第2回仙台市国家戦略特区(地方創生特区) ソーシャル・イノベーション・フォーラム テーマ「エリアマネジメント」 平成 27 年 7 月 15 日(水)16:00~ 仙台市市民活動サポートセンター 地下 1 階市民活動シアター ○出席者一覧 NO 氏名 所属 役職 1 遠藤 新 工学院大学 建築学部 まちづくり学科 准教授 2 西田 司 株式会社 オンデザインパートナーズ 代表取締役 3 馬場 正尊 株式会社 オープン・エー 代表 4 福屋 粧子 東北工業大学 工学部 建築学科 准教授 5 山崎 亮 株式会社 studio-L 代表 ○要約 「エリアマネジメント」をテーマとして、 「公共空間をエリアプロデュースする際の 留意点」、 「民間組織の組成及び行政の支援のあり方」という 2 つの課題について討論 が展開された。 「公共空間をエリアプロデュースする際の留意点」については、決断から実行まで のスピードが速く、かつ公益性が維持できる民間企業に任せることの必要性が議論さ れ、そういった企業の育成についても語られた。また公共施設の市民予約システムを、 屋外空間にも適応してはどうかなど活発な議論が交わされた。 「民間組織の組成及び行政の支援のあり方」については、行政がエリアマネジメン トに関するリスクを細分化し、行政と民間が担うリスクを明確にすることで、ひとつ のチームとして、エリアマネジメントに取り組めるのではないかとの意見が出された。 また、ある自治体が公共施設を運営する企業をコンペで選んだところ、資金的耐力と 公益性をもつ企業が複数名乗りをあげた事例が紹介された。このほか、まちづくりの 議論をする際に、医療・福祉分野など、分野横断的に議論する必要性も語られた。 1 ○開会宣言 畑中:それでは、 『第 2 回仙台市国家戦略特区(地方創生特区)ソーシャル・イノベーシ ョン・フォーラム』を開催させていただきます。私は本日の司会を担当させていただきま す、仙台市プロジェクト推進課の畑中と申します。どうぞ、よろしくお願いします。それ では、開催にあたりまして副市長の伊藤よりごあいさつ申し上げます。なお、本フォーラ ムの進行につきましては、伊藤を座長として進行させていただきたいと存じます。伊藤副 市長、よろしくお願い致します。 伊藤副市長:皆さん、こんにちは。仙台市副市長の伊藤でございます。 仙台市は、国家戦略特区に指定されたことを受けまして、区域計画を作らなければいけ まえん。その区域計画を作るにあたって、有識者の皆さんから貴重なご意見を頂戴して、 それをまとめあげて計画に落としていくことを考えています。 われわれの特区ではテーマを三つ設定致しました。社会起業とエリアマネジメントと女 性活躍です。今回のフォーラムは 2 回目でエリアマネジメントに絞って皆さんからお話を 伺います。このフォーラムのいいところは、場所をいろいろな所に設定して、議論するこ とです。普通の審議会と違って、役所が説明して、それに対してそうですというような会 ではありません。皆さん方からご意見をいただいて、それをわれわれがどう受け止めるか を模索していくフォーラムであります。1 回目はまだ開業していない東西線の国際センタ ーの駅の 2 階で開催しました。きょうは、このサポートセンターの地下で行います。もう 一回仙台で予定しているのは、定禅寺通りのプロムナードの中を想定しております。東京 でも 3 回開催しまして、皆さんからいろいろな必要なご意見をいただくということが趣旨 でございますので、よろしくお願い致します。 それでは、早速、本日お集まりいただきました皆さんに 1 人ずつ、それぞれ 1 分程度で 簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。プレゼンテーションを行っていただく予定の 遠藤新さん、西田司さんにつきましては、プレゼンの中で、後ほど自己紹介まで含めてお 願いできればと思います。それでは、福屋粧子さんからお願いします。 ○出席者自己紹介 ◆福屋 粧子 氏 福屋:東北工業大学の建築学科の福屋と申します。私は建築学科に勤めて 6 年目ですが、 その間に八木山のほうのまちづくりに関わりはじめまして、震災の前からなのですが、駅 前の顔づくりを研究会で一緒にやっております。それは、大学の研究室でやっているので すが、それと並行して震災後には、石巻市で多くの大学の学生が関わった震災活動をやり ました。そういった視点を生かしながら、エリアの価値の向上が考えられるかどうかとい うことで、きょう参加させていただきます。よろしくお願い致します。 2 ◆馬場 正尊 氏 馬場:東北芸工大の馬場です。こんにちは。私は、エリアマネジメントという意味では 10 年間ぐらい一生懸命リノベーションの仕事をしてきたので、その視点からということで考 えています。あと、東京アール不動産という不動産仲介のウェブサイトをやっていて、山 形にもあるのですが、まだ仙台アール不動産はありません。何か作れれば、誰かやらない かなと思っています。今、エリアという意味では、まちづくりの次の概念としてエリアリ ノベーションという言葉を使い始めました。そういうことをきょうお話しできればと思い ます。よろしくお願いします。 ◆山崎 亮 氏 山崎:山崎です。遅くなりまして。いわゆる会議だろうと思ってきたら、階段の所で拍手 が聞こえて、何をやっているのだろうと思いました。入ってきたら、観客も居るし、これ は会議ではないのかと思ったら、副市長が「会議っぽいことはやめよう」というようなこ と言っていて、とんでもない所に来てしまったなと思ったのです。あわてて資料を見てい たら、すごいです。色とりどりの、多分後で説明があるのでしょうけど、説明しなくても いいぐらいです。仙台はどうなってしまったのでしょう。すごいなという気持ちになって いるところです。私はコミュニティデザインをやっていて、馬場さんと同じ東北芸工大で コミュニティデザイン学科という、まちづくりに関して学ぶような場をつくりました。あ とは大阪にスタジオエルという事務所を持っています。きょうはがぜん、楽しみになって きたので、いわゆる会議みたいなモードと違って、友達というか知り合いが多いので。な んて楽しそうだと思っています。よろしくお願いします。 伊藤副市長:ありがとうございました。仙台市、何か変わるかもしれないなという予感が しますか。 山崎:します。 伊藤副市長:ありがとうございます。 それでは、本日のテーマ、エリアマネジメントについて説明とディスカッションに入っ ていきたいと思います。取りあえず時間があるものですから、円滑な進行だけはご協力い ただきたいと思います。それから、きょう、遠藤さんと西田さんにはあらかじめプレゼン をお願いしたいということで、準備をお願いしました。本当にありがとうございます。そ の前に、エリアマネジメントに関して、先ほど山崎さんが「面白いかもしれないな」と言 った資料を作った若者が 1 人、市役所に居りますので、若くもないかもしれませんが、都 市整備局の都市開発部都市再開発課の洞口から説明をさせたいと思います。よろしくお願 いします。 3 ○本市状況等説明 洞口:それでは、仙台の今回のエリアマネジメントの国家戦略特区のほうの説明をさせて いただきます。 説明する前に仙台市の都市課題、都市計画とは何かというところから説明させていただ きます。今、仙台、新聞でも一時期出たのですが、東北のダム機能が低下しているといわ れています。現状なのですが、東北 5 県から優秀な若者を仙台に集めまして、ここで皆勉 強して育ったところが、卒業後は東京に去ってしまうという問題があります。特にこちら の資料を見ると、東北学院大学の学生さんが東北中からかなり集まっているのですが、卒 業後は半分以上が首都圏に流れてしまうという課題があります。また、仙台に入ってくる 人の出身地は、東北 5 県、あとは仙台都市圏以外の宮城県ですが、宮城県、福島県を除く 4 県の 80 パーセント以上の市町村が急激な人口減少が予測されている都市といわれていま す。 次に、長期スパンの目標がどういうことかといったときに、今まで東北から仙台、そし て東京という図式があった中で、I ターン者、U ターン者、J ターン者を受け入れられるよ うな新しい仙台ハブを作っていかなければいけないと思っています。ここにサーモンが載 っていますが、サケのように戻ってくるような街にならなければいけないと考えておりま す。 もともと仙台市が持っている魅力とは、三陸があり、温泉、スキー場、海水浴場、こう いった所 30 分、60 分圏内で行けるような立地になっていることです。東北各都市に気軽 に遊びに行けます。また食べ物もおいしいですし、東京に比べて家賃が安い。こういった ところが、そもそも、今、持っている仙台の魅力となっております。ただ、これから仙台 は、新しい魅力づくりをしていかなければいけません。都市の魅力の底上げをどのように していくかというときに、今後の政策、重点化の方針として、起業や雇用、子育て、学生、 若者の活力が挙げられております。その中で、そういったものをどういうふうに伸ばして いくか。今、仙台の都市資源をあらためて再評価してみましょう。そして、その都市資源 としてわれわれが考えているのは、いわゆる空き地、空き家などの遊休不動産、公共空間、 低未利用地の駐車コインパーキングです。あとは仙台の顔といわれるペデストリアンデッ キや定禅寺通り、青葉通り、自然資源、文化資源、こういったものをきちんと再評価して リノベーションしていく。どのようにリノベーションするかというと、先ほど言った今後 の政策、重点化方針です。仙台が伸ばしたいコンテンツや、充実させたいコンテンツと都 市資源を掛け合わせることで、いわゆるアクティブグラウンドと書いたのですが、仙台で 多様な暮らしの機会を与える場をつくっていこうと考えています。 ただし、 課題としては、 そういうアクティブグラウンドが、アーケードに集中しているところが課題となっており ます。アーケードのような所に集まってしまっているようなものを、徐々に都市資源を見 4 つけ出して、そういったところをアクティブグラウンドへ変えていくような目標を考えて います。 そして、ここにマップが出ています。この T 字の箇所。これがアーケード商店街になり ます。そして、都市資源を見直すと書いたのですが、仙台市には見て楽しい、美しい定禅 寺通りがあるのですが、なかなか使われていない状態です。普段毎日使われているような 場所ではないです。こういった所をどう利活用していくか。あとは、青葉通り、公園など の公共空間と平地のコインパーキングなど、上手に連携しながらエリア全体の価値を高め ていくようなエリアマネジメントを仙台市は考えていかなければいけないと思っておりま す。いろいろな公共施設やコインパーキングなどを載せているのですが、そういったもの と上手に連携する。先ほど馬場さんが言いましたエリアリノベーション、そういった考え も近いと思っています。また、こういった大きい道路よりは通行量が少ない道路と連携し 合いながら、裏路地のエリアマネジメントも考えられると思っております。 最後に仙台洛中洛外図という絵が描いてあるのですが、街の中に公共空間を活用するア イデアが少しずつちりばめられています。いわゆる啓発ではないですが、こういう物を見 て、どういう使い方ができるのだろうということを考えるための一つの指標になればいい と思いまして、作成しました。今回の議論の資料としてご検討いただければと思います。 それでは、仙台市からのプレゼンを終わらせていただきます。 伊藤副市長:ありがとうございました。広瀬川がアマゾン川ぐらいの幅になっております けれども、縮尺は別と致しまして。本市の特区の関係の資料につきましては、この楽しい 絵の下のほうにもいろいろございますので、これは説明させないことにしました。皆さん が後でご覧いただければと思っております。続きまして、早速プレゼンテーションをいた だきたいと思うのですが、15 分程度で遠藤さんからお願いできますでしょうか。よろしく お願いします。 ○プレゼンテーション ◆遠藤 新氏のプレゼンテーション 遠藤:はじめまして。工学院大学の建築学部まちづくり学科の遠藤といいます。普段は都 市デザインやアーバンデザイン、都市空間いろいろあるのですが、この場所もう少しこの ようにデザインし直したら人が集まる、このようにしたら魅力的になってにぎわいが出る、 そのようなことを計画したり、アドバイスしたり、そのようなことを東京や東京以外でや っています。 