固定化酵素リアクター : 化学発光の応用

学発光の応用-田畑勝好・戸谷誠之・村地
診 断 用 バ イ孝
オ リア クタ ー の中 核 を なす も の は, 生 体 成 分 分 析 を担 う試 薬 酵 素 を 固 相 に固
定 化 した リア クタ ー であ る。 こ の固 定 化 酵 素 リア クタ ー は小 型 で, 反 応 特 異 性 に富 み, 連
続 反 復 使 用 に耐 え,
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な い 。 本 稿 で は,
し, つ い で,
か つ, 分 析 機 器 部 品 と して の適 切 な信 号 を発 す る も の で なけ れ ば な ら
こ の よ うな 目的 に 叶 う固 定 化 酵 素 リア クタ ーを 作 製 す る基 礎 技 術 を 解 説
固 定 化酵 素 リア ク ター を 部 品 とす る実 際 の臨 床 化 学 分 析 例 を示 し, 特 に, そ
の 高 感 度 化 (し た が って 微 量 化) を 目指 す た め の化 学 発 光 に よ る 検 出 系 との 組 合 せ に つ い
て の研 究成 果 を述 べ る。
は じめ に
我 々 の体 内 で は, 生命 を維 持 す るの に必 要
な り, バ イ オ リア クタ ー の機 能 素 子 と して 固 定 化酵 素 は
な 分 解 反 応 や 合 成 反 応 が 行 なわ れ て い る。 これ らの反 応
重 要 な働 きを して い る。
を 触 媒 して い る の は, ほ とん どす べ て酵 素 とい う特 異 性
今 日, す で に 日常 使 用 され て い る酵 素 的分 析 法 が 多数
の 高 い 機 能 性 高 分 子 物 質 で あ る。 生 体 を取 り扱 う医 療 関
存 在 し, 血 清 中 の非 蛋 白質 性 の ほ とん どす べ て の有 機 成
係 に お い て は, こ の酵 素 を有 用 な道 具 と して活 用 す る の
分 を は じめ, 無 機成 分 の一 部 や ア ミラー ゼ な どの酵 素活
は きわ め て 自然 で, 理 にか な った こ とで あ る。 現 に, 臨
性 も, 今 や酵 素 を試 薬 と した分 析 法 に よ り測 定 され る時
床 化 学 分 析 にお い て は, か つ て は化 学 試 薬 に よる分 析 法
代 に な っ て い る (表1)。
が 用 い られ て い た が, 最 近 で は酵 素 試 薬 が 臨 床 化 学 分 析
固 定 化 酵 素 の形 で臨 床 化 学 分 析 へ の応 用 が 試 み られ て お
に適 して い る^<1)>た
め, そ れ に 代 わ っ て酵 素 を試 薬 と した
り, す で に グ ル コー ス測 定 用 に は グ ル コ ー ス酸 化 酵 素 あ
分 析 法 が さ か ん に 用 い られ て い る。 過 去20年
ほ ど の間
これ ら 試 薬 酵 素 の い くつ か は
る い は ヘ キ ソキ ナ ー ゼ と グル コー ス6-リ
ン酸 脱 水 素 酵
に, お もに微 生物 を 起 源 と した 有 用 酵 素 を 量 産 す る技 術
素, 尿 素 測 定 に は ウ レア ーゼ, 尿 酸 測 定 に は ウ リカ ーゼ
や 工 業 的 規 模 で精 製 す る技 術 が 進 歩 し, そ れ に酵 素 化 学
を 用 い た 固 定 化 酵 素 リア クタ ーが 実 用 化 され て い る。 最
の進 歩 と相 ま っ て, 今 日で は酵 素 の 臨床 化 学 分 析 へ の応
近, 写 真 フ ィル ム作 製 技 術 を 応用 して, 酵 素 を 多 層 フ ィ
用 につ い て, 昔 とは 本質 的 に 異 な った 展 開 を 見 るに 至 っ
ル ム内 に 閉 じ込 め て 用 い る 乾 式 化 学 法 (dry reagent
た の で あ る。
chemistry)
が 開 発 され, Eastman
Kodak
社 や富 士 写 真
酵 素 を使 い捨 て にせ ず, 反 復使 用 した い とい う夢 は 固
フ イル ム社 か ら, そ の製 品 が 市販 さ れ, 臨床 化 学 分析 に
定 化 酵 素 の 出現 に よっ て ほ ぼ叶 え られ た。 す なわ ち, 酵
お い て さか ん に使 用 され る よ うに な っ た。 この酵 素 内 蔵
素 の固 定 化 技 術^<2,3)>の
導 入 に よ り, 触 媒 で あ る酵 素 を安 定
