日本におけるGreen Building 評価の市場とニーズ

建築認証事業本部
日本におけるGreen Building評価の市場とニーズ
ここ数年の日本国内におけるグリーンビルディング評価市場が拡大している。特にLEED市場が急拡大している
のは周知のところだ。既に米国やアジア諸国を中心に建築物の環境評価システムとしてLEEDがデファクトスタ
ンダードと化しているが、日本においても、このトレンドは強まりつつある。本ニュースレターにおいては、特に
LEEDの米国や日本国内における現在そして将来の動向について概観してみる。
1.LEEDとは
LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)とは、環境配慮型建築物(グリーンビルディング)の第
三者認証による格付けシステムであり、米国の非営利団体である米国グリーンビルディング評議会(USGBC)に
より開発され、認証や専門資格はグリーンビルディング認証機関(GBCI)により管理されている。
2.米国における認証取得状況 “グリーンリーシング
(*1)
”の到来
米国においてLEED認証物件は既に17,000件を超えている。しかし、USGBCがLEEDを立ち上げた1999年当
時は2~3年前の日本と似たような状況で、マーケットからの関心は非常に薄いものだった。米国においても
LEED認証件数が増加したのは立ち上げからしばくしてからのことである。
現状においては、LEEDがデファクトスタンダードとして確固たる地位を築いていることは明らかだ。“グリーンリ
ーシング”の到来で、米国の主要都市における商業ビルの20%がLEED認証を取得しているおり、また、ミネソタ
州の商業ビルストックのうち1/3がLEED認証を取得している。さらに、カリフォルニア州に至っては、商業ビル
の賃貸床面積の37%がLEED認証を取得しており、これらの州は文字通りLEEDの牽引役として象徴的な存在
となっている。
(図1)各国LEED申請・認証累計件数(2014年1月24日現在)
(*1)グリーンリーシングとは
テナントビルのリーシング活動に際し、エネルギーや水の効率
性といったリーシング対象ビルが持つ環境性能を入居決定の
重要ファクターとみなし、賃貸借に関わる様々なプレイヤーに
対し当該ビルの環境性能の透明性確保や説明を果たすこと。
3.LEED活用による差別化 普及のカギは“テナント”
米国不動産情報会社であるCoStarによる米国の商業ビル(延床面積5,000㎡以上)に関する調査において、下
記(図2)のような結果となった。
(図2)全市場在庫物件数(テナント募集物件数)に対するLEED認証取得物件数の割合の推移
【調査結果の分析】
【2006年~2009年】
(*2)
・約5,000㎡以上の物件について、LEED認証されたRBA
が急激に増加している。
(*2)RBA=Rentable Building Area(貸付可能床面積)
【2009年】
・全てのRBAのうち約50%がLEED認証物件である。
【2010年】
・2010年以降、市場におけるLEED認証されたRBAの在庫が減少。
以上から読み取れるのは、2006年~2009年にかけてLEED認証取得物件の市場への供給が急拡大し2009年
にピークを迎える。その後2010年~2011年にかけて、市場へ供給されたLEED認証取得物件が次第に吸収(=
テナント付け)されていく訳だが、LEED認証をしていない物件と比較するとその吸収(=テナント付け)されるスピ
ードが歴然である。つまり、LEED認証取得物件がテナントに選好されていることが明らかであるということである。
これはLEED認証取得がテナントリーシング時の差別化につながることの証左である。
(図3)国内LEED認証取得状況
4.日本における将来動向
LEEDが日本国内においても近い将来デファクトスタンダード化することは間違いない。キーワードは“グリーンリ
ーシング”だ。環境に配慮した一流企業が、今は自社ビルへのLEED認証取得を行っている。そして、これがテナ
ントビルへ波及するというシナリオだ。環境に配慮した一流企業はAクラス若しくはSクラスビルへの入居が主流
のため、このようなクラスのビルを保有したファンド、主にJ-REITがまずはLEEDの牽引役になるものと期待され
る。
そして、今後開発されるA~SクラスのテナントビルがLEED認証取得を目指すことは、“標準的”なこととなるであ
ろう。このことはテナントリーシングの側面から、既存テナントビルの所有者にとっては死活問題だ。このような既
存ビルの所有者の危機感が既存建物版のツール(EBOM)へと波及するものと考える。
投資家やビルオーナーは近い将来に必ずくるLEEDの波に備えることが必要だ。
建築認証事業本部 神谷町事務所 山口成
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