トコトリエノール研究

トコトリエノール研究
全 般
General
2014
Fu JY, Che HL, Tan DM, Teng KT. Bioavailability of tocotrienols: evidence in human studies. Nutr Metab (Lond). 2014 Jan 13;11(1):5. doi:
10.1186/1743-7075-11-5.
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ビタミン E の微量成分としてトコトリエノールは、神経保護、放射線防護、抗癌、抗炎症、脂質低下特性のようなトコフェロールにはない生 物活性を示すことが
明らかにされている。しかしながら、トコトリエノールの治療濃度域(therapeutic window)についての入手可能なデータには依然として議論の余地がある。ヒ
トにおけるトコトリエノールの治療効果について徹底的な調査を実施する前に、吸収およびバイオアベイラビリティの機構について理解することが重要である。
本総説で、ヒト試験から得られたトコトリエノールのバイオアベイラビリティに関して現在まで蓄積された証拠をアップデートした。5 件の研究から得られたデータは、
その α-トコフェロール輸送タンパク質に対する低い親和性にもかかわらず、トコトリエノールが別経路で標的目的地に到達する可能性のあることを示唆してい
る。このことは、経口摂取後の HDL 粒子および脂肪組織において相当量のトコトリエノールが検出されたことを報告した研究から明らかになった。
加えて、血漿トコトリエノール濃度は食品と一緒に摂取した場合に高くなる一方、トコトリエノールの自己乳化製剤は、トコトリエノールの吸収を増進することが
明らかにされている。
にもかかわらず、投与量、研究対象集団、および用いた製剤に焦点を合わせた 24 件の臨床試験の転帰に基づくと、入り混じった結果が認められた。これは使
用したトコトリエノールの組成や投与量のばらつきに起因している可能性があり、試験設計におけるトコトリエノール製剤について理解する必要性が示唆されて
いる。
本質的に米国心臓協会(AHA)のステップ 1 食のようなコントロール食の実施は、とりわけトコトリエノールとコントロール食の間の相乗的相互作用により脂質
プロフィルが修飾されている可能性のある高コレステロール血症の被験者において、研究の転帰に影響を及ぼすことがある。われわれはまた、トコトリエノールのバ
イオアベイラビリティが健常被験者から喫煙者や疾患患者までの異なる標的集団で一貫していないことを見出した。
本総説において、トコトリエノールの投与量、組成および処方、ならびに試験対象集団がトコトリノールのバイオアベイラビリティに及ぼす影響について考察を行
いたい。f
Keywords: トコトリエノール、バイオアベイラビリティ、ヒト、代謝、吸収、ビタミン E、パーム油
2012
Wong RS, Radhakrishnan AK.
10.1111/j.1753-4887.2012.00512.x.
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Tocotrienol
research:
past
into
present.
Nutr
Rev.
2012
Sep;70(9):483-90.
doi:
ビタミン E ファミリーは、α-、β-、γ-、δ-トコフェロールと α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールとして知られる 8 種類の異性体から構成されている。1922 年のビタミン E 発
見以来、これらの異性体がもたらす健康利益に焦点を合わせた研究が多数実施されてきた。
トコトリエノールの可能な治療用途に関する最近の知見は、ビタミン E 研究に変革をもたらした。しかしながら、多数の文献が存在するのにもかかわらず、ビタミン
E 研究のうちでトコトリエノールについて行われた研究はわずか 1%を占めるにすぎない。
新たに遂げられた進歩の多くから、健康状態の改善あるいは治療目的のためのトコトリエノール利用は有望であることが示唆されている。
一定の疾病状態におけるトコトリエノールの作用機構が調査されてきたが、健康増進あるいは疾病の予防・治療にこれらの分子が推奨される前に、その作用
の根本についてもっと精査がなされなければならない。
さらに、トコトリエノールの作用に関する研究の多くが、細胞系か動物モデルを対象にして行われてきた。トコトリエノールが様々な疾病状態における治療剤とし
て利用される前に、ヒトを対象にその効果について充分な確証を得る必要があることから、拠り所となるヒト臨床試験でのさらなるエビデンスが求められている。
Keywords: ビタミン E 研究、トコトリエノール、治療剤、ヒト臨床試験
2011
Patel V, Rink C, Khanna S, Sen CK. Tocotrienols: the lesser known form of natural vitamin E. Indian J Exp Biol. 2011 Oct;49(10):732-8.
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ビタミン E ファミリーのメンバーには固有の生物学的機能が備わっていることが、近年の多数の研究から明らかにされている。最近ではトコトリエノールが多大な注
目を浴びており、とりわけ α-トコトリエノールがビタミン E のなかで最強の神経保護作用を及ぼすことが明らかにされている。
専らトコトリエノールが介する保護作用は、12-LOX、c-Src、PLA2 の抑制、MRP1 のアップレギュレーションを含む多数の機構に委ねられている。さらに、トコトリ
エノールは TIMP1 の誘導と MMP2 の73
活性化低下によって動脈形成を引き起すことが最近明らかにされた。
しかしながら、トコトリエノールに固有の治療可能性は神経保護に限定されるものではない。トコトリエノールは、アポトーシス調節、サイトカイン、接着分子、酵
素、キナーゼ、受容体、転写因子、成長因子をはじめとする分子標的を有することが明らかになった。
このような治療可能性の大きさや独自性にもかかわらず、トコトリエノールに関する科学文献はビタミン E 研究の約 1%を占めるに過ぎない。トコトリエノールの潜
在性と相対的に乏しい文献数を考えると、さらなる調査が必要である。
Keywords: α-トコトリエノール、分子標的、治療可能性、文献数
Catalgol B, Batirel S, Ozer NK. Cellular Protection and Therapeutic Potential of Tocotrienols. Curr Pharm Des. 2011;17(21):2215-20.
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ビタミン E のメンバーに属する化合物トコトリエノールは、何種類かの病気の処置において有望な治療薬として用いられている。トコトリエノールは多くの状況 下で
トコフェロールより優れた活性を示すことが、最近の研究から示唆されている。
トコトリエノールは、アテローム発生性のアポリポタンパク質 B やリポタンパク質の血漿濃度を低下することが明らかにされている。さらにトコトリエノールには、抗血
管新生作用と抗血栓作用に加えて、その抗腫瘍作用によって癌療法における有効な薬剤として役に立つ可能性がある。
これらの作用以外に、難水溶性や低安定性といった幾つかの特性が医療におけるトコトリエノールの利用に制限を加えている。しかしながら、エステル化や併用
によって生物利用能を増大しようとする試みが最近の研究でなされている。
トコトリエノールの臨床利用のために図られたこのような努力は、医療分野においてトコトリエノールが広く取り上げられるようにするために役立つ可能性がある。
また、トコトリエノールの治療上のメカニズムを特定するために追加研究が必要であろう。
Keywords: 治療薬、生物利用能、臨床利用
2010
Aggarwal BB, Sundaram C, Prasad S, Kannappan R. Tocotrienols, the vitamin E of the 21st century: Its potential against cancer and other
chronic diseases. Biochem Pharmacol. 2010 Dec 1;80(11):1613-31.
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一種の「稔性因子」として 1938 年に初めて発見されたビタミン E は、現在 8 種類の異なるイソ型を指すために用いられている。これらのイソ型は、トコフェロール
と呼ばれる 4 種類の飽和の類似体(α、β、γ、δ)とトコトリエノールと呼ばれる 4 種類の不飽和の類似体のいずれかに分類される。
トコトリエノールが広範囲に渡って調査されてきた一方、トコトリエノールについては殆ど知られていなかった。極めて限られた数 の研究から、トコトリエノールの分
子、治療両面におけるターゲットはトコフェロールとは異なることが示唆されている。
例えば、腫瘍形成と HMG-CoA 還元酵素阻害と密接な関連にある炎症性転写因子 NF-κB、哺乳類 DNA ポリメラーゼ、及び一定のタンパク質チロシンキ
ナーゼの抑制はトコトリエノール特有の特性である。
本総説では、前臨床並びに臨床の両レベルでの癌、骨吸収、糖尿病、心血管疾患、神経疾患におけるトコトリエノールの分子ターゲットとその役割について
詳細な調査を行った。
トコフェロールの治療的価値に対する失望感の増大に伴い、これら新規のビタミン E 類似体の潜在能力に関するさらなる検討が待望されている。
Keywords: トコフェロール、トコトリエノール、癌、骨吸収、糖尿病、心血管疾患、神経疾患
2008
Atkinson J, Epand RF, Epand RM. Tocopherols and tocotrienols in membranes: A critical review. Free Radic Biol Med. 2008 Mar
1;44(5):739-64.
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脂質過酸化反応の脂溶性の連鎖停止型抑制剤として知られるトコール類(トコフェロールとトコトリエノール)の役割が目下再解釈されているところである。
明らかに既知の抗酸化挙動に依存しないトコール類の新しい生物活性がこれまでに述べられている。これらの活性は充分現実味がありそうだが、細胞膜にお
けるトコール類の挙動についての理解には依然として大きなギャップがある。このことは、α、β、γ、δ それぞれのクロマン環のメチル化パターンや一見したところ特殊
なトコトリエノールの本質に触れるときに特に生じる。
in vitro で得た抗酸化活性の測定値を参照して in vivo(あるいは細胞培養)での結果に基づいて結論を導いたり、モデルを開発したりすることは妥当では
ない。
トコール類が生体膜に存在するとき、共に抗酸化作用の効率を変化させることが予想されるリン脂質の局在組成やコレステロールのような中性脂質の存在に
大きな変動が認められるはずである。
トコール類は膜中では均一に分散しそうにないが、脂質の頭基(ヘッド基)とアシル鎖の特定の組み合わせが過酸化に対して独特の保護作用を及ぼすかは
まだ知 られていないし、トコール類が膜 中で果 たす構造的 な役割 についても目下充 分 な理解 を得ていない。トコール類 は屈 曲 ストレスを増加させるか、
lysolipid のような他の脂質によって発生する同様のストレスを打ち消す可能性がある。
本総説では、リン脂質二重層におけるトコール類の局在部位と挙動について知られていることを概観する。その大部分は生物物理の文献から引用するが、適
切な場合、生物学的意義のある事象まで考察を広げることを意図している。
これによって、研究者が新しい実験を計画し、結果を批判的に評価する時に、トコール類の生化学に関するより詳細な理解を得る一助となることを望んでい
る。
Keywords: トコール類、リン脂質二重層
Chin SF, Hamid NA, Latiff AA, Zakaria Z, Mazlan M, Yusof YA, Karim AA, Ibahim J, Hamid Z, Ngah WZ. Reduction of DNA damage in older
healthy adults by Tri E Tocotrienol supplementation. Nutrition. 2008 Jan;24(1):1-10.
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老化に関するフリーラジカル理論(FRTA)では、フリーラジカルが老年期における生理的機能低下の主な原因であることが示唆されている。フリーラジカルは細
胞組織や DNA のような分子を攻撃し、DNA 構造に様々な修飾を引き起すことが明らかにされている。修復されない DNA の蓄積は、老化プロセスに関連し
た種々の健康障害の一因となる。
Tri E トコトリエノールが DNA 損傷に及ぼす影響を評価するために無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。37 歳から 78 歳まで 64 人の被験者が
試験を終了した。参加者は 1 日 160 mg の Tri E トコトリエノールの摂取を 6 ヵ月間受けた。血液サンプルから DNA 損傷を測定するために、コメットアッセイ法、
姉妹染色分体交換(SCE)頻度、染色体異常分析を用いた。
コメットアッセイ法 で測 定 した DNA 損 傷 は 3 ヵ月 後 に有 意 な減 少を示 し( p<0.01)、6 ヵ月 目 まで低 値 を維 持 することが結 果 から明 らかになった
(p<0.01)。尿中 8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)濃度 が有意に低下 した一 方(p<0.05)、50 歳より上 の群でより顕著であったが
(p<0.01)、SCE 頻度もまた補給 6 ヵ月後に低下した(p<0.05)。SCE と年齢の間に強い正の相関が認められたのに対し、DNA 損傷と 8-OHdG の間の
相関は弱く、その関係は補給と共に減少した。しかしながら、第 4 染色体で転座あるいは安定挿入は観察されなかった。
結論として、DNA 損傷、SCE 頻度、尿中 8-OHdG の低下が示すように、Tri E トコトリエノールの補給は DNA 損傷を減少させることによって効果が見られそう
である。
Keywords: フリーラジカル理論、DNA 損傷、SCE 頻度、尿中 8-OHdG
2007
Yoshida Y, Saito Y, Jones LS, Shigeri Y. Chemical reactivities and physical effects in comparison between tocopherols and tocotrienols:
physiological significance and prospects as antioxidants. J Biosci Bioeng. 2007 Dec;104(6):439-45.
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ビタミン E はトコフェロールとトコトリエノールのすべての誘導体に関する総称である。生体内で最も豊富に存在し、かつ最も活性の高いビタミン E のイソ型は α-ト
コフェロールであるが、最近では他のビタミン E の役割についても新たに注目が集まっている。
本総説では、α-、β-、γ-、δ-トコフェロールと α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールの間の相違を特に以下の点に関して要約する。すなわち、i) ラジカル捕捉能と溶液
中の金属イオンとの化学反応性、ii) リポソーム膜内部における物理効果、iii) 細胞毒性に対する保護である。
さらに、ビタミン E のなかでもとりわけトコトリエノールを疾病の予防と治療に利用する際の生理学的意義と将来予測について検討する。 f
Keywords: ビタミン E、トコフェロール、トコトリエノール
Zingg JM. Vitamin E and mast cells. Vitam Horm. 2007;76:393-418.
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肥満細胞は、B 細胞、T 細胞と相互作用し、また、他の細胞の活性化に関与する幾つかのメディエータを放出することによって、免疫系において重要な役割を
果たしている。
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肥満細胞の過反応と組織における肥満細胞の無制御の蓄積は、慢性関節リウマチ、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症のような何種類かの疾患、及
び喘息やアレルギー性鼻炎のようなアレルギー性疾患の一因となる炎症性メディエータの放出増加を引き起す。肥満細胞の増殖、生存、脱顆粒化、移動を
合成あるいは天然の化合物で妨害することは、これらの疾患を管理するための予防戦略を意味している可能性がある。
天然ビタミン E は α-、β-、γ-、δ-トコフェロール、及び α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールの 8 種類の類似体のグループからなるが、α-トコフェロールのみが効率的に
肝臓に保持され、周辺組織に分布している。
肥満細胞は、非効率的に保持された天然ビタミン E 類似体あるいは合成の誘導体による治療を受けやすくする可能性のある外部環境(皮膚の上皮表面、
胃腸粘膜、呼吸器系)に通じる組織の付近に選択的に存在している。
フリーラジカル消去に加え、天然ビタミン E 類似体は幾つかの細胞系、すなわち肥満細胞、プロテインキナーゼ C、プロテインフォスファターゼ 2A における情報伝
達と遺伝子発現を個々に調節し、また、プロテインキナーゼ B はビタミン E によって影響を受け、増殖、アポトーシス、分泌、移動の調節につながる。
本稿では、ビタミン E が肥満細胞の関与と共に情報伝達と遺伝子発現を調整することによって疾患を予防する可能性を検討したい。
Keywords: 肥満細胞、天然ビタミン E 類似体、情報伝達、遺伝子発現
Sen CK, Khanna S, Rink C, Roy S. Tocotrienols: the emerging face of natural vitamin E. Vitam Horm. 2007;76:203-61.
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ビタミン E に関するすべての研究のうちの 95%以上が α-トコフェロールについての専門的な研究に向けられている。他の天然ビタミン E についての理解は乏しい。
人体に α-トコフェロールが大量に存在すること、また、ビタミン E のすべての分子について比較した抗酸化剤としての有効性から、生物学者は基礎研究や臨床
研究のテーマとしてトコフェロールでないビタミン E 分子を軽視するようになった。
最近の技術発展により、従来のこのような見識について、本格的な再考が必要とされている。天然ビタミン E のうちトコトリエノールのサブファミリーには、強力な
神経保護特性、抗癌特性、コレステロール低下特性が備わっているおり、トコフェロールでは認められない特性が往々にしてある。
ビタミン E 研究における最近の発展により、ビタミン E ファミリーのメンバーがそれらの生物学的機能に関して重複していないことが明らかに示されている。α-トコト
リエノール、γ-トコフェロール、δ-トコトリエノールは、健康と疾患において α-トコフェロールとは明らかに異なる機能を有するビタミン E 分子として浮上してきている。
ナノモル濃度で神経変性を予防するのは α-トコフェロールではなく、α-トコトリエノールであることが明らかにされている。これらの所見は、濃度ベースで天然のビタ
ミン E 分子が示すすべての生物学的機能で最も強力なものを示している。
ヒトが消費する種々のトコトリエノールの安全量は 1 日 200 から 1,000(単位不明)であることが提案されている。急速な増大をみせる一連の証拠がビタミン
E のメンバーに固有の機能が備わっていることを裏付けている。
このような事実をかんがみて、発表される論文のタイトルの表現も、研究対象とされるビタミン E の特定のタイプに限定されるべきであろう。例えば、特定のタイプ
のトコフェロールを過剰摂取した場合の毒性に関する証拠は、高用量の「ビタミン E」補給は全死因死亡率を上昇させる可能性があると結論付けるために用い
てはならない。このような結論は、トコトリエノールについては考察されていない状況下でさえ、トコトリエノールにも毒性があるといった誤った暗示を与える恐れがあ
る。
現在までに得られた知見から、ビタミン E についてあまり知られていないタイプへの戦略的投資が必要とされている。このことが、健康における特定の要求に取り
組む研究に適切とされるビタミン E 分子の賢明な選択を可能とするはずである。 f
Keywords: ビタミン E 分子、生物学的機能、全死因死亡率
Mustacich DJ, Bruno RS, Traber MG. Vitamin E. Vitam Horm. 2007;76:1-21.
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ビタミン E という用語は、α-、β-、γ-、δ-で表される 4 種類のトコフェロールと 4 種類のトコトリエノールを含む親油性の天然化合物を述べるために用いられる。ビ
タミン E について最も良く知られている機能は、脂質過酸化の循環的伝播を防ぐ連鎖停止型抗酸化剤としての機能である。
そのような酸化防止機能にもかかわらず、ヒトにおける食事性ビタミン E の所要量は α-トコフェロールのみに限られている。なぜなら、他のビタミン E は肝臓内に
存在する α-トコフェロール輸送タンパク質(TTP)のために充分に理解されず、また、ヒト体内ではこれらのビタミン E が α-トコフェロールに転換されないからであ
る。
ビタミン E の健康上の利益についてより良い理解を得るために、ビタミン E の分子レベルでの調節機構がより注目されてきている。それらの機構には次の三点が
含まれる。すなわち、(1) α-トコフェロールを血漿中に優先的に分泌する肝臓内の α-TTP の役割、(2) ビタミン E のフェーズ I、II での代謝、及び薬剤との相互
作用で考えられる影響、(3) ABC(ATP-binding cassette)タンパク質によるビタミン E の胆汁中排泄の調節である。
これらの調節経路に関する継続研究が、ヒトの健康上のさらなる利益に発展するビタミン E の機能を理解するうえで、新たな手掛かりとなることが期待されてい
る。
Keywords: α-TTP、薬剤相互作用、ABC タンパク質
2006
Sen CK, Khanna S, Roy S. Tocotrienols: Vitamin E beyond tocopherols. Life Sci. 2006 Mar 27;78(18):2088-98.
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自然界にはビタミン E 活性を有する物質が 8 種類存在する。すなわち、α-、β-、γ-、δ-トコフェロールと α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールである。現在までのところ、
PubMed に記載されているビタミン E に関するすべての論文のうち、トコトリエノールに関連した論文は 1%未満にすぎない。α-トコフェロールのヒト体内における
濃度の高さ、また、すべてのビタミン E 分子のうちで比較的高い抗酸化能が、生物学者の基礎・臨床研究のテーマにトコフェロール以外のビタミン E 分子を取り
上げることをおざなりにさせてきた原因として考えられる。
最近の技術発展から、このような慣習的常識についての本格的な再考が必要とされている。トコトリエノールには強力な神経保護特性、抗癌特性、コレステロ
ール低下特性が存在するが、このような特性はトコフェロールでは認められないことが多々ある。ビタミン E 研究における最新の成果は、ビタミン E 群のメンバーが
それらの生物学的機能に関して重複しないことを明確に示している。α-、γ-、δ-トコトリエノールは、α-トコフェロールとは明らかに異にする健康・疾病における機
能を備えたビタミン E 分子として浮上してきた。
α-トコフェロールではなく α-トコトリエノールがナノモル濃度で神経変性を予防することが明らかになった。濃度ベースで得られたこの所見は、すべての天然ビタミン
E 分子が示すあらゆる生物学的機能のうちで最も強力であることを示している。ビタミン E 群のメンバーは独自の機能を備えていることを裏付ける一連の証拠が
増え続けている。この事実により、原稿の標題は調査対象とする特定のビタミン E のタイプに限定する必要があろう。例えば、特定のタイプのトコフェロールの過
剰摂取における毒性に関する証拠を、高用量の「ビタミン E」補給が全死因死亡率を上昇させる可能性があると結論付けるために用いるべきではない。
このような結論は、トコトリエノールが考慮されていない条件下でさえ、トコトリエノールにも毒性があるという誤った示唆を与えるであろう。現在の知見から、まだそ
れほど有名でないタイプのビタミン E への戦略的投資が必要とされる。このことが、特定のニーズに取り組む研究に適したビタミン E 分子の賢明な選択を可能に
してくれるであろう。 f
3
Keywords: PubMed、ビタミン E 分子、α-トコフェロール、α-トコトリエノール
2003
Sundram K, Sambanthamurthi R, Tan YA. Palm fruit chemistry and nutrition. Asia Pacific J Clin Nutr. 2003;12(3):355-62.
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パーム(アブラヤシ Elaeis guineensis)の果肉は、パーム油、パルミチン酸・オレイン酸が豊富な半固体の脂肪、及びビタミン E(トコフェロール類、トコトリエノ
ール類)、カロテノイド、フィトステロールのような脂溶性の微量成分をもたらしている。
最近の技術革新により、パームの搾油後の廃物から水溶性の抗酸化物質を回収、濃縮することが可能になった。これらの抗酸化物質は、フェノール酸とフラ
ボノイドの濃度が高いことを特徴としている。これらの天然成分は食品ならびにニュートラシューティカル業界に新たな挑戦の機会をもたらしている。
パーム油に豊富に含まれている飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は、マーガリン、ショートニング、フライ油のような固体の脂肪に含まれるトランス酸の含量をゼ
ロにしようとする最近の食事に関する勧告を考慮すれば、実際にプラスに変わってきている。パーム油を他の油脂と組み合せて利用することは、最近の食事に
関する勧告を満たすことのできる新世代の油脂製品の開発を容易にしてくれるであろう。
広範な天然パーム油のフラクションは物理化学的特徴を異にし、その中で最も顕著なものがカロテノイド高含有のレッドパーム油である。
パーム由来のビタミン E(トコフェロール 30%、トコトリエノール 70%)は、その栄養と健康上の特性が広範囲にわたって研究されている。
その特性には、抗酸化活性、コレステロール低下作用、抗癌作用、アテローム性動脈硬化に対する保護作用などが含まれる。これらは主としてトコトリエノール
の含量に起因している。
Keywords: パーム油、抗酸化活性、コレステロール低下作用、抗癌作用、アテローム性動脈硬化
1999
Theriault A, Chao JT, Wang QI, Gapor A, Adeli K. Tocotrienol: a review of its therapeutic potential. Clin Biochem. 1999;32:309-19.
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ビタミン E の生物学活性は、特に生体内膜組織の脂質過酸化に対する明確な抗酸化特性と関連している。ビタミン E 群の中で、α-トコフェロールは最も活性
の高い形であると考えられている。
しかし最近の研究は、トコトリエノールのほうが抗酸化特性に優れていることを示唆している。さらにトコトリエノールには、アテローム発生性アポリポタンパク質 B と
リポタンパク質(a)の血漿レベルを低下させる能力に加え、新たにコレステロール低下作用があることが示された。
またトコトリエノールは、心血管疾患と癌の予防あるいは治療における有効物質としても作用していることを示し、トコトリエノールには抗血栓作用と抗腫瘍作
用があることが示唆されている。
トコトリエノールの生理学的活性は、多くの状況下で α-トコフェロールより優っていることを示唆している。従って、心血管疾患と癌の予防におけるトコトリエノー
ルの役割は臨床上重要な意味がある。作用機構については、追加研究と同様に長期介入試験がその機能を明らかにするために必要である。
薬理学的見地からすると現在のビタミン E サプリメントの処方は、α-トコフェロール主体となっており、疑問の余地が残される。
Keywords: 抗酸化特性、コレステロール低下作用、抗血栓作用、抗腫瘍作用
1998
Brand HM, Ahmad S. Palm potential. SPC. May 1998;37-8.
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パーム油から得られるビタミン E の絶対的な生物作用能については限られた情報しかないが、その抗酸化活性は大豆由来あるいは合成のトコフェロールよりも
著しく高いことが明らかにされている。
パーム由来のビタミン E に関するもう一つの興味深い側面は、酢酸、コハク酸あるいはパルミチン酸によるエステル化を必要としないことである。このことがパーム油
ビタミン E の生物学的利用能を大いに改善している。
スクアレン存在下のパーム油ビタミン E の酸化安定性は優れている。マロンジアルデヒドの生成だけでなく過酸化物価の増加についても、合成あるいは大豆由
来のビタミン E(フリー体のトコフェロールとして)と比べて遅い。それにもかかわらず、パーム油ビタミン E は不要な汚染を回避するための通常の予防措置によっ
て取り扱うことが望ましいとされている。
パーム油ビタミン E の一般的組成は、トコフェロールとトコトリエノールが 50%、パーム油トリグリセリドが 40%、スクワレンが 10%である。また、トコフェロール・トコト
リエノール混合物の一般的組成は、α-トコフェロールが 20~28%、α-トコトリエノールが 20~28%、γ-トコトリエノールが 40~48%、δ-トコトリエノールが 6~
10%である。
α-トコトリエノールと δ-トコトリエノールの生理活性はまだ知られていないが、α-トコトリエノールの活性は、活性が最も高いとされるビタミン E の α-トコフェロールと
比較して 50%程度であることが知られている。
油脂化学産業におけるパーム油の役割が増加の一途をたどっているという事実にもかかわらず、パーム油ビタミン E の商業上の機会はまだ限られている。しか
し、パーソナルケア製品に加えてさらに栄養補助食品におけるパーム油ビタミン E の役割は、その優れた能力から著しく増加している。
Keywords: パーム油ビタミン E、トコフェロール・トコトリエノール混合物
抗酸化活性
Antioxidant Activity
2011
Raila J, Rohn S, Schweigert FJ, Abraham G. Increased antioxidant capacity in the plasma of dogs after a single oral dosage of tocotrienols. Br
J Nutr. 2011 Oct;106 Suppl 1:S116-9.
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イヌにおけるトコトリエノール(TCT)の腸吸収については、我々の知る限り、これまでのところ不明である。
ビーグル成犬(n=8)に 32%の α-TCT、2%の β-TCT、27%の γ-TCT、14%の δ-TCT、25%の α-トコフェロール(α-TCP)からなる TCT 高含有フラクション
(TRF; 40 mg/kg 体重)の単回経口投与を行った。
ベースライン(絶食)時、補給後 1、2、3、4、5、6、8、12 時間に血液を採取した。TCT と α-TCP の血漿、カイロミクロン濃度を各タイムポイントで測定した。
血漿 TAG を酵素的に測定し、血漿抗酸化能については、Trolox 相当酸化防止活性によって評価を行った。
絶食イヌでは、TCT レベルが 0.07 μmol/L(SD=0.03)であった。TRF 投与後、血漿総 TCT は 2 時間でピークに達し(7.16 μmol/L (SD=3.88);
p<0.01)、12 時間でもベースライン時を上回るレベルを維持した(0.67 μmol/L (SD=0.44); p<0.01)。
カイロミクロンにおける TCT 反応は血漿中の TCT 上昇に匹敵し、投与後 2 時間で最大ピークに達した(3.49 μmol/L (SD=2.06); p<0.01)。
α-TCP は血漿中で検出される主要なビタミン E であり、TRF 補給による影響を受けることはなかった。Trolox 相当酸化防止活性は 2 時間から上昇し(776
μmol/L (SD=51.2))、12 時間で最大となった(1,130 μmol/L (SD=7.72); p<0.01)。
結果から、TCT はイヌの食後の血漿中に検出されることが明らかになった。抗酸化能の上昇から、イヌにおける何種類かの病気の予防あるいは治療に TCT 補
給が果たし得る有益な役割が示唆された。
Keywords: イヌ、TRF、単回経口投与、抗酸化能
2010
Müller L, Theile K, Böhm V. In vitro antioxidant activity of tocopherols and tocotrienols and comparison of vitamin E concentration and
lipophilic antioxidant capacity in human plasma. Mol Nutr Food Res. 2010 May;54(5):731-42.
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4 種類のトコフェロール、4 種類のトコトリエノール、酢酸 α‐トコフェロールの抗酸化活性について、非極性の抗酸化剤で一般に用いられる 5 種類の異なる測定
法による比較試験で調査を行った。
検量線サンプルとして用いた α-トコフェロールが最も高い第二鉄還元・抗酸化力を示した。メチル基の置換が大きくなると安定な 2,2‐ジフェニル‐1‐ピクリルヒドラ
ジルラジカルに対する捕捉活性の上昇ばかりでなく、酸素ラジカル吸収能の低下の原因にもなることが明らかになった。
α-トコフェロール等価抗酸化能については、ビタミン E の全イソ型の抗酸化活性に有意差は認められなかった。対照的に、α-トコクロマノールのペルオキシルラジ
カル捕捉活性は有意に低いことが化学発光測定で明らかになった。酸素ラジカル吸収能以外では、側鎖と関連した抗酸化活性に有意差は認められなかっ
た。
何種類かのビタミン E の還元能力とラジカル連鎖切断活性は、測定が行われた環境に依存することが得られたデータから明らかになった。
我々の見解では、使用した親油性の方法はカロテノイドのような強力な非極性の抗酸化剤の抗酸化活性を評価する際にも有用となり得ると考えられる。
さらに、ヒト血漿中の総トコフェロール含量と α-トコフェロール等価抗酸化能並びに 2,2‐ジフェニル‐1‐ピクリルヒドラジルで測定した親油性の抗酸化能との間に
有意な相関関係のあることが明らかになった。
Keywords: 第二鉄還元・抗酸化力、酸素ラジカル吸収能、α-トコフェロール等価抗酸化能、ペルオキシルラジカル捕捉活性
2009
Lee SP, Mar GY, Ng LT. Effects of tocotrienol-rich fraction on exercise endurance capacity and oxidative stress in forced swimming rats. Eur J
Appl Physiol. 2009 Nov;107(5):587-95.
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本研究の目的は、トコトリエノール高含有フラクション(TRF)が強制水泳を負荷したラットにおける持久性運動能力と酸化ストレスに及ぼす影響を検討する
ことにある。
等カロリーの飼料で飼育したラットに TRF を 25 mg/kg(TRF-25)ないしは 50 mg/kg(TRF-50)、あるいは d-α-トコフェロールを 25 mg/kg(T-25)経
口で摂取させた一方、対照ラットには賦形剤のみを 28 日間摂取させた。
続いて強制的に水泳の持久性テストを実施し、血液中のグルコース、乳酸塩、尿素窒素、グリコーゲン、総抗酸化能、抗酸化酵素、チオバルビツル酸反応
性物質(TBARS)、カルボニル化タンパク質を含む種々の生化学パラメータについて測定を行った。
TRF 処理したラット(TRF-25: 268.0±24.1 分、TRF-50: 332.5±24.3 分)は対照ラット(135.5±32.9 分)や T-25 処理ラット(154.1±36.4 分)よりもは
るかに長時間泳いだ一方、T-25 群と対照群のパフォーマンスにおける差異は認められなかった。
TRF 処理ラットではまた、対照ラット、T-25 処理ラットと比較して、肝臓におけるグリコーゲン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、グル
タチオンペルオキシダーゼ(GPx)、筋肉におけるグリコーゲン、SOD の濃度が著しく高く、血中乳酸、血漿・肝臓中の TBARS、肝臓・筋肉中のカルボニル化タ
ンパク質の濃度は低いことが明らかになった。
これらの結果をまとめると、TRF には強制水泳を負荷したラットの生理学的状態を改善し、運動が引き起こす酸化ストレスを減少する可能性のあることが示唆
される。
Keywords: TRF、強制水泳、持久性運動能力、酸化ストレス
2006
Schroeder MT, Becker EM, Skibsted LH. Molecular mechanism of antioxidant synergism of tocotrienols and carotenoids in palm oil. J Agric
Food Chem. 2006 May 3;54(9):3445-53.
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類似した脂肪酸組成を有する黄色あるいは赤色のパームオレイン中にポテトを 163℃で繰り返しフライにした場合、パームオレインの酸化安定性(過酸化物
価、アニシジン価)は同程度であるが、黄色のパームオレインにおける抗酸化物質の消耗度合は、γ-トコトリエノール(T3)> α-T3 > δ-T3 の順に減少した。
総トコフェロール・トコトリエノール含量が黄色パームオレインと同じ 1,260 ppm と 940 ppm、また 120℃の Rancimat 法酸化安定性試験で相当する誘導時
間がより長い赤色パームオレインでは、フライ中のフェノール類のうちで γ-T3 の消耗だけが顕著にみられたが、その速度は黄色パームオレインと比べて遅いことが
明らかになった。赤パームオレイン中のカロテン類はフライの回数と共に直線的な減少を示し、フェノール類の全体的な保護をもたらしている。
抗酸化物質を除去したパームオレインとリン脂質リポソームに濃度を増加させながらフェノール類を添加した結果、γ-T3 は α-T3 よりも優れた抗酸化物質である
ことが明らかになった。Rancimat 法酸化安定性試験で、α-T3 と α-トコフェロール(T)は抗酸化物質を除去したパームオレイン中で同程度の抗酸化能があ
る一方、リポソーム中では、共役ジエン生成誘導時間で測定した結果、γ-T3 > α-T3 > α-T の順であった。
抗酸化物質を除去したパームオレインあるいはリポソームに 100~1,000 ppm の β-カロテンを添加した(リコピンについても試験した)結果、酸化に対する防
御作用は認められなかった。リポソーム中では、β-カロテンあるいはリコピンと α-T、α-T3 あるいは γ-T3(カロテン/フェノール類比は 1:1 ではなく、1:10~1:2)と
の間で相乗的相互作用が認められた。
クロロホルム中では、トランジエント吸収スペクトルで明らかにされたように、トコフェロール類あるいはトコトリエノール類によってレーザー閃光光分解で発生したカロ
テンのラジカルからカロテン類が再生され、フェノール類よりはむしろカロテン類が、赤色パームオレオレジンにおける脂質由来ラジカルの主要な基質であることが示
唆される。実際フライ中にカロテン類がフェノール類より先に消耗されている。フェノール類によるカロテン類再生はまた、リポソームにおける相乗作用も説明してい
る。レーザー閃光光分解実験では、γ-T3 が α-T3 や α-T よりも早くカロテン類を再生させることも明らかになった。
Keywords: 黄色・赤色パームオレイン、フェノール類、抗酸化能、カロテン類再生
2003
Cahoon EB, Hall SE, Ripp KG, Ganzke TS, Hitz WD, Coughlan SJ. Metabolic redesign of vitamin E biosynthesis in plants for tocotrienol
production and increased antioxidant content. Nat Biotechnol. 2003 Sep;21(9):1082-7.
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トコトリエノールは、イネやコムギのような穀類を含むほとんどの単子葉植物の種子に存在するビタミン E の主要な形態である。トコトリエノールは、強力な抗酸化
剤として、ヒトや家畜の食餌に含まれる穀粒の栄養価に寄与している。トコトリエノール生合成の経路決定反応を触媒する酵素 HGGT(homogentisic
acid geranylgeranyl transferase)をコード化する cDNA が、オオムギ、コムギ、イネの種子から単離されている。
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)葉におけるオオムギの HGGT のトランスジェニック発現は、非形質転換植物には存在しないトコトリエノールの蓄積を
引き起し、総ビタミン E 由来の(トコフェロールにトコトリエノールを加えた)抗酸化物質は 10~15 倍増加した。トウモロコシ種子におけるオオムギの HGGT の
過剰発現は、トコトリエノール・トコフェロール含量の 6 倍の増加を引き起した。
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これらの結果は植物におけるトコトリエノール生合成の遺伝的根拠を理解する手がかりを提供し、代謝流量をリダイレクトする酵素を導入することにより作物に
含まれる抗酸化物質量を増加させる能力を実証している。
Keywords: トコトリエノール生合成、HGGT、cDNA、抗酸化物質量
2001
Packer L, Weber SU, Rimbach G. Molecular aspects of alpha-tocotrienol antioxidant action and cell signalling. J Nutr. 2001
Feb;131(2):369S-73S.
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脂溶性の極めて重要な抗酸化剤であるビタミン E は、1922 年、カリフォルニア大学バークレー校の Herbert M. Evans の研究室で発見された(Science
1922, 55: 650)。生物活性を有する少なくとも 8 種類のビタミン E のイソ型が植物供給源から単離されている。
発見以来、トコフェロール類とトコトリエノール類について、主として抗酸化特性、また最近では細胞シグナリングの面から検討がなされている。
トコフェロールとトコトリエノールは、抗酸化ネットワークと呼ばれる一連の抗酸化サイクルにおける相互連結の一部をなしている。トコトリエノールの抗酸化活性は
トコフェロールのそれよりも高いものの、経口摂取後のトコトリエノールの生物学的利用能は低いとされている。
トコトリエノールは皮膚から急速浸透し、UV あるいはオゾンによって引き起こされる酸化ストレスに対して有効に働くことが明らかにされている。
トコトリエノールは、LDL 酸化の阻害、メバロン酸経路の鍵酵素の一つである 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A 還元酵素(HMG CoA)のダウンレギ
ュレートの両方により心血管疾患に有益な作用を及ぼしている。
トコトリエノールについて新たに見出された(その抗酸化活性によらない可能性のある)重要な抗増殖作用と神経保護作用についても述べたい。
Keywords: 生物学的利用能、抗増殖作用、神経保護作用
1996
Kamal-Eldin A, Appelqvist LA. The chemical and antioxidant properties of tocopherols and tocotrienols. Lipids. 1996;31:671-701.
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トコフェロールとトコトリエノールの抗酸化活性の基礎となっている化学的性質について再調査を行なった。
α-トコフェロールは in vivo で最も有効な抗酸化剤かつビタミン E 同族体という一般的な見解の一致にもかかわらず、in vitro で特に γ-トコフェロールと比較し
たとき、その抗酸化剤としての「絶対的」、「相対的」有効性においてかなりの矛盾が生じるのが常であった。
多くの化学的、物理的、生化学的、物理化学的要因及び他の要因が in vivo と in vitro におけるトコフェロール類の相対的な抗酸化力について認められた
矛盾に原因していると考えられる。
本論文は、脂質過酸化に関与する重要な化学種とトコフェロール(α-、β-、γ-、δ-)の相互作用に関して、トコフェロール間で認められた差異の可能な原因
を浮き彫りにすることを目的としている。化学種には、微量金属、一重項酸素、窒素酸化物及び抗酸化性のシネルギストが含まれている。
トコトリエノール類の化学的性質についての報告はかなり少ないが、トコフェロールとの構造及び機能上の類似性に照らした論考も含めた。
Keywords: 脂質過酸化、トコフェロール類、トコトリエノール類
1993
Serbinova EA, Tsuchiya M, Goth S, Kagan VE, Packer L. Antioxidant action of α-tocopherol and α-tocotrienol in membranes. In: Packer L,
Fuchs J, eds. Vitamin E in Health and Disease. New York, NY: Marcel Decker Inc; 1993; 235-43.
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α-トコトリエノールの高い再生効率は、その α-トコフェロールより高い抗酸化活性に寄与している可能性がある。α-トコフェロールと α-トコトリエノールの再生効
率と遅延時間の差異は 1.6 倍と 2.5~3.0 倍であるが、脂質過酸化を 50%抑制する濃度は 40~60 倍異なる。このことは、α-トコトリエノールの in vitro での
より高い抗酸化活性が、その高い再生効率に加え、他の要因に由来していることを示している。
結論として、トコフェロール類とトコトリエノール類の in vivo での抗酸化活性の差異はそれらの薬物動態に大きく依存している可能性が認められる。しかしながら
α-トコトリエノールは、細胞膜におけるそのより有効な抗酸化力の結果として、in vivo の酸化的ストレスの状況下においてより高い抗酸化活性を及ぼす可能
性がある。
Keywords: α-トコトリエノール、α-トコフェロール、脂質過酸化、薬物動態
Suarna C, Hood RL, Dean RT, Stocker R. Comparative antioxidant activity of tocotrienols and other natural lipid-soluble antioxidants in a
homogenous system, and in rat and human lipoproteins. Biochim et Biophys Acta. 1993;1166:163-70.
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トコトリエノールのペルオキシラジカルに対する抗酸化活性を他の天然脂溶性抗酸化物質と比較するため、3 つの異なる系で抗酸化物質の一時的消失と脂
質ヒドロキシペルオキシドの生成を測定した。
均一溶液において、ラジカルに対して組まれた抗酸化物質間の競合実験によって評価した種々の抗酸化物質消費の初速度は、ユビキノール-10 = ユビキノ
ール-9 > α-トコフェロール = α-トコトリエノール > β-カロテン = リコピン > γ-トコフェロール = γ-トコトリエノールの順に減少した。
in vitro でヒト血漿を α-トコトリエノールと共にインキュベーションすると、α-トコトリエノールはサプリメンテーションした血漿から単離したすべてのリポタンパク質に存
在していた。
ラットとヒトの食餌にトコトリエノール豊富な製剤をサプリメンテーションすると、血漿とすべての血流リポタンパク質それぞれに α-及び γ-トコトリエノールの用量依存
性が出現した。このように強化されたラットの血漿を水溶性ペルオキシルラジカルに曝すと、ビタミン E の α-、γ-異性体が同時に消費された。
in vitro と in vivo でトコトリエノールを強化した LDL を単離し、ラジカルに曝した時の抗酸化物質消費速度は、再びユビキノール-10 > α-トコトリエノール = αトコフェロール > カロテノイド > γ-トコフェロール = γ-トコトリエノールの順となった。
ラジカルが一定速度で発生する条件下では、LDL における脂質ヒドロペルオキシドの生成速度は一定ではなかった。これは、ユビキノール-10、続いて α-トコフェ
ロール/α-トコトリエノールの順によって分けられた少なくとも 3 つの段階で消費が行われるためである。
結果は、食餌性のトコトリエノールがヒトの血流リポタンパク質に取り込まれ、そこでこれらのトコトリエノールが対応するトコフェロールの異性体と同様の効率でペ
ルオキシルラジカルと反応することを明らかにしている。
Keywords: 抗酸化物質消費速度、α-トコトリエノール、α-トコフェロール
Suzuki YJ, Tsuchiya M, Wassall SR, Choo YM, Govil G, Kagan VE, Packer L. Structural and dynamic membrane properties of alpha-tocopherol
and alpha-tocotrienol: implication to the molecular mechanism of their antioxidant potency. Biochemistry. 1993;32:10692-9.
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α-トコトリエノールは、フリーラジカル誘発酸化ストレスに対し α-トコフェロールよりも強力に防御することが明らかにされている。膜レベルと再配向力学に及ぼす
作用に関する α-トコトリエノールの抗酸化能の機構を調べるためにリン脂質膜系の単純モデルを用いた。
化学発光と蛍光による測定の結果、α-トコトリエノールと α-トコフェロールは両方ともヘキサンにおいては同一の活性があるにもかかわらず、フォスファチジルコリン
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リポソームにおけるペルオキシルラジカル捕捉能は、α-トコトリエノールのほうが有意に強かったことが証明された。このことは、α-トコトリエノールの抗酸化能が膜
環境を必要としていることを示唆している。
5 及び 16 位置に標識された脂肪酸(doxyl stearic acid)で標識した従来の ESR スピンを用い、リン脂質分子レベルに及ぼす作用について α-トコフェロー
ルと α-トコトリエノールを試験したとき、両成分ともゲル相を無秩序化し液晶相を安定化させたが、二つの化合物の作用に相違は観察されなかった。
しかしながら、非侵入性の 2H NMR の実験で、α-トコフェロールによる液晶状態の順序化にわずかな増加(15%に対し 19%)が認識された。相違はリン脂
質鎖の C10-C13 付近で最も顕著であるため、α-トコトリエノールは膜表面のより近いところにおそらく位置していることが示唆される。
さらに飽和-移転 ESR から、時系列で tau c=10(-7)-10(-3)の長分子軸の回転と軸のゆらぎ作動の速度が、ビタミン E の 2 種類の形によって修飾の程度が
異なることが明らかになった。
Keywords: リン脂質膜、α-トコトリエノール、α-トコフェロール、抗酸化能
1991
Serbinova E, Kagan V, Han D, Packer L. Free radical recycling and intramembrane mobility in the antioxidant properties of alpha-tocopherol
and alpha-tocotrienol. Free Radic Biol Med. 1991;10:263-75.
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d-α-トコフェロールと d-α-トコトリエノールは、共に同じ芳香族クロマン環を有するビタミン E の 2 種類の成分であるが、トコフェロールは飽和の炭化水素鎖、トコ
トリエノールは不飽和のイソプレノイド鎖を有する点が異なっている。d-α-トコフェロールは最も高いビタミン E 活性があるのに対し、d-α-トコトリエノールはその約
30%の活性しか示さない。ビタミン E は、生理学的に膜組織の最も重要な脂溶性の連鎖停止型抗酸化剤と考えられているため、それらの抗酸化機能にとっ
て重要とされる条件下で α-トコトリエノールと α-トコフェロールの比較試験を行った。
d-α-トコトリエノールは、d-α-トコフェロールより、ラット肝ミクロソーム膜における Fe2+-アスコルビン酸及び Fe2+-NADPH 誘導脂質過酸化に対して 40~60
倍高い抗酸化活性を有し、またシトクローム P-450 の酸化損傷に対し 6.5 倍優れた防御作用を有している。
d-α-トコフェロールよりもはるかに高い d-α-トコトリエノールの抗酸化能に関与する機構を明らかにするために、ESR によるこれらのクロマノキシルラジカルからクロマ
ノ ー ル へ の 再 生 率 の 測 定 、 1H-NMR に よ る ク ロ マ ノ ー ル 含 有 リ ポ ソ ー ム 中 の 脂 質 分 子 の 流 動 性 の 測 定 、 脂 質 二 重 膜 に お け る ク ロ マ ー ル の 分 布
(clusterization)の均一性を明らかにする蛍光測定を行った。
結果から、d-α-トコフェロールよりも高い d-α-トコトリエノールの抗酸化能は、次ぎの 3 つの特性の組み合わせ効果によるものと結論づけた。つまり、(i)クロマ
ノキシルラジカルからのより高い再生効率、(ii)二重膜中のより均一な分布、(iii)クロマノールを脂質ラジカルと効率良く作用させる膜脂質のより強力な
無秩序化である。データは、従来のビタミン活性に関するバイオアッセイによる d-α-トコフェロールと d-α-トコトリエノールの in vitro での抗酸化活性の間の関係
にかなり矛盾があることを示している。
Keywords: d-α-トコトリエノール、d-α-トコフェロール、ラット肝ミクロソーム膜
白内障
Cataract
2014
Abdul Nasir NA, Agarwal R, Vasudevan S, Tripathy M, Alyautdin R, Ismail NM. Effects of topically applied tocotrienol on cataractogenesis
and lens redox status in galactosemic rats. Mol Vis. 2014 Jun 12;20:822-35. eCollection 2014.
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酸化・ニトロソ化ストレスは白内障発生の基礎をなしていることから、様々な抗酸化剤の抗白内障特性が調査されてきた。何種類かのビタミン E 類似体もま
た、それらの抗酸化特性から抗白内障特性の検討がなされてきたが、トコトリエノールについては調査されていないのが現状である。
本研究では、局所適用したトコトリエノールがガラクトース血症ラットにおける白内障の発症と進行、及び水晶体の酸化・ニトロソ化ストレスに及ぼす影響につ
いて検討を行った。
本研究の第一部では、0.01%から 0.2%までの範囲で 6 種類の濃度のトコトリエノールを含有するマイクロエマルジョン製剤(TTE)の局所適用が及ぼす影響
について調査した。Sprague-Dawley ラットを 8 群に分け(各群 n=9)、通常飼料で飼育を行う 3 週間に前処理として蒸留水、vehicle(溶媒)又は 6
種類の濃度の TTE のうちの 1 種類を 1 日 2 回局所投与した。
前処理後、第 2 群から第 8 群までのラットに 25%ガラクトース含有飼料を給与したのに対し、第 1 群のラットには継続して通常飼料を 4 週間給与した。この
4 週間に、前処理時の局所投与を継続して行った。細隙灯顕微鏡検査を毎週実施し、白内障進行の評価を行った。実験期間終了時ラットを安楽死さ
せ、水晶体におけるタンパク質及び酸化ストレスパラメータを推定した。
本研究の第二部では、蒸留水、TTE、トコトリエノールのリポソーム製剤(TTL)又は対応する vehicle を摂取させた Sprague-Dawley ラットを 5 群に分け
(各群 n=15)、TTE と TTL の抗白内障効果の比較を行った。投与方法及び投与計画は、第一部の研究と同様とした。毎週実施する眼科検査と水晶体
のタンパク質及び酸化ストレスの推定を第一部と同様に行った。水晶体のニトロソ化ストレスも推定した。
4 週にわたる投与期間中、0.03%及び 0.02%のトコトリエノールを投与した群で白内障の進行が vehicle 投与群より遅れたのに対し(p<0.05)、0.2%のト
コトリエノールを投与した群では白内障進行が vehicle 群より早くなった(p<0.05)。
水晶体のタンパク質、マロンジアルデヒド、スーパーオキシドジスムターゼ及びカタラーゼのレベルは 0.03%及び 0.02%のトコトリノール投与群で正常化した。水晶
体の減少したグルタチオンもまた、これらの群で正常化の傾向を示した。対照的に、0.2%のトコトリエノール投与群で水晶体の酸化ストレスが増加した。
マイクロエマルジョン製剤とリポソーム製剤を比較した場合、白内障進行、水晶体の酸化・ニトロソ化 ストレス及びタンパク質含量への影響に有意差は認めら
れなかった。
0.01%より上で 0.05%を超えない濃度の範囲で局所適用したトコトリエノールは、ガラクトース投与ラットにおける白内障の発症と進行を水晶体の酸化・ニトロ
ソ化ストレスを減少することにより遅延させる傾向にあることが明らかになった。しかしながら、0.2%以上の濃度のトコトリエノールの局所適用は、ガラクトース投
与ラットにおける水晶体の酸化ストレス増加により、白内障の発生・悪化を待招く結果となった。
0.03%のトコトリエノールを含有するマイクロエマルジョン製剤の抗白内障効果は、同じ濃度のリポソーム製剤と差が認められないと結論付けられた。f
Keywords: 局所適用、ガラクトース血症ラット、酸化・ニトロソ化ストレス、白内障進行、濃度
胃粘膜損傷
Ggastric Mucosal Injury
2013
7
Nur Azlina MF, Kamisah Y, Chua KH, Qodriyah HM. Tocotrienol Attenuates Stress-Induced Gastric Lesions via Activation of Prostaglandin and
Upregulation of COX-1 mRNA. Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:804796. doi: 10.1155/2013/804796.
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本研究の目的は、トコトリエノールがストレス誘導胃粘膜損傷において重要な胃粘膜防御因子であるプロスタグランジン E2(PGE2)に及ぼす影響を明らか
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にすることにある。
28 匹の Wistar ラットを 7 匹ずつ 4 群に分けた。二つのコントロール群には市販ラット用飼料を、2 種類の処置群には同飼料にオメプラゾール(20 mg/kg)
又はトコトリエノール(60 mg/kg)を添加したものを摂取させた。
28 日後、一つコントロール群及び両処置群のラットに、一回、水浸拘束ストレス負荷を 3.5 時間かけた。次にそれらのラットを犠牲にし、胃を摘出し、胃液採
取、病変検査、及び胃内 PGE2 含量・シクロオキシゲナーゼ(COX)mRNA 発現の測定を行った。
両方の処置とも、胃内の総病変面積がコントロール群と比較して有意に縮小した。ストレスにより増加する胃酸は、オメプラゾール及びトコトリエノール補給ラッ
トで有意に減少した。
また、PGE2 含量はトコトリエノール補給ラットでコントロール群より有意に増加し、続いて COX-1 mRNA 発現の増加が認められた。
トコトリエノール補給は、ラット胃粘膜を胃酸減少及び COX-1 mRNA 増加を介した胃内 PGE2 保持によりストレス誘導病変から保護している可能性があると
結論付けられる。 f
Keywords: オメプラゾール、胃酸、プロスタグランジン E2、シクロオキシゲナーゼ mRNA
Rodzian MN, Aziz Ibrahim IA, Nur Azlina MF, Nafeeza MI. Pure tocotrienol concentrate protected rat gastric mucosa from acute
stress-induced injury by a non-antioxidant mechanism. Pol J Pathol. 2013 Apr;64(1):52-8.
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ストレスは種々の主要な健康問題のリスクファクターと関連が認められており、ストレス誘導胃粘膜損傷がその一例に挙げられる。本研究で、90%の δ-トコトリ
エノールと 10%の γ-トコトリエノールからなる精製トコトリエノール(T3)濃縮製剤が、水浸拘束ストレス(WIRS)により胃粘膜損傷を起こしたラットに及ぼす
影響について検討を行った。
14 匹の雄性 Sprague-Dawley ラット(200~250 g)を対照群及び投与群の二群に等しく分けた。投与群のラットに T3 濃縮物 60 mg/kg 体重/日を 28
日間摂取させた。処置前の体重を連日記録した。
処置期間終了時、全ラットに水浸拘束ストレス負荷を 3.5 時間かけ、それらのラットを安楽死させた。胃を摘出し、病変検査及び胃のマロンジアルデヒド
(MDA)とプロスタグランジン E2(PGE2)含量測定のために、大わんに沿って開口した。
投与群におけるラットの胃粘膜病変インデックスの平均値は、対照群のラットより有意に低いことが明らかになった。これは、T3 濃縮物が胃粘膜を急性ストレス
によって誘発される損傷から保護する能力のあることを示唆している。
処置前後の体重変化に有意差は認められなかった。胃内 PGE2 含量は、両群とも類似していた。しかしながら、胃内 MDA 含量は対照群と比較して投与群
で有意に高く、T3 補給は脂質過酸化過程を減少しなかったことが示された。
本研究から、T3 濃縮物には胃粘膜を非抗酸化機構によりストレス誘発損傷から保護する能力があると結論付けられる。 f
Keywords: 水浸拘束ストレス、マロンジアルデヒド、胃粘膜病変インデックス、非抗酸化機構
2012
Aziz Ibrahim IA, Kamisah Y, Nafeeza MI, Nur Azlina MF. The effects of palm vitamin E on stress hormone levels and gastric lesions in
stress-induced rats. Arch Med Sci. 2012 Feb 29;8(1):22-9. doi: 10.5114/aoms.2012.27276.
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本研究でパーム・ビタミン E(PVE)又は α-トコフェロール(α-TF)の補給が水浸拘束ストレス(WIRS)曝露ラットの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コ
ルチコステロン及び胃粘膜病変に及ぼす影響について検討を行った。
60 匹の雄性 Sprague-Dawley ラット(200~250 g)を次の 3 群に割り付けた。第一群:コントロールとして通常飼料を給与したラット 20 匹。第二群:
60 mg/kg 体重の PVE を経口補給したラット 20 匹。第三群:60 mg/kg 体重の α-TF を経口補給したラット 20 匹。
28 日の処置期間後、各群をさらに 2 群に細分し、10 匹のラットをストレスに曝さず、残りの 10 匹を WIRS に 3.5 時間曝した。採血後、ACTH 及びコルチコス
テロンの濃度測定を行った。次にラットを犠牲にし、腹部を大わんに沿って切開し、病変の検査を行った。
WIRS 曝露ラットの胃粘膜に病変が認められた。得られた所見から、食事性 PVE 又は α-TF の栄養補給はストレスを受けた対照ラットと比較して胃粘膜病変
を有意に減少させ得ることが明らかになった。
WIRS は血漿中の ACTH とコルチコステロンの濃度を有意に上昇させた。パーム・ビタミン E 及び α-TF による処置は、これらのパラメータをストレスを受けたコント
ロールラットと比較して有意に低下させた。
PVE 又は α-TF いずれかの補給は胃粘膜病変の形成を減少させたが、これはおそらくストレスが誘発する ACTH とコルチコステロンの濃度上昇の抑制によるも
のと結論付ける。f
Keywords: 副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロン、胃粘膜病変、パーム・ビタミン E、水浸拘束ストレス、α-トコフェロール
2005
Azlina MF, Nafeeza MI, Khalid BA. A comparison between tocopherol and tocotrienol effects on gastric parameters in rats exposed to stress.
Asia Pac J Clin Nutr. 2005;14(4):358-65.
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ストレスに曝されたラットは、消化管及びホルモンに種々の変化を生じる。本研究は、拘束ストレス付加ラットの胃粘膜保全維持に重要とされる消化管及びホ
ルモンのパラメータに影響を及ぼす変化に対するトコフェロールとトコトリエノールの効果を比較するために計画した。これらのパラメータには、胃液酸度、胃組織
中のマロンジアルデヒドとプロスタグランジン(PGE2)の含量、血清中のガストリンとグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の濃度を含めた。
60 匹の雄性 Sprague-Dawley ラット(200~250 g)を 3 種類同サイズの群に無作為に割り付けた。3 群は、通常のラット飼料を給与する対照群
(RC)、ビタミン欠乏飼料とともに 60 mg/kg 体重のトコフェロール(TF)又はトコトリエノール(TT)のいずれかを経口補給する 2 種類の投与群とした。
ラットを犠牲にする前に 28 日の処置期間後のラット(非ストレス群)の半数から採血を行った。残りの半数は 4 日間連続で 1 日 2 時間の実験的拘束スト
レスにかけ(ストレス群)、4 日目に採血を行い、犠牲にした。
得られた所見から、ストレス群のラットの胃酸濃度と血清ガストリン濃度が対照群・TF 群の非ストレスラットと比較して有意に低下することが明らかになった
(p<0.05)。しかしながら、TT 群の胃液酸度とガストリン濃度はストレスラットと非ストレスラットで類似していた。これらの所見から、トコトリエノールはストレス
条件下で通常は変化する胃液酸度と血清ガストリン濃度を維持することが可能であることが示唆される。
しかしながら、PGE2 含量と血漿 GLP-1 濃度は全てのストレス群と非ストレス群で類似しており、これらのパラメータがストレスにより変動せず、また、TF あるいは
TT の補給が胃組織中 PGE2 含量と GLP-1 濃度に影響を及ぼさないことを示している。
脂質過酸化の指標の一つであるマロンジアルデヒドは、非ストレス群と比較してストレス群の胃組織で高値を示した。これらの所見は、フリーラジカルがストレス
下での胃腸障害発生に一定の役割を果たし、TF 又は TT いずれかの補給が脂質過酸化を対照ラットと比較して減少させる可能性のあることを意味している。
トコフェロールとトコトリエノールは共にストレス条件下で発生するフリーラジカルによる損傷に対する胃保護作用は類似しているが、ストレスによって誘発される胃
液酸度とガストリン濃度の変化を阻止する能力を有しているのはトコトリエノールのみであると我々は結論付ける。f
Keywords: ストレス、胃液酸度、マロンジアルデヒド、PGE2、ガストリン、GLP-1、フリーラジカル
血圧降下作用
Hypotensive Effect
1999
Newaz MA, Nawal NN. Effect of gamma-tocotrienol on blood pressure, lipid peroxidation and total antioxidant status in spontaneously
hypertensive rats (SHR) Clin Exp Hypertens. 1999;21:1297-313.
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本研究の目的は、高血圧自然発症ラット(SHR)における脂質過酸化と総抗酸化物質状態に及ぼす γ-トコトリエノールの作用を、正常 Wister ラット
(WKY)のそれと比較して測定することであった。
SHR を 3 つのグループに分け、異なる用量の γ-トコトリエノール(食餌 1 kg 当り、γ-1, 15 mg; γ-2, 30 mg; γ-3, 150 mg)で処理した。正常 WKY と未処
理 SHR は、正常(N)、高血圧対照(HC)として用いた。血圧を隔週毎に 3 ヵ月間記録した。試験終了時にラットを殺し、血漿総抗酸化物質状態、血
漿スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性、血漿と血管の脂質過酸化物レベルを次の充分に確立された方法で測定した。
高 血 圧 ラットの血 漿 と血 管 における脂 質 過 酸 化物 は、正 常 ラットのそれよりも有 意 に多 いことが研 究 で明らかになった(血 漿 - N: 0.06+/-0.01, HC:
0.13+/-0.008; p<0.001. 血管-N: 0.47+/-0.17, HC: 0.96+/-0.37; p<0.001)。
高血圧ラットにおける SOD 活性は、正常ラットより有意に低かった(N=148.58+/-29.56 U/ml, HC=110.08+/-14.36 U/ml; p=0.014)。
γ- トコトリエノールによる 3 ヵ月 の抗 酸 化 試 験 後 、すべての処 理 グループで血 漿 脂 質 過 酸 化 物 濃 度 が減 少 したが、 γ-1 だけが有 意 であった( γ-1:
0.109+/-0.026, HC: 0.132+/-0.008; p=0.034)。
他方、血管の脂質過酸化物は、すべての処理グループで有意に減少した(γ-1; p<0.05, γ-2; p<0.001, γ-3; p<0.005)。処理した 3 つすべてのグループ
は、総抗酸化物質状態を有意に改善させた(p<0.001)。SOD 活性もまた、すべてのグループで有意に改善した(γ-1: p<0.001, γ-2: p<0.05, γ-3:
p<0.001)。
相関に関する研究は、SHR 対照ではなく正常ラットにおいて、総抗酸化物質状態(TAS)と SOD は血圧と有意な負の相関があることを示した(p=0.007;
p=0.008)。この相関は、トコトリエノールで処理した後の SHR すべてのグループで得られた。血管と血漿における脂質過酸化物は、正常、SHR 対照の血圧
と正の相関を示した。この相関は、血漿脂質過酸化物との正の相関が有意でなかった γ-3 を除くすべての処理グループでも有意にみられた。
結論として、γ-トコトリエノールの抗酸化物質サプリメンテーションは、血圧上昇を予防し、血漿と血管の脂質過酸化物を減少させ、SOD 活性を含む総抗酸
化物質状態を上昇させる可能性があることを明らかにした。
Keywords: 血圧上昇、脂質過酸化物、γ-トコトリエノール
コレステロール低下作用
Cholesterol Lowering Effect
2012
Burdeos GC, Nakagawa K, Kimura F, Miyazawa T. Tocotrienol attenuates triglyceride accumulation in HepG2 cells and F344 rats. Lipids. 2012
May;47(5):471-81. doi: 10.1007/s11745-012-3659-0.
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トコトリエノール(T3)は、米糠やパーム油に存在する重要な植物栄養素である。T3 は、脂質低下作用、とりわけ 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A
還元酵素の阻害によるコレステロール(Cho)の低下作用において多大な関心が寄せられている。
また、トリグリセリド(TG)プロフィル改善における T3 の有用性も示唆されているが、その有効性と機構については明らかにされていない。我々は、T3 がいかにし
て培養細胞や実験動物中の TG 濃度を低下させるか調査を行った。
細胞培養試験では、ヒト肝細胞癌細胞(HepG2)をコントロールあるいは脂肪(1 mM のオレイン酸)を負荷した γ-T3 含有培養基で 24 時間インキュベ
ートした。
10~15μM の γ-T3 は、とりわけ脂肪を負荷した培養基において細胞中の TG 蓄積を顕著に阻害することが明らかになった。この兆候は、脂肪酸シンターゼ、
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ 1、シトクロム P450 3A4 の mRNA とタンパク質の発現により裏付けられた。
これらの結果に従って、高脂肪飼料給餌 F344 ラットへの米糠由来 T3 補給(5 or 10 mg T3/日/ラット)を 3 週間行ったところ、肝臓と血漿における TG と
酸化ストレスマーカー(リン脂質ヒドロペルオキシド(PLOOH))が顕著に低下することが明らかになった。T3 補給による Cho レベルの変化は認められなかった。
これらの結果により、T3 の TG 低下作用に関する新たな情報と機構がもたらされた。食事性 T3 の脂質低下作用には、TG 合成の減少が介在している可能性
がある。
Keywords: γ-トコトリエノール、脂質低下作用、トリグリセリド蓄積、PLOOH
Das S, Mukherjee S, Lekli I, Gurusamy N, Bardhan J, Raychoudhury U, Chakravarty R, Banerji S, Knowlton AA, Das DK. Tocotrienols confer
resistance to ischemia in hypercholesterolemic hearts: insight with genomics. 2012 Jan;360(1-2):35-45.
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ビタミン E を用いた殆どの臨床試験でコレステロール低減が認められなかったため、このような試験は不成功であったと見なされている。最近では、ビタミン E のもう
一群の異性体であるトコトリエノールが LDL レベルを低下することが明らかにされている。
トコトリエノールがビタミン E の創薬標的になり得るか検討するために、コレステロール飼料で 60 日間飼育したウサギを対象に、α-、δ-、γ-トコトリエノールの補給
を最低 30 日間行った。
血清コレステロールレベル(μmol/L)は、コントロールで 39.7 であったのに対し、α-トコトリエノールでは 24.4、δ-トコトリエノールでは 34.9、そして γ-トコトリエノ
ールでは 19.8 であった。
大動脈流と発生圧力を含む左心室機能は、γ-及び α-トコトリエノールにより有意に回復が改善されたが、δ-トコトリエノールではそのような改善は認められな
かった。
心筋梗塞サイズについても同様のパターンが認められ、α-トコトリエノールで 33%、γ-トコトリエノールで 23%、そして δ-トコトリエノールで 47%であった。
心臓保護効果の分子機構を調査するために、遺伝子発現プロファイルについては Atlas 1.2/1.2II を用いて評価し、次いで遺伝子プロファイルの評価について
は PedQuest 8.3 のソフトウェアを用いて行った。
ゲノムプロファイルに基づいて、次のコレステロールに関連したタンパク質の試験を行った。FABP、TGF-β(コレステロールによって抑制される)、ET-1(高コレス
テロール血症によって増加する)、SPOT 14(高コレステロール血症に関連する)、並びに心臓中のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)2 と MMP9(コ
レステロールによって MMP2 と MMP9 の発現が調節される)。
α-トコトリエノールと γ-トコトリエノールの心臓保護効果と一致して、これら 2 種類の異性体は ET-1 の減少、MMP2 と MMP9 の減少、TGF-β の増加、SPOT
14 の減少をもたらした一方、δ-トコトリエノールではそのような影響は認められなかった。
本研究で得られた結果から、α と γ の 2 種類のトコトリエノール異性体は、MMP2、MMP9、ET-1、SPOT 14 を含む何種類かの高コレステロール血症と関連
するタンパク質を減少し、TGF-β をアップレギュレートして、高コレステロール血症ウサギの心臓に虚血再潅流障害に対する抵抗性をもたらすことが実証された。
Keywords: 左心室機能、心筋梗塞サイズ、心臓保護効果、高コレステロール血症、虚血再潅流障害
2011
Chin SF, Ibahim J, Makpol S, Abdul Hamid NA, Abdul Latiff A, Zakaria Z, Mazlan M, Mohd Yusof YA, Abdul Karim A, Wan Ngah WZ.
Tocotrienol rich fraction supplementation improved lipid profile and oxidative status in healthy older adults: A randomized controlled study.
Nutr Metab (Lond). 2011 Jun 24;8(1):42.
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トコトリエノールを含有するビタミン E サプリメントが今や最適な健康のために推奨されるようになったが、それらの効果については殆ど知られていない。本研究の目
的は、1 日用量 160 mg のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)の 6 ヵ月間の補給が健常高齢者の脂質プロファイルと酸化状態に及ぼす影響を評価す
ることにある。
62 人の被験者を 35 歳から 49 歳まで(n=31)と 50 歳より上(n=31)の 2 種類の年齢群から募り、TRF あるいはプラセボいずれかのカプセルの摂取を 6
ヵ月間受ける群に無作為に割り付けた。血液サンプルは、0、3、6 ヵ月目に採取した。
TRF 補給群の HDL コレステロール値は 6 ヵ月後に上昇した(p<0.01)。50 歳より上の群では、AGE レベルが低下する一方で(p<0.05)、タンパク質のカ
ルボニル含量が顕著に減少した(p<0.001)。血漿中の総ビタミン E の中で、とりわけトコフェロール類のレベルが 3 ヵ月後の TRF 補給群で有意に上昇した
(p<0.01)。血漿総トコトリエノールは、TRF 補給 6 ヵ月後の 50 歳より上の被験者群でのみ上昇した。
酵素活性の変化は、50 歳より上の群でのみ認められた。SOD 活性は TRF 補給群の 3 ヵ月後(p<0.05)と 6 ヵ月後(p<0.05)に低下した一方、CAT
活性はプラセボ群の 3 ヵ月後(p<0.01)と 6 ヵ月後(p<0.05)に低下した。GPx 活性は、6 ヵ月後の処置群とプラセボ群の両方で上昇した(p<0.05)。
タンパク質損傷の減少に加え、血漿中のコレステロール、AGE、抗酸化ビタミンレベルについて観察された改善は、TRF 補給後のとりわけ 50 歳より上の被験者
における酸化還元均衡の修復を示している可能性がある。
Keywords: TRF 補給、健常高齢者、酸化還元均衡
Yuen KH, Wong JW, Lim AB, Ng BH, Choy WP. Effect of mixed-tocotrienols in hypercholesterolemic subjects. FFHD. 3: 106-117.
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トコトリエノールのコレステロール低下作用に関する研究から得られた結果は混在を見せ、ある研究ではコレステロール低下作用が明らかにされ、別の研究では
そのような作用は認められていないのが現状である。トコトリエノールのコレステロール低下作用を調査するために、無作為化二重盲検並行群間比較試験を
実施した。
32 人の高コレステロール血症患者が無作為に割り当てられ、1 日 300 mg のトコトリエノール複合体あるいは大豆油を含有するプラセボのカプセルいずれかの
摂取を 6 ヵ月間受けた。被験者は、補給前、その後は毎月、血清中のコレステロール、トコトリエノール、トコフェロールの濃度について測定を受けた。
トコトリエノール補給群の被験者における血清総コレステロールと低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールは、補給 4 ヵ月後にそれぞれ 8.9±0.9%、
12.8±2.6%有 意 に低 下 した。血 清 総 コレステロールと LDL コレステロールの低 下 は 6 ヵ月 目 の試 験 終 了 時 まで持 続 し、ベースライン時 よりそれぞれ
10.8±1.0%、17.3±1.8%の低下を示した。
さらに、プラセボ群と比較してトコトリエノール複合体の補給群でベースライン時より 22 倍の総トコトリエノール濃度の上昇が認められた一方、α-トコフェロール濃
度は僅かな上昇を示したのみであった。他方、プラセボ群の被験者の血清コレステロール、総トコトリエノール、α-トコフェロール濃度は本質的に不変のままであ
った。
1 日用量 300 mg のトコトリエノール複合体の 5 ヵ月間の補給により、血清中の総コレステロールと LDL コレステロールの濃度低下がもたらされることが本研究
から明らかになった。
Keywords: トコトリエノール複合体、総コレステロール、LDL コレステロール
2010
Zaiden N, Yap W, Ong S, Xu C, Teo V, Chang C, Zhang X, Nesaretnam K, Shiba S, Yap Y. Gamma delta tocotrienols reduce hepatic triglyceride
synthesis and VLDL secretion. J Atheroscler Thromb. 2010 Oct 27;17(10):1019-32.
