの(インストールできる機種は比較的新
もしろいポイントと言える.デジタルを使いこなしてくると,
しいものだけ),使いやすく,高機能だ.アパーチャーに搭載
その膨大なデータをどのようにアーカイブするのかが難しい
されているコンタクトシートの機能はかなりすばらしく,お
2006 年の写真の進歩
179
そらく現状存在するコンタクトシートでは最強だろう.コン
強要してしまうケースが多く,写真として腰の弱いものが横
タクトシートは単純に画像が並べばいいわけではなくて,
行する.これらに対する反発から,デジタルフォトを卑下す
ページ物になっている必要がある.これは出力の際に便利な
るような動きがでてしまうことは否めない.まさに,写真そ
為だ.他メーカーのものでは単一ページになってしまうが,
のものの迷走と言えよう.これらは写真技術の進歩には何ら
アパーチャーではものすごい高速でページ物のPDFを書き出
関係ない事項であるが,ユーザーの成熟度が,新しい写真技
してくれる.ページ物なので出力の際はプリントコマンドだ
術に対する要求の根幹を成すと考えれば,あからさまに否定
けで全ページ出力可能だ.
できないのである.
いずれも,データアーカイブを主眼においていて,データ
したがって,前項の問題点と同じく,写真をどう扱うのか
をいかにして管理するかを前面に出して作られている.アー
について,指針のようなものを見せていくのは必要なのであ
カイブは今後の大きな課題と言えるだろう.
ろう.車社会が迷走しているときに徳大寺有恒氏(元レー
また,サードパーティーのソフトで,データやフォルダの
サー:杉江博愛氏)が間違いだらけの車選びと言う本で警鐘
管理をしてくれるソフトウエアがかなりたくさんリリースさ
を鳴らしたように,いい写真の何たるか / いいカメラの何た
れている.これらはほとんどがフリーウエアであるが,それ
るかを方向付ける動きは必要なのかもしれない.
だけそういうニーズが増していると言うことであろう.こう
では,写真としての腰の強さとは何であるか,触れておく
いったソフトと,ハードディスクを上手く組み合わせること
必要が有ろう.写真とは本来,撮り手が表現したい何かが,
で,カメラマンの悩みも少し解消されるかもしれない.
ひとつの写真の中に表現できている必要が有り,その完成度
13.4 デジタルコンテンツ
の高さがいい写真という評価になる.銀塩では自由度が少な
冒頭で述べた,使い方と言う点で大きい変化があるのがイ
かった分,高い緊張感を持って表現を追求し表現していたの
ンターネットを主軸にした様々なデジタルコンテンツだ.写
に対し,自由度が有りすぎるデジタルでは,写っていなけれ
真関係で言えば,アルバム機能や,プリント機能,データ転
ばならない条件が表現を凌駕してしまい,半ば表現を無視し
送から,一風変わったフォトアーカイブまでたくさんでてき
て,画像処理を用いててんこもりにしてしまうのである.
ている.
いずれも,一般ユーザーをいかに大量に抱え込むか,と言っ
たポイントで作られているサービスでほとんどが無料か,わ
ずかな会費で使用可能だ.
あるネット上のアンケートでは,1999 年から最近までで,
ユーザーの年齢分布がかなり変動してきていることが伺え
結局,機材なんてなんでもいい / 写っていればいいと言う
ような安易な写真が横行し,機材や写真技術に対するよいリ
ファレンスにはならなくなってしまうのだ.
したがって,技術的な飽和がささやかれる昨今,そういっ
たソフト面を盛り上げていかないといけないように思う次第
である.
る.若い人中心であったのが,40 代以上が爆発的な増加をし
ているのだ.無論,長い年数をかけたアンケートではそれだ
14.
工業規格
け対象者の年齢もスライドしているが,高年齢層が使うこと
甘利孝三(写真感光材料工業会)
を念頭においたサービスも増えていくと思われる.
こういったデジタルコンテンツがインターネット上で当た
り前になってくる方向性が,画像関連機器にどういった要求
14.1
概要
規格制定・改正の活動が活発に行われているのは,前年同様,
を突きつけ,恩恵をもたらすのか,興味深いところと言えよ
ISO(国際標準化機構)/ TC42(Photography)の WG(Working
う.