今日は、プレゼンテーションの機会をいただいてしまいました。プレゼンテーションを するとなるとつい固く考えてしまって、資料も固く作ってしまったのですが、どうも違う ということに 10 分前に気付きまして、これをどう柔らかく話をしていこうかと考えていま すが、まずは 15 分お付き合いいただきたいと思います。 5 リノベーションまちづくりというものを仙台が目指していく中で、道路空間や遊休不動 産、そういった都市の資源をいかにマネジメントしてにぎわいをつくっていくのかという ことが、今後の大きな戦略になっているとのことです。エリマネというものを国家戦略特 区の中で、仙台の一つの売りにしていこうと。ヒントとして道路空間の活用という話があ りましたので、きょうはその辺りの話を掘り下げるような話題提供をしてみたいと思いま す。 道路空間というものなのですが、これは教科書的な内容で非常に恐縮ですが、一般に三 つの機能があると言われています。交通機能、土地利用の誘導機能、空間機能です。今、 われわれが興味を持っているのは、この三つ目にある空間機能と呼ばれるところで、道路 は歩いたり車が走ったり、あるいはまちづくりのためのインフラであったりというだけで はなくて、その場所が遊びの場所、社交の場所、交流の場所であるという機能を持ってい るわけです。ただ、車社会というところで、どうしても自動車中心の生活にわれわれが慣 れてしまっていて、頭の中も生活パターンもそのようになってしまうと、どうしても道路 空間を交流の場所、遊びの場所として使うということが 2 次的なものになってしまう。当 然ながら、自動車の利用は非常に大事で、そこからわれわれは様々な効用も得ているわけ です。しかし、ここで 1 回立ち止まって、交通を円滑にするための道路空間は必要なのだ けど、それプラス、遊びの場所、交流の場所としての道路空間とは、一体どうあるべきか、 そのためにまちづくりとしてどのようなことを考えていくべきかということを今日は意見 交換をしていきたいと思っています。 人間にとっての快適な道路をわれわれはどのようにつくってきたのか。道路空間は、多 様な人が関わり合って、そのバランスの上にできている。そこには利用者側の視点と管理 側の視点があると思うのです。管理側の視点からすると、道路は遊びの場所、交流の場所 であったとしても、度を過ぎた遊びになるとそれは迷惑です。周りのお店などに迷惑を掛 けるようなこともご法度です。それ以外に、いくら道路が遊びや交流の場所といっても、 寝泊まりされるような状況になってくると、周囲の建物等に入りづらくなるなど不利益が 出ることもあります。実は道路は公共空間で自由に使える空間なのだけれども、そこには 前提条件があって、公共空間の秩序を乱す存在は基本良くないです。それから周辺の土地 の価値を高めていくために、それを損なう活動は良くないという前提がある。その前提条 件の上で道路は自由に使われている。管理側は基本条件に合わない活動をいかになだめて いくかという視点から、道路空間を使っているわけです。 一方で利用者側の視点に立つと、一般的には自分にとって道路がいかに楽しくなるかと いうことで、自分の目線から道路空間を分節したりつなぎ合わせたりして使っている。よ くあるお店の道路への商品のあふれ出しも、お客やお店の視点から「このようになってい たほうが道路は楽しい、お客さんとの交流も増える」という思いでやっているわけです。 これらが管理側の視点とうまくバランスするところで、道路空間というものが成り立って いるのです。道路には遊びや交流についていろいろな活動が見られるわけです。それが場 6 所の価値を高めるものか、損なうものか、その場所の秩序を維持するものか、乱すものか という軸を作って、道路上で見られる遊びや交流やにぎわいらしきものをマッピングした ものがこちらの図です。道路上にはいろいろなにぎわいがあるということです。来る途中 アーケードの所を通ってきたのですが、アイスキャンディー屋さんがあって、ここに大行 列ができていたのです。こういうのも一つのにぎわいで、こういったいろいろなにぎわい が積み重なって町のにぎわいができているということだと思うのです。ただ、にぎわいに はいろいろあるのだけど、マップの左下あたりのストリートファイト、スケボー、ジベタ リアン、こういうものはやはり忌み嫌われるものだったりするのです。一方で、われわれ は、道路は、ストリートカフェのようなものが並んでいて、にぎやかであってほしいと願 っているわけです。マップの右上のほうに行けば行くほど、道路空間では価値と秩序が共 有された道路空間としてのアクティビティというものであって、逆に左下のほうに行けば 行くほど、道路空間がいろいろな価値観や使い方があふれていて、管理者の視点に立つと 道路空間が破たんするような活動といえるのです。エリアマネジメントとは、右上に位置 する活動をどうやって道路空間に増やしていくのか考えることだと思うのです。個人的に は、許容されるべき道路の活動は右上の領域だけにとどめておくのか、もっと広げていけ ないかということを、ぜひ考えるべきだと思っています。特にマップの左側です。場所の 価値を高めるものは、まだあると思います。 アメリカのサンフランシスコで、最近はやっている道路空間を遊び、交流の場として変 えていく、ペーブメント・トゥ・パークス・プログラムを紹介します。道路には歩道と車 道があるのですが、車道の停車帯の部分を停車帯の単位でこのように人がたまれるような 場所に変えていくということをサンフランシスコ市が 4 年ぐらい前から始めています。道 路率で言うと市内は 25 パーセントぐらいの道路がある。この道路がほぼ自動車のためだけ に使われている、あるいは全く使われていない場所もたくさんある。これは非常にもった いない状況なんです。そうであれば少しでも人間のための空間、遊びや交流の場所として 使っていくほうが、市民にとっては幸せではないかという発想から始めたのがこのプログ ラムです。パークレットという名前が付いています。ニューヨークではタイムズスクエア の辺りで交差点の所を広場化しています。実はサンフランシスコのプログラムはニューヨ ークのものを習って導入したのですが、パークレットと呼ばれるものはサンフランシスコ 独自の進化形のようなものです。最近アメリカの色々な都市がこういうことをやり始めて います。 特にボストンとフィラデルフィア、 シアトルが最近頑張ってやっているようです。 このパークレットというものがサンフランシスコ市の中でどのようにやられているのかと いうことを、掘り下げてお話ししたいと思います。 パークレット設置にはマニュアルがあって、ホームページからダウンロードできます。 その中には、目標が五つ掲げてあります。近隣の交流を育成する、歩行者の安全性と活動 の強化、道路の潜在的なイメージを変える、地元のビジネスを支援する、自動車以外の交 通を促進するという目標があって設置しているのです。一つの特徴はこれが完全にパブリ 7 ックスペースとして提供され、パブリックスペースとして使わなくてはいけないというも のです。具体的には、一つにはここで商売をしてはいけない。これを設置するのは、この 前面のお店が全部お金を出して民営のような形でこれを提供する。ただしパークレットの 中で商売をしてはいけない。これは完全にパブリックに開かれているので、お茶を買って テイクアウトしてここで飲むのはオーケーだという性格のものです。このイタリアンのお 店の場合にも、このような場所をつくっていて、この前でテイクアウトしたピザなどを食 べているわけです。パブリックスペースであることによって、いろいろな人がここに集ま ってきて、お店と関係ないけど、何となく立ち話をしたり、座り込んだり、その延長で、 お店のお茶を買って飲むというようなアクティビティがこういう所で生まれているのです。 先ほども言ったように資金は全部パークレットを設置する人が負担することになってい ます。この間の 3 月の段階で、市内に 48 カ所、このパークレットが設置してあります。こ の 2 年ぐらいで急激に増えました。 このような路上駐車するスペースがあります。これを 1 個単位で市に許可を出してもら って、先ほどのようなパブリックスペースを作るということをやっています。一応道路上 に作るので、細かい性能要件があるのですが、それを満たせばどのようなデザインにして もいいということで、自由なデザインのパークレットが普及しているのだと思います。 1 個設置するのに、基本費用と調査が 991 ドルで、駐車メーター撤去するのが 650 ドル で、年間の更新が 221 ドル掛かります。ちなみに調べてみると同じぐらいの面積でストリ ートカフェのようなものをサンフランシスコで作ると、大体 1286 ドルぐらい掛かります。 年間更新料で比較するとパークレットは比較的お安く、このパブリックスペースを売り出 すことができる。 日本の場合は、 実は専有面積にその土地の路線価の比率を掛けたりして、 値段が決まっていくのですが、 サンフランシスコでは、路線価みたいなものは反映されず、 面積に対して単価が決まっていて、こういうものが設置できる。逆に言うと土地の価値の 高い所ほど、こういうものをやりたくなるようなインセンティブがあるということです。 それが公共空間として使える場所であれば、なおさら安くできるという状況がサンフラン シスコにはあるわけです。 さっき、お店が公共スペースを出しているという話をしましたが、48 カ所のうち 41 カ 所が飲食店舗の前にあります。1 軒だけ住宅の前に個人で作っています。基本全部お店の 人がやっている。お店の人にとって、自分の店舗の前にパブリックスペースができると、 イートインスペースのようなイメージで、恐らくこういうものが受け入れられているのだ と思います。 こういうことは、いきなり始まったわけではなくて、サンフランシスコにはもともとこ ういった道路空間を交流の場所として使っていくという、アランジェイコブス(カリフォ ルニア大学バークレイ校都市計画教授)のグレート・ストリート研究以来の理論的な歴史 がありました。設計事務所のリーバーが、イベントで路駐スペースに時間借りをして、芝 生を張って、テントを張って、イベントをやるということを 10 年前にやりました。それが 8 一つのきっかけになって、道路空間に遊びの場所をつくっていくことを、真剣にやり始め たのです。ベター・ストリート・ポリシーを市議会が採択して、道路空間を遊びの場所、 交流の場所として、交通機能以外の使い方にもバランスよく使えるようにしようというこ とを定めています。それに基づいて、2010 年にベター・ストリート・プランを作って、具 体的な施策の頭出しをしていった。デザインガイドラインを作っていた。その中で、パー クレットというプログラムが広がってきたのです。最初はプラザづくりから始めたのです が、その後、3 カ所ほどパークレット事業をやって効果を検証して、これはいけるという 話になり、2011 年以降の本格実施につながっていきました。この図は、パークレットの現 在地をマッピングしてみたのですが、緑色で塗られているのが、いわゆる BID の場所です。 BID とは、きょう話題にしているエリマネのアメリカ版です。そういう所以外に、相当広 まっているのです。そのような状況があります。 これはサンフランシスコの一番の観光地のケーブルカーが上がっていく所です。駅があ って、乗り場があって、ユニオンスクエアという町の一番の中心の公園がある。ここの通 りは観光客も多い所です。ここは地元のエリマネ組織が、このようなパークレットを整備 しています。アウディからお金を出してもらって、それを基にしてつくりました。この場 所のパークレットで大事なことは、日常的にきれいに維持管理をしていくことです。サン フランシスコに限らずアメリカはホームレスも非常に多く、道路空間を汚く使う人たちも 非常に多いです。その中でどうやってきれいに使っていくのか。そのことが場所のイメー ジを変えていく。場所のイメージを変えていく一つの仕掛けとして、このパークレットが 象徴的な存在としてあるのです。 年間 3 万 3000 ドルも維持管理と修繕に掛けているらしい です。相当なお金を使っています。 いろいろな写真を見せます。これは自転車で来る人が多くて、その人たちのコミュニテ ィになっているお店です。正面から見るとこのような感じになっていて、何となく緑の中 で休むスペースがある。