国立病院機構における医療安全対策への取組み

国立病院機構における医療安全対策への取組み
[医療安全白書]
~平成20年度版~
〔はじめに〕
国立病院機構の理念は、「患者の目線に立って懇切丁寧に医療を提供」することにあ
る。医療内容が高度化・複雑化するとともに、国民の権利意識が高まっている中で、患
者の目線に立った安心・安全な医療を提供し続けていくためには、充実した医療安全管
理体制を整えていくことが極めて重要であり、今後、一層の努力が求められているとこ
ろである。
国立病院機構としては、見直すべき点は見直し、新たに取組むべき点は取組み、良好
な医療安全管理体制が確立されるよう、様々な方策を検討・議論すべきと考えている。
このため、国立病院機構全体で取組むべき医療安全対策について、基本方針を決定す
る常設委員会として「独立行政法人国立病院機構中央医療安全委員会」を平成19年度
に設置し、様々なテーマを議論しているところである。
また、医療事故等が発生した際には、医療安全管理室が中心となり医療安全管理委員
会を開催することなどにより、発生した医療事故等の検証作業を行うとともに、検証結
果を踏まえた再発防止策の検討を行い再発防止策に取組んでいる。また、各病院のこの
様な取組みについては、発生した医療事故の概要とともに国立病院機構本部にも「医療
事故報告書」として報告が行われているところである。
国立病院機構は、様々な診療機能を有する145の病院グループであり、医療安全対
策の視点からも、病院ネットワークを積極的に活用した取組みを行っていくことが必要
である。年度内に発生した様々な医療事故を類型化し概観するとともに、個々の医療事
故の発生状況や背景・要因、それに対して取組まれた再発防止策等を、各病院から報告
された医療事故報告に基づき、特に警鐘的意義を有すると考えられる事例を中心に紹介
し国立病院機構全体で共有していくことは、機構全体の医療安全対策の一層の推進に資
するものと考えられる。
加えて、この1年間に国立病院機構として医療安全管理体制をより充実させるために
行った取組みなどを、積極的に公表していくことは、国立病院機構内のみならず我が国
全体の医療安全対策の推進にも一定の役割を果たしていくことのできる、病院ネットワ
ークを活用した国立病院機構独自の取組みであると考えている。
この様なことから、国立病院機構各病院で発生した医療事故の概要や講じた再発防止
策、医療安全対策充実を目的とした取組み内容等について、平成18年度より「国立病
院機構における医療安全対策への取組み」として紹介していくこととしており、今般、
平成20年度版について公表するものである。
《
目
次
》
Ⅰ
本報告の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ
本編
1
1.転倒・転落事故防止プロジェクトの運用・・・・・・・・・・・・・・・
8
2.「インフォームド・コンセントの更なる向上のために」の策定 ・・・・・
62
3.長期療養患者が使用する人工呼吸器の取扱い手順書の策定・・・・・・・
68
4.人工呼吸器不具合情報共有システムの運用・・・・・・・・・・・・・・
102
5.平成20年度医療事故報告の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・
104
(1)
MRI検査における危険性について
(2)
嚥下における危険性について
(3)
輸血検査における危険性について
(4)
原因不明の骨折について
(5)
輸液による血液外漏出皮膚障害について
(6)
胃ろう造設チューブ誤挿入により死亡事例等について
(7)
リハビリテーション中の事故(転倒)について
6.医療事故報告制度への一層の協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅲ
137
資料
1.医療安全対策に係る研修の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
138
2.独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指針(抜粋)・・
147
Ⅰ
本報告の概要
1
【本編】
1.転倒・転落事故防止プロジェクトの運用
国立病院機構内で発生する医療事故の約30%が転倒・転落事故で占められて
いる。転倒・転落事故と他の医療事故との大きな違いは、その発生が必ずしも医
療者側のエラーによるものではないという点にある。患者の遠慮がちな性格や認
知機能障害等の要因による看護師の目の届かないところでの自力歩行が、転倒・
転落に繋がるケースが非常に多くある。この様なタイプの転倒・転落事故を減少
させていくためには、患者の身体状況の把握、患者への働き掛け、環境整備など
の対策を医療者側が着実に行っていく中で、患者のニーズを先取りしながら看護
サービスを提供していくことが必要となる。
そこで、転倒・転落事故を減少させていくための取組みとして、国立病院機構
中央医療安全管理委員会の下に「転倒・転落防止プロジェクト業務標準化等専門
委員会」を平成19年度に設置し、転倒・転落事故臨床指標を定めるとともに、
転倒・転落事故防止マニュアルを策定し、目標として2年間で転倒・転落事故の
半減を目指すこととし、平成20年6月より運用を開始した。
本プロジェクトの目的は、転倒・転落事故を減少させるとともに、患者・家族
との良質なコミュニケーションや観察により得た情報を医療チーム内で適切に共
有しながら、患者ニーズを先取りしたケアを提供していく過程を通じて、医療・
看護の質全体を高めていくことにも繋がっていくものである。
【マニュアルの内容】
①
転倒・転落事故防止のためのフローや発生要因の整理、看護師等医療者側
の基本的留意事項等を明示
②
入院時意識調査票やアセスメントシート、事故防止計画表を全病院に同一
形式で作成すること
③
患者、家族への説明内容、転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト、事故事
例集等を添付
本プロジェクトでは、入院時の患者及び家族へのオリエンテーション時等に患
者・家族との適切なコミュニケーションの中で実施することで、転倒・転落に係
る患者毎のリスク判定を行うため、入院患者全患者(NICU、GCU除く)に
対し、統一的なアセスメントシートによりアセスメントを実施することとしてい
る。
プロジェクトの実施状況としては、平成20年度の当初目標として、そのアセ
スメント実施率を95%以上の実施を目指していたところであり、実績として、
全病院の実施率は、97.7%と達成した。
平成21年度においては、各病床種別毎に集計し、高リスク要因(項目)の特
定を行うなど、事故防止に効果的な改善を図っていくこととしている。
2
2 .「 イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト の 更 な る 向 上 の た め に 」 の 策 定
インフォームド・コンセントについては、ほとんどの病院において既に検討し
実施している実情にあるが、平成19年度から開催している「中央医療安全管理
委員会」において、患者に対し適切な説明を行い、理解を得ることが望ましいと
考えられる内容についての議論を重ねてきた。
このような中、インフォームド・コンセントを行うにあたっての基本的な考え
方や留意すべき点など必要最低限の事項を整理し、インフォームド・コンセント
の 更 な る 向 上 の た め に 各 病 院 に 発 信 す べ き と の 考 え の も と 、平 成 2 1 年 3 月 に「 イ
ンフォームド・コンセントの更なる向上のために」を策定したものである。これ
により、各病院は必要な事項を取り入れるなど自院の実施状況を見直すことによ
って体制強化を図ることに繋がる。
平成21年度より運用を開始し、国立病院機構におけるインフォームド・コン
セントの実施体制をなお一層推進していくこととしている。
【具体的内容】
①意義、②一般的対象事項、③説明範囲、④危険性の説明、⑤頻度、
⑥説明者、⑦説明の対象者、⑧家族等への説明、⑨説明時間及び場所、
⑩説明の進め方、⑪セカンドオピニオンの説明、⑫診療録への記録、
⑬同意能力なき者への説明、⑭説明の省略
3.長期療養患者が使用する人工呼吸器の取扱い手順書の策定
進 行 性 筋 ジ ス ト ロ フ ィ ー 児 ( 者 )・ 重 症 心 身 障 害 児 ( 者 )・ A L S 患 者 等 の 長
期療養患者にとって人工呼吸器は生命維持装置であり、その装着に当たっては患
者に分かりやすい説明を行うとともに、細心の注意をもって取り扱うことが必要
であることから、人工呼吸器の目的や基本構造、操作時の安全管理、使用時の看
護の留意点、装着に係る説明書等を内容とする「長期療養患者が使用する人工呼
吸器の取扱い手順書」を平成21年3月に作成し運用を開始した。
【手順書内容】
Ⅰ
長期療養患者に対する人工呼吸器の目的、使用時の留意点等
1.目的
2.分類
3.基本構造
6.使用時の看護の留意点
4.操作
5.安全管理
7.停電時の対応
8.装着にかかる説明書及び同意書
Ⅱ
非 侵 襲 的 陽 圧 換 気 療 法 ( N P P V)
1.適応基準
2.長所・短所
5.使用時の看護の留意点
3.代表的な換気様式
6.移行
7.装着にかかる説明書及び同意書
3
4.安全管理
4.人工呼吸器不具合情報共有システムの運用
国立病院機構内病院で稼働している人工呼吸器の不具合情報を迅速に共有する
ことで、患者の人工呼吸器管理に係るリスクを軽減させ、患者の療養上の安全を
よ り 一 層 確 保 す る こ と を 目 的 に 、「 人 工 呼 吸 器 不 具 合 情 報 共 有 シ ス テ ム 」 の 運 用
を平成21年3月から開始した。
また、不具合が生じた場合には、患者への影響を考慮し必要に応じて製造業者
に対し情報提供を行い、不具合原因の究明や、改善を求めることとしている。
【システム概要】
①報告内容:人工呼吸器の機械的な不具合の情報を報告内容
②報告事項:メーカー名、機種名、購入年月日、不具合の内容、不具合が発
生した場合の使用状況
③情報共有:各病院より報告後、速やかに国立病院機構内ネットワーク内の
掲示版に掲示
5.平成20年度医療事故報告の概要
医 療 事 故 が 発 生 し た 際 の 機 構 本 部 へ の 報 告 は 、「 独 立 行 政 法 人 国 立 病 院 機 構 に
お け る 医 療 安 全 管 理 の た め の 指 針 」( 以 下 、「 指 針 」 と い う 。) に 基 づ き 行 わ れ て
い る 。 平 成 1 8 年 度 に 指 針 の 見 直 し を 行 い 報 告 を 要 す る 医 療 事 故 の 範 囲 は 、「 ①
当 該 行 為 に よ っ て 患 者 に 死 を 至 ら し め 、ま た は 死 に 至 ら し め る 可 能 性 が あ る と き 、
②当該行為によって患者に重大若しくは不可逆的傷害を与え、または与える可能
性 が あ る と き 」 か ら 、「 ① 誤 っ た 医 療 又 は 管 理 を 行 っ た こ と が 明 ら か で あ り 、 そ
の行った医療又は管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が
残った事例又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他
の治療を要した事例、②誤った医療又は管理を行ったことは明らかでないが、行
った医療又は管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残っ
た事例又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治
療を要した事例(行った医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該事
例 の 発 生 を 予 期 し な か っ た も の に 限 る )、 ③ 前 2 号 に 掲 げ る も の の ほ か 、 医 療 機
関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する事例」に変更し、日本医
療機能評価機構と同様としている。
平成20年度に各病院から機構本部に報告された医療事故件数は1,004件
であった。平成19年度の同報告件数が677件であったことからすれば、大幅
な件数の増加となっている。これについては、医療事故そのものが増加したもの
ではないと考えているところである。前述に述べた「転倒・転落事故防止プロジ
ェクトを立ち上げたことにより当該報告精度がより明確になり、医療安全対策の
基本が「過去の事例から学ぶ」ことにある視点から、各病院からの報告が適正に
行われるようになった結果であると考えている。
4
また、各病院から機構本部に報告された医療事故報告の中から、特徴的な事例
や重要と考えられる事例について、警鐘的事例として背景・要因や再発防止策と
ともに更に詳細に紹介を行っている。警鐘的事例の項目は次のとおりである。
(1)
MRI検査における危険性について
(2)
嚥下における危険性について
(3)
輸血検査における危険性について
(4)
原因不明の骨折について
(5)
輸液による血液外漏出皮膚障害について
(6)
胃ろう造設チューブ誤挿入により死亡事例等について
(7)
リハビリテーション中の事故(転倒)について
6.医療事故報告制度への一層の協力
日 本 医 療 機 能 評 価 機 構 ( 以 下 「 評 価 機 構 」 と い う 。) が 行 う 医 療 事 故 情 報 収 集
等事業については、国立病院機構全病院が報告義務対象医療機関となっている。
当 該 事 業 へ よ り 一 層 協 力 し て い く 観 点 か ら 、「 国 立 病 院 機 構 に お け る 医 療 安 全 管
理のための指針」について、平成19年度において、それまで異なっていた評価
機構への報告範囲と機構本部への報告範囲を統一するとともに、報告を行うに当
たっての事務的負担を軽減する観点から、報告様式についても評価機構への報告
様式とできるだけ共通した様式とするなどの見直しを行った。
平成20年度においては、評価機構への報告件数が大幅に増加し、評価機構に
おける報告義務対象医療機関からの報告のうち半数近くを国立病院機構が占める
までとなり、我が国全体の医療安全対策にも貢献している。
【資料】
1.医療安全対策に係る研修の実施
国立病院機構では、発足当初(16年度)から各病院の医療安全管理者等を対
象とした研修を、各ブロック毎に開催している。平成20年度においても、全ブ
ロ ッ ク で 計 9 2 7 人 の 職 員 が 受 講 し て お り 、研 修 で 得 た 知 見 を 各 病 院 に 持 ち 帰 り 、
安全・安心な医療の提供のために活かしている。
2.独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指針(抜粋)
「指針」については、前述の医療安全対策に関する検討委員会報告書及び平成
19年4月施行の医療法改正とそれに伴う医療法施行規則の改正内容を踏まえ、
次の見直しを行い、平成19年度に運用を開始した。
( 1 )「 国 立 病 院 機 構 に お け る 医 療 安 全 対 策 に 関 す る 検 討 委 員 会 」 の 議 論 を 踏 ま え
た事項の追加
①病院ネットワークを活用した医療安全管理体制の確立の視点を明確化
5
②全病院統一の患者影響レベルの指標を設定
③機構本部への医療事故報告の範囲を、日本医療機能評価機構が行う医療事故
情報収集等事業における報告範囲と同一にするとともに、報告様式について
も整合性を図る
④警察への届出の際の院内手続きの明確化
⑤重大な医療事故が発生した際の対外的公表指針の設定
⑥拡大医療安全管理委員会の医療安全管理体制への位置付けを明確化
⑦中央医療安全管理委員会の設置
(2 )医 療 法 施 行 規 則 の 一 部 改 正 を 踏 ま え た 事 項 の 追 加
①院内感染対策のための体制の確保
ア
院内感染対策のための指針の策定
イ
院内感染対策のための委員会の開催
ウ
従事者に対する院内感染対策のための研修の実施
②医薬品に係る安全管理のための体制の確保
ア
医薬品の安全使用のための責任者の設置
イ
従事者に対する医薬品の安全使用のための研修の実施
ウ
医薬品の安全使用のための業務に関する手順書の作成及び当該手順書に
基づく業務の実施
③医療機器に係る安全確保のための体制の確保
ア
医療機器の安全使用のための責任者の設置
イ
従事者に対する医療機器の安全使用のための研修の実施
ウ
医療機器の保守点検に関する計画の策定及び保守点検の適切な実施
6
Ⅱ
本
7
編
平成20年3月26日
独立行政法人国立病院機構
転倒・転落事故防止プロジェクトの推進について
1.目的
(1)国立病院機構における医療事故の約30%を転倒・転落事故が占めている。転倒・
転落事故と他の医療事故との大きな違いは、その発生が必ずしも医療者側のエラーに
よるものではないという点にある。患者の遠慮がちな性格や認知機能障害等の要因に
よる看護師の目が届かないところでの自力歩行が、転倒・転落に繋がるケースが非常
に多くあり、また、その中の多くのケースでは、移動する際はコールするよう指導を
行っていたケースでもある。
(2)この様なタイプの転倒・転落事故を減少させていくためには、患者の身体状況の把
握、患者への働き掛け、環境整備などの対策を医療者側が着実に行っていく中で、患
者のニーズを先取りしながら看護サービスを提供していくことが必要である。また、
患者が自らのニーズについて躊躇することなく医療者側に伝えられるような、患者と
の良好な関係性を構築していくことも重要となるであろう。
(3)転倒・転落事故防止プロジェクトは、患者・家族との良好なコミュニケーションや
観察を通じて得た情報を医療チーム内で適切に共有しながら、患者ニーズを先取りし
たケアを提供していく過程である。この意味で、本プロジェクトは、国立病院機構内
おいて最大の発生件数を占めている転倒・転落事故を大幅に減少させることを直接的
な目的としつつ、一方で、医療・看護の提供に係る基礎的能力である観察力やコミュ
ニケーション能力を最大限活用し患者のニーズを的確に把握し対処していく過程とそ
の継続を通じて、国立病院機構における医療・看護の質全体を高めていくことにも繋
げていくものであると考えられる。
2.目標値の設定
転倒・転落事故防止プロジェクトは、平成20年4月から2ヶ月間の院内体制を整え
るための準備期間を経て、6月から本格実施していくこととし、2年間で影響レベル 3b
以上の「転倒・転落事故発生率」の半減(平成19年度の「転倒・転落事故発生率」の
△50%)を目指す。また、アセスメント実施率については初年度で95%以上の実施
率を目指すものとする。
8
3.定義
本プロジェクトにおいて、「転倒」「転落」「転倒・転落事故」を次のとおり定義する。
①「転倒」
自分の意思に反してバランスを崩してしまうことにより、足底以外の身体が地面や床
面についてしまった状態
②「転落」
高い場所から低い場所に転げ落ちること
③「転倒・転落事故」
転倒又は転落により、国立病院機構における統一的な患者影響レベルで 3b 以上の影響
が生じた事象
4.転倒・転落事故臨床指標
*全ての数値から、NICU、GCU の患者数は除く
転倒・転落事故防止プロジェクトの進捗状況を定量的に把握するため、次の「転倒・
転落事故臨床指標」を定める。
①アセスメント実施率=(入院時アセスメント実施患者数/新入院患者数)×100
②転倒・転落発生率=(転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
③重大事象発生率
◇影響レベル 3b 以上事象発生率=(3b 以上転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
◇影響レベル 3b 事象発生率=(3b 転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
◇影響レベル 4 事象発生率=(4 転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
◇影響レベル 5 事象発生率=(5 転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
④傷害の指標=(影響レベル 3b 以上事象発生件数/転倒・転落件数)×100
5.転倒・転落事故防止マニュアル
・転倒・転落事故防止に係る業務を標準化し、プロジェクトの効果的・効率的推進を図
るため、統一的な「転倒・転落事故防止マニュアル」(別添)を策定する。
・各病院は、本マニュアルを参考に、各病院の患者状況等に応じた修正を行った上で自
病院版「転倒・転落事故防止マニュアル」を完成させるものとする。
・ただし、
「転倒・転落アセスメントシート」については、全病院が同じアセスメントシ
ートを使用することでシートに係るデータの集計・分析を行うことにより、転倒・転
落に係る高リスク項目を特定する等の使用を考えていることから、「統一マニュアル」
で示すアセスメントシートを使用することを基本とする。
9
6.プロジェクト実施体制
(1)平成20年4月から2ヶ月間の準備期間中に、各病院はプロジェクト実施のための
院内体制を整える。また、各病院が問題認識を共有する中で円滑にプロジェクトが推
進されていくようにするため、この準備期間中の適当な時期に、各ブロック単位で医
療安全管理者等実務担当者による打ち合わせ会議を開催する。
(2)各病院の医療安全管理委員会による方針の決定等
・プロジェクト推進体制の確立
*別添「統一マニュアル」を活用した院内マニュアル策定、各部門の協力体制の確
立、病棟等毎のプロジェクトリーダーの指名、転倒・転落臨床指標の報告体制等
・事務部門を含む多職種で構成された
転倒・転落対策チーム
による定期的な院内ラ
ウンド等の実施
・進捗状況の把握及び評価(最低月1回)と部門間での情報共有
*年齢、発生時間、発生原因、発生場所、発生病棟、診療科等別に整理・分析
*病院全体、病棟毎の転倒・転落事故臨床指標の推移
・進捗状況や機構全病院の転倒・転落事故臨床指標を踏まえた防止対策の改善
(3)機構本部への報告とフィードバック
・転倒・転落事故臨床指標の各病院から機構本部への報告(月毎)
・機構本部から転倒・転落事故臨床指標の集計・分析結果のフィードバックする
*転倒・転落事故臨床指標の推移(全体・病院類型別等)
(4)「転倒・転落アセスメントシート」の集計・分析による高リスク要因の特定
・一定期間毎に「転倒・転落アセスメントシート」を各病院から機構本部に提出
・提出されたシートを病棟種別毎(一般、精神、障害者系、小児等)に集計、統計的処
理を行うことで、転倒・転落に関する高リスク項目を特定するとともに、その結果に
ついては、
「転倒・転落アセスメントシート」や防止対策の改善のために活用すること
で、本プロジェクトの一層効果的な進捗を図る
10
転倒・転落事故臨床指標(平成20年度)
病 院 類 型 別(内 訳)
計
区 分
病院
病院
病院
500以上 350~499 349以下
①アセスメント実施率
=(入院時アセスメント実施患者数(A)/新入院患者数(B))×100
療養所
療養所
療養所
療養所
療養所
一般
結核
障害者
精神
その他
97.9
97.9
98.5
97.6
97.0
99.3
97.9
98.2
98.8
0.186
0.260
0.226
0.209
0.153
0.253
0.117
0.163
0.155
◇影響レベル3b以上事象発生率
=(3b以上転倒・転落件数(H)/入院延患者数(D))×100
0.005
0.006
0.005
0.005
0.005
0.006
0.002
0.006
0.006
◇影響レベル3b事象発生率
=(3b転倒・転落件数(E)/入院延患者数(D))×100
0.005
0.006
0.005
0.005
0.005
0.006
0.002
0.006
0.006
◇影響レベル4事象発生率
=(4転倒・転落件数(F)/入院延患者数(D))×100
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
◇影響レベル5事象発生率
=(5転倒・転落件数(G)/入院延患者数(D))×100
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
(A) 入院時アセスメント患者数
408,251
144,472
88,520
62,662
61,708
8,338
23,908
4,684
13,959
(B) 新入院患者数
416,965
147,591
89,833
64,206
63,627
8,395
24,411
4,770
14,132
23,274
5,879
3,533
2,847
3,608
1,081
2,621
2,221
1,484
426,563 2,231,171 1,359,612
956,644
②転倒・転落発生率
=(転倒・転落件数(C)/入院延患者数(D))×100
③
重
大
事
象
発
生
率
(C) 転倒・転落件数
12,529,688 2,262,872 1,566,560 1,361,257 2,365,009
(D) 入院延患者数(NICU・GCU除く)
603
127
85
72
113
25
51
77
53
(F) 4転倒・転落件数
7
4
0
1
0
0
1
1
0
(G) 5転倒・転落件数
6
3
1
0
2
0
0
0
0
616
134
86
73
115
25
52
78
53
(E) 3b転倒・転落件数
(H) 3b以上の転倒・転倒転落件数
※病院類型とは、独立行政法人移行前の旧病院、旧療養所を病床数別及び主な疾患種別に類型化したものである。
1病院当たりの転倒・転落件数
[1月平均]
17.712
38.425
23.092
14.379
12.932
30.028
9.707
18.983
13.741
1病院当たりの転倒・転落(3b以上)件数
[1月平均]
0.469
0.876
0.562
0.369
0.412
0.694
0.193
0.667
0.491
11
(別添)
転 倒 ・ 転 落 事 故 防 止 マ ニ ュ ア ル
1.転倒・転落事故防止のための基本フロー
(1)転倒・転落アセスメントシートによるリスクの評価
・入院時オリエンテーションの際、必要に応じて「転倒・転落に関する入院時意識調査
表(別紙1)」等を用いながら患者情報を把握する。
・
「入院時意識調査表」などによる患者情報等を踏まえ、入院から24時間以内に「転倒・
転落アセスメントシート(別紙2)」により転倒・転落リスクを評価する。「アセスメ
ントシート」については、看護記録の中に綴じることにより、スタッフ間で情報の共
有を図る。
(2)患者毎の転倒・転落防止計画の策定
・「転倒・転落事故防止計画表(別紙3)」の各項目のチェックや【記述欄】への必要な
情報の記述を行いながら、判定されたリスクに応じた防止計画を策定する。本計画表
についても、看護記録の中に綴じることにより、スタッフ間で情報の共有を図る。
(3)患者及び家族への説明
・「アセスメントシート」「計画表」及び「患者・家族への標準的な説明内容(別紙4)」
を示しながら、患者及び必要に応じて家族に対して、
a 転倒・転落のリスク、
b 事故防止のために実施することが必要な対策、
c 患者・家族の協力が必要な事項、
d 使用薬剤に伴うリスク(リスクが高くなる薬剤を使用している患者)、
等について説明を行い理解を得る。
・また、身体抑制が必要な場合は、
「抑制・拘束が必要な場合の説明内容・同意書(別紙
5)」を活用し、抑制の必要性等について十分説明を行うとともに、患者・家族の承諾
又は同意を得る。説明内容及び承諾書についても、看護記録の中に綴じることにより、
スタッフ間で情報の共有を図る。
(4)アセスメントシートによるリスクの再評価
・アセスメントシートによるリスクの評価は入院時(24時間以内)に行う他、1週間
後、手術後、転室時、転倒・転落時、病状の変化があった時、使用薬剤の変更があっ
た時等には再評価を行い、結果に応じた防止計画の見直しを行う。また、再評価及び
見直し後の防止対策の内容については、患者及び必要に応じて家族に対して説明を行
い理解を得るとともに、それらの内容についてスタッフ間で情報の共有を図る。
(5)リスクの高い薬剤リストの作成
・薬剤部門が中心となって、「転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト(別紙6)」を参考
に、自病院が使用している薬剤の内容に応じ転倒・転落リスクが高くなる薬剤リスト
を作成することにより、薬剤使用に係るリスク低減のために活用する。
(6)転倒・転落防止体操等
・添付している DVD を、転倒・転落防止体操の指導や患者用テレビに映像を流すなど各
12
病院の状況に応じた活用を行うことで患者の筋力の維持・向上を図る。
・「注意喚起のためのステッカー等事例集(別紙7)」を活用し、転倒・転落事故防止の
ための注意喚起等環境の整備を図る。
2.転倒・転落の発生要因の整理
(1)患者側の要因(主なもの)
①環境等変化:手術実施後(3日以内)
、病状・ADL が急速に回復又は悪化している、入
院・転棟・転室後(7日以内)、リハビリ開始時期・訓練中、ベッドでの
生活は初めて
②性
格:羞恥心が強い、よく遠慮する、依存できない、自分でしないと気がすま
ない、ナースコールを押さないで行動しがち
③身体的機能:麻痺、痺れ感、拘縮や変形、足腰や筋力の低下、ふらつき、立位不安定、
自力によるベッド昇降不能、自立端座位不可、ベッド上での体動著明
④感
覚:平衡感覚障害、視力障害、聴力障害
⑤認知機能 :記憶力・判断力低下、見当識障害、意識混濁・混乱、不穏行動
⑥活動状況 :車椅子・杖・歩行器・手すりの使用、移動・排泄に介助が必要、ベッド
サイドでの排泄、点滴・胃管・ドレーン・尿道カテーテル使用、衣服着
脱に介助が必要
⑦薬剤の使用:睡眠鎮静剤、抗精神病薬、抗パーキンソン薬、筋弛緩剤、麻薬、下剤、
降圧利尿剤、抗悪性腫瘍薬
⑧排
泄:尿・便失禁がある、便秘・下痢である、頻尿・夜間排尿が多い、尿意・
便意を訴えられない、排泄行為に時間を要する
(2)医療者側の要因(主なもの)
①リスクに対する意識が低い
②患者の危険度の把握が不十分
③監視体制(計画)が不十分
④患者・家族へのリスクに関する説明が不十分
⑤睡眠鎮静薬等与薬後の注意と観察が不十分
⑥適切な履物・衣服の選択、歩き方の指導が不十分
⑦補助具、ポータブルトイレ、点滴架台の選択や設置場所が不適切
⑧車椅子のストッパー、安全ベルトのし忘れ、介助運転不慣れ
⑨患者の状態に合わせた援助の変更が適切な時期にできていない
⑩患者の状況にあった看護計画が立案されていない
⑪排泄パターンの把握不足
⑫歩行中の患者に後から声を掛ける行為を行う
(3)環境(施設、設備)の要因(主なもの)
①環境整備 :廊下、ベッドサイド等の障害物
②ベッド
:高さ、柵の不適切な使用
③ナースコール、オーバーテーブル、床頭台:位置が不適切
④床の状況 :滑りやすい、つまずきやすい(清掃中、床の材質、敷物、段差等)
⑤構造、表示:そこに何があるか分りにくい、暗い(照明の不足)、危険な場所への立ち
入りの物理的排除の不備
13
3.看護師等医療者側の基本的留意事項等
(1)基本的留意事項
①転倒・転落アセスメントの実施は、患者及び家族との十分なコミュニケーションの中
で実施する。
②アセスメント結果や防止計画等についての説明内容及び患者・家族の反応については、
出来る限り看護記録に記載する。
③また、説明済みの防止計画からの逸脱(防止計画を患者に説明することなく変更する
こと)は、患者を混乱させる結果に繋がることに留意が必要である。
④リスク判定 A・B の高リスクの患者の情報は、患者リストの作成やナースステーション
の患者ネームプレートへのマグネット貼付、勤務引継ぎ時の読上げ等により、医療者
間での情報を確実に共有することが重要である。
⑤介助を行う際は麻痺側に立って行い、患者の腰部を十分固定した上で行う。車椅子や
ベッド、トイレへの適切な移乗技術の習得に努める。
⑥使用薬剤毎の転倒・転落リスクについて知識(1回使用量、作用発現時間、作用時間、
半減期等)の習得に努める。
⑦歩行補助器の使用は、理学療法士等と一緒にアセスメントを行い決定する。また、歩
行補助器、車椅子の定期点検を行う(概ね1回/月)。
⑧転倒・転落防止を優先するあまり患者の生活そのものが味気ないものにならないよう、
さりげなく、しかも確実に転倒・転落事故防止対策を組み込む姿勢が重要である。
⑨患者が「したい行動」と「できる行動」の間には乖離が生じやすいことを理解する。
(2)ベッドの設定に係る留意事項
①ベッドのストッパーは必ず固定しておく。
②ベッドのキャスターは内側に向けた状態で固定する。
③ギャッジベッドのハンドルは、使用の都度必ず収納する。
(3)検査時、リハビリテーション時等病棟外での留意事項
①看護部門と他部門とのリスク情報の共有により、他部門の担当者も患者毎の転倒・転
落リスクを十分承知した上での対応を行う。
②撮影台への乗り降りは、台を最低の高さにした上で行い、撮影台の中央に患者の正中
線を置いた上で撮影する。また、立位での撮影時は、固定用具を使用するなど不安定
な状態のままでの撮影は行わない。
③乳児を撮影する際は、必ず2人で行う。
④絶食・延食での治療、検査や術前投薬の影響で、ふらつきや立ちくらみ等を起こしや
すいので留意する。
(4)環境面での留意事項
①病室、廊下、浴室の環境整備を行い、歩行等の障害になるものを置かない。
②段差や障害物へのマーキングを行う。
③病室、廊下の床の水漏れ(配茶、配膳、雨天時は注意)は、直ちに拭き取る。
④清掃後、床が濡れたままの状態にならないよう業者を指導する。
4.転倒・転落に関する入院時意識調査票 [別紙1]
・本調査票は、入院オリエンテーション時に、必要に応じて患者・家族に記入してもら
14
うことで、患者の身体状況や患者の性格等の情報を把握するために活用するものであ
り、そのための基本的事項について整理したものである。
・各病院が既に使用している問診票がある場合には、本調査票を参考に必要な修正等を
行ったうえで使用するものとする。
5.転倒・転落アセスメントシート [別紙2]
(1)目的
・転倒・転落アセスメントシートは、入院時の患者及び家族へのオリエンテーション時
等に患者・家族との適切なコミュニケーションの中で実施することで、転倒・転落に
係る患者毎のリスク判定を行うものである。
・アセスメントの結果については、患者・家族にも十分な説明を行い、患者・家族側と
医療者側の共通のリスク認識の中で、転倒・転落防止計画を円滑に実施していくため
の基礎となるものである。
(2)アセスメントの対象
・本シートによるアセスメントは、NICU、GCU 入院患児を除く全患者に対して行う。
(3)アセスメントの実施者
・基本的には患者の受け持ち看護師が責任を持って実施する。
(4)アセスメントの実施時点
・入院時には、24時間以内に必ず実施する。
・入院1週間後、手術後や転室時、転倒・転落時、病状の変化があった時、睡眠鎮静薬・
抗精神病薬等の使用開始及びそれら薬剤の変更時等には、必ず再評価を実施するとと
もに、次項の「転倒・転落事故防止計画表」による対策の見直しを行う。
(5)アセスメントによるリスク判定
・アセスメントに基づく「リスク判定」の考え方は次のとおり。
◇リスク A:リスク判定Bの患者で「薬剤の使用」の「単独高リスク項目」がチェッ
クされている患者(「薬剤の使用」の「単独高リスク項目」のみにチェッ
クが付いている患者を含む)
◇リスク B:
「薬剤の使用」以外の「単独高リスク項目」にチェックが付いている患者
◇リスク C:「単独高リスク項目」にチェックが付いていない患者
・アセスメント実施後は、判定リスクに応じた対策を「転倒・転落事故防止計画表」に
基づき策定・実施する。
・リスク判定が A・B であった患者については、患者リストの作成やナースステーション
の患者ネームプレートへのマグネット貼付、勤務引継ぎ時の読上げ等により、医療者
間での情報を確実に共有することが重要である。
(6)アセスメントシートの看護記録への保管
・本シートは、アセスメント実施後、看護記録にはさみ込み、常に確認できるようにし
ておくことが、医療者間の情報共有の観点からも必要である。
15
6.転倒・転落事故防止計画表 [別紙3]
(1)目的
・
「転倒・転落事故防止計画表」は、転倒・転落アセスメントシートによる判定リスクに
応じて、患者毎の転倒・転落防止のための計画を策定するために活用する。
・本表は、患者の転倒・転落リスク毎の標準的な防止計画を整理したものであり、経験
年数等の異なる看護師等であっても同水準の防止計画を策定し実施することで、転
倒・転落事故の大幅な低減を目指すものである。
(2)判定リスクに応じた「対策」の考え方
・判定されたリスク毎の対策を整理すると、次のとおり。
◇リスク判定 C:「標準的対策」を実施
◇リスク判定 B:「標準的対策」に加え「高リスク患者への対策」を実施
◇リスク判定 A:
「標準的対策」及び「高リスク患者への対策」に加え「薬剤使用者へ
の対策」を実施
・防止対策の実施を意識付けるため、実施する対策については項目チェックを行うとと
もに、
【記述欄】には、患者の状態に合わせた具体的な対策や説明内容、患者の反応等
を適宜記入し、スタッフ間での情報の共有を図る。
(3)アセスメントシートによる再評価と対策の見直し
・アセスメントシートによる再評価を行った場合には、必ず本計画表に基づく転倒・転
落防止計画についても見直しを行う。
(4)活用に当たっての留意点
・本計画表は、患者毎のリスク判定に応じた標準的な転倒・転落防止対策を整理したも
のであるが、これを絶対視することなく弾力的に運用していくことが肝要である。
・例えば、
「単独高リスク項目」へのチェックが無い場合でも、それ以外のチェック項目
が多くリスクが高いと判断される場合には、
「高リスク患者への対策」を防止対策に加
えることが必要となる場合があることに留意する。
7.患者・家族への標準的な説明内容 [別紙4]
・患者が入院する際の転倒・転落リスクの標準的な説明内容について、整理を行ってい
る。説明者は、本標準的説明内容を参考に、患者の個別の事情を考慮しながら、十分
な説明を行い、そして理解を得ることが必要である。
8.抑制・拘束が必要な患者への説明内容・承諾書 [別紙5]
・患者の抑制・拘束には慎重になるべきであるが、一方で、患者の認知機能の低下と不
穏行動の多発化等により、一定の抑制・拘束が止むを得ない場合もある。
・その際には、患者及びその家族に対し必要性を十分に説明し、理解を得ることが極め
て重要であり、本説明資料は、この様な観点から、患者の抑制・拘束を行わざるを得
ない場合に、患者及びその家族に対して行うことが必要な説明内容及び承諾書につい
て、標準的な内容を整理したものである。
16
9.転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト [別紙6]
・患者の認知機能を低下させ、身体機能に大きな影響をもたらす要素として、睡眠鎮静
剤等転倒・転落リスクを増大させる薬剤の使用がある。
・睡眠鎮静剤等を処方する際は、患者の状態について十分に検討した上で行うことが重
要である。また、看護師等医療者が、各患者が使用している薬剤について正確に把握
しておくことは当然のこととして、その薬剤がどの様な副作用を発生させ転倒・転落
リスクを高めることになるのかを明確に知識として持った上で対策を講じていくこと
が、転倒・転落事故防止対策を進めていくための必須の要件である。
・本リストは、その使用により特に転倒・転落リスクが高くなると考えられる薬剤のリ
ストであり、本リストを参考に、薬剤部門が中心となり、各病院で実際に使用されて
いる薬剤に応じてリストを完成させるとともに、薬剤使用患者に対する説明を行って
いくことが必要である。
10.転倒・転落防止体操(DVD版)
・転倒・転落事故を減少させていくためには、患者自らがその予防をしていくことが必
要である。そのためには、ベッド上の生活が長くならざるを得ない患者の身体機能、
特に脚力を出来るだけ減退しないよう配慮していくことが重要なポイントとなる。
・この DVD はこの様な観点から作成しているものであり、看護師による指導や映像を常
に流し続ける等各病院の状況に応じて活用するものである。
11.注意喚起のためのステッカー等事例集 [別紙7]
・患者の自力行動を予防するため、患者への注意喚起のためのポスター・ステッカー等
を例示している。各病院は、これらのポスターやステッカー等を、病室、ベッドサイ
ド、トイレ等に貼付することで、転倒・転落リスクの高い患者が自力での移動を行わ
ず、看護師等による介助を依頼するように方向付けていくことが必要である。
12.転倒・転落事故事例集 [別紙8]
・国立病院機構において過去に発生した転倒・転落事故について、大まかな類型を行い
対策を整理したものであり、これらの事例集も参考としながら、転倒・転落防止対策
を推進していくことが必要である。
17
(別紙1)
転倒・転落に関する入院時意識調査票
入院という環境の変化により、日頃から歩行等に自信を持っておられる方でも思いがけ
ず転倒することがあり、特にトイレへの行き帰りに多く発生しています。この調査票は、
転倒・転落を予防するために、現在の患者さんの状況を把握するために作成したものです。
主旨をご理解いただき、以下の質問にお答下さい。
お名前
(記入者:
・
問1
ご本人
・
ご家族
ご年齢
歳
・その他[
])
現在のあなたの状況に当てはまるものに○をつけて下さい。
①
めまいやふらつきがある
(
はい
・
いいえ
)
②
足に痛みやしびれがある
(
はい
・
いいえ
)
③
目が見えにくい
(
はい
・
いいえ
)
④
何もないところでつまずくことがある
(
はい
・
いいえ
)
⑤
睡眠薬や安定剤を使用している
(
はい
・
いいえ
)
⑥
これまでにベッドから落ちたことがある
(
はい
・
いいえ
)
⑦
自宅でポータブルトイレを使用していた
(
はい
・
いいえ
)
⑧
夜間トイレに行くことが多い
(
はい
・
いいえ
)
⑨
動く時に不自由さを感じる
(
はい
・
いいえ
)
問2
※問1で「はい」が1つでもあった方におたずねします。
問1で「はい」が1つでもあった場合は転倒しやすいと言われています。このこと
を踏まえた上で、次の質問にお答下さい。トイレに行くことが必要になった場合のあ
なたのお気持ちは、次のどちらですか。該当する方に○を付けて下さい。
①
自分のことは自分でしたい
②
看護師等に手助けを希望する
(
)
(
18
)
問3