多層 フ ィル ム も一 種 の 固 定化 酵 素 の応 用 で あ る。
化 し, さ ら に一 度 使 用 した あ と回収 して 反 復 使 用 した
生体 試 料 中 の微 量 成 分, た とえ ば ホ ル モ ンな どの定 量
り, 一 定 空 間 に 高 密 度 に存 在 させ る こ とが で き る よ うに
に偉 力 を発 揮 す る分 析 法 で, す で に実 用 化 され て い る酵
Masayoshi
606
Tabata,
ratoryMedicine,
Immobilized
Masayuki
Totani,
京 都 市 左 京 区 聖 護 院 川原 町
Enzyme
Faculty
of
Reactors-Their
54)
Takashi
[College
Medicine,
of
Kyoto
Use
with
Murachi,
Medical
University,
Sakyo-ku
Chemiluminescence
Key 【固
word定 化 酵 素 】 【化 学 発 光 】 【臨 床 化 学 分 析 】
220
京 都 大 学 医 療 技 術 短 期 大 学 部
Technology,
and
, Kyoto
Detection
,
Department
606,
Japan]
同 医 学 部 臨 床 検 査 医 学 教 室 (〒
of Clinical
Science
and
Labo
固 定 化 酵 素
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表1.
a)〔 検 出 法〕H_2O_2, NAD(P)H,
素 免 疫 測 定 法 (enzyme
ADPの
immunoassay)
リ ア ク タ ー
27
酵 素 を 試 薬 と し た 臨 床 化 学 分 析
検 出法 は 文 献21を
に も 固定 化 酵 素
参 照 され た い。
1.
酵素の固定化法の種類
が 応 用 され て い るが, リア クタ ー とい う定 義 か らは 少 し
酵 素 の固 定 化 方 法 に は多 くの報 告 が あ り, 担 体 結 合
離 れ て い る と思 わ れ るの で, こ こで は 省 略す る。 固 定 化
法, 架 橋 法, 包 括 法 な ど に大 別 す る こ とが で き る^<2,3)>。
担
酵 素 リア ク タ ーは酵 素療 法, 医 用 高 分 子 材料, 人 工 臓 器
体 結 合 法 は 水 不 溶 性 の担 体 に酵 素 を結 合 させ る方 法 で,
な ど治 療 に も応 用 され て い るが, こ こで は 診 断 (臨 床 化
そ の結 合 様 式 に よ っ て担 体 結 合 法 に は, 酵 素 を イ オ ン交
学 分 析) へ の応 用 に関 してだ け 述 べ る。
換 樹 脂 や そ の他 の支 持 体 に吸 着 させ た り疎 水 結 合 させ た
りす る吸 着 法, ア ガ ロー ス の よ うな 多 糖 類 誘 導 体 や 多 孔
I. 酵 素 の 固 定 化
性 ガ ラス粒 子 な ど の 表 面 を あ らか じめ 活 性 化 してお い
て, そ れ に酵 素 を共 有 結 合 させ る共 有 結 合 法, イ オ ン交
酵 素 を高 分 子 性 の支 持 体 に結 合 また は包 括 した ま ま で
換 基 を もつ 担 体 に酵 素 を イ オ ン的 に 結 合 させ る イ オ ン結
そ り機 能 を発 揮 させ るた め に は酵 素 蛋 白質 が も との立 体
合 法 な どが あ る。 架橋 法 は 水不 溶 性 の 担 体 を使 用 しな い
構造 を失 わ な い で 固定 化 され, 活 性 部 位 を機 能 発 現 に有
で, 2個 も し くは そ れ 以上 の 官 能 基 を 有 す る試 薬 を用 い
利 な状 態 に置 くこ とが 絶 対 必 要 で あ る。 そ のた め に, い
て酵 素 と酵 素 を 架橋 して 固 定 化 す る方 法 で あ る。 包 括 法
ろ い ろ な支 持 体 や 固定 化 方 法 が 開 発 ・改 良 され て きた 。
に は 格 子型 とマ イ ク ロ カ プセ ル 型 とが あ り, 前 者 は た と
え ば ア ク リル ア ミ ドゲル を 作 るに 際 して酵 素 溶液 を共 存
さ せ, 酵 素 分 子 を 重 合 体 の網 目 の 中 に 閉 じ込 め る方 法 で
221
28
蛋白質 核酸
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表2.
