Bulletin 5月号PDFファイル

Bulletin
平成 3 年 4 月 16 日第三種郵便物認可 平成 23 年 4 月 23 日発行(隔月 15 日発行)第 26 巻 第 7 号 通巻 235 号
The Japan Institute of Architects Kanto-Koshinetsu Chapter
2012
Vol. 235
5
特集:アーキテクツ・ガーデン 2012
柳学アーキテクツ 柳 学
2
構想建築設計研究所 上浪 寛
3
一級建築士事務所 西勝建築設計 西勝郁郎
4
林魏建築設計事務所 赤羽吉人
5
JIA 建築家大会 2012 横浜広報部会
6
・アーキテクツ・ガーデン 2012
COLONNADE
・一味違うアーキテクツ・ガーデン 2012 を皆で盛り上げましょう!
特集 : 新春の集い
・2012 年新春の集い「JIA のこれから」報告
・第 8 回 「2050 年の建築家を考える 」 シンポジウム
JIA 建築家大会 2012 横浜大会
ニーマイヤーの曲線に魅せられて 桜本建築設計事務所 Atelier-SAS 桜本将樹
8
三菱地所設計 東條隆郎
10
私の思い出の建築家 圓堂政嘉氏
FORUM
時間の痕跡と経済性
SPEAC,Inc. 宮部浩幸
11
株式会社日建設計 矢野雅規
11
左知子建築設計室 左 知子
12
パシフィック・デザイン・システムズ 米澤正己
13
日本大学理工学部建築学科 教授 横河 健
14
「建築」するための強さとはなんだろうか?
23 年度文化財ドクター事業の報告
建築家職能運動のいまを考える
JIA トーク・山田洋次監督「映画をつくる」を聞いて
靗
建築家 高橋 一氏
60 年の軌跡「人・建築・都市」に参加して
スタジオクチン 佐藤文人
15
市民と建築家を結ぶサイトアーキテクツファイル
顧客支援システム委員会
16
地域会の活動を顧みて
松本建築設計事務所 松本 裕
17
エー・エープランニング 青木恵美子
18
ケン アンド スタジオ バンガード 佐々木健
20
アトリエ六曜舎 湯浅 剛
21
横濱建築祭 2012 CROSS×CROSS
世田谷地域会の新人として
高知県産材と大型木造建築(土佐材ツアー)
22
支部ダイジェスト
22
アーキテクツ・ガーデン プログラム
B A C K YA R D
こんな本を読みました 編集後記●「春」
社団法人日本建築家協会
〒
関東甲信越支部
150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-3-18 JIA 館
Tel: 03-3408-8291 Fax: 03-3408-8294 http://www.jia-kanto.org/members
デザイン部会長 連 健夫
23
23
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
アーキテクツ・ガーデン 2012
アーキテクツ・ガーデン
実行委員長
柳 学 第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
特 集 : アーキテクツ・ガーデン 2012
「一味違うアーキテクツ・ガーデン 2012 を
皆で盛り上げましょう!」
関東甲信越支部長
上浪 寛 昨年 UIA 東京大会の為にお休み致しましたアーキテクツ・
それらを補い、公益法人化に向けて、JIA の多彩な活動を
アーキテクツ・ガーデンは、建築家の仕事と役割を一般
機会ですし、次の活動に繋げるための情報交換の機会でも
ガーデンを今年は 6 月に行うこととなりました。今年は新
一般市民に知らしめることを目的に開催したいと考えてい
社会に示す事を目的として、JIA 関東甲信越支部が長年続
あります。月末の 6 月 29 日 ( 金 ) には基調講演と懇親会
生アーキテクツ・ガーデンとして、従来型のイベントでは
ます。
けてきたイベントです。今まで品川、新宿、銀座などを会
を予定しています。1 ヶ月の活動の成果を持ち合い、地域
なく、情報集約、発信型のイベントとして行う予定です。
今年はアーキテクツ・ガーデンとしての展示会場等は設け
場として、近年は神宮前本部周辺を会場として、1週間程
同士の情報交換をしながら酒を呑み交わし楽しい一夜とな
ずに、アーキテクツ・ガーデンは各地域会や部会等のイベ
度の会期で開催してきました。例年、各種セミナー、模型
る夜会を催す予定です。
ントの情報集約、発信委員会として位置付けています。
や地域会活動の展示、会員の各種活動発表等に汗を流して
会期は 6 月 15 日建築家の日をまたぐ、6 月の 1 ヶ月間と
昨年、念願の UIA 東京大会を成功裏に終えました。UIA
きました。
し、その間に各地域会、部会、委員会の例年の催しやワー
COLONNADE
大会をきっかけにして関東甲信越支部では他国との国際的
クショップをこの「アーキテクツ・ガーデン月間」に集約
今年のテーマは「建築家はともだち」です。
して頂き、大きな一つの括りとしてのイベントとする計画
建築家はもっと身近な存在であること。建築家が市民と共
2年ぶりに開催する 2012 年アーキテクツ・ガーデンは
な情報共有活動や、建築他団体との連携による共同事業な
です。
により良い未来の環境の構築をめざし、すまいや建築、街
装いを新たにします。5月末の本部総会終了後、新年度開
どが始動し、UIA 東京大会の成果を継承しています。また
や都市、地球環境を作っていくお手伝いをしたいという姿
始と同時にアーキテクツ・ガーデンが始まります。JIA 関
秋には JIA 全国大会が横浜で開催される予定で、JIA 関東
各々の単独イベントでは、集客や外部への情報発信が不十
勢を明確にアピールしていきたいと考えています。
東甲信越支部並びに支部内 23 地域会の活動について、一
甲信越支部の活動は昨年以上に活発です。
分であることを、連携した一括りのイベントとすることで
そのために一般雑誌等にもアーキテクツ・ガーデンの情
つ一つは一般社会から評価が高い普段の JIA 活動を 6 月に
報を掲載してもらえるよう働きかけています。基本的には
集約し、アーキテクツ・ガーデン月間イベントとして緩や
新年度活動の始まりとしてアーキテクツ・ガーデンを皆
WEB ページにて内容を見てもらうようにHPのアドレス
かに纏め、支部から一般社会に広報する仕掛けを作ります。
さんで盛り上げましょう。
を情報発信していきます。
1 都 9 県に渡る幅広い活動を会員同士で知り合える絶好の
〈(株)構想建築設計研究所〉
各々のプログラムは、「アーキテクツ・ガーデン 2012 参
加プログラム」と名打って、共通ロゴを表示してもらうよ
うにお願いしています。
アーキテクツ・ガーデン 2012 メインセミナー
今年は会員皆さんの活動を多くの一般の方々に見てもらう
機会となるべく進めていますのでご期待ください。
〈柳学アーキテクツ〉
■メインセミナー講師 コシノ ジュンコ氏
日時:2012 年 6 月 29 日(金)16:00 〜 17:00
※日程変更の可能性もありますので、HP にて最新情報をご確認下さい。
会場:建築家会館 1 階大ホール
参加費:会員 3,000 円 / 一般・学生 無料 定員:120 名(事前申込制) ※ 支部事務局まで
■メインパーティー
HPアドレス
http://www.jia-kanto.org/AG2012/
2
Bulletin 2012 年 5 月号
参加費:3,000 円
ロゴ
Bulletin 2012 年 5 月号
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COLONNADE
特 集 : アーキテクツ・ガーデン 2012
2012 年新春の集い
「JIA のこれから」報告
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
特 集 : 新春の集い
第 8 回 「2050 年の建築家を考える 」
副支部長・総務委員長 西勝 郁郎
シンポジウム 赤羽 吉人
2012 年の関東甲信越支部「新春の集い」が、平成 24 年 1 月
一方、次世代建築生産社会システムや他会との関係にも触れ、
2012 年新春の集い第1部前半のイベントとして1月13日、
『建
垣根を乗りこえられる契機
13 日 ( 金 ) 建築家会館 1 階ホールで開催された。第一部、後半は
JIA を取り巻く情勢について、建築5団体が共同で宣言した「建築・
築家職能の確立に向けて、これからが本番』のタイトルで、第8回
になるのではないかと提起
16 時から 17 時 30 分まで行われ、JIA 芦原太郎会長により「JIA
まちづくり宣言(2011.9.20)」でフェデレーションを組んだ実績
「2050 年の建築家を考える」シンポジウムが開催されました。一昨
されました。技術を法で縛
のこれから」を語って頂いた。
から、職能団体再編(建築設計者関連団体)のビジョンや、建築
年から足かけ3年に亘り、日本の建築生産システムにおける建築家
るのは無理がある。技術基
関連法規の改正・制定にも意欲を見せ新春に相応しい JIA のこれ
職能について、様々な角度から皆さんと共に考えてきましたが、シ
準は専門家の裁量に委ねる
からの話で締めくくった。
リーズの最終回と位置づけました今回のシンポジウムについて、報
ことが望ましい。最低基準
告いたします。
の遵守を定めた建築基準法
芦原会長は、まず現在の社会情勢分析をふまえたパラダイムシ
フトの総論として、経済至上主義の GNP( 国民総生産 ) からスロー
「2050 年の
建築家を考える」
シンポジウム
実行委員長
シンポジウム会場風景
COLONNADE
ライフの GNH(国民総幸福量)へと変革する機運について指摘し
続いて 1 時間ほど質疑応答に入った。最初に第一部前半の講演者
パネリストにはノンフィクション作家の山岡淳一郎氏と弁護士の
では限界がある。基本理念
た。特に 3.11 東日本大震災以降、人々の生活基盤を作ってきた「建
竹川弁護士から新たな建築家像について「過去の巨匠からこれから
竹川忠芳氏をお迎えし、コーディネーターの芦原太郎 JIA 会長共々
を謳った法律があれば各論
築の力」のあり方を理論的に見直す所からの問題提起を「知の原理」
は調停者」の話は弁護士にも共通する大切な視点であること。また、
前回と同一の顔ぶれです。
に対応することは比較的容
を用いて解説した。これは近代に見られた「普遍性、一義性、客
地域の意見収集では声の大きい者(うるさい者)の少数意見よりも
建築は「Social Capital」であり、歴史的視点からも建築を捉えたうえ
易になる。等々がその理由
観性」に対して、これからは「固有性、多義性、相互行為」への
サイレントマジョリティーの意見を聞くことが大事であると意見が
で
「良い建物を長く使う」
ための仕組み作りが大切であるとする山岡氏。
であるとされました。五会
変革の時代であり、UIA2011 東京宣言「災害を乗り越えて」
(Beyond
示された。同じく前半の講演者山岡氏からは、地域の住民活動では
明治の建築家辰野金吾を例示されて、現代の建築家に求められる
でも建築社会システム検討
Disaster Through Solidarity Towards Sustainability)の大会意義に
今までの「正解主義」では無くむしろ答えを出さない事により上手
ものは当時とは違い、市民から信頼されるためには専門家として
会として足並みを揃えることになっており、JIA としても建築・ま