※問2で「①自分のことは自分でしたい」に○を付けられた方におたずねします。
その理由についておたずねします。ご自分のお気持ちに近いものに○を付けて下さ
い(複数の項目に○をつけていただいても結構です)。
①
自分でできるから
(
)
②
動かないと足・腰が弱るから
(
)
③
看護師が忙しそうでたのみにくいから
(
)
④
見られたくないから
(
)
⑤
その他
[
]
【問2で①に○を付けられた方へ】
◎
私たち看護師は、自分のことを自分でしたいという気持ちは十分に尊重させていた
だいた上で、転倒を予防するためには、患者さんのご協力をお願いする場合もありま
す。ご理解いただきますようお願いします。
問4
※問2で「②看護師等に手助けを希望する」に○を付けられた方におたずねします。
看護師等に手伝ってほしいことはどんなことですか。些細なことでも結構です。お
聞かせ下さい。
問5
その他、ご意見・ご希望がありましたらお聞かせ下さい。
ご協力ありがとうございました。
独立行政法人国立病院機構
19
○○病院
(別紙2)
転 倒 ・ 転 落 ア セ ス メ ン ト シ ー ト
患 者 氏 名 様 男・女 年齢 歳 患者ID 担当者名
※過去の転倒・転落の記録:
/
/
/
/
/
〔「手術後」や「転室時」、「転倒時」、「病状の変化があった際」などには、必ず再評価を実施〕
単独高リ
スク項目
ア セ ス メ ン ト 項 目
A 年齢
B 既往歴
患
環境等の
者 C 変化
の
特
徴
D 性格
E 身体機能
F 感覚
70歳以上、または9歳以下である
過去、入院中に転倒・転落したことがある
/
/
/
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
① 手術実施直後(3日以内)である
○
□
□
□
□
□
② 病状・ADLが急速に回復、又は悪化している時期である
○
□
□
□
□
□
③ 入院・転棟・転室後(7日以内)である
□
□
□
□
□
④ リハビリ開始時期、訓練中である
□
□
□
□
□
⑤ ベッドでの生活は始めてである
□
□
□
□
□
① 羞恥心が強い、よく遠慮する
□
□
□
□
□
② 依存できない、自分でしないと気がすまない
□
□
□
□
□
③ ナースコールを押さないで行動しがちである
□
□
□
□
□
① 麻痺、又は痺れ感がある
○
□
□
□
□
□
② 拘縮や変形がある
○
□
□
□
□
□
③ 足腰や筋力が弱くなっている
○
□
□
□
□
□
④ 自立歩行できるが、ふらつきがある
○
□
□
□
□
□
⑤ 支えがなければ立位が不安定
○
□
□
□
□
□
⑥ 自力によるベッド昇降ができない
○
□
□
□
□
□
⑦ 自立端座位ができない
○
□
□
□
□
□
⑧ 寝たきりの状態だが、ベッド上で体動ができる
○
□
□
□
□
□
① 平衡感覚障害がある
□
□
□
□
□
② 視力障害がある
□
□
□
□
□
③ 聴力障害がある
① 記憶力・判断力低下がある
G 認知機能 ② 見当識障害、意識混濁、混乱がある
③ 不穏行動がある
① 車椅子・杖・歩行器・手すりを使用する
患
者
② 移動、排泄に介助が必要である
の
状 H 活動状況 ③ ポータブルトイレ使用などベッドサイドで排泄行為を行う
態
④ 点滴、胃管、ドレーン、尿道カテーテル等をしている
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
⑤ 衣服の着脱などに介助が必要である
① 睡眠鎮静薬を使用中
○
□
□
□
□
□
② 抗精神病薬を使用中
○
□
□
□
□
□
③ 抗パーキンソン薬や筋弛緩剤を使用中
○
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
⑥ 降圧利尿剤を使用中
□
□
□
□
□
⑦ 抗悪性腫瘍薬を使用中
□
□
□
□
□
① 尿・便失禁がある
□
□
□
□
□
② 便秘・下痢である
□
□
□
□
□
③ 頻尿、夜間排尿が多い
□
□
□
□
□
④ 尿意・便意を訴えられない
□
□
□
□
□
薬剤の使
I
④ 麻薬を使用中
用
⑤ 下剤を使用中
J 排泄
入院時 1週間後
/
/
□
□
□
□
□
チェック項目数(最大チェック数:40)
⑤ 排泄行為に時間がかかる
/40
/40
/40
/40
/40
単独高リスク項目チェック数 (最大チェック数:20)
/20
/20
/20
/20
/20
リスク判定( A ・ B ・ C )
*リスク判定A:リスク判定Bの患者で「薬剤の使用」の「単独高リスク項目」がチェックされている患者。又は、「薬剤の使用」
の「単独高リスク項目」のみがチェックされている患者。
*リスク判定B:「薬剤の使用」以外の「単独高リスク項目」がチェックされている患者
*リスク判定C:「単独高リスク項目」がチェックされていない患者
20
転 倒 ・ 転 落 事 故 防 止 計 画 表
(別紙3)
患者氏名 様:受持看護師 ※ リスク判定別対策の目安:・リスク判定Cの患者→「標準的対策」を実施
・リスク判定Bの患者→「標準的対策」に加え「高リスク患者への対策」を実施
・リスク判定Aの患者→「標準的対策」及び「高リスク患者への対策」に加え「薬剤使用患者への対策」を実施
入院時
3日後
1週間後
区 分
リ ス ク 判 定 別 対 策
/
/
/
/
/
1.危険性の説明 ①転倒リスクについて説明し理解を得る
□
□
□
□
□
〈ポイント〉
【記述欄】
□具体的事例を用いながら説明する
□大きな文字と絵図を用いて説明する
□夜間のトイレ歩行時、眠前薬服用後等の危険度の高い状況
や時間を説明する
2.環境整備
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
【記述欄】
〈ポイント〉
□必需品が手の届く位置にあるよう床頭台を整理
□使用していないオーバーテーブルはベッドから離れたとこ
ろに置く
□杖は、ベッドから離れる際直ぐに使用できる位置に置く
□機械類のコードを束ねる等整理を行う
標
準
①ベッド周辺の整理整頓を行い障害物を除去する
3.ベッド調整
①ベッドの高さを端座位で足が床に着くよう調節する
②状態に応じたベッド柵を選択し使用する
的
( 点柵) ( 点柵) ( 点柵) ( 点柵) ( 点柵)
〈ポイント〉
【記述欄】
□処置等終了時にはベッド柵を元の状態に戻していることを
必ず確認する
対
策 4.自力移動防止 ①ナースコールの重要性について理解を得る
□
□
□
□
□
【記述欄】
〈ポイント〉
□ナースコールは、看護師と患者のコミュニケーションのた
めの重要な手段である点を説明し理解を得る
5.排泄関係
②使用方法の説明、設置位置の確認などにより患者がナース
コールを押せることを確認
□
□
□
□
□
③頻回の声掛け等患者との信頼関係を築くことにより、患者
のナースコールへの心理的負担を軽減する
□
□
□
□
□
④体調の悪いときは遠慮なく介助を求めるよう指導する
□
□
□
□
□
①入眠前の水分摂取(量)を指導する
□
□
□
□
□
②排泄パターンを把握する
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
【記述欄】
③排泄パターンを踏まえた定期的な排尿誘導を行う
( 時間毎) ( 時間毎) ( 時間毎) ( 時間毎) ( 時間毎)
6.移動時留意点 ①スリッパや靴下のままで移動しないよう指導する
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
④ストッパーの確認等車椅子の安全を確保する
□
□
□
□
□
⑤オーバーテーブル、床頭台等に掴まらないよう指導する
□
□
□
□
□
②衣類(ズボン)の裾丈が長い場合は、折り込む等の処置を
行う
③歩行補助器使用時は、患者の体格や姿勢に合わせた調整を
行う
(身長: ㎝)
【記述欄】
21
区 分
7.入浴時
標
準
的
対
策 8.その他
入院時
3日後
1週間後
/
/
/
①1人で入浴する際は、入浴前に必ず連絡するよう指導する
□
□
②定期的な見回りと声掛けを実施する
□
①できるだけ日中の離床を促し、昼夜のリズムをつけるよう
指導する
リ ス ク 判 定 別 対 策
/
/
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
②転倒・転落防止体操の実施
□
□
□
□
□
③筋力低下を招かないよう、患者本人が興味を持ち進んで参
加する活動(行事)を考案する
□
□
□
□
□
【記述欄】
①患者家族を含め、単独高リスク項目のチェック内容に応じ
□
□
□
□
□
1.危険性の説明 た危険性の説明を行い理解を得る
高
【記述欄】
リ
ス
ク
患
者 2.観察の強化
①頻回の訪室により観察を強化する
□
□
□
□
□
へ
*訪室の頻度〔○○分に1回訪室〕
( 分)
( 分)
( 分)
( 分)
( 分)
の
対
①離床センサーを使用する
□
□
□
□
□
策 3.防止用品
4.自力移動防止
5.排泄関係
②ヒッププロテクター・ヘッドギアを使用する
□
□
□
□
□
③ベッド周りへの衝撃吸収マットを使用する
□
□
□
□
□
①移動時には必ずナースコールを押し、介助を求めるよう指
導する
□
□
□
□
□
②ナースステーションに近い観察の目が届く部屋に転室する
□
□
□
□
□
①夜間の排泄時は、必ず移動介助、排泄介助を行う
□
□
□
□
□
②排泄中は原則として患者の側を離れない
□
□
□
□
□
③尿器、便器、ポータブルトイレなどの排泄用具を使用する
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
【記述欄】
〈ポイント〉
□ポータブルトイレは、ベッド脇には置かず必要な時にその
都度用意する
□使用時の設置位置は、一定の場所とする
6.入浴時
①入浴に係る移動及び入浴時の介助を行う
〈ポイント〉
□入浴介助を行う際は、複数人で実施する
①車椅子使用時には、ずり落ちないよう安全ベルトを使用す
7.移動時留意点 る
①睡眠鎮静薬、抗精神病薬等の使用により転倒・転落の危険
□
1.危険性の説明 性が高まることを説明し理解を得る
薬
〈ポイント〉
【記述欄】
剤
□使用している薬剤とその副作用について説明する
使
□特に使用直後における高い危険性を説明する
用
□睡眠時間帯の覚醒時に移動する際は、ふらつき等により危
患
険性が高くなる点を説明する
者
へ
の
①使用している薬剤に応じた観察を強化する
□
対 2.観察の強化
策
【記述欄】
〈ポイント〉
□使用薬剤毎の副作用、作用発現時間、作用時間、半減期等
に応じた観察を実施
②薬剤使用後の影響をアセスメント(睡眠持続時間、睡眠の
深さ、途中覚醒の状況等)する
□
□
□
□
□
①転倒・転落リスクの高い薬剤使用中にベッドから離れる際
3.自力移動防止 は必ずナースコールを押し、介助を求めるよう指導する
□
□
□
□
□
22
(別紙4−1成人用)
安全で快適な入院生活のために
転倒・転落防止対策
入院される患者様及びご家族の皆様へ
入院中は、運動する機会も少なくなりますので足腰の筋力が低下し、ご自分では、できる
と思われても身体が思うように動かないことも多々あります。
また、住み慣れたご家庭とは異なる病院の環境が、病院内での転倒・転落につながることも
あります。
入院生活をより安全に過ごして頂く為に、下記のことにご留意下さい。
1. 歩きやすい服装と歩き方
【服装について】
1)サイズの合う活動に適した服装を用意しましょう。
2)ズボンのすそ丈は踵の上(長い場合は、折り返しましょう)
3)履物は、ご自宅で使用しているものにしましょう
以下の3点が履物選びのポイントです。
・ゴム底などの滑りにくいもの
・はきやすく、ぬぎやすいもの
・底の形状にあっているもの
【歩き方】
1)ゆっくり、歩きましょう。
2)顎を軽く引いていつもより少し前方を見て
歩きましょう
5)肩の力を抜き、両腕は大きく前後に振りましょう。
6)背中をしっかりのばすように心がけましょう。
7)急に振り向くなどの方向転換はバランスを崩しやすいので気をつけましょう。
2.ベッド上で生活する時の留意点
1)ベッドの高さは、ベッドに腰掛けた時に足が床に着く高さが安全です。
高さの調節は看護師が確認いたします。
2)ベッドから身を乗り出して、棚や床に落ちたものを取らないようにしましょう
バランスを崩すとベッドから転落しやすく危険です。
3)ベッドの上で立ち上がるのは、不安定で危険です。
4)オーバーテーブルや床頭台はストッパーがないため危険です。
寄りかからないようにしましょう。
5)お1人で動くのが難しい時、不安な時は、遠慮なく看護師をお呼び下さい。
23
いつでも遠慮
せずお呼びく
ださい。
3.車いす、歩行器、杖使用時の留意点
【車いす】
1)車いすに乗ったまま落とした物を拾わないようにしましょう。
バランスを崩すと車椅子ごと転倒しやすく危険です。
2)乗り降りする時や止まっている時は必ずストッパーを掛けましょう。
3)足台を上げてから車いすへの乗り降りをしましょう。
足台に体重を掛けて乗り降りすると車いすが傾き危険です。
【歩行器】
歩行器につかまって、立ち上がるのはやめましょう。
歩行器にはストッパーがないため、歩行器に体重をかけすぎると危険です。
【杖歩行】
洗面台の周囲やトイレは床がぬれていることがあります。十分にご注意下さい。
床がぬれていると、杖先がすべって、転倒の原因になります。
4.夜間のトイレ
1)夜間にトイレに行くときは、
目が暗がりに慣れるまで動かないようにしましょう。
2)消灯前にトイレを済ませておきましょう。
3)トイレの使用中に、ご気分が悪くなったり、ふらつきのある時はいつでも
看護師がお手伝いします。ご遠慮なくお呼び下さい。
4)夜中はトイレに行くタイミングをみて、看護師が声をかけ誘導することもございます。
5)ポータブルトイレを使用する時は、次の点に御注意ください。
*ポータブルトイレは看護師がお部屋までお持ちいたしますので、
必ずナースコールでお呼びください。
*トイレが終了するまで、看護師が近くにおります。
*トイレから急に立ち上がらず、必ず看護師をお呼びください。
5.点滴を受けている場合について
1)点滴をしながら歩行する時は、廊下の段差や電源コードなどに、引っかからないよう御
注意下さい。
2)点滴スタンドは、足元にキャスターがあります。点滴の架台に足を乗せたり、寄りかか
るのはやめましょう。
24
6.睡眠鎮静薬、降圧利尿剤などを服用されている場合について
1)睡眠鎮静薬や降圧利尿剤の種類によっては、その効果が身体に残っていて、眠気やふら
つき、起き上がっても思うように歩けないこと等があります。
2)夜中に目覚めた時、朝方のトイレへの移動時は、めまいやふらつきの無いことを確認し
てから歩きましょう。
3)服用する薬の作用や注意点については、薬剤師、看護師等から説明をいたしますので、
充分ご理解ください。
7.転倒防止体操について
入院生活は、これまでの生活環境と異なり、体力の低下、運動する機会の減少による筋
力の低下などから、転びやすくなります。筋力アップと体力維持を目的とした歩行訓練や
転倒予防体操をお勧めしておりますので、看護師にご相談下さい。
私たちは、安心して療養していただけるよう
に看護させていただきますが、安全性を高め
るためにはご家族のご協力が欠かせませんの
で、どうぞよろしくお願いいたします。
転倒・転落の可能性のある方には安全のため
離床センサーや頭部の保護帽などの使用を
お願いする場合があります。ご理解の上ご協
力お願い致します。
また、遠慮せずいつでも看護師をお呼びくだ
さい。
独立行政法人国立病院機構○○病院平成20年2月作成
25
(別紙4−2小児用)
安心して入院生活がおくれるために
お子様の転倒・転落防止対策
保護者の皆様へ
お子様が入院して病院で生活するということは、これまでと違う環境の中での生活スタイ
ルになります。お子様にとっても大きな不安となりますし、ご家族の方もご心配のことと
思います。病院とご家庭で一番違う点は、ベッド下の床の状況です。ご家庭では、床が畳
みやフローリングになっていますが、病院では床がコンクリートになっています。そのた
め転倒や転落により、けがや、骨折をする場合もあります。
当院では、このような事故を起こさず安全な療養生活が送れますように、万全を期して
おりますが、未然に防ぐためにもご家族の協力をお願い致します。
☆お子様が転んだり、落ちたりしないように以下についてご注意下さい。
・着替えやオムツを替える時など、衣類やオムツ、必要物品を揃えてから、ベッド柵
を降ろしましょう。
・ お子様のそばを離れる時や目を離される時は、ベッド柵を一番上まで上げておきま
しょう。
・入院したときは元気がないと思っていても、回復するにつれて元気になり、思いも
かけない行動をとることがあり、ベッド柵を乗り越えたり、勢いよく飛びついてき
たりすることもありますのでご注意ください。
・歩けるお子様は、運動靴のようなゴム底ですべらない、足にあった靴を選び
ましょう。スリッパはぬげやすく、転倒の原因となり危険ですので避けましょう
ご不明な点はご遠慮なく看護師にご相談下さい
独立行政法人国立病院機構○○○病院
26
平成 20 年 2 月作成
(別紙5)
身体抑制に関する説明書
氏名
様
突然の入院による環境の変化、病気によるさまざまな身体的、精神的な障害、また高
齢化などにより、転倒やベッドからの転落、治療上必要なチューブ類を抜いてしまうな
どの危険な行動をとる患者さんがいらっしゃいます。必要な治療を受け、入院生活を安
全に過ごしていただくために、やむをえず患者さんの身体の一部を抑制せざるをえない
場合があります。ご理解とともにご協力をお願いいたします。
Ⅰ.やむをえず身体抑制を必要とする場合
下記の理由で身体抑制が必要と判断しましたのでご理解いただきご協力をお
願いします。
1. 患者本人又は他の患者などの生命又は身体の安全を確保する時
2. 身体抑制で行動制限を行う以外に代替する看護・介護方法がない時
3. 点滴などチューブを自己抜去してしまう時
4. 転倒・転落防止
5. 治療上必要な体位の保持
6. その他(
)
Ⅱ.身体抑制の具体的方法(該当する内容の□にレをする)
□ 体幹を安全帯等で抑制する。
□ 四肢を安全帯等で抑制する。
□ 手肢の機能を制限するミトンの手袋等を使用する。
□ 車椅子移動時は Y 字型安全帯や腰ベルトを使用する。
□ 抑制服(つなぎ服)を着用する。
□ サークルベッド、4 点ベッド柵、高いベッド柵を使用する。
□ その他
抑制は必要がなくなれば直ちに終了します。
また、患者さんの状態の変化によって、抑制方法、抑制時間を変更することがあ
りますので、あらかじめご了承ください。
27
Ⅲ.身体抑制による合併症を防ぐための観察
身体抑制施行中、抑制による合併症が発生していないかを確認し必要な対応を
行います。
1.
呼吸機能の障害
・臥床状態が持続することで肺炎などの呼吸機能障害が出現すること
があります。
・臥床により下肢静脈血栓が形成され、肺塞栓症が併発することがあ
ります。
2.
皮膚の障害
・同一体位が続くと骨が突出した部分に褥創ができる場合があります。
・体動などによる抑制帯の摩擦により皮膚を痛めることがあります。
3.
関節の拘縮
・同一体位により関節の動きが制限され関節が硬くなることがありま
す。
4.
筋力の低下
・動きが制限されるため筋力が低下する事があります。
以上の説明でご不明な点がございましたらいつでもお尋ね下さい。
説明日:平成
年
月
独立行政法人国立病院機構
日
○○病院・医療センター
説明者
担当医師
担当看護師
上記の説明を受け、身体抑制に関する内容を理解しましたので、身体抑制を行うことに
同意いたします。
平成
年
月
日
同意者名
(続柄)
平成 20 年
28
月
日作成
身体拘束(抑制)フローチャート
患者に以下のような状態・恐れがあるとき
① 治療に必要なチューブ類など医療器具を抜いたり損傷しようとする場合
② 治療に必要な体位の保持や安静が保てない場合
③ 精神運動興奮などによる多動、不穏がある場合
④ 自傷行為や異食行為などが激しい場合。
⑤ 転倒、転落などの危険がある場合。
⑥ 認知力の低下等で、他患に危険が及ぼされる場合。
看護アセスメント
上記の①∼⑥の問題行動を明確にする
上記項目①∼⑥に該当しない
上記項目①∼⑥に該当する
看護計画立案と実施
① 問題行動の原因に対処する
② 身体拘束(抑制)に代わる方法を検討し試行する
③ 医師と協議する
効果なし
効果あり
①
患者・家族に説明し同意を得る
②
医師は身体拘束(抑制)の指示録に記載する
身体拘束(抑制)の実施
観察と記録
身体拘束(抑制)なし
身体拘束(抑制)の早期解除の検討
医師・看護師合同カンファレンス
身体拘束(抑制)解除
独立行政法人国立病院機構
平成 20 年
29
月
○○病院
日
作成
(別紙6)
転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト
1.転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤
転倒・転落の要因は、病態そのものの動作障害に加え、薬剤の副作用によるものが多い。転
倒・転落リスクを高める可能性のある薬剤について、副作用と薬効分類の対応関係の主なもの
を整理すると次表のとおりとなる。
【転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤のリスト】
薬
効
分
類
リスクをもたらす副作用
睡眠鎮静薬、筋弛緩薬等
脱力、筋緊張低下
抗精神病薬、睡眠鎮静薬、抗不安薬、
眠気、ふらつき、集中力・注意力低下
抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬等
降圧利尿剤等
失神、低血圧、めまい
麻薬、ジキタリス製剤、H2ブロッカー、
せん妄状態
β遮断薬等
抗悪性腫瘍薬等
全身倦怠感
下剤等
下痢、腹痛
2.薬剤投与による転倒・転落リスク低減のためのポイント
①
薬剤以外のリスク要因を正しく評価する。
②
一般に薬物有害反応発現の可能性は、投与される薬剤数の増加に伴って急増するので安易
に増やさない。
③
患者の不眠の訴えに対して、転倒・転落リスクが高い睡眠鎮静剤を安易に投与しない。
④
転倒・転落リスクを増加させる可能性がある薬剤を投与されている患者では、薬剤血中濃
度レベルと作用持続時間に影響を与える肝機能と腎機能の状態をモニターし、過量投与とな
らないように監視する。
⑤
転倒・転落リスクが高い患者に対しては、薬剤によるリスク増加を防止するために全投与
薬剤のリスク度の評価について、薬剤師が中心となって整理を行う。
⑥
睡眠鎮静薬を服用している患者に対しては、適切な服用方法、注意事項(健忘、ふらつき
等)を説明する。
⑦
発生した転倒・転落と薬剤投与の間に関連性が疑われる時は、薬剤投与によるリスクを正
しく評価し、薬剤投与と転倒・転落リスクの関係についてのデータが蓄積されるように、医
師・看護師・薬剤師が協力してエラー報告書を作成することが重要である。
30
3.睡眠鎮静薬の使用について
《睡眠鎮静薬リスト》
眠気、ふらつき、注意力の低下など意識や平衡感覚の抑制作用を有する薬剤、中でもベンゾ
ジアゼピン系及び非ベンゾジアゼピン系の睡眠鎮静薬が、転倒・転落リスクを増大させる可能
性が極めて高い薬剤と言える。「参考1」は、転倒・転落を起こす可能性が高い睡眠鎮静薬に
ついて分類、商品名、1回当たりの通常用量、作用時間等について整理したものである。
これらの薬剤は、催眠作用や鎮静作用に加え、筋弛緩作用を有するものが多い。そのために
高齢者では、中枢抑制作用に加えて起立困難や歩行障害など運動能力も低下し、転倒・転落や
骨折と強い関連性があることが報告されている。よって、各病院では、本リストを参考にしな
がら、自病院で採用されている睡眠鎮静薬の一覧表を薬剤部門が中心となって作成するととも
に、商品名や規格、作用時間、筋弛緩作用の有無等を明確に意識した上で、対策を講じていく
ことが求められる。
《転倒・転落事故防止の観点からの睡眠鎮静薬使用時の留意点》
精神機能及び運動機能に影響を及ぼす薬剤、特に中枢抑制作用と筋弛緩作用を併せ持つ睡眠
鎮静薬の使用については、慎重な検討を行うことが重要である。また、睡眠鎮静薬を服用中の
患者に対しては、以下の確認と指導が必要である。
①
記憶障害(前向性健忘)の発現に注意し、睡眠鎮静薬は必要最低限の用量とする。また、服
用後は速やかに就寝することや、作用持続時間の異なる2種類の薬剤を併用している場合に
は、必ず同時に服用するように指導する。
②
不眠の訴えに対して、転倒・転落リスクの高い睡眠鎮静薬を安易に投与しない。入院によ
る環境の変化や手術、検査への不安等による不眠に対しては、筋弛緩作用の弱い抗不安薬を
睡眠鎮静薬として使用する。
③
生活パターンを考慮して睡眠鎮静薬の服用時間を決める。可能であれば日中に散歩やリハ
ビリなどを計画して昼夜のメリハリをつける。日中に太陽光線にあたる、昼寝は午後3時ま
でに30分程度とする、など睡眠鎮静薬に頼らずに自然に睡眠に入れるような生活改善を指
導することも重要である。
④
翌朝以降も作用が持続する「持ち越し効果」の有無を確認し、必要に応じて減量や作用時
間の短い薬剤へ変更する。「持ち越し効果」がある場合には、自覚していない潜在的な眠気
の可能性を説明し、歩行時、運転時等注意を呼び掛ける。
⑤
筋弛緩作用は作用時間の長い薬剤に比較的強く発現するため、必要に応じて減量する等の
変更について、常に検討を行う。排泄が自立している高齢者では、夜間覚醒時や早朝起床時
の動作について、排泄の際には必ずコールするよう指導するなど十分な指導を行う。また、
排泄を済ませた後に服用することや夜間覚醒時の照明、履物についても指導する。
⑥
睡眠鎮静薬を中止する場合、作用時間の短い薬剤では反跳性不眠や退薬症候を生じやすい
31
ため漸減法で徐々に減量する。作用時間の長い薬剤の場合には、隔日投与にするなど投与間
隔を徐々にあけて減量する。また、作用時間の短い薬剤をいったん長い薬剤に置き換えた後
に減量する置換法も用いられる。
4.睡眠鎮静薬以外の転倒・転落リスクを増大させる薬剤リスト
睡眠鎮静薬以外の薬剤で転倒・転落リスクを増大させる薬剤リストを整理したものが、参考
2∼6である。各病院は、これらリストを参考にして、自病院で採用されている転倒・転落リ
スクを増大させる薬剤リストを、薬剤部門が中心となって、五十音順に医薬品名を並べるなど
薬剤部門以外の者にも活用しやすい形で作成するとともに、常に当該リストを念頭に置きなが
ら対策を講じていくことが必要である。
・抗精神病薬一覧表
:参考2
・降圧利尿剤一覧表
:参考3
・麻 薬 一 覧 表
:参考4
・抗悪性腫瘍薬一覧表:参考5
・下 剤 一 覧 表
:参考6
【参考文献】
1)鈴木隆雄:転倒リスクを高める要因、調剤と情報、12:554−557、2006
2)古川裕之:リスクを高める薬剤、Nursing
Today、10:65−71、2007
3)内山
真:睡眠障害の対応と治療ガイドライン、じほう、2002
4)小原
淳:転倒の原因となりうる医薬品の薬剤管理指導のポイント、薬事、Vol.50、No1
5)特集睡眠障害、医薬ジャーナル
Vol.37.No8.2001
6)各製薬会社添付文書
7)治療薬マニュアル、2007
32
33
ハルシオン
商品名
ゾピクロン
ロルメタゼパム
塩酸リルマザホン
エバミール
リスミー
酒石酸ゾルピデム
トリアゾラム
一般名
アモバン
超短時間 マイスリー
作用型
作用分類
ベンゾジアゼピン系
ハロキサゾラム
*商品名・規格は標準的医薬品
ソメリン
フルラゼパム塩酸塩
クアゼパム
ニトラゼパム
ベンザリン
ドラ−ル
フルニトラゼパム
ロヒプノール
ベノジール
長時間作
ダルメート
用型
中間作用
型
ニメタゼパム
エスタゾラム
エリミン
ユーロジン
短時間作
用型
レンドルミン ブロチゾラム
チエノジアゼピン系
レンドルミンD
ベンゾジアゼピン系
シクロピロロン系
イミダゾピリジン系
ベンゾジアゼピン系
分類
20mg ※1 手術前夜:15∼30mg ※1
10∼30mg
0.125mg(最大0.5mg)
麻酔前投薬0.25mg
5∼10mg
1日10mgを超えない
7.5∼10mg
10mgを超えない
1∼2mg
1∼2mg
2mg
0.25mg
手術前夜:0.25mg
麻酔前:0.5mg
3∼5mg
1∼4mg
手術前夜:1∼2mg
麻酔前:2∼4mg
0.5∼2mg
高齢者には1回1mgまで
−
5∼10mg
1回の使用量(成人、通常用
量)
10mg/g細粒 5∼10mg
10mg/T
5mg/T
1%散
1mg/T 2mg/T 1mg/T
2mg/T
2mg/A
1%細粒
2mg/T
5mg/T
10mg/T
15mg/T
20mg/T
10mg/P
15mg/P
0.125mg/T
0.25mg/T
5mg/T
10mg/T
7.5mg/T
10mg/T
1mg/T
1mg/T
2mg/T
0.25mg/T
規格
睡 眠 鎮 静 薬
40-60分
15-30分
40-60分
20-50分
20-30分
15-30分
15-30分
15-30分
15-30分
15-30分
15-30分
7-27分
15-30分
25-41時間
24-48時間
7時間
24時間
24時間
7時間
10時間
10.5時間
3.9時間
2時間
2.9時間
半減期
42-123時間
【参考文献】
治療薬マニュアル2007
各社添付文書
6-9時間
+∼++
+
±
+∼++
+∼++
++
++∼+++
+
±∼+
++
±∼+
±∼+
++
筋弛緩作用
10-30時間 5.9時間
(2.3-12時間)
6-8時間
4-8時間
8時間
4-8時間
4-6時間
7時間
6-8時間
6-8時間
6-8時間
6-8時間
6-7時間
作用時間
作用発現時間 作用時間
(参考1)
(参考2)
抗 精 神 病 薬 一 覧 表
分類
剤ク
ロ
ル
プ
ロ
マ
ジ
ン
製
医薬品名
一般名
規格
塩酸クロルプロマジン
10%散
ウインタミン錠 塩酸クロルプロマジン
12.5mg錠、25mg錠、50mg錠、100mg錠
コントミン散
塩酸クロルプロマジン
10%散
コントミン糖衣錠
塩酸クロルプロマジン
12.5mg錠、25mg錠、50mg錠、100mg錠
コントミン筋注 10mg 2mL
塩酸クロルプロマジン
0.5% 2mL、0.5%5ml、1%5ml、
ニューレプチル細粒 プロペリシアジン
10%散
ニューレプチル錠 プロペリシアジン
5mg錠、10mg錠、25mg錠
トリフロペラジン散 マレイン酸トリフロペラジン
1%散
トリフロペラジン糖衣錠 マレイン酸トリフロペラジン
2.5mg 錠
フルメジン散 マレイン酸フルフェナジン
0.2%散
フルメジン糖衣錠 マレイン酸フルフェナジン
0.25mg錠、0.5mg錠、1mg錠
フ
ノバミン錠 マレイン酸プロクロルペラジン
5mg錠
ノ
チ
ア
ジ
ン
系
製
剤
ピーゼットシー散 フェンジゾ酸ペルフェナジン
1%散
ピーゼットシー糖衣錠 2mg
マレイン酸ペルフェナジン
2mg錠、4mg錠
ヒルナミン散
マレイン酸レボメプロマジン
10%散、50%散
ヒルナミン錠 25mg
マレイン酸レボメプロマジン
5mg錠、25mg錠、50mg錠
ヒルナミン筋注
塩酸レボメプロマジン
25mg 1mL
レボトミン散 マレイン酸レボメプロマジン
10%散、50%散
レボトミン顆粒 マレイン酸レボメプロマジン
10%顆粒
レボトミン錠 25mg
マレイン酸レボメプロマジン
25mg錠、50mg錠
レボトミン筋注 塩酸レボメプロマジン
2.5% 1mL
フルデカシンキット筋注 デカン酸フルフェナジン
25mg 1mLキット
フルデカシン筋注 デカン酸フルフェナジン
25mg 1mL
ノバミン筋注
プロクロルペラジン
5mg 1mL
イミドール糖衣錠 塩酸イミプラミン
10mg錠
トフラニール錠 塩酸イミプラミン
10mg錠、25mg錠
アナフラニール錠10mg
塩酸クロミプラミン
10mg錠、25mg錠
アナフラニール注射液 塩酸クロミプラミン
25mg 2mL
アンプリット錠 塩酸ロフェプラミン
10mg錠、25mg錠
アモキサン細粒
アモキサピン
10%散
アモキサン カプセル 25mg
アモキサピン
10mgCap、25mgCap、50mgCap
エビリファイ散
アリピプラゾール
1%散
エビリファイ錠
アリピプラゾール
3mg 錠、6mg錠
エチカーム錠 エチゾラム
0.5mg錠
エチゾラム錠 エチゾラム
0.5mg錠
セデコパン細粒 エチゾラム
10%散
セデコパン錠 エチゾラム
0.5mg錠、1mg錠
デゾラム錠 エチゾラム
0.5mg錠、1mg錠
デパス細粒 エチゾラム
1%散
デパス錠 エチゾラム
0.5mg錠、1mg錠
パルギン錠 エチゾラム
1mg錠
メディピース錠 エチゾラム
0.5mg錠
トリプタノール錠 塩酸アミトリプチリン
10mg錠、25mg錠
ノーマルン錠 塩酸アミトリプチリン
10mg錠
クロフェクトン顆粒 塩酸クロカプラミン
10%散
クロフェクトン錠 塩酸クロカプラミン
25mg錠、50mg錠
ェ
ウインタミン細粒 イ
ミ
プ
ラ
ミ
ン
系
製
剤
そ
の
他
34
分類
そ
の
他
医薬品名
一般名
規格
スタドルフ細粒 塩酸スルトプリド
50%散
スタドルフ錠 塩酸スルトプリド
100mg錠、200mg錠
バチール錠 塩酸スルトプリド
200mg錠
バルネチール細粒 塩酸スルトプリド
50%散
バルネチール錠
塩酸スルトプリド
50mg錠、100mg錠、200mg錠
ジェイゾロフト錠
塩酸セルトラリン
25mg錠、50mg錠
プロチアデン錠
塩酸ドスレピン
25mg錠
アンデプレ錠 塩酸トラゾドン
25mg錠、50mg錠
デジレル錠
塩酸トラゾドン
25mg錠、50mg錠
レスリン錠
塩酸トラゾドン
25mg錠、50mg錠
ノリトレン錠 塩酸ノルトリプチリン
10mg錠、25mg錠
パキシル錠 塩酸パロキセチン水和物
10mg錠、20mg錠
アタラックスP注射液
塩酸ヒドロキシジン
25mg 1ml、50mg1ml
アタラックス錠 塩酸ヒドロキシジン
10mg錠、25mg錠
プロピタン散 塩酸フロロピパミド
10%散
プロピタン錠 塩酸フロロピパミド
50mg錠
ルーラン錠 塩酸ペロスピロン水和物
4mg 錠、8mg錠
クロンモリン錠 塩酸マプロチリン
10mg錠
ノイオミール錠 塩酸マプロチリン
10mg錠、25mg錠
ルジオミール錠 塩酸マプロチリン
10mg錠、25mg錠
テトラミド錠 塩酸ミアンセリン
10mg錠、30mg錠
トレドミン錠 15mg
塩酸ミルナシプラン
15mg錠、25mg錠
リタリン散「チバ」 塩酸メチルフェニデート
1% 散
リタリン錠「チバ」 塩酸メチルフェニデート
10mg錠
クレミン錠
塩酸モサプラミン
25mg錠
クレミン顆粒
塩酸モサプラミン
10% バラ散
ルバトレン錠 塩酸モペロン
5mg錠
ホーリット散
オキシペルチン
10%散
ホーリット錠
オキシペルチン
40mg錠
ジプレキサザイディス錠
オランザピン
5mg錠、10mg錠
ジプレキサ細粒 オランザピン
1% 散
ジプレキサ錠 オランザピン
2.5mg錠、5mg錠、10mg 錠
リーゼ錠 クロチアゼパム
5mg錠、10mg錠
リーゼ顆粒 クロチアゼパム
10%散
ベゲタミン錠−A
クロルプロマジン・プロメタジン配合剤
錠
ベゲタミン錠−B
クロルプロマジン・プロメタジン配合剤
錠
スピロピタン散
スピペロン
0.3%散
スピロピタン錠
スピペロン
1mg錠
アビリット錠
スルピリド
100mg錠、200mg錠
スルピリド錠
スルピリド
100mg錠、200mg錠
ドグマチール錠 スルピリド
100mg錠、200mg錠
ミラドール錠
スルピリド
100mg錠、200mg錠
セトウス細粒 ゾテピン
10% 散
セトウス錠
ゾテピン
50mg錠
メジャピン細粒
ゾテピン
10%散
メジャピン錠 ゾテピン
25mg錠、50mg錠
ロシゾピロン細粒
ゾテピン
10%散
ロシゾピロン錠 ゾテピン
25mg錠、50mg錠
35
分類
そ
の
他
医薬品名
一般名
規格
ロドピン細粒 ゾテピン
10%散、50%散
ロドピン錠 ゾテピン
25mg錠、50mg錠、100mg錠
リーマス錠 炭酸リチウム
100mg錠、200mg錠
炭酸リチウム錠 「ヨシトミ」
炭酸リチウム
100mg錠、200mg錠
セルマニル細粒
チミペロン
1%散
セルマニル錠 チミペロン
3mg錠
トロペロン細粒 チミペロン
1%散
トロペロン錠0.5mg
チミペロン
0.5mg錠、1mg錠、3mg錠
ネオペリドール注
デカン酸ハロペリドール
50A、100mgA
ハロマンス注
デカン酸ハロペリドール
50mgA、100mgA
エミレース細粒
ネモナプリド
2%散
エミレース錠
ネモナプリド
3mg錠、10mg錠
アタラックス−Pカプセル
パモ酸ヒドロキシジン
25mgCAP
アタラックス−Pシロップ
パモ酸ヒドロキシジン
0.5% 500mL
アタラックス−Pドライシロップ
パモ酸ヒドロキシジン
2.5%散
アタラックス−P散 パモ酸ヒドロキシジン
10%散
セレネース細粒
ハロペリドール
1%散
セレネース錠 ハロペリドール
0.75mg錠、1.5mg錠、1mg錠、3mg錠
セレネース注 ハロペリドール
0.5%
セレネース内服液 ハロペリドール
0.2%500mL
ハロステン細粒
ハロペリドール
1%散
ハロステン錠 ハロペリドール
1mg錠、2mg錠
リントン細粒 ハロペリドール
1% 500g
リントン錠 ハロペリドール
0.75mg錠、1.5mg錠、3mg錠
リントン注 ハロペリドール
0.5% 1ml
オーラップ細粒 ピモジド
1%散
オーラップ錠 ピモジド
1mg錠、3mg錠
セロクエル錠
フマル酸クエチアピン
25mg錠、100mg 錠
セロクエル細粒 フマル酸クエチアピン
50%散
インプロメン細粒
ブロムペリドール
1%散
インプロメン錠 ブロムペリドール
1mg錠、3mg錠、6mg錠
プリンドリル細粒 ブロムペリドール
10mg散
ルナプロン細粒
ブロムペリドール
1% 散
ルナプロン錠 ブロムペリドール
1mg錠、3mg錠、6mg錠
デフェクトン糖衣錠
マレイン酸カルピプラミン
25mg錠
テシプール錠 マレイン酸セチプチリン
1mg錠
デプロメール錠 マレイン酸フルボキサミン
25mg錠、50mg錠
ルボックス錠 マレイン酸フルボキサミン
25mg錠、50mg錠
リスパダール細粒 リスペリドン
1%散
リスパダール錠 リスペリドン
1mg錠、2mg錠、3mg錠
リスパダール内用液1mg/mL
リスペリドン
0.5ml包、1ml包、2ml包
リスパダール内用液1mg/mL
リスペリドン
30ml瓶、100ml瓶
1mL
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
36
(参考3)
降 圧 利 尿 剤 一 覧 表
薬品名
サ
イ
ア
ザ
イ
ド
系
及
び
類
似
利
尿
薬
ー
K
保
持
生
利
尿
剤
浸
利
透
尿
性
剤
炭
酸
脱
水阻
酵害
素剤
投与回数
(回/日)
投与量
25mg 1T
25∼100mg/回
1∼2回
フルイトラン
2mg 1T
2∼8mg/日
4mg 1T
1∼2T/回
1∼2回
2回
維:2∼3回/週
4mg 0.1mg 5mg
1∼2T/回 維:1∼
2T/日
作用発現
時間(hr)
作用持続
時
間
1∼2
6∼12
2
24
−
−
−
−
−
20∼24
−
−
−
−
−
24
ベハイドRA
トリクロルメチアジド
ベンチル
ヒドロクロロチアジド
ベンチル
ヒドロクロロチアジド
レセルピン
カルバゾクロム
バイカロン
メフルシド
25mg 1T
25∼50mg/日
1∼2回
1∼2回
1回→朝
2回→朝・昼
アレステン
メチクラン
150mg 1T
ハイグロトン
クロルタリドン
1∼2回
1回
連日or隔日
ナトリックス
インダパミド
50mg 1T
1mg 1T
2mg 1T
1T/回
50∼100mg/日 100
∼200mg/日
1T/回
1回
−
8
1T/回
1回
連日or隔日
1
6
フロセミド
15mg 1T
4% 細粒
20mg 1T
40mg 1T
1∼2回
1回→朝
2回→朝・昼
1P/回
1∼2回
2
−
アレリックス
ピレタニド
40mg 1P
3mg 1T
6mg 1T
3∼6mg/日
1∼2回
−
−
ルネトロン
ブメタニド
1∼2T/日
1∼2回
ダイアート
アゾセミド
1mg 1T
30mg 1T
60mg 1T
60mg/日
1回
ルプラック
トラセミド
4mg 1T
8mg 1T
4∼8mg/日
1回
スピロノラクトン
100mg/g 細粒
25mg 1T
50mg 1T
50∼100mg/日
分割
ソルダクトン注
カンレノ酸カリウム
100mg1管
200mg1管
100∼200mg/日
1∼2回
トリテレン
トリアムテレン
50mg 1P
2∼4P/日
2∼3回
ベハイド
ラシックス
プ
利
尿
剤
規格
ダイクロトライド ヒドロクロロチアジド
ノルモナール
ル
一 般 名
トリパミド
オイテンシン
アルダクトンA
40∼80mg/回
70%ml
イソバイド
ダイアモックス
イソソルビド
末
250mg 1T
アセタゾラミド
70∼140ml
2∼3回
疾患により
異なる
疾患により
異なる
500mg1瓶
ダイアモックス注
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
37
6∼8
1
9
0.5∼1
6
3∼8日
休薬後も
48∼72
10分
1∼1.5
2
8∼12
0.5∼1
4∼6
0.3∼1
6∼12
(参考4)
麻 薬 一 覧 表
分 類
アヘン製剤
商品名
アヘン
アヘンチンキ
一般名
アヘン
パンオピン
パンオピン注
塩酸アヘンアルカロイド
塩酸エチルモルヒネ
2% 1mL
末
末 錠10mg
オプソ内服液
5mg 10mg
パシーフカプセル
30mg 60mg 120mg
塩酸モルヒネ
10mg 50mg 200mg
プレペノン1%注シリンジ
50mg 100mg
アンペック注
10mg 50mg 200mg
アンペック坐剤
10mg
MSコンチン錠
ア
ヘ
ン
ア
ル
カ
ロ
イ
ド
系
10%
塩酸モルヒネ
塩酸モルヒネ注射液
モルヒネ系
製剤
末 散10%
末
オピアル注射液
塩酸エチルモルヒネ
規格
10mg 30mg 60mg
MSツワイスロン カプセル
カディアン カプセル
カディアン スティック 粒
20mg 30mg
硫酸モルヒネ
20mg 30mg 60mg
30mg 60mg 120mg
ピーガード錠
20mg 30mg 60mg 120mg
モルペス細粒
2% 6%
コデイン系
製剤
リン酸コデイン
リン酸コデイン
末 散10% 錠20mg
リン酸ジヒドロコデイン
リン酸ジヒドロコデイン
末 散10%
その他の
アヘン
アルカロイド
系
麻薬
オキシコンチン錠