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本研究の目的は、γ-トコトリエノールと δ-トコトリエノール(gammadeltaT3)による血清脂質の抑制を解明することにある。
gammadeltaT3 の脂質低下作用について、HepG2 肝細胞株、高コレステロール血症マウス、境界域高コレステロール血症患者を対象に調査を行った。
in vitro での試験から二種類の作用機構が実証された。第一に、トリグリセリド、コレステロール、VLDL の生合成抑制に導く gammadeltaT3 による脂質の恒
常性を維持する遺伝子(DGAT2、APOB100、SREBP1/2、HMGCR)の上流調節因子抑制が挙げられる。
第二に、LDL 受容体(LDLr)発現の誘導による gammadeltaT3 の LDL 流出増大が挙げられる。LDLr 欠損マウスを 1 mg/日(50 mg/kg 体重/日)の
gammadeltaT3 で 1 ヵ月間処理したところ、コレステロールとトリグリセリドのレベルがそれぞれ 28%、19%低下した一方、HDL レベルは無変化であった。α-トコ
フェロール(alphaTP)は脂質低下作用に影響を及ぼさなかった。
ヒトのプラセボ対照試験では 120 mg/日の gammadeltaT3 が用いられ、血清トリグリセリドのみが 28%減少したのに続いて、トリグリセリドを多く含む VLDL と
カイロミクロンが付随して減少した。対照的に、総コレステロール、LDL、HDL は処理群とプラセボ投与群で不変のままであった。
in vitro、in vivo、ヒトでの試験における不一致は、吸収後の gammadeltaT3 の分解と LDL 代謝の異なる速度に起因している可能性がある。
トリグリセリドの合成と輸送の減少は、ヒトにおいて gammadeltaT3 摂取がもたらすことのできる主要な利点であると考えられる。
Keywords: γ-、δ-トコトリエノール、トリグリセリドの合成と輸送
2007
Roza JM, Xian-Liu Z, Guthrie N. Effect of citrus flavonoids and tocotrienols on serum cholesterol levels in hypercholesterolemic subjects.
Altern Ther Health Med. 2007 Nov-Dec;13(6):44-8.
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シトラスフラボノイドとパーム・トコトリエノールは共に実験動物でコレステロール濃度を低下させることが予備試験の結果から示唆されている。
これらの栄養素の組み合わせが血中コレステロール濃度や関連する心血管疾患の危険因子に及ぼす影響を調査するのが本研究の目的である。
2 種類の非盲検試験と 1 種類の二重盲検試験を計画し、外来患者を対象とした臨床試験の設定で実施した。
19 歳から 65 歳までの高コレステロール血症(コレステロール値 >230 mg/dL)の男女を募集し、3 群(n=10; n=10; n=120)に割り当てた。
参加者は、1 日 270 mg のシトラスフラボノイドと 30 mg のトコトリエノール(S)、あるいはプラセボ(P)のいずれかの摂取を 4 週間(1 群[G1]、2 群
[G2])あるいは 12 週間(3 群[G3])受けるために無作為化された。
空腹時の血中コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリドの濃度を主要転帰評価項目とし、ベースライン時、4 週間目(全群)、8 週間目、12 週間目
(G3)に測定を行った。
S の連日摂取は全群で P よりも心血管系のパラメータを改善した。総コレステロール値(20~30%)、LDL 値(19~27%)、アポリポタンパク質 B 値
(21%)、トリグリセリド値(24~34%)に有意な低下が認められた。HDL 濃度は G1 と G2 では変わりがなかったが、G3 では 4%上昇し(非有意)、アポリ
ポタンパク質 A1 の有意な上昇を伴った(5%)。
Keywords: シトラスフラボノイド、パーム・トコトリエノール、高コレステロール血症
Ajuluchukwu JN, Okubadejo NU, Mabayoje M, Ojini FI, Okwudiafor RN, Mbakwem AC, Fasanmade OA, Oke DA. Comparative study of the
effect of tocotrienols and -tocopherol on fasting serum lipid profiles in patients with mild hypercholesterolaemia: a preliminary report.
Niger Postgrad Med J. 2007 Mar;14(1):30-3.
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高コレステロール血症は心血管疾患のリスクファクターの一つである。トコトリエノールにはコレステロール低下作用のあることが報告されている。本研究では、
TOCOVID™ Suprabio™に含まれるトコトリエノール(T3)が血清脂質に及ぼす影響の調査を行った。
軽度高コレステロール血症(5.18 mmol/L 以上 7.77 mmol/L 未満)に加え、もう一つの心血管系のリスクファクターを伴う患者を対象に、無作為化
(2:1)オープンラベル研究を実施した。
被験者は、500 mg/日のトコトリエノール(TOCOVID™ Suprabio™として)あるいはビタミン E(α-トコフェロール)いずれかの摂取を受けた(それぞれ、
n=28、16)。
ベースライン時と治療 4 週間後の空腹時血清脂質を比較した。治療 4 週間後の総コレステロール値(平均値 ±標準偏差)は、α-トコフェロール群
(5.92±0.52 から 5.47±0.76; p>0.05)と比較してトコトリエノール群(6.10±0.66~5.47±1.16; p=0.02)で有意に低下した。
LDL コレステロール値(mmol/L)もまたトコトリエノール群(3.82±0.85 から 3.24±1.26; p=0.04)で有意に低下したが、α-トコフェロール群(3.84±0.75 か
ら 3.28±0.94; p>0.05)では有意な低下は認められなかった。
HDL コレステロールとトリグリセリドについては、両群において有意な変化は観察されなかった。4 週目のトコトリエノール群でトリグリセリドは減少(7.1±31.4%;
p>0.05)を示した一方、α-トコフェロール群では増加(38.6±61.7%; p>0.05)を示すことが明らかになった。
本研究により総コレステロールと LDL コレステロールに及ぼすトコトリエノールの好ましい作用を裏付ける証拠が追加されたが、得られた結果をさらに評価する必
要がある。
Keywords: 軽度高コレステロール血症、TOCOVID™ Suprabio™、総コレステロール、LDL コレステロール
2006
Yu SG, Thomas AM, Gapor A, Tan B, Qureshi N, Qureshi AA. Dose-response impact of various tocotrienols on serum lipid parameters in
5-week-old female chickens. Lipids. 2006 May;41(5):453-61.
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パ ー ム 油 に 含 ま れ る ト コ ト リ エ ノ ー ル 高 含 有 フ ラ ク シ ョ ン ( TRF ) の コ レ ス テ ロ ー ル 抑 制 作 用 は 、 そ の 構 成 成 分 で あ る ト コ ト リ エ ノ ー ル が
beta-hydroxy-beta-methylglutaryl coenzyme A(HMG-CoA)還元酵素活性に及ぼす影響に起因している可能性がある。
トコトリエノールは転写後の機構によって HMG-CoA 還元酵素を調整する。結果として、低用量(5~200 ppm)の TRF を添加した飼料を実験動物に給
餌すると血清中のコレステロール濃度が低下する。これらの所見が高用量の TRF とその構成成分の補給による安全性と有効性を評価する研究につながった。
50、100、250、500、1,000、2,000 ppm の TRF、α-トコフェロール、α-トコトリエノール、γ-トコトリエノールあるいは δ-トコトリエノールを含有する飼料をニワトリ
(雌)に 4 週間給餌した。給餌期間終了時、増体重あるいは摂餌量における群間、郡内での差は認められなかった。
TRF 給餌群では、対照群と比較して用量反応的(50~2,000 ppm)な血清総コレステロール、LDL コレステロール濃度の低下(それぞれ、22%、52%)が
認められた(p<0.05)。α-トコフェロールは総コレステロール、LDL コレステロール濃度に影響を及ぼさなかった。
50~500 ppm の範囲内で補給した α-トコトリエノールは用量反応的に総コレステロール、LDL コレステロール濃度を低下させた(それぞれ、17%、33%)。
作用がより強力とされる γ-、δ-トコトリエノールは、用量反応的(50~2,000 ppm)に総コレステロール、LDL コレステロール濃度を低下させた(それぞれ、
32%、66%)。
HDL コレステロール濃度への影響はトコトリエノールで最低で、結果的に HDL/LDL コレステロール比が補給によって有意に改善された(123~150%)。血清
トリグリセリド濃度は最高用量の補給を受けたニワトリで有意に低下した。
本研究からヒトが種々のトコトリエノールを摂取する場合に安全とされる 1 日用量は 200~1,000 mg となるであろう。
Keywords: TRF、HMG-CoA 還元酵素活性、HDL/LDL コレステロール比、安全性
2005
Minhajuddin M, Beg ZH, Iqbal J. Hypolipidemic and antioxidant properties of tocotrienol rich fraction isolated from rice bran oil in
experimentally induced hyperlipidemic rats. Food Chem Toxicol. 2005 May;43(5):747-53.
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米糠油から単離したトコトリエノール高含有フラクション(TRF)が実験的に誘発した高脂血症ラットに及ぼす用量依存的な脂質低下作用と抗酸化作用の
調査を行った。
アテローム誘発飼料(水素添加脂肪 5%、コール酸 0.5%、コレステロール 1%含有)を 3 週間給餌した結果、血漿中のトリグリセリドと総コレステロール濃度
に有意な上昇が認められた(それぞれ、3.3 倍、2.4 倍)。LDL コレステロール濃度は 5 倍に上昇したが、HDL コレステロールについてはわずかな上昇を認めた
だけであった。
他方、HMG-CoA 還元酵素活性はこれらのラットで有意に低下し、さらにチオバルビツル酸反応物(TBARS)と共役ジエンの生成が正常ラットと比較して有
意に増加した(それぞれ、86%、78%)。
高脂血症を 3 週間にわたり誘発した後、ラットに異なる用量の TRF を 1 週間補給した。TRF 補給は用量依存的に脂質パラメータを減少させ、TRF 1 日 8
mg/kg の用量で最高の効果が認められた。アテローム誘発飼料を中断した後に上昇していた HMG-CoA 還元酵素活性は、TRF 処置期間中有意な低下を
保持した。TRF 給餌はまた、TBARS と共役ジエンも有意に減少させた。
これらの結果から、TRF 補給は高脂血症における種々のアテローム発生性脂質プロファイルと抗酸化物質を含む生理機能を変化させることによって重要な健
康有益性を及ぼしていることが示唆される。
Keywords: 米糠油、TRF、高脂血症、HMG-CoA 還元酵素活性
2003
Iqbal J, Minhajuddin M, Beg ZH. Suppression of 7,12-dimethylbenz[alpha]anthracene-induced carcinogenesis and hypercholesterolaemia in
rats by tocotrienol-rich fraction isolated from rice bran oil. Eur J Cancer Prev. 2003 Dec;12(6):447-53.
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トコトリエノール高含有フラクション(TRF)の抗腫瘍、抗コレステロール作用について、乳癌発癌と高コレステロール血症を誘発することが知られている化学発
癌物質、7,12-dimethylbenz(a)anthracene(DMBA)で処置を施したラットで調査を行った。
ラットへの DMBA 投与は、6 ヵ月後に乳腺上の多発性腫瘍の出現との関連を示した。発癌の重症度を監視するためのマーカー酵素として、アルカリホスファタ
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ーゼ(ALP)とグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)を用いた。
肝臓に目視可能な腫瘍は認められなかったが、DMBA 処置したラットの肝 ALP、GST 活性は、正常対照ラットの酵素活性と比較して著しく上昇した。DMBA
投与したラットへの米糠油(RBO)由来 TRF(10 mg/体重 kg/日)の 6 ヵ月間の給餌により、乳腺中の悪性腫瘍形質転換の重症度と範囲を減少した。
同様に、癌形成時の血漿、乳腺中の ALP 活性が TRF 処置マウスで有意に低下した一方(それぞれ、95%、43%)、TRF は肝中 ALP 活性をさらに 51%
上昇させた。
TRF 処置ラットでは、肝臓、乳腺における GST 活性のレベル低下が維持され(それぞれ、約 32%、21%)、TRF の抗発癌特性との一致が認められた。
DMBA 投与はまた、正常対照ラットにおける濃度と比較して、血漿中の総コレステロール濃度を 30%、LDL コレステロール濃度を 111%有意に上昇させた。ラ
ットへの TRF 給餌は、DMBA 投与ラットと比較して、総コレステロール濃度を 30%、LDL コレステロール濃度を 67%有意に低下させた。
実験的に誘発した高コレステロール血症はまた、酵素活性と肝中 3-hydroxy-3-methylglutaryl co-enzyme A(HMG-CoA)還元酵素のタンパク質量に
おける有意な増加を引き起した(それぞれ、23%、28%)。TRF が介在する血漿脂質濃度低下と一致して、酵素活性、HMG-CoA 還元酵素のタンパク質
量が有意に減少した。
これらの結果から、TRF にはラットにおいて強力な抗癌作用と抗コレステロール作用があることが示唆される。
Keywords: 米糠油由来 TRF、乳癌発癌、高コレステロール血症、HMG-CoA 還元酵素
1999
Theriault A, Wang Q, Gapor A, Adeli K. Effects of gamma-tocotrienol on ApoB synthesis, degradation, and secretion in HepG2 cells.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1999 Mar;19(3):704-12.
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自然界に存在するトコフェロール(ビタミン E)の同族体の一つである γ-トコトリエノールには、動物とヒトの両方でコレステロール低下作用があることが明らかに
されている。またトコフェロールとは異なり、トコトリエノールは高コレステロール血症患者における血漿アポリポタンパク質 B(apoB)レベルを低下させることが明ら
かにされている。
本研究の目的は、モデル系として培養した HepG2 細胞を用いて、肝中の apoB 産生の変化に及ぼす γ-T3 の作用機序を明らかにすることにある。
γ-T3 でプレインキュべートした HepG2 細胞は、濃度-、時間-依存的に[14C]酢酸がコレステロールに取り込まれる速度を抑制し、6 時間以内に 50 μmol/L
で最大 86±3%の抑制が認められた。
他方で γ-T3 は、未処理の対照と比較して、細胞内に貯蔵されているトリアシルグリセリドとリン脂質への[14C]グリセロールの取込みには顕著な影響を及ぼさな
かった。
次に、apoB 合成と分泌の速度を[35S]メチオニンを用いたパルスラベル実験で測定し、3 時間までのチェイスで免疫沈澱させた apoB によって定量化した。
apoB 合成が 60±2%増加したのにも関わらず、培養基中で標識した apoB が平均 24±3%低下したのは γ-T3 によることが明らかとなった。分泌された apoB
の分画から相対的に高濃度のリポタンパク質分子が認められ、不安定な分子であることが示唆された。
digitonin-permeabilized 細胞系を用いて、小胞体中の apoB の転位と分解に及ぼす γ-T3 の影響についてさらに調査した。特定の N 末端 70-kDa タン
パク質分解フラグメントの発生は、apoB 転位、分解速度についての感度の高い指標であることが判明した。このフラグメントの存在量は、チェイス 2 時間後、
未処置の対照細胞と比較して γ-T3 細胞で顕著な増加を示した(50±21%)。さらに、γ-T3 の存在は無処理の apoB の平均 64±8%の減少を引き起し
た。
これらのデータから総合すると、おそらく apoB の小胞体内腔への転位が減少した結果から、γ-T3 が apoB 分解を促進していることが示唆される。apoB の小胞
体内腔への転位制限によって、コレステロールの利用可能性の欠如が多数の分泌された apoB 含有リポタンパク質分子を減少させていることが推測される。
Keywords: HepG2 細胞、γ-トコトリエノール、アポリポタンパク質 B 産生
1996
Qureshi AA, Pearce BC, Nor RM, Gapor A, Peterson DM, Elson CE. Dietary alpha-tocopherol attenuates the impact of gamma-tocotrienol on
hepatic 3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase activity in chickens. J Nutr. 1996;126:389-94.
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血清コレステロールに及ぼす γ-トコトリエノールの濃度依存性作用は、3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A 還元酵素活性の転写後ダウンレギュレー
ションに由来する。γ-トコトリエノールは、腫瘍の成長も抑制する。
パーム油のトコフェロール・トコトリエノール高含有フラクションである Palmvitee は、唯一市販されている γ-トコトリエノールの供給源である。γ-トコトリエノールの
作用についての一般的発見とは反対に、3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A 還元酵素活性、血清コレステロール濃度、腫瘍発生に及ぼす
Palmvitee の作用について相容れない報告がある。これらの相反した報告から、γ-トコトリエノールのコレステロール抑制作用に及ぼす α-トコフェロールの影響を
調査するに至った。
対照飼料あるいは実験飼料を白色レグホンのヒナ(n=10)に 26 日給餌した。対照飼料には 21 nmol/g の α-トコフェロールをサプリメンテーションした。実験
飼料すべてに、141 nmol/g のブレンドされたトコール類を供給した。実験飼料の α-トコフェロールと γ-トコトリエノールの濃度は、それぞれ 21~141 nmol/g と
0~120 nm/g の範囲であった。
3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A 還元酵素活性を抑制するのに適切な量の γ-トコトリエノールが配合されているトコールブレンドに α-トコフェロー
ルを含有することは、トコトリエノール活性の減弱をもたらすことをここで報告する(p<0.001)。
異なる Palmvitee 製剤を用いた研究結果を要約すると、15~20%の α-トコフェロールと約 60%の γ-(及び δ-)トコトリエノールからなる製剤は効果があるの
に対し、30%以上の α-トコフェロールと 45%の γ-(及び δ-)トコトリエノールからなる製剤は効果がないことが明らかになった。
Keywords: Palmvitee、コレステロール抑制作用、α-トコフェロール、トコトリエノール活性
1995
Qureshi AA, Bradlow BA, Brace L, Manganello J, Peterson DM, Pearce BC, Wright JJ, Gapor A, Elson CE. Response of hypercholesterolemic
subjects to administration of tocotrienols. Lipids. 1995;30:1171-7.
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米国心臓協会(AHA)が定めるステップ 1 の食餌療法をそれぞれ 4 週間あるいは 8 週間受けた高コレステロール血症の被験者における palmvitee と γ-ト
コトリエノールのコレステロール抑制作用を評価した。
4 週間の食餌療法で 36 名の被験者のコレステロールレベルが 5%低下した(p<0.05)。次ぎの 4 週間を継続して受けた被験者では、コレステロールレベル
がさらに 2%低下した。
24 時間食品摂取記録に基づいた食餌評価は、熱量と脂肪、特に飽和脂肪酸の摂取の減少が関与していることを示唆している。
Palmvitee と γ-トコトリエノールが媒介するコレステロールの有意な減少が示された。4 週間の食餌療法を受けた被験者グループに Palmvitee(1 日当り αトコフェロール 40 mg、α-トコトリエノール 48 mg、γ-トコトリエノール 112 mg、δ-トコトリエノール 60 mg)を 4 週間投与したところ、コレステロールが 10%減
少した(p<0.05)。
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食餌評価は、熱量と脂肪摂取にそれ以上の変化を示さなかった。α-トコフェロールは、トコトリエノールのコレステロール抑制作用を減弱させた。
8 週間の食餌療法を行った 2 番目のグループの被験者は、γ-トコトリエノール 200 mg/日の摂取を 4 週間受けた。この α-トコフェロールを含まない製剤のコレ
ステロール抑制の強さは、前の試験で用いたトコトリエノール混合物(220 mg)と同等と算定された。このグループの被験者 16 名のコレステロールレベルは、4
週間の試験期間中 13%低下した(p<0.05)。
血漿アポリポタンパク質 B と ex vivo でのトロンボキサン B2 の発生は、トコトリエノール製剤に対して同様の反応を示したが、どちらも HDL コレステロールとアポリ
ポタンパク質 A-1 のレベルに影響を及ぼさなかった。
Keywords: AHA、高コレステロール血症、Palmvitee、γ-トコトリエノール
1994
Pearce BC, Parker RA, Deason ME, Dischino DD, Gillespie E, Qureshi AA, Volk K, Wright JJ. Inhibitors of cholesterol biosynthesis. 2.
Hypocholesterolemic and antioxidant activities of benzopyran and tetrahydronaphthalene analogues of the tocotrienols. J Med Chem.
1994;37:526-41.
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トコトリエノールは抗酸化活性とコレステロール生合成抑制活性を示し、抗アテローム性動脈硬化剤として価値のある可能性がある。その脂質低下作用のメ
カニズムには、推定される非ステロールのフィードバック阻害剤の作用を模倣した方法による HMG-CoA 還元酵素(HMGR)の転写後抑制が含まれている。
広範な一連のベンゾピラン・テトラヒドロナフタレン同配体の HepG2 細胞中の in vitro でのコレステロール生合成阻害活性と HMGR 抑制活性、経口投与し
たニワトリで評価した選択化合物のコレステロール低下作用を示す。
これら化合物の予備的な抗酸化データは、サイクリックボルタンメトリと銅によって誘導される LDL 酸化の測定法を用いて得られた。
γ-トコトリエノールのファルネシル側鎖とメチル基/水酸基置換パターンは高レベルの HMGR 抑制をもたらし、今回の試験で用いた合成類似体で上回ることはで
きない。
経口投与したニワトリでは、8-bromotocotrienol(4o)、2-desmethyltocotrienol(4t)、テトラヒドロナフタレン誘導体 35 が天然トコトリエノールよりも
高い LDL コレステロール低下作用を示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、HMG-CoA 還元酵素抑制、LDL コレステロール低下作用
1993
Parker RA, Pearce BC, Clark RW, Gordon DA, Wright JJ. Tocotrienols regulate cholesterol production in mammalian cells by
post-transcriptional suppression of 3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase. J Biol Chem. 1993;268:11230-8.
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トコトリエノールは、トコフェロールの天然のファルネシル化された類似体で、実験動物の肝中コレステロール産生を減少させ、血漿コレステロールレベルを低下さ
せる。
培養した幾つかの細胞のタイプで、γ-トコトリエノールによるインキュベーションは、[3H]mevalonate ではなく、[14C]acetate の濃度、時間依存的なコレステロー
ルへの取込み速度を抑制し、HepG2 細胞における約 2 μM での 50%抑制及び最大約 80%の抑制が 6 時間以内に観察された。
ウエスタンブロット法で分析した総 3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A(HMG-CoA)還元酵素活性とタンパク質レベルは、コレステロール合成の
減少に付随して減少した。γ-トコトリエノールは、HepG2 細胞における経路の幾つかの段階で阻害剤により強力に遮断されるにもかかわらず還元酵素を抑制
し、調節作用にイソプレノイドフラックスを必要としないことが示唆された。
HMG-CoA 還元酵素のタンパク質合成は中等度に減速したが(コントロールの 57%)、分解速度は、10 μM の γ-トコトリエノールで処理した HepG2 細胞
の[35S]methionine pulse chase/免疫沈降反応分析で判断したとき、コントロールに対し 2.4 倍増加した(t1/2 は 3.73h から 1.59h に低下した)。
これらの条件下で、還元酵素タンパク質レベルの低下は mRNA の微少な低下をはるかに超え(それぞれ、コントロールの 23%と 76%)、LDL レセプタータンパ
ク質は増加した。
これに対し、25-hydroxycholesterol は強力に HMG-CoA 還元酵素タンパク質を相互抑制し、mRNA レベルと LDL レセプタータンパク質が増加した。
従って、トコトリエノールは、哺乳類の細胞における HMG-CoA 還元酵素の転写後抑制によるメバロン酸経路に影響を及ぼし、メバロン酸由来の推定される
非ステロールイソプレノイド調節剤の作用を反映する活性である還元酵素タンパク質の抑制された分解に対する細胞内機構を特異的に変化させているようで
ある。
Keywords: γ-トコトリエノール、コレステロール合成、メバロン酸経路
1992
Pearce BC, Parker RA, Deason ME, Qureshi AA, Wright JJ. Hypocholesterolemic activity of synthetic and natural tocotrienols. J Med Chem.
1992;35:3595-606.
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トコトリエノールとファルネシル化ベンゾピラン天然物は、in vitro と in vivo でコレステロール低下活性を示す。それらの脂質低下作用機構には、他に知られてい
るコレステロール生合成阻害剤とは明らかに異なる過程による HMG-CoA 還元酵素の転写後抑制が含まれている。
改良された方法を用いて、パーム油留出物からトコトリエノールを単離するのに効率のよい合成経路を示す。in vitro で γ-トコトリエノールは、HepG2 細胞にお
けるコレステロール生合成阻害に対し、α-トコトリエノールより 30 倍も強い活性を示した。
合成(ラセミ)、天然(キラル)トコトリエノールは、in vitro と in vivo で立証されたように、コレステロール生合成阻害とヒドロキシメチルグルタリル Co-A
(HMG-CoA)還元酵素抑制においてほぼ同一の特性を示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、コレステロール生合成阻害、HMG-CoA 還元酵素抑制
1991
Qureshi AA, Qureshi N, Wright JJ, Shen Z, Kramer G, Gapor A, Chong YH, deWitt G, Ong A, Peterson DM, et al. Lowering of serum
cholesterol in hypercholesterolemic humans by tocotrienols (palmvitee). Am J Clin Nutr. 1991;53:1021S-1026S.
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高コレステロール血症の被験者(血清コレステロール 6.21~8.02 mmol/L)の血清脂質に及ぼすパーム・トコトリエノール高含有フラクション(palmvitee カ
プセル 200 mg/日)の影響を、コーン油 300 mg/日と比較するために、8 週間の二重盲検クロスオーバー試験を実施した。
最初の 4 週間に palmvitee を投与した 15 名の被験者においてのみ、血清総コレステロール(-15%)、LDL コレステロール(-8%)、ApoB(-10%)、ト
ロンボキサン(-25%)、血小板因子(-16%)、糖(-12%)の濃度が有意に低下した。
Palmvitee のこれらの作用をクロスオーバー試験で確認した。Palmvitee にはキャリーオーバー効果があった。高コレステロール血症の被験者 7 名(7.84
mmol/L 以上)の血清コレステロール濃度は、4 週間の γ-トコトリエノール(200 mg/日)投与で 31%低下した。これは、γ-トコトリエノールが palmvitee カ
プセルの中で最も強いコレステロール抑制剤であることを示している。
Keywords: 高コレステロール血症、パーム・トコトリエノール高含有フラクション、γ-トコトリエノール
Qureshi AA, Qureshi N, Hasler-Rapacz JO, Weber FE, Chaudhary V, Crenshaw V, Crenshaw TD, Gapor A, Ong AS, Chong YH., Peterson D, et al.
Dietary tocotrienols reduce concentrations of plasma cholesterol, apolipoprotein B, thromboxane B2, and platelet factor 4 in pigs with
inherited hyperlipidemias. Am J Clin Nutr. 1991;53:1042S-1046S.
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リポタンパク質の遺伝子型で定義された正常、遺伝的高コレステロール血症のブタに、パーム油から単離したトコトリエノール高含有フラクション( TRF)50
μg/g を添加した標準飼料を与えた。
TRF を摂取した高コレステロール血症ブタは、血清総コレステロールが 44%、LDL コレステロールが 60%減少した。また、アポリポタンパク質 B、トロンボキサン B2、
血小板因子 4(PF4)のレベルは、それぞれ 26%、41%、29%有意に減少した。
トロンボキサン B2 と PF4 の低下は、TRF が血管内皮と血小板凝集に顕著な防御作用を及ぼしていることを示唆している。脂質を低減する飼料の効果は、8
週間対照飼料を与えた後の高コレステロール血症ブタでのみ存続した。
これらの結果は、トコトリエノールによる実験動物の血漿コレステロール低下作用に関する以前の研究での所見を裏付けている。
Keywords: トコトリエノール高含有フラクション、高コレステロール血症
Tan DT, Khor HT, Low WH, Ali A, Gapor A. Effect of a palm-oil-vitamin E concentrate on the serum and lipoprotein lipids in humans. Am J
Clin Nutr. 1991;53:1027S-1030S.
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ヒトの血清脂質とリポタンパク質に及ぼすパーム油ビタミン E 濃縮物カプセル(palmvitee)の作用を評価した。
1 カプセル中に、トコフェロール約 18 mg、トコトリエノール約 42 mg、パームオレイン約 240 mg が含まれている。1 日 1 カプセルを志願者全員に 30 日間連続
して摂取させ、実験前後に夜間空腹時の血液を採取した。血清脂質とリポタンパク質を CHOD-PAP 法により分析した。
カプセル(palmvitee)は、志願者全員の血清総コレステロール(TC)と LDL コレステロール(LDL-C)両方の濃度を低下させた。各志願者の初期値を比
較したとき、血清 TC の減少程度は 5.0~35.9%の範囲であったのに対し、LDL-C は 0.9%~37.0%であった。トリグリセリド(TGs)と HDL-C に及ぼす
palmvitee の作用は一致しなかった。
palmvitee に低コレステロール作用があることを結果は明らかにしている。
Keywords: パーム油ビタミン E 濃縮物、血清総コレステロール、LDL コレステロール
1986
Qureshi AA, Burger WC, Peterson DM, Elson CE. The structure of an inhibitor of cholesterol biosynthesis isolated from barley. J Biol Chem.
1986 Aug 15;261(23):10544-50.
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高タンパク質オオムギ(Hordeum vulgare L.)粉における非極性の油留分を HPLC で精製した結果、10 種類の主成分が得られた。そのうちの 2 種類(I
と II)は、in vivo と in vitro の両方で強力なコレステロール合成阻害剤となることが明らかになった。
精製した阻害剤 I を飼料に 2.5~20 ppm 添加し、ニワトリに摂取させたところ、肝臓におけるコレステロール合成、血清中の総コレステロール、LDL コレステロ
ール濃度が著しく低下し、同時に脂肪生成作用が上昇した。
阻 害 剤 I に関 する高 分 解 能 質 量分 光 分 析 と異 なるピークの測 定 から、 m/e424(C29H44O2)で分 子 イオン、m/e205(C13H17O2)、m/e203
(C13H15O2)、m/e165(C10H13O2)部分でメインピークを得た。これらは α-トコトリエノールの特徴である。
本同定は化学合成で得られた試料で確認された。トコトリエノールは植物界に広く分布しており、コレステロール合成の阻害に不可欠と考えられているイソプレ
ノイド側鎖に二重結合が 3 ヵ所あることが唯一トコフェロール(ビタミン E)と異にする点である。
Keywords: オオムギ、コレステロール合成阻害剤、α-トコトリエノール
抗アテローム性動脈硬化作用
Anti-atherosclerotic Effect
2013
Norsidah KZ, Asmadi AY, Azizi A, Faizah O, Kamisah Y. Palm tocotrienol-rich fraction improves vascular proatherosclerotic changes in
hyperhomocysteinemic rats. Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:976967. doi: 10.1155/2013/976967.
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本研究でパーム・トコトリエノール高含有画分(TRF)が高メチオニン食給餌ラットにおける大動脈のアテローム硬化性変化に及ぼす影響について検討を行っ
た。
42 匹の雄性 Wistar ラットを 6 つの群に分けた。第一の群をコントロールとした(基礎飼料給餌群)。他の 5 群には、1%メチオニンン飼料を 10 週間給餌し
た。6 週目以降、葉酸(8 mg/kg 飼料)またはパーム由来 TRF(30、60 および 150 mg/kg 飼料)をそれぞれ残り 4 群のラットの試料に添加した。
高メチオニン飼料は血漿総ホモシステインおよび大動脈脂質過酸化を上昇させたが、それらはパーム由来 TRF および葉酸の補給により減少した。血漿一酸
化窒素は対照群と比べ高メチオニン群で低下したが(6.65±0.53 μmol/L 対 3.72±0.57 μmol/L;p<0.05)、その低下はパーム由来 TRF(60 および
150 mg/kg)および葉酸の補給により逆転した。
メチオニン群で増加した大動脈の血管細胞接着分子-1 発現(2.58±0.29)は、葉酸(1.38±0.18)および 150 mg/kg のパーム TRF(1.19±0.23)に
より有意に減少した。
パーム TRF は、ラットの高メチオニン食により誘発される血漿中の高ホモシステイン血症、大動脈酸化ストレスおよび炎症性変化の低減において、葉酸に匹敵
することが明らかになった。f
Keywords: パーム由来 TRF、葉酸、メチオニン、ホモシステイン、脂質過酸化、血管細胞接着分子-1
2001
Nafeeza MI, Norzana AG, Jalaluddin HL, Gapor MT. The effects of a tocotrienol-rich fraction on experimentally induced atherosclerosis in
the aorta of rabbits. Malays J Pathol. 2001 Jun;23(1):17-25.
14
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ウサギ大動脈内のアテローム性動脈硬化と脂質過酸化の顕微鏡的発生に及ぼすトコトリエノール高含有フラクション(TTRF)の影響を本研究で調査した。
第 1 群のウサギは通常飼料、第 2 群はコレステロール 2%含有飼料、第 3 群はコレステロール 2%含有飼料に加え TTRF を経口で連日摂取させた。
10 週間後、大動脈中のマロンジアルデヒド(MDA)含量を脂質過酸化の指標として測定した。MDA 値は、TTRF を摂取させなかったウサギと比較して、
TTRF を摂取させたウサギで最低値を示した。
内 膜 肥 厚 の程 度 は、コレステロールロール添 加 飼 料 と TTRF を摂 取 させたウサギと比 較 して、コレステロール添 加 飼 料 を摂 取 させたウサギで高 かった
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(p<0.05)。
内弾性板(IEL)の連続性はコレステロール添加飼料と TTRF を摂取させたウサギで保持されていることがわかったが、コレステロール添加飼料のみを摂取させ
たウサギでは分裂が認められた。分裂、断片化した IEL は、より広範な内膜肥厚の一因となる脂質過酸化によって引き起される損傷の結果生じた可能性が
ある。
TTRF の抗酸化活性には、実験的に誘発したアテローム性動脈硬化を低減化する可能性があると結論付けられる。
Keywords: アテローム性動脈硬化、脂質過酸化、MDA 値、内膜肥厚、内弾性板
1994
Teoh MK, Chong JM, Mohamed J, Phang KS. Protection by tocotrienols against hypercholesterolaemia and atheroma. Med J Malaysia.
1994;49:255-62.
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フリーラジカルによる組織の傷害は、動脈疾患に共通した最終の損傷経路であることから、トコトリエノールのような抗酸化物質がアテローム性動脈硬化に対し
て防御する可能性がある。
血清コレステロール、脂質過酸化物、大動脈アテロームに及ぼすトコトリエノールの作用をアテローム発生性の食餌を 12 週間与えたウサギで評価した。
トコトリエノールは、コレステロール給餌ウサギの血清 LDL(p=0.03)と総コレステロール(p=0.008)のレベル上昇の予防においてトコフェロールよりも効果が
高かった。トコトリエノールは、血清脂質過酸化物の上昇を有効に抑制した(p=0.01)。
トコトリエノールとトコフェロールの両方がウサギの大動脈アテロームを有意に防御したが、トコトリエノールにより強いコレステロール低下作用があった。
Keywords: 血清コレステロール、脂質過酸化物、大動脈アテローム
1993
Watkins T, Lenz P, Gapor A, Struck M, Tomeo A, Bierenbaum M. gamma-Tocotrienol as a hypocholesterolemic and antioxidant agent in rats
fed atherogenic diets. Lipids. 1993;28:1113-8.
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γ-トコトリエノールあるいは α-トコフェロールのアテローム発生性の食餌への取込みが、ラットの血漿コレステロール、トリグリセリド、脂肪酸過酸化物を減少させ、
血小板凝集性を減弱させるかを決定するための試験を設計した。
雄 Wister ラット(n=90)に 6 週間、コレステロール(2 w/w%)を含有する AIN76A 半合成試験食を与え、脂肪は部分的水素添加大豆油(20
w/w%)、メンヘーデン油(20%)あるいはトウモロコシ油(2%)として与えた。
メンヘーデン油を添加した食餌の摂取は、最も高い濃度の血漿コレステロール、LDL コレステロール、VLDL コレステロール、トリグリセリド、TBARS、脂肪酸ヒドロ
ペルオキシドをもたらした。
γ-トコトリエノール(50 mg/kg)と α-トコフェロール(500 mg/kg)を含有する食餌を 6 週間摂取させると血漿中の脂質濃度が減少した。血漿コレステロー
ル、LDL コレステロール、VLDL コレステロール、トリグリセリドはそれぞれ有意に減少した(p<0.001)。
食餌に両方のクロマノールが含まれるとき、血漿 TBARS と脂肪酸ヒドロペルキシドは有意に減少した(それぞれ、p<0.01、p<0.05)。γ-トコトリエノールのより
少ない量のサプリメンテーションは、これらの血漿中の数値を同じく減少させた。
血漿 α-トコフェロール濃度は、いずれのクロマノールも添加しないメンヘーデン油を与えたラットで最も低かった。血漿 α-トコフェロールは、γ-トコトリエノール 50
mg/kg のサプリメンテーションで上昇しなかったが、α-トコフェロールの乏しい食餌に γ-トコトリエノールを 100 mg/kg サプリメンテーションすると、0.60±0.2 から
1.34±0.4 mg/dL に上昇した(p<0.05)。最も高い α-トコフェロールの濃度は、α-トコフェロールを 500 mg/kg サプリメンテーションした食餌を与えたラットの
血漿で測定された。
Keywords: γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、LDL コレステロール、VLDL コレステロール、トリグリセリド
心血管系の健康
Cardiovascular Health
2012
Qureshi AA, Khan DA, Mahjabeen W, Papasian CJ, Qureshi N. Suppression of Nitric Oxide Production and Cardiovascular Risk Factors in
Healthy Seniors and Hypercholesterolemic Subjects by a Combination of Polyphenols and Vitamins. J Clin Exp Cardiolog. 2012 Jun 7;S5:8.
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加齢に伴う免疫機能調節不全はヒトの様々な疾患に関与していることが明らかにされている。我々は種々の実験動物モデルを対象にレスベラトロール、プテロ
スチルベン、モリン水和物、クエルセチン、δ-トコトリエノール、リボフラビンの抗炎症特性を実証し、これらの化合物がプロテアソーム活性を阻害することによって
作用することを確認してきた。
血清中の一酸化窒素(NO)濃度がヒトの加齢に伴って上昇するか、また、レスベラトロール、プテロスチルベン、モリン水和物、クエルセチン、δ-トコトリエノー
ル、リボフラビン、ニコチン酸のコレステロール低下特性と炎症低減特性の組み合わせを栄養サプリメントとして食事変更の有り無しで用いたときヒトの心血管系
のリスクファクタが減少するかを評価することが本研究の目的である。
高齢被験者を血清中の総コレステロール値に基づいて二つの群に分けた。初期の血清総コレステロールは、第 1 群で正常値、第 2 群で高値であった。血清
中の NO、C 反応性タンパク質(CRP)、γ‐グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)活性、尿酸、総抗酸化状態(TAS)、総コレステロール、HDL コレステロー
ル、LDL コレステロール及びトリアシルグリセロールのベースライン値を 4 週間にわたって定めた。
続いて、第 1 群の被験者は 2 種類の異なる組み合わせのいずれかの栄養補給を受けた(NS-7:各 25 mg のレスベラトロール、プテロスチルベン、クエルセチ
ン、δ-トコトリエノール、リボフラビン、ニコチン酸、モリン水和物、又は NS-6:NS-7 のうちモリン水和物をクエルセチンに置き換えてクエルセチンを 1 カプセル当た
り 50 mg としたもの)。第 2 群の被験者もまたこれらの栄養サプリメントの摂取を受けたが(1 日 2 カプセル)、同時に AHA ステップ 1 食も実行した。
これらの介入を 4 週間管理した後、既出パラメータを再測定し、ベースライン値からの変化を特定した。さらに、小児、若年成人及び高齢者における NO の濃
度比較も行った。
本研究から次の重要な結果が得られた。1)血清 NO 濃度は、小児(約 80%)・若年成人(約 65%)両方と比較して高齢者で有意に高い数値が認め
られた。
2)1 日 2 カプセルの NS-7 又は NS-6 の 4 週間の摂取により、自由生活を送る健常高齢者の血清中の NO 値(39%、24%)、CRP 値(19%、21%)、
尿酸値(6%、12%)、γ-GT 活性(8%、6%)でそれぞれ有意な低下が認められた(p<0.05)。
3)食事を AHA ステップ 1 食に限定し、さらに SN-7 又は SN-6(2 カプセル/日)の摂取を受けた高コレステロール血症被験者の血清中の NO 値(36%、
29%)、CRP 値(29%、20%)、尿酸値(6%、9%)、γ-GT 活性(9%、18%)、総コレステロール値(8%、11%)、LDL コレステロール値(10%、
13%)、トリアシルグリセロール値(16%、23%)でそれぞれ有意な低下が認められた(p<0.02)。
4)NS-7 又は NS-6 の単独摂取を受けた自由生活を送る健常高齢者(3%、9%;p<0.05)、AHA ステップ-1 食といずれかの栄養サプリメントとの組み合
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わせの摂取を受けた高コレステロール血症被験者(20%、12%;p<0.02)で TAS の上昇が認められた。
血清 NO 値は、小児あるいは若年成人と比較して高齢者で上昇することが明らかになったレスベラトロール、プテロスチルベン、モリン水和物、クエルセチン、δトコトリエノール、リボフラビン、ニコチン酸の組み合わせによる食事補給を他の食事変更の有り無しで栄養サプリメントとして用いた場合 、ヒトの心血管系リスク
が低下すると結論付けられる。f
Keywords: 栄養サプリメント、δ-トコトリエノール、AHA ステップ 1 食、一酸化窒素、心血管系リスク
2011
Vasanthi HR, Parameswari RP, Das DK. Tocotrienols and its role in cardiovascular health--a lead for drug design. Curr Pharm Des.
2011;17(21):2170-5.
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世界的な心血管疾患(CVD)の負担から、この多因子疾患と戦うための薬学的アプローチに多大な関心が寄せられるようになった。ビタミンはヒトの健康に
有益とされる天然あるいは内因性の化合物のなかで高い評価を受け、研究の魅力的なターゲットとなっている。
全てのビタミンのなかで、親のビタミン E ファミリーの同族体であるトコフェロール類とトコトリエノール類は、CVD による死亡率の低下に有効であることが見出されて
いる。このビタミンの抗酸化作用に対する理解の発展に伴いトコトリエノールは近年有名になり、研究者はその生物学的効果についてさらなる探求を始めてい
る。
トコトリエノールには何種類かの心臓保護作用がある。それらには、低密度リポタンパク質の酸化の拮抗、動脈硬化抑制、血小板凝集・単球接着の阻害、
平滑筋細胞の増殖と他の様々な心血管疾患の予防がある。
最近の研究から、前臨床と臨床の両方のレベルにおける癌、骨吸収、糖尿病、神経疾患におけるトコトリエノールとその役割に関する分子標的も明らかにさ
れている。
殆どの変性疾患におけるトコトリエノールの多標的な役割から、ニュートラシューティカルあるいはファーマシューティカル製剤としての利用の開発に理想的な候補
であることが証明されている。
Keywords: トコトリエノール、心臓保護作用、癌、骨吸収、糖尿病、神経疾患
Prasad K. Tocotrienols and cardiovascular health. Curr Pharm Des. 2011;17(21):2147-54.
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本総説では、アテローム性動脈硬化、プラーク不安定性、血栓形成のリスクファクターに及ぼすトコトリエノールの影響に重点を置き、トコフェロールとの比較から
検討を行った。
トコトリエノールは血清脂質を減少し、血清 HDL コレステロールを増加させる一方、α-トコフェロールが血清脂質に及ぼす影響は認められていない。
トコトリエノールはトコフェロールより抗酸化活性が高いことが明らかにされている。
両方とも、血清中の C 反応性タンパク質(CRP)と進行性糖化最終産物の濃度、細胞接着分子の発現を減少させる。トコトリエノールの CRP 低下作用は
トコフェロールよりも強いことが明らかにされている。
トコトリエノールは炎症メディエータを減少させるが、中でも δ-トコトリエノールが最も強力で、γ-、α-トコトリエノールがそれに続く。
トコトリエノールは抗血栓作用を有し、マトリックスメタロプロテイナーゼの発現を抑制することが明らかにされている。
トコトリエノールはアテローム性動脈硬化の進行を抑制、退行、遅延させる一方、トコフェロールはアテローム性動脈硬化進行を抑制するのみで、退行、遅延
させる効果は認められていない。トコトリエノールは、アテローム性プラークの不安定化にかかわるリスクファクターを減少させる。
トコトリエノールが既に罹患した虚血性心疾患における心イベントのリスク低減に有効であるとする確定的な証拠は存在しない。
α-トコフェロールは冠動脈疾患(CAD)の一次予防に有効であるが、既に虚血性心疾患に罹患した患者に有益な効果をもたらすとする決定的証拠は存
在しない。
トコトリエノールは虚血再潅流による心臓障害の減少に有効であることが動物実験から明らかにされており、血管形成術、ステント留置術、A-C bypass 術を
受ける患者への利用可能性がある。
結論として、トコトリエノールには心血管系の健康に関連する潜在的な可能性があるが、CAD の一次、二次予防におけるそれらの有効性を確立するために長
期無作為化臨床試験を行う必要がある。
Keywords: アテローム性動脈硬化、プラーク不安定性、血栓形成
2010
Lekli I, Ray D, Mukherjee S, Gurusamy N, Ahsan MK, Juhasz B, Bak I, Tosaki A, Gherghiceanu M, Popescu LM, Das DK. Co-ordinated
autophagy with resveratrol and gamma-tocotrienol confers synergetic cardioprotection. J Cell Mol Med. 2010 Oct;14(10):2506-18.
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この研究ではブドウ由来のレスベラトロール、パーム油由来の γ-トコトリエノールの 2 種の食事性フィトケミカルを単独または併用投与し、虚血・再灌流時の心
臓保護における自食作用の効果を比較した。
体重 250~300 g の SD 系ラットを以下の実験群に無作為割り付けした:賦活剤群、虚血・再灌流(I/R)群、レスベラトロール+I/R 群、γ-トコトリエノー
ル+I/R 群、レスベラトロール+γ-トコトリエノール+I/R 群。
レスベラトロールの投与は強制栄養により 2.5 mg/kg を 15 日間投与、γ-トコトリエノールの投与は強制栄養により 0.3 mg/kg を 30 日間投与、レスベラトロ
ール+γ-トコトリエノール併用投与は強制栄養により γ-トコトリエノールを 15 日間投与後に続けてレスベラトロールおよび γ-トコトリエノールをさらに 15 日間投
与した。30 日後に心臓を単離・灌流し、30 分間完全に虚血させた後に 2 時間再灌流を行った。
今回の結果により初めて、レスベラトロールおよび γ-トコトリエノールの自食作用を促進する機能によって少なくとも部分的な心臓保護(心室機能、心筋梗
塞サイズ、および心筋細胞アポトーシスにより示される)が行われることが示された。
最も重要な発見として、レスベラトロールおよび γ-トコトリエノールは相乗的に働いて心臓保護の程度を高めると同時に、Akt-Bcl-2 サバイバル経路の活性化
によるサバイバルシグナルを大量に生み出した。
自食作用の際には Beclin および LC3-II の活性化、ならびに mTOR シグナリングが惹起されるが、これらは 3-メチルアデニン(3-MA)またはワートマニンのい
ずれかによって阻害される。
自食作用は透過型電子顕微鏡、光学顕微鏡、および共焦点顕微鏡の結果によって確認された。
虚血・再灌流時には自食作用だけでなくサバイバルシグナルの増強が起こり、損傷からの細胞の回復が促進されるという考察は魅力的である。
16
Keywords: レスベラトロール、γ-トコトリエノール、虚血・再灌流、自食作用、サバイバルシグナル
Muharis SP, Top AG, Murugan D, Mustafa MR. Palm oil tocotrienol fractions restore endothelium dependent relaxation in aortic rings of
streptozotocin-induced diabetic and spontaneously hypertensive rats. Nutr Res. 2010 Mar;30(3):209-16.
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糖尿病と高血圧は障害された内皮機能と密接に関連していることが明らかにされている。習慣的な食用パーム油の摂取には内皮機能障害の進行を逆転す
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る可能性のあることが、これまでの研究から実証されている。
本研究では、パーム油中の各フラクション、すなわちトコトリエノール高含有フラクション(TRF)、α-トコフェロール、精製パームオレイン(ビタミン E 非含有フラク
ション)がストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットと高血圧自然発症ラット(SHR)の大動脈環における血管弛緩応答に及ぼす影響について検討を行った。
TRF と α-トコフェロールのフラクションが糖尿病、高血圧ラット両方の大動脈組織における内皮機能を改善するという仮説を立てた。
抗酸化活性を評価するためにパーム油の各種フラクションについて 1,1-diphenyl picryl hydrazyl assay を行った。
それぞれのフラクションについて前処理を行った後、ストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットと SHR の大動脈における内皮依存性血管弛緩(アセチルコリン)と
内皮非依存性血管弛緩(ナトリウムニトロプルシド)の調査を行った。
1-diphenyl picryl hydrazyl antioxidant assay により、TRF と α-トコフェロールのフラクションは同程度の活性を示す一方、ビタミン E 非含有フラクションであ
るパームオレインの活性は乏しいことが明らかになった。
TRF と α-トコフェロールは糖尿病 ラット、SHR 両方の大動脈におけるアセチルコリン誘発性弛緩を有意に改善した一方(それぞれ、 TRF: 88.5±4.5%,
72.1±7.9%; α-トコフェロール: 87.4±3.4%, 69.8±4.0%; 賦形剤: 65.0±1.6%, 51.1±4.7%)、パームオレインではそのような作用は観察されなかった。
TRF と α-トコフェロールのフラクションは強力な抗酸化活性を有することがこれらの結果から示唆され、パーム油由来ビタミン E の心血管保護作用がさらに裏付
けられた。
TRF と α-トコフェロールには、内皮由来一酸化窒素のバイオアベイラビリティに及ぼすそれらの節約効果によって糖尿病と高血圧における血管内皮機能を改善
させる可能性がある。
Keywords: 糖尿病、高血圧、血管内皮機能、TRF、α-トコフェロール、アセチルコリン誘発性弛緩
2008
Rasool AH, Rahman AR, Yuen KH, Wong AR. Arterial compliance and vitamin E blood levels with a self emulsifying preparation of
tocotrienol rich vitamin E. Arch Pharm Res. 2008 Sep;31(9):1212-7.
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ビタミン E のトコトリエノールには強力な抗酸化特性が認められるが、脂質溶解度が高いために吸収性は低いとされている。トコトリエノール高含有ビタミン E の
自己乳化型製剤(SF-TRE)は、その生体内利用能を増加させることが報告されている。
今回の無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験は、1 日 50、100、200 mg の SF-TRE あるいはプラセボの 2 ヵ月間の補給が動脈の伸縮性(コンプライア
ンス)と血中ビタミン E 濃度に及ぼす影響を評価することを目的とした。
36 人の健常男性を対象とし、2 ヵ月の補給期間前後に、頸動脈-大腿動脈脈波伝播速度(PWV)と Augmentation Index(AI)による動脈コンプライ
アンスの評価、血漿ビタミン E 濃度、血清総コレステロール値、LDL コレステロール値の測定を行った。
補給前に低かったトコトリエノール濃度は、補給後すべての SF-TRE 群でプラセボ群と比較して有意な血漿 α-、δ-、γ-トコトリエノール濃度の上昇が認められ
た。
ベースライン時から補給期間終了時までの AI の変化は、プラセボ群、50、100、200 mg 補給群でそれぞれ、2.22±1.54、-6.59±2.84、-8.72±3.77、
-6.27±2.67 であった(それぞれ、p=0.049、0.049、0.047)。
100、200 mg 群で補給後の PWV がそれぞれ 0.77、0.65 m/s 低下し、有意に改善した(p=0.007、0.002)。血清脂質に及ぼす SF-TRE の影響は認め
られなかった。
2 ヵ月間の SF-TRE 補給により動脈コンプライアンスの改善傾向が認められた。
Keywords: 自己乳化型製剤、脈波伝播速度、Augmentation Index、動脈コンプライアンス
van Rooyen J, Esterhuyse AJ, Engelbrecht AM, du Toit EF. Health benefits of a natural carotenoid rich oil: a proposed mechanism of
protection against ischaemia/ reperfusion injury. Asia Pac J Clin Nutr. 2008;17 Suppl 1:316-9.
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カロテノイド補給が皮膚や眼に関連した疾患から防御する特性を報告した研究が多数存在する。しかしながら、癌や心血管疾患の発現機序に及ぼす β-カロ
テンの影響に関するデータには矛盾が存在する。β-カロテンは、単独あるいは他の抗酸化物質との組合せで、効果的な抗酸化剤となることが明らかにされてい
る。
レッドパームオイル(RPO)は強力な抗酸化剤を豊富に含む油で、スクワレン、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸(これらの脂肪酸は抗酸化物質の吸収を最大
化する働きがあるとされる)、補酵素 Q10 のような脂質画分の他に、カロテノイド類、トコフェロール類、トコトリエノール類から構成されている。
α-、β-カロテンが RPO に含まれる総カロテン類の 90%以上を占めている。虚血・再灌流を誘導する傷害は、心臓に酸化ストレスを引き起す酸素供給のアンバ
ランスが原因であることが知られている。マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MARKs)、PKB/Akt、NO-cGMP のすべてが心臓内の虚血・再灌流傷害に
おいて重要な役割を果たしていることが明らかにされている。
それ故、本総説では主として、天然カロテノイドオイルが誘導する虚血・再灌流傷害後機能回復に関与するシグナル伝達回路に焦点を合わせて述べたい。
Keywords: レッドパームオイル、虚血・再灌流傷害後機能回復
Das S, Lekli I, Das M, Szabo G, Varadi J, Juhasz B, Bak I, Nesaretnam K, Tosaki A, Powell SR, Das DK. Cardioprotection with palm oil
tocotrienols: comparison of different isomers. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2008 Feb;294(2):H970-8.
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赤色のパーム油から得たトコトリエノールを豊富に含有するフラクション(TRF)に心臓を保護する能力があることを、われわれの実験室で行った最近の研究が
示している。
本研究では種々のトコトリエノール異性体と TRF の心臓保護能力について比較を行った。ラットを 5 群のうちのいずれかに無作為に割り当てた。ラットに 3.5%の
TRF あるいはトコトリエノール異性体(α-、γ-、δ-)のいずれかを強制栄養で与える一方、対照ラットには賦形剤のみを(強制栄養で)与えた。4 週間後ラ
ットを犠牲にし、次にそのラットの心臓に 30 分間全体的な虚血負荷を行い、その後 2 時間の再潅流を行った。
用量応答と時間応答に関する検討から、投与 4 週間後、TRF については 3.5%の TRF、トコトリエノール異性体については 0.3 mg/体重 kg が最適濃度であ
ることが明らかになった。試験に用いた TRF とトコトリエノール異性体全種が心臓保護作用を及ぼした。このことは、虚血後心室機能と電気的リズム障害を改
善する能力、心筋梗塞サイズを減少させる能力から証明された。
γ-イソ型のトコトリエノールが全異性体中で最も心臓保護効果が高く、続いて α-、δ-トコトリエノールとなった。トコトリエノールによってもたらされる心臓保護の
分子メカニズムは、死亡促進シグナルと生存促進シグナル間のバランスを維持するプロテアソームを安定化させるトコトリエノール個々の異性体の能力を評価し
た結果証明された。
本研究の結果から、トコトリエノールは c-Src を減衰させるが Akt のリン酸化を増大させ、それにより生存シグナルが発生することが実証された。
17
Keywords: TRF、虚血後心室機能、電気的リズム障害、心筋梗塞サイズ、生存シグナル
2007
Singh U, Devaraj S. Vitamin E: inflammation and atherosclerosis. Vitam Horm. 2007;76:519-49.
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心血管疾患(CVD)は西洋諸国における罹患と死亡の主要原因である。また、その発生率は最近、開発途上国でも上昇し続けている。炎症がアテローム
発生に果たす役割を数件の証拠が裏付けている。それ故、抗炎症特性を有する食事性の微量栄養素には、CVD に関して有益となる作用を及ぼす可能性
がある。
ビタミン E は抗炎症特性のある強力な抗酸化剤の一つである。ビタミン E は 8 種類の異なるイソ型から構成される。それらは、4 種類のトコフェロール(T)(α、
β、γ、δ)と 4 種類のトコトリエノール(T3)(α、β、γ、δ)である。
α-T の予防効果に関するデータが豊富に存在する。ヒト、動物モデルへの α-T 補給で、C 反応性タンパク質(CRP)の減少、及びとりわけ高用量での炎症性
サイトカイン(ケモカイン IL-8、PAI-1)放出の観点から、抗酸化、抗炎症作用が明らかにされている。
γ-T は活性窒素種の減少に有効とされる他、抗炎症特性も有すると考えられているが、純粋な γ-T 製剤を調査したデータは乏しい。
さらに、トコトリエノール(α、γ)も CVD 予防に影響を及ぼすとされているが、それらの有効性に関する文献上のデータは矛盾を示し、また不充分である。ここで
は、特に α-T について最近発表されたデータを集め、また、γ-T とトコトリエノールの複合的な見解を、とりわけ CVD と関係する炎症に及ぼすそれらの影響から
述べたい。
Keywords: 活性窒素種、抗炎症特性、α-、γ-トコフェロール、トコトリエノール
Das S, Nesaretnam K, Das DK. Tocotrienols in cardioprotection. Vitam Horm. 2007;76:419-33.
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ビタミン E の立体異性体のもう一つのグループであるトコトリエノールは、コレステロール値を低下させる能力を含む多くの健康上の利益を提供し、また、抗癌活
性や腫瘍抑制活性をもたらすことが知られている。
トコフェロールの研究に比べればその数は 1%にしかすぎないが、最近発表された数件の研究はトコトリエノールの心臓保護能力について評価を行っている。急
性潅流実験と慢性モデルの両方で、トコトリエノールは心筋虚血-再灌流損傷と動脈硬化を減弱させ、また、心室性不整脈を減少させること明らかにされて
いる。
トコトリエノールの抗酸化的役割とは別に、トコトリエノールによる心臓保護もまた、考案されたなかで依然優れた方法とされるプレコンディショニング様作用によ
って成し遂げられる。
従って、トコトリエノールは薬理学的にプレコンディショニング効果のある物質としての定義を満たし、トコトリエノールを心血管系における重要な治療オプションと
する大きな機会をもたらしている。
Keywords: 心筋虚血-再灌流損傷、動脈硬化、心室性不整脈、プレコンディショニング効果
2005
Das S, Powell SR, Wang P, Divald A, Nesaretnam K, Tosaki A, Cordis GA, Maulik N, Das DK. Cardioprotection with palm tocotrienol:
antioxidant activity of tocotrienol is linked with its ability to stabilize proteasomes. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2005 Jul;289(1):H361-7.
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ビタミン E の異性体であるトコトリエノールには、健康上の利点が多数存在することが明らかにされている。本研究では、トコトリエノールに直接的な心臓保護的
役割があるか評価を行った。
パーム油のトコトリエノール高含有(0.035%)フラクション(TRF)に由来するトコトリエノールの存在下あるいは非存在下で、摘出ラット心臓をクレブス・リンゲ
ル 重 炭 酸 塩 緩 衝 液 に 15 分 間 潅 流 さ せ た 。 他 の 試 験 群 で は 、 摘 出 心 臓 を c-Src 阻 害 剤 の 一 つ で あ る
4-amino-5-(4-methylphenyl)-7-(t-butyl)-pyrazolo-3,4-d-pyrimidine(PPI)の存在下で前潅流を 15 分間行った。次に心臓に全虚血を 30 分間施
し、続いて再潅流を 2 時間行った。
予想通り、虚血・再潅流は心室機能不全、電気的調律障害、心筋梗塞サイズ増加を引き起した。PPI あるいは TRF は虚血・再潅流が介する心機能不全
を逆転させた。虚血・再潅流はまた、c-Src 発現とリン酸化をアップレギュレートした。
TRF は c-Src 発現にわずかな影響しか及ぼさなかったが、c-Src のリン酸化を顕著に抑制した。虚血・再潅流は 20S と 26S プロテアソーム活性を低下させた(こ
れは TRF の前処置によって阻止される作用の一つである)。PPI は、プロテアソームよりはむしろ、c-Src の直接的な抑制によって心臓保護作用を及ぼした。
本研究から得られた結果は、虚血後の心筋傷害と心機能不全に果たす c-Src の役割を裏付け、TRF の直接的な心臓保護作用を示している。TRF の心臓
保護特性は、c-Src 活性阻害とプロテアソーム安定化によるものと思われる。
Keywords: TRF、PPI、虚血・再潅流、c-Src 発現、リン酸化、心臓保護特性
1997
Kooyenga DK, Geller M, Watkins TR, Gapor A, Diakouomakis E, Bierenbaum ML. Palm oil antioxidant effects in patients with
hyperlipidaemia and carotid stenosis-2 year experience. Asia Pacific J Clin Nutr. 1997;6:72-5.
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頸動脈狭窄症患者におけるパーム油の γ-トコトリエノールと α-トコフェロールの高含有フラクションの抗酸化特性を調査した。
脳血管性疾患のある 50 名の患者において、血清脂質、脂肪酸過酸化物、血小板凝集、頸動脈狭窄を 24 ヵ月間測定した。狭窄の変化は、両側性
duplex 超音波検査法を用いて測定した。
抗酸化物質を与えた 25 名の患者のうち、8 名に頸動脈狭窄の明らかな退行、2 名に進行がみられたのに対し、対照群の 25 名で退行を示した患者はおら
ず、10 名に進行がみられたことが明らかになった(p<0.01)。
この試験を通して血清 α-トコフェロールは倍加したが、トコトリエノールは検出できなかった。24 ヵ月後、処置群の血清チオバルビツル酸反応物は 1.08±0.14 か
ら 0.80±0.14 mM に減少し(p<0.05)、プラセボ群では 0.99±0.16 から 1.06±0.17 mM に増加した(有意差なし)。
抗酸化物質投与群とプラセボ投与群の両方とも、初期値と比較してコラーゲン誘導血小板凝集反応が有意に増加した(p<0.05)。血清総コレステロー
ル、LDL コレステロール、トリグリセリドの値は、両群とも血漿 HDL コレステロール値同様不変であった。
パーム油トコトリエノールとトコフェロールは、頸動脈狭窄の経過に有益であると考えられる。
Keywords: 頸動脈狭窄症、パーム油トコトリエノール、トコフェロール、チオバルビツル酸反応物
1995
18
Tomeo AC, Geller M, Watkins TR, Gapor A, Bierenbaum ML. Antioxidant effects of tocotrienols in patients with hyperlipidemia and carotid
stenosis. Lipids. 1995;30:1179-83.
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頸動脈狭窄症患者における palmvitee(γ-トコトリエノール・α-トコフェロール高含有パーム油フラクション)の抗酸化特性を調査した。
脳血管性疾患患者 50 名における血清脂質、脂肪酸過酸化物、血小板凝集、頸動脈狭窄を 18 ヵ月以上測定した。狭窄の変化は、duplex 超音波検
査法を用いて測定した。6 ヵ月、12 ヵ月、その後は 1 年毎に超音波スキャンを実施した。
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両側性 duplex 超音波検査で、トコトリエノールを与えた 25 名の患者のうち、7 名に明らかな頸動脈狭窄の退行が、2 名に進行が認められた。一方、対照
群 25 名では退行は認められず、10 名に進行が認められた(p<0.002)。
最大血小板過酸化の ex vivo での指標である血清チオバルビツル酸反応物は、12 ヵ月後トコトリエノール投与群で 1.08±0.70 から 0.80±0.55 μM/L に減
少し(p<0.05)、プラセボ投与群で 0.99±0.80 から 1.26±0.54 μM/L に増加した(有意差なし)。
トコトリエノール投与群、プラセボ投与群ともに、初期値と比較して弱いコラーゲン誘導血小板凝集反応を有意に示した(p<0.05)。血清総コレステロール、
LDL コレステロール、トリグリセリドの値は、血漿 HDL コレステロール値同様、両群とも不変のままであった。
これらの所見から、トコトリエノールのような抗酸化物質が頸動脈狭窄の経過に影響を及ぼす可能性のあることが示唆される。
Keywords: 頸動脈狭窄症、γ-トコトリエノール・α-トコフェロール高含有パーム油フラクション
体脂肪調節
Body Fat Regulation
2009
Uto-Kondo H, Ohmori R, Kiyose C, Kishimoto Y, Saito H, Igarashi O, Kondo K. Tocotrienol suppresses adipocyte differentiation and Akt
phosphorylation in 3T3-L1 preadipocytes. J Nutr. 2009 Jan;139(1):51-7.
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α-トコトリエノールと γ-トコトリエノールが脂肪組織に蓄積していることが in vivo の研究から明らかにされている。また最近の研究から、パーム油に由来するトコト
リエノール高含有フラクション(TRF)の γ-トコトリエノールの経口投与によりラットの体脂肪レベルが低下することが報告されている。
1.8 μmol/L のインスリン存在下で脂肪細胞に分化した 3T3-L1 脂肪前駆細胞における脂肪細胞分化に TRF とその構成成分が及ぼす影響を評価すること
が本研究の目的である。
インスリン存在下における 3T3-L1 脂肪前駆細胞の脂肪細胞への分化と比較して、TRF は PPARγ、脂肪細胞脂肪酸結合タンパク質(aP2)、CCAAT/エン
ハンサー結合タンパク質 α(C/EBPα)のような脂肪細胞特異的遺伝子のインスリン誘発性 mRNA 発現を抑制した。
TRF の抑制効果を確認するために、α-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロールのような TRF の主要構成成分を調査した。
α-トコトリエノールと γ-トコトリエノールは、インスリンと比較してインスリン誘発性の PPARγ mRNA 発現をそれぞれ 55%、90%減少させた一方、α-トコフェロー
ルは mRNA 発現を増加させた。さらに γ-トコトリエノールは、インスリンと比較してインスリン誘発性の aP2、C/EBPα mRNA 発現、トリグリセリド蓄積、PPARγ
のタンパク質レベルを抑制した。
本研究から得られた結果から、γ-トコトリエノールは、3T3-L1 脂肪前駆細胞のインスリンシグナル伝達経路においてインスリン刺激による Akt のリン酸化を阻害
したが、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)1/2 は阻害しなかったことも明らかになった。
以上のことから、TRF の抗脂肪生成作用は α-トコトリエノールと γ-トコトリエノールに依存し、γ-トコトリエノールのほうが α-トコトリエノールより強力に脂肪生成を
阻害している可能性がある。
本研究の結果から、トコトリエノールは 3T3-L1 脂肪前駆細胞におけるインスリン誘発性分化と Akt リン酸化を抑制していることが示唆される。またトコトリエノー
ルは、栄養素が関与する体脂肪調節において、分化に及ぼすそのような作用により一種の抗脂肪生成ビタミンとして働いている可能性がある。
Keywords: 3T3-L1 脂肪前駆細胞、インスリン誘発性分化、Akt リン酸化、抗脂肪生成作用
糖尿病・糖尿病性合併症
Diabetes Mellitus and Diabetic Complications
2009
Chou TW, Ma CY, Cheng HH, Chen YY, Lai MH. A rice bran oil diet improves lipid abnormalities and suppress hyperinsulinemic responses in
rats with streptozotocin/nicotinamide-induced type 2 diabetes. J Clin Biochem Nutr. 2009 Jul;45(1):29-36.
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本研究の目的は、ストレプトゾトシン・ニコチン酸アミド誘発 2 型糖尿病(T2DM)のラットを対象にコメヌカ油(RBO)が脂質代謝とインスリン耐性に及ぼす
影響を評価することにある。
ラットを対照群(大豆油 15%、油 150 g 中 γ-オリザノール 0 g と γ-トコトリエノール 0 g 含有、5 週間)と RBO 群(RBO 15%、油 150 g 中 γ-オリザノー
ル 5.25 g と γ-トコトリエノール 0.9 g 含有、5 週間)の 2 群に分けた。
RBO 群は対照群と比較して、血漿非エステル化脂肪酸値、高密度リポタンパク質コレステロールに対する総コレステロールの比、肝コレステロール濃度、インス
リン濃度曲線下面積が低かった。RBO 群は対照群と比べて高密度リポタンパク質コレステロール濃度が高く、また糞中中性ステロールと胆汁酸の排泄量が多
かった。
RBO には、ストレプトゾトシン・ニコチン酸アミド誘発 T2DM ラットにおける脂質異常の改善、粥腫形成性指数の減少、高インスリン反応の抑制をもたらす可能
性がある。さらに、RBO は糞中中性ステロールと胆汁酸の排泄量を増加させることが明らかになった。
Keywords: ストレプトゾトシン・ニコチン酸アミド誘発 2 型糖尿病、コメヌカ油、γ-オリザノール、γ-トコトリエノール
Kuhad A, Chopra K. Tocotrienol attenuates oxidative-nitrosative stress and inflammatory cascade in experimental model of diabetic
neuropathy. Neuropharmacology. 2009 Sep;57(4):456-62.
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糖尿病による重大な微小血管合併症である糖尿病性神経因性疼痛は、治療が最も困難なタイプの疼痛の一つであることが知られている。従来の抗侵害
受容性薬物の耐性発現、不充分な鎮痛、潜在的毒性から、この疼痛を緩和する新たな作用物質の調査が必要とされている。活性酸 素・窒素種、サイトカ
イン、アポトーシスが糖尿病性神経障害の発生機序に関与していると考えられている。
トコトリエノールがストレプトゾトシンで誘発した実験的糖尿病における熱的・機械的痛覚過敏、異痛症、酸化・ニトロソ化ストレス、炎症、アポトーシスに及ぼ
す影響を調査することが本研究の目的である。
糖尿病ラットは、ニトロソ化ストレス、炎症メディエータ(TNF-α、IL-1β、TGF-β1)とカスパーゼ-3 の放出の増大と関連した顕著な痛覚過敏と異痛症を認め
る神経障害を発症した。
ストレプトゾトシンを注射した 4 週目から 4 週間にわたる常習的なトコトリエノール処置(25、50、100 mg/体重 kg、経口)の結果、糖尿病性神経障害と
関連した行動上の変化、生化学的変化、分子レベルでの変化が顕著に減衰した。さらに、インスリンとトコトリエノールの併用で処置した糖尿病ラットでは、そ
れ自体で処置したラットより有益な作用が顕著に現れた。
本研究から得られた主要な所見から、インスリン単独での処置は糖尿病ラットの高血糖症を矯正し、疼痛応答を部分的に改善することが明らかになった。
しかしながら、トコトリエノールとの併用は糖尿病状態を減衰させただけでなく、酸化・ニトロソ化ストレス、炎症性サイトカイン放出、カスパーゼ-3 の変調により
糖尿病ラットの神経因性疼痛も改善した。従って、トコトリエノールとの併用には糖尿病患者の神経因性疼痛治療における臨床的応用の可能性があると考
えられる。
Keywords: 糖尿病性神経因性疼痛、酸化・ニトロソ化ストレス、炎症性サイトカイン、カスパーゼ-3
Budin SB, Othman F, Louis SR, Bakar MA, Das S, Mohamed J. The effects of palm oil tocotrienol-rich fraction supplementation on
biochemical parameters, oxidative stress and the vascular wall of streptozotocin-induced diabetic rats. Clinics (Sao Paulo). 2009
Jun;64(3):235-44.
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パーム油由来のトコトリエノール高含有フラクションがストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットに及ぼす影響を本研究で検討した。
ラットを (i) 正常(非糖尿病)群(NDM)、(ii) 糖尿病治療群(トコトリエノール高含有フラクション: TRF)、(iii) 糖尿病未治療群(non-TRF)の三
群に割り当てた。
糖尿病治療群のラットに TRF(200 mg/体重 kg)を毎日 8 週間にわたり経口投与した。正常(非糖尿病)群と糖尿病未治療群のラットには標準飼料
を摂取させた。ラット胸部大動脈の血中グルコース濃度、脂質プロファイル、酸化ストレスマーカー、形態学的変化について評価を行った。
TRF による治療は、血清グルコースと糖化ヘモグロビンの濃度を低下させた。TRF 群ではまた、未治療群と比較して血漿総コレステロール、低密度リポタンパク
質コレステロール、トリグリセリドの濃度が有意に低いことも明らかになった。
TRF 群では、未治療群と比較して、高密度リポタンパク質コレステロール濃度が高いことが明らかになった。血漿中のスーパーオキシドジスムターゼ活性とビタミン
C 濃度が TRF 群で上昇を示した。
血漿中、大動脈中のマロンジアルデヒドと 4-ヒドロキシノネナール(MDA + 4-HNE)の濃度と酸化的 DNA 損傷の変化は、TRF 投与後に顕著となった。
電子顕微鏡検査により、胸部大動脈の正常な形態が STZ 誘発糖尿病ラットで崩壊していることが明らかになった。TRF 補給は血管壁に保護作用をもたらす
ことが明らかになった。
これらの結果から、TRF は血中グルコース濃度を低下させ、異常脂肪血症を改善することが明らかになった。酸化ストレスマーカーのレベルは、TRF の投与によっ
て低下した。また、血管壁の保全は TRF が介する正の効果によって維持されると結論付けられる。
Keywords: TRF、異常脂肪血症、酸化ストレス、血管壁の保全
Kuhad A, Bishnoi M, Tiwari V, Chopra K. Suppression of NF-kappabeta signaling pathway by tocotrienol can prevent diabetes associated
cognitive deficits. Pharmacol Biochem Behav. 2009 Apr;92(2):251-9.
