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第四回全日本学生弁論大会

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[序]
彼女は。カッターの刃をチッチッチと出して、自分の手首に当てようとした。その場に
いた男友達 2 人が、カッターを取り上げた。彼女の彼氏は、ぎゅっと彼女を抱きしめて落
ち着かせようとした。その間、私は驚きのあまり呆然として、何も、してあげられなかっ
た。
父親から母親への暴力は日常茶飯事。彼女自身、父親から「お前なんかいらない」
「邪魔
だ」といったひどい言葉を投げつけられました。彼女が泣いていると、父親はニタニタと
笑っていたそうです。どうやら時に性的なビデオを見せられたこともあったようです。
彼女は、児童虐待の被害者だったのです。
[理想社会像]
子どもは親に大切にされることで、他者への信頼感を育みます。人は、他者とのつなが
りの中で生きてゆきます。他者を信頼できなければ、つながりの中で生きてゆく希望を奪
われてしまいます。虐待は、子どもの希望を一生奪っていくことにつながるのです!
虐待を受けても親から自力で逃れることのできない子どもたちを、私たちは、これから
子どもを育てる親として、また、社会を担っていく大人として、救わなければなりません!
本弁論の目的は、虐待を受けた子どもたちを家庭的な愛情の下で育てていくための、仕
組みを提案することです!
[現状分析 1]
では、児童虐待の現状は、如何なるものでしょうか。
今でも、家庭訪問や電話相談など、虐待防止のための政策は多く行われています。それ
でも尚、2012 年の虐待対応件数は 7 万件。前年と比較して 1 万件も増加しました。虐待の
早期発見は増えました。しかしそれでも、完全に虐待を防ぐことはできないのです。
虐待を認知した場合、児童相談所は、緊急性が低い場合には、在宅のままでの支援、高
い場合には、子どもを一時保護します。そして、保護の間に親に改善が見られれば、子ど
もは帰宅できます。しかしながら、帰宅できる割合は保護された子どもたちの 3 割にすぎ
ません。残りの 7 割の子どもたちは、施設や里親の下で、継続的に生活します。施設で生
活する子どもたちの半数以上が、帰宅を望んでいます。しかし実際に帰宅できるのは、1 割
にすぎません。なぜなら、年間 8000 人を超える子どもたちが、再虐待を受けているからで
す。親の状況が改善しない家庭に、子どもを帰宅させることはできません。
[原因分析 1]
ではなぜ、親の改善が見られず、子どもの再虐待が起きるのでしょうか。
そもそも親が虐待を認めず、行政が提供する改善のためのプログラムや、面接に参加し
ないことがあげられます。東京都の調査によると、6 割もの親が児童相談所の指導・支援に
応じていません。指導に応じるように勧告をしても、強制力がなく、効果は上がっていま
せん。
子どもたちは、親元に帰ることを望んでいます!そのためには、親自身が虐待の事実を
認め、養育の状況を改善する必要があるのです!
[第二段階]
現状、指導・支援を受けた親の 6 割以上が状況の改善に向かっています。しかしながら、
そもそも「育児に嫌悪感、拒否感情」を持つ親の状況が改善した割合が 4 割に過ぎないと
いうように、どんなに指導・支援を行っても改善しない場合も実際には存在します。この
ような場合には、再虐待の可能性をぬぐうことは出来ません。
このように、再虐待の可能性があり、親元に帰ることができない場合には、社会的に子
どもたちを養護していく必要性が出てきます。では、社会的養護の現状は、如何なるもの
でしょうか。
[現状分析 2]
社会的養護は施設での養護と里親による養護に分けられます。現在、養護が必要な子ど
もたちの 9 割が施設で養護を受けています。施設では、時間交代制の複数の職員に養護さ
れます。特定の養育者から愛情を得ることができないために、他者への信頼感を獲得でき
ません。このような症状を「ホスピタリズム」と呼びます。このように、虐待から逃れた
としても、子どもたちが望ましい養育環境におかれるとは言えないのです。
[原因 2]
ではなぜ、子どもたちは十分な愛情を受けることのできない、施設養護を強いられてい
るのでしょうか。
原因として、里親の不足をあげることができます。
里親による養育では、子どもは特定の養育者との間に愛情関係を結ぶことができます。
この特定の養育者との愛情関係こそが、他者への信頼感を生むのです。
現在、社会的養護を必要とする子ども 2 万 5 千人に対し、里親として登録している世帯
は 6000 世帯と不足しています。
里親登録世帯は徐々に増加する傾向にあります。しかし、今助けを必要とする子どもた
ちは、里親世帯が十分に増加することを待つことはできません!