オキノーム散
メテバニール錠
オピアト注射液
パンアト注
塩酸オキシコドン
オキシメテバノール
5mg 10mg 20mg 40mg
0.5%
2mg
アヘンアルカロイド・アトロピン 1mL
オピスコ注射液
ハンスコ注
配合剤
ロイド系アルカ
コカ
非
ア
ル
カ
ロ
イ
ド
系
弱ハンスコ注
弱オピスコ注射液
モヒアト注射液
モルヒネ・アトロピン
1mL
ドーフル散
アヘン・トコン散
散
パビナール注
複方オキシコドン
1mL
パビナール・アトロピン注
複方オキシコドン・アトロピン
1mL
コカイン系製剤 塩酸コカイン
塩酸コカイン
末
フェニル
ピヘリジン系
製剤
塩酸ペチジン
その他の
合成麻薬
配合剤
オピスタン
オピスタン注
末
35mg、50mg
フェンタニル注射液
クエン酸フェンタニル
0.1mg 0.25mg
デュロテップパッチ
フェンタニル
2.5mg 5mg 7.5mg 10mg
アルチバ静注用
塩酸レミフェンタニル
2mg 5mg
タラモナール
クエン酸フェンタニル ドロペリドール
2mL
ペチロルファン注射液
弱ペチロルファン注射液
全身麻酔剤
アヘンアルカロイド・スコポラミン 1mL
塩酸ペチジン・酒石酸レバロルファン 1mL
ケタラール注
塩酸ケタミン
静注200mg 筋注500mg
9
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
38
(参考5)
抗 悪 性 腫 瘍 薬 一 覧 表
分類
医薬品名
プラトシン注50 50mg 100mL
一般名
ダカルバジン
塩酸ニムスチン
ラニムスチン
メルファラン
メルファラン
シクロホスファミド
チオテパ
ブスルファン
イホスファミド
シクロホスファミド
塩酸ミトキサントロン
塩酸ミトキサントロン
塩酸プロカルバジン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸ノギテカン
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
ソブゾキサン
ネダプラチン
ネダプラチン
ネダプラチン
オキサリプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
ブリプラチン注
シスプラチン
動注用アイエーコール50mg
シスプラチン
ランダ注
シスプラチン
パラプラチン注射液
カルボプラチン
注射用パラプラチン150mg
カルボプラチン
カルボメルク注射液1%
カルボプラチン
クレスチン
かわらたけ多糖体製剤
かわらたけ多糖体製剤
シゾフィラン
レンサ球菌抽出物
レンサ球菌抽出物
ウベニメクス
レンチナン
レンチナン
タミバロテン
ゲフィチニブ
メシル酸イマチニブ
トラスツズマブ(遺伝子組換え)
ダカルバジン注用100
ニトロソウレア類他
ニドラン注射用 25mg
注射用サイメリン100mg
アルケラン錠 2mg
ア
ル
キ
ル
化
剤
アルケラン静注用 50mg
エンドキサンP錠 50mg
マスタード類
テスパミン注射液 5mg 0.5mL
マブリン散 10mg
注射用イホマイド1g
注射用エンドキサン 100mg
アントラキノン系
ニトロソウレア類他
ノバントロン注 10mg 5mL
ノバントロン注 20mg 10mL
塩酸プロカルバジンカプセル50mg
カンプト注 100mg 5mL
ト
ポ
イ
ソ
メ
ラ
トポイソメラーーゼ
Ⅰ阻害剤
ゼ
阻
害
剤
トポイソメラーーゼ
Ⅱ阻害剤
カンプト注 40mg 2mL
トポテシン注 100mg 5mL
トポテシン注 40mg 2mL
ハイカムチン注射用 1.1mg
ーー
ベプシドS 25mg
ベプシドS 50mg
ベプシド注100mg 5mL
ラステットSカプセル25mg
ラステットSカプセル50mg
ラステット注100mg/5mL
ラステット注100mg/5mL
ペラゾリン細粒 400mg
白
金
製
剤
アクプラ静注用 10mg
アクプラ静注用 50mg
アクプラ静注用 100mg
エルプラット注射用100mg
シスプラチン注 10mg 20mL
シスプラチン注 25mg 50mL
シスプラチン注 50mg100mL
シスプラメルク注射液10mg 20mL
シスプラメルク注射液50mg100mL
プラトシン注10 10mg 20mL
プラトシン注25 25mg 50mL
非
特免
異疫
的賦
活
剤
クレチール末
ソニフィラン 20mg 2mL
ピシバニール注射用1KE
ピシバニール注射用5KE
ベスタチン30 カプセル
レンチナン静注用1mg「アステラス」
レンチナン静注用1mg「味の素」
治分
療子
薬標
的
アムノレイク錠2mg
イレッサ錠 250mg
グリベック錠100mg
ハーセプチン注射用 150mg
39
規格
100mg
25mg,50mg
50mg,100mg
2mg
50mg
50mg
5mg/0.5mL
10mg
1g
100mg,500mg
10mg/5mL
20mg/10mL
50mg
100mg/5mL
40mg/2mL
100mg/5mL
40mg/2mL
1.1mg
25mg
50mg
100mg
25mg
50mg
100mg/5mL
100mg/5mL
400mg
10mg
50mg
100mg
100mg
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/100mL
10mg/20mL
50mg/100mL
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/100mL
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg,100mg
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/5mL
150mg/15mL
150mg
50m/5mL
150mg/15mL
1g
1g
20mg/2mL
1KE
5KE
30mg
1mg
1mg
2mg
250mg
100mg
150mg
分類
医薬品名
薬分
子
標
的
治
療
ハーセプチン注射用 60mg
ベサノイド カプセル 10mg
リツキサン注 100mg 10mL
リツキサン注 500mg 50mL
マイロターグ注射用 5mg
エストラジオール
エストラジオール
アロマターゼ
阻害薬
抗アンドロゲン剤
ホ
ル
モ
ン
類
似
薬
抗エストロゲン剤
LH-RHアゴニスト
そ
の
他
抗
腫
瘍
性
抗
生
物
質
製
剤
アントラキノン系
その他
一般名
トラスツズマブ(遺伝子組換え)
トレチノイン
リツキシマブ(遺伝子組換え)
リツキシマブ(遺伝子組換え)
ゲムツズマブオゾガマイシン
(遺伝子組換え)
リン酸エストラムスチン
ナトリウム
リン酸エストラムスチン
ビアセチル カプセル 156.7mg
ナトリウム
アフェマ錠 1mg
塩酸ファドロゾール水和物
フェマーラ錠2.5mg
レトロゾール
アリミデックス錠1mg
アナストロゾール
アロマシン錠 25mg
エキセメスタン
オダイン錠 125mg
フルタミド
カソデックス錠80mg
ビカルタミド
タスオミン錠10mg
クエン酸タモキシフェン
タスオミン錠20mg
クエン酸タモキシフェン
ノルバデックス錠10mg
クエン酸タモキシフェン
ノルバデックス錠20mg
クエン酸タモキシフェン
フェアストン錠 40mg
クエン酸トレミフェン
フェアストン錠 60mg
クエン酸トレミフェン
フェノルルン錠 10mg
クエン酸タモキシフェン
ゾラデックス3.6mgデポ(SS)
ゴセレリン
ゾラデックス 1.8mgデポ
ゴセレリン
ゾラデックスLA10.8mgデポSS
ゴセレリン
リュープリン注射用3.75ゼラチン除
リュープロレリン
リュープリン注射用1.88ゼラチン除
リュープロレリン
リュープリン注射用 1.88mg
リュープロレリン
リュープリン注射キット1.88ゼラ除
リュープロレリン
リュープリン注射キット3.75ゼラ除
リュープロレリン
リュープリンSR注射用キット
リュープロレリン
コホリン 7.5mg
ペントスタチン
トリセノックス注10mg 10mL
三酸化ヒ素
ペプレオ注 10mg
硫酸ペプロマイシン
ペプレオ注 5mg
硫酸ペプロマイシン
アクラシノン注射用 20mg
塩酸アクラルビシン
アドリアシン注用10
塩酸ドキソルビシン
イダマイシン注 5mg
塩酸イダルビシン
カルセド注射用20mg
塩酸アムルビシン
カルセド注射用50mg
塩酸アムルビシン
コスメゲン 0.5mg
アクチノマイシンD
ダウノマイシン 20mg
塩酸ダウノルビシン
テラルビシン注射用10mg
塩酸ピラルビシン
テラルビシン注射用20mg
塩酸ピラルビシン
ピノルビン注 10mg
塩酸ピラルビシン
ピノルビン注 20mg
塩酸ピラルビシン
ファルモルビシンRTU注50mg25mL 塩酸エピルビシン
ファルモルビシンRTU注射10mg5mL 塩酸エピルビシン
ファルモルビシン注射用10mg
塩酸エピルビシン
ファルモルビシン注射用50mg
塩酸エピルビシン
ブレオS軟膏 5mg
硫酸ブレオマイシン
ブレオ注射用15mg
塩酸ブレオマイシン
ブレオ注射用30mg
塩酸ブレオマイシン
ブレオ注射用5mg
塩酸ブレオマイシン
マイトマイシン注用 10mg
マイトマイシンC
マイトマイシン注用 2mg
マイトマイシンC
塩酸エピルビシン注10mg
塩酸エピルビシン
塩酸エピルビシン注50mg
塩酸エピルビシン
スマンクス肝動注用4mg
ジノスタチンスチマラマー
スマンクス肝動注用6mg
ジノスタチンスチマラマー
オンコビン注射用 1mg
硫酸ビンクリスチン
エクザール注射用 10mg
硫酸ビンブラスチン
規格
60mg
10mg
100mg/10mL
500mg/50mL
5mg
エストラサイト カプセル
40
156.7mg
1mg
2.5mg
1mg
25mg
125mg
80mg
10mg
20mg
10mg
20mg
40mg
60mg
10mg
3.6mg
1.8mg
10.8mg
3.75mg
1.88mg
1.88mg
1.88mg
3.75mg
11.25mg
75mg
10mg/10mL
10mg
5mg
20mg
10mg
5mg
20mg
50mg
0.5mg
20mg
10mg
20mg
10mg
20mg
50mg/25mL
10mg/5mL
10mg
50mg
5g
15mg
30mg
5mg
10mg
2mg
10mg
50mg
4mg
6mg
1mg
10mg
分類
微
小
管
阻
害
薬
ビンカアルカロイド
タキサン
代
謝
拮
抗
剤
医薬品名
一般名
酒石酸ビノレルビン
ナベルビン注 40mg 4mL
酒石酸ビノレルビン
注射用フィルデシン 1mg
硫酸ビンデシン
注射用フィルデシン 3mg
硫酸ビンデシン
タキソール注射液30mg 5mL
パクリタキセル
タキソール注射液100mg16.7mL
パクリタキセル
タキソテール注 20mg 0.5mL
ドセタキセル水和物
タキソテール注 80mg 2mL
ドセタキセル水和物
パクリタキセル注30mg/5mL「NK」 パクリタキセル
5−FU錠100
フルオロウラシル
5−FU錠50
フルオロウラシル
5−FU注250協和 250mg
フルオロウラシル
ナベルビン注 10mg 1mL
5−FU軟膏 5%
5−FU軟膏 5%
キロサイドN注400mg 20mL
キロサイド注100mg 5mL
キロサイド注200mg
キロサイド注20mg 1mL
キロサイド注40mg 2mL
キロサイド注60mg 3mL
サンフラールS 200mg
ジェムザール注射用 1g
ジェムザール注射用 200mg
スタラシドカプセル 100mg
ピリミジン系
スタラシドカプセル 50mg
ゼローダ錠 300mg
ティーエスワン カプセル 20mg
ティーエスワン カプセル 25mg
フルオロウラシル
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
テガフール
塩酸ゲムシタビン
塩酸ゲムシタビン
シタラビンオクホスファート
シタラビンオクホスファート
カペシタビン
テガフール・ギメラシル
・オテラシル配合剤
テガフール・ギメラシル
・オテラシル配合剤
ハイドレア カプセル 500mg
スミフェロンDS 300万国際単位
インターフェロンα
300万国際単位
スミフェロンDS 600万国際単位
インターフェロンα
600万国際単位
イントロンA注射用300
インターフェロンα-2b
300万国際単位
イントロンA注射用600
インターフェロンα-2b
600万国際単位
オーアイエフ500万IUヒト血清フリ
インターフェロンα
ヒト血清アルブミンフリ-
イムノマックス−γ注 50万単位
インターフェロンγ-1a
50万単位
イムネース注 35万国内標準単位
テセロイキン
35万国内標準単位
オーガンマ 100万国際単位
インターフェロンγ-n1
100万国際単位
フルツロン カプセル 100
フルツロン カプセル 200
ミフロール錠 100mg
ユーエフティE顆粒0.75gX105
ユーエフティE顆粒20%
ユーエフティカプセル100mg
注射用サンラビン 150mg
注射用サンラビン 200mg
注射用サンラビン 250mg
ロイスタチン注 8mg
フルダラ静注用50mg
ロイケリン散 100mg
ロイナーゼ注用5000
ロイナーゼ注用10000
メソトレキセート錠 2.5mg
葉酸系
メソトレキセート注射液 200mg
注射用メソトレキセート 50mg
注射用メソトレキセート 5mg
その他
サ
イ
ト
カ
イ
ン
インターフェロン
25mg
25mg
200mg
100mg
200mg
100mg
0.75g
0.5g,1g
100mg
150mg
200mg
250mg
8mg
40mg
100mg
5000KE
10000KE
25mg
200mg
50mg
5mg
500mg
テフシール・C 200mg
プリン系他
20mg
テガフール
ドキシフルリジン
ドキシフルリジン
カルモフール
テガフール・ウラシル
テガフール・ウラシル
テガフール・ウラシル
エノシタビン
エノシタビン
エノシタビン
クラドリビン
リン酸フルダラビン
メルカプトプリン
L−アスパラギナーゼ
L−アスパラギナーゼ
メトトレキサート
メトトレキサート
メトトレキサート
メトトレキサート
ヒドロキシカルバミド
ティーエスワン カプセル 25mg
プリン系
規格
10mg/1mL
40mg/4mL
1mg
3mg
30mg/5mL
100mg/16.7mL
20mg/0.5mL
80mg/2mL
30mg/5mL
10mg
50mg
250mg
5% 20g
5% 5g
400mg/20mL
100mg/5mL
200mg
20mg/1mL
40mg/2mL
60mg/3mL
200mg
1g
200mg
100mg
50mg
300mg
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
41
(参考6)
下 剤 一 覧 表
分 類
塩類下剤
膨張性下剤
浸潤性下剤
(軟化剤)
糖類下剤
商 品 名
一
般
名
規 格
硫酸マグネシウム
硫酸マグネシウム
末 99%以上
酸化マグネシウム
酸化マグネシウム
末 96%以上
バルコーゼ
カルメロース ナトリウム
顆粒 75%
ビーマスS
ジオクチルソジウム
スルホサクシネート
錠 30mg
D−ソルビトール
D−ソルビトール
液 65%,75% 末 100%
モニラック
ラクツロース
シロップ 65% 散 100%
センナ
センナ
末
アジャストA
センナエキス
錠 40mg (センナエキス)
アローゼン
センナ葉・センナ実
顆粒 0.5g,1g
プルゼニド
センノシド
錠 12mg ラキソベロン
錠,液
錠 2.5mg 液 75mg (1ml)
大腸刺激性下剤
小腸刺激性下剤
テレミンソフト坐薬1号 ビサコジル
2mg
テレミンソフト坐薬3号 ビサコジル
10mg
ヒマシ油 ,加香ヒマシ油 ヒマシ油
マグコロール
クエン酸マグネシウム
液 34g (250ml)
マグコロールP
クエン酸マグネシウム
散 34g (50g)
ニフレック
電解質配合
散剤1袋 (137.155g)
新レシカルボン
坐剤 炭酸水素ナトリウム
無水リン酸二水素ナトリウム
500mg
680mg
グリセリン
グリセリン
液
その他
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
42
(別紙7)
1.トイレに行くとき
トイレ歩行時は足元に注意しましょう
いつでも看護師がお手伝いさせて頂き
ます。ご遠慮なくナースコールを押して
下さい
4.手すりや杖を利用しましょう
大丈夫と思っていてもしばらく寝て
いると体力は落ちてしまいます。
歩く時には手すりや杖を利用しましょう
2.履物について
スリッパやサンダルはやめましょう
滑りにくい履物を履きましょう
5.立ち上がるとき
ストッパーがないオーバーテーブルや
歩行器を支えに立ち上がると危険です。
オーバーテーブルや歩行器を支えにし
て立ち上がらないようにしましょう
気分が悪い時やめまい、ふらつきが
あるときは無理をせず看護師をお呼び
下さい。
3.睡眠薬について
睡眠薬の服用により転倒の危険性は
高くなります。
服用される場合は睡眠薬を飲む前に
トイレを済ませておきましょう
ご心配なことがありましたら遠慮なく看護師にご相談下さい。
独立行政法人国立病院機構○○病院
独立行政法人国立病院機構○○病院
1
43
トイレに移動される時は
看護師を
お呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
トイレに移動されるときは
看護師にお知らせ下さい
私をナースコールで呼んで
お手伝いさせて下さい
国立病院機構○○病院看護部
2
44
段差に
注意!
独立行政法人国立病院機構○○病院
足元 に
注意!
独立行政法人国立病院機構○○病院
3
45
ベッドを離れるときは
看護師をお呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
トイレが終わりましたら
看護師をお呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
4
46
トイレに行くときは
看護師をお呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
お休み前に
トイレに行きましょう!
独立行政法人国立病院機構○○病院
5
47
朝方のトイレ歩行は
ふらつきに注意
独立行政法人国立病院機構○○病院
危険です!
オーバーテーブル
には
寄りかからない
で下さい!
6
48
手をついて体重を
かけると危険です
寄りかかると危険!
オーバーテーブルに寄りかかりす
ぎると後ろに倒れて危険です
7
49
気をつけて
車椅子の足台に体重をかけると
転倒の危険があります
段差に注意!
点滴中の歩行
つまずかない
よう気をつけて
8
50
患者用
ぬれた床に注意!
で床
御が
注ぬ
意れ
下て
さい
いる
!と
転
び
や
す
い
の
トイレ・洗面
台・廊下
職員用
ぬれた床は
直ぐに拭きましょう!
9
51
リスク判定Aの患者(赤)
看護師が患者の状況を共有するために
ベッドネームなどに表示
リスク判定Bの患者(黄)
看護師が患者の状況を共有するために
ベッドネームなどに表示
52
リスク判定Cの患者(緑)
看護師が患者の状況を共有するために
ベッドネームなどに表示
53
(別紙8)
転 倒 ・ 転 落 事 故 事 例 集
◎ 《 》内の英数字は、
「転倒・転落アセスメントシート」の項目番号である。多くの事
例で複数の項目が付されているが、これらの組み合わせが、よりリスクが高くなる組合
せとなることに留意が必要である。
類型1:排泄に関連した転倒・転落
(1)何度も看護師を呼ぶことへの遠慮や同室者への気遣いから、援助を依頼することな
く自力でトイレに向かい転倒したケース
【事例1】《D①、E③④、H③》
下肢筋力低下により歩行障害のある患者。夜間排尿の際のポータブルトイレ使用時に
は、コールするよう看護師から説明を受けていたが、コールするのは申し訳ない思いと、
自力でも大丈夫との思いによりベッドを離れる。ポータブルトイレのふたを開けようと
したとき、ふらつきそのまま転倒
【事例2】《D①、H②、I①、J③》
睡眠鎮静薬を服用中の患者。病室内のトイレに行こうとベッドから立ち上がりかけた
が、左足に力が入らずふらつき、左側に転倒。病室内のトイレには段差があるため、排
泄時は看護師が付き添い車椅子用トイレを使用していたが、頻尿で何度も看護師を呼ぶ
ことへの遠慮から、自力でトイレに行こうとしたもの
【事例3】《D①、E③④、H③》
下肢筋力の低下による歩行障害のため、医師の指示によりポータブルトイレをベッド
脇に設置。個室ではなかったため他の患者への気遣いから、これを使用せず病室の外に
あるトイレに向かう途中、バランスを崩し転倒
〔再発防止策〕
①転倒・転落リスクの高い患者の排泄パターンを把握し、患者の状況に応じ時宜を得た
排泄誘導を行う。
②患者・家族に対して、アセスメントの結果や転倒・転落リスク、転倒の危険性等につ
いて説明するとともに、排泄のためトイレに移動する際は、必ず看護師が付きそうの
でコールするよう指導する。また、患者の目につくところに「トイレのときはナース
コールを押してください」と表示する。
③特に夜間については必ず看護師と一緒に動くよう指導するとともに、介助を行う際は、
必ず覚醒していることを確認する。
④就寝誘導時は必ず排尿誘導を行い、排尿のない場合でも定期的に訪室し体動があれば
尿意の確認をする。
⑤アセスメント結果による転倒・転落リスク、排泄パターン等についての情報をスタッ
フ間で確実に共有する。
54
(2)排泄終了時や看護師がその場を一時的に離れた際に転倒が発生したケース
【事例4】《D②、E③⑤、H②③》
ナースコールにより尿意の訴えがあり、看護師がポータブルトイレへの移動介助を行
う。看護師は、ポータブルトイレへの移動介助終了後、外で待機していた。排尿が終了
した気配があり、中を見ると患者が床に倒れていた。ズボンを履こうとしてふらつき転
倒したもの
【事例5】《D①②、E③⑤、H②》
トイレまでは看護師による支持歩行にて移動する。看護師は、患者を便座に座らせた
後、その場を離れ別の患者の排泄介助を行っていた。大きな音がしたため駆けつけると、
トイレから3m 離れた場所で仰向けに倒れている患者を発見。看護師を呼ぶのを遠慮し
て帰室しようとしていた際に転倒したもの
【事例6】《D③、E③⑤、H②》
離床マットのコールにより看護師が訪室。尿意の訴えがあり、室内トイレまで移動介
助を行う。
「終わったらナースコールを押す」との患者の言葉があったことから、終了後
はコールがあると思い看護師はその場を離れたが、ナースコールがないため訪室すると
ベッド前で転倒している患者を発見したもの
〔再発防止策〕
①患者の側を離れる際は必ず声かけをして、ナースコールを患者の膝に置いたり、持た
せるなどのセッティングを行うとともに、終了後も介助を行う旨を伝え必ずナースコ
ールをするよう指導する。
②排泄中はプライバシーには十分配慮しつつ側で待機する。特に、転倒・転落リスクの
高い患者の場合は、排泄が終了し帰室するまで患者の側を離れないことを原則とする。
③他の患者のコールへの対応等によりやむを得ずその場を離れなければならなくなった
場合は、離れる際に必ず介助に戻るまでは動かないよう声掛けを行う。
類型2:介助中患者から目を離した際の転倒・転落
【事例7】《E⑧、H①》
寝たきり状態の患者の入浴のため、看護師 1 人が患者をベッドから車椅子に移動乗車
させた。看護師が、安全ベルト 2 本のうちの余分な 1 本を隣のベッドに置くため患者か
ら目を離した際に、患者は自分のレッグウォーマーを取ろうとベッドに手を伸ばしてお
り、そのまま前方に転落したもの
〔再発防止策〕
①寝たきり患者の移動介助は、複数人(2 人)で行う原則を徹底する。
②車椅子に移動させた後は、身体を動かすことや自分自身で移動することは危険なので
行わないよう指導する。また、一時的に車椅子を離れたり、患者から目を離さなけれ
ばならならなくなった場合にも、必ず同様の声掛けを行った上で行う。
③車椅子に移乗させる際は、
「車椅子のストッパーの固定」
「ベッド柵を下げる」
「車椅子
55
への移乗(原則複数人で実施)」
「安全ベルトの使用(必要に応じ)」の手順で行う。ま
た、例えば、安全ストッパーについては必要な本数だけ事前に用意した上で介助を行
うなど、出来るだけリスクを軽減できるよう手順を考える。なお、車椅子の使用に際
しての一般的留意事項を整理すると、次のとおり。
・停車時には、必ずストッパーを固定する。
・停車時はフットレストを上げて足底を床に付けるようにする。足が届かない場合は
代用品を使用し、乗車時の安定を確保する。
・車椅子ごとの転倒を防ぐため、車椅子の背は壁につけるようにする。
・高リスク患者の車椅子乗車中は、観察が継続できるよう看護師の目の届く範囲に移
動する。
【事例8】《E⑧、H②》
上半身を左右に動かせる程度の ADL の重心患者。おむつ交換時、排便があったため汚
染したおむつを2∼3m 離れたところにあるバケツに入れようと、ベッド柵を上げない
まま患者の側を離れた直後、患者がベッドから転落したもの。患者は仰臥位で寝ている
から動かないであろうとの思い込みがあった
〔再発防止策〕
①処置中・処置後に、ベッド柵を使用している患者の側を離れる場合には、短い時間で
あっても必ずベッド柵を上げてから離れることをルール化し徹底する。
②各スタッフの観察による情報を集約し患者の身体状況を正確に把握し、共有すること
で、思いこみを排した対策を実行していく。
類型3:認知機能障害の患者の転倒・転落
【事例9】《E③④、G②③》
夜間帯に頻繁に廊下に出る不穏行動が観察されており、また、歩行障害もあるため転
倒・転落リスクが高いと判断されていた患者。ナースセンター近くの病室に移動し、30
分毎に観察を行っていた。深夜の観察で睡眠中であることを確認した上で、看護師は別
患者の病室を訪問。その約 30 分後、病室前の廊下で転倒している患者を発見した。自力
でトイレに行こうとして転倒したとのこと
【事例10】《G①②、H②》
ADL は自立していたが、認知機能が低下していたことから、排便時には介助するので
ナースコールするよう説明をしていた。しかし、自力でトイレまで移動、排泄後、ズボ
ンを履こうとして足が絡まり転倒したもの
〔再発防止策〕
①患者の排泄パターンを把握し、患者の状況に応じ時宜を得た排泄誘導を行う。
②認知症や不穏行動の見られる患者については、ナースセンター近くの病室に移し観察
を行いやすくした上で、出来るだけ頻回の観察を行う。
③就寝誘導時は必ず排尿誘導を行い、排尿のない場合でも定期的に訪室し体動があれば
56
尿意の確認をする。
④離床センサーを使用することで、患者がベッドを離れても分かるようにする。また、
転倒しても影響を少なくするため、床マットレスやプロテクターの使用を考慮する。
類型4:薬剤使用に伴う転倒・転落
【事例11】《I①》
睡眠鎮静薬を使用中の患者。服用後間もない時間帯でトイレに行き、排泄しようとし
た際に強い眠気に襲われ転倒
〔再発防止策〕
①睡眠鎮静薬の効果の発現時間と持続時間を明確に理解した上で看護計画を作成する。
②睡眠鎮静薬使用前に排尿誘導を行う。また、患者の排泄パターンを把握し、入眠後に
おいても、患者の状況に応じ時宜を得た排泄誘導を行う。
③睡眠鎮静薬使用後のトイレ等への移動の際は、介助を行うことを徹底する。
④睡眠鎮静薬使用に伴う転倒・転落リスクの増大と危険性を患者・家族に説明し理解を
得るとともに、トイレ等必要な場合は必ずナースコールするよう指導する。
⑤睡眠鎮静薬の使用時間や処方内容、排尿誘導時間を主治医と検討する。
【事例12】《D①、E③④、I⑥》
下肢障害があり、利尿作用のあるグリセリン F 点滴の患者。面会に来ていた家族の知
らせで病室に行くと、トイレの前で倒れている患者を発見。頻回の尿意により、その都
度ナースコールすることへの遠慮から自力でトイレに移動し転倒したもの
〔再発防止策〕
①就寝前に排尿誘導を行う。
②利尿作用のある薬剤を使用している間は、できるだけ頻回に病室を訪問し尿意の確認
を行う。
③トイレ等への移動は、必ず看護師の観察の下で行うことを徹底するとともに、降圧利
尿剤を使用する際の転倒・転落リスクの増大と危険性を患者・家族に説明し理解を得
るとともに、トイレ等必要な場合は必ずナースコールするよう指導する。
類型5:薬剤使用と不適切な履物が重なり転倒・転落に繋がったケース
【事例13】《D⑥、I③、E③④》
パーキンソン病の内服コントロールと歩行訓練のため入院。室内歩行及び車椅子への
移動は自力で可能であり、性格は慎重で理解力も問題はなかった。患者は同室者にお菓
子を渡そうとして転倒した模様。通常は靴を履いて移動していたが、この時は、禁じら
れた菓子類をあわてて配っており靴下のままであったことが転倒につながったもの
【事例14】《E③④、H③、I④》
疼痛コントロールのため MS コンチン内服。ベッドサイドのポータブルトイレに靴下の
まま移動しようとして転倒
57
【事例15】《E③④、H③、I②》
転倒転落アセスメントシートにより転倒リスクが高いと判断し、入院当初より計画に
沿いベッド周辺の環境整備・尿器設置・靴使用の指導等を行っていた。最近、抗精神病
薬を変更しボーっとしがちであり、転倒時は靴下のままであった
〔再発防止策〕
①薬剤使用による転倒・転落リスクの増大については、患者・家族に十分説明を行い理
解を得る。その際、当該薬剤の作用発現時間や作用時間、半減期の時間等についても
説明を行う。
②靴下やずれやすいズボン、脱げやすいサンダル、手の隠れるガウンはリスクを高める
ことを繰り返し説明する。履き慣れた靴や裾丈を調整した衣類を使用してもらうよう
患者・家族に指導する。
③靴下、スリッパ等の使用を見かけた場合は、その旨を記録しスタッフ全員で情報を共
有した上で当該患者に対応していく。
④歩行状況、室内の生活状況についてアセスメントをし直し、必要であれば移動介助を
行うよう計画を変更する。
類型6:ADL 拡大途上、自力歩行への過剰な自信が転倒・転落に繋がったケース
【事例16】《C②、E③④、H①、I⑦》
化学療法及び放射線療法施行中の患者。治療経過は良好であったが、治療法による貧
血等を原因とする軽度のふらつきがあった。また、病棟内は歩行器を使用して歩行して
いることが多かった。看護師が訪室するとトイレの前で横たわっている患者を発見、排
尿後ふらつき転倒したとのこと。退院間近で患者の行動も自立してきていたこともあり、
アセスメントによる再評価が行われていなかった
【事例17】《C②、E③④》
同室者よりナースコールあり、訪室すると病室内中央部に倒れている患者を発見。病
室中央を歩行している際、崩れるように転んだ模様。患者は、タオルを干そうと窓際に
行き躓いて転んだとのこと。リハビリもゴールで退院許可が出ている患者であり、歩行
にも自信がついていたため、自らの転倒リスクについて認識が薄くなっていた
【事例18】《C②、E③④、H①》
リハビリ目的で入院中の患者であり、歩行は不安定であったが、数日前から自己トラ
ンスファーフリー(ベッドから車椅子への移動許可)になっていた。ナースコールがあり
トイレに行くということであったが、ベッドサイドに車椅子が用意されていたことから
1人でトイレにいくよう依頼し看護師は退室した。大きな音で駆けつけると、トイレの
前で転倒している患者を発見。車椅子はベッドサイドにあった。自力歩行でも大丈夫だ
と思い、車椅子を使用せずトイレに移動し転倒したもの
〔再発防止策〕
58
①治療の進捗や回復具合等の状況を踏まえ、適切に転倒・転落アセスメントによる再評
価を行うことで、患者の現在の身体状況、認知機能等を正確に把握し、再評価の結果
に応じた防止対策の見直しを行う。
②ADL 向上期はリスクが高くなる時期でもあることを十分に認識し、医師、看護師、理
学療法士等の間で十分な情報交換を行い対策を講じるとともに、その情報を患者とも
共有する。
③「動きたい。自分で動けるはず」という患者のはやる気持ちを十分に考慮しながら、
今後の治療計画等を丁寧に説明することで、自己判断による行動をしないよう理解を
得ていくことが必要である。
類型7:入浴中の転倒・転落
【事例19】《D①、E③④》
一人で入浴後、脱衣場で着替えようとした際に滑って転倒。脱衣場の床が滑りやすい
材質であったためマットを敷いていたが、濡れた足のままマット外の床に足をついてし
まい転倒したもの
【事例20】《D①、E③④》
浴室から物音と呼び声がしたため駆けつけると、浴槽の横に倒れている患者を発見。
浴室の床ですべり転倒したとのこと。ADL が自立していたため 1 人での入浴を許可して
いたため、入浴中の観察は行っていなかった
〔再発防止策〕
①転倒・転落アセスメントシートによる評価を行った上で、単独での入浴が可能か否か
を判断する。リスクが高いと判断された患者については、必ず介助を行う。
②入浴介助を行う際は、介助者の視野に必ず患者を入れることとし、介助者は同時に 2
つの行為を行わないようにする。
③単独での入浴を許可した場合でも、入浴の際は必ず連絡するよう指導する。また、ナ
ースコールの位置・使用方法について説明し理解を得るとともに、出来るだけ頻回の
中の様子の観察を行う。
④浴室や脱衣場の床材を滑りにくいものとする。
類型8:離床センサーを使用していたにも拘わらず転倒したケース
【事例21】《E③④、G③》
不穏行動、徘徊があり、度々転倒もあったため離床センサーを設置、床マットレス、
ヘッドギア等により転倒に対する予防策を行っていたが、トイレの前で倒れている患者
を発見。離床センサーによるコールは無かった
【事例22】《E③④、G①②》
認知機能障害のため離床センサーと床マットレスを使用。30分毎の訪室により観察
を行っていたが、患者の声に駆けつけたところ、病室前の廊下で転倒している患者を発
見。離床センサーのコールはなかった。離床センサーが、体重のかかり方等により反応
59
しなかった模様
〔再発防止策〕
①離床センサーを活用している場合でも、これを絶対視せず、継続的な観察を行ってい
くことが必要である。
②患者の身体的・精神的状況や性格等を勘案し、有効なセンサーを選択する。
③セッティングを行った際は、電源スイッチやコードの接続等正しく作動するか複数人
でダブルチェックを行うとともに、巡回等で観察を行った際にも同様のチェックを行
うことで、センサーが適正に作動するようにしておく。
※「離床センサー」の3タイプ
a ベッドサイドマットセンサー
・ベッド下にセンサーマットを置き、踏むとアラーム等で知らせる
b ベッド用センサー
・ベッドマットレスの上にセンサーを置き、離れる(重量が架からなくなる)とアラー
ム等で知らせる
c クリップセンサー
・衣類につけ、患者がベッドから起き上がろうとして引っ張られナースコールから外
れると鳴る
d 赤外線センサー
・ベッドに赤外線センサーを取り付け、感知範囲に入るとアラーム等で知らせる
e ビームセンサー
・ベッドから降りる側にビームを走らせ、それが遮断されるとアラーム等で知らせる
[留意点]
・
「aベッドサイドマットセンサー」は、患者がベッドから降りる際にわざわざ踏まない
ように降りる場合がある。その場合はコールされない。また、患者がベッドから降り
て初めてコールされるものであるから、迅速性に欠ける部分がある。
・
「bベッド用センサー」は、患者が動き始めると同時にコールされるので、迅速な対応
が可能となる。ただし、設置場所が適当でない(体重のかかり方等)場合はコールされ
ない場合もある点に留意が必要である。患者の睡眠時の体動の状況等を踏まえ、シミ
ュレーションを行うなどにより確実にセッティングすることが必要である。
・「cクリップセンサー」」については、bと同様動き始めた時にコールするタイプであ
り迅速性はあるが、患者が衣類につけたクリップ側が外れてしまう、又は患者自身が
外してしまうケースがある点に注意が必要である。
類型9:不十分な環境整備が転倒・転落に繋がったケース
【事例23】《E③④、H③》
ポータブルトイレの位置が近すぎたため、排尿のためベッドから立ち上がり前に進ん
だ際にトイレに躓き転倒
【事例24】《E③④、G③》
60
離床センサーが鳴り訪室すると転倒している患者を発見。入院前から転倒や徘徊があ
ったため、転倒した場合の衝撃緩和のための予防マットを設置していたが、ベッドから
降りた際、そのマットと床の段差により転倒したもの
【事例25】《E③④、H③》
歩行障害であったが、ポータブルトイレ使用により排尿は自力で行っていた。立位で
排尿しようとしたところふらつき、ベッド柵に掴まったが、柵が持ち上がり抜けてしま
いそのまま転倒
【事例26】《E③④》
同室患者よりコールがあり訪室すると、ベッドとオーバーテーブルの間に座り込んで
いる患者を発見。トイレに行こうとオーバーテーブルを支えに立ち上がろうとしたとこ
ろ、転倒したとのこと
【事例27】《D②③、E③④》
大腿骨骨折の手術目的で入院中の患者でリハビリを実施中。ベッド柵をはずし自力で
トイレに行こうとする等の行為があったため、注意していた。また、排泄時にはコール
するよう説明をしていた。巡回により看護師が訪室した際、ベッド柵を外し床に転倒し
ている患者を発見。自力でトイレに行こうとして柵を外し、降りようとした際にバラン
スを崩し転倒したとのこと
【事例28】《E③⑤》
水ふき清掃直後の十分に乾いていない廊下を歩行していた患者が、スリップし転倒
〔再発防止策〕
①ポータブルトイレは、ベッド脇には置かず必要な時にその都度用意する。
②ポータブルトイレや予防マット等設置は、患者の日頃からの動き方を踏まえ、患者と
も相談しながら位置を決定し、常に一定の場所に設置する。
③ベッド柵やオーバーテーブルについては、患者が外す、掴まる、寄りかかる等場合を
想定し、柵の固定やストッパーをかけることを確実に行う。
④立ち上がる際オーバーテーブルを支えにすることは非常に危険であることを説明する
とともに、その旨のステッカーをオーバーテーブルの患者の目に入りやすい場所に貼
り付ける等の工夫を行う。また、病室でのスペース的問題がない場合、オーバーテー
ブルはベッドから離れたところに移動させておく。
⑤ベッド柵を自分で外すなどの情報は確実に記録に残し、スタッフ間で情報を共有する。
⑥清掃後は、廊下が濡れたままの状態で終了しないことを徹底するとともに、清掃時間
を食事直後の安静時間帯内に行うことで、清掃直後に患者が廊下を歩くことが少なく
する等の調整を行うことでリスクを低減する。
61
インフォームド・コンセントの更なる向上のために
○
本報告は、インフォームド・コンセントの基本的考え方、説明が必要な
内容とその対象者、実施するに当たって留意すべき点等について包括的に
整理し、国立病院機構におけるインフォームド・コンセントの更なる向上
に資することを目的としている。
○
本報告では、医療者である以上、患者に対しきちんとした説明を行い、
理解を得ることが望ましいと考えられる内容について整理を行っている。
○ 各病院は、本報告を参考として、自病院のインフォームド・コンセント・
マニュアルを整備する、あるいは既に整備している場合には必要な修正等
を行うことにより、インフォームド・コンセントの更なる向上のために、
実施体制を整備していくことが望まれる。
国立病院機構中央医療安全管理委員会報告
平成 21 年 3 月 24 日
62
1.インフォームド・コンセントの意義
・インフォームド・コンセントの基本的考え方は、
「実施しようとしている処置や治療につ
いての基本的な情報を前もって患者に提供し、かつ患者がこれに同意してからでなけれ
ば、医師は患者に治療を開始してはならない」というものである。
・医師が行う診療行為は、患者の同意に基づく診療契約に基づくものであり、侵襲を伴う
場合はもちろんのこと、侵襲を伴わない診療行為であっても、原則として患者の同意な
しに診療行為を行ってはならないことを自覚することが必要である。
・ひと昔前の「おまかせの医療」から「患者の知る権利と自己決定権に基づく参加する医
療」への大きな流れの中では、
「医師の裁量権は、患者の理解と同意の上に立ってのみ行
使出来るものである」ということを改めて明確に意識することが必要である。患者は、
医療行為の対象ではなく、主体であって、医療行為を決定する権利は医師でなく、患者
にある。患者の自己決定権を尊重しなくてはならない。
・インフォームド・コンセントは、処置や治療に関する診療情報の提供を適切に行う中で、
医療における意思決定を患者と医師が共有するプロセスであるということができる。こ
の様なプロセスを通じ、患者と医師との間に良好なコミュニケーションを形成し、医療
の質を向上させていくことは、国立病院機構が掲げる基本理念である「患者の目線に立
った懇切丁寧な医療の提供」にも繋がるものである。
・また、インフォームド・コンセントを通じて、患者と医師との間に責任あるパートナー
シップを築き育てていくことは、無用な医療紛争を避けるためにも有効な手段となる。
インフォームド・コンセントは本来患者の自己決定権の保障のためにあるべきものであ
るが、一方でその適切な形での実施は、結局は医師等医療従事者のためにもなるという
ことを明確に意識することが必要である。
・なお、療養上の世話などの処置等についても、日頃から患者との積極的な対話を心掛け、
常に信頼関係の構築に努めていくことが必要である。
・また、インフォームド・コンセントは、日本医師会の「医療従事者のための医療安全対
策マニュアル」にある下記を参考にしながら出来るだけ広い範囲で行なうべきである。
※
インフォームド・コンセントを行なうリスクの範囲
①
リスクの可能性が高い場合
②
不利益の起きる可能性はまれであるが、不利益の結果が大きい場合
③
不利益が軽度で、リスクもまれな場合でも、患者の現在の健康レベルが高い場
合
④
患者が医療に対して過度の期待を持つ場合
2.インフォームド・コンセントの一般的対象事項
・医師等は、次の各事項について患者に説明し、同意を得ることが必要となる。
63
①病名と病態
②これに対し実施しようとしている診療方法の内容と期待される改善の程度
③その診療方法の危険性(合併症の具体的内容とその頻度、対処法の有無及び有効性)
④その診療方法以外に選択肢として可能な治療方法とその利害得失:インフォームド・
チョイス(有効性及び危険性)
⑤何ら治療を行わなかった場合に考えられる結果(患者が受ける利益・不利益)
⑥その患者の疾病についての将来予測(予後)
⑦結果が予測と異なる場合は、速やかにその内容
・採用しようとしている診療方法とその代替的治療法の有効性と危険性については、奏効
率や合併症発症率の具体的な数字(何%程度など)を挙げて説明することが重要である。
・今日求められているのは、単に患者に行おうとしている診療内容について説明し、同意
.....