222
酵 素
共 有 結 合 法 に
Vol. 31
No. 3
(1986)
よ る 酵 素 固 定 化 の 例
固 定 化 酵 素
あ り, 後 者 は半 透 膜 性 の ポ リマ ー皮 膜 に よっ て親 水 性 の
29
リ ア ク タ ー
シ ッ フ塩 基 を 作 らせ て 結 合 させ る方 法^<7)>と
が あ る。 ジ ア
酵 素 分 子 を 膜 内 に包 み込 ませ る方 法 で あ る。 どの方 法 が
ゾ化 法 で は 多糖 類, ポ リア ク リル ア ミ ド, 多 孔 性 ア ル キ
よい か を 評 価 す る こ とは酵 素 の利 用 目的 あ るい は酵 素 の
ル ア ミン グ ラ スな ど, 臭 化 シ ア ン活 性 化 法 で は 多糖 類 と
性 質 が そ れ ぞ れ違 うの で 困難 で あ るが,
リア ク タ ーの 機
くに セ フ ァ ロ ー スな ど, アル キ ル化 法 で は ハ ロゲ ン化 ア
能 素 子 と して 酵 素 を 用 い る と きは, 固 相 へ の 結 合 が 強 固
セ チ ル 誘 導 体,
で あ る共 有 結 合 方 式 が よ く用 い られ て い る。 どの よ うな
よ く使 用 され てい る。
酵 素 で も固 定 化 され るか とい うとそ うで は な く, 一 般 に,
ト リア ジ ニ ル誘 導 体 な どが 支 持 体 と して
共 有 結 合 法 に よ る酵 素 蛋 白質 の結 合 収 率 お よび 酵 素 活
不 安 定 な酵 素 は固 定 化 され に く く, 固 定 化 され て もそ の
性 の回 収 につ いて は, そ の結 果 を表3に
固定 化 収 率 は低 い傾 向が あ る。 詳 し くは, 文 献2∼4を
結 合 収 率 お よび 相 対 比 活 性 は酵 素 量 と支 持 体量 と の割 合
参 照 され た い。
に よ っ て違 っ て くるが, 一 般 に表3に 示 され て い る割 合
で は60∼70%お
2.
よび50∼60%程
ま とめ て 示 す 。
度 で あ った 。
固 定 化 酵 素 の 支持 体
II.
固 定 化酵 素 の支 持 体 に な り得 る も の は 自然 界 に多 く存
分 析 に応 用 され る 固 定 化 酵 素 の
形 状 と特 徴
在 し, また, 多 くの合 成 高 分 子 も 開発 され た。 吸着 法 で
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は イオ ン交 換 基 を もつ 多糖 類 誘 導 体 や イ オ ン交 換 樹 脂 の
よ うな 合 成 高 分 子 の誘 導 体, 共 有 結合 法 で は 多 孔 性 アル
こ れ ま で 臨床 化 学分 析 に 応 用 され て きた 固 定 化 酵 素 の
キ ル ア ミン ガ ラ ス, ナ イ ロ ン, ポ リス チ レ ンな ど, 包 括
形 状 に は カ ラ ム状, チ ュ ー ブ状 お よび 膜 状 に大 別 す る こ
法 で は ポ リア ク リル ア ミ ド, ポ リビ ニー ル アル コー ルな
とが で き る。
ど の ゲ ル お よび 天 然 高 分 子 物 質 の デ ン プ ン, コ ラ ー ゲ
ン, ポ リ ウ レタ ンな どが よ く用 い られ る。 実 際 に酵 素 を
1.
酵 素 カラ ム
固定 化 す る とき は, 支 持 体 に置 換 基 を 導 入 して 活 性 化 し
酵 素 が 固 定 化 され た 粒 子 を ミニ カ ラ ム に充 填 して 用 い
な け れ ば な らな い。 ど の支 持 体 が よい か を 評 価 す る こ と
る。 図1 (a) は 筆 者 らが 多 用 した 酵 素 カ ラム を 図 示 した
は 固 定化 方 法 と同様 に困 難 で あ る。 一 般 的 に は, 多 孔 性
も の で^<6)>,
これ を 連 続 流 動 方 式 で あ る オ ー トア ナ ラ イザ
で 表 面 積 の大 きい支 持 体 が よ く用 い られ る。
ーや 化 学 発 光 法 と組 み 合 わ せ た フ ロー イ ン ジ ェ ク シ ョン
分 析 (flow injection analysis ; FIA)
3.
