緩和ケアにおける放射線治療 倉敷中央病院 放射線治療科 板坂 聡 放射線治療の役割 • 症状緩和 – – – – – 疼痛緩和 麻痺改善 止血(気道、子宮、胃) 狭窄改善(気道、食道) 上大静脈症候群、腫瘍栓(HCCのIVCやPV塞栓など) • QOLの維持 – 骨折予防、唾液腺照射 – 脳転移 • 骨転移や脳転移の治療が多い 骨転移 骨転移に対する治療 • 手術 – 切除術 – 除圧固定術、病的骨折に対する固定術 • 外照射 – 局所照射 – 半身照射 • • • • RIT(メタストロン、アルファラジン) ビスフォスフォネート、RANKL阻害剤、 抗がん剤 鎮痛薬 骨転移に対する放射線治療 • 疼痛緩和 – 鎮痛薬の減量が可能 • 骨折予防 ADL 低下の予防 – 椎体、四肢の長幹骨など • 照射回数 – 分割照射 30Gy/10fr., 20Gy/5fr. vs 1回照射 8Gy/1fr. etc. • 照射野の広い半身照射などを除いて有害事象が問題 になることは少ない • 内照射 ー 89Sr – 疼痛緩和目的 – 多発骨転移に有用 骨転移 外照射による効果 • 疼痛緩和 – 病的骨折、脊髄圧迫なし 59-73%で緩和、23-34%で消失 – 神経障害性疼痛 53-61%で緩和、26-7 %で消失 骨転移の放射線治療適応判断 • 痛みの有無 • 骨折リスクや神経障害のリスク – CTや単純XPでの評価 – 転移巣の浸潤範囲の評価にはMRIが有用 – 骨シンチは骨代謝の評価 転移以外でも陽性に なることあり 陰性の転移もあり – FDG-PETも有用(集積の乏しい腫瘍もあり) • 手術適応の有無 – 神経障害のリスクや、予後予測等 New Katagiri Score 予後予測 スコアに基づく予後の差 分割照射 vs 1回照射 • 疼痛緩和効果については変わりなし • 治療期間の違い – 30Gy/10fr./2週、20Gy/5fr./1週、 8Gy/1fr/1日 • 再照射の割合は1回照射に多い – 線量が低いため、再照射のリスクは低い • 予後、ADL、社会的状況に応じて選択? Clinical Oncology 24 (2012) 112e124 分割照射 vs 1回照射 Overall Response Clinical Oncology 24 (2012) 112e124 分割照射 vs 1回照射 再治療の割合 Clinical Oncology 24 (2012) 112e124 分割照射 vs 1回照射 再治療の割合 Clinical Oncology 24 (2012) 112e124 ASTRO guideline 骨転移に対する定位照射 • Oligometastases にて長期の制御あるいはCRを 目指した治療 • 臨床試験での枠組み Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys., Vol. 79, No. 4, pp. 965–976, 2011 L2 骨転移 SBRT 24Gy/3fr. RIT(radioimmunotherapy) による多発骨転移の治療 • 現在、日本で承認を受けているのはストロンチウムSr-89。 欧米で承認を受けているのはストロンチウムSr-89、サマリ ウムSm-153、レニウムRe-186、ラジウムRa-223 • SrイオンはCaイオンと類似の動態をとり、Ca代謝の亢進し た転移部位に集積する • Re-186 やSm-153は、HEDPやEDTMPに標識することにより 骨転移部へ集積する • これらの放射性医薬品は、治療が1回静注と簡便である こと、複数にわたる部位の痛みを対象とできること、効果 が持続することが特徴。腫瘍制御ではなく除痛が目的 ストロンチウム-89 • 固形癌患者における骨シンチ陽性の骨転移 部位の疼痛緩和 • 疼痛緩和は投与後通常1~2週から。効果 は通常3~6ヶ月持続 • 物理的半減期 50.52日 • β線エネルギー 1.49MeV • 組織内飛程 平均2.4mm(最大8mm) • 同族体のカルシウム(Ca)と類似した体内動 態を示し、Ca代謝が亢進した骨転移腫瘍に 選択的に集積 Sr-89 による除痛効果 Response after treatment with 89Sr Eur J Nucl Med 1997 ; 24: 1210-14 脳転移 脳転移 Recursive Partitioning Analysis (RPA) RPA Stages For Brain Metastases Stage Characteristics II KPS >=70, age <65, 原発制御, 脳以外の転移なし all others III KPS <70 I Median Survival (mo) 7.1 4.2 2.3 1979-93 (RTOG 79-16, 85-28, 89-05. ) Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1997 Mar 1;37(4):745-51 脳転移 Graded Prognostic Assessment (GPA) GPA Criteria For Brain Metastases Variable 0 Points 0.5 Points 1 Point Age >60 50-59 <50 KPS <70 70-80 90-100 Cranial Mets Extracranial Mets >3 Present 2-3 - GPA Survival GPA Score Median OS (months) 0-1 2.6 1.5-2.5 3.8 3.0 6.9 3.5-4.0 11.0 1 Absent 1985-2007 Retrospective. 