つながるものであるとした。
くいく場合もある。として同様に調停者としての建築家の新たな運
もっといろいろな面に進出して地道な活動を続けることが必要で、
ちづくり基本法の素案をもとにまとめの再スタートを切りました。
次に、JIA の目指す新しい建築家像について、専門知識を地球規
動と対話を重視する意見が示された。会員からは、イギリスに習っ
それに加え、世界に通用する建築家の人材育成が大切と竹川氏。
要は良い建築を作るためのルール作りが必要ということです。
模で客観視できる理性と倫理性を持ち、建築を通して暮らしや地
て「CABE」の様な建築環境機構を創設し地域の活動を組織的にサ
今回は会場参加者からの意見も多く聴かせて頂くという企画と
TPP の問題は○か × かの極端な議論ではなく、どこを開いてど
域に貢献できる者であるべきとした。更に、これからは過去の巨
ポートし、更に行政から設計報酬の支援を得るなどの提案意見。2
し、まず東北の被災地の復興支援状況について、被災地の近くに専
こを閉じるかの問題として取り組む必要があります。その際設計
匠に対して調停者、作品に対して運動体、啓蒙に対して対話へと
人目の会員からは「デザインビルドなど」について JIA の更なる変
門家が少ないことが指摘され、建築家を初めとする専門家達が現地
サービス業の自由化に関して日本は明確な方針を持っていないこと
その背景が変革しているとし、UIA2011 東京大会で JIA が宣言し
革要望と課題の意見。3、4人目は「建築家資格制度」について再
に入って市民と一緒に自分達の目指す方向を考えて実行していくこ
が気懸かりです。
た「建築家宣言」に見る「公益寄与と公益保護」の趣旨にその新
検討すべきとの指摘と、JIA としてのスタンダードを示すべきなど
とが大切であるけれども、それを支援する制度や資金的裏付けがな
JIA としては UIA 準拠の設計者資格を日本の国に定着させる必要
たな原点があるとの考えを披露した。具体的には、これからの JIA
の意見があった。これに対して法資格制度担当の東條副会長からは、
いことが大きなネックになっていると報告されました。
があると考えており、それを国家資格にできれば二国間承認へと進
会員の活動は多様であり、仕事に責任を持ちブランド構築するス
過去から現状までを踏まえた経緯の説明と、今後の方策として消費
資格法、設計者選定、設計報酬といった設計者の環境改善につい
めるのですが、この議論はあまり進んでいません。UIA 大会を契機
ターアーキテクトや、国境を越えた支援や活動をするクロスボー
者に理解を得る表示制度の重要性が示された。最後の会員からは、
ては、業界3団体の一体化が難しければ執行部同士で常時意見交換
に「これからが本番」の第一歩として、国際化の問題を真剣に考え
ダーアーキテクト、市民や行政と地域のまちづくりを推進するコ
被災者への JIA の取組みに対して、債務免除問題などにも対応すべ
をして、後進の育成や社会からの信頼獲得といった共通項の議論を
ていきたいところです。
ミュニティーアーキテクトなどがあるとした。しかし、現実の業
きとし、同時にマスコミへの積極的なコメント発信要請があった。
進めることから着手することはできるはずで、残る問題は強制加入
設計業務自体が大きく変質しています。今後の社会情勢の変化に
を実現させることに尽きるのではないかと指摘されました。報酬の
関わらず、普遍的に対応するにはどうすればよいかとの問いかけに、
減少は弁護士会にとっても切実な問題とのことで、防御手段は唯一、
山岡氏は、経済のブロック化が進行する中で重要なのはグローバル
弁護士会への強制加入と公益活動への参加による一体感の醸成と社
なものから自給自足的なものへという動きであり、それを建築に当
会からの信頼獲得であるとの見解が示されました。
てはめれば領域を超えなければならないということで、結局は良い
建築五会会長会議でも協力できる課題から共同歩調をとろうとし
建物を長く使うというベースをしっかり守るということに行き着く
ていること、災害支援や国際化の問題は共同歩調をとりやすいこと、
と結びました。
団体同士は仲が悪いわけではなく、歴史と自分達の属性が違うとい
竹川氏は、日本の社会資本をつくっているという気概を持って、
う認識であること等が報告され、市民社会のために貢献しようとい
設計だけでなく建築に関わる多くの分野に進出して技術的な裏付け
う思いが一緒である以上、業界の中だけの議論に終始せず社会に開
を持った専門家として問題解決に当たってほしい、それが建築家の
かれた中で進めることが大切であるとされました。
使命、義務だとしました。
医師の世界でも開業医中心の医師会と勤務医中心の病院会の対立
それらを受けて芦原コーディネーターは、本当に市民に信頼され
を、診療報酬の改定問題と TPP 等による診療自由化圧力問題への対
る専門家でない限りは、建築家の今後というか、職能の確立はない
応で解消しようとしている実態が報告されました。
と結んで、8回に亘った「2050 年の建築家を考える」シンポジウ
建築界においても、建築基本法の制定に向けた動きが、団体間の
ムに幕を下ろしました。
務環境の課題として、低価格入札、PFI、建築家紹介システム、設
計報酬、責任能力など諸問題の改善にも JIA は積極的に関わるべ
きであるとした。
芦原会長
4
Bulletin 2012 年 5 月号
以上、1 時間 30 分の第一部、後半は 17 時 30 分に終了した。
〈一級建築士事務所 西勝建築設計〉
パーティー
パネリストの竹川氏 ( 左 ) と山岡氏
〈(株)林魏建築設計事務所〉
Bulletin 2012 年 5 月号
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COLONNADE
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
特 集 : 新春の集い
JIA 建築家大会 2012 横浜
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
基調講演 & パネルディスカッション
JIA 建築家大会 2012 横浜大会
日時 : 2012 年 11 月 29 日(木)、30 日(金)、12 月 1 日(土)、2 日(日)
場所 : 神奈川県横浜市 BankART Studio NYK、神奈川県民ホール、開港記念館 ( 予定 )
JIA 建築家大会 2012 横浜
-
江戸から学び、未来に繋ぐ -(仮称)
《 持続可能で幸福な社会のための環境を問う 》
3.11 を契機に、国内のあらゆる分野で、従来の価値観
江戸の何が特徴的であって、そのような社会を実現す
を根本から変えるパラダイムシフトの必要性が叫ばれ
るためには、建築家が他分野の専門家や市民と共にど
ています。この求めに対応するためには社会全体で大
のように「超えて」行くことが求められるのかについ
胆な発想の転換と多くの技術革新が必要になりますが、
て、講演をしていただきます。
論の場を設け、社会へ示す機会とする。災害復興に留まらず、未来に残すべき記憶と文化の
建築家にとっても、地域社会から付託された責務と役
後半は、田中氏の講話を問題提起として、パネリスト
大切さを一般市民と共に考え、共にこの時代を超えていく道筋を探る大会と位置づける。
割を明確にして、それを積極的に担っていくことを通
自身の主張する視点から、現代の日本社会に潜む問題
じて、地域の充実と住民の幸福実現に貢献していくこ
点を指摘していただき、社会全体が価値観の転換を成
とが求められています。
し遂げるためにはどういった施策が有効と考えられる
今回の建築家大会は、他分野の専門家、市民、行政と
のかを議論していただきます。
共にこの新たな価値観に基づく街づくりとは何かを考
その上で建築家が「まちづくり」という観点からどう
える大会にする予定です。それぞれの地域の歴史、風
いった役割を果たすべきなのか、社会は建築家に何を
土等に根ざした美しい国土とは何か、どのようにした
期待しているのか、という「建築家」に関わる議論を
らそれを実現できるのか、本当の豊かさ、幸せを感じ
重ねたうえで、そういった社会を目指すために、専門
るためにはどうしたらよいか、この大会で皆様と共に
家ではない市民には何ができるのか、専門家と市民、
考えたいと思います。
専門家同士はどうそれを「共に超えて」行けば良いの
基調講演に於いて、江戸学を通して人々の絆を基礎と
か、という命題に向けて、議論を戦わせていただきま
した循環型社会を研究されておられる田中優子氏に、
す。
『共に超える』
建築並びに建築家が担うべき社会的役割について、一般市民と共に考え、共に育むために議
パーティー・レセプション
ウェルカムパーティー
日時:2012 年 11 月 29 日(木)18:30 ~ 20:30
(時間は変更の可能性あり)
場所:BankART Studio NYK(2 階ギャラリー)
レセプションパーティー
日時:2012 年 11 月 30 日(金)18:00 ~ 20:00
(時間は変更の可能性あり)
場所:ホテルニューグランド(本館 2 階全フロア)
田中優子 プロフィール
FORUM
FORUM
法政大学社会学部教授、国際日本学インスティテュート(大学院)教授。
専門は日本近世文化・アジア比較文化。研究領域は、江戸時代の文学、美術、生活文化。
『江戸の想像力』で芸術選奨文部大臣新人賞、
『江戸百夢』で芸術選奨文部科学大臣賞・
サントリー学芸賞。その他多数の著書がある。江戸時代の観点から、現代の問題に言
及することも多い。
2005 年度紫綬褒章。近著に『カムイ伝講義』『未来のための江戸学』『布のちから』
関東大震災後の復興計画の一環として、渡辺仁設計により建設された。
チャーリー・チャップリンを初めとする多くのスター、皇室や英国王室といっ
た賓客、来日直後のマッカーサーが滞在したクラシックホテルである。
ホワイエからは、眼下の山下公園(関東大震災の被災がれきを埋立てて造成し
た)と横浜港の抜群の眺望が楽しめる。
大会式典 2012年(平成24年)11月30日(金)12:30 ~ 13:30
神奈川県民ホール 大ホール(横浜みなとみらい線日本大通り駅)
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Bulletin 2012 年 5 月号
JIA 建築家大会 2012 横浜大会ホームページ
※文章はダミーです。
■ 日時 2012年(平成24年)11月30日(金)13:30~17:00
■ 場所 神奈川県民ホール 大ホール(横浜みなとみらい線日本大通り駅)
■ 構成 ・第1部:基調講演 「足るを知る」の江戸時代 13:30 ~ 15:00
講 演 者:田中優子氏(江戸文化研究者、エッセイスト、法政大学社会学部教授)
・第2部:パネルディスカッション 15:00 ~ 17:00
パネリスト:田中優子氏 山崎 亮氏(コミュニティデザイナー、京都造形芸術大学教授)
コーディネーター:芦原太郎氏(建築家、JIA 会長)
Bulletin 2012 年 5 月号
7
海外レポート
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
海外レポート
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
ニーマイヤーの曲線に魅せられて
―世界一周の旅―
桜本 将樹
会議事堂(1958)は、