を取り付けることではなく、患者の自己決定権の保障の観点から、患者に診療上の選択
肢を示して自由に選択してもらう(一般的対象事項の④=インフォームド・チョイスであ
る)ことを十分理解しておくことが重要である。
3.説明範囲
・医師は、上記「インフォームド・コンセントの一般的対象事項」の各々についてそのこ
とを医師ならば通常一般的に認識できたであろう情報について、個々の患者の立場に即
した工夫を行いながら説明を行う。
・患者の現症状とその原因、その治療方法を採用する理由、治療方法の内容、それによる
危険性の程度、それを行った場合の改善の見込み・程度、当該治療を行わない場合の予
後等についてできるだけ具体的に説明することが必要である。
4.危険性の説明
・発生頻度が高い合併症や副作用については説明を行う。また、発生頻度が低いものであ
っても、そのことにより重大な障害や死亡の可能性がある場合には、説明を行うべきで
ある。
・また、美容(容姿の変化)等に関係するものについても可能な限り説明を行なう。なお、
新しい治療方法等については、現時点では判明していないリスクが発生する可能性があ
ることも説明する。
5.インフォームド・コンセントの頻度
・既にインフォームド・コンセントを得ている場合でも、患者の容態に応じて治療方針を
変更する必要がある場合等には、適宜その都度インフォームド・コンセントを得ること
を基本とする。
64
6.説明者
・患者に対する説明は、原則として主治医が行うことになるが、看護師の同席やチーム医
療で取り組む場合にはチーム内の担当者が説明を行うなど、各施設の状況に応じて適切
で分りやすい説明に向けた工夫が行われることが望まれる。
7.説明の対象者
・説明すべき相手方は、原則として患者本人であり、家族・親族のみへの説明をもって代
えることはできない点に留意が必要である。
・ただし、医師の裁量において本人以外の者へも説明が必要と判断される場合には、本人
以外の者へ説明を行うことについて患者本人の承諾を得ることが必要である。
・また、同意能力が認められる未成年者の場合は、本人に説明し同意を得ることが必要と
なるが、侵襲性の高い診療を行う場合は、本人から承諾を得たうえで親にも説明をする
ことが必要である。
・特に、予後不良な悪性腫瘍患者等に対しては、
「説明すべき相手方は、原則として患者本
人」という基本方針の上にたって、個々の症例毎に対処していくことになるが、患者本
人に説明しない場合は、患者が自己の症状を軽視して治療に協力しなくなることのない
よう、家族等に対する説明の適否を検討し、適当であると判断できた場合は説明を行っ
たうえで協力を求めることが重要となる。
・患者本人に説明を行う場合は、患者の病状・精神状況などを考慮した上で、恐怖感など
不必要な精神的ショックを与えないよう、関連する医療チームで説明内容・程度につい
て慎重に対応するなどの配慮が必要となるであろう。
8.家族等への説明
・原則として患者の同意を得たうえで、家族や家族の中のキーパーソンにも出席を求め、
出来るだけ複数の人に説明をしておくことが望ましい。
9.説明時間及び場所
・当該施設の患者の状況や説明時刻等にもよるが、可能な限り時間を十分にとり患者に質
問の機会を与えながら説明を行うことが望まれる。また、説明から患者の意思表示まで
の間に可能な限り時間を置くことや、リスクの高い治療方法の場合の複数回の説明、説
明場所の配慮など患者の立場に立った説明の工夫に心掛けることも重要であろう。
・なお、救急の場合でも廊下などでの立ち話では患者・家族は「説明を受けた」と認識し
ない場合が多いことに注意することが必要である。
65
10.説明の進め方
・多忙な診療業務の中で効率的に分かりやすい説明を行うためには、例えば図や模型など
を使用することも一つの方法であろう。また、専門用語は出来るだけ使用しない、用い
る場合でも説明した上で用いることもポイントである。また、その際には、患者の精神
的側面への十分な配慮や傾聴する姿勢を心掛けることが重要であろう。
11.セカンドオピニオンの説明
・診断や治療に関して、他の医師や医療機関の意見を求めることができる旨についても説
明し、求めに応じて適宜他の医師や医療機関を紹介する。
・患者自身あるいは家族が、診断や治療について理解や判断することが難しい場合には、
現在診療を受けている医師とは別の医師から独立したアドバイスを受ける機会があるこ
とを主治医の方から進めることは、医師と患者の相互信頼感を高める結果ともなる。
12.診療録への記録
・説明医師及び同席者(看護師)、日時(所要時間も記載する)、説明内容、説明場所、相
手方氏名及び同席者氏名、同意の有無等の情報については確実に診療録に記録すること
が必要である。
・また、リスクの高い治療方法を採用する場合など状況に応じ、説明を受けた患者から確
認のサイン(自署名)を得ることが望ましい。
13.同意能力なき者への説明
・精神障害者や認知症、脳疾患のため患者本人に検査の必要性の判断や決断をする能力が
不足している場合など患者が成人であっても同意能力がない場合は、家族や近親者に対
する説明を行い、代諾を得る必要がある。
14.説明の省略
・次のような場合に、説明を省略することができるとする考え方がある。個々の具体的事
例毎に判断されることが必要であるが、今日では、患者の自己決定権擁護の観点から、
できるだけ省略することなく説明することが望ましいことは言うまでもない。
①患者が予め説明を受けることを放棄している場合
患者が説明を受ける機会を放棄することは、それ自体が自己決定権の行使と考えられ
ている。従って、患者自身が自発的に説明を受けることを拒否した場合には、これか
ら採ろうとしている診療行為に限って、説明を省略できる。なお、この場合は必ず、
患者が説明を受けることを放棄・拒否した事実(日時・場所を含めて)を診療録に記
載しておく必要がある。
66
②危険性が小さい場合
その危険性が小さく、且つ普通の人でもよく知っているような場合には、説明を省略
できる。
③緊急の場合
緊急事態で、即座に医療を施さなければ患者の生命・身体に重大な危険をもたらす場
合には、説明を省略できる。ただし、実施する医療について説明する時間はないが、
同意を得る時間がある場合には、同意を得たうえで、その後きちんと説明することは
言うまでもない。
67
長期療養患者が使用する人工呼吸器の
取扱い手順書
68
はじめに
本手順書は、長期療養患者が人工呼吸器を装着する際の手順書
であり、装着することを同意した上で、どういう手順で行なっ
ていくのかを示したものである。
69
目次
Ⅰ
長期療養患者が使用する人工呼吸器の目的、使用時の留意点等
1.人工呼吸器の目的
2.人工呼吸器の分類
3.人工呼吸器の基本構造
(1)人工呼吸器本体
(2)呼吸器回路
4.人工呼吸器の操作
(1)設定条件の指示
(2)準備
(3)操作手順
5.人工呼吸器の安全管理
(1)正常作動のためのチェックポイント
(2)人工呼吸器点検表
(3)患者の反応の確認
(4)早期発見
(5)迅速対応
(6)人工呼吸器トラブル発生時の留意点
6.人工呼吸器使用時の看護の留意点
(1)アセスメント項目
(2)気道クリアランス(排痰)
(3)TPPV 実施下の気道管理
ア.気道切開下の気管内チューブの管理
イ.加温・加湿
ウ.気道分泌物管理
7.停電時の対応
(1)必要物品
(2)対応手順
(3)留意事項
8.装着に係る説明書及び同意書
70
Ⅱ
非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
1.NPPV の適応基準
2.NPPV の長所・短所
3.代表的な換気様式
(1)CPAP
(2)S モード(I/E モード)
(3)ST モード(A/C モード)
(4)T モード
4.NPPV の安全管理
(1)事故防止対策
(2)早期発見
(3)迅速対応
5.NPPV 使用時の看護の留意点
(1)日常点検
(2)NPPV 使用時に想定される問題点と対応策の整理
(3)マスク装着の手順
ア.接続前の確認事項
イ.鼻マスク・鼻口マスクの装着法
ウ.マスクリークのポイント
エ.マスク洗浄について
(4)NPPV 使用中の食事
ア.摂食・嚥下運動と NPPV(鼻マスク)の呼吸の関係
イ.条件設定
ウ.安全に食事を行うための留意点
6.NPPV から TPPV への移行
7.装着に係る説明書及び同意書
71
Ⅰ 長期療養患者が使用する人工呼吸器の目的、使用時の留
意点等
1.人工呼吸器の目的
(1)重症心身障害児(者)、筋ジストロフィー児(者)、ALS 患者等の長期療養患者の人
工呼吸器装着は、その多くが呼吸筋力の低下に伴う換気障害を原因とするものである。
患者の多くは気道、肺などの病変は診られないことから、これらの患者が装着する人
工呼吸器の目的は、大きく次の3点となる。
①必要な肺胞換気量を維持し、SpO2(パルスオキシメーターで得られた動脈血酸素飽
和度)、PaCO2(動脈血炭酸ガス分圧)を改善する
②換気仕事量(呼吸仕事量)を減らし、酸素やエネルギー消費量を少なくする。
③肺機能の改善、少なくとも肺機能の低下を防ぐ。
(2)人工呼吸器の装着の時期について、例えば神経学会の ALS 治療ガイドラインでは、%
FVC(予想努力性肺活量)が ALS 患者の呼吸機能評価法として多く用いられており、
「50%以下が呼吸補助の基準として挙げられている」としているが、一方で「患者が
換気不全に伴う症状を訴えたら、%FVC の検査値にとらわれずに呼吸補助の可能性を
考えていくべきである」ともしている。
(3)
「人工呼吸器装着中の在宅 ALS 患者の療養支援訪問看護従事者マニュアル」
(平成 16
年 3 月日本看護協会)の中で紹介されている近藤の方法「肺活量(%VC)と呼吸管理
の段階」によれば、
①80%以下となった段階で人工呼吸器装着について患者及び家族との相談を開始する、
②60%以下で呼吸器の軽減と呼吸不全の進行を遅くするために NPPV の使用を開始す
る(間欠的使用)、
③40%以下になると気管切開による人工呼吸器(TPPV)について検討する、
としており、長期療養患者の人工呼吸器装着による呼吸補助を開始する時期について
の一つの目安となるであろう。
(4)いずれにしても上記検査値とともに、患者の臨床的な呼吸機能低下症状(呼吸不全
を原因とする起床時の頭痛、昼間の眠気、疲労感、昼間のイライラ感、不眠、苦悶様
顔貌、会話時の息切れ、努力呼吸、呼吸数の増加、頻脈等)が出現した場合には、患
者及びその家族と相談をしながら人工呼吸器装着(状態に応じた NPPV 又は TPPV の選
択)について検討することが必要である。なお、NPPV の適応基準、NPPV から TPPV へ
の移行基準については後述するが、%VC が 40%以下、痰、唾液の喀出困難、呼吸数増
加、頻脈、動脈中の PaCO2 の増加などの症状の出現が一つの目安といえる。
72
2.人工呼吸器の分類
人工呼吸器を人工呼吸法の侵襲度により分類すると、
「非侵襲的陽圧換気療法」と「経
気管切開下陽圧換気療法」の 2 分類となる。それぞれの方法の特徴を整理すると次のと
おりである。
(1)非侵襲的陽圧換気療法(NPPV:noninvasive positive pressure ventilation)
気管内挿管や気管切開による侵襲的方法を伴わない人工呼吸法であり、一般的には
マスクによる人工呼吸を行うもの。NPPV は気管内挿管なしに人工呼吸が行えるため、
着脱が容易であり会話や食事が可能である一方で、気道の確保について確実性に欠け
る面があり、気管内吸引ができないことや誤嚥の可能性がある。このため、使用に当
たっては、患者・家族への十分な説明と意思確認、患者によるマスク換気の協力を得
ることが必須の条件となる。
(2)経気管切開下陽圧換気療法(TPPV:tracheal positive pressure ventilation)
気管切開による人工呼吸法。NPPV と比べて死腔が少なくリークもほとんどないため,
より確実な換気法であると言えるが、気管切開孔は閉鎖できず呼吸器も外せないこと、
会話を行うためには訓練が必要であり言葉以外のコミュニケーションの手段が必要に
なること、出血、感染等の合併症の発生や患者の体動等による気管内チューブの深さ
の変動、屈曲の発生、カフ漏れなどには十分な注意が必要となる。
《TPPV 使用下の発声について》
TPPV 使用下であっても舌や咽頭などの発声筋が保たれ、気管切開の直前まで発声が
可能であった患者であるなら、発声が可能となることが多い。発声の方法として、
①カフエアを減量し口腔へのエアリークを利用する方法、
②スピーキングバルブを回路内に接続する方法、
③カフと声帯の間に外から空気を注入し発声する方法、
がある。①、②の場合は唾液や気管内分泌物の肺への流入に注意して行うことが必要
となるが、患者の QOL を考慮して、出来るだけ発声が行えるよう配慮することが重要
であろう。
3.人工呼吸器の基本構造
人工呼吸器は大きく、①動力部分(電源、呼吸器を動かす部分)
、送気部分(ガスを送
り出す部分)、操作パネル(条件設定を行う部分)からなる「人工呼吸器本体」、②加湿
器、鼻マスク、気管カニューレ等のインターフェイスを含む「呼吸器回路」から構成さ
れている。
(1)人工呼吸器本体
・
モード選択、トリガー感度、一回換気量、呼吸回数、I:E 比、感度、アラーム等の
「設定部」、気道内圧計、電源などの「表示部」及び「送気口」から構成されている。
73
・ 長期療養患者の多くが使用するポータブル型呼吸器の大多数は、外部空気をフィル
ターを通して本体内に取り込むタイプであり、設定した換気方式で空気を患者側に送
り出す役割を担う。
・
動力源は基本的には家庭用電源(AC/100V )であるが(圧縮空気により駆動するタ
イプもある)、停電時等に備えて内部バッテリーや専用の外部バッテリーも備えている。
人工呼吸器と共に生活する長期療養患者の QOL を考えた場合、災害時の停電等への対
応はもちろん、外出・外泊等においても安心して人工呼吸管理を行うことができるよ
うにするため、家庭内電源、内部バッテリー、外部バッテリーの 3 電源の使用が可能
な機種であることが重要である。
・
設定部分の主な機能を整理すると次のとおりである。
①基本動作
◇従量式:一回又は分時換気量を設定し、設定された量の空気を送る
◇従圧式:圧をターゲットとして、陽圧を送る
②モード選択(基本的なもの)
◇Control(調節呼吸)
患者の呼吸努力に関係なく、設定した一回換気量、換気回数、吸気流量が供給さ
れる。自発呼吸が全くない時又は自発が弱い時、呼吸のパターンが悪い時に適応。
トリガーは作動しない
◇Assist/Control(補助/調節呼吸)
患者の吸気努力に誘発されて、設定した一回換気量・吸気流量が供給される。患
者に誘発された補助呼吸がない時は、設定した呼吸回数で調節呼吸が供給される。
自発呼吸はあるが吸気力が弱く十分な換気量が得られない場合に適応。トリガー
が作動する
◇SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)
自発呼吸の合間に補助呼吸が供給される。設定された一回換気量・吸気流量は、
患者の自発呼吸と同期して供給される
③トリガー感度
自発呼吸に反応するレベル。自発呼吸がこの設定レベルに達するとガスが送られる。
人工呼吸器が患者の吸気に反応して送気を開始する。
④1回換気量
人工呼吸器から送られる1回換気量。換気量は、体型、体重、NPPV か TPPV か、な
どの条件で決定される。基本は体重1㎏=10ml が目安。ただし、NPPV の場合は、リ
ークがあり送気量の 1/2∼1/3 の量しか肺に入っていない場合もあるので、換気量は
やや多めに設定する。
74
⑤呼吸回数
人工呼吸器が1分間に供給する回数。最低分時呼吸回数。通常成人では 12∼15 回。
A/C では、設定した呼吸回数にプラス自発トリガー回数が実際の呼吸回数となる。
A/C での設定値は、バックアップ呼吸数となる。
⑥I:E 比
吸気と呼気の時間比。
⑦アラーム
◇気道内圧上限アラーム
気道内圧の上限を設定するアラームである。気道内圧が設定圧に達したらアラー
ムを発し呼気に切り替わる。高い気道内圧による気胸や肺胞の過伸展から肺障害
が引き起こされることを回避するためのアラームである。
◇気道内圧低下アラーム
気道内圧が設定した圧に達しない場合にアラームを発する。気道内圧が上昇しな
い原因は、回路の外れや回路リーク、無呼吸などである。
◇無呼吸アラーム
SIMV、CPAP、PSV などの自発呼吸を残した換気モードの際、気道内圧低下アラー
ムと連動して設定無呼吸時間の間に設定気道内圧に達しなければ、アラームを発
する。無呼吸、回路外れ、リーク、カフ漏れなどが原因となる。
(2)呼吸器回路
呼吸器回路は、送気された空気を確実に患者の肺まで送り込むためのもので、空気
が通過する蛇管部と呼出の際の呼気チューブ、呼気弁及び気道内圧を測定する気道内
圧チューブからなる。
①加温加湿器使用の場合は、次のパーツを組み立てる
バクテリアフィルター、蛇管、加温加湿器用チェンバー、熱線、ウォータートラッ
プ、気道内圧チューブ、呼気弁、呼気弁チューブ
②加温加湿器を使用しない場合は、次のパーツを組み立てる。
バクテリアフィルター、蛇管、気道内圧チューブ、呼気弁、呼気弁チューブ、
人工鼻
4.人工呼吸器の操作
(1)設定条件の指示
設定条件の指示は、医師がカルテへの記載、指示票の作成等により行う。指示内容
は、患者毎に異なるので、指示カード等を作成し当該患者の人工呼吸器の傍らに置い
ておくことで、常に設定条件どおり作動しているか確認できるようにしておくことが
必要である。
75
(2)準備
①必要物品をそろえる
・人工呼吸器本体
・呼吸器回路
・バクテリアフィルター
・加温加湿器
・二重回転コネクター
・加温加湿器用チェンバー
・気道内圧フィルター
・滅菌精製水
②器機の設置場所
・器機周辺の清潔保持に努め、安定した台の上に本体の空気取り入れ口を塞がない
よう設置する。
③電源の確認
・電源コード、電源プラグ、アース線などに亀裂・破損がないか点検した後、電源
プラグを接続する。原則として呼吸器は非常用コンセントに接続する。
④人工呼吸器本体の点検
・人工呼吸器本体に亀裂・破損、付属品の紛失などがないか確認する。
⑤呼吸器回路の組み立て
・回路、付属品に亀裂・破損、紛失がないか確認をした上で正しく組み立てる。ま
た、緩みやねじれがないよう接続するとともに、加温加湿器は確実に吸気側に接
続する。
⑥加温加湿器の点検
・加温加湿器本体及び付属品などに亀裂・破損がないか点検し、線まで滅菌精製水
を入れる。加温加湿器の温度を設定した後、サーモスタットの作動状況及び温度
を点検する。
⑦回路にテスト肺を取り付ける。
⑧人工呼吸器を作動させていない状態で気道内圧計がゼロを示している事を確認する。
(3)操作手順
①電源スイッチをONにする。
②動作テストをする。テスト肺が脹らみ、気道内圧計の針が振れるか、回路にリーク
がないか、回路の接続に間違いがないか、ねじれや緩みがないか、加温加湿器の作
動に異常がないか確認する。又、異常な作動音や異臭がないかを確認する。
③各機能の設定を行う。初回の設定、設定変更時は医師が行う。使用開始時、回路交
換時は医師と一緒に点検、確認する。その後は看護師が医師の指示表に従って点検
する。
・換気モードの選択、一回換気量、呼吸回数、I:E 比、トリガー感度等の設定
・気道内圧上限アラーム、気道内圧低下アラーム等アラームの設定
・アラーム作動確認
76
・加温加湿器の設定確認
④テスト肺を軽く握りしめ、素早く離すことで回路内に陰圧をつくり、この陰圧が設
定トリガー圧に達してトリガーされ、トリガーランプが点滅して補助呼吸になるこ
とを確認する。
⑤患者に呼吸回路を接続する。
⑥酸素飽和度(SpO2)、患者の状態(呼吸の同調性、胸郭の動き、違和感の有無等)をチ
ェックする。
5.人工呼吸器の安全管理
(1)正常動作のためのチェックポイント
人工呼吸器は、機器本体と呼吸器回路からなるため、両者の正常動作を確認しなけ
ればならない。メーカーによる定期点検を器機毎に定め確実に実施するほか、正常動
作を維持するための日常的な点検として、
①呼吸器回路内の水滴の除去、
②加温加湿器チェンバーの滅菌精製水の補充、
③呼吸器回路の定期交換、
④器機を清潔に保つこと、
等が重要となる。人工呼吸器の安全チェックのポイントを部位毎に整理すると次のと
おり。
【人工呼吸器の安全チェックポイント】
気管内チューブ
カフ漏れ、屈曲、分泌物の貯留、閉塞、位置異常、チューブ抜去、
固定部のゆるみ
各接続部の緩み・外れ・亀裂・破損、回路のリーク又は閉塞、組
立て間違い、吸気・呼気接続ミス、回路内、ウォータートラップ、
呼吸器回路
チューブ内への水の貯留
*貯留している水は、貯留している水が患者の気管内に入らない
よう注意しながら、除去する。
呼吸器設定
指示どおりの設定となっているか、ダイヤルのズレはないか、呼
吸器条件、呼吸状態の観察
水位、設定温度、加湿効果、適切なスイッチ ON・OFF、回路内水
分貯留
加温加湿器
*加温加湿器を使用する場合は、誤って加温加湿器内の水が回路
内に逆流し(た場合に)、気管内に(水が)流入するのを防止す
るため、必ず患者の気管切開孔よりも低い位置に固定して設置
モニターとアラー モニター設定の誤り、アラームの消音設定の有無
ム
77
呼吸器本体
駆動源
亀裂・破損、異常音、発熱、異常な臭い、安定した台の上への設
置、空気の取り込み口を塞いでいないか
電源コード・コンセントの亀裂・破損、非常電源への接続、メイ
ンスイッチの確認、外部バッテリー・内部バッテリーの確認
(2)人工呼吸器点検表
各病院において「人工呼吸器点検表」を作成し、使用開始時、設定変更時、ケア・
処置の終了時、勤務開始・終了時等に点検を行う。点検表に盛り込む主な項目には、
次のものが考えられる。また、点検実施者は、点検後に点検時間とサインを行う。
〔器機の設定〕
・機種名
・電源コード・プラグ
・呼吸回路の貯留水
・加温加湿器用チャンパーの水量レベル
・気道内圧上限アラームレベル、気道内圧下限アラームレベル
・換気モード
・最高気道内圧レベル
・PEEP レベル
・1回換気量、分時換気量、呼吸数
・トリガー感度レベル
・呼気弁ユニット動作
・フィルターの汚損
・装置本体からの異常音、発熱、異臭
等
〔患者の状態〕
・胸郭の動き
・聴診
・呼吸数
・脈拍数、血圧、SpO2
等
(3)患者の反応の確認
人工呼吸器を使用している長期療養患者にとっては、器機が正常に作動しているだ
けではなく、快適に作動しているかが重要な意味を持つ。このため、呼吸の同調性、
胸郭の動き、違和感の有無等患者にとって不快なく適切に作動しているかのアセスメ
ントを行うことも必要である。ごく僅かな変化なども敏感に察知し、頭痛、発熱、疲
労感といった症状を呈する場合があることを念頭に置くことが必要であり、特に人工
呼吸器本体や回路交換後には、患者の反応を十分に確認することが重要である。
78
(4)早期発見
①異常アラーム:各種の異常の状況を知り、迅速に対応する。
②生体情報モニター:生体モニター監視を原則とする。
③巡視:巡視は原則1時間1回として、呼吸状態や呼吸器の装着状態を観察する。
④動線:呼吸器のアラーム等の確認ができる病室配置に配慮する。
(5)迅速対応
呼吸器の異常に対しては、速やかに医師及び看護師長に報告を行い、必要により臨
床工学技士にも報告を行い、対応を要請する。
(6)人工呼吸器のトラブル発生時の留意点
トラブルが発生した際には、適切かつ迅速な原因追及とその対処が必要である。
「人
工呼吸器装着中の在宅 ALS 患者の療養支援訪問看護従事者マニュアル」
(平成 16 年 3
月日本看護協会)で示されているトラブルシューティングの例を紹介する。留意すべ
きは、機器的なトラブルへの対処に気持ちが奪われてしまって、患者の呼吸確保が後
回しになってしまわないようにすることである。アラームとその対処だけに気を取ら
れず、蘇生バックでの換気等まず患者の呼吸確保を第一に考えることが重要である。
79
【トラブルシューティングの例】
80
81
82
6.人工呼吸器使用時の看護の留意点
(1)アセスメント項目
①バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸状態、体温)
②呼吸状態
・自発呼吸が残存している場合は、人工呼吸器との同調性を確認
・自発呼吸がほぼ消失している場合は、胸郭の動きが人工呼吸器の吸気に合わせ、
左右対称に脹らんでいるかを確認
③呼吸音
④換気量(一回換気量、最大強制吸気量、最大呼気流量、介助咳の呼気流量)
⑤人工呼吸器の作動状況
⑥酸素飽和度(SpO2 値)、皮膚の色、血行動態(末梢冷感、浮腫の有無、頚動脈怒張
の有無)
⑦低換気症状、過換気症状の有無
⑧喀痰の量、性状
⑨加湿の状態
(2)気道クリアランス(排痰)
①肺のコンプライアンス(肺機能の健全性)を維持し、感染などの合併症を発症させ
83
ないようにするためには、気道クリアランス(排痰)を適切に行うことが必要であ
る。
②痰の貯留は、患者の訴えによって確認するほか、気道内圧の上昇、聴診によって存
在部位と性状を見極め、必要な時に的確に吸引を実施することが重要である。
【分泌物の存在を示す呼吸音】
音
の 特 徴 等
粗い断続性ラ音
ボコボコ
聴取時期
呼気
ゴロゴロ
低音性連続性ラ音
グーグー
解
釈 と 対
応
流動性のある分泌物の存在
→排痰体位での移動が可能
呼気、
比較的大きな粘性の分泌物が気道の内腔を閉塞するよう
吸気
な形で附着
→移動には時間がかかる
呼吸音の低下、消失
粘稠な分泌物で気道を閉塞→排痰体位
無気肺(時間がたつと気管支呼吸音の伝達が生じる
気管支呼吸音の伝達音
下側肺障害などの肺硬化
→分泌物の移動、排出は容易でなくかなり時間を要する。
*「人工呼吸器装着中の在宅 ALS 患者の療養支援訪問看護従事者マニュアル」(平成
16 年 3 月日本看護協会)より
③また、TPPV 実施下では、繊毛運動が阻害されるため、加湿により分泌物の粘性をコ
ントロールする。加湿状態の目安は、a痰が柔らかい、b吸気側回路の終末部内側
に結露がついている、c気管チューブの内壁に結露、水滴がついている状態である。
④排痰の方法は、一般的には吸引による場合が多いが、気道内分泌物が特に多い場合
などを除いて、患者の咳嗽力を補助することで排痰を促す手技がある。以下の各手
技を、患者の状況等を踏まえながら活用していくことも有効である。
◇徒手的咳介助
吸気時に、蘇生バックによる送気などの吸気補助により肺活量以上の吸気量を得
てから、吸気時にタイミングを合わせ徒手的に胸郭を圧迫する。これにより、自
力の咳嗽の 2∼5 倍の咳の最大呼気流量を得ることができる。タイミングが合わな
いと痛みや不快、さらには肋骨骨折の原因になるため注意する。
◇器械的咳嗽介助(MAC:mechanical assisted coughing)
通称「カフマシーン」とも呼ばれるもので、マスクや挿管チューブを通じて、吸
気時には陽圧が(これにより深吸気となる)
、呼気時には陰圧となることにより、
咳嗽の代償となる。
◇体位排痰法(体位ドレナージ)
重力を利用して、気道内分泌液の移動を促すもので、喀痰貯留部の肺区域を気管
支分岐部より上位となるような姿勢をとらせる。これにより、末梢の分泌物の移
動が可能となる。人工呼吸器の装着中、回路や気管切開挿入部への負担を避ける
84
ため、体位を修正することが多い。その際、皮膚損傷や循環器合併症、脳血流や
頭蓋内圧の変化、食道胃逆流に注意する。
◇排痰手技
施行者の手を胸壁に置きその手を細かく振動(12∼20 回/秒)させ、呼気に振動
を与える手技をいう。呼気のはじめに振動に伴った気流の細やかな動揺がみられ
る。これを、器械的(チェストバイブレーションなど)に行うことがある。臥床
中の患者では、装着が困難な場合もある。
(3)TPPV 実施下の気道管理
TPPV 実施下の気道の状態は、a物理的刺激を受けやすい、b乾燥した空気が出入り
する、c病原体が気道内に侵入しやすい、d咳嗽しにくいことが特徴的で、出血や感
染などの合併症を引き起こす危険がある。このため部位等毎に次のケアを行っていく
ことが必要である。
ア.気管切開下の気管内チューブの管理
①カフエアの管理
カフは気管内チューブを固定し、十分な換気を維持し、口腔、鼻腔内からの分泌物
の気管内への誤嚥を防ぐために重要である。一方、高いカフ内圧による気道粘膜の
出血、潰瘍、圧迫壊死が発生する危険もあり、カフは気管をシールする最小の圧と
することが必要である。経験的には、耳たぶ程度といわれるが、気管静脈圧(25∼
35 ㎜ Hg)を超えないようカフ圧計で実測することが望ましい。また、その際の容量
を記録し、日常の管理の目安とする。
②挿入部管理
気管内チューブガーゼの交換は、チューブ周囲への分泌物貯留を防ぎ、感染を予防
し、清潔を保つために行い、気管切開創の観察を合わせて行う。
③チューブ交換
気管内チューブは、長時間の使用により、閉塞または狭窄の原因になるため、定期
的に交換する必要がある。
イ.加温・加湿
TPPV 実施下において、繊毛運動の障害、分泌物の粘稠化による気管チューブの閉塞
や気道抵抗の増大を避けるためには、吸入器の加湿が必要不可欠である。その方法は、
「加温加湿器」「人工鼻」「ネブライザー」がある。
①加温加湿器
加温加湿器は、温度設定が可能なヒーターベースとチェンバーで構成されている。
チェンバーの中の水温は、熱平衡的にコントロールされていて 100%の相対湿度と
85
体温に近い温度が得られる。チェンバーの水は、感染の原因とならないよう滅菌水、
または蒸留水を使用し、定期的に補給して、きらさない注意が必要である。また、
呼吸回路内に生じる結露の逆流を防ぎ、頻回に取り除くことも重要である。
②人工鼻
人工鼻は、人工呼吸器装着者自身の呼気から温度と湿度を取り入れ、吸気時に変換
する役割をもつ。人工鼻は、熱と湿度の変換器の役割を果たすカートリッジとそれ
を覆う固いプラスティックで構成されており、電源を一切使わないので、特に移動
時には有効である。一定期間毎に新しいものと交換することが必要である。加温加
湿器とネブライザーは併用しない。
③ネブライザー
通常の加湿では不十分な場合に、喀痰喀出の促進や気道狭窄の改善を目的とする。
種類は、ジットネブライザーと超音波ネブライザーが主流である。施行中は、人工
呼吸器の換気量や気道内圧が変化することがあることを認識しておく。また、細菌
汚染の原因となることもあるため、取扱いに注意する。
ウ.気道分泌物管理
気管切開下では、自力での排痰が困難となるため、気道分泌物の吸引は必要不可欠
であるが、その実施に当たっては、次の点などに注意しながら行うことが必要である。
①吸引圧
吸引量は、吸引圧と分泌物の粘稠度に影響を受けるため、喀痰の性状を見極め適切
な吸引圧を調整することが必要である。吸引圧が低いと吸引に時間がかかり、効果
的に吸引できない。このために頻回に吸引を行うことになり、患者への苦痛・低酸
素血症などの合併症の危険となる。反対に吸引圧が高いと、空気を多量に吸引し、
無呼吸状態が続き低酸素血症につながる。さらに気管壁に接触した場合は、高い吸
引圧が一点に集中し、気管粘膜を損傷させる危険があるので注意が必要である。
②吸引時間
吸引時間が長いと肺内の酸素濃度の低下や肺胞の虚脱から低酸素血症に陥りやすく
なる。また、吸引時間が長いほど、動脈血酸素飽和度が吸引の前の値まで回復する
のに時間がかかる。多くの長期療養患者の場合は、高濃度酸素が付加されるわけで
はないが、吸引中は呼吸ができないだけではなく、肺内の酸素が低下するため、呼
吸を止めるより苦しい状態になることを踏まえ、短時間(全操作を 20 秒以内)です
ませるよう心がけることが重要である。
③吸引チューブ挿入の深さ
吸引チューブ挿入による合併症は、気管支壁の刺激により、迷走神経反射からの叙
脈・血圧低下・ファイティングなどがある。また吸引チューブを無理に挿入すると
気管粘膜を損傷し、出血することがある。このため、吸引チューブの挿入の深さは、
86
気管内チューブの先端から 3∼5cm までの気管分枝部程度に留め、決して奥まで挿入
しない。前述の排痰を促進する各手技を利用して、この位置まで気管分泌物を集め
ることも有効である。
7.停電時の対応
(1)必要物品
テスト肺、アンビューバック、懐中電灯
(2)対応手順
〔昼間〕
①看護師長又は代行者は、直ちに停電の第一報を所定の緊急時連絡方法(主治医、看
護部長室など)で報告し、応援を依頼する。
②日勤者は、担当する人工呼吸器装着患者の人工呼吸器の作動状況を確認する。
③短時間呼吸器を外すことができる患者は、呼吸器を外す(車椅子に移乗させる)。
④内部バッテリーが正常に作動しているか確認する。内部バッテリーがない場合は、
呼吸器を外しアンビューバックによる補助呼吸を行う間に外部バッテリーに接続す
る。
⑤人工呼吸器が作動停止した患者では、速やかに呼吸器を外し、用手補助呼吸に切替
える。
⑥看護師長又は代行者が作動停止した呼吸器の台数・機種、内部バッテリー搭載機器
の作動状況を確認し、看護部長室へ報告する。
⑦患者の呼吸状態や一般状態を確認し、パニックに陥らないよう声かけする。
⑧看護師長又は代行者は、応援者を指揮する。
⑨電源復旧後、2人から構成されるチームが人工呼吸器にテスト肺をつけて、人工呼
吸器点検表を用いて人工呼吸器の作動状況を確認する。
⑩患者に人工呼吸器を装着し、呼吸状態を確認する。
〔夜間〕
①リーダーは、直ちに停電の第一報を所定の緊急時連絡方法(当直医師、当直師長な
ど)で報告し、応援を依頼する。
②他の勤務者は、人工呼吸器を外すことのできない患者から順番に呼吸状態と人工呼
吸器の作動状況を確認する。
③短時間人工呼吸器を外すことができる患者は人工呼吸器を外す(患者を覚醒させ、
車椅子に移乗させる)。
④内部バッテリーのない機種は、外部バッテリーに接続する。
⑤自力呼吸が極めて弱い患者から順番にアンビューバックによる補助呼吸を行う。
87
⑥リーダーは作動停止した呼吸器の台数・機種・内部バッテリー搭載機器の作動状況
を確認し、当直看護師長へ報告する。
⑦患者の呼吸状態や一般状態を観察し、パニックに陥らないよう声かけする。
⑧リーダーは、駆けつけた応援者を指揮し、状況把握に努める。
⑨電源復旧後、2人から構成されるチームが人工呼吸器にテスト肺をつけて、人工呼
吸器点検表を用いて人工呼吸器の作動状況を確認する。
⑩患者に人工呼吸器を装着し、呼吸状態を観察する。
(3)留意事項
①呼吸状態の観察と共に精神的な動揺を最小限にする為に、落ち着いた対応を行う。
②非常用電源が使用可能となった際は、通電を確認する。
③使用機種毎のバッテリーの接続方法やバッテリーの消費時間等を整理し、不測の事
態にも迅速に対応できるよう準備しておく。また、バッテリー使用中は、消費時間
内であっても、頻回の作動確認を行うことが必要。
④中央配管の吸引機が作動しない時は、中材よりポータブル吸引器を借用する(当直
師長に依頼)。
⑤ネットサット(患者監視モニター)は患者の状況把握の為につけたままにしておく。
8.装着に係る説明書及び同意書
装着開始に当たっては、患者及び家族に装着目的、注意点、合併症等について説明
を行い、別紙1「人工呼吸器装着(経気管切開下)に関する説明書及び同意書」に署名
してもらい、患者と医療者の双方が持つことが必要である。
88
Ⅱ 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
非侵襲的陽圧換気療法(NPPV=noninvasive positive pressure ventilation)は、気管
内挿管や気管切開など侵襲的な方法で身体の中にチューブを留置するのではなく、鼻マ
スクなどの非侵襲的なインターフェイスによって、人と人工呼吸器を装着し人工呼吸療
法を行うものである。呼吸筋の筋力低下に伴う低酸素血症や高炭酸ガス血症を改善し、
呼吸を管理することを目的としている。
NPPV は気管内挿管なしに人工呼吸が行えるため、着脱が容易であり会話や食事が可能
である一方で、気道の確保について確実性に欠ける面があり、気管内吸引ができないこ
とや誤嚥の可能性がある。このため、使用に当たっては、患者・家族への十分な説明と
意思確認、患者がマスク換気に協力してくれることが必須の条件となる。
以下に、装着患者の安楽と生活の質の向上、そして医療の安全を保持するため、NPPV
による呼吸管理を行うに当たっての知識・技術として確認をしておくべき事項を整理し
た。
1.NPPV の適応基準
①自覚症状として慢性の呼吸不全を有する患者で、呼吸不全が元になる起床時の頭痛、
昼間の眠気、疲労感、不眠、昼間のイライラ感、性格変化、学習能力の低下、夜間頻
尿、労作時呼吸困難、体重減少、頚動脈の怒張、頻脈、下肢の浮腫などの肺性心の兆
候いずれかがある場合で、以下の(a)(b)の両方あるいはどちらか一方を満たす場合
(a)昼間覚醒時低換気:PaCO2 > 45mmHg 及びまたは SpO2 < 90%
(b)夜間睡眠時低換気:室内気吸入下の睡眠で SpO2 < 90%が 5 分以上継続するか、
あるいは全体の 10%以上を占める)及びまたは PaCO2(経
皮、呼気の CO2 でも可) > 45mmHg
②肺活量の著しい低下(VC50%)などのある患者で①の(a)、(b)を満たす場合
③呼吸不全、急性増悪入院を繰り返す場合
④気道確保が可能、咳・痰喀出が可能
⑤咽喉頭反射が保たれ、誤嚥の危険性が少ない
⑥循環動態が不安定ではない
⑦消化管出血やイレウスがない
⑧マスクがしっかりと装着できる
⑨理解、協力が良好。「説明と同意」を取得できること
2.NPPV の長所・短所
【長所】
①気管切開や気管内挿管が不要で負担が少ない
②呼吸器感染症の減少
89
③食事及び会話が可能で QOL に優れる
④着脱が容易で、患者の状態に応じて装着時間を調整できる
⑤小型・軽量で場所をとらず移動しやすい
【短所】
①患者の協力が必要(意識のない患者、反射のない患者には禁忌)
②操作に手間がかかる(医療者側の熟知必要)
③気道は確保されない
④気道と食道が分離できない、誤嚥が起こる
⑤呼吸器装着中は喀痰吸引が困難(痰が多い例は不適)
⑥高い気道内圧がかけられない
⑦酸素濃度を要する例は不適
⑧マスク装着に伴う合併症、不快感(皮膚炎、潰瘍、口渇、乾燥)
3.代表的な換気様式
(1)CPAP
一定の圧で持続的な陽圧の補助を行う換気様式。自発呼吸の十分ある患者に使用可
能な換気様式である。
(2)S モード(I/E モード)
二つの圧レベルで換気の補助を行うもの。二つの圧とは、EPAP(expiratory positive
airway pressure)と IPAP(inspiratory positive airway pressure)であり、EPAP
と IPAP の圧格差を PS(プレッシャーサポート)と呼ぶ。
機械が患者の呼吸努力を感知すると、その自発呼吸に同調して、EPAP よりも高い
IPAP の圧で患者の呼吸努力を補助する。呼吸時間も患者の自発呼吸の吸気流速によっ
て決定されるので、一定とはならない。自発呼吸のある患者を対象とした換気モード
で、強制換気の回数は設定できない。
PS[プレッシャーサポート]
(IPAP)
(EPAP)
90
(3)ST モード(A/C モード)
ST モードも、二つの圧レベルで換気の補助を行う換気モードであるが、ある一定時
間を経過しても患者の自発呼吸がなければ強制的な換気を行う。ここで言う強制的な
換気とは、EPAP や IPAP の圧格差である PS を1分間に最低何回何秒間換気させるかと
いう意味になる。
(例)呼吸回数を 10 回/分、呼気時間を 1.0 秒に設置した場合
呼吸回数=10 回/分だから、6 秒に 1 回の呼吸サイクルになるので、自発呼吸が
6 秒以上検出されなければ、吸気時間 1.0 秒の PS 圧強制換気が送られる。
PS[プレッシャーサポート]
無呼吸状態
強制換気
(4)T モード
T モードも、二つの圧レベルで換気の補助を行う換気モードであるが、S や ST モー
ドと違って、自発呼吸を無視した強制的換気様式となる。つまり、呼吸回数を 12 回/
分、吸気時間を 1.0 秒と仮に設定したら、自発呼吸の有無に関わらず、常に呼吸回数
=12 回/分、吸気時間=1.0 秒の一定した PS 圧の強制換気が行われるようになる。
強制換気
強制換気
強制換気
4.NPPV の安全管理対策
「1.NPPV の適応基準」を踏まえ、装着にあたっては適応の有無を評価し決定する。
(1)事故防止対策
①電源の確保
・コンセントの確認を行う。
・呼吸器接続部の脱落を防止する。
・スイッチには外力が加わらないようにする。停電等発生時、バッテリー切り替え
91
がスムーズにできるようにバッテリーの使用方法について習熟しておく。
②呼吸器設定モードの確認
・設定モードの設定値については、医師が診療録及び呼吸器設定指示票に明確に記
載する。
③気道の確保
・呼吸器回路等の脱落がないか観察を強化し防止策(マジックベルトの使用)を講
じる。
・患者の状態に応じて痰吸引やカフマシーン等を利用して排痰に務める。
(2)早期発見
①異常アラーム:各種の異常の状況を知り、迅速に対応する。
②生体情報モニター:生体モニター監視を原則とする。
③巡視:巡視は原則1時間1回として、呼吸状態や呼吸器の装着状態を観察する。
④動線:呼吸器のアラーム等の確認ができる病室配置に配慮する。
(3)迅速対応
呼吸器の異常に対しては、速やかに医師及び看護師長に報告を行い、必要により臨
床工学技士にも報告を行い、対応を要請する。
5.NPPV 使用時の看護の留意点
(1)日常点検
日常点検は、人工呼吸器点検表及び呼吸器設定指示票に沿って各勤務始業時に行う
(定時のみの使用者の場合は、装着時と各勤務始業時)。
《確認事項》
①呼吸器設定指示票の内容どおり作動しているか
②異常音は聞かれないか
③蛇管、マスク、酸素接続部分のゆるみやもれはないか
④電源は非常用コンセントに差し込まれているか
⑤周囲の環境整備は。落下物の可能性はないか
(2)NPPV 使用時に想定される問題点と対応策の整理
《看護師による対処できるもの》
問
圧迫感
題
点
対
応
必要性の説明、マスク・ベルトの交換、ベルトをゆるめる、
酸素マスクへの変更、NPPV の間欠的使用、マッサージ
口渇、口腔内汚染、口腔内 オーラルケアの徹底、含嗽を頻回に行う、制限内での水分
92
乾燥、口腔内潰瘍、鼻の疼 補給、加温加湿器の温度調整、マスクの交換
痛
腹部膨満、呑気
胃管挿入による脱気、排便コントロール、排気
皮膚トラブル
ビニールテープ、皮膚保護剤、創傷保護剤の使用、軟膏塗
布
装着拒否
酸素マスクへの変更、NPPV の間欠使用
圧が高い、咽頭痛
NPPV 圧の調整を医師に依頼
《医師による処置を必要とするもの》
問
題
点
対
応
不眠
原因除去、モードの変更
嘔気・嘔吐
制吐剤投与
自発呼吸の減弱
S/T、T モードへの変更
SpO2、PaO2 が改善しない