システムに装着 し
て, 血 液 中 の尿 酸^<6,8)>,
グル コ ー ス^<6,8)>,
尿 素 窒 素^<9,10)>,
コ
共 有 結 合 法 に よ る 固 定化
分 析 試 薬 に は共 有 結 合 法 で 固定 化 され た 酵 素 が よ く用
レス テ ロー ル^<11)>な
どを 測 定 した 。 固定 化 酵 素 リア クタ ー
い られ て い るの で, 共 有 結 合 法 の具 体 的 な例 を表2に 示
を オ ー トア ナ ライ ザ ーやFIAの
す 。 そ の 中 で一 般 的 に よ く用 い られ て い る方 法 は, シ ッ
分 析 シ ス テ ム に組 み込 ん で用 い る場 合, 加 圧 され た 流 体
フ塩 基 結 合 法, ジ ア ゾ化 法, 臭 化 シア ン活 性 化 法, ア ル
が 通 過 す る際, 支 持 体 が 膨 潤 した り圧 縮 され た り して壊
キ ル 化 法 な どで あ る。 これ らの反 応 に 関与 す る酵 素 蛋 白
れ た り, 目詰 ま りしな い よ う, 粒 子 状 支 持 体 と して硬 体
質 中 の官 能 基 と して は, N末
で あ る ガ ラス が好 ま れ る。 多 孔 性 ガ ラ ス粒 子 を支 持 体 と
端 の α-ア ミノ基,
リジ ン
よ うな 連 続 流 動 方 式 の
の ε-アミノ基, チ ロ シ ンの フ ェ ノ ール 基, ヒス チ ジ ンの
して 多用 した筆 者 らの 固 定 化酵 素 カ ラ ム リア クタ ー に は
イ ミダ ゾ ール 基 な どが あ る。 シ ッ フ塩 基 結 合 法 で は支
大 きな 特 徴 が3つ あ る。
持 体 と して多 孔 性 アル キ ル ア ミンガ ラ ス^* (粒 子 サ イ ズ
125∼177μm,
孔 径50nm),
架橋 試薬 と して グル タル ア
ル デ ヒ ドが よ く用 い られ る。 これ に は ガ ラ ス粒 子 に 結 合
(1)
多 くの酵 素量 が 固 定 化 され る の で, 基 質 の分 解
率 が 大 き くな る。
(2)
支 持 体 と して用 い る無 機 高 分 子 の ガ ラス や ア ル
した グ ル タ ル ア ル デ ヒ ドの アル デ ヒ ド基 と 酵 素 の ア ミ
ミナ は 微 生 物 に 対 す る防 御 とい う点 で も有 利 で, 細 菌 繁
ノ基 とで シ ッフ塩 基 を 作 らせ て 結 合 させ る方 法^<5∼6)>と
グ
殖 お よび そ れ に よ る分 解 の 被 害 を受 け に くい とい う こ と
ル コー ス酸 化 酵 素 や ペ ル オ キ シ ダ ーゼ の よ うに, そ の構
で あ る。 そ の 結 果, 長 期 間 の室 温 保 存 も可 能 とな る。
造 中 に糖 鎖 を含 む 酵 素 を 過 ヨ ウ素 酸 に よ り酸 化 して, ジ
アル デ ヒ ド残 基 と し, これ と ガ ラ ス粒 子 の ア ミノ基 とで
*
(3)
連 続 流 動 方 式 の 分 析 機 に カ ラ ム リア クタ ーを 挿
入 す れ ば, 流 体 の通 過 性 が 問 題 に な るが, ガ ラス 粒 子 に
アル キル ア ミン ガ ラ ス粒 子 は 市 販 品 もあ るが, 多 孔 性 ガ ラス 粒 子 か ら 自製 す る こ と もで き る。 す なわ ち,
1gの
多 孔 性 ガ ラス 粒
子 に20mlの10%
(v/v) γ-ア ミノプ ロ ピル トリエ トキ シ シ ラン 水 溶 液 を 加 え, 6N塩 酸 でpH3∼4に
調 整 して, 75℃
で2時 間振 と うしな が ら反 応 させ る。 反 応 後, 蒸 溜 水 で よ く洗 浄 し, 115℃ で 少 な くと も4時 間 乾 燥 させ る。
温浴槽
223
30
蛋 白 質
核 酸
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表3.