旅する中でも、この驚愕の光景に匹敵するものはありません。アプ
飛行機の形状を模した
ローチは美しく長く曲がりくねったスロープに引き寄せられるよう
ブラジリアの都市の
に上空へ導かれ、空中にある入口へ到達し、まるで宇宙船に乗り込
コックピット部分に位
むかのようです。
置し、まさにブラジリ
アを象徴する建物にな
りますが、緩やかな曲
ることは驚愕に値します。
国防省(1968)
面が魅力的な巨大屋根
旅して廻りました。2002 年から 2003 年にかけてのことです。
そうしたニーマイヤーの作品を巡るため、ブラジルでは主にベロ
現在ではネット検索をすると、旅の状況をタイムリーにブログに
オリゾンテ、ブラジリア、サンパウロ、リオ・デジャネイロ(ニテ
で覆われた国防省(1968)の屋外ステージや、ガラスで覆われた
アップしながら世界一周をする人を数多く見かけます。
ロイ)の4都市を訪れました。
巨大なカテドラル(1970)の上昇感のある曲線も見ごたえがあり
しかし私が旅をした当時は、デジタルカメラが出だしたころで、
ます。ただ、自動車を中心とした街ですので、見通しはいいものの
【ベロオリゾンテにある初期作品群】
まだインターネットで「世界一周」と検索しても、情報は殆どなく、
はじめに紹介するのは、パンプーリャ湖畔にある初期作品群。
全てのニーマイヤー作品を徒歩で見ようとすると疲れます。またブ
旅先でインターネットを接続することもスムーズにはいかないとい
1940 年、当時ベロオリゾンテの県知事ジュセリーノ・クビチェッ
ラジリアでの作品で見逃せないのが人造湖に浮かぶ、コスタ・エ・
う状況でした。ほんのこの 10 年程度の時代が変化するスピードを
クと出会うことで、この地に多くの作品を実現することになります。
シルバ・ブリッジ(1969)
。ニーマイヤーの設計したこの上なく美し
感じずにはいられません。2000 年以前とは比較にならないほど、
ここではコンクリートの可能性を追求した造形を試みており、近代
いRC造の橋です。水面に写る限りなくゆるいカーブが魅力的です。
旅の方法は劇的に変化していると言えます。
建築の直線美とニーマイヤー独特の自由曲線の作品を同時に見るこ
さて私の世界一周の旅は 365 日間、訪問国数 46 カ国、写真に収
とができます。また近年では、ベロオリゾンテ市のミナスジェライ
また、日本からブラジルへの玄関でもあり、日本人街のあるサン
にある市民劇場(2007)
めた建築数 1000 以上、
撮りためた写真枚数は 10 万枚にも及びます。
ス州政府庁舎(2010)が完成されています。
パウロでもイビラプエラ公園の作品群(1951)
、ラテンアメリカ記
で す。2003 年 時 点 で
旅は北米からスタートし、中南米、北欧、ロシア中東欧、西欧、イ
カジノ(現 美術館)
、ヨットクラブ、教会、スイミングプールな
念公園の作品群(1988)などのニーマイヤーの軽快で魅惑的な曲
飛行機から写真に収め
ンド・バングラデシュと、主要なモダニズム建築を見て廻りました。
ど多くのニーマイヤー初期の作品に出会えますが、なかでもお勧め
線の作品に触れることができます。
たのがこの作品です。
率直な感想は、世界中にこれほどまでに美しい建築が存在していた
は、ダンスホール(1940)です。
ことへの驚愕の思いです。コルビュジェ、ライト、ミースの3大巨
現代の過激な造形のニーマイヤー作品と比較すると、控えめな造
1964 年のブラジルにおける軍事クーデターによって、共産党員で
匠をはじめとする、20 世紀に生み出された多くの優れた近代建築
形ながら、女性の曲線を参考にしているというニーマイヤーの独特
あったニーマイヤーは、10 年以上に及ぶヨーロッパでの亡命生活
イヤー作品とは知りませんでしたが、ニーマイヤーの曲線を感じ、
の作品群は、旅の方法が変化している中で、現在でもその輝きを失
な曲線美に触れることができます。ダンスホールの建物自体は小さ
を強いられますが、そのため当時のニーマイヤー作品をヨーロッパ
新作の可能性に興奮したことを今でも覚えています。すでに 3 つの
わず、現地の人に愛され続けていました。
な円形ホールですが、夕日に照らされた湖面に浮かぶキャノピーは
に見ることができます。ポルトガル
(マデイラ島)
のカールトン・パー
建物が姿を見せていますが、全体計画では、5 つほどの建築が実現
今回はそうした旅のなかでも特に大きな衝撃を受けた、オスカー・
曲線の美しさを際立たせています。
ク・ホテル(1974)
、イタリアのモンダドリー出版社(1975)
、フ
予定。10 年後の現在でも工事は進行中とのことで、ニーマイヤー
ランスではボビーニュの職業紹介所(1980)
、フランス共産党本部
建築を生み出す困難さを感じます。
【サンパウロの作品群】
【海外でのニーマイヤー作品】
ニーマイヤーの作品を紹介します。
ニテロイ現代美術館(1966)
そして最後に紹介す
るのは、同じニテロイ
当時は情報もなく、こ
市民劇場 上空写真(2007)
れが建設途中のニーマ
FORUM
水平垂直のモダニズムのシンプルな美しさを求めて旅を始めたも
(1981)
、ル・アーヴルの文化センター(1983)と 3 つの作品があ
それでも 100 歳を超えてからも、ニーマイヤーのプロジェクト
のの、アメリカでのエーロ・サーリネンの TWA ターミナルの彫塑
ります。特にカールトン・パーク・ホテルのホテル棟からカジノ棟
はイギリス、スペイン、イタリアなどで次々と完成し、ヨーロッパ
的な曲線、メキシコでのフェリックス・キャンデラの双曲放物線、
に移るデッキとスロープの曲線は大胆で見ごたえがあります。
各地でみられるようになっています。今年 105 歳となった巨匠ニー
マイヤーによる次作品による魅惑的な曲線が楽しみです。
スペインのサンチアゴ・カラトラバの大胆な構造曲線など、曲線に
参考文献『近代建築世界一周』ADP 出版 桜本将樹
『GUIA DE URBANISUMO,ARQUITETURA E ARTE BRASILIA』
『オスカー・ニーマイヤー 1937-1997』TOTO 出版
魅了されることが多くありました。その極めつけがニーマイヤーの
魅惑的な自由曲線なのです。
〈桜本建築設計事務所 Atelier-SAS 代表 桜本 将樹〉
オスカー・ニーマイヤーと言えば、1907 年リオ・デ・ジャネイ
ロ生まれ、現在 105 歳の建築家、ブラジルの首都ブラジリアの建
設に携わったブラジル建築界の巨匠ですが、1936 年コルビュジェ
桜本 将樹さんプロフィール
ダンスホール(1940)
と出会い、
NY の国連本部ビル(1952)の設計において、
コルビュジェ
と共同設計をしたとい
う実績を持ちます。つ
首都ブラジリア(1958)
8
Bulletin 2012 年 5 月号
【首都ブラジリアの作品群】
ま り、 巨 匠 コ ル ビ ュ
次にブラジリアと言えば、上空から見ると飛行機の形をしたブラ
ジェと同じ土俵で活躍
ジルの首都です。当時の大統領ジュセリーノ・クビチェックの発案
した建築家であり、そ
からわずか4年で完成し遷都された近代都市で、マスタープランは
のニーマイヤーが現在
ニーマイヤーの師でもあるルシオ・コスタ。チーフアーキテクトと
そしてどの作品よりも、強烈な衝撃を受けるのが、ニテロイ現
でも現役で、斬新な作
して、その多くの建物の設計を担当したのがニーマイヤーです。そ
代美術館(1996)です。美しい海岸沿いの岬に突然現れる光景は、
品を次々と発表してい
のためニーマイヤー作品のオープンエアギャラリーのようです。国
重力を無視した円盤が、岬に着陸しているかのようです。世界中を
カールトン・パーク・ホテル(1974)
【リオ・デ・ジャネイロ近郊ニテロイのニーマイヤー作品】
桜本建築設計事務所 Atelier-SAS 代表 桜本将樹
1968 年 大阪生まれ 1993 年 関西大学建築学科卒業 1995 年 関西大学大学院修士課程(建築学専攻)修了
1995-2002 年 株式会社 三弘建築事務所 勤務 2003 年 世界一周(近代建築を求めて 1 年間をかけて世界一周)
2006 年 現事務所 設立 2009 年『近代建築世界一周』ADP より出版
2009 年 住宅作品『MULTI-COURT HOUSE』にて『第 10 回 DANTO
TILE DESIGN CONTEST』入賞
書名: 『近代建築 世界一周』Modern Architecture
出版社: 株式会社 ADP
発行: 2009 年 1 月 13 日
価格: ¥2310(消費税込み)
Bulletin 2012 年 5 月号
9
FORUM
私は多くの諸先輩方と同じように、美しい建築を求めて世界中を
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
先達に学ぶ
抱負を語る
私の思い出の建築家 圓堂政嘉氏
時間の痕跡と経済性
東條 隆郎
昭和 53(1978 年)年から昭和 62 年(1987 年)ま
されたのが、2から3棟、約 200 戸から 300 戸のまと
で九年間、東京広尾にある日赤医療センターの横に位置
まりとし、それぞれ異なる性格・特徴をもった5つのゾー
する、広尾ガーデンヒルズの設計に携わっていた。この
ンをつくり、この5つのゾーンのまとまりが一つの街を
プロジェクトは約7ha の土地に、約 1200 戸の集合住宅
創ると言う、今では当たり前のことかもしれないが当時
を開発する計画であり、設計は三菱地所と圓堂事務所と
としては画期的な手法だったのである。
の共同設計であった。計画の当初から、両者で設計チー
ムを作り、共同作業でのマスタープラン作りが進められ
また、当時の圓堂先生との関わりの中で印象的なこと
た。その折に、建築家圓堂政嘉氏に初めてお会いした。
として、圓堂事務所の図面の非常に完成度が高かったこ
まだ、会社に入り5年目、圓堂先生は雲の上のような存
とが忘れられない。新人はデッザンの学校に通い基礎を
在であった。丁度この時期、1982 年から 1986 年、当
しっかりと身に付けており、作図された図面はどのよう
時の建築家協会の会長として奔走されていた。先生は毎
な図面もそのまま額に入れて展示できるくらいの完成度
週定例のミーティングに出席され、設計チームと熱い議
が高く美しい図面であり、所員の方々すべて同じような
論をかわしていた光景が今でも昨日のことのように思い
高い表現能力をもたれていた。それだけ建築に対する先
出される。その中でも、開発のコンセプトの議論を進め
生の強い思いが所員の方々一人一人に伝わっている様子
FORUM
が当時の組織事務所の私にとっては驚きでありまた羨ま
る段階で、先生から「現代にコンクリートの数寄屋を創
しくもあったことが思い出される。
ろう」とのアイデアが出された。これは今までの集合住
宅とはちがう「新たな日本の集合住宅」を創りだすとい
圓堂先生からはその他多くの示唆を得た。設計におけ
うことを意味する事であったのであるが、まだその当時
るコンセプトの重要さ、それを生み出すための飽くなき
追求する姿勢、数多くの知見と経験、洗練された美しさ
が理解できず、ただただお話を聞いているのみであった。
やディテールへのこだわり、それらをどのように表現し
今では 1200 戸の集合住宅はそれほど珍しくもないが、
て伝えるかなど、建築家としての有り様を圓堂先生が体
その当時、一度にこれだけの数の住戸数を供給するとい
現されていたことを今更のことのように思い出される。
うことは非常に難しい状況であった。そのために考えだ
「建築」するための
強さとはなんだろうか?
