第69回センターゼミ - 北海道大学 理学部

○第 69 回セミナー
日時:2002 年 6 月 10 日(月)15:00-17:00
場所: 3 号館 402 講義室
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------講演者:島村英紀
題
名:地震火山研究観測センターの最近の海底地震観測から
Recent ocean bottom observation activities conducted by ISV
要
旨:いままで、このゼミで私は、海底地震観測(海底諸観測)の必要性、海底観測の技術的な問
題とその克服、海底地震観測の実務などについて話してきたが、今回は、最近私たちが行な
ってきている、世界各地での海底地震観測、とくに昨年から今年にかけての各地の海底地震
観測について紹介する。
●ニュージーランドでの三国共同海陸合同地震観測:数年かけて研究計画を組み立てた。地
震火山研究観測センター以外の地震観測参加グループはニュージーランド核地質研究所、ウ
ェリントン大学、英国ケンブリッジ大学など。日本と同じようにプレートが地下に潜り込ん
でいっていて地震や火山の活動も盛んなニュージーランドだが、その潜り込みの様相は全く
違う。実験は 2000 年終わりから 2001 年初頭にかけて行ない、地震火山研究観測センターか
らは西村裕一と山田亜海が参加した。
●トルコでの三国共同海陸合同地震観測:トルコ北部を東西に走る大断層、北アナトリア断
層では最近 60 年間に、断層の東の端から西の端まで、次々に大地震がおきて、ついに 1999
年に西端で大地震がおきて、約 4 万人もの人命が失われた。しかしこの断層はその西の延長
がマルマラ海の海底に至っている。このため、マルマラ海の海底の地下構造や自然地震活動
を調べることが急務になっている。もし、マルマラ海の海底で次の大地震がおきると、トル
コ最大の都会イスタンブールを津波が襲うなど、大被害が心配されるからである。このため、
地震火山研究観測センターはパリ大学、トルコ・イスタンブール工科大学、トルコ・トゥビ
タック総合研究所などと協力して、海陸共同の観測を行なった。北海道大学から約 30 台の海
底地震計を現地に持ち込み、パリ大学は約 160 台の陸上地震計をフランスからレンタカーを
運転して持ち込んだ。海底地震計の設置と回収はトルコの観測船を使い、制御震源地震学の
ためのエアガン群列とマルチチャンネル反射法地震探査はフランスの観測船に来てもらって
行なった。実験は 2001 年夏から 2001 年秋にかけて行ない、地震火山研究観測センターから
は島村英紀、村井芳夫、西村裕一、山田亜海が参加した。なお、6 月に地震火山研究観測セン
ターに着任したトゥンジャイ・タイマズ客員教授はトルコ側での主任研究者である。
●カリブ海での日仏共同海陸合同地震観測:大西洋中央海嶺から西へ拡がっているプレート
がカリブ海アンティル諸島の地下に潜り込んで、地震や火山の活動を引き起こしている。ち
ょうど 100 年前の 5 月にフランス領マルチニーク島のプレー火山が噴火して、熱雲で約 3 万
人の死者を生んだほか、近年では英領モンセラート島でも噴火のために首都を明け渡して
人々の避難が続いている。このプレートの潜り込みは(日本から見ると不思議なことに)海
溝を作らずに潜り込んでいる。このテクトニクスを研究するために、フランス領ガダルーペ
島を基地にして、北海道大学から約 30 台の海底地震計を運んだほか、フランス・パリ大学も
数十台の陸上地震計を近くの島々に設置して、海底の地下構造や自然地震活動を調べる実験
を行なった。制御震源地震学のためのエアガン群列とマルチチャンネル反射法地震探査はフ
ランスの観測船に大西洋を横断して来てもらって行なった。実験は 2001 年秋から 2002 年初
頭にかけて行ない、地震火山研究観測センターからは島村英紀、村井芳夫、西村裕一、高波
鉄夫、山田亜海、山品匡史が参加した。
●なお、今年は 7 月から 9 月にかけて北海道十勝沖で自然地震観測を行なうほか、8 月から 9
月にかけて、北大西洋(北極海)スピッツベルゲン島ロングイアービエンを基地にして、制
御震源地震学のための海底地震観測を行なう。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------講演者:山田
題
亜海
名:海底地震計とエアガンによるニュージーランド北島の地殻・上部マントル構造
Crustal and uppermantle structure of the North Island, New Zealand, revealed by an
