地域の専門家と連携した大学における法教育の可能性

法と教育学会
第6回学術大会
第10分科会-③
地域の専門家と連携した大学における法教育の可能性
宮﨑 秀一(弘前大学教育学部)
平野 潔(弘前大学人文学部)
1.はじめに
本報告では、弘前大学人文学部と教育学部で共同開講した「子どもと法律」(2014年度後期
開講)「地域における青少年の保護」(2015年度前期)の2つ授業について、そのねらいや概要
を紹介しつつ、成果・効果について考察を加えたいと考えている。
2.本報告で紹介する実践例の特色
本報告で紹介する実践例に関しては、2つのキーワードが重要になる。すなわち、「学生の主
体的な学び」と「地域との連携」である。昨今、社会人として必要な能力を有する人材育成が
大学の使命とされ、「学生の能動的な活動を取り入れた授業や学習法(いわゆるアクティブ・
ラーニング)」を積極的に取り入れることが求められている。また、他方で、地方国立大学に
おいては地域貢献が使命とされ、地域との連携が要求されている。その両者を踏まえて構想さ
れたのが、本報告で紹介する2つの授業である。この2つのキーワードは、教養科目か学部専門
科目かを問わず、今日の大学教育における重要な視座であり、本報告で紹介する2つの授業は、
これを法教育に応用する試みと言える。
また、学部横断型の授業であるという点も、この2つの授業の1つの特色と言うことができる。
報告者の宮﨑は教育学部の社会科教育講座で法学分野を担当しており、平野は人文学部の法学
コースで刑法を担当している。そこで、教育学部と人文学部の学生の共通の関心領域として
「子ども」と「青少年」をめぐる法的課題について探求・考察することとし、教育学的な視点
と法学的な視点から学生自ら主体的に学ぶタイプの授業を構想した。
3.授業の概要
2014年度後期に実施した「子どもと法律」は、家事事件と少年事件のいずれにおいても子
どもが当事者となりうる青森家庭裁判所に協力を要請した。小テーマを「少年非行」「離婚」
「虐待」
「親子関係」の4つとした。
2015年度前期に実施した「地域における青少年の保護」では、現代の青少年が抱える困難
な状況について、虐待の防止・救済などの児童福祉行政、非行少年を裁く少年司法、そこで決
められた措置により少年を処遇する少年更生保護行政、いじめや不登校などに対する学校生徒
指導に従事する4つの機関に協力を要請した。
以上2つの授業は、ともに、授業テーマに関連して、司法機関および行政機関の専門家から、
問題提起を含めたレクチャーをお願いした。学生は、前者ではレクチャーを受けた後、テーマ
についてグループワークを行い、後者では学生自身がグループごとにテーマを設定・選択して、
協働して調査活動を行い、その成果を報告するというスタイルで授業を展開した。
4.おわりに
当日の報告では、実際の授業の様子や学生の感想、アンケート結果などを踏まえて、大学に
おける法教育の可能性について検討してみたい。