この雰囲気はパブリックスペースとして非常に大事だと思います。 これはスーパーマーケットの前のパークレットで、この人は編み物をやっています。車が 縦列駐車されている 2 台分がパークレットのスペースになっていて、このスーパーの前庭 のような使われ方をしています。こちらのパークレットは少し街外れにあって、寒々しい 所なのですが、カフェの前にパークレットが置かれていて、ここだけ人が集まっていると いう状況です。こちらのパークレットは場所は忘れましたが、このように子どもも遊んで います。このパークレットは休憩スペースのデザインに車の車体を用いています。駐車ス ペースらしいと言えば、そうとも言えるわけで、とにかく様々なデザインがあるのは楽し いと思います。ここはカフェですが、皆思い思いのことをやっている。坂道を生かして段々 にうまく分節され、パブリックスペースとして個人の居心地の良さがあります。引きで見 るとこのようになっていて、車が並んでいて自転車も並んでいて、その中にきっちり収ま っています。実は引いて全体を見る視点と、パークレットの内部に居て見る視点とでは全 然イメージが違っていますが、内部の視点で見たときに何となくたまり場になっている雰 9 囲気があることが大事だということと、引きの視点で全体を見たときに道路の秩序がきち んとあるということ、この二つ大事だと思うのです。これはまた別の所で、これも駐車場 に収まっています。これは、フレンチ・レストランの前のスペース、毎朝、このようにテ ーブルや全部出し入れして、この場所をきちんと使いこなしているわけです。テーブル、 チェア、パラソルが置かれているパターンは非常に多数ありますが、それらのファニチャ を取り除いても、パークレット自体にきちんと座る場所が設置されていることがデザイン マニュアルに規定されているのです。メインストリートから 2 本ぐらい入った路地の所に は、こういうサンドイッチ屋さんがあって、昼になると人が集まるのです。よく見ると、 普通に皿でランチを食べていて、このお店から提供されているのではないかという感じも するのですが、あまり深く突っ込まないほうがいいかもしれません。 いろいろとパークレットを見て歩いた中では、二箇所だけものすごく怖い場所がありま した。これはその一つです。サンフランシスコの都心のテンダーロインという非常に怖い エリアがあるのですが、そこも果敢にパークレット作っています。作ってみると、非常に 怖いお兄さんたちがここに寝転がったり、奇声を発したりしていて、やはりうまく使われ ない状況があります。パークレットを作ればうまくいくというのではなくて、道路の在り 方、道路に対するイメージを変えていくというトータルな話の中で、こういうものを作っ ていかなければならないことが分かります。 2014 年に市が調査していて、パークレットは周辺の歩道よりも活動量が多く、特に飲食 利用が多い。あと、周辺の歩行者の量に限らず、パークレットには人がたまるという傾向 があるらしいのです。あとは、何らかの金銭的な消費をしている傾向があるらしいです。 それからアクセスする人は徒歩、自転車、公共交通が大半です。そのようなことがあって、 道路空間を通した人のアクティビティ、車に依存したところから変わっているのかなとい うのが分かります。 まとめの一つです。日本でパークレットのような道路の広場を導入していくとすると、 まずそもそも仙台、日本の道路空間にこういうものがいかに受け入れられていくのかとい うところから考える必要があると思うのです。われわれ日本人には道路での活動、道路に 座るとか、道路での遊びそのものに対して、アメリカとは違う意識があると思うのです。 こういったストリート遊びみたいなものが大衆化していくような大きな文化的土俵の中で パークレットを広めていくような進め方でないと、多分日本では難しいかなと思う。 それから、道路を占用するということに対しては、やはりそれなりの公益性が必要にな る。パークレットの場合は、公共的な利用を大前提として設けることによって、これをな し得ているところがある。アメリカのパークレットはお店が設置している場合が大半なの ですが、これを設置する運営主体にとってのメリットを明確にしていかないと、当然なが ら普及しないわけです。日本で置き換えると、例えばコンビニが最近イートインスペース を中に作っていますが、駐車場のないコンビニで狭い所は、お店の前にこういうものがあ ってもいいと思います。 10 きょうの議論はエリマネ組織による道路のアクティブグラウンド化という話です。アク ティブグラウンドにしていくために、まず大事なことは、車のための空間を人間のための 空間に転換していくようなイメージづくりと、それができる場所を戦略的に探せるかとい うところがあると思います。 低利用の停車帯、 使われていないような中央帯のような所は、 いろいろあるような気がするのですが、にぎわいがどこに必要か、どこならにぎわいが生 じ得るのかということはきちんと見極めてやる必要がある。エリマネという話の中では、 道路プラス道路周辺の空き地との一体的利用みたいな広げ方をすることが、非常に可能性 があると思っています。さっきも出てきたコインパーキングや道路の占用の話です。この 辺は後で議論します。 先に行きます。ストリートのにぎわいをつくることの中心にあるのは、公益的なにぎわ いなのですが、それをある場所に重点投資をして、いろいろな手法を使って、いかに人々 のにぎわいを作り出すのかをやっていくのがエリマネです。ただ、もう一つ大事なことと して、そこだけやっていても、つまりその点だけできて終わりということになってしまっ ては、まちづくりになりません。点を含めたエリア全体のにぎわいをもたらすための道路 使いの文化を広めていくような面白い取り組みを次から次へと仕掛けて、結果としてエリ ア全体のストリート使いの文化を育てていくようなことをやっていく必要があると思うの です。 長くなりましたが、以上です。ありがとうございました。 伊藤副市長:遠藤さん、ありがとうございます。 質問やご意見は、またディスカッションの場で一緒にやっていきたいと思いますので、 続けて西田さんからお願いしたいと思います。 ◆西田 司氏のプレゼンテーション 西田:よろしくお願いします。西田です。 遠藤さんが素晴らしい講義をやっていただいた後に、すごく柔らかい感じのスライドを 用意してしまいました。皆さんのお手元にお配りしたのは、3 日前ぐらいにお出しした物 なのですが、その後に、先ほど洛中洛外図を作られた洞口さんから「柔らかくしてほしい」 と言われて、きょうのスライドは結構柔らかい感じになっています。一応内容の齟齬はな いのですが、順番が変わっているので、こちらのスライドを見ていただきながらやってい ければと思っています。 私は、横浜で建築会社オンデザインをやっているのですが、それ以外にも仙台で WE プロ ジェクトという東西線のプロジェクトのプロデューサーをやらせていただいたり、石巻で まちづくり会社石巻 2.0 という組織を一緒にやらせていただいたりしています。町を使っ ていく、つくっていくときの更新の仕方のようなことに興味があって、ソーシャル・イノ 11 ベーション自体が私の興味にとても合っていて、出ている皆さんの話を聞きながら学びた いと思って、やって来ました。 パブリックというのが一つのテーマだと思うのですが、日本で公共というのは、社会全 体に対しての公という意味があります。公という字は、上がハで下がムなのですが、これ は家っぽいです。昔の家は天皇や朝廷のことを指していて、公共というと、行政というよ り国というイメージがあります。それに対してパブリックの語源になっているラテン語の ピューブリクスは、人々の物という意味があって、人々の物の中には、皆の物、要は皆と いうのは誰なのかというと、私やここにいらっしゃる皆さんなど、一人一人が含まれてい るというのがあります。この立ち位置が、これから公共空間を考えるときにすごく大事だ ということが、私の考えるポイントです。 もう一つ、 パブリックライフという屋外生活の楽しみを 40 年間実践しているデンマーク のコペンハーゲンでやられている建築家のヤンゲールさんが言われている話の中に、私た ちが町をつくり、町が私たちをつくるという、すごい名言があります。デンマークのコペ ンハーゲンは、ストロイエという歩行空間が町のど真ん中に張りめぐらされていて、観光 客として私たちが行くと、そこでゆったりと商売をなし得ていたり、昼寝をしていたり、 カフェの前で日なたぼっこをしていたり、そういう風景を見て、なんて住みやすい町なの だと思うのです。でも、40 年前は、そこは全部車交通で、商業者さんたちが、歩行空間に したら搬入が大変ではないかという、どこでもよく聞く軋轢がありました。それをワンス トリートずつやってきた結果、今ではデンマークの町の中心部は歩行空間になったという 歴史があります。今、世界の住みたい町ランキング 1 位はコペンハーゲンです。 きょうの公共空間を考えていくときに、開くという言葉を使っているのですが、公共空 間はそもそもどうやったら使っていけるのか、実践していけるのかということをご紹介し たいと思います。 まず、公園です。よくこの看板を見ると思います。犬が禁止であったり、自転車が駄目 だったり、ボール遊びが駄目だったり、スケートボードが駄目だったりということがあり ます。子どもが来るとうるさいとか、犬にかまれたとか、そういう住民のかたがたのご意 見に対応すると、 皆の場所のはずなのですが、少し使いづらくなるという難点があります。 これは、アメリカのニューヨークのマディソンスクエアパークで、ここにはハンバーグカ フェがあって、その周りでサラリーマンの人たちがお茶を飲みながら休憩をする。あと、 ここで売り上げた売り上げの一部がきちんと公園を維持管理するお金に回っていくという 仕組みも作られています。町の中の憩いの空間にピクニックに行って日なたぼっこをして 子どもたちを遊ばせる、その行為自体が公園を維持管理していくという運営にもつながっ てくる。これからの公園を考えるときに、市民が楽しめる、自分たちが楽しむ、そのフェ ーズからもう少しきちんと考えていくことができるのではないか。意外にそういう実践も 日本では起こっているのではないかというのが、きょうの主題です。 12 これは、つい先日、6 月に神戸の東遊園地という公園で、市民から寄贈された本をオー プンライブラリーという形で、近くの廃校になった小学校から書棚を借りてきて、公園の 一部に書棚を並べて、ここに来ると本が読めるというイベントを 2 週間やりました。ここ では、そのライブラリーに合わせてカフェが展開されて、ブックカフェ的な場所が生まれ たり、その中にファーマーズマーケットといって地産地消の農家さんたちがそこに来て、 地域の食材を提供したりということをやっていたりしました。彼らのコンセプトはアウト ドアリビングと呼んでいるのですが、この町の中に自分の書棚があったり、ダイニングが あったりしていくと結構気持ちいいのではないかと思います。写真が気持ち良さそう。こ れはすごく重要だと思うのです。日常化してく中で、公園を少し違う目線で見てみようと いう取り組みが社会実験で行われています。これは商工会などが後ろでサポートして、神 戸元町大学のチームが全体の運営をしています。 こちらは東京で行われた、すごく変わった事例で、アーバンキャンプ東京というプロジ ェクトです。これは防災キャンプです。震災が起こって、その瞬間、東京に居る人も帰れ なくなってしまうのです。でもいきなり災害が来たときに、備えなく、町中で放り出され て泊まるのはなかなか難しいから、町の空地を活用して、キャンプをやってみようという 試みです。それは防災のための備えなのだけれども、意外と夜、町がどうなっているのか を知れて、キャンプ好きの人は山に行かなくても町中でできるという気持ちでできて、非 常に人気です。やはりオフィス街として利用している人たちで、普段はなかなか地元にな じみがないけれども、このような所でキャンプしてみると災害時に、夜、不安にならない で済むと感じたという話をいただいています。 私が普段横浜で活動しているのですが、その事務所の周りで横浜市がベースになりなが ら、地元の人々がオープンスペースを活用する取り組みを幾つかやっているので、ご紹介 します。これは日本大通りという所の地元の商店主さんたちが、オープンカフェ実行委員 会を作って、横浜市と一緒にテストランしていくという企画です。