酸素流量の調整、NPPV 圧の調整、マスクの交換、S/T、T
モードへの変更
不穏
マスクの交換、鎮静剤の投与、家族との面会、抑制、処置
の制限
痰喀出不良
経鼻エアウェイの挿入、吸入・体位変換・腹臥位・呼吸介
助により排痰を促す、加湿の強化、酸素マスクへの変更、
他の呼吸補助への変更
循環不全
薬物療法
呼吸困難
マスクの交換、酸素マスクへ変更、NPPV 間欠使用
意識消失
S/T、T モードへの変更、他の人工呼吸療法への変更の検討
無呼吸
S/T、T モードへの変更、他の人工呼吸療法への変更の検討
NPPV と呼吸が合わない
鎮静剤投与、酸素マスクへ変更、他の人工呼吸療法への変
更の検討
全身痙攣
薬物療法、気管内挿管等への変更
マスクの装着困難
ベルトをゆるめる、マスクの交換
二酸化炭素の蓄積
S/T、T モードへの変更、他の人工呼吸療法への変更の検討
誤嚥
気管内挿管等への変更
緊急手術
気管内挿管等への変更
(3)マスク装着の手順
ア.接続前の確認事項
①マスクに破損や汚れ等がないことを確認する。
②マスクに呼気ポートがついていることを確認する。
93
③マスクのヘッドベルトは取り外しておく。
イ.鼻マスク・口鼻マスクの装着法
①気道がしっかり確保されていることを確認する。
②鼻下部(口鼻マスクは下唇)をベースに鼻梁までマスククッションを当てる(顔に
対してマスクが平行になるように)。
③器械を作動させ、マスクを医療者が保持した状態で、患者に器械から送気されるガ
スの感覚をつかんでもらう。なお、マスクを保持する時は、医療者の手で視界を妨
げると恐怖感を抱くので、マスクの下を保持する。
④額部分にクッションがあたるようにサポートアームを調整する。
⑤左右均等になるように上下ベルトを締める。
⑥頭とストラップの間に指が2本程度入るくらいにきつさを調整する。
⑦装着状態・リークの有無を確認する。
ウ.マスクリークのポイント
①ベストポジション:顔とマスク面が平行
②上部ストラップがきつい、サポートアームの高さ調整が不適切→口側へのリーク
③下部ストラップがきつい、サポートアームの高さ調整が不適切→目側へのリーク
エ.マスク洗浄について
①週1回、曜日を決めて行う。
②中性洗剤を使いガーゼを濡らしてやさしく洗浄する(細かい部品があるため慎重に
扱う)。
《インターフェイスの種類と特徴の整理》
マスクの種類
鼻マスク
特
徴
長期使用患者、意識清明で口を開けずに換気ができる患者に適す
る。装着したまま飲水・食事ができるが、誤嚥に注意する必要が
ある
口鼻マスク
鼻マスクになじめない患者、呼吸を主に行っている患者に使用す
る。鼻梁部や額等マスクが接触する部分に皮膚トラブルが起きや
すい。飲水・食事時はマスクを外す必要がある
トータルフェイス 他のマスクではリークが発生する患者、過去に皮膚のトラブルが
マスク
あったり、閉所恐怖がある患者に適する。ワンサイズで素早くフ
ィットさせられるため、特に救急の現場で使用される
94
マウスピース
個人用に作ったものは患者の口にあわせて作られるため、ストラ
ップを必要とせず、夜間も使うことができる。
《マスクサイズの選択》
マスクの種類
鼻マスク
サ
イ
ズ
選
択
鼻孔、鼻梁、上唇の3点を目印にして、鼻孔が狭まったり、閉塞す
ることがない鼻周りにフィットするサイズを選ぶ。2種類のサイズ
で迷ったら、小さいサイズのものから選択する
口鼻マスク
口角、鼻梁、下唇の下の3点を目印とし、口をしっかりと覆うこと
ができる最小のサイズを選ぶ(顎の下にマスクがずり落ちないよう
にする)。この際、わずかに口を開けた状態で行う
トータルフェイ 顔全体を覆うトータルフェイスマスクは、ワンサイズのみ
スマスク
マウスピース
口唇を塞ぐシールとストラップが一体になった市販のものと、患者
用に特注するものがある
(4)NPPV 使用中の食事
ア.摂食・嚥下運動と NPPV(鼻マスク)の呼吸の関係
①認知期:食物が口に入る前に何を、どのくらい、どのように食べるかを決めて行動
する。
(意識的な運動):NPPV の吸気でも呼気でもよく、本人のタイミング次第
②咀嚼期:食物を口に入れて噛み砕き、舌でまとめて咽頭へ送りやすい形にする。
(意識的な運動):のどに食べ物が流れ落ちないように注意しながら NPPV を
続行可能
③口腔期:食物を口腔から咽頭の方向へ移動させる。
(意識的な運動)
:呼気時に早めの吸気後に飲み込む(次の吸気の前に、口腔
期と咽頭期を完了させる)
④咽頭期:食物を反射運動により咽頭から食道へ移送させる。
(無意識な運動、嚥下反射):呼気時に次の吸気前に完了
a.鼻腔との交通遮断→軟口蓋が咽頭後壁に押しつけられる。
b.気管との交通遮断→喉頭蓋で気管を防ぎ、声門が閉じる。
c.食道への開通→上部食道括約筋が弛緩し、食道へ入る。
⑤食道期:食物を蠕動運動により食道から胃へ移送される
(無意識的な運動):NPPV の吸気でも呼気でも関係ない。
95
イ.条件設定
原則として従量式の呼吸器を使用する。
(慣れた患者では従圧式でも可)鼻マスク使
用時のモードは、コントロールにする。呼気時には、陽圧はかからないようにする。
あまり過呼吸ではなく呼気時間がゆっくりしている方が飲み込みやすい。呼気時にタ
イミングを見計らって、次の呼気時の前までに食べ物を飲み込む。
ウ.安全に食事を行うための留意点
①鼻マスク使用での食事の実際(他の患者の動作をみていただく、あるいはビデオ等)、
利点、注意点等を患者に説明する。
②嚥下しやすい物と誤嚥しやすい物を理解する。水物、ぱさつく物、口腔内でひとま
とめにしにくい物、口腔内で水分と固形に分かれる物は、誤嚥する可能性が高いこ
とに留意。
③むせや空気を飲み込んで腹部膨満となった際の伝え方について、打ち合わせを行う。
④エアスタック(息留め)の習得(誤嚥防止にもなる)。
⑤誤嚥に備えての口鼻吸引、徒手介助排痰や MAC 習得。
⑥座位・ギャッジアップ・臥位により接触姿勢を安定させる。
6.NPPV から TPPV への移行
自己排痰不良により気管内分泌物の吸引が困難となり窒息のリスクが増加した場合
や、呼吸状態の悪化に伴い意識レベルの低下や不穏状態等が見られた場合には、速や
か に 本 人 、 家 族 へ の 病 状 説 明 を 行 い 、 TPPV ( tracheostomy positive pressure
ventilation-経気管切開下陽圧換気療法-)への移行を検討する。
7.装着に係る説明書及び同意書
装着開始に当たっては、患者及び家族に装着目的、注意点、合併症等について説明
を行い、別紙2「非侵襲的人工呼吸器装着に関する説明書及び同意書」に署名しても
らい、患者と医療者の双方が持つことが必要である。
96
(別紙1)
人工呼吸器装着(経気管切開下)に関する説明書及び同意書
独立行政法人国立病院機構
私は、独立行政法人国立病院機構
○○
病院
院
長
殿
担当医
殿
○○病院における人工呼吸器装着(経気管切開下)
に関する事項について、担当医より以下の説明を受け了解しました。人工呼吸器装着(経
気管切開下)について、
承諾します
平成
年
月
日
住所
患者(自署名)
住所
家族・代理人(自署名)
(続柄:
)
========================================
人工呼吸器(経気管切開下)を装着される患者様へ
1.目的
人工呼吸器(気管切開下)は、気管前壁に穴を開け、そこに挿入した気管内チューブ
を人工呼吸器と接続することで行う人工呼吸法です。呼吸筋力の低下に伴う換気障害を
原因とする低酸素血症や高炭酸ガス血症をコントロールし、呼吸を管理することを目的
としています。気管切開は、頚部の皮膚を数㎝程度切開した後、気管前壁に穴を開け気
管内チューブを挿入します。
2.装着理由
□ 気道に間欠的に陽圧を加えて胸郭の換気運動の低下を防ぐ
□ 肺のガス交換の改善を図る
□ 肺病変の改善を図る
□ 呼吸仕事量の軽減を図る
□ 人工呼吸を行い、肺砲換気量を維持し、ガス交換障害を是正することにより代謝性
アシドーシスの改善を図る
□ 自活呼吸が弱い場合、換気量を維持するために調節換気か補助換気を行う
97
□ 気道障害により換気不全を生じた時の肺胞低換気に対し、適切な肺胞換気が維持で
きるように補助する
4.使用機種
□ ニューポート HT50
□ LTV
□ アチーバ plusPSO2
□ モバイル 1000
□ レジェンドエア
□その他(
)
5.注意点
①一旦装着すると原則として外すことはできません
②気管切開時の麻酔により合併症が生ずる可能性があります
③術中、血管の損傷により多量の出血が起こる場合があります
④術後出血することがあります。出血を止めるために再手術を要することがあります
⑤術中・術後の出血が気管内に流れ込み換気不全、窒息に陥ることがあります
⑥気管内チューブ内に痰が固着し換気不全に陥ることがあります
⑦皮下に空気がたまることがあります
⑧術後の発声は訓練が必要です。言葉以外のコミュニケーションの手段が必要となりま
す
⑨痰の量が多い場合は頻回にカテーテルでの痰の吸引が必要となります
⑩長期間にわたるチューブの留置により、チューブの刺激により気管が狭窄し様々な処
置が必要となる場合があります。その際は、改めてご相談させていただきます。
⑪上記以外にも予見不可能な合併症・偶発症が生じる可能性があります
6.人工呼吸器装着中のモニタリング
機器装着中は、パルスオキシメーターにより酸素飽和度(SpO2)や心拍数(HR)のモ
ニタリングを行います。
何かご不明な点がありましたら、担当医にご相談ください。
独立行政法人国立病院機構
○○
病院
担当医
同席者
98
(別紙2)
非侵襲的人工呼吸器装着に関する説明書及び同意書
独立行政法人国立病院機構
私は、独立行政法人国立病院機構
○○
病院
院
長
殿
担当医
殿
○○病院における非侵襲的人工呼吸器装着に関する
事項について、担当医より以下の説明を受け了解しました。人工呼吸器装着について、承
諾します。
平成
年
月
日
住所
患者(自署名)
住所
家族・代理人(自署名)
(続柄:
)
========================================
非侵襲的人工呼吸器を装着される患者様へ
1.目的
非侵襲的人工呼吸(NPPV)は、マスクを用いて行う人工呼吸法の1つです。呼吸筋の
筋力低下に伴う低酸素血症や高炭酸ガス血症をコントロールし、呼吸を管理することを
目的とします。
2.装着理由
□ 気道に間欠的に陽圧を加えて胸郭の換気運動の低下を防ぐ
□ 肺のガス交換の改善を図る
□ 肺病変の改善を図る
□ 呼吸仕事量の軽減を図る
□ 人工呼吸を行い、肺砲換気量を維持し、ガス交換障害を是正することにより代謝性
アシドーシスの改善を図る
□ 自活呼吸が弱い場合、換気量を維持するために調節換気か補助換気を行う
□ 気道障害により換気不全を生じた時の肺胞低換気に対し、適切な肺胞換気が維持で
きるように補助する
3.使用機種
99
□ バイパップ・シンクロニ
□その他(
□ アコマ
□ レジェンドエア
□ LTV
)
4.装着時間
□ 睡眠時(
)時∼起床時
□ 安静臥床時
□ その他(
)
5.NPPV の利点・注意点
【利点】
①気管挿管・気管切開に伴う合併症を回避できる
②換気開始までの時間が短い
③換気の中断が容易にできる
④感染症などの合併症の機会を減らすことができる
⑤鎮痛剤の必要性が少なくなる
⑥会話によるコミュニケーションが保たれる
⑦飲食ができる
⑧日常生活動作(ADL)が保たれやすい
【注意点】
①気管内分泌液の吸引が難しい
②気道内圧を高く維持できない
③気道と食道が分離できず、空気嚥下や誤嚥の危険が残る
④マスクによる圧迫感がある
⑤マスクや固定ベルトによる合併症(皮膚障害)が出現する
⑥状態悪化に備えて、気管挿管ができるように準備する必要がある
⑦経鼻胃チューブの挿入でマスク装着の工夫ができる
⑧空気漏れの程度を観察し、患者の呼吸状態を確認する
(合併症として)
・ 陽圧換気によるもの
・ 皮膚トラブルによるもの
・ 精神的ストレスによるもの
⑨上記以外にも予見不可能な合併症・偶発症が生じる可能性がある
6.人工呼吸器装着中のモニタリング
NPPV 装着中は、パルスオキシメーターにより酸素飽和度(SpO2)や心拍数(HR)のモ
ニタリングを行います。
7.病状の変化が生じ、気管内挿管や気管切開等の侵襲的処置が必要な場合には、再度ご
100
家族と相談させていただきます。
何かご不明な点がありましたら、担当医にご相談ください。
独立行政法人国立病院機構
○○
病院
担当医
同席者
101
(別紙)
人工呼吸器不具合情報共有システム運用要領
1.目的
・人工呼吸器(「呼吸補助装置」を含む。以下同じ。)の不具合情報を、国立病院
機構全病院で迅速に共有するシステムを運用することで、患者の人工呼吸管理
に係るリスクを低減させ 、患者の療養上の安全を高めていくことを目的とする 。
2.報告内容
・本システムで報告を求める情報は、人工呼吸器の機械的な不具合情報とする。
従って、人工呼吸器の使用時における人為的ミスから生じた事故や人工呼吸器
装着患者へのケアの最中の事故等については、これまでどおり「独立行政法人
国立病院機構における医療安全管理のための指針」に基づく医療事故の報告体
制の中で対応する。
〔報告内容の例〕
画面表示の消失、蛇管端部の亀裂、アラーム故障、換気動作停止、ACアダプター
の不良 等
3.具体的報告事項
・具体的報告事項は、①メーカー名、②機種名、③購入年月(使用期間 )、④不
具合の内容、⑤不具合が発生した時の使用状況、等とし、別添様式による。
4.報告担当者
・各病院の報告担当者は、医療機器保守管理責任者又は臨床工学技士とする。な
お、報告担当者による機構本部への報告は、院長並びに医療安全管理室長の確
認を経た上で行うものとする。
5.報告時期及び報告先等
・各病院は人工呼吸器に係る不具合発見後、可及的速やかに国立病院機構本部医
療部サービス・安全課まで、HOSPnetを通じて報告を行う。
6.不具合情報の機構各病院への情報提供等
・機構本部は、病院から報告された不具合情報について 、「人工呼吸器の取扱い
等に関する専門委員会」委員等の協力を得て、当該機種全般での発生可能性等
専門的観点からの評価を行った上で、速やかに機構全病院に情報提供を行う。
その際、病院名や報告情報にある患者のプライバシー等に関する情報について
は削除する。
・また、不具合の内容等を踏まえ、必要に応じて業界団体や製造業者等に対して
も、機構本部から情報提供を行う。
102
(別添)
人 工 呼 吸 器 不 具 合 情 報 報 告 書
病院名
①発生(発見)日時
平成
年
月
日
時頃
②製造業者又は総代
理店
③機種名
④購入年月日
昭和・平成
年
月
日
使用期間:(
⑤リーズ年月日
昭和・平成
年
月
日~昭和・平成
使用期間:(
⑥不具合の内容
⑦発生時の状況
⑧患者への影響
有・無
※「有」の場合は、以下にその内容
103
)年(
年
月
)年(
)ヶ月
日
)ヶ月
平成20年度 医療事故報告の概要
1.医療事故別の発生状況
〔事故分類別報告件数〕
分
平成20年度
類
件数(a)
割合
平成19年度
件数(b)
割合
a-b
460
45.8%
224
33.1%
236
82
8.2%
100
14.8%
△ 18
6
0.6%
16
2.4%
△ 10
4 異物遺残
11
1.1%
15
2.2%
△4
5 薬の過剰投与や誤用等薬剤に関わる事故
35
3.5%
26
3.8%
9
6 手術等実施部位の間違い
3
0.3%
5
0.7%
△2
7 患者の間違い
1
0.1%
3
0.4%
△2
8 人工呼吸管理に関わる事故
8
0.8%
27
4.0%
△ 19
9 誤嚥
26
2.6%
22
3.2%
4
10 問題行動(自殺企図、離院等)
39
3.9%
39
5.8%
11 穿刺・穿孔や臓器損傷等
44
4.4%
71
10.5%
△ 27
289
28.8%
129
19.1%
160
1,004
100.0%
677
100.0%
327
1 転倒・転落
2 介助中の骨折(疑いを含む)や入浴中の事故等
3 経管栄養チューブ等の誤挿入
12 その他
合 計
〔病院類型別報告件数〕
平成20年度
区 分
件数(a)
割合
平成19年度
件数(b)
割合
a-b
204
20.3%
125
18.5%
79
139
13.8%
79
11.7%
60
141
14.0%
97
14.3%
44
484
48.2%
301
44.5%
183
一般病床中心
191
19.0%
139
20.5%
52
障害者医療中心
旧
療 精神医療中心
養 結核医療中心
所
その他
154
15.3%
127
18.8%
27
61
6.1%
59
8.7%
2
29
2.9%
11
1.6%
18
85
8.5%
40
5.9%
45
520
51.8%
376
55.5%
144
1,004
100.0%
677
100.0%
327
500床以上
旧 350~499床
病
院 349床以下
計
計
合 計
※病院類型とは、独立行政法人移行前の旧国立病院・旧国立療養所を病床種別及び主な疾病種別に類型化したものである。
104
2.病院類型別・事故分類別報告(発生)状況
(単位:件)
〔病院類型別・事故分類別報告(発生)状況〕
区 分
病院数
15
86
8
17
76
2
24
62
56
一般
障害者
500以上
旧 350~499
病
院 349以下
計
旧 精神
療
養
所 結核
その他
計
合
計
分類
10
分類
11
分類
12
計
1
4
25
69
204
3
4
5
5
30
139
1
3
6
9
39
141
4
8
15
39
138
484
分類1 分類2 分類3 分類4 分類5 分類6 分類7 分類8 分類9
9
2
7
6
1
10
1
10
224
20
8
25
19
88
19
1
2
5
1
6
3
2
64
191
37
43
33
2
1
4
3
9
6
1
52
154
13
29
4
3
9
14
61
4
19
17
57
6
3
90
236
62
6
3
10
146
460
82
6
11
35
3
1
1
3
3
1
6
29
3
1
15
85
1
4
18
24
5
151
520
1
8
26
39
44
289
1,004
(単位:件)
〔病院類型別・事故分類別・100床当たり報告(発生)状況〕 ※「(報告[発生]件数÷運営病床数)×100床」
区 分
500以上
旧 350~499
病
院 349以下
計
一般
障害者
旧 精神
療
養
所 結核
その他
計
合
(注)
計
濃い網掛け
病床数
分類
10
分類
11
分類
12
計
0.01
0.04
0.27
0.73
2.17
0.04
0.06
0.07
0.07
0.42
1.93
0.01
0.04
0.09
0.13
0.56
2.01
0.02
0.03
0.06
0.17
0.59
2.05
分類1 分類2 分類3 分類4 分類5 分類6 分類7 分類8 分類9
9,388
0.92
0.09
0.10
0.02
7,187
1.06
0.03
0.10
0.08
0.01
7,010
0.88
0.14
0.01
0.14
23,585
0.95
0.08
0.03
0.11
6,885
1.28
0.28
0.01
0.03
0.07
0.01
0.09
0.04
0.03
0.93
2.77
11,144
0.39
0.30
0.02
0.01
0.04
0.03
0.08
0.05
0.01
0.47
1.38
4,015
0.72
0.10
0.07
0.22
0.35
1.52
1,867
1.02
5,952
0.96
0.10
0.05
29,863
0.79
0.21
0.02
0.01
0.03
53,448
0.86
0.15
0.01
0.02
0.07
0.01
0.02
0.02
0.01
0.16
0.05
0.32
1.55
0.05
0.02
0.25
1.43
0.00
0.01
0.06
0.08
0.02
0.51
1.74
0.00
0.01
0.05
0.07
0.08
0.54
1.88
は、事故分類毎に最も発生件数が多かった病院累計である。また、病床数は、運営病床数である。
105
3.患者年齢内訳
《 全 体 》
0~9歳
10代 20代
30代
40代 50代
60代
70代
80代
90歳~
計
42
25
28
62
77
92
147
259
222
50
1,004
4.2%
2.5%
2.8%
6.2%
7.7%
9.2%
14.6%
25.8%
22.1%
5.0%
100.0%
《(再掲)転倒・転落》
0~9歳
10代 20代
30代
40代 50代
60代
70代
80代
90歳~
計
6
2
8
7
14
29
63
163
143
25
460
1.3%
0.4%
1.7%
1.5%
3.0%
6.3%
13.7%
35.4%
31.1%
5.4%
100.0%
〔患者年齢内訳〕
〔患者年齢内訳(転倒・転落/再掲)〕
20歳未満
2%
20歳未満
7%
20~49歳
6%
20~49歳
16%
70歳以上
53%
50~69歳
20%
50~69歳
24%
70歳以上
72%
4.患者影響レベルによる整理
影響レベル
件 数
0
1
2
3a
3b
4
5
計
4
7
12
860
48
73
1,004
106
5.事故発生時間内訳
深夜帯
日勤帯
準夜帯
時 間 帯
0~1
2~3
4~5
6~7
8~9
72
45
57
86
79
4.5%
5.7%
8.6%
32
47
57
発生時間帯内訳
割 合(%) 7.2%
47
転倒・転落(再掲)
144
73
116
94
7.9% 14.3% 7.3% 11.6% 9.4%
41
不明
計
10~11 12~13 14~15 16~17 18~19 20~21 22~23
49
19
割 合(%) 10.2% 7.0% 10.2% 12.4% 8.9% 10.7% 4.1%
〔日勤・夜勤帯別発生状況(全体)〕
56
56
63
63
1,004
5.6%
5.6%
6.3%
6.3%
100.0%
27
28
24
37
44
8
460
5.9%
6.1%
5.2%
8.0%
9.6%
1.7%
100.0%
〔日勤・夜勤帯別発生状況(転倒・転落/再掲)〕
不明
2%
不明
6%
深夜帯
40%
深夜帯
26%
日勤帯
35%
日勤帯
50%
準夜帯
18%
準夜帯
23%
107
平成20年度の医療安全対策への取組み
医療事故報告の概要
『警鐘的事例』
平成20年4月
MRI検査における危険性について
平成20年5月
嚥下における危険性について
平成20年6月
輸血検査における危険性について
平成20年7月
原因不明の骨折について
平成20年8月
輸液による血液外漏出皮膚障害について
平成20年10月
胃ろう造設チューブ誤挿入により死亡事例等
について
平成20年12月
リハビリテーション中の事故(転倒)について
108
( 1 ) M R I 検 査 に お け る 危 険 性 に つ い て 平 成 20年 4月
MRI検査については現在全国的に普及しており一般的にも知られている検査
の一つとなっている。
多くの施設では放射線科に設置され検査を行っている。そのためか、放射線を使
っていないにもかかわらず放射線検査と思われている方も多い。
磁石を使用していることから磁性体(金属製のもの)の持込には厳重な注意が
必要なのは周知の如くであるが、いまだにMRI検査室内に磁性体を持ち込んで
装置に吸着させてしまう事例が散見される。幸いにもその多くは患者への重大な
被害はなく、19年に機構本部に報告のあった700件近い事例の中で、MRI
検 査 室 で の 事 例 は 1件 ( レ ベ ル 0 ) で あ っ た 。 今 回 は こ の 事 例 と 、 も う 1 件 3aで
あるが特異的な事例が発生したので警鐘的事例として報告する。
[事 例 1 : 酸 素 ボ ン ベ の 吸 着 ]
(1)発生時の状況
救 急 外 来 か ら M R I 室 に 、 救 急 外 来 の 酸 素 ボ ン ベ 付 ス ト レ ッ チ ャ ー (一 般 ス
ト レ ッ チ ャ ー )で 患 者 を 搬 送 し 、 M R I 前 室 に て 患 者 を M R I 専 用 の ス ト レ ッ
チャーに乗せ、MRI検査室に移送し撮影台に移した。その後、MRI用スト
レッチャーは検査室から出し格納場所に置いた。担当医師は検査終了後、技師
の指示なしに一般ストレッチャーをMRI室に持ち込み、酸素ボンベをMRI
本体に吸着させてしまった。酸素ボンベはMRI本体下部に吸着したため、患
者が受傷することはなかった。
(2)背景及び要因
看 護 師 が M R I 専 用 ス ト レ ッ チ ャ ー 専 用 格 納 場 所 に 戻 し た た め 、 医 師 は MRI
前室にある一般ストレッチャーしか目にとまらなかったと思われる。また医師
は患者が意識消失のため容態が気になり、検査終了後少しでも早く退出させて
患者対応したかったものと思われる。
(3)今後の防止策
①マニュアルとおり技師がドアを開けるまで入室させないこと。
②MRI専用ストレッチャーを検査の妨げにならなければ、検査室の中に置く
こと。
◆ 幸 運 に も 患 者 に 害 が な か っ た が 、一 歩 間 違 え ば 重 大 な 事 故 に な る と こ ろ で あ る 。
◆重大な事故事例
1)酸素ボンベが患者の頭部を直撃し死亡させた事例
2)点滴架台、点滴装置、車いす吸引事例
3)ポケットに入れたハサミの吸引事例
109
4)清掃作業員による清掃用具(ポリッシャー、モップ)などを吸着事例
◆MRI吸着事故防止対策
とにかく「磁性体のものは持ち込まない!」を徹底
入室前に磁場吸引に関するチェックシートを用いて磁性体を持ち込まないよう
に入室者への周知徹底。
間違って磁性体のものを持ち込まないようにカラーテープを貼り付ける、色を
塗るなど、一目で違いがわかるようにする。
医療安全に関する研修等で定期的にMRIにおける事故防止について講演を行
い事故防止の徹底を図る。
[事 例 2 : レ ッ グ ウ ェ イ ト の 吸 着 ]
(1)発生時の状況
MRI検査に際し診療放射線技師により、患者に金属類を外していただくよ
う入室チェックが行われた。両足首にレッグウェイトを巻いていたが歩行のた
めに必要との事から装着したまま検査室に入室、検査用寝台上にて外す事にし
た。レッグウェイトの留め金を確認したがプラスチック製だったことと砂のう
で問題はないと考え検査可能と判断した。患者位置合わせのため寝台を移動し
た直後にレッグウェイトが左足首に巻かれた状態でMRI本体の右斜め上に吸
着、右足首のレッグウェイトは外れ左足下に吸着した状態となった。
担 当 技 師 が 離 脱 を 試 み る が 外 れ な い た め 他 の 技 師 に 応 援 要 請 し 4人 で 離 脱 を
試 み る が 外 れ な い 状 況 が 10程 度 続 い た 。 そ の 後 、 緊 急 磁 場 停 止 を 決 断 し 、 ク エ
注
ンチ に備え患者に酸素マスクを装着しドアを全開にして緊急磁場停止を行っ
た。その結果、左足首レッグウェイトは離脱したが、左足打撲と診断された。
(2)背景及び要因
検査室入室前に入室チェックを行っていたが、砂のうは金属ではないだろう
思い、レッグウェイトをはずしてもらわなかった。
また緊急磁場停止の判断に時間がかかったため、長時間患者を磁場に吸着さ
せた状態になった。
(3)今後の防止策
①患者への啓発(禁忌・注意とされる磁性体の含有されている製品を示す)
②入室前のチェック体制の強化
③金属探知器による確認の徹底
④磁場発生中の緊急体制の整備
⑤緊急磁場停止の対応マニュアル作成
⑥MRIの注意点と緊急対応についての勉強会の実施
注)クエンチ:最近の多くのMRI装置は超伝導磁石を使用しているが、今回の
ように緊急磁場停止等で超伝導を停止することにより流れていた大電流のエ
ネルギーが熱に変換され、ヘリウムガスが膨張し噴出する現象をいう。
110
◆この事例の大きな原因として考えられることは、レッグウェイトは砂のうと思
い込み、中が金属製であるとの認識がなかったことである。現在の砂のうは砂
製 だ け で は な く 細 か い 金 属 球 が 入 っ て い る も の が 多 く な っ て い る 。砂 鉄 、鉄 球 、
鉛球と様々である。あるレッグウェイトをX線撮影してみたところX線吸収の
高い物質であることが証明され、金属探知機での検査でも反応があった。今ま
で砂と思っていたものも外見からでは判断がつかなくなっているので、材質が
不明のものはMRIに用意してある金属探知機にて確認をすることが必要であ
る。今回は打撲であったがこれも場合によっては脱臼、骨折、裂傷等の被害も
想定される。
◆禁忌・注意とされる磁性体の含有されている製品
①心臓ペースメーカ
②入歯、刺青等
③カラーコンタクトレンズ(酸化鉄含有)
④ファンデーション、マスカラ、ルージュ等化粧品(酸化鉄含有)
⑤使い捨てカイロ(検査による熱感があり火傷のおそれと検査磁場にか
なり影響を及ぼす)
⑥その他
普段あまり出入りをしない医師、看護師等のスタッフが所持している金
属 類 「ホ ー ロ ー 製 の ト レ イ 」
以上のように磁石を利用しているという特殊性からMRIにおけるインシデ
ン ト ・ 医 療 事 故 の 多 く は 磁 性 体 の 吸 着 に よ る も の で あ り 、そ の 原 因 は「 う っ か り 」
や「思い込み」による。あるメーカーによると特に1.5テスラ以上の装置での
報告が多い。このため特に1.5テスラ未満から1.5テスラの装置への更新を
した施設での発生率が高くなるという。今まで大丈夫だったからという経験が事
故を招く恐れがあるので要注意である。
さて今回のように緊急磁場停止しその後再起動した場合の物理的・経済的な影
響については医療安全とは異なるせいかあまり話題とされないことが多いが、実
際には装置破損、検査停止、修理およびヘリウムガスの補充など、病院にとって
も大きな負担となる。装置修理がない場合でもその磁場の復旧には2~3日かか
り、またヘリウムガスの補充はほぼ全量の1,500~2,000リットル程度
必要となる。かかる費用はケースによるが数百万円と見込まれる。
とにかくMRIは磁石を使用しているため常に磁場が発生しているということ
を念頭におき、医療安全にご尽力いただきたい。
111
(2)嚥下における危険性について
平 成 20年 5月
機構本部に報告のあった嚥下に関する事故事例は、平成19年度22件であっ
た。内容を分析してみるとガーゼの誤嚥、麻酔処置中や入浴中の嘔吐等による窒
息などを除くと、22件中17件(77%)に食事摂取が関わっていた。
食事が関わっていた嚥下における危険性を分析すると、次の3つのポイントお
よびキーワードが浮かび上がってきた。
①高齢者で嚥下障害を認識していたにも関わらず、詰まらせてしまった窒息
事例5件
(キーワード:今までは大きな問題なく摂取していた、患者の希望を優先し嚥
下評価が希薄となった)
②精神科領域において、突然にパンやドーナッツを詰まらせたことによる窒息
事例4件
(キーワード:噛まずに飲み込む、急いで食べる)
③嚥下障害は認識していたが、家族の差し入れで、詰まらせてしまった窒息事
例2件
(キーワード:家族が嚥下障害について理解していなかった)
事例1:高齢者で嚥下障害を認識していたにも関わらず、詰まらせてしまった
窒息事例
【キーワード】今までは大きな問題なく摂取していた、患者の希望を
優先し嚥下評価が希薄となった
(1)発生時の状況
85歳男性、入院前は老人介護施設に入所。介護施設では妻が昼食を食事介
助し、施設職員の介助による朝・夕食は拒否する傾向であった。老人介護施設
では「トロミ茶」を誤嚥なく摂取できていた。病院に入院後夕食を1割程度摂
取、誤嚥なく摂取状況に問題はなかった。翌日、朝・昼食は食事拒否し摂取し
なかったが、夕食は妻の食事介助にて食事摂取。その途中で「茶碗蒸し」で誤
嚥し、窒息症状となった。
(2)背景および要因
嚥下障害は認識していたが、介護施設で食事摂取できていたので、患者の摂
取状況の把握および嚥下評価を行わないままに、食事を開始した。また、病状
変 化 に よ る 嚥 下 状 態 、機 能 低 下 を 予 測 せ ず 、食 事 介 助 を 全 面 的 に 家 族 に 依 頼 し 、
摂取状況の観察ができていなかった。
(3)今後の防止策
①食事内容の変更がある時や食事の開始に際しては、看護師がまず食事介助
112
をして患者の嚥下状態を観察する。
② 窒 息 リ ス ク の 予 測 を 確 実 に 行 う た め に 誤 嚥 防 止 の チ ェ ッ ク 表( 嚥 下 評 価 表 )
を検討する。また、嚥下機能が不確実な場合は他科とも協力し、必要に応
じ て 嚥 下 造 影 (videofluoroscopic examination of swallowing:V F )検 査
等も検討する。
③嚥下評価の学習会を実施し、スタッフの知識向上に努める。
(4)警鐘的事例の特徴
類似の事例は他4件起こっており、これら事例の特徴は年齢層が76~98
歳の高齢者であり、嚥下障害を認識していたものの「今までは大きな問題なく
摂取していたので大丈夫だろう」というスタッフの意識がある。また、家族は
「何でも食べさせたい」という気持ちがあり、スタッフは聞き入れたいという
意識が優先されてしまいがちになる。家族の要望を出来るだけ聞き入れたいと
思い、嚥下機能の低下による危険性のリスク判定に影響を及ぼすこともあるの
で、対応には十分に注意したい。
事例2:精神科領域において、突然にパンやドーナツを詰まらせたことによる
窒息事例【キーワード】噛まずに飲み込む
急いで食べる
(1)発生時の状況
54歳男性、精神科に入院。歯の本数が少なく咀嚼が十分でないので、食事
は軟菜キザミ食(主食軟飯)で対応していたが、食事介助は必要なく、一人で
食 事 摂 取 、飲 水 と も に 問 題 な か っ た 。過 去 に も 誤 嚥 に よ る 肺 炎 等 の 病 歴 は な く 、
誤 嚥 リ ス ク も 低 か っ た 。1 5 時 の お や つ に 家 族 の 差 し 入 れ で 一 口 ド ー ナ ッ ツ( 直
径3cm程度)を看護師観察のもと摂取。水分もとるように看護師から声かけ
も行われていた。ココアが少し熱くて飲めないかと思いコップを取りに行くの
で、他の看護師に付き添いを依頼してその場を離れたが、最後の数個のドーナ
ッツを患者がほおばり、喉に詰まらせた。その後、院内規程どおり院内放送に
よるドクターコール後、院内携帯に連絡、精神科医から神経内科医への応援も
行われ救命処置を行ったが、喉につまったドーナッツの除去が困難を極め、気
管内挿管に時間を要した。
(2)背景および要因
水分の少ないドーナッツやパン類は喉に詰まらせやすい食材という認識は一
般 的 に 薄 い 。 ま た 、 精 神 科 患 者 で は 食 事 を 「 急 い で 食 べ る 」「 か ま ず に 飲 み 込
む」という習慣がみられる場合がある。
(3)今後の防止策
① 精 神 科 領 域 で は 嚥 下 障 害 が な く と も 、「 急 い で 食 べ る 」「 か ま ず に 飲 み 込
む」習慣のある患者も多いので、ドーナッツやパンなどのような水分含
有量の少ない食材は喉に詰まらせやすいという認識を持ち、十分な観察
113
をおこなう。
② 精神科領域も緊急の場合に備えて、救命処置の対応ができるよう技術訓
練をしておく。
(4)警鐘的事例の特徴
同様な精神科の窒息事例は他3件起こっており、重篤な身体的影響(影響レ
ベル4~5)を呈している。患者の年齢層は44~63歳と若い。詰まらせる
食材の特徴は、パン、カステラパン、ドーナッツというように、柔らかいが水
分 の 少 な い 食 材 が す べ て に 関 わ っ て い た 。 患 者 に 「 急 い で 食 べ る 」「 か ま ず に
飲み込む」という習慣があり、それに柔らかいが水分の少ない食材という条件
が揃った時、事件が起こりやすいので注意が必要である。
事例3:嚥下障害は認識していたが、家族の差し入れで、詰まらせてしまった
窒息事例
【キーワード】家族が嚥下障害について理解していなかった
(1)発生時の状況
54歳男性、神経内科(病名:多系統萎縮症
※1
)に入院中で食事は軟菜キザ
ミ食を摂取していた。間食として家族が持参していた「寒天菓子」を食べ誤嚥
し、窒息症状となった。
※1
多系統萎縮症とは、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、シャ
イドレージャー症候群という3つの病名の総称である。3つの病気は脳
の病理変化が共通していることから多系統萎縮症と呼ばれる。症状とし
て 動 作 緩 慢 ( 動 作 に 時 間 が か か る よ う に な る )、 筋 固 縮 ( 筋 肉 が か た く
なる)などが見られ、さらに線条体黒質変性症では振戦(ふるえ)症状
もある。
(2)背景および要因
① 嚥下障害は認識していたが、家族に対して誤嚥防止に対する指導が不足
していた。
② 家族が持ち込む間食について、嚥下障害があるにも関わらず内容確認し
ていなかった。
(3)今後の防止策
① 家族へのインフォームドコンセントを適切に行い、疾病により発生しや
すい嚥下障害と危険性について説明する。
② 食事形態の再検討をし、本人・家族への間食(誤嚥防止)について指導
する。
③ 見舞に訪れる人に対しての指導も必要で、誤嚥リスクの高い患者のベッ
ドサイドには注意喚起する表示をしたり、間食等を食べさせる場合は、
スタッフステーションに「声かけ」して頂くようにする。
114
(4)警鐘的事例の特徴
類似の事例は他1件起こっており、嚥下障害のある患者に対して、家族が何
気なくもってきた食べ物を患者が食べて誤嚥、窒息している。病院スタッフは
患者本人の誤嚥防止の環境は気をつけているが、家族の持ち込みという部分を
見逃してしまうことも多く、嚥下障害のある方には、患者本人と同時に家族へ
の 指 導 や 、食 べ さ せ る 際 の ス タ ッ フ へ の「 声 か け 」を 忘 れ な い よ う 注 意 し た い 。
(3)輸血検査における危険性について
平 成 20年 6月
輸 血 検 査 や 血 液 製 剤 管 理 は 、「 輸 血 療 法 の 実 施 に 関 す る 指 針 」 お よ び 「血 液 製
剤 の 使 用 指 針 」に 基 づ く 一 貫 し た 業 務 体 制 ( 一 元 管 理 ) に よ り 、 現 在 多 く の 施 設
で臨床検査技師が輸血業務全般(検査と製剤管理)を行っている。
これにより輸血の安全性は向上しているが、いまだに一人検査による血液型の
誤判定や情報の不達による輸血過誤等が発生している。
血液型誤判定による異型輸血が行われれば患者への重大な被害となる可能性が
ある。
こ こ 数 年 間 で 、国 立 病 院 機 構 に お い て 輸 血 関 連 で 3 b 以 上 の 事 例 報 告 は な い が 、
3a以下の事例については報告されている。
今後も国立病院機構において3b以上の重大事例が発生することのないよう、
以下に民間医療機関で発生した事例を警鐘的事例として紹介する。
事例1:照合不備による輸血実施(交差試験結果の確認漏れ)
(1)発生時の状況
輸血部門で交差試験の結果を入力せず、支給票を印刷し払い出しを行ってし
まった。読み合わせ時に、検査技師、看護師、医師ともに支給票に交差試験結
果が記入されていないことに気がつかないまま輸血を実施してしまった。
照合作業の全ての場面(①輸血部門での製剤出庫時の検査技師と看護師の読
み合わせ、②病棟での看護師同士の読み合わせ、③輸血実施時の医師と看護師
の読み合わせ時)において、交差試験結果の確認が行われなかった。
病棟を移動した際に、移動先の看護師がカルテへの結果未記入に気づき、輸
血担当技師に問い合わせをしたことにより発覚した。
交差適合試験は実施しており陰性であった。
(2)背景および要因
1)出庫時・病棟・ベットサイドでの確認漏れが生じた。
2)交差適合試験結果の入力がなくても支給票の印刷ができてしまうシステ
ムであった。
3)出庫時および病棟での照合やベッドサイドでの確認においても、交差適
115
合試験結果を確認し読み合わせるきちんとしたルールがなかった。
(3)防止対策
1)輸血部門
①製剤出庫時に、交差試験結果を含め支給票の内容読み上げ確認を確実に
行う。
②赤血球製剤については、交差適合試験結果の入力がなければ、支給票印
刷時に警告が出るシステムに変更する。
2)輸血実施時(医師・看護師等)
①病棟での確認時や輸血実施時、等の全ての場面において、交差試験結果
を含む、支給票内容の読み上げ確認作業(指さし呼称確認)を緊張感を
もって確実に実行する。
②上記の各場面における手順書(照合の手順書)をそれぞれ作成する。
事例2:情報の不達による製剤供給の遅れ
(1)発生時の状況
手 術 に 対 し 、 赤 血 球 製 剤 、 血 漿 製 剤 、 血 小 板 製 剤 そ れ ぞ れ 20単 位 ず つ オ ー ダ
ー が あ っ た 。A 技 師 は 前 日 主 治 医 と 打 ち 合 せ を し た 際 、血 小 板 製 剤 に 関 し て は 、
手術室から連絡が入った時点で日赤へ供給の要請(発注)を行うことで主治医
の了解を得た。
しかし、B技師が手術当日に手術部のスタッフと別件で連絡した際に、午後
の 日 赤 定 期 便 ( 14: 30着 ) で 血 小 板 製 剤 を 供 給 す る よ う 依 頼 さ れ 、 そ の 内 容 を
A 技 師 に 伝 達 し た が 、A 技 師 は「 連 絡 を も ら っ て か ら の 発 注 で 了 承 を 得 て い る 」
と主張し日赤へのその発注を制してしまった。
手 術 室 か ら 1 5 : 0 0 こ ろ 血 小 板 製 剤 の 出 庫 を 要 請 さ れ た 際 、「 午 後 定 期 便 で 供
給するよう依頼している」と指摘され、急きょ日赤へ発注し緊急走行にて供給
を 要 請 し 、 15:30こ ろ に 手 術 室 へ 出 庫 し 事 な き を 得 た 。
(2)背景および要因
情報の不達による発注遅れ、確認不足、連絡不足、指示不足。
PL法が施行されて以来、いったん日赤から供給されてしまえば、院内での流
用が出来ない場合は廃棄処分(特に血小板製剤は高額)となってしまうため、
手術時の使用・不使用の判断は製剤管理を行う輸血部門としては苦慮するとこ
ろである。
現実には、手術前に臨床の判断(使用・不使用など)が二転三転する場合も
多く、これら情報の確認が徹底していなかったことも要因としてあげられる。
(3)防止対策
1)輸血部門
①手術前(輸血前)に主治医や麻酔担当医等と十分な打合せを行い、輸血
116
部門スタッフに常に最新の情報が伝達共有できる体制とする。
②検査技師の思いこみによる判断がなされないよう、輸血部内ルールを確
立する。
③製剤の破棄をおそれるあまりに、必要な発注を控えるような意識をもた
