四川地震の震漉モヂルの構築 倉橋奨 3.1

12
.四川地震の震漉モヂルの構築
倉橋奨
1.はじめに
2008年 5月 12日に中国四川省で Mw7.9の地震が発生した。筆者らは、にてこの地震における強震動生
成域をモデル化した特性化震源モデルの構築を実施している (
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、2010)。しかしながら、
この論文では、主要な強震動が生成された南西セグメントのみのモデル化であった。また、破壊開始点の近傍地
点で、明瞭な 2つの波群を持つ Wolong観測点 (WCW)の 2つ目の波群の評価が芳しくなかった。既往論文では、
アスペリティ内の破壊速度のばらつきゃ、背景領域を考慮するなど、の方法で改善を図っているが、良い成果が得
られていない。
ここでは、 WCW観 測 点 の 2つ め 目 の 波 群 に 注 目 し て 、 南 西 セ グ メ ン ト に お け る K
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2
01
0
)の特性化震源モデ、ルの改良そ行った。また、北東セグメントの特 性化震源モデ、ルの構築も行った。
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2
. 震源モデルの構築手法
K
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2
01
0
)では、震源モデルの構築として、まず経験的グリーン関数法により、アスペリ
ティの場所、面積、応力降下量、各アスペリティの破壊開始点等のパラメータを決定し、その次に、低周波成
分も評価するため、Di
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ewavenumber法 (DWNM) (Bouchon,1981)による理論的手法により計算老実施
している。しかしながら、今回のターゲットとなる WCWの 2つ目の波群は、長周期成分が卓越しているため、
経験的グリーン関数法で使用する小地震では、評価すべき低周波成分のパワーがない可能性が高い。そこで、今
回は、最初に理論的手法によりアスペリティの面積や破壊開始点、応力降下量等そ再評価し、その後、経験的グ
リーン関数法により高周波部分における観測記録と計算波形とのチェックを行った。
3
. 長周期帯域の特性化震源モデルの構築
3.1 南西セグメントの震源モデルの改良
1~ 10秒帯域の長周期地震動のための震源モデルー
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2
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)で構築された震源モデルを示す。また、図 2には、 K
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図 1r
、SFB観測点の観測記録(黒色)
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0
)で構築された震源モデルから理論的手法により計算された WCW
と計算波形(灰色)の比較を示す。 WCWは破壊開始点よりも南西側で破壊進行方向と逆方向、 SFB観測点は破
壊開始点よりも北東にあたりフォワード方向にあたる。 SFBや AXTの主要動部分、 MZQの NS成分は、観測記
録とよく一致から、震源モデルの妥当性を示している。一方で、 WCWに関しては、 l波群自に関しては観測記
録と調和的であるが、 2波群目に関してはかなり過小評価である。本報告では、この部分の改善を考える。
本報告では、 2波群目に寄与するアスペリティ 2に関して、 WCW方向にも破壊が進行するモデ、ルを考えた
O
この際、 SFBや MZQなどの他の地点でも観測記録と整合性がつくようなモデルを観測記録と計算波形との比較
から試行錯誤的にパラメータを変更し構築した。震源モデルの構築には、パルスの幅と振幅の大きさに注目して
実施した。その結果のアスペリティ 2の震源モデルを図 3に、観測波形と計算波形の比較を図 4に示す。
アスペリティの小断層を WCW側にも追加することにより、 WCW側に破壊が進行し、 WCWの計算波形も大
きくなり、観測波形と調和てきであることがわかる。一方で、 SFBや MZQ観測点の変化も少なく、どの観測点
に関しでも観測記録と調和的であることがわかった。
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図1 K
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)
図2 K
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による南西セグメントの特性化震源モ
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(
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)による南西セグメント
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の特性化震源モデ、ノレ
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図 3 改良された南西セグメ
図 4 改良された南西セグメントの特
ントの特性化震源モデ、/レ
性化震源モデ、ノレから計算された合成波
(ASP2のみを記載)
形 と 観 測 波 形 の 比 較 (ASP2のみ)
3.2 北東セグメントの特性化震源モデルの構築
北東セグメント付近における観測点は、図 3からもわかるように、南西セグメントよりも非常に少なく、ま
た、断層からも遠い位置であるため、観測された記録には明瞭なパルスは見られない。また、いくつかの波群が
重なっており、北東セグメントにあるアスペリティからとみられる波の立ち上がりは明瞭でない。このことから、
北東セグメントでは、詳細な断層モデルの構築は難しいと考えられる。そこで、はじめに、 K
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k
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2
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0
9
)
による強震動と遠地実体波を用いたジョイントインパージョン結果から推定された、すべりの大きな場所にアス
ペリティを設定し、初期解析を実施した。そして、その計算波形と観測波形との比較から、アスペリティの場所
や面積を試行錯誤的に変更して観測波形を満足する震源モデ、ルの構築を試みた
O
図 5に構築した震源モデルを、
図 6に北東セグメントに近い観測点の観測記録と計算波形の結果を示す。
3
.1、 3.2では、 K
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k
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(
2
010
)による震源モデルより、アスペリティ 2を南西側に面積を
大きくし、また、北東セグメントのアスペリティモデルを構築した。これらの震源モデルを元に、観測波形と計
算波形の合いを見て、震源モデルの微調整を行った。具体的には、 K
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(
2
010
)の震源モデル
におけるパラメータに対して、ライスタイム、すべり角、地震モーメントを変更して、観測波形と計算波形との
50
一致度から、最適なモデルそ構築した。ただし、一致度は波形の目視で確認した。
その結果により構築された特性化震源モデルを図 7に、観測波形と計算波形との比較図を図 8に示す。
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図 5 北東セグメントの特
図 6 北東セグメントの特性化震源
性化震源モデ、ノレ
モデルより計算された合成波形と観
測波形の比較
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図 7 改良された南西セグメントと北
図 8 改良された南西セグメントと北東セグ
東セグメントの特性化震源モデ、ノレ
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図 8の続き
4
. 特性化震源モデルの高周波帯域の強震動
特性化震源モデルの高周波帯域の検討のために、経験的グリーン関数法にて波形合成を行った。 しかしながら、
本地震の余震記録は公開されていないため、 K
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(
2
01
0
)と同じ考えにより、岩手宮城内陸地
震の小地震記録を経験的グリーン関数とみなし解析を行った。 ここで、経験的グリーン関数としては、震源距離
と観測点のサイト特性が近似している必要がある。 ここでは、震源距離は、四川地震本震の記録とほぼ同じ震源
5
1
距離の記録を用いることとした。また、サイト特性に関しては、詳細はほとんどわからないため、山地か盆地程
度の判断ではあるが、本震観測点と近似した観測点の記録を選択した。
断層モデルは、 3
. 1と 3.2で構築したモデルを適用する。図 8~こ観測波形(黒)と計算波形(赤)との比較を
示す。地点によっては、加速度が非常に卓越する場所がある。これは、経験的グリーン関数として利用した観測
点のサイト特性の影響と考えられる。
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図 9 経験的グリーン関数法による合成波形と計算波形の比較
5
. まとめ
本研究では、 2008年四川地震の特性化震源モデルの改良を実施した。その結果、主要な強震動を生成し
た南西セグメントの
A
S
P
2を南側に大きくし、
wcw側にも破壊が進行するように改良した。また、北西セグメ
ントは、 4つのアスペリティにより観測波形が再現可能であることを示した。
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