2色は計画的に活かされる

SECTION
3 ◆色と社会の結びつき
2 色は計画的に活かされる
色によって導かれるイメージは、ある程度の共通性はあるとしても人それぞれ違うので、色を
コーディネートする場合は、自分の感覚だけに頼って計画してはいけません。色の力を最大限に
引き出すには、まず前提となる対象の状況を分析することが、非常に重要となります。ここでは
色を決定するために必要な条件について学びましょう。
●
2-1 色を計画するときのチェックポイント
建築物、室内用品、衣料、食品、その他どんな商品でも、必ずそれを使用する人がいます。そ
こで、色をイメージし計画するときは、その商品を何の目的で、誰が、いつ、どこで使用するの
か、また、その商品を使用することによって、どのような利点があるのかを考えることが、色彩
計画の大きな裏づけとなり、リスクの予防となります。
●商品カラー計画のまとめ
商品の色を計画する場合、次の事項はとても大切なことです。しっかりと覚えて色
彩計画に役立てましょう。
•
誰が使うのか
–
どこで売られるのか ・販路ターゲット
(デパート、量販店、専門店 etc.)
—
いつ、どのような場所で使うのか ・オケージョンの設定
˜
どんな感じで
・ターゲット(年代、性別、職業 etc.)の設定
・客層のグレード
・テイスト区分
・時代動向
・流行の取り入れ方
™
何を
・商品特性
・素材の質感との関係
š
どのように
・その商品がどんな歴史を歩んできたか
・過去の分析
・現在の分析
・未来はどうあるべきか考える
「商品=売り物」である点をしっかり理解しながら①∼⑥を考えていきます。
●
2-2 対象のとらえ方
次にオケージョンの区分とテイスト
(感性)の区分をまとめました。
44
(
(カラーセンスアップ)
)
1
(1)オケージョン区分の例
使用する場所によって人々は、その場にふさわしい色彩を考えます。大きなくくりとして次の
ように考えられますが、それぞれの内容によってふさわしい色彩は異なります。しかし、最近は
それぞれのくくりの境界がゆるくなってきているようです。
・ソシアル……パーティ、結婚式、卒業式、入社式、クリスマスなど正式で儀礼的な場面
(パ
ーティやクリスマスなどと卒業式や入社式では、求められる「らしさの色」が異なる)。
・オフィシャル……会社、学校など社会的な制約のある場面。
・プライベート……休日、旅行、レジャー、スポーツなどの私的、個人的な場面(スポーツ、
日本舞踊など内容によってふさわしい色彩は異なる)。
(2)テイスト(感性)による区分の例
現在、人々は自分のライフスタイルやテイスト
(感性)をはっきりともつ時代になりました。企
業によって多少の違いはありますが、一例を示すと次のようになります。
言葉
内容
色調
ソフィスティケ
ート
・ライトグレイッシュトーン
教養があり、洗練された都会的な雰囲気のある、大人のム
・グレイッシュトーン
ードを表現した感覚のデザイン。
・ダルトーン
エレガンス
ファッションやマナーが優美、上品なこと。ヨーロッパで
は貴婦人と呼ばれた人々のライフスタイルを反映したデザ
イン。
クラシック
古典的な、あるいは伝統的なスタイルのもので、落ち着き ・ディープトーン
・ダークトーン
のある歴史を感じさせるデザイン。
ロマンティック
甘く、かわいらしい表情をもった感覚で、やさしく、淡い ・ペールトーン
・ライトトーン
雰囲気を表現する感覚のデザイン。
プリティ
ロマンティックよりも、いっそうかわいらしさや甘さを増 ・ライトトーン
・ブライトトーン
した、少女の雰囲気を感じさせるデザイン。
エスニック
歴史的、文化的に、キリスト教地域以外の民族服や生活用
・ディープトーン
品、食品などを指す、素朴で気取りのない感覚のデザイン。
・ライトグレイッシュトーン
・ペールトーン
・ダルトーン
・ビビッドトーン
・ビビッドトーン
・ダークトーン
・ライトグレイッシュトーン
ナチュラル
自然の、できるだけ人の手を加えない状態で使用すること
・ディープトーン
で、飾り気のない、安心してくつろげる感覚のデザイン。
・ダークグレイッシュトーン
カジュアル
