高効率バフィーコート抽出

アプリケーションノート
高効率バフィーコート抽出
Freedom EVO®プラットフォームによる信頼性の高いヒト血液からバフィーコートの抽出
はじめに
近年の個人診断は、一人一人に合った治療法、引いては最先端
診断に際し特に有用な体液はバフィーコートと呼ばれ、これは、凝
の個人医療という恩恵をもたらすために進歩し続けている。新時
固していない血液を遠心分離した際に、赤血球層と血漿との間に
代の研究と次世代の医療のために構想、新設された独立系非営
生じる白血球と血小板の層である。これまで多くの場において、全
利バイオバンクであるIntegrated Biobank of Luxembourg
血由来のバフィーコートの分離は面倒で時間のかかる手仕事で
(IBBL)は、そうした医療の進歩の最前線にある。今日の発見を未
あ っ た。 IBBLの 研 究 者 は 、 テ カ ン 社 の Freedom EVO プ ラ ッ ト
来の個別医療の革新へとつなげるには、個別医療の研究にあた
フォームでの自動化プロセスを用いたバフィーコート抽出の実行
り、バイオバンクが多数の患者から収集する高品質のサンプル
可能性と効率を試験し、評価した。
(全血、各血液分画、唾液等の体液および組織)と臨床データが必
要となる。世界的なEUのバイオバンクとして、IBBLは、臨床研究
バフィーコート抽出の自動化は困難ではあるが意義ある挑戦であ
を加速し、公衆衛生を向上させるべく、最先端のテクノロジーと共
る。それぞれの採血管内にある血液の体積が異なるのに加え、例
に最高品質のサンプルを幅広く提供している。
えば、感染状態にあれば白血球が増加する等、バフィーコート層
自体の量、粘度、組成における個人差が認められる。テカン社
Freedom EVOプラットフォームは、チューブ インスペクション ユ
ニット(TIU)を備え、自動化バフィーコート抽出のために最適化され
ており、手動でのプロセスに比べ、優れた結果を出している。
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アプリケーションノート
材料および方法
血漿
機器
テカン社 Freedom EVO 200 リキッドハンドリング ワークステー
ション、8 チャンネル リキッドハンドリング(LiHa)アーム付き
上層の下限
モジュール
ピック&プレース アーム
(PnP)
チューブ インスペクション ユ
ニット(TIU)
ロボティック マニピュ
レータ
(RoMa) Arm
Xtr-96 フラットベッド スキャナ
(FluidX)
Xsd-96Pro
(FluidX)
モジュールの説明/利点
採血管のハンドリング
分注先チューブ(96 本)の蓋を外
す・戻す
かして、940µL のバフィーコートをゆっくりと吸引して、赤血球層を
Xsd-48Pro
(FluidX)
BDK モジュール
分注先チューブ(48 本)の蓋を外
す・戻す
ワークテーブル上で HEPA フィル
ターを通した空気を提供
自動化作業の流れ
バフィーコート
分離層(実測による)
採取分画
下層の上限
血清と血液細胞の分離レベルを
確認
プレートを移動
赤血球層
図 2 分画血液の説明図
分注先チューブラックを探知
手動作業の流れ
手動でのバフィーコート抽出は、ピペットを使い、円を描くように動
ワークテーブルのレイアウトは図 1 に示す。
かき混ぜないようにして実施。
遠心分離した採血管の蓋を外して Freedom EVO 200 プラット
フォーム上に置き、チューブ インスペクション ユニットに移動。そこ
でレーザー光線を使ってバフィーコート層の位置を確認。リキッド
ハンドリング アームがらせん状に動いて 940μL のバフィーコート
を吸引(図 3)し、分画を分注先となるマイクロチューブへ移す。
Freedom EVO ワークステーションの構成とスクリプト作成を最適
化し、バフィーコートの収率と質を最大化。24 サンプルのバフィー
コート自動化抽出の所要時間はわずか 16 分(表 1)。
図 1 Freedom EVO ワークテーブル、バフィーコート(BC)抽出用に最適化し、
チューブ インスペクション ユニットを使用。
サンプルの調整
自動化プロセスでのサンプルスループット
サンプル数
1〜24 サンプル
バッチ処理時間
24 サンプルで 16 分前後
表 1 バフィーコート抽出のサンプルスループットの概要
もっと大きなバッチサイズでは、所要時間は比例して増大。
K2-EDTA (BD) 10ml 採血管の血液を 2,000g で 10 分間室温に
て遠心分離して、血漿、赤血球、それらの間にできた白色の薄層
(バフィーコート)に分離した(図 2)。
2
アプリケーションノート
DNA 収量
Freedom EVO でのバフィーコートの自動抽出のためにスクリプト
を慎重に最適化した後、バフィーコートから DNA を精製して抽出
の効率を確認した。約 100 名のドナーから採取した 8mL の血液
サンプルから、自動化した方法または手動の方法を用いてバ
フィーコート抽出し、DNA を精製した。自動化抽出プロセスは、手
動の抽出法と比べて、DNA 収量が多かった(表 3)。
血液 8mL
図 3 バフィーコートの自動採取は、ピペットをらせん状に上から下へ動かして
実施。
結果
DNA 収量(µg)
25 %
75 %
111.5
184.2
n
53
自動 BC 抽出
199.1
181.6
49
239.3
表 3 バフィーコートを自動抽出したところ、手動に比べて DNA 収量が増大。
白血球数の検証
自動化プロセスで抽出したバフィーコートの白血球(WBC)数が正
常なレベルであるか確認するため、3 名の健常人ドナーから抽出
したバフィーコートでフローサイトメトリー分析を実施(表 2)。WBC
の正常なサブポピュレーション率が検出された。
評価対象
リンパ球
(全細胞に対する%)
単球
(全細胞に対する%)
顆粒球
(全細胞に対する%)
CD3 T 細胞
(リンパ球に対する%)
CD19 B 細胞
(リンパ球に対する%)
手動 BC 抽出
中央値
145.2
バリデーション
バフィーコート抽出の効率を確認するため、手動と自動両方の抽
出プロセスで同量のバフィーコートを採取した後、採血管を目視確
認した。バフィーコートは、自動プロセスの方がより完全に採取さ
れた(図 4)。
自動 BC#1 自動 BC#2 自動 BC#3
33.9
39.4
37.1
6.5
6.7
9.8
59.6
53.9
53.1
66.7
72.9
67.1
11.1
10.9
14.3
表 2 自動プロセスで抽出したバフィーコート中の白血球のサブポピュレーショ
ンの割合は正常である。標準抗体を使ってフローサイトメトリーの実験を BD
Influx™ サイトメーターで実施。
手動 BC 抽出
自動 BC 抽出
図 4 同量のバフィーコート採取後の採血管を手動プロセス(左の 3 本の管)と
自動プロセスで比較(右の 3 本の管)。
3
アプリケーションノート
さらに定量的な方法でバフィーコート抽出の効率を確認するため、
フィーコートと比較して、白血球数と血小板数が多くなり、赤血球
バフィーコート中の血液細胞数を数え、全血の細胞数と比較した
の混入が減り、ヘモグロビンのレベルが低くなった。
(表 5)。自動プロセスで抽出したバフィーコートでは、手動抽出バ
全血
測定パラメータ
自動 BC 抽出
手動 BC 抽出
総細胞数
総細胞数
全血に対する
総細胞数
全血に対する
/量
/量
回収率(%)
/量
回収率(%)
平均
平均
47.2
45.0
WBC (106)
6
平均
95
26.6
56
RBC (10 )
36107
7405
21
9020
25
HGB (g)
1.088
0.225
21
0.271
25
1931
172
69
676
35
6
PLT (10 )
表 5 全血の血球数、ならびにバフィーコート、WBC(白血球)、RB (赤血球)、HGB(ヘモグロビン)、PLT(血小板)の自動抽出と手動抽出。
結論
Freedom EVO でのバフィーコート抽出自動化により、迅速で簡便
御社検査室のニーズに合わせた Freedom EVO ワークステーショ
かつ再現性のある抽出が可能となる。
ンのカスタマイズに関するさらなる詳細は、地区担当のテカン社コ