a)
AAガ
b)
GA
数
酵 素
種
の
Vol. 31
酵
素
の
No. 3
固
定
(1986)
化
ラス : ア ル キ ル ア ミンガ ラス ビー ズ
: グ ル タ ル ア ル デ ヒ ド法, 糖 残 基 : 糖 残 基 を利 用 す る 固定 化 方 法
(a)
(b)
図1.
固 定 化 酵 素 リ ア ク タ ー の 例
酵 素 を 固 定 化 した ガ ラス 粒 子 を 充 填 して 作 製 した ミニ カ ラム^<6)>
チ ュー ブの 内 壁 に 貼 り付 け られ た ガ ラス 粒 子 に酵 素 を 固 定 して つ くられ た酵 素 チ ュー ブ^<13)>
酵 素 を 固 定 化 し, そ れ を 内径1.5mm,
長 さ20mmの
カ
ス粒 子 を貼 り付 け, そ の ガ ラ ス粒 子 に酵 素 が 固 定 化 され
ラム に充 填 して連 続 流 動系 に装 着 し, 空 気 分 節 流 を1
た も の 〔図1
ml/minの
て, 固 定 化 され る酵 素 量 を多 くす るた め, チュー ブ 内面
流 速 で直 接 カ ラ ム に注 い で, 圧 損 を調 べ てみ
(b)〕 とが あ る。後 者 は表 面 積 を大 き く し
る と, そ れ ほ ど圧 損 は な く, 分 析 値 に も影 響 を及 ぼ さ な
に多 孔 性 ガ ラス粒 子 が 貼 り付 け られ てお り, こ のた め,
か った^<12)>。
従 来 は数mの 長 さ の チ ュー ブ を使 用 して い た の が,
cmあ
2.
酵 素 チ ュー ブ
リア クタ ー の活 性 は カ ラ ム リア ク タ ーに 比 べ て, リア ク
酵 素 チ ュ ー ブ^<13,14)>に
は チ ュー ブ内 壁 に 酵 素 が 何 らか の
方 法 で 固 定 化 さ れ た も の と,
224
10
まり の 長 さ に短 縮 す る こ とが で き た^<13)>。
チューブ
チ ュ ー ブ 内面 に多 孔 性 ガ ラ
タ ー を通 過 す る流 速 に よ る影 響 はあ ま り受 け な か った 。
固 定 化 酵 素
31
リ ア ク タ ー
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図2.
固 定 化 ク レ アチ ニン デイ ミナ ーゼ ・グル タ ミン酸 脱 水 素 酵 素 カ ラ ム リア ク タ ー を装 着 した オ ー
トア ナ ライ ザ ーに よ る血 清 ク レ アチ ニン の 自動 分 析 のた め の フ ロー ダ イ ア グ ラム^<15)>
C : 固 定 化 ク レア チ ニン デ イ ミナ ー ゼ カ ラ ム リア ク タ ー, G : 固定 化 グル タ ミン酸 脱 水 素 酵 素 カ ラ ム リ
ア ク タ ー, SMCお
3.
よびDMC
: シン グル お よび ダ ブル ミキ シン グ コイ ル 。
酵 素 膜
酵 素 を ゲル 包 括 す る とか, 高 分子 と結 合 させ る とか し
た あ と膜 状 に 成 形 した 酵 素 膜 (enzyme
membrane)
す でに 存 在 す る膜 に 酵 素 を 結 合 させ た酵 素 膜
boundmembrane)
と,
(enzyme
とが あ る。 これ らは, 現 在, 酵 素 電
極 の酵 素 膜 と して用 い られ て い る。
III.
固 定 化 酵 素 の 分析 用 リア ク タ ー
と し て の 応 用^<15,16)>
オ ー トア ナ ラ イザ ーやFIAシ
ステ ムに 代 表 され る連
続 流 動 型 自動 分 析 計 に, 固 定 化 酵 素 を 機 能 素 子 と して 組
み 込 む に は, 溶 質 の逆 方 向 へ の拡 散 が 最 小 で あ る カ ラ ム
状 固 定 化 酵 素^<6,8,11)>を
採 用 す るの が 最適 で あ る。 液 の流 路
に, 方 向性 の あ る固 定 化 酵 素 リア クタ ーを 使 用 す る こ と
図3.