元気さ、明るさなど、自由で気軽な意味合いがあり、スポ ・ブライトトーン
・ダークトーン
ーティーな要素の多い感覚のデザイン。
マニッシュ
男性のような女性の意味で、現代社会で働く女性の活動的
・ブラッキッシュトーン
な面を反映した、中性的な感覚のデザイン。
・オフニュートラルトーン
モダン
現代の都市生活におけるスタイルは、機能的な面を要求さ
・グレイッシュトーン
れる。無駄のない、今日的なすっきりした感覚のデザイン。・ビビッドトーン
シック
シンプルで洗練された、大人な雰囲気を醸し出す感覚のデ ・ディープトーン
・ライトグレイッシュトーン
ザイン。
・ダークグレイッシュトーン
・ライトグレイッシュトーン
・ダルトーン
・ダークグレイッシュトーン
45
SECTION
3 ◆色と社会の結びつき
[work 41]テイストによるイメージカラーを勉強してみましょう。
▼
カラーシートt1 - 41 から、それぞれの感性区分と思われる配色を切り取って、枠の中に貼
りましょう。主観的な要素も強いので、迷うものもあると思いますが、まず感じたままに
選んでから、解答を確認してください。自分の選択と解答が違っていてもあまり気にせず
に。ただし、解答はきちんと覚えましょう。
テ
ス イ
ト
洗
練
さ
れ
た
都
会
感
覚
の
色
優
美
で
高
級
感
の
あ
る
色
伝
統
的
な
落
ち
着
き
の
あ
る
色
①
ソ
フ
ィ
ス
テ
ィ
ケ
ー
ト
②
エ
レ
ガ
ン
ス
③
ク
ラ
シ
ッ
ク
配 色
テ
ス イ
ト
甘
く
、
や
さ
し
い
雰
囲
気
の
色
少
女
の
雰
囲
気
の
あ
る
か
わ
い
ら
し
い
色
素
朴
な
民
俗
調
を
感
じ
さ
せ
る
色
テ
ス イ
ト
配 色
④
ロ
マ
ン
テ
ィ
ッ
ク
⑦
シシ
ンッ
プク
ル
で
洗
練
さ
れ
た
大
人
の
雰
囲
気
の
色
⑤
プ
リ
テ
ィ
自
然
の
く
つ
ろ
ぎ
感
の
あ
る
色
⑥
エ
ス
ニ
ッ
ク
元
気
で
明
る
い
感
覚
の
色
46
配 色
テ
ス イ
ト
性
別
を
離
れ
た
中
性
的
な
色
⑩
マ
ニ
ッ
シ
ュ
⑧
ナ
チ
ュ
ラ
ル
⑪
機モ
能ダ
的ン
で
都
会
感
覚
の
色
⑨
カ
ジ
ュ
ア
ル
⑫
シ
ャ
ー
プ
で
ハ
ー
ド
な
色
配 色
(
(カラーセンスアップ)
)
1
●
2-3 商品と色
ここでは、ファッションの色や建築資材のように、あるサイクルで色を変化させて購買意欲を
あおるような場合の、市場導入のタイミングについて学び、商品にとって色はどんな役割を果た
すのかということについて、理解を深めていきましょう。
商品の色彩計画をする場合には、いろいろなことを考えながら、実施していかなければなりま
せん。色の計画的な活用によって注目度を高め、商品の売れ行きを引き上げるなどのマーケティ
ング手法がありますが、ここでは、色の効果を活用する1つの方法として、こうした使い方があ
るということを理解しておきましょう。
〈商品のライフサイクル〉
図の段階ごとの状況は次のようになっています。これを商品のライフサイクルといいます。身近な商品に
ついて、どの時期にあるかを考えてみると、商品に対する感覚が鋭くなります。最近の若者向けファッショ
ンは、商品のライフサイクルが非常に短くなっています。
・商品導入期……市場に商品を導入し始めたばかりの段階で、まだそれほど売れていない状態。
・商品成長期……商品が消費者に受け入れられ、どんどん売れている状態。
・商品成熟期……この商品がすべての消費者にいきわたる。また、他の会社から同じような商
品が市場に出回って、し烈な販売商戦が展開されている状態。
・商品衰退期……市場において商品が消費者に飽きられる。または価格競争で利益が著しく落
ちている状態。
●
2-4 社会生活における色
社会の中で、色は重要な働きをもっています。交通機関における信号、工事中を知らせる黄色
と黒色によるサインカラー、郵便ポストの色など、
「色」は人にメッセージを伝えるために、さま
ざまな場面で活用されています。
色は、公共的立場で表現する場合や、
「売れる商品」を生み出すため、小売店などで季節ごとの
47