[政策]
以上の原因に対して、私は 2 つの政策を提案します!
1 つ目、修復的司法の実施。2 つ目、ファミリーホームの設置支援。
まず 1 つ目の、修復的司法の実施。
修復的司法とは、加害者と被害者の関係性の修復に焦点を当てた司法制度であり、広く
欧米で行われています。虐待の場合には、裁判官、子どもや家族といった当事者、児童相
談所職員、家族が参加を望む関係者、が参加します。実際の手順としては大きく 3 段階に
分けられ、①情報共有段階②私的討議段階③合意段階の順に進めます。情報共有段階では、
参加者の間でケース状況の共有化と、児童相談所職員による虐待における専門的情報の説
明を行います。私的討議段階では、与えられた情報の下で、家族のみで養育計画や、必要
とする支援などの意思決定を行います。そして合意段階では、家族の意思決定をもとに、
児童相談所職員が助言を行い、そのうえで修正を行い、家族の意思決定を参加者の中で合
意していきます。
こうして参加を強制しながらも、家族の回復力を信じ、今後の育児や必要な支援につい
て親自身に決定を行ってもらうことで、より養育状況の改善が見込めるのです。
次に 2 つ目の、ファミリーホームの設置支援。
里親制度の一環として、里親 1 世帯に対し、子どもを 6 人まで養育することのできる「フ
ァミリーホーム」という制度があります。しかし現在 170 戸ほどしか存在せず、十分に広
まっていない状況です。「ファミリーホーム」制度は施設と異なり、養育者が固定されてい
ることから、
「ホスピタリズム」を引き起こさないと考えられ、より子どもにとって好まし
い環境と言えます。
ではなぜ、ファミリーホーム制度は広まらないのでしょうか。東洋大学による里親登録
世帯へのアンケートによると、2 割の世帯が「今後ファミリーホームを設置したい」と回答
しました。
「現在設置に踏み切れない理由」としては、
「ファミリーホームの基準を満たす
住居がなく、増改築が必要であること」が一番多く挙げられました。
そこで、ファミリーホームの設置を促進するために、住居の増改築費を全額援助します。
過去の設置の際の記録から試算して、ファミリーホーム 1 件の設置に 1000 万円の援助が
必要になると見込めます。6000 世帯のうちの 2 割、つまり 1200 世帯での設置のために 120
億円の予算を用いて全額援助します。
こうして懸念材料を解消することで、1200 世帯がファミリーホームを実際に設置すると
見込むことができます。それぞれが定員である 6 人の子どもたちを養育すると、7000 人を
超える子供たちがファミリーホームで暮らすことができます。また、ファミリーホームを
設置しない里親世帯がそれぞれ里子を一人養育すれば、
合計で 1 万人を超える子供たちが、
より家庭に近い環境で生活できるのです。
1 点目の政策で、より家庭に帰れる子どもたちが増えること、また、現状里親世帯は増加
していること、の 2 点を考慮すれば、より多くの子どもたちが家庭的環境の中で、愛情い
っぱいにはぐくまれることができるのです。
[むすび]
冒頭の彼女は、家族との切っても切りきれない縁の中、いまだに父親と和解も、話し合
いすらも、できていません。彼女の心の傷は今も癒えず、時に絶望し、「死にたい」と口に
します。
絶望の中に生きる子どもたちを、これ以上生み出してはいけません!親から自力で逃れ
られず、それが「虐待」だともわからない子どもたち!社会が、私たち一人一人が、責任
を持って取り組まねばならない問題です!
「生きてゆきたい」と希望を持てる社会を!!
ご清聴、ありがとうございました。
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