簡易CFRP超音波 探傷システムの開発 "PXIシステムを 使用したことで、短 い開発期間(2カ 月)で開発費の大幅 な削減(探傷システ ムは通常1000万 円かかる)と設計自 由度の向上が可能に なった。" - 松崎 亮介 氏, 東京工業大 学 課題: 従来は超音波探傷専 用にシステムが組み 込まれて販売されて いたが、非常に高価 であり、またシステ ムの変更が容易でな いことが問題となっ ていたため、より汎 用性の高い測定シス テムを構築する。 ソリューション: National Instruments 社のPXIシステム を用いて実現。 ユーザ事例の続きを 読む お客様名: 松崎 亮介 氏 - 東京工業大学 1. 背景 非破壊試験 (Nondestructive test、 NDT)あるいは非 破壊検査は、材料や 製品を破壊せずに、 欠陥の有無、その存 在位置、大きさなど を調べる試験であ り、非破壊試験の結 果から、JIS規格 などに定められた判 断基準に従って構造 物が健全であるかど うかを判断する。非 破壊検査する手法と して、超音波探傷試 験 (Ultrasonic test、 UT) がよく用いられる。 超音波探傷とは、超 音波を種々の材料や 溶接部の中に入射し て、欠陥による反 射、散乱を利用し て、欠陥の有無、大 きさを調べる試験方 法である。本実験で は複合材料積層板は く離の超音波探傷試 験を実施し、機器の 構造健全性を保証す ることを目的とす る。 2. 課題 超音波探傷法は、 超音波を用いて材料 中の欠陥を探す方法 であり、一般に超音 波の反射を利用した パルス反射法が用い られる。このパルス 反射法を用いた超音 波探傷試験は、超音 波パルスを試験体の 表面(探傷面)から 垂直に伝わせる垂直 探傷試験と、ある角 度を持たせて斜めに 伝わらせる斜角探傷 試験が主に行われ、 試験体の形状や検査 をする箇所により使 い分けられる。 垂直探触子から入 射した超音波パルス は、探傷面と垂直な 方向に試験体の中を 伝搬していく。この とき超音波パルス は、ある限られた方 向に、限られた範囲 (幅)で、ビーム状 に試験体内を伝搬し て行き、反射源に当 たると戻ってくる。 戻ってきた超音波パ ルス信号(反射波) をエコーといい、こ れらは探傷器の表示 器上に探傷図形とし て表示される。ここ で、探傷図形の縦軸 は反射波の強さ(エ コー高さ)を示し、 横軸(時間軸)は反 射源までの距離 (ビーム路程W)を 示している。横軸目 盛りのフルスケール を測定範囲という。 探傷図形には、超 音波の送信パルスT と、きずからのエ コーF、試験体底面 のエコーBが表示さ れている。横軸の0 目盛りは試験体の表 面に調整されている ので、きずエコーF のビーム路程WFか らきずの深さ位置 が、底面エコーの ビーム路程WBから 試験体の板厚がわか る。 炭素繊維強化プラ スチック (CFRP)積層板 の層間はく離を非破 壊検査対象とする。 CFRPは炭素繊維 に樹脂を含浸させた プリプレグとよばれ る厚さ0。2mm程 度のシートを多数積 層したのち、硬化さ せることで成型す る。繊維方向に比べ て板厚方向の強度 (層間強度)が著し く低いため、工具落 下などの衝撃により 容易に層間にき裂が 発生し、圧縮強度・ 剛性の低下を引き起 こし問題となってい る。実験では、 JIS K7078 に準拠して炭素繊維 強化プラスチックの 層間せん断試験を実 施することで、 CFRPに層間はく 離を発生させる。 従来は超音波探傷 専用にシステムが組 み込まれて販売され ていたが、非常に高 価であり、またシス テムの変更が容易で ないことが問題と なっていた。より汎 用性の高い測定シス テムを National Instruments のPXIシステムを 用いて構築する。 3. ソリューショ ン 3-1. システ ム構成 超音波探傷試験には 探傷器(波形送受 信、波形の表示およ び調整)と探触子が 必要である。探傷器 として図1に示す National Instruments 社のPXIシステム を用いて波形送信に 100MS/s、 16ビットの任意波 形発生器PXI- 5421を、波形受 信に 100MS/s、 14ビットデジタイ ザPXI-5122 を用いる。波形の出 力・取得はPXIシ ステム上の LabVIEWプロ グラムから実行す る。探触子には Panametrics- NDT社の5MHz 探触子C543SMを用いる。図1 に装置外観、図2に ブロックダイアグラ ムを示す。 図1 CFRP超音 波探傷システム外観 図2 CFRP超 音波探傷システムダ イアグラム 1/4 www.ni.com 3-2. 結果 下記の要領で探傷を 行った。 1. 送信パルス波形状を エクセルで作成す る。公称周波数 5MHz、サイクル 数1。5~3、振幅 1のsin波形とす る。ただし、このパ ルス波を探触子に加 えてエコー受信する と波の始まりと終わ りの振幅が乱れる。 そこで、次式に示す ハニング窓を掛けた ものを入力波形とす る。区間は[0、 1]とする。 2. 波形受信のためのト リガー設定を行う。 3. (3) 超音波を探 触子から試験体に効 率よく伝えるため、 炭素繊維強化プラス チック積層板の表面 に超音波用接触媒質 (グリセリンペース ト)を塗布する。 4. パルス波を積層板に 対して送信し、底面 波、反射波が正しく 得られているか確認 する。 5. 探触子を試験片端部 から長手方向に2 mmずつ移動させ、 各点において超音波 探傷波形を取得す る。次に幅方向に 2 mm移動させ再 び長手方向に2mm ずつ走査を行う。試 験片全体を走査する まで繰り返す。 結果、短い開発期間 (2カ月)で開発費 の大幅な削減(探傷 システムは通常 1000万円かか る)と設計自由度の 向上が可能になっ た。 図3 入射波形 (任意波形発生器 PXI-5421に より送信、14ビッ トデジタイザ PXI-5122で 受信) 2/4 www.ni.com 図1 CFRP超音 波探傷システム外観 図2 CFRP超音 波探傷システムダイ アグラム 3/4 www.ni.com 図3 入射波形(任 意波形発生器 PXI-5421に より送信、14ビッ トデジタイザ PXI-5122で 受信) 法律関連事項 このユーザ事例(こ の「ユーザ事例」) はナショナルインス ツルメンツ (「NI」)の顧客 によって作成された ものです。このユー ザ事例は「現状のま ま」提供され、一切 の保証を伴いませ ん。また、このユー ザ事例の使用につい ては、本サイトの使 用条件でより具体的 に記載されていると おり、一定の制限を 受けます。 4/4 www.ni.com
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