2005 年に国交省が道を 活用した地域活動円滑化のためのガイドラインを出していて、その中で、横浜市と日本大 通り活性化委員会が、道路占有と景観の向上に対する協定を結んでいます。このエリアで 地代を横浜市に払っていますけれども、このエリアでオープンカフェをやりたければ、日 本大通り活性化委員会にきちんと所属してくれればできる。ここで売り上げ向上していき ながら、地域の魅力、歩行空間が少し大きい通りを活用していくと、歴史的景観が少しあ るエリアなので、建物の中もすてきなのですが、建物の外のレンガ壁などが非常にすてき な中にカフェがあると、街の緑を一体にしたそういう気持ちいい空間ができるのではない か。 これは模型写真ですが、左側が日本大通りで、右側日本大通りの延長上に横浜公園とい う公園があって、そこには横浜スタジアムという球場があります。横浜スタジアムが 3 年 前にコミュニティボールパークというのを始めて、ベイスターズの社長が私と同じ年で、 町中の人たちを球場に呼び込むためには、ベイスターズファンを増やすよりも、もっと公 13 園を利用してもらったほうがいいのではないかと面白い取り組みを始めて、少し参加させ ていただいて、一緒にやっています。日本大通りと横浜公園、海まで延びていくと象の鼻 パークがあるのですが、ここの一帯にもう少しスポーツをベースにした町の楽しみ方があ るのではないか。やはりランニングやウオーキングをしている人たちは、肌で町を感じて いるので、その人たちが感じている町の使い方が、実は非常にクリエーティブなのではな いかという立ち位置に立っています。例えばその延長で、公園の中でヨガをする。横浜は 最近トライアスロンをやっているのですが、街中の海まで行くと、泳ぐには汚いのですが、 水辺もあり、そういう町をアウトドアフィールドとして読みかえると、意外に街の公共空 間をそういう目線でもう一回考えていける。幾つかポートランドやカリフォルニアのエン シニータスなどに行くと、町の角々にここまで何キロという小さい標識があるのです。そ うすると、そこまで歩くと、3 キロ歩きました、5 キロ歩きましたということができる。例 えばそういうことを健康づくりしたい人たちのトレーニングにも組み込むと、街の風景を 見ながら、街を活動の場としていく人たちのコミュニティを増やせるのではないか。あと は、ただ運動するだけでは楽しみが少ないということで、去年から球場の前の公園を横浜 市さんと一緒に一時使用の許可を取って、ベイビアガーデンというビアガーデンを始めて、 野球場の中で野球を見る楽しみ方だけではなくて、盛り上がりを外側でも感じながら、野 球ファンではなくても夜楽しめるようになっています。あと、これはスタジアムの取り組 みとして、スタジアムの中が巨大な壁で見えないので、搬入用の大きな扉を開いて、公園 に来た人たちに野球選手がキャッチボールをしている風景を見てもらうことで、お子さん に、野球に興味を持ってもらおうという実践をしています。同じようにスタジアムのお店 があって、今まではユニホームや応援グッズを売っていたのですが、これを今年やり変え て、公園に来た人たちにちょっとしたピクニックシートを紹介したり、一応野球なのです が、グローブの皮を使った小物を展開したり、あとここでコーヒーを紹介したりすること によって、公園全体の便益性を高めていくような取り組みをしています。ベイスターズと いう企業、あと横浜スタジアムという株式会社、そういう所と連携をしながら、一体にな って公園フィールド、アウトドアフィールドの楽しみ方を考えていこうという取り組みを やっています。 幾つか他都市の事例で、参考になりそうなものをご紹介します。有名な事例なので、皆 さんもよくご存じだと思うのですが、これは富山の市街地再開発事業で道路を付け替えて いって、 道路空間をギュっとまとめて広場にしたグランドプラザという、 富山の事例です。 これは 365 日使われる広場というので、非常に有名で、ここはまちづくり富山という TMO が運営を担っています。一応富山市でにぎわい広場条例を作って、底地を 1 日 20 万円ぐら いで貸しているのですが、富山市かもしくはまちづくり会社さんがこの団体だったら応援 したいというところに貸すときは、もう少し安く貸すモデルを作っていて、非常に町の人 たちの憩いの場になっています。まちづくり富山は、年間ですごい事業費で、確か 6 億円 ぐらい稼いでいるのですが、彼らはグランドプラザを運営しているので有名だったのです 14 が、 つい最近はコミュニティバスを始めたり、あとは他の都市施設の指定管理をやったり、 今は大体 12 名の職員でこれ自体の事業をやっています。あと、それ以外に町中メイクアッ プサポーターズというのは、 町中の学生さんたちを登録させて、町でイベントをやったり、 新しい場所を使ったりするときに、学生さんたちが自分たちでやりたい、いろいろな取り 組みを楽しんでくれるプレーヤーとして、人材バンク的な活動もやっています。 こちらは、同じく、公園というより通りなのです。札幌大通公園。定禅寺通りと見た目 が似ていて、幅が広いですが、105 メートルの幅のうち、65 メートルが公園化されている という札幌の事例です。ここでは大通りすわろうテラスという札幌大通公園に平行に細長 い常設のオープンカフェを設けています。これは、先ほどの日本大通り活性化委員会が道 路のガイドラインに合わせて作ったのではなくて、都市再生整備推進法人にして、こうい うところで飲食や物販ができるというスキームを使って、これは天神でもやっているのと 同じモデルですが、オープンテラスの取り組みをここで規制緩和して、認可していくとい う流れをつくっています。彼らは、ここで稼ぐと書いてあったので、スキームとして底地 を貸してリーシングするというモデルだけではなくて、町中ファシリティマネジメント事 業という、町中の複数のビルを登録してもらって、その人たちのゴミ出しなどを一元管理 して、掃除会社さんにそれを安くしてもらって、その差益をまちづくり会社の運営に入れ るとか、 あとカモンチケットといって、先ほど駐車場が仙台市もあると言っていましたが、 市内の駐車場で、大通り公園に来やすいところの駐車場を幾つか連携させて、そこを使っ てもらっている人たちのパーキングチケットみたいなものを最寄りの飲食店さんと組んで、 そこで飲食店さんから 200 円、駐車場会社さんから 300 円みたいな、差益の部分で、やは り共通駐車券事業みたいなもののやり取りの中にお金を発生させたりしています。 最後は毛色が違うのですが、石巻でやらせていただいている商店街の活動で、今までの 富山や仙台や横浜に比べると規模は非常に小さいのですが、ここはもともと震災が起こる 前からシャッター街になっていて、若者が少なく、起業できる環境が少ないということが あって、そこの中に入って、今、まちづくり会社、商店街をどうやり変えていくかという ようなことを取り組みとしてやっています。 マニフェストは世界で一番面白い町をつくろうという、すごく大きく出ているのですが、 要はやっている人たちが自分たちのモチベーションを高めていこうということを土着的に やられるといいのではないか。どうやってそういう町をつくっていくのかといったときに、 再開発も当然、今、起こっているのですが、そういう再開発ができるまでの時間が結構長 いので、震災復興の中で商店主さんたちと一緒にできることは、もう少し自分たちでつく るとか、参加型でつくるとか、あとはつくる人を増やすとか、そういう目線が大事なので はないかと感じています。最初は場所をつくって、シェアオフィスみたいな場所をつくっ たり、あとは高校生が町中でパソコンを学んで、そこでアプリ開発をして起業をする、最 近だとプロジェクションマッピングをやるようなチームを作ったり、場所づくりが必要で すが、そのうちもう少し公共空間、外部空間を活用しないとまずいのではないかと思って 15 います。結構空き地が多いのですが、その空き地を映画館にしてみようとしています。映 画館は人口 7 万人に 1 軒といわれていて、 石巻市の中心部は 3000 人しか住んでいないので、 全然もたないのですが、1 カ月に 1 回だけだったら、十分の事業として回るのではないか ということで、これは東映のドラえもんを持ってきていただいたり、幾つか半券を購入し て、その中で町の中にちょっと気持ちがいい映画館を作ったりする。あとは、商店街を活 用しようということで、商店主さんたちを職業体験場みたいな感じで位置付けて、子ども たちが和菓子屋さんで和菓子を学んだり、ラジオ局の DJ になって紹介したり、東京にキッ ザニアという商業体験スペースがあるのですが、それを町中の商店主さんを巻き込んで、 商店街を使った教育事業としてやったりする。あとは空き地と道が一体的にもう少し使え ないかという話があったので、つい最近新しくカフェをやりたい、週末だけお店をやりた いという人たちを集めて、コンテナでマーケットを作って、先ほど遠藤さんのスライドの 中でスケートボードが危ないみたいな話があったのですが、ストリート型でやりたい人た ちを集めてスケボーパークを作ったり、起業できるような小さいコンテナボックスを入れ たり、あとは本当にテントだけ掛けてそこでオープンカフェをやったりということをやっ ています。これは石巻という中心部、今まで物販と飲食だけでやってきたのを、もう気持 ち広げていくと町の集まり方、人の集まり方みたいなものが、町の中心をつくる活性剤に なるのではないかということを非常に意識しています。人が集まるときには、いろいろな 理由があると思うのです。そのいろいろな理由に着眼して、できる人たちと一緒にそれを 作っていこうということを全体としてはやっています。やはりいろいろな人たちが使える 知恵を持っているので、そういうことを集めていくことで、町のパブリックと公共空間が 変わっていくといいなと考えています。 ありがとうございました。 ○ディスカッション 1.公共空間をエリアプロデュースする際の留意点について 伊藤副市長:西田さん、ありがとうございました。 お二人とも、本当に興味深いプレゼンをしていただきました。ここからディスカッショ ンに入ります。今のお二人のプレゼンにもありましたけれども、地域経済がこれから人口 減少で縮小していくのですが、公有地、民有地の別なく、エリアにどのような魅力を持た せて価値を向上させるかが、われわれに突き付けられた課題になっていくわけです。これ は時代が進むにつれて、より大きく深刻な課題になっていくと思います。そのときに、エ リアのプロディースを戦略的にやることが大事ですが、その際に、特に公共空間、これは 非常にいろいろな規制があって、やりにくい場所なのですが、これをどのような形でプロ デュースしていくか、そういうことについて、留意すべきことをプレゼンのなかったお三 方にお話をいただきたいと思っています。馬場さんが先ほどからマイクを持っておられる ので、馬場さんから行きます。 16 馬場:前のめり感が出ていました。 仙台市が、なぜ特区になったかということを考えると日本のどこもやっていない絶対新 しいことをやってくれというメッセージに他ならないと思うのです。しかも、今、仙台で 起こることは、日本が、世界が注目するはずなので、かなり理想として掲げる風景のレベ ルを高い所に設定して、この洛中洛外図のように、それに向かって行政も民間も全力でそ の風景を実現するためにはどうしたらいいかというモードになることが、絶対に重要だと 思うのです。 副市長がこのように乗りのいい司会をしていること自体、すごいチャンスだと私は思っ たのです。普通はないことです。そうなったときに、もう今のプレゼン自体で、結構幾つ かの大きいヒントは出ていて、私は仙台にいろいろ通っています。定禅寺通りというシン ボリックな美しい通りがあるわけです。あの道路とそれにくっ付いている公園、そこから 出ている幾つかの支線をシンボルエリアと設定して、そこで徹底的に勝負していくべきな のではないかと思っています。既に仙台は今、七夕やジャズフェスなどやっていますが、 もう練習は十分にできていると思うのです。一時使用許可などいろいろな組み合わせでや っていると思うのですが、あのエリア全体を、エリアマネジメントの特区に指定して、道 路自体をどれだけ活用できるか、公園自体をどれだけ活用できるかということの実験をや り続ける。そのゴールはそれを常設化していく。