ないようスタッフへの指導も必要である。
2)臨床医師
①輸血実施に関する最新情報を、輸血部へ伝達することを医師間ルールと
して徹底する。
②日赤から供給された製剤は、院内で流用できない場合は廃棄処分になっ
てしまうことを理解し、適正な発注に努めるよう、医局会議等で十分に
周知する必要がある。
事例3:臍帯血移植後の輸血製剤血液型誤り
(1)発生時の状況
当該病院で初めて臍帯血移植を行った患者。
患者の血液型はO型、ドナーの血液型はA型であるため、移植後に使用する血
液製剤は、赤血球製剤はO型、血小板やFFPはA型かAB型となる。
移植1日目の製剤申込書に、使用する製剤の血液型指示が記入されていなか
っ た た め 、( な ぜ そ の 時 点 で 主 治 医 に 確 認 し な か っ た の か 、 な ぜ 輸 血 が 実 施 さ
れたのかは不明)O型の血小板を出庫し輸血が行われた(1日目のため影響な
し )。
移植3日目に、主治医からの再度の依頼をうけ、輸血部門から同型(O型)
の血小板を出庫しようとしたところ、輸血部長が誤りに気づき、この時点で事
故が防げた。
(2)背景および要因
1)臨床医と輸血部門スタッフ(検査技師)間の、情報の共有および伝達に
問題点があった。
2)臍帯血移植に関する、輸血部門スタッフ(検査技師)の基礎的知識が未熟
であった。
3)ABO型違い移植時の院内ルールが構築されていなかった。
4)移植スケジュールと移植後の製剤選択について、臨床側と輸血部門との情
報共有が十分になされていなかった。
(3)防止対策
1)臨床医師
①主治医は輸血部門へ移植情報を確実に伝達する。
②主治医は血液製剤申込書に確実に必要事項を記載する。
2)輸血部門
117
①輸血部門が移植スケジュールを把握できる体制を整備する。
②移植スケジュールの伝達方法にまで踏み込んだABO型違い移植時のル
ールを臨床側と輸血部門とで協議し作成しておく。
③輸血部門で移植スケジュールを正確に把握出来るよう、日頃から臨床側
とのコミュニケーションを確立しておく。
④臍帯血移植等の比較的まれな事例については、輸血部門独自での判断は
行わず、必ずその都度主治医の具体的な指示を仰ぐ。
⑤部内勉強会等を活発に開き、日頃からこれら事例についての基礎的知識
や対応を十分に習得しておく。
( 4 ) 原 因 不 明 の 骨 折 に つ い て 平 成 20年 7月
平 成 20年 4月 か ら 6月 ま で の 3 ヶ 月 間 に 報 告 さ れ た 「 そ の 他 」 に 分 類 さ れ た 報 告
事 例 は 5 7 事 例 で あ っ た 。そ の 他 の 事 例 を 更 に 分 類 し て み る と「 原 因 不 明 の 骨 折 」
1 2 事 例 ( 21% )、「 手 術 ・ 検 査 に 関 連 し た 事 故 」 1 1 事 例 ( 19% )、「 体 内 に 挿
入 さ れ て ド レ ー ン ・ チ ュ ー ブ 等 に 関 連 し た 事 故 」 9 事 例 ( 16 % )、「 皮 膚 ・ 神 経
の 損 傷 」 7 事 例 ( 12% )、「 痙 攣 等 に よ る 転 倒 」 5 事 例 ( 9 % )、「 医 療 機 器 に よ
る 事 故 」 2 事 例 ( 4 % )、「 入 浴 中 の 事 故 」 2 事 例 ( 4 % )、「 暴 力 に よ る 事 故 」
2 事 例 ( 4 % )、「 そ の 他 」 7 事 例 ( 12% ) で あ っ た 。 な お 、「 原 因 不 明 の 骨 折 」
は、重症心身障害児病棟(重心病棟)で10例と最も多く発生していた。
重 症 心 身 障 害 児 ( 者 ) の 骨 折 は 、 自 力 運 動 が で き な い ( 運 動 量 が 少 な い )、 寝
て い る 生 活 が 長 い ( 抗 重 力 性 低 下 )、 栄 養 補 給 し て も 骨 塩 量 は 増 加 し な い 、 あ る
種の抗てんかん薬の影響による、骨塩量低下と骨萎縮がベースにある。この状況
に、筋肉の緊張異常や変形拘縮が加わり、些細な外力によって引き起こされるこ
とが多い。
骨 折 に よ っ て 、疼 痛 、不 眠 、骨 折 治 療 の ス ト レ ス や ト ラ ブ ル の 結 果 、体 調 不 良 、
意欲・食欲低下、生活リズムの乱れが生じ、さらなる緊張亢進、変形・拘縮、て
んかん発作頻発を招くことになる。
そこで、今回は、重症心身障害児(者)の「原因不明の骨折」の事例をとりあ
げ報告する。
1)具体的事例の紹介
重 症 心 身 障 害 児 病 棟 で 発 生 し た「 原 因 不 明 の 骨 折 」の 事 例 を 紹 介 す る 。な お 、
本事例は各病院からの報告をふまえて作成したものであるが、紹介にあたり分
りやすく簡略しているところもあり、報告された事例の内容と一致するもので
はない。
118
(1)末梢骨(手指骨、足指骨、中指骨)を骨折した事例(5例)
①おむつ交換時に右足小指側に暗紫色の腫脹を発見し、整形外科受診後骨折
と判明した事例
〔事故の背景・要因〕
○ベッド上で静かに坐位及び臥位の姿勢をとる患者で、原因が明確でない。
ただ、坐位・臥位の体位変換時やオムツ交換時に、右足指がベッド柵な
どにあたって骨折することも考えられる。
②入浴介助の際、左手の腫脹に気づき、整形外科受診し左示指基節骨骨折と
判明した事例
〔事故の背景・要因〕
○四つ這いで移動しているが4月の点滴治療を受けていた頃より筋力の低下
がみられていた。長時間の移動が困難となり、四つ這いでの移動の際に負
荷がかかり骨折したと考えられる。
③起坐をさせようとしてかけ布団を除去した際、左足底部の内出血と足背の
腫脹に気づき、整形外科受診し、左中足骨基部骨折と判明した事例
〔事故の背景・要因〕
○自立歩行可能であるが、時々ふらつきみられていた。骨折部位から判断し
て、立位時あるいは歩行時に足をひねったことが原因と考えられる。
④「手が痛い」と訴えていたが、発赤・腫脹もなく、動きにも問題がないた
め様子を見ていたが、再度の痛みの訴えと左手掌付け根の1㎝程度の内
出 血 と 腫 張 に よ り X-P撮 影 後 、 左 手 第 2 指 基 節 骨 骨 折 と 判 明 し た 事 例
〔事故の背景・要因〕
○患者はトイレを一人で使用することが可能であるが、以前から歩行時にふ
らつくことがあった。
○患者から疼痛の訴えがある時には観察をしていたが、腫脹等の外見上の変
化がなかったため、主治医に報告せず、処置が遅れた。
⑤入浴移送介助を行なっていた保育士が、左第5指から手背にかけて発赤、
内 出 血 、 腫 脹 、 熱 感 に 気 づ き 、 X-P撮 影 後 、 左 第 5 指 基 節 骨 骨 折 と 判 明 し
た事例
〔事故の背景・要因〕
○原因の特定は出来ない。しかし、突発的に出現する患者の不随意運動や体
動による患部の打撲や捻転、骨の脆弱性、骨疲労の可能性もある。
119
〔再発防止策〕
○起こり得る可能性が高い異常についてのアセスメントをおこない、観察項
目を明確にし、きめ細かな観察を行う。
○生活の場であるベッド上、ベッド周囲を常に整理整頓し、安全な環境を提
供する。
(ベッド柵にクッションとなるような素材のものを巻き付け、手指や足指が
あ た っ た 際 の 衝 撃 を 緩 和 し た り 、上 下 肢 が 柵 に 挟 ま ら な い よ う 工 夫 す る 。)
○寝具を除去する時は、上下肢や手指・足指がシーツ・包布等にからまって
いないか確認する。
○ 歩 行 状 態 、特 に 起 床 時 の ふ ら つ き の 有 無 、手 先 や 足 先 の 可 動 状 態 を 観 察 し 、
起こり得る危険性について明確にし、介助方法について検討を重ねる。
○病状悪化から回復した時には、筋力低下が起きていることを考慮してアセ
スメントを行い、徐々に日常生活動作を拡大していく。
○疼痛など患者の訴えが持続する時は、外観上の変化が認められなくても医
師・看護師に情報提供し、できるだけ速やかに対処できるようにする。
(2)大腿骨、上腕骨を骨折している事例(5事例)
①入浴のため衣類を脱がせ入浴用のストレッチャーに移動する際、右肩から
右上肢にかけての熱感、腫脹、皮下出血に気づき整形外科受診後、右上
腕骨頸部骨折と判明した事例
〔事故の背景・要因〕
○骨粗鬆症及び四肢関節の拘縮・変形等があり、日常生活援助には細心の注
意を払うように計画していた。特に右下肢関節の拘縮・変形が強度であっ
たため、注意が右下肢に集中し、右上肢への注意力が欠けていた可能性が
ある。
○看護計画に右側臥位角度20度以内であることを明示しておらず、右股関
節の内転拘縮に加え右膝関節拘縮、右上肢股関節拘縮のため、右側臥位で
の右肩、右上肢へ加重な負荷がかかった可能性がある。
○体位交換は2人で実施すること、必ず両手を患者さんの背中に回して行う
等の、手順が徹底されていなかった可能性がある。
○被りタイプの着衣であったことから着脱介助時に無理な外力が加わった可
能性がある。
○当日の朝、笑顔がないことに気づいたものの、苦痛表情は認めなかったた
めに、全身状態の観察が遅れた。
②仰臥位から右側臥位に体位変換を行なう時、左大腿中央から下腿中央にか
け て 熱 感 と 腫 脹 、 皮 膚 変 色 に 気 づ き X-P撮 影 後 、 左 大 腿 骨 骨 折 と 判 明 し た
事例
120
〔事故の背景・要因〕
○どの時点で骨折したか不明であるが、ベッド上でのケアによるものと推
測される。
○ 二 人 で 行 な う べ き オ ム ツ 交 換 や 体 位 変 換 を 1人 で 実 施 し て い る こ と が あ っ
た。
○関節拘縮が強く、骨折しやすい。
○ ベ ッ ド 上 で の 足 浴 時 、足 部 を 挙 上 し た と き に 負 荷 が か か っ た 可 能 性 も あ る 。
③PTを含めたリハビリカンファレンスにて、左下肢短縮、左股関節内旋位
が あ り 脱 臼 の 可 能 性 が あ る と 指 摘 さ れ X-P撮 影 後 、 左 大 腿 骨 頸 部 骨 折 と 判
明した事例
〔事故の背景・要因〕
○関係職員は歩行しなくなった理由を筋力低下のせいと思いこんでいたため
発見が遅れた。
○骨密度が低く骨折しやすい状況ではあったが、全く痛みに対する反応がな
い患者であり、発見が遅れた。
④ 入 浴 前 に 右 下 肢 の 異 常 を 発 見 、 X-P撮 影 後 に 右 大 腿 骨 遠 位 骨 折 と 判 明 し た 事
例
〔事故の背景・要因〕
○排泄介助(浣腸も含めて)時、股関節を一時的に強い力で開脚させた可能
性がある。
○脳出血後後遺症による右上下肢の不全麻痺があるにもかかわらず、強引な
力をかけた可能性がある。
○夜間等オムツ交換時に一人で実施する際、無理な力が膝にかけられていた
可能性がある。
⑤身支度をしている際に突然啼泣したため全身を観察した結果、右大腿部の皮
膚 が 突 起 し て い る こ と を 発 見 、 X-P撮 影 結 果 、 右 大 腿 骨 顆 上 骨 折 と 判 明 し た
事例
〔事故の背景・要因〕
○排便時、二人でおむつ交換をしていたが、左右臀部の清拭時や体位変換時
に外力が加わった可能性がある。
○面での支持でなく、点支持の可能性がある。
○硬直性発作が連日あり、その影響も考えられる。
○ボナロン投与中だが骨密度に変化は見られない。
121
〔再発防止策〕
○重心病棟における骨折防止マニュアルを作成し活用する。
○ 顔 の 表 情 や 笑 顔 の 有 無 を 含 め 、「 普 段 と 違 う 」 状 態 を 観 察 す る こ と の 重 要
性、違いをアセスメントすることの重要性を再認識することが出来るよう
に看護計画に記載する。
○整形外科医、主治医、理学療法士、看護師によるケースカンファレンスを
開催し、骨折リスクの見直し、対応策を検討する。
○体位変換やオムツ交換は、筋緊張や関節拘縮・変形の状態に応じて、必ず
2人で行う。
○ 骨 折 の リ ス ク の 高 い 患 者 の ベ ッ ド ネ ー ム に 印 を し て オ ム ツ 交 換 は 2人 で 行
なう。
○看護計画に体位変換時の角度を追加する。
○実施時方策について、ケアするスタッフ全員の共通理解と実施方法の周知
徹底を行なうため、ベッドサイドにケア時体位の絵図を貼付したり、面支
持で行う援助の実際を写真で表示するなど工夫する。
○ 体 位 変 換 す る と き は 、負 荷 が か か ら な い よ う な 支 え 方 を し て い る か ど う か 、
確認しながら実施する。
○骨折を予防する介助方法について、看護師・療養介護職・保育士に再確認
の学習会を開催し、援助時の実技を指導する。
○前開きの着衣等、関節の拘縮・変形に応じて、安全に日常生活の援助が実
施できる着衣の選択を検討する。
○日光浴及び血液循環促進の為のマッサージを行う。
○自動体位変換マットの導入を検討する。
○経管栄養や下剤服用時間を見直し、夜間の睡眠を妨げず、人員が少ない時
間帯に排便が無いようコントロールを行う。
○現在服用している薬剤を見直し、骨折のリスクに影響していないか検討す
る。
○苦痛や身体の変化についての異常を言わない患者に対しては、起こりえる
骨折についてアセスメントし、タイムリーに検査等を実施し早期発見に努
める。
重症心身障害児(者)は、健常者とは比較にならないほど、運動量が少なく、
幼少時から骨の形成が悪く、骨塩量も低いため、常に骨折の危険性をはらんでい
る。
今回の重症心身障害児(者)の原因不明の骨折事例を分析したことにより、日
常生活における援助場面において、実践すべき看護を再認識することができた。
重症心身障害児(者)に骨折が起こりやすいことを十分認識し、予防的な処置
と看護における細心の注意がより一層重要となり、骨折の発生を防ぐことにも繋
122
がると考える。
しかし、万が一骨折が起こった時には、適切な処置によって、その後に起こる
機能障害を最小限にとどめることが重要である。骨折が契機となって、重症心身
障 害 児( 者 )の 機 能 障 害 が さ ら に 重 度 に な る こ と は 、ぜ ひ 避 け な け れ ば な ら な い 。
重 症 心 身 障 害 児 ( 者 ) が 、 安 全 で 安 心 な 療 養 生 活 を 送 り 、「 生 命 の 質 」、「 生 活 の
質 」、「 人 生 の 質 」 を 高 め て い く こ と が で き る よ う 、 医 療 従 事 者 は 役 割 を 果 た し
ていく必要がある。
(5)輸液による血管外漏出皮膚障害について
平 成 20年 8月
機構本部に報告のあった輸液による血管外漏出皮膚障害の事故事例は、今年度
( 4 ~ 6 月 )に な っ て 3 例 発 生 し 、昨 年 度 に お い て は 7 例 の 事 故 が 発 生 し て い る 。
血管外漏出が起こると、激しい疼痛や、皮膚潰瘍による身体的、精神的影響から
QOLが低下し、感染を引き起こす原因になる。これら事故を未然に防止するう
えでも、医療従事者側の原因を考え、予防対策、血管漏出後の処置を適切に行う
ことが必要である。
1:医療従事者側の原因について
(1)薬剤の知識不足
薬剤によって、同じ部位で長期注入により血管の脆弱化がおこり血管痛、静
脈炎を発生しやすいものがある。また投与する量、濃度、速度の増加により血
管損傷や組織壊死につながるものもあり治療に難渋することになる。なお、高
張な薬剤、強アルカリ性薬物、抗がん剤、その他組織障害の強い薬剤の投与の
際には、血流量が多く薬剤がすぐに希釈される中心静脈からの投与や薬剤にあ
った溶解液で希釈し注入する。薬剤のもたらす作用、副作用を十分に理解して
おくことが必要であり使用血管の選択を誤ってはならない。特に高カロリー輸
液へと移行していく場合、末梢血管ルートからの輸液はブドウ糖濃度12%が
限 度 で あ り 、そ れ 以 上 の 濃 度 の 輸 液 は 中 心 静 脈 か ら 投 与 す る こ と が 必 要 で あ る 。
(2)患者状態の把握不足及び機器使用の理解不足
①
術 後 や 重 症 患 者 に お い て は 、様 々 な ル ー ト や チ ュ ー ブ 類 が 挿 入 さ れ て い る 。
患者に行われている治療を把握する上でもルート、チューブがどこに留置さ
れ て い る か 接 続 さ れ て い る か を 確 認 す る こ と が 大 切 で あ る 。小 児 や 意 識 障 害 、
理解力不足の患者は必要な安静が保たれずルートの自己抜去をすることがあ
るので注意を要する。必要時、シーネ固定(ギプス)を行い、患者の安全確
保に努めなければならないが、状況に応じて必要最低限の抑制を行う場合も
ある。また、小児や意識障害患者は薬物が血管外に漏出しても疼痛を訴える
ことが出来ないので発見が遅れると症状を悪化させる可能性があるため、頻
123
回 の 観 察 と 注 意 が 必 要 で あ る 。 ま た シ ー ネ 固 定 時 も 同 様 に 最 低 1日 1回 は 固 定
を解除し、刺入部位の観察を行うことも必要である。
②
通 常 の 落 差 に よ る( 輸 液 ポ ン プ を 使 用 し な い )点 滴 は 留 置 針 刺 入 部 の 状 態 、
点滴ボトルの高さ、患者の体位によりその速度が変化する。これを考慮しな
いで点滴速度にのみ注意して調整を行うと体位の変化で急速に滴下させてし
まうことがおこりうる。急速な滴下は血管痛を来たし、静脈炎や血管外漏出
を招くおそれがある。輸液ポンプを使用した場合には、注入量の設定は容易
で正確であるが器械を過信し観察を怠ってはならない。刺入部の漏れや三方
活栓の誤操作による薬液の漏出や逆流血液などがあってもポンプは作動し続
け る 。ア ラ ー ム が な れ ば 異 常 に 気 が 付 き 原 因 を 調 べ 対 応 す る こ と が 出 来 る が 、
アラームが鳴らなかった場合が問題である。アラームが鳴らなくてもトラブ
ル が 発 生 し て い る こ と も あ る 。 し た が っ て 使 用 す る ME機 器 の 利 点 欠 点 を 確 認
した上で使用することも大切である。
2:皮膚障害予防のためのチェックポイントについて
□針刺し部位足背又は手背の静脈である※1
□患者さんが高齢者や乳児である※2
□患者さんに片麻痺や頸椎損傷がある※3
□患者さんに意識障害がある※4
□患者さんが咳や嘔吐をしている※5
□就寝時も点滴している※6
□輸液ポンプを使用している※7
□他剤(抗がん剤、抗生物質など)を混注している※8
※1
足背又は手背の静脈は静脈炎や静脈血栓を生じやすく漏出のリスクが高い。
これらの部位は皮下組織が少なく漏れによって局部組織の圧力が高くなり血流
が阻害され壊死が生じやすい。
※2 高齢者や乳幼児の血管は弾力性が弱く、圧迫に弱いことから漏出しやすい。
また、漏出の訴えがはっきりしないことも少なくない。
※3
※4
麻痺側の血管や頸椎損傷などで筋肉の動きが傷害されている患者さんに点滴
を行った場合、浮腫をきたしやすく静脈炎や漏出などの痛みを感じないので症
状の悪化を起こしやすい。
自覚症状(痛み、腫れ)を訴えることが出来ないため発見が送れて大量の漏
出を招くおそれがある。
※5
留置針が血管内に正しく留置されていても咳、嘔吐などの動きで針先が血管
壁を貫通するおそれがある。
※6 寝返りなどの体動で留置針がずれて漏出を起こすおそれがあり、漏出の処置
が送れてしまう。
※7 漏れがあった場合でも簡単には注入が止まりません。ある程度の組織圧に達
※8
するまで輸液が継続されるので組織壊死が生じやすい。
抗 が ん 剤 ( 細 胞 毒 性 作 用 )、 抗 生 物 質 ( 静 脈 炎 惹 起 作 用 ) の 混 注 が あ っ た 場
合、これら薬剤の作用で漏出のリスクが高くなり、漏出した場合には、これら
薬剤による組織障害作用のおそれがある。
124
3:輸液の血管外漏出の具体的予防法について
1.輸液内容:輸液が血管外漏出した場合のことも考慮し、輸液に含まれる内
容について、事前に留意すべき点を把握すると共に、血管確保の際に刺入し
た針がきちんと固定されていることを確認する。
2.穿刺部位:①点滴注射では固定しやすく柔軟な留置針を使用する。②軟部
組織に乏しく直下に腱・神経などが存在する部位を穿刺しないようにする。
③下肢の静脈は静脈炎や深部静脈血栓を生じやすいので、下肢静脈からの点
滴には血管外漏出について特に注意が必要である。
3.血管確保:確実に血管内に針先が入っていることを確認する。点滴ボトル
を穿刺部位より低い位置にもっていき輸液ルート内への血液の逆流を確認す
ることで血管内の留置が確認できる。
4.観察:①透明テープなど使用することで漏出があった場合も分かるように
する。②輸液の投与中は漏出の徴候(発赤、紅斑、浸潤、腫脹)がないかど
うかを頻回に観察する。
4:血管外漏出皮膚障害が発生した場合の対応について
薬液の漏れが生じ、刺入部の発赤、疼痛、腫脹等が見られた場合は、状況に
応じて主治医へ連絡することが必要である。
具体的治療例としては、漏れた部位は温湿布を貼付し薬液の吸収を促進させた
後冷湿布に切替える。静脈炎の場合は0.1%リバノール液(消毒薬)にて熱
感が消失するまで冷湿布を貼付する。水疱形成や潰瘍形成組織液をきたした場
合は、外科的処置が必要な場合もある。水疱の場合は内容液を除去し嚢皮は保
護膜として残し消毒や軟膏処置を行う。潰瘍形成や組織液の場合は切開ドレナ
ージ(手術創や体腔に誘導管をおいて浸出液や血液などを体外へ持続的に除去
する方法)やデブリードメント(潰瘍や壊死組織を切除し他の組織への影響を
防ぐ外科処置)が必要となる場合もある。
~事例紹介~
事例1:抗悪性腫瘍剤であるタキソール注射液による血管外漏出の例
<事故発生の状況>
退 院 後 、 2 回 目 の 外 来 化 学 療 法 ( タ キ ソ ー ル 注 射 薬 の 投 与 ) を 実 施 た 際 、 11
:40医 師 が 血 管 確 保 し 点 滴 開 始 。 ト イ レ 歩 行 時 に は 刺 入 部 の 腫 が な い こ と を 確
認 し て い る 。 ト イ レ 歩 行 後 の 14:00頃 滴 下 が 緩 慢 な た め 護 師 が 刺 入 部 を 確 認 し
た と こ ろ 刺 入 部 周 囲 の 腫 脹 に 気 づ く 。 点 滴 残 り 9 m Lの と こ ろ で 点 滴 を 止 め 医
師 に 報 告 す る 。( 事 故 発 生 時 の 現 場 で の 看 護 の 人 数 は 2 3 人 、 内 科 処 置 室 で 点
滴を実施している患者は1名程度だた。すぐに皮膚科受診しデカドロン(ステ
125
ロ イ ド 薬 )の 皮 下 注 、ダ イ ア ー ト( ス テ ロ イ ド 薬 )軟 膏 塗 布 、ア ク リ ノ ー ル( 消
毒剤)湿布の処置をう。翌日診察し皮膚の潰瘍形成はなく、同じ処置を継続。
病 院 の 往 復 が 難 と の こ と で 皮 膚 の 状 態 把 握 の た め に 1週 間 入 院 管 理 と し て 皮 膚
科受診を継続した。
<事故の背景・原因>
①体動に影響されにくい前腕を選び行われていた。②刺入部の観察:点滴追加時の観察は
実施されたが、トイレ歩行後の観察をしていなかった。③外来看護師の業務:採血処置
をしながらの化学療法となっている。
<病院が実施した防止対策>
①点滴追加時、動作後の刺入部の観察を実施する。
②化学療法担当の看護師を割り当て観察が強化される業務分担とした。
<さらなる具体的防止対策>
○血管壁を刺激する薬剤の多い抗がん剤、炎症性薬剤、高アルカリ製剤、高浸透圧製剤等
がこれにあたることを事前に認識しておくことである。
○皮膚障害が生じやすい医薬品のリストアップを行う。具体的作成方法は、医薬品添付文
書が集約されているJAPIC(日本医薬情報センター)の医療用医薬品集CD-ROM
を活用し、
「適用上の注意」
、
「投与時」
、
「血管外漏れ」をキーワードとして薬剤検索し、
『 薬 液 が 漏 れ る と 皮 膚 障 害 を 起 こ し や す い 薬 剤 』 を 抽 出 を 行 い 、「 当 該 医 薬
品リスト」を作成すること。病棟担当薬剤師は、このリストを基に、各病棟
のリスクマネージャーと連携し、診療科毎の「薬液が漏れると皮膚障害を引
き起こすリスト」を作成し、薬剤情報の共有化を図ることが必要である。ま
た、薬剤科医薬品情報室は、各病棟のリスクマネージャーへ、これら薬剤に
係る情報発信を定期的に行うことも必要である。
○患者には投与前に、違和感や疼痛等が出現した場合にはできるだけ早く知らせるように
患者に対する教育を十分に行うことが必要である。
○固定部の確認を容易にすることである。ルートを確保した部位を不透明なテープあるい
は脱脂綿で覆ってしまうとルート確保部位の状態を確保することが困難となり、漏出の発見が
遅れてしまう。このため、ルート確保部位を固定する必要がある場合には、透明なテープを用いる。
○表在静脈が萎縮している場合は、事前に腕を温め血管を拡張させる。血管外漏出が最も
多いのは、室温が低い時だといわれている。患者の血管が細いためルートを確保するこ
とが難しい場合には、あらかじめ腕を温めて血管を拡張させておく。
○留置針を使用し、漏れのないことを確認する。まずは、留置針を血管内に確保し、注射
筒で吸引することにより血液の逆流があることを確認する。いきなり抗がん剤の点滴を
始めるのではなく、輸液のみを点滴して抵抗なく静脈内に点滴可能であることを確認す
る。
(参考)タキソール注射液:添付文書・抜粋
・適用上の注意
静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死を起こ
すことあるので、薬液が血管外に漏れないように投与すること。また、以前に
126
同反応を発現した注射部位とは異なる部位に本剤を再投与した場合、以前の注
射 部 位 に 同 反 応 を 再 発 す る と い っ た 、 い わ ゆ る 「 Recall現 象 」 が 認 め ら れ た と
の報告がある。
事例2:末梢静脈点滴注射による血管外漏出の例
<事故発生の状況>
気管支喘息、肺炎/消化管出血で入院しソルデム注と生食、ガスター注を輸
液ポンプ使用静脈留置針で左足関節に実施。朝点滴漏れがあり抜針し別のルー
ト を 確 保 。 16時 リ ネ ン 交 換 時 に 左 足 関 節 部 の 水 泡 と 白 色 壊 死 を 発 見 。 直 ち に 皮
膚科受診し軟膏処置を実施。
<事故の背景・要因>
①点滴を輸液ポンプで輸液したことで皮下組織に薬液が貯留し科学的な炎症を引き起こし
た。
②刺入部を絆創膏で固定しており肉眼での観察がしづらかった。
③深夜帯のため観察をしていない時間帯があった。
④交換時針を抜いたところ観察を実施していなかった。
⑤痛みを訴えられない患者に輸液ポンプを使用し、観察不足があった。
<病院が実施した防止対策>
①点滴刺入部の観察をしやすいよう透明フィルムを使用していく。
②点滴刺入部だけではなく患者の観察を行う。
③安易に輸液ポンプを使用しない。
<さらなる具体的防止対策>
○輸液の投与中は、漏出の徴候(発赤、紅斑、浸潤、腫脹)がないかどうかを
頻回に観察を行う体制づくりを構築することが必要である。
○ 輸 液 ポ ン プ を 使 用 す る 際 に は 、「 滴 下 数 」、「 接 続 部 の 漏 れ 」、「 テ ー プ の は が
れ 」、「 固 定 の 状 態 」、「 発 赤 」、「 腫 脹 」、「 液 漏 れ 」、「 残 量 」 な ど 観 察 項 目 を
具体的に定めて、誰でも同じレベルで観察可能な「点滴チェック票」の作成
を行い、確実な点滴が行われているか否かの観察を実施していくことが必要
である。
【参考・引用文献】
1 ) 中 村 雅 彦 ( 著 ) 医 療 事 故 防 止 マニュアル月 刊 ナーシング20(5):50-62,2000
2 ) 寺 守 洋 子 : ナ ー ス の た め の く す り 事 典 ヘルス出 版 19997
3 ) 角 田 司 : ナ ー ス ・ ド ク タ ー の た め の 注 射 法 マニュアル南 光 堂 2000
4 ) 篠 澤 洋 太 郎 ( 著 ): ナ ー ス の た め の 必 携 体 液 管 理 輸 液 マ ニ ュ ア ル エ キ ス パ ー
ト ナ ー ス 14(13):71-73 1998
5 ) 高 橋 章 子 ( 著 ): 最 新 基 本 手 技 マニュアルエキスパートナース17:94-96,1995
1 ) 石 原 和 之 ら : 抗 が ん 剤 の 血 管 外 漏 出 に よ る 障 害 と 予 防 、 最 新 医 学 、 41:2638
-2641,1986
127
( 6 ) 胃 ろ う 造 設 チ ュ ー ブ 誤 挿 入 に よ る 死 亡 事 例 等 に つ い て 平成20年10月
機構本部に報告のあった事故分類2の「経管栄養チューブ等の誤挿入」による
事 故 事 例 は 、 今 年 度 ( 4~ 10月 ) 3 例 、 昨 年 の 平 成 19年 度 に お い て は 9 例 の 事 故
が発生している。
全体の事故報告件数からすると多くないように思われる(今年度は全事故報告
件数の0.6%、平成19年度は2.9%)が、患者が死亡しているケースもあ
り、機構の各病院においても十分起こりうる、あるいは死亡には至らずとも実際
に起こっていることも考えられる胃瘻造設チューブ誤挿入により死亡した例を含
む 事 例 3 例( 同 一 病 院 で の 事 例 )を 、今 回 は 警 鐘 的 事 例 と し て 取 り 上 げ 報 告 す る 。
~事例紹介~
事例1.胃瘻チューブが胃外に脱落し腹腔内に留置されていたのに気付かず、経腸栄養剤を
注入し、腹腔内に漏れ死亡した例
<事故発生の状況>
7月 19日 :胃 瘻 造 設術 施 行 。
7月 20日 :胃 瘻 か らの 腹 部 造影 C T検 査 実 施 し 、異 常 所 見は 認 めず 。
7月 25日 :よ り 段 階的 に 白 湯・ 経 腸栄 養 剤 の 注 入を 開 始 した 。
7月 30日 : 5時 30分 過 ぎ に 胃 瘻 チ ュ ー ブ か ら A看 護 師 が 経 腸 栄 養 剤 ( 400mℓ ) を 注
入 し た。
(胃瘻チューブが胃内から脱落し腹腔内に留置されていた。原因は不明で、胃
から の 脱 落に も 気付 い て いな か っ た。)
7月 30日 : 9時 40分 外 科 医 師 が 腹 部 を 診 察 し 、 腹 部 膨 満 、 圧 痛 、 瘻 口 部 よ り の 腹
水様の浸出液を確認し、胃瘻チューブからの漏れを疑い、腹部CT検
査 を 行っ た 結果 、 腹 腔内 に 経 腸 栄養 剤 が 漏れ て い るこ と が 判明 し た。
7月 31日 : 9時 30分 呼 吸 状 態 が 悪 化 し 、 呼 吸 器 装 着 、 腹 膜 炎 の 増 悪 と 診 断 し 緊 急
手 術 を行 っ た( 10時 30分 ~ 11時 55分 )。
術 後 。 19時 に 突 然 心 停 止 を 認 め 、 蘇 生 を 行 い 一 時 的 に 回 復 し た が 、 22
時 26分心 停 止し 死 亡 を確 認 す る 。
<事故の背景・原因>
① 患者は低栄養状態で糖尿病合併の患者であった。胃瘻チューブの脱落につ
い て は 、 内 視 鏡 の 所 見 か ら 外 的 圧 力 に よ っ て 脱 落 し た 可 能 性 が 高 い 。( 医 療
者側によるものか、患者本人によるものかは不明)
② 当 日 ( 7 月 30日 ) の 緊 急 手 術 を 考 慮 し た が 患 者 の リ ス ク の 高 い こ と 、 腹 膜
炎の所見が乏しくバイタルが安定しており、内視鏡的に胃瘻チューブが再
128
挿入でき瘻孔からドレナージができていたことから手術を行わず保存的に
加療することとした。
③ 患 者 は 29日 23時 に 腹 痛 を 訴 え て い る が 、 B 看 護 師 は 胃 瘻 チ ュ ー ブ 挿 人 部 の
皮膚状態が悪くその痛みと判断した。痛
みについては、外科医師宅への電話報告・指示によるロキソニン細粒の注
入 に よ り 軽 減 し た 。 医 師 に よ る 腹 部 の 診 察 は し て い な い 。 30日 3時 30分 に
再 度 腹 痛 を 訴 え た が 、 A看 護 師 も 胃 瘻 チ ュ ー ブ 挿 入 部 の 痛 み と 判 断 し た 。 5
時 30分 過 ぎ に 、 腹 痛 の た め 再 度 、 ロ キ ソ ニ ン 細 粒 を 注 入 し , そ の 後 経 腸 栄
養 剤 を 注 入 し た 。 そ の 時 腹 痛 の 訴 え は な か っ た 。 A看 護 師 は 、 29日 日 勤 勤
務で、午前中に外科医師が患者を診察し異常がなかったと判断したことを
知っていた。胃瘻チューブの脱落について、看護師の認識として「あり得
ない」と思っていた。
7月30日の注入時、A看護師は経腸栄養剤の注入開始前に上腹部の気泡音の確認をして
異常がないと判断した。
<病院が実施した防止対策>
事故の検証(メデイカルシェーファーで分析)
メ ン バ ー : 外 科 医 長 、外 科 医 師 、内 科 医 師 、病 棟 看 護 師 全 員 参 加 、看 護 部 長 、
副看護部長、医療安全管理係長で行った。
問題点の抽出
・胃瘻造設術術後の確認事項が曖昧であった
・患者の痛みに対し手術後の痛みであり異常であるとの認識がなかった
・医師への情報伝達、指示命令系統が一本化されていない(休日であり、来
院医師、当直医師及び担当医師が関わった)
・事故発生後の連絡体制が決められた方法で稼働しなかった
・胃瘻についての病棟スタッフの知識が低かった(混合病棟であり、専門性
が確立しにくい)
上記問題について下記の対策を行った。
①胃瘻について研修会を開催講師:外科医長
対象:全看護師、他
内容:胃瘻手術前後の合併症、チューブ管理
②胃瘻栄養管理マニュアル作成
③ PEGの ク リ テ ィ カ ル パ ス 見 直 し
・ 修 正 項 目 : 術 後 当 日 の 達 成 項 目 を PEGか ら の 出 血 は 認 め な い
ストッパー位置確認場所を腹壁側から上端部に変更
・追加項目:疼痛時、外科医師に報告
発熱時の指示
・ストッパーの位置記入欄
・胃瘻開放の有無の指示
129
・ 観 察 項 目 に 腹 痛 の 有 無 、 PEGか ら の 漏 れ の 有 無
以後、トラブル無し
④看護方式の検討
・固定チームナッシングの強化(ベッドサイドでの情報交換、ダブル確認の
実施)
※複数で確認することで情報の共有と異常の早期発見に繋がった
⑤医療チームとの連携について考える
・休日における連絡方法・責任者を定めた
・マニュアル通り、事故発生後の連絡網に従い報告するように周知した
※情報が一本化され指示命令系統が明らかとなった
⑥事例検証後、病棟のスタッフ全員に事故の受け止め方、自己の行動の変化を具体的にレ
ポートし提出
・患者の訴えを聞き観察を行うことの重要性
・統一した方法で決められたことを守ること → マニュアル作成とマニュアルの周知、教育
・責任ある行動をとること → チェックリストによる確認の厳守
事例2.在宅訪問の際の胃瘻チューブ交換時、誤ってチューブが腹膜前脂肪組織内に留置され
ていたのに気付かず、経腸栄養剤を注入し、腹腔内に漏れ死亡した例
<事故発生の状況>
10月 12日 午 後 1時 過 ぎ 、 在 宅 訪 問 で 主 治 医 が 胃 瘻 チ ュ ー ブ を 交 換 。 挿 入 後 エ ア
ー 確 認 をす る も 、い つ もと 変 わ り な かっ た 。
そ の後 、 家人 が 白 湯を 注 入 した が 、 問 題は な か った 。
13日 午 前 0時 前 、 夕 食 の 注 入 が 終 わ っ た こ ろ 、 頻 拍 、 発 熱 、 呼 吸 器 の ア ラ ー ム
な どの 異 常を 発 見 した 。
13日 午 前 0時 40分 救 急 車 に て 来 院 ( ショック状 態 で あ っ た )。 IVHルート確 保 後 、 C T
検 査を 行 い胃 瘻 チューブの誤 挿 入 と 診 断 した 。
緊 急 開 腹 手 術 を 実 施 し た ( 3時 か ら 5 時 45分 ま で )。 術 後 、 一 時 、 状 態 は
改 善 し た が 、 そ の 後 敗 血 症 性 ショック状 態 と な り 、 16時 ご ろ か ら 除 脈 と な り
心 停 止 し た 。 蘇 生 術 に よ り 一 時 心 拍 再 開 す る も 17時 15分 再 度 心 停 止 と な
り 、17時 52分 、 死 亡確 認 。
<事故の背景・要因>
患 者 は ● ● 病 院 に て 筋 萎 縮 性 側 索 硬 化 症 と 診 断 さ れ 、2006年 4月 11日 当 院 紹 介 。
同 年 6月 11日 よ り 7月 9日 ま で 、 内 視 鏡 的 胃 瘻 造 設 術 お よ び 鼻 マ ス ク 式 人 工 呼 吸
療法(NIPPV)導入目的にて入院。
入院中今後の方針決定のために、多職種によるインフォームドコンセントをお
こなった。患者は当初、在宅尊厳死を希望していたが、家族は強く生きること
130
を望んでおり、何度か話し合いの結果、悪化時は気管切開下人工呼吸を受ける
事を決心したため、在宅での緊急時の対応などの整備をおこなったうえで、在
宅NIPPVに移行した。
そ の 後 、 呼 吸 状 態 悪 化 に て 9月 7日 よ り 、 気 管 切 開 術 、 気 管 切 開 下 人 工 呼 吸 導
入 、在 宅 人 工 呼 吸 療 養 指 導 の 目 的 に て 入 院 。指 導 終 了 後 、院 内 24時 間 介 護 体 験 、
2泊 3日 試 験 外 泊 、 在 宅 関 係 者 会 議 を 経 て 、 12月 22日 、 在 宅 へ 移 行 と な る 。
在宅かかりつけ医を確保し、定期的訪問診療をおこなってもらうと同時に、
当 院 か ら は 2007年 2月 2日 か ら 月 1回 の 往 診 に て 人 工 呼 吸 管 理 。
状況のチェック、胃瘻交換を行っていた。
原疾患のため腹筋の萎縮が著しく、胃瘻の瘻孔が脆弱であった。
<病院が実施した防止対策>
①在宅での胃瘻交換は造影剤の使用による挿入確認が行えないため危険である
ことから、交換時来院してもらい造影剤の使用による挿入確認を行うように
決定した。
②胃瘻管理を行っている在宅患者は、訪問時、医師の腹部状態は必ず診察し、
異常の無いことを確認する。
③家族へ注入食開始前後の観察確認事項を指導(チェック表の記入)し、異常
時は注入食を中止し、直ちに病院に連絡するように説明しておく。
事例3.胃瘻チューブ交換後の位置確認ミスのため誤注入した例
<事故発生の状況>
15時 頃 、 胃 瘻 チ ュ ー ブ 交 換 の 介 助 を B看 護 師 と C看 護 師 が お こ な っ た が 、 主 治 医
に 挿 入チ ュ ー ブの 位 置 確認 実 施の 有 無 を し てい な か った 。
16時 40分 A看 護 師 ( 遅 出 看 護 師 ) は 、 胃 瘻 チ ュ ー ブ 交 換 し た こ と を 知 ら な か っ
た た め、 食 前 薬( ベ イ スン 1 錠) 10m l 注 入後 経 腸 栄養 剤 を接 続 し た。
16時 43分 B看 護 師 ( チ ュ ー ブ 交 換 し た の を 忘 れ て い た ) が 経 腸 栄 養 剤 注 入 を 止
め 、 食 後 薬 を 白 湯 15 m l で 溶 解 注 入 し 約 10m l 注 入 し た と こ ろ で 注 入 が う ま く
出 来 な か っ た た め 、 チ ュ ー ブ 交 換 し た こ と に 気 が つ き 注 入 を 中 止 し た 。 B看 護 師
は急ぎチューブ挿入後の位置確認の有無を主治医に確認したところ、まだ読影さ
れ て いな か っ た。
17時 頃 B 看 護 師 は 患 者 の 状 態 を 観 察 し た と こ ろ 、 顔面 紅 潮、 手 指 冷感 、 BP101/
72 P 97 SPO2 96% 意 識 レ ベ ル 低 下 は な し 。 し ん ど く な い か の 問 い に 対 し て 「 首
を 横 にふ っ た」。
17時 30分 主 治 医 が レ ン ト ゲ ン 読 影 の 結 果 、 造 影 が 鮮 明 で な い た め 、 腹 部 CT検 査
を 施 行し た 。 胃瘻 チ ュ ーブ が 腹腔 内 に 誤
挿入していることを確認し、内服薬と少量の経腸栄養剤を注入したことと共に報
告 し た。
131
胃瘻チューブを再挿入、末梢での輸液療法、保存的抗生剤の投与を開始し絶食
とした。その後、中心静脈栄養に切り替え、全身状態改善後、注入再開。事故発
生 前 の状 態 に 回復 し た 。
<事故の背景・要因>
多発性硬化症の進行期のため嚥下障害、中枢性無呼吸があり、胃瘻栄養で人工
呼吸管理下の患者。軽度認知症があり、簡単な質問に対する応答しか表出できな
い。
①B、C看護師は、胃瘻チューブ交換を実施したことを、チーム内に周知でき
ていなかった。
( A 看 護 師 は 胃 瘻 チ ュ ー ブ 交 換 し た こ と は 知 ら な か っ た 。)
②B、C看護師は、この患者はチューブ交換後の確認(レントゲン造影)は今
ま で し て お ら ず ( 各 主 治 医 に よ っ て 確 認 方 法 が 異 な っ て い た )、 今 回 か ら 胃
瘻チューブ挿入後の確認方法が変更になっていたことを忘れていた。
③外科については、患者の胃瘻チューブ挿入後の確認を複数人で実施し、担当
医から確認の連絡をすることとなっていた。しかし、内科においては、新し
く採用されたシステムのため、看護師が早期に確認する習慣ができていなか
った。事例1の発生前における胃瘻チューブ交換後の確認方法は決められて
おらず、各医師の指示にまかされていた。事例1発生後、造影剤使用による
レントゲン撮影にて確認を行うようにマニュアルとして統一されたが全職員
に浸透していなかった。
④ 受 持 ち は C 看 護 師 ( 新 卒 ) で あ っ た が 、 深 夜 勤 務 の た め B看 護 師 が 配 慮 し 介
助等を共に実施していたため、役割分担が曖昧であった。
<病院が実施した防止対策>
①安全な胃瘻チューブ交換方法について
・胃瘻造設術前・後についてはパスに従って指示・観察を行う
・定期的な胃瘻交換について
1)胃瘻チューブの種類(バンバー型・バルーン型)の長所、短所、交換期
間についてマニュアルに明記
2)胃瘻交換は主治医が実施。但し、挿入困難なケースや過去にチューブト
ラブルがあった患者については外科医師に依頼する
②胃瘻チューブ交換後の確認方法の院内統一について、各部署の責任者から再
度周知して認識を高める。
③胃瘻チューブ交換し確認が判明するまで胃瘻チューブに「胃瘻チューブ交換
中 注 入 禁 止 」ラ ベ ル を チ ュ ー ブ に つ け て お く 。ベ ッ ド サ イ ド に「 PEG交 換 中 」
のラベルを置く。
