第5章. 自然環境・地球環境 5-1.前提条件 1) 自然環境 ◇戦前から、斜面地を中心に帯状の緑地が形成されていました。現在もヤブツバキクラ ス域代償植生があります。 ◇海岸地域は、自然環境の保護・保全を図る区域に位置づけられています。 2) 上位計画 ◇浦添市第4次総合計画(土地利用計画図)では、港川地区や小湾地区の既存の緑をつ なぎながら、海岸部で水と緑の環状軸を形成する方針となっています。 3) 地形条件 ◇本地区は、ほぼ平坦であるが、海岸に近い位置に、約 10m 程度の高低差のある斜面地 があります。 4) 自然エネルギー・未利用エネルギー ◇本地区は、風車の設置に必要とされる年平均風速(5~6m/s 以上※)が確保されて いるなど、利用可能な自然エネルギーが賦存しています。 5) 地元ワークショップ・市民ワークショップのまとめ ◇自然環境の保全や自然エネルギーの活用を望む意見がありました。 地主ワークショップ ・自然とふれ合いやすい環境が確保されて いる。 ・干潟や基地内の緑等、現在の自然環境が 保全されている。 ・海洋生物の採取を禁止するなど生物保護 が図られている。 市民ワークショップ ・ソーラー、風力、潮力等の自然エネルギーの活用 ・海浜を利用した環境学習の場の提供(例:サンゴ 養殖場センター、海底資源探索施設) ・自然資源を活用した健康産業等の創出 ・自然海岸を生かしつつ、市民・観光客が楽しめる ビーチ ・.港川周辺の樹林地の保全(例:海・川を含めた 環境体験の場や、キャンプ場として活用) ・地産地消できるまちづくり(例:市民農園、ファ ーマーズ的な販売所の設置) ・海岸線や緑は残す(壊さない) ・各建物における未利用、再生可能エネルギーの導 入を促進する。 ・CO2削減に寄与するインフラ整備(例:貸し出 し自転車や貸出電気エコカーの導入、電気自動車 充電スタンド等) ・生ゴミのリサイクル等、資源循環型社会の実現 1 5-2.課題及び対応方針 自然環境・地球環境に関する前提条件を踏まえ、具現化に向けた課題を以下に挙げ、その対 応方針を検討する。 課題 1)緑の保全・再生の検討 対応方針の検討 ・緑の保全・再生の視点を整理する。 2)低炭素まちづくりのた ・低炭素まちづくりを実現する視点を整理する。 ための自動車に依存し過 ぎないまちづくりの検討 3)地域に賦存する新エネ ・新エネルギー活用の視点を整理する。 ルギーの活用の検討 1) 緑の保全・再生の検討 ① 水と緑の大循環の形成 浦添市はほとんど市街化しており、市内に残るみどりは、浦添大公園一体と城間港川地区の 緑地など、市域全体では緑が尐ない状況である。かつては、牧港補給地区でも、緑に囲まれた 集落が形成されていたものの、現在は、淑口原古墳群付近の緑地、海浜の緑地が残っている程 度である。また、海岸部の北部には、本市の貴重な自然海岸も残っている。 本地区での緑の保全・再生については、単に、地区内のみをとらえるのではなく、市域全体、 さらに沖縄中南部を考えた上で検討していく必要がある。なぜなら、本市がそうであるように、 市街化が進んでいる沖縄中南部の都市部において、新たに緑を確保できるのは、本地区のよう な駐留軍用地返還予定跡地に限られているからである。 本市全体でとらえた場合、前述の、 「浦添市景観まちづくり計画(平成 19 年度)」の骨格別 景観まちづくり方針における、緑に関する方針としては、緑の両翼地区である城間港川地区の 緑地から小湾川の緑までの水と緑をつなげる「水と緑の大循環地区」を形成することにある。 水と緑のツールをつなげて大循環を形成する ・ 城間港川地区の緑地 ・ 斜面緑地 ・ 海岸自然公園 ・ 小湾川の緑 ・ 淑口原古墳群付近の緑地 ・ 臨港道路・西海岸道路・埋立地 ・ 図表.水と緑の大循環の例 緑地 (人工ビーチ) 緑 地 2 ② 地形、歴史風土に裏づけされた水と緑の再生 本地区には、かつて、いくつかの集落が形成されていた。沖縄の集落は、湧水・カーを中心 に形成され、北西部からの強い風から集落を守るように樹林地が設けられていたとされている。 これらは、沖縄の気候にあった、歴史風土が構築した環境共生の形態である。 跡地利用については、現代の生活様式、建築様式にあわせたものにすることとなるが、本地 区のかつての集落形態を学ぶことで、より環境共生のまちづくりが可能となると考えられる。 地形、歴史風土に裏づけされた水と緑の再生を目指す ・ 昔の航空写真、土地利用図等を基に、過去の集落、カー、樹林地の位置を調査する。 ・ 土地利用構想にあわせて、その形態、位置を可能な限り再現する。 図表.