■設計の実務を始めて 15 年、ここ数年は「建築や都市空間
■実務の中で建築設計と向き合うようになり 7 年目をこの
における時間の痕跡の扱い」と「 空間デザインと経済の健全
春迎えました。この間だけでも建築を取り巻く環境はドラス
な融合」という二つのテーマに取り組んでいます。
ティックに変わったように感じています。
北川原温建築都市研究所での修行の後、私は東大キャンパ
毎月発行される建築雑誌を見渡してみても、縮小する日本
ス計画室(岸田研究室)で大正時代築の研究棟のリノベーショ
の建築業界や地球環境問題を反映してか、既存ストックを生
ンをはじめとして、古い建物に新しい息吹を吹き込む日々を
かしたリノベーションや増改築、ランドスケープのような建
過ごしました。岸田省吾教授や同僚との会話を通じ、既存の
築、街づくりに力点をおいた都市再生計画、環境配慮の装置
環境と新しいものの関係はどうあるべきか、時間の痕跡をど
類を全身にまとった建築などが目を引きます。
た。一年を過ごしたポルトガルでもこのテーマで研究生活を
送りました。
帰国後、現在の事務所で共
働しているメンバー(経営コ
ン サ ル 出 身 者、 デ ベ 出 身 者 )
と合流し全く異なる視点の
テーマに出会います。都市を
Bulletin 2012 年 5 月号
ホキ美術館 撮影:平井広行
構成するほとんどの建物は短
この傾向は学生の卒業設計でも同様で、建築を1つの「建築」
期目線の経済合理性に支配さ
として自身が持つ思想、形態、イメージを表現するものは少な
れてきました。その状況をリ
く、いかに1つの「建築」として見せないことがオリジナリ
アルに感じ、通り一遍の経済
合理主義に陥る事無く、デザ
蔦の家、空家の再生
撮影:Takeshi Yamagishi
ティとなるように巧妙に操作された作品が多く、時勢を反映し
たものとなっているようです。では、建築を1つの「建築」と
インと経済性が健全なクリエイテビティによって融合しなけ
して向き合い、表現することはもはや時代の流れに乗らないの
れば都市は楽しくならないし、それが持続する事もないと考
でしょうか?
えるようになりました。特に昨年の 3.11 以降、資本主義とい
その問いに自ら答えるならば、私は建築を「建築」として真正
う価値観に大きな転換が訪れ、人間性の回復が求められてい
面から向き合うことにまだ無限の可能性があると考えています。
るこの時期だからこそできる事があるのではと日々自問して
私が 1 人の建築家として特に大切にしていることは、「自
います。
分の意思を強く持ち、意思を建築に投影すること」と「新し
かけ離れたように見える二つのテーマですが、単体の建築
い世界を空間に埋め込むこと」の2つです。現実社会の抱え
だけでなく街並や都市が時代を超えて人々が楽しめる場所に
る諸問題を突破し、良い空間、良い環境を生むためには、「建
なってほしいという思いがベースにあります。〈SPEAC, inc.〉
築」するという人間としての強い意志が必要と信じているか
らです。
〈株式会社日建設計〉
〈三菱地所設計〉
Casa Dourada マンション住戸のリノベーション
撮影:Masao Nishikawa
10
矢野 雅規
宮部 浩幸
のように扱うのかということが私の大きな関心事となりまし
ていく中でいくつかの変遷を重ねつつも最終案をまとめ
「ひよっこ」の私としては先生が何を言わんとしているか
温故知新
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
明治神宮外苑研修棟 撮影:平井広行
Bulletin 2012 年 5 月号
11
FORUM
温故知新
委員会活動報告
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
委員会活動報告
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
保存問題委員会
建築相談委員会
23 年度文化財ドクター事業の報告
建築家職能運動のいまを考える
建築相談委員会委員
左 知子
米澤 正己
の皆様にもご迷惑をおかけいたしました。これは今後の対応時
■ 2002 年に締結した JIA と建築士会の「二団体基本合意書」は、その後
委員会が本来の第三者機関として資格を与えている。NCARB が指摘した
認識しておりますが、それは、阪神淡路以降の体験から積み上
の検討事項にもなろうと思います。
の協議で十分生かされなかった感がある。当時建築士会は、建築士制度の
第三者性とは、UIA アコードにも示されているように、各国の行政機関が
げてきた実績の成果がマニュアルとなって成果があったからと
災害対応は人命優先であることは勿論ですが、時間を置いて、
不備を補う表示制度として、独自の専攻建築士制度を構築しているところ
法に基づき認可すべきと言うことである。資格の取得に関しても UIA ア
でもあり、JIA は所詮少数派に過ぎないので、資格制度問題は建築士会に
コードに示されているように、建築家登録試験の合格者は単に試験の合格
伺っています。ここにご報告しようと思う文化財ドクター事業
心のよりどころとしての代々の家や、昔からの神社仏閣の存在
任せなさい、JIA と共同で独立した認定機関をつくるつもりは無い、とい
者であって、登録が認可されなければ建築家と称することは違法である。
は、災害支援の対応からは 10 年遅れた対応ともいえる暗中模索
が求められ、それが「絆」となっている場合も少なくないこと
うのが建築士会側の主張であった。専攻建築士制度は、それ自体は新たな
試験の合格という要件は、建築家となるに当たっての qualification の一つ
の中での対応であり、今後の課題も残しました。
を調査の中で実感いたしました。社会文明的な存在としての文
資格制度ではないので資格の第三者認定機関も必要ないのである。JIA 側
に過ぎず、建築家として業務を行うにはその他必要な要件を満足して始め
しかし、文化財建造物を救うという課題については、1歩前に
化財という意味だけではなく、地方においての生活精神の基盤
は、JIA の建築家資格制度も、既存の建築士制度を前提とすれば両会の制
て、建築家として登録することができるのである。試験の合格のみで建築
度案に大きな違いは無く、手続き論的にはすり合わせは十分可能であると
家の資格を与えれば、“登録が無く設計業務を行えない建築家” と “登録し
進んだことも事実であり、多くの会員の方の協力には深く感謝
がそこにあったということを改めて感じさせる調査であったと
主張して協議を続けたが、結局実を結ぶことはなかった。
て設計業務を合法的に行える建築家” という二重構造を生むことになる。
申し上げたいと思います。
思います。
建築士会は、UIA 基準にて定義された建築家職能を “西欧的近代主義的価
試験はだれでも公平に受けることができるが、登録して建築家と名乗って
JIA は発災後ただちに日本建築学会との協調体制の模索に入
このたびの文化財ドクター事業は、学会だけではなく、文化庁
値観とグローバリズムの立場に立つ制度論” として激しく糾弾し、日本独自
設計業務を行えるのは本来、登録の要件を満たした者だけである。その要
の建築士制度の優位性を説くレポートを発表した。そして、既存の建築士制
件の重要な部分に、試験では審査できない職能倫理や独立性の担保などが
り、以前から検討されてきていた文化庁と学会との文化財建造
との連携という初めての事業になりましたが、学会、JIA の調査
度を補完する制度としての専攻建築士制度を精力的に作成していたが、JIA 側
あるのである。建築家としての qualification の審査と registration は本来、
物支援事業に参加することになりましたが、関東と東北では、
員が現地にて協力体制を取ったことは、双方にとっても収穫が大
は “いわゆる中間答申で敗北したのだから” と主張の根拠を封じて、拠り所
資格付与における一連で一体的な手続きであり、資格制度と建築士事務所
は UIA 国際基準のみであった。しかしながら、UIA 基準に準拠して資格制度
登録を分けるのは、民間レベルの表示制度を正当化するための便法に過ぎ
をつくると言っても、その理解は限定的で、せっかく UIA 大会を東京に誘致
ず、本来の制度機能を分裂に陥れる方策である。
■昨年の 3 月の発災後、JIA の災害支援は速やかに始動したと
FORUM
事情が大きく異なり、なかなか一律体制になり難い状況があり
きかったとのではないかと感じております。JIA にとっては、今
ました。その中でも、関東の被災県では、代表と委員会委員が
まで対面したことの無い構法との出会いや、その中での生活に触
しても、UIA アコードやその他の文書を、きちんとした日本語に翻訳して会
生産者側の立場に立ち建築生産システムの一員でいる限り、建築家の職
連携を取り、
かなりの確率で調査を終えることができました。
(千
れることができ、また壊れなければ見ることができない細部を結
員が触れる機会さえ設けられなかったのは誠に残念である。JIA には当初から
能も資格制度の本来の役割も正しく捉えられない。日本の建築士制度は
葉工大山崎鯛介准教授のまとめによる表1)
果として覗くことができたことは貴重な体験でもありました。
そんなものに縛られる必要は無い、という意見さえあったのである。
オールマイティな権限を建築士に独占的に与えているため、建築の生産者
また、関東で 1600 件あまり、東北を含めた総件数は 8000 に
この1年間の調査データは、学会のまとめた報告書とは別に、
その後の耐震偽装事件以降の制度の見直しによって、建築士会は指定登
側の立場から見ると、これほど効率的で都合の良い制度はない。そのため
のぼるといわれています。東北と関東は、それぞれの地域に分
JIA でも独自に分析とまとめができればと思います。
録機関となり第三者性を持ったので、外部に JIA が求めるような認定機関
日本の建築業界もその中で働く建築士も、既得権益としての建築士制度に
をつくる理由もなくなった。成熟した社会においては、むやみに資格を法
どっぷりと漬かってしまって改革には後ろ向きである。統括設計一級建築
けて調査計画が立てられましたが、関東の調査は、各委員を中
文化財ドクター事業は、3月末の東京と仙台での報告会で一つ
制度化する必要は無く、表示制度のような社会的制度として留め置くべき
士という資格名称案が支持されるのもそのような理由であろう。さらに
「次
心に概ね計画通りに進めることができたのに対して、被災度の
の区切りとなりますが、次年度は、具体的な技術支援体制を見
だとの考えや官僚主義的流れに対する警戒感から、士会は最後まで統括一
世代型建築生産システム」として、権益保護を目的にバージョンアップを
大きかった東北は、もともと会員数が少ない上に、復旧対応の
据えて、再び会員の皆様のご協力をいただくことになると思わ
級建築士を含む専門資格制度の創設に反対した。
図ろうというのであれば、日本の職能の本質的問題解決とは乖離するばか
このように、一旦は挫折した戦略に敢えて再挑戦しているのであるから、
りで、市民の理解は到底得られそうにない。
仕事に追われ人員確保が難しく、また学会の先生方も集まりに
れます。公益法人としての実際的な活動の場としてのご参加を
いまさら JIA の登録建築家制度を終了して建築士会に身を委ねるという事で
建築家の職能倫理とは、モラルのような一般的道徳観に関する問題だけ
お願いできればと思います。
は、会員に対して示しが付かないのではないか。資格の法制化問題に於い