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認知機能低下と関連する糖尿病の病因は多因子性で、インスリン受容体のダウンレギュレーション、神経細胞死アポトーシス、グルタミン酸神経伝達を伴う。
ストレプトゾトシン誘発糖尿病でトコトリエノールが認知機能と神経の炎症カスケードに及ぼす影響を評価するための試験を計画した。
ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットをトコトリエノールで 10 週間処置した。記憶の行動評価に Morris の水迷路を用いた。アセチルコリンエステラーゼ活性、酸
化・ニトロソ化ストレス、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン 1β(IL1β)、NFκβ、カスパーゼ-3 の定量化のために、大脳皮質と海馬の細胞質・核
フラクションを調製した。
ストレプトゾトシンを注射した 10 週間後、糖尿病ラット脳の異なる領域でアセチルコリンエステラーゼ活性上昇、及び酸化・ニトロソ化ストレス、TNF-α、IL1β、
カスパーゼ-3 活性、NFκβ の活性 p65 サブユニットの増加を伴う転送遅延の顕著な増大が生じた。
興味深いことに、トコトリエノールとの共投与は、糖尿病と関連する行動上の変化、生化学的変化、分子レベルでの変化を用量依存的に著しく防止した。
さらに、インスリンにトコトリエノールを組み合わせて処置した糖尿病ラットは、それ自体を投与した群のラットと比較して、分子パラメータに顕著な影響を及ぼし
た。
得られたデータを総合すると、NFκβ シグナル伝達経路の活性化は認知機能障害を誘発する糖尿病と関連していることが明らかとなり、トコトリエノールによる
糖尿性脳症の治療可能性に向けられている。
Keywords: ストレプトゾトシン誘発糖尿病、NFκβ シグナル伝達経路、糖尿病性脳症
Kuhad A, Chopra K. Attenuation of diabetic nephropathy by tocotrienol: Involvement of NFkB signaling pathway. Life Sci. 2009 Feb
27;84(9-10):296-301.
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糖尿病性腎症は、糖尿病を認める患者における重篤な合併症とされている。1 型糖尿病患者の約 30~40%と 2 型糖尿病患者の約 15%に末期腎疾患が
発症している。
本研究は、トコトリエノールがストレプトゾトシン誘発糖尿病における腎臓の機能と炎症カスケードに及ぼす影響を評価するために設計した。
ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットをトコトリエノール(25、50、100 mg/kg)、α-トコフェロール(100 mg/kg)、あるいは賦形剤で 5 週間から 8
週間まで処置した。
8 週間後に尿中アルブミン排泄量、総排泄尿、血清クレアチニン濃度、血中尿素窒素、クレアチニンクリアランス、尿素クリアランスを測定した。酸化・ニトロソ
化ストレス(脂質過酸化、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、非タンパク質チオール、総一酸化窒素)、腫瘍壊死因子 -α(TNF-α)、組織増殖因
子-β1(TGF-β1)、NFκβ とカスパーゼ-3 のサブユニット p65 を定量化するために腎臓の細胞質・核フラクションを調製した。
STZ を注射した 8 週間後、糖尿病ラット腎における腎機能、酸化・ニトロソ化ストレス増加、TNF-α、TGF-β1、細胞質溶解物中のカスパーゼ-3 活性、核溶
解物中の NFκβ の活性 p65 サブユニットに顕著な変化が認められた。
興味深いことに、トコトリエノールの併用投与は、疾患と関連のある生化学的変化と分子レベルでの変化を抑制することが明らかになった。
トコトリエノール(100 mg/kg)は α-トコフェロール(100 mg/kg)よりも有効であることが実証された。さらに、インスリンとトコトリエノールで併用処置した糖尿
病ラットは、個々の成分を単独投与した群と比べて、分子パラメータにより顕著な影響を及ぼすことが明らかになった。
まとめると、トコトリエノールは前繊維化サイトカインの放出、酸化ストレス、慢性進行性炎症、アポトーシスを調節することによって顕著な腎保護作用を及ぼす
ことが、得られたデータから明らかになった。
Keywords: ストレプトゾトシン誘発糖尿病、糖尿病ラット腎、トコトリエノール、インスリン
2005
Baliarsingh S, Beg ZH, Ahmad J. The therapeutic impacts of tocotrienols in type 2 diabetic patients with hyperlipidemia. Atherosclerosis.
2005 Oct;182(2):367-74.
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2 型糖尿病患者におけるアテローム性動脈硬化は一般集団よりも進行が速く、うち 80%の患者は何らかのアテローム性動脈硬化事象が原因で死亡する。こ
れらの患者では、高血糖症自体が心血管疾患(CVD)リスクを増大させるため、境界域高リスクの LDL コレステロール値の場合でさえ、より積極的な LDL
降下療法が必要であることが示唆されている。
2 型糖尿病患者の脂質代謝異常の治療に現在用いられている脂質降下剤のほとんどに多くの副作用がある。対照的に食事性のトコトリエノールは、その強
力な抗酸化活性に加え、効果的な脂質降下特性を有するビタミン E である。
本研究では、2 型糖尿病患者における血清脂質レベルとリポタンパク質脂質レベルにトコトリエノールが及ぼす治療上の影響を調査した。
糖尿病ラットにおける血糖値と糖化ヘモグロビン A1c(HbA1c)上昇に及ぼすトコトリエノール高含有フラクション(TRF)による既知の低下作用に基づいて、
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これらのパラメータに及ぼす TRF の影響についても調査した。
高脂血症を伴う 19 人の 2 型糖尿病患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験を計画した。TRF 処置 60 日後、参加者の血清脂質濃度、
総コレステロール値、LDL コレステロール値は、平均でそれぞれ 23%、30%、42%低下したことが明らかになった。
2 型糖尿病患者に対する目標は、LDL コレステロール値を 100 mg/dl 以下に下げることである。本研究でトコトリエノールは、LDL コレステロール値を平均で
179 から 104 mg/dl まで減少させた。しかしながら、これらの患者の血糖値が安定しているうえ、血糖値と HbA1 が正常値に近かったため、TRF による血糖降
下作用は認められなかった。
2 型糖尿病患者が連日受けた食事性 TRF の摂取は、高脂血症とアテローム性動脈硬化症の発生の予防と治療に有用となり得ると結論付けられる。
Keywords: 2 型糖尿病、TRF、血糖値、HbA1c、LDL コレステロール、高脂血症、アテローム性動脈硬化症
2004
Montonen J, Knekt P, Järvinen R, Reunanen A. Dietary antioxidant intake and risk of type 2 diabetes. Diabetes Care. 2004 Feb;27(2):362-6.
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抗酸化物質の摂取と 2 型糖尿病予測能について調査を行った。
ベースライン時(1967~1972 年)に糖尿病を認めない 40 歳から 69 歳までの男性 2,285 人と女性 2,019 人からなるコホートを調査対象とした。前年の食
品摂取は食事歴に関するインタビューを用いて推定し、ビタミン C、4 種類のトコフェロール、4 種類のトコトリエノール、6 種類のカロテノイドの摂取量を計算し
た。
23 年間の追跡調査期間中に合計 164 例の男性、219 例の女性で発生例が認められた。
ビタミン E 摂取は 2 型糖尿病のリスク低下と有意な関連が認められた。摂取量の最高四分位数と最低四分位数の間における 2 型糖尿病の相対危険度
(RR)は 0.69 であった(95% CI: 0.51~0.94; p=0.003)。α-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、β-トコトリエノールの摂取は 2 型糖尿病リス
クと逆相関を示した。
単独のカロテノイドの中では、β-クリプトキサンチンの摂取が 2 型糖尿病のリスク低下と有意な関連を示した(RR: 0.58; 95% CI: 0.44~0.78; p<0.001)。ビ
タミン C 摂取と 2 型糖尿病リスクとの間には関連性が認められなかった。
2 型糖尿病の発生は食事に含まれる抗酸化物質の摂取によって低下する可能性があるとする仮説を本研究は裏付けている。
Keywords: 2 型糖尿病、トコフェロール、β-トコトリエノール、β-クリプトキサンチン
2002
Wan Nazaimoon WM, Khalid BA. Tocotrienols-rich diet decreases advanced glycosylation end-products in non-diabetic rats and improves
glycemic control in streptozotocin-induced diabetic rats. Malays J Pathol. 2002 Dec;24(2):77-82.
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糖 尿病 ラット(Sprague-Dawley 系 )の血 糖 、糖化 ヘモグロビン(GHb)、血 清中 の進 行性 グリコシル化 最終 産物 群 (AGE)、マロンジアルデヒド
(MDA)のレベルに食事性のパーム・ビタミン E(TRF)が及ぼす影響を評価した。
対照餌(ラット用通常餌)、TRF 添加飼料(通常餌に TRF を 1 g/kg 強化)、あるいはビタミン C 添加飼料(ビタミン E 欠乏、ビタミン C を 45 g/kg 含有)
のいずれかをラットに摂取させた。個々の飼料でラットを 4 週間飼育し、ストレプトゾトシン(STZ)により糖尿病を発症させ、さらに 8 週間経過観察を行った。
試験第 4 週、TRF 飼料給餌ラットの血清中の平均 AGE 濃度(0.7±0.3 unit/ml)は、対照餌あるいはビタミン C 飼料給餌ラットの平均濃度より有意に低
いことが明らかになった(p=0.03)。その濃度は STZ 誘発後に上昇を示し、他の群の濃度と同等になった。
第 12 週、TRF 給餌ラットの血糖値(20.9±6.9 mM)と GHb 値(10.0±1.6%)は、対照餌あるいはビタミン C 給餌ラットと比較して依然有意な低値を示
した(p=0.03)。しかしながら MDA は影響を受けず、試験期間を通して群間で同程度のままであった。
TRF は正常ラットで AGE 上昇を効果的に防止し、また糖尿病ラットで血糖値と GHb の低下を引き起したことから、有用な抗酸化剤となる可能性がある。TRF
の作用機構を解明するためにさらなる研究が必要とされる。
Keywords: 糖尿病ラット、パーム・ビタミン E、STZ、GHb、AGE、MDA
メタボリックシンドローム
Metabolic Syndrome
2014
Zhao L, Kang I, Fang X, Wang W, Lee MA, Hollins RR, Marshall MR, Chung S. Gamma-tocotrienol attenuates high-fat diet-induced obesity
and insulin resistance by inhibiting adipose inflammation and M1 macrophage recruitment. Int J Obes (Lond). 2014 Jul 21. doi:
10.1038/ijo.2014.124.
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われわれは以前、γ-トコトリエノール(γT3)がヒト脂肪由来幹細胞(hASCs)における脂肪細胞の過形成を強力に阻害することを実証した。本研究の目
的は、γT3 が早発性肥満、炎症およびインスリン抵抗性に及ぼす影響について in vivo で検討することにある。
若齢 C57BL/6J マウスに γT3 を 0.05%補充した高脂肪食(HF)を 4 週間摂取させた。血漿および脂肪組織における γT3 の濃度を高速液体クロマトグラフ
ィーを用いて測定した。
体重増加、脂肪量、空腹時血糖・インスリン(酵素結合免疫吸着測定法 (ELISA))および炎症性サイトカイン(マウスサイトカイン配列)の血漿レベル、
インスリンシグナル伝達(ウエスタンブロット法)、ならびに肝臓・脂肪組織中の遺伝子発現(定量的リアルタイム PCR:qPCR)に γT3 が及ぼす影響につい
て調べた。
γT3 が 3H‐2‐デオキシグルコース取り込みとリポ多糖類(LPS)媒介 NFκB シグナル伝達(ウエスタンブロット法)に及ぼす影響について hASCs で評価した。
γT3 が M1/M2 マクロファージ活性化に及ぼす影響についてマウス骨髄由来マクロファージの qPCR で調査した。
4 週間の処置後、γT3 は脂肪組織に蓄積し、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪および肝臓の HF 食誘導性重量増加を減少させることが明らかになった。HF 給
与マウスと比較して HF+γT3 給与マウスでは、(1) 空腹時血糖、インスリンおよび炎症性サイトカインの血漿レベル低下、(2) 耐糖性の改善、および(3) 脂肪
組織中のインスリンシグナル伝達の増強との関連が認められた。
マクロファージ特異マーカおよび単球走化性タンパク質 1 の実質減少が認められ、γT3 による脂肪組織マクロファージ(ATMs)動員減少が明らかになった。加
えて、ヒト脂肪細胞における γT3 処置は、(1) インスリン刺激によるグルコースの取り込みの活性化、および(2) MAP キナーゼと NFκB の活性化の顕著な抑制
を引き起こした。並行して、γT3 処置は LPS 媒介 M1 マクロファージ極性化の減少をもたらした。
われわれが得た結果から、γT3 が ATM 動員、全身および脂肪組織の炎症の阻害により、HF 食媒介肥満とインスリン抵抗性を改善するすることが実証され
た。
Keywords: γ-トコトリエノール、高脂肪食、早発性肥満、炎症、インスリン抵抗性
2011
Weng-Yew W, Brown L. Nutrapharmacology of Tocotrienols for Metabolic Syndrome. Curr Pharm Des. 2011;17(21):2206-14.
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メタボリックシンドロームは、心血管疾患と 2 型糖尿病の機会増加に関連した一連の健康上の危険因子として定義されている。これらの因子には、腹部肥
満、高血糖症、耐糖能障害、異脂肪血症、高血圧が含まれる。
メタボリックシンドロームの介入には、治療の第一目標として体重減少を亢進する身体活動の増加に加え、機能性食品を用いた健康的な食事のような生活
習慣の介入が含まれる。
ビタミン E ファミリーの構成メンバーであるトコトリエノールやトコフェロールのような栄養補助食品素材は、介入ターゲットとなる可能性が多い。
本レビューでは、ヒト、動物、in vitro での研究から得られた結果を用いて、トコトリエノールがメタボリックシンドロームの危険因子に及ぼす影響について評価を
行った。
トコトリエノールが及ぼした影響には、脂質プロファイルの改善、アテローム硬化性病変の縮小、血糖値と糖化ヘモグロビン濃度の低下、血圧の正常化、脂肪
細胞分化の抑制が挙げられる。
肥満、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化、虚血、炎症の予防におけるトコフェロールとトコトリエノールの間の反応差異には、異なる受容体あるいはシ
グナリング機構が関与している可能性がある。
Keywords: 脂質プロファイル、アテローム硬化性病変、血糖値、糖化ヘモグロビン、血圧、脂肪細胞分化
非アルコール性脂肪肝
Nonalcoholic Fatty Liver
2013
Magosso E, Ansari MA, Gopalan Y, Shuaib IL, Wong JW, Khan NA, Abu Bakar MR, Ng BH, Yuen KH. Tocotrienols for normalisation of hepatic
echogenic response in nonalcoholic fatty liver: a randomised placebo-controlled clinical trial. Nutr J. 2013 Dec 27;12(1):166. doi:
10.1186/1475-2891-12-166.
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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、最も一般的な肝疾患の一つである。肥満、インスリン抵抗性、脂質過酸化および酸化ストレスが、同疾患の
発症と進行に至る可能性のあるリスクとして特定されてきた。NAFLD 患者の栄養評価で、ビタミン E の摂取量が推奨量未満であることが明らかにされている。
ビタミン E は、4 種類のトコフェロールと 4 種類のトコトリエノールの 8 種類のアイソフォームからなるファミリーである。α-トコフェロールは肝疾患において広範に調査
されてきた一方、これまで NAFLD においてトコトリエノールを検討した臨床試験は存在しない。本研究の目的は、超音波で NAFLD が認められた高コレステロ
ール血症患者を対象に、肝エコー反応の標準化に及ぼす混合トコトリエノールの影響を評価することにある。
超音波で認められた NAFLD を伴う、未治療の高コレステロール血症の成人 87 人を登録し、対照群(n=44)およびトコトリノール群(n=43)に無作為に
割り付けた。混合トコトリエノール 200 mg を 1 日 2 回またはプラセボによる処置を 1 年間継続した。試験の主要目的である肝エコー反応の標準化をサンプル
サイズの計算に用いた。主要評価項目として得られたデータは、治療意図(intention-to-treat)の原理に従って評価した。副次評価項目については、per
protocol 解析を行った。30 人、34 人の参加者がそれぞれトコトリエノール群、プラセボ群で試験を終了した。
α-トコフェロールのレベルは、すべての被験者で正常範囲内であった。主要評価項目として、肝エコー反応の標準化はプラセボ群と比べトコトリエノール群で有
意に高いことが ITT 解析から明らかになった(p=0.039;95% CI=0.896~6.488)。副次評価項目として、per protocol 解析による評価から有意な寛解
率もまた明らかになった(p=0.014;95% CI=1.117~9.456)。NAFLD の程度悪化については、プラセボ群で 2 人の患者が記録されたが、トコトリエノール
群では1人も認められなかった。有害事象については、両群とも報告がなかった。
本研究は、パーム・トコトリエノール複合体が NAFLD を伴う高コレステロール血症の成人に肝保護効果をもたらすことを初めて明らかにした臨床試験であると
結論する。f
Keywords: 高コレステロール血症、α-トコフェロール、パーム・トコトリエノール、肝エコー反応、寛解率、肝保護効果
神経保護特性
Neuroprotective Property
2014
Taridi NM, Abd Rani N, Abd Latiff A, Wan Ngah WZ, Mazlan M. Tocotrienol Rich Fraction Reverses Age-Related Deficits in Spatial Learning
and Memory in Aged Rats. Lipids. 2014 Sep;49(9):855-69.
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ビタミン E が脳の機能に及ぼす影響についてはほとんど知られていない。そこで本研究では、トコトリノール高含有画分(TRF)が老齢ラットの行動上の機能障
害と酸化的ストレスに及ぼす影響について評価を行った。
雄性 Wistar ラット(若齢ラット:3 ヵ月齢;老齢ラット:21 ヵ月齢)36 匹をコントロール(オリーブ油)または TRF(200 mg/kg)のいずれかで 3 ヵ月間
処置した。
オープンフィールドテストと Morris 水迷路(MWM)を用いて行動学的研究を行った。DNA 損傷、血漿中のマロンジアルデヒド(MDA)およびビタミン E、な
らびに赤血球の抗酸化酵素の活性を評価するために採血を行った。脳組織もまた、ビタミン E レベルを測定するために採取した。
結果から、老齢ラットでは、若齢ラットと比較して探索行動の減少、不安の増大、および空間学習と記憶の低下が認められた。DNA 損傷と血漿 MDA の増
加、また、血漿・脳中ビタミン E のレベル低下が老齢ラットで認められた。
TRF を補給した老齢ラットは、同月齢のコントロールと比較して、不安の顕著なレベル低下、空間学習と記憶の改善、DNA 損傷の量と重症度の低下、MDA
のレベル低下、抗酸化酵素活性と血漿・脳中ビタミン E のレベル上昇を示した。
TRF 補給は老齢ラットにおける空間学習と記憶の低下を逆転させ、酸化ストレスを減少させると結論づける。
Keywords: 老齢ラット、空間学習、記憶、酸化ストレス
Gopalan Y, Shuaib IL, Magosso E, Ansari MA, Abu Bakar MR, Wong JW, Karim Khan NA, Liong WC, Sundram K, Ng BH, Karuthan C, Yuen KH.
Clinical Investigation of the Protective Effects of Palm Vitamin E Tocotrienols on Brain White Matter. Stroke. 2014 Apr 3. [Epub ahead of
print]
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トコトリエノール複合体には神経保護作用のあることがこれまでの細胞ベース及び動物での試験で明らかにされているが、その効果はヒトではまだ立証されてい
ない。
それ故、本研究では、白質病変(WML)を認めるヒトを対象にトコトリエノール複合体の防御活性を評価することを目的とした。WML は脳小血管疾患の
症状とみなされ、臨床試験の代用エンドポイントとして種々の程度の神経変性及び組織損傷を反映している可能性がある。
年齢が 35 歳以上で心血管系のリスクファクター及び MRI で確認された WML を有する合計 121 人の志願者が無作為化され、200 mg のトコトリエノール複
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合体又はプラセボの摂取を 1 日 2 回、2 年間受けた。
WML の容積は、検証済みソフトウェアを用いてベースライン時、試験開始後 1 年及び 2 年に撮影した MRI 画像から測定し、比較を行った。空腹時採血を
血液化学検査のために行った。
per-protocol(PPB)解析[志願者数 88 人]及び intention-to-treat(ITT)解析[同 121 人]から、プラセボ群の平均 WML 容積が 2 年後に増
大したのに対し、トコトリエノール補給群の平均 WML 容積は本質的に不変のままであることが明らかになった。
2 群間の平均 WML 容積の変化は、試験 1 年目終了時には有意差が認められなかったが(p=0.150)、2 年間目終了時に PPB、ITT の両解析で有意水
準に達した(それぞれ、p=0.019、0.018)。2 群間の血液化学パラメータについては、有意差は認められなかった。
トコトリエノール複合体は WML の進行を抑制することが明らかになった。
Keywords: 脳小血管疾患、MRI、白質病変容積
2013
Nagapan G, Yong Meng G, Shameha Abdul Razak I, Nesaretnam K, Ebrahimi M. The effects of prenatal and early postnatal tocotrienol-rich
fraction supplementation on cognitive function development in male offspring rats. BMC Neurosci. 2013 Jul 31;14:77. doi:
10.1186/1471-2202-14-77.
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最近の所見から、人生初期の重要な時期における特定栄養素の摂取が認知および行動の発達に深い影響を及ぼすことが示唆されている。ビタミン E は成長
過程にある脳を酸化ストレスから保護することができることから、ビタミン E のような抗酸化剤がこの過程において中心的役割を果たすと想定されている。現在ト
コトリエノールは、その強力な抗酸化特性と神経保護特性から、かなりの注目を集めている。それゆえ、出生前および出生後早期のトコトリエノール補給がそれ
を受けた個体の子孫における認知および行動の発達に及ぼす影響に注目せずにいられない。
そこで本研究は、トコトリエノール豊富画分(TRF)の補給が雄子ラットにおける認知機能の発達に及ぼす可能性のある出生前および出生後早期の影響に
ついて調査することを目的とした。
8 週齢の成熟雌性 Sprague Dawley(SD)系ラットを各群 2 匹の 5 群に無作為に割り付けた。コントロール(CTRL)として基礎飼料、基礎飼料に溶媒
を加えた飼料(VHCL)、基礎飼料にドコサヘキサエン酸(DHA)を加えた飼料、基礎飼料にトコトリエノール豊富画分を加えた飼料(TRF)、および基礎
飼料にドコサヘキサエン酸とトコトリエノール豊富画分の両方を加えた飼料(DTRF)のいずれかをラットに交尾前の 2 週間給与した。
雌ラット(F0 世代)は、妊娠期間と授乳期間を通じて各自の飼料で飼育した。これらの雌親から生まれた子ラット(F1 世代)は、それらの雌親とともに出
生時から生後 4 週まで飼育した。雄子ラットは、各群 10 匹ずつ 5 群に割り付けて出生後 8 週で離乳させ、それらの雌親と同じ飼料をさらに 8 週間給与した。
習熟実験および行動実験は、モリス水迷路を用いて、雄子ラットについてのみ行った。
8 週齢の成熟雌性 Sprague Dawley(SD)系ラットを各群 2 匹の 5 群に無作為に割り付けたコントロール(CTRL)として基礎飼料、基礎飼料に溶媒を
加えた飼料(VHCL)、基礎飼料にドコサヘキサエン酸(DHA)を加えた飼料、基礎飼料にトコトリエノール豊富画分を加えた飼料(TRF)、および基礎
飼料にドコサヘキサエン酸とトコトリエノール豊富画分の両方を加えた飼料(DTRF)のいずれかをラットに交尾前の 2 週間給与した。
雌ラット(F0 世代)は、妊娠期間と授乳期間を通じて各自の飼料で飼育した。これらの雌親から生まれた子ラット(F1 世代)は、それらの雌親とともに出
生時から生後 4 週まで飼育した。雄子ラットは、各群 10 匹ずつ 5 群に割り付けて出生後 8 週で離乳させ、それらの雌親と同じ飼料をさらに 8 週間給与した。
習熟実験および行動実験は、モリス水迷路を用いて、雄子ラットについてのみ行った。
出生前および出生後の TRF 補給により、雄子ラットの脳内および血漿中の α-トコトリエノール濃度が上昇することが結果から明らかになった(それぞれ、4~6
倍、0.8 倍の上昇)。モリス水迷路により、著しく良好な認知機能もこれらの雄子ラットで認められた。
これらの結果に基づいて、出生前および出生後の TRF 補給は雄子ラットにおける認知機能の発達向上をもらたすと結論する。
Keywords: トコトリエノール豊富画分、Sprague Dawley 系ラット、モリス水迷路、α-トコトリエノール濃度、認知機能
Mangialasche F, Westman E, Kivipelto M, Muehlboeck JS, Cecchetti R, Baglioni M, Tarducci R, Gobbi G, Floridi P, Soininen H, Kłoszewska I,
Tsolaki M, Vellas B, Spenger C, Lovestone S, Wahlund LO, Simmons A, Mecocci P; AddNeuroMed consortium. Classification and prediction of
clinical diagnosis of Alzheimer's disease based on MRI and plasma measures of α-/γ-tocotrienols and γ-tocopherol. J Intern Med. 2013
Jun;273(6):602-21. doi: 10.1111/joim.12037.
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本研究の目的は、アルツハイマー病(AD)患者および軽度認知障害(MCI)患者を認知的に問題のない対照(CTL)被験者と識別するために、構造
的磁気共鳴イメージング(MRI)の測定値とビタミン E(4 種類のトコフェロールと 4 種類のトコトリエノールの全 8 種類の天然ビタミン E 同族体)およびビタミ
ン E の酸化・ニトロソ化損傷マーカの血漿レベルを併用した場合の精度を評価することにある。
多施設縦断研究の AddNeuroMed から合計 81 人の AD 患者、86 人の MCI 患者および 86 人の CTL 被験者を登録した。ベースライン時に MRI および
血漿ビタミン E に関するデータを収集した。MRI の走査結果を FreeSurfer を用いて解析した。FreeSurfer は、局所容積と皮質厚の測定値を得るための自動
化された領域抽出方式である。AD および MCI の診断に関連した MRI とビタミン E の測定値を解析するために、多変量データ解析の技法の一つである OPLS
法を用いた。
MRI と血漿ビタミン E の測定値による合同評価により、AD・MCI 患者と CTL 被験者を識別する精度が向上した。すなわち、AD 対 CTL で 98.2%(感度
98.8%、特異度 97.7%)、MCI 対 CTL で 90.7%(感度 91.8%、特異度 89.5%)であった。また、この測定値の組み合わせにより、追跡 1 年後に MCI が
臨床的 AD に変化した患者の 85%を特定することができた。
自動 MRI 測度に血漿トコフェロール・トコトリエノール濃度を加えると、AD・MCI 患者と CTL 被験者の識別、および MCI から AD への移行の前向き予測に役
立つことが明らかになった。
今回得られた結果から、血漿中に検出される栄養バイオマーカ―トコフェロールとトコトリエノール―の AD 病理に関する間接的指標としての可能な役割、
および多様式(multimodality)アプローチの有用性が示唆された。
Keywords: アルツハイマー病、軽度認知障害、構造的磁気共鳴イメージング、栄養バイオマーカ
2012
Mangialasche F, Xu W, Kivipelto M, Costanzi E, Ercolani S, Pigliautile M, Cecchetti R, Baglioni M, Simmons A, Soininen H, Tsolaki M,
Kloszewska I, Vellas B, Lovestone S, Mecocci P; AddNeuroMed Consortium. Tocopherols and tocotrienols plasma levels are associated with
cognitive impairment. Neurobiol Aging. 2012 Oct;33(10):2282-90.
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ビタミン E には潜在的な神経保護活性を有する 8 種類の天然化合物(4 種類のトコフェロール、4 種類のトコトリエノール)が含まれている。認知機能に関し
てはこれまで主として α-トコフェロールが調査対象とされてきた。
血漿ビタミンン E の全ての形とビタミン E ダメージのマーカー(α-トコフェリルキノン、5-ニトロ-γ-トコフェロール)について、軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー
病(AD)の関係から検討を行った。
AddNeuroMed-Project 内の AD 症例 168 例、MCI 症例 166 例、認知機能正常(CN)例 187 例を対象に、血漿中のトコフェロール類、トコトリエノー
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ル類、α-トコフェリルキノン、5-ニトロ-γ-トコフェロールついて評価を行った。
認知機能正常例と比較して、AD と MCI の症例では総トコフェロール、総トコトリエノール、総ビタミン E の濃度の低いことが明らかになった。
多変量 polytomous ロジスティック回帰分析から、MCI と AD の症例が総トコフェロールと総ビタミン E の最高三分位に入るオッズは最低三分位と比較して共
に 85%低く、また、総トコトリエノールの最高三分位ではそれぞれ 92%と 94%低くなることが明らかになった。
さらに、両疾患ともビタミン E ダメージ上昇と関連性を示した。血漿中のトコフェロール濃度とトコトリエノール濃度の低値は MCI と AD のオッズ上昇と関連のある
ことが明らかになった。
Keywords: 軽度認知障害、アルツハイマー病、ビタミン E ダメージ、総ビタミン E、総トコトリエノール、総トコフェロール
Tiwari V, Arora V, Chopra K. Attenuation of NF-κβ mediated apoptotic signaling by tocotrienol ameliorates cognitive deficits in rats
postnatally exposed to ethanol. Neurochem Int. 2012 Aug;61(3):310-20.
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発育途中の脳におけるエタノール誘発性損傷は、学習、記憶、遂行機能に関する神経心理学的検査での異常を含む認知機能障害を招くおそれがあるが、
その機構については依然として把握が困難である。
本研究の目的は、出生後エタノールに曝露した子ラットを対象に、認知障害、神経系炎症、神経細胞アポトーシスに対するトコトリエノールの防御作用につい
て調査することにある。
生後 7、8、9 日目に、胃内挿管によって子ラットにエタノール(5 g/kg、12% v/v)を投与した。Morris 水迷路学習における逃避潜時と隠されたプラットフォ
ームに辿り着くまでにかかった全移動距離の増加から明らかなように、エタノールに曝露した子ラットでは顕著な記憶障害が認められた。
標的四分区画で費やした時間、標的四分区画を通り過ぎた総距離の割合(%)、標的四分区画への出現頻度についてもまた、エタノール曝露子ラットで
顕著な減少が認められた。高架式十字迷路試験でも、エタノール曝露子ラットの保持記憶の乏しいことが明らかになった。
障害された認知機能は、エタノール曝露子ラットの脳の異なる領域において、アセチルコリンエステラーゼ活性の顕著な上昇、神経系炎症(酸化ストレス、ニト
ロソ化ストレス、TNFα、IL-1β、TGF-β1)と神経細胞アポトーシス(NF-κβ、カスパーゼ 3)の増大との関連を示した。
トコトリエノールの同時投与により、エタノール曝露子ラットの脳の異なる領域における行動、生化学、分子上のあらゆる変化が著しく改善された。
従って、本研究によりラットにおける出生後のエタノール曝露と関連した認知障害で NF-κβ が介するアポトーシスシグナル伝達の可能な関与が実証され、胎児
性アルコールスペクトラム障害(FASD)を認める子供の認知障害予防における可能性がトコトリエノールに向けられている。
Keywords: エタノール曝露、認知障害、神経系炎症、神経細胞アポトーシス、FASD
Tiwari V, Kuhad A, Chopra K. Neuroprotective effect of vitamin E isoforms against chronic alcohol-induced peripheral neurotoxicity: possible
involvement of oxidative-nitrodative stress. Phytother Res. 2012 Nov;26(11):1738-45. doi: 10.1002/ptr.4635.
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痛みを伴う小径線維ニューロパシー(SFN: small fiber peripheral neuropathy)はアルコールの長期使用による合併症の一つで、その確実な有効治療は
存在しない。慢性的なアルコール消費が末梢神経線維に損傷と損失をもたらす正確なメカニズムについては、依然として不明のままである。
臨床・前臨床の研究から得られたデータにより、損傷を受けた神経組織からの炎症性サイトカイン放出が介する酸化・ニトロソ化ストレス増加がアルコール性
神経障害の病因に中心的な役割を果たしている可能性のあることが示唆されている。
本研究では、ラットを対象にビタミン E の両方のアイソフォーム(α-トコフェロール、トコトリエノール)がアルコール誘発性末梢神経障害に及ぼす影響について検
討を行った。
エタノールを投与したラットで、尾部浸漬試験での尾フリック(尾打ち)潜時の有意な減少に加え、Randall-Selitto 法と von Frey hair test による両試験で
paw withdrawal(足引っ込め)の閾値が有意に低下することが明らかになった。
疼痛閾値低下は、酸化・ニトロソ化ストレスのマーカーにおける有意な変化、また、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β)の増加と関連を示した。
4 週間のトコトリエノール投与により、アルコール処理ラットにおける行動、生化学、分子に関する変化が改善された。しかしながら、α-トコフェロールではいかなる
保護効果も認められなかった。
本研究の結果から、酸化・ニトロソ化ストレスが介するサイトカインシグナル伝達はアルコールによって誘発される末梢神経毒性に関与し、また、トコトリエノール
投与は神経障害を呈する慢性アルコール症に有益となる可能性が示唆される。
Keywords: アルコール誘発性末梢神経障害、酸化、ニトロソ化、TNF-α、IL-1β
Frank J, Chin XW, Schrader C, Eckert GP, Rimbach G. Do tocotrienols have potential as neuroprotective dietary factors? Ageing Res Rev. 2012
Jan;11(1):163-80.
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トコトリエノール類(T3)はビタミン E 化合物(α-、β-、γ-、δ-トコフェロール及びトコトリエノール)のファミリーに属し、それらを潜在的な食事性神経保護因子
とする独自の生物特性を有している。
T3 は、抗酸化活性に加え、コレステロール生合成における律速酵素の 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A 還元酵素の活性阻害により細胞、動物モデ
ル、(全てではないが)何種類かのヒトでの試験においてマイクロモル濃度でコレステロール低下活性を及ぼし、さらに低濃度(約 10 nm/L)で、細胞培養
実験の神経細胞死に関与するシグナル伝達経路を調節することが明らかにされている。
T3 の標的には、プレニルトランスフェラーゼ、非レセプターのチロシンキナーゼ、ホスホリパーゼ A2、12-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、核因子 κB が含
まれる。
T3 の低い生物学的利用能と急速な排出が、T3 による予防を目的とした利用での大きなハードルとなっている。空腹時血漿 T3 濃度は、高用量の補給を行っ
た後でさえ 1 μmol/L に達しない。T3 の生物学的利用能は、高脂肪食、自己乳化型薬物送達システム、あるいは T3 の代謝・排泄を抑制するようなフィトケ
ミカルの摂取により向上する可能性がある。
普通食の一部として消費する場合においては、T3 に既知の副作用は認められない。また、ここで概観した研究によって、T3 には神経保護剤としての潜在的
可能性があるとする概念が裏付けられている。
しかしながら、T3 が媒介する神経保護を扱う動物モデルでの実験や無作為化ヒト介入試験は僅かであることから、正当化されるための更なる研究が必要であ
る。
Keywords: トコトリエノール類、生物学的利用能、排泄、神経保護剤
2011
24
Park HA, Kubicki N, Gnyawali S, Chan YC, Roy S, Khanna S, Sen CK. Natural vitamin E α-tocotrienol protects against ischemic stroke by
induction of multidrug resistance-associated protein 1. Stroke. 2011 Aug;42(8):2308-14.
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α-トコトリエノール(TCT)は天然ビタミン E のうちで最も強力な神経保護作用を有する形で、米国 FDA により GRAS と認定されている。
α-TCT が in vivo で脳卒中に対して保護作用を及ぼす可能性のある新たな分子機構を本研究で扱う。細胞内の酸化型グルタチオン(GSSG)の濃度上昇
は神経細胞死を誘発する。それ故、神経細胞からの酸化型グルタチオン流出の重要な仲介物質である多剤耐性関連タンパク質 1(MRP1)には神経保
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護機能が備わっている可能性がある。脳卒中による脳組織損傷について、MRP1 欠乏マウスと α-TCT 給餌マウスを対象に調査を行った。
グルタミン酸に曝露した初代皮質神経細胞と脳卒中に冒された脳組織において MRP1 発現の上昇が認められた。MRP1 欠乏マウスでは脳卒中による病巣
が大きく、MRP1 による保護的役割が認識された。
in vitro の研究では、グルタミン酸誘発神経毒性に対する α-TCT の保護作用が MRP1 ノックダウン状況下で減弱し、α-TCT 依存的な神経保護における
MRP1 の役割が示唆された。
in vivo の研究では、経口補給した α-TCT がマウスの脳卒中に対して保護作用をもたらすことが実証された。MRP1 発現は、α-TCT 補給した脳卒中に冒さ
れたマウスの皮質組織において上昇した。
発症機序を解明する取り組みから、マイクロ RNA の(miR)-199a-5p の標的として MRP1 が同定された。α-TCT 給餌マウスでは、miR-199a-5p が脳卒中に
冒された脳組織内でダウンレギュレートした。
本研究から、MRP1 は脳卒中に対する保護因子として認識された。さらに本研究で得られた所見は、α-TCT 感受性標的として MRP1 を特定すること、経口
補給した α-TCT に脳卒中に冒された脳組織における miR 発現を調節する可能性があるとする共通展望を明らかにすることの 2 種類の方法から、α-TCT の
神経保護作用の分子レベルでの現行の理解に新たな局面を提供している。
Keywords: 脳卒中、α-トコトリエノール、GSSG、MRP1、miR-199a-5p
Taridi NM, Yahaya MF, Teoh SL, Latiff AA, Ngah WZ, Das S, Mazlan M. Tocotrienol rich fraction (TRF) supplementation protects against
oxidative DNA damage and improves cognitive functions in Wistar rats. Clin Ter. 2011 Mar-Apr;162(2):93-8.
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酸化ストレスは、産生される活性酸素種(ROS)と抗酸化防御機構の間の不均衡によって引き起される。トコトリエノール高含有フラクション(TRF)のよう
なパーム油由来抗酸化剤は、フリーラジカルが誘発する神経細胞死に対して作用することによりニューロンに神経防護作用を及ぼすことが知られている。
ラットを対象に酸化的 DNA 損傷と認知機能に及ぼす TRF の影響を解明するために本研究を実施した。
合計 20 匹の雄性 Wistar ラット(3 ヵ月齢)を 2 群に割り付け、蒸留水を摂取させる対照群(i)、200 mg/kg 体重の TRF を摂取させる実験群(ii)のいずれ
かで 8 ヵ月間飼養した。
DNA 損傷はコメットアッセイを用いて測定した。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GP)、カタラーゼ(CAT)のような抗
酸化酵素については血液中で評価を行った。また、認知機能を評価するためにモリスの水迷路を用いた。
DNA 損 傷 は、対 照 群 と比 較 して、TRF 補 給 を行 った実 験 群 で有 意 に減 少 した( p<0.05)。TRF 補 給 群 における DNA 損 傷 のパーセンテージは
2.87±0.48%であったのに対し、対照群では 5.96±0.43%であった。SOD、GP、CAT の酵素活性は、実験群で上昇を示した。
MWM から得られた結果については、TRF 群と対照群の間のターゲットプラットフォームまでの時間、泳路、平均速度によって評価した認知機能で改善が認め
られた。
8 ヵ月間にわたる TRF の継続補給は DNA 損傷を減少し、空間学習と空間記憶に正の影響をもたらした。
Keywords: TRF、モリスの水迷路、DNA 損傷、認知機能
2010
Saito Y, Nishio K, Akazawa YO, Yamanaka K, Miyama A, Yoshida Y, Noguchi N, Niki E. Cytoprotective effects of vitamin E homologues against
glutamate-induced cell death in immature primary cortical neuron cultures: Tocopherols and tocotrienols exert similar effects by
antioxidant function. 2010 Nov 30;49(10):1542-9.
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グルタミン酸は神経系の病理学的細胞死に重要な役割を果たしている。ビタミン E は、直接的な抗酸化作用あるいはそうでない間接的な作用のいずれかによ
って、細胞をグルタミン酸がもたらす細胞毒性から保護していることが知られている。さらに、α-トコトリエノール(α-T3)はグルタミン酸が誘発する細胞毒性に対
して α-トコフェロール(α-T)よりも有効に働くことが報告されている。
グルタミン酸毒性に対するビタミン E の機能を明らかにするために、8 種類のビタミン E 同族体と類縁化合物である 2,2,5,7,8-pentamethyl-6-chromanol
(PMC)と 2-carboxy-2,5,7,8-pentamethyl-6-chromanol(Trolox)について、未成熟初代培養皮質神経細胞に及ぼすグルタミン酸誘導細胞毒性
に対する防御作用を異なるプロトコルを用いて検討を行った。
グルタミン酸はグルタチオンの枯渇、並びに活性酸素種と脂質ヒドロペルオキシドの産生を誘発して細胞死を引き起した。
α-、β-、γ-、δ-T、α-、β-、γ-、δ-T3、PMC、Trolox は全てグルタミン酸誘導細胞毒性に対して細胞保護効果を発揮した。予備培養時間の経過に伴い、T
の細胞内含量と細胞保護効果は共に T3 のそれと比較して有意に増加した。予備培養による影響は T3 と PMC で相対的に小さかった。
Torolox の保護効果は PMC より弱く、また α-T と α-T3 の細胞保護効果はそれらの細胞内含量に対応していることが明らかになった。さらに、トリフェニルホス
フィン還元に続く水酸化カリウムによるけん化の後、脂質過酸化産物の測定を行った。
ヒドロキシエイコサテトラエン酸、ヒドロキシオクタデカジエン酸、8-F(2)-イソプロスタン 2α は、グルタミン酸処理により増加し、α-T により抑制されることが明らかに
なった。
本研究により、ビタミン E は主として直接的な抗酸化作用により細胞をグルタミン酸毒性から保護し、さらに明らかに T よりも高い T3 の能力は T よりも速い T3
の細胞内吸収に起因することが明らかになった。
生物学的利用能を考慮すると、α-T のほうが α-T3 よりも in vivo におけるグルタミン酸毒性に対してより有効性の高いことが示唆される。
Keywords: ビタミン E、α-トコトリエノール、α-トコフェロール、グルタミン酸毒性、抗酸化活性
Sen CK, Rink C, Khanna S. Palm oil-derived natural vitamin E alpha-tocotrienol in brain health and disease. J Am Coll Nutr. 2010 Jun;29(3
Suppl):314S-323S.
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ビタミン E ファミリーを構成するメンバーはそれらの生物学的機能について重複しないことが、増えつつある研究から裏付けられている。
Elaeis guineensis に由来するパーム油は、特徴付けがあまりなされていないビタミン E である α-トコトリエノールの最も豊富な供給源とされている。自然界に存
在し、化学的に異なる 8 種類のビタミン E 類似体の α-トコトリエノールは、その強力な抗酸化能とは無関係の独特な生物活性を有していることが明らかにされ
ている。
α-トコトリエノール研究における最近の発達から、多価不飽和脂肪酸(PUFA)を豊富に含む脳組織における脂溶性ビタミンの神経保護特性が実証されて
いる。
中枢神経系で最も豊富な PUFA の一つであるアラキドン酸(AA)は、病理学的条件下の酸化的代謝に対して極めて感受性が高いとされている。
サイトゾルホスホリパーゼ A2 によって膜のリン脂質二重層から切断された AA は、酵素的、非酵素的両方の経路によって代謝される。
急性虚血性脳卒中を含むヒト脳内における多数の神経変性状態は AA の PUFA 代謝障害と関連が認められる。
ナノモル濃度のパーム油由来 α-トコトリエノールは AA 代謝と神経変性の酵素的、非酵素的両メディエータを減衰させることが明らかになった。
天然ビタミン E 分子が呈する全ての生物学的機能のうちで、濃度ベースではこれが最も強力であることを示している。
このような治療ポテンシャルにもかかわらず、ビタミン E の全文献に占めるトコトリエノール関連の科学文献は 1%程度であることから、さらなる投資並びに調査が
必要とされている。
Keywords: パーム油由来 α-トコトリエノール、アラキドン酸、酵素的、非酵素的メディエータ
Mangialasche F, Kivipelto M, Mecocci P, Rizzuto D, Palmer K, Winblad B, Fratiglioni L. High plasma levels of vitamin E forms and reduced
Alzheimer's disease risk in advanced age. J Alzheimers Dis. 2010;20(4):1029-37.
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人口ベースの設定で高齢者を対象に 8 種類のビタミン E の血漿濃度とアルツハイマー病(AD)の発症率との関連性について本研究で調査を行った。
Kungsholmen Project に参加した 80 歳以上の痴呆を認めない被験者 232 人を対象に、発生した AD を検出するための追跡調査を 6 年間行った。
ビタミン E(α-、β-、γ-、δ-トコフェロールと α-、β-、γ-、δ-トコトリエノール)の血漿濃度をベースライン時に測定した。ビタミン E 各種と AD の関連について、考
えられる何種類かの交絡因子の調整後に Cox 比例ハザードモデルを用いて解析を行った。
総トコフェロール、総トコトリエノール、あるいは総ビタミン E の血漿濃度が最高三分位の被験者は、最低三分位の被験者と比較して AD の発症リスクが低いこ
とが明らかになった。
多変量調整ハザード比(HR)と 95%信頼区間(CI)は、総トコフェロールで 0.55(0.32~0.94)、総トコトリエノールで 0.46(0.23~0.92)、総ビタミン E
で 0.55(0.32~0.94)であった。
ビタミン E を多変量調整モデルにおいてタイプ別にみた場合、AD 発症リスク低下は高濃度の血漿 β-トコフェロールとのみ関連が認められた一方(HR: 0.62;
95% CI: 0.39~0.99)、α-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノールについては僅かに有意な作用しか見出すことができなかった[HR (95% CI): αトコフェロール 0.72 (0.48~1.09); α-トコトリエノール 0.70 (0.44~1.11); β-トコトリエノール 0.69 (0.45~1.06)]。
ビタミン E の血漿濃度上昇は高齢者における AD リスク低下と関連のあることが結果から明らかになった。ビタミン E の神経保護作用は α-トコフェロール単独よ
りはむしろ異なるタイプの組合せと関連しているようであり、AD に対す種々の介入でその有効性が目下論議されているところである。
Keywords: ビタミン E、アルツハイマー病、高齢者、血漿濃度、β-トコフェロール、β-トコトリエノール
Usoro OB, Mousa SA. Vitamin E forms in Alzheimer's disease: a review of controversial and clinical experiences. Crit Rev Food Sci Nutr. 2010
May;50(5):414-9.
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ビタミン E は自然界に存在する 8 種類の化合物、すなわち 4 種類のトコフェロール(α-、β-、γ-、δ-)と 4 種類のトコトリエノール(α-、β-、γ-、δ-)の総称で
ある。
サプリメント中に一般に存在し、認知障害進行に及ぼすその影響について最も多く調査されている α-トコフェロールと比べ、γ-トコフェロールは米国の食事にお
けるビタミン E の主要な形であるにもかかわらず殆ど注目されていない。
ビタミン E と神経変性疾患について数多くの臨床試験が行われてきたが、得られた結果には議論の余地がある。それらには、軽度認知機能障害 とアルツハイマ
ー病におけるビタミン E の有益性を反証した最近の研究も含まれよう。
本研究では、γ-トコフェロールの代りに α-トコフェロールのサプリメントについて調査を行った。γ-トコフェロールについては、炎症の原因となり、共に神経変性疾患
の因子でもあるフリーラジカルと活性酸素・窒素種の捕捉に有効であることが明らかにされている。
α-トコフェロールのサプリメントの利用により血清中の γ-トコフェロールが著しく低下することから、このことが生理作用に重大な影響を及ぼす可能性がある。従っ
て、α-トコフェロールのサプリメントがもたらし得るいかなる健康利益も、他のトコフェロールやトコトリエノールの生物学的利用能に生じる有害な変化によって相
殺される可能性がある。
このことが軽度認知機能障害とアルツハイマー病における α-トコフェロール補給の無効(null effects)を説明しているようである。
Keywords: 軽度認知機能障害、アルツハイマー病、α-トコフェロール、γ-トコフェロール、null effects
Khanna S, Parinandi NL, Kotha SR, Roy S, Rink C, Bibus D, Sen CK. Nanomolar vitamin E alpha-tocotrienol inhibits glutamate-induced
activation of phospholipase A(2) and causes neuroprotection. J Neurochem. 2010 Mar;112(5):1249-60.
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12-リポキシゲナーゼ(Lox)経路がグルタミン酸誘導神経細胞死と直接関与し、そのような毒性はナノモル濃度の天然ビタミン E の α-トコトリエノール
(TCT)によって防止されることが我々の以前の研究で解明された。
本研究では、ホスホリパーゼ A2(PLA2)活性がグルタミン酸に感受性を示し、12-Lox の基質とされるアラキドン酸(AA)を流動化するとされる仮説を検証
し、さらに TCT が神経細胞内のグルタミン酸誘導性 PLA2 活性を調節するか否か検討を行った。
グルタミン処理により HT4 神経細胞からの[(3)H]AA 放出が誘発された。このような反応はカルシウムキレート剤(EGTA、BAPTA)、cPLA(2)の特異阻害剤
(AACOCF3)に加え 250 ナノモルの TCT によって減弱された。グルタミン酸はまた、神経細胞内において遊離多価不飽和脂肪酸(AA、ドコサヘキサエン
酸)の濃度上昇と PL よってエステル化される AA の消失を引き起した。
また、グルタミン酸は時間依存的な転位を引き起し、細胞内における cPLA2 のセリンリン酸化を増大させた。グルタミン酸が脂肪酸濃度と cPLA2 に及ぼすこれ
らの作用は、ナノモル濃度の TCT によって著しく減弱された。AACOCF3、cPLA2 の一過性のノックダウン、TCT がグルタミン酸誘導神経細胞死から著しく防御し
た観測結果から、cPLA2 がグルタミン酸誘導神経細胞死の TCT 感受性メディエータに関係があると考えられる。
本研究は、cPLA2 内におけるグルタミン酸誘導性の変化をナノモル濃度の TCT で観察された神経保護効果に関係する新たなメカニズムとして初めて認める証
拠を提示している。
Keywords: グルタミン酸誘導神経細胞死、α-トコトリエノール、神経保護効果
2009
Tiwari V, Kuhad A, Chopra K. Suppression of neuro-inflammatory signaling cascade by tocotrienol can prevent chronic alcohol-induced
cognitive dysfunction in rats. Behav Brain Res. 2009 Nov 5;203(2):296-303.
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慢性アルコール摂取は、酸化・ニトロソ化ストレス増加と炎症カスケードの活性化に関連する選択的神経障害を引き越し、最終的に神経細胞のアポトーシス
とそれによる痴呆を招くことが知られている。
本研究では、ビタミン E イソ型の α-トコフェロールとトコトリエノールの両方が慢性アルコール摂取による認知機能障害に及ぼす比較効果について、ラットを対象
に調査を行った。
Wistar 系雄ラットにエタノール(10 g/kg)を経口強制給飼により 10 週間摂取させ、α-トコフェロールあるいはトコトリエノールで同じ期間処置を行った。学習
と記憶に関する認知行動について、Morris 水迷路試験と高架式十字迷路試験を用いて評価を行った。
10 週目の最後にラットを犠牲にし、アセチルコリンエステラーゼ活性、酸化・ニトロソ化ストレスのパラメータ、腫瘍壊死因子 -α(TNF-α)、インターロイキン-1β
(IL-1β)を定量化するために、大脳皮質と海馬の細胞質画分を調製した。
第 6 週以降、エタノールで処置したラットは両方の挙動パラダイムにおいて転送遅延が増大した。これには、エタノールで処置したラット脳の異なる領域における
アセチルコリンエステラーゼ活性上昇、酸化・ニトロソ化ストレス増加、TNF-α と IL-1β のレベル上昇が結びついていた。
α-トコフェロールあるいはトコトリエノールとの共投与は、エタノール処置ラットの脳における行動上の変化、生化学的変化、分子レベルでの変化を用量依存的
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に著しく防止した。しかしながら、その効果はトコトリエノールでより著明であった。
本研究は慢性アルコール摂取によって誘発される認知機能障害に酸化・ニトロソ化ストレスが介在する炎症性カスケードの活性化の潜在的関与を実証し、
ビタミン E イソ型のなかでもとりわけトコトリエノールが慢性アルコール摂取と関連した認知機能障害をより強力に予防することも示唆している。
Keywords: 慢性アルコール摂取、認知機能障害、酸化・ニトロソ化ストレス、炎症性カスケード
Tiwari V, Kuhad A, Chopra K. Tocotrienol ameliorates behavioral and biochemical alterations in the rat model of alcoholic neuropathy. Pain.
2009 Sep;145(1-2):129-35.
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慢性アルコール摂取は疼痛を伴う末梢神経障害を引き起すが、主としてその病理についての理解不足から、信頼のおける有効な治療手段は存在しない。
アルコール性神経障害は、自発性灼熱痛、痛覚過敏症(疼痛刺激に対して過剰な反応を示す痛覚)、異痛症(通常痛みを引き起さない刺激によって
誘発される疼痛)によって特徴付けられる。慢性アルコール摂取は酸化・ニトロソ化ストレス増加を伴って侵害受容閾値を低下させ、プロテインキナーセ C 活
性化と結合する炎症誘発性サイトカインを放出することが知られている。
本研究の目的は、ラットを対象にビタミン E の α-トコフェロール(100 mg/kg、経口胃管栄養法)とトコトリエノール(50、100、200 mg/kg、経口胃管栄養
法)の両イソ型がアルコールによって誘発される神経因性疼痛に及ぼす影響を調査することにある。
Wistar 系雄ラットに 35%(v/v)エタノール(10 g/kg、経口胃管栄養法)を 10 週間投与し、α-トコフェロールあるいはトコトリエノールで同じ期間処理し
た。
エタノール処理ラットでは、神経細胞内のグルタチオン濃度とスーパーオキシドジスムターゼ濃度の低下に加え、テイルフリック潜伏期の短縮(熱的痛覚過敏
症)、並びに Randall Selitto 法(機械的痛覚過敏症)と von Frey hair 法(機械的異痛症)による paw-withdrawal(足引っ込め)閾値の低下か
ら明らかなように侵害受容閾値の顕著な低下が認められた。
TNF-α 値、IL-β 値もまたエタノール処理ラットの血清と神経細胞の両方で顕著な上昇が認められた。α-トコフェロール、トコトリエノールによる 10 週間の処理は
上述の機能的・生化学的障害を用量依存的に著しく改善したが、トコトリエノールでより強力な作用が認められた。
アルコール性神経障害の減弱におけるトコトリエノールの有効性が本研究で証明された。
Keywords: アルコール性神経障害、慢性アルコール摂取、神経因性疼痛、痛覚過敏症、異痛症
Tiwari V, Kuhad A, Bishnoi M, Chopra K. Chronic treatment with tocotrienol, an isoform of vitamin E, prevents intracerebroventricular
streptozotocin-induced cognitive impairment and oxidative-nitrosative stress in rats. Pharmacol Biochem Behav. 2009 Aug;93(2):183-9.
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脳室内(ICV)のストレプトゾトシン(STZ)がラット脳における酸化ストレス増加と関連のある認知機能障害を引き起すことが明らかにされている。
α-トコフェロールとトコトリエノール、ビタミン E の両方のイソ型がラットにおける ICV STZ 誘発性認知機能障害と酸化・ニトロソ化ストレスに及ぼす影響について
本研究で調査を行った。
Wistar 系雄成体ラットの脳室内に STZ(3 mg/kg)を両側性に注射した。学習と記憶に関する行動について、Morris 水迷路試験と高架式十字迷路試
験を用いて評価を行った。
21 日目にラットを犠牲にし、酸化ストレスのパラメータ、亜硝酸レベル、アセチルコリンエステラーゼ活性について脳ホモジネートを用いて測定した。α-トコフェロー
ルあるいはトコトリエノールで処置した群では行動上の両方の挙動パラダイムにおける認知機能障害が有意に低かったが、とりわけトコトリエノール群でその作用
が強いことが明らかになった。
両方のビタミン E イソ型とも、用量依存性に効果的に ICV STZ ラット脳におけるグルタチオンとカタラーゼの減少を弱め、マロンアルデヒド、亜硝酸塩、コリンエステ
ラーゼ活性を低下させた。
本研究はビタミン E イソ型のなかでもトコトリエノールがラット脳室内に注射した STZ によって引き起される認知障害予防においてより強い効力を示し、アルツハ
イマー病のような神経変性疾患の治療におけるトコトリエノールの可能性を示唆している。
Keywords: ラット脳室、ストレプトゾトシン、α-トコフェロール、トコトリエノール、認知機能障害
Then SM, Mazlan M, Mat Top G, Wan Ngah WZ. Is vitamin E toxic to neuron cells? Cell Mol Neurobiol. 2009 Jun;29(4):485-96.
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トコフェロール類とトコトリエノール類には、強力なフリーラジカルスカベンジャーとしての働きに加え、α-トコフェロール(α-T)の PKC 経路への関与、γ-トコトリエノ
ール(γ-T3)の抗癌特性のような非抗酸化的な特性が存在することが知られている。
H2O2 誘導性の神経培養細胞で α-T と γ-T3 によって明らかにされた保護作用が、神経細胞のアポトーシス発生に対して抗アポトーシスあるいはアポトーシス
誘発の傾向を示すかを解明するのが本研究の目的である。
10 μM 以下の濃度の α-T あるいは γ-T3 の前処理で減弱した初代小脳神経培養細胞でアポトーシスを誘発するために H2O2 を用いた。
われわれが以前行った研究と同様、γ-T3 は 100 μM 以上の濃度で神経毒性が認められた一方、α-T には神経毒性が認められなかった。
γ-T3 の細胞内への取り込みは α-T よりも高かった。神経細胞を γ-T3 あるいは α-T のいずれかで処理した後に H2O2 で処理したほうが、細胞を単独の H2O2
に曝露するよりも Bax と Bcl-2 の発現が増大することが明らかになった。
「生存指数」としての Bcl-2/Bax 比を検査したところ、γ-T3、α-T 両方の前処理に続いて H2O2 で処理した場合のほうが H2O2 で処理した細胞より
Bcl-2/Bax 比でみる「生存指数」が上昇した。一方、γ-T3 単独による処理は、α-T 単独による同様の処理で不変であった Bcl-2/Bax 比と比較して、その比を
減少させた。
γ-T3 による同様の処理は p53 発現の減少と p38 MAPK リン酸化の活性化をもたらした一方、α-T は H2O2 処理細胞と比較してその発現に変化を及ぼさ
なかった。
神経細胞を γ-T3 あるいは α-T のみで処理した場合、関与するタンパク質に対して α-T より強力に発現を呈する γ-T3 で処理したコントロールと比較して、
Bax、Bcl-2、p53、p38 MAPK の発現を増大させた。
結論として、低用量の γ-T3 と α-T はそれらの抗酸化機構により H2O2 処理した神経細胞に対して神経保護作用を及ぼすが、γ-T3 は H2O2 非存在下の
神経細胞アポトーシス経路に関与する分子を活性化させることによって、α-T より強力にアポトーシスを誘導する傾向が認められた。
Keywords: 初代小脳神経培養細胞、γ-トコトリエノール、H2O2、Bcl-2/Bax 比、神経細胞アポトーシス経路
2008
Rubin BY, Anderson SL, Kapás L. Can the therapeutic efficacy of tocotrienols in neurodegenerative familial dysautonomia patients be
measured clinically? Antioxid Redox Signal. 2008 Apr;10(4):837-42.
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家族性自律神経異常症(FD)は、自律神経・高血圧性発作と心臓の不安定を特徴とする遺伝性の致命的な神経変性障害である。患者は感染した
変異遺伝子の遺伝子産物である IKAP を産生せず、モノアミンオキシダーゼ A(MAO A)の低レベルが認められる。このようなレベル低下が、高血圧性発作
の誘因となる生体アミンの蓄積増加を引き起すと考えられている。
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トコトリエノールの摂取が FD 患者の IKAP と MAO A レベルを上昇させることから、トコトリエノールが高圧性発作の頻度と心機能に及ぼす影響を調査した。
トコトリエノールを摂取後 3~4 ヵ月に、患者の約 80%が発作回数の著しい(50%以上の)減少を報告した。また、より小規模の患者群では、運動後の心
拍数増加と QT 間隔の減少が大部分の患者で認められた。
これらの所見に基づくと、トコトリエノール療法は長期の臨床展望と FD を認める患者の生存率を改善すると仮定される。
Keywords: 家族性自律神経異常症、IKAP、モノアミンオキシダーゼ A、心拍数、QT 間隔、生存率
2007
Huebbe P, Jofre-Monseny L, Boesch-Saadatmandi Ch, Minihane AM, Rimbach G. Effect of apoE genotype and vitamin E on biomarkers of
oxidative stress in cultured neuronal cells and the brain of targeted replacement mice. J Physiol Pharmacol. 2007 Dec;58(4):683-98.
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apoE4 遺伝子型の病因とアルツハイマー病(AD)との関連性は複雑である。apoE 遺伝子型が及ぼす影響、酸化的ストレスに関連したビタミン E(VE)の
潜在的な有益作用が最近の研究で重視されている。
アゴニスト誘導神経細胞死について、1) 安定にトランスフェクトしたマクロファージから得た同量の apoE3 あるいは apoE4 を含有する調整培地下、2) α-、γトコフェロールとトコトリエノールによる前処理後に調査を行った。
脳内の膜脂質過酸化、抗酸化酵素活性、グルタチオンレベルに及ぼす apoE 遺伝子型とビタミン E の状態の相互作用を調査するために、apoE3、apoE4 ト
ランスジェニックマウスにビタミン E 豊富飼料あるいは欠乏飼料を摂取させた。
過酸化水素とグルタミン酸塩の細胞毒性は、apoE3 調整培地と比べて apoE4 調整培地で培養した神経細胞で高いことが明らかになった。ビタミン E による
神経細胞の前処理は、一酸化窒素ではなく、過酸化物の攻撃による細胞毒性と反作用を示した。
apoE3、apoE4 マウスの脳内脂質過酸化あるいは抗酸化状態に及ぼす apoE 遺伝子型あるいは VE 補給の有意な作用は観察されなかった。VE は in vitro
では酸化的傷害に対して防護作用を及ぼすが、マウスの脳内酸化状態では差が認められなかった。
培養細胞と異なり、apoE4 は対象となった若齢リプレイスメント・マウスの脳内神経細胞の酸化ストレス増加の原因にはならないようである。
Keywords: apoE 遺伝子型、α-、γ-トコフェロール・トコトリエノール、脳内脂質過酸化、酸化ストレス
Shichiri M, Takanezawa Y, Uchida K, Tamai H, Arai H. Protection of cerebellar granule cells by tocopherols and tocotrienols against
methylmercury toxicity. Brain Res. 2007 Nov 28;1182:106-15.
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過剰なフリーラジカル生成は、メチル水銀(MeHg)を含む種々の金属と関連した神経障害の原因因子の一つと考えられている。MeHg 依存性の神経毒
性に関連するメカニズムは依然として不明であるが、MeHg は小脳顆粒細胞(CGC)において神経毒性を引き起すことが知られている。in vitro でネズミの
CGC 初代培養を MeHg に曝露させた結果、時間依存的並びに用量依存的に細胞死が生じた。
本研究は、培養した CGC を用いて、MeHg が誘発する神経毒性に及ぼす脂溶性抗酸化剤のトコフェロールとトコトリエノール(不飽和型ビタミン E)の影響
を評価するために計画した。
MeHg 誘発性神経細胞死からの保護がトコフェロールとトコトリエノールの両方で有意に認められた。さらに、CGC を MeHg 神経毒性から保護する作用は、ト
コトリエノールのほうがトコフェロールより何倍も強力であることが明らかになった。
マイクロモル濃度では、トコフェロールではなくトコトリエノールが一定の抗酸化メカニズムによる完全な防護を示した。同様に、トコフェロールとトコトリエノールにつ
いては、MeHg 毒性から CGC 移動を保護する作用があることが明らかになった。
これらの結果から、単離した小脳顆粒神経細胞における MeHg 毒性は一つに酸化事象が原因している可能性があり、トコトリエノールは MeHg の曝露を受
けた脳の発症を薬理学的に保護する強力なサプリメントであることが示唆された。
Keywords: 小脳顆粒細胞、MeHg 誘発性神経細胞死、酸化事象、トコトリエノール
Khanna S, Roy S, Park HA, Sen CK. Regulation of c-Src activity in glutamate-induced neurodegeneration. J Biol Chem. 2007 Aug
10;282(32):23482-90.
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癌原遺伝子 c-Src は脳やヒトの神経組織で頻繁に発現する。トコトリエノールの神経保護メカニズムを特徴付けるために行ったわれわれの研究は、急速な
c-Src の活性化がグルタミン酸誘導神経変性を起こすうえで中心的役割を果たしていることを実証する最初の証拠をもたらした。現在では、マウスにおける Src
欠乏あるいは Src 活性遮断は、卒中発作後の脳に保護作用をもたらすことが知られている。
本研究では、グルタミン酸によって誘導される HT4 神経細胞と初代皮質ニューロンにおける誘導性 c-Src 活性を制御する機構の調査を行った。
c-Src の破壊は細胞をグルタミン酸によって誘導される生育率低下から保護した。また、c-Src に対する siRNA の顕微注入は、一貫して細胞をグルタミン酸か
ら保護した。
過発現と破壊による方法を用いることによって、SHP-1 がグルタミン酸によって誘導される c-Src 活性に関与している可能性が明らかになった。
その活性化の後、Cbp とカベオリン-1 がリン酸化され、Csk との関連を示した。Csk は細胞膜に移動し、その細胞膜でグルタミン酸によって誘導される c-Src 活
性は、c-Src におけるチロシン残留物を阻害するリン酸化を触媒することによってダウンレギュレートした。
本研究から得られた所見は、神経変性状態下にある c-Src の制御に向けた新たなパラダイムを示している。
Keywords: HT4 神経細胞、初代皮質ニューロン、c-Src 活性、グルタミン酸誘導神経変性
2005
Khanna S, Roy S, Slivka A, Craft TK, Chaki S, Rink C, Notestine MA, DeVries AC, Parinandi NL, Sen CK. Neuroprotective properties of the
natural vitamin E alpha-tocotrienol. Stroke. 2005 Oct;36(10):2258-64.
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本研究は、神経細胞において α-トコフェロール(TCP)ではなく nmol/L 濃度の α-トコトリエノール(TCT)が、c-Src キナーゼと 12-リポキシゲナーゼ(Lox)
の早期活性化を抑制することによってグルタミン酸誘導細胞死を遮断するというわれわれが以前得た所見に基いている。
TCT と TCT より広く知られている TCP の神経保護効果を比較するために、神経細胞への単回マイクロインジェクション法を用いた。卒中による脳組織の損傷に
ついて、TCT を経口で摂取させた 12-Lox 欠損マウスと自然発症高血圧ラットで調査した。
TCP ではなくサブアトモルのレベルの TCT がグルタミン酸による攻撃誘発から神経細胞を保護することが明らかになった。遺伝学的方法に加え、薬理学的方法
によっても、グルタミン酸による攻撃を受けた神経細胞内で 12-Lox は急速にチロシンリン酸化され、このリン酸化は c-Src によって触媒されることが明らかにされ
た。12-Lox 欠損マウスは、その野生型の対照マウスよりも卒中による脳損傷に対して耐性があることが明らかになった。
自然発症高血圧ラットへの TCT の経口補給は、脳内の TCT レベル上昇をもたらした。TCT を補給したラットは、対応する対照ラットと比較して、卒中による損
傷からより強く保護されることが明らかになった。このような保護作用は、卒中部位における c-Src の活性化と 12-Lox のリン酸化の低下と関連しているた。
TCT のような天然ビタミン E は、グルタミン酸や卒中によって誘発される神経変性から防御するキー分子のチェックポイントに影響を及ぼしていると結論付けられ
る。
Keywords: α-トコトリエノール、グルタミン酸、12-Lox、リン酸化、c-Src、卒中、脳損傷
2000
Sen CK, Khanna S, Roy S, Packer L. Molecular basis of vitamin E action. Tocotrienol potently inhibits glutamate-induced pp60(c-Src) kinase
activation and death of HT4 neuronal cells. J Biol Chem. 2000;275:13049-55.
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グルタミン酸誘導細胞死から HT4 海馬神経細胞を防御するトコフェロールとトコトリエノールの有効性を比較する試験を行った。
トコトリエノールは、グルタミン酸誘導細胞死の予防において α-トコフェロールより効果があった。培養基からのトコトリエノールの取込みは、α-トコフェロールより効
率が良かった。トコトリエノールは、低濃度で抗酸化作用に依存しない機構によって細胞を防御していた可能性があることを結果は示している。
情報伝達経路の実験は、タンパク質のチロシンをリン酸化する過程が、細胞死において中心的役割を果たしていることを明らかにした。pp60(c-Src)キナー
ゼの活性化と ERK のリン酸化がグルタミン酸処理に対する反応で観察された。
α-トコフェロールではなく α-トコトリエノールが、ナノモル濃度で c-Src キナーゼの初期活性化を抑制し、グルタミン酸誘導細胞死を阻害した。キナーゼ活性
c-Src の過剰発現がグルタミン酸誘導細胞死を増感させた。トコトリエノールによる処理は、グルタミン酸処理した Src 過剰発現細胞の死を予防した。α-トコト
リエノールは、組換え型 c-Src キナーゼの活性に影響を及ぼさず、その作用機構には SH ドメイン制御が含まれていることを示唆した。
この研究は、トコトリエノールの分子レベルでの作用を説明する初めての知見をもたらした。サプリメンテーションしたヒトの血漿で検出されるレベルより 4~10 倍
以上も低い濃度で、トコトリエノールは、同等のトコフェロール濃度では反応しなかった独特の情報伝達系を制御した。
Keywords: グルタミン酸誘導細胞死、HT4 海馬神経細胞、α-トコトリエノール
1995
Kamat JP, Devasagayam TP. Tocotrienols from palm oil as potent inhibitors of lipid peroxidation and protein oxidation in rat brain
mitochondria. Neurosci Lett. 1995;195:179-82.
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パーム油のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)は、in vitro でアスコルビン酸-Fe2+、フリーラジカルイニシエーターAPPH 及び光増感により誘導されたラッ
トの脳ミトコンドリアにおける脂質とタンパク質両方に対する酸化損傷を有意に抑制した。観察された抑制効果には、時間依存的なものと濃度依存的なもの
の両方が存在した。
5 μM の低濃度で、TRF は脂質とタンパク質両方に対する酸化損傷を有意に抑制することが可能である。TRF の抑制効果は主に γ-トコトリエノールによるもの
であり、α-、δ-トコトリエノールの効果の程度はそれより小さいと考えられる。TRF は、α-トコフェロールより有効性が有意に高かった。
このパーム油フラクションは、脳を酸化損傷及びその結果起る有害な変性から防御することができる天然の抗酸化剤であると考えられる。
Keywords: パーム油、トコトリエノール高含有フラクション、脳ミトコンドリア、酸化損傷
免疫調節作用
Immunoregulatory Effect
2011
Mahalingam D, Radhakrishnan AK, Amom Z, Ibrahim N, Nesaretnam K. Effects of supplementation with tocotrienol-rich fraction on
immune response to tetanus toxoid immunization in normal healthy volunteers. Eur J Clin Nutr. 2011 Jan;65(1):63-9.
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脂溶性の必須ビタミンの一つであるビタミン E は、動物とヒトの免疫系に好ましい効果をもたらすことが明らかにされている。
本研究の目的は、健常女性志願者を対象に破傷風トキソイド(TT)ワクチンをチャレンジした後の免疫応答にトコトリエノール高含有フラクション(TRF)の
補給が及ぼす影響を評価することにある。
この二重盲検プラセボ対照臨床試験で参加者は、プラセボ(対照群)あるいは TRF 400 mg/日(試験群)いずれかの摂取を受けるために無作為に割り
当てられた。
2 ヵ月の試験期間中、志願者は臨床にかかわる 3 回のセッション(すなわち、試験開始 0 日目、28 日目、56 日目)に参加するよう求められた。また追跡期
間中、血液サンプルが志願者から採取された。試験開始後 28 日目に全ての志願者が TT ワクチン(20 Lf)の筋肉内接種も受けた。
臨床試験の結果から TRF 補給は、対照群と比較して TRF の摂取を受けた志願者の血漿中総ビタミン E 濃度を有意に上昇させることが明らかとなり、全体的
なコンプライアンスが示された。
TRF の摂取を受けた試験群の志願者では、対照群と比較してマイトジェンあるいは TT が刺激した白血球によるインターフェロン-γ とインターロイキン(IL)4 の
産生が有意に増大することが明らかになった(p<0.05)。
試験群の志願者では、対照群と比較して産生される IL6 の量が有意に減少した(p<0.05)。抗 TT の IgG の産生もまた、プラセボ群と比較して TRF 補給
群で有意に増加した(p<0.05)。
TRF には免疫刺激作用があり、ワクチンに対する免疫応答を増大させるという臨床上の利益をもたらす可能性があると結論付けられた。
Keywords: TRF、破傷風トキソイドワクチン、免疫刺激作用
2010
Ren Z, Pae M, Dao MC, Smith D, Meydani SN, Wu D. Dietary supplementation with tocotrienols enhances immune function in C57BL/6 mice.