-OBS and airgun experiment
要
旨:ニュージーランド北島の東海域において、海底地震計(OBS)とエアガンを用いた構造探査
を行った。得られた記録からは、モホ面からの屈折波が少なくとも震央距離約 80km まで明
瞭に確認できた。一方、より浅部の境界面からの反射波と屈折波については走時の連続性が
悪く、これは地形や内部構造の複雑さを反映しているものと推測される。
1.ニュージーランド北島のテクトニクス
ニュージーランド北島は、太平洋プレートとオーストラリアプレートの境界に位置しており、
前者が後者の下に約 40mm/yr の速度で沈み込んでいる。北島の下では、沈み込む太平洋プレ
ートが2カ所で湾曲していることが、地震の分布などからわかっている。これは、主に付加
体を含むプレートの重さや密度、内部構造などによると考えられている。また、海溝より海
側では、これまで OBS による観測は行われておらず、詳細な地殻構造や地震活動については
明らかになっていない。
2.NIGHT (The North Island GeopHysical Transect) プロジェクト
2001 年 1~2 月、Institute of Geological Nuclear Sciences (GNS、NZ)、Victoria University
of Wellington (NZ)、Cambridge University (UK)、北海道大学によって、北島を北西-南東
に横切る側線(約 450km)で大規模な地震波構造探査が行われた(Henrys et al., 2001)。こ
の側線を中心に約 200 台の陸上地震計と 16 台の OBS(海域に 14 台、タウポ湖に 2 台)を
展開し、陸上における 9 回の発破、および海域における高密度エアガンシューティングを震
源とする探査を実施した。
海域での観測は、OBS14 台(デジタル型 9 台、アナログ型 5 台)
およびエアガン(容量 98 リットル)を用いて行われた。また、同時に 6km のストリーマー
を用いてマルチチャンネル反射法地震探査も実施した。側線は北西-南東方向に長さ約 200
キロで、水深は最大で 3200km、浅いところでは 40m である。OBS は側線上に 10~20km 間
隔で設置した。エアガンの発振間隔は約 40 秒で、距離にして約 100m 間隔である。また、
OBS の着底位置は、アコースティックトランスポンダーと船上の GPS を用いて決定した。
3.海底地形
側線上の海底地形は、陸から約 60km までほぼ平坦(水深 40~200m)であり、さらに海側
に約 60km(水深約 1500m)まで緩やかに傾斜している。陸から約 120km の場所(海底)
には地形的な高まり(水深約 700m)が存在する。この高まりは南東側に約 10km 続き、水
深約 700m から約 2700m まで急激に傾斜している。さらに南東の地形も複雑ではあるが、
基本的には水深 3200m まで緩やかに傾斜している。
4.OBS の記録
今回の観測で得られた OBS の記録では、震央距離約 80km まで、モホ面からの屈折波と識
別できる見かけ速度約 7.0km/s のフェイズがよく現れている。一方、より浅部の構造を反映
したフェイズの特徴は、海底の地形的な高まりが見られる地点より東側と西側で大きく異な
る。西側では、震央距離 10km~30km にかけて、見かけ速度約 4.0km/s のフェイズが目立
つ。それに対し、東側はより複雑で、走時曲線も不連続になっている。これは、主として地
形や境界面の複雑さを反映していると思われる。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------講演者:岩下
里詩
題
名:GPS による駒ヶ岳の地殻変動
要
旨:駒ケ岳は北海道南西部の函館北方約 40km に位置する安山岩質の活火山である。1640 年から
噴火が記録されており、1929 年には 20 世紀最大の噴火となった。最近では地震の増加や火
山性微動はなく、噴煙活動も弱く地殻変動にも特別な変化は認められないが1996年以降
小噴火を繰り返していることから今後も火山活動の推移を注目する必要がある。駒ケ岳周辺
では北海道立地質研究所、札幌管区気象台、国土地理院が GPS の連続観測を行っており、そ
れらのデータを提供していただき解析する。今回は地質研究所と国土地理院の観測点、計 10
点を同じく国土地理院の観測点七飯を基準に 2000 年 12 月と 2002 年 2 月の 10 日ずつを解析
した。