道路の活用、道路で利益を上げて、その 一部をきちんと道路の維持管理に充てる。他のエリアに再投資する。公園で上がった利益 を公園に再投資する。 そしてそれを他の公園にも波及させるという、 お金の流れも含めて、 それを徹底的にやることを戦略的にやったほうがいいのではないかと思います。 もう一つは、それをドライブさせるための組織です。私は、公益性の高い民間企業がい いのではないかと思っていました。ベイスターズがうまくいっているのは、はまりどころ として美しいのは、公益性の高い民間企業だからだと思うのです。特にベイスターズは横 浜の市民球団なので、もともとパブリック性を持っている組織なのです。どうしても何と か協議会といって、全員が賛成しなければいけないような組織にしてしまうと、何も動か ないのです。地域の人たち全部入れると駄目で、少ない人数できっちり経営できて、決断 のスピードが速いけれども、公益性を維持できるという、エリアマネジメントできる民間 企業をいかにつくるかというところが、すごく重要だという気がします。 アメリカ版の BID は地元の土地の所有者がつくる会社で、経営は別となっています。と ても洗練された経営をしているのです。日本はお金を出したやつが口も出そうとします。 それをいかにさせずに、もっと洗練された経営ができる仙台版 BID をどの体制でどうつく るか。ルールも行政と協議して決める、民間がボンボン参加できるようなコンペを運営す るようなことをどんどん仕掛けていく。その辺りを、シンボリックなエリアを決めてやっ ていければ、いいのではないかなと、私は思っていました。 17 伊藤副市長:ありがとうございます。いずれもう一回回っていきますので、その間に構想 を温めていただきたいと思います。私には回って来ないだろうと思っている福屋さんにす ぐ行きます。お願いします。 福屋:馬場さんがおっしゃった話がすごく壮大で、仙台中を一つのエリマネでやるという ような、それをやり遂げる仕組みが重要だということはまさに同意します。一方で、私は 私事にするとは何かと思っていて、つまりそのような公共空間を使うことは会社を立ち上 げた人たちはそれでいいし、遊びに来る人たちもそれでいいのだけれども、もっと自分が 使いたいときにどうしたらいいのかということについて、私事になる人たちがたくさん居 ると、その後、使う人たちが育っていく種ができると思うのです。6 年前に、私が東北工 大に行ったときに学生団体があって、馬場さんも前にいらしたことがあると思いますが、 カラーズワークショップというものを毎年やっているのです。それで、普通であれば大学 祭の企画なので、大学の中でやるのです。今でも「大学の中でやれ」と言われるのです。 でも学生たちは「町でやりたい」と言ったのです。でもお金もないし、やったこともない。 でもどこか使えるかもしれないから「探してきたら」と言って、彼らが探してきたのが、 アユミブックスの裏と、この定禅寺通りの公園なのです。アユミブックスの裏は民間企業 の公開空地なので、そこの許可が出れば使えるのです。定禅寺通りは、実は公園課が管理 しているから、申請を出せば使えるということが分かって、それでその年は定禅寺通りの 所を使って、最後の学生の町歩きのワークショップのプレゼンテーションをそこでやった のです。それは私にとっても大きなブレイクスルーで、使う仕組みがあるのだということ に気が付いたのです。それがもっとたくさんの人に伝わっていれば、使う人が増えるので はないかと思うのです。仙台市では、公共の施設、例えばメディアテイクなどそういった 所を使う仕組み、市民予約システムがありますが、ああいうものがもし屋外の空間に対し てもあったら、どんどん使いたい人たちが増えてくる可能性があると思って、そういう仕 組みがぜひ欲しいと思っています。 伊藤副市長:ありがとうございます。山崎さん、しっかりメモしておられたのですが、よ ろしくお願いします。 山崎:メモはしたのですが、自分が何をしゃべるかは何も考えていなくて、何をしゃべり ましょうか。今までの話は全部面白かったです。私の立場からは、やはり人の話です。ど ちらも必要だと思うのですが、今、お話があったように、スキームや事業モデルなど、ど のような組織をつくったらいいか、どういうお金の回し方をしたらいいか、これは、現在 であれば、一通り何種類か選べるようになっています。ある程度調べれば、事例が載って いる本や今日の先生がたのお話をまとめれば、取りあえず仙台が選び得るスキームはこの 8 種類ではないかと、見えてくるような気がします。見えてくるのですが、それは当事者 18 ではないわれわれが、これがいいのではないかというのは、少しお節介のような気がして います。例えば、このスキームがうまくいくのではないかと、タナカさんやハシモトさん に選んでもらわないといけないような気がしますので、誰がやるのか、どうやるのかを同 時に話し合わないといけません。個々に集まって具体的に誰がどうするという部分が抜け たまま進んでしまうと、できたらいいねと皆が思って、抽象的にやる気のある人だけが盛 り上がってしまう。もちろんそれは無駄だと言っているわけではないです。どちらも必要 で、それをやっていく中で、やる気が湧いてきて、こんなに可能性があるなら私がやると 思う人たちがどんどん出てくる可能性はあります。なので、これは対策としてやってきた ほうがいいが、早いうちに、私ではなくて、ここに誰か別の人が座ったほうがいいです。 そのハシモトさんかタナカさんか誰かが座って、 「そのやり方うまいけど、私の知り合い関 係では難しくて、むしろ 3 番目に言ってくれたやり方のほうがいいと思う」というような 具体的な話を進めていく。これは西田さんが、今やっている石巻の事例が近い気がしてい ます組織が増えているように見えるけど、ほとんど皆仲間であるというようなことがあり 得るのです。プレーヤーが見えてきたら、どういうスキームをそこですればいいのか、ス キームを当てはめようと思ったときに、事例も全然知らないと今だという時に、当てはめ られないから、集めておいたほうがいいし、根回ししておいたほうがいい。これ、両方同 時に進めるには、どうしたらいいだろうなということを、今、感じるのです。この人を消 さなければいけないです。遠藤さん消して、西田さん消して、私がまず消えたほうがいい のですが。ここに仙台にやる気のある主催者の人たちが入ってくるような仕組みがもう少 し必要になってくると思います。 伊藤副市長:ありがとうございます。 私の知り合いに「今度エリマネをやる」と言ったら、その人から直ちに「仙台、屋台復 活するのか」という話が出てきました。屋台も戦後、道路端にありましたが、これがどん どん少なくなっていっているのです。それには別の理由もありますが。遠藤さんの先ほど のスライドを見たら、ポジティブなほうに屋台があったのです。その辺を含めて、遠藤さ んとしてどのような規制の外し方や広げ方をすると楽しいかということを、少しお話しい ただければと思います。 遠藤:屋台がポジティブな所にマッピングされていたのは、私が屋台が好きだからという バイアスが掛かっています。どのように変えていったらいいのかという話ですが、私は専 門が都市計画なので、都市を俯瞰する視点から考えなければと、ずっと思っていたのです が、きょうのこの図も含めて一つ気になったのは、意外と仙台のアーケード街が皆にディ スられているのではないかということです。本当は何十年もかけて、仙台のアーケード街 を皆で育ててきて、一応東北では誇れるようなにぎわいの場所になったのです。そこには 目をやらずに、公園、道路、その周りを見ていることが、少し切ないなと思いました。た 19 だ、それには理由があると思うのです。実際にアーケード街は人が居るから、そこをにぎ わいの場所としてさらに進化させていきましょうと考える。アーケード街の通りを進化さ せるには、路地にはみ出すような賑わいづくりをやってみるとか、いろいろ考えてみるの だけど、いずれも今のアーケード街でやっても楽しくないなという気がしてきて、最終的 にやはりディスられる対象になっていくのかなと思います。アーケード街の悪口を言って いるわけではなくて、一般論に置き換えてもいいと思うのですが、例えば 10 年ぐらい前に あった中心市街地活性化みたいな話も色々なことが動かなかったのです。都市の中心にあ る商店街を変えようとすごく頑張ってきたけど、様々なしがらみや制約にがんじがらめに なっていて、変わらない。大事なことの決定にすごく時間がかかるとか。都市の歴史を見 ると、今は中心の場所かもしれませんが、もともと中心は別の所にあったはず。大体どの 都市も、それまでの中心じゃない場所がある時期から突然面白くなっていって、20 年ぐら いかけて面的に様変わりする。その後安定期に入り、衰退して中心が別の場所に動く。面 白くなる場所というのは、そのときの中心ではなくて、そのときの端に必ず生まれるので す。ニューヨークもセントラルパークの辺りは端だった所が、マンハッタンではなくて、 ミッドタウンのほうに新しいああいうものができていったわけです。日本の都市にしても、 古い下町みたいな所と新しい町がある。今のオフィス街とか不動産の中心になっている所 は古い下町ではないはずです。面白い場所は必ず都市のエッジに生まれていく。やはりそ こにはしがらみが少なかったり、いろいろなチャンスが比較的やりやすい状態で埋まって いたりするというところだと思うのです。思ったのは、仙台の中のエッジになっている場 所としてのストリートや公園に、先ほど言った具体的な人を探して「今チャンスです、こ こで屋台とか面白いことをやりませんかと」いうような働きかけをする、中心と周縁の見 方を少し変えて戦略を立てることも必要なのではないかと思います。洛中洛外図ともうひ とつ、洛外洛中図を作ってみる。エリマネと言っているのは、実はオフィシャルに何かを やろうとしているのだけれども、 オフィシャルなものにはたいてい制約やしがらみがある。 もう少し周辺を見ると、もっと自由な意味での公共空間があって、そういうところでまず 手を挙げて自由に動ける人を支えるような後押しをしてやるということがあってもいい。 少し都市に対する見方を変えて、10 年後はここがひょっとしたら中心になるかもしれない というぐらいの見立ての中で、うまいエッジを拾っていくようなエリアマネジメントが考 えられないかということを、話を聞いて思いました。 伊藤副市長:ありがとうございます。西田さんからは、プロデューサーというかまちのデ ザイナーというか、そういうような観点からここをこのようにすればもっと面白くなるな というアイデアがあれば、お願いしたいと思います。 西田:絶対屋台の流れだろうと思って、屋台のことしか考えていなかったのです。 20 伊藤副市長:屋台も含めてでいいです。 西田:いいですか。私は、最近、屋台とても熱くて。仙台はもともと屋台が有名なのです か。 伊藤副市長:もともとすごく多かったです。 西田:そうなのですか。それは絶対復活したほうがいいです。最近、横浜にファブラボと いう、慶応大学の田中浩也先生がやっている、いろいろな人がデータを自由に使えて、自 分で物づくりができるというスペースがあって、そこで田中先生に呼ばれて「西田君、考 えていることがあるのだ」と言われて、相談を受けたら、屋台だったのです。何かという と、今までの屋台は、お店をやろうといったら、やはりお店をやったことがある人がやり ますとか、そういうプロ的な屋台が多いと思うのです。ラーメンだったらラーメン屋さん がやるみたいな、商売の延長の屋台が非常に多いのです。それもいいと思うのですが、も う少し、普段はサラリーマンをやっているけれども、週末だけ何かしたいとか、あとは、 本当に自分の趣味は年間何日間かだけ季節限定でしかできない。たこ揚げとかそうです。 そういうのを、スーツケースぐらいの大きさの屋台に詰めて、町中に出ていって、広げて みよう。今まではそれを作る機能がすごく難しかったのですが、ファブラボみたいないろ いろな人がオープンソースで、データも出してくれているから、そこに行ってそれをやれ ば、自分で作れる、やろう、ファブラボは屋台だみたいなことを言っていたのです。すご く面白いことを言っているなと思いました。 例えばコーヒーを自分がふるまいたいと言っている人の半径 3 メートルぐらいではコー ヒーのパブリックスペースができるのです。昔、縁台で将棋をしているおじいちゃんと一 緒で、将棋をしている人の周りには将棋好きが集まるみたいな。