④遅出業務への情報には、PEG交換患者の記入表を作成し確認ができるよう
132
にする。
⑤業務内容の検討・分析
・遅出業務は、受持ち患者をもたず(個々の患者の情報収集をせず)機能的
に実践する業務役割となっている。このため、胃瘻交換の有無や患者の
状況などの情報は得られていない。このような業務担当者の注入実施は
危険であるため、注入実施者は受持ち看護師が行う。また、常にスタッ
フ間が情報交換を行いながら実践していく。
( 7 ) リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 中 の 事 故 (転 倒 )に つ い て
平 成 20年 12月
医療事故報告が増加する中、リハビリテーション部門においても医療の高度化
・リハビリテーション対象者の高齢化、その他の要因も加わり、現状に即したリ
スクマネジメントが求められてきている。
昨年8月に日本医療機能評価機構が発表した「医療事故情報収集等事業
平成
19年年報」によると、高齢者などのリハビリテーション中の事故が、全国55
8医療機関で平成16年10月から平成19年12月にかけて24件あるとい
う。同機構は、3年3ヶ月で24件(全事故件数の約0.6%)という数字を多
い と 判 断 し 、「 報 告 以 外 に も 相 当 数 の 事 故 が 起 き て い る と 思 わ れ る 。 予 防 可 能 な
ケースが多く、各医療機関は危険性の調査をして事故防止策を検討すべきだ」と
している。
では、国立病院機構本部に報告のあった事故の中で、リハビリテーション中の
事 故 は ど れ く ら い か あ る の か 。 と い う と 、「 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 」 と い う カ テ ゴ
リーで検索すると、平成19年度に発生した事例は2例(平成19年度医療事故
報 告 件 数 の 約 0 . 3 % )、 平 成 2 0 年 度 で は 今 の と こ ろ 1 件 で あ る 。( 平 成 2 0
年度医療事故報告件数の約0.14%)
リハビリテーションを行なう場合の特殊な事情として、身体にある程度の負荷
をかける必要があり、容態の急変や転倒の危険等、リスクマネジメントの重要が
増すということがあり、国立病院機構への3b以上の報告件数は少ないものの、
3a以下のヒヤリ・ハット事例は相当数あるものと思われ、再度注意を促すとい
う観点からも平成19年に発生した
例を含む事例2例(いずれも転倒)を、今回は警鐘的事例として取り上げ報告
する。
133
~事例紹介~
事例1.作業療法プログラム中の転倒事例
<事故発生の状況>
2月 27日
10時
ア ル コー ル 依 存症 、 肝 硬変 、 腰 痛症 の 患者
病 棟 ホー ル で スト レ ッ チ体 操 。
10時 10分
患者 13名 に作 業 療 法士 3名 、看 護師 3名 が付 き 添 い散 歩 に出 か け る。
散歩中、腰痛を訴え、他の患者より遅れて歩行、両手を膝に当て歩
行 して い た 。
10時 30分
前の め り に転 倒 す る。
10時 40分
車椅 子 で 病棟 に 戻 る。鼻腔 部 に 約1cmの 裂 傷あ り、前 額 部3× 1.5cm、
右 頬 部 3× 2cm、 鼻 下 か ら 上 口 唇 に か け て 出 血 を 伴 う 擦 過 傷 あ り 。
右膝下部軽度紫色を呈し、圧痛軽度あり。裂傷部消毒しステリー
ストリップ固定、ガーゼ保護。擦過傷消毒し、ガーゼ保護。右膝
下 は そ の ま ま 様 子 観 察 頭 部 CT撮 影 、 脳 内 出 血 な い が 、 鼻 骨 骨 折 あ
り。
2月 29日 近 医 (耳 鼻 科 )に て 、鼻 骨 骨 折 非 観血 的 整 復術 施 行。
<事故の背景・原因>
①散歩中、腰痛軽度訴えていたことから、歩行しにくい状況であった。
②また、腰痛に気をとられていたということも考えられる。
③腰部に手を当てた状態で歩行していたことにより、顔面の授傷となってしま
ったと思われる。
<病院が実施した防止対策>
①腰痛を訴え、歩行速度も遅かったことからそばに付き添うことが必要であっ
た。
②また、腰痛の程度により車椅子を持参しているので、無理をせず、車椅子も
考慮する。
③今回、腰に手を当てていたことにより、顔面を打撲してしまったので歩行時
の姿勢についても指導し、寒い季節は両手の自由度を上げるため手袋をつけ
てもらう(ない人には病院の軍手を使用してもらう)
<考察>
作業療法場面におけるリスクの特徴として、待ち時間や安静時も含めた全て
の場面で起こりうるものといことを再認識する必要がある。
また、そもそもリスクを抱えがちな状態の患者に対する訓練であるため、あら
かじめ想定しやすいリスクと、想定のしにくい偶発的なものが考えられるが、
思いこみや不注意などのリハビリテーション中の安全管理を怠らないようにす
るシステム作りも今後の課題となる。
134
事例2:歩行訓練後の転倒事故
<事故発生の状況>
10月7日: く も膜 下 出 血、 水 頭 症術 後 の 患者
作業療法中、近位監視下で歩行練習。ややふらつきがあったが、大
き く 崩 れ る こ と は な く 調 子 よ く 10分 ほ ど 歩 行 を 行 っ た 。 疲 労 の 訴 え
なし。歩行訓練後、作業療法士の見守りのもと車椅子に座ろうと、
フットレストを左足でまたぎ、右足でまたごうとしたとき、ふらつ
きあり。作業療法士が支えようとした時には、作業療法士の立ち位
置と反対側の右側へ転倒。右の臀部から地面に着地するような姿勢
で 倒れ た 。
X 線撮 影 の 結果 か ら大 腿 骨 頚部 骨 折 と診 断 さ れる 。
大 腿骨 頚 部 骨折 に 対し て の 手術 実 施 。
<事故の背景・要因>
患者の歩行時の姿勢が比較的よく、表面的な状態の良さにとらわれてしま
い、筋力低下、ややせっかちな性格、姿勢変換時に発生するリスク等に対す
る認識が低くなっていたと考えられる。
具 体 的 に は 、患 者 が 姿 勢 変 換 を 行 う 際 に 、見 守 り す る 医 療 者 の 立 ち 位 置 や 、
患者に対する声かけなど、適切な対応に欠ける部分が要因の一つとしてあげ
られる。
<病院が実施した防止対策>
①患者の十分な状態把握、適切な環境設定を行う。
②患者が姿勢を変える時にはリスクが増えることを、部署内で再確認する。
③病棟との連携を図り、情報を共有する。
<考察>
本人の持っている機能を把握して、リハビリ中の作業療法士の立つ位置も考慮して安全
にリハが進められるようにしなければならないということはいうまでもない事である。
<警鐘的事例の特徴>
リハビリテーションの特殊性は、高いリスクを負いながら、なし得る最大の身体的、精
神的、社会的、職業的、経済的 な能力を有するまでに回復させることを目指さなくては
ならないという点にある。
しかも、患者の状態は一様ではなく、本人のやる気を持たせながら、安全にリハビリを進
めていくためには、リハビリ 中の患者の疲労度、夜間の睡眠状態等の情報を考慮してそ
の日のリハビリを進めていくことは言うまでもない。
そのためにも、医師、病棟スタッフとの症状やリスクに関連する情報交換は密に取る必
要がある。
135
また、理学療法士、作業療法士等の職場は、ほとんど一人または二人の職場であり、職
場内でのリスクに関する情報交換や事故の要因分析等の検討や、リスクマネジメントの研
修受講が難しい環境である。理学療法士、作業療法士等の少数職員の職場における安全意
識を高めるための研修は、個人や職場の自主性に任せることではなく、施設全体として組
織的に取り組むことが重要である。
《参考》
日 本 医 療 機 能 評 価 機 構 「 医 療 事 故 情 報 収 集 等 事 業 平 成 19年 年 報 」 よ り
・リハビリテーションに関連した医療事故
平 成 19年 1月 1日 か ら 平 成 19年 12月 31日 の 間 に 報 告 さ れ た リ ハ ビ リ テ ー シ ョ
ン に 関 連 す る 事 例 5例 は す べ て 運 動 に よ る 骨 折 ・ 筋 断 裂 等 に 関 わ る 事 故 で あ っ
た。いずれも何らかの対策を講じていたが、患者が転倒した事例であった。
こ れ は 全 事 故 件 数 1266件 の 約 0.4% に あ た る 。 平 成 16年 10月 か ら 平 成 18年 12月
ま で に 起 こ っ た 19件 を 加 え 、 24件 が こ れ ま で に 機 構 に 報 告 さ れ た リ ハ ビ リ テ
ーションに関連した医療事故である。
136
医療事故情報収集等事業への報告状況について
※(財)日本医療機能評価機構公表の報告書より
1.機構病院における報告件数(平成16年10月~平成21年3月)
区 分
4~6月
7~9月
10~12月
平成16年度
(単位:件)
1~3月
計
国立病院機構が占める割合
51 (222)
71 (258)
122
(480)
25.5%
平成17年度
74 (308)
98 (273)
92 (275)
92 (330)
356 (1,186)
30.1%
平成18年度
79 (304)
158 (375)
129 (287)
108 (272)
474 (1,238)
38.3%
平成19年度
144 (309)
144 (303)
196 (383)
169 (286)
653 (1,281)
51%
平成20年度
128 (373)
212 (376)
219 (405)
263 (538)
822 (1,692)
48.6%
2,427 (5,877)
41.3%
合計
注1 ( )は報告義務対象医療機関全体の報告数である。
2.報告義務対象医療機関別の100床当り報告件数(平成16年10月~平成21年3月)
区 分
100床当り件数
報告件数
病床数
国立病院機構:145病院 国立大学法人:46病院
国立高度専門医療センター:8病院 ハンセン病療養所:13病院
5.50
(単位:件)
自治体立:11病院 学校法人:49病院 合計:272病院
4.54
3.82
0.76
2.29
2,427 (41%)
1,253 (21%)
287
(5%)
61
(1%)
169
53,448 (38%) 32,791 (23%)
5,222
(4%)
7,990
(6%)
7,364
4.92
4.17
1,680 (29%)
5,877
(5%) 34,158 (24%)
140,973
(3%)
注1 病床数について、国立病院機構は平成19年10月現在、他の病院は「04’病院要覧」からの病床数である。
注2 ( )は報告義務対象医療機関全体に対する割合である。
報告義務対象医療機関における報告件数の割合
国立病院機構
学校法人
29%
41%
自治体
3%
ハンセン病療養所
1%
NC
5%
国立大学法人
21%
137
Ⅲ
資
138
料
医療安全対策に係る研修の実施状況
Ⅰ
Ⅱ
医療安全に関する制度の理解、取り組み、評価及び対策に係る知識
・技能の習得することを目的に、各ブロック事務所において、医療安
全対策に係る研修を実施
平成20年度研修実施状況(概要)
①研修参加人数・・・927名
②参加者の職種・・・各研修の目的、主旨に応じて院長等の医師、医療
安全管理室の担当者、コメディカル全般、事務職
員等
③各ブロック事務所での実施状況
○北海道東北ブロック事務所主催
日
程:平成20年12月1日~5日
参加人数:31名
(看護師長、副看護師長、臨床工学技士)
主な研修内容
講義:医療安全の基本的な考え方
医療安全管理者の業務の実際
医療安全のための組織的な取組の実例
医療事故被害者の立場から
近年の医療訴訟
演習:医療安全に関する分析
○関東信越ブロック事務所主催
日
程:平成20年10月22日~24日
11月 6日~ 7日
参加人数:69名
( 今 後 、医 療 安 全 管 理 係 長 に 就 任 が 見 込 ま れ る 看 護 師 長 、
医療安全活動に従事している者)
主な研修内容
※携わる役割別にコースを設定
Aコース:今後、医療安全管理係長に就任が見込まれる看護師
長のための育成コース
139
Bコース:医療安全活動に従事する医療安全管理委員会等の委
員及び医療安全推進担当者のためのコース
Cコース:医療安全に関する研修等を受講しているが、医療安
全対策加算の施設基準である時間数を満たしていな
い者で事例分析演習の受講希望者のためのコース
講義:組織づくりとその運営について
医療安全教育の要点
患者参加型の医療安全管理
医薬品の安全管理と医薬品安全管理責任者の役割
グループワーク: 事 例 分 析 演 習 、 発 表 、 意 見 交 換
○東海北陸ブロック事務所主催
日
程:平成20年12月1日~5日
参加人数:46名
(医師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、看護
師、事務職員(課長クラス)等)
主な研修内容
※携わる役割別に3コースを設定
講義:医療安全管理の基本的考え方
医薬品の安全管理
医療機器安全管理の実際
医療安全管理者の役割
医療事故と法的責任
医療ADRとしてのメディエーションの実践
ク ゙ ル ー フ ゚ ワ ー ク :「 R C A 事 例 分 析 」、「 迷 惑 行 為 へ の 対 応 」
ロ ー ル フ ゚ レ イ :「 医 療 事 故 後 の 対 応 」
○近畿ブロック事務所主催
日
程:平成20年5月27日
参加人数:39名
(医療安全管理室長、医療安全管理係長、事務職員等医
療安全管理を担当する職員)
主な研修内容
講義:重大事故発生時の対応
ロールプレイ
140
○近畿ブロック事務所主催
日
程:平成20年5月29日
参加人数:30名
(訴訟事務を担当する職員、担当する予定の職員)
主な研修内容
講義:証拠保全・訴訟対応における留意点
訴訟の基礎知識と訴訟対応
○近畿ブロック事務所主催
日
程:平成21年2月16日~20日
参加人数:23名
(医療安全管理者の候補並びに医療安全推進担当者とし
て実務経験のある医師、コメディカル、看護師)
主な研修内容
講義:医療の安全と原点
医療安全に関する制度
医療安全管理における職員の教育研修
医療安全のための基礎的医学知識
医療事故発生後の対応
医療安全管理者の業務の実際
シミュレーション・トレーニングⅠ~Ⅳ
事例討議(トラブルシューティング)
シ ン ポ ジ ウ ム :「 意 識 向 上 の た め の 各 部 門 の 取 り 組 み 」
○中国四国ブロック事務所主催
日
程:平成20年6月23日~27日
参加人数:42名
(医療安全推進担当者として経験のある医師、コメディ
カル、看護師 ※今後担当する予定者)
主な研修内容
講義:医療安全とコミュニケーション
医療安全のための組織的な取組
重大事故発生時の対応
医療事故情報収集事業の現況について
インシデント・アクシデントの分析手法
討議:テーマ①気管カニューレ抜去 ②感染 ③異型輸血
テーマ①誤嚥による死亡 ②転倒転落後の死亡 ③誤薬
141
○中国四国ブロック事務所主催
日
程:平成20年12月18日~19日
参加人数:24名
(医療安全管理係長)
主な研修内容
講義:医療事故の現状~PEGについて~
自院での転倒予防対策チームの活動状況について
転倒・転落事故防止PT推進に係る各病院での取り組み状況発
表
転倒・転落アセスメントシート分析結果について
各グループの活動状況の発表
○九州ブロック事務所主催
日
程:平成20年7月8日~11日
参加人数:26名
(医療安全管理係長、看護師長、学校教員)
主な研修内容[管理研修]
講義:医療事故とヒューマンファクター
事例からみる医療事故と対応
医 療 事 故 の 根 本 原 因 分 析 法 RCAに つ い て
ロールプレイ( 医 療 事 故 後 の 対 応 ) 謝 罪 編
グループワーク「各 施 設 の 今 後 の 対 策 」
演 習 「 RCA事 例 分 析 」
パネルディスカッション: 実 践 報 告
○九州ブロック事務所主催
日
程:平成20年7月8日~9日
参加人数:24名
(医療安全管理係長、看護師長、学校教員)
主な研修内容[管理研修]
講義:医療事故とヒューマンファクター
事例からみる医療事故と対応
ロールプレイ「( 医 療 事 故 後 の 対 応 ) 謝 罪 編 」
グループワーク「各 施 設 の 今 後 の 対 策 」
パネルディスカッション: 実 践 報 告
142
○九州ブロック事務所主催
日
程:平成20年7月10日~11日
参加人数:20名
(医療安全管理係長、看護師長、学校教員)
主な研修内容[管理研修]
講義:医療事故の根本原因分析法RCA
演 習 :「 R C A 事 例 分 析 」
パネルディスカッション: イ ン ス リ ン 事 故 対 策
○九州ブロック事務所主催
日
程:平成20年11月27日~28日
参加人数:30名
(医療安全管理室長、医療安全管理係長等)
主な研修内容[管理研修]
講義:コンフリクトマネジメント医療メディエーション講座
(導入・基礎編)
ロ ー ル フ ゚ レ イ :「 初 期 対 応 、 院 内 紛 争 処 理 」
○九州ブロック事務所主催
日
程:平成21年2月5日~6日
参加人数:55名
(医療安全管理室長、医療安全管理係長等)
主な研修内容[管理研修]
講義:医療事故の初期対応
院内暴力の現状・院内暴力の実態
医療事故の初期対応と医療コンフリクト
ロ ー ル フ ゚ レ イ :「 医 療 事 故 の 初 期 対 応 」
○九州ブロック事務所主催【宮崎県】
日
程:平成20年6月24日
参加人数:67名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
143
○九州ブロック事務所主催【佐賀県】
日
程:平成20年9月9日
参加人数:66名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
○九州ブロック事務所主催【鹿児島県】
日
程:平成20年10月20日
参加人数:62名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
○九州ブロック事務所主催【沖縄県】
日
程:平成20年11月18日
参加人数:31名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
○九州ブロック事務所主催【大分県】
日
程:平成20年12月16日
参加人数:47名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
144
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
○九州ブロック事務所主催【熊本県】
日
程:平成21年1月29日
参加人数:46名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
○九州ブロック事務所主催【長崎県】
日
程:平成21年2月9日
参加人数:95名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
○九州ブロック事務所主催【福岡県】
日
程:平成21年2月26日
参加人数:54名
(院長、副院長、統括診療部長、臨床研究部長、事務部
長、看護部長、医療安全管理係長、訴訟事務担当者、
その他参加希望者)
主な研修内容
講義:事故当事者へのサポートについて
損害賠償額の算定等について
九州ブロックの医療事故対応体制と事故の現状
145
Ⅲ
各病院における医療安全管理に関する研修
各病院においても、医療安全に関する基礎知識の習得及び使用し
ている医療機器等の操作上の基礎技能等を習得することを目的に、
研修会や講習会を適宜実施
平成20年度実績
【院内研修】
2,191コース 延べ参加者数:90,106名
《コースの概要》
・医療安全文化の醸成
・急変時の対応
・リヤリ・ハット事例について
・自院の医療安全対策について
・人工呼吸器の操作上の注意点
・シリンジポンプの操作上の注意点 ほか
【 外 部 専 門 機 関 へ の 研 修 】 ※ ブロック事務所主催研修除く
611コース 延べ参加者数: 1,722名
146
(平 成 19 年 3 月 29 日 改 )
独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指針
147
目
次
第1
趣旨 …………………………………………………………………
第2
医療安全管理のための基本的考え方
第3
用語の定義 …………………………………………………………
第4
医療安全管理体制の整備 …………………………………………
第5
各病院における医療安全管理のための具体的方策の推進 ……
第6
医療事故発生時の具体的な対応 …………………………………
第7
医療事故の評価と医療安全管理への反映 ………………………
…………………………
(別添1)患者影響レベルの指標
(別添2)患者影響レベル毎の具体的事例
(別添3)医療安全管理規程(例)
(別添4)医療事故防止ための要点と対策
(別添5)ヒヤリ・ハット体験報告
(別添6)ヒヤリ・ハット、医療事故情報分析表
(別添7)ヒヤリ・ハット事例集
(別添8)医療安全対策ネットワーク整備事業の実施について
(別添9)医療事故情報収集等事業の概要(「医療事故情報収集等事業の開始につ
いて」及び「医療事故情報収集等事業に係る報告様式及び記載要領等に
ついて」)
(別添10)「医薬品・医療用具等安全性情報報告制度」実施要領
(別添11)医療事故報告書(院内報告書)
(別添12)医療事故報告書(本部、ブロック事務所への報告書)
(別添13)警察への届出に当たっての手順
(別添14)国立病院機構医療事故公表指針
(別添15)拡大医療安全管理委員会運用規程
※ (別 添 4 )∼ (別 添 12)に つ い て は 本 編 添 付 省 略
148
独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指針
第1
趣旨
本指針は、独立行政法人国立病院機構(以下「国立病院機構」という。)におけ
る医療安全管理体制の確立、医療安全管理のための具体的方策及び医療事故発生時
の対応方法等について、指針を示すことにより、適切な医療安全管理を推進し、安
全な医療の提供に資することを目的とする。
第2
医療安全管理のための基本的考え方
医療安全は、医療の質に関わる重要な課題である。また、安全な医療の提供は医
療の基本となるものであり、各病院及び職員個人が、医療安全の必要性・重要性を
病院及び自分自身の課題と認識し、医療安全管理体制の確立を図り安全な医療の遂
行を徹底することがもっとも重要である。このため、各病院は、本指針を活用して、
病院ごとに医療安全管理委員会及び医療安全管理室を設置して医療安全管理体制
を確立するとともに、病院内の関係者の協議のもとに、独自の医療安全管理規程及
び医療安全管理のためのマニュアル等(以下「マニュアル等」という。)を作成す
る。また、ヒヤリ・ハット事例及び医療事故の評価分析によりマニュアル等の定期
的な見直し等を行い、医療安全管理の強化充実を図る必要がある。
さらに、各病院において行われている医療安全管理に係る有効な取り組みを国立
病院機構の全病院で共有することや、各病院で発生した医療事故等を一元的に収集
し整理・分析した上でフィードバックするなど国立病院機構の病院ネットワークを
活用した医療安全管理体制の確立を図っていくことも重要である。
第3
1
用語の定義
医療安全管理規程
国立病院機構の各病院における医療安全管理体制、医療安全管理のための職員研
修、医療事故対応等の医療安全管理のための基本方針を文書化したもので医療安全
管理委員会で策定及び改定するものをいう。
2
マニュアル
国立病院機構の各病院において、本指針の第5から第7に記載されている医療安
全管理のための具体的方策、医療事故発生時の具体的対応及び医療事故の評価と医
療安全管理への反映等をまとめたものをいう。マニュアルは、病院内の関係者の協
議のもとに医療安全管理室で作成、点検及び見直しの提言等を行い、医療安全管理
委員会で承認を受けるものとする。
3
医療事故
医療事故とは、医療に関わる場所で医療の全過程において発生する人身事故一切
を包含し、医療従事者が被害者である場合や廊下で転倒した場合なども含む。
149
4
医療過誤
医療過誤は、医療事故の発生の原因に、医療機関・医療従事者に過失があるもの
をいう。
5
ヒヤリ・ハット事例
患者に被害を及ぼすことはなかったが、日常診療の現場で、
し たり、
ハッ
ヒヤリ
と
とした経験を有する事例をいう。
具体的には、ある医療行為が、①患者には実施されなかったが、仮に実施された
とすれば、何らかの被害が予測される場合、②患者には実施されたが、結果として
患者に被害を及ぼすに至らなかった場合を指す。
6
患者影響レベル
発 生 し た 医 療 事 故 や ヒ ヤ リ・ハ ッ ト 事 例 が 患 者 に ど の 程 度 の 影 響 を 与 え た か
を 区 分 す る も の 。国 立 病 院 機 構 に お け る 統 一 的 な 患 者 影 響 レ ベ ル の 指 標 は 、別
添 1 の と お り と し 、そ の 具 体 的 事 例 を 別 添 2 に 整 理 す る 。レ ベ ル 0 か ら レ ベ ル
3 a ま で を ヒ ヤ リ・ハ ッ ト 事 例 、レ ベ ル 3 b か ら レ ベ ル 5 ま で を 医 療 事 故 と す
る 。ま た 、各 病 院 は 、本 指 標 に 基 づ き 、発 生 し た 医 療 事 故 等 が ど の 患 者 影 響 レ
ベルに該当するのかについて整理を行うこととする。
7
医療安全管理者
医療安全管理者は、院長の指名により選任され、医療安全推進担当者を指導し、
連携・協同の上、特定の部門ではなく病院全般にかかる医療安全対策の立案・実行
・評価を含め、医療安全管理のための組織横断的な活動を行う者をいう。
また、医療安全管理者は、独立行政法人国立病院機構組織規程(平成16年規程
第3号)第72条の規定に基づく看護部又は看護課に置く看護師長をもって充てる
ものとする。
8
医療安全推進担当者
医療安全推進担当者は、院長の指名により選任され、医療事故の原因、防止方法
に関する検討提言や医療安全管理委員会等との連絡調整を行う者をいう。
9
医薬品安全管理責任者
医薬品安全管理責任者は、院長の指名により選任され、医薬品の安全使用を確保
するための業務を行う責任者をいう。
10
医療機器保守管理責任者
医療機器保守管理責任者は、院長の指名により選任され、医療機器の安全使用を
確保するための業務を行う責任者をいう。
150
第4
医療安全管理体制の整備
各病院においては、以下の事項を基本として、病院内における医療安全管理体制
の確立に努める。
1
医療安全管理規程について
(1)各病院は、病院内関係者の協議に基づき医療安全管理委員会で「医療安全
管理規程」を策定及び改定する。(参考例は別添3のとおり。)
(2)医療安全管理規程には、以下の事項を規定する。
ア
医療機関における医療安全管理に関する基本的考え方
イ
医療安全管理のための病院内体制の整備
ウ
医療安全管理委員会の設置及び所掌事務
エ
ヒヤリ・ハット事例の報告体制
オ
医療事故報告体制
カ
医療事故発生時の対応
キ
医療安全管理のための職員研修に関する基本方針
ク
患者等に対する医療安全管理規程の閲覧に関する基本方針
ケ
その他、医療安全管理に関する事項
(3)医療安全管理規程の患者等に対する閲覧について
医療安全管理規程については、患者及び家族等に対し、その閲覧に供することを
原則とし、待合室等に備え付けるなどして、各患者等が容易に閲覧できるように配
慮する。
2
医療安全管理委員会の設置
(1)各病院は医療安全管理委員会(以下、「委員会」という。)を設置する。
(2)委員会は、副院長、診療部長又は医長、薬剤部長又は薬剤科長、看護部長又は
総看護師長、事務部長又は事務長、医療安全管理者、医薬品安全管理責任者、医
療機器安全管理責任者等をもって構成することを原則とする。
(3)委員会の委員長は、原則として副院長とする。
(4)委員会の副委員長は、原則として医療安全管理者とする。
(5)委員長に事故があるときは、診療部長又は医長がその職務を代行する。
(6)委員会の所掌事務は、以下のとおりとする。
ア
医療安全管理の検討及び研究に関すること
イ
医療事故の分析及び再発防止策の検討並びに委員会によって立案された防止
対策及び改善策の実施状況の調査及び見直しに関すること
ウ
医療安全管理のために行う職員に対する指示に関すること
エ
医療安全管理のために行う院長等に対する提言に関すること
オ
医療安全管理のための啓発、教育、広報及び出版に関すること
カ
医療訴訟に関すること
キ
その他医療安全管理に関すること
151
(7)委員会は、所掌事務に係る調査、審議等の任務を行う。
(8)委員会の検討結果については、定期的に院長に報告するとともに、医療安全推
進担当者を通じて、各職場に周知する。
(9)委員会の開催は、概ね毎月1回とする。ただし、必要に応じ、臨時の委員会を
開催できるものとする。
(10)委員会の記録その他の庶務は、原則として医療安全管理室が行う。
(11)重大な問題が発生した場合には、委員会において速やかに発生の原因を分析
し、改善策の立案及び実施並びに職員への周知を図る。
3
院内感染対策のための指針の策定
( 1 )各 病 院 は 、次 に 掲 げ る 事 項 を 内 容 と す る「 院 内 感 染 対 策 の た め の 指 針 」を
策定する。
ア
院内感染対策に関する基本的考え方
イ
院内感染対策のための委員会(以下、「院内感染対策委員会」という)、
及びその他の院内感染対策に係る院内の組織に関する基本的事項
ウ
院内感染対策のために職員に対して行われる研修に関する基本方針
エ
感染症の発生状況の報告に関する基本方針
オ
院内感染発生時の対応に関する基本方針
カ
患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
キ
その他院内における院内感染対策の推進のために必要な基本方針
( 2 )院 内 感 染 対 策 の た め の 指 針 は 、院 内 感 染 対 策 委 員 会 の 議 を 経 て 策 定 及 び 変
更するものとする。
4
拡大医療安全管理委員会の開催
院内の委員会で、発生した医療事故の過失の有無、原因等について十分な結論づ
けができない場合等には、院長は、第三者的立場から過失の有無等について厳正に
審議を行うため、国立病院機構内における自施設以外の施設の専門医、看護師等(以
下、「専門委員」という。)を加えた委員会(以下、「拡大医療安全管理委員会」
という。)を開催する。
5
医療安全管理室の設置
(1)委員会で決定された方針に基づき、組織横断的に当該病院内の安全管理を担う
ため、病院内に医療安全管理室を設置する。
(2)医療安全管理室は、医療安全管理者、医療安全推進担当者及びその他必要な職
員で構成され、医療安全管理室長は原則として、副院長等の安全管理委員会にお
ける委員長とする。
(3)医療安全管理室の所掌事務は以下のとおりとする。
ア
委員会で用いられる資料及び議事録の作成及び保存並びにその他委員会の庶
務に関すること
152
イ
医療安全に関する日常活動に関すること
①
医療安全に関する現場の情報収集及び実態調査(定期的な現場の巡回・点検、
マニュアルの遵守状況の点検)
②
マニュアルの作成及び点検並びに見直しの提言等
③
ヒヤリ・ハット体験報告(ヒヤリ・ハット事例を体験した医療従事者が、その
概要を記載した文書をいう。以下同じ。)の収集、保管、分析、分析結果などの
現場へのフィードバックと集計結果の管理、具体的な改善策の提案・推進とその
評価
④
医療安全に関する最新情報の把握と職員への周知(他病院における事故事例の
把握など)
⑤
医療安全に関する職員への啓発、広報(月間行事の実施など)
⑥
医療安全に関する教育研修の企画・運営(具体的な内容については、第5
4
を参照)
⑦
医療安全対策ネットワーク整備事業に関する報告
⑧
医療機能評価機構への医療事故事例の報告に関すること
⑨
医薬品・医療用具等安全性情報報告制度に基づく報告の支援に関すること
⑩
医療安全管理に係る連絡調整
ウ
医療事故発生時の指示、指導等に関すること
①
診療録や看護記録等の記載、医療事故報告書の作成について、職場責任者に対
する必要な指示、指導
②
患者や家族への説明など事故発生時の対応状況についての確認と必要な指導
(患者及びその家族、警察等の行政機関並びに報道機関等への対応は、病院の院
長、副院長のほか、それぞれの部門の管理責任者が主として行う。)
③
院長又は副院長の指示を受け、医療事故の原因分析等のための臨時医療安全管
理委員会を招集
④
事故等の原因究明が適切に実施されていることの確認と必要な指導
⑤
医療事故報告書の保管
エ
その他、医療安全対策の推進に関すること
(4)医療安全管理室の中に作業部会を設置し、医療安全管理室の業務の一部を行う
ことができる。
6
医療安全管理者の配置
各病院は、医療安全管理の推進のため、医療安全管理室に医療安全管理者を置
く。
(1)医療安全管理者は、医療安全に関する十分な知識を有する者とする(医療安全
管理者の養成を目的とした研修で、通算して40時間以上または5日程度の研修
を終了した者)。
(2)医療安全管理者は、医療安全管理室長の指示を受け、各部門の医療安全推進担
当者と連携・協同の上、医療安全管理室の業務を行う。
153
(3)医療安全管理者は医療安全管理室の業務のうち、以下の業務について主要な役
割を担う。
ア
医療安全管理室の業務に関する企画立案及び評価に関すること。
イ
病院における職員の安全管理に関する意識の向上及び指導に関すること。
ウ
医療事故発生の報告又は連絡を受け、直ちに医療事故の状況把握に努めるこ
と。
7
医療安全推進担当者の配置
各病院は、各部門の医療安全管理の推進に資するため、医療安全推進担当者を置
く。
(1)医療安全推進担当者は、各診療科及び各看護単位にそれぞれ1名を、また、薬
剤科(薬剤部を含む。)、研究検査科、事務部等各部門にそれぞれ1名を置くも
のとし、各院長が指名する。
(2)医療安全推進担当者は、医療安全管理室の指示により以下の業務を行う。
ア
各職場における医療事故の原因及び防止方法並びに医療安全管理体制の改善
方法についての検討及び提言
イ
各職場における医療安全管理に関する意識の向上(各部門における事故防止確
認のための業務開始時のミーティングの実施などの励行等)
ウ
ヒヤリ・ハット体験報告の内容の分析及び報告書の作成
エ
委員会において決定した事故防止及び安全対策に関する事項の各職場への周
知徹底、その他委員会及び医療安全管理室との連絡調整
オ
職員に対するヒヤリ・ハット体験報告の積極的な提出の励行
カ
その他、医療安全管理に関する事項
8
医薬品安全管理責任者の配置
各 病 院 は 、医 薬 品 の 安 全 使 用 の た め に 必 要 と な る 情 報 の 収 集 そ の 他 医 薬 品 の
安 全 確 保 を 目 的 と し た 改 善 の た め の 方 策 を 実 施 さ せ る た め 、医 薬 品 安 全 管 理 責
任者を置く。
(1)医薬品安全管理責任者は、医薬品に関する十分な知識を有する者とする。
( 2 )医 薬 品 安 全 管 理 責 任 者 は 医 薬 品 の 安 全 使 用 に 係 る 業 務 の う ち 、以 下 の 業 務
について主要な役割を担う。
ア
医 薬 品 の 添 付 文 書 の 情 報 の ほ か 、医 薬 品 製 造 販 売 業 者 、行 政 機 関 、学 術 誌
等からの情報の収集・管理
イ
得られた情報で必要なものについての当該情報に係る医薬品を取り扱う
職員への周知
ウ
医薬品の業務手順書に基づき業務が行われているかについての定期的な
確認と記録
エ
その他、医薬品の安全使用に関する事項
154
9
医療機器保守管理責任者の配置
各 病 院 は 、医 療 機 器 の 保 守 点 検 、安 全 使 用 の 確 保 等 の 推 進 に 資 す る た め 、医
療機器保守管理責任者を置く。
( 1 )医 療 機 器 保 守 管 理 責 任 者 は 、医 療 機 器 に 関 す る 十 分 な 知 識 を 有 す る 者 と す
る。
( 2 )医 療 機 器 保 守 管 理 責 任 者 は 、医 療 機 器 の 安 全 使 用 に 係 る 業 務 の う ち 、以 下
の業務について主要な役割を担う。
ア
職員に対する医療機器の安全使用のための研修の実施
イ
医療機器の保守点検に関する計画の策定及び保守点検の実施
ウ
医療機器の添付文書及び取扱い説明書の管理、並びに医療機器の不具合情報や
安全情報等の一元的把握
エ
10
その他、医療機器の保守点検・安全使用に関する事項
患者相談窓口の設置
(1)患者等からの苦情、相談に応じられる体制を確保するために、病院内に患者相
談窓口を常設する。
(2)患者相談窓口の活動の趣旨、設置場所、担当者及びその責任者、対応時間等に
ついて、患者等に明示する。
(3)患者相談窓口の活動に関し、相談に対応する職員、相談後の取扱、相談情報の
秘密保護、管理者への報告等に関する規程を整備する。
(4)相談により、患者や家族等が不利益を受けないよう適切な配慮を行う。
(5)苦情や相談で医療安全に関わるものについては、医療安全管理室に報告し、当
該病院の安全対策の見直し等に活用する。
11
マニュアル等の作成について
各病院は、医療安全管理の推進に資するためマニュアル等を作成する。
(1)各病院は、医療安全管理のための具体的方策、医療事故発生時の具体的対応及
び医療事故の評価と医療安全管理への反映等をまとめたマニュアルを作成し、医
療安全管理上の具体的方策を実施する。なお、病院において医療安全管理規程等
をマニュアルに含めることも可能である。
(2)また、医薬品の採用・購入に関する事項や管理に関する事項、患者に対する与
薬や服薬指導に関する事項等を内容とする「医薬品の安全使用のための業務に関
する手順書」や、医療機器の保守点検に関する情報収集や購入時期、使用状況、
保守点検・修理の把握等を内容とする「医療機器の保守点検に関する計画」を策
定し、当該手順等に基づく業務を実施する。
155
第5
各病院における医療安全管理のための具体的方策の推進
各病院における医療安全管理のための具体的方策は以下のとおりとする。
1
医療事故防止のための要点と対策の作成
安全な医療を行うために、人工呼吸器、輸血、注射等についての具体的な注意事
項を定める医療事故防止の要点と対策について、各部門の医療安全推進担当者を中
心に医療安全管理室で作成し、委員会で承認を得る。また、医療事故防止の要点と
対策は、自病院又は他病院のヒヤリ・ハット事例の評価分析や医療事故報告、原因
分析等に基づいて、随時見直しを図ると共に関係職員に周知徹底を図り、委員会で
承認を得て改定を行うものとする。(参考例は別添4のとおり。)
2
ヒヤリ・ハット事例の報告及び評価分析
(1)報告
ア
院長は、医療安全管理に資するよう、ヒヤリ・ハット事例の報告を促進するた
めの体制を整備する。
イ
ヒヤリ・ハット事例については、当該事例を体験した医療従事者が、その概要
をヒヤリ・ハット体験報告(参考例は別添5のとおり。)に記載し、翌日までに、
医療安全推進担当者に報告する。
ウ
医療安全推進担当者は、ヒヤリ・ハット体験報告等から当該部門及び関係する
部門に潜むシステム自体のエラー発生要因を把握し、リスクの重大性、リスクの
予測の可否及びシステム改善の必要性等必要事項を記載して、医療安全管理室に
提出する。
エ
ヒヤリ・ハット体験報告を提出した者に対し、当該報告を提出したことを理由
に不利益処分を行ってはならない。
オ
ヒヤリ・ハット体験報告は、医療安全管理室において、分析・検討が終了する
まで保管する。
(2)ヒヤリ・ハット事例について効果的な分析を行い、医療安全管理に資すること
ができるよう、必要に応じて、当該事例の原因、種類及び内容等をコード化した
分析表(以下「ヒヤリ・ハット・医療事故情報分析表」という。 参考例は別添
6のとおり。)を活用し、評価分析を行う。
(3)ヒヤリ・ハット事例集の作成
各病院においては、ヒヤリ・ハット事例を評価分析し、医療安全管理に資する
ことができるよう、事例集を作成する。(参考例は別添7のとおり。)
なお、事例集については、ヒヤリ・ハット体験報告に基づき、定期的に事例の
追加記載を行い、関係職員への周知を図る。
3
医療安全対策ネットワーク整備事業への協力
医療現場におけるヒヤリ・ハット事例等を全国の医療機関から一元的に収集し、
この情報を基に、ガイドラインの策定、製品の基準化、関係団体への製品の改良要
156
請等を行う医療安全対策ネットワーク事業に対し、事例の報告を行う。(別添8)
4
医療事故情報収集等事業に係る報告
医療法施行規則第9条の23第1項第2号に示されている事故等事案に該当す
る事例については、日本医療機能評価機構に報告する。なお、報告にあたっては日
本医療機能評価機構で示す報告様式・記載要領等による。(別添9)
5
医薬品・医療用具等安全性情報報告制度に関する報告
医薬品又は医療用具の使用による副作用、感染症又は不具合が発生(医療用具の
場合は健康被害が発生するおそれのある場合を含む)した場合、保健衛生上の危害
の発生又は拡大を防止する観点から報告の必要があると判断した情報(症例)は、
別添の様式により報告する。(医薬品又は医療用具との因果関係が必ずしも明確で
ない場合であっても報告の対象となりうる)(別添10)
6
医療安全管理のための職員研修
(1)医療安全管理のための研修の実施
各病院は、個々の職員の安全に対する意識、安全に業務を遂行するための技能や
チームの一員としての意識の向上等を図るため、医療に係る安全管理の基本的考え
方及び具体的方策について、職員に対し以下のとおり研修を行う。
ア
医療機関全体に共通する安全管理に関する内容とする。
イ
医療に関わる場所において業務に従事する者を対象とする。
ウ
年2回程度定期的に開催、それ以外にも必要に応じて開催する。
エ
実施内容について記録を行う。
(2)院内感染対策のための研修の実施
各 職 員 の 院 内 感 染 に 対 す る 意 識 を 高 め 、業 務 を 遂 行 す る 上 で の 技 能 や チ ー ム
の一員としての意識の向上等を図るための研修を実施する。
ア
院内感染対策に関する基本的考え方及び具体的方策に関する内容とする。
イ
各病院の実情に則した内容で、職種横断的な参加の下行う。
ウ
年2回程度定期的に開催、それ以外にも必要に応じて開催する。
エ
実施内容について記録を行う。
(3)医薬品及び医療機器の安全使用のための研修の実施
他 の 医 療 安 全 に 係 る 研 修 と 併 せ て 行 う 等 の 方 法 に よ り 、医 薬 品 並 び に 医 療 機
器の安全使用に関する研修を行う。
157
第6