J Nutr. 2010 Jul;140(7):1335-41.
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α-トコフェロール(alpha-Toc)は T 細胞の機能を増大させることが明らかにされている一方、この点において、ビタミン E ファミリーで知名度が低いメンバーのトコ
トリエノール類(T3)については殆ど知られていない。
若齢(4 月齢)及び老齢(23 月齢)C57BL/6 マウスを対象に、T3 と alpha-Toc の混合物である Tocomin 50%を 0.1%含有する飼料あるいは同量の
alpha-Toc を含有する対照飼料で 6 週間ペア給餌を行った。
予想通り、リンパ球増殖は若齢マウスより老齢マウスで低いことが明らかになった。T3 群の老齢マウスにおけるリンパ球増殖は対照群の老齢マウスのそれよりも
有意に高かった一方、若齢マウスでは有意差は認められなかった。
老齢マウスの脾細胞は若齢マウスと比較してインターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-10 の産生が少なかった一方、IL-1β、腫瘍壊死因子 α、インターフェロン γ におい
ては加齢に伴う有意な差異は認められなかった。
T3 給餌は老齢マウスで高い IL-1β 産生と関連を示したが、若齢マウスではそのような関連は認められなかった。老齢マウスの腹腔内マクロファージは、若齢マウ
スのそれより IL-1β、IL-6、IL-10、プロスタグランジン E2 (PGE2)の産生が有意に高いことが明らかになった。
T3 を給餌した両月齢のマウスでは、PGE2 や他のサイトカインではなく IL-1β の産生が高いことが明らかになった。
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in vitro 研究では、若齢・老齢マウスから単離した脾細胞に精製した個々の T3(0.01~10 μmol/L)を補給し、マイトジェン刺激細胞増殖の測定を行っ
た。
若齢マウスではなく老齢マウスですべての T3 がリンパ球増殖を増大させ、その強度は α > γ > δ-T3 の順であることが明らかになった。
以上の結果を総合すると、加齢に伴う T 細胞機能低下を改善する T3 の有益作用が示唆される。
Keywords: α-、γ-、δ-トコフェロール、ペア給餌、T 細胞機能、リンパ球増殖
2009
Radhakrishnan AK, Lee AL, Wong PF, Kaur J, Aung H, Nesaretnam K. Daily supplementation of tocotrienol-rich fraction or alpha-tocopherol
did not induce immunomodulatory changes in healthy human volunteers. Br J Nutr. 2009 Mar;101(6):810-5.
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ビタミン E はトコフェロール類とトコトリエノール類の二つの下位集団に分類され、共に生体系で保護的役割を担っている。
アジア系の健常志願者を対象に、200 mg/日の α-トコフェロールあるいはパーム油由来トコトリエノール高含有フラクション(TRF)の短期補給が免疫調節と
血漿ビタミン E 濃度に及ぼす影響を比較するために本研究を行った。
試験の採用・除外基準に基いて募集した 20 歳から 50 歳まで 53 人の健常志願者が無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験に参加した。志願者は 3
群のうちのいずれか、すなわち 1 日 200 mg の α-トコフェロールあるいは TRF の補給を受ける実験群、ないしはプラセボの摂取を受ける対照群に無作為に割り
当てられた。試験 0、28、56 日目に複数の臨床検査機関で採血を行い、血液を分析にかけた。
志願者の血液から単離したコンカナバリン A 刺激リンパ球による IL-4 あるいはインターフェロン γ の産生に有意差は認められなかった(p>0.05)。また、α-トコ
フェロールあるいは TRF いずれかの連日補給を受けた健常志願者間における免疫パラメータにも有意差は認められなかった。
これらの観察所見はいかなる免疫抗原の攻撃接種も行わずに得られたため、ワクチン接種のような免疫抗原投与を導入した場合に差異が現れるか検討する
ことが有効ではないかと思われる。
Keywords: α-トコフェロール、TRF、免疫調節、血漿ビタミン E 濃度
2000
Ashfaq MK, Zuberi HS, Anwar Waqar M. Vitamin E and beta-carotene affect natural killer cell function. Int J Food Sci Nutr. 2000;51:13S-20S.
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ビタミン E のサプリメンテーションは、免疫調節、抗体産生、移植腫瘍に対する抵抗に寄与していることが明らかにされている。同様に β-カロテンは、前悪性細
胞の増殖に寄与する成長因子をダウンレギュレートすることが明らかにされている。
われわれは、哺乳動物の生体内で腫瘍監視の役割を果たすナチュラルキラー(NK)細胞に及ぼすビタミン E と β-カロテンの作用を評価するための研究に着
手した。マウス脾細胞あるいはヒト末梢血リンパ球を NK 細胞として、ネズミ YAC-1 リンパ細胞あるいはヒト K-562 リンパ細胞を標的赤血球としてそれぞれ用い
た。NK 細胞はビタミン E あるいは β-カロテンで処理し、標的赤血球は sodium 51chromate で標識した。両方の細胞型とも 4 時間で反応した。NK 細胞の
腫瘍溶解活性は、chromium release assay で測定した。
マウスに α-トコフェロール 100 mg/日を経口投与すると、NK 細胞活性の有意な上昇が示された。同様に、in vitro で NK 細胞を 0.5、1.0、2.0 mg/ml の αトコフェロールで処理すると、NK 細胞の腫瘍溶解活性が上昇した。
トコトリエノールは、それらより 10 倍低い投与量で同様の反応を示した。NK 細胞を様々な濃度の palm vitee(α-トコフェロールとトコトリエノールの混合物)
で処理したとき、α-トコフェロールとトコトリエノールがそれぞれ 12 μg と 24 μg の用量で最大の効果が観察された。
ネズミ NK 細胞を in vitro で 2~200 ng/mg の β-カロテンで処理したとき、腫瘍溶解作用の上昇が観察された。しかしヒト NK 細胞は、0.1~10 μg/ml の βカロテンで処理したとき、腫瘍溶解機能に有意な上昇が示された。NK 細胞は、β-カロテンと α-トコフェロールを非経口で投与されたマウスからも得られた。これ
らの実験は、NK 細胞機能の有意な上昇を示さなかった。
Keywords: NK 細胞、腫瘍溶解活性、α-トコフェロール、トコトリエノール、β-カロテン
1999
Kaku S, Yunoki S, Mori M, Ohkura K, Nonaka M, Sugano M, Yamada K. Effect of dietary antioxidants on serum lipid contents and
immunoglobulin productivity of lymphocytes in Sprague-Dawley rats. Biosci Biotechnol Biochem. 1999;63:575-6.
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血 清 脂 質 中 含 量 と免 疫 グ ロブ リン産 生 に及 ぼす食 餌 性 の α- トコフェロール 、トコトリエ ノール 、ケ ルセチンの作 用 を検 討 するために 、そ れらの物 質 を
Sprague-Dawley ラットに給餌した。
トコトリエノールあるいはケルセチンの群では、血清トリグリセリドがプラセボ群より低かった。α-トコフェロール群では、血清 IgA レベルと MLN リンパ球の IgA 産生
が高かった。一方、トコトリエノール群では、脾リンパ球の IgM 産生と MLN リンパ球の IgA、IgG、IgM の産生が高かった。
抗酸化物質はラットにおいて異なる作用を及ぼすことが示唆された。
Keywords: 免疫グロブリン産生、α-トコフェロール、トコトリエノール、ケルセチン
抗炎症活性
Anti-inflammatory Activity
2014
Haleagrahara N, Swaminathan M, Chakravarthi S, Radhakrishnan A. Therapeutic Efficacy of Vitamin E δ-Tocotrienol in Collagen-Induced Rat
Model of Arthritis. Biomed Res Int. 2014;2014:539540. doi: 10.1155/2014/539540.
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関節リウマチ(RA)は慢性で全身性の炎症疾患で、主に関節の炎症に関与している。その疾病管理は過去 30 年間で著しい進歩を遂げたが、RA の治療
法はまだ確立されていない。本研究の目的は、コラーゲン誘発関節炎(CIA)のラットモデルを対象に、δ-トコトリエノールの治療効果を判定することにある。
完全フロイントアジュバントで乳化したⅡ型コラーゲンの皮内注射により関節炎を誘発した。25 日目から 50 日目まで、δ-トコトリエノール(10 mg/kg)または
グルコサミン塩酸塩(300 mg/kg)を CIA ラットに経口投与した。足浮腫を減少させる能力、組織病理学的変化、コラーゲン特異的 T 細胞の抑制、および
C 反応性タンパク質(CRP)のレベル低下に基づいて有効性を評価した。
δ-トコトリエノールは、グルコサミン投与と比較して、足浮腫の低下に最も大きな影響を及ぼすことが証明された。足浮腫の変化は、δ-トコトリエノール処置群に
おける変化の有意な逆転が認められた組織病理学的分析と良好な相関を示した。
δ-トコトリエノールは、コラーゲン誘発関節炎の寛解に有効であることが結果から示唆される。ビタミン E のδ-トコトリエノールは、関節リウマチに対して治療効果
をもたらす可能性がある。f
Keywords: 関節リウマチ、δ-トコトリエノール、グルコサミン、コラーゲン誘発関節炎
2013
Muto C, Yachi R, Aoki Y, Koike T, Igarashi O, Kiyose C. Gamma-tocotrienol reduces the triacylglycerol level in rat primary hepatocytes
through regulation of fatty acid metabolism. J Clin Biochem Nutr. 2013 Jan;52(1):32-7. doi: 10.3164/jcbn.12-97.
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本研究は、ビタミン E 類似体、とりわけγ-トコトリエノール(γ-T3)が次の 3 種類のラット初代培養肝細胞における肝臓内 TG 蓄積および脂肪酸代謝関連酵
素に及ぼす影響について検討するために実施した。3 種類のラット初代培養肝細胞は、(1) 正常肝細胞、(2) パルミチン酸(PA)存在下でインキュベートし
た肝細胞、および (3) 脂肪蓄積を伴う肝細胞である。
得られた結果から、γ-T3 は正常肝細胞の TG 含量を有意に低下させることが明らかになった。γ-T3 はまた、カルニチンパルミトイル基転移酵素 I(CPT1A)
mRNA の発現を増加させ、さらに、ステロール調節エレメント結合タンパク質-1c(SREBP-1c)mRNA の発現を減少させる傾向が明らかになった。
加えて、γ-T3 は PA により誘発される C/EBP 相同タンパク質(CHOP)と SREBP-1c 両方の遺伝子発現を著しく抑制することが明らかになった。これら 2 種
類の遺伝子は小胞体(ER)ストレスの下流に位置するため、それらのγ-T3 による抑制は ER ストレスの減少を引き起こす可能性がある。さらに、γ-T3 は
CHOP シグナル伝達の下流に位置するインターロイキン 1β(IL-1β)の発現を抑制した。
まとめると、われわれのデータは、γ-T3 には脂肪肝を予防し、肝臓中の ER ストレスとそれに続く炎症を寛解させる可能性のあることを示唆している。f
Keywords: γ-トコトリノール、ラット初代培養幹細胞、脂肪肝、小胞体ストレス、炎症
2012
Matsunaga T, Shoji A, Gu N, Joo E, Li S, Adachi T, Yamazaki H, Yasuda K, Kondoh T, Tsuda K. γ-tocotrienol attenuates TNF-α-induced changes
in secretion and gene expression of MCP-1, IL-6 and adiponectin in 3T3-L1 adipocytes. Mol Med Report. 2012 Apr;5(4):905-9. doi:
10.3892/mmr.2012.770.
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ビタミン E ファミリーのメンバーであるトコトリエノールは抗炎症特性を有し、癌、心血管疾患、神経疾患のような種々の慢性疾患に対して活性を示すことが明ら
かにされている。しかしながら、トコトリエノールが脂肪組織における炎症反応の予防に寄与しているかについては依然として解明されていない。
本研究では、トコトリエノール異性体の中で最も一般的とされる γ-トコトリエノールが腫瘍壊死因子-α(TNF-α)誘導炎症反応に及ぼす影響について、
3T3-L1 脂肪細胞中のアディポカイン、単球走化性タンパク質 1(MCP-1)、インターロイキン 6(IL-6)、アディポネクチンの発現測定から検討を行った。
TNF-α(10 ng/ml)への 24 時間の曝露により、MCP-1 と IL-6 の分泌が増加し、アディポネクチン分泌とペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 γ
(PPARγ)mRNA 発現が減少した。
γ-トコトリエノールは MCP-1、IL-6、アディポネクチンの分泌、MCP-1、IL-6、アディポネクチン、PPARγ mRNA の発現における TNF-α 誘導性の有害変化を効
果的に改善した。
さらに、TNF-α が介する IκB-α リン酸化と核内因子 κB(NF-κB)活性化は、γ-トコトリエノール処理によって顕著に抑制された。
本研究で得られた結果から、γ-トコトリエノールは、NF-κB 活性化と炎症性アディポネクチン発現を減弱することによって、脂肪細胞における肥満と関連した機
能異常を改善する可能性のあることが示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、脂肪組織、TNF-α 誘導炎症反応、NF-κB、アディポネクチン
2011
Qureshi AA, Tan X, Reis JC, Badr MZ, Papasian CJ, Morrison DC, Qureshi N. Suppression of nitric oxide induction and pro-inflammatory
cytokines by novel proteasome inhibitors in various experimental models. Lipids Health Dis. 2011 Oct 12;10(1):177.
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炎症は、癌、心血管疾患、神経疾患をはじめとする様々な加齢性疾患に関与している。プロテアソームは種々の刺激に対する TNFα、IL-1、IL-6、一酸化
窒素(NO)のような何種類かの炎症媒介物の誘発を修飾する中心的な炎症調節因子の一つであることを、我々は最近証明した。
本研究は、老化するヒトの炎症媒介物産生を潜在的に抑制することにより加齢性疾患リスクを低減する可能性のある化合物であるという期待から、非毒性
のプロテアソーム阻害剤を特定するために実施した。
何種類かの供給源に由来するリポ多糖類(LPS)刺激マクロファージによる TNFα と iNOS mRNA の遺伝子発現を抑制する種々のプロテアソーム阻害剤の
能力の評価を行った。さらに、これらの阻害剤が TNFα と NO の産生を阻害する機構の評価を行った。
これらの試験期間中、4 種類の異なる系統のマウス[C57BL/6、BALB/c、proteasome double subunits knockout LMP7/MECL-1-/-、peroxisome
proliferator-activated receptor-α,-/- (PPAR-α,-/-) knockout マウス]に由来する RAW 264.7 細胞とチオグリコレート誘導腹腔内マクロファージに及ぼす
種々のプロテアーゼ阻害剤の作用の測定を行った。我々はまた、これらのプロテアーゼ阻害剤がウサギ筋肉由来 20S プロテアソームのタンパク質分解活性に及
ぼす作用の直接的な測定も行った。
ウサギ筋肉由来 20S プロテアソームのキモトリプシン様活性の有意な減少がデキサメサゾン(31%)、メビノリン(19%)、δ-トコトリエノール(28%)、リボフ
ラビン(34%)、クエルセチン(45%; p<0.05)について認められた。さらに、クエルセチンとリボフラボンは、RAW 264.7 全細胞におけるキモトリプシン様活性、
トリプシン様活性、ポストグルタマーゼ活性を阻害することも明らかになった。これらの化合物はまた、RAW 264.7 細胞における LPS 刺激 NO 産生と TNFα 分
泌を阻害、PIκB タンパク質の変性を阻止、また、NFκB の活性を低下することが明らかになった。
試験したすべてのプロテアソーム阻害剤は、4 系統すべてのマウスに由来する LPS 刺激チオグリコレート誘導腹腔内マクロファージによる NO 産生を有意に減少
させた(30%~60%の減少)。5 種類すべての化合物はまた、C57BL/6 と BALB/c マウス由来マクロファージによる LPS 刺激 TNFα 分泌を抑制することが明
らかになった。
しかしながら、TNFα 分泌は、LMP7/MECL-1-/-、PPAR-α,-/- knockout マウスに由来する LPS 刺激マクロファージで試験した 3 種類のプロテアソーム阻害剤
(δ-トコトリエノール、リボフラビン、クエルセチン)のいずれによっても抑制されなかった。TNFα と iNOS の遺伝子発現についての結果は、4 系統のマウスで観察
された TNFα タンパク質と NO 産生で得られた結果と概して一致していた。
本研究の結果から、δ-トコトリエノール、リボフラビン、クエルセチンは、4 系統すべてのマウスに由来する LPS 刺激マクロファージによる NO 産生と、C57BL/6 と
BALB/c マウス由来 LPS 刺激マクロファージのみによる TNFα 分泌を阻害することが実証された。
この抑制の機構は阻害されたプロテアソームによる PIκB タンパク質のタンパク質分解の減少で、結果として、活性化された NFκB の核への転座減少、TNFα と
iNOS の遺伝子発現の転写抑制を招いているようである。さらに、試験したこれら天然のプロテアソーム阻害剤は、炎症性プロテアソームにおける複数のプロテ
アソームサブユニットの相対的に強力な阻害剤と考えられる。それ故、これらの阻害剤には老化するヒトにおける炎症媒介物の産生を潜在的に抑制する可能
性があり、それにより様々な加齢性疾患の発生リスクを低減するかもしれない。
31
Keywords: δ-トコトリエノール、リボフラビン、クエルセチン、LPS 刺激マクロファージ、炎症性プロテアソーム
2010
Qureshi AA, Reis JC, Papasian CJ, Morrison DC, Qureshi N. Tocotrienols inhibit lipopolysaccharide-induced pro-inflammatory cytokines in
macrophages of female mice. Lipids Health Dis. 2010 Dec 16;9(1):143.
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炎症は心血管系疾患に関与していることが明らかにされている。また、炎症及び他のマクロファージ機能の発生におけるプロテアソームの重要な役割が実証さ
れている。
トコトリエノール類は β-ヒドロキシ-β-メチルグルタリル補酵素 A 還元酵素活性を阻害する強力なコレステロール低下剤であり、ユビキチン-プロテアソーム経路を
通じてその活性を低下させる。本研究の目的は、炎症低減におけるトコトリエノールの作用を評価することにある。
マウスマクロファージ系細胞株 RAW 264.7 と BALB/c 雌マウスにおける炎症のプロトタイプとしてリポ多糖類(LPS)を用いた。
本研究で得られた結果から、α-、γ-あるいは δ-トコトリエノールによる処理がウサギの筋肉に由来する 20S プロテアソームのキモトリプシン様活性を抑制すること
が明確に証明された(>50%、p<0.05)。
RAW 264.7 全細胞中のキモトリプシン、トリプシン、ポストグルタマーゼの活性は低濃度(<80 μM)で低下し、80~640 μM の濃度で徐々に上昇した。
トコトリエノールは LPS 刺激 RAW 264.7 細胞における TNF-α 分泌を 9~33%抑制した(p<0.05)。
BALB/c マウスを用いて行った実験の結果から、LPS 処理後の血清 TNF-α 濃度もまた 1、10 μg/kg の用量のトコトリエノールにより低下し(20~48%、
p<0.05)、より高濃度(40 μM)で血清中のコルチコステロン(19~41%、p<0.05)とアデノコルチコトロピンホルモン(81~145%、p<0.02)の濃度がそ
れに伴い上昇することが明らかになった。
LPS によって誘発された TNF-α の最大阻害は、δ-トコトリエノール(10.0 μg/kg)によって得られた。低濃度の δ-トコトリエノール(<20 μM)は対照群と比
較して腹腔マクロファージ(BALB/c マウスから調製)において LPS が誘発する TNF-α、IL-1β、IL-6、iNOS の遺伝子発現を阻害した一方(>40%)、高濃
度の δ-トコトリエノール(40 μM)は後者の遺伝子発現を増大させた。
これらの結果からプロテアソームの修飾因子としてトコトリエノールのような天然物質を用いた新規アプローチが示され、心血管疾患に加え炎症に基づく他の疾
患用の新たなトコトリエノールサプリメントの開発につながる可能性が考えられる。
Keywords: プロテアソーム、リポ多糖類、TNF-α、δ-トコトリエノール
Kaileh M, Sen R. Role of NF-kappaB in the anti-inflammatory effects of tocotrienols. J Am Coll Nutr. 2010 Jun;29(3 Suppl):334S-339S..
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転写因子の NF-κB ファミリーは、炎症と免疫に重要とされる遺伝子を調節している。殆どの細胞において、NF-κB の機能は種々の刺激によって細胞が活性
化される時に誘発される。しかしながら、構成的な NF-κB 活性は、とりわけ慢性的炎症や癌と関連のある NF-κB 機能と同様に重要なアスペクトとされている。
本稿では NF-κB の生物学的機序に関する概要を説明し、トコトリエノールの抗炎症作用を媒介する際に果たす NF-κB の役割について考察を行いたい。
転写因子の NF-κB ファミリーは、炎症と免疫応答の調節において中心的なプレーヤーである。従って NF-κB の調節障害は、自己免疫疾患から癌までヒトに
おける多様な病状に関与している。さらに、NF-κB が介する慢性炎症の老化への寄与に関心が高まっている。
NF-κB 依存性遺伝子調節は事実上全ての哺乳類の細胞において重要であることから、その機能に関する幾つかの基本的な特徴に留意することは介入治
療を考える際に重大な意味を持っている。
Keywords: NF-κB ファミリー、トコトリエノール、抗炎症作用、老化
2008
Wu SJ, Liu PL, Ng LT. Tocotrienol-rich fraction of palm oil exhibits anti-inflammatory property by suppressing the expression of
inflammatory mediators in human monocytic cells. Mol Nutr Food Res. 2008 Aug;52(8):921-9.
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パーム油のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)には、強力な抗酸化活性に加え、抗癌作用やコレステロール低下作用があることが明らかにされている。
本研究では、ヒト単球細胞株 THP-1 における炎症メディエータ、すなわち、一酸化窒素(NO)、プロスタグランジン E2(PGE2)、誘導一酸化窒素シンター
ゼ(iNOS)、サイトカイン(TNF-α、IL-4、IL-8)、シクロオキシゲナーゼ-1、-2(COX-1、COX-2)、核因子 κB(NF-κB)の産生の測定によって、LPS 誘
発炎症反応に TRF が及ぼす影響を調査することを目標とした。
0.5~5.0 μg/mL の濃度で TRF は、LPS 誘発細胞死に対して用量依存的に防御した。同じ濃度で TRF はまた、強力な抗炎症活性を示した。すなわち、LPS
(1 μg/mL)が誘発する NO と PGE2 放出の用量依存的な抑制、炎症性サイトカインの顕著な転写減少によってその作用が実証された。
1.0 μg/mL の濃度で TRF は、LPS による iNOS と(COX-1 ではなく)COX-2 の発現誘発を顕著に阻害した。この抗炎症活性は、NF-κB 発現阻害によっ
てさらに裏付けられた。
これらの結果から、TRF は強力な抗炎症活性を有し、その作用機構は NF-κB 発現に加え iNOS、COX-2 の産生阻害に起因している可能性があると結論付
けられる。
Keywords: TRF、LPS 誘発炎症反応、NF-κB 発現阻害、iNOS、COX-2 産生阻害
抗線維化作用
Antifibrogenic Effect
2011
Luna J, Masamunt MC, Rickmann M, Mora R, España C, Delgado S, Llach J, Vaquero E, Sans M. Tocotrienols have potent antifibrogenic
effects in human intestinal fibroblasts. Inflamm Bowel Dis. 2011 Mar;17(3):732-41.
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過剰な線維芽細胞の拡張と細胞外マトリックス(ECM)の沈着は、クローン病(CD)患者における腸閉塞発生のキーイベントである。トコトリエノールは、in
vitro でラット膵臓由来線維芽細胞に抗線維形成作用を及ぼすことが証明されたビタミン E 化合物である。
ヒト腸筋線維芽細胞(HIF)増殖、アポトーシス、オートファジー、ECM 合成に及ぼすトコトリエノールの作用を調査すことが本研究の目的である。
CD、潰瘍性大腸炎(UC)、及び正常な腸から単離した HIF をパーム油由来のトコトリエノール高含有フラクションで処理した。HIF 増殖は 3H-チミジン取込
みにより定量化した。アポトーシスは、DNA 断片化、ヨウ化プロピジウム染色、カスパーゼ活性化、及びポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの開裂によって調査し
た。オートファジーは、免疫蛍光による LC3 タンパク質の定量化と自食作用胞の同定によって分析した。また、ECM 分子の生成はウェスタンブロット法により測
定した。
TRF は CD と UC において HIF 増殖を著しく減少し、塩基性線維芽細胞成長因子誘導増殖を防止したが、コントロールの HIF ではそのような作用は認めら
れなかった。TRF はアポトーシスとオートファジーを促進して HIF の細胞死を増大させた。
オートファジーではなく HIF のアポトーシスは汎カスパーゼ阻害剤 zVAD-fmk によって防止された一方、両方のタイプの細胞死はミトコンドリア透過性遷移細孔
がサイクロスポリン A によって阻害された時に防止され、これらの過程におけるミトコンドリアの重要な役割が実証された。トコトリエノールは HIF による I 型プロコラ
ーゲンとラミニン γ1 の産生を減少した。
トコトリエノールは、細胞増殖減少、アポトーシスとオートファジーによるプログラム化された細胞死の増大、ECM 産生減少といった複数の作用を HIF に及ぼすこ
とが明らかになった。トコトリエノールの in vitro における抗線維化特性を考慮に入れると、トコトリエノールは CD 患者における腸閉塞の治療あるいは予防に有
用となる可能性がある。
Keywords: ヒト腸筋線維芽細胞、アポトーシス、オートファジー、細胞外マトリックス、腸閉塞
血管新生阻害
Angiogenesis Inhibition
2011
Li Y, Sun WG, Liu HK, Qi GY, Wang Q, Sun XR, Chen BQ, Liu JR. γ-Tocotrienol inhibits angiogenesis of human umbilical vein endothelia cell
induced by cancer cell. J Nutr Biochem. 2011 Dec;22(12):1127-36.
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食品成分が介在する抗血管新生療法は、癌の化学予防において確立された戦略の一つである。成長因子は腫瘍血管新生に重要な役割を果たしている。
ヒト胃腺癌細胞 SGC-7901 調整培地に由来する成長因子を含有する調整培地を本研究の血管新生様刺激として用いた。本研究の目的は、γ-トコトリエ
ノールが腫瘍血管新生に及ぼす阻害作用とその考えられる機構を評価することにある。
γ-トコトリエノール(10~40 μmol/L)は SGC-7901 細胞調整培地によって誘導されたヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の増殖、移動、毛細管形
成を用量依存的に顕著に抑制することが結果から明らかになった。
γ-トコトリエノール(800~1,200 μg/egg)はまた、成長するニワトリ胚しょう尿膜における新規血管形成を用量依存的に阻害することが明らかになった。
さらに、HUVEC に及ぼす γ-トコトリエノールの阻害効果は、40 μmol/L 用量の γ-トコトリエノールで G0/G1 期におけるアポトーシス及び細胞周期停止の誘導
と相関のあることが明らかになった。
加えて、γ-トコトリエノールは β-catenin、cyclin D1、CD44、phospho-VEGFR-2、MMP-9 のダウンレギュレーションによる HUVEC の血管新生を阻害すること
が明らかになった。
HUVEC に及ぼす γ-トコトリエノールの抗血管新生作用は、β-catenin 発現減少による Wnt シグナル伝達の調節に原因している可能性がある。
従って、本研究から得られた結果から、γ-トコトリエノールには抗血管新生作用を介した化学予防剤となる可能性のあることが示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、抗血管新生作用、HUVEC
2009
Shibata A, Nakagawa K, Sookwong P, Tsuduki T, Oikawa S, Miyazawa T. delta-Tocotrienol suppresses VEGF induced angiogenesis whereas
alpha-tocopherol does not. J Agric Food Chem. 2009 Sep 23;57(18):8696-704.
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近年、あまり知られていないビタミン E 化合物の一種であるトコトリエノール(T3)が、強力な抗血管新生薬として大きな注目を集めているが、これまでビタミン
E に関する研究の大部分はトコフェロール(Toc)に集中しており、一部の研究では α-Toc が腫瘍の血管新生を阻害する可能性が示唆されている。
今回の研究の目的は、δ-T3 と α-Toc との間で抗血管新生作用の違いを明らかにすることである。
研究の結果、δ-T3(2.5~5 μM)によってヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖、移動、および管形成が完全に阻害されるが、同様の用量の α-Toc で
はそのような効果がみられないことが明らかとなった。
δ-T3 によって VEGF 受容体 2(VEGFR-2)シグナリングが抑制され、HUVEC 中のカスパーゼが活性化された。
さらに、in vivo でマウスを対象にマトリゲルプラグ法を用いて血管新生の評価を行った結果、δ-T3(30 μg)は腫瘍細胞誘導性の血管形成を阻害するが、
α-Toc はそのような効果を持たないことが示された。
結論として、今回の結果から抗血管新生作用は δ-T3 が α-Toc よりまさっていることが示され、T3 と Toc では抗血管新生作用の原因となるメカニズムが異なっ
ている可能性が考えられる。
Keywords: 抗血管新生作用、δ-トコトリエノール、α-トコフェロール
Weng-Yew W, Selvaduray KR, Ming CH, Nesaretnam K. Suppression of tumor growth by palm tocotrienols via the attenuation of
angiogenesis. Nutr Cancer. 2009;61(3):367-73.
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パーム油由来のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)が固形腫瘍の増殖と成長を抑制することがこれまでの研究で明らかにされている。TRF の抗癌活性
は複数の機構によって生じ、その一つが抗血管新生であると言われている。
本研究で TRF の抗血管新生作用の調査を行った。TRF、δ-トコトリエノール(δT3)、α-トコフェロール(αToc)の in vitro での評価をヒト臍静脈内皮細胞
(HUVEC)を用いて行った。
TRF と δT3 は 4 μg/ml の濃度から細胞増殖を有意に抑制した(p<0.05)。細胞遊走は 12 μg/ml の δT3 で最も抑制された。TRF の抗血管新生特性に
ついて、ニワトリ胚漿尿膜(CAM)アッセイと BALB/c マウスモデルを用いて in vivo でさらに調査を行った。
200 μg/ml の TRF は CAM での血管ネットワークを減少させた。マウス 1 匹あたり 1 mg の TRF 処置は、BALB/c マウスにおける 4T1 腫瘍容積を有意に減少
させた。TRF は BALB/c マウス血清中の血管内皮増殖因子(VEGF)レベルを有意に低下させた。
結論として、本研究によりパーム・トコトリエノールは腫瘍退縮をアシストする可能性のある抗血管新生特性を呈することが明らかとなった。
Keywords: TRF、HUVEC、CAM、BALB/c マウス、VEGF、抗血管新生特性
2008
Shibata A, Nakagawa K, Sookwong P, Tsuduki T, Tomita S, Shirakawa H, Komai M, Miyazawa T. Tocotrienol inhibits secretion of angiogenic
factors from human colorectal adenocarcinoma cells by suppressing hypoxia-inducible factor-1alpha. J Nutr. 2008 Nov;138(11):2136-42.
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不飽和型のビタミン E であるトコトリエノールが腫瘍成長を最小限に抑える強力な血管新生阻害剤として多大な注目を最近集めているが、その正確な細胞
内機構はまだよく理解されていない。
低 酸 素 誘 導 性 因 子 -1α(HIF-1α)、その下 流 側 ターゲットの血 管 内 皮 増 殖 因 子 ( VEGF)、インターロイキン-8(IL-8)やシクロオキシゲナーゼ-2
(COX-2)のような他の血管新生促進因子が新生血管形成に重要な役割を果たしていることから、腫瘍血管新生に及ぼす T3 の抑制作用はこれらの血
管新生促進因子の調節によるものであるとする仮説の検証を行った。
ヒト結腸直腸腺癌細胞(DLD-1)とヒト肝癌細胞(HepG2)の 2 種類の細胞株を用いたところ、T3 異性体(2 μM/L)は DLD-1 由来の低酸素誘発
性の VEGF 分泌を抑制した。その抑制作用は、T3 のうちで δ-T3 が最も強力であることが明らかになった。
δ-T3 は mRNA とタンパク質両方の濃度で DLD-1 における低酸素誘発性 VEGF と IL-8 発現を抑制し、HIF-1α タンパク質発現の減少あるいは HIF-1α 分
解の増加による δ-T3 の抑制機構が明らかになった。また、δ-T3(2 μM/L)は低酸素誘発性 COX-2 による mRNA 発現に影響を及ぼさなかったが、低酸
素誘発性 COX-2 タンパク質発現を抑制する傾向が認められ(p=0.044)、δ-T3 による可能な転写後機構が示唆された。
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全体として、T3 は癌細胞からの血管新生促進因子に抑制作用を及ぼすことが得られた結果から確認され、T3 の血管新生抑制作用について新たな情報を
提供し得る機構が明らかにされた。
Keywords: DLD-1、HepG2、腫瘍血管新生、δ-T3、血管新生促進因子
Shibata A, Nakagawa K, Sookwong P, Tsuzuki T, Oikawa S, Miyazawa T. Tumor anti-angiogenic effect and mechanism of action of
delta-tocotrienol. Biochem Pharmacol. 2008 Aug 1;76(3):330-9.
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薬剤や食物成分による抗血管新生療法は、癌予防において確立された戦略の一つである。過去に行った細胞培養試験で、食事由来の抗血管新生成分
であるトコトリエノール(T3; 不飽和型ビタミン E)が強力な血管新生阻害剤と特定された。T3 異性体の中で、δ-T3 が最も強力な化合物と考えられている。
従って、本研究では δ-T3 が腫瘍血管新生に及ぼす抑制作用を評価することを目的とした。成長因子(すなわち、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖
因子)が腫瘍血管新生に重大な役割を果たしているため、ヒト結腸直腸腺癌細胞(DLD-1-CM)に由来するこれらの成長因子を豊富に含有する調整
培地を血管新生刺激として用いた。
δ-T3(2.5~5 μM)は、ヒト臍帯血管内皮細胞で DLD-1-CM が誘発する管腔形成、移動、接着を抑制した。これらの作用は、δ-T3 による活性酸素種
の発生と部分的に関連していることが明らかになった。
ウエスタンブロット法による分析の結果、δ-T3 の抗血管新生作用は、内皮細胞における誘発性のストレス反応に加え、成長因子依存性ホスファチジルイノシ
トール-3 キナーゼ(P13K)・ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ(PDK)・Akt シグナル伝達の調節に起因していることが明らかになった。
さらに、in vivo でマウスを対象にマトリゲルプラグ法を用いて血管新生の評価を行った結果、δ-T3(10~20 μg)が用量依存的に DLD-1 誘導性血管形成
の抑制を示すことが明らかになった。
これらの結果から、T3 には腫瘍血管新生を最小限に抑えるための治療的な栄養補助食品の利用可能性が示唆される。
Keywords: δ-T3、腫瘍血管新生、DLD-1-CM、成長因子、活性酸素種
Miyazawa T, Shibata A, Nakagawa K, Tsuzuki T. Anti-angiogenic function of tocotrienol. Asia Pac J Clin Nutr. 2008;17 Suppl 1:253-6.
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既存の血管から新たに血管が形成されることを意味する血管新生は、腫瘍の成長、関節リウマチ、糖尿病性網膜症のような複数の病状において根本的に
重要な事象とされている。
血管新生は、内皮細胞の活性化と運動、管腔形成をはじめとする一連の段階を伴う。これらの段階の薬剤あるいは食事由来の食物成分による調節は、血
管新生を伴う疾患の予防に有望なアプローチの一つと考えられる。
これらの背景を基に、血管新生を抑制する食物因子の調査を行った。その結果、トコトリエノール類(T3)のなかでもとりわけ δ-、β-、γ-T3 が in vitro、in
vivo 実験で強力な抗血管新生活性を有することが明らかになった。
米糠やパーム油に豊富に存在する T3 は、ヒト臍帯血管内皮細胞において成長因子誘発性増殖、細胞遊走、管腔形成を抑制した。
T3 はマウス背部皮下法で腫瘍細胞誘発性血管新生を抑制することが明らかになった。これらの結果は、T3 が強力な抗血管新生作用を有する化合物であ
ることを示している。トコフェロール(Toc)は、血管新生を抑制しなかった。
T3 と Toc の血管新生制御メカニズムをウエスタンブロット法により評価した。T3 は成長因子誘発性細胞外信号調節キナーゼ、Akt(タンパク質キナーゼ B)、
内皮型一酸化窒素シンターゼの活性化を抑制した。これらは、種々の成長因子受容体の下流に位置している。
T3 はまた、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体-2 のリン酸化を用量依存的に抑制した。T3 の血管新生制御メカニズムは、成長因子が誘発する細
胞の生存、移動、血管新生シグナルの抑制を媒介する。
これらの所見から、T3 にはヒトにおける血管新生介在性疾患を予防する可能性が示唆される。
Keywords: β-、γ-、δ-T3、抗血管新生作用、ヒト臍帯血管内皮細胞、マウス背部皮下法
2007
Nakagawa K, Shibata A, Yamashita S, Tsuzuki T, Kariya J, Oikawa S, Miyazawa T. In vivo angiogenesis is suppressed by unsaturated vitamin E,
tocotrienol. J Nutr. 2007 Aug;137(8):1938-1943.
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薬剤や食物成分を用いた抗血管新生療法は、腫瘍増殖、糖尿病網膜症、慢性関節リウマチのような血管新生を介した種々の疾患の予防で認められてい
る療法である。
食物由来の血管新生阻害成分をスクリーニングするためにウシ大動脈内皮細胞とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の両方を用いて行ったわれわれの予
備的な細胞培養研究から、不飽和型のビタミン E であるトコトリエノール(T3)が強力な血管新生阻害物質であることが明らかになった。それ故、二種類の
良く特徴付けされたモデル[マウス背部皮下(DAS)法: DAS 法、ニワトリ胚漿尿膜(CAM)法: CAM 法]を用いて、T3 の抗血管新生特性を in vivo
で調査した。
DAS 法では、腫瘍細胞移植マウスにおける血管新生の増加[新脈管形成指数 (angiogenesis index): 4.8±0.6]が食事性 T3 高含有油 1 日 10 mg
(T3: 4.4 mg/日)の補給によって抑制された[新脈管形成指数: 2.7±0.6]。また、CAM 法では、T3(500~1,000 μg/卵)が CAM 上培養で新規血
管形成を阻止し、無血管域の発生回数を増加させた(36~50%)。
血管新生阻害機構を評価するために細胞培養試験を行った。T3 は、活性の最も高い δ-T3 によって、HUVEC における繊維芽細胞成長因子誘発性の増
殖、移動、管形成を有意に減少させることが明らかになった(p<0.05)。
ウエスタンブロット分析の結果、δ-T3 は線維芽細胞成長因子で処理した HUVEC においてホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ(PDK)及び Akt のリン
酸化を抑制し、アポトーシスシグナル調整キナーゼ(apoptosis signal-regulating kinase)及び p38 のリン酸化を増加させることが明らかになり、T3 の血管
新生阻害作用は内皮細胞におけるアポトーシス誘発に加え、成長因子依存性のホスファチジルイノシトール-3 キナーゼ/PDK/Akt 系シグナルにおける変化と
関連があることが示された。
われわれの所見は、T3 には血管新生が関与する疾患を予防する健康促進的な栄養補助食品としての可能性があることを示唆している。それ故、今後 T3 の
有効性と安全性を評価するための臨床試験が必要とさている。
Keywords: DAS 法、CAM 法、δ-T3、抗血管新生特性、HUVEC
2004
34
Miyazawa T, Inokuchi H, Hirokane H, Tsuzuki T, Nakagawa K, Igarashi M. Anti-angiogenic potential of tocotrienol in vitro. Biochemistry
(Mosc). 2004 Jan;69(1):67-9.
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血管新生の調節は、種々の血管新生介在性疾患の予防で現在認められている戦略の一つである。
よく特徴付けられた in vitro 系を用いて、特に天然トコフェロール類似体であるトコトリエノールに重点を置いて、ビタミン E 化合物の抗血管新生特性について
調査を行った。
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トコフェロールではなくトコトリエノールは、ウシ大動脈内皮細胞の増殖をマイクロモーラー程度の低濃度の範囲で用量依存的に抑制した。トコトリエノールはま
た、3D コラーゲンゲル中で伸張した内皮細胞のネットワーク形成も顕著に抑制した。
これらの結果から、トコトリエノールは有用な治療剤の開発、あるいは腫瘍血管新生予防の食物因子の可能な候補となり得ることが示唆される。
Keywords: 抗血管新生特性、ウシ大動脈内皮細胞、3D コラーゲンゲル
癌全般
Cancers
2011
Dufès C. Delivery of the vitamin E compound tocotrienol to cancer cells. Ther Deliv. 2011 Nov;2(11):1385-9..
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ビタミン E 化合物ファミリーのメンバーであるトコトリエノールは、その極めて有望とされる抗癌作用から、ますます注目を浴びている。しかしながら、その生物学的
利用能が低いこと、静脈内投与後に治療濃度で特定の腫瘍に到達できなことから、癌治療における可能性は限定的であるのが現状である。
これらの問題に取り組むために、トコトリエノールの γ-サイクロデキストリン、前駆薬剤あるいはエマルジョンでの封入、脂質ナノ粒子あるいは脂質ベシクルへの取り
込みのような様々な送達戦略が提案されてきた。
これらのアプローチのうち、我々はその受容体が多数の癌細胞上に過剰発現するトランスフェリンを輸送するビシクルへのトコトリエノールの取り込みが癌細胞に
よる吸収を著しく改善し、トランスフェリン受容体を過剰発現することを実証した。
その結果、トランスフェリン輸送ベシクルに取り込まれたトコトリエノールの静脈内投与は、実験動物の生存率改善に加え、腫瘍退縮を引き起し、また、げっ歯
類腫瘍モデルの何種類かの症例では腫瘍抑制にさえ成功した。
それ故、トランスフェリン輸送ベシクルは in vitro と in vivo でトコトリエノールの癌細胞への送達に極めて有望であることが明らかになった。トコトリエノールの抗癌
治療効果を最適化するためにさらに調査の実施が必要とされる。
Keywords: 送達戦略、トランスフェリン、ベシクル
Nesaretnam K, Meganathan P. Tocotrienols: inflammation and cancer. Ann N Y Acad Sci. 2011 Jul;1229:18-22.
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炎症は環境上の攻撃に対する生物の反応の一つである。炎症は、治療により回復に至る急性炎症、癌や他の疾患の発生を引き起す可能性のある慢性炎
症に類別することができる。
癌細胞自身に生じる遺伝的変化は癌発生の多くの局面に関与しているが、腫瘍の促進と進行に付随する過程に依存している。
炎症は癌の発生に長期間関係している。癌細胞の増殖、転移、アポトーシスシグナル伝達回避、化学療法抵抗性発現における異なる特性は炎症反応と
関連している。
複数の遺伝子と種々の経路の関与から、単一遺伝子を標的とする現下の薬剤では有効な治療法を提供することができない。他方では、天然由来成分が
複数の遺伝子を標的とし、薬剤と比べて良好な奏功を示している。ビタミン E の強力なイソ型であるトコトリエノールは、そのような天然由来成分の一つである。
本総説では、特に NF-κB、STAT3、COX-2 が果たす役割に焦点を合わせて、癌と炎症の関係について考察したい。
Keywords: 炎症反応、天然由来成分、NF-κB、STAT3、COX-2
2010
Banks R, Speakman JR, Selman C. Vitamin E supplementation and mammalian lifespan. Mol Nutr Food Res. 2010 May;54(5):719-25.
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ビタミン E は炭素数 16 の側鎖を伴うクロマン環から構成される類似した化学構造を有する何種類かの化合物のファミリーを指す言葉である。その化合物は側
鎖の飽和度、メチル基の位置と性質によってトコフェロールかトコトリエノールと呼ばれる。
ビタミン E 化合物は、そのクロマン環に水酸基が存在することから抗酸化特性を有している。ビタミン E にはまた、シグナル伝達と遺伝子発現を調節している可
能性のあることも最近示唆されている。
生涯にわたる食事性ビタミン E(α-トコフェロール)の補給が C57BL/6 マウスの寿命の中央値を 15%延長することを以前に報告した。
寿命の延長はいかなる抗酸化作用とも無関係のようである。癌は小型げっ歯類の死亡の主因であることから、この寿命の延長は P21 シグナル伝達経路導入
による抗癌作用を反映している可能性のあることが、転写法を用いた検討から示唆される。ビタミン E 補給後の寿命延長における本経路の役割について更な
る調査が必要であるこを提案する。
Keywords: 寿命延長、小型げっ歯類、P21 シグナル伝達経路導入
Ju J, Picinich SC, Yang Z, Zhao Y, Suh N, Kong AN, Yang CS. Cancer preventive activities of tocopherols and tocotrienols. Carcinogenesis.
2010 Apr;31(4):533-42.
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ビタミン E の癌予防活性について研究が行われてきた。いくつかの疫学的調査からビタミン E の癌形成予防効果が示唆されてきたが、α-トコフェロール(通常は
大量摂取)による大規模介入試験の多くでは癌予防効果は示されていない。
α-トコフェノールを動物モデルで使用した研究でも、明確な癌予防効果は示されなかった。明白な癌予防効果が示されない理由として考えられるひとつの解釈
は、高用量の α-トコフェロールのために、γ-および δ-トコフェロールの血中および組織内濃度が低下するというものである。
γ-トコフェロールはその強力な抗炎症活性およびその他の作用から、癌予防により効果的なビタミン E 化合物である可能性が示唆されている。我々の最近の
研究から、動物モデルにおいて γ-トコフェロール高含有トコフェロール混合物が結腸、前立腺、乳房、および肺での腫瘍形成を抑制することが示されており、そ
のためこの混合物をヒトの癌予防に適用できる可能性が高いことが示唆される。
今回の総説では、トコフェロールの生化学的性質、ヒトおよび動物モデルにおける潜在的な癌予防効果の結果、および発癌抑制に関して考えられるメカニズム
について考察する。
こうした情報に基づき、γ-トコフェロール高含有トコフェロール混合物は非常に有望な癌予防剤であり、将来広範な調査を行う価値があることを提案する。
Keywords: γ-トコフェロール高含有トコフェロール混合物、発癌抑制
2009
35
Fu JY, Blatchford DR, Tetley L, Dufès C. Tumor regression after systemic administration of tocotrienol entrapped in tumor-targeted vesicles.
J Control Release. 2009 Dec 3;140(2):95-9.
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抗癌作用を持つビタミン E 抽出物であるトコトリエノールは、静脈内投与後に正常組織に副次的効果は及ぼさないものの、腫瘍特異的に分布させることがで
きないためにその治療能が制限されている。
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表面にトランスフェリンを有する小胞内にトコトリエノール高含有フラクション(TRF)を封入すれば、多くの癌細胞でトランスフェリン受容体が過剰発現している
ために、静脈内投与後にトコトリエノールを選択的に腫瘍へと分布させることができると仮定した。
したがって今回の研究の目的は、TRF を封入したトランスフェリン標的化小胞を作成および特性化し、in vitro および in vivo でその治療有効性を評価するこ
とである。
TRF をトランスフェリン標的化小胞に封入した結果、TRF 溶液の場合と比較して A431(類表皮癌)、T98G(神経膠芽細胞腫)、および A2780(卵巣
癌)細胞株への取り込みが 3 倍上昇し、細胞毒性が 100 倍上昇した。
TRF をトランスフェリン標的化小胞に封入してマウス異種移植モデルに静脈内投与した結果、対照実験での観察とは異なり、腫瘍の縮小および生存率の改
善が認められた。マウスに対する治療の忍容性は良好であった。
今回の研究はトコトリエノールを封入できる腫瘍標的デリバリーシステムを初めて作成したもので、その結果から TRF を封入したトランスフェリン標的化小胞は非
常に有望な治療システムであり、静脈内投与後に目立った毒性を示さずに腫瘍を縮小させることが示された。
Keywords: 腫瘍標的デリバリーシステム、トランスフェリン標的化小胞
Comitato R, Nesaretnam K, Leoni G, Ambra R, Canali R, Bolli A, Marino M, Virgili F. A novel mechanism of natural vitamin E tocotrienol
activity: involvement of ERbeta signal transduction. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2009 Aug;297(2):E427-37.
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ビタミン E はトコフェロール(TOC)およびトコトリエノール(TT)のすべての誘導体を総称的に示す用語である。
ここ数年の数本の論文で、パーム油から抽出された TT 高含有フラクション(TTRF)が多数の癌細胞で増殖を抑制しアポトーシスを誘導することが示された。
しかし TT の作用に関わる分子メカニズムはいまだ不明である。
今回の研究で、我々は初めてエストロゲン受容体(ER)シグナリングが関係する新たな TT 活性のメカニズムを提案した。
コンピュータ内シミュレーションおよび in vitro 結合解析によって、TT は ERα ではなく ERβ に高い親和性を示すことが示唆された。
さらに ERβ を発現する MDA-MB-231 乳癌細胞を ER 阻害剤 ICI-182 および 780 でプレインキュベーションした実験系において、TT によって ERβ の核内移
行が増加し、その結果エストロゲン応答遺伝子(MIC-1、EGR-1、およびカテプシン D)が活性化されることが示された。
最後に、TT 処理が細胞の形態変化、DNA 断片化、およびカスパーゼ-3 の活性化に関わることが示された。
全体として、これらの実験によって γ-および δ-TT 作用の根底にある分子メカニズムが解明された。
Keywords: γ-、δ-トコトリエノール、エストロゲン受容体シグナリング、ERβ
Wada S. Chemoprevention of tocotrienols: the mechanism of antiproliferative effects. Forum Nutr. 2009;61:204-216.
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トコトリエノールは抗腫瘍因子としての可能性が報告され、また商業的には食事性の抗酸化サプリメントとして広く実用化されている。
トコトリエノールにはトコフェロールよりも高い生物活性が顕著に認められるが、トコトリエノールの血清レベルはトコフェロールのそれよりはるかに低い。このことは、ト
コトリエノールの細胞内濃度がトコフェロールと比べ著しく高く、またトコトリエノールの蓄積が腫瘍内に認められていることに原因している可能性がある。
トコトリエノールの抗発癌機構として、抗増殖作用、アポトーシス誘導、細胞周期調節、抗酸化活性、血管新生抑制、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵
素 A(HMG-CoA)還元酵素活性阻害が過去の in vivo と in vitro 両方の研究報告から示唆されている。
宿主細胞の生存期間延長がトコトリエノールで処置した腫瘍移植マウスで認められた。トコトリエノールは主としてミトコンドリアを介した経路によってアポトーシス
を誘導する。トコトリエノールによる細胞周期停止はサイクリン D 抑制に帰因する。
トコトリエノールはまた、血管新生性増殖、移動、管形成も抑制する。悪性増殖は HMG-CoA 還元酵素の活性上昇を必要とし、トコトリエノールはその活性
を抑制する。トコトリエノールによる処置は癌遺伝子発現を減少させ、腫瘍抑制因子を増大させる。
癌の予防あるいは治療に及ぼすトコトリエノールの影響を評価する臨床試験は僅かしか実施されていない。α-トコフェロールには限定的に前立腺癌を予防す
る可能性のあることが示唆されている一方、トコトリエノールの癌予防に果たす役割を裏付けるだけの説得力のある証拠は存在しない。また、トコトリエノールの
有益作用、有害作用のいずれについてもこれまで充分な調査がなされていない。
上に述べたトコトリエノールの機構は癌予防に有望と思われるが、トコトリエノールの有効性と安全性を評価するさらなる臨床試験が必要とされる。
Keywords: 抗増殖作用、アポトーシス誘導、細胞周期調節、抗酸化活性、血管新生抑制、HMG-CoA 還元酵素活性阻害
Miyazawa T, Shibata A, Sookwong P, Kawakami Y, Eitsuka T, Asai A, Oikawa S, Nakagawa K. Antiangiogenic and anticancer potential of
unsaturated vitamin E (tocotrienol). J Nutr Biochem. 2009 Feb;20(2):79-86.
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腫瘍の発現抑制に及ぼすトコトリエノール(T3; 不飽和のビタミン E)の有益作用を数件の証拠が裏付けている。
酸化ストレスの減少、腫瘍と内皮細胞におけるシグナル伝達経路の調節を含む多くの要因がこのような T3 の抗癌作用に関与している一方、T3 の抗癌特性
についての in vivo での効力と正確な細胞内の機構は依然として充分な理解がなされていない。
われわれは T3 が癌に及ぼす抑制作用は T3 の抗血管新生活性に起因している可能性があると仮説を立て、T3 が内皮細胞における成長因子依存性シグナ
ル伝達の強力なレギュレーターとして、また腫瘍成長を最小限に抑える抗血管新生因子として作用していることを見出した。
本報では、ビタミン E の歴史と生物作用(すなわち抗癌作用)を再考し、T3 の抗血管新生作用とその機構に関する最近の研究について述べたい。
Keywords: 抗癌特性、成長因子依存性シグナル伝達、抗血管新生因子
2008
Constantinou C, Papas A, Constantinou AI. Vitamin E and cancer: An insight into the anticancer activities of vitamin E isomers and analogs.
Int J Cancer. 2008 Aug 15;123(4):739-52.
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文献で見出される最近の観察結果から、ビタミン E は癌の補助化学療法に適した候補の一つになる可能性が示唆されている。歴史的に見ると、ほとんどの研
究が α-トコフェロールに焦点を合わせているが、その他のビタミン E 異性体(β-、γ-、δ-トコフェロール、α-、β-、γ-、δ-トコトリエノール)はそれらのアポトーシス誘
導能の点で異なっていることが最近の証拠から示唆されている。
このような情報の中では、アポトーシス誘導時にビタミン E 異性体とその類似体によって調節される分子メカニズムに関する最新の理解が主たる焦点となってい
る。
ビタミン E の異性体と類似体によるアポトーシス誘導の主な標的がミトコンドリアであること、またこれらの作用物質によって制御される種々のシグナル伝達経路
は、初めにミトコンドリアによって引き起されるアポトーシスの実質的な経路を最大化するために寄与している可能性があることを本総説では強調している。
最近発表された研究結果を総合すると、以下のような重要な結論が導き出される。(i) 各異性体・誘導体の抗酸化活性とアポトーシス誘導能の間に直接
的な関連性は存在しない、(ii) トコトリエノールはトコフェロールよりも効果の高いアポトーシス誘導剤である、(iii) 天然に見出される化合物の化学修飾はアポ
トーシス誘導能を高める可能性がある、(iv) ビタミン E の異性体と誘導体はカスパーゼ依存性アポトーシス経路を調節する。
ビタミン E 類似体を他の制癌化学療法剤と併用した場合に得られる付加的あるいは相乗的効果に関して、本総説で紹介した証拠と後者の組合せは、最も
有望なビタミン E 誘導体を設計し、それらを補助化学療法のなかで臨床的に試験する今後の研究を支持している。
Keywords: 補助化学療法、アポトーシス誘導能、カスパーゼ依存性アポトーシス経路
Nesaretnam K. Multitargeted therapy of cancer by tocotrienols. Cancer Lett. 2008 May 24.
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健康上の利益が期待できそうな天然化合物は、ヒトのヘルスケアに関連した分野において魅力的な研究対象となってきている。ヒトの様々な病気の予防と治
療のために、そのような天然化合物が毒性の低さから化学合成品よりも好まれている。
天然の化合物はまた体内に容易に吸収される。そのなかでもビタミンは、有益と考えられる天然あるいは内因性の化合物のなかで突出している。ビタミン E グル
ープに属する化合物は、抗酸化特性とそれに関連した保護特性をはじめとし、提案されている健康上の利点から最も良く知られているビタミンの一つである。
ビタミン E の中でもトコトリエノール類は、一定の系で認められた応用可能性と良好な保護効果から、ここ数年認知度が高まっている。これらトコトリエノール類
はビタミン E 誘導体で、ビタミン E の中ですでに確立された形、すなわちトコフェロール類の同族体である。
トコトリエノールには、その強力な抗酸化活性に加え、とりわけ心疾患系の健康維持、癌をはじめとする疾患の予防に果たす可能な役割など、他の重要な機
能が備わっている。
Keywords: 抗酸化活性、心疾患系の健康維持、癌、予防
2007
Sylvester PW. Vitamin E and apoptosis. Vitam Horm. 2007;76:329-56.
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天然のすべてのトコフェロールとトコトリエノールは強力な抗酸化剤であり、過酸化反応を調節し、体内のフリーラジカル産生を制御している。
しかし現在では、個々のビタミン E イソ型によって媒介される生物作用の多くは、それらの抗酸化活性に依存していないことが明らかにされている。また、もはや
抗酸化活性のない合成のビタミン E のエーテル誘導体も広範囲の生物活性を示している。
天然ビタミン E とビタミン E 誘導体の治療への応用について検討されているなかで最も興味深いものの一つに、抗癌剤としての利用がある。ビタミン E の特定の
形は、広範囲の癌細胞のタイプに対して強力なアポトーシス活性を示す一方で、正常細胞の機能や生存能力にはほとんどあるいは全く作用を及ぼさない。
実験的研究では、特定のビタミン E 化合物のアポトーシス誘発作用を媒介する細胞内機構は、異なるタイプの癌細胞でにおいて多様性を示し、化学療法剤
に対する多剤耐性腫瘍細胞の感受性を復元することも明らかにされている。
これらの所見は、天然・合成ビタミン E のうちの何種類かの類似体は、治療有効性を高め、他の抗癌剤の毒性を低下させるために、単独あるいは併用による
抗癌治療として有効利用し得ることを強く示唆している。
Keywords: 天然・合成ビタミン E、抗癌剤、アポトーシス活性、抗癌治療
1999
Mo H, Elson CE. Apoptosis and cell-cycle arrest in human and murine tumor cells are inhibited by isoprenoids. J Nutr. 1999;129;804-13.
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様々な種類のフィトケミカルが、癌リスクを有効に低下させる生物学的反応を誘導する。純粋あるいは混合のイソプレノイドとして広く定義 されるフィトケミカルの
ある種類には、推定で 22,000 もの化合物が含まれている。
代表的な混合イソプレノイドの γ-トコトリエノールは、げっ歯動物 B16(F10)黒色腫細胞、ヒト乳腺癌(MCF-7)と白血病(HL-60)細胞の成長をより
強く抑制する。純粋イソプレノイドである β-イオノンは、B16 細胞、MCF-7、HL-60 とヒト結腸腺癌(Caco-2)細胞の成長をより強く抑制する。
Ras と p53 状態が異なる様々な細胞株で得られた結果は、イソプレノイドが媒介する成長抑制が、変異した Ras と p53 の機能とは無関係であることを明らか
にした。
β-イオノンは、ヒト結腸線維芽細胞(CCD-18Co)の成長を抑制したが、Caco-2 細胞の成長を抑制するのに必要とされる 3 倍の濃度のときだけである。イソ
プレノイドは、アポトーシスを誘導し、細胞周期のフェーズ G1 で細胞を随伴性に停止させた。両方とも 3-hydroxy-3-methylglutaryl CoA 還元酵素活性を
抑制する。β-イオノンとロバスタチンは、娘核を集めるのに必須の活性である lamin B の転写後処理を妨げた。この干渉は、新しく合成された DNA をエンドヌク
レアーゼ活性に有効なものとし、アポトーシスを導くとわれわれは仮定する。
ロバスタチンを課したメバロン酸飢餓は、細胞表面に対する成長因子受容体の糖鎖形成と転位を抑制した。その結果、細胞は細胞周期のフェーズ G1 で停
止した。この原理は、イソプレノイドが媒介するフェーズ G1 での腫瘍細胞の停止に応用できる可能性がある。
腫瘍細胞増殖抑制とアポトーシスのイニシエーションにおけるこれらイソプレノイドの付加的、潜在的相乗作用は、植物の生成物の様々なイソプレノイド成分の
多くの作用と結び付けて、果物、野菜、穀物の消費が癌リスクに及ぼす影響力を部分的に説明できそうである。
Keywords: γ-トコトリエノール、β-イオノン、腫瘍細胞増殖抑制、アポトーシス
1994
Goh SH, Hew NF, Norhanom AW, Yadav M. Inhibition of tumour promotion by various palm-oil tocotrienols. Int J Cancer. 1994;57:529-31.
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種々のビタミン E 化合物(トコフェロールとトコトリエノール)とそれらの幾つかのニ量体による腫瘍プロモート抑制作用を、Epstein-Barr virus(EBV)ゲノム媒
介ヒトリンパ芽球細胞における EBV early antigen(EA)発現の活性化を用いた in vitro での分析により検討した。
結果は、パーム油由来の γ-、δ-トコトリエノールが、12-0-tetradecanoylphorbol-13-acetate(TPA)により誘発された Raji 細胞における EBV EA 発現を
抑制することにより腫瘍プロモートに対する強い作用を示したことを明らかにした。しかしながら、α-、γ-トコフェロールと γ-トコトリエノールあるいは γ-トコフェロール
の二量体にはこのような作用はなかった。
Keywords: 腫瘍プロモート抑制作用、γ-、δ-トコトリエノール
1989
Komiyama K, Iizuka K, Yamaoka M, Watanabe H, Tsuchiya N, Umezawa I. Studies on the biological activity of tocotrienols. Chem Pharm Bull.
1989;37:1369-71.
37
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マウス腹腔内に接種したマウス可移植腫瘍に対するトコトリエノールの活性を評価し、2 種類のトコトリエノールと α-トコフェロールの活性を比較した。
化合物を腹腔内に注射したとき、α-、γ-トコトリエノールは、sarcoma 180、Ehrlich carcinoma、IMC carcinoma に対し効果があった。また、γ-トコトリエノー
ルは、Meth A fibrosarcoma 移植マウスでわずかな延命効果を示したが、トコトリエノール類としては、5~40 mg/kg/日の用量で P388 leukemia に対し抗
腫瘍作用を示さなかった。
一方、α-トコフェロールには sarcoma 180 と IMC carcinoma に対しわずかに効果があった。γ-トコトリエノールの抗腫瘍活性は、α-トコトリエノールより高かっ
た。
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ヒト、マウスの腫瘍細胞を in vitro でこれらの物質に 72 時間曝したとき、トコトリエノールはそれらの細胞に対し成長抑制作用を示したが、トコフェロールは何ら
顕著な細胞毒性活性を示さなかった。
α-、γ-トコトリエノールは、アドリアマイシンによるマウスミクロソームの脂質過酸化に抑制効果を及ぼした。
Keywords: マウス可移植腫瘍、α-、γ-トコトリエノール、成長抑制作用
乳 癌
Breast Cancer
2013
Sylvester PW, Ayoub NM. Tocotrienols target PI3K/Akt signaling in anti-breast cancer therapy. Anticancer Agents Med Chem. 2013
Sep;13(7):1039-47.
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PI3K-Akt シグナル伝達経路はさまざまな種類の癌細胞においてマイトジェン依存性の増殖と生存を媒介し、この経路の阻害は腫瘍細胞の増殖停止とアポト
ーシスを引き起こす。トコトリノールは天然のビタミン E で、正常細胞の生存性にほとんどまたはまったく影響を及ぼさない投与量で強力な抗癌活性を示す。
機構的研究から、γ-トコトリエノールの抗癌作用は PI3K-Akt シグナル伝達抑制と関連のあることが明らかにされている。追加研究から、γ-トコトリエノールの細
胞毒性を引き起こす量(LD50)は増殖を阻害する量(IC50)より 3~5 倍高いことが明らかにされ、γ-トコトリエノールの細胞毒性効果と抗増殖効果は異
なる機構を介している可能性のあることが示唆されている。
しがしながら、乳房腫瘍細胞中でγ-トコトリエノールによって誘発されるカスパーゼ活性化とアポトーシスは、細胞内 PI3K-Akt シグナル伝達の抑制、それに続く
FLIP(カスパーゼのプロセシングと活性化の内在性阻害物質)のダウンレギュレーションと関連のあることも明らかにされている。
乳癌細胞はγ-トコトリエノールが PI3K-Akt シグナル伝達に及ぼす阻害効果に対して正常細胞より著しく感受性が高いため、これらの所見からγ-トコトリエノー
ルには女性の乳癌リスクを低減する重要な健康利益をもたらす可能性のあることが示唆される。γ-トコトリエノールと他の化学療法剤との併用処置は相乗的
な抗癌反応を引き起こすことも研究で示されている。
γ-トコトリエノールの抗癌における作用機構が他の薬剤のその機構に相補的に働き、乳癌の予防と治療またはそのいずれかに著しい健康利益をもたらし、同
時に高用量の単独単剤療法と一般に関連のある腫瘍抵抗性または毒性作用が回避された場合に併用療法は最も有効となる。
Keywords: γ-トコトリエノール、PI3K-Akt シグナル伝達、乳房腫瘍細胞、細胞毒性効果、抗増殖効果、併用療法
Akl MR, Ayoub NM, Abuasal BS, Kaddoumi A, Sylvester PW. Sesamin synergistically potentiates the anticancer effects of γ-tocotrienol in
mammary cancer cell lines. Fitoterapia. 2013 Jan;84:347-59. doi: 10.1016/j.fitote.2012.12.013.
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γ-トコトリエノールとセサミンは強力な抗癌活性を示すフィトケミカルである。セサミンはトコトリエノールの代謝分解を阻害することから、セサミンとの併用処置が新
生物マウス(+SA)およびヒト(MCF-7、MDA-MB-231)乳癌細胞に及ぼす γ-トコトリエノールの抗増殖作用を増強するか決定するための研究を実施し
た。
γ-トコトリエノールまたはセサミン単独による処置は有意な用量応答性増殖阻害を引き起こしたのに対し、これらの作用物質の併用処置は+SA、MCF-7 およ
び MDA-MB-231 乳癌細胞の増殖を相乗的に阻害した。その一方で、同じ治療用量で正常(マウス CL-S1 およびヒト MCF-10A)乳腺上皮細胞の増殖
または生存性にほとんど影響を及ぼさないことが結果から明らかになった。
しかしながら、セサミンによる γ-トコトリエノール誘発性抗癌作用の相乗的増強が γ-トコトリエノールの代謝低下を介しているかは分からなかった。むしろ、亜有
効用量の γ-トコトリエノールとセサミンの併用処置が G1 期細胞周期停止を誘発し、対応するサイクリン、D1、CDK2、CDK4、CDK6、phospho-Rb および
E2F1 のレベル低下、ならびに p27 と p16 のレベル上昇をもたらすことが分かった。併用処置の抗増殖作用によりアポトーシスが開始せず、乳癌細胞の生存性
低下がもたらされることが追加研究から明らかになった。
まとめると、これらの所見はマウスおよびヒト乳癌細胞における γ-トコトリエノールとセサミンの併用処置の相乗的な抗増殖作用は細胞障害性ではなく細胞分
裂抑制性であり、G1 期細胞周期停止に起因していることを示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、セサミン、併用処置、抗増殖作用
2012
Akl MR, Ayoub NM, Sylvester PW. Mechanisms mediating the synergistic anticancer effects of combined γ-tocotrienol and sesamin
treatment. Planta Med. 2012 Nov;78(16):1731-9. doi: 10.1055/s-0032-1315302.
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細胞増殖と細胞生存を調節する特定の細胞内シグナル伝達経路の減衰により乳癌リスクを低下させるフィトケミカルの能力が疫学調査によって浮き彫りにさ
れてきた。
天然ビタミン E の一つのタイプである γ-トコトリエノールは、正常細胞に識別可能な毒性を及ぼさない用量で強力な抗癌活性を示すことが明らかにされている。
ゴマ油に豊富に存在するフィトケミカルの一つであるセサミンもまた、ヒト乳癌細胞に抗増殖活性及び抗血管新生活性を及ぼすことが明らかにされている。
本研究において、MTT 分析及び免疫蛍光染色(Ki-67)で測定した結果、亜有効用量の γ-トコトリエノールとセサミンの併用処理はマウス+SA 乳腺上皮
細胞の成長に相乗的阻害を引き起すことが確認された。
ウェスタンブロット法による試験から、低用量の γ-トコトリエノールとセサミンの併用処理は、1 種類の化合物のみで処理した細胞又は賦形剤で処理した対照
群と比較して、EGF 誘導 ErbB3 及び ErbB4 受容体のリン酸化(活性化)の顕著な減少、並びに細胞内の総/リン酸化 c-Raf、MEK1/2、ERK1/2、PI3K、
PDK1、Akt、p-NFκB、Jak1、Jak2 及び Stat1 のレベルの相対的に大きな低下を引き起すことが明らかになった。
これらの所見から、γ-トコトリエノールとセサミンの処理による相乗的な成長阻害作用は乳腺腫瘍細胞における EGF 依存性細胞分裂シグナル伝達の抑制と
関連のあることが実証され、これらのフィトケミカルの補給に乳癌の予防又は治療に何らかのベネフィットを提供する可能性のあることが示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、セサミン、乳腺腫瘍細胞、成長阻害作用
Xiong A, Yu W, Tiwary R, Sanders BG, Kline K. Distinct roles of different forms of vitamin E in DHA-induced apoptosis in triple-negative
breast cancer cells. Mol Nutr Food Res. 2012 Jun;56(6):923-34. doi: 10.1002/mnfr.201200027.
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ドコサヘキサエン酸(DHA)は、in vitro と in vivo で種々の癌に対して抗腫瘍作用を及ぼすことが明らかにされている。本研究で、トリプルネガティブ乳癌
(TNBC)でのアポトーシス誘導における DHA の役割を調査し、その作用機構の検討を行った。
DHA は、カスパーゼ 8 と 9 の切断、小胞体ストレス(ERS)、細胞死受容体 5(DR5)のタンパク質発現レベル上昇に加え[ウェスタンブロット法]、アポト
ーシスも誘導した[アネキシン V アッセイ(FITC、PI)]。
カスパーゼ 8 と 9 の化学抑制剤と低分子干渉 RNA(siRNA)により、DHA が ERS/CHOP/DR5 を介するカスパーゼ 8、9 依存性アポトーシスを誘導すること
が明らかになった。
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さらに、DHA は細胞内の活性酸素種(ROS)レベル上昇を誘発し、また、抗酸化剤の RRR-α-トコフェロール(αT)は DHA が誘導するアポトーシス事象を
阻止することが明らかになった。
αT が及ぼす拮抗的な影響とは対照的に、γ-トコトリエノール(γT3)は TNBC 細胞におけるアポトーシス事象の誘導において DHA と協働していることが実証
された。
ERS/CHOP/DR5 を介するカスパーゼ 8、9 依存性アポトーシス促進事象の活性化により DHA が TNBC 細胞でのアポトーシスを誘導し、異なるタイプのビタミ
ン E が DHA 誘導性アポトーシスに個別の作用を及ぼすこと(すなわち、αT による阻害と γT3 による増進)が得られたデータから初めて証明された。
Keywords: DHA、トリプルネガティブ乳癌、γ-トコトリエノール、アポトーシス
2011
Ayoub NM, Bachawal SV, Sylvester PW. γ-Tocotrienol inhibits HGF-dependent mitogenesis and Met activation in highly malignant
mammary tumour cells. Cell Prolif. 2011 Dec;44(6):516-26.
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異常な Met シグナル伝達は、癌細胞の悪性表現型と関連している。γ-トコトリエノールは、HER/ErbB 受容体シグナル伝達の抑制と関連のある強力な抗癌
活性を示すことが明らかにされている。
γ-トコトリエノールによる処理が Met 活性化時の HGF 依存性+SA 乳腺腫瘍細胞増殖に及ぼす影響を調査する試験を実施した。
マイトジェンとして 10 ng/ml の HGF を含有する無血清限定培地で+SA 細胞を維持した。細胞生存性については MTT 法を、タンパク質発現にはウェスタンブ
ロット法を、Met 発現・活性化については免疫蛍光染色を用いて測定した。
γ-トコトリエノールあるいは Met 阻害剤の SU11274 による処理は、HGF 依存性+SA 細胞複製を用量依存的に有意に阻害した。4 μm の γ-トコトリエノール
による処置により、総 Met レベルと HGF 誘導 Met 自己リン酸化の両方が低下した。
対照的に、5.5 μm の SU11274 による同様の処理では、HGF 誘導 Met 自己リン酸化が阻害されたが、総 Met レベルに及ぼす影響は認められなかった。
有効量以下の用量の γ-トコトリエノール(2 μm)と SU11274(3 μm)の併用処理では、各々の物質の単独処理と比較して、+SA 細胞増殖の有意な阻
害作用がもたらされた。
これらの所見から、γ-トコトリエノールの Met 発現・活性化に及ぼす阻害作用が初めて明らかにされ、γ-トコトリエノールによる処置が、調節されない HGF/Met
シグナル伝達を認める女性における乳癌の予防あるいは治療に有意な健康利益をもたらす可能性のあることが強く示唆される。
Keywords: 総 Met レベル、HGF 誘導 Met 自己リン酸化、γ-トコトリエノール、SU11274
Smolarek AK, Suh N. Chemopreventive Activity of Vitamin E in Breast Cancer: A Focus on γ- and δ-Tocopherol. Nutrients. 2011
Nov;3(11):962-86.
