第 1 回文化審議会参考資料 特徴的な文化政策(文化による都市の再生

第 1 回文化審議会参考資料
特徴的な文化政策(文化による都市の再生)フランス ナント市
(ナント市の概要)
・ロワール河河口に位置し、ペイ・ドゥ・ラ・ロワール地方(人口 350 万人)の中核都
市。人口は約 56 万人。かつては造船業を中心としたフランス屈指の産業・工業都市。
近年、産業・工業都市から文化都市に脱皮し、最も住みやすい街として知られている。
・歴史的には 15 世紀までブルターニュ公の領地の中心、18 世紀には奴隷売買の拠点とし
て繁栄。第二次大戦後は産業・工業都市として栄えたが、貿易や工業の中心である港
の機能が失われ、1980 年代は厳しい経済情勢に直面。
・1989 年にジャン・マルク・エロー氏が都市再生計画の柱として文化事業を据えること
を公約に当選し、大規模な都市計画に着手。
・象徴的事業はナント島の再開発。ビスケット工場跡を改築し、
「リュー・ユニック」と
して改装し、市民参加型文化政策を実施。
・市民社会における文化・芸術の力、創造力を活かした都市再生の試みであり、市長の
強力なリーダーシップのもとにさまざまな分野で市民、専門家、行政が連携して参画
している。
(ナント島プロジェクト)
・都市再生プロジェクトの中核事業はがの再生プロジェクト。産業構造の転換で荒廃し
たナント島を文化、観光、レジャー、公園などの「緑の島」に再生するもの。プロジ
ェクトの実施にあたり、市民との話し合いが重ねられ、公共空間のデザインは、アー
ティスト、デザイナーが多数参加している。また、ローマ兵のように動ける機械、拍
手する機械などを駆使する野外パフォーマンス集団が企画するテーマパークも予定さ
れている。
(芸術文化フェスティバル)
①三大陸映画祭
アジア、アフリカ、中南米の映画を上映するフェスティバル。観客は約3万人。
②書籍とアートフェスティバル
アート関連の書籍見本市。出版社、書店、アーティスト、評論家が一堂に会する機会。
③フォル・ジョルネ(「熱狂の日」音楽祭)
クラッシック音楽のフェスティバル。低廉な価格で幅広い観客を集める。無料コンサー
トもある。バロック、ロマン派等とテーマを設定して実施。1つの公演時間を限ることで、
なるべく多くのコンサートが楽しめるよう工夫されている。約 12 万人が音楽祭を目的に
集まる。
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④AFFAとの連携
音楽祭のコンセプトや枠組みがパッケージ化され、他の地域や国に対しフランス外務省
所管のフランス芸術活動教会(AFFA)がナント市の取組をPR。
⑤リュー・ユニック
ビスケット工場であった跡を産業遺産として保存し、現代に活用できるよう改装し、現
代アートの実験場として運営。劇場や音楽室のほか、ブックショップ、バー、レストラン
などの施設を有し、さまざまな人が集う場所としている。
(都市の創造力と文化)
・ナント市の挑戦は、独自の文化を育て、革新的な経済基盤を持つクリエイティヴ・シ
ティと呼ばれている。
①脱工業化都市時代における文化・情報・サービス産業の創出
フォル・ジョルネなどの文化フェスティバルをパッケージ化し、海外の都市へ、い
わば文化商品としての売り込みに成功し、新たな文化産業を創出している。
②芸術文化による創造的問題解決
都市づくり、地域づくりに関わる者(ランドスケープデザイナー、建築家、アーテ
ィスト、アートディレクターなど)が施策を推進している。
③新たなアイデンティティの創出、そして過去の記憶や伝統との融合
リュー・ユニックは歴史、工業都市である市のアイデンティティを物語る建物とし
て再整備され、コンテンツやソフトが優先され、必要な整備のみ行われる。
さまざまな人が集えるよう、常にオープンであり、人々の視線と好奇心が集まり、
創造的な討議と情報の交換の場を創出している。
④持続可能な都市の創造
公害と汚染にまみれた荒廃した島を市民が集える公園やテーマパークを中心とした
緑の島へ甦らせることで、持続可能な都市再生に挑戦している。
(その他、文化による都市再生の例)
・スペインのビルバオ市はニューヨークにあるグッゲンハイム美術館を誘致することで、
観光客の急増、雇用機会の創出など経済の波及効果の増大をはじめ、地域住民が自分
たちの住む地域や都市に対する誇りを回復した。
国際交流基金調査報告書より抜粋