ポートランド 環境・人に適した建物の建設を進める ∼G/レートプログラム∼ 都 市 名 ポートランド 人 口 536,000人 面 積 378km2 目 的 期 間 事業内容 なるべく環境負荷を減らし、生物多様性にも配慮した建物(グリーンビルディング)の 建設を促進する。 2001年∼現在実行中 グリーンビルディングの建設を促進するために、ポートランド市持続可能な発展事務所 (Office of Sustainable Development)は、建築政策の強化や、技術援助、広報や 奨励策などを包括的に実施する「G/レートプログラム」を行っている。グリーンビル ディングの基準は、建物の評価だけでなく、企業や市民などにグリーンビルディングへ の投資を促すためにも不可欠なものになった。 ① 市の政策 1) 市の建物へのグリーンビルディング基準の導入 2001年にポートランド市は、全ての市所有建築物の建設や改修にグリーンビル ディング基準「LEED2」を導入することを決定した。 ポートランド市持続可能な発展事務所が入っている建物は、1895年に倉庫兼商 業ビルとして建てられたものである。この建物を改築し、屋上緑化・廃材利用・ 雨水利用などのグリーン化を施した。改築された建物は、LEEDのゴールドメダ ルを受けた。 2) ポートランドLEEDの作成 2002年、ポートランド市はグリーンビルディング建設を更に促進するため、地 域特性を考慮し、雨水管理やエネルギーの効率的利用、土地利用や公共交通優先 等に、より高い目標を織り込んだ「ポートランドLEED」を作成した。 3) 民間ビルのグリーン化促進策 2 LEED(Leadership in Energy and Environmental Design) :直訳すると「エネルギーと環境に優しいデザインのリーダー シップ」。コラム参照。 第2部 アメリカ合衆国> 41 2 0 0 2 年 に ポ ー ト ラ ン ド 開 発 委 員 会( P D C : P o r t l a n d D e v e l o p m e n t Commission)は、民間企業のビル建設計画に助言を与え、「ポートランド LEED」の一定基準に達すると認めた建設計画には、財政支援をすることを決め た。 3) −1 補助金制度 ポートランド市は、グリーンビルディングを支援するためにグリーン投資基金 (Green Investment Fund)を設立した。基金額は800,000ドル。 2000∼2002年にかけて、69の住宅や商業施設、新たな技術プロジェクトに 対して資金を提供した。 3) −2 税控除 オレゴン州政府と共同で、建物の規模とLEEDに基づく評価に応じて所得税を控 除する「企業エネルギー税控除(Business Energy Tax Credit)制度」を整 備した。 計画段階から市の担当セクションと相談し、グリーンビルディングの基準に沿う ような計画に練り直してゆくことで、補助金や税控除等を利用できる。市にとっ ても、多くのビルをグリーン化するための効果的方策である。現在は、民間ビル 開発や福祉住宅建設事業、インフラ建設事業も、同様のグリーン化への経済的イ ンセンティブを与えている。 ② パートナーシップ構築による「G/レートプログラム」の運営 グリーンビルディングを進める「G/レートプログラム」は、地域のディベロッパー、 家主、建設業者、デザイナー、商業組合、大学などとのパートナーシップによって運 営されている。こうしたパートナーシップを組むことで、地域の専門技術や資源活用 を図っている。 ③ 教育、普及 1)BEST(Business for an Environmentally Sustainable Tomorrow)賞 毎年、市は環境に貢献した地域の企業を表彰し、事例集をまとめ、朝食会を催し ている。 2)グリーンビルディングホームツアー 毎年定期的に開催されるグリーンビルディングホームツアーでは、一般の人々が グリーンビルディング基準を導入した市内の企業や個人の家を見て回ることがで きる。 ④ 技術支援とトレーニング 1)技術サービス 専門コンサルタントが、無料で技術的な助言をしている。2000年から2003年 42 >第2部 アメリカ合衆国 ポートランド までに300以上の建設事業に助言を行った。また市の担当局は、電話やメール、 ホームページで、一日約200人からの質問に答えている。 2)レクチャー及びワークショップ 4ヶ月にわたり、専門家によるグリーンビルディングに関するレクチャーやワー クショップ、視察ツアー、新しい技術や事例紹介を行っている。 2005年は、商業ビルと住宅ビルに分けて行われている。 期間:1月25日∼4月21日 全体ワークショップ:5回開催、有料(10∼15ドル) 商業ビルワークショップ:全11回 有料(1回45ドル・学生25ドル、シリ ーズ375ドル・同225ドル) 2005年3月4日(金)の、ポートランド州立大学他の雨水利用施設に関する レクチャーでは、設計者・建設業者の講義のあと、現場視察を行った。軽食付。 参加者約40名。 施設見学中 施設の説明 住宅ビルワークショップ:全7回 有料(1回40ドル・学生20ドル、シリー ズ175ドル・同120ドル)、軽食付、視察有 3)ガイドブック グリーンビルディングに初めて取り組む業者を対象に、「G/レートプログラム」 についてわかりやすくまとめたガイドブックを出版している。 4)インターネットサービス 2003年に立ち上げられたホームページでは、地域のグリーンビルディングの商 品やサービスを紹介している。建築業者や企業、一般の人も、どのような商品や サービスが地域内で利用可能なのかを探すことができる。 第2部 アメリカ合衆国> 43 結 果 事 業 費 2003年2月までに1,300世帯の住宅と26の公共、商業、複合ビルがグリーン化し、 その面積は306,000㎡になった。 市の持続可能な発展事務所グリーンビルディング担当部署の予算は、600,000米ド ル/年。 一般家庭廃棄物処理・リサイクル業者が市に支払う受託料や、商業部門の廃棄物処理・ リサイクル料金の一部を、グリーンビルディング事業の財源にしている。2000年に市 は、一般家庭廃棄物業務受託料を1.55%値上げし、新プログラムの予算の一部にした。 スタッフ 詳しい情報を 知りたい方は フルタイム2名を含む合計5名 >http://www.sustainableportland.org エネルギー、廃棄物管理、グリーンビルディング、持続可能な技術・事例の4部署か らなる、ポートランド市の持続可能な発展事務所のウェブサイト >http://www.green-rated.org ポートランド市持続可能な発展事務所のウェブサイト内、「G/レートプログラム」の ページ *コラム:LEEDとは Leadership in Energy and Environmental Designの略、直訳すると「エネルギーと環境 に優しいデザインのリーダーシップ」。 民間非営利団体の米国グリーンビルディング協議会(US Green Building Council)が 1998年から作っている持続可能性に配慮した米国のビル評価システム。立地、水利用、エ ネルギー、資源材料、内部環境、デザインや技術の6分野にわたって細かく項目を設け、設 定した基準を達成するごとに加点し、総合点で建物を評価するシステムになっている。民間 商業施設から公共建築、一般住宅までをカバーし、評価には、認証、銀、金、プラチナの4 段階が与えられる。基準が厳しく多方面にわたるために、認証ビルの評判は非常に高い。 2002年のデータでは、LEEDに登録した建設事業件数の第1位はポートランドで22件、シ アトル20件、アトランタとピッツバーグでは9件であった。 LEEDの詳細:http://www.leedbuilding.org 44 >第2部 アメリカ合衆国
© Copyright 2024 Paperzz