立川市潜在看護師再教育 ・就職支援事業に 就職支援事業に関する提言 する提言 平成 24 年 2 月 立川市潜在看護師再教育・ 立川市潜在看護師再教育・就職支援事業検討委員会 - 1 - はじめに 市民の安全・安心な生活のため、医療体制の充実は重要であり、 看護師の充足はその基本となるものです。看護師の資格を有してい て看護業務に従事していない潜在看護師は、都内で約5万人と推計 されています。 市民及び市内医療機関のニーズを踏まえ看護人材の確保を図るた め、平成 23 年 6 月に潜在看護師の就業に向けた支援事業を検討する 「立川市潜在看護師再教育・就職支援事業検討委員会」が設置され ました。これまで 6 回の委員会を開催し、市内の潜在看護師の就業 に向けた支援について検討を重ねてきました。ここに協議内容を提 言としてまとめましたので、報告いたします。 市内医療機関において看護人材が安定的に確保され、市民が安心 して医療サービスが受けられる医療体制を整備するために、この提 言を役立てていただければ幸いです。 立川市潜在看護師再教育・就職支援事業検討委員会委員長 阿 - 2 - 川 忠 郎 目 次 1 提言の趣旨(背景)………………………………………3 頁 2 現状と課題…………………………………………………4 頁 3 提言事項(具体的支援事業について)…………………5 頁 4 資料…………………………………………………………8 頁 【資料1】立川市潜在看護師再教育・就職支援事業検討委員会設置要綱 【資料2】検討委員会委員名簿 【資料3】検討委員会開催状況 【資料4】市内医療機関の看護師求人希望の状況(立川市医師会実施調査) 【資料5】市ホームページでの看護師対象のアンケート調査結果 - 3 - 1 提言の趣旨(背景) 立川市は地域福祉総合計画の一環として、増大する地域の保健医療ニーズに 対応し、その担い手である看護要員の育成・確保を目的に、立川市立看護専門 学校(以下、 「看護学校」とする。)を平成 7 年 4 月に開校した。しかしながら、 昨今の厳しい財政状況や自前の病院を持たない市が高度な看護ニーズに応える 学校運営を維持するのは困難であることから、平成 25 年 3 月をもって閉校する ことが市議会で決議された。閉校にあたっての議論において、これまで看護学 校は北多摩地域における看護師の供給に大きな役割を果たしてきたことから、 看護学校閉校後も看護人材の供給継続を図り、地域医療体制を整備・充実して いくための仕組みの検討が必要とされた。特に、看護人材の創出には、看護師 資格を保有しながら就業していない方(潜在看護師)への支援策を行い、市内 医療機関への就職に結びつける方策の検討が重要であるとの認識から、平成 23 年 6 月に「立川市潜在看護師再教育・就職支援事業検討委員会」が設置され、 11 名の委員により、看護人材の確保に関する現状と課題や具体的な支援策につ いて協議が行われた。 なお、潜在看護師の復職支援については、既に東京都が、ナースプラザで行 う再就業相談・あっせん事業や、最新医療に関する講義、採血や注射等の模型 を使った演習などの研修事業を実施しており、本委員会においては、先行する 都の研修事業を勘案し、さらに市内医療関係機関のニーズ等をふまえ、市の実 情に即した再教育・就職支援事業を提言するものである。 - 4 - 2 現状と課題 看護師の就労継続を困難とする要因や、潜在看護師が復職する際の課題につ いては、以下のような意見が出された。 1)市内医療機関の現状 市内には、平成 23 年 12 月末現在で、170 か所(7 病院と 163 診療所)の医 療機関があり、組織体制や規模により再教育・就業支援の課題も異なる。300 床以上の病院においては、入退職は多いものの看護職員はほぼ充足しており、 現任教育体制も整えられている。しかし 200 床以下の中小病院では看護職員の 充足や研修体制の整備に困難を感じている。また、診療所は病院とは違った勤 務体制であり、看護師に求める役割も病院とは異なる。このことから、医療機 関によって課題は異なり、それぞれの課題にあった方策をたてることが求めら れている。 