ではなくて、その専門家としての能力を使用するに当たっての社会的公正
ても、qualification(資格要件)の問題を建築士会に委ね、registration(登録)
さに関する問題であり、その多くは規範や指針として制度化できるもので
の問題を建築士事務所協会に委ねるというのであれば建築家協会の役割は
ある。ところが、ダンピング問題をモラルの問題としてしか議論できない
無く、会としての活動は終焉することになる。一部の幹部からは、JIA はか
ところに JIA としての論理的脆弱さが現れている。ダンピングをしている
つてのように一部エリート建築家のサロンとして小規模な会員組織になれ
と言うことは、その建築家を信頼して仕事を依頼したクライアントの設計
ば良いという意見もある。会員建築家が Professional として活動することを
料を、他のクライアントのための業務に不正に流用していると言うことで
支援し補佐する Professional Association としての JIA から、自らが公益的活
あり、きちんと設計料を支払っているクライアントからは訴えられても仕
動を事業として行う団体へ移行しようというのもその布石かも知れない。
方がない行為である。
JIA 登録建築家情報の開示も認定評議会の第三者性も、会員から見ても
JIA は、建築家の自律や独立性の問題に代表される職能倫理に対して、
何か茶番劇のように見えるし、一般市民から見れば尚更であろう。建築家
正面から受け止めて議論を深めなければ建築家資格を論じる資格はない。
協会の名の下に、個人の名前や作品が広告されることは有り難いとの理由
UIA においても多様化する発注形式や業務形態において、いかに職能倫理
で、会員からは支持され JIA の資格制度に登録するメリットともなってい
を担保するか議論されている。我が国においては先ずは、建築士事務所は
るが、公的な資格登録制度では公費で資格登録者の広告宣伝のような情報
“建築士でなくてもだれでもどんな目的でも開設して営業できる” という現
開示をした例はあまりない。認定評議会の第三者性も、資格を付与する権
状を変えなければならない。これも、建築家の業務が公共の安全と健康と
限が公的になければ自主認定と変わらない。
福祉に、そして国民の利益に深く関わるという社会的認識が広まって始め
NCARB との会合で自主認定を否定され、第三者認定に方向を転換した
て実現できるものであり、
JIA の役割もそこにこそある。我々に必要なのは、
ことや、資格は専兼の区別無く、だれにも公平にその取得の機会が与えら
歪められた不満足な資格制度ではなく、職能制度のある各国と価値を共有
れなければならないとの意見もあった。アメリカにおいては、建築家資格
して正当な主張を行い、あるべき日本の資格制度の姿を示すことではない
は AIA でも NCARB でもなく、日本の国家資格と同様に各州の建築家登録
だろうか。
くい状況にあり、なかなかスムースには進まず、参加申し入れ
茨城にて
表1
12
〈左知子建築設計室〉
Bulletin 2012 年 5 月号
〈(株)パシフィック・デザイン・システムズ〉
Bulletin 2012 年 5 月号
13
FORUM
JIA 神奈川
保存問題委員長
委員会活動報告
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
JIA トーク実行委員会
委員会活動報告
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
JIA アーバントリップ
JIA トーク・山田洋次監督
「映画をつくる」を聞いて
第 67 回 URBAN TRIP ~「建築家シリーズ vol.5」
JIA トーク
実行委員
横河 健
靗
建築家 高橋 一氏
60 年の軌跡
「人・建築・都市」に参加して
アーバントリップ
実行委員会
佐藤 文人
飽きさせないところも心憎いが、本当に重要なことは画像を用い
■首都大学東京 図書館・国際交流館 (1991)
■全労済情報センター (1995)
ことでもない限り何があったか・・・食べ物とか、お店のこととか、
てはいない。彼の経験した事実の中に記憶として深く刻まれたモ
八王子多摩丘陵の只中に広がる首都大学東京南大沢キャンパス
首都大学東京と同じ八王子多摩丘陵の斜面に建つ全労済情報セン
何を着ていたか ? などは全く覚えていない。だから原稿の依頼も
ノである。例えば予算をオーバーした「七人の侍」のクライマッ
内に図書館はあった。
ターは、水平の打ち継ぎ目地以外全く分断する要素のない均一なコ
もう少し早く言っておいてくれればいいのに・・・と、ぼやくコ
クス、三船敏郎の「来たぞー、来たぞー」
・・・でフィルムがプツッ
大きなボックスの上に円筒形のハットを被ったシンメトリーな
ンクリート打ち放し仕上げとアルミ自然発色の切板で立体造形され
トしきり。しかしながら、こと仕事のこととかある程度重要なこ
と切れて、撮影を続けるかどうか「さーどうします ?」と聞かれた
外観は、周囲に威厳をもった佇まいを醸し出していた。外装を覆
たコンピューター棟とトップライトからの大胆に光を取り入れた大
とはなぜか良く覚えていられる。困ったモノだと言うべきか、便
重役たちの話。
う厚さ 4mm のアルミ切板は築 20 年経過しているとは思えない
曲率のアトリウム空間、それらを統合する水盤の中に浮かぶメイン
利に出来ていると言うべきか ? はたして解らないが、この JIA トー
山田自身はそれほど好きになれなかった小津安二郎の作品。
程の発色で、愛情を持ってメンテナンスされていた。センターの
エントランスで構成されていた。圧倒的でダイナミックな空間構成
ク・山田洋次監督の話は、メモを片手にだがはっきり覚えている。
古くさい、標準レンズだけて面白くない・ナンセンスと思ってい
低いエントランスを潜って入ると、レファランスコーナーへと進
と共に精緻な拘りのディテールが見事に調和していた。
もっともこのときの JIA トークは私がコーディネートを仰せつかっ
た・
・
・そんな小津の映画を黒沢がじっと見ていた。そして黒沢は
「焼
み、その上部にはメイン空間であるアトリウムがあり、円筒形の
ていたのだから当たり前といえば当たり前。
き物と似ていないか ?」相当の用意周到、予測の基につくったモノ
トップサイドライト ( ガラスブロック ) から降り注ぐ軟らかな自
■清水建設技術研究所 安全安震館 (2006)
山田監督は JIA・建築家協会でのレクチャーということもあって
が思いもよらなかった出来方をする。予測を超えた見え方をする、
然光は、静寂な時間を館内へ行き渡らせていた。
江東区豊洲清水建設研究所正門脇に建つ安全安震館は、研究所
わざわざ気を遣われたのか、建築家は ( 建築づくりの ) イメージは
そんな例えを語った話。
・・・とてもとても示唆に富む話の数々だっ
牧野標本館を挟んだ隣地に同時期に建てられた国際交流館は、
の最新技術を結集した制震システムのプロトタイプとしてつくら
どこから・・・どのように生まれてくるのか ? 費用・手間・工学・・・
た。いくつかのエピソードを織り交ぜて語る中にも、常に山田監
ガラスブロックのファサードを纏った居住棟、庭の木々と池を囲
れたモデル建物。ともするとメカニカルで無味乾燥した感覚が漂
建築は使うためにつくるのだから実用性から離れられないので
督の脳裏のどこかには黒澤明と小津安二郎がいる。山田洋次の記
い込む食堂棟、離れのように数寄屋造りの木造建物とで構成され
う実験装置になりがちなものでも、デザイン的に昇華させること
しょうか ? と前振りがあったが、曰く映画という娯楽は約 110 年
憶の回路にしっかりと刻まれているということは、そういうこと
ていた。一見、無機質なガラスとアルミの衣を纏った建物も、な
のできるクォリティの高さには驚かされた。ここでも材料の吟味
前から始まって、芸術の顔を持ってはいるが経済的事業なのだ。
なのだ。つまり人の記憶とは己が興味を持つモノしか記憶として
ぜだか自然環境と同調してキャンパスの中に溶け込んでいた。
とその研ぎ澄まされたディテールの美しさが際だっており、見事
芸術と経済性は一体不可分で結合双生児のような状態である・・・・
残らない。単純記憶は例えば数字で言えば 7、8 桁がいいところだ
と、こんなところから始まった。そもそも映画には「ほめられる
という。最後にコンセプトとか評はシンプルな方がよい・・・と
映画」と「儲かる映画」があるという。ほめられる映画はなかな
ある小学生による「七人の侍」の評について語ってくれた。
か儲からないし、儲かる映画はあまりほめられることはない・・・
覚えている人は幸いである。覚えていない人はこのレクチャーを
ということなのだろうが、山田監督はそれを両立させている数少
聴いた意味がない。
・・・記憶とはそんなモノだ。
ない監督の一人なのだろう。
山田監督には超多忙の中、スケジュールを調整していただき、
有名な寅さんシリーズのいくつかから DVD の画像を織り交ぜて
大勢の参加者を得たことは誠に感謝に堪えない。
レクチャーの強弱をつけ観客 ( 否、レクチャー聴取者 ) を楽しませ
なまでに技術とデザインの相乗効果が実った例であった。
靗 一先生のレクチャー
■髙橋 「そこに働く、住む人々が好きに
なれるような建築」と題した髙橋
FORUM
FORUM
■私は記憶の回路が破壊されているから、自慢じゃないが余程の
一先生の講演会は、先生の建築
靗
への取り組む姿勢が如実に表われ
ていた。それは決して気取らず、
〈日本大学理工学部・教授〉
押付がましくない、利用者の立場
首都大学東京 図書館
に立った設計思想が貫かれていた。
高橋氏
さらには、建物の多くがその環境へ影響するデザインや人々が触
れたりする仕上げ材の質感に対する拘りについても、とことん熟
慮されたことが伝わり、見学してみた際のなんとも馴染んだ空間
体験へと繋がっていた。
最後に、私が槇事務所にいた頃、毎週月曜日になると週末描き
ためた槇さんのスケッチが大量に待ち構えられていたことを思い
出す。1920 年代生まれの巨匠・建築家らに共通する創作意欲は、
Photo by T.Kirihara
14
Bulletin 2012 年 5 月号
全労災全労済情報センター
今も健在でエネルギーが漲り続けていた。
〈スタジオクチン〉
Bulletin 2012 年 5 月号
15
委員会活動報告
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
城南地域会
市民と建築家を結ぶサイト
アーキテクツファイル
地域会の活動を顧みて
「城南地域会ふれあいフォーラム」第 2 回開催
城南地域会
代表
顧客支援システム委員会
松本 裕
現在基本計画までのものもありますが、実際に住宅やビルを建て
■私共、城南地域会は設立以来5年を経過し、現在 6 年目の活
える〜」というテーマで、地域住民、太田・品川両区行政担当者、
テムとして 2007 年 4 月 11 日からスタートして 5 年が経過しま
たい人からの問い合わせは、10 件にも上りました。問い合わせ
動に入っております。この間、多義に亘り地域会の有り様につい
区議、専門家等、70 名余りの参加者を得て開催。実行委員の担
した。今ではシステム会員(JIA 建築家)は 52 名を数えていま
を頂いた方の中には「建築家協会のような中立の立場の団体のシ
て論議を重ねて活動をしてまいりました。
当者は当日のプレゼンに際しての日夜作業は大変な労力でした。
す。登録の対象カテゴリーも〈住宅〉
、
〈産業・生産系・公共〉
、
〈教
ステムなので安心して任せられる。