1960 patients enorolled on 5 RTOG trials (7916, 8528, 8905, 9104, 9508) Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008 Feb 1;70(2):510-4. 脳転移のマネージメント 単発病変 ASTRO guideline 予後 良好 (3ヶ月 以上) サイズ 切除可能 ≦ 3-4cm > 3-4cm 治療法 生存 手術+全脳照射 (level 1) ○ ○ ○ SRS+全脳照射 (level 1) ○ ○ ○ SRS単独 (level 1) ○ 手術+局所照射 (level 3) ○ 手術+全脳照射 (level 1) ○ 手術+局所照射 (level 3) 切除不能 ≦ 3-4cm SRS+全脳照射 (level 1) 不良 (1ヶ月 未満) 全脳照射 (level 3) 全脳照射 (level 3) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SRS単独 (level 1) > 3-4cm 局所 全脳 認知 制御 制御 能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 緩和ケア(照射なし)(level 3) Practical Radiation Oncology (2012) 2, 210–225 脳転移のマネージメント 多発病変 ASTRO guideline 予後 良好 (3ヶ月 以上) 治療法 すべて ≦ 3-4cm Mass effect あり SRS+全脳照射 (level 1) ○ 局所 全脳 認知 制御 制御 能 ○ ○ SRS単独 (level 1) ○ 全脳照射(level 1) ○ ○ Mass effect のある腫瘍の切 除+全脳照射 (level 3) ○ ○ ○ ○ ○ ○ 全脳照射 (level 3) 不良 (1ヶ月 未満) 生存 全脳照射 (level 3) ○ 緩和ケア(照射なし)(level 3) 当科では3-4個まではSRS適応としている ○ ピンポイント照射 ガンマナイフ •201個の60Co-γ線源を3次元的に配置 •コリメーターヘルメットの孔の開閉調整により線量分 布を調節 •金属フレームでの侵襲的固定 ピンポイント照射 直線加速器を使用したラジオサージャリー IGRT画像誘導放射線治療 • 斜め2方向からの透視画像で位置照合 • 可動寝台での位置自動補正 • マスク固定(分割照射可能) ピンポイント照射 直線加速器を使用したラジオサージャリー(SRS) 脳転移 放射線治療の留意点 • 全脳照射 – 脱毛 – 認知能の低下(海馬の線量) • 定位放射線治療 – 浮腫、腫瘍内出血 – 脳壊死のリスク • 再発との鑑別が難しいことが多い • Bevacizumabの有用性 その他の緩和照射 肺癌 気管支狭窄 直腸癌 局所再発 肛門から突出する腫瘍 胃癌に対する姑息放射線療法の一例 照射前 照射後 80歳 男性 病期 組織 IV Small cell neuroendocrine carcinoma 40Gy/16fr 腺癌 50Gy/25fr CPT-11 68歳 男性 IV 78歳 男性 cT3N0 II 78歳 男性 残胃癌 IV 46歳 女性 IV 67歳 男性 IV 線量/分割 効果 有害事象 止血 胃・食道炎 Gr.1 止血 食思不振 Gr.1 照射後の 予後 18ヵ月 0.5ヵ月 (肝転移破 裂) なし 腺癌 50Gy/25fr 止血 3ヵ月 食思不振 Gr.2 腺癌 45Gy/18fr 止血 腺癌 45Gy/18fr PAC 止血、 軽度腹満感 通過障害 Gr.1 改善 腺癌 45Gy/18frT 止血 S-1 なし 9ヶ月 8ヶ月 3ヶ月 存命中 【胃癌に対する姑息照射】 国立がんセ ンター中央 (Hashimoto et al. J Cancer Clin Oncol 2009) Singapore (Tey et al. IJROBP 2007) MDACC (Kim et al. Acta Oncologica 2008) 症例数 線量/分割 19例 (完遂率 63%) 20Gy/10fr50Gy/25fr 中央値 40Gy/16fr 33例 37例 (24症例 で化学 療法併 用) 8Gy/1fr40Gy/16fr 中央値 30Gy/10fr 20-36Gy 中央値 35Gy/14fr 効果 (奏功率) 有害事象 (Gr3以上) 照射後の 予後 止血(68%) 食思不振 16% 嘔気 5% OS: 3.4m 止血(54%) 通過障害解除 嘔気 (25%) 嘔吐 鎮痛(25%) 3% 3% RT単独 止血(70%) 嘔気 15% 通過障害解除 CRT (81%) 嘔気 8% 鎮痛(86%) 好中球減少 8% 脱水 4% OS:4.7m OS: RT単独2.4m CRT 6.7m まとめ • 骨転移や脳転移に対して有効な薬剤などが 出てきているが、依然として放射線治療の役 割は大きい • 緩和照射にも高精度放射線治療の技術を用 いたり、患者さんの状況に応じた治療を提供 できるようになってきている
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