医療事故発生時の具体的な対応
各病院の医療事故発生時における医療事故の報告体制、患者・家族への対応及び
警察への届出の具体的な対応は、以下のとおりとする。
1
医療事故の報告
(1)病院内における報告の手順と対応
ア
医療事故が発生した場合は、次のとおり直ちに上司に報告する。
①
医師(歯科医師) → 医長→ 診療部長 → 副院長
②
薬剤師 → 主任薬剤師 → 薬剤部長又は薬剤科長 → 副院長
③
看護師 → 看護師長 → 看護部長又は総看護師長 → 副院長
④
医療技術職員(①∼③に掲げる者を除く) → 技師長 → 副院長
⑤
事務職員 → 係長 → 課長 → 事務部長又は事務長 → 副院長
イ
副院長は報告を受けた事項について、委員会に報告するとともに、事故の重大
性等を勘案して、速やかに院長に対して報告する必要があると認めた事案は、そ
の都度院長に報告し、それ以外の事案については適宜院長に報告する。
ウ
患者の生死に関わる医療事故等、特に緊急的な対応が必要な場合において、医
師、薬剤師、看護師等は、それぞれ、医長、主任薬剤師、看護師長等にただちに
連絡が出来ない場合は、直接、診療部長又は副院長、薬剤部長又は薬剤科長、看
護部長等に報告する。
(2)病院内における報告の方法
報告は、文書(「医療事故報告書」。参考例は別添11の1及び別添11の2。)
により行う。
ただし、緊急を要する場合は、直ちに口頭で報告し、その後文書による報告を
速やかに行う。
なお、医療事故報告書の記載は、①事故発生の直接の原因となった当事者が明
確な場合には、当該本人、②その他の者が事故を発見した場合には、発見者とそ
の職場の長が行う。
(3)国立病院機構本部及び所管のブロック事務所への報告
ア
各病院は、本項イに規定する医療事故が発生した場合、医療事故報告書(様式
は別添12のとおり。)を、本項「ウ」の報告時期等のルールに基づき、国立病
院機構本部及び所管のブロック事務所に報告する。
イ
報告を要する医療事故の範囲(第5−4による報告範囲と同一)
①
誤った医療又は管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は管理に
起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しな
かった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事例。
②
誤った医療又は管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管理に起
因して、患者死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかっ
た、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事例(行った
医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該事例の発生を予期しなかっ
158
たものに限る)。
③
前2号に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び再発の
防止に資する事例。
ウ
報告時期等のルール
①
委員会等での検証作業終了後の報告(概ね2週間以内に行う必須報告)
発生した医療事故に関し委員会等で原因分析、再発防止策検討等の検証作業を
行った上で、その内容を踏まえた医療事故報告書(上記(3)−ア)を作成し、
所管のブロック事務所を通じて国立病院機構本部に報告する。
②
危機管理の観点からの報告(院長の判断による報告)
危機管理の観点から国立病院機構本部・ブロック事務所と情報を共有している
ことが必要と判断される医療事故が発生した場合は、事故発生後速やかに、その
段階で把握できている事故内容、患者状況等の客観的事実や、必要に応じ対外的
対応方針等を、所管のブロック事務所を通じて報告する。また、委員会等での検
証作業終了後には、追加的に原因分析、再発防止策等の内容を含む医療事故報告
を行う。
*
③
当該報告を行うか否かは、事故の内容等を踏まえ各病院長が判断する。
「①」の報告を行った後、例えば拡大医療安全管理委員会が開催されるなど、
追加的に検証作業等が行われた場合は、追加的報告を行う。
(4)医療事故報告書の保管
医療事故報告書については、独立行政法人国立病院機構文書管理規程(平成1
6年規程第10号)第34条第1項第5号に該当する法人文書として、医療安全
管理室において保管する。
2
患者・家族への対応
(1)患者に対しては誠心誠意治療に専念するとともに、患者及び家族に対して
は、誠意をもって事故の説明等を行う。
(2)患者及び家族に対する事故の説明等は、原則として、病院の幹部職員が対
応することとし、その際、病状等の詳細な説明ができる担当医師が同席する。
なお、状況に応じ、医療安全管理者、部門の管理責任者等も同席して対応
する。
3
事実経過の記録
(1)医師、看護師等は、患者の状況、処置の方法、患者及び家族への説明内容等を、
診療録、看護記録等に詳細に記載する。
(2)記録に当たっては、具体的に以下の事項に留意する。
ア
初期対応が終了次第、速やかに記載すること。
イ
事故の種類、患者の状況に応じ、出来る限り経時的に記載を行うこと
ウ
事実を客観的かつ正確に記載すること(想像や憶測に基づく記載を行わない)。
159
4
警察への届出
(1)医療過誤によって死亡又は障害が発生したことが明白な場合には、国立病院機
構の各院長は、速やかに所轄警察署に届出(以下「届出」という。)を行う。
(2)死亡又は障害が発生し、医療過誤の疑いがある場合には、届出について本部と
の協議も考慮して対応する。
(3)届出は、別添13「警察への届出に当たっての手順」に基づき行う。
(4)各院長は、届出の判断が困難な場合には、ブロック事務所の指示を受ける。ブ
ロック事務所は、必要に応じ顧問弁護士や国立病院機構本部とも協議した上で、
院長に指示を行なう。
5
重大な医療事故が発生した場合の対外的公表
各病院は、重大な医療事故等が発生した場合には、別添14の「国立病院機構医
療事故公表指針」に基づき対応する。
第7
1
医療事故の評価と医療安全対策への反映
院内での医療事故の評価検討
(1)各病院は、医療事故が発生した場合、委員会において、事故の原因分析など、
以下の事項について評価検討を加え、その後の医療安全対策への反映を図るもの
とする。
ア
医療事故報告に基づく事例の原因分析
イ
発生した事故について、組織としての責任体制の検証
ウ
これまでに講じてきた医療安全対策の効果
エ
同様の医療事故事例を含めた検討
オ
医療機器メーカーへの機器改善要求
カ
その他、医療安全対策の推進に関する事項
(2)医療事故の効果的な分析を行い、事故の再発防止に資することができるよう、
必要に応じて、根本的原因分析など、より詳細な評価分析を行う。
(3)医療事故の原因分析等については、委員会で十分に検討した結果を医療事故報
告書に記載する。
(4)医療事故情報収集等事業により日本医療機能評価機構から分析・発信された医
療安全情報を活用し、医療安全対策への反映を図る。
2
拡大医療安全管理委員会の開催
(1)院内の安全管理委員会で、発生した医療事故の過失の有無、原因等について十
分な結論づけができない場合、院長は、拡大医療安全管理委員会を開催する。
(2)拡大医療安全管理委員会の委員構成や運用等は、別添15のとおりとする。
3
機構以外の有識者を交えた事故調査委員会
発生した医療事故に関して、国立病院機構内部の専門委員の状況などから拡大医
160
療安全管理委員会においても十分な審議が行えないと判断される場合等は、拡大医
療安全管理委員会に代えて、機構以外の有識者を交えた事故調査委員会の設置を考
慮する。
4
国立病院機構における医療事故報告書の作成
国立病院機構本部は、各病院から報告された医療事故報告を集計・分析し、
一 定 期 間 毎 に 国 立 病 院 機 構 に お け る 包 括 的 な 医 療 事 故 報 告 書 を 作 成 、各 病 院 に
フ ィ ー ド バ ッ ク す る と と も に 、ホ ー ム ペ ー ジ に 掲 載 す る な ど に よ り こ れ を 公 表
する。
第8
中央医療安全管理委員会の開催
( 1 )国 立 病 院 機 構 の 病 院 ネ ッ ト ワ ー ク を 活 用 し 、機 構 内 部 で の 医 療 事 故 発 生 の
全 体 状 況 等 を 踏 ま え な が ら 、国 立 病 院 機 構 に お け る 医 療 安 全 管 理 対 策 の 基 本
的 方 向 性 等 に つ い て の 審 議 を 行 う た め 、国 立 病 院 機 構 本 部 に 中 央 医 療 安 全 管
理委員会を設置する。
( 2 )中 央 医 療 安 全 管 理 委 員 会 は 、院 長 、看 護 部 長 、医 療 安 全 管 理 の 実 務 担 当 者
で あ る 副 院 長 、医 療 安 全 管 理 者 、薬 剤 師 や 事 務 部 門 担 当 者 等 の 多 職 種 で 構 成
されるものとする。
161
162
中・高度
〔一過性〕
高 度
〔永続的〕
行った医療又は管理により、本来必要でなかった治療や処置が必要
となった場合
行った医療又は管理により、生活に影響する重大な永続的障害が発
生した可能性がある場合
行った医療又は管理が死因となった場合
レベル3b
レベル4
レベル5
※影響レベル3aまでが「ヒヤリ・ハット事例(=インシデント事例)」、レベル3b以上が「医療事故事例」
死 亡
軽 度
〔一過性〕
行った医療又は管理により、本来必要でなかった簡単な治療や処置
(消毒、湿布、鎮痛剤投与等の軽微なもの)が必要となった場合
な し
行った医療又は管理により、患者に影響を与えた、又は何らかの影響
を与えた可能性がある場合
レベル2
レベル3a
な し
誤った行為を患者に実施したが、結果として患者に影響を及ぼすに至
らなかった場合
レベル1
障害の程度及び
〔継続性〕
な し
容
誤った行為が発生したが、患者には実施されなかった場合(仮に実施
されたとすれば、何らかの被害が予想された)
内
(別添1)
レベル0
影響レベル
《患者影響レベル指標》
163
行った医療又は管理により、本来必
要でなかった簡単な治療や処置(消
毒、湿布、鎮痛剤投与等軽微なも
の)が必要となった場合
・介助中の患者の痛みの訴えに明かな骨折はなかったが熱感・腫脹があり患部を冷やす等の処置を行っ
た事案
・医療機器の誤操作等による軽度の損傷・熱傷
・気管内吸引処置時の消毒薬の間違いによる患者の不快感
行った医療又は管理が死因となった ・人工呼吸器の装着ミス、チューブのゆるみ等による患者の死亡
場合
・体位交換時の気管内挿管カニューレ逸脱による死亡
・抗ガン剤の過剰投与による副作用を原因とする死亡
・ニフレック投与による腸閉塞発生など薬の副作用を原因とする死亡
・手術中の異常出血による多臓器不全等による死亡
・心臓カテーテル施行時の冠動脈破裂・心タンポナーデによる死亡
・手術後の肺塞栓による死亡
・リスクの低い妊産婦の死亡
・その他、手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期された合併症による死亡で、警鐘的意義を有する
と認める事例
・手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期されていなかった合併症による死亡
・手術後30日以内の死亡
レベル5
※ 本表は、それぞれのカテゴリーにおけるいくつかの例を示したものである。 行った医療又は管理により、生活に ・カテーテール穿刺による仮性動脈瘤形成を原因とする下肢切断
影響する重大な永続的障害が発生し ・手術の際の異物遺残により重大な永続的障害が発生した事例
た可能性がある場合
・手術中の神経損傷を原因とする回復の見込めない筋力の低下
・人工呼吸器の装着ミス、チューブのゆるみ等による低酸素症脳障害や意識障害
・左乳房切除術後の病理組織検査による良性腫瘍であることの判明
・重要な徴候等の見落としを原因とする下肢ガス壊疽による下肢切断
・骨盤内リンパ節郭清術中の左腎動脈損傷による左腎臓摘出
・心臓ペースメーカーのリード感染から両側眼球摘出に至った事例
・その他、手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期された合併症により、永続的障害が発生した可能
性がある事例で、警鐘的意義を有すると認める事例
・手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期されていなかった合併症により、永続的障害が発生した可
能性がある事例
レベル4
レベル3・b 行った医療又は管理により、本来必 ・重心患者等の介助中に発生した骨折(原因が明確でないものを含む)
(中・高度) 要でなかった治療や処置が必要と ・尿道バルーンカテーテル交換時、心臓カテーテル検査造影時、内視鏡使用時、胃ろうチューブ交換時等の穿孔
なった場合
・胃ろうチューブの腹腔内留置による腹膜炎の発症
・IVHカテーテルの誤挿入による気胸の発生
・手術の際のガーゼ異残等異物遺残(除去により永続的な障害は生じなかった事例)
・手術中における手術目的以外の臓器損傷
・尿管鏡生検時の尿管損傷
・点滴のテープ圧迫固定を原因とする皮ふ組織壊死
・薬剤に係る過剰投与、誤薬、調剤ミス等による副作用で重篤な事例
・経管栄養チューブの気管への誤挿管による呼吸状態悪化
・手術・麻酔等における、患者や部位の取り違え
・人工関節のインプラトの左右間違い
・異型輸血の実施
・手術実施時に使用した骨蝋の脊柱管内浸入による脊髄障害
・手術中の体位固定・圧迫による腓骨神経麻痺(足骨のしびれ等)
・入院中に発生した重度な(筋膜[Ⅲ度]、筋層[Ⅳ度]に届く)褥創
・人工妊娠中絶失敗による妊娠継続 ・脳室ドレーンの自己抜去による緊急手術
・胎盤弁出時の子宮内はんによる大量出血
・FOY、抗ガン剤の血管外漏出による皮膚壊死 ・精神科患者の食事中の窒息
・その他、手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期された合併症による重篤な事例で、警鐘的意義を
有すると認める事例
・手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期されていなかった合併症で重篤な事例
レベル3・a
(軽度)
行った医療又は管理により、患者に ・輸液ポンプの点検ミスによる誤動作を原因とする高カロリー輸液の急速投与や薬の過剰投与により患 ・転倒・転落(出血はなく、検査でも顕著な所見はなく追加的処置等は必要なかった事例)
影響を与えた、又は何らかの影響を 者への影響があり、又は影響を与えた可能性がある事例
・廊下の段差でつまずいたことによる転倒(顕著な所見等はなかった事例)
与えた可能性がある場合
・検査・処置・リハビリにおける患者や部位の取り違えにより患者への影響があり、又は影響を与えた ・患者の問題行動(自殺企図、暴力、離院等)
可能性がある事例
・留置針による患者あるいは訪問者の針刺し事故
レベル2
・転倒・転落による頭蓋骨骨折や呼吸状態の悪化等による死亡
・入浴中の溺死
・誤嚥、又はその疑いによる窒息を原因とする死亡
・熟練度の低い者が適切な指導なく行った医療行為を原因とする死亡
・入院中の自傷行為による死亡
・患者の自殺
・転倒・転落により永続的な人工呼吸器の装着が必要となった事例
・転倒・転落による骨折が原因で寝たきりとなった事例
・酸素吸入中の患者がベッドからの転落したことによる意識喪失・人工呼吸器装着
・バルーンカテーテル使用患者の転倒によるカテーテル閉塞を原因とする膀胱ろう造設
・麻酔管理ミスによる低酸素脳症を原因とする意識障害
・誤嚥、又はその疑いによる窒息を原因とした永続的な意識障害や植物状態
・プレールームでのマットによる窒息を原因とする永続的な人工呼吸器装着
・留置針による針刺し事故で肝炎等永続的な有害事象が発生した可能性がある事例
・帝王切開による新生児重症仮死状態での出生により障害が残る可能性がある事例
・熟練度の低い者が適切な指導なく行った医療行為を原因とした有害事象で永続的障害が発生した可能
性がある事例
・自殺企図により患者が病棟等から飛び降りたことで重度の障害(永続的な意識レベルの低下等)が発
生した事例
・転倒・転落による骨折、急性硬膜下血腫の発生、呼吸状態悪化による一時的な人工呼吸器装着
・プレールームでのマットによる窒息(一時的な人工呼吸器の装着)
・熟練度の低い者が適切な指導なく行った医療行為を原因とした有害事象で重篤な事例
・絶縁被覆の剥がれた止血摂子の使用による熱傷
・食品由来のアレルギー予防のため禁止食品としてのオーダーが指示されていたが、誤配膳によりアナ
フィラキシーショックが発生した事例
・精神科患者の病棟等からの飛び降りによる骨折
・転倒・転落による軽度の外傷や挫傷
・介助中に発生した軽度の外傷等(配膳時トレーの顔面への接触等)
・説明不足などにより、患者が危険区域に浸入し軽度の外傷や挫傷を負った事例
・患者間の暴力による軽度の外傷
−
−
管 理 上 の 問 題 に 係 る 事 例
誤った行為を患者に実施したが、結 ・薬を過剰投与したが軽微な過剰で患者への影響が考えられない事例、あるいはそもそも患者への影響
果として患者に被害を及ぼすに至ら が考えられない種類の薬剤の過剰投与であった事例
なかった場合
・人工呼吸器加湿器への多酵素洗浄剤の未希釈での使用(患者への影響がなかった事例)
・インフルエンザワクチンの重複摂取
医 療 行 為 に 係 る 事 例
レベル1
内 容
誤った行為が発生したが、患者には ・誤った薬を手にしたが、患者に実施する前に気付き実施されなかった事例
実施されなかった場合(仮に実施さ ・手術・検査・処置・リハビリ・麻酔等時に患者や部位を取り違えそうになったが、実施前に気付き実
れたとすれば、何らかの被害が予想 施されなかった事例
された)
〔別添2〕
レベル0
影響レベル
患者影響レベルについて(事例毎整理) ※ 影響レベル3・aまでを「ヒヤリ・ハット事例」、レベル3・b以上を医療事故」とする。
(別添3)
医療安全管理規程(例)
(目的)
第1条
この規程は、(病院名)において必要な事項を定め、適切な医療安全管
理を推進し、安全な医療の提供に資することを目的とする。
(医療安全管理のための基本的考え方)
第2条
医療安全は、医療の質に関わる重要な課題である。また、安全な医療の
提供は医療の基本となるものであり、(病院名)及び職員個人が、医療安全の必
要性・重要性を病院及び自分自身の課題と認識し、医療安全管理体制の確立を図
り安全な医療の遂行を徹底することがもっとも重要である。このため、(病院名)
は、本指針を活用して、病院ごとに医療安全管理委員会及び医療安全管理室を設
置して医療安全管理体制を確立するとともに、院内の関係者の協議のもとに、独
自の医療安全管理規程及び医療安全管理のためのマニュアル等(以下「マニュア
ル等」という。)を作成する。また、ヒヤリ・ハット事例及び医療事故の評価分
析によりマニュアル等の定期的な見直し等を行い、医療安全管理の強化充実を図
る必要がある。
( 医療安全管理規程の患者等に対する閲覧について)
第3条
医療安全管理規程については、患者及び家族等に対して、その閲覧に供
することを原則とし、待合室等に備え付けるなどして、各患者等が容易に閲覧で
きるように配慮する。
(医療安全管理委員会の設置)
第4条
第1条の目的を達成するため、当院に医療安全管理委員会(以下「委員
会」という。)を設置する。
2
委員会は、副院長、診療部長又は医長、薬剤部長又は薬剤科長、看護部長又
は総看護師長、事務部長又は事務長、医療安全管理者等をもって構成する。
3
委員会の委員長は、副院長とする。
4
委員会の副委員長は、医療安全管理者とする。
5
委員長に事故があるときは、診療部長又は医長がその職務を代行する。
6
委員会の所掌事務は、以下のとおりとする。
一
医療安全管理の検討及び研究に関すること
二
医療事故の分析及び再発防止策の検討並びに委員会によって立案され
た防止対策及び改善策の実施状況の調査及び見直しに関すること
三
医療安全管理のために行う職員に対する指示に関すること
164
四
医療安全管理のために行う院長等に対する提言に関すること
五
医療安全管理のための啓発、教育、広報及び出版に関すること
六
医療訴訟に関すること
七
その他医療安全管理に関すること
7
委員会は、所掌事務に係る調査、審議等の任務を行う。
8
委員会の検討結果については、定期的に院長に報告するとともに、医療安全
推進担当者を通じて、各職場に周知する。
9
委員会の開催は、概ね毎月1回とする。ただし、必要に応じ、臨時の委員会
を開催できるものとする。
10
委員会の記録その他の庶務は、医療安全管理室が行う。
11
重大な問題が発生した場合には、委員会において速やかに発生の原因を分析
し、改善策の立案及び実施並びに職員への周知を図る。
(院内感染対策のための指針の策定)
第5条
次に掲げる事項を内容とする「院内感染対策のための指針」を策定
する。
一
院内感染対策に関する基本的考え方
二
院 内 感 染 対 策 の た め の 委 員 会( 以 下 、「 院 内 感 染 対 策 委 員 会 」と い う )、
及びその他の院内感染対策に係る院内の組織に関する基本的事項
三
院内感染対策のために職員に対して行われる研修に関する基本方針
四
感染症の発生状況の報告に関する基本方針
五
院内感染発生時の対応に関する基本方針
六
患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
七
その他院内における院内感染対策の推進のために必要な基本方針
2
院 内 感 染 対 策 の た め の 指 針 は 、院 内 感 染 対 策 委 員 会 の 議 を 経 て 策 定 及 び
変更するものとする。
(医療安全管理室の設置)
第6条
委員会で決定された方針に基づき、組織横断的に院内の安全管理を担う
ため、院内に医療安全管理室を設置する。
2
医療安全管理室は、医療安全管理者、医療安全推進担当者及びその他必要な
職員で構成され、医療安全管理室長は、副院長とする。
3
医療安全管理室の所掌事務は以下のとおりとする。
一
委員会で用いられる資料及び議事録の作成及び保存並びにその他委員会
の庶務に関すること
二
医療安全に関する日常活動に関すること
①
医療安全に関する現場の情報収集及び実態調査(定期的な現場の巡回
・点検、マニュアルの遵守状況の点検)
165
②
マニュアルの作成及び点検並びに見直しの提言等
③
ヒヤリ・ハット体験報告(ヒヤリ・ハット事例を体験した医療従事者
が、その概要を記載した文書をいう。以下同じ。)の収集、保管、分析、
分析結果などの現場へのフィードバックと集計結果の管理、具体的な改善
策の提案・推進とその評価
④
医療安全に関する最新情報の把握と職員への周知(他病院における事故
事例の把握など)
⑤
医療安全に関する職員への啓発、広報(月間行事の実施など)
⑥
医療安全に関する教育研修の企画・運営(具体的な内容については、第
19条を参照)
⑦
医療安全対策ネットワーク整備事業に関する報告
⑧
医療安全管理に係る連絡調整
三
医療事故発生時の指示、指導等に関すること
①
診療録や看護記録等の記載、医療事故報告書の作成等について、職場責
任者に対する必要な指示、指導
②
患者や家族への説明など事故発生時の対応状況についての確認と必要
な指導(患者及びその家族、警察等の行政機関並びに報道機関等への対応
は、院長、副院長のほかそれぞれの部門の管理責任者が主として行う。)
③
院長又は副院長の指示を受け、医療事故の原因分析等のための臨時医療
安全管理委員会を招集
④
事故等の原因究明が適切に実施されていることの確認と必要な指導
⑤
医療事故報告書の保管
四
その他医療安全対策の推進に関すること
五
医療安全管理室の中に作業部会を設置し、医療安全管理室の業務の一部を
行うことができる。
(医療安全管理者の配置)
第7条
医療安全管理の推進のため、医療安全管理室に医療安全管理者を置く。
1
医療安全管理者は、医療安全に関する十分な知識を有する者とする。
2
医療安全管理者は、医療安全管理室長の指示を受け、各部門の医療安全推進
担当者と連携・協同の上、医療安全管理室の業務を行う。
3
医療安全管理者は医療安全管理室の業務のうち、以下の業務について主要な
役割を担う。
一
医療安全管理室の業務に関する企画立案及び評価に関すること。
二
病院における職員の安全管理に関する意識の向上及び指導に関すること。
三
医療事故発生の報告又は連絡を受け、直ちに医療事故の状況把握に努める
こと。
166
(医療安全推進担当者の配置)
第8条
各部門の医療安全管理の推進に資するため、医療安全推進担当者を置
く。
1
医療安全推進担当者は、各診療科及び各看護単位にそれぞれ1名を、また、
薬剤科(薬剤部を含む。)、研究検査科、事務部等各部門にそれぞれ1名を置
くものとし、院長が指名する。
2
医療安全推進担当者は、医療安全管理室の指示により以下の業務を行う。
一
各職場における医療事故の原因及び防止方法並びに医療安全管理体制の
改善方法についての検討及び提言
二
各職場における医療安全管理に関する意識の向上(各部門における事故防
止確認のための業務開始時のミーティングの実施などの励行等)
三
ヒヤリ・ハット体験報告の内容の分析及び報告書の作成
四
委員会において決定した事故防止及び安全対策に関する事項の各職場へ
の周知徹底、その他委員会及び医療安全管理室との連絡調整
五
職員に対するヒヤリ・ハット体験報告の積極的な提出の励行
六
その他医療安全管理に関する必要事項
(医薬品安全管理責任者の配置)
第9条
医薬品の安全使用のために必要となる情報の収集その他医薬品の
安 全 確 保 を 目 的 と し た 改 善 の た め の 方 策 を 実 施 さ せ る た め 、医 薬 品 安 全 管 理
責任者を置く。
(医療機器保守管理責任者の配置)
第10条
医療機器の保守点検、安全使用の確保等の推進に資するため、医
療機器保守管理責任者を置く。
(職員の責務)
第11条
職員は、業務の遂行に当たっては、常日頃から患者への医療、看護等
の実施、医療機器の取扱いなどに当たって安全な医療を行うよう細心の注意を払
わなければならない。
(患者相談窓口の設置)
第12条
患者等からの苦情、相談に応じられる体制を確保するために、院内に
患者相談窓口を常設する。
2
患者相談窓口の活動の趣旨、設置場所、担当者及びその責任者、対応時間等
について、患者等に明示する。
3
患者相談窓口の活動に関し、相談に対応する職員、相談後の取扱、相談情報
の秘密保護、管理者への報告等に関する規程を整備する。
167
4
相談により、患者や家族等が不利益を受けないよう適切な配慮を行う。
5
苦情や相談で医療安全に関わるものについては、医療安全管理室に報告し当
該病院の安全対策の見直し等に活用する。
(ヒヤリ・ハット事例の報告及び評価分析)
第13条
一
報告
院長は、医療安全管理に資するよう、ヒヤリ・ハット事例の報告を促進す
るための体制を整備する。
二
ヒヤリ・ハット事例については、当該事例を体験した医療従事者が、そ
の概要ヒヤリ・ハット体験報告(別添5)に記載し、翌日までに、医療安
全推進担当者に報告する。
三
医療安全推進担当者は、ヒヤリ・ハット体験報告等から当該部門及び関
係する部門に潜むシステム自体のエラー発生要因を把握し、リスクの重大
性、リスクの予測の可否及びシステム改善の必要性等必要事項を記載して、
医療安全管理室に提出する。
四
ヒヤリ・ハット体験報告を提出した者に対し、当該報告を提出したこと
を理由に不利益処分を行ってはならない。
五
ヒヤリ・ハット体験報告は、医療安全管理室において、分析・検討が終了
するまで保管する。
2
評価分析
ヒヤリ・ハット事例について効果的な分析を行い、医療安全管理に資する
ことができるよう、必要に応じて、当該事例の原因、種類及び内容等をコ
ード化した分析表(別添6。以下「ヒヤリハット・医療事故情報分析表」
という。)を活用し、評価分析を行う。
3
ヒヤリ・ハット事例集の作成
ヒヤリ・ハット事例を評価分析し、医療安全管理を資することができるよう、
事例集を作成する。
なお、事例集については、ヒヤリ・ハット体験報告に基づき、定期的に事例
の追加記載を行い、関係職員への周知を図る。
(医療事故の報告)
第14条
一
院内における報告の手順と対応
医療事故が発生した場合は、次のとおり直ちに上司に報告する。
①
医師(歯科医師) → 医長→ 診療部長 → 副院長
②
薬剤師 → 主任薬剤師 → 薬剤部長又は薬剤科長 → 副院長
③
看護師 → 看護師長 → 看護部長又は総看護師長 → 副院長
④
医療技術職員(①∼③に掲げる者を除く) → 技師長 → 副院長
⑤
事務職員 → 係長 → 課長 → 事務部長又は事務長 → 副院長
168
二
副院長は報告を受けた事項について、委員会に報告するとともに、事故
の重大性等を勘案して、速やかに院長に対して報告する必要があると認め
た事案は、その都度院長に報告し、それ以外の事案については適宜院長に
報告する。
三
患者の生死に関わる医療事故等、特に緊急的な対応が必要な場合におい
ては、医師、薬剤師、看護師等は、それぞれ、医長、主任薬剤師、看護師
長
等にただちに連絡が出来ない場合は、直接、診療部長又は副院長、薬剤
部
長又は薬剤科長、看護部長等に報告する。
2
院内における報告の方法
報告は、文書(「医療事故報告書」。別添11の1及び別添11の2。)に
より行う。
ただし、緊急を要する場合は、直ちに口頭で報告し、その後文書による報告
を速やかに行う。
なお、医療事故報告書の記載は、①事故発生の直接の原因となった当事者が
明確な場合には、当該本人、②その他の者が事故を発見した場合には、発見者
とその職場の長が行う。
3
国立病院機構本部及び所管のブロック事務所への報告
一
次項に規定する医療事故が発生した場合、医療事故報告書(様式は別添1
2のとおり。)を、「三」の報告時期等のルールに基づき、国立病院機構本
部及び所管のブロック事務所に報告する。
二
報告を要する医療事故の範囲
①
誤った医療又は管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は
管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例
又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治
療を要した事例。
②
誤った医療又は管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管
理に起因して、患者死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は
予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を
要した事例(行った医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該
事例の発生を予期しなかったものに限る)。
③
前2号に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び
再発の防止に資する事例。
三
報告時期等のルール
①
委員会等での検証作業終了後の報告(概ね2週間以内に行う必須報告)
発生した医療事故に関し委員会等で原因分析、再発防止策検討等の検証
作業を行った上で、その内容を踏まえた医療事故報告書(上記(3)-ア)を作
成し、所管のブロック事務所を通じて国立病院機構本部に報告する。
②
危機管理の観点からの報告(院長の判断による報告)
169
危機管理の観点から国立病院機構本部・ブロック事務所と情報を共有し
ていることが必要と判断される医療事故が発生した場合は、事故発生後速
やかに、その段階で把握できている事故内容、患者状況等の客観的事実や、
必要に応じ対外的対応方針等を、所管のブロック事務所を通じて報告す
る。また、委員会等での検証作業終了後には、追加的に原因分析、再発防
止策等の内容を含む医療事故報告を行う。
③
「①」の報告を行った後、例えば拡大医療安全管理委員会が開催される
など、追加的に検証作業等が行われた場合は、追加的報告を行う。
4
医療事故報告書の保管
医療事故報告書については、独立行政法人国立病院機構文書管理規定(平成
16年規程第10号)第34条第1項第5号に該当する法人文書として、医療
安全管理室において保管する。
(発生した事例等の患者影響レベルによる整理)
第15条
発生したヒヤリ・ハット事例や医療事故が患者にどの程度の影響
が有ったかを、別添1「患者影響レベルの指標」により整理する。
(患者・家族への対応)
第16条
患者に対しては誠心誠意治療に専念するとともに、患者及び家族に対
しては、誠意をもって事故の説明等を行う。
2
患者及び家族に対する事故の説明等は、幹部職員が対応することとし、そ
の際、病状等の詳細な説明ができる担当医師が同席する。なお、状況に応じ、
医療安全管理者、部門の管理責任者等も同席して対応する。
(事実経過の記録)
第17条
医師、看護師等は、患者の状況、処置の方法、患者及び家族への説 明
内容等を、診療録、看護記録等に詳細に記載する。
2
記録に当たっては、具体的に以下の事項に留意する。
一
初期対応が終了次第、速やかに記載すること。
二
事故の種類、患者の状況に応じ、出来る限り経時的に記載を行うこと
三
事実を客観的かつ正確に記載すること(想像や憶測に基づく記載を行わな
い)。
(医療安全管理のための職員研修)
第18条
個々の職員の安全に対する意識、安全に業務を遂行するための技能や
チームの一員としての意識の向上等を図るため医療に係る安全管理のための基
本的考え方及び具体的方策について、職員に対し以下のとおり研修を行う。
一
医療機関全体に共通する安全管理に関する内容とする。
170
二
医療に関わる場所において業務に従事するものとする。
三
年2回程度定期的に開催、それ以外にも必要に応じて開催する。
四
実施内容について記録を行う。
(医療安全対策ネットワーク整備事業への協力)
第19条
医療現場におけるヒヤリ・ハット事例等を全国の医療機関から一元的
に収集し、この情報を基に、ガイドラインの策定、製品の基準化、関係団体への
製品の改良要請等を行う医療安全対策ネットワーク事業に対し、事例の報告を行
う。(別添8)
(医療機能評価機構への医療事故事例の報告)
第20条
医療事故のうち、医療法施行規則に示されている、医療に係る事故の
範囲に該当する事例については、医療機能評価機構に報告する。本制度は医政局
において整備されている。(別添9)
(医薬品・医療用具等安全性情報報告制度に関する報告)
第21条
医薬品又は医療用具の使用による副作用、感染症又は不具合が発生
(医療用具の場合は健康被害が発生するおそれのある場合を含む)した場合、保
健衛生上の危害の発生又は拡大を防止する観点から報告の必要があると判断し
た情報(症例)は、別添の様式により報告する。(医薬品又は医療用具との因果
関係が必ずしも明確でない場合であっても報告の対象となりうる)(別添10)
( 警察への届出)
第22条
医療過誤によって死亡又は障害が発生したことが明白な場合には、速
やかに所轄警察署に届出(以下「届出」という。)を行う。ま た 、死亡又は障害
が発生し、医療過誤の疑いがある場合についても、届出について本部との協議も
考慮して対応する。
2
届出は、別添13「警察への届出に当たっての手順」に基づき行う。
(重大な医療事故が発生した場合の対外的公表)
第23条
重大な医療事故等が発生した場合には、別添14の「国立病院機構医
療事故公表指針」に基づき対応する。
(拡大医療安全管理委員会の開催)
第24条
院内の安全管理委員会で、発生した医療事故の過失の有無、原因等に
ついて十分な結論づけができない場合、院長は、拡大医療安全管理委員会を開催
する。
2
拡大医療安全管理委員会の委員構成や運用は、別添15のとおりとする。
171
別添13
警察への届出に当たっての手順
1.届出前に、緊急の医療安全管理委員会等を開催し、事故の事実関係等の調査・確
認を行う。
2.原則として届出前に、診療録、看護記録等の点検を行い、記載もれが明かな場合
は追加記載を行った上で、診療録等のコピーを行う。なお、追加記載が必要な場合
は、追記した日時を記載し、記載者の署名を必ず行う。
3.届出前に、病院長はブロック事務所に事故の概要報告を行なう。ブロック事務所
は、その内容を速やかに国立病院機構本部へ報告する。
4.届出前に、患者・家族に対し医師法21条及び本指針により、医療過誤又はその
疑いあるときは、警察への届出が必要であることについて説明を行う。
5.届出を行なった後、病院長は届出内容をブロック事務所に報告する。また、ブロ
ック事務所は、国立病院機構本部に報告する。
6.事故当事者への事情聴取が終了した後、病院長は当該者の理解を得ながら供述内
容について記録を行いブロック事務所に報告する。ブロック事務所は、その内容を
国立病院機構本部に報告する。
7.病院は事故当事者のカウンセリングを随時行うなど、精神的サポートに務める。
8.対外的公表について、病院は、ブロック事務所や顧問弁護士とも相談をしながら
準備を進める。取材申し込みが合った場合は、その段階で再度、ブロック事務所や
顧問弁護士に相談を行う。ブロック事務所は、必要に応じて国立病院機構本部に相
談を行う。
9.公表の際は、必ず患者・家族の意向を確認する。
10.原則として、出来るだけ速やかに拡大医療安全管理委員会を開催し、事実関係の
調査、原因の究明、再発防止策等について協議する。
11.警察への届出事例に係るブロック事務所・国立病院機構本部への報告は、「警察
への届出報告」として行う。
172
別添14
国立病院機構医療事故公表指針
この指針は、国立病院機構が、医療事故が発生した事実とその対応策等を公表して
いくことにより、病院運営の透明性を高め社会の信頼性を獲得するとともに、他の医
療機関における類似の医療事故発生防止対策にも資することを通じ、我が国全体の医
療安全対策の推進に貢献していくことを目的として定めるものである。
1.事故発生病院において個別的に公表する場合
(1)個別的公表の範囲
ア
明かな医療過誤であり、患者が死亡、若しくは重大な永続的障害が発生した場
合とする。
イ
その他、個別公表が医療安全対策の観点から社会的意義が大きいと考えられる
ものについても公表を行う。
(2)公表の時期
ア
事故発生後、可及的速やかに、院内の医療安全管理委員会等を開催し事故の事
実関係の確認などを行った上で公表する。
イ
拡大医療安全管理委員会を開催し検証作業を行った場合は、その報告書等につ
いても追加的に公表を行う。
ウ
また、発生した事故に係る機構内部の専門医等の状況などから、拡大医療安全
管理委員会に代えて、機構以外の有識者を交えた事故調査委員会を開催した場合
についても、追加的に公表を行う。
(3)公表内容
ア
事故の概要
イ
事故後の対応と経過
ウ
事故の発生原因
エ
今後の事故防止対策
オ
その他、必要と認める事項
(4)公表の方法
原則として報道機関に対し公表する。
2.国立病院機構全体で包括的に公表する場合
(1)「事故発生病院において個別的に公表する場合」以外の事例については、国立
病院機構本部において包括的に公表する。
(2)機構本部において一定期間毎に取りまとめた包括的な医療事故報告書により公
表を行う。
(3)公表の方法は、国立病院機構ホームページにおいて行う。
173
3.個人情報への配慮
(1)公表に際しては、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」
(平成15年5月30日法律第59号)に基づき、患者側のプライバシーに十分配
慮をし、その内容から患者が特定、識別されないよう個人情報を保護する。
(2)医療従事者については、病院としての事例検証を行う中で、公表内容から直ち
に関係職員が特定、識別されることのないよう配慮する。
4.個別的公表に際しての患者・家族等からの同意
(1)患者本人はもちろん、原則として家族等からも同意を得る。
(2)患者が死亡した場合は、原則として遺族から同意を得る。
(3)患者が意識不明の場合や判断能力がない場合は、原則として家族等から同意を
得る。また、患者の意識回復に併せて、速やかに本人への説明を行ない、本人の
同意を得るよう努める。
(4)同意を得るに当たっては、公表することだけでなく、その内容についても、公
表する内容を書面で示しながら十分説明を行う。
(5)同意の有無、説明の内容を記録し医療安全管理委員会の書類として保存する。
(6)公表するか否かの判断は、患者又は家族等の意向を最大限尊重して行う。
5.個別的公表の判断
公表するか否かの判断等については、病院内の委員会の意見や患者・家族の意向
等を踏まえ、病院長が決定する。また、必要に応じて国立病院機構本部、ブロック
事務所と協議する。
6.機構本部、ブロック事務所への連絡
個別公表することを決定した場合は、公表資料等を添えて速やかに国立病院機構
本部、ブロック事務所に連絡を行う。
174
別添15
拡大医療安全管理委員会運用規程
1 . 拡大医療安全管理委員会は、
①
医療事故が発生した当該病院の委員(院長を含む)、
②
専門委員、顧問弁護士(又は病院担当の弁護士)、
③
各委員から出される様々な意見等を中立的立場から調停し、円滑に委員会を進
行していく役割の委員(以下、「調停委員」という。)、
④
ブロック事務所担当者、
等で構成することとし、当該病院又はブロック事務所において、当該病院の院長が
開催する。
2.ブロック事務所は、必要に応じ専門委員及び調停委員の名簿を整理する。
3.開催に際しては、院長は開催日時の調整、専門委員及び調停委員の選出、顧問弁
護士への連絡などをブロック事務所に依頼する。
4.拡大医療安全管理委員会を開催する病院の院長は、当該委員会に出席する専門委
員及び調停委員が所属する病院の院長に派遣を依頼する。
5.拡大医療安全管理委員会の議事進行は、調停委員が行い、専門委員は、第三者的
立場から医学的意見や助言を述べ、顧問弁護士(又は病院担当の弁護士)は、法的
な立場から医療過誤の有無等について意見を述べる。
6.当該病院は、拡大医療安全管理委員会の審議内容を取りまとめ、ブロック事務所
に報告書を提出する。
7.拡大医療安全管理委員会は、専門委員及び調停委員参加のもと当該病院又はブロ
ック事務所において開催することを基本とするが、審議する医療事故の内容等に応
じ、簡便な方法であっても同様の効果を得られると考えられる場合は、その方法で
開催しても差し支えないものとする。
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