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ビタミン E は、α-、β-、γ-、δ-トコフェロール(飽和化したフィチル基を有する)と α-、β-、γ-、δ-トコトリエノール(不飽和化したフィチル基を有する)の 8 種類
の異なる亜型から構成されている。ビタミン E による癌の予防研究では、それら亜型のうち主として α-トコフェロールが用いられてきた。α-トコフェロールに焦点を
合わせたこれら研究のほとんどが、一貫性のない結果により徒労に終わった。
しかしながら、γ-トコフェロール、そして最近では δ-トコフェロールにも、炎症、細胞増殖、全身腫瘍組織量の減少において α-トコフェロールより高い能力のあるこ
とが明らかにされている。γ 強化ミックストコフェロールは、動物モデルで乳腺過形成と腫瘤形成の発生を抑制することが最近の研究結果から明らかになってき
た。
本総説では、トコフェロールの各亜型、分子標的、癌予防効果の間で考えられる差異について考察を行った。
α-トコフェロールではなく、γ 強化ミックストコフェロールすなわち γ-、δ-トコフェロールが乳癌予防に有望な物質であり、さらに調査を進めることを我々は推奨す
る。
Keywords: γ 強化ミックストコフェロール、乳腺過形成、腫瘤形成
Sylvester PW, Wali VB, Bachawal SV, Shirode AB, Ayoub NM, Akl MR. Tocotrienol combination therapy results in synergistic anticancer
response. Front Biosci. 2011 Jun 1;17:3183-95.
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ビタミン E はトコフェロール類とトコトリエノール類の 2 種類のサブグループに分けられる化合物のファミリーを代表しており、体内で過酸化反応を制御し、フリーラジ
カルの産生を調節する重要な抗酸化剤として作用している。しかしながら、ビタミン E の生物学的効果の多くはその抗酸化活性とは無関係に媒介される。
トコフェロールとトコトリエノールはクロマン環に結合する長いフィチル側鎖によって特徴付けられる基本的な化学構造を同じように有しているが、トコトリエノールだ
けが腫瘍細胞の増殖と生存に関連する複数の細胞内シグナル伝達経路を修飾することにより強力な抗癌活性を示し、また、他 の化学療法剤との併用療
法で相乗的な抗癌反応をもたらす。
トコトリエノールを抗癌において補完的な作用機序を有する薬剤と組み合わせるとき、併用療法は最も有効なものとなる。
低用量の γ-トコトリエノールと他の化学療法剤との併用で実証された相乗的な抗増殖作用とアポトーシス作用は女性の乳癌の予防あるいは治療において著
しい健康利益をもたらす可能性があると同時に、高用量の単独療法と関連する腫瘍の抵抗性と毒性のある副作用を回避することにつながることが、これらの
所見から強く示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、化学療法剤、併用療法、相乗作用
2010
Selvaduray KR, Radhakrishnan AK, Kutty MK, Nesaretnam K. Palm tocotrienols inhibit proliferation of murine mammary cancer cells and
induce expression of interleukin-24 mRNA. J Interferon Cytokine Res. 2010 Dec;30(12):909-16.
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トコトリエノールの抗癌作用について幾つかの機構が仮定されている。本研究で初めて、トコトリエノールの抗癌作用が多くの癌モデルで抗腫瘍効果のあること
が報告されているサイトカイン interleukin-24 (IL-24) mRNA の発現増加と関連付けられた。
トコトリエノール異性体(α-T3、γ-T3、δ-T3)とトコトリエノール高含有フラクション(TRF)はマウス乳癌細胞 4T1 の成長を抑制した(p<0.05)。その時の
IC50 値は、それぞれ 8.99、4.79、3.73、8.63 μg/mL であった。
TRF を補給した BALB/c マウスの腫瘍発現率と腫瘍量は、それぞれ 57.1%と 93.6%減少した(p<0.05)。
ビタミン E による 4T1 細胞中の IL-24 mRNA 誘導は δ-T3 > γ-T3 > TRF > α-T3 > α-T の順に減少し、それらの抗増殖作用と同様であることが明らかになっ
た。
TRF 補給した BALB/c マウスの腫瘍組織における IL-24 mRNA レベルは、対照マウスと比較して 2 倍上昇した。
IL-24 のレベル上昇は、腫瘍の成長及び血管新生との関連を示した。4T1 細胞の TRF と δ-T3 による処理により、IL-8 と血管内皮増殖因子 mRNA のレベ
ルは有意に低下した。
以上から、トコトリエノールには IL-24 mRNA のレベル上昇と関連のある強力な抗血管新生作用と抗腫瘍作用があることを報告する。
Keywords: IL-24 mRNA 誘導、抗血管新生作用、抗腫瘍作用
Nesaretnam K, Selvaduray KR, Abdul Razak G, Veerasenan SD, Gomez PA. Effectiveness of tocotrienol-rich fraction combined with tamoxifen
in the management of women with early breast cancer: a pilot clinical trial. Breast Cancer Res. 2010;12(5):R81. doi: 10.1186/bcr2726.
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トコトリエノールには乳癌の影響を減少することが期待される強力な抗増殖作用とアポトーシス促進効果のあることが基礎研究で示されている。
タモキシフェンとの組合せによるトコトリエノールの補助療法の有効性を 5 年間評価するために、早期乳癌を認める女性を対象に二重盲検プラセボ対照試験
によるパイロット研究を実施した。
TNM 分類 I 期あるいは II 期の乳癌もしくはエストロゲン受容体(ER)陽性腫瘍のいずれかを認める 40~60 歳までの女性 240 人を非ランダムに 2 群へ割り
当てた。
介入群の女性はトコトリエノール高含有フラクション(TRF)とタモキシフェンの摂取を、対照群の女性はプラセボとタモキシフェンの摂取をそれぞれ 5 年間受け
た。
5 年の試験期間中、8 人の患者が乳癌により死亡した一方、36 人の患者で局所あるいは全身再発が認められた。
5 年間の乳癌特異的生存率(breast cancer specific survival)は介入群で 98.3%(95%信頼区間 (CI): 95.9%~100%)、対照群で 95%(95%
CI: 91.1%~98.9%)であった一方、5 年無病生存率はそれぞれ 86.7%(95% CI: 80.6%~92.8%)と 83.3%(95% CI: 76.6%~90.0%)であった。
年齢、人種、病期(stage)、リンパ節状態について調整した後の乳癌による死亡リスクは対照群と比較して介入群で 60%(HR: 0.40、95% CI: 0.08~
2.05)低下したが、統計的に有意とはならなかった。
TRF を用いた補助療法は乳癌再発との相関を示さなかった(HR: 0.84、95% CI: 0.43~1.65)。
本研究から、トコトリエノールを用いた補助療法と早期乳癌を認める女性の乳癌特異的生存率の間には関連性がないように思われる。 f
Keywords: TNM 分類、ER 陽性腫瘍、タモキシフェン、TRF、補助療法、乳癌特異的生存率
Hsieh TC, Elangovan S, Wu JM. Differential suppression of proliferation in MCF-7 and MDA-MB-231 breast cancer cells exposed to alpha-,
gamma- and delta-tocotrienols is accompanied by altered expression of oxidative stress modulatory enzymes. Anticancer Res. 2010
Oct;30(10):4169-76.
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ビタミン E ファミリーに属する化学物質であるトコトリエノールは、種々の癌細胞に対して強力な抗増殖活性とアポトーシス活性を及ぼすと同時に、正常細胞に
は同様の影響を殆ど及ぼさないことが知られている。トコトリエノールの抗発癌機構と関連して、トコトリエノールが第二相抗酸化酵素の発現を制御するかにつ
いては検討がなされていない。
エストロゲン受容体陽性ヒト乳癌細胞 MCF-7 とエストロゲン受容体陰性ヒト乳癌細胞 MDA-MB-231 の α-、γ-、δ-トコトリエノールへの曝露に起因する特
異的な成長阻害が、第二相抗酸化酵素において変化を伴う可能性があるかを検査するために本研究を実施した。
両細胞株における細胞増殖とクローン原性は 10 μM まで γ-、δ-トコトリエノールによって顕著に抑制されたが、同様に曝露した α-トコトリエノールでは殆ど影響
が認められなかった。
10 μM のトコトリエノールで処理した細胞における何種類かの抗酸化酵素の発現と活性について、ウエスタンブロット法と生化学的解析法により測定を行っ
た。
MDA-MB-231 細胞では δ-トコトリエノールがグルタチオンペルオキシダーゼのアップレギュレーションにおいて α-あるいは γ-トコトリエノールより活性が高かったが、
チオレドキシン誘発においてはこれら 3 種類のトコトリエノールの活性は同程度であった。
MCF-7 細胞ではキノンレダクターゼ 2 とチオレドキシンの発現が γ-、δ-トコトリエノールによって増大した一方、キノンレダクターゼ 1 はトコトリエノール類への曝露
による影響を受けることはなかった。
トコトリエノールはまた MCF-7 と MDA-MB-231 両細胞におけるスーパオキシドジスムターゼの発現と活性に影響を及ぼさなかったが、カタラーゼ発現のわずかな
減少を伴うカタラーゼ活性の上昇をもたらした。
MDA-MB-231 細胞では、トコトリエノール処理は KEAP1 レベルに対応した低下を伴う NRF2 発現を数倍増加させた。対照的に、MCF-7 細胞では NRF2 と
KEAP1 のレベルに顕著な変化は観察されなかった。
これらの研究から、異なるトコトリエノールは NRF2-KEAP1 システムの調節において個別の選択的な活性のあることが明らかとなり、酸化ストレスを修飾する細
胞保護的な遺伝子の発現と乳癌細胞における増殖調節の誘発と連携していることが実証された。
Keywords: 抗酸化酵素、MCF-7、MDA-MB-231、γ-、δ-トコトリエノール、NRF2、KEAP1
Hsieh TC, Elangovan S, Wu JM. gamma-Tocotrienol controls proliferation, modulates expression of cell cycle regulatory proteins and
up-regulates quinone reductase NQO2 in MCF-7 breast cancer cells. Anticancer Res. 2010 Jul;30(7):2869-74.
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トコトリエノールはビタミン E ファミリーのサブグループの一つであり、抗酸化特性と抗癌特性を有していることが実証されている。トコトリエノールの異なるタイプ間で
乳癌細胞の成長に対する反応差が認められているが、個々のトコトリエノールに特異的な生物活性は解明途中である。
細胞周期調節タンパク質発現の修飾による細胞増殖抑制能力、並びにキノンオキシドレダクターゼ 2(NQO2)のような解毒酵素の調節による細胞内の酸
化還元状態を制御するという観点から、本研究では γ-トコトリエノールの作用についてエストロゲン受容体陽性ヒト乳癌細胞株 MCF-7 を用いて検討を行っ
た。
γ-トコトリエノールによる処理は MCF-7 の細胞増殖を用量と時間に依存して抑制することが明らかになった。γ-トコトリエノールによる成長抑制は、サイクリン D1
の消失と特定の Rb のリン酸化(Thr821 の pRbp)に例示されるように、細胞周期調節タンパク質の中でもとりわけ Rb-E2F 複合体、サイクリン D1-Cdk4、
サイクリン B1-Cdk1 の濃度の変化、また NQO2 の時間・用量依存的な発現の増加を伴った。
NQO2 の誘発に加え細胞増殖の抑制を伴って特定の細胞周期調節タンパク質の発現に制御を発揮することにより、γ-トコトリエノールは乳癌発癌に対する
付加的な化学予防剤あるいは化学療法剤として有望視される。
Keywords: γ-トコトリエノール、MCF-7、細胞周期調節タンパク質、NQO2
Comitato R, Leoni G, Canali R, Ambra R, Nesaretnam K, Virgili F. Tocotrienols activity in MCF-7 breast cancer cells: Involvement of ERbeta
signal transduction. Mol Nutr Food Res. 2010 May;54(5):669-78.
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ビタミン E は 8 種類の分子を表す用語であり、トコフェロールとトコトリエノール(TT)の 2 種類に細分される。特定の TT は何種類かの腫瘍細胞系で増殖に
影響を及ぼし、その活性はトコフェロールとは共有されないことが明らかにされている。これらの観察結果と一致して、パーム油由来 TT 高含有フラクション
(PTRF)が何種類かの癌細胞で増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することが報告されている。
しかしながら、TT の活性に関与する分子機構は依然として不明である。TT のアポトーシス促進活性はエストロゲン受容体 β(ERβ)のシグナル伝達に関与し
ていることを最近提案した。
ERα と ERβ 両方を発現する MCF-7 乳癌細胞において、PTRF 処理は免疫蛍光実験で実証されたように ERβ の核転位を増加し、ERα 発現を有意に抑制
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し(-458.91 倍の変化)、核からのタンパク質消失を達成することを本研究で報告する。
さらに PTRF 処理は、ER 阻害因子 ICI 182.780 によって抑制される ER 依存性遺伝子発現(macrophage inhibitory cytokine-1、early growth
response-1、カテプシン D)を誘導し、さらに DNA 断片化を誘導した。
最後に、cDNA array 実験から α-TT に対して γ-TT で処理した細胞において特定の経路の活性化が示された。
TT の活性に関する可能な分子機構が得られたデータから新たに示唆される。
Keywords: MCF-7 乳癌細胞、核転位、タンパク質消失、DNA 断片化
Yap WN, Zaiden N, Tan YL, Ngoh CP, Zhang XW, Wong YC, Ling MT, Yap YL. Id1, inhibitor of differentiation, is a key protein mediating
anti-tumor responses of gamma-tocotrienol in breast cancer cells. Cancer Lett. 2010 May 28;291(2):187-99.
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γ-トコトリエノールは乳癌(BCa)に対して抗増殖作用を及ぼすことが実証されているが、関与するメカニズムについては充分な理解が得られていない。本研
究の目的は、その活性に役割を果たしている分子経路を解読することにある。
BCa 細胞の γ-トコトリエノール処理は、プロカスパーゼ活性化、sub-G1 期細胞蓄積、DNA 断片化からも明らかなように、アポトーシス誘導を引き起こすことが
得られた結果から証明された。
成長促進遺伝子の実験から、γ-トコトリエノール誘導細胞死は、上流の調節因子(Src、Smad1/5/8、Fak、LOX)の修飾による Id1 と NFκB の抑制と関
連のあることが明らかになった。
γ-トコトリエノールの処理はまた、γ-トコトリエノールの作用を部分的に遮断する特定の阻害剤による JNK シグナル伝達経路誘導と JNK 活性阻害をもたらし
た。
さ ら に 、 γ- ト コ ト リ エ ノ ー ル と ド セ タキ セ ル に よ る 共 処 理 で 相 乗 作 用 が 観 察 さ れ た 。 興 味 深 い こ と に 、 γ- ト コ ト リ エ ノ ー ル 、 α- ト コ フ ェ ロ ー ル 、 あ る い は
β-aminoproprionitrile で処理した細胞中では、Id1 発現が一部復元していることが明らかになった。
この Id1 の復元は、細胞を γ-トコトリエノール誘導アポトーシスから防護していることが明らかになった。Id1 遺伝子で異所的に導入した細胞で一貫した結果が
観察された。
γ-トコトリエノールが BCa 細胞に及ぼす抗増殖作用と化学増感効果は Id1 タンパク質のダウンレギュレーションによって媒介される可能性のあることが得られた
結果から示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、アポトーシス誘導、Id1 タンパク質
Shirode AB, Sylvester PW. Synergistic anticancer effects of combined gamma-tocotrienol and celecoxib treatment are associated with
suppression in Akt and NFkappaB signaling. Biomed Pharmacother. 2010 May;64(5):327-32.
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選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)-2 阻害剤のセレコキシブ、ビタミン E イソ型の γ-トコトリエノールは共に強力な抗癌活性を示すことが知られている。
しかしながら、高用量の選択的 COX-2 阻害剤は消化器系・心疾患系における毒性から臨床応用に限りがある一方、γ-トコトリエノールについては、体内にお
ける吸収・輸送が限定されているため、血液あるいは目標組織中で治療的濃度を獲得・維持することは困難とされている。
低用量のセレコキシブと γ-トコトリエノールの併用処理が培養中の乳腺腫瘍細胞株に及ぼす相乗的な抗癌・抗増殖作用を特徴付けるための研究を行った。
悪性度の高い+SA 乳腺上皮細胞を無血清培地(対照、処理)で培養維持した。COX-1、COX-2、Akt、NFκB、プロスタグランジン E2(PGE2)の合成
に及ぼす処理効果を 3 日間あるいは 4 日間の培養期間後に評価した。
3~4 μM のトコトリエノールあるいは 7.5~10 μM のセレコキシブの単独処理は、+SA 細胞の成長を用量依存的に著しく阻害した。
しかしながら、イソボログラムを用いた解析の結果から、無効量の γ-トコトリエノール(0.25 μM)とセレコキシブ(2.5 μM)の併用処理は相乗的な抗増殖作
用をもたらすことが明らかになった。この成長阻害作用は、PGE2 合成の減少、COX-2、phospho-Akt(活性)、phospho-NFκB(活性)レベルの低下と
関連していることが明らかになった。
これらの結果は、セレコキシブと γ-トコトリエノールの併用処理による相乗的な抗癌作用が COX-2 依存性・非依存性メカニズムによって媒介されることを実証
している。
これらの作用物質による併用処置は乳癌患者における治療反応を高める一方、高用量の COX-2 阻害剤による単独療法に関連した毒性を回避することも
これらの所見から示唆される。
Keywords: セレコキシブ、γ-トコトリエノール、COX-2 依存性・非依存性メカニズム、毒性
Pierpaoli E, Viola V, Pilolli F, Piroddi M, Galli F, Provinciali M. gamma- and delta-tocotrienols exert a more potent anticancer effect than
alpha-tocopheryl succinate on breast cancer cell lines irrespective of HER-2/neu expression. Life Sci. 2010 Apr 24;86(17-18):668-75.
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乳癌は年齢別の発症プロファイルを有し、女性で最も好発する腫瘍とされている。近年、天然ビタミン E(VE)のサブファミリーであるトコトリエノール(T3)に
抗癌活性のあることを実証した証拠が蓄積されつつある。
α-、γ-、δ-トコトリエノールの抗癌作用について抗癌特性が広範囲に認識されている合成の誘導体の一つであるコハク酸 α-トコフェロール(α-TOS)との比較
から検討を行うために、マウスとヒトの乳癌細胞(HER-2/neu 発癌遺伝子過剰発現のあるなしで)を用いた。
ヒト及びマウス乳癌細胞系を用いて、ビタミン E 化合物が細胞生存能に及ぼす影響を Alamar Blue assay によって調査した。
ヨウ化プロピジウム、JC-1 染色によってアポトーシスを評価した。老化に関連したマーカーの発現を RT-PCR 法を用いて評価し、HER-2/neu の発現レベルにお
ける変化を調べるためにウエスタンブロット法を用いた。
γ-、δ-Tau3 は細胞生存能を α-T3 と α-TOS の IC50 値の半分未満まで減少させた。γ-、δ-Tau3 と α-TOS は、少ない程度ではあるが、おそらくミトコンドリア
経路と老化様増殖停止マーカー(p53、p21、p16)の発現によってアポトーシスを誘発することが明らかになった。
α-TOS とトコトリエノール類は両方とも、この発癌遺伝子を過剰発現する腫瘍細胞において、HER-2/neu をダウンレギュレートしたが、その作用はこれらの化合
物の抗腫瘍活性に必須なものとは思われなかった。
HER-2/neu 乳癌細胞において非 α 型の T3 は合成 VE 誘導体の α-TOS より強力な抗癌活性を有し、また、その効果は HER-2/neu 発癌遺伝子の発現
抑制と無関係に生じることが明らかになった。
Keywords: γ-、δ-トコトリエノール、コハク酸 α-トコフェロール、ミトコンドリア経路、老化様増殖停止マーカー
Samant GV, Wali VB, Sylvester PW. Anti-proliferative effects of gamma-tocotrienol on mammary tumour cells are associated with
suppression of cell cycle progression. Cell Prolif. 2010 Feb;43(1):77-83.
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γ-トコトリエノールは培養中の+SA 乳腺腫瘍細胞に強力な抗増殖作用をもたらすことがこれまでの研究から明らかにされている。本研究は、細胞周期進行の
調節に関与する細胞内シグナル伝達タンパク質に γ-トコトリエノールが及ぼす影響を調査するために実施した。
G0 期の細胞周期を同期化するために 0 あるいは 4 μM の γ-トコトリエノールを含む限定培地(mitogen-free)で+SA 細胞を維持し、次に細胞周期進行
を誘導するために+SA 細胞を 100 ng/ml の EGF に曝露した。種々の時間点で各処理群から全細胞溶解液を収集し、ウエスタンブロット分析用に調整した。
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4 μM の γ-トコトリエノールによる処理は+SA の細胞増殖を 4 日間の培養期間で著しく抑制した。さらに、同処理は EGF 曝露後 4~24 時間の間にサイクリ
ン D1、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4、CDK2、CDK6 のレベルの相対的に大きな低下を引き起こした。
トコトリエノール処理は EGF 曝露前後に CDK 阻害剤(CKI)p27 の比較的大幅な増加も及ぼしたが、CKI、p21、p15 のレベルにはほとんど影響を及ぼさな
かった。トコトリエノール処理はまた、Ser780 と Ser807/811 において網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質のリン酸化の相対的に大きな低下も引き起こした。
γ-トコトリエノールの抗増殖作用は、p27 のレベル上昇とこれに対応したサイクリン D1、CDK2、CDK4、CDK6、リン酸化 Rb のレベル低下から明らかなように、
G1 期から S 期への細胞周期進行の減少と関連のあることがこれらの所見から強く示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、細胞周期進行、サイクリン、CDK
2009
Wali VB, Bachawal SV, Sylvester PW. Endoplasmic reticulum stress mediates gamma-tocotrienol-induced apoptosis in mammary tumor cells.
Apoptosis. 2009 Nov;14(11):1366-77.
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ビタミン E ファミリーを構成する化合物の一つである γ-トコトリエノールは、様々な種類の癌細胞のアポトーシスを誘導する。しかしながら、腫瘍マウスの+SA 乳腺
上皮細胞における γ-トコトリエノール誘導性アポトーシスは、ミトコンドリアストレスあるいはデスレセプターのアポトーシスシグナル伝達によって媒介されないことが
これまでの研究から明白に示されている。
それゆえ、+SA 乳腺腫瘍細胞内で γ-トコトリエノール誘導性アポトーシスを媒介する小胞体(ER)ストレスの役割を確認するための研究を実施した。
15~40 μM の γ-トコトリエノール処理により、+SA 細胞死が用量反応的に誘導された。これらの作用は、対応するポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ
( PARP ) 切 断 の 増 加 、 ER ストレ ス 応 答 の マ ー カ ー で あ る プ ロテ イン キ ナ ー ゼ 様 小 胞 体 キ ナ ー ゼ - 真 核 生 物 翻 訳 開 始 因 子 - 活 性 化 転 写 因 子 4
(PERK-eIF2α-ATF4)経路の活性化上昇と関連していることが明らかになった。
これらの処理はまた、Tribbles 3(TRB3)発現を増大させる ER ストレス媒介アポトーシスのキー化合物の一つである C/EBP 相同タンパク質(CHOP)の大
幅なレベル上昇も引き起した。
特定の siRNA による CHOP の破壊は、γ-トコトリエノールが誘導する PARP 切断、CHOP、TRB3 発現を減弱した。γ-トコトリエノール処理はまた、カスパーゼ
12 の切断と活性化の指標である完全長カスパーゼ 12 のレベルも低下させた。
メバロン酸合成を触媒する ER 膜貫通型酵素の 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A(HMG-CoA)還元酵素の細胞内レベルは γ-トコトリエノール処理
後低下したが、メバロン酸との併用処理は γ-トコトリエノール誘導アポトーシスを逆転せず、HMG-CoA 還元酵素の活性低下は γ-トコトリエノール誘導アポト
ーシスを必要としないことが示唆された。
ER ストレスによるアポトーシスシグナル伝達は+SA 乳腺腫瘍細胞内の γ-トコトリエノール誘導アポトーシスと関連のあることが、得られた結果から実証された。
Keywords: γ-トコトリエノール、小胞体ストレス、アポトーシスシグナル伝達
Wali VB, Bachawal SV, Sylvester PW. Suppression in mevalonate synthesis mediates antitumor effects of combined statin and
gamma-tocotrienol treatment. Lipids. 2009 Oct;44(10):925-34.
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スタチン系薬剤は 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素 A 還元酵素(HMGR)の活性を直接的に阻害する一方、ビタミン E イソ型の一つである γ-トコトリ
エノールは種々の腫瘍細胞株で HMGR の変性を増大し、その細胞レベルを低下させる。
スタチン系薬剤あるいは γ-トコトリエノールによる単独処理は+SA 乳腺腫瘍細胞成長に対して用量依存的に抑制した一方、これら作用物質の無効量での
併用処理が相乗的な抑制をもたらしたため、低用量のスタチンと γ-トコトリエノールの組合せによる抗増殖作用を媒介する HMGR 経路の役割を調査するため
の研究を行った。
8 μM のシンバスタチンの処理により Rap1A と Rab6 の細胞成長とイソプレニル化が抑制され、2 μM のメバロン酸の補給によりこれらの作用が逆転した。しかし
ながら、4 μM の γ-トコトリエノールの成長阻害作用はメバロン酸合成抑制に依存しないことが明らかになった。
無効量のシンバスタチン(0.25 μM)、ロバスタチン(0.25 μM)、メバスタチン(0.25 μM)、プラバスタチン(10 μM)、あるいは γ-トコトリエノール(2
μM)による単独処理はタンパク質プレニル化あるいはマイトジェンシグナル伝達に影響を及ぼさなかったのに対し、これら作用物質の併用処理は+SA 細胞成
長の顕著な抑制とこれに対応した総 HMGR、Rap1A・Rab6 プレニル化、MAPK シグナル伝達の減少を引き起した。また、メバロン酸補給によって、これらの作
用は逆転することが明らかになった。
低用量のスタチン系薬剤と γ-トコトリエノールの併用処理がもたらす相乗的な抗増殖作用は、HMGR 活性阻害に続きメバロン酸合成抑制に直接的に関連
していることがこれらの所見から実証された。
Keywords: スタチン系薬剤、γ-トコトリエノール、無効量、HMGR 活性阻害、メバロン酸合成抑制
Wali VB, Bachawal SV, Sylvester PW. Combined treatment of gamma-tocotrienol with statins induce mammary tumor cell cycle arrest in G1.
Exp Biol Med (Maywood). 2009 Jun;234(6):639-50.
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スタチン系薬剤と γ-トコトリエノール(ビタミン E の希少なイソ型の一つ)は共に 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A(HMG-CoA)還元酵素の活性を
抑制し、また抗癌活性を示す。しかしながら、スタチン剤の臨床応用には、その高用量毒性から限りがある。スタチン剤と γ-トコトリエノールの併用処理は、培
養した悪性度の高い+SA 乳腺上皮細胞の増殖を相乗的に抑制することがこれまでの研究から明らかにされている。
このような増殖抑制を媒介するメカニズムを検討するために、低用量の γ-トコトリエノールとスタチン剤による併用処理が+SA 乳腺腫瘍細胞周期進行に及ぼ
す作用を測定する試験を計画した。
0.25 μM のシンバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、10 μM のプラバスタチン、あるいは 2.0 μM の γ-トコトリエノールの単独処理には効果が認められなかった
一方、γ-トコトリエノールと個々のスタチン剤との併用処理では 4 日間の培養期間中+SA 細胞増殖が著しく抑制された。
フローサイトメトリー解析により、併用処置が G1 期の細胞周期停止を誘導することが証明された。0.25 μM のシンバスタチンあるいは 2 μM の γ-トコトリエノー
ルの単独処置が細胞内のサイクリン D1、CDK2、CDK4、CDK6 の相対レベルに影響を及ぼさないのに対し、併用処置はサイクリン D1、CDK2 レベルの大幅な
低下を引き起すことが追加試験で明らかになった。
併用処理は p27 レベルの相対的に大幅な上昇を引き起したが、p21 と p15 のレベルには影響を及ぼさなかった。また、Ser780 と Ser807/811 で網膜芽腫
(Rb)タンパク質のリン酸化の大幅な低下も引き起した。同様の作用は、γ-トコトリエノールと低用量のロバスタチン、メバスタチン、プラバスタチンとの併用処
理後にも観察された。
低用量のスタチン剤と γ-トコトリエノールの併用処置は G1 期の乳腺腫瘍細胞周期停止を引き起し、p27 発現の増加、これと対応したサイクリン D1 と CDK2
の減少、Rb タンパク質の低リン酸化をもたらすことがこれらの所見から実証された。
スタチン剤と γ-トコトリエノールの併用療法は女性の乳癌治療において顕著な健康利益をもたらす可能性があり、高用量のスタチン単独治療と関連した筋毒
性を回避できることが得られた所見から示唆される。
Keywords: スタチン系薬剤、γ-トコトリエノール、低用量、併用療法、筋毒性
2008
Elangovan S, Hsieh TC, Wu JM. Growth inhibition of human MDA-mB-231 breast cancer cells by delta-tocotrienol is associated with loss of
cyclin D1/CDK4 expression and accompanying changes in the state of phosphorylation of the retinoblastoma tumor suppressor gene
product. Anticancer Res. 2008 Sep-Oct;28(5A):2641-7.
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ビタミン E 関連化合物におけるサブグループの一つであるトコトリエノール類には抗増殖、抗癌特性が認められるが、これらの分子レベルでの作用は依然として解
明されていない。
本研究では、網膜芽腫タンパク質(Rb)レベルとリン酸化の状態、(E2 と呼ばれるアデノウイルスプロモーターの初期領域 1A 依存性活性化に必須な DNA
結合タンパク質として元来同定され、哺乳類細胞周期の G1S 期転位に関与する極めて重要な転写因子の一つである)E2F のレベル、エストロゲン受容体
陰性の MDA-MB-231 乳癌細胞における他の細胞周期調節タンパク質を調査することによって 3-tocotirenol が細胞周期停止に及ぼす影響を評価した。
MDA-MB-231 細胞の 6-tocotrienol(1~20 μM)への曝露は、賦形剤で処理した細胞と比較して、細胞成長を用量・時間依存性に抑制し、成長抑
制は 48 時間、72 時間、10 μM と 20 μM の処置で強くなることが細胞増殖アッセイで実証された。
Rb のリン酸化状態は G0G1 期の細胞周期調節において中心的な役割を果たしている。δ-トコトリエノールの処置は、総 Rb とその Ser780、Ser795、
Ser807/811、Thr826 位置でのリン酸化を用量・時間依存的に減少させた。
δ-トコトリエノールによる Rb リン酸化の部位特異的な抑制は、サイクリン D1 とその調節パートナーであるサイクリン依存性キナーゼ 4(CDK4)の発現の顕著
な減少と密接に関連している。その減少は、Ser780、Ser795、Ser807/811、Thr826 での Rb リン酸化に関与している。
さらに δ-トコトリエノールは、Rb リン酸化の消失と細胞周期進行に伴って同時に生じる E2F 発現も減少させることが明らかになった。
興味深いことに、δ-トコトリエノールはサイクリン B1 と CDK1 を含む G2/M 調節タンパク質の発現の顕著な減少を引き起すことも明らかになった。
われわれの知る限り本研究は、エストロゲン受容体陰性のヒト乳癌由来細胞株 MDA-MB-231 において、δ-トコトリエノールの細胞増殖抑制作用のターゲッ
トがサイクリン D1 の消失によって媒介されることを初めて明らかにした研究であり、δ-トコトリエノールのさらなる開発と抗癌剤としての利用を示唆している。
Keywords: MDA-MB-231 乳癌細胞、δ-トコトリエノール、細胞増殖抑制作用
2007
Nesaretnam K, Gomez PA, Selvaduray KR, Razak GA. Tocotrienol levels in adipose tissue of benign and malignant breast lumps in patients in
Malaysia. Asia Pac J Clin Nutr. 2007;16(3):498-504.
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観察的研究で血漿・脂肪組織中 α-トコフェロール(α-T)濃度毎にみるビタミン E の食事性曝露に関するデータは、α-T が女性を乳癌から保護しているとす
る概念に首尾一貫した支持を提供していない。α-T と対照的に、α-、γ-、δ-トコトリエノールには、ヒト乳癌細胞に強力な増殖抑制作用をもたらすことが研究
によって示唆されている。
主にパーム油に由来する食事を消費しているマレーシアの人口集団を対象に、悪性・良性の脂肪組織におけるトコフェロールとトコトリエノールに濃度差がある
か調査するのが本研究の目的である。
脂肪酸に関する定性的な食事摂取のバイオマーカーとして、乳房脂肪組織中の脂肪酸濃度を用いて試験を行った。(良性・悪性の)患者の乳房脂肪組
織における主な脂肪酸は、オレイン酸(45~46%)、パルミチン酸(28~29%)、リノール酸(11~12%)であった。
各群の脂肪酸組成に明らかな差異は認められなかった。悪性と良性の脂肪組織サンプル間における総トコトリエノール濃度には有意差が認められた(それぞ
れ、13.7±6.0 μg/g、20±6.0 μg/g)。
しかしながら、総トコフェロール濃度については群間で有意差は認められなかった(p=0.42)。食事摂取は脂肪組織中の脂肪酸濃度に影響を及ぼし、脂肪
組織は脂溶性栄養素の有力な貯蔵部であることが研究から明らかになった。
良性患者の脂肪組織におけるトコトリエノール濃度の高値は、トコトリエノールが乳癌に対して防御作用をもたらし得るとする概念を支持している。
Keywords: マレーシア、乳房脂肪組織、良性・悪性患者、総トコトリエノール濃度
Wali VB, Sylvester PW. Synergistic antiproliferative effects of gamma-tocotrienol and statin treatment on mammary tumor cells. Lipids.
2007 Dec;42(12):1113-23.
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スタチン系薬剤は 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素 A(HMG-CoA)還元酵素の強力な阻害剤で抗癌活性も示すが、高用量で認められる毒性から
臨床的用途には限りがある。同じく、ビタミン E イソ型の γ-トコトリエノールも HMG-CoA 還元酵素の活性を低下させ、強力な抗癌活性を示すことが知られて
いる。
低用量の γ-トコトリエノールと個々のスタチンによる併用処理が腫瘍性マウス+SA 乳腺上皮細胞に相乗的な増殖抑制作用をもたらすかを調査するために試
験を行った。
3~4 μM の γ-トコトリエノール、2~8 μM のシンバスタチン、ロバスタチンあるいはメバスタチン単独による処理は+SA 細胞成長に著しい抑制作用を及ぼした
が、10~100 μM のプラバスタチンによる処理は影響を及ぼさなかった。しかしながら、無効量(0.25 あるいは 10 μM)の個々のスタチン剤と 0.25~2.0 μM の
γ-トコトリエノールによる併用処理は、+SA 細胞の増殖に用量応答的な相乗阻害をもたらした。
無効量の個々のスタチン剤あるいは γ-トコトリエノール単独による処理はリン酸化(活性化)MARK、JNK、p38、Akt の細胞内レベルに影響を及ぼさない
が、これら化合物の併用処理は比較的大きな低下をもたらすことが追加試験から明らかになった。
これらの所見から、低用量の γ-トコトリエノールと個々のスタチン系薬剤を組み合わせた処理は、高用量のスタチン処置と関連がある筋毒性を引き起さずにす
む乳癌治療に潜在価値をもたらす可能性があることが示唆される。
Keywords: 腫瘍性乳腺上皮細胞、γ-トコトリエノール、スタチン系薬剤、相乗阻害
2005
Sylvester PW, Shah S. Intracellular mechanisms mediating tocotrienol-induced apoptosis in neoplastic mammary epithelial cells. Asia Pac J
Clin Nutr. 2005;14(4):366-73.
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43
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トコトリエノールとトコフェロールはビタミン E 関連化合物のファミリーを構成する二つのサブグループを表しているが、トコトリエノールのほうがトコフェロールよりも腫瘍
性乳腺上皮細胞においてはるかに強力なアポトーシス活性を示す。
腫瘍性の+SA マウス乳腺上皮細胞におけるトコトリエノール誘導アポトーシスを媒介する細胞内機構を in vitro で評価するための試験を行った。アポトーシス
の初期段階で「イニシエータ」カスパーゼ(カスパーゼ-8 あるいは-9)が、続いて「エフェクタ」カスパーゼ(カスパーゼ-3、-6、-7)が活性化され、アポトーシスが
誘導される。
細胞毒性量の α-トコトリエノール(20 μM)による処理は、カスパーゼ-8 と-3 の活性に時間依存性の上昇を引き起した。特定のカスパーゼ-8 あるいはカスパ
ーゼ-3 阻害剤との併用処理は、α-トコトリエノール誘導アポトーシスとカスパーゼ-8 あるいはカスパーゼ-3 の活性をそれぞれ完全に遮断した。
対照的に、α-トコトリエノールによる処理はカスパーゼ-9 の活性化には影響を及ぼさず、特定のカスパーゼ-9 阻害剤との併用処理は(+)SA 細胞において α-ト
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コトリエノール誘導アポトーシスを遮断しなかった。
カスパーゼ-8 活性化は Fas、腫瘍壊死因子(TNF)あるいは TNF 関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体のようなデスレセプターの活性化と関連し
ていることから、トコトリエノール誘導カスパーゼ-8 活性化とアポトーシスの媒介に関与する正確なデスレセプターとリガンドを確認するための試験を行った。
Fas リガンド(FasL)、Fas 活性化抗体あるいは TRAIL は(+)SA 腫瘍性乳腺上皮細胞における細胞死を誘導せず、これらの細胞がデスレセプター誘導アポ
トーシスに抵抗性を示すことが示唆された。また、細胞毒性量の α-トコトリエノールによる処理で、これらの細胞における Fas、FasL あるいは Fas 関連デスドメイ
ン(FADD)の細胞内レベルが変わらないことが明らかになった。
ウエスタンブロット法による解析の結果、α-トコトリエノールはこれらの細胞中で細胞質ゾルから細胞膜画分への FasL あるいは FADD の転座を誘導しなかった。
最終的に、Fas 阻害抗体による処理で、(+)SA 細胞におけるトコトリエノール誘導アポトーシスは抑制されなかった。
これらのデータは、トコトリエノール誘導カスパーゼ-8 活性化とアポトーシスが悪性の(+)SA 乳腺上皮細胞中のデスレセプター活性化によって媒介されないことを
示している。デスレセプター誘導アポトーシスへの抵抗性は、FLICE 阻害タンパク質(FLIP)のようなアポトーシス阻害タンパク質の発現増大と関連し、ホスファ
チジルイノシトール 3-キナーゼ (PI3K)/PI3K 依存性キナーゼ 1 (PDK-1)/Akt 有糸分裂経路のシグナル伝達を増加することが明らかになった。
細胞毒性量の α-トコトリエノールによる処理は、FLIP の総レベル、膜・細胞質ゾルレベルを低下させ、これらの細胞中のリン酸化 PDK-1(活性型)とリン酸化
Akt(活性型)のレベルも低下させることが追加試験から明らかになった。
要約すれば、悪性の(+)SA 乳腺上皮細胞におけるトコトリエノール誘導カスパーゼ-8 活性化とアポトーシスはデスレセプターの活性化によって媒介されないが、
PI3K/PDK/Akt 有糸分裂シグナル伝達経路の抑制によって生じ、細胞内の FLIP 発現が低下することをこれらの所見は示している。
Keywords: 腫瘍性乳腺上皮細胞、α-トコトリエノール、PI3K/PDK/Akt 有糸分裂シグナル伝達経路
Sylvester PW, Shah SJ, Samant GV. Intracellular signaling mechanisms mediating the antiproliferative and apoptotic effects of
gamma-tocotrienol in neoplastic mammary epithelial cells. J Plant Physiol. 2005 Jul;162(7):803-10.
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ビタミン E 関連化合物のファミリーのサブグループであるトコトリエノールは、正常細胞の成長と機能にほとんどあるいは全く影響を及ぼさない処理用量で、腫瘍
性乳腺上皮細胞に対して強力な増殖抑制作用とアポトーシス活性を示す。
成長抑制量であるが非細胞毒性量(4 μM)の γ-トコトリエノールによる処理は、曝露後 2~3 日間でホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ (PI3K)/PI3K
依存性キナーゼ 1 (PDK-1)/有糸分裂誘発シグナルを抑制し、これらの作用が phosphatase and tensin homologue deleted from chromosome 10
(PTEN)、タンパク質ホスファターゼ 2A(PP2A)いずれのホスファターゼ活性の上昇にも関連しないことが最近の研究で明らかにされている。
さらにこの処理は、おそらく誘導性 NF-κB 活性化に関連した酵素である IκB-キナーゼ (IKK)-α・β の活性化抑制によって、NFkB 転写活性を大幅に低下させ
る原因となることも明らかになった。Akt と NF-κB は乳腺腫瘍細胞の増殖率と生存率に密接に関連していることから、これらの所見は γ-トコトリエノールの増殖
抑制作用が Akt と NF-κB の活性低下に少なくとも部分的に起因することを強く示唆している。
一方、20 μM の γ-トコトリエノール(細胞毒性量)による処理は、カスパーゼ-8、-3 の活性化とアポトーシスを引き起した。同様の処理は、曝露後 2~4 時
間以内に PI3K/PDK/Akt シグナル伝達の急速で大幅な減少を引き起し、カスパーゼ-8 活性化を抑制する抗アポトーシスタンパク質 FLIP の細胞内レベルにお
いても一致した低下を引き起すことが明らかになった。
要約すると、γ-トコトリエノールがもたらす増殖抑制とアポトーシス両方の作用には、腫瘍性乳腺上皮細胞の増殖率と生存率に関連する重要な経路である
Pl3K/PDK-1/Akt シグナル伝達の低下が媒介しているようである。
Keywords: γ-トコトリエノール、腫瘍性乳腺上皮細胞、Pl3K/PDK-1/Akt シグナル伝達
Shah SJ, Sylvester PW. Gamma-tocotrienol inhibits neoplastic mammary epithelial cell proliferation by decreasing Akt and nuclear factor
kappaB activity. Exp Biol Med (Maywood). 2005 Apr;230(4):235-41.
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ビタミン E 関連化合物のファミリーのサブグループであるトコトリエノールは強力な抗癌活性を示し、正常細胞の成長と機能にほとんどあるいは全く影響を及ぼさ
ない処理用量で新生物発生前・腫瘍性乳腺上皮細胞の増殖を抑制することが明らかにされている。しかしながら、トコトリエノールの増殖抑制作用に介在す
る特定の細胞内機構は現時点では不明である。
Akt と核因子 κB(NF-κB)は乳腺腫瘍細胞の増殖率と生存率に密接に関連していることから、in vitro で γ-トコトリエノールが腫瘍性+SA 乳腺上皮細胞
における Akt と NF-κB の活性に及ぼす影響を評価する試験を行った。
MTT 比色定量法と増殖細胞核抗原免疫染色それぞれで評価を行った結果、0~8 μM の γ-トコトリエノールによる 0~3 日間の処理は、+SA 細胞の成長
と有糸分裂活性において用量応答性の抑制を引き起した。
γ-トコトリエノール 4 μM による処理(+SA 細胞の成長を未処理の対照細胞と比較して 50%以上抑制した用量)は、活性化されたホスファチジルイノシトー
ル 3-キナーゼ(PI3K)依存性キナーゼ 1(phospho-PDK-1)と Akt の細胞内レベル、phospho-Akt キナーゼ活性を低下させることも試験結果から明らか
になった。
さらにこれらの作用は、癌抑制遺伝子 PTEN(phosphatase and tensin homologue deleted from chromosome 10)あるいはタンパク質ホスファターゼ
2A いずれのホスファターゼ活性の上昇にも関連しないことが明らかになった。また、γ-トコトリエノールによる処理は、おそらく誘導性の NF-κB 活性化に関連した
酵素である IκB-kinase-α・β の活性化抑制によって、NF-κB 転写活性を低下させることも明らかになった。
要約すると、これらの所見は、γ-トコトリエノールの増殖抑制作用が腫瘍性+SA 乳腺上皮細胞における Akt と NF-κB の活性低下に起因することを少なくとも
部分的に証明している。
Keywords: γ-トコトリエノール、腫瘍性+SA 乳腺上皮細胞、Akt、NF-κB
Shah SJ, Sylvester PW. Tocotrienol-induced cytotoxicity is unrelated to mitochondrial stress apoptotic signaling in neoplastic mammary
epithelial cells. Biochem Cell Biol. 2005 Feb;83(1):86-95.
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44
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トコトリエノール類とトコフェロール類はビタミン E 関連化合物のファミリーのサブグループを表しているが、トコトリエノール類のほうが種々のタイプの癌細胞に対して
強いアポトーシス活性を顕著に示す。しかしながら、トコトリエノールが誘発するアポトーシスに介在する正確なメカニズムは理解されていない。
in vitro で培養した腫瘍性+SA 乳腺上皮細胞において、ミトコンドリアストレスを介したアポトーシスシグナル伝達にトコトリエノールが及ぼす影響を評価する試
験を実施した。
アネキシン V 染色を用いたフローサイトメトリー法による評価の結果、0~20 μmol/L の γ-トコトリエノール 24 時間の曝露は、アポトーシスを受けている+SA 細
胞の数を用量依存的に増加させた。しかしながら、JC-1 を用いたフローサイトメトリー染色と ELISA 法でそれぞれ測定した結果、トコトリエノールが誘導するアポ
トーシスは、ミトコンドリア膜電位の破壊や損失、あるいはミトコンドリアのチトクローム c の細胞質への放出とは関連が認められなかった。
興味深いことにアポトーシスを起した+SA 細胞は、ミトコンドリアにおけるアポトーシス誘導タンパク質 Bid、Bax、Bad の逆説的な濃度低下、並びに抗アポトー
シスタンパク質 Bcl-2、Bcl-xL の濃度上昇を引き起すことが明らかになり、ミトコンドリア膜の安定性と完全性がトコトリエノールの急性曝露後の限られた時間に
実際に増強される可能性があることが示唆された。
要約すると、これらの所見は、トコトリエノール誘導アポトーシスが腫瘍性+SA 乳腺上皮細胞におけるミトコンドリアストレスを介したアポトーシスシグナル伝達と
無関係に生じることを明白に示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、腫瘍性+SA 乳腺上皮細胞、ミトコンドリア膜
Yu FL, Gapor A, Bender W. Evidence for the preventive effect of the polyunsaturated phytol side chain in tocotrienols on 17beta-estradiol
epoxidation. Cancer Detect Prev. 2005;29(4):383-8.
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われわれは、DNA と結合し、核 RNA 合成を阻害するエポキシ化によって、17β-エストラジオール(E2)が活性化される可能性があることを見出している。ビタ
ミン E 化合物は強力な抗酸化剤であると同時に、連鎖停止型フリーラジカル捕捉剤でもある。ビタミン E のクロマン環はこれらの反応に関与していると考えられ
ている。
α-トコフェロール、α-、γ-、δ-トコトリエノールが E2 活性化に及ぼす予防効果を試験するのが本研究の目的である。
epoxide-forming oxidant dimethyldioxirane(DMDO)によるエポキシ化のために、これらのビタミン E 化合物のいずれかを E2 と混合した場合、α-トコフ
ェロールはトコトリエノール類と比較して、核 RNA 合成を阻害する E2 の能力損失を反映する E2 エポキシドの形成に対する効果は最も低かった。この結論は、
DMDO あるいは肝ミクロソーム活性化系のいずれかを用いた 3H 標識 E2 の DNA への結合試験によってさらに確認された。
クロマン環はトコフェロール、トコトリエノールに共通しており、これら二種類のビタミン E のサブグループ間における唯一の違いはフィトール側鎖だけであることから、ト
コトリエノールに存在する多価不飽和のフィトール基が E2 エポキシ化において重要な役割を果たしていると結論付けた。
本報は、トコトリエノールにおける多価不飽和のフィトール側鎖が抗酸化活性に関与し、イニシエーションの段階で E2 エポキシドが誘発する乳癌発癌に対して
予防効果を及ぼす可能性もあることを初めて明らかにした報告である。
Keywords: 17β-エストラジオール活性化、E2 エポキシ化、フィトール側鎖
2004
Nesaretnam K, Ambra R, Selvaduray KR, Radhakrishnan A, Canali R, Virgili F. Tocotrienol-rich fraction from palm oil and gene expression in
human breast cancer cells. Ann N Y Acad Sci. 2004 Dec;1031:143-57.
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ビタミン E は細胞の抗酸化特性や脂質低下作用のためだけでなく、抗増殖因子としても重要な意味を持っている。ビタミン E はまた、移植した腫瘍に対する免
疫調節、抗体産生、抵抗性に寄与することが明らかにされている。トコトリエノールは、エストロゲン非依存性のメカニズムによるヒト乳癌細胞増殖抑制に関与
するビタミン E 成分であることが in vitro と in vivo の両方で明らかにされている。トコトリエノールは用量依存的に細胞増殖に作用し、プログラムされた細胞死を
誘導するが、特定の遺伝子調節はまだ確認されていない。
パーム油由来のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)が及ぼす作用の分子的機序を調査するために、エストロゲン依存性ヒト乳癌細胞(MCF-7)とエ
ストロゲン非依存性ヒト乳癌細胞(MDA-MB-231)における癌関連遺伝子発現の cDNA アレイ解析を行った。ヒト乳癌細胞を 8 μg/mL のトコトリエノール
添加あるいは無添加で 72 時間インキュベートした。次に RNA を抽出し、癌アレイにハイブリダイズする前に、逆転写反応を行った。
トコトリエノールの補給は、MDA-MB-231 細胞中の 1,200 の遺伝子のうち 46 の遺伝子を顕著に調節した。MCF-7 細胞では、トコトリエノール補給によって
影響を受けた遺伝子の数は少なかった。興味深いことに、c-myc 結合タンパク質 MM-1、23-kDa 高塩基性タンパク質、インターフェロン誘導性タンパク質
9-27(IFITM-1)などの細胞系において同様の影響を受けた遺伝子は三つだけだった。これらのタンパク質はおそらく細胞周期に関与しており、腫瘍細胞系
の細胞増殖と分化に抑制作用を及ぼすことが可能である。
トコトリエノールは、おそらくそれらが有している抗酸化活性とは無関係に、細胞の恒常性に影響を及ぼすことが可能であることをこれらのデータは示唆している。
Keywords: TRF、MCF-7、MDA-MB-231、恒常性
Shah S, Sylvester PW. Tocotrienol-induced caspase-8 activation is unrelated to death receptor apoptotic signaling in neoplastic mammary
epithelial cells. Exp Biol Med (Maywood). 2004 Sep;229(8):745-55.
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ビタミン E 関連化合物のファミリーのサブクラスに属するトコトリエノールは、腫瘍性乳腺上皮細胞にあるカスパーゼ-8 とカスパーゼ-3 を活性化させることによって
アポトーシスを誘発することが明らかにされている。カスパーゼ-8 の活性化はデスレセプターを介するアポトーシスのシグナル伝達と関連していることから、トコトリエ
ノールが誘導するアポトーシスに関与する正確なデスレセプター・デスリガンドを確認するための研究を実施した。
高悪性マウス乳腺上皮細胞(+SA)を培養下で増殖させ、無血清培地で維持した。TUNEL 法による免疫細胞化学染色で測定した結果、20 μM の γトコトリエノール処理はアポトーシスを誘発して、+SA 細胞の生存率を低下させた。
ウエスタンブロット法による分析結果から、γ-トコトリエノール処理は切断された(活性型)カスパーゼ-8 とカスパーゼ-3 のレベルを上昇させることが明らかになっ
た。カスパーゼ阻害剤との組み合わせによる処理は、トコトリエノールが誘導するアポトーシスを完全に遮断した。
付随研究で、100 ng/ml の腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、100 ng/ml の Fas リガンド(FasL)、100 ng/ml の TNF 関連アポトーシス誘導リガンド
(TRAIL)、あるいは 1 μg/ml のアポトーシス誘導 Fas 抗体による処理は+SA 中の細胞死を誘導せず、この乳腺腫瘍細胞系はデスレセプター誘導アポトー
シスに抵抗性があることが明らかになった。
さらに、20 μM の γ-トコトリエノールによる処理は、Fas、FasL あるいは Fas-associated via death domain(FADD)の細胞全体、細胞膜あるいは細胞質
のレベルに影響を及ぼさず、Fas、FasL、FADD を細胞基質画分から膜画分へのトランスロケーションを誘導しなかったことから、トコトリエノールが誘導するカスパ
ーゼ-8 の活性化がデスレセプターを介するアポトーシスのシグナル伝達と関係しないとする付加証拠が得られた。
20 μM の γ-トコトリエノールによる処理は、これらの細胞においてカスパーゼ-8 の活性化を阻害する抗アポトーシスタンパク質の一つである FLICE-inhibitory
protein(FLIP)の細 胞内 レベルの低 下 に加 え、ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3K)依 存性キナーゼ 1(活性 型 phospho-PDK-1)、
phospho-Akt(活性型)、phospho-glycogen synthase kinase3 の相対的な細胞内レベルの大幅な低下を引き起すことが他の研究から明らかになっ
た。
PI3K-PDK-Akt 細胞分裂経路の刺激が FLIP 発現、細胞増殖、生存率の増加と関連があることから、これらの結果は、悪性の+SA 乳腺上皮細胞における
トコトリエノール誘導性のカスパーゼ-8 活性化とアポトーシスが、PI3K-PDK-Akt 細胞分裂のシグナリング伝達抑制とその後に続く細胞内 FLIP のレベル低下と
関連することを示している。
Keywords: +SA 乳腺上皮細胞、γ-トコトリエノール、カスパーゼ-8 活性化、FLIP
Nesaretnam K, Ambra R, Selvaduray KR, Radhakrishnan A, Reimann K, Razak G, Virgili F. Tocotrienol-rich fraction from palm oil affects gene
expression in tumors resulting from MCF-7 cell inoculation in athymic mice. Lipids. 2004 May;39(5):459-67.
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トコトリエノールは、in vitro でエストロゲン依存性メカニズムによるヒト乳癌細胞の成長抑制に関与しているビタミン E 成分であることが最近明らかにされている。
トコトリエノールは、用量依存的に細胞増殖に影響を及ぼし、プログラムされた細胞死を誘発するが、明確な遺伝子調節はまだ特定されていない。
トコトリエノールが及ぼす作用の分子的機序を調査するために、MCF-7 乳癌細胞を無胸腺ヌードマウスに注射した。マウスに経口で 1 日 1 mg のトコトリエノ
ール高含有フラクション(TRF)を 20 週間摂取させた。20 週目の最後に、対照群と比較して TRF 群のヌードマウスで、腫瘍の発現遅延、発生率、大きさに
有意差が認められた。
剖検時、腫瘍組織を摘出し、cDNA アレイ技術を用いて遺伝子発現について分析を行った。1,176 の遺伝子のうち 30 が著しく影響を受けていた。未処理の
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マウスに関しては、10 の遺伝子がダウンレギュレートされ、20 の遺伝子がアップレギュレートされた。特に幾つかの遺伝子は、免疫系とその機能の調節に関与し
ていた。インターフェロン誘導性 1 型膜貫通タンパク質の遺伝子発現は、対照ラットと比較して TRF 処理ラットから摘出した腫瘍で著しくアップレギュレートされ
た。
免疫系に関連した遺伝子グループ内では、糖タンパク質の前駆体である CD59 遺伝子がアップレギュレートされたことも明らかになった。細胞内トンスデューサ・
エフェクタ・モジュレータの機能クラス間では、c-myc 遺伝子が TRF 処理した腫瘍で著しくダウンレギュレートされた。
われわれの観察結果は、TRF 補給が in vivo における腫瘍形成後の MCF-7 細胞応答、結果として宿主の免疫機能に有意かつ特異的な影響を及ぼすこと
を示している。遺伝子発現で観察された作用は、この分子ファミリーに特有の抗酸化活性とは無関係に発現している可能性がある。
Keywords: MCF-7 乳癌細胞、無胸腺ヌードマウス、TRF 補給、免疫機能
Takahashi K, Loo G. Disruption of mitochondria during tocotrienol-induced apoptosis in MDA-MB-231 human breast cancer cells. Biochem
Pharmacol. 2004 Jan 15;67(2):315-24.
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ビタミン E イソ型の一つであるトコトリエノールは、部分的にアポトーシスによって、ヒト乳癌細胞の増殖を抑制することが知られている。しかしながら、トコトリエノー
ルが誘発するアポトーシスの特徴付けは不完全であり、特に細胞死に先行するイニシエーションの段階で何が起っているか明らかにされていない。
本研究の目的は、特にヒト乳癌細胞を特定のトコトリエノール異性体でインキュベートした場合にミトコンドリアを介する細胞死経路が活性化されるかの判定に
重点を置いて、トコトリエノールのアポトーシス作用を解明することである。
γ-トコトリエノールによるインキュベーション中、ヒト乳癌細胞の MDA-MB-231 は膜水疱(blebbing)を示し、アポトーシス体の存在が認められた。細胞を
4',6-diamidino-2-phenylindole によって染色した時、クロマチンの凝集と断片化が観察された。また、アネキシン V 結合による分析の結果、初期の細胞分
析中に膜リン脂質のトランスロケーションが認められた。
まとめると、これらの結果は γ-トコトリエノールがヒト乳癌細胞においてアポトーシスを誘発することをさらに証明している。次に、γ-トコトリエノールがどのようにアポ
トーシスを誘発するかを解明する手助けとして、ミトコンドリアを介する細胞死経路と関連する幾つかの重要なパラメータについて検討を行った。
γ-トコトリエノールで処理した細胞では、ミトコンドリアが破壊された。ミトコンドリアの膜電位崩壊が認められ、その後、シトクロム c がミトコンドリアから放出された
が、Bax と Bcl-2(mRNA とタンパク質)の発現には変化が生じなかった。また、poly-(ADP-ribose)-polymerase cleavage が検出されず、カスパーゼは γトコトリエノールが誘発するアポトーシスに関与していないことが示唆された。
これらの結果から、MDA-MB-231 細胞で γ-トコトリエノールが誘発するアポトーシスの引き金となるミトコンドリアから放出されるタンパク質の中でシトクロムは重
要なタンパク質ではないことが示唆される。
Keywords: アポトーシス作用、MDA-MB-231、膜水疱、γ-トコトリエノール
2000
McIntyre BS, Briski KP, Gapor A, Sylvester PW. Antiproliferative and apoptotic effects of tocopherols and tocotrienols on preneoplastic and
neoplastic mouse mammary epithelial cells. Proc Soc Exp Biol Med. 2000;224:292-301.
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in vitro で、前悪性(CL-S1)、悪性(-SA)、高悪性(+SA)マウス乳腺上皮細胞の成長と成育能力に及ぼすトコフェロールとトコトリエノールの影響を
比較するための試験を実施した。
5 日間の培養期間中、0~120 μM の α-、γ-トコフェロールの処理は細胞増殖に影響を及ぼさなかったのに対し、次ぎの処理を CL-S1、-SA、+SA 細胞に対
する IC50 で比較すると、パーム油のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)がそれぞれ 13、7、6 μM、δ-トコフェロールが 55、47、23 μM、α-トコトリエノール
が 12、7、5 μM、γ-トコトリエノールが 8、5、4 μM、δ-トコトリエノールが 7、4、3 μM であった。
α-あるいは γ-トコフェロール 0~250 μM の 24 時間急性曝露(CL-S1、-SA、+SA)、あるいは δ-トコフェロール 0~250 μM のそれ(CL-S1)は細胞成
育能力に影響を及ぼさなかったのに対し、-SA と+SA 細胞における 166 あるいは 125 μM の δ-トコフェロールの処理は対照と比較して細胞成育能力を 50%
減少(LD50)させた。LD50 はさらに次ぎのような数値となった。CL-S1、-SA、+SA 細胞に対し、TRF がそれぞれ 50、43、38 μM、α-トコトリエノールが 27、28、
23 μM、γ-トコトリエノールが 19、17、14 μM、δ-トコトリエノールが 16、15、12 μM であった。
処理により誘発された細胞死は、DNA の分断により示されるように、アポトーシスの活性化をもたらした。結果はまた、CL-S1、-SA、+SA 細胞がトコフェロール
と比べトコトリエノールを優先的に蓄積することを明らかにした。これは、なぜトコトリエノールがトコフェロールより強い生物作用能を示すのかを部分的に説明して
いる。これらのデータはまた、トコトリエノールの抗増殖作用とアポトーシス作用に対して悪性腫瘍の+SA 細胞が最も感受性が強く、新生物形成前の CL-S1 細
胞が最も弱いことを明らかにし、トコトリエノールに女性の乳癌リスクを予防ないしは減少させる健康上の有益性があることを示唆している。
Keywords: マウス乳腺上皮細胞、TRF、抗増殖作用、抗アポトーシス作用
McIntyre BS, Briski KP, Tirmenstein MA, Fariss MW, Gapor A, Sylvester PW. Antiproliferative and apoptotic effects of tocopherols and
tocotrienols on normal mouse mammary epithelial cells. Lipids. 2000;35:171-80.
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正常乳腺上皮細胞の成長と生存可能性に及ぼすトコフェロールとトコトリエノールの作用を比較するための試験を行った。
BALB/c マウスの胎児から単離した細胞をコラーゲンゲルで生育させ、無血清培地で培養した。0~120 μM の α-、γ-トコフェロールの処理は影響を及ぼさなか
ったが、12.5~100 μM のトコトリエノール高含有パーム油フラクション(TRF)、100~120 μM の δ-トコフェロール、50~60 μM の α-トコトリエノール、8~14
μM の γ-あるいは δ-トコトリエノールは細胞成長を用量反応的に抑制した。
急性試験における 0~250 μM の α-、γ-、δ-トコフェロールへの 24 時間の曝露は影響を及ぼさなかったが、100~250 μM の TRF、140~250 μM の α-トコ
トリエノール、25~100 μM の γ-あるいは δ-トコトリエノールでの同様の処理は、細胞生存性を有意に減少させた。
TRF、δ-トコフェロール、α-、γ-、δ-トコトリエノールの成長抑制用量は、DNA 切断で示されるように、これらの細胞のアポトーシスを誘発することが明らかになっ
た。
結果は、乳腺上皮細胞がトコフェロールと比べトコトリエノールをより容易にあるいは優先して取り込むことを明らかにし、細胞への蓄積がより多いことから、トコト
リエノールがトコフェロールより強力な生物作用能を示す理由を少なくとも部分的に示している。
これらの発見は、生物作用能の高い γ-、δ-トコトリエノールのイソフォームが、正常な乳腺の成長、機能・器官形成を変調するうえで生理学的役割を果たし
ていることを示唆している。
Keywords: 正常乳腺上皮細胞、成長抑制用量、γ-、δ-トコトリエノール
Nesaretnam K, Dorasamy S, Darbre PD. Tocotrienols inhibit growth of ZR-75-1 breast cancer cells. Int J Food Sci Nutr. 2000;51:95S-103S.
46
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データは、パーム油のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)と個々のフラクション(α、γ、δ)が、もう一つの応答ヒト乳癌細胞株である ZR-75-1 の成長も
抑制しうることを明らかにしている。
エストロゲン非存在の低濃度下でトコトリエノールは ZR-75-1 細胞の成長を刺激したが、エストラジオール存在、非存在両方の高濃度下では、トコトリエノール
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は細胞成長を強力に抑制した。
MCF7 細胞については、α-トコフェロールは、エストラジオール存在、非存在のいずれの条件下でも ZR-75-1 の成長に影響を及ぼさなかった。
抗エストロゲン剤との組み合わせにおけるトコトリエノールの作用の試験では、TRF はタモキシフェン(10-7 M と 10-8 M)の存在下で ZR-75-1 細胞の成長をさ
らに抑制した。
個々のトコトリエノールフラクション(α、γ、δ)は、10-8 M のエストラジオールと 10-8 M の精製抗エストロゲン剤 ICI 164,384 の存在下で ZR-75-1 細胞の成長
を抑制することができた。未成熟マウスの子宮重量のバイオアッセイで、TRF は in vivo でエストロゲン拮抗作用を及ぼさないことを確認した。
これらの結果は、MCF7 や MDA-MB-231 細胞を越えたトコトリエノールのより広範な成長抑制効果の証拠を提供し、エストロゲン依存作用の機構と共に、ト
コトリエノール投与と抗エストロゲン剤治療の組み合わせにおける臨床上可能な有益性を示唆している。
Keywords: TRF、ZR-75-1 細胞、タモキシフェン、エストロゲン依存作用
1999
Yu W, Simmons-Menchaca M, Gapor A, Sanders BG, Kline K. Induction of apoptosis in human breast cancer cells by tocopherols and
tocotrienols. Nutr Cancer. 1999;33:26-32.
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RRR-α-、β-、γ-、δ-トコフェロール、α-、γ-、δ-トコトリエノール、酢酸 RRR-α-トコフェロール(酢酸ビタミン E)、コハク酸 RRR-α-トコフェロール(コハク酸ビタミン
E)のアポトーシス誘発特性を、培養したエストロゲン応答 MCF7、エストロゲン非応答 MDA-MB-435 ヒト乳癌細胞系で調査した。
アポトーシスを二つの基準により特徴付けした。すなわち、4,6-diamidino-2-phenylindole による細胞染色と oligonucleosomal DNA laddering での形
態学的検討である。ヒト乳癌細胞を含む幾つかの細胞系におけるアポトーシス誘発因子として知られるコハク酸ビタミン E を正の対照とした。
エストロゲン応答 MCF7 細胞は、エストロゲン非応答 MDA-MB-435 細胞より感受性が高く、応答の半値(最高値の 1/2)は(α-、γ-、δ-)トコトリエノー
ル、RRR-δ-トコフェロールでそれぞれ 14、15、7、97 μg/ml であった。
(α-、γ-、δ-)トコトリエノールと RRR-δ-トコフェロールは、それぞれ 176、28、13、145 μg/ml という応答の半値で MDA-MB-435 細胞のアポトーシスを誘発
した。
10~200 μg/ml の溶解性の範囲内で試験したとき、RRR-δ-トコフェロールを除く(α-、β-、γ-)トコフェロールと RRR-α-トコフェロールの酢酸の誘導体(酢酸
RRR-α-トコフェロール)は、両方の細胞系におけるアポトーシス誘発に効果がなかった。
これらの試験は、天然のトコトリエノールと RRR-δ-トコフェロールがヒト乳癌細胞の有効なアポトーシス誘発因子であることを実証した。
Keywords: RRR-δ-トコフェロール、トコトリエノール、ヒト乳癌細胞、アポトーシス誘発因子
1998
Nesaretnam K, Stephen R, Dils R, Darbre P. Tocotrienols inhibit the growth of human breast cancer cells irrespective of estrogen receptor
status. Lipids. 1998;33:461-9.
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パーム油の主要なビタミン E 成分であるトコトリエノールのエストロゲン応答(ER+)MCF ヒト乳癌細胞とエストロゲン非応答(ER-)MDA-MB-231 ヒト乳癌
細胞の両方の成長に及ぼす可能な抗増殖作用を調査し、それらの作用を α-トコフェロール(αT)と比較した。
パーム油のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)は、エストラジオールの存在、非存在の両方において非線状の用量反応関係で MCF7 細胞の成長を抑
制したが、成長の完全な抑制は 8 μg/mL で成し遂げられた。MDA-MB-231 細胞も TRF により抑制されたが、TRF 20 μg/mL の線状の用量反応関係が完
全な成長抑制のために必要とされた。
TRF を個々のトコトリエノールに分離すると、すべてのフラクションはエストラジオール存在、非存在の両方において、ER+、ER-細胞両方及び ER+細胞の成長を
抑制することが明らかになった。しかしながら、γ と δ のフラクションに最も抑制効果があった。
MCF7 細胞の成長の完全な抑制は、エストラジオール非存在下において γ-トコトリエノール/δ-トコトリエノール(γT3/δT3)6 μg/mL で成し遂げられたのに対
し、MDA-MB-231 細胞成長の完全な抑制は、δT3 が 10 μg/mL の濃度でも達成されなかった。
これらトコトリエノールの抑制効果とは対照的に、αT は、エストラジオール存在、非存在のいずれの場合においても、MCF7 細胞の成長に抑制効果を及ぼさ
す、MDA-MB-231 細胞の成長にも抑制効果を及ぼさなかった。
これらの結果は、ヒト乳癌細胞の他のサブラインを用いた研究を確認し、トコトリエノールが乳癌細胞の成長に直接的な抑制効果を及ぼしうることを実証して
いる。
抑制機構の検討において、MCF7 細胞におけるエストロゲン調節 pS2 遺伝子発現に及ぼす TRF の作用の研究は、トコトリエノールは、エストロゲン受容体媒
介経路を経て作用しないため、エストロゲン拮抗体とは異なった作用をしていることを明らかにした。
またトコトリエノールは、MCF-7 細胞における成長抑制効果のあるインスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP)のレベルを減少させず、レチノイン酸のエス
トロゲン応答乳癌細胞成長抑制で提唱されたものとは異なる機構を示している。
トコトリエノールによる乳癌細胞成長抑制は、ER+と ER-両方の表現型の成長を抑制したばかりでなく、ER+細胞がエストラジオールの存在、非存在のいずれ
の場合においても成長抑制的であったことから臨床上重要な意味があった。
TRF の将来的な臨床上の応用は、抗エストロゲン剤やレチノイン酸による成長抑制に抵抗性のある ER+乳癌細胞の可能な成長抑制から起るかも知れな
い。
Keywords: トコトリエノール高含有フラクション、ヒト乳癌細胞、エストラジオール
1997
Guthrie N, Gapor A, Chambers AF, Carroll KK. Inhibition of proliferation of estrogen receptor-negative MDA-MB-435 and -positive MCF-7
human breast cancer cells by palm oil tocotrienols and tamoxifen, alone and in combination. J Nutr. 1997;127:544S-548S.
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パーム油由来のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)は、α-トコフェロールと α-、γ-、δ-トコトリエノール混合物を含有している。以前の研究で、トコトリエノ
ールは抗癌活性を示すことが明らかになっている。
TRF、α-、γ-、δ-トコトリエノールのエストロゲンレセプター陰性(ER-)MDA-MB-435 ヒト乳癌細胞の 50%増殖抑制濃度(IC50)は、それぞれ 180、90、
30、90 μg/mL であったのに対し、α-トコフェロールは 500 μg/mL の濃度まで効果がなかったことをわれわれは以前報告した。
さらに、エストロゲンレセプター陽性(ER+)MCF-7 細胞を用いた実験は、[3H]チミジン結合による測定で、トコトリエノールがそれらの細胞増殖も抑制すること
を明らかにした。TRF、α-トコフェロール、α-、γ-、δ-トコトリエノールの IC50 は、それぞれ 4、125、6、2、2 μg/mL であった。
合成の抗エストロゲン剤として広く使用されているタモキシフェンは、MCF-7 細胞の成長を IC50 0.04 μg/mL で抑制する。われわれは、TRF、α-トコフェロール
及び各トコトリエノールとタモキシフェンの 1:1 の組み合わせを両方の細胞系で試験した。
MDA-MB-435 細胞では、すべての組み合わせで相乗効果がみられた。MCF-7 細胞では、γ-あるいは δ-トコトリエノールとタモキシフェンの 1:1 の組み合わせ
だけが、細胞の増殖率と成長に相乗的抑制効果を及ぼすことが明らかになった。トコトリエノールよる抑制効果は、培地に過剰量のエストラジオールを添加して
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も低下しなかった。
これらの結果は、トコトリエノールは、ER-と ER+両方の細胞に有効な抑制剤で、タモキシフェンとの併用は、乳癌治療を改善させる可能性があることを示唆して
いる。
Keywords: トコトリエノール高含有フラクション、ヒト乳癌細胞、タモキシフェン
1995
Nesaretnam K, Guthrie N, Chambers AF, Caroll KK. Effect of tocotrienols on the growth of a human breast cancer cell line in culture. Lipids.
1995;30:1139-43.