に よ っ て可 能 に な った 分 析 例 につ い て述 べ る。
1.
オ ー トアナ ラ イザ ーヘ の応 用
図2と 図3に
Proteus sp.,
(Corynebacterium lilium
ク レアチ ニ ンデ イ ミナ ーゼ
ATCC,
と固 定 化 ク レ アチ ニン デ イ ミナ ー ゼ ・イ
も とか ら存 在 す る遊 離 のNH_3を
は グ ル タ ミ ン酸 脱 水 素 酵 素 (GLDH,
東 洋 紡) と,
日立726法
ンドフ ェ ノー ル 法 との 相 関
15990,
協 和 醗 酵)
まず 固 定 化GLDHリ
アクタ ー に よっ て 溶 液 中 か ら除 去 し 〔(1) 式 〕, 次 に
NH_3が
除 去 され た ク レア チ ニ ン溶 液 が 固 定 化 ク レア チ
ニ ンデ イ ミナ ーゼ リア クタ ー を通 過 す る間 に ク レア チ ニ
が, 別 々 に固 定 化 され た 多 孔 性 ア ルキ ル ア ミ ンガ ラ ス粒
ンが 水 解 され てNH_3が
子 を ミニ カ ラム (内径1.5mm,
に 同 じ割
を イ ン ドフ ェ ノー ル反 応 〔(3) 式 〕 を 利用 して 測 定 す る
合 で重 層 して充 填 し, テ クニ コ ン社 の オ ー トア ナ ラ イ ザ
ー に組 み 込 ん で血 清 中 の ク レア チ ニ ンを定 量 す る系 につ
こ とに よ り, ク レア チ ニ ンを定 量 す る。血 清 中 に も とか
い て の概 要 を示 して あ る^<17)>。
そ の測 定 原 理 は血 清 中 に,
が 水 解 され て 生ず るNH_3濃
長 さ60mm)
ら存 在 す る遊 離NH_3濃
生 成 さ れ 〔(2) 式 〕, そ のNH_3
度 は, 正 常濃 度 の ク レ ア チ ニ ン
度 とほ とん ど等 しい た め,
225
32
蛋
白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
No. 3
(1986)
に な った 。
GLDHと
ク レア チ ニ ンデ イ ミナ ー ゼ の 至 適pHの
異
な る2つ の酵 素 反 応 を 同 じ緩 衝 液 中 で 連 続 的 に 進 行 させ
る場 合,
使 用 す る緩 衝 液 のpHが
響 を 及 ぼ す。GLDHと
反 応速 度 に 大 きな 影
ク レ ア チ ニ ンデ イ ミナ ー ゼ のpH
活 性 曲 線 を 図4に 示 す 。GLDHと
ク レア チ ニ ンデ イ ミ
ナ ー ゼ を コ ン ビネ ー シ ョンで 使 用 す る とき, 溶 液状 酵 素
の 至 適pHは8.0∼8.5で
あ る の に対 して, 固 定 化 酵 素
の 場 合 はpH7.5∼8.0で,
遊 離 酵 素 に比 べ て酸 性 側 に大
きな 広 が りを 示 し, 特 に 固 定 化GLDHの
顕 著 で, 見 か け のK_m値
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に よ り両酵 素 の 至 適pHの
ク レア チ ニン デ イ ミナ ー ゼ (a)
水 素酵 素 (GLDH)
(b)
のpH活
(●) 固 定 化 酵 素,
と グル タ ミン酸 脱
性 曲線^<15)>
差 が 小 さ くな った 。 した が っ
緩 衝 液 中 で両 酵 素 反 応 を行 な っ
た 。本 法 は1時 間60検
体 の分 析 速 度 で の測 定 が 可 能 で
あ り, 10mg/dlの
ク レア チ ニ ン濃 度 ま で直 線 性 を示 し,
再 現 性 も よ く,
ク レア チ ンの 影 響 は ま った くな く, 遊
約3mg/dlま
で完 全 に除 去 す る こ とが で き
た。 本 法 に よ り得 られ た血 清 ク レア チ ニ ンの測 定 結 果 は
ヤ ッ フ ェ反 応 を用 い た 日立726型
(○) 溶 液状 酵 素 。
自動 分 析 機 に よ って
得 られ た結 果 とは よ く相 関 (γ=0.975)
表4.
