手術部位感染が起こったときの対

い?
ればい
す
断
判
どう
うする?
ど
時
な
こん
策
対
の
き
たと
っ
こ
起
が
染
感
位
部
手術
SSIに対する対策をどれだけ施しても、感染が発生することはあります。
これから紹介する2例も手術時の対策を実施しても発生することが考えられる
ケースです。患者さんへの指導や栄養管理など、様々な対策が考えられます。
大阪労災病院
肝胆膵外科 部長
清水潤三先生
患者さんへの退院後を考えた管理方法の指導が大切
症例
1
■主訴と経過
ら排膿を認めたため、直ちに切開排膿が実施され、
75歳男性
創部の感染はコントロールされた。
右鼠径ヘルニアにて当院へ入院。
■退院への指導
3日目からエレンタールによる経腸栄養を開始。
本人に創部をシャワーにより洗浄するよう指導し、退
手術はウルトラプロヘルニアシステム法(UHS法)に
院後も自宅でシャワー洗浄を続けるよう指導した。
て実施。
外来通院し、創部は約2週間で完治した。
術後経過はおおむね良好であったが5日目に創部か
meshの感染には至らなかった。
この症例は75歳男性で、右鼠径ヘルニアを認めたた
患者さんには退院にあたって、創部のシャワー洗浄を
め、当院に入院となりました。入院3日目から経腸栄養剤
指導しています。創部からは色々な浸出液が出てくるた
(ED)の投与を開始し、栄養状態を安定化させました。
ウルトラプロヘルニアシステム法(UHS法)は、鼠径管を
補強するoverlay meshと、腹膜前腔を補強するunderlay
め、創部を清潔に保つために、頻繁に創部にシャワーを
直接当てて洗い流すよう看護師さんとも相談して指導し
たところ、退院後2週間で完治となった症例です。
meshの2枚のメッシュを接続するコネクターが一体に
この症例ではしっかり経腸栄養を早期から実施できた
なった構造のものを挿入する手技ですが、meshは傷の
こと、早期の切開排膿実施による術部感染症(SSI)のコン
表面よりも深い部位に挿入するため、もしそのmeshまで
トロールと、患者さんへの創部のシャワー指導が功を奏し
菌が入るとmeshそのものを取り除かなければならず、
こ
たケースです。
こういうケースでは、
とくに退院後はSSIを
れを避けなければなりません。本症例でも5日目に創部か
防ぐために患者さんの自己管理が重要です。
より患者さ
ら排膿を認めたため、直ちに切開排膿を実施したところ、
んに理解の得られやすい指導をきっちり行うことが大切
創部感染はコントロールでき、退院となりました。
です。
重症例でのSSI防止には
術前からの経腸栄養による栄養管理が有効
症例
2
■既往症
■術式
60歳代男性。20代時頚髄損傷(第5頚椎レベル)
術式:大腸亜全摘術、人工肛門造設術
■現病歴
周術期抗生剤:セフメタゾール1g×3回/日
前日朝に嘔吐を認めた。
ICU入室後すぐに経腸栄養剤(ED)の投与を実施。
腹部緊満認めたため、当院消化器内科を受診。
■術後経過
CTで結腸の強い拡張を認めたため、緊急入院と
術後炎症所見改善を認めていたが、術後10日目に
なった。
再度炎症所見の増悪を認めたため、CTを施行したと
入院2日目朝に腹部緊満が増悪したため、経肛門
ころ、エンテロバクターなどによるSSI感染によること
的イレウスチューブ挿入を施行。その際にSDJ近傍
が判明し、抗生物質投与とドレーンを実施。
その後軽
に3型腫瘤を認めた。挿入後も緊満改善認めず、
快し、全身状態が改善。
ショック状態となったため、ICU入室、緊急手術の方
針となった。
症例は60歳代の男性で、
もともと頚部損傷があり、施設
下を伴い、SSIを発症しやすいとされています1)。そのため
に入っていたが、前日朝、嘔吐して、腹部緊満を訴え、内科
患者さんの免疫系を高める意味でも術前と術後の経腸
を受診したところ、CTで腸の重度腫脹を認めたため緊急
栄養の持つ意味は大きいとされています。
この患者さん
入院となりました。腹部緊満を訴え、恐らく大腸に何か詰
でも非常に早期から経腸栄養を開始したことが現在の全
まっていると思われ、イレウスチューブを挿入しました
身状態改善につながっていると思われます。
が、改善せず、
さらに血圧が低下し、
ショック状態となった
ため、ICUに入室後に、緊急手術となりました。
図 エコーガイド下による膿瘍ドレナージ施工
手術そのものは大腸を亜全摘し人工肛門を造設しまし
たが、腹膜炎を起こしていたため、治療的にセフメタゾー
ルを使用しています。さらに経腸栄養剤(ED)投与を入室
後すぐに開始できたこともあり、徐々に全身状態が改善し
てきました。
しかし炎症所見が術後10日で増悪したため、
CTを実施したところ、人工肛門の横に溜りを認め、
グラム
染色によりグラム陰性桿菌が出て、培養ではESBL産生の
エンテロバクターなど様々な菌が検出されたため、メロ
ペネムを投与し、さらにドレーンを実施(図)
し、現在軽快
に至っています。
この患者さんはまだICUに入っています
が、全身状態は改善してきています。
この患者さんのような重症例ではSSI対策がとくに重要
です。栄養とSSIは非常に関連が大きく、中等度以上の炎
症性手術を受ける場合、術後には蛋白異化亢進と免疫低
1)JPEN J Parenter Enteral Nutr, 3:452-456, 1979.