一般に牛や馬は草食動物、これに対して犬や猫は肉食動物と言われています。読んで字のごとく、牛 は草を食べてエネルギーを得ることができる生き物なのです。 ではなぜ、マグネシウムが不足するのでしょうか。いくつか原因がありますが、大きな原因は牛がマグネシウ ムの少ないまたはカリウムの多い草を食べるからです。 グラステタニーが発症した農家と発症しなかった農家で牧草中のカリウムとマグネシウムの量を測定し、比較し ました(図 1)。その結果、グラステタニーを発症した農家では発症しなかった農家に比べ、牧草中のカリウムが しかし、今日の牛はどうでしょうか? 高く、マグネシウムが低いことが分かりました。 草よりもむしろ、トウモロコシや大麦、大豆粕などの濃厚飼料を多く給与され、やれもっと牛乳を出 せ!やれもっと肥れ!といった飼い方をしていないでしょうか? マグネシウムが少ない草を食べて、グラステタニーになるのは理解できますが、ではなぜ、カリウムの多い草 を食べるとグラステタニーが発症しやすいのでしょうか。それはカリウムを多く摂取すると、ルーメンという1番目 の胃の中でマグネシウムの吸収を阻害するからです。結果として、草の中に十分なマグネシウムが入っていて も、カリウムが多いとグラステタニーになりやすいのです。 でも、ちょっと待ってください。 では、草の中のマグネシウムが少なくなる原因、カリウムが多くなる原因はなんでしょうか?それは牧草地へ 本来、牛は人や犬、猫などが利用できない草をエネルギーに変える技を持っているのです。この牛の の堆肥のまき過ぎです。堆肥の処理に困り、牧草地に堆肥をまき過ぎてはいませんか?ただ堆肥が余っている 技を皆さんは大いに利用しているでしょうか? からといって、まき過ぎてしまったことが牛を病気にしているのです。 この牛の特徴を理解せず、濃厚飼料をやれば牛は乳を出す、牛は大きくなると単純に思っていないで しょうか。逆に、このことが牛にとっては大きな負担となり、病気を引き起こす原因にもなっているので す。また、牛のエネルギー源=濃厚飼料という考えから、良質の草を作り、牛に与えるという基本を忘れ 皆さんが牛に給与している草がグラステタニーを発症しやすいものなのかを判断するためには草の成分分析 を行うことです。分析は飼料会社などに依頼することができます。 その結果、マグネシウムが足りない、またはカリウムが多い場合は何らかの対策が必要です。その場合は NOSAI 獣医師に相談してください。 てしまってはいないでしょうか?? 今回は、草の質が原因で起こる牛の病気の 1 つ 「グラステタニー」 について少しお話しします。 「牛は草食動物」ということを再認識し、良質の草を牛に与え てください。そうすれば、牛は必ず皆さんの期待にこたえてく グラステタニーは簡単に言うと、マグネシウムとい れるはずです。 うミネラルが不足して起こる病気です。マグネシウム が不足すると牛は起きられなくなったり(写真 1)、異 常に興奮したり、痙攣したりします。治療が遅れる と、死亡する場合もあります。 写真1:グラステタニーを発症した牛。 起きようとしますが、お尻が持ち上がりません。 また、全身の筋肉が震えて、汗をかいています。
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