グル タ ミン酸 酸 脱 水 素 酵 素 (GLDH)
の アン モ ニ ア,
ク レア チ ニン デ イ ミナ ー ゼ の ク レ アチ ニン に 対 す る見
それ
て, 本 法 で はpH7.5の
離NH_3は
図4.
場 合 に それ が
も著 し く減 少 し (表4),
値(y=0.94x+0.06)
した が, 少 し低
を示 した (図3)。
か け のK_m値^<15)>
2.
化 学 発 光法 と 組み 合 わ さ れ たFIAシ
ステ ムヘ の
応用
溶 液 中 で の発 光 現 象 を分 析 の手 段 に用 い る方 法 に は,
生 物 発 光 (bioluminescence)
minescence)法
ェ ラ ー ゼ を用 い るATPの
ーゼ を用 い るNADHの
血 清 中 の 遊 離NH_3を
無 視 す る こ と が で き ず,
何 らか の
法 と 化 学 発 光 (chemilu
とが あ る。生 物 発 光 法 は, ホ タル ル シ フ
定 量, バ クテ リアル シ フ ェ ラ
定 量 , ペ ル オ キ シ ダー ゼ とル ミ
ノ ー ルを 用 い るH_2O_2の 定 量 な ど に用 い られ てい る。最
方 法 で 溶 液 中 か ら 除 去 しな け れ ば な ら な い 。 本 法 は 方 向
近, 両 者 と も酵 素 免 疫 測 定 法 や 生 体 成 分 の 分 析 に 応用 さ
性 の あ る 固 定 化 酵 素 リ ア ク タ ー を 使 用 す る こ と に よ り,
れ て きて い るが, こ こで は 筆 者 らが 生 体 成 分 の 分 析 に 用
い たK_3Fe (CN)_6と ル ミノー ル を使 用 す る化 学 発 光 法 に
NH_3+α-ケ
→^^<
トグ ル タル 酸+NADPH+H^+
GLDH>
つ い て 述 べ る。
L-グ ル タ ミン酸+NADP^+
(1)
表1に 示 され て い る よ うに, 酵 素反 応 に よ るお もな最
ク レ アチ ニン+H_2O
終 信 号 はH_2O_2, NH_3, NAD(P)Hの3つ
で あ る。 しか
→^^<
クレアチ ニン>
__<デイミナーゼ>N-メ
し, ル ミノ ール 化 学 発 光 法 に よ り実 用 的 に測 定 可能 な物
チル ヒ ダン トイン+NH_3
(2)
<ナ トリウム>イン
GLDH反
応
質 はH_2O_2だ け で あ って^<18,19)>,
他 の物 質 は測 定 で き な い。
しか し, 筆者 らが 開 発 した酵 素反 応系 を 用 い る と, NH_3
NH_3+フ ェ ノ ール
→^^<
ニ トロプル シッ ド>__
やNAD(P)HをH_2O_2に
ドフ ェ ノール カ レー
(3)
〔(1) 式 〕 と ク レ ア チ ニ ン デ イ ミナ ー ゼ 反 応
変 換 す る こ とが で き, そ れ に よ
りル ミノ ール 化 学 発 光 法 に よ るNH_3やNAD(P)Hの
定 量 が 可 能 に な つた^<10)>。
そ の測 定 原 理 はNH_3はGLDH
〔(2) 式 〕 を 別 々 に 進 行 さ せ る こ と が 可 能 に な っ た た め
反 応 に よ り α-ケ トグル タル酸 と 反 応 して, L-グ ル タ ミ
に,
ン酸 に な り, このL-グ
ブ ラン ク チ ャ ン ネ ル を 必 要 と しな い,
226
簡単な測定系
ル タ ミン酸 をL-グ
ル タ ミン酸 酸
33
固 定 化 酵 素 リ ア ク タ ー
化 酵 素 (GLXD, Streptomyces sp.,
ヤ マ サ 醤 油) で酸 化
分 解 す る と, H_2O_2が 発 生 す る。 す な わ ち,
GIXDの2つ
GLDHと
の 酵 素 反 応 に よ り, 1モ ル のNH_3は
NH_3+α-ケ トグル タル酸+NADPH+H^+
→^^< GLDH>
L-グルタ ミン酸+NADP^+
図5.