2)仕事と家庭・育児の両立について 女性が働く場合、看護師に限らず、核家族化により祖父母による育児支援 が得られない、保育施設の不足で子どもを預けられないなど、保育環境が整 わないと働くことが困難な場合がある。さらに病棟勤務で夜勤のある看護師 は、不規則な勤務体制のため夜間保育の問題や子どもが病気になった場合に も急に休むことが難しいなどの看護職特有の問題もある。仕事をしているこ とで子どもにも、家族全体にも負担をかけてしまうという理由で思い悩み離 職する人も多い。両親が高齢になると、介護の問題も出てくる。しかしなが ら、医療機関に特化した保育や介護の支援策を市として実施することは困難 な状況にある。 3)潜在看護師の再就労を困難にしている要因 離職期間が長い看護師は知識、技術にブランクが生じた不安などから、高 度医療を実施する大きな病院より、療養病床や小規模の病院・診療所や老人 保健施設などを希望する人が多いと思われる。しかし、医療機関側の条件と - 5 - 就職を希望する看護師の勤務時間や福利厚生面、給料などの条件の折り合い がつかず、再就職には結びついていない。また、技術に不安があると、夜勤 で人手が少ないなどの条件での再就職を躊躇してしまう。 子育てや親の介護を行っている看護師の場合には、時間外労働や休日労働 の免除、短時間勤務という条件を希望する人が多く、これらの条件が整わな いと再就職に結びついていかない。 需要と希望をいかにマッチングさせるかが重要である。 4)再教育について 潜在看護師の離職期間にもよるが、数日間の復職研修での再就職は、知識 や技術の面から不安を持つ看護師が多いと考えられる。しかしながら、中小 の病院や診療所では人員や研修体制の問題から、中途採用者に十分な研修を 行うことが難しい状況にある。また、過去の勤務経験に応じた個々の再教育 プログラムで対応する必要があるが、指導者の確保など、新卒者の研修より 配慮すべき面も多い。さらに、就労を継続していくためには、受入側の就労 体制や多様な働き方を可能にするシステムが必要だが、十分な体制整備は困 難な医療機関もある。現職看護師の定着支援も、潜在看護師の再教育・就職 支援と同様に重要である。 このような現状から、市における再教育体制には東京都がナースプラザに 委託して実施している研修プログラムと連携した再教育体制の構築が必要で はないかと考える。 3 提言事項(具体的支援事業について) 市で実施する再教育・就職支援事業は、先行して実施されている東京都の事 業を補完する形で行うべきである。例えば、東京都ナースプラザが実施する復 職研修事業の7日間で足りない場合には、現場に即した個別プログラムによる 指導を市内の医療機関で受けるなど、ナースプラザや市内医療機関といった地 域の社会資源を活用した看護師の就職支援をしていくべきである。 - 6 - また、都の支援研修は、就職先が決まっていない方が対象であるが、就職先 が決まった後にさらに知識と技術を学ぶ機会が必要である。 なお、対象とする医療機関は、概ね病床 200 床以下の中小病院または診療所 とすべきである。 これらの議論をふまえ、具体的支援事業について次のとおり提言する。 1.再教育支援事業 目的:看護師の職場復帰に向けた不安を軽減し、再就職の促進及び就労継続 を図るとともに、医療機関の指導・教育体制の整備を支援する。 ① 研修支援制度 内容:潜在看護師が市内指定医療機関に再就職する場合、一定期間を研修期 間と位置づけ、その期間の再就労者本人と指導者の給与の一部を市が医 療機関へ補助する。研修期間は、夜勤を伴う医療機関の場合は最長3か 月、夜勤を伴わない医療機関の場合は1か月とする。 対象:支援の対象となる潜在看護師は、おおむね3年以上看護職を離れ、市 内指定医療機関に再就職の意欲があり、研修を必要としている方。市外 在住者も可とし、原則として東京都の地域就業支援病院等研修(5日ま たは7日コース)を受講した者とする。 申請:再教育支援事業の利用を希望する看護師本人は、就職先(予定を含む) の医療機関に申請書を提出する。申請を受けた医療機関は再教育計画書 を作成し、市の窓口へ助成申請する。市は申請を受理・審査の上、助成 の可否を医療機関及び看護師へ通知する。助成金は市から医療機関へ直 - 7 - 接交付する。 2.