SECTION
3 ◆色と社会の結びつき
カラーコーディネートのディスプレイをする場合など、立場によって考え方は違ってきます。常
にさまざまな前提となる条件が存在するので、自分の好き嫌いで、色を取り扱ってはいけないこ
とがわかると思います。そのことをしっかりと頭に入れておきましょう。
[work 42]現実の仕事では、マーケティング活動の中からいろいろな調査分析によってテ
▼
ーマが出てきます。そこで、実際に色を計画する立場に立ったと仮定して練習をしてみま
しょう。カラーシートt1 - 4 2 から、次のイメージに当てはまる色を選んでみましょう。
①伝統的なナチュラルなテイストを生か
した配色。
②カジュアル志向の新しいデザインを着
こなしやすくしているナチュラルな色。
③フィットした中性的なデザインで、い
っそうマニッシュなイメージを強調し
ている色。
④現代の男性を引き立てる、さわやかで
やさしく、少し甘さのあるイメージの
色。
48
(
(カラーセンスアップ)
)
1
3
流行色って何?
ここでは「流行色」の発生のメカニズムを学ぶことによって、色と社会の動きとのかかわり合
いを理解しましょう。
●
3-1 流行色の周期
「流行色」とはある一定の期間、多くの人々に使用されたり話題になったりする色をいいます。
この流行色には2つあります。その1つは国際的な機関であるインターカラー
(委員会)によっ
て、流行を先取り予測するかたちで選定・発信される色です。もう1つは、文字どおり消費者の
自然発生的な支持が広まって、いわゆる「人気色」となる色のことです。
流行色が持続する期間はまちまちです。消滅と発生が繰り返され、その中で人々の生活の中に
定着し、長く愛されてゆく色もあります。
●
3-2 流行の要因
流行の発生要因としては、何か新鮮な色に変化したい、時代の波に取り残されたくない。また
反対に、他人と異なることにより自己顕示欲を満足させたいというようなものがあり、これらの
思いがからみあって発生します。
●
3-3 流行の方向性
〈流行の方向性〉
流行には、方向性があるのでしょうか。これも一
慨にはいえませんが、基本的には、人間の行動様式
には一定の法則のようなものがあります。静から動
へ、暗から明へ、華美から質素へ、ある状態から異
なる状態へといった具合です。
右に紹介している表は、時代の流れをつかむ参考
として、多くの企業で商品企画のプランの中に取り
入れているものです。流行を読み取る上での参考に
してください。
最近は、年齢層別に共通項はありながら、多方面
に同時に動く傾向があります。より、個々の価値観
に近いものが求められています。
49
SECTION
3 ◆色と社会の結びつき
●
3-4 流行色の特徴
流行色は、かつて単色のときもありましたが、現在は40色以上の色で構成されています。ここ
では、色のグループで流行色になった場合について、実例で考えてみましょう。色名群を覚えな
がら勉強してください。
[work 43]カラーシートt1 - 4 3 から、流行色の説明文に当てはまる色を選んでみましょう。
▼
トーンについては、別冊『PCCSトーン別色相環』を参考にしてください。
①ペールトーンが流行します。
②ビビッドトーンが流行します。
③紫みのソフトグレイッシュトーンが流行します。
④秋にダークトーンのシックな色が流行します。
⑤ペールからライトトーンの青緑が流行します。
⑥ニュートラルトーンが流行します。
50
【入門編】
SECTION 4
日常生活に活かされる色
[学習テーマとポイント]
私たちの身の周りには色があふれています。
新製品にしても、改良を繰り返し長期間店頭に
並ぶロングセラー商品にしても、色によって魅
力が引き出されるものが、ますます増えていく
ことでしょう。
このSECTIONでは、日常生活の基本である
衣・食・住における、オシャレな色の使い方に
ついて学んでいきます。自分の日常生活と結び
つけながら考え方の軸を作っていきましょう。
SECTION
4 ◆日常生活に活かされる色
1 ファッションと色彩は一心同体
ファッションの大切な要素として色、
形、
素材があります。最近はシルエットや素材の品質が向