中国ではマージャンを屋 外でやったりしますが、そういうことが起こっていって、それはその人の空いている時間 に職業としてではなくて、プラスアルファでやればいいではないか。本当にそれでもっと 売り上げが上がれば、それこそ新寺のマーケットとか、道でやられている。私はリサーチ が好きで、これは誰がやっているのだろうとかすぐに調べるのですが、あれはすごい人が 来るのです。ああいうことは意外にやりたいと思っている人が多いから、屋台という概念 はプロではなくて、もう少し個人に宿って、それを集めていくと、先ほどみたいに、町中 に面白い場所ができるよというのを、最近敏感になっています。 プロデューサーの話は、先ほどご紹介したやつは、きょうのお題目の中に、組織につい てと資金調達についてと書いてあったので、一応紹介したのですが、石巻 2.0 をやってい て、私がすごく感じるのは、町を面白くしているプレーヤーは意外に町全体を見ていない のです。本当に町角でスケートボードやったら楽しいのでスケボーパークを作って、子ど もたちを呼んで、スケボー教室をやっている、その風景に皆ひかれるのです。でも、もち 21 ろん、それは 1 カ所ではなくて、カフェも物づくりもお年寄りが参加できることも必要だ し、とやっていくと、ネットワークをしていく仕組みが必要です。ネットワークしたり、 それを紹介したりするプラットフォームと、一個一個の規格をやっているプレーヤーは別 物だと思ったほうがいい。 中心市街地活性化で商店街がほとんどうまくいかなかったのは、 あれは私の知り合いで 1 万 5000 ある日本の商店街全部リサーチした人が居て、なんと 1 パーセントしかうまくいかなかったです。1 万 5000 中 150 です。残り全部失敗したという アンケート結果が出ているのです。それはなぜかというと、企画者とプレーヤーが一緒だ ったからです。商店街のおじさんが一生懸命考えても無理なのです。100 分の 1 ぐらいの 確立で成功します。でも、一人一人の町中でこういうことをやって面白くしたい、屋台作 りたいという話をやっている人が、自分の好きなことの延長でやっているときは、先ほど 山崎さんが言われたハシモトさんが始めたハシモト○○みたいな感じですごく面白いです。 その周りに友達も集まるし。なので、やはりそのネットワークしていく組織と、それを一 個一個立ち上がっていくプレーヤーはちゃんとどちらが好きかはあるので、そういうこと は整理して、うまくマネジメントしていくといいのではないかなということは感じます。 伊藤副市長:ありがとうございます。屋台のところで、役所側からの意見もちょっと聞き たいのですが、建設なのか、道路管理者なのか。 髙橋建設局長:屋台自体は私も、昔、行ったことがありますが、仙台では一代限りという ことで徐々になくなってきました。先ほどおっしゃったような新たなことをやるとすれば、 公園や緑地だと結構やりやすいと思います。反面、道路空間の中で特に車道の中で何かを やろうとすると、個人的な見解ですが、よほど安全の確保をしていただいてというのが一 つですし、逆に貸す側からすると、そちらで責任を持っていただくのであれば、いくらで もいいのかなと思っているのです。先ほどありましたが、緑地と公園は、システムはない ですが、使うことはいくらでもできると思っています。 あと、屋台は、私も個人的には復活していただきたいなと思っていました。 伊藤副市長:歩道はどうですか。 髙橋建設局長:よく話になるのですが、定禅寺通りは歩道側、車道、真ん中、その繰り返 しなのですが、車道を狭くしたらいいのではないかという議論は昔からあります。ただ、 バスが通るからとよく言われて、なかなか歩道を広げることができなかったようです。 馬場:既存の歩道でも結構いけるのではないかと思うのです。屋台が小さいから。 22 髙橋建設局長:既存の歩道でもいいのですが、定禅寺通りでは、けやきの植えてある空間 があります。ジャズフェスのときに、人はあそこにたまるのですが、演奏は建物の公共空 地の中でというような形でやっています。できるのであれば、車道を 1 車線つぶして、も う少し広げるとかが考えられます。 馬場:それは結構ハードル高そうです。 小島都市整備局長:実はこの屋台に関しては、10 年ぐらいたっていますが市議会の中で特 別委員会があって、自らテーマを決めて屋台を復活させたいと、先生がたが言い始めたの です。そのときに、保健所が呼ばれました。あとは公開空地等を管理しているような都市 整備と道路というところで、お互いができない理由を考えてしまうのです。できないので はなくて、皆で考えてできるようにしろということを、先生がたにも言われましたけれど も、特別委員会とも 1 年で結論を付けなければいけないことがあって、ロマンで終わって しまった。そこに意外とできそうなものはあると思っていて、今回のソーシャル・イノベ ーションに関しても、保健所、例えば消防局、あるいは建築士、同じようなものを審査す るときに、おのおのバラバラに判断すると、そこで企業家をつぶしてしまうことがあるの で、これは良くないと思っていました。役人は、否定することはいくらでもできます。得 意です。だけど、やれることを考えろと、伊藤副市長もしょっちゅう言っていますが、そ ういうことを皆さんがたから提案していただければ、われわれとしてもそこを前向きにす ることはできると思います。 馬場:役所の中でこれをやるのだけど、どうやったらできるかを考えましょうという議論 のスタートのさせ方はできないでしょうか。各部署集まってこれをやるのだけど、どうや ったらというような始まり方はできませんか。 小島都市整備局長:今まではそういう環境をつくってこなかったのですが、実はこの絵が 恐らくそれだと思っているのです。再開発というのはいわゆる古いビルを作り変えていく というセクションなのですが、それをやめて、古い建物を利用しようということで、自分 で自己否定から始まっているところです。 二番町の地下通路は、青葉通りと二番町という所は大幹線なのですが、もともとは、伊 藤副市長も言ったように、なぜこのようなもの作ったのだという話がありましたが、これ で人の流れが変わってしまったのです。これを何とかしようとして、 問題提起をし始めて、 いわゆる役所の中でそれを議論しようではないかということをやり始めているのです。だ から、今までなかなかできなかったのですが、乞うご期待のところであります。 23 馬場:マイナス意見を言ってはいけないというルールで議論をすると結構出てきます。嫌 でもプラスしか言えない。 2.民間組織の組成及び行政の支援のあり方 伊藤副市長:もう一回ディスカッションを整理していきます。組織を担う人の話、お題に もありまして、それについてお話しいただいた人も居るのですが、それについてこのよう な組織であればうまくいくかもしれない、個人というのはなかなか、先ほど山崎さんがハ シモトさんなどと言っていましたが、大阪を動かすような橋下さんは別として、なかなか ハシモトさんは 1 人ではできない。一般的にはタウンマネジメント会社をつくって、その タウンマネジメント会社がきちんと回るようにしていく、その仕組みまで作らなくてはい けない。もしかすると資金調達まで考えなければいけないのですが、そういったことにつ いて、このような形であればできるのではないかというものがもしおありになったら、お 話をいただけますか。 馬場:私は個人として関わって活動しているプレーヤーと、全体をマネジメントしたいと いう欲望の人は、全然欲望の種類が違うと思うのです。それで、福屋さんと山崎さんがく しくも個人がいかに関われるかという、その仕組みが要るのだということだったと思うの ですが、多分門戸さえ開ければ、あとはヒントさえ与えれば、やりたい個人はこれだけの 人口が居る都市においては、結構居るような気がするのです。だとすると、そのプレーヤ ーを顕在化するためのマネジメント組織をつくらなければいけないと思うのです。そのマ ネジメント組織が、今まで仙台市は結構行政が優秀なので、そこを担っていたかもしれな いのですが、そこを大胆に行政も関わりながら民間に委ねるスキームが必要な気がしてい て、そのために、例えば、マネジメントする会社をコンペで選んではどうかと思っている。 例えば、今、横浜市の財務をやっています。パブリックスペース、横浜市が持っていた古 い元財務局の建物を何とかしたいということです。家賃はこれぐらい払わなければいけな いけれども、それを民間に委ねる。家賃は結構高かった。でもこれだけパブリックに帰す るための方策をしなければいけないというスキームを作って、事業者コンペをやったので す。そうしたら、資金的な耐力とパブリックマインドを持った企業が提案してくるわけで す。個人がいかに自由に参加することができるかというスキームをきちんと立案できる、 マネジメントできる、行政と組みやすい民間、そういうものをコンペで選んで、定禅寺通 りと幾つかの公園を対象とするようなスキームを組めないかなと思ったのです。 伊藤副市長:それでは山崎さんお願いします。 山崎:私の話し方も少しおかしかったと思うのですが、個人と言っているのは山崎と馬場 というところに代わってほしい。まちづくりだけでなくて、せっかく動かしていこうとい 24 うような会社のトップが個人ですけれども、仙台であれば誰なのかということが知りたい のです。そのときに、私が仙台市役所やここの専門家の人たちが決めたスキームでやって くれと言われたら、なえます。嫌です。だって私は私のやり方があるから。私の一番得意 なもうけられる、お金を回せられるスキームを自分で開発したい。だから、例えば 8 種類 のスキームを準備してほしい。その 8 種類のスキームのやり方で海外ではうまくいったけ ども、仙台でやるのであれば、多分無理だと思うという対話がしたいのです。その対話を 早く始めたほうがいいような気がするのです。その事例は欲しいし、スキーム案も欲しい し、組織案も欲しいのだけど、誰がやるのかの部分を個人名でしたほうがいいです。組織 名はあまり好きではないです。逆に大組織だからいいというわけではなくて、そこの何と か部長がたまたま仙台に赴任してやるみたいなのは、あまりアイデアフルではなかったり するのです。何か少し覚悟を決めてやれる個人名が欲しいという、そのような意味で個人 という言葉になりますので、1 人で何かやれと言われると、これは大変な話かもしれない なと思います。 西田:でも仙台のジャズフェスの実行委員の方と話ししますけれども、完全に個人です。 でもあれだけの規模のことを動かしています。先ほど私が見せた富山のまちづくり会社は 山下裕子さんという人が立ち上げているのです。個人です。札幌大通公園株式会社も服部 彰治さんという方がやっています。結局、外に出てくるときは団体名になっているのです が、やっているのは名前が出ている人なのです。なので、仙台にも、私は結構何人か WE をとおして知り合いになっているのですが、できる人が居るとすごく思います。あとはど れだけ委ねられるかという、今言われたような、結構民間に委ねようと思う瞬間は少しハ ードルがあるのです。 山崎:そこが知りたいのです。行政の人たちは、そのような個人名の人とプロジェクトが オープンになる前から癒着して、仕事進めていくことをやろうとしているかどうか。そう いうことが駄目だという風潮が 20 世紀はよくあった気がします。 「駄目だ」と言っている から、町が駄目になっているような気がするのですが、それは当たり前です。何か条件付 いて公平性を担保してプロポーザルをやって、出てきて、紙何枚かでこの人がいいとか決 められるかどうかというと、そうではなくて、今までやってきた人柄もあるし、実績もあ るし、いろいろなことの関係性もあって、その人と話ししていたら、うまくいきそうとい う選び方、恋人の選び方のようなプロセスを発見しないと、形式は今までどおりで、そし てスーパーマンのような個人を見つけてやりましょうというと、それは言われたほうが大 変な気がするのです。良質な談合みたいなのです。 25 伊藤副市長:山崎さん、ありがとうございました。貴重なご意見として本当にエクスクル ーシブに最初からやれば、それはいいものができます。間違いなく。ただ、そこの最初の 部分が、果たしてそれで良かったかを誰が評価するかという難しい問題があります。 山崎:先ほどの話と一緒だと思うのですが、結果を評価するしかない気がするのです。