太田 正行 - 法と教育学会

法と教育学会
第 6 回学術大会
第 7 分科会-⑤
高等学校家庭科における法教育の歩み
~家族法を中心に~
太田正行(慶應義塾大学教職課程センター)
1 はじめに
旧教育基本法前文では「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建
設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本に
おいて教育の力にまつべきものである」とされた。戦後の民主的・文化的な国家建設には、
「教育
の力」が期待された。そのため、戦前の修身・公民・地理・歴史に代わり「社会」が、家事・裁
縫などが廃止され「家庭」が、新教科として設置された。法教育の観点から見ると、
「社会」では、
日本国憲法を中心に政治や経済などの学習により公民的資質を養い、
「家庭」では、衣・食・住生
活や保育などのほか、新民法(家族法)を中心に民主的な家庭・家族関係の建設・確立のための
学習が行われてきた。ここでは、高等学校家庭科において、民法第 4 編親族及び第 5 編相続(家
族法)がどのように学習されてきたか、学習指導要領や教科書、実践事例などをもとに報告する。
2 学習指導要領の変遷
①昭和 24 年度「学習指導要領 家庭科編 高等学校用」
「一般家庭」では単元1「友だち」、単元2「成人するということはどういうことか」、単元3
「私の家庭と家族」、単元4「結婚の資格としたく」、「選択」として単元5「親になる・・・私」
と単元6「仕事に成功するには」があり、ここでは、単元4「結婚の資格としたく」を取り上げ
る。この単元では、多様な学習活動により、結婚や家族の意味を認識させるとともに、結婚生活
に必要な要素を確認し、結婚により始まる家庭生活を営むのに必要な技術や能力を身に付けさせ
る。結婚(婚姻)は法律行為の一つであり、結婚に必要な法規を調べ結婚の要件や効果を認識さ
せる。その際、婦人弁護士など法律の専門家から話を聞き質問させるなどが学習活動として想定
され、結婚生活を成功させるために必要なことを理解させることになっていた。
②昭和 31 年度改訂版「高等学校学習指導要領 家庭科編」以降「家族法」に関する記述なし。
③平成元年度「高等学校学習指導要領解説 家庭編」
男女が協力し家庭を築いていくこと、生活に必要な知識と技術を習得させることなどの観点か
ら、男女とも必修の教科となり、「家庭一般」(4 単位)において、家庭と社会とのかかわりとし
て、
「家族と法律」で家族法の基礎的な知識を理解させることになった。
④平成 12 年度高等学校学習指導要領解説 家庭編」
「家庭基礎」(2 単位)で、(1)人の一生と家族・福祉における「ア
生涯発達と家族」の(イ)家
庭の機能と家族において、家族法に触れ、社会制度としての家族を考えさせることになった。
⑤平成 22 年度高等学校学習指導要領解説 家庭編」
「家庭基礎」
(2 単位)では、(1)人の一生と家族・家庭及び福祉における「ア 青年期の自立と
家族・家庭」の(イ)生活と意思決定において、家族法などとも関連させ考えさせることになった。
3 教科書について
*家族法関連用語の扱いと「家庭基礎」の教科書の分析
4 授業実践について
*初期家庭科における授業実践及び男女必修時代の授業実践の紹介