再就職支援事業 目的:再就職を目指す看護師が市内医療機関の情報を入手しやすい環境を整 備することで就職を促進し、市内の看護人材の確保を図る。 ① 東京都との連携(情報提供) 内容:東京都ナースバンクへ市内医療機関の情報を積極的に提供し、再就職 を希望する看護師への情報提供・求人あっせんにつなげる。またナース バンクと求職者・求人機関の状況について情報交換を行い、市内医療機 関の効果的なPRを支援する。 ② 東京都との連携(再就職説明会の開催) 内容:ナースバンク主催の再就職説明会(市内開催分)を共催し、会場や資 料を提供する。また、ナースバンクの協力を受け、立川市主催の再就職 説明会を開催する。 ③ 市の再就職支援事業等のPR 内容:市の再教育・就職支援事業の取組について、 「潜在看護師再就職支援情 報コーナー」を設置するとともに、担当の職員を配置し、広報やホーム ページで周知を図る。また、情報提供を希望する潜在看護師には、電子 メール等によりタイムリーにお知らせを配信し、就職や職場環境につい ての相談業務を行うなど心理的なサポートを行う。 - 8 - 4 資料 【資料1】 立川市潜在看護師再教育・就職支援事業検討委員会設置要綱 (設置) 第1条 市民及び市内医療関係機関のニーズを踏まえ看護人材の供給を図るため、 市内の潜在看護師の就業に向けた支援の仕組みについて検討する立川市潜在看 護師再教育・就職支援事業検討委員会(以下「委員会」という。)を設置する。 (所掌事項) 第2条 委員会は、次の各号に掲げる事項を処理する。 (1) 市内の潜在看護師の就業に向けた支援の仕組みに関すること。 (2) その他必要な事項に関すること。 (組織) 第3条 委員会は、委員 11 人以内をもって組織する。 (委員) 第4条 委員は、次の各号に掲げる者につき市長が任命する。 (1) 市内の医師 4人以内 (2) 学識経験者 4人以内 (3) 看護師の有資格者 2人以内 (4) 市職員 1人 (委員長) 第5条 委員会に委員長を置き、委員の互選によって定める。 2 委員長は、委員会を代表し、会務を総理する。 3 委員長に事故があるときは、あらかじめ委員長の指定した委員が、その職務を 代理する。 (会議の招集) 第6条 委員会は、委員長が招集する。 2 委員会は、必要があると認めたときは、委員以外の者の出席又は資料の提出を 求めることができる。 (任期) 第7条 委員の任期は、任命した日の属する年度の末日までとする。ただし、再任 を妨げない。 (守秘義務) 第8条 委員は、職務上知り得た秘密を他にもらしてはならない。 (謝礼) 第9条 第4条第1号から第3号までに掲げる委員の謝礼は、日額 10,800 円とする。 (庶務) 第10条 委員会の庶務は、健康推進課において処理する。 (委任) 第11条 この要綱の施行について必要な事項は、福祉保健部長が別に定める。 附 則 この要綱は、平成 23 年5月 11 日から施行する。 - 9 - 【資料2】 検討委員会委員名簿 委員名 要綱第 4 条関係 所属・役職など 委員長 阿川 忠郎 市内の医師 阿川眼科医院院長 委員長代理 香取 公明 市内の医師 かとり耳鼻咽喉科院長 委員 川野 辰夫 市内の医師 川野病院理事長 委員 木村 篤人 市内の医師 立川中央病院理事長 委員 島田 美喜 学識経験者 ヘルスプロモーション 研究センター 副センター長 委員 山口久美子 学識経験者 東京都多摩立川保健所 地域保健推進担当課長 委員 森田 桂 学識経験者 杏林大学保健学部 看護学科精神看護学 研究室 委員 浅野 和子 学識経験者 国立病院機構災害医療 センター看護部副部長 委員 荒井アヤ子 看護師の有資格者 看護師 委員 江崎久美子 看護師の有資格者 委員 佐橋恭子 市職員 - 10 - 立川市保健医療担当 部長 【資料3】検討委員会開催状況 開催日 会議内容 第 1 回会議 平成23年6月30日 ・辞令伝達 ・委員長の互選 ・潜在看護師再教育・就職支援の現状 について(東京都福祉保健局医療政 策部医療人材課 看護人材担当課長 中山富子氏) 第2回会議 平成23年8月9日 ・課題検討 第3回会議 平成23年8月30日 ・課題検討 第4回会議 平成23年10月25日 ・課題に対する具体的方策について 