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パーム油のトコトリエノール高含有フラクション(TRF)は、トコトリエノールと α-トコフェロール(α-T)から成る。トコトリエノールは、トコフェロールが通常有する飽
和側鎖よりはむしろ、不飽和側鎖を有する形のビタミン E である。
パーム油は化学的に誘発された乳癌を促進しないことが明らかにされているため、われわれは MDA-MB-435 エストロゲンレセプター陰性ヒト乳癌細胞の増
殖、成長、コロニー形成(PE)に及ぼす TRF と α-T の作用を試験した。
[3H]thymidine の取込みにより測定した結果、TRF は 180 μg/mL の濃度で細胞増殖を 50%抑制したのに対し、α-T は 1000 μg/mL の濃度まで何ら影響
を及ぼさなかった。
TRF と α-T の作用を 180 μg/mL と 500 μg/mL の濃度と用いた長期成長実験でも試験し、TRF はこれらの細胞の成長を 50%抑制したのに対し、α-T は抑
制しなかったことが明らかになった。
さらに、これらの細胞のコロニー形成能力も試験し、TRF は PE を抑制したのに対し、α-T は作用を及ぼさなかったことが明らかとなった。
これらの結果は、抑制効果は α-T よりはむしろ TRF 中のトコトリエノールの存在によるものであることを示唆している。
Keywords: パーム油、トコトリエノール高含有フラクション、ヒト乳癌細胞
前立腺癌
Prostate Cancer
2010
Barve A, Khor TO, Reuhl K, Reddy B, Newmark H, Kong AN. Mixed tocotrienols inhibit prostate carcinogenesis in TRAMP mice. Nutr Cancer.
2010 Aug;62(6):789-94.
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トコトリエノールの生物活性に対する関心が増している。本稿では、トランスジェニック腺癌マウス前立腺(TRAMP)マウスモデルを対象として、前立腺腫瘍形
成に及ぼすトコトリエノール混合食の有効性を報告する。
8 週齢の雄 TRAMP マウスに 0.1%、0.3%あるいは 1%のトコトリエノール類を含有する AIN-76A 飼料を 24 週齢になるまで摂取させた。雄 TRAMP マウスから
なるポジティブコントロール群と野生型遺伝子非導入マウスからなるネガティブコントロール群には、通常の AIN-76A 飼料を同じく 24 週齢になるまで摂取させ
た。
トコトリエノール混合食給与群では、泌尿生殖器の平均湿重量の有意な減少と共に腫瘍形成の発生率低下が得られた結果から明らかになった。さらにトコ
トリエノール類は、ポジティブコントロールと比較して、高度前立腺上皮内腫瘍のレベルを有意に低下させた。
この高度前立腺上皮内腫瘍のレベル低下は、プロアポトーシスタンパク質 BAD(細胞死における Bcl-2 拮抗因子)、cleaved caspase-3、細胞周期調節
タンパク質のサイクリン依存性キナーゼインヒビターp21、p27 の発現増加と関連していることが明らかになった。対照的にサイクリン A、E の発現はトコトリエノール
混合食給与群で減少することが明らかになった。
総合すると、細胞周期調節タンパク質の修飾とプロアポトーシスタンパク質の発現増加によって、トコトリエノール類は TRAMP マウスにおける前立腺腫瘍形成
を抑制することが得られた結果から明らかになった。
Keywords: TRAMP マウス、前立腺腫瘍形成、細胞周期調節タンパク質、プロアポトーシスタンパク質
Yap WN, Zaiden N, Luk SY, Lee DT, Ling MT, Wong YC, Yap YL. In vivo evidence of gamma-Tocotrienol as a chemosensitizer in the treatment
of hormone-refractory prostate cancer. Pharmacology. 2010;85(4):248-58.
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γ-トコトリエノール(gammaT3)は前立腺癌(PCa)細胞を選択的に破壊し、ドセタキセル(DTX)が誘発するアポトーシスを増強することが知れている。
本研究では、gammaT3 の体内動態、gammaT3 による処置後のアンドロゲン依存性前立腺癌(AIPCa)腫瘍細胞の in vivo での細胞毒性反応、並び
に抗腫瘍効果について検討を行った。
外因性 gammaT3 の補給後に gammaT3 の体内動態と組織分布について調査した。その間、gammaT3 単独あるいは DTX との組み合わせによる補給に
対する腫瘍の反応について、生物ルミネセンスを用いた in vivo でのリアルタイム画像、及び細胞増殖とアポトーシスに関連したバイオマーカーの検査によって調
査した。
腹腔内注射後、gammT3 は血清中から速やかに消失し、AIPCa 腫瘍細胞に選択的に蓄積した。
gammaT3 単独 2 週間の投与により AIPCa 腫瘍細胞の有意な退縮が引き起された一方、gammaT3 と DTX による併用処置により AIPCa 腫瘍細胞の増
殖がさらに抑制された(p<0.002)。
in vivo で gammaT3 によって誘発される細胞毒性効果と抗腫瘍効果は、細胞増殖マーカー(増殖性細胞核抗原の Ki-67 と Idl)の発現減少と癌細胞
のアポトーシス[cleaved caspase 3 と poly(ADP-ribose) polymerase]の割合増加に関連していると考えられる。
さらに薬剤との併用は、AIPCa の浸潤抑制により有効となる可能性が明らかになった。
全体として、単独投与あるいは DTX との併用のいずれにおいても gammaT3 は、DTX 療法を受けている患者でしばしば認められる毒性を減少しながら、
AIPCa に対する有効性を改善する治療戦略を提供する可能性のあることを得られた結果は示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、ドセタキセル、アンドロゲン依存性前立腺癌、細胞毒性反応、抗腫瘍効果、浸潤抑制
2008
Yap WN, Chang PN, Han HY, Lee DT, Ling MT, Wong YC, Yap YL. gamma-Tocotrienol suppresses prostate cancer cell proliferation and
invasion through multiple-signalling pathways. Br J Cancer. 2008 Dec 2;99(11):1832-41.
48
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トコトリエノール高含有フラクション(TRF)は、前立腺癌(PCa)細胞に抗増殖作用を及ぼすことが実証されている。PCa 細胞におけるこのような抗癌特性
を解明するために、本研究はまず、PCa 細胞を排除する最強の異性体を特定し、次にその活性に関与する分子経路を解読することを目的とした。
プロカスパーゼの活性化と sub-G(1)細胞集団の存在からも明らかなように、アポトーシス誘導を引き起した γ-トコトリエノールの抑制作用が最も強いことが結果
から明らかになった。
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生存促進(pro-survival)遺伝子についての試験から、γ-トコトリエノールが誘導する細胞死は、NF-κB、EGF-R、Id ファミリーのタンパク質(Id1、Id3)の
抑制と関連があることが明らかになった。γ-トコトリエノール処理はまた JNK シグナル伝達経路の誘導を引き起した一方、特定の阻害剤(SP600125)による
JNK 活性の抑制が γ-トコトリエノールの作用を部分的に遮断した。
興味深いことに、γ-トコトリエノール処理は間葉系マーカーの抑制、E-カドヘリンの回復、また細胞浸潤能力の抑制と関連のある γ-カテニン発現をもたらした。さ
らに、細胞を γ-トコトリエノールとドセタキセルで同時に処理すると、相乗効果が認められた。
本研究から得られた結果から、γ-トコトリエノールの抗増殖作用は複数のシグナル伝達経路によってもたらされることが示唆され、PCa 細胞に対する γ-トコトリ
エノールの抗浸潤作用と感受性増強作用が初めて実証された。
Keywords: TRF、γ-トコトリエノール、アポトーシス誘導、抗浸潤作用、感受性増強作用
2006
Srivastava JK, Gupta S. Tocotrienol-rich fraction of palm oil induces cell cycle arrest and apoptosis selectively in human prostate cancer cells.
Biochem Biophys Res Commun. 2006 Jul 28;346(2):447-53.
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癌の化学予防剤に求められる必要条件の一つは、正常細胞に影響を及ぼさずに損傷細胞や悪性細胞を細胞周期抑制あるいはアポトーシス誘発によって
除去することである。
本 研 究 で は、正 常 ヒ ト前 立 腺 上 皮 細 胞 (PrEC) 、ウ イル スによ って形 質 転 換 した正 常 ヒト前 立 腺 上 皮 細 胞 ( PZ-HPV-7) 、ヒ ト前 立 腺 癌 細 胞
(LNCaP、DU145、PC-3)を用いて、パーム油から抽出したトコトリエノール高含有フラクション(TRF)による成長抑制効果とアポトーシス効果を評価した。
PrEC と PZ-HPV-7 の TRF 処理は、ほぼ同程度の低い成長抑制反応を引き起した。それとは際立って対照的に、三種類すべての前立腺癌細胞系において
細胞生存率とコロニー形成の顕著な減少を TRF 処理はもたらした。
LNCaP、PC-3、DU145 細胞の TRF 処理 24 時間後の IC50 値は、それぞれ順に 16.5、17.5、22.0 μg/ml であった。TRF 処理は PrEC、PZ-HPV-7 細胞で
アポトーシスを起さなかったものの、80 μg/ml のような高用量の時のみ中等度の細胞生存率低下を示した一方、(i)DNA 断片化、(ii)蛍光顕微鏡検
査、(iii)細胞死検出 ELISA の結果から、すべての細胞系で顕著なアポトーシスを引き起すことが明らかになった。
細胞周期分析の結果、TRF(10~40 μg/ml)は、PZ-HPV-7 細胞を除く三種類すべての細胞系で用量依存的な G0/G1 期の停止と sub-G1 期の増加
を引き起すことが明らかになった。
これらの結果から、パーム油由来 TRF には前立腺癌細胞における選択的な細胞増殖抑制とアポトーシス事象促進を引き起す能力があることが示唆される。
前立腺癌に対する化学予防剤あるいは治療剤として、TRF はかなり有望であると考えられる。
Keywords: TRF、正常ヒト前立腺上皮細胞、ヒト前立腺癌細胞、細胞増殖抑制、アポトーシス事象促進
2004
Conte C, Floridi A, Aisa C, Piroddi M, Floridi A, Galli F. Gamma-tocotrienol metabolism and antiproliferative effect in prostate cancer cells.
Ann N Y Acad Sci. 2004 Dec;1031:391-4.
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PC3、LNCaP 前立腺癌細胞のトコトリエノール(T3)の抗増殖効果と特定のビタミン E の代謝について評価を行った。
これらの細胞系にはトコフェロール(T)と T3 を対応する carboxyethyl-hydroxychroman 代謝物(CEHC)に変換する能力がある。
この代謝の程度と細胞成長に及ぼす抑制効果は、γ-T3 > γ-T > α-T3 > α-T の順に強いことが明らかになった。ケトコナゾールによる γ-T3 代謝の部分的な
抑制は細胞増殖に影響を及ぼさなかった。
これら初期段階の所見から、ビタミン E の CEHC への変換は主として前立腺癌細胞にとって有害な特性を維持するのに有用とされる解毒機構である可能性が
示唆される。
Keywords: PC3、LNCaP 前立腺癌細胞、抗増殖効果、CEHC、解毒機構
肺 癌
Lung Cancer
2013
Zarogoulidis P, Cheva A, Zarampouka K, Huang H, Li C, Huang Y, Katsikogiannis N, Zarogoulidis K. Zarogoulidis P, Cheva A, Zarampouka K,
Huang H, Li C, Huang Y, Katsikogiannis N, Zarogoulidis K. Tocopherols and tocotrienols as anticancer treatment for lung cancer: future
nutrition. J Thorac Dis. 2013 Jun;5(3):349-52. doi: 10.3978/j.issn.2072-1439.2013.04.03.
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栄養は、正常な DNA 修復機構の調節解除、及び腫瘤形成の誘発を招く何種類かの処方剤から免疫系を保護することが長きにわたって知られている。
ビタミン類の中でもとりわけビタミン E 及びそのメンバーであるトコフェロール(α-、β-、γ-、δ-)とトコトリエノール(α-、β-、γ-、δ-)には、in vitro と in vivo の両
方で、癌予防や腫瘍形成阻害と強い関連のあることが実証されている。
ビタミン E はまた、化学療法耐性癌細胞の進化に対する有効な役割、また、急性間質性肺疾患における保護的役割を担っていることが実証されている。
ビタミン E の何種類かの処方は、ナノ製剤として異なるキャリアに封入し、また、異なる形状で投与して検討されてきた。
加えて、何種類かの腫瘍発生経路が、ビタミン E のどのメンバーが各経路を効果的に阻害するかを特定する努力とは別に調査されてきた。ビタミン E は、肺癌
の特定の組織亜型(subhistology type)に対して効率の良さを示している。
最後に、ビタミン E の新規処方及び阻害経路に関する研究の最新情報を紹介し、解説したい。 f
Keywords: ビタミン E、トコフェロール、トコトリエノール、肺癌、栄養、ナノ医療
2005
Yano Y, Satoh H, Fukumoto K, Kumadaki I, Ichikawa T, Yamada K, Hagiwara K, Yano T. Induction of cytotoxicity in human lung
adenocarcinoma cells by 6-O-carboxypropyl-alpha-tocotrienol, a redox-silent derivative of alpha-tocotrienol. Int J Cancer. 2005 Jul
10;115(5):839-46..
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トコトリエノールはあらゆる天然化合物のなかで最も強力な抗癌剤の一つであり、その抗癌特性は Ras ファミリー分子の不活性化と関連している可能性があ
る。しかしながら、トコトリエノールの潜在的な抗癌能力は、in vivo における消失半減期の短さから低下してしまう。
そ の よ う な ト コ ト リ エ ノ ー ル の 弱 点 を 克 服 し 、 抗 癌 活 性 を 増 強 す る た め に 、 α- ト コ ト リ エ ノ ー ル ( T3 ) の redox-silent 類 似 体 、
6-O-carboxypropyl-alpha-tocotrienol(T3E)を合成した。Ras 遺伝子の変異によって予後不良を示す肺腺癌に対する新しい抗癌剤としての T3E の可
能性を評価した。
T3E はヒト肺腺癌細胞株 A549 に対して用量依存的に(0~40 μM)Ras 遺伝子変異を伴う細胞毒性を示した一方、T3 と α-トコフェロール(T)の
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redox-silent 類似対である 6-O-carboxypropyl-alpha-tocopherol(TE)は 40 μM 以内ではるかに弱い細胞毒性を示した。T3E の細胞毒性は細胞周
期が G1 期の細胞蓄積とそれに続くアポトーシス誘導に基いている。
この事象と類似して、A549 の T3E 40 μM による 24 時間の処理は、Ras のファルネシル化抑制と、細胞周期における G1/S の進行に必要とされるサイクリン D
とキーとなる抗アポトーシス分子 Bcl-xL の顕著な濃度低下を引き起した。
さらに、T3E 依存的な RhoA geranyl-geranylation の抑制は、A549 細胞におけるアポトーシス発生の誘発因子の一つであることが明らかになった。
本研究から得られた結果から、T3E は Ras と RhoA のプレニル化を抑制し、A549 細胞に対して負の成長制御を引き起すことが示唆される。
T3 の redox-silent 類似体である T3E は、Ras 遺伝子の変異による予後不良を示す肺腺癌に対する抗癌剤の新しい候補となる可能性があると結論付けら
れる。
Keywords: 6-O-carboxypropyl-alpha-tocotrienol、肺腺癌、細胞毒性、Ras 遺伝子変異
胃障害・胃癌
Gastric Injury and Cancer
2012
Manu KA, Shanmugam MK, Ramachandran L, Li F, Fong CW, Kumar AP, Tan P, Sethi G. First Evidence That γ-Tocotrienol Inhibits the Growth
of Human Gastric Cancer and Chemosensitizes It to Capecitabine in a Xenograft Mouse Model through the Modulation of NF-κB Pathway.
Clin Cancer Res. 2012 Apr 15;18(8):2220-9.
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予後不良と化学療法剤に対する耐性の発現により、胃癌に対する既存の治療法は無効とされている。それ故、安全かつ有効な新規物質が至急必要とされ
ている。γ-トコトリエノールが in vitro と異種移植マウスモデルで胃癌をカペシタビンに感作するか調査を行った。
γ-トコトリエノールが胃癌細胞株の増殖に及ぼす影響を mitochondrial dye uptake assay で、アポトーシスについてはエステラーゼ染色で、NF-κB 活性化に
ついては DNA 結合アッセイで、また、遺伝子発現についてはウェスタンブロット法で検査した。γ-トコトリエノールが成長と化学増感に及ぼす影響についても、ヌ
ードマウスの皮下に移植した腫瘍で検査した。
γ-トコトリエノールは種々の胃癌細胞株の増殖を阻害、カペシタビンのアポトーシス作用を増強、NF-κB の恒常的活性化を阻害、また、NF-κB によって調節さ
れる COX-2、サイクリン D1、Bcl-2、CXCR4、VEGF、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)の発現を抑制することが明らかになった。
ヌードマウスにおけるヒト胃癌移植モデルでは、γ-トコトリエノール単独の投与(1 mg/kg 体重、腹腔内 3 回/週)により腫瘍成長が有意に抑制され、この作
用はカペシタビンによりさらに亢進された。
増殖指数(Ki-67)と微小血管密度(CD31)の両方のバイオマーカーが、カペシタビンと γ-トコトリエノールの組合せにより抑制された。
賦形剤対照群と比較して γ-トコトリエノール群は、NF-κB の活性化、サイクリン D1、COX-2、細胞間接着分子-1(ICAM-1)、MMP-9、サバイビン、
Bcl-xL、XIAP の発現も抑制した。
全体として、γ-トコトリエノールは NF-κB によって調節される増殖、浸潤、血管新生、転移のマーカーを抑制してカペシタビンの作用を増強することが結果から
明らかになった。
Keywords: γ-トコトリエノール、in vitro、異種移植マウスモデル、カペシタビン
2010
Liu HK, Wang Q, Li Y, Sun WG, Liu JR, Yang YM, Xu WL, Sun XR, Chen BQ. Inhibitory effects of gamma-tocotrienol on invasion and
metastasis of human gastric adenocarcinoma SGC-7901 cells. J Nutr Biochem. 2010 Mar;21(3):206-13.
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天然のビタミン E は、トコフェロール類とトコトリエノール類の 2 種類の化合物から構成される混合物である。トコトリエノールの中でもとりわけ γ-トコトリエノールは、
トコフェロールと同様の抗酸化活性を有するのみならず、癌細胞系で顕著な抗癌能を示すことも最近の研究から明らかにされている。
本研究では、胃腺癌細胞 SGC-7901 の浸潤・転移能と γ-トコトリエノールが誘発する抗転移機構との関連について調査を行った。
用量 15、30、45、60 μmol/L、48 時間の γ-トコトリエノール処理は細胞遊走と浸潤活性(matrigel invasion assay)に抑制作用を及ぼし、対照群と比
較して SGC-7901 細胞中のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)活性が上昇することが結果から明らかになった(p<0.05、0.01)。
SGC-7901 細胞におけるフイブロネクチン(FN)に対する走化性反応の増大傾向が γ-トコトリエノール処置群で認められた。SGC-7901 細胞接着は、対照
群と比較して γ-トコトリエノール処理群で減少した(p<0.01)。
MMP-2 と MMP-9 の mRNA 発現から、γ-トコトリエノールが MMP-2 と MMP-9 の mRNA 発現のダウンレギュレーションによって腫瘍細胞の浸潤能を有意に
低下させ(p<0.01)、また SGC-7901 細胞中のメタロプロテイナーゼ-1(TIMP-1)と TIMP-2 の組織阻害因子を γ-トコトリエノール 48 時間の処理によっ
てアップレギュレートすることが(p<0.05)明らかになった。
γ-トコトリエノールはまた、SGC-7901 細胞における nm23-H1 の mRNA 発現も有意に増大させた(p<0.01)。
これらの所見は γ-トコトリエノールが媒介する抗腫瘍転移活性について考えられる機構を示唆し、胃癌に対して化学予防剤として果たし得るビタミン E の役割
を示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、胃腺癌細胞 SGC-7901、抗腫瘍転移活性
2009
Sun W, Xu W, Liu H, Liu J, Wang Q, Zhou J, Dong F, Chen B. gamma-Tocotrienol induces mitochondria-mediated apoptosis in human gastric
adenocarcinoma SGC-7901 cells. J Nutr Biochem. 2009 Apr;20(4):276-84.
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トコトリエノールは自然界に存在するイソプレノイド化合物で、パーム油、米糠、オート麦、小麦胚芽、大麦、ライ麦に豊富に含まれている。トコトリエノールは、
抗酸化特性に加え、強力な抗癌特性を備えている。
本研究では、γ-トコトリエノールがヒト胃腺癌細胞 SGC-7901 にアポトーシスを引き起す基礎をなすメカニズムについて、特にアポトーシス経路の関与との関係
からさらに検討を行った。
γ-トコトリエノールは、濃度依存的、時間依存的に SGC-7901 の細胞成長を抑制した。SGC-7901 細胞の抑制作用は、γ-トコトリエノール 60 μmol/L の濃
度における時間依存的な DNA 損傷及び G(0)/G(1)期での細胞周期停止と相関関係が認められた。
γ-トコトリエノールはカスパーゼ-3 の活性化を誘導し、下流における基質のポリ(アデノシン二リン酸-リボース)ポリメラーゼの切断を増大させた。さらに、γ-トコ
トリエノールが誘導する SGC-7901 のアポトーシスはカスパーゼ-9 の活性化によって媒介された。
本研究から得られたデータは、γ-トコトリエノールがミトコンドリア依存性アポトーシス経路によってヒト胃腺癌細胞 SGC-7901 にアポトーシスを誘導している可能
性が示唆された。従って、これらの所見は γ-トコトリエノールがヒトの胃癌に対して新しく強力な化学予防剤となることを示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、SGC-7901、ミトコンドリア依存性アポトーシス経路
2008
Nur Azlina MF, Nafeeza MI. Tocotrienol and alpha-tocopherol reduce corticosterone and noradrenalin levels in rats exposed to restraint
stress. Pharmazie. 2008 Dec;63(12):890-2.
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トコトリエノール(TT)あるいは α-トコフェロール(TF)の補給が拘束ストレスを受けたラットのコルチコステロン濃度、ノルアドレナリン濃度、胃病変に及ぼす影
響を調査した。
雄 Sprague Dawley ラット 24 匹を同サイズの 4 群に無作為に割り当て、2 つの対照群にはオリーブ油を、処置群には体重 1 kg 当り 60 mg の用量のトコト
リエノールあるいはトコフェロールのいずれかを経口で補給した。
処置 28 日後、対照群の一つ、TT 群、TF 群のラットに 1 日 2 時間の拘束ストレスを 4 日連続で負荷した。最後のストレス負荷を終えた後、コルチコステロン
とノルアドレナリンの濃度を測定するために採血を行った。ラットを犠牲にし、胃病変の評価のために胃を切除した。
TT と TF はストレス負荷を受けたラットのコルチコステロン濃度を曝露前の値で維持した一方、TT はノルアドレナリン濃度も維持した。トコトリエノールは TF と比べ
胃病変形成予防に優れていることが明らかになった。
ビタミン E の保護効果は、ストレスが誘発するコルチコステロンとノルアドレナリンの濃度上昇を抑制する能力と関連していると結論付けられる。
Keywords: 拘束ストレス、コルチコステロン濃度、ノルアドレナリン濃度、胃病変
2005
Azlina MF, Nafeeza MI, Khalid BA. A comparison between tocopherol and tocotrienol effects on gastric parameters in rats exposed to stress.
Asia Pac J Clin Nutr. 2005;14(4):358-65.
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ストレスに曝されたラットでは胃腸管やホルモンに種々の変化が生じる。本研究は、拘束ストレスに曝されたラットの胃粘膜保持に重要とされる胃とホルモンのパ
ラメータに影響を与える変化にトコフェロールとトコトリエノールが及ぼす効果を比較するために設計 した。パラメータには、胃液酸度、胃組織におけるマロンジア
ルデヒド濃度、プロスタグランジン(PGE 2)濃度、ガストリンやグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の血漿濃度を含んだ。
60 匹の雄 Sprague-Dawley ラット(200~250 g)を同じ個体数からなる三つの群に無作為に割り当てた。対照群は通常飼料(RC)を与え、二つの処
置群はビタミン欠乏飼料を与え、さらに 60 mg/体重 kg のトコフェロール(TF)あるいはトコトリエノール(TT)をそれぞれ経口補給した。ラットを犠牲にする前
の試験 28 日目以降に(ストレス非負荷群の)半数のラットから血液を採取した。残りの半数は、(ストレス負荷群で)第 4 日から連続 4 日間、毎日 2
時間、拘束ストレス実験を行い、採血し、犠牲にした。
ストレス負荷のかかったラットにおける胃液酸度と血清ガストリン濃度は、対照群と TF 群のストレス非負荷ラットと比較して有意に低下することが所見より明ら
かになった(p<0.05)。しかしながら、TT 群の胃液酸度とガストリン濃度は、ストレス負荷ラットとストレス非負荷ラットにおいて同程度であった。
これらの所見は、トコトリエノールが通常ストレス負荷状況下では変化する胃液酸度と血清ガストリン濃度を保持できることを示唆している。
しかしながら、PGE 2 と GLP-1 濃度はすべてのストレス負荷、ストレス非負荷群で同等であり、これらのパラメータがストレスで変化することがなく、TF あるいは TT
補給が PGE 2 や GLP-1 の濃度に影響を及ぼさないことを示している。脂質過酸化の指標であるマロンジアルデヒドの胃組織における濃度は、ストレス非負荷
群と比較してストレス負荷群で高いことが明らかになった。
以上の所見から、フリーラジカルはストレス負荷条件下における胃粘膜損傷の発生に一定の役割を果たし、TF あるいは TT いずれかの補給が対照ラットと比較
して脂質過酸化レベル低下させる可能性があることが示唆される。
トコフェロールとトコトリエノールは共にストレス負荷条件下で発生するフリーラジカルによる損傷から胃を保護する能力が同程度あるが、トコトリエノールだけに胃
液酸度とガストリン濃度におけるストレス誘発性の変化を阻止する能力があると結論付けられる。
Keywords: ストレス負荷、マロンジアルデヒド、胃液酸度、血清ガストリン濃度
結腸直腸癌
Colorectal Cancer
2014
Stone WL, Krishnan K, Campbell SE, Palau VE. The role of antioxidants and pro-oxidants in colon cancer. World J Gastrointest Oncol. 2014
Mar 15;6(3):55-66. doi: 10.4251/wjgo.v6.i3.55.
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本総説は、抗酸化剤および酸化促進剤の結腸直腸癌(CRC)における役割に焦点を合わせている。環境因子が散発性 CRC の発生頻度に重要な役割
を果たしていることをかなりの量の証拠が示唆している。
もし酸化促進因子が CRC において病因学的役割を果たしているのであれば、CRC、酸化ストレスおよび遺伝毒性について特徴のはっきりした危険因子におい
て原因となる相互関係を予想することは当然のことである。
喫煙、多量の食事性 n-6 多価不飽和脂肪酸の消費およびアルコール摂取はすべて CRC リスク増加との関連が認められている。これらの危険因子はすべて
酸化促進性のストレッサーであり、それらの酸化ストレス、腸内ミクロビオーム、腸内 M 細胞、シクロオキシゲナーゼ 2 および CRC との関係について本総説で詳
述する。
CRC を引き起こす酸化促進性ストレッサーに強い主張がなされる一方、CRC 予防に果たす食品由来抗酸化剤の役割はそれほど明確にはなっていない。抗
酸化活性を有するすべての微量栄養素が CRC を予防するわけではないことは明白である。しかしながら、CRC 予防に最適な食品由来抗酸化剤がまだ批判
的に評価されていないということももっともらしい。
増えつつある証拠から、RRR-γ-トコフェロール(食事性ビタミン E の主要な形)または他の「非α-トコフェロール」型ビタミン E(例、トコトリエノール)が有効とな
る可能性が示唆されている。アスピリンは抗酸化剤の一種で、その摂取は CRC リスク低減と関連付けられている。f
Keywords: アルコール、抗酸化剤、喫煙、シクロオキシゲナーゼ 2、遺伝毒性、M 細胞、ミクロビオーム、酸化ストレス
2010
Shibata A, Nakagawa K, Sookwong P, Tsuduki T, Asai A, Miyazawa T. alpha-Tocopherol attenuates the cytotoxic effect of delta-tocotrienol in
human colorectal adenocarcinoma cells. Biochem Biophys Res Commun. 2010 Jun 25;397(2):214-9.
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癌予防ではトコフェロール(Toc)よりトコトリエノール(T3)のほうが優れていることを最近の研究が実証している。しかしながら、Toc が T3 の抗癌特性に影響
を及ぼすかに関する情報は殆ど存在しない。
本研究では、Toc が DLD-1 結腸直腸腺癌ヒト細胞における δ-T3 の細胞毒性効果に及ぼす影響について調査を行った。
Toc のなかでもとりわけ α-Toc が DLD-1 細胞における δ-T3 誘導細胞毒性とアポトーシスを減弱させた一方、Toc 単独では細胞毒性効果を示さないことが明
らかになった。
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δ-T3 誘導細胞周期停止とプロアポトーシス遺伝子・タンパク質(例、p21、p27、カスパーゼ)発現が α-Toc によって阻害された。
さらに、α-Toc の併用投与により DLD-1 細胞への δ-T3 取り込みが用量依存的に低下した。
α-Toc は癌細胞に対する細胞毒性が低いだけでなく、細胞の δ-T3 取り込みを阻害することによって δ-T3 の細胞毒性を減弱させていることをこれらの結果は
示している。
Keywords: α-Toc、細胞毒性効果、δ-T3 取り込み
2009
Xu WL, Liu JR, Liu HK, Qi GY, Sun XR, Sun WG, Chen BQ. Inhibition of proliferation and induction of apoptosis by gamma-tocotrienol in
human colon carcinoma HT-29 cells. Nutrition. 2009 May;25(5):555-66.
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γ-トコトリエノールはパーム油由来トコトリエノール高含有フラクションの主要構成成分であるが、抗腫瘍活性があるとする証拠には限りがある。とりわけ、 γ-トコ
トリエノールがヒト大腸癌細胞に及ぼす作用は報告されていない。γ-トコトリエノールが大腸癌に及ぼす化学予防効果を調査するために、HT-29 細胞における
増殖抑制とアポトーシス誘発の能力とこれらの作用の基礎をなす機構の検討を行った。
γ- ト コ ト リ エ ノ ー ル 存 在 下 で HT-29 細 胞 を 培 養 し た 。 γ- ト コ ト リ エ ノ ー ル が 細 胞 増 殖 に 及 ぼ す 作 用 は 、
3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide[MTT]法、有糸分裂指数、コロニー形成によって調査した。細胞周期分布はフロー
サイトメトリー法で調査した。核染色法、透過型電子顕徽鏡法、DNA 断片化によってアポトーシスの測定を行った。アポトーシス関連タンパク質と核因子 κB
p65 タンパク質は、ウエスタンブロット法と免疫蛍光法によって測定した。
γ-トコトリエノールは細胞成長を抑制し、G0G1 期で HT-29 細胞の細胞周期を停止させた。50%抑制濃度は 31.7 μmol/L(48 時間)であった。HT-29 細
胞における γ-トコトリエノール誘発アポトーシスは、Bcl-12 のダウンレギュレーション、Bax のアプレギュレーション、caspase-3 の活性化を伴った。さらに、γ-トコトリ
エノールは核因子 κB p65 タンパク質の発現レベルを低下させ、その核転位を抑制することが明らかになった。
γ-トコトリエノールは時間依存的、用量依存的に HT-29 細胞の細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘発した。また、この過程は G0G1 期の細胞周期停止、
Bax/Bcl-2 比上昇、caspase-3 活性化を伴うことを結果が示している。得られたデータはまた、核因子 κB p65 タンパク質がこれらの作用に関与していることも
示している。
Keywords: γ-トコトリエノール、HT-29 細胞、増殖抑制、アポトーシス誘発、核因子 κB p65 タンパク質
2004
Agarwal MK, Agarwal ML, Athar M, Gupta S. Tocotrienol-rich fraction of palm oil activates p53, modulates Bax/Bcl2 ratio and induces
apoptosis independent of cell cycle association. Cell Cycle. 2004 Feb;3(2):205-11.
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パーム油の抗癌特性は、その中に存在するトコトリエノールとトコフェロールに起因すると考えられている。種々の研究室で行われた試験から、パーム油由来のト
コトリエノール高含有フラクション(TRF)が前新形成細胞と新生細胞の両方で細胞成長を抑制し、アポトーシスを誘導することが明らかにされている。
しかしながら、TRF がアポトーシスを誘導するメカニズムは概して知られていない。幾つかの化学予防剤は細胞成長の負の調節に p53 経路を利用することが明
らかにされているため、野生型 p53 を発現するヒト大腸癌由来細胞株 RKO を用いて、TRF が p53 シグナル伝達ネットワークの構成要素に及ぼす影響を調査
した。
細胞の TRF 処理は、細胞成長とコロニー形成の用量依存的、時間依存的な抑制を引き起した。さらに、RKO の TRF 処理は、細胞周期調節に非依存的と
考えられ、p53 依存的様式で転写的にアップレギュレートされる WAF1/p21 の誘導を引き起した。
これらの結果は、TRF 処理が p53 のレポーター活性の活性化をもたらす p53 反応プロモーターからルシフェラーゼを発現する細胞を用いてさらに確認された。
TRF 処理はまた、シトクローム c の放出、アポトーシス・プロテアーゼ活性化因子-1 の誘導と関連のあるアポトーシスを支持する Bax/Bc12 比の変化を引き起し
た。
Bc12 ファミリーメンバーの発現の変化は、イニシエーターカスパーゼ-9 の活性化に続いて、エフェクターカスパーゼ-3 の活性化を引き起した。これらのシグナル伝達
カスケードは、凝縮クロマチン、DNA 断片化、アポトーシスに至る細胞膜の萎縮をもたらした。
得られたデータから、大腸癌細胞における TRF 誘導アポトーシスは、細胞周期とは無関係と考えられる p53 シグナル伝達ネットワークによって媒介されることが
示唆される。
Keywords: TRF、ヒト大腸癌由来細胞株 RKO、p53 シグナル伝達ネットワーク
肝臓癌
Liver Cancer
2014
Siveen KS, Ahn KS, Ong TH, Shanmugam MK, Li F, Yap WN, Kumar AP, Fong CW, Tergaonkar V, Hui KM, Sethi G. Y-tocotrienol inhibits
angiogenesis-dependent growth of human hepatocellular carcinoma through abrogation of AKT/mTOR pathway in an orthotopic mouse
model. Oncotarget. 2014 Apr 15;5(7):1897-911.
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血管新生は癌の顕著な特徴の一つである。本研究で、γ-トコトリエノールが肝細胞癌(HCC)における血管新生介在性の腫瘍成長を抑止するか、また、そ
うであるならどのような分子機構によるものかについて検討を行った。
われわれは、γ-トコトリエノールが in vitro で血管内皮増殖因子(VEGF)誘発遊走、浸潤、管形成および HUVEC 生存率を抑制することを観察した。加え
て、γ-トコトリエノールはマトリゲル包埋ラット胸部冠動脈リングの毛細血管芽の数を用量依存的に減少させた。また、ニワトリ漿尿膜試験法で、γ-トコトリエノ
ールは血管形成を有意に減少させることも明らかになった。
さらに、in vivo のマトリゲルプラグアッセイで、γ-トコトリエノールによる血管新生阻害も認められた。そのうえ、γ-トコトリエノールは HUVEC における VEGFR2 の
VEGF 誘導自己リン酸化を阻害し、HUVEC および HCC 細胞における AKT/哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)のシグナル伝達カスケードの恒常
的活性化も抑制した。
興味深いことに、γ-トコトリノールは同所性 HCC マウスモデルにおける腫瘍成長を有意に減少させ、また、HCC 患者の異種移植における腫瘍誘発血管新生
を種々の増殖・血管新生のバイオマーカの抑制により阻害することも明らかになった。
まとめると、γ-トコトリノールには HCC における有意な抗腫瘍活性により有望な血管新生抑制剤となる可能性のあることを、われわれの得た所見は強く示唆し
ている。f
52
Keywords: γ-トコトリエノール、肝細胞癌、血管新生、AKT/mTOR、同所性モデル
2011
Rajendran P, Li F, Aryan MK, Shanmugam MK, Loo SY, Kumar AP, Sethi G. γ-Tocotrienol is a novel inhibitor of constitutive and inducible
STAT3 signalling pathway in human hepatocellular carcinoma: potential role as an anti-proliferative, pro-apoptotic and chemosensitizing
agent. Br J Pharmacol. 2011 May;163(2):283-98.
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シグナル伝達性転写活性化因子 3(STAT3)の活性化は、腫瘍細胞の生存、増殖、血管新生、化学療法抵抗性に重要な役割を果たしている。それ
故、STAT3 のリン酸化を抑制する薬剤には癌治療としての潜在能力があるものと考えられる。
本研究では、γ-トコトリエノールのアポトーシス、抗増殖、化学的感受性作用が同トコトリエノールの肝細胞癌(HCC)における STAT3 リン酸化抑制能力と
関連があるかについて検討を行った。
HCC 細胞内における STAT3 活性化、関連するタンパク質キナーゼとホスファターゼ、STAT3 調節遺伝子産物、細胞増殖とアポトーシスに及ぼす γ-トコトリエノ
ールの影響を調査した。
γ-トコトリエノールは、STAT5 への最小限の影響を伴って、STAT3 の構成型、誘導型両方の活性化を阻害した。γ-トコトリエノールはまた、STAT3 活性化と関
連する c-Src、JAK1、JAK2 の活性化も阻害した。
過バナジウム酸塩が STAT3 の γ-トコトリエノール誘導ダウンレギュレーションを逆転させたことから、プロテインチロシンホスファターゼの関与が示唆される。
実際、γ-トコトリエノールは、STAT3 活性化を阻害する γ-トコトリエノールの能力を消失させた小干渉 RNA によるチロシンホスファターゼ SHP-1 の発現と SHP-1
遺伝子の欠失を誘導することを見出した。
γ-トコトリエノールはまた、サイクリン D1、Bcl-2、Bcl-xL、survivin、Mcl-1、血管内皮細胞成長因子を含む STAT3 調節遺伝子産物の発現をダウンレギュレ
ートした。
最終的に γ-トコトリエノールは、細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導し、HCC 治療に用いられる化学療法薬(パクリタキセル、ドキソルビシン)のアポトーシ
ス効果を顕著に増強することが明らかになった。
全体として、γ-トコトリエノールは将来における HCC 並びに他の癌の治療に果たし得る潜在的役割を伴いながら、STAT3 活性化の新規阻害剤の一つとなるこ
とが以上の結果から示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、STAT3 活性化、肝細胞癌
2009
Tasaki M, Umemura T, Kijima A, Inoue T, Okamura T, Kuroiwa Y, Ishii Y, Nishikawa A. Simultaneous induction of non-neoplastic and
neoplastic lesions with highly proliferative hepatocytes following dietary exposure of rats to tocotrienol for 2 years. Arch Toxicol. 2009
Nov;83(11):1021-30.
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ラットを 1 年間トコトリエノール(TT)に長期間曝露すると、増殖性の高い肝病変および結節性肝細胞過形成(NHH)が促進され、またそれとは独立に胎
盤型グルタチオン S‐トランスフェラーゼ(GST-P)陽性肝細胞数が増加することが最近示された。
NHH の病理学的な固有特性に注目して、TT を 0%、0.4%、または 2%の濃度で食餌中に加えたものを雌雄の Wistar Hannover ラットに摂取させ、104 週
間発癌性試験を行った。
高用量投与群の雄ラットで 50 週目までに生存率が 42%にまで低下したため、51 週目からは雌雄ともに高用量投与の濃度を 1%に変更した。
剖検では慢性試験の場合と同様に、雌雄両方の高用量投与群の肝臓で複数の嚢胞様結節が認められたが、結節のサイズはより大きく、そのため表面は突
出し一部有茎状であった。
慢性試験とは異なり、NHH のすべてで海綿状態が生じるわけではなく、代わりに一部の結節では血管拡張が顕著であった。
しかし影響を受けた肝細胞の所見では、異型性がごくわずかであり、GST-P に対する免疫反応性がなく、増殖が不均一であった。そのため、NHH では細胞増
殖活性が一貫して高いものの、TT 長期間曝露に起因する新生物特性は有さなかった。
他方で、高用量投与群の雌では対照群と比較して、肝細胞腺腫の発現率が有意に高かった。
肝臓以外の器官に TT 投与に関連した腫瘍誘導は認められなかった。
したがって、総合的なデータから、さらに長い TT 長期間曝露によって NHH は継続的に増大するが、新生物を形成しないことが明らかに示唆された。
その一方、雌ラットでは TT によって低レベルの肝細胞腺腫が誘発された。
Keywords: Wistar Hannover ラット、嚢胞様結節、肝細胞腺腫
Hiura Y, Tachibana H, Arakawa R, Aoyama N, Okabe M, Sakai M, Yamada K. Specific accumulation of gamma- and delta-tocotrienols in
tumor and their antitumor effect in vivo. J Nutr Biochem. 2009 Aug;20(8):607-13.
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広範囲にわたって研究がなされてきたトコフェロール類とは対照的に、トコトリエノール類(T3)については極めて僅かな理解しかなされていない。in vitro と in
vivo の両方でマウス肝癌細胞株 MH134 における γ-T3 と δ-T3 の抗腫瘍活性の評価を行った。
δ-T3 はアポトーシスを引き起し、γ-T3 よりも強力に MH134 細胞の成長を抑制することが明らかになった。MH134 を移植した C3H/HeN マウスでは、γ-T3 と
δ-T3 の給餌により腫瘍成長が著しく遅れることが明らかになった。
他方では、両方の T3 とも体重、正常組織の重量、免疫グロブリンの濃度に顕著な影響を及ぼさなかった。興味深いことに、T3 は腫瘍中に検出されたが、正
常組織中には検出されないことが明らかになった。
われわれの知る限り、本研究で得られた結果は腫瘍における γ-T3 と δ-T3 の特異的な蓄積に関する初めての存在証明であり、T3 の蓄積は T3 の抗腫瘍活
性に重大な意味を持っていることが示唆される。
Keywords: γ-、δ-T3、MH134、C3H/HeN マウス、抗腫瘍活性
2006
Sakai M, Okabe M, Tachibana H, Yamada K. Apoptosis induction by gamma-tocotrienol in human hepatoma Hep3B cells. J Nutr Biochem.
2006 Oct;17(10):672-6.
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ヒト肝細胞由来株 Hep3B に及ぼすトコトリエノール(T3)の抗腫瘍活性の評価を行った。
まず、T3 がヒト肝細胞由来株 Hep3B の増殖に及ぼす影響を調査し、γ-T3 が α-T3 よりも低濃度かつ少ない処理回数で細胞増殖を抑制することを見出し
た。
次に、γ-T3 のアポトーシス誘導の効果を調査し、γ-T3 がポリ(アデノシン二リン酸-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の切断を誘導し、カスパーゼ-3 活性の上
昇を刺激することを見出した。
さらに、γ-T3 はカスパーゼ-8 とカスパーゼ-9 の活性上昇を刺激した。γ-T3 が誘導するアポトーシス細胞死は、Bax のアップレギュレーション、Bid とカスパーゼ-8
の断片化増加を伴うことも明らかになった。
これらのデータは、γ-T3 が Hep3B 細胞にアポトーシスを誘導し、カスパーゼ-8 とカスパーゼ-9 がアポトーシス誘導に関与していることを示している。さらに、これら
の結果から、Bax と Bid が γ-T3 によるアポトーシス誘導を制御していることが示唆される。
Keywords: Hep3B、γ-T3、カスパーゼ、アポトーシス誘導
2005
Wada S, Satomi Y, Murakoshi M, Noguchi N, Yoshikawa T, Nishino H. Tumor suppressive effects of tocotrienol in vivo and in vitro. Cancer
Lett. 2005 Nov 18;229(2):181-91.
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トコトリエノールにはトコフェロールよりも高い生物活性があることが報告されている。in vivo と in vitro の両方でトコトリエノールの抗腫瘍作用について検討を行
った。
トコトリエノールの経口投与はマウスにおいて肝発癌と肺発癌の顕著な抑制を引き起した。ヒト肝細胞癌株 HepG2 では、δ-トコトリエノールが α-、β-、γ-トコト
リエノールよりも顕著な抗増殖作用を及ぼした。δ-トコトリエノールはアポトーシスを誘導し、また S 期停止を誘導する傾向も認められた。
他方、遺伝子発現解析から、δ-トコトリエノールは第 I 相酵素の一つである CYP1A1 遺伝子を増加することが明らかになった。
可能な有害作用を調査するための試験がさらに必要とされるが、本研究から得られたデータからトコトリエノールが癌予防に有望な因子となる可能性が示唆さ
れる。
Keywords: HepG2、δ-トコトリエノール、抗増殖作用、S 期停止、CYP1A1 遺伝子
Har CH, Keong CK. Effects of tocotrienols on cell viability and apoptosis in normal murine liver cells (BNL CL.2) and liver cancer cells (BNL
1ME A.7R.1), in vitro. Asia Pac J Clin Nutr. 2005;14(4):374-80.
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マウス肝細胞の生存能とアポトーシスイベントに及ぼすトコトリエノールの影響について、0~32 μg/mL の用量範囲で検討を行った。
正常マウス肝細胞(BNL CL.2)とマウス肝癌細胞(BNL 1ME A.7R.1)をトコトリエノール(T3)、α-トコフェロール(α-T)、ポジティブコントロールとして薬
剤のドキソルビシン(Doxo)で処理した。
細胞生存率の検定から、T3 が BNL 1ME A.7R.1 細胞の生存率を用量依存的に(8~16 μg/mL)有意に低下させた一方(p≦0.05)、T は処理用量
を 0 から 16 μg/mL に増加させても細胞生存率を有意に抑制しないことが明らかになった(p>0.05)。
トコトリエノールの 50%抑制濃度(IC50 値)は、12、24、36、48、60、72 時間でそれぞれ 9.8、8.9、8.1、9.7、8.1、9.3 μg/mL であった。Annexin V-FITC
蛍光顕微鏡検査を用いてアポトーシス評価を行ったところ、BNL 1ME A.7R.1 肝癌細胞の T3 処理 6 時間後に初期アポトーシスが検出されたが、未処理肝
癌細胞についてはトコトリエノールの平均 IC50 値 8.98 μg/mL で何も観察されなかった。
アクリジンオレンジ・ヨウ化プロピジウム蛍光アッセイにより、トコトリエノール(8.98 μg/mL)処理後 6 時間の BNL 1ME A.7R.1 肝癌細胞で幾つかのアポトーシ
ス体が検出された。しかしながら、未処理肝癌細胞と BNL CL.2 正常肝細胞では僅かな数のアポトーシス体しか認められなかった。
幾つかの有糸分裂体もまた、T3 処理 BNL 1ME A.7R.1 肝癌細胞に存在したが、未処理 BNL 1ME A.7R.1 細胞と BNL CL.2 肝細胞では認められなかった。
T3(8.98 μg/mL)による BNL 1ME A.7R.1 肝癌細胞処理後 9、12、24 時間に、それぞれ 24.62、25.53、44.90%の細胞で活性型カスパーゼ-3 の活性
上昇が明らかになった。
DNA のラダリング(断片化)試験の結果、DNA の断片化が T3 処理 BNL 1ME A.7R.1 肝癌細胞で生じたが、未処理肝癌細胞、T3 処理・未処理正常
肝細胞では認められなかった。
これらの結果から、トコトリエノールは 8~32 μg/mL の用量でマウス肝癌細胞の細胞生存率を低下させ、この細胞生存率低下はアポトーシスに起因している
可能性が示唆されている。
Keywords: 正常マウス肝細胞、マウス肝癌細胞、活性型カスパーゼ-3、細胞生存率、アポトーシス
2004
Iqbal J, Minhajuddin M, Beg ZH. Suppression of diethylnitrosamine and 2-acetylaminofluorene-induced hepatocarcinogenesis in rats by
tocotrienol-rich fraction isolated from rice bran oil. Eur J Cancer Prev. 2004 Dec;13(6):515-20.
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ト コ ト リ エ ノ ー ル 高 含 有 フ ラ ク シ ョ ン ( TRF ) の 抗 癌 効 果 に つ い て 、 雄 Sprague-Dawley ラ ッ ト を 対 象 に 、 diethylnitrosamine (DEN) /
2-acetylaminofluorene (AAF)が誘導する肝臓癌発生過程において評価を行った。
TRF 処置を 6 ヵ月間行い、肝癌発生のイニシエーション(初期段階)の 2 週間前に開始した。DEN/AAF ラットかた摘出した肝臓の形態学的検査の結果、
多数の灰白色の斑点と少数の小結節が認められた。これらは TRF 処置によって顕著に減少した。DEN/AAF による細胞毒障害は、細胞膜から血漿中に放
出されるアルカリホスファターゼ(ALP)によって推定した。
DEN/AAF は正常対照ラットと比較して血漿中の ALP 活性を 2 倍上昇させたが、この上昇は TRF 処置によって顕著に抑制された。DEN/AAF ラットにおいて
肝 ALP 活性は 79%上昇し、TRF 投与後さらに 48%の上昇を認めた。
グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)の肝臓における活性もまた、肝発癌誘導時に上昇した(3.5 倍)。脂質過酸化と低密度リポタンパク質(LDL)酸
化は、正常対照ラットと比較して、DEN/AAF によるイニシエーション後に 3 倍上昇した。
しかしながら、DEN/AAF 処置ラットへの TRF 処置は、上述のパラメータを大きく減少させ(62~66%)、DEN/AAF 活性を制限した。
TRF の長期摂取は、その抗酸化活性により、肝臓の脂質過酸化とタンパク質の酸化損傷を防止して癌リスクを低下させる可能性がある。
Keywords: TRF、肝癌発生、細胞毒障害、脂質過酸化、LDL 酸化
Sakai M, Okabe M, Yamasaki M, Tachibana H, Yamada K. Induction of apoptosis by tocotrienol in rat hepatoma dRLh-84 cells. Anticancer
Res. 2004 May-Jun;24(3a):1683-8.
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トコフェロール(Toc)とトコトリエノール(T3)の誘導体の抗腫瘍活性を評価するのが本研究の目的である。
ラット正常肝細胞株 RLN-10、ラット肝癌細胞株 dRLh-84 の増殖に及ぼすこれらビタミン E 同族体の影響をまず調査したところ、特に T3 が dRLh-84 の細胞
増殖を抑制することが明らかになった。
次に、アポトーシス誘導に及ぼすビタミン E 同族体の影響を調査したところ、T3 が DNA 断片化を誘導し、カスパーゼ-3 活性化の上昇を促進することが明らか
になった。さらに、T3 はカスパーゼ-8 活性の上昇を促進した一方、カスパーゼ-8 阻害剤は T3 によるアポトーシス誘導を抑制した。
ビタミン E 同族体の dRLh-84 への取込みについても調査したところ、T3 は Toc より速く取り込まれることが明らかになった。
これらの結果は、T3 が dRLh-84 のアポトーシスを誘導し、カスパーゼ-8 がこのアポトーシス誘導に関与していることを示している。ビタミン E 同族体によるアポト
ーシス誘導の差については、それらの細胞内取込み速度の違いに関連していると思われる。
54
Keywords: ラット肝癌細胞株、アポトーシス誘導、細胞内取込み速度
1994
Ong FB, Wan Ngah WZ, Top AG, Khalid BA, Shamaan NA. Vitamin E, glutathione S-transferase and gamma-glutamyl transpeptidase
activities in cultured hepatocytes of rats treated with carcinogens. Int J Biochem. 1994;26:397-402.
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Diethylnitrosamine (DEN)と 2-acetylaminofluorene(AAF)で処 理 したラットから調 製 した培 養 肝 細 胞 におけるグルタチオン S-トランスフェラーゼ
(GST)及び γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)活性に及ぼす α-トコフェロールと γ-トコトリエノールの影響を調査した。
発癌物質で処理したラットから調整した培養 3 日後の肝細胞を α-トコフェロール及び γ-トコトリエノールで処理した肝細胞は両方とも、未処理の肝細胞より
有意に高い GST 活性を示した(p<0.05)。α-トコフェロールと γ-トコトリエノールの処理は、一般的に未処理の肝細胞より GST 活性を増加させる傾向にあ
った。
高用量の α-トコフェロール(125~250 μM)と低用量の γ-トコトリエノール(12.5~25 μM)は、一般的に 1~3 日目の GGT 活性を有意に減少させた。
GGT 活性は、α-トコフェロールと γ-トコトリエノールの用量を増加させると減少する。
Keywords: 培養肝細胞、GST 活性、GGT 活性、α-、γ-トコトリエノール
1993
Rahmat A, Ngah WZ, Shamaan NA, Gapor A, Abdul Kadir K. Long-term administration of tocotrienols and tumor-marker enzyme activities
during hepatocarcinogenesis in rats. Nutrition. 1993;9:229-32.
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Diethylnitrosamine (DEN)と 2-acetylaminofluorene(AAF)誘発ラット肝発癌に及ぼすトコトリエノールの長期投与の影響を、血液、肝臓中の γ-グルタ
ミル-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GSTs)、グルタチオン(GSH)の活性レベル
測定により調査した。
体重 120~160 g、7~8 週齢の雄 Rattus norwegicus ラット 28 匹を試験に用いた。これらのラットを 4 つの処理群に分けた。すなわち、基礎食を与えた対
照群、基礎食にトコトリエノール(食餌 1 kg 当り 30 mg)をサプリメンテーションした群、DEN/AAF で処理した群、DEN/AAF で処理しトコトリエノール(食餌
1 kg 当り 30 mg)をサプリメンテーションした群。採血を毎月行い、GGT、ALP、GSH のレベルを測定した。9 ヵ月後ラットを殺し、肝臓を形態学的に調査し
た。
灰白色の小結節(2/肝臓)が DEN/AAF 処理したすべてのラット(n=10)にみられたが、DEN/AAF 処理し、トコトリエノールをサプリメンテーションしたラット
(n=6)では 1 匹のみにみられた。血中、肝中 GSH、ALP、GGT 活性の有意な増加が DEN/AAF 処理ラットで観察された。肝中 GST は、同様に DEN/AAF
処理群で増加した。
トコトリエノールのサプリメンテーションはラットにおける発癌物質による影響を減弱した。
Keywords: GGT、ALP、GST、GSH、小結節
Ong FB, Wan Ngah WZ, Shamaan NA, Md Top AG, Marzuki A, Khalid AK. Glutathione S-transferase and gamma-glutamyl transpeptidase
activities in cultured rat hepatocytes treated with tocotrienol and tocopherol. Comp Biochem Physiol C. 1993;106:237-40.
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培養ラット肝細胞におけるグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)と γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の活性に及ぼすトコトリエノールとトコフェロール
の効果を調査した。
トコトリエノールとトコフェロールによる処理は培養 5 日目に GGT 活性を有意に低下させたが、トコトリエノール処理はまた 1~2 日目で GGT 活性を有意に低
下させた。
トコトリエノールとトコフェロールによる処理は 3 日目に GST 活性を対照と比べ有意に低下させたが、トコトリエノール処理はまた 1~3 日目で GST 活性を低下
させた。
トコトリエノールによる処理は、培養後 1~3 日間、50 μM 以上の用量で対照より効果があることが明らかになった。
Keywords: 培養ラット肝細胞、GST、GGT、トコトリエノール、トコフェロール
1991
Ngah WZ, Jarien Z, San MM, Marzuki A, Top GM, Shamaan NA, Kadir KA. Effect of tocotrienols on hepatocarcinogenesis induced by
2-acetylaminofluorene in rats. Am J Clin Nutr. 1991;53:1076S-1081S.
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2-acetylaminofluorene(AAF)給餌ラットにおける肝発癌に及ぼすトコトリエノールの作用を形態学的、組織学的に 20 週間追跡した。
処理ラットと対照ラットの肝臓における形態学・組織学的相違は観察されなかった。細胞の損傷は、正常及びトコトリエノール処理ラットと比べたとき、AAF 処
理ラットの肝臓で大きかったが、AAF-トコトリエノール処理ラットでは小さかった。
2-acetylaminofluorene は、血漿及び肝ミクロソームの γ-グルタミル-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)と肝ミクロソームの UDP-グルクロニルトランスフェラ
ーゼ(UDP-GT)両方の活性を有意に増大させた。
トコトリエノールと AAF の併用投与は、対照ラットとトコトリエノールのみで処理したラットと比べたとき、12 週と 20 週後に血漿 GGT の活性が、20 週後に肝ミク
ロソームの UDP-GT が有意に減少した(それぞれ、p<0.01、p<0.002、p<0.02)。
肝ミクロソームの GGT もまた、肝ミクロソームの UDP-GT と同様のパターンを示したが、減少は有意でなかった。
結果は、AAF 処理ラットに投与したトコトリエノールが肝発癌の重篤度を減少させることを示唆している。
Keywords: AAF、GGT、UDP-GT、トコトリエノール、重篤度
膵臓癌
Pancreatic Cancer
2009
Hussein D, Mo H. d-Delta-tocotrienol-mediated suppression of the proliferation of human PANC-1, MIA PaCa-2, and BxPC-3 pancreatic
carcinoma cells. Pancreas. 2009 May;38(4):e124-36.
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メバロン酸経路の律速段階の反応を行う 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイム A(HMG CoA)還元酵素によって、細胞の成長に不可欠な中間体が
生成する。スタチン類等の HMG CoA 還元酵素に対する競合阻害剤、およびトコトリエノール類等の還元酵素のダウンレギュレーターは腫瘍の成長を抑制す
る。
今回の研究では、ビタミン E の最も活性が高い異性体である d-δ-トコトリエノールがヒト MIA PaCa-2 および PANC-1 膵臓癌細胞ならびに BxPC-3 膵管腺
癌細胞に及ぼす効果について評価した。
細胞増殖は CellTiter 96 Aqueous One Solution (Promega, Madison, Wis)を用いて計測した。細胞周期分布はフローサイトメトリーによって決定した。
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アポトーシスについては、アクリジンオレンジおよびエチジウムブロマイドで二重染色後にアネキシン V 染色を行い、蛍光顕微鏡下で観察して評価した。
d-δ-トコトリエノールによって濃度依存的に細胞増殖が抑制され、その 50%阻害濃度は MIA PaCa-2 細胞で 28 (6) μmol/L、PANC-1 細胞で 35 (7)
μmol/L、BxPC-3 細胞で 35 (8) μL であった。
こうした効果は、細胞周期が G1 期で停止しているため、およびアポトーシスのために生じたと考えられる。
d-δ-トコトリエノールを介する増殖抑制効果はメバロン酸塩によって減弱した。
d-δ-トコトリエノールおよびロバスタチンの生理学的に到達可能な混合物が相乗的に作用して MIA PaCa-2 細胞の増殖を抑制した。
HMG CoA 還元酵素の調節因子(スタチン類、トコトリエノール類、ファルネソール)、ファルネシルトランスフェラーゼの調節因子(ファルネシルトランスフェラー
ゼ阻害剤)、あるいはメバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼの調節因子(酢酸フェニル)によるメバロン酸経路活性の抑制は、膵臓癌化学療法として利
用できる可能性がある。
Keywords: d-δ-トコトリエノール、膵臓癌細胞、膵管腺癌細胞
Husain K, Francois RA, Hutchinson SZ, Neuger AM, Lush R, Coppola D, Sebti S, Malafa MP. Vitamin E delta-tocotrienol levels in tumor and
pancreatic tissue of mice after oral administration. Pharmacology. 2009;83(3):157-63.
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トコトリエノールはナノモルレベルの濃度で神経保護作用を、またマイクロモルレベルの濃度で抗発癌作用を及ぼすことが知られている天然のビタミン E 化合物で
ある。
本報告では、δ-トコトリエノールの膵癌に対する抗腫瘍活性から、そのトコトリエノールの薬物動態、腫瘍・膵組織中濃度、毒性について調査を行った。
δ-トコトリエノール 100 mg/kg の単回経口投与後、ピーク血漿濃度(C(max))は 57±5 μmol/L、ピーク血漿濃度に到達するまでの時間(T(max))は 2
時間、血漿半減期(t(1/2))は 3.5 時間であった。δ-トコトリエノールは 24 時間以内に血漿と肝臓から消失したが、膵臓からの消失は遅延が認められた。
マウスに δ-トコトリエノールを 6 週間摂取させたところ、腫瘍組織中の濃度は 41±3.5 nmol/g であった。この濃度は、以前の研究で腫瘍成長を 80%抑制し
た δ-トコトリエノールの経口投与量(100 mg/kg)でも観察されている。興味深いことに、δ-トコトリエノール濃度は腫瘍より膵臓で 10 倍高いことが明らかに
なった。
マウスの増体重は正常で、組織病理学的変化を伴わず、δ-トコトリエノールには毒性が認められなかった。δ-トコトリエノールは経口投与後に膵中で生理活
性レベルに到達し、膵癌における臨床的意義を支持していることがデータから示唆される。
Keywords: δ-トコトリエノール、単回経口投与、腫瘍・膵組織中濃度、毒性
放射線防護
Radioprotection
2011
Berbee M, Fu Q, Boerma M, Pathak R, Zhou D, Kumar KS, Hauer-Jensen M. Reduction of radiation-induced vascular nitrosative stress by the
vitamin E analog γ-tocotrienol: evidence of a role for tetrahydrobiopterin. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2011 Mar 1;79(3):884-91.
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ビタミン E 類縁化合物である γ-トコトリエノール(GT3)は強力な放射線防護剤である。GT3 は、HMG-CoA 還元酵素の阻害とは独立した効果として、放
射線照射後の血管の過酸化亜硝酸産生を減少させる。HMG-CoA 還元酵素阻害剤は、補因子であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)を必要とする内皮
型一酸化窒素合成酵素を介して多面的効果を媒介する。本研究では BH4 のバイオアベイラビリティに及ぼす放射線照射の影響および BH4 代謝に対する
GT3 の効果を検討した。
マウスに 8.5 Gy の全身照射を行った。分別酸化法に次いで高速液体クロマトグラフィーにより、全身照射後 0、3.5、7、14 および 21 日に肺の BH4 および総
ビオプテリンの濃度を測定した。照射後の血管の酸化的ストレスおよび骨髄コロニー形成単位に及ぼす外因性の GT3 および BH4 の効果を in vivo で評価し
た。内皮細胞のアポトーシスならびにグアノシン三リン酸(GTP)シクロヒドロラーゼ 1(GTPCH)、GTPCH フィードバック調節タンパク質(GFRP)の内皮発
現、GFRP 転写、GFRP タンパク質濃度および GFRP-GTPCH 複合体に対する GT3 の効果は in vitro で測定した。
ベースライン値と比較して、肺の BH4 濃度は全身照射後 3.5 日に 24%低下し、GT3 により回復した。全身照射後 14 日および 21 日には、代償性の BH4
増加が観察された(それぞれ 58%および 80%)。溶媒投与コントロールと比較して、GT3 および BH4 の補給により照射後 3.5 日の血管の過酸化亜硝酸産
生は減少し(それぞれ 66%および 33%)、BH4 は骨髄コロニー形成単位の 68%の増加をもたらした。GT3 は GFRP 遺伝子の転写を減少させることで内皮
細胞のアポトーシスを改善し、内皮の GFRP タンパク質濃度および GFRP-GTPCH 複合体形成を減少させた。
BH4 のバイオアベイラビリティは放射線照射後早期に減少する。外因性の BH4 投与により照射後の血管の酸化的ストレスは減少する。GT3 は、BH4 経路の
重要な調節タンパク質の一つである GFRP の発現を強力に抑制し、それにより BH4 の減少を相殺することなどにより、放射線照射後のフリーラジカル生成に対
して若干の有益な効果を及ぼす可能性がある。
Keywords: γ-トコトリエノール、過酸化亜硝酸産生、テトラヒドロビオプテリン、GTPCH フィードバック調節タンパク質
Berbée M, Fu Q, Garg S, Kulkarni S, Kumar KS, Hauer-Jensen M. Pentoxifylline enhances the radioprotective properties of γ-tocotrienol:
differential effects on the hematopoietic, gastrointestinal and vascular systems. Radiat Res. 2011 Mar;175(3):297-306.
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ビタミン E 類縁化合物である γ-トコトリエノール(GT3)は強力な放射線防護剤かつ緩和剤である。
本研究は、(a)ホスホジエステラーゼ阻害剤であるペントキシフィリン(PTX)を追加することにより GT3 の有効性が増強されうるかを明らかにし、(b)作用
機序に関する情報を得るために実施した。
マウスに溶媒、GT3(全身照射前 24 時間に 400 mg/kg)、PTX(全身照射前 30 分に 200 mg/kg)または GT3+PTX を、8.5~13 Gy の全身照射前
に皮下投与した。
総致死率、生存期間ならびに消化管障害、造血器障害および血管障害を評価した。骨髄微小環境中のサイトカイン値を測定し、内皮型一酸化窒素合
成酵素(eNOS)の要求性は eNOS 欠損マウスを用いて検討した。
GT3+PTX は GT3 単独に比べ生存率を有意に改善し、12.5 Gy の被曝後でも死亡を完全に防護した。GT3+PTX は GT3 単独に比べ、骨髄の CFU、脾コ
ロニー数および血小板の回復を改善した。
GT3 および GT3+PTX は、照射後早期の段階で骨髄血漿における G-CSF 値ならびに IL-1α、IL-6 および IL-9 の利用能を増加させた。GT3 および GT3+PTX
は、消化管障害および血管の過酸化亜硝酸の産生を改善する上で同等に有効であった。
eNOS 欠損マウスと適切なコントロールを用いた生存率の検討により、eNOS は全身照射後の死亡の防護に要求されないことが明らかになった。
GT3 と PTX の併用投与は、造血刺激の誘導に依存する可能性のある機序により、放射線照射後の生存率を GT3 単独投与時よりも上昇させた。
GT3+PTX は、GT3 単独に比べ、消化管毒性および血管の酸化的ストレスを減少させなかった。単独または両剤併用の放射線防護効果には eNOS は要求
されない。
Keywords: γ-トコトリエノール、ペントキシフィリン、生存率、消化管障害、造血器障害、血管障害
2010
Li XH, Fu D, Latif NH, Mullaney CP, Ney PH, Mog SR, Whitnall MH, Srinivasan V, Xiao M. Delta-tocotrienol protects mouse and human
hematopoietic progenitors from gamma-irradiation through extracellular signal-regulated kinase/mammalian target of rapamycin
signaling. Haematologica. 2010 Dec;95(12):1996-2004..
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γ 線照射は造血細胞の急速なアポトーシスおよび骨髄抑制を引き起こす。一方、急性放射線症候群に対して承認された放射線対策はない。
我々は本研究で、ビタミン E の異性体の一つである天然の δ-トコトリエノールが致死的な全身照射を受けたマウスの生存率を有意に上昇させることを明らかに
した。我々は、γ 線照射後の造血前駆細胞の生存率に及ぼす δ-トコトリエノールの効果および機序を in vivo および in vitro の実験で探索した。
CD2F1 マウスおよび CD34+ヒト造血前駆細胞に、γ 線照射前 24 時間または照射後 6 時間に δ-トコトリエノールまたは溶媒コントロールを投与した。造血前
駆細胞の生存および再生に及ぼす δ-トコトリエノールの効果をクローン形成能試験、フローサイトメトリーおよび骨髄組織化学染色法により評価した。
δ-トコトリエノールおよび γ 線照射によるシグナル制御活性は、免疫蛍光染色法、イムノブロッティング法および低分子干渉 RNA 測定法により評価した。
δ-トコトリエノールは有意な放射線防護効果を示した。δ-トコトリエノールの単回投与により、照射後 30 日の生存率により測定した CD2F1 マウスの全身照射
誘発死亡は 100%防護された。
δ-トコトリエノールは、放射線照射したマウスの細胞の生存率を高め、造血系のマイクロフォーカス形成および骨髄における lineage-/Sca-1+/ckit+造血幹細
胞・前駆細胞の再生を増加させ、またヒト CD34+細胞の放射線照射による損傷を防護した。
δ-トコトリエノールは細胞外シグナル関連キナーゼ 1/2 のリン酸化を活性化し、DNA 損傷のマーカーである g-H2AX のフォーカス形成を有意に阻害した。さら
に、δ-トコトリエノールは、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質およびその下流のエフェクタである 4EBP-1 のリン酸化をアップレギュレートした。
これらの変化は mRNA 転写制御因子 eIF4E および細胞の生存・増殖を担うリボソームタンパク質 S6 の活性化と関連していた。
低分子干渉 RNA による細胞外シグナル関連キナーゼ 1/2 の発現阻害により、δ-トコトリエノールによる哺乳類ラパマイシン標的タンパク質のリン酸化およびク
ローン形成能が抑制され、放射線照射 CD34+細胞中の g-H2AX のフォーカス形成が増加した。
以上のデータから、δ-トコトリエノールは、細胞外シグナル関連キナーゼ 1/2 の活性化に関連した哺乳類ラパマイシン標的タンパク質生存経路を介してマウスの
骨髄およびヒト CD34+細胞を放射線誘発障害から防護することが示される。
Keywords: δ-トコトリエノール、造血前駆細胞、生存率、細胞外シグナル関連キナーゼ 1/2
Kulkarni S, Ghosh SP, Hauer-Jensen M, Kumar KS. Hematological targets of radiation damage. Curr Drug Targets. 2010 Nov
1;11(11):1375-85.
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放射線誘導骨髄抑制は、依然として放射線療法と化学療法の律速因子である。従って、放射線損傷の血液学的標的は、放射線腫瘍並びに正常組織
の損傷と保護に重大な意味を持っている。
造血幹細胞と前駆細胞の保護が極めて重要であるとされている。治療標的を開発するために、幹細胞の再生と分化のメカニズムを理解することが必要とな
る。
最近の造血幹細胞に関する分子病理学的研究における進歩から、幹細胞の自己再生と増殖を維持する種々の外因性及び内因性シグナル伝達経路間
の微妙なバランスが示唆されている。
外因性シグナル伝達には、隣接した間質細胞、骨芽細胞、及びサイトカイン、ケモカイン、メタロプロテアーゼを分泌する脂肪細胞のような微小環境因子が関
与している一方、内因性調節には、Wnt/Hedgehog/Notch シグナル伝達、DNA 損傷誘導エピジェネティック(後生的)変化、テロメア短縮、初期老化が
関与している。
合成のサイトカイン類似物質、サイトカイン刺激剤、DNA 修復調整剤を含む種々の薬剤が放射線防護剤として試験されているところである。
コロニー刺激因子は、自家移植で用いられる前駆細胞の動員と拡大に加え、化学療法と放射線療法によって誘発される好中球減少症の処置に院内で日
常的に利用されている。しかしながら、毒性がその利用に制限を加えている。
ビタミン E のイソフォームで有望な抗発癌特性を示し、強力なフリーラジカルスカベンジャーである γ-トコトリエノールは、マウスモデルで骨髄(BM)を放射線損
傷から保護し、造血を刺激することが最近明らかになった。
本章では BM における放射線損傷の潜在的な標的に焦点を合わせ、γ-トコトリエノールによる防護メカニズムについて、そのメカニズムが一般的な放射線防護
と特に化学療法と放射線療法における BM 保護にどのように寄与するのかを推察したい。
Keywords: 放射線誘導骨髄抑制、γ-トコトリエノール、骨髄保護、化学療法、放射線療法
Kulkarni S, Ghosh SP, Satyamitra M, Mog S, Hieber K, Romanyukha L, Gambles K, Toles R, Kao TC, Hauer-Jensen M, Kumar KS.
Gamma-tocotrienol protects hematopoietic stem and progenitor cells in mice after total-body irradiation. Radiat Res. 2010
Jun;173(6):738-47.
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亜致死線量照射を受けたマウスを対象に γ-トコトリエノール(GT3)が造血幹細胞(HSC)と造血前駆細胞(HPC)に及ぼす放射線防護効果について
調査を行った。
全ての処理群において全身照射(TBI)後 2 日目と 4 日目に HPC(c-Kit(+)、Lin(-))が 40%まで減少したことが、フローサイトメトリー分析から明らかにな
った。
GT3 処理したマウスの HPC 数は 7 日目にほぼ完全に回復したが(90%)、賦形剤処理したマウスでは TBI 後 13 日目でも減少したままであった。
分類した HSC(Lin(-)、Scal(+)、c-Kit(+))について in vitro で行ったコロニー形成アッセイから、コロニー数は、未照射コントロール群(無処理)と比べて賦
形剤処理群で TBI 後 17 日目、60 日目にそれぞれ 40%、50%まで減少したことが明らかになった。
GT3 処理群のマウスではそれより多いコロニー数が維持され(ナイーブマウスと比べて 86%、80%)、その結果 HSC の自己回復能が保持された。
胸骨骨髄の病理組織学試験から、TBI 後 7 日目、13 日目に GT3 処理群のマウスで賦形剤群よりも多数の再生した骨髄細胞と巨核球細胞の微小焦点と
全体的に高い細胞性が認められた。
GT3 処理はまた、照射を受けたマウスで小核赤血球の発生頻度も有意に低下させた。
GT3 は HSC と HPC を保持し、また持続性の DNA 損傷を阻止することによって造血系組織を及ぼしていることが、得られた結果から実証された。
Keywords: 亜致死線量照射、γ-トコトリエノール、造血幹細胞、造血前駆細胞、自己回復能
2009
57
Ghosh SP, Kulkarni S, Hieber K, Toles R, Romanyukha L, Kao TC, Hauer-Jensen M, Kumar KS. Gamma-tocotrienol, a tocol antioxidant as a
potent radioprotector. Int J Radiat Biol. 2009 Jul;85(7):598-606.