最 初は怪しいかもしれないけれども、とにかく目的外使用にしても、許可申請にしても、結 果を見ろという話ができないといけないと思います。道路の路とよく言われますけど、道 と路という字で道路です。完全に道化してしまって、車道、歩道と通行のためになってい るけれども、路地の路のほうがないがしろになってしまっている。日本はそのような近代 の道路交通法ができるより前に、そこで浪曲やって三味線やって物を売って、そのような ことをやっていて、散々いわゆる路空間を使い倒しているわけです。そもそもできていた この国の文化の中で、西洋のシステムを入れてきて、いかにきちんと道路をはけさせるか を一生懸命やってきて、もう一回、路を取り戻そうという動きが少しで始めているので、 これは陰と陽の両方出てくるものだと思った方がいいと思います。いいところしか出てこ ないのはうそで、道路の上で屋台やりましょうというと、おしゃれな屋台も出てくるし、 ダサい屋台も出てくる、これはもうしょうがないのです。それは出てくるものだと思った 上で、陰と陽で両方とも受け入れるというある種の覚悟を決めて、チームでそれにあたっ ていくことが大事だと思う。最初に示してもらった十字に切ってあるような、あれはすご くいいと思うのです。どうしても右上だけをいい物のように見ていると左上あるし、もっ と言うと下、その地域の価値を減する物もセットで出てきてしまう。上しか出せないよう にコントロールするから、上も出てこないことになってしまうので、下も一部出るけど、 下は 2 割だったら出るだけでいい。2 割しか出なかったのは良かった。上 8 割だったから 良かった、にしないといけません。上 100 パーセントにしましょうというから苦しくて、 それがまた行政が責任を取れというような話になってしまうと大変なので、民間の人たち がある程度のところまで責任を取っていくような仕組みが必要です。 パークマネジメントをやっているときもそうでした。ケガや死人が出た場合は誰が引き 受けるのか。パークセンターが引き受けてそれが駄目な場合、保険を掛けておいて、駄目 な場合は協議会で練って。 全てが行政に行くのではなくて、誰が引き受けるかという図を、 関係している皆で共有しながら、こうなったときは責任を取ってもらうけど、それ以前の ところはこの三つの組織が受けるというようなことで、管理者にも了解してもらって進め ていくような、民度と都市とそれからそこの信じたというタッグを組む気概のようなもの が、その種の話をしていくときには結構大事になってくると思うのです。 伊藤副市長:まさしくそのとおりです。私はもともと民間の人間ですから、リスクをもう 少し細分化して分析してやれば、ここまでは役所が取るリスク、ここまでは民間が取るリ スク、ここは個人が取るリスク、そういったリスクの細分化ができるし、そのリスクの定 26 量化ができると思うのです。リスクの定量化ができるからこそ保険というものがあるわけ です。そういうようなことを、タウンマネジメント、エリアマネジメントそういうところ でも必要なのかなと思います。 西田:先ほど道路の使用に関して、やはりこのような歩道空間、道路空間がという話があ りました。実は、私は 2011 年の震災はそれを全てリセットしてくれたのではないかと思っ ています。その瞬間、例えば石巻市も仙台市もそうだと思うのですが、皆道路に出ている のです。炊き出ししているのです。そういう非常時のことは、日常化されていないと実は できないのです。でも、その前まではここはもう車が何とかで、これは何とかの安全性で というような話は、言われているようにオペレーションでクリアできる部分が結構あるの で、社会実験的にやっていきましょう。それはやはり最終的にはこういうときにこういう ふうな公共空間というのは、そういうための余剰の部分だと思うので、その余剰の部分を 作っていくためには、やはりその意識をまず持ってやっていかないと、次世代に残してい けないと思うのです。やはり、今の近代が作ってきた計画で、どうしても分割してできな くなってしまっている部分は、あの災害を受けたことによって、やはりそこは使わないと まずいと市民は思ったのです。そこに働いている人たちは、道路に逃げたと思うのです。 そのときに「ここで炊き出しはいけません」と言ったら生きていけないです。それは日本 が災害から 5 年、10 年たって、国がこれだけのことを回復しました、復興しましたといっ たときに、建物ができたという話以上に、オペレーションも含めて、生き方や都市をこの ように考えられるようになったということまで示せると、仙台のモデルとしてはすごくい いと思います。 山崎:つなげていったほうがいいのは、本当に道路、道路と言い始めたので、道路の話ば かりしていたのですが、これは本当の例えです。遠藤さんが紹介してくれたベターストリ ートという協議会があって、それがいろいろ本を出していますが、ベターストリートがや っているのは、基本的に狙っているのはベターブロックなのです。あれはベターブロック ムーブメントなのです。区画自体を 1 回近代できれいに整備して、ゾーニングもきれいに して、やってみてうまくいくなと思ったら、非常につまらなくなってきた。もう一回雑多 な所に戻したいわけではないけれども、これは来過ぎたから少し戻っていこうと思う、そ の取り組みの一つ一つに、パークレットをやってみようといって、時間貸しをひねって、 ここをこのように変えてみる。コインさえ入れておけばいいという社会実験から、やり始 めた。でも、結局道路の車線を 1 個減らして、ここに座れるようにしたからいいでしょで はなくて、市民が、ああそうか、具体的にこういうこともありだと言ったときに、その区 画、ブロック自体がどのように変わっていくかという話し合いのきっかけを作るための社 会実験なのです。公園の一つずつの使いこなし方を変えていこうという運動もそうで、多 分さっき生き方自体と言っていたけれども、その区画、ブロックで自分はどう生きていき 27 たいのか、あそこでごはん食べて、こっちで遊んで、こっちでマラソンしてというような、 生き方自体の全体を良くしていく、ベターにしていくというような概念と、今、話してい る個別のことを常にくっ付けていただかないと手段が圧倒的に目的化してしまう危険性が あると思います。 伊藤副市長:話し足りない人がまだいらっしゃると思います。お願いします。 遠藤:多分個別のアイデアや具体的なアクションのイメージがいろいろと出てきていて、 多分これを役所の皆さんが、それらをどんな仕組みやスキームで実現できるかを今後考え ていくことになると思うのです。ただ、そこで従来の役所の思考に陥ってしまったら、ま た元の木阿弥になる。そこをどうするかというところです。例えば、道路や公園の指定管 理のようなことは早速でもやったほうがいい。だけど、道路の指定管理をプロポーザルで 人を集めてとなった瞬間に、いろいろな項目が指定管理の中に出てきて、がんじがらめに なってしまうかもしれない。先ほどの山崎さんの話で言うところの、道路の路の部分だけ の指定管理のプロポーザルをやるとか、そこをうまく分けられないのかなというのが一つ 思います。道路と公園、いろいろなパブリックスペースがありますが、基本的に目立つ場 所がいいと思うのです。残念ながらこれまでの都市計画で、公園は街らしい空間から結構 分離した作り方をしてきたのです。その点、実は一番目立って、一番人が入りやすいのは、 腐っても道路だと思うのです。道路でやるからこそ、いろいろな人の目に付いて、いろい ろな自由なアクティビティがそこから発生してくる。その先に公園につながっていくのが、 一番ベターなのではないかと思います。 山崎:さっき西田さんの管理、メンテナンスではなくて、運営、マネジメントですと出て いた言葉が好きです。地方自治法が変わったときから思っているのですが、指定管理者制 度というのを指定運営者制度にしただけで、随分イメージが変わるような気がするのです。 路の部分をやるのであれば、メンテナンスではないだろうという気がするのです。そのよ うな言葉はないのに、仙台市はなぜか指定運営者募集みたいなフレーズになっている。あ るいは指定経営者というのかもしれません。そこを「管理だけしていてくれ」と言われる とアイデアも乏しいものしか出てこないかもしれないので、マネジメント、運営や経営を 積極的にしてくれませんかというプロポーザルみたいなもので、提案する側のモチベーシ ョンも変わってくるかもしれない。 遠藤:評価項目のところに、その道路でいくら稼げるかというところに 40 点ぐらい配点 がある。そこが大事です。そういうのをぜひ考えてみるべき。 伊藤副市長:それはきちんと気にしながらやっています。 28 西田:結構仙台市で公募したら、今、全然見えていない人たちが出てくると思うのです。 WE という東西線のプロジェクトも、私はプロモーション事業で入ったのですが、決定的に 市民参加というプロモーションだったので、WE スクールという地域を知ろうという学校を やったのです。そのプロデューサーで、いろいろ地域のことを考えられる人を募集します といって 40 人、それからメディアを作りたい人 40 人で、80 人募集したのです。最初「や りますか」と言ったときに、地域のプロデューサーは出てこないというムードが役所側に はあったのです。ふたを開けてみたら一瞬で埋まったのです。誰もびっくりするぐらい知 らない人ばかりでした。意外にまちづくりだとこの人なのではないか、こういう人たちが 都市計画やっているというような、思っているキープレーヤーが居るので、そういう人た ちが来るのかなと思いきや、知らない人ばかりでした。仙台市が 100 万人以上の人口を持 っているというのは、そのようなポテンシャルを持っているということで、その人たちは 全員 20 代、30 代なのです。そういう人たちをいかに巻き込んで、こういうことを一緒に できるのかが非常に大事です。それだけの土壌が既にあるということ、きょう、洞口さん が洛中洛外図を説明されているのも、とてもいいと思います。前の席の中で明らかに若い のです。失言しました。申し訳ないです。この構図がいいと思うのです。若い人が実践を していて、上の人がそれをサポートしている。そういう構図がいい意味でどんどんドライ ブを作っていくのではないかというのは感じます。 山崎:福屋さんにしゃべってほしいと思うから言いますが、今いろいろとしゃべっている のも男ばかりではないですか。この手のことは女性がどこに入ってくるかは結構ジェンダ ーのように取られてしまうと嫌なのですが、とても重要で、コミュニティデザインをやっ ていると本当に私たち正直かなわないです。一つだけ言うと、旭川でワークショップをし た時のことです。旭川空港から羽田で乗り換えて、次は徳島で第 1 回のワークショップを しなければいけないということで、前が長引いてしまって、空港に着いたのは、飛行機が 飛び立つ 15 分前だったのです。羽田は絶対入れてくれないですが、旭川は小さいので、走 れば間に合う。うちの若い女性スタッフが走っていったのです。私は先に手荷物検査を突 破したのです。これで何とか閉め出されることはないと思って、行こうと思ったら、後ろ から呼び止められました。どうしたのかと思ったら、お土産を買いに行ったのです。忘れ もしません。怒り心頭で、うちの若い女性スタッフは何を考えているのかと。飛行機の中 で、プリプリして怒って。徳島初めてのワークショップで、200 人も集まっていて、最初 はやはり緊張するのです。どのようなところから入ろうかなと、ドキドキしているときに その女性スタッフが「きょうは北海道から来ました」と言って、お土産を配ったのです。 空気がものすごい柔らかくなりました。つまりわれわれの、男の考えを一般化しては駄目 なのです。少なくとも、私は飛行機に乗れるかどうかのことしか見ていないです。彼女は もう乗れたことになっているのです。乗れたとして、向こうへ行ったら、皆をどう柔らか 29 くするかを考えていて、今、駆け付けましたみたいな人がワークショップをしても雰囲気 良くなるわけがないのです。もう彼は手荷物検査を突破した。では私はといって、さっと 近くにあるお土産を買いに行く。この感覚を見たときに、本当の意味でかなわない。私が 後ろから付いていく人間だったら、そのまま行っていたので、先のことを考えられていな い。これは本当に一例なのですが、表現しにくいのですが、そのあたり、女性は本当にす ごいです。 伊藤副市長:まちづくり全体に関してで、結構です。