再生すべき緑の例 3 2) 低炭素まちづくりのための自動車に依存し過ぎないまちづくりの検討 環境に配慮したまちづくり、低炭素のまちづくりのために、極力自動車を利用しなくても便 利なまちづくりを行うことが必要である。すなわち、徒歩、自転車、公共交通機関の利便性が 高いまちづくりである。 距離別の交通手段の関係は、以下のようにいわれている。 距 離 手 0.5km 以内 徒歩 0.5~5km 弱 自転車 2km~ 公共交通機関 段 5km 弱程度~ 車 (「成功する自転車まちづくり 政策と計画のポイント」(古倉宗治) より) ただ、沖縄県民に限らず、公共交通機関が発達していない地方部に行くに従い、車の依存度 は高くなるといわれており、習慣的に短い距離から車を利用する傾向にある。 公共交通機関の利便性を高めるためには、配置、本数や定時制等の課題があるが、ここでは、 公共交通機関を利用するまでの手段として、また、単独利用として、徒歩、自転車の利便性の ための検討を行うこととする。 下図は、国道 58 号、浦添都市軸、地区幹線道路に公共交通機関の停留所・駅があるとして、 そこから徒歩圏といわれる 500m の範囲を図示したものである。 図表.バス停(想定)までの徒歩圏域 複合交流拠点 停留所(想定) 暮らしの交流拠点 サブ交通結節点(停留所) 停留所(想定) 3km 4 以上のように本地区は、適切に公共交通機関の停留所・駅を配置することで、徒歩、あるい は、自転車により公共交通機関の利便性が高い規模であることがいえる。また、地区内移動に ついても、自転車で利用するに適切な規模であるといえる。 本地区は、地形的にはほぼフラットであるが、前述のように海岸に近い位置に約 10m の高 低差があるのが、自転車利用としては課題となる。 以上を踏まえ、低炭素まちづくりのための車に依存しないまちづくりの方針を整理する。 1.適切な公共交通機関の配置 ・ 基幹バス、新たな公共交通システムの配置 ・ 利便性を考慮して、既存のバス停、各交流拠点に停留所、駅を配置 2.徒歩、自転車利用を考慮した公共施設整備 ・ 補助幹線道路、主要区画道路レベルの道路には、歩道、自転車道(分離型でなくて もよい)をネットワークさせる。 ・ 区画道路においても、ハンプ※、植栽などにより、歩者共存の道路とするよう配慮 する。 ・ 上記道路以外でも、歩行者・自転車専用の道路を配置し、主要な施設、駅・バス 停への最短ルートを確保する。 ・ 斜面地においては、上記道路は可能な限り勾配をゆるくする。 ※主に生活道路における車両の走行速度を低減させるために、道路幅員の一部を意図的に狭めたり盛り 上げたりする方法 5 3) 地域に賦存する新エネルギーの活用の検討 新エネルギーについては、以下が挙げられる。 (「みんなで新エネルギー」資源エネルギー庁 より) 図表.新エネルギーの概要 上で示した新エネルギーのうち、本地区で活用の可能性が考えられるのは、太陽光発電や風 力発電のほか、水(本地区の場合小湾川、シリン川)の位置エネルギーを利用(落差が 2m程 度以上ある場合に利用可)した水力発電も考えられる。今後、そのほかのエネルギーについて も活用の可能性を検証していく必要がある。 6 5-3.具現化の方向性 自然環境・地球環境に関する具現化の方向性を以下にまとめる。 ・広域的視点から見た緑の配置や生態系循環を踏まえ、土地利用計画 と整合を図りながら、琉球石灰岩の段丘崖の斜面に残存する山林の保 全や再生、戦前の緑の再生を検討していきます。 ・公共交通と連携した拠点形成を図るとともに、拠点への自転車動線を 強化することにより、公共交通の利用促進を検討していきます。 ・地域に賦存する新エネルギー等の活用を検討していきます。 ①緑や海の保全・再生による生態系循環機能の復元、地球温暖化の軽減 沖縄中南部、市域全体から見た緑の配置、生態系循環を考慮し、土地利用構想と整合性を図 りながら、琉球石灰岩の段丘崖の斜面に残存する山林の保全や再生、戦前の緑の再生を図るも のとする。 図表.緑の保全・再生の方向性(案) 緑地 (人工ビーチ) 7 ②自動車に依存し過ぎない地区構造の構築 公共交通と連携した拠点を中心とした土地利用を図るとともに、拠点への自転車動線を強化 することにより、公共交通の利用促進を図る。 図表.公共交通との連携の方向性(案) ③地域に賦存する新エネルギーを活用したエネルギーの自給自足 地域に賦存する新エネルギー等を活用し、 「環境にやさしい跡地利用」の可能性を検討する。 図表.新エネルギー等活用の方向性(案) 8 9
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