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γ-トコトリエノールの放射線防護能を評価することが本研究の目的である。
用量および投与時期の至適化のため、γ-トコトリエノール(GT3)を CD2F1 マウス(雄)に様々な用量で皮下投与した[溶媒投与コントロールにおける
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LD50/30(30 日間に 50%のマウスが死亡する致死放射線量)の放射線量は 8.6 Gy]。コバルト 60 による 10.5、11 および 11.5 Gy の放射線をマウスに
照射し、30 日間の防護生存率を測定した。
照射前の様々な時点で GT3 を皮下投与することにより、投与時期を至適化した。線量減少率(DRF)は、エンドポイントとして死亡率を用いるプロビット解
析により、6 通りの放射線量で測定した。放射線照射により誘発される汎血球減少症からの防護は、GT3 を投与し、7 Gy を照射したマウスの末梢血細胞を
計数することにより判定した。
至適用量 200 mg/kg を照射 24 時間前に皮下投与したとき、GT3 の DRF は 1.29 であった。GT3 は、溶媒を投与した照射コントロールと比較して、照射マ
ウスの総白血球、好中球、単球、血小板および網状赤血球の回復を促進した。
GT3 は他のトコール類より高い DRF を有する放射線防護剤である。GT3 による消化管近接領域の防護から、GT3 は最終的にヒトで使用するための薬剤開
発段階を進めるに値する理想的な放射線防護剤とみなすことができる。
Keywords: γ-トコトリエノール、至適用量、線量減少率
Berbée M, Fu Q, Boerma M, Wang J, Kumar KS, Hauer-Jensen M. gamma-Tocotrienol ameliorates intestinal radiation injury and reduces
vascular oxidative stress after total-body irradiation by an HMG-CoA reductase-dependent mechanism. Radiat Res. 2009
May;171(5):596-605.
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ビタミン E(トコール類)類縁化合物は、有効性が高く毒性を示さないため、放射線防護剤として開発中である。γ-トコトリエノール(GT3)は、抗酸化剤で
あることに加え、3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A(HMG-CoA)還元酵素も阻害し、他のトコール類より内皮細胞に高度に蓄積するため、特
に興味が持たれている。
我々は HMG-CoA 還元酵素の阻害が GT3 による放射線防護に寄与するかどうかを in vivo で検討した。
マウスの各群に、溶媒、メバロン酸(HMG-CoA 還元酵素により触媒される反応の産物)、GT3 単独またはメバロン酸を併用した GT3 を投与した。全身照
射の後、致死率ならびに造血系、消化管系および血管系/内皮系に対する障害のパラメータを評価した。
GT3 は照射後の生存率を改善し、メバロン酸による可逆的な作用である、放射線照射誘発性の血管の酸化的ストレスを減少させた。
GT3 はまた、造血器の回復を増強し、消化管の放射線障害を減少させ、内皮機能の可溶性マーカーの回復を促進した。これらのパラメータはメバロン酸を併
用投与しても逆転しなかった。
以上のデータから、造血障害に対する GT3 の放射線防護特性が確認され、消化管障害および血管障害に対する防護上の利益が初めて明らかにされた。
血管障害に対する GT3 の放射線防護効果は、HMG-CoA 還元酵素阻害剤としての GT3 の特性に関連している。
Keywords: γ-トコトリエノール、造血障害、消化管障害、血管障害、HMG-CoA 還元酵素阻害
創傷治癒
Wound Healing
2011
Khoo TL, Halim AS, Zakaria Z, Mat Saad AZ, Wu LY, Lau HY. A prospective, randomised, double-blinded trial to study the efficacy of topical
tocotrienol in the prevention of hypertrophic scars. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2011 Jun;64(6):e137-45.
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肥厚性瘢痕予防におけるトコトリエノールの局所使用に関する概念が広く受け入れられているのにもかかわらず、手術瘢痕にトコトリエノールがもたらす利益を
正当化するために行われる充分に管理された無作為化臨床試験から得られた証拠には極めて限られたものしか存在しない。
本研究は、肥厚性瘢痕の発生予防における局所用トコトリエノールの有効性を評価するために実施した。
最近(2 週間未満のうちに)外科瘢痕が治癒した 122 人の患者を対象に前向き無作為化二重盲検比較試験を実施した。患者は局所用トコトリエノール
5%を用いる処置群あるいはプラセボ群のいずれかに無作為に割り当てられた。
患者は術後 2 週目から 6 週間にわたり製剤を 1 日 2 回瘢痕に塗布するよう求められた。
瘢痕の評価は、次の 3 種類の方法を用いて局所塗布開始後 0、2、6、16 週目に行った。評価方法は、Patient and Observer Scar Assessment Scale
(POSAS)を用いた臨床的評価、Visual Analogue Scale とレーザーDoppler イメージング(LDI)を用いる 2 人の独立した評価者による瘢痕の写真判
定とした。
4 種類の評価を完了した 85 人の患者(トコトリエノール群 45 人、プラセボ群 40 人)についてデータ解析を行った。
POSAS、瘢痕の写真判定、あるいは LDI の平均フラックス(p>0.05)の範ちゅうでは、トコトリエノールとプラセボの群間の瘢痕パラメータに統計的有意差は
認められなかった。
LDI の平均フラックスは経時的に減少する傾向のあることが明らかになり、0 週目の血管分布(相関係数=0.325、p=0.008)、及び観察者による瘢痕評価
尺度の総得点(相関係数=0.248、p=0.034)と正の相関関係が認められた。有意な副作用は認められなかった。
局所用トコトリエノール 5%の 1 日 2 回の塗布は術後 4 ヵ月間の瘢痕の外観と血管分布に有意な影響を及ぼさないことが明らかになった。LDI は瘢痕評価の
手段の一つとして有望な役割を担っていことが明らかになった。
Keywords: 外科瘢痕、肥厚性瘢痕、局所用トコトリエノール、血管分布
2010
Tappeiner C, Meyenberg A, Goldblum D, Mojon D, Zingg JM, Nesaretnam K, Kilchenmann M, Frueh BE. Antifibrotic effects of tocotrienols on
human Tenon's fibroblasts. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2010 Jan;248(1):65-71.
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ヒトのテノン嚢線維芽細胞(hTf)に対する 3 種のビタミン E 異性体 α-、γ-、および δ-トコトリエノールの抗線維化効果を、代謝拮抗物質マイトマイシン C と
比較した。
hTf 培養物に α-トコトリエノール(40、60、80、100、120 μM)、γ-トコトリエノール(10、20、30、40 μM)、および δ-トコトリエノール(10、20、30、40
μM)をそれぞれ投与し、増殖分析、移動分析、およびコラーゲン合成分析を行い、抗線維化効果について評価した。
ビタミン E の曝露時間は結膜下投与を模擬するため 7 日間と設定し、マイトマイシン C の曝露時間は術中投与を模擬するため 100 μg/ml の濃度で 5 分間
のみとした。
0、4、および 7 日目に、位相差顕微鏡下で細胞形態を観察して細胞毒性の評価を行い、また蛍光定量法で DNA 量を測定し細胞密度を算出することで
増殖阻害能を決定した。さらに線維芽細胞の移動能およびコラーゲン合成能を測定した。
試験したトコトリエノール異性体のすべてで用量依存的に hTf の増殖が有意に阻害された(対照実験と比較して、薬剤関連の形態変化を伴わない最大阻
害効果は α-トコトリエノール 80 μM を投与した場合に 4 日目で 36.7%、7 日目で 42.6%であった)。
細胞の退行性変化は、α-トコトリエノールでは 80 μM を超える濃度で培養した場合、γ-および δ-トコトリエノールでは 30 μM を超える濃度で培養した場合に
認められた。
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コラーゲン合成阻害能に関しては、80 μM の α-トコトリエノールで培養した場合に最大阻害効果(62.4%)が認められたが、マイトマイシン C では有意な阻
害能が認められなかった(2.5%)。
移動能の有意な低下は、80 μM の α-トコトリエノール、30 μM の γ-トコトリエノールで培養した場合に認められ(対照実験と比較してそれぞれ 82.2%および
79.5%の阻害)、マイトマイシン C 処理後でも低下が認められた(60.0%)。
細胞の有意な退行性変化を伴わない完全な増殖阻害は、マイトマイシン C の使用時でのみ認められた。
試験したすべてのトコトリエノール異性体によって、ヒトのテノン嚢線維芽細胞の in vitro での増殖、移動、コラーゲン合成が阻害された。したがってこれらの異性
体は緑内障ろ過手術で抗瘢痕剤として使用できる可能性がある。
Keywords: テノン嚢線維芽細胞、α-、γ-、δ-トコトリエノール、緑内障ろ過手術
皮膚の栄養と健康
Skin Nutrition and Health
2014
Pham J, Nayel A, Hoang C, Elbayoumi T. Enhanced effectiveness of tocotrienol-based nano-emulsified system for topical delivery against
skin carcinomas. Drug Deliv. 2014 Oct 8:1-11. [Epub ahead of print]
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正常組織ではなく癌に対するトコトリエノール(T3)の強力な抗増殖作用およびアポトーシス促進作用は、その限られた全身性のバイオアベイラビリティにより
妨害されてきた。最近発展をみせる多種多様なナノエマルジョン(NE)用溶媒の開発から、T3 のような親油性の異なる臨床・実験薬の有効量を改善する
大きな可能性が強調されるようになった。
本研究では、単独または他の化学療法剤との組み合わせのいずれかで、皮膚癌の補助的療法の可能な皮膚の送達プラットフォームとして抗癌活性を有する
T3高含有パーム油(Tocomin®)の最適化された取り込みのために、薬剤的に拡張可能な低エネルギーのナノ乳化アプローチを開発することに重点を置い
た。
均質化の異なる計画から得られた種々の Tocomin®-NE を物理化学的均一性(液滴のサイズ、負荷、多分散)に基づいてスクリーニングし、化学的な内
容分析に加え(≧90% Toocmin® - 取り込み効率)、ストレス、物理および安定性試験にかけた。Tocomin®で採用されたバイブリッド型ナノ乳化は、プロ
トタイプ処方の Tocomin®-NE における活性 T3 の DPPH ラジカル捕捉能の最も高い保持と相関を示した。Tocomin®-NE は、コントロールのプロピレングリコ
ール(PG)混合 Tocomin®より 4 倍効率的に細胞膜に浸透した。
ヒト皮膚癌の 2 種類の異なる細胞モデルに対し、Toocmin®ハイブリッド NE はコントロールより強力な細胞毒性プロフィルを有意に示した(p≦0.01)。これは
濃度依存性および時間依存性の両様式で明確であり、最も近い Tocomin®コントロールで推定されたものと比べ少なくとも 5 倍低い IC50 であった。
Tocomin®について提案されたハイブリッド型ナノ乳化製剤は、角化細胞の腫瘍に対する有効な局所適用のための簡素で安定した送達プラットフォームを提
供することが明らかになった。
Keywords: 皮膚癌、補助的療法、Tocomin®、ハイブリッド型ナノ乳化製剤、送達プラットホーム
2012
Makpol S, Zainuddin A, Chua KH, Yusof YA, Ngah WZ. Gamma-tocotrienol modulation of senescence-associated gene expression prevents
cellular aging in human diploid fibroblasts. Clinics (Sao Paulo). 2012;67(2):135-43.
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ヒト二倍体線維芽細胞は培養中に限定された回数の細胞分裂を起し、次第に不可逆的成長停止の状態、すなわち細胞老化と呼ばれる過程に至る。老
化におけるビタミン E の有益作用が証明されているが、これらの作用機構を決定する研究は進行中の段階である。
本研究では、ビタミン E の同族体の一つである γ-トコトリエノールのヒト二倍体線維芽細胞の老化予防における分子機構について、老化関連遺伝子発現を
用いて評価を行った。
若い線維芽細胞、老化前及び老化線維芽細胞の初代培養を γ-トコトリエノールで 24 時間インキュベートした。ELN、COL1A1、MMP1、CCND1、RB1、
IL6 の遺伝子発現レベルを定量的リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応により測定した。細胞周期のプロフィルを FACSCalibur フローサイトメーターにより測定し
た。
細胞周期は G0/G1 期で停止し、S 期における細胞のパーセンテージは老化に伴い減少した。CCND1、RB1、MMP1、IL6 は、老化線維芽細胞でアップレギ
ュレートした。同様のアップレギュレーションは、若い線維芽細胞では観察されなかった。
γ-トコトリエノールによるインキュベーションは老化線維芽細胞における CCND1 と RB1 の発現と G0/G1 期の細胞数を減少し、G2/M 期における細胞数を増
加した。γ-トコトリエノールによる処理はまた、若い線維芽細胞と老化線維芽細胞における ELN と COL1A1 の発現をアップレギュレートし、MMP1 と IL6 の発
現をダウンレギュレートした。
γ-トコトリエノールは、細胞周期プロフィルと老化関連遺伝子発現の調節で示されたように、ヒト二倍体線維芽細胞における細胞老化を阻止することが明らか
になった。
Keywords: ヒト二倍体線維芽細胞、細胞周期プロフィル、老化関連遺伝子発現
2011
Makpol S, Azura Jam F, Anum Mohd Yusof Y, Zurinah Wan Ngah W. Modulation of collagen synthesis and its gene expression in human skin
fibroblasts by tocotrienol-rich fraction. Arch Med Sci. 2011 Oct;7(5):889-95.
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皮膚老化は、体内のフリーラジカル増加の結果として発生する可能性がある。主要な連鎖切断型酸化防止剤のビタミン E は、とりわけ生体膜における酸化ス
トレス伝播を防止するとされている。
本研究では、酸化ストレス誘導皮膚老化の予防における高トコトリエノール画分(TRF)の分子機構について、ヒト皮膚線維芽細胞における総コラーゲン合
成速度とその遺伝子発現の測定によって評価を行った。
ヒト皮膚線維芽細胞の初代培養細胞は、割礼を行った 9 歳から 12 歳までの少年の包皮から得た。線維芽細胞を次の 5 種類の処理群に分配した。すなわ
ち、無処理対照群、過酸化水素(H2O2)誘導酸化ストレス群(20 μM の H2O2 に 2 週間曝露)、TRF 処理群、H2O2 誘導酸化ストレス曝露前 TRF
処理群、同ストレス曝露後 TRF 処理群である。
H2O2 誘導酸化ストレスは皮膚線維芽細胞における総コラーゲン合成速度を減速し、また COL I と COL III をダウンレギュレートすることが結果から明らかにな
った。
TRF による前処理は、総コラーゲン合成の増加と COL I、COL III 遺伝子のアップレギュレーション(p<0.05)から明らかなように、H2O2 誘導酸化ストレスに
対して防護作用を及ぼすことが明らかになった。しかしながら、H2O2 誘導酸化ストレスに対する同様の防護作用は、処理後の線維芽細胞では認められなか
った。
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高トコトリエノール画分は、総コラーゲン合成速度上昇を伴う COL I と COL III の遺伝子発現の修飾により、ヒト皮膚線維芽細胞培養における H2O2 誘導
酸化ストレスから防護することが明らかになった。
これらの所見は、酸化ストレス誘導皮膚老化に対する TRF の防護作用を示している可能性がある。
Keywords: TRF、ヒト皮膚線維芽細胞、H2O2 誘導酸化ストレス、コラーゲン合成速度、COL I、COL III
Pedrelli VF, Lauriola MM, Pigatto PD. Clinical evaluation of photoprotective effect by a topical antioxidants combination (tocopherols and
tocotrienols). J Eur Acad Dermatol Venereol. 2012 Nov;26(11):1449-53. doi: 10.1111/j.1468-3083.2011.04219.x.
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ビタミン E は、最も早い時期に認識された抗酸化剤の一つである。トコトリエノールにはトコフェロールより優れた活性のあることが、最近の所見から示唆されてい
る。また、ビタミン A も紫外線吸収特性をはじめとする作用から皮膚科学分野で良く知られている。
これらの抗酸化剤の光防護特性に関する実験的証拠に照らして、光過敏症を認める 30 人の患者を対象にトコフェロール 10%、トコトリエノール 0.3%を含有
する新しい局所剤の予防効果について、レチノール塗布、賦形剤のみ塗布、未処置領域との比較から評価を行った。
UVB の最小紅斑量(MED)測定後、各被験者の臀部から 2×2 cm の領域を 2 ヵ所選び、そのうちの 1 ヵ所を抗酸化剤で塗布し、もう 1 ヵ所については未
処置のままとした。両領域に 2 倍用量の MED を照射した。さらにコントロールについては、15 人の患者の前腕から同じように選択した 2 ヵ所の領域にそれぞれ
賦形剤とビタミン A を塗布し、30 分後に同様の光照射を行った。
反応(紅斑、浮腫、かゆみ、小水疱)評価については、それらの強度を示すスコアを割り当てた後、スコアの平均値を算出した。
ビタミン E 剤による前処置は光過敏症に対して高度な防護作用を及ぼし、照射によるあらゆる反応が、賦形剤単独あるいはビタミン A と比較して、ビタミン E
剤を局所塗布した領域で顕著な低下を示した。
有効な濃度のトコトリエノールとトコフェロールを含有する新規の局所処方の利用は、光誘起性皮膚障害を低減するために有望な戦略を提示している。
Keywords: 光過敏症、局所塗布、UVB、光防護特性
Makpol S, Durani LW, Chua KH, Mohd Yusof YA, Ngah WZ. Tocotrienol-rich fraction prevents cell cycle arrest and elongates telomere length
in senescent human diploid fibroblasts. J Biomed Biotechnol. 2011;2011:506171.
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ヒト二倍体線維芽細胞(HDF)の細胞老化予防におけるトコトリエノール高含有フラクション(TRF)の分子レベルでのメカニズムについて評価を行った。
HDF の初代培養を 0.5 mg/mL の TRF で 24 時間インキュベートした。
テロメラーゼ活性低下によるテロメア短縮が老化した HDF で観察された一方、損傷 DNA のレベルと G0/G1 期の細胞数が増加し、S 期の細胞数が減少した。
TRF によるインキュベーションは老化した HDF の形態を若い細胞に類似した形態に逆行させ、S 期の細胞数増加と同時に、老化に関係する β-ガラクトシダー
ゼ(SA β-Gal)の活性、損傷 DNA、G0/G1 期の細胞数の減少を伴った。テロメア伸長とテロメラーゼ活性修復が TRF で処理した老化 HDF で観察された。
テロメア長とテロメラーゼ活性の修復、DNA 損傷減少、老化と関係する細胞周期の逆戻りにより HDF の細胞老化を防止するトコトリエノール高含有フラクショ
ンの能力がこれらの所見から確認された。
Keywords: TRF、ヒト二倍体線維芽細胞、テロメラーゼ活性、テロメア伸長
2010
Michihara A, Ogawa S, Kamizaki Y, Akasaki K. Effect of delta-tocotrienol on melanin content and enzymes for melanin synthesis in mouse
melanoma cells. Biol Pharm Bull. 2010;33(9):1471-6.
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δ-トコトリエノールで処理した細胞のメラニン含量に δ-トコトリエノールの長時間(48、72 時間)にわたる用量依存的な作用と δ-トコトリエノールで長時間処
理した細胞が細胞毒性を示すかについて本研究で調査を行った。
メラニン生合成、チロシナーゼ関連タンパク質-1(TRP-1)、-2(TRP-2)に役割を担う他の酵素がメラニンのレベル低下に関与しているかについても検討を
行った。
25 μM あるいは 50 μM の δ-トコトリエノールで 48 時間あるいは 72 時間処理した細胞のタンパク質レベルは、対照の細胞と同程度のレベルであった。
対照の細胞と比較して、48 時間の処理におけるメラニン含量は 44%(δ-トコトリエノール 25 μM)から 50%(同 50 μM)、72 時間の処理では 14%から
21%低下した。
チロシナーゼ活性、チロシナーゼ含量、TRP-1 は用量依存的に低下した。すなわち、48 時間ではそれぞれ 50%(δ-トコトリエノール 25 μM)から 75%(同
50 μM)、20%から 45%、42%から 82%、72 時間では 25%から 50%、75%から 80%、78%から 77%であった。
TRP-2 含量は 25 μM の δ-トコトリエノールによる 48 時間の処理で 20%増加したが、50 μM の δ-トコトリエノールによる 48 時間の処置では 52%減少した。
TRP-2 含量は 25 μM 及び 50 μM の δ-トコトリエノールによる 72 時間の処理で用量依存的にそれぞれ 55%と 75%減少した。
これらの所見から、50 μM までの δ-トコトリエノールは細胞毒性を呈することなく TRP-1、TRP-2 及びチロシナーゼの減少によってメラニン含量の減少を用量依
存的に引き起すことが明らかになった。
Keywords: δ-トコトリエノール、チロシナーゼ関連タンパク質、メラニン含量、細胞毒性
Shibata A, Nakagawa K, Kawakami Y, Tsuzuki T, Miyazawa T. Suppression of gamma-tocotrienol on UVB induced inflammation in HaCaT
keratinocytes and HR-1 hairless mice via inflammatory mediators multiple signaling. J Agric Food Chem. 2010 Jun 9;58(11):7013-20.
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α-トコフェロールのようなトコフェロール(Toc)は皮膚の光化学的予防剤として作用すると期待されているが、ビタミン E の他の形[トコトリエノール(T3)]に
ついては充分な理解がなされていない。
不死化ヒトケラチン細胞株とヘアレスマウスを用いて、T3 が UVB により誘導された炎症反応に及ぼす抗炎症作用について評価を行った。
γ-T3 が UVB により誘導された PGE(2)産生を抑制した一方、同用量の α-Toc ではそのような作用は認められなかった。γ-T3 の抗炎症作用は、UVB により誘
導された炎症性遺伝子とタンパク質発現[シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、単球走化性タンパク質-1]を減少させる
能力によって説明することができる。
p38、細胞外シグナル調節キナーゼ、c-Jun N 末端キナーゼ/ストレス活性化タンパク質キナーゼの活性化を γ-T3 が阻害することがウエスタンブロット分析から
明らかになった。
HR-1 ヘアレスマウスでは、経口投与した T3 が UVB により誘導された皮膚厚、COX-2 タンパク質発現、過形成における変化を抑制したが、α-Toc ではそのよ
うな作用は認められなかった。
これらの結果から、T3 は UVB により誘導された皮膚の炎症に対して応用可能性のあることが示唆される。
60
Keywords: γ-トコトリエノール、UVB、抗炎症作用
Makpol S, Abidin AZ, Sairin K, Mazlan M, Top GM, Ngah WZ. gamma-Tocotrienol prevents oxidative stress-induced telomere shortening in
human fibroblasts derived from different aged individuals. Oxid Med Cell Longev. 2010 Jan-Feb;3(1):35-43.
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パームに由来する γ-トコトリエノール(GGT)が酸化ストレスによって誘導される細胞老化に及ぼす影響について、若年期(21 歳、YF 群)、中年期(40
歳、MF 群)、老年期(68 歳、OF 群)の異なる年齢群から得たヒト正常皮膚線維芽細胞株を対象に調査を行った。
H2O2 の IC50 で 2 時間インキュベーションを行う前後に線維芽細胞を 24 時間 γ-トコトリエノールで処理した。細胞生存能、テロメア長、テロメラーゼ活性の
変化について、それぞれ MTS アッセイ(米国 Promega 社)、サザンブロット分析、テロメア反復増幅プロトコル分析を用いて評価した。
異なる濃度の γ-トコトリエノールによる処理で線維芽細胞の生存能が上昇し、その最適濃度は YF 群で 80 μM、M 群と OF 群で 40 μM であることが結果か
ら明らかになった。
より高濃度の γ-トコトリエノールによる処理は、IC50 値 200 μM(YF 群)、300 μM(MF 群)、100 μM(OF 群)で細胞生存能の顕著な低下を引き起
した。
H2O2 への曝露は全ての年齢群において用量依存的に細胞生存能を低下させ、テロメア長を短くし、またテロメラーゼ活性を低下させた。H2O2 の IC50 は
YF 群で 700 μM、MF 群で 400 μM、OF 群で 100 μM であることが明らかになった。
H2O2 によって誘導される酸化ストレスの前後に 80 μM、40 μM の γ-トコトリエノールで細胞を処理した場合、全年齢群で細胞生存能が有意に上昇するこ
とが結果から明らかになった(p<0.05)。
YF 群と OF 群では、γ-トコトリエノールによる前処理がテロメア長の短縮化とテロメラーゼ活性の低下を防止した。MF 群ではテロメラーゼ長には変化が認められ
なかった一方、テロメラーゼ活性は上昇した。しかしながら、γ-トコトリエノールの後処理は、テロメア長とテロメラーゼ活性にいかなる有意な作用も及ぼさなかっ
た。
このようなことから、γ-トコトリエノールは酸化ストレスによって誘導される細胞老化をおそらくはテロメラーゼによるテロメア長の修飾によって防止していることが得ら
れたデータから示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、細胞老化、テロメア長、テロメラーゼ活性
2009
Chang PN, Yap WN, Lee DT, Ling MT, Wong YC, Yap YL. Evidence of gamma-tocotrienol as an apoptosis-inducing, invasion-suppressing, and
chemotherapy drug-sensitizing agent in human melanoma cells. Nutr Cancer. 2009;61(3):357-66.
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今日までのところ、転移性黒色腫に対する最も有効な治療は依然として原発腫瘍の外科的な切除とされている。最近、トコトリエノール高含有フラクションが
癌細胞に抗増殖作用を及ぼすことが明らかにされた。
トコトリエノール高含有フラクションが悪性黒色腫にもたらす抗癌特性を解明するために、本研究ではまず黒色腫細胞を最も強力に排除する異性体の特定、
次にその異性体の活性に関与する分子経路の解読を目的とした。
プロカスパーゼの活性化と sub-G1 期細胞集団の蓄積からもわかるように、アポトーシスの誘発を引き起した γ-トコトリエノールの抑制効果が最も強力であるこ
とが結果から明らかになった。
生存促進遺伝子に関する実験から、γ-トコトリエノール誘導細胞死は NF-κB、EGFR、Id ファミリータンパク質の抑制と関連していることが明らかになった。
γ-トコトリエノールによる処理は JNK シグナル伝達経路の誘発を引き起し、また選択的阻害剤による JNK 活性抑制に γ-トコトリエノールの作用を部分的に遮
断する可能性のあることが明らかになった。
興味深いことに、γ-トコトリエノール処理は間葉マーカーの抑制、細胞浸潤能の抑制と関連する E-カドヘリンと γ-カテニン発現の回復をもたらした。さらに、細胞
を γ-トコトリエノールと化学療法剤で処理した場合、相乗効果が認められた。
全体として、本研究から得られた結果はヒト悪性黒色腫細胞に対して及ぼす γ-トコトリエノールの抗浸潤作用と化学増感効果を初めて証明している。
Keywords:ヒト悪性黒色腫、γ-トコトリエノール、抗浸潤作用、化学増感効果
2008
Yamada Y, Obayashi M, Ishikawa T, Kiso Y, Ono Y, Yamashita K. Dietary tocotrienol reduces UVB-induced skin damage and sesamin enhances
tocotrienol effects in hairless mice. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2008 Apr;54(2):117-23.
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実質量のトコトリエノールがパーム油抽出トコフェロール・トコトリエノール豊富フラクション(T-mix)含有飼料を摂取させた動物の皮膚に存在し、さらにゴマリグ
ナンが皮膚のトコトリエノール濃度を上昇させることを以前報告した。
本研究は、次の 4 種類いずれかの飼料を摂取させたヘアレスマウスを対象に、食事性のトコトリエノール、あるいはトコトリエノールとセサミンの組合せが皮膚を
UVB 照射によって誘発される損傷から保護するか評価するために実施した。4 種類の飼料は、ビタミン E 不含飼料、50 mg/kg の α-トコフェロール含有飼料、
229 mg/kg の T-mix(うち、α-トコフェロール 50 mg)含有飼料、229 mg/kg の T-mix と 2 g/kg セサミン含有飼料である。
実験 1 では、マウスに飼料を 6 週間摂取させ、半数のマウスを 7 日間毎日一回 UVB 光(180 mJ/cm2)に曝露させた。日焼けの強度を記録した後、皮膚
と肝臓中のビタミン E とチオバルビツル酸反応物(TBARS)の濃度を測定した。
実験 2 では、マウスに 7, 12-dimethylbenz[a]anthracene(DMBA)を単回塗布し、1 週間後に実験飼料を摂取させ、週に 2 回、20 週間 UVB(180
mJ/cm2)照射を施した。腫瘍の発現率を週に一回計測した。
トコトリエノールは T-mix を摂取させたマウスの皮膚で検出されたが、その濃度は α-トコフェロールよりも著しく低かった。
セサミンは皮膚のトコトリエノール濃度を上昇させた。α-トコフェロールが高濃度にもかかわらず、α-トコフェロールの日焼けと腫瘍発現率に及ぼす影響はわずか
であった。
T-mix 給餌群では日焼けの程度と腫瘍発現率が低下し、T-mix・セサミン併用群ではさらなる低下が認められた。
これらの結果から、食事性トコトリエノールは皮膚を UVB が誘発する損傷から α-トコフェロールよりも強力に保護し、セサミンはトコトリエノールの効果を増強する
ことが示唆される。
Keywords: トコトリエノール、セサミン、UVB 光、日焼け、腫瘍発現率
2003
Kausar H, Bhasin G, Zargar MA, Athar M. Palm oil alleviates 12-O-tetradecanoyl-phorbol-13-acetate-induced tumor promotion response in
murine skin. Cancer Lett. 2003 Mar 31;192(2):151-60.
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天然の抗酸化剤で、酸素フリーラジカルの捕捉剤として働くビタミン E(トコトリエノール、トコフェロール)とカロテノイド類の豊富な供給源の一つにパーム油があ
る。12-O-tetradecanoyl-phorbol-13-acetate(TPA)は酸化剤として知られ、酸化ストレスの生成によってマウスの皮膚の腫瘍形成を促進する。
本研究では、7,12-dimethylbenz[a]anthracene 誘導 Swiss albino 系マウスで TPA が介する皮膚腫瘍形成に対するパーム油の抗腫瘍効果増強作用の
評価を行った。
TPA 塗布より 1 時間前にパーム油を局所塗布したところ、皮膚の腫瘍プロモーションに対して顕著な保護作用が引き起された。パーム油の前処置を受けたマ
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ウスでは、腫瘍の発生率と発生量の両方が TPA(単独)処置群と比較して減少することが明らかになった。
パーム油の塗布はまた、悪性腫瘍の発生も減少させた。TPA 誘導性の表皮オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)活性と[(3)H]thymidine 取込みが皮膚
腫瘍プロモーションのマーカーとして従来から用いられているため、これらのパラメータに及ぼすパーム油の前処置の影響も評価し、TPA 塗布前のパーム油塗布
による TPA 誘導性腫瘍プロモーションのこれら両マーカーの軽減が認められた。
非酵素性、酵素性分子における TPA 媒介性の枯渇に及ぼすパーム油の前処置の影響もまた評価し、TPA 塗布前のパーム油塗布は、これらの分子、すなわ
ちグルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン還元酵素、グルタチオン S-トランスフェラーゼ、カタラーゼのレベルにおける TPA 媒介性枯渇の回復をも
たらした。同様に、パーム油は表皮ミクロゾームにおいて Fe(2+)-ascorbate 誘導性脂質過酸化に対する保護的効果も示した。
本研究で得られた結果から、パーム油は皮膚において抗腫瘍効果増強作用を有し、その作用のメカニズムには腫瘍プロモーターが誘導する表皮 ODC 活性、
[(3)H]thymidine 取込み、皮膚の酸化ストレスの抑制が関与している可能性が示唆される。
Keywords: パーム油、皮膚腫瘍形成、表皮 ODC 活性、[(3)H]thymidine 取込み、酸化ストレス
2000
Adachi H, Ishii N. Effects of tocotrienols on life span and protein carbonylation in Caenorhabditis elegans. J Gerontol A Biol Sci Med Sci.
2000;55:B280-B285.
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酸化ストレスに対するトコトリエノールの有効性を評価するために、線虫 Caenorhabditis elegans のモデル系でトコトリエノールの投与を行った。
結果は、カルボニル化タンパク質(老化における酸化損傷の優れた指標)の蓄積を減少させ、長寿ではなく平均寿命を延ばしたことを立証した。反対に、酢
酸 α-トコフェロールは、これらのパラメータに影響を及ぼさなかった。
トコトリエノールの酸化ストレスに対する防御能を評価する方法として、UV-B 誘発酸化ストレス曝露前後にトコトリエノールを投与した実験動物の寿命を測定
した。
UV-B 照射は実験動物の平均寿命を短縮させたが、トコトリエノールをあらかじめ投与すると、平均寿命を未照射の実験動物の平均寿命まで回復させた。
興味深いことに、照射後投与も未照射の実験動物の平均寿命より長く延命させ、トコトリエノール投与は寿命に優れた防御作用をもたらした。実験動物へ
のトコトリエノール投与は、酸化ストレスのリスクを低下させた。
これらのデータは、トコトリエノールが、老化と酸化ストレスを予防する可能性のある物質としてさらに研究するのに値することを示し、C. elegans が老化の機構
解明へ刺激的な糸口を提供し続けることを示唆している。
Keywords: Caenorhabditis elegans、カルボニル化タンパク質、UV-B 誘発酸化ストレス、老化
1999
Weber SU, Luu C, Traber MG, Packer L. Tocotrienol acetate penetrates into murine skin and is hydrolyzed in vivo. OCC World Congress. 3-6
March, 1999, Santa Barbara, CA.
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光防護剤としてのビタミン E は、これまでほぼ独占的に酢酸 α-トコフェロールの形で使用されてきた。この応用分野において他の形のビタミン E はほとんど知られ
ていない。
本研究の目的は、紫外線からの防護における酢酸 α-トコトリエノールの可能な利用を評価するために、げっ歯動物の皮膚における酢酸 α-トコトリエノールの浸
透・代謝特性を調査することにあった。
D-γ-、α-トコトリエノール、酢酸 d-γ-、α-トコトリエノール、γ-、α-トコフェロール、酢酸 d-γ-、α-トコフェロールの HPLC による同時分析法を紫外線と電気化学
検出を用いて開発した。
皮膚ホモジネートにおける酢酸 α-トコトリエノールの検出可能な加水分解は 5 時間以内に起ったが、その割合は小腸あるいは肝臓に比較するときわめて低か
った。
酢酸 α-トコトリエノールの in vivo での特性を解析するために、溶液のみの賦形剤に対し酢酸 α-トコトリエノールが 5%含有する溶液をヘアレスマウスの背中に
5 日間連続で塗布した。
酢酸 α-トコトリエノールは、真皮(2.63 pmol/mg)よりも表皮(81.8 pmol/mg)に顕著に浸透した。局所塗布は表皮の遊離 α-トコトリエノールの濃度を
102 倍の 31.34 pmol/mg に増加させた。α-トコトリエノール/α-トコフェロール比は 0.12 から 13.1 に増加した。真皮においても同様であったが、その作用は表
皮ほど顕著でなく、遊離 α-トコトリエノール濃度は 32 倍の 4.35 pmol/mg に上昇した。
要約すると、酢酸 α-トコトリエノールはヘアレスマウスの皮膚に容易に浸透し、おそらく非特異的エステラーゼによって活性型 へとすみやかに加水分解されるもの
と考えられる。
結果は、酢酸 α-トコトリエノールが表皮と真皮両方に遊離 α-トコトリエノールを効率よく浸透させるために利用しうることを示唆している。
Keywords: 酢酸 α-トコトリエノール、遊離 α-トコトリエノール、表皮、非特異的エステラーゼ
1997
Traber MG, Podda M, Weber C, Thiele J, Rallis M, Packer L. Diet-derived and topically applied tocotrienols accumulate in skin and protect the
tissue against ultraviolet light-induced oxidative stress. Asia Pacific J Clin Nutr. 1997;6(1):63-7.
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種々のタイプのビタミン E(トコトリエノール類、トコフェロール類)及び酸化型、還元型のコエンザイム Q(ユビキノン、ユビキノール)を含む親油性抗酸化剤の
組織特異的な分布を評価するために、電気化学検出と UV 検出両方によるグラジエント HPLC を用いた高感度の方法を開発した。
へアレスマウスの組織においてこれら抗酸化剤の独自の分布が観察され、その分布は抗酸化剤による防御を維持するための選択的機構に依存している可能
性があることが示唆された。
ユビキノール-9 は腎臓 (81±29 nmol/g)と肝 臓(42±16 nmol/g)において最高濃度見出 された一方 、ユビキノン-9 の濃度 は腎臓(301±123
nmol/g)と心臓(244±22 nmol/g)で最も高かった。肝臓にはほぼ同量のユビキノール-9 とユビキノン-9 が含まれていた(それぞれ、41±16 nmol/g、
46±18 nmol/g)。
α-トコフェロール(飼料 1 kg あたり 30±6 mg)、γ-トコフェロール(10±1)、α-トコトリエノール(3.1±0.7)、γ-トコトリエノール(7.4±1.7)を含有した市販
の飼料をこれらのマウスに摂取させた。
脳にはビタミン E のうち α-トコフェロール(5.4±0.1 nmol/g、99.8%)のみが含まれ、トコトリエノールは検出されなかった。他の組織においては、α-トコフェロール
の濃度がより高く(20 nmol/g)、他のタイプはそれぞれ全体の約 1%を占めていた(γ-トコフェロール:0.2~0.4 nmol/g;α-トコトリエノール:0.1;γ-トコ
トリエノール:0.2)。
皮膚ではトコトリエノールの濃度がほぼ 15%と際立って高く、また γ-トコフェロールも 1%含まれていた。皮膚におけるトコトリエノールの独特の分布は、トコトリエノ
ールが環境ストレスに対して優れた防護作用を及ぼす可能性があることを示唆している。
それゆえ、局所塗布したビタミン E(パーム・トコトリエノール高含有フラクション:TRF)とビタミン E 同族体の皮膚中の濃度を紫外線照射前後で評価した。
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5%の TRF を含有するポリエチレンングリコール-400(PEG)20 μL を皮膚の 2 ヶ所の部位に、また PEG 20 μL を他の 2 ヶ所に塗布した。2 時間後、皮膚を
洗浄し、塗布した部位の半分について、擬似太陽光を用いて紫外線照射を行った(2.8 mW/cm 2、29 分間)。
ヘアレスマウスの皮膚におけるビタミン E 濃度は皮膚 1 g あたり、α-トコフェロール 9.0±1.0 nmol/g、γ-トコフェロール 0.44±0.03、α-トコトリエノール 0.48±0.07、
γ-トコトリエノール 0.92±0.03 であった。
局所的に TRF を塗布した皮膚のビタミン E 濃度は皮膚 1 g あたり、α-トコフェロール 201±70 nmol/g、γ-トコフェロール 37±15、α-トコトリエノール 53±25、γトコトリエノール 50±24 であった。
紫外線照射後、すべてのビタミン E 同族体の濃度は両方の処理部位で有意に減少したが(p<0.01)、TRF で処理した皮膚にはコントロール値よりも 7~30
倍高い濃度のビタミン E が含まれていた。
これらの所見は、組織中の親油性抗酸化剤の吸収と調節について解決の手掛かりをもたらしている。これら抗酸化物質の独自の分布は、その分布が組織特
異的選択機構に依存している可能性を示唆している。 f
Keywords: パーム・トコトリエノール高含有フラクション、紫外線照射、組織特異的選択機構
Weber C, Podda M, Rallis M, Thiele JJ, Traber MG, Packer L. Efficacy of topically applied tocopherols and tocotrienols in protection of murine
skin from oxidative damage induced by UV-irradiation. Free Radic Biol Med. 1997;22:761-9.
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皮膚を紫外線誘発酸化ストレスから防御する種々のビタミン E の有効性を評価するために、ビタミン E(パーム油のトコトリエノール高含有フラクション:TRF)
をマウスの皮膚に塗布し、紫外線曝露前後の抗酸化物質の含有量を測定した。
4 つのポリプロピレンのプラスティックリング(1 cm2)をマウスの背部に貼りつけた。TRF 5%のポリエチレングリコール-400(PEG)溶液 20 μL を 2 つのリングで囲
まれた皮膚に塗布し、また PEG 20 μL を別の 2 つのリングで囲まれた皮膚に塗布した。2 時間後、皮膚を洗浄し、その部位の半分を紫外線(2.8 mW/cm3
for 29 mi; 3MED)に曝した。
TRF で処理したマウス(n=19)の皮膚は、α-トコフェロールが 28±16 倍、α-トコトリエノールが 80±50 倍、γ-トコフェロールが 130±108 倍、γ-トコトリエノール
が 51±36 倍に増加した。皮膚に存在する α-トコフェロールの含有率は、塗布した TRF における含有率よりも著しく高かった。
紫外線照射後すべての形のビタミン E が有意に減少し(p<0.01)、TRF 処理した皮膚(約 40%)より PEG 処理の皮膚(約 80%)にビタミン E が多く残
存していた。それにもかかわらず、照射した TRF 処理皮膚におけるビタミン E 濃度は、非照射の PEG 処理皮膚(対照)よりも有意に高かった(p<0.01)。
紫外線照射は皮膚の抗酸化物質を破壊するが、マウスの皮膚に TRF をあらかじめ塗布しておくとビタミン E が保護されることが明らかになった。
Keywords: トコトリエノール高含有フラクション、PEG、紫外線誘発酸化ストレス
Thiele JJ, Traber MG, Podda M, Tsang K, Cross CE, Packer L. Ozone depletes tocopherols and tocotrienols topically applied to murine skin.
FEBS Lett. 1997;401:167-70.
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オゾンがヘアレスマウスの皮膚に及ぼす損傷を評価するために、酸化損傷の二つのパラメータであるビタミン E 消耗とマロンジアルデヒド(MDA)産生を、10
ppm のオゾンに曝露したマウスの皮膚(ビタミン E 添加処理と対照)で測定した。
ポリエチレングリコール(PEG)に溶解した 5%のビタミン E(トコトリエノール高含有フラクション、TRF)及び PEG をヘアレスマウスの背中の 2 ヵ所の部位に塗布
した。2 時間後それらの部位を洗い流し、それぞれペアとなっている片方の部位を覆った状態でマウスを 2 時間オゾンに曝露した。
オゾンの曝露は(覆った部位と比べて)PEG 処理部位の表皮の MDA を増加させたが、ビタミン E は不変であった。オゾンの曝露は TRF 処理部位でビタミン E
を著しく消耗させたが、MDA の著しい蓄積は防ぐことができた。
今回の試験は、オゾンの曝露が皮膚の脂質に損傷を及ぼし、ビタミン E の塗布にはそれを減弱させる効果があることを初めて実証した。
Keywords: トコトリエノール高含有フラクション、PEG、MDA、オゾン
骨と関節の健康
Bone and Joint Health
2014
Chin KY, Ima-Nirwana S. Effects of annatto-derived tocotrienol supplementation on osteoporosis induced by testosterone deficiency in rats.
Clin Interv Aging. 2014 Aug 5;9:1247-59. doi: 10.2147/CIA.S67016. eCollection 2014.
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トコトリエノールには閉経後骨粗しょう症に有効な治療物質となる可能性のあることが、以前行われた動物モデルでの試験で実証されている。本研究では、ア
ナトー由来トコトリエノール(AnTT)の抗骨粗しょう症作用について、テストステロン欠乏骨粗しょう症ラットモデルを対象に評価を行った。
40 匹のラットをベースライン、偽手術(sham)、精巣摘除術、AnTT 投与、およびテストステロン投与の群に無作為に割り付けた。ベースライン群のラットは、
いかなる外科治療も介入も行わずに安楽死させた。sham 群を除く残りの群は、精巣摘除術を行った。AnTT 60 mg/kg 体重/日を AnTT 群のラットに経口
投与した一方、テストステロン群はエナント酸テストステロン 7 mg/kg 体重/日を筋肉内に週に 1 度、8 週間投与した。
近位脛骨の海綿骨における構造的変化について、マイクロコンピュータによる断層撮影を用いて検査した。大腿骨遠位部の構造的・動的変化について、組
織形態計測的方法を用いて検査した。血清オステオカルシンと I 型コラーゲン架橋 C 末端を測定した。大腿骨遠位部における骨関連遺伝子発現について
検査した。
精巣摘除群において構造的指標の有意な退行性変化が認められたが(p<0.05)、動的指標、骨リモデリングマーカまたは遺伝子発現については、sham
群と比べて有意な変化は認められなかった(p>0.05)。AnTT 群では、大腿骨の構造的指標の有意な改善、また、骨形成遺伝子の有意な発現増加が認
められた(ともに、p<0.05)。テストステロンは、大腿骨と脛骨における骨の構造的指標の退行防止において、AnTT より効果的であることが明らかになった
(p<0.05)。
結論として、AnTT 補給はテストステロン欠乏ラットにおける骨の健康を骨形成の増進により改善する。その潜在能力について、種々の投与量および処置期間
でさらなる評価を行う必要があるだろう。f
Keywords: アナトー由来トコトリエノール、テストステロン欠乏ラットモデル、抗骨粗しょう症作用
Deng L, Ding Y, Peng Y, Wu Y, Fan J, Li W, Yang R, Yang M, Fu Q. γ-Tocotrienol protects against ovariectomy-induced bone loss via
mevalonate pathway as HMG-CoA reductase inhibitor. Bone. 2014 Oct;67:200-7. doi: 10.1016/j.bone.2014.07.006.
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ビタミン E 類縁体の γ-トコトリエノール(GT3)は重要な健康利益をもたらすことから、最近 GT3 に対する科学的興味が高まっている。GT3 は抗酸化特性の
みならず、ヒドロキシメチルグルタリル CoA(HMG-CoA)還元酵素の阻害からも生物効果を発現することが明らかにされている。
メバロン酸経路は骨代謝との関連が認められ、また、HMG-CoA 還元酵素阻害剤は骨量を増加し、骨粗しょう症治療に有用であることが研究で報告されて
いる。しかしながら、GT3 の骨同化活性に関与しているかについては明らかにされていない。本研究は、GT3 が卵巣摘出誘発性骨損失から防護する能力、お
よびその保護作用とメバロン酸経路との間の相関関係を検討するために行った。
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100 mg/kg 体重の乳化 GT3 を皮下注で月 1 回、3 ヵ月間補給したマウスは、種々の骨構造パラメータ、骨代謝遺伝子発現レベル、および骨吸収と骨形
成の生化学マーカーの血清レベルで評価したように、卵巣摘出誘導骨損失から有意に保護されることが結果から明らかになった。
重要なことは、GT3 の卵巣摘出誘導骨損失防止に及ぼす作用がもしかするとメバロン酸の連日補給により逆転し、GT3 に卵巣摘出誘導骨損失から防護す
る HMG-CoA 還元酵素依存性機構を介している可能性のあることが示されている点である。
得られた結果から、GT3 は栄養補助食品として適し、また、骨粗しょう症を予防あるいは治療する代替薬剤として将来性のあることが示唆される。
Keywords: γ-トコトリエノール、卵巣摘出誘導骨損失、メバロン酸経路、HMG-CoA 還元酵素依存性機構
Radhakrishnan A, Tudawe D, Chakravarthi S, Chiew GS, Haleagrahara N. Effect of γ-tocotrienol in counteracting oxidative stress and joint
damage in collagen-induced arthritis in rats. Exp Ther Med. 2014 May;7(5):1408-1414.
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トコトリエノールは、多数のヒト疾患に顕著な抗炎症作用と抗酸化作用を示す。しかしながら、関節炎症状におけるトコトリノールの抗炎症・抗酸化作用につ
いては十分な立証がなされていない。そこで、γ-トコトリエノール補給がラットのコラーゲン誘発関節炎における酸化ストレスおよび関節の病態に対する影響につ
いて、本件研究で検討を行った。
成熟雌 Dark Agouti ラットを無作為に対照、γ-トコトリエノール投与のみ、関節炎誘発のみ、および関節炎誘発と γ-トコトリエノール投与の群に割り付けた。
完全フロイントアジュバントで 4 mg/kg 体重のコラーゲンを用いて関節炎を誘発した。
試験開始 21 日目から 45 日目まで 5 mg/kg 体重の γ-トコトリエノールをラットに経口投与した。45 日目を過ぎて、血清 C 反応性タンパク質(CRP)、腫
瘍壊死因子(TNF)α、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および総グルタチオン(GSH)の定量を行った。
γ-トコトリエノールは、関節炎によって誘発される体重、CRP、TNF-α、SOD および総 GSH のレベルの変化を有意に減少させた。γ-トコトリエノール処置群にお
いて、関節炎によって引き起こされる組織病理的変化に有意な減少が認められた。
得られたデータから、γ-トコトリエノールの投与はコラーゲン誘発関節炎に顕著な抗酸化・抗炎症作用をもたらすことが示された。したがって、γ-トコトリエノールに
はリウマチ性関節炎治療における長期的な抗関節炎剤として治療能を有している可能性がある。 f
Keywords: γ-トコトリエノール、コラーゲン誘発関節炎、抗酸化・抗炎症作用
2013
Abdul-Majeed S, Mohamed N, Soelaiman IN. A review on the use of statins and tocotrienols, individually or in combination for the
treatment of osteoporosis. Curr Drug Targets. 2013 Dec;14(13):1579-90.
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骨格組織は継続的にリモデリングを受けており、これが他の体組織と異なる点になっている。骨粗しょう症は、男女両方に影響を及ぼす一般的な骨の代謝異
常である。骨粗しょう症とその主要な合併症である骨粗しょう症性骨折は、健康と経済に多大な影響を及ぼしている。
現行の承認薬は多数の副作用との関連が認められており、その使用は限定的である。新規の安全な治療法の特定が必須とされている。HMG-CoA レダクタ
ーゼ阻害剤としても知られるスタチン系薬剤は、高コレステロール血症の治療、心血管疾患と関連する罹患と死亡の防止のために頻繁に用いられている
スタチン系薬剤は、臨床的に耐えがたい高用量で経口投与した後の無処置および卵巣摘出げっ歯類において、骨の健康状態を改善することが明らかにされ
ている。しかしながら、スタチン系薬剤がもたらすこの有益作用をヒトで有意に実証することはできなかった。このような矛盾が生じた理由は、現在用いている経
口スタチンの安全性とバイオアベイラビリティが原因かもしれない。
ビタミン E のなかでもとりわけトコトリノールは、60 mg/kg/日の用量で種々の骨粗しょう症動物モデルにおいて有意な抗骨粗しょう症作用をもたらした。前述し
た用量でのトコトリノールの利用は、ヒトと動物の両方で安全であることが示されている。
骨形成増大および骨吸収減少は、トコトリノールとスタチン系薬剤の併用によって、臨床上の耐用量で個別に補給したいずれの処置より効果的に達成され
た。それゆえ、高用量のスタチンと関連した有害作用は、トコトリノールとの同時投与により回避できる可能性がある。さらに、この併用療法は、骨粗しょう症、
心血管イベントおよび高コレステロール血症のリスクの高い患者に有用となるかもしれない。
Keywords: スタチン系薬剤、抗骨粗しょう症作用、骨形成、骨吸収、併用療法
Chin KY, Mo H, Soelaiman IN. A review of the possible mechanisms of action of tocotrienol - a potential antiosteoporotic agent. Curr Drug
Targets. 2013 Dec;14(13):1533-41.
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骨粗しょう症は、非常に大きなヘルスケア問題を地球規模でもたらしている。この病気の進行を止める新規の抗骨粗しょう症剤を見出すために相当な努力が
費やされてきた。
ビタミン E のイソ型の一つであるトコトリエノールは、可能な抗骨粗しょう症剤になりつつある。これまでの研究からトコトリエノールは、単一の異性体又は複合体と
して、骨粗しょう症の様々なげっ歯類モデルにおいて骨同化作用と抗再吸収作用の両方を示すことが明らかにされている。
in vitro での実験で、トコトリエノールは骨芽細胞形成に関連する遺伝子をアップレギュレートし、破骨細胞形成に対しては、核因子 κB シグナル伝達の受容
体活性化因子を修飾している可能性のあることがさらに実証されている。
加えてトコトリエノールは、スタチンとは異なるメカニズムによる 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A 還元酵素の強力なダウンレギュレーターであることも明ら
かにされている。メバロン酸経路の阻害は、骨芽細胞と破骨細胞の両方に影響を及ぼし、前者に有利に働いている。一般に用いられているビタミン E イソ型の
トコフェロールには、同様の効果が認められていない。
トコトリエノールはまた、強力な抗酸化剤でもある。トコトリエノールはフリーラジカルを捕捉し、骨芽細胞への酸化損傷を防止することにより、骨芽細胞の生存
を促進している。トコトリエノールは破骨細胞における抗酸化防御機構をアップレギュレートし、破骨細胞形成に必須とされるフリーラジカルのシグナル伝達に直
接的に作用している可能性がある。
骨芽細胞形成に必須とされる Wnt/β-カテニンシグナル伝達に及ぼすトコトリエノールの作用については評価されていない。トコトリエノールの抗骨粗しょう症作
用を明らかにするために、さらに多くの機構的研究の実施が必要とされている。また、ヒトを対象にその効果を確認する臨床試験も必要である。
結論として、トコトリエノールは抗骨粗しょう症剤として極めて有望であり、トコトリエノールを骨粗しょう症抑制剤として開発するために多くの研究努力が費やさ
れるべきであろう。
Keywords: 抗骨粗しょう症剤、骨芽細胞形成、メバロン酸経路、抗酸化剤
2012
Soelaiman IN, Ming W, Abu Bakar R, Hashnan NA, Mohd Ali H, Mohamed N, Muhammad N, Shuid AN. Palm tocotrienol supplementation
enhanced bone formation in oestrogen-deficient rats. Int J Endocrinol. 2012;2012:532862. doi: 10.1155/2012/532862.
64
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閉経後骨粗しょう症は、骨粗しょう症の最も一般的な原因であり、エストロゲン欠乏状態によって引き起こされるフリーラジカルの活性上昇と関連している。そ
れ故、強力な抗酸化剤であるパーム油由来トコトリエノールの補給は、このような骨喪失を予防できるはずである。
我々が以前行った試験で、トコトリエノールは、エストロゲン欠乏を含む種々の要因による骨粗しょう症を予防するばかりでなく逆転さえすることが明らかにされて
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いる。本試験では、卵巣摘出(エストロゲン欠乏)雌ラットを対象に、パーム・トコトリエノール複合体又はカルシウムの補給が骨バイオマーカー及び骨形成速
度に及ぼす影響について比較を行った。
得られた結果から、二重標識面率(dLS/Bs)の上昇、一重標識面率(sLS/BS)の低下、骨石灰化面(MS/BS)の増加、骨石灰化速度(MAR)の
上昇、及び骨形成速度(BFR/BS)の全体的な上昇が認められ、パーム・トコトリエノールはエストロゲン欠乏ラットにおける骨形成を有意に増加させることが
明らかになった。これらの作用は、カルシウム補給群では認められなかった。
しかしながら、オステオカルシン及び I 型コラーゲン架橋 C-テロペプチド(CTX)のような骨バイオマーカーの血清レベルに有意な変化は見出されなかった。
パーム・トコトリエノールは、エストロゲン欠乏による骨喪失の予防においてカルシウムより有効であると結論付けられる。抗骨粗しょう症剤としてのトコトリエノール
の可能性を評価するために更なる試験が必要とされる。 f
Keywords: エストロゲン欠乏、骨形成速度、骨喪失、抗骨粗しょう症剤
Muhammad N, Luke DA, Shuid AN, Mohamed N, Soelaiman IN. Two different isomers of vitamin e prevent bone loss in postmenopausal
osteoporosis rat model. Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:161527. doi: 10.1155/2012/161527.
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閉経後の骨粗しょう症性骨喪失は、主として、フリーラジカル増加と関連した状態である卵巣機能停止によって生じる。脂溶性ビタミンであるビタミン E は、体
内のフリーラジカルを捕捉する強力な抗酸化剤である。
本研究で、α-トコフェロール及び精製トコトリエノールが骨微細構造及び骨細胞のパラメータに及ぼす影響について卵巣摘出ラットを対象に検討を行った。
3 ヵ月齢の雌性 Wistar ラットを卵巣摘出、偽手術、及び α-トコフェロール又はトコトリエノールのいずれかを投与する卵巣摘出の群に無作為に割り付けた。ラ
ットの大腿骨を 4 週間の試験終了時に採取し、骨組織形態学的分析を行った。
卵巣摘出術はコントロール群で骨喪失を引き起し、骨量(BV/TV)と骨梁数(Tb.N)両方の減少、及び骨梁間隙(Tb.S)の増加が認められた。
卵巣摘出術における破骨細胞面(Oc.S)と骨芽細胞面(Ob.S)の増加は、骨代謝速度の上昇を示している。α-トコフェロール又はトコトリエノールいずれ
かの投与により、BV/TV 及び Tb.N の減少、並びに Tb.S の増加が防止される一方、Oc.S の減少と Ob.S の増加が認められた。
結論として、2 種類のビタミン E は卵巣摘出術による骨喪失を防止した。トコトリエノールと α-トコフェロール両方は共に、エストロゲン欠乏ラットモデルにおける骨
微細構造の保持に同様の効果を及ぼすことが明らかになった。 f
Keywords: α-トコフェロール、トコトリエノール、卵巣摘出術、骨喪失、骨微細構造
Naina Mohamed I, Borhanuddin B, Shuid AN, Mohd Fozi NF. Vitamin e and bone structural changes: an evidence-based review. Evid Based
Complement Alternat Med. 2012;2012:250584. doi: 10.1155/2012/250584.
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本論文でビタミン E が骨の構造的変化に及ぼす影響について調査を実施した。ビタミン E と骨粗しょう症又は骨の構造的変化に関連した研究を特定するため
に、文献の系統的レビューを行った。1964 年から 2012 年までの間に発表された関連研究を Medline 及び CINAHL による包括的検索の対象とした。
英語で発表した研究、ビタミン E と骨粗しょう症に関連した骨の変化との関係を報告した研究、ビタミン E がそれらの変化に及ぼす影響を報告した研究、及び
骨粗しょう症に関連した骨の変化がライフスタイルの変数、加齢又は実験的に誘導した状態と関係していることを主要な包含基準とした。
文献検索で 561 報の関連している可能性のある論文がヒットし、そのうち 11 件の研究が包含基準を満たしていた。3 件のヒトを対象とした疫学調査及び 8
件の動物実験を本論文で扱った。
4 件の動物実験がビタミン E 補給による骨の正の構造的変化を報告している。残りの研究は、負の変化又は無効果を報告している。正の変化が得られた研
究は、ビタミン E 異性体のうちトコトリエノールの補給による良好な効果を報告している。
今回の証拠に基づいたレビューで、骨粗しょう症へのビタミン E の利用可能性が強調された。ビタミン E 異性体の一つであるトコトリエノールが骨の構造的変化に
及ぼす影響について、さらなる調査が必要とされる。管理されたヒトでの観察的研究がより強い証拠を得るために実施されるべきであろう。 f
Keywords: 骨の構造的変化、文献検索、Medline、CINAHL、系統的レビュー
Abd Manan N, Mohamed N, Shuid AN. Effects of Low-Dose versus High-Dose γ-Tocotrienol on the Bone Cells Exposed to the Hydrogen
Peroxide-Induced Oxidative Stress and Apoptosis. Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:680834.
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酸化ストレスとアポトーシスは骨芽細胞の骨形成活性を阻害し、骨粗しょう症を引き起すとされている。本研究の目的は、過酸化水素(H2O2)に曝露した
骨芽細胞の脂質過酸化、抗酸化酵素活性、アポトーシスに及ぼす γ-トコトリエノールの影響を調査することにある。
490 μM(IC50)の H2O2 に 2 時間曝露する前に、骨芽細胞を 1、10、100 μM の γ-トコトリエノールで 24 時間処理した。結果から、γ-トコトリエノールは、
H2O2 で誘発したマロンジアルデヒド(MDA)の増加を用量依存的に抑制することが明らかになった。
抗酸化酵素アッセイについては、全ての用量で γ-トコトリエノールは SOD と CAT の活性低下を防止したが、1 μM 用量の γ-トコトリエノールだけが GPx の減少
を防止した。
アポトーシスアッセイについては、γ-トコトリエノールは 1 および 10 μM の用量でアポトーシスを減少したが、100 μM 用量の γ-トコトリエノールでは、H2O2 よりも
さらに高いレベルのアポトーシスを誘発した。
低用量の γ-トコトリエノールは骨芽細胞を H2O2 から保護したが、高用量ではそれ自体が毒性の原因となると結論付けられる。 f
Keywords: γ-トコトリエノール、骨芽細胞の脂質過酸化、抗酸化酵素活性、アポトーシス
Abdul-Majeed S, Mohamed N, Soelaiman IN. Effects of tocotrienol and lovastatin combination on osteoblast and osteoclast activity in
estrogen-deficient osteoporosis. Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:960742. doi: 10.1155/2012/960742.
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スタチン系薬剤は HMG-CoA 還元酵素阻害薬で、経口で高用量投与した後のげっ歯動物において骨形成を刺激することが実証されている。スタチン系薬
剤を経口投与した患者についてのさまざまな観察的研究が存在する。
δ-トコトリエノールは HMG-CoA 還元酵素の開裂を刺激し、その活性を阻害することが明らかにされている。トコトリエノールは、骨粗しょう症の異なる動物モデ
ルで骨に異化作用と同化作用の両方を及ぼすことが明らかにされている。
本研究の目的は、δ-トコトリエノールとロバスタチンの組合せが臨床的耐用用量で閉経後ラットのモデルにおける生化学的、骨組織形態学的パラメータに及
ぼす影響を確認することにある。
48 匹の雌性 Sprague-Dawley ラットを次の 6 群に無作為に分けた。(1) 対照群、(2) 偽手術群[対照群]、(3) 卵巣摘出群[対照群]、(4) 卵巣摘
出+ロバスタチン 11 mg/kg 投与群、(5) 卵巣摘出+δ-トコトリエノール 60 mg/kg 投与群、(6) 卵巣摘出+δ-トコトリエノール 60 mg/kg 投与+ロバスタ
チン 11 mg/kg 投与群。これらの処理を胃内挿管により経口で毎日、8 週間行った。
δ-トコトリエノール+ロバスタチンによる処理は、他群と比較して有意に骨形成を増進し、かつ骨吸収を低減することが明らかになった。
それ故、このような併用療法には相乗効果あるいは相加効果をもたらす可能性があり、とりわけ閉経後女性で骨粗しょう症と高コレステロール血症両方のリス
クにある患者への骨粗しょう症治療薬としての利用が期待できそうである。 f
Keywords: δ-トコトリエノール、ロバスタチン、併用療法、骨粗しょう症治療薬
Mohamad S, Shuid AN, Mokhtar SA, Abdullah S, Soelaiman IN. Tocotrienol supplementation improves late-phase fracture healing compared
to alpha-tocopherol in a rat model of postmenopausal osteoporosis: a biomechanical evaluation. Evid Based Complement Alternat Med.
2012;2012:372878. doi: 10.1155/2012/372878.
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α-トコフェロールとパーム油由来トコトリエノールの補給が閉経後骨粗しょう症ラットにおける骨折の治癒に及ぼす影響の調査を本研究で行った。
32 匹の雌性 Sprague-Dawley ラットを 4 群に分けた。最初の群では偽手術を施した一方(SO)、他群では卵巣摘除を行った。2 ヵ月後、麻酔下で右大
腿骨に骨折を発生させ、K ワイヤで固定した。
SO 群のラット及び卵巣摘除した対照群のラット(OVXC)にオリーブ油(vehicle)を、また、α-トコフェロール(ATF)群とトコトリエノール豊富画分(TEF)
群のラットにそれぞれ α-トコフェロール、トコトリエノール豊富画分を 60 mg/kg の用量で週に 6 日、胃内挿管により 8 週間経口投与を行った。ラットを安楽死
させ、骨の強度を評価する生体力学的試験のために大腿部を解離した。
TEF 群のラットの仮骨は、SO 群、OVXC 群より応力パラメータが有意に高いことが明らかになった。SO 群においてのみ、他の処置群と比較して、歪パラメータが
有意に高いことが明らかになった。OVXC 群、ATF 群における負荷パラメータは、SO 群より有意に低いことも明らかになった。群間でヤング率における有意差は
認められなかった。
閉経後骨粗しょう症ラットモデルを対象とした骨折の仮骨の生体力学特性改善において、トコトリエノールは α-トコフェロールより優れていると結論付けられる。
Keywords: 閉経後骨粗しょう症、トコトリエノール豊富画分、α-トコフェロール、仮骨、生体力学特性
Fujita K, Iwasaki M, Ochi H, Fukuda T, Ma C, Miyamoto T, Takitani K, Negishi-Koga T, Sunamura S, Kodama T, Takayanagi H, Tamai H, Kato S,
Arai H, Shinomiya K, Itoh H, Okawa A, Takeda S. Vitamin E decreases bone mass by stimulating osteoclast fusion. Nat Med. 2012 Mar
4;18(4):589-94. doi: 10.1038/nm.2659.
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骨の恒常性は、造骨性骨形成と骨破壊性骨吸収のバランスによって保たれている。破骨細胞は、単核前破骨細胞融合によって形成される多核細胞であ
る。ビタミン D のような脂溶性ビタミン類は、骨格の健全性維持に中心的な役割を担っていることが明らかにされている。しかしながら、骨再形成に果たすビタミ
ン E の役割は不明である。
遺伝的にビタミン E 欠乏症状を示すマウスモデルである α-トコフェロール輸送タンパク質欠損マウス(Ttpa-/- mice)では、骨吸収低下の結果として、骨量が
増加することを我々は今回明らかにした。
α-トコフェロールは、その抗酸化能とは無関係に、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ 14(p38)、小眼球症関連転写因子、及びその Tm7sf4[樹状細
胞 特 異 的 膜 貫 通 タン パ ク質 ( DC-STAMP: 破 骨 細 胞 融 合 に 必 須 とさ れる 分 子 ) を コー ドす る 遺 伝 子 ] プ ロモ ー ター へ の 直 接 的 な動 員 を 介 した
DC-STAMP 発現誘導により破骨細胞融合を刺激することが、細胞ベース分析から示された。事実、Ttpa-/- mice で認められた骨の異常が Tm7sf4 導入遺
伝子によって回復した。
さらに、多くの人が摂取しているサプリメントに匹敵する量の α-トコフェロールを含有する α-トコフェロール添加飼料を給与した野生型マウスあるいはラットで骨量
の喪失が認められた。
これらの結果から、血清中のビタミン E は、その破骨細胞融合調節機能から骨量の決定因子であることが明らかになった。
Keywords: α-トコフェロール、DC-STAMP 発現誘導、Tm7sf4 導入遺伝子、破骨細胞融合調節
2011
Brooks R, Kalia P, Ireland D, Beeton C, Rushton N. Direct Inhibition of Osteoclast Formation and Activity by the Vitamin E Isomer
gamma-Tocotrienol. Int J Vitam Nutr Res. 2011 Nov;81(6):358-67.
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ビタミン E 同族体のうち、とりわけトコトリエノールが骨に対して好ましい影響を及ぼすことが明らかにされている。トコトリエノールは抗再吸収活性を示す特性を有
し、骨喪失を予防するビタミン E の潜在能力が示唆されている。
種々のビタミン E 同族体の抗再吸収活性を調査するために、血液由来 CD14+細胞から得たヒト破骨細胞をコラーゲン、象牙質、リン酸カルシウムの基質上
で培養し、これらの細胞培養培地にビタミン E 同族体を補給した何種類かのサンプルを添加した。それらを臨床的に用いられているビスホスホネート製剤(パミ
ドロン酸)と比較した。
破骨細胞形成に及ぼす影響を試験するための培養の開始時、あるいは活性に及ぼす影響を評価するための破骨細胞による吸収開始時のいずれかに化合
物を添加した。
α-、γ-トコトリエノール異性体は、結果的に総細胞数を減少させることなく破骨細胞形成を阻害した。γ-トコトリエノールだけが、毒性を認めずに破骨活性を
阻害した。
γ-トコトリエノールは破骨細胞形成と破骨活性の両方において最も強力な阻害物質であることが明らかになり、その骨に及ぼす抗再吸収作用についてさらな
る調査が求められる。
Keywords: 抗再吸収活性、α-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、パミドロン酸、破骨細胞形成、破骨活性
Nizar AM, Nazrun AS, Norazlina M, Norliza M, Ima Nirwana S. Low dose of tocotrienols protects osteoblasts against oxidative stress. Clin
Ter. 2011;162(6):533-8.
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ビタミン E は、酸化ストレスによって誘発される骨粗しょう症から骨を保護する可能性のある抗酸化剤であるとされている。今回の in vitro 研究は、骨を形成す
る細胞である骨芽細胞を酸化ストレスから保護する α-トコフェロールと γ-トコトリエノールの作用を測定するために行った。
過酸化水素(H2O2)、α-トコフェロール、γ-トコトリエノールに関する毒性試験を行い、骨芽細胞に対するそれらの 50%阻害濃度(IC50)を測定した。
骨芽細胞の培養液は、H2O2 の IC50 で 2 時間インキュベートする 24 時間前に、異なる濃度の α-トコフェロールあるいは γ-トコトリエノールで前処理を行った。
細胞生存性を MTS アッセイにより測定し、H2O2 に曝露した骨芽細胞に及ぼす両ビタミン E の保護作用を比較した。
H2O2 についての 2 時間、24 時間のインキュベーション後の IC50 は、それぞれ 490 μM、280 μM であった。γ-トコトリエノールは 24 時間のインキュベーション
後の IC50(290 μM)で骨芽細胞に対し毒性を示した一方、α-トコフェロールはいかなる用量においても骨芽細胞に毒性を示さなかった。
しかしながら、γ-トコトリエノールは骨芽細胞を低濃度(1 μM)で H2O2 の毒性から保護したのに対し、α-トコフェロールによる H2O2 の毒性からの保護作用
は認められなかった。
γ-トコトリエノールは高濃度下では骨芽細胞に対し毒性を示すが、はるかに低い濃度ではそのようなことは起こらず、骨芽細胞の酸化ストレスからの保護におい
て α-トコフェロールよりも優れた抗酸化活性をもたらすことが明らかになった。
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Keywords: α-トコフェロール、γ-トコトリエノール、H2O2、毒性、酸化ストレス、骨芽細胞
2010
Shuid AN, Mehat Z, Mohamed N, Muhammad N, Soelaiman IN. Vitamin E exhibits bone anabolic actions in normal male rats. J Bone Miner
Metab. 2010 Mar;28(2):149-56.
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近年、ビタミン E がニコチン処理後のラット骨格をベースライン値よりはるかに改善することが示され、そのためビタミン E には何らかの同化促進作用があることが示
唆される。
骨同化剤は骨格を改善することにより骨を強くする。ビタミン E の潜在的な同化促進作用を評価するため、60 mg/kg の α-トコフェロール(ATF)または γ-ト
コトリエノール(GTT)、あるいは賦活剤(正常対照[NC]群)を正常雄ラットに 4 ヵ月間投与し、骨格および骨の生体力学的性質について測定した。
組織形態学的解析から、ビタミン E 投与ラットでは賦活剤のみを投与したラットと比較して、骨梁部の骨量、骨梁厚、骨梁数、骨梁間隙が増加していた。
今回初めて GTT によって生体力学的な骨強度の全パラメータで改善が認められることを報告したが、ATF では NC 群と比較してパラメータの一部でしか改善が
みられなかった。
特に γ-異性体のビタミン E 補給によって骨格が改善され、そのため骨が強化される。したがってビタミン E を骨粗しょう症治療のための同化促進剤、または後年
骨粗しょう症を予防するための若年成人用骨サプリメントとして使用できる可能性がある。
Keywords: 同化作用、γ-トコトリエノール、骨強度
2009
Hermizi H, Faizah O, Ima-Nirwana S, Ahmad Nazrun S, Norazlina M. Beneficial effects of tocotrienol and tocopherol on bone
histomorphometric parameters in sprague-dawley male rats after nicotine cessation. Calcif Tissue Int. 2009 Jan;84(1):65-74.