上しているので、特にセンスの差が表れるのは、
「カラーコーディネート」
(色、
デザインの組み合わ
せ)の部分だといえます。ここではカラーを上手に活用するにはどうすればよいかを学びます。
●
1-1 ファッションの意味
ファッションには「流行、時流」、つまり「はやり」の意味があります。ファッションといえば、
すぐに婦人服を思い浮かべますが、現在では腕時計、靴など身の回り品から自動車など、生活を
デザインするために必要なものすべてにおいてファッション化が進んでいます。
つまり、商品本来の機能以外のデザインの部分、そのイメージを表現している色彩、素材、シ
ルエット等が、時代のニーズによって変化し続けているということなのです。ファッションは生
き方や美意識などと密接にかかわりながら、変化している時代感覚を表しています。
流行色は生活環境、時代の意識や価値観、ファッションの流れと広くかかわっていますが、服
装の配色にしぼっていうと、着たときに美しい配色であることが最も大切です。もちろん、自分
の個性が引き立つ色彩を表現することが、ポイントになります。
[work 44]ファッションの基本的な配色イメージを学び、調和のとれたフレッシュな配色
▼
を創り出す練習をしてみましょう。カラーシートt1 - 4 4 から、各タイプに合った配色イメ
ージを選び、枠の中に貼りましょう。
① 自然なタイプ
② 古典的なタイプ
52
③ 甘美なタイプ
(
(カラーセンスアップ)
)
1
④ ハードで活動的なタイプ
⑤ 渋くて落ち着いたタイプ
●
1-2 ファッションにおける配色パターン例
(1)まとまりの配色
色相やトーンを統一すると、まとまった配色になります。お互いに同じ色を含み合うので、ど
の色を組み合わせてもまとまった統一感が生まれます。
[work 45]カラーシートt1 - 4 5 から、まとまりの配色に当てはまるものを2つ選び、切り
▼
取って下の枠の中に貼りましょう。(次の[work46]と合わせて考えてください。
)また、
右のイラストには、まとまりの配色になるように、色鉛筆で自由にカラーイメージを描い
てみましょう。
①
②
53
SECTION
4 ◆日常生活に活かされる色
(2)きわだちの配色
一般には、反対色や補色に近い色相の配色をいいますが、色が対立し合い緊張感が生まれるこ
とから、カジュアルさや活動的なイメージを表現しやすく、スポーツやカジュアルウェアなどの
演出に用います。
[work 46]カラーシートt1 - 4 6 から、きわだちの配色に当てはまるものを2つ選び、切り
▼
取って左側の枠の中に貼りましょう。また、右のイラストには、きわだちの配色になるよ
うに色鉛筆で自由にカラーイメージを描いてみましょう。
①
②
●
1-3 色のイメージを意識しながら配色する
色は前述のとおり単色でもそれぞれから連想されるイメージがあります。
例えば、ピンク=おだやか、甘い、優しい。緑=自然、新鮮な。青=さわやか、生命感、スポ
ーティ、神聖さなどのイメージを見る人に与えることです。さらに、配色でバランスをとること
によって、P.46のように、ロマンティック、カジュアル、エレガント、ナチュラル、モダン、シ
ック、さらに季節感までを表現することができます。
以前はTPOによって選択できる色の範囲が限られていました。しかしこれからはそうした規
制も少なくなり、素材によってデザインが表現され、そのデザインにマッチした色が選ばれるよ
うになるでしょう。
[work 47]ここでは、ピンクと青を例にとって、カジュアル、スポーツ、エレガントフォ
▼
ーマル、オフィシャルなシーンの演出を学びます。カラーシートt1 - 4 7 から、それぞれの
イメージに当てはまるものを選び、切り取ってそれぞれの枠の中に貼りましょう。
また下のイラストには、色鉛筆を使い、自分の感性でカラーイメージを描いてみましょう。
54
(
(カラーセンスアップ)
)
1
↓A. カジュアルな表現
↓B. スポーティーな表現
③
②
④
↓D. オフィシャルな表現
⑦
↑
①
↓C. エレガントでフォー
マルな表現
⑤
ピ
ン
ク
⑥
↑
青
↑
色
鉛
筆
で
55
⑧