Group)5(物理性と保存安定性),WG18(デジタルスチルカ
具体的に筆者が好きなサービスとして,世界のフォトアル
メラ),JWG(Joint Working Group)20(デジタルスチルカメ
バムと言うものがある.世界中のどこかで撮影した風景写真
ラの色特性)/22(色管理)/23(デジタル画像の拡張色空間)
を,世界地図と連動させてあるのだ.写真自体はたいしたも
である.
のではないが,発想として大変おもしろい.
発行されている写真関係の国際規格[TS(技術仕様書)及
問題として,写真をどう楽しんでいくべきものか,と言う
び TR(技術報告書)を含む]は,ISO/TC42 では 166 件,国
方向性があまり確立していないことが挙げられるだろう.も
家規格の JIS(日本工業規格)では,B 分野(光学機械)13
ちろん,楽しみ方はユーザーが決めればいいわけで,それら
件,K 分野(写真材料・測定方法)8 件である.
の確立を考えること自体ナンセンスかもしれないが,車が単
14.2 ISO 専門委員会会議
なる移動手段なだけでないライフスタイルに関わるものであ
ISO/TC42(写真)の第 20 回専門委員会会議は,2007 年 6
るように,ライフスタイルに上手くジョイントできる方向性
月 25 日~ 29 日,スイスのローザンヌで開催の予定(第 19 回
が模索されてもいいように思う.
専門委員会会議は 2003 年開催).
13.5 ユーザーについて
14.3
規格発行,改正等の動き
冒頭触れたように,デジタルフォトの写真としてのとらわ
2006 年に発行,廃止 及び確 認された ISO(TC42: Photo-
れ方がずいぶんかわってきたように思う.CG ソフトで加工
graphy)規格及び技術仕様書(TS: Technical Specification)並
できてしまうから,本来成立しない絵柄を画像処理を用いて
びに JIS(K:写真材料・測定方法,B:光学器械)を以下に示す.
180
日本写真学会誌 70 巻 3 号(2007 年,平 19)
14.3.1 ISO 規格
1)発行された ISO 規格及び技術仕様書(8 件)
・ISO 518: Photography — Camera accessory shoes, with and
without electrical contacts, for photoflash lamps and electronic
・ISO/TS 22028-3: Photography and graphic technology —
Extended colour encodings for digital image storage, manipulation and interchange—Part 3: Reference input medium
metric RGB colour image encoding (RIMM RGB)
・ISO 17321-1: Graphic technology and photography — Colour
2)廃止された ISO 規格(8 件)
・ISO 515: 1973, ISO 686: 1985, ISO 1229: 1989, ISO 7329:
characterisation of digital still cameras (DCSs) — Part 1:
1989, ISO 9767: 1990, ISO 11314: 1995, ISO 11315-3: 1999,
Stimuli, metrology and test procedures
ISO 11316: 1999
photoflash units — Specification
・ISO 18909: Photography — Processed photographic colour
films and paper prints — Methods for measuring image stability
3)確認された ISO 規格(20 件)
・ISO 897: 2000, ISO 1009: 2000, ISO 3629: 2000, ISO 3772:
・ISO 18926: Imaging materials — Information stored on
2000, ISO 5655: 2000, ISO 5990: 2000, ISO 6328: 2000, ISO
magneto-optical (MO) discs — Method for estimating the life
6516: 1980, ISO 11312: 2000, ISO 14546: 2000, ISO 18904:
expectancy based on the effects of temperature and relative
2000, ISO 18906: 2000, ISO 18907: 2000, ISO 18908: 2000,
humidity
ISO 18910: 2000, ISO 18911: 2000, ISO 18915: 2000, ISO
・ISO 18933: Imaging materials — Magnetic tape — Care and
handling for extended usage
・ISO 18934: Imaging materials — Multiple media archives —
Storage environment
・ISO/TS 22028-2: Photography and graphic technology —
Extended colour encodings for digital image storage,
manipulation and interchange — Part 2: Reference output
medium metric RGB colour image encoding (ROMM RGB)
18918: 2000, ISO 18923: 2000, ISO 18924: 2000
14.3.2 JIS
1)発行された JIS,廃止された JIS
・該当なし.
2)確認された JIS(9 件)
・B7098: 1988, B7101: 1975, B7102: 1995, B7103: 1975, B7115:
1975
・K7616: 2001, K 7641: 1994, K 7643: 1995, K7651: 1988