お願いします。 福屋:その手の女子力は私にはないから、話しにくいなと思って聞いていたのですが。昨 日、瓦町という所に行って、不動産屋さんの前にすごく古い蔵があって直した所があるか ら、そこで話していたら、それで不動産屋さんに話しに行ったのです。そしたら、普通に 話していたら、ある私の知り合いの建築家の話をしたら、奥から女性が出てきたのです。 つまり、それは彼女が自分の知っている PTA のお母さん友達がやっている活動だからとい うので、それで出てきてくれて、私にはあまりないけど、女性の面白いところは、そうい うすごい身内感覚で、身びいきで、自分たちの仲間がやっていたら寄ってくるような、そ ういう突発的なコミュニティづくりがすごく得意だなというのと、もう一つはミーハー力 という、はやりものが大好きというので、だから女性が集まって、軍団で移動するという、 それはまちづくりにとって、すごく大きい原動力になるのかなと思っています。仙台はや はり若い女性も多いし、少し郊外に行くと結構年配の女性もたくさん居るから、そういう 人たちが新しく行きたくなるような場所をやっていくといいかなと思います。 エリマネの話に少し戻すと、青葉通りが地下鉄東西線の工事が終わって、すごく変わり ました。定禅寺通りは、今までもとても有名ですが、青葉通りの広大な歩道を見て、何か やりたくならない人は居ないと思うのです。だから、そういう所に新しく集うスポット、 すごく月並みな言い方ですが、そういう物を作るだけで、結構新しいことが始まる形にな るのではないですか。 伊藤副市長:局長さん、言いたいことがあれば。 小島都市整備局長:先ほど紹介した、道路が寸断されてしまったという道路というのは、 伊藤副市長が学生時代、屋台がまだ盛んだった頃、そこが一番面白いと、市長もそこで焼 きいもやりたいと。地域のかたがたが、落ち葉を拾って焼きいもやろうとしたら、環境局 から「ダイオキシンが駄目だ」と言われたという話があります。やはり、今、建設局は一 生懸命やって、道路の再構成、商業施設と同じように公共空間をリニューアルして、車線 を狭めています。ただ、相当その延長が 2 キロ近くあって、そこをにぎわい空間といって も何をするのかということが分からないとなりますから、やはり辻空間などそういった所 30 をうまく活用しながら、いわゆる公共空間のリノベーションみたいなものと、全体として エリアのリノベーションというところで、 リノベーションに関してはそこから南側が、 昔、 学生の街だったのです。そこを何とかわれわれとしては、いわゆる遊休不動産のリノベー ションと合わせて、公共空間のリノベーションをしていきたいということで、いわゆる起 点が青葉通りかなと思っています。まだ、内部的にいわゆる庁内横断的なことをやってい ますので、だんだん理解者が増えているのですが、地域に行って理解者が増えていないと いう所がありまして、そこを何とかわれわれとして仕掛けていきたい、そして皆さんがた に協力していただきたいと思っています。 福屋:仙台はすごくイベントが多いという印象があって、東京に居ると東京のいろいろな 所でイベントはやっているのですけれども、仙台だとある中心街の中で、例えばきょうは ジャズフェスの日、きょうはマラソンの日、一瞬でカラーが変わるのは面白いと思ってい るのです。ただ、例えばオクトーバーフェストをやっている、タイフェスタをやっている というので、 結構毎週ぐらいの勢いであるのですが、 それが錦町公園の所に閉じるのです。 その周りに何となく余波はあるのですが、もしそういうことを通り全体でやることができ たら、それはマラソン並みの効果を都市にもたらす。せっかく線が魅力的な都市なので、 その線のつながりを生かしていくというのが、ぜひやってみたいことの一つです。 山崎:きょうは建設系の部局の方が沢山いるのではないでしょうか。1 人? -- 1 人ではないですけど。 山崎:福祉、保健系の方いますか?もうご存じのとおりなのですが、2005 年を軸にして、 日本は国土交通省の予算がぐっと減っていて、全く対照になっているのが厚生労働費です。 2040 年 40 兆になるかもしれない。日本ではそういうのが全部税金。全部高齢者、保健福 祉に当てなければいけない。これはもう小学生が考えても、単純にやばいことなのです。 なので、今リノベーションだとか、あまりお金を掛けずに都市を更新していかなければい けないという文脈の上でプレーヤーにどんな趣旨で興味を持ってもらうか、いろいろうま く作り出していかなければいけないときに、保健や福祉、社会福祉系の医療、そういう人 たちがこの上に乗ってきて、 もう 10 年ぐらい前になくなってしまった言葉にもなるのです が、ロハスというものをもう一回きっちり考えてみたほうがいいかもしれません。私はロ ハス論者ではないですが、ローカルとヘルス、健康とサステナビリティというようなテー マを一つの言葉にしたというのは、今考えると結構優秀なことです。今、ロハスというと、 少しダサい感じがするけれども、やはり大事な気がするのです。それで、また厚生労働省 が地域包括ケアをやり始めましたが、地域包括ケアを入れたはいいけれども、現場で何を すればいいのか全く見えていないというのが、全国の今の地域包括が抱えている問題です。 31 そこには、デザイナーが入っていないのです。いわゆるアイデアが出てこない。厚生労働 省が書いたあの図です。皿があって、植木鉢があって、土があって花が咲いている、あの それぞれが大事ですと言われるだけで、薬剤師も含めてこのように総合ケアと地域ケアを やってください。あの図をそのままやろうとしているだけで、疲弊しているのです。保健 師さんも、今、大変です。基本的に仕事が多過ぎるのです。地域包括はできないし、セン ターについては 3 職種必要だと言われていて、社会福祉士、それから主任のケアマネと保 健師と 3 人と言われているのだけども、3 人とももうヘトヘトに疲れていて、地域包括ど ころではない。だから、地域で包括的に高齢化社会に対応していこうと思ったときに、道 路の路の所で何ができる、公園のここで何ができるというのを、全て保健とか福祉とかの 分野の人を誘い出せるような特区にするとか、その予算を少し使わせてもらえるようなプ ロジェクトにしておこうとか、そういうのを作って、多分、建設まちづくり都市政策関係 の部局だけではないところとセットで、このプロジェクトを進めていくと、可能性がもっ と広がるのかもしれません。 伊藤副市長:分かりました。西田さん。 西田:WE スクールという地域プロデューサーを育てようという取り組みに、東北大学のメ ガバンクの医療チームの女性が来ていたのです。その人はおなかが専門で、要はストレス フルになっていく被災者の人たちをどう考えていくのかというようなことをやっているの ですが、意外にそれは、彼女の目線は、それではなくて、町をもっと健康にしていこうみ たいなときには、公共スペースをもっと使っていかなければいけないのではないかといっ て、プロデューサークラスに来たのです。やはりそういうブリッジは本当に大事です。一 生懸命おなかの診療ばかりやっていても、おなかが痛いことを薬で治そうという話にしか ならないのです。でも、町が健康になっていこうという目線で考えれば、体をもう少し鍛 えていこう、精神的にいい物を食べていこうという仙台全体が健康になろうという話と公 共空間はすごく合体できるので、女性の社会参加と起業しやすい仕組みとエリマネは、横 断的に語られたほうが非常にいいとすごく感じています。 馬場:変な話になるけど、最初屋台の話が出ました。屋台といったら物を売ったり、食べ 物を売ったりとか、そのようなイメージをつい私たちはしがちだけれども、もしかしたら 屋台が扱う物も変わってくるのかなと思ったのです。例えば福祉とか、そういうサービス を売る屋台があってもいいのです。そうすると、参加してくれる人、参加してくれる部局 が屋台という物体、アイデア、デザインから広がっていくかなと思ったりしました。 伊藤副市長:私が見たのは、外で道路空間を利用して、事務みたいなことをやるようなも の、それから公園も、今、子どもの公園ではなくて、老人向けの介護予防的な遊具を備え 32 付けた公園が結構増えてきているというのもあるわけです。屋台というものも、今、馬場 さんがおっしゃるように、その品物が変わってくる可能性はすごく高いのだろうと思いま す。 山崎:一つ視点をお話しすると、もちろんそういう明示的ないわゆる健康、保健、福祉系 の屋台のプログラムもいいのですが、そうでなくても、ただ来て、歩くだけでも、それか ら話しして笑顔になっただけでも、実は寿命が延びることが研究で分かっている。作り笑 顔も寿命が 2 年延びるのです。そういうのでも寿命は 2 年延びることが、ハーバード大学 の研究で分かっているのです。これ、本気の笑顔になったら 7 年延びると言われているの です。スマートフォンで「今度食事に行きましょう(笑) 」これは駄目です。もちろん険し い顔していますから。これは寿命延びないのです。でも出てきて何か一緒にやろうとか、 ここの場に来てちょっとでも笑おうとか話ししようとか、それだけで延びていきますし、 実は町内会の役員が健康にいいというデータも出ているのです。入院したときに、お見舞 いに来てくれる人の数で余命が変わるという研究結果も出ています。だから寿命を延ばそ うと思って入院するのではなくて、その前から皆とつながって、友達たくさん作っておい て、いざ入院したときには「入院した、大丈夫か」と言って、皆がお見舞いに来てくれる 関係性をつくっておくことこそが、実は健康寿命を延ばしていく。今、平均寿命と健康寿 命の間に 10 年も差がありますから、10 年間皆どういう暗い最期を迎えるのかということ になってしまいますが、それはおかしいです。最期は明るくしなければいけないのです。 明るくするときに、何がいいのっていったときに、仙台の町がいいですという話がきちん とできるような都市更新とプログラムが上に乗っかっている。もちろん血圧が測れるとか、 運動ができるというところも大事ですけれども、ここに出てくるだけで寿命が延びるとか 健康になるというような効果は、今、徐々に明らかになりつつある。 西田:屋台の話がありました。私の知り合いの女性は、コーヒーをただで配る屋台やって いるのです。趣味なので、決して飲食の売買をやりたいわけではなく、お金を取っていな いので、保健所は関係ないです。要は本人にしてみたら、豆代とかカップ代は負担してい るのですが、 これは自転車好きの人が自転車をカスタムするのに 10 万円使うのと同じです。 車を持っている人が駐車場代を払っているのと一緒です。私はこれでいろいろな人とコミ ュニケーションするのを楽しんでいるという感覚なのです。最初、その彼女は変なのかな と思ったらしいのです。自分の趣味は、周りにあまり居ないのかなと思ってドキドキして いたのですが、言ってみると、意外にそういう人は多いのです。なんとアドラーという心 理学者はそれをきちんと言語化しています。幸福度というのがあるのです。まず自分の自 己実現が幸せになる。その次に家族とかを幸せにする。三つ目は社会とつながるという幸 福度があるのです。なるほどと思って、私も納得させられて、自分も何を配るのかなとい う気持ちになってくるのです。意外に山崎さんが、やはりコミュニケーションって笑顔み 33 たいな話は、そういうことと非常に近くて、町の空間で他の人と笑顔でハイタッチできる ぐらいの、 その距離感を自分側が持てるというのは、 すごく大事だというのは感じました。 伊藤副市長:ありがとうございます。時間になってまいりました。どうしてもということ でなければ、取りあえずこの席を閉じたいと思いますが、よろしいですか。きょうは、本 来座長が全部指名しなければならないのですが、ここできちんと座談会が成立しましたの で、私は楽ができました。どうもありがとうございました。 ○閉会挨拶 畑中:それでは、以上をもちまして、第 2 回ソーシャル・イノベーション・フォーラムを 終了致します。最後、事務連絡でございますが、本日の議論につきましては、議事録にま とめさせていただきまして、仙台市のホームページで公表させていただきたいと思ってお りますので、あらかじめご了承のほどよろしくお願い致します。本日は長時間にわたり、 ありがとうございました。 34
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