自動化した方法で抽出したバフィーコートからの DNA 収量は、 ンサルタントまでご相談ください。
手動での方法より高くなる。


自動化されたバフィーコート抽出方法によって、白血球の各
バイオバンク利用に関する詳細は、www.tecan.co.jp/biobanking
サブポピュレーションを確認できた。
まで。
バフィーコートの手動抽出と比べて、自動化によって高いス
ループットと再現性が保証され、操作者による差もなくなり、
サンプルトラッキングが自動的に行われて確実に確認するこ
謝辞
とが可能となる。
IBBL(所在地:6 rue Nicolas Ernest Barblé, L-1210
Luxembourg, Luxembourg)の Conny Mathay、Wim
柔軟性を最大に高め、変化する検査のニーズに答えるため、テカ
Ammerlaan、Fay Betsou の各氏にはデータをご提供いただき感
ン社 Freedom EVO ワークステーションは多数の拡張モジュール
謝申し上げます。
の装備が可能。
Tecan Group Ltd.では本文書において正確かつ最新の情報をご提供するよう最善の努力を尽くしておりますが、誤謬や脱漏が生じる可能性があります。したがって、
Tecan Group Ltd.では明示的または暗示的にかかわらず、本文書における情報の正確性または完全性につき、何らの表明または保証を行うものではありません。ま
た、本文書は予告なく変更する場合があります。記載された商標はすべて法律によって保護されています。本文書に記載された仕様書の技術的詳細および詳しい手順
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