」というようなご意見も頂ま
地域会発足の当初から大田・品川両区の風土、風景、景観等に
この度の「フォーラム」は木造住宅密集地域街区の 2 地区を
ついて会員一同、地域を理解すべく、この 5 年間で「城南散歩」
具体的に取り上げ、現況の問題点と、如何にして安心・安全なま
育・福祉系〉
、
〈まちづくり系〉
、
〈保存・リノベーション系〉と5
した。
という企画にて会員有志一同 70km を超える歩破をし、地域の
ちづくりが可能か、ハード面の耐震化・不燃化のみならず、路地
つとなっています。2011 年にはホームページの全面リニュアル
アーキテクツファイルにシステム登録してシステム会員になる
地勢や景観について認識を深め、又、毎回 10km 前後を目処に
状部分の接道による安全化と地域コミュニテイの形成等、多義に
も致しました。竣工物件は現在まだ少ないですが、問い合わせは
のは 3 つの条件があります。
歩いた後の懇親会では、それぞれの地域のまちなみの風景につい
亘りソフトの面において一つの提案をプロジェクターにて地勢や
て問題点や提案等、僅かな酒と肴とで参加者一同、論議を交わす
人口の歴史的変遷から現況と計画案を提示説明、模型展示、提案
得がたい一時は素晴らしいものです。街区について大凡認識新た
に基づく CG による町並み等を披露した。
■日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部の公式建築家紹介シス
増えています。2010 年にはアキーテクツファイル登録建築家を
対象にした一般向け書籍「こんにちは、建築家です!」を発刊致
1.JIA 会員であり、登録建築家であること
に網羅したつもりですので限られた予算の中で後日、冊子にまと
具体的案の内容は四方を戦前の耕地整理で囲われた 3 画区の
しました。66 名のシステム会員(JIA 建築家)
(システム会員予
または参加後に登録建築家に登録予定の方
めたいと考えております。
各エリア面積約 0.6ha の職住混合の未椄道の路地状を極力現状地
2.建築家賠償保険に加入していること
一昨年から大田・品川両区地域住民を対象に「城南地域会ふれ
権者の移設移転を最少にして、街区内部にコミュ二テイー広場を
3.仕事の責任を負うことができる立場であること
あいフォーラム」を立ち上げ、第 1 回「美しいまちなみ・山形
形成し、よって避難経路を 2 方向あるいは 4 方向に確保しながら、
県金山町」を開催し、125 名の参加者から好評をいただきました。
豊かな街区内部を構築して行くのが提案主旨である。今後の課題
その後、大田・品川両区行政のスタンスが異なる等考慮して、そ
として、区が展開している防災広場と併用、あるいは私見である
定建築家)が参加してくれました。
Web で「建築家を探す」で検索す
ると、1 ページ目の 8 番程度に表示
書籍「こんにちは、建築家です!」
されます。ホームページ閲覧数は
システム登録はホームページより随時行うことができます。登
れぞれの区が抱えている課題等について、私共地域会会員が気づ
が、このような広場の地下に火災時等に対応した地域住民の防災
約 600 件 / 月ほどあります。
録料は 5,000 円、年間 WEB 維持費が 5,000 円かかります。また、
いた問題等、極力具体的提案型の区別に対応したフォーラムを企
シェルター等併用されると安心安全なコミュニテイー広場として
2010 年度、2011 年度は建築家
2 年に一度の更新時に 5,000 円の費用を頂いています。これはシ
画することに修正しました。
の充実が図れるであろう。
面談まで至った物件が5件ありま
ステム会員の会費によって当システムが運営されているからです。
2 年程前から「城南散歩」の傍ら、特に危険度ランクの高い木
この度の具体的エリアを示したフォーラムは本来、事前に地域
したが、残念ながら震災が原因で
システム会員となった建築家はホームページ上に作品やプロ
造住宅密集地域を重点的に現調して来ました。品川区は 23 区の
住民、町内会等と常日頃の地域交流を深めながら丁寧に立ち上げ
基本設計で中断しているものや、
フィールが掲示されます。建築希望の方が HP をご覧になって、
中でも木造住宅密集地域の危険度ランクの高いエリアが 770ha
て行く事が望ましいと思われますが、手順としての手法はルビコ
FORUM
と大きな面積を抱えております。これらの地域について地域会で
ン川を渡ってしまった事は否めません。これからは旗を揚げてし
問い合わせフォームよりシステム会員(建築家)に面談を申込、
論議を続けている最中の 3 月 11 日に東日本大震災が発生しまし
まったからには、地道に地域ごと丁寧な地域交流を通じて、その
事務局が面談の段取りをします。面談にあたっては、顧客システ
た。津波による甚大な被害は想像を絶する思いでありましたが、
地域の個別に見合った処方箋を模索し、提案して行く地域活動を
ム委員会より、面談の際の注意事項、心得などを説明します。顧
同時に '95 年の阪神・淡路大震災時に、即ザックを背負って現地
継続して行く事が肝心であると思います。
の震災状況を垣間みた都市型災害の様子は脳裏から離れませんで
尚、これを機会に「地域のまちづくり」について、区民の皆様
した。
が主体となり自主的活動に参加しやすいことを願って、城南地域
3 月 17 日に品川区の後援にて「城南地域会フォーラム」第 2
会会員有志が中心になって「城南・風景とまちづくりクラブ」立
回を「品川・災害に強いまちづくり〜都市型住居の町づくりを考
ち上げました。
客支援システム委員会では、日本建築家協会会員の倫理と品位を
持って対応すること(一部抜粋)などを記載したシステム会員規
約・規則があります。規約・規則にのっとた委員会運営、システ
〈(有)松本建築設計事務所〉
ム運営をしています。
今後は、関東甲信越支部の広報部会との連携を図れないか?な
どと、より一層の告知、公報の方法を模索し、多くの JIA 建築家
に参加していただき、一般市民への認知度を上げて行きたいと思
います。それが、建築家の社会的地位の向上と、その存在を広く
アピールする有効な手段であると思います。皆様も是非、この機
会にアーキテクツファイルに参加してみませんか!
アーキテクツファイル Web ページ
フォーラム会場の様子
16
Bulletin 2012 年 5 月号
プレゼンテーションの様子
Bulletin 2012 年 5 月号
17
FORUM
顧客支援システム委員会
地域会だより
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
地域会だより
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
地域会だより
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
神奈川地域会
横濱建築祭 2012 CROSS×CROSS
④横浜近代建築展
川会員から JIA 新人賞が選出され(2011 年宮晶子会員、2012 年西
昨年の横濱建築祭 2011 で調査した関内地区に歴史的建造物の現存
田司会員)仲間のお祝いを皆で行いました。
代表
率は 50%を切っていました。
(95 棟内 43 棟現存)
。市民が愛する
「横
ここまでが 24 〜 26 日のメイン会場 BankART で、以下はハウスク
青木 恵美子 浜らしい街」を継承する為には、何が必要か?歴史的建造物の保存
エア横浜会場です。
神奈川地域会
及び活用を視野にいれつつ、今年は写真をさらに増やし展示を充実
神奈川地域会(以下 JIA 神奈川)では、建築文化の普及を目的に
させました。まちづくり保存研究会笠井三義会員が中心となって調
⑨すまいの模型と写真展
査を続けた展示は、今後は本として記録を残す予定です。
普段住宅を中心に仕事をしている会
1995 年から年 1 度建築祭を開催して参りました。また、建築を志
員による模型展示です。ハウスクエ
⑤建築家と歩く横浜近代建築街歩き
コンクール」もおこなって参りましたが、昨年からはその2つの活
「横濱建築祭 2011」では、関内地区の代表的な近代建築街歩きを実
動を一体化させ「横濱建築祭」としました。
「横濱建築祭 2012」は、メイン会場は横浜のアート文化の発信地と
なっている BankART
(今秋の全国大会の会場)
にて 2 月 24 〜 26 日、
模型展をハウスクエア横浜にて 16 〜 28 日まで開催しました。テー
マ【交流= CROSS×CROSS】は、建築家と市民、行政、学生、こど
も、民間企業などと交流= CROSS×CROSS し、建築教育の啓発活動、
市民へ建築文化の伝達と普及しよう!と昨年に引き続き設定されま
した。
JIA 神奈川が今年度掲げた活動方針は “らしさのあるまちづくり” “ス
トック型社会構築を考える” “住教育の普及” の 3 つあります。神
奈川のコミュニティーアーキテクトとして、多くの人と【交流=
CROSS×CROSS】しながらこの3方針を楽しく考える建築祭を目指
しました。
プログラムは、まちづくりやストック型社会を市民と行政と考え
るシンポジウム、学生と交流する卒業設計コンクールと交流パー
ティー。横浜のまちの歴史を伝える近代建築史の展示や横浜の建築
を見る街歩き。写真家として活動している会員による写真講習会。
FORUM
一番小さな交流のカタチ二畳台目の展示。また、建築家がすまい手
と一緒に作り上げた世界で一つのすまい手の為の住宅模型、パネル
を展示、市民と一緒に暮らしを考えるワークショップ。さらに、未
来を担うこども達の創造性を育むこども空間ワークショップなど多
くのプログラムで、2000 名を超える来場者で盛り上がりました。
アに訪れた人々が足を止めて熱心に
卒業設計コンクール公開審査
CROSS×CROSS パーティーで表彰式
②シンポジウム1「地域を創る建築家の役割」
一昨年逗子で実施したプロポーザルコンペについて、逗子市長はじ
め、逗子市職員、逗子市民と審査委員長の建築家飯田善彦氏、審査
で選ばれた伊藤寛会員がパネルディスカッション形式のシンポジウ
ムを行いました。このプロポーザルコンペの仕掛人である前 JIA 神
奈川代表の森岡茂夫会員がモデレーターとなり、プロポーザルコン
ペの導入による『まち』のつくりかた、コミュニティーアーキテク
トのありかた、建築家や行政の関わり方を検証した昨年からの連続
シンポジウムです。
③シンポジウム2「住宅ストックの形成・集合住宅再生リノベーション」
今年度掲げた JIA 神奈川の活動方針の1つであるストック型社会へ
の再生保全の問題を建築相談室黒田和司会員と再生保全研究会が中
心となって行ったシンポジウムです。この問題は、
持続可能なストッ
ク型社会を構築する為の制度問題、建物保全などハード面と周辺の
環境形成を考えるソフト面と大きく3点があると思います。今回の
シンポジウムでは、制度面を横浜市の建築局から、ハード面、ソフ
ト面はそれぞれ再生保全の実践で活躍している建築家を交え、パネ
見入る姿がありました。今年は UIA
施しました。
大会で住宅部会が展示した世界の
ペリーが来航し日本の近代を幕開いたこのエリアは、関東大震災の
家・街並みパネルもお借りして展示
復興建物や戦災復興の建物が多く立ち並び、
それらが“横濱らしい街”
しました。
模型展
を形成しています。今秋の全国大会で是非多くの方にもご覧いただ
⑩すまいワークショップ
きたい街並です。
キット化した模型キット(青木恵美子会員が市民の為に開発したキッ
⑥コンパクトデジカメで横濱を撮ろう(入門編)