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3 種類の形のビタミン E の補給がニコチン処置後の成熟雄ラットモデルにおける骨の組織形態学的パラメータに及ぼす効果を評価するために本研究を実施し
た。
ラットを次の 7 群に割り当てた。ベースライン群(B: 処置を行わずに犠牲にする)、対照群(C: 4 ヵ月間生理食塩水を摂取させる)、ニコチン群(2 ヵ月間
ニコチン処置を行 う)、ニコチン処置停止群(NC)、トコトリエノール高含有 フラクション群(TEF)、γ-トコトリエノール群(GTT)、α-トコフェロール群
(ATF)。NC、TEF、GTT、ATF 群の処置は 2 相で行った。
最初の 2 ヵ月間ラットにニコチン(7 mg/kg)を投与し、次の 2 ヵ月間はニコチン投与を中止し、NC 群(処置なしで回復させる)を除く群で各ビタミン E 製
剤(60 mg/kg)による処置を開始した。
N 群と NC 群のラットでは、C 群と比較して、骨梁部の骨量、骨石灰化速度(MAR)、骨形成速度(BFR/BS)が低く、一重標識面と破骨細胞面が広い
ことが明らかになった。
ビタミン E の処置はこのようなニコチンによる影響を逆転させた。ATF 群以外の TEF 群と GTT 群は、C 群と比較して、骨梁厚を顕著に増加させ、また吸収面
(ES/BS)を減少させた。
トコトリエノール処置群では ATF 群より ES/BS が低かった。GTT 群では TEF 群や ATF 群より MAR と BFR/BS が著しく高いことが明らかになった。
結論として、ニコチンが顕著な骨量喪失を誘発する一方、ビタミン E の補給はその作用を逆転させたばかりでなく、骨形成をベースライン値をはるかに上回るレ
ベルで促進した。トコトリエノールはトコフェロールより僅かに優れていることが明らかになった。
従って、ビタミン E のなかでもとりわけ GTT には、常習的な喫煙によって引き起される骨の損傷を修復する治療ポテンシャルが存在する可能性がある。
Keywords: ニコチン処置、γ-トコトリエノール、骨梁厚、骨石灰化速度、骨形成速度、吸収面
2008
Maniam S, Mohamed N, Shuid AN, Soelaiman IN. Palm tocotrienol exerted better antioxidant activities in bone than alpha-tocopherol. Basic
Clin Pharmacol Toxicol. 2008 Jul;103(1):55-60.
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ラットの骨における脂質過酸化と抗酸化酵素のレベルにビタミン E が及ぼす影響を調査するのが本研究の目的である。
3 月齢の雄 Sprague-Dawley ラット 56 匹を 8 匹ずつ 7 つの群に無作為に割り当てた。同月齢のラットからなる対照群には、毎日、経口胃管栄養法でビヒ
クル(オリーブ油)を、処置群の 6 群には、週 6 日毎日、経口胃管栄養法で 30、60、100 mg/体重 kg の用量のパーム・トコトリエノールあるいは精製 αトコフェロールいずれかを 4 ヵ月間摂取させた。
脂質過酸化レベル測定の指標であるチオバルビツル酸反応物(TBARS)、抗酸化酵素のグルタチオンペルオキシダーゼとスーパーオキシドジスムターゼの大腿
骨におけるレベルを試験終了時に測定した。
100 mg/体重 kg の用量のパーム・トコトリエノールは、月齢適合対照群と比較して、大腿骨中の TBARS レベルを有意に低下させ、グルタチオンぺルオキシダ
ーゼ活性を有意に増大させた。α-トコフェロール群ではそのような変化は観察されなかった。
骨中の脂質過酸化抑制においては、精製 α-トコフェロールよりパーム・トコトリエノールのほうが有効であった。パーム・トコトリエノールは、α-トコフェロールと比較
して、大腿骨中のフリーラジカルによる損傷から防御する効果が高いことが明らかになった。
本研究から、トコトリエノールはフリーラジカルによる骨代謝の不均衡防止に重要な役割を果たしていることが示唆される。
Keywords: 大腿骨、TBARS、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、骨代謝
2005
Ahmad NS, Khalid BA, Luke DA, Ima Nirwana S. Tocotrienol offers better protection than tocopherol from free radical-induced damage of
rat bone. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2005 Sep;32(9):761-70.
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鉄ニトリロ三酢酸(FeNTA)によって生じるフリーラジカルは骨破壊を活性化させる可能性がある。このことは、骨による IL-1 や IL-6 のようなサイトカインの吸収
増大と関連している。本研究では、パーム油由来トコトリエノール混合物あるいは酢酸 α-トコフェロールの補給の有無により、2 mg/kg の FeNTA(鉄として 2
mg/kg)が Wistar ラットの血清 IL-1、IL-6 濃度に及ぼす影響について検討を行った。
FeNTA は IL-1、IL-6 濃度を上昇させることが明らかにされている。60 あるいは 100 mg/kg 用量のパーム油由来トコトリエノール混合物のみが、FeNTA 誘導
性の IL-1 上昇を防止した(p<0.01)。パーム油由来トコトリエノール混合物と酢酸 α-トコフェロールの両方とも、30、60、100 mg/kg の用量で FeNTA 誘
導性の IL-6 上昇を低下させた(p<0.05)。従って、FeNTA(フリーラジカル)が誘導する骨吸収性サイトカイン上昇から骨を保護するには、精製された酢
酸 α-トコフェロールよりもパーム油由来トコトリエノール混合物のほうが優れていると考えられる。
100 mg/kg のパーム油由来トコトリエノール混合物あるいは酢酸 α-トコフェロールの補給は、生理食塩水(対照)群で認められた加齢に伴う血清オステオカ
ルシン濃度低下を回復した(p<0.05)。パーム油由来トコトリエノール混合物はすべての用量で、対照群と比較して尿中デオキシピリジノリン(DPD)架橋
を有意に減少させた一方、酢酸 α-トコフェロールでは、60 mg/kg の用量からのみ尿中 DPD を減少させる傾向が認められた(p<0.05)。
骨の組織形態学的解析から、FeNTA 注入は生理食塩水(対照)群と比較して、骨芽細胞の平均個数と骨形成速度を有意に減少させたが(ともに、
p<0.001)、破骨細胞の平均個数と吸収面%(eroded surface/bone surface)は増加させた(それぞれ、p<0.05、p<0.001)。パーム油由来トコトリ
エノール混合物 100 mg/kg の補給は、これらすべての FeNTA 誘発性変化を防止したが、同用量の酢酸 α-トコフェロールは破骨細胞の平均個数のみに有
効であった。
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FeNTA 注入はまた、骨梁骨の量と厚さを減少させた一方(それぞれ、p<0.001、p<0.05)、100 mg/kg のパーム油由来トコトリエノール混合物の補給だけ
がこれら FeNTA 誘導性の変化を防止することが可能であった。
Keywords: FeNTA、IL-1、IL-6 濃度、骨芽細胞、骨形成速度、破骨細胞、吸収面
2004
Ima-Nirwana S, Suhaniza S. Effects of tocopherols and tocotrienols on body composition and bone calcium content in adrenalectomized rats
replaced with dexamethasone. J Med Food. 2004 Spring;7(1):45-51.
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糖質コルチコイドによる長期治療は、肥満や骨粗しょう症のような重篤な副作用との関連が指摘されている。パーム油由来ビタミン E 混合物は、1 日 120
μg/kg のデキサメタゾンを 12 週間投与したラットを骨粗しょう症から保護することが以前明らかにされた。
本研究では、二種類のビタミン E 異性体、すなわちパーム油由来の γ-トコトリエノールあるいは市販の α-トコフェロール(60 mg/体重 kg/日)が、1 日 120、
240 μg/kg のデキサメタゾン投与の替わりに副腎を摘出したラットの体組成と骨のカルシウム含量に及ぼす影響を評価した。
8 週間の試験期間で γ-トコトリエノール(60 mg/体重 kg/日)はこれらのラットの体脂肪量を減少させ、第 4 腰椎のカルシウム含量を増加させた一方、αトコフェロール(60 mg/体重 kg/日)にはこのような効果は認められなかった。
従って、パーム油由来 γ-トコトリエノールは、糖質コルチコイドの長期使用による副作用を回避する予防剤として利用できる可能性があると結論付けられる。
Keywords: パーム油由来 γ-トコトリエノール、デキサメタゾン、体脂肪量、カルシウム含量
2002
Norazlina M, Ima-Nirwana S, Abul Gapor MT, Abdul Kadir Khalid B. Tocotrienols are needed for normal bone calcification in growing female
rats. Asia Pac J Clin Nutr. 2002;11(3):194-9.
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本研究では 4 月齢雌 Sprague-Dawley ラットを対象にビタミン E 欠乏とビタミン E 補給が骨の石灰化に及ぼす影響について評価を行った。
ラットの体重は 180~200 g の範囲であった。研究は三つの部分に分けて実施した。実験 I では、正常ラットに固形飼料(RC; 対照群)、ビタミン E 欠乏飼
料(VED)、あるいはビタミン E 50%欠乏飼料(50%VED)を摂取させた。
実験 II では、30 mg/kg のパーム油由来ビタミン E を補給した VED(PVE30)、60 mg/kg のパーム油由来ビタミン E 補給 VED(PVE60)、あるいは 30
mg/kg の精製 α-トコフェロール補給 VED(ATF)をラットに摂取させた。
実験 III では、RC に実験 II と同じ補給を行った飼料をラットに摂取させた。処置は 8 週間行った。また、パーム油由来ビタミン E には AFT とトコトリエノールの
混合物が含まれていた。
VED、50%VED の飼料を摂取させたラットでは、RC 群のラットと比較して左大腿骨のカルシウム含量が低く(165.7±15.2 mg に対して、それぞれ 91.6±13.3
mg、118.3±26.0 mg; p<0.05)、また腰椎(L5)のカルシウム含量は RC 群の 51.4±5.8 mg と比較して、それぞれ 28.3±4.0、39.5±6.2 mg(p<0.05)
であった。
VED 群と比較して PVE60 群では、左大腿骨(91.6±13.3 mg に対して 133.6±5.0 mg; p<0.05)、L5(28.3±4.0 mg に対して 41.3±3.3 mg; p<0.05)
ともに骨石灰化が改善された一方、PVE30 群では L5 でカルシウム含量の改善が認められた(28.3±4.0 mg に対して 35.6±3.1 mg; p<0.05)。しかしなが
ら、ATF 群では VED 群と比較して腰椎、大腿骨ともにカルシウム含量に変化は認められなかった。
RC に 30、60 mg/kg のパーム油由来ビタミン E、30 mg/kg の精製 α-トコフェロールを補給した各群では、骨のカルシウム含量に有意な変化は生じなかった。
ビタミン E 欠乏は骨の石灰化を障害し、高用量のパーム油由来ビタミン E 補給は骨のカルシウム含量を改善するが、精製 ATF 単独の補給では改善が認めら
れないと結論付けられる。
このような効果はパーム油由来ビタミン E に含まれるトコトリエノールに起因すると考えられることから、トコトリエノールは骨石灰化に重要な役割を果たしている可
能性がある。
Keywords: パーム油由来ビタミン E、ビタミン E 欠乏、カルシウム含量、骨石灰化
腎機能障害
Renal Dysfunction
2009
Gupta A, Chopra K. Effect of tocotrienols on iron-induced renal dysfunction and oxidative stress in rats. Drug Chem Toxicol.
2009;32(4):319-25..
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鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)は腎毒性が既知の薬剤である。本研究では、パーム油由来のトコトリエノール高含有フラクション(T3)および α-トコフェロール
(T)の亜急性投与が Fe-NTA 誘発性の腎障害および酸化ストレスに及ぼす調節作用を調査した。
Fe-NTA 投与によって血中尿素窒素(BUN)および血清クレアチニン濃度が著しく上昇し、同時にラットの腎臓における顕著な脂質過酸化反応、グルタチオ
ン活性レベルの低下、および形態学的変化が生じた。
Fe-NTA 投与前に T3(50 mg/kg/日)および T(50 mg/kg/日)を 7 日間前投与することにより、血清クレアチニン濃度、BUN 濃度、脂質過酸化反応
が有意に低下し、グルタチオンおよびスーパーオキシドジスムターゼの減少が回復した。
T による前投与と比較して、T3 の前投与では腫瘍壊死因子-α の血清濃度も低下し、正常な腎臓の形態に回復した。
これらの所見から、鉄誘導性の酸化ストレスと腎障害との間に強い相関があることが示唆され、Fe-NTA 誘発性の腎障害に対する T3 の保護作用が提示され
る。
Keywords: 鉄ニトリロ三酢酸、腎障害、トコトリエノール高含有フラクション、α-トコフェロール
ナトリウム排泄促進機能
Natriuretic Function
2003
Saito H, Kiyose C, Yoshimura H, Ueda T, Kondo K, Igarashi O. Gamma-tocotrienol, a vitamin E homolog, is a natriuretic hormone precursor. J
Lipid Res. 2003 Aug;44(8):1530-5.
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γ-トコフェロールと γ-トコトリエノールの代謝物である 2,7,8-trimethyl-2-(beta-carboxyethyl)-6-hydroxychroman(γ-CEHC)が新たな内因性のナトリウ
ム排泄促進因子として同定されている。しかしながら、ともに γ-CEHC の前駆物質である γ-トコフェロールと γ-トコトリエノールのナトリウム排泄促進効力につい
て直接的観察はなされていない。
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そこで、ラットを対象に γ-トコトリエノールがナトリウム排泄促進作用と利尿作用を引き起すか検討を行った。ラットを二群に割り当て、対照飼料あるいは高ナト
リウム飼料を 4 週間摂取させ、さらにプラセボと γ-トコトリエノールの亜群に細分化し、それぞれコーン油除去ビタミン E あるいは γ-トコトリエノール添加油のみを
摂取させた。経口による 3 回の実験的投与の後、ラットの尿を採取し、γ-CEHC、尿量、ナトリウム量、カリウム量を測定した。
高 NaCl 飼料を摂取させたラットにおいてのみ γ-トコトリエノールがナトリウム排泄を加速・増大させ、カリウム排泄には影響を及ぼさないことが明らかになった。γトコトリエノールを摂取させた高 NaCl 飼料群のラットのナトリウム排泄量 は 5.06±2.70 g/日 、γ-トコトリエノールを摂取させた対照飼料群のラットでは
0.11±0.06 g/日であった。
さらに γ-トコトリエノールは、高 NaCl の体内貯蔵、γ-トコトリエノール補給といった特定の条件下で尿量に影響を及ぼすことも明らかになった。
本研究でビタミン E 同族体の一つである γ-トコトリエノールは in vivo でナトリウム排泄を刺激することが見出され、γ-トコトリエノールにはホルモン様のナトリウム
排泄促進機能があることが示唆された。
Keywords: γ-CEHC、γ-トコトリエノール、ナトリウム排泄促進作用、カリウム排泄
吸収・分布・代謝・排泄
ADME
2013
Uchida T, Nomura S, Sakuma E, Hanzawa F, Ikeda S. α-Tocopherol does not accelerate depletion of γ-tocopherol and tocotrienol or excretion
of their metabolites in rats. Lipids. 2013 Jul;48(7):687-95. doi: 10.1007/s11745-013-3796-0.
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ラット肝ミクロソームを用いた酵素反応速度に関する試験から、α-トコフェロールはビタミン E ω-ヒドロキシル化(ビタミン E の異化経路の律速反応)の刺激に
より他のビタミン E の異化作用を加速させることが示唆されてきた。
α-トコフェロールが他のビタミン E イソ型の異化作用におよぼす影響を in vivo で検査するために、α-トコフェロールが γ-トコフェロールとトコトリエノールの枯渇およ
びそれらの代謝物の排泄を加速するかラットを対象に判定を行った。
雄性 Wistar ラットに γ-トコフェロール高含有食を 6 週間摂取させ、続いて α-トコフェロールの有り無しで γ-トコフェロール除去食を 7 日間摂取させた。γ-トコフ
ェロール除去食の摂取は血清、肝臓、副腎、小腸および心臓の γ-トコフェロール濃度を低下させたが、食事性 α-トコフェロールが γ-トコフェロール濃度に及ぼ
す影響は認められなかった。γ-トコフェロール代謝物の尿中排泄レベルは、食事性 α-トコフェロールによる影響を受けなかった。
次に、α-トコフェロールがトコトリエノール枯渇に及ぼす影響について、トコトリエノール高含有食を 6 週間摂取させたラットを対象に検討を行った。引き続いて αトコフェロールの有り無しでトコトリエノール除去食を 7 日間摂取させたところ、γ-トコトリエノール代謝物の尿中排泄減少を伴う血清および組織中の α-、γ-トコ
トリエノール濃度の枯渇が認められた。しかしながら、トコトリエノール濃度も γ-トコトリエノール代謝物の排泄も食事性 α-トコフェロールの影響を受けないことが
明らかになった。
これらのデータから、食事性 α-トコフェロールは γ-トコフェロールとトコトリエノールの枯渇およびそれらの代謝物の排泄を加速しないことが明らかになり、α-トコトリ
エノールがビタミン E の ω-ヒドロキシラーゼに及ぼす正の作用は、他のイソ型の組織中濃度に影響を及ぼすには十分でないことが示唆された。
Keywords: 異化作用、Wistar ラット、α-トコフェロール、γ-トコフェロール、トコトリエノール、組織中濃度、尿中排泄
2012
Patel V, Rink C, Gordillo GM, Khanna S, Gnyawali U, Roy S, Shneker B, Ganesh K, Phillips G, More JL, Sarkar A, Kirkpatrick R, Elkhammas EA,
Klatte E, Miller M, Firstenberg MS, Chiocca EA, Nesaretnam K, Sen CK. Oral Tocotrienols Are Transported to Human Tissues and Delay the
Progression of the Model for End-Stage Liver Disease Score in Patients. J Nutr. 2012 Mar;142(3):513-9.
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天然ビタミン E ファミリーは 8 種類のメンバーから構成されており、それらはトコフェロール類(TCP)、トコトリエノール類(TE)二つのグループへ半々に分けられ
る。TE には TCP にない強力な生物活性のあることが、増大しつつある証拠から示唆されている。
本研究の主要目的は、経口補給を受ける成人のヒトの生命維持に必要不可欠とされる重要な組織・器官における TE(ミックス TE として 200 mg を 1 日 2
回)と TCP(α-TCP として 200 mg を 1 日 2 回)の濃度を測定することにある。
80 人の参加者が調査対象となった。12 週間にわたり TE あるいは TCP の経口補給を受けた健常な参加者の皮膚と血液中のビタミン E 濃度を測定した。TE
あるいは TCP の経口補給(平均 20 週間;期間の範囲:1~96 週間)を受けた外科患者の脂肪組織、脳、心筋、肝臓の生体臓器におけるビタミン E
濃度を HPLC で測定した。
TE の経口補給により、血液、皮膚、脂肪組織、脳、心筋、肝臓における組織中 TE 濃度の経時的な上昇が有意に認められた。α-TE は脳卒中の実験モデ
ルで神経保護作用をもたらすことが報告された濃度でヒトの脳へ運搬されることが明らかになった。
将来肝移植を受ける予定の患者では、TE の補給を受けたヒトの 50%で末期肝疾患モデル(MELD)のスコアが低下した一方、TCP の補給を受けたヒトで
は、20%でのみ MELD スコアの低下が認められた。
我々の知る限り、経口補給した TE が成人のヒトの重要臓器に運搬されることを実証する証拠が本研究により初めてもたらされた。
最近の文献に照らして、本研究で得られた所見はヒトの脳卒中や末期肝疾患に対する TE の有効性を調査する第 II 相臨床試験の基礎を築いたと言えよ
う。
Keywords: 血液、皮膚、脂肪組織、脳、心筋、肝臓、MELD
Uchida T, Abe C, Nomura S, Ichikawa T, Ikeda S. Tissue distribution of α- and γ-tocotrienol and γ-tocopherol in rats and interference with
their accumulation by α-tocopherol. Lipids. 2012 Feb;47(2):129-39.
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本研究の目的は、α-、γ-トコトリエノール、γ-トコフェロールのようなビタミン E アイソフォームの組織分布と α-トコフェロールによるそれらの組織内蓄積妨害につい
て評価を行うことにある。
ラットを対象に、α-トコフェロールのあるなしでトコトリエノール複合体あるいは γ-トコフェロールを含有する飼料の給与、α-トコフェロールのありなしでトコトリエノー
ル複合体あるいは γ-トコフェロールを含有するエマルジョンの経管栄養による投与を行った。
トコトリエノール複合体あるいは γ-トコフェロールの 7 週間の給餌により、α-トコトリエノールはラットの脂肪組織と副腎に、γ-トコトリエノールは脂肪組織に、また、
γ-トコフェロールは副腎に高濃度の蓄積が認められた。
食事性 α-トコフェロールは組織中の α-トコトリエノールと γ-トコフェロールの濃度を低下させたが、γ-トコトリエノールの濃度は低下させなかった。経口投与試験
では、トコフェロールとトコトリエノール両方が副腎に速やかに蓄積したが、脂肪組織への蓄積は遅いことが明らかになった。
飼料からの摂取とは対照的に、α-トコフェロール輸送タンパク質(αTTP)と最も親和性の高い α-トコフェロールが経口投与後の脂肪組織を含む組織への γトコトリエノールの吸収を阻害し、肝臓中の αTTP に対するトコフェロールとトコトリエノールの親和性がそれらの末梢組織への吸収に関する重要な決定因子で
あることが示唆された。
4 週間のビタミン E 欠乏により肝中トコフェロールとトコトリエノールの貯蔵は枯渇したが、脂肪組織ではそのような現象は認められなかった。これらの結果から、食
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事性ビタミン E の脂肪組織への蓄積は遅いが、そのレベルは低下せずに維持されることが明らかになった。
ビタミン E を蓄える脂肪組織の特性は、食事性トコトリエノールの脂肪組織特異蓄積を引き起すことが明らかになった。
Keywords: 副腎、αTTP、親和性、貯蔵、脂肪組織特異蓄積
2011
Uchida T, Nomura S, Ichikawa T, Abe C, Ikeda S. Tissue distribution of vitamin E metabolites in rats after oral administration of tocopherol or
tocotrienol. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2011;57(5):326-32.
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我々は以前、ビタミン E 異性体の γ-トコフェロールあるいは γ-トコトリエノールの代謝物である 2,7,8-trimethyl-2(2'-carboxyethyl)-6-hydroxychroman
(γCEHC)がラット小腸内に蓄積していることを見出した。本研究の目的は、ビタミン E 代謝物の組織分布を評価することにある。
α-トコフェロール、γ-トコフェロール、あるいは α-、γ-トコトリエノールを含有するトコトリエノール複合体をラットに経口単回投与した。組織中の抱合・非抱合代
謝物の総量を電気化学検出器付 HPLC で測定し、その際の内部標準として 6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acid(trolox)を
用いた。
24 時 間 後 、ほとんどの組 織 と血 清 中 にビタミン E の異 性 体 が検 出 された。しかしながら、 α-トコフェロールあるいは α-トコトリエノールの代 謝物 である
2,5,7,8-tetramethyl-2(2'-carboxyethyl)-6-hydroxychroman(αCEHC)と γCEHC は、血清と肝臓、小腸、腎臓を含む何種類かの組織に蓄積が認め
られた。
α-トコフェロールの投与は小腸内の γCEHC 濃度を上昇させ、α-トコフェロールによる γ-トコフェロールの異化増進が示唆された。対照的に、cytochrome P450
(CYP)依存性ビタミン E 異化作用の阻害剤であるケトコナゾールは、γCEHC の濃度を顕著に低下させた。
これらのデータは、ビタミン E 代謝物が肝臓のみならず小腸や腎臓にも蓄積していることを示している。
我々は、何種類かの食事性ビタミン E は小腸内で carboxyethyl-hydroxychroman に異化代謝され、循環器系に分泌されると結論付けた。
Keywords: γCEHC、αCEHC、ケトコナゾール、異化代謝
2010
Zhao Y, Lee MJ, Cheung C, Ju JH, Chen YK, Liu B, Hu LQ, Yang CS. Analysis of Multiple Metabolites of Tocopherols and Tocotrienols in Mice
and Humans. J Agric Food Chem. 2010 Apr 28;58(8):4844-52.
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ビタミン E として集合的に知られるトコフェロールとトコトリエノールは必須の抗酸化栄養素である。これら異なる形のビタミン E の生物学的運命と代謝プロファイル
については、明確な理解がなされていない。
本研究の目的は、トコフェロールとトコトリエノール、異なるタイプのビタミン E のマウス及びヒトの試料における代謝物を同時に分析することにある。
HPLC-電気化学検知と質量分析によって、トコフェロールに由来する 18 種類とトコトリエノールに由来する 24 種類の側鎖分解の代謝産物が糞便検体から
同定された。
血清と肝臓試料中に付加的に検出されたトコフェロール類と共に、短鎖の分解代謝物、とりわけ γ-、δ-carboxyethyl hydroxychromes(CEHCs)と
carboxymethylbutyl hydroxychromans(CMBHCs)が尿、血清、肝臓試料中で検出された。
トコトリエノール類とトコフェロール類の代謝プロファイルは類似していたが、二重結合を有するトコトリエノールの新しい代謝物が同定された。
本研究は、マウスとヒトにおいてトコフェロールとトコトリエノールの異なる側鎖代謝物の同時分析を説明した初めての包括的な報告である。尿中で検出された
代謝物は、ビタミン E の栄養評価で有用なバイオマーカーとしての役割を果たす可能性がある。
Keywords: γ-、δ-carboxyethyl hydroxychromes、carboxymethylbutyl hydroxychromans
2006
Fairus S, Nor RM, Cheng HM, Sundram K. Postprandial metabolic fate of tocotrienol-rich vitamin E differs significantly from that of
alpha-tocopherol. Am J Clin Nutr. 2006 Oct;84(4):835-42.
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ヒト血漿中でトコトリエノールは検出しにくいことが分かっており、トコトリエノールは様々な哺乳類の組織で急速に同化し、再分布するという仮説が立てられてい
る。
本研究の主な目的は、ヒトの血漿とリポタンパク質におけるトコトリエノールと α-トコフェロールの摂取後の運命を評価することにある。
7 人の健常志願者(男性 4 人、女性 3 人)を対象に、トコトリエノール非含有食による 7 日間の調整期の後、ビタミン E[パーム・トコトリエノール高含有フ
ラクション(TRF)1,011 mg あるいは α-トコフェロール 1,074 mg]の単回投与を行った。ベースライン時(絶食時)、投与後 2、4、5、6、8、24 時間に採
血を行った。血漿中のトコフェロールとトコトリエノールの異性体、トリアシルグリセロール高含有粒子(TRPs)、LDL、HDL コレステロールの濃度を区間毎に測
定した。
TRF による介入後、血漿トコトリエノールは 4 時間でピークに達したのに対し(4.79±1.2 μg/mL)、α-トコフェロールは 6 時間でピークに達した(13.46±1.68
μg/mL)。トコトリエノールは TRP、LDL、HDL でも同様に検出されたが、トコトリエノールは α-トコフェロールよりも顕著に濃度が低いことが明らかになった。相対
的に血漿中の α-トコフェロールは投与中 8 時間でピークに達し(24.3±5.22 μg/mL)、TRF 投与と α-トコフェロール投与の両方とも、血漿とリポタンパク質か
ら検出される主要なビタミン E 異性体として出現した。
トコトリエノールは、α-トコフェロールよりも著しく低い濃度ではあるが、摂取後の血漿中で検出された。この所見から、絶食状態においてトコトリエノールが血漿
中に検出されなかった以前の観察結果を確認することができる。リポタンパク質中のトコトリエノール輸送は、リポタンパク質カスケード内の複雑な生化学的介
在経路に従っているようである。
Keywords: TRF、TRP、LDL、HDL コレステロール、リポタンパク質カスケード
2004
Tanito M, Itoh N, Yoshida Y, Hayakawa M, Ohira A, Niki E. Distribution of tocopherols and tocotrienols to rat ocular tissues after topical
ophthalmic administration. Lipids. 2004 May;39(5):469-74.
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酸化的ストレスが種々の健康障害や疾患に関与していることを示唆する証拠が増加するに伴い、in vivo における抗酸化剤の役割に多大な関心が集まるよ
うになった。トコフェロールとトコトリエノールは化学的に密接な関係があるが、生物学的効果の程度には大きな違いが認められている。
本研究は、トコフェロールとトコトリエノールの同族体のラット眼組織における分布に重要な差異があるかについて理解を深めることを目的に行った。
1 日 1 回 5 μL の純粋なトコフェロールあるいはトコトリエノールをラットの各眼に 4 日間投与した。眼の種々の組織を切り離し、トコフェロールとトコトリエノールの
濃度を分析した。
α-トコトリエノール濃度は投与に応じて各組織で著しい上昇を示したが、α-トコフェロールの場合では、有意な増加は認められなかった。γ-トコフェロールと γ-ト
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コトリエノールの眼内への浸透に有意差は認められなかった。
さらに、総ビタミン E 濃度の有意な上昇は、比較的少量(5 μL)のビタミン E の局所投与によって、水晶体、神経網膜、眼杯を含む眼組織で認められたのに
対し、同量のビタミン E を経口投与した場合では、有意な濃度上昇は認められなかった。
従って、トコトリエノールの局所投与は、眼組織のビタミン E 濃度を上昇させるのに有効な方法であると考えられる。
Keywords: ラット眼組織、ビタミン E 濃度、局所投与、経口投与
2003
Ikeda S, Tohyama T, Yoshimura H, Hamamura K, Abe K, Yamashita K. Dietary alpha-tocopherol decreases alpha-tocotrienol but not
gamma-tocotrienol concentration in rats. J Nutr. 2003 Feb;133(2):428-34.
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α-トコフェロール、α-、γ-トコトリエノールを含有するパーム油から抽出したトコトリエノール高含有フラクションを摂取させたラットおいて、α-、γ-トコトリエノールが脂
肪組織と皮膚に蓄積し、血漿や他の組織には蓄積しないことを以前明らかにした。
トコトリエノール代謝の本質を解明するために、α-トコフェロール非含有で α-トコトリエノールあるいは γ-トコトリエノールを摂取させたラットにおける α-、γ-トコトリ
エノールの分布を調査し、α-トコフェロールがそれらの分布に及ぼす影響を検討した。
Wistar 系ラット(4 週齢)に α-トコトリエノールを単独で 50 mg/kg あるいは 50 mg/kg の α-トコフェロールを組み合わせた飼料(実験 1)、γ-トコトリエノ
ールを単独で 50 mg/kg あるいは 50 mg/kg の α-トコフェロールを組み合わせた飼料(実験 2)をそれぞれ 8 週間摂取させた。
α-トコトリエノールは α-トコトリエノール単独を摂取させたラットの種々の組織と血漿中で検出されたが、α-トコトリエノールを α-トコフェロールとの組み合わせで摂
取させたラットでは、飼料に由来する α-トコフェロールの存在によって、それらの組織、血漿中の α-トコトリエノール濃度は低下した(p<0.05)。
しかしながら、γ-トコトリエノールは γ-トコトリエノール単独を摂取させたラットの脂肪組織と皮膚に優先的に蓄積し、γ-トコトリエノールを α-トコフェロールとの組み
合 わせで摂 取 させたラットにおける飼 料 由 来 の α-トコフェロールは、脂 肪 組 織 ・皮膚 中 の γ-トコトリエノール濃 度 の低 下 、γ-トコトリエノールの代 謝 物
2,7,8-trimethyl-2(2'-carboxymethyl)-6-hydroxycroman の尿中排泄量の上昇のいずれも引き起さなかった(それぞれ、p≧0.05)。
これらのデータは、ラットにおける α-トコフェロールは α-トコトリエノールの代謝を促進させるが、γ-トコトリエノールの代謝は促進させないことを示唆している。
Keywords: α-トコフェロール、トコトリエノール代謝、2,7,8-trimethyl-2(2'-carboxymethyl)-6-hydroxycroman 尿中排泄量
2002
Yamashita K, Ikeda S, Iizuka Y, Ikeda I. Effect of sesaminol on plasma and tissue alpha-tocopherol and alpha-tocotrienol concentrations in
rats fed a vitamin E concentrate rich in tocotrienols. Lipids. 2002;37:351-8.
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ラットの食餌に添加したゴマリグナンは、サプリメンテーションを受けたラットの血漿と組織の α-、γ-トコフェロール濃度を、サプリメンテーションを受けなかったラットよ
りも有意に増加させたことが明らかにされている。
今回の研究では、ゴマリグナンの成分であるセサミノールが、パーム油のトコトリエノール高含有フラクション(T-mix)を含有する食餌を摂取させたラットの血漿
と組織におけるトコトリエノール濃度を上昇させるか検討した。
実験 1 では、0.1%のセサミノール添加あるいは無添加の T-mix 20 mg/kg(20T)及び 50 mg/kg(50T)を含有する食餌を摂取させたラットについて、血
漿、肝臓、腎臓のトコトリエノール濃度に及ぼすセサミノールの作用を評価した。
T-mix には 23%の α-トコフェロール、22%の α-トコトリエノール及び 34%の γ-トコトリエノールが含まれていたが、血漿と組織におけるビタミン E のほとんどあるい
はすべてが α-トコフェロールから構成されており(腎臓の 97%から血漿の 100%まで)、α-トコトリエノールはほとんどあるいは全く存在せず、γ-トコトリエノールは
皆無であった。
T-mix にセサミノールを添加すると、血漿、肝臓、腎臓の α-トコフェロール濃度は、T-mix 単独での数値と比べ有意に高くなった。また、セサミノールを添加した
T-mix は、濃度は非常に低かったが、腎臓における α-トコトリエノール濃度を有意に増加させた。
実験 2 では、T-mix とセサミノールの 1 日おきの投与で α-トコフェロールと α-トコトリエノールの吸収が上昇するか調べ、セサミノールを給餌したラットは、同時に
摂取しなかった場合でさえ、セサミノールを給餌しなかったラットと比べ、α-トコフェロールと α-トコトリエノールのレベルを有意に上昇させたことが認められた。
実験 3 では、セサミノール添加あるいは無添加の α-トコフェロールを胃に与え、リンパ液における α-トコフェロール濃度を測定した。α-トコフェロール濃度はグルー
プ間で差はなかった。
これらの結果は、セサミノールは、血漿と組織で α-トコフェロール濃度を顕著に上昇させ、腎臓及び他の種々の組織で α-トコトリエノール濃度を有意に上昇さ
せたが、α-トコトリエノールの濃度は α-トコフェロールと比べ非常に低かったことを示した(実験 1、2)。
しかし、セサミノールが誘発した血漿と組織の α-トコフェロールと α-トコトリエノールの濃度上昇は、セサミノールがそれらの吸収を上昇させなかったことから、吸収
の上昇によるものではなかった。
Keywords: セサミノール、トコトリエノール高含有フラクション、α-トコトリエノール、α-トコフェロール
2001
Ikeda S, Toyoshima K, Yamashita K. Dietary sesame seeds elevate α- and γ-tocotrienol concentrations in skin and adipose tissue of rats fed
the tocotrienol-rich fraction extracted from palm oil. J Nutr. 2001;131:2892-7.
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トコトリエノールの代謝は依然として不明である。パーム油から抽出したトコトリエノール高含有フラクションを摂取させたラットにおけるトコトリエノールの分布を調
査した。食餌性のゴマ sesame seeds がラットのトコフェロール濃度を顕著に上昇させることを以前明らかにした。
本研究では、食餌性のゴマがトコトリエノール濃度に及ぼす影響も検討した。実験 1 でラット(4 週齢)は、α-トコフェロール単一あるいは α-、γ-トコトリエノー
ルの摂取を受けた。実験 2 で、トコフェロールとトコトリエノールを給餌したラットにおけるトコフェロールとトコトリエノール濃度に及ぼす食餌性のゴマの作用を調査
した。
ラットは両方の試験で 8 週間試験食の摂取を受けた。α-、γ-トコトリエノールは、トコトリエノールの摂取を受けたラットの脂肪組織と皮膚に蓄積したが、血漿や
他の組織には蓄積しなかった。食餌性のゴマは、脂肪組織と皮膚のトコトリエノール濃度を上昇させたが(p<0.05)、他の組織あるいは血漿における濃度に
は影響を及ぼさなかった。γ-トコフェロールの摂取を受けたラットのすべての組織と血漿における γ-トコフェロール濃度は極度に低かったが、ゴマの給餌により組織
の多くで上昇した(p<0.05)。
これらのデータは、ビタミン E 異性体の輸送と組織への取込みが異なることを示唆している。食餌性のゴマはトコフェロールとトコトリエノール両方の濃度を上昇さ
せる。
71
Keywords: トコトリエノール高含有フラクション、ゴマ、トコトリエノール濃度
2000
Ikeda S, Niwa T, Yamashita K. Selective uptake of dietary tocotrienols into rat skin. J Nutr Sci Vitaminol. 2000;46:141-3.
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パーム油から抽出したビタミン E 混合物を用い、マウスとラットにおける食餌性のトコトリエノールとトコフェロールの組織中の分布を調査した。Wister ラット(4 週
齢)に α-トコフェロール 48.8 mg/kg、α-トコトリエノール 45.8 mg/kg、γ-トコトリエノール 71.4 mg/kg を含む食餌を 8 週間与えた。ヌードマウス(BALB/c
Slc-nu、8 週齢)とヘアレスマウス(SKH1、8 週齢)にも同じ食餌を 4 週間与えた。
α-トコフェロールは、ラットとマウスの皮膚、肝臓、腎臓、血漿に高濃度に存在した。α-トコトリエノールと γ-トコトリエノールは、肝臓、腎臓、血漿にわずかに検
出されたのに対し、皮膚ではこれらトコトリエノールが相当量検出された。
今回の研究は、皮膚がビタミン E 類似体を識別する能力に関して独特の組織であることを示唆している。
Keywords: パーム油、ビタミン E 混合物、皮膚、トコトリエノール
1999
Yap SP, Julianto T, Wong JW, Yuen KH. Simple high-performance liquid chromatographic method for the determination of tocotrienols in
human plasma. J Chromatogr B Biomed Sci Appl. 1999;735:279-83.
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ヒト血漿中のビタミン E、特に δ-、γ-、α-トコトリエノールを測定するために、蛍光検出を用いた HPLC 法を開発した。
アセトニトリル-テトラハイドロフラン混液(3:2)を用いて除タンパク質した後、血清試料を直接注入した。移動相は水 0.5%(v/v)を含むメタノールで、検
出器を励起の波長 296 nm、蛍光の波長 330 nm で操作し、流量 1.5 ml/min で分析を行った。
この方法の測定限界は、α-、γ-、δ-トコトリエノールについて、それぞれ約 40、34、16 ng/ml であった。この分析方法の絶対回収値は平均で約 98%であった
のに対し、日内、日間の相対標準偏差と誤差は 12.0%未満であった。α-、γ-、δ-トコトリエノールの検量線は、それぞれ 40~2500、30~4000、16~1000
ng/ml の濃度範囲で直線性であった。
Keywords: ヒト血漿、α-、γ-、δ-トコトリエノール
1996
Podda M, Weber C, Traber MG, Packer L. Simultaneous determination of tissue tocopherols, tocotrienols, ubiquinols, and uniquinones. J
Lipid Res. 1996;37(4):893-901.
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トコトリエノール類とトコフェロール類の種々の形のビタミン E について組織特異的な分布が明らかにされ、これらのビタミン E は細胞機能において独自の役割を
担っていることが示唆されている。
個々のトコフェロール、トコトリエノール、ユビキノール(ubiquinol)、ユビキノン(ubiquinone)について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の他に、ビタミ
ン E 同族体とユビキノールには電気化学検出、ユビキノンには直列の UV 検出が感度の高い方法として述べられている。これらの方法を用いて、ヘアレスマウス
の様々な組織における親油性抗酸化物質の分析を行った。
ビタミン E のうち、脳には事実上 α-トコフェロール(5.4+/-0.1 nmol/g;99.8%)のみが含まれ、トコトリエノールは検出されないことが明らかになった。それに反
して、皮膚には約 15%のトコトリエノールと 1%の γ-トコフェロールが含まれていた。他の組織では、α-トコフェロールの含量が高く(20 nmol/g)、他のビタミン E
(γ-トコフェロール:0.2~0.4 nmol/g;α-トコトリエノール:0.1 nmol/g;γ-トコトリエノール:0.2 nmol/g)は合計で約 1%であった。
Ubiquinol-9 の 濃 度 は腎 臓 ( 81 nmol/g ) と 肝 臓 ( 42 nmol/g ) で 最 も 高 く 、 ubiquinone-9 の 濃 度 は腎 臓 ( 301+/-123 nmol/g ) と 心 臓
( 244+/-22 nmol/g ) で 最 も 高 か っ た 。肝 臓 に はレ ドッ ク ス対 が そ れ ぞ れ ほ ぼ同 量 ( ubiquinol-9: 41+/-16 nmol/g; ubiquinone-9: 46+/-18
nmol/g)含まれていた。
測定を行った組織におけるこれらの様々な抗酸化剤の独自の分布は、各組織における抗酸化剤の防御作用を維持するための選択的機構によって決まるこ
とが示唆される。
Keywords: トコフェロール、トコトリエノール、ユビキノール、ユビキノン、分布
1993
Hayes KC, Pronczuk A, Liang JS. Differences in the plasma transport and tissue concentrations of tocopherols and tocotrienols: observations
in humans and hamsters. Proc Soc Exp Biol Med. 1993;202:353-9.
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一定の状況におけるトコフェロールとトコトリエノールの吸収、血漿輸送、組織分布をヒトとハムスターで検討した。
血漿輸送について、トコフェロールは血漿膜成分に関連して LDL と HDL に主に存在するのに対し、トコトリエノールはカイロミクロンのクリアランスと共に血漿から
消失する点で異なっていた。
トリグリセリド豊富リポタンパク質による輸送と一致して、トコトリエノールはトリグリセリドと結合してハムスターの脂肪組織に蓄積した。
トコトリエノールサプリメンテーション中のハムスターにおいて、トコフェロールだけが脂肪組織を除くすべての組織で容易に検出されたトコール類であった。
空腹時のヒトにおいて、血漿トコトリエノール濃度はトコトリエノールサプリメンテーション後有意に上昇しなかったのに対し、血小板 δ-トコトリエノール濃度は倍加
した。
さらに、トコトリエノール摂取は、normolipemic ハムスターにおける血漿コレステロール濃度に変化を及ぼさなかったようである。
トコフェロールとトコトリエノールの輸送、組織中濃度、相対的生物機能は幾分異なり、おそらく無関係であると考えられる。
Keywords: ヒト、ハムスター、吸収、血漿輸送、組織分布、脂肪組織
生物学的利用能
Bioavailability
2012
Fairus S, Nor RM, Cheng HM, Sundram K. Alpha-tocotrienol is the most abundant tocotrienol isomer circulated in plasma and lipoproteins
after postprandial tocotrienol-rich vitamin E supplementation. Nutr J. 2012 Jan 17;11:5.
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トコトリエノール(T3)とトコフェロール(T)は共に天然ビタミン E ファミリーのメンバーであり、ヒトにおいて独特の生体機能をもたらすことが明らかにされている。
T3 は、α-トコフェロール(α-T)より著しく低い濃度であるが、ヒト血漿と循環リポタンパク質中に検出される。T3 のなかでもとりわけ α-T3 は、ナノモル濃度で神
経保護作用をもたらすことが知られている。本研究では、食後の血漿とリポタンパク質における T3 と α-T の運命について評価を行った。
10 人の健常志願者(男性 5 人、女性 5 人)が、T3 非含有食による 7 日間の予備調整後に、ビタミン E[パーム由来高トコトリエノール画分(TRF)526
mg、あるいは α-T 537 mg]の単回投与を受けた。ベースライン時(絶食時)、補給後 2、4、5、6、8、24 時間に採血を行った。各区間で、血漿、高トリ
アシルグリセロール粒子(TRP)、LDL、HDL における T と T3 の異性体の濃度測定を行った。
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TRF 補給後、血漿 α-T3 と γ-T3 は 5 時間でピークに達した(α-T3: 4.74 ± 1.69 μM; γ-T3: 2.73 ± 1.27 μM)。δ-T3 はそれらより早く、4 時間でピークに
達した(0.53 ± 0.25 μM)。
対照的に α-T は、TRF と α-T の補給後、それぞれ 6 時間(30.13 ± 2.91 μM)と 8 時間(37.80 ± 3.59 μM)でピークに達した。α-T は、TRF(70%が
T3 から構成される)の補給後でさえ、血漿、TRP、LDL、HDL において検出される主要なビタミン E 異性体であることが明らかになった。
T3 は絶食状態では検出されなかった。T3 は TRF 補給後においてのみ検出され、その濃度は α-T と比べて著しく低いものであった。ヒトにおけるビタミン E 異性
体間の識別により、T3 の吸収速度が減速し、それらのリポタンパク質への取込みに影響が及んでいることが明らかになった。
T3 の循環流への低吸収がヒトにおけるそれらの生理機能の幾つかに影響を及ぼす可能性はあるものの、T3 には本研究で認められた濃度を下回るレベルで良
好な生体機能が備わっていることが明らかになった。
Keywords: α-トコフェロール、TRF、運命、TRP、LDL、HDL
2010
Zahara AM, Lee CC, Siti Fatimah I, Poh BK, Khairul O, Das S, Mohamad J. Plasma Vitamin C and Tocotrienols changes in response to dietary
supplementation among young male adults. Clin Ter. 2010 Mar-Apr;161(2):121-4.
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抗酸化物質であるビタミン C と E の摂取は酸化的ストレスを低減することが明らかにされている。本研究の目的は、若年男性を対象としてビタミン C とトコトリエ
ノールの補給後に両方のビタミンの血漿中濃度を測定することにある。
募集に応じた合計 64 人の警察官を次のいずれか一つの群に無作為に割り当て、8 週間の補給期間に続き 6 週間のウオッシュアウト期間を設けて調査を行
った。
(a) ビタミン C 500 mg の補給(ビタミン C 群)、(b) Tocovid 200 mg の補給(トコトリエノール群)、(c) ビタミン C 500 mg と Tocovid 200 mg の組合せ
(併用群)、(d) プラセボの投与(プラセボ群)。
併用群では、ビタミン C の平均血漿濃度がベースライン時の 2.86±1.19 mg/L から補給 4 週目 10.37±1.29 mg/L、8 週目 15.63±1.27 mg/L へとそれぞれ
有意な上昇を示した。α-、δ-、γ-トコトリエノールの対応する数値は、それぞれ 9.9±2.5 ng/ml から 104.1±19.8 ng/ml と 112.8±38.0 ng/ml、2.5±0.9
ng/ml から 29.9±7.0 ng/ml と 17.9±4.7 ng/ml、19.2±3.1 ng/ml から 75.2±24.1 ng/ml と 161.7±49.9 ng/ml であった。
ビタミン C 群では、ビタミン C の血漿濃度が有意に上昇した。トコトリエノール群では、逆にビタミン C の血漿濃度がベースライン時の 2.72±0.20 mg/L から
6.80±0.63 mg/L と 8.9±0.77 mg/L へとそれぞれ上昇した。同群の α-、δ-、γ-トコトリエノールの血漿濃度は有意に上昇した。6 週間のウオッシュアウト期間
後、上昇を示した濃度はすべて基底レベルに戻った。
これらのビタミンの良好な生物利用能と補給による増加が本研究から明らかになった。
Keywords: ビタミン C、α-、γ-、δ-トコトリエノール、血漿濃度、生物利用能
2009
Gagné A, Wei SQ, Fraser WD, Julien P. Absorption, transport, and bioavailability of vitamin e and its role in pregnant women. J Obstet
Gynaecol Can. 2009 Mar;31(3):210-7.
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ビタミン E は重要な親油性抗酸化剤の一つである。この用語は自然界に存在する 8 種類の脂溶性の必須栄養素であるトコフェロール類とトコトリエノール類を
指している。これらの異性体の中で α-トコフェロールは最も生物活性の高い形とされ、すべてのリポタンパク質画分に存在が認められている。
妊娠中のビタミン E 欠乏症は、流産、早期出産、子癇前症(しかんぜんしょう)、子宮内発育遅延を引き起こす可能性がある。
本総説では、ビタミン E の吸収、運搬、生物利用能と妊娠中の役割についてのより良い理解につながり、また妊婦におけるビタミン E 補給の考えられる利点を
再評価する必要性を明確に示している最近の所見について取り上げたい。
Keywords: 妊娠、吸収、運搬、生物利用能
2006
Fairus S, Nor RM, Cheng HM, Sundram K. Postprandial metabolic fate of tocotrienol-rich vitamin E differs significantly from that of
alpha-tocopherol. Am J Clin Nutr. 2006 Oct;84(4):835-42. .
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ヒト血漿におけるトコトリエノールの検出は困難であることが分かり、それらは種々の哺乳動物の組織に急速に同化し、再分布すると推測されている。本研究
の主たる目的は、食後のトコトリエノールと α-トコフェロールのヒト血漿及びリポタンパク質における運命を評価することにある。
7 人の健常志願者(男性 4 人、女性 3 人)が、トコトリエノール非含有食による 7 日間の予備調整後に、ビタミン E[パーム由来高トコトリエノール画分
(TRF)1,011 mg、あるいは α-トコフェロール 1,074 mg]の単回投与を受けた。ベースライン時(絶食時)、補給後 2、4、5、6、8、24 時間に採血を行っ
た。各区間で、血漿、高トリアシルグリセロール粒子(TRP)、LDL、HDL におけるトコフェロールとトコトリエノールの異性体の濃度測定を行った。
TRF による介入後、血漿トコトリエノールは 4 時間でピークに達したのに対し(4.79 +/- 1.2 μg/mL)、α-トコフェロールは 6 時間でピークに達した(13.46 +/1.68 μg/mL)。トコトリエノールは TRP、LDL、HDL において等しく検出されたが、トコトリエノールの濃度は α-トコフェロールの濃度と比べて著しく低いものであっ
た。
相対的に血漿 α-トコフェロールは、α-トコフェロールによる処置後 8 時間でピークに達し(24.3 +/- 5.22 μg/mL)、また、TRF と α-トコフェロールの両方の処
置で血漿とリポタンパク質に検出される主要なビタミン E 異性体であることが明らかになった。
トコトリエノールは食後の血漿中に検出されても、α-トコフェロールと比べて著しく低い濃度である。この所見から、絶食状態の血漿中にトコトリエノールは検出さ
れないという過去の観察結果を確認することができる。リポタンパク質におけるトコトリエノール輸送は、リポタンパク質カスケード内の複雑な生化学的経路を辿っ
ているようである。
Keywords: α-トコフェロール、TRF、運命、TRP、LDL、HDL
2003
Yap SP, Yuen KH, Lim AB. Influence of route of administration on the absorption and disposition of alpha-, gamma- and delta-tocotrienols in
rats. J Pharm Pharmacol. 2003 Jan;55(1):53-8.
73
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経口、静脈内、筋肉内、腹腔内経路で投与した α-、γ-、δ-トコトリエノールの生物学的利用能を評価する研究をラットを対象に行った。
静脈内と経口投与、筋肉内と経口投与、腹腔内と経口投与を比較するために、それぞれ双方向のクロスオーバーデザインで三種類の実験を個別に行った。
三種類すべてのトコトリエノールの経口吸収は不完全であることが明らかになった。三種類のトコトリエノールのうち、α-トコトリエノールの経口投与による生物学
的利用能は約 27.7±9.2%で、γ-、δ-トコトリエノールよりも高値を示した(それぞれ、9.1±2.4%、8.5±3.5%)。
このような生物学的利用能の差異は、各種トコトリエノールの総クリアランス速度でも観察された(静脈内のデータから推定)。δ-、γ-トコトリエノールのクリアラ
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ンス速度はそれぞれ 0.24、0.23 L/kg/時と極めて類似した値であった一方、α-トコトリエノールのクリアランス速度は 0.16 L/kg/時で最低値を示した。
興味深いことに、三種類すべてのトコトリエノールは、腹腔内、筋肉内に投与した場合、ほとんど吸収されないことが明らかになった。従って、これら二種類の投
与経路は、あらゆる動物実験においてトコトリエノールの生物学的活性を評価しようとする場合に回避するべきであろう。
Keywords: 経口・静脈内・筋肉内・腹腔内経路、クリアランス速度、吸収、投与経路
薬物送達システム
Drug Delivery System
2010
Sylvester PW, Kaddoumi A, Nazzal S, El Sayed KA. The value of tocotrienols in the prevention and treatment of cancer. J Am Coll Nutr. 2010
Jun;29(3 Suppl):324S-333S.
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トコフェロールとトコトリエノールはビタミン E ファミリーを構成する化合物の 2 種類のサブグループを表しているが、強力な抗癌活性を示すのはトコトリエノールのみ
である。
in vitro 実験系から得られた証拠は非常に有望ではあるが、動物あるいはヒトを対象にトコトリエノールの経口補給を行った研究では矛盾した結果が生じてい
る。しかしながら、最近の研究から in vitro と in vivo の研究の間で観察されたこれらの矛盾点の理由がようやく明らかにされてきている。
血流に乗ったトコトリエノールの経口吸収は、トコトリエノールの濃度が高くなると飽和状態を示し、明らかにダウンレギュレートした担体輸送システムによってその
大部分が媒介されている。
このようなトコトリエノールの経口吸収の限界を解決するために、トコトリエノールの生物学的利用能と治療反応性を大幅に増大する新規のプロドラッグ誘導体
とナノ粒子送達システムを研究者達は開発してきた。
また、トコトリエノールと他の従来型化学療法剤の併用治療が相乗的な抗癌反応をもたらし、このような相乗的な反応はこれらの作用物質がナノ粒子送達
システムでカプセル化されるとさらに高まることが追加研究で実証されている。
まとめると、これらの所見は経口のトコトリエノール投与の限界を明解にし、このような限界を解決して癌の予防と治療におけるトコトリエノールの治療効果を大
幅に増大する新規の代替ドラッグデリバリーシステムを提供している。
Keywords: 経口吸収、生物学的利用能、治療反応性、ナノ粒子送達システム
食品中のトコトリエノール
Tocotrienol Sources
2012
Tres A, Nuchi CD, Magrinyà N, Guardiola F, Bou R, Codony R. Use of palm-oil by-products in chicken and rabbit feeds: effect on the fatty acid
and tocol composition of meat, liver and plasma. Animal. 2012 Jun;6(6):1005-17.
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本研究は、飼料用途で入手可能なフードチェーンに由来する脂肪の共産物と副産物の特性付けに取り組む大規模な欧州プロジェクトの枠組みの中で行わ
れた。
本研究で我々は、パーム脂肪酸蒸留物[超低濃度トランス脂肪酸(TFA)、中・高 2 種類のレベルの TFA を含有する水素添加副産物]の飼料への配
合が、ニワトリとウサギの組織における脂肪酸(FA)とトコールの組成に及ぼす影響を比較した。従って、実験計画には上述した 3 種類のレベルの TFA を含有
する各動物種用に配合した 3 種類の処理を含んだ。
水素添加脂肪の利用により、飽和脂肪酸(SFA)レベルの明らかな差異が 3 種類の食餌処理間で認められた。
TFA 高含有(76 g/kg 脂肪)飼料は、TFA 低含有(4.4 g/kg 脂肪)飼料と比較して組織中のトコフェロールとトコトリエノールの含量低下を招くことが結果
から明らかになったが、これらの差異は常に統計的有意ではなく、また、ニワトリとウサギでパターンが異なることも明らかになった。
肉、肝臓、血漿における TFA 含量は、ニワトリとウサギの両方で、低 TFA 飼料から高 TFA 飼料になるに従って増加を示した。しかしながら、飼料からの転移率
は飼料中の TFA レベルに比例せず、動物種により一定の違いを示すことが明らかになった。
さらに、TFA レベルの高い脂肪を含む飼料では、組織中の SFA、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の組成に顕著な違いが生じたが、ニワトリとウサ
ギ、また、それぞれの組織の種類により異なるパターンが示された。
Keywords: 飼料、パーム脂肪酸蒸留物、トランス脂肪酸、動物種
Walker LA, Wang T, Xin H, Dolde D. Supplementation of laying-hen feed with palm tocos and algae astaxanthin for egg yolk nutrient
enrichment. J Agric Food Chem. 2012 Feb 29;60(8):1989-99.
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産卵鶏の飼料へのサプリメント添加により、卵の栄養価を高めることができる。アスタキサンチン、トコトリエノール、トコフェロールは、ヒトに健康利益をもたらす強
力な抗酸化剤である。
我々は、これら栄養素の産卵鶏飼料への添加が、機能特性における変化を最小限に留めながら、卵黄中の養分含有率の上昇をもたらすという仮説を立て
た。
パーム・トコトリエノール複合体濃縮物とアスタキサンチン含有藻類バイオマスの添加濃度が異なる 4 種類の飼料を産卵鶏(Hy-Line W-36 種)に 8 週間給
与した。卵黄の物理的、化学的、機能的特性について分析を行った。養分含有率が最も高い飼料については、アレニウスのアプローチを用いてこれら抗酸化
剤の安定性の調査も行った。
乳化能と官能特性を除く機能的特性において、異なる処理を行った飼料から得られた卵の間で有意差は認められなかった。卵黄色の変化は 8 日目に最大
値に達した。
トコフェロールとトコトリエノールの取込みは 8 日目まで、アスタキサンチンの取込みは 10 日目まで上昇を続け、その後全ての栄養素の取込みが減少した。飼料
中の栄養素は、卵黄においてこれら化合物の用量依存的関係をもたらした。
トコトリエノールとトコフェロールの伝達効率はピーク値として 0~9.9%、また、アスタキサンチンでは 7.6~14.9%の範囲であった。
アレニウスのアプローチによる加速安定性試験の結果から、種々の栄養素のシェルフライフに有意差が認められ、これらの結果が飼料原料を適切に配合し、貯
蔵するために利用し得ることが明らかになった。
Keywords: パーム・トコトリエノール複合体、アスタキサンチン、卵黄、養分含有率
74
2010
Sookwong P, Nakagawa K, Yamaguchi Y, Miyazawa T, Kato S, Kimura F, Miyazawa T. Tocotrienol distribution in foods: estimation of daily
tocotrienol intake of Japanese population. J Agric Food Chem. 2010 Mar 24;58(6):3350-5.
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トコトリエノール(T3)は不飽和型の天然ビタミン E で、その可能な健康利益(すなわち、抗酸化特性、高コレステロール血症抑制作用、抗血管新生作
用)から関心が寄せられている。何種類かの植物性供給源(例、コメヌカ、パーム油)に T3 の存在が認められているが、他の食用供給源におけるその分布
と 1 日摂取量は依然として不明である。
種々の食品の供給源における T3 の分布を明確化し、日本人の母集団における 1 日の T3 摂取量を推定するのが本研究の目的である。
242 品目の食品と 64 品目の食事における T3 の含有量について、蛍光検出を用いた順相 HPLC によって測定を行った。
T3 の含有量は食品で湿潤重量 1 kg 当り 12 mg まで、加工(調理)した食事で 1 品目当り 1.3 mg までの T3 は検出不能であることが結果から明らかに
なった。従って、T3 の 1 日摂取量は 1 人当り 1.9~2.1 mg の範囲と推定された。
推定された 1 日の T3 摂取量は国民栄養調査(Japanese National Nutrition Survey)で報告されたトコフェロールの摂取量(8~10 mg/日/人)より
もだいぶ低いようである。T3 摂取の増加が治療の観点から重要視される。
Keywords: 食品、分布、日本人、1 日摂取量
2009
Barreira JC, Alves RC, Casal S, Ferreira IC, Oliveira MB, Pereira JA. Vitamin E profile as a reliable authenticity discrimination factor between
chestnut (Castanea sativa Mill.) cultivars. J Agric Food Chem. 2009 Jun 24;57(12):5524-8.
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本研究ではヨーロッパグリ(Castanea sativa Mill.)核油のトコフェロール類およびトコトリエノール類のプロファイルについて検討した。
ポルトガルのヨーロッパグリ 4 変種、Aveleira、Boaventura、Judia、および Longal を選択して調査した。
ビタミン E の決定は同様の基質に対してすでに行われていたが、著者らの知る限りヨーロッパグリの核油での検討は今回が最初である。
主なビタマーは γ-トコフェロールで、この物質は他の天然物にも微量で存在することが多い。
ヨーロッパグリの商品価値の高さのため、得られた結果の統計学的解析もヨーロッパグリの特定の変種の信頼できる指標として使用し、トコフェノールおよびトコ
トリエノールのプロファイルを定義した。
この目的を達するため分散分析を行い、方法の正確度および各分散に対する結果の均一性を評価した。判別分析も実施し、その結果非常に満足できる
結果が得られた。
2 次元での判別分析を基準に、4 変種は各 4 つのクラスターに分けられた。
Keywords: ヨーロッパグリ、γ-トコフェロール
Al-Duais M, Hohbein J, Werner S, Böhm V, Jetschke G. Contents of vitamin C, carotenoids, tocopherols, and tocotrienols in the subtropical
plant species Cyphostemma digitatum as affected by processing. J Agric Food Chem. 2009 Jun 24;57(12):5420-7.
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イエメン中央部で亜熱帯植物種の Cyphostemma digitatum(ブドウ科)は調理用のハーブとして、また食品香料の原料として、伝統医学に使用されてい
る。
ビタミン C、ビタミン E、およびカロテノイドの含量および通常の加工処理による変化について調査した。
カロテノイドは逆相 C30 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および波長 470 nm のダイオードアレイ検出器を使用して測定し、トコフェロールおよびトコトリエノ
ールは順相 HPLC および蛍光検出器(励起波長 292 nm、放射波長 330 nm)によって解析した。
アスコルビン酸は DNP との反応後、分光光度計により吸光波長 520 nm で測定した。
原材料および加工後の食品製品は両者とも乾燥した形態で測定し、原材料には以下のように適量のカロテノイドが検出された:ルテイン 18.89 ± 0.73
mg/100 g、ゼアキサンチン 9.46 ± 0.30 mg/100 g、カンタキサンチン 0.21 ± 0.01 mg/100 g、β-クリプトキサンチン 0.67 ± 0.03 mg/100 g、β-カロテン
14.60 ± 0.46 mg/100 g。
家庭での調理によってカロテノイド含量は劇的に減少し、β-カロテン量だけが調理後も維持された。
同様に、ビタミン C も調理によって含量が減少し、原料中では 49.50 ± 0.01 mg/100 g であったのに対し調理後は 20.30 ± 0.02 mg/100 g となり、調理後
は 41%しか維持されなかった。
対照的に、ビタミン E は原材料中で 82.74 ± 0.63 mg/100 g と顕著に含量が高く、調理後は 101.20 ± 1.38 mg/100 g に増加した。調理後のビタミン E
は他の形態で検出され、その形態は他の原料ではまれであった。
Keyword: Cyphostemma digitatum(ブドウ科)
Kamal-Eldin A, Lærke HN, Knudsen KE, Lampi AM, Piironen V, Adlercreutz H, Katina K, Poutanen K, Man P. Physical, microscopic and
chemical characterisation of industrial rye and wheat brans from the Nordic countries. Food Nutr Res. 2009;53. doi: 10.3402/fnr.v53i0.1912.
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疫学的研究から、全粒穀物の摂取といくつかの慢性病との間に反比例の関係があることが示されているが、全粒穀物の潜在的な予防効果の裏にある構成
要素およびメカニズムはあまり理解されていない。
構造、栄養素の含量、および生物活性があると推測される化合物数に関して、商用ライ麦ふすま製品を小麦ふすまと比較し特性化した。
スウェーデン、デンマーク、およびフィンランドから取り寄せた 6 種の異なるライ麦ふすまを分析し、色、粒子サイズの分布、微視的構造、および化学組成(基部
成分、ビタミン、ミネラル、および生物活性化合物等)の点について 2 種の小麦ふすまと比較した。
ライ麦ふすまは小麦ふすまと比較して、概して緑色が比較的強く粒子サイズは小さかった。
ライ麦ふすまはデンプン含量に大きなばらつきがあり(13.2~28.3%)、これは内乳のデンプン含量のばらつきを反映している。
ライ麦および小麦のふすまに含まれる食物繊維の総量は同等であるが、繊維成分(すなわちアラビノキシラン、β-グルカン、セルロース、フルクタン、およびクラソ
ンリグニン)の相対的比率が異なっていた。
概してライ麦ふすまは小麦ふすまと比較して、セルロース含量が少なく、β-グルカンおよびフルクタンの含量が多かった。
トコフェロール類/トコトリエノール類、葉酸の総量、ステロール類/スタノール類、フェノール酸、およびリグナンの含量に関しては、ライ麦および小麦のふすまはばら
つきが小さく同等であった。
ライ麦ふすまは小麦ふすまと比較してグリシンベタイン含量が少なく、アルキルレゾルシノール類の含量が多かった。
産業生産されたライ麦ふすまの化学組成にばらつきがみられたことから、特にそれが食品中の機能成分として使用される場合、この商品の標準規格化が必要
であることを示している。
75
Keywords: ライ麦、小麦、ふすま
Hassanein MM, Abedel-Razek AG. Chromatographic quantitation of some bioactive minor components in oils of wheat germ and grape
seeds produced as by-products. J Oleo Sci. 2009;58(5):227-33.
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小麦の精錬工業およびワイン醸造所でのブドウ圧搾で生じ、小麦胚芽およびブドウの種に少量含まれる、生物活性を持つ有用な脂質成分の測定を行った。
ステリルグリコシド類(SG)を単離後、TLC によって遊離 SG とアシル化 SG に分画し、HPLC によって 1-アントロイルニトリル類を決定した。さらに 4-デスメチル
ステロールを単離後、誘導体化によりトリメチルシリル誘導体を得て GLC により解析した。
トコフェロール類およびトコトリエノール類は直接 HPLC により解析した。さらに GLC により脂肪酸の組成を解析した。
結果を 3 種の一般的な食用油、すなわちコーン油、ヒマワリ油、および綿実油と比較したところ、小麦胚芽油(WGO)およびブドウ種油(GSO)には全ステ
ロール類が充分量含まれることが明らかとなった。
ステリルグリコシド類分画(SG)についてはこれまで検討されてこなかったが、今回の 2 つの副産物には SG が多く含まれ、遊離 SG、アシル化カンペ/スチグマ
SG、遊離 β-シト SG、およびアシル化 β-シト SG に富むことが明らかとなった。
総トコフェロール類およびトコトリエノール類成分は WGO(1300 ppm)および GSO(380 ppm)中に非常に多く含まれることが明らかとなった。注記すべき
ことに、GSO には心血管系疾患を予防する α-、γ-トコトリエノール類が多量に含まれ、α-、γ-トコフェロール類も充分に含まれている。
また WGO および GSO はリノール酸(ω-6)に富んでおり、さらに WGO にはリノレン酸(ω-3)が多量に含まれている。
Keywords: 小麦胚芽油、ブドウ種油、α-トコトリエノール、γ-トコトリエノール
2008
Sookwong P, Nakagawa K, Nakajima S, Amano Y, Toyomizu M, Miyazawa T. Tocotrienol content in hen eggs: its fortification by
supplementing the feed with rice bran scum oil. Biosci Biotechnol Biochem. 2008 Nov;72(11):3044-7.
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トコトリエノール(T3)は不飽和側鎖を有するビタミン E で、抗血管新生をはじめとする健康利益のあることが明らかにされている。
市販されている鶏卵に含まれている T3 を測定し、飼料に米糠粕油[RBO (rice bran scum oil): T3 を 1.3%含有]を添加して T3 強化卵の開発を行った。
市販の鶏卵には 1 個当り約 0.11 mg の T3 が含まれているのに対し、採卵鶏用飼料に 7 日間 RBO を補給した後では T3 含量が 0.62 mg まで増加するこ
とが明らかになった。
Keywords: 鶏卵、米糠粕油、T3 強化卵
毒性・副作用
Toxicity and Side Effects
2012
Shibata A, Nakagawa K, Shirakawa H, Kobayashi T, Kawakami Y, Takashima R, Ohashi A, Sato S, Ohsaki Y, Kimura F, Kimura T, Tsuduki T,
Komai M, Miyazawa T. Physiological Effects and Tissue Distribution from Large Doses of Tocotrienol in Rats. Biosci Biotechnol Biochem.
2012;76(9):1805-8.
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AIN93G ベースのトコトリエノール(T3)添加飼料を Fischer 344/slc ラットに 13 週間給与を行ったところ、副作用のない安全性プロフィルが明らかになった。
また、多くの組織において検出された T3 のレベルは用量依存的であることも明らかになった。
本実験下において、T3 を添加した濃厚飼料のラットへの連続的な給与は、T3 含有量が採食量の 0.20%未満である限りにおいて安全であろう。
Keywords: AIN93G, Fischer 344/slc ラット, 安全性プロフィル
2008
Tasaki M, Umemura T, Inoue T, Okamura T, Kuroiwa Y, Ishii Y, Maeda M, Hirose M, Nishikawa A. Induction of characteristic hepatocyte
proliferative lesion with dietary exposure of Wistar Hannover rats to tocotrienol for 1 year. Toxicology. 2008 Sep 4;250(2-3):143-50.
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トコトリエノールは、食品や栄養補助食品の商業用途で今や世界中で見出すことのできる抗酸化剤の一つである。
トコトリエノールの長期曝露の毒性作用に関する報告がないため、雄雌両方の Wistar Hannover ラットを対象に、粉末基礎飼料に 0、0.08、0.4、2%のトコ
トリエノールを添加して 52 週間の長期試験を実施した。
トコトリエノール 2%添加飼料の雄ラット群のうち 6 匹が 50 週目に幾つかの器官の出血により死亡したため、雄雌ともに最後の 2 週間は最高用量のレベルを
1%に変更した。増体重の低下は 2%雄ラットで 5 週目から、雌ラットで 10 週目から認められ、試験終了時まで存続した。
高用量のトコトリエノール給餌により、雄ラットでプロトロンビン時間の延長と血清 ALT 上昇、また雄雌両方のラットで血清 ALT 上昇が統計上有意に認められ
た。0.4%以下のトコトリエノールを摂取させた雄雌両方のラットでは、調査したどの毒性パラメータにおいても変化は認められなかった。剖検時、トコトリエノール
2%添加飼料給餌群の雄雌ラットでは、肝表面に複数の嚢胞様結節が肉眼的に明らかになった。
組織病理学検査で、肝細胞結節は、肝細胞索の歪み、肝海綿状変性部位を含むほとんどすべての周囲組織の圧縮を伴っていることが明らかになった。肝
細胞の構成成分は、増殖細胞核抗原を高率に伴って免疫組織化学的に染色された。それにもかかわらず、これらは顕在的異型性 を呈することなく、小葉の
基本構造は無傷のままであった。また、胎盤型グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST-P)に対して一貫して陰性を示した。
従って、新たに分類したものの、腫瘍性あるいは再生を必ずしも意味するわけではない従来の名称、「結節性肝細胞過形成(nodular hepatocellular
hyperplasia)」を提案したい。
しかしながら、肝切片における GST-P の定量解析から、高用量のトコトリエノールを摂取させた雌ラットにおける GST-P 病巣の数は対照群における数値と比較
して有意に上昇していることが全体として明らかになった。
雄雌両方のラットの高用量トコトリエノール給餌群においてのみ結節性肝病変が生じたことを示す本データから、無毒性量(NOAEL)は 0.4%(雄ラットで
303 mg/kg/日、雌ラットで 472 mg/kg/日)と結論する。
Keywords: 長期試験、肝細胞結節、胎盤型グルタチオン S-トランスフェラーゼ、NOAEL、結節性肝病変
1992
Oo SL, Chang P, Chan KE. Toxicological and pharmacological studies on palm vitee. Nutr Res. 1992;12 (1 Suppl):S217-S222.
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Palm vitee の急性毒性を若齢アルビノマウスと Sprague-Dawley ラットで試験した。精製、脱色、脱臭したオレインに添加した palm vitee を 1 日 250、500、
1,000 あるいは 2,500 mg/kg、30 日間摂取させた。対応する対照は、未処理あるいはオレインで処理した実験動物から構成された。
処理群の実験動物はいかなる身体的異常も、あるいは異常行動も示さなかったが、運動活動にいくらかの不活発さが認められた。興味深いことに、処理群の
マウスで体重が有意に増加したのに対し、処理群のラットは 30 日間正常に発育した。
麻酔をしたネコでは、palm vitee は平均動脈圧と心拍数に一貫性のない軽度の変動を及ぼしたが、オレイン単独を注射した場合でも変動性の反応が認め
られた。
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きわめて高用量の palm vitee は、対象となった実験動物において明らかな有害作用を引き起すことはないであろうと結論づけられた。
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Keywords: palm vitee、オレイン、急性毒性、有害作用
ここに記載した情報につきましてはできるだけ正確であるよう務めておりますが、内容について一切の責任を
負うものではありません。確認及び解釈のために原文を参照されることをおすすめいたします。