第5回会議 平成23年11月29日 ・課題に対する具体的方策について ・報告(医師会アンケートの結果、市 ホームページアンケートの結果) 第6回会議 平成24年1月31日 ・立川市潜在看護師再教育・就職支援 事業の提言(案)について - 11 - 【資料4】市内医療機関の看護師求人希望の状況(立川市医師会実施調査) 立川市潜在看護師再教育・ 立川市潜在看護師再教育・就職支援事業に 就職支援事業に伴うアンケート ●総アンケート回答数 61 病院(6 病院、55 診療所) ●求人について(▲希望する=6 病院、20 診療所▲希望しない=35 診療所) 配置時間帯(医療機関数) 配置時間 求人希望病院数(医療機関数) 看護師の求人を希望しない 看護師の求人を希望する 病院 交代制 日勤のみ 夜勤のみ その他 35 26 4 0 0 2 診療 所 4 13 0 3 ※複数チェックしてある場合などはその他へ 求人希望人数(求人数) 勤務形態 正職員 パート どちらでも 診療 所 11 9 0 16 10 6 病院 ※人数が未記入の場合は 1 人としてカウント 配置予定の診療科目(医療機関数) 病 診療 配置予定診療科目 院 所 内科・小児 1 7 皮膚科 1 産婦人科 1 2 療養型病床群 1 ICU 1 透析 2 耳鼻咽喉 1 整形外科 その他 1 6 2 希望勤務経験年数(医療機関数) 病 診療 希望勤務経験年数 院 所 新卒者 0 0 1~4年 2 5 5年以上 0 6 未経験可 1 1 複数回答・その他 3 8 配置する勤務部門(医療機関数) 病 診療 配置する勤務部門 院 所 病棟 4 0 外来 0 14 訪問・特養・透析 0 3 どちらでも 2 3 希望年齢(医療機関数) 希望年齢 特になし 60 歳以下 その他 ※40 歳以下、30 歳以下などはその他へ ○その他の希望として=子育てが終わっている人を希望する病院が6病院 - 12 - 病 診療 院 所 0 5 5 11 0 5 【資料5】市ホームページでの看護師対象のアンケート調査結果 1.調査目的 看護師資格を所持している方を対象にアンケートを行うことにより、看護 師の再就職や就労継続に関する意見などを把握し、「立川市潜在看護師再教 育・就職支援事業検討委員会」における潜在看護師の復職支援事業検討の参 考資料とする。 2.調査期間 平成 23 年 8 月 22 日から平成 23 年 11 月 25 日まで 3.回答数 30 人 4.調査内容及び調査結果 以下のとおり 問 1 あなたの年齢 あなたの年齢は 年齢は A1:10代 1人 A2:20代 3人 A3:30代 17 人 A4:40代 8人 A5:50代 0人 A6:60代 1人 A7:70代以上 0人 問 2 立川市内にお 立川市内にお住 にお住まいですか A1:立川市内在住 A2:立川市外 26 人 4人 - 13 - 問 3 現在、 現在、看護師として 看護師として就労中 として就労中ですか 就労中ですか A1:看護師として就労している 14 人 A2:現在、離職している 13 人 A3:看護師の資格を持っているが、 看護師以外の職に就いている 3人 問 4 離職し 離職し、再就職するとき 再就職するとき、 するとき、立川市内の 立川市内の病院を 病院を選びますか A1:市内病院を選ぶ 17 人 A2:市外で就職したい 2人 A3:看護師以外の仕事に就きたい 1人 A4:わからない 10 人 問 5 再就職先 再就職先を を選ぶ際に、重視する 重視するポイント するポイントはどのような ポイントはどのような ことですか( ことですか(3 つ以内でご 以内でご選択 でご選択ください 選択ください) ください) A1:育児支援策や福利厚生が充実 しているか 11 人 A2:通勤が便利か 24 人 A3:休暇がとりやすいか 17 人 A4:夜勤の軽減や短時間勤務の 体制があるか 16 人 A5:給与が希望にあっているか A6:人間関係がよいか A7:教育体制が充実しているか 5人 14 人 5人 A8:医療安全対策が充実しているか 2 人 その他: 1人 - 14 -
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