ト)で簡単にお部屋を組み立てて、手を動かしながら自分の部屋を
若手建築家であり写真家である井上玄会員による写真講座。建築写
表現するワークショップ。お子様とともに参加されたお母様、模様
真だけでなく基本的な写真に構成など奥の深い写真講座になり、受
替えを考えていらっしゃる女性、家づくりを考えている男性など参
講された市民の方には満足の笑顔がありました。
加頂き、一人一人楽しみながらマイルームを組み立てていました。
⑦一番小さな交流のかたち〜二畳台目の ART な茶室〜
⑪子ども空間ワークショップ
この企画は、JIA 神奈川の賛助会と建築家がコラボレーションを組
JIA 神奈川でここ数年、小学校の課外授業やイベントから依頼を受け、
む企画で2台の二畳台目を展示しました。1台は山口賢会員による
年間十数回行なっています。
「Styrene tune」発泡スチロール(時久商事提供)を使って細いスリッ
今回は他地域会の会員の方にもご協力いただきました。
トで波をイメージしながら、日本の気配の感じる作品に。1台は青
こども達が木のぬくもりを感じ、自分の夢の家をイメージする想像
木恵美子会員による「光交庵」倉庫空間の高天井から吊った透ける
力を養いながら、共同
布(協進印刷 提供)に横濱の街並を印刷し気配を。畳には LED を
作業の楽しさ、物を完
CROSS に仕組んで新しい床の文化を表現しました。
成させるという喜び
FORUM
す県内の建築大学生の啓発活動として 1990 年から「学生卒業設計
を体験できるワーク
ルディスカッションを行いました。次世代へつなぐ為に我々が取り
ショップは、定員 50
組まなければならない大きな課題であると思います。
名でしたが、即日満員
になりキャンセル待
各プログラムをご紹介します。
ちまででました。
子ども空間ワークショップ
①学生卒業設計コンクール
神奈川県内にある7建築大学の卒業設計で各大学から優れた作品、
「横濱建築祭」は、今後も建築文化を創造する私たちの日頃の活動
合計 27 作品ほどが展示されました。今年の審査委員長は2年連続
を市民に伝達し普及する事を継続して行いますが、今秋は全国大会
小泉雅生氏。審査員に柳澤潤氏、谷尻誠氏、鍋島千恵氏。午前中は
「Styrene tune」
審査委員の先生方が一人ひとりの作品を丁寧にヒアリングしながら
⑧ CROSS×CROSS パーティー
戦災という2つの災害を乗り越えた復興都市でもある横濱で【共に
点数をつけ、午後は上位者の公開審査が行われ、パーティー内で表
卒業設計コンクールの表彰及び講評を厳かに行った後、中澤克秀会
超える】を多いに語り合いたいと存じます。皆さまと 11 月にお目
員による生ハムと会員の手作り料理で市民、学生、企業、行政、建
にかかれます事を楽しみにしております。
彰しました。
横浜近代建築展の展示
「光交庵」
築家と約 150 名の人との交流パーティーでした。2年連続 JIA 神奈
18
Bulletin 2012 年 5 月号
『JIA 建築家大会 2012 横浜』が開催されます。開港都市であり震災、
〈(有)エー・エープランニング〉
Bulletin 2012 年 5 月号
19
地域会だより
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
部会活動報告
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
世田谷地域会
住宅部会
世田谷地域会の新人として
高知県産材と大型木造建築(土佐材ツアー)
住宅部会 部会長
(2011 年度)
世田谷地域会
湯浅 剛
佐々木 健 ■昨年の 10 月から世田谷地域会に加入させていただきました。地
ま た、12 月 17 日 に は、
■ 3 月 12 日〜 14 日、
(株)リビングデザインセンター・OZONE
2日目は、自然エネルギー利用の町づくりで有名な山あいの町、
域に根差した活動の中でも、新人の私が参加した2つの活動を報
世田谷地域会が主催したシ
の協力のもと、住宅部会員を中心とした 10 名で、高知県の「土佐
梼原(ゆすはら)を回りました。梼原は、環境に配慮し、適切な森
告させていただきます。
ンポジウム「公共建築のこ
材ツアー」に参加いたしました。
「土佐材流通促進協議会」から一
林管理を行うための森林認証制度= FSC 認証(Forest Stewardship
世田谷地域会では社会貢献活動
れから〜とことん使う知恵
部補助を受け、森林率 84%を誇る高知県の製材・加工関連施設や、
Council /ドイツ)を日本で初めて取得した町です。まずは FSC 認
として、ここ数年続けてきた世田
〜」が世田谷区長も参加し
土佐材を用いた建築の見学を行うツアーです。
証工場となっている「梼原町森林組合」を見学。ここでは、丸太の
谷区内の小学校でのワークショッ
て行われ、多くの区民が集
プ「学校に町をつくろう」を昨年
いました。この日は個人的
度は3校で実施し、今年度は4校
仕分けから、製材、乾燥、加工、検査まで一貫管理され、高い品質
土佐材は、大阪城の築城時
の製材がつくられています。端材や木屑も、パルプや固形燃料の木
に、日本イコモスの総会と研究会にも出席したため、文化財とし
に献上され、幕府の御用材
質ペレットなど、無駄なく活用されています。木造の工場は個人的
になる予定です。私が 11 月に参
ての建築と文化財以外の公共建築の保存ならびに使い続けるため
としても使われるなど、産
にはとても好きな空間でした。
加した小学校では6年生の図工科
の工夫について、様々な意見を拝聴する一日となりました。
地としての歴史は古く、品
午後は町内にある、雲の上ホテル、木橋ミュージアム、梼原町合同
の授業の一貫でもあり、また恒例
文化財を前提とする建物の場合は、
質も高く評価されています。
庁舎、マルシェ梼原など、一連の隈研吾氏設計の建築を見学。どの建
行事として学校側の期待も高いよ
オーセンティシティーが問われるた
四万十川流域は主にヒノキ、
物も県産材が多用されています。梼原町役場は、梼原産のスギを構造
うでした。80 人の生徒が 9 グルー
作品には子供達の夢が詰まっています
め、用途変更などに応じた改造は肯定
中東部地域は、スギの生産
や仕上げに活用した、CASBEE・S ランクのサスティナブル建築です。
プに分かれ、それぞれ 9 人の地域会の建築家が担当します。生徒
されない傾向があります。一方、人々
が盛んです。
マルシェ梼原は、特産品販売や宿泊
が割り箸と輪ゴムを利用して、予めグループ毎に作成した模型の
に愛され、また親しまれてきた公共
初日は、まず「高知木材セ
施設の機能を持ち、
「茅」の建具が
家を参考にしながら、校庭に於いて長さ 1.6m と 0.8m の角材と大
の建物が、改造という選択ではなく、
ンター」で、製材の見学と、
特徴的な外観。移設復元された「ゆ
きな輪ゴムを使い、90 分位内で協力して造り上げます。17cm 程
安全性や古いことを理由に次々と取
屋外利用のための木材熱処理
すはら座」を見学し、町内散策の後、
の割り箸の約 10 倍になるため、大きな構造物は高さ6m 以上とな
り壊されている現状に疑問を抱いて
材の説明を受けました。隣の
雲の上ホテルに泊まり、隣接する温
原木市場では、心材が淡いピ
泉を堪能しました。
りました。我々の役割は、造る手順や構造のアドバイスと、何よ
いる人が多いことを知り、心強く思い
JR 高知駅・ハイブリッド構造のアーチ
グレーディング
FORUM
りも作業の手助けです。
会場となった世田谷区の区民会館
ました。これからは、質の高い建物を
ンクの「嶺北スギ」や、年輪
3日目は、四万十流域。まずは「四万十ヒノキ」を扱う関西木材
小学校の校庭には個性豊かな 9 棟の家が建ち並び、さながら小
リノベーションしやすいように造り、また、使い続ける工夫が益々
が緻密な銘木「魚梁瀬(ヤナ
の見学。コンパクトな敷地に、整然と積みあげられたヒノキの加工
さな町が完成しました。学校参観日だったこともあり、多くの父
求められる時代であることを再認識しました。ドイツ出身で世田谷
セ)杉」等の丸太を見学。温
材や丸太は圧巻。製材は次々とグレーディングマシーンを経由して、
兄もギャラリーとして見学され、また、来年参加する 5 年生も目
地域会のメンバーでもあるアンドレア彦根さんが、ヨーロッパでは
暖な高知では木の成長が早い
含水率とヤング係数(強度)の測定結果が印字されていきます。土
を輝かせていました。今回のワークショップでは、少し大きな木
古いものと新しいものが共存するのが当たり前であり、次々に古い
と思っていましたが、山間部
佐ヒノキ(スギも)は全国平均に比べ、強度区分の高い材が多いよ
材で、身体よりも大きな構造物を造るプロセスを、肌で感じても
建物が壊されていく日本が、ヨーロッパのように変われないはずが
はかなり寒く、緻密で強靭な
うです。次に大正町の集成材工場へ。ここでは地元産ヒノキで、板
らえたのではないでしょうか。割り箸の工作とはひと味違う、五
ない「もったいない」と言われたのは印象的でした。
材が多いようです。
材だけでなく小物、家具など、さまざまな楽しい製品をつくってい
感を駆使して全身で学ぶものづくりの体験は、とても大切な教育
世界に誇れる日本の町並みを夢見て、世田谷地域会での活動に
その後、内藤廣氏設計の「牧野富太郎記念館」と「JR 高知駅」
ます。地元の小学校では、ここで製作した高さ調整のできる椅子を、
だと思います。この授業がきっかけとなり、将来、建築の仕事に
微力ながら貢献したいと考えております。
の見学。牧野富太郎記念館は、植物のもつ有機的な力の流れを内部
1年生全員に与え6年生まで大事に使わせてから、卒業時に持ち帰
の架構システムで表現し、屋根形状は風の流れと周辺環境に配慮し
るそうです。豊かで羨ましい話です。
た建築となっています。構造集成材は米松ですが、天井や壁などの
最後の見学は
「高知県森林技術センター」
。ここでは製材のクリープ、
内装にはスギ、デッキにはヒノキと県産材をふんだんに使い、変化
曲げ、接合部の強度、床や壁の構造体の耐力などの各種試験をはじ
に富んだ暖かみのある空間となっていました。年月を経ても古さを
め、森林資源に関わる様々な研究も行っています。
感じさせない、味わいのある建築でした。
いろいろ質問はつきなかったのですが、フライトの時間が近づいた
また JR 高知駅は「く
ので、旅はこれにて終了。
じらドーム」と呼ばれ、
土佐材の関連施設や建築の見学はひじょうに興味深かったのです
広場と駅をつなぐアー
が、実は「カツオの塩タタキ」や栗焼酎など、高知の「食」を堪能
チ状の大屋根が特徴。
できたことも大きな楽しみとなりました。
県産のスギ湾曲集成材
関係者の皆様には感謝のひとことです。是非皆様も一度土佐へ足を
と鉄骨をあわせたハイ
運んでみては如何でしょうか。
興味をもつ子供が現われることを期待しています。
グループの作品を発表する生徒
〈(株)ケン アンド スタジオ バンガード〉
パネリストによる意見交換
写真:金山眞人
20
Bulletin 2012 年 5 月号
魚梁瀬杉の丸太
ブリッド構造になって
います。
〈アトリエ六曜舎〉
●土佐材に関する問合わせ:土佐材流通促進協議会
梼原森林組合・木造の工場
E-mail:[email protected] TEL:088-883-6721
Bulletin 2012 年 5 月号
21
FORUM
区民や学生も参加した会場の風景
支部ダイジェスト
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
● JIA 関東甲信越支部・2012 年度支部通常総会開催
総会への出欠回答(委任を含む)を、指定のハガキにて支部事務局
までお送り願います。
なお本部通常総会は、5 月 31 日(木)に開催される予定です。
日 時:2012 年 5 月 9 日(水)
13:30 ~ 15:00 支部通常総会
15:00 ~ 17:30 会員懇談会(企画内容検討中)
18:00 ~ 20:00 懇親会
会 場:建築家会館 1 階ホール
● 新会員の集い
日 時:6 月 29 日(金) 13:00 ~ 15:00 会 場:JIA 館1階 建築家クラブ 申込:支部事務局まで
新入会員(入会後3年以内)を対象に、JIA の理念「建築家憲章・
倫理規定・行動規範(ガイドライン)」の確認と、支部の役員会組織・
地域会・委員会・部会などの活動紹介を分かりやすく行い、質問や
意見交換を通して、出席者相互の気楽な交流を図ります。
委員会・地域会・部会からのお知らせ:
詳細は関東甲信越支部の
HP をご覧下さい
● 第 24 回交流大会・交流セミナー「近作について」
(講師:西沢立衛氏)
日 時:4 月 27 日(金) 14:00 ~ 20:00 会 場:建築家会館 1階ホール 定員:100 名 参加費:交流セミナー:2,000 円(学生無料)、懇親会:5,000 円
● JIA トーク 第 1 回「HOUSE VISION」産業の未来を可視化する
日 時: 6 月 20 日(水) 18:30 ~ 20:30
会 場: 建築家会館 1階ホール
講 師: 原 研哉氏(デザイナー)
ることでしか、本当はデザインというものはないのではないか」
(内
定員: 100名 題が、いたるところで顕在化し、先鋭化している。何が問題であり、
山節氏)、「いまや設計の条件は与えられるものではなく創ってい
申込: イベント名・氏名・所属先名・連絡先 TEL・FAX を明記の上、
今後のデザインにおいて何が必要なのか。
く」(連健夫)である。当日の講演や内容の濃いディスカッション
支部事務局:FAX(03-3408-8294)かメールでお申し込みください。
この度、昨年の UIA 大会でのシンポジウムをまとめ、日本建築
がまとめられていると共に、林昭男氏、大野二郎氏、渡邉研司氏
[email protected]
家協会・デザイン部会編著、鹿島出版会 から新刊「3.11とグ
のコラムが加わり、テーマを立体的に深めている。印税はすべて
ローカルデザイン」(世界建築会議からのメッセージ)が出版され
被災地支援の NPO に寄付される。是非、建築家のみならず、多く
た。編集が選んだ執筆者のメッセージは興味深い。「私達が求める
の方に読んで頂きたい本である。
他建築関連: 詳細は国土交通省・他関連のHPをご覧下さい
●「復興まちづくり情報 INDEX」
(3 / 9 国交省)
国交省が、復興支援の一環として、地方公共団体や復興事業に携わ
る関係者向けに、支援施策を幅広くとりまとめた資料を作成いたし
ました。
http://www.mlit.go.jp/report/fukkou-index.html
事業制度のイメージ
http://www.mlit.go.jp/common/000192529.pdf
グローカルな建築は時代を超えて前向きに生成的な価値を求めるも
● 建築技術教育普及調査事業/(財)建築技術教育普及センター
度のない最終形のない押しつけない建築をグローカルな建築と言っ
建築技術教育普及基金による調査・研究助成、普及事業助成につい
て募集が行われています。
※ 応募締め切りは、4 月 27 日
http://www.jaeic.or.jp/centerfund.htm
てよいかもしれない」(松原弘典氏)、「専門家は、あまりそこに長
今年度のテーマは「建築家はともだち」。6 月の約 1 ヶ月間に、JIA
だ増える可能性もあり、専用ホームページで、随時プログラム情報
の多彩な活動を広く一般市民に対して情報発信するため、様々なプ
について、更新していきますので是非ご覧下さい。
ログラムを開催いたします。下記に記載したプログラム以外に、ま
http://www.jia-kanto.org/AG2012/
B A C K YA R D
22
Bulletin 2012 年 5 月号
〈連健夫/デザイン部会長〉
の」(長島孝一氏)、本当は力があるのに行動しない人を刺激して覚
醒させるのも建築家の役目であり、そういう意味で建築の構築する
力を信じている」(新居千秋氏)、「これはグローカルなのか、ある
いはローカルなアプローチなのか、普遍化することと想定外である
と諦め、個別解として対応すること」(チョー・ミンシック氏)、「精
くいてはいけない」(チャン・トーマス)、「関係をだれかが代弁す
「3.11 とグローカルデザイン」
世界建築会議からのメッセージ
日本建築家協会・デザイン部会編著
出版社:鹿島出版会
2012 年3月刊行
定価:2400 円+消費税
A5 版、並製カバー付、168 ページ
英文併記(Summary)
編集後記
「 春」
アーキテクツ・ガーデン プログラム
・JIA 建築セミナー
・写真談義「時代をリードした建築」
・JIA 杉並土曜学校
「( 仮 ) 空き家の有効活用 グループホーム&シェアハウス」
・木造住宅の耐震診断・改修事例報告
・3.11 とグローカルデザイン出版記念トーク・パーティ
・LIXIL:GINZA[SUMAI セミナー ]
リフォーム再考〜長く住み続けることが本当のエコ〜
・OZONE セミナー
「JIA 建築家と考える住まいづくり」「住まいの安心と安全」
・エコハウスセミナー
・津波と街と建築 被災地の街と建物の最終報告と提言
・第 2 回文京・見どころ絵はがき大賞
表彰式・シンポジウム(応募作品を通して文京の魅力を語る)
・JIA トーク・「HOUSE VISION」産業の未来を可視化する
・連続企画
「二人の外国人建築家/タウト&レーモンド in 群馬・高崎」
・(仮)東京のまちづくりと景観について
・新会員の集い
・千葉県建築展 : 講演会/大多喜町役場庁舎の今井兼次作品から
千葉学作品への継続と変遷
・シンポジューム 建築家が取組む建築相談
「3.11 とグローカルデザイン」世界建築会議からのメッセージ
■東日本大震災から1年を過ぎ、街づくりや建築における様々な問
参加費: 無料(要事前申し込み) 申込:支部事務局まで
講演会・シンポジウム
新刊
建築相談会
・連続建築無料相談会
展示・ワークショップ
・新宿プロムナード展(ミケランジェロ会)
・第 21 回 JIA 東京都学生卒業設計コンクール 2012
・子ども空間ワークショップ@ tvk“秋じゃないけど収穫祭”
・第 2 回文京・見どころ絵はがき大賞 展覧会
・千葉県建築展 : 作品展示会
・大学院修士設計展 Web 公開
街歩き・見学会
・渋谷探索トレッキング 2012
・( 検討中 ) アーバントリップエクストラ
・(仮称)下北沢まちあるき
・街歩き・街並編「代官山とヒルサイドテラス」
・街歩き・住宅編「日本的な住まいと暮らし」
・記憶に残る学び舎~高輪・白金界隈を歩く
・千代田景観まちあるき
・(仮称)歴史的建造物見学会
・まち並みウォッチング in 上田
・光と建築
・千葉県建築展 : 見学会/
大多喜町役場庁舎を設計者千葉学氏とともに
・東京海洋大学 学び舎見学と座談会
■ 最近、菜っ葉類のおひたしを楽しんでいます。根菜類のおいしい冬
■ 春、桜と言うと毎年4月に葉桜会という会を向島で催しています。
も大いに楽しみましたが、緑の素朴な美味は、春の訪れと感じています。
建築に関わる人や色々な人たちに声をかけ既に 20 年続いておりま
もちろん季節の肴でもあります。
す。墨堤の桜は江戸時代から桜の名所で美味しいお酒と料理 美形揃
[ 池元 ]
いの芸者衆との春宵はまさに価千金です。
■ 毎年の事ですが、花見を何処でするか悩みます。
[ 立石 ]
昼間の桜をゆっくりと見たいのですが、昨年からデビューの花粉症が
■ 少し遅れて桜の季節がやって来ました。今年はパステルカラーが流
気になり、今ひとつ乗り切れていません。
行とのことで、桜のない街中も明るく華やかに感じます。春の新鮮な
[ 市村 ]
■ 出戻りです。JIA 埼玉、人材稀少。宜しくです。五月は生まれ月。
気持ちを一年間持続したいものです。
近づいてくるとわくわくします。「春」と言えば僕チェリー、あ、ボチ
■ 桜が咲きはじめて春を感じるより、花粉がむずむずして春を感じて
チェリ。始まりの季節。元気の季節!
しまうこの頃。昨年は自粛したがやはり花見がないと春がやってこな
[ 倉島 ]
[ 土居 ]
[ 中澤 ]
■ 小さい頃、新しいことが始まる春が大好きでした。
い、うきうきした気分で季節を迎えたいな
今でも春になると何か新しいことに出会える気がしてわくわくします。
■ 四季のある日本でも “足音” が気になるのは春だけのような気がし
[ 杉本 ]
ます。特別な季節を心待ちにしていればこそ、待ち遠しいのは人の常
[ 中村 ]
■ 毎年春は「花粉症で外に出たくない・・・」などと言って花見も
かも知れません。新しいスタートに万歳!。
遠慮していましたが、今年は各地の花見に出かけていって元気を共
■ 土のなかから出てくる宿根草の芽、ジンチョウゲの香り、鮮やか
有したいという気分です。
な春の花達。毎年欠かさず繰り返される植物の力強い営みは、我々
[ 高安 ]
[ 湯浅 ]
に勇気を与えてくれている気がする。
編集
:社団法人 日本建築家協会
関東甲信越支部 広報委員会
委員長
発行人
:菊地 良一
発行所
:社団法人日本建築家協会 関東甲信越支部
:河村 大助
〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-3-18 JIA 館
副委員長 :湯浅 剛・中澤 克秀
委員
:池元 真克・伊藤 暁・市村 宏文・榎本 雅夫
B A C K YA R D
N E W S : 詳細は JIA 本部、関東甲信越支部及び、UIA 大会の HP をご覧下さ い
こんな本を読みました
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
Tel: 03-3408-8291( 代 ) Fax: 03-3408-8294
印刷
:株式会社 協進印刷
大川 宗治・倉島 和弥・近藤 剛啓・白橋 忠博
杉本 由美子・高橋 隆博・高安 重一・立石 博巳・田中 宣彰
土居 志朗・中村 隆則・山本 成一郎
編集長
:湯浅 剛
■ JIA 関東甲信越支部関連サイト一覧
・( 社 ) 日本建築家協会 (JIA) http://www.jia.or.jp/
副編集長 :池元 真克
・建築家 online ( 一般向け )
編集委員 :市村 宏文・大川 宗治・河村 大助・倉島 和弥・白橋 忠博
・JIA 関東甲信越支部 ( 会員向け ) http://www.jia-kanto.org/members/
立石 博巳・ 田中 宣彰・土居 志朗・菊地 良一
表紙 / 本文デザイン :( 株 ) スタジオネオ 伊波 サチヨ・守田 真紀子
http://www.jia-kanto.org/
© 社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 2011
■ 販売価格 300 円 ( 本体 286 円 + 消費税 14 円 ) /会員の購読料は会費に含まれています。
Bulletin 2012 年 5 月号
23
第三種郵便物認可 Bulletin 2012 年 4 月23 日発行
Bulletin 235| 2012 年 5 月号
24
Bulletin 2012 年 5 月号