アン モ ニ ア測 定 用 固 定 化GLDH・GLXDカ
ア ク タ ー^<10)>
(a)
(b)
固定 化 グル タ ミン酸 脱 水 素 酵 素 (GLDH)
固 定 化L-グ ル タ ミン酸 酸 化 酵 素 (GLXD)
ラム リ
L-グル タ ミン酸+O_2
→^^< GLXD>
α-ケトグル タル酸+NH_3+H_2O_2
1モ ル のH_2O_2に 変 換 さ れ た こ とに な る。 こ のH_2O_2を
リア ク タ ー
リア ク タ ー
ル ミノー ル 化 学 発 光 法 で 測 定 す る こ とに よ り, NH_3濃
度 を 求 め る こ とが で き る。 こ の原 理 を用 い た方 法 は, 方
向 性 の な い 溶 液 状 の 酵 素 を 用 い て は行 な う こ とが で きな
い 。す な わ ち, GLXD反
応 に よ ってL-グ
酸 化 分 解 され る とき, H_2O_2と 同時 にNH_3が
ル タ ミン酸 が
のNH_3はGLDH反
素 を 用 い る と最 初 に あ っ たNH_3を
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図6.
フ ロ ーイン ジ ェ クシ ョン分 析 方 式 に お い て使 用 され
発 生 し, こ
応 の 基 質 に な るた め, 溶 液 状 の酵
定 量 す る こ とが で き
る尿 素 窒 素 測 定 用 固 定 化 酵 素 リア ク ター^<10)>
な い 。 しか し, 図5に 示 す 筆 者 らが 開 発 した 固 定 化 酵 素
カ ラ ム リア クタ ーを 用 いれ ば, 化 学発 光 法 に よ るNH_3
測 定 が 可 能 に な る。 固 定 化GLDHと
固 定 化GLXDを
重 層 して カ ラ ム に充
填 し, こ の カ ラム に ポ ン プで 圧 を加 え
てNH_3溶
港 を 通 す と, GLXD反
よっ て 生成 され たNH_3は
応に
強制的 にカ
ラ ムか ら押 し出 さ れ るた あ に, 個 定 化
GLDHと
は 接 触 す るこ とが で きず,
そ れ ゆ え, 最 初 か ら存 在 したNH_3溶
液 中 のNH_3だ
け を測 定 す る こ とが 可
能 に な る 。 次 に, 固 定 化 ウ レァ ー ゼ ・
GLDH・GLXDの
図7.
フ ロー イン ジ ェ ク シ ョン分 析方 式 の ダ イ ア グ ラム^<8)>
順 に 重 層 して 充 填
され た カ ラム リア ク タ ー (図6)
を使
用 す れ ば, 次 の よ うに ウ レア ーゼ に
よ っ て尿 素 が水 解 され てNH_3が
(NH_2)_2CO+H_2O
→^^<
ウレアーゼ>
され, そ のNH_3を
生成
2NH_3+CO_2
測 定す ることに よ
っ て, 尿 素 窒 素 を 測 定 す る こ とが で き
る。 使 用 さ れ た 尿 素 窒 素 測 定 のた め の
内径1mm,
長 さ30mmの
カラム リ
ア クタ ー に は ウ レ ア ー ビ2mm,
20mm,
GLXD
8mmの
GLDH
長 さに そ れ ぞ
れ の酵 素 が充 填 され て い る。
FIAシ
ス テ ム を用 い た 尿 素 窒 素 測
定 のた め の フ ロー ダ イ ア グ ラ ムを 図7
図8.
う ず 巻 状 反 応 セ ル の 構 造^<8)>
(a)
うず巻 状 反応 セル の正 面 図 (大 き さ0.7×0.7×196mm,
(b)
うず 巻状 反 応 セ ル を 装 着 した 発光 計 測 計 の 側 面 図
容 量96μl)
に 示 す 。 使 用 す る試 薬 はNADPHと
α-ケ トグ ル タ ル酸 を 含 ん だ10mM,
227
34
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
No. 3
図10.
(1986)
溶 液 状 ウ レ ア ーゼ ・イン ドフ ェ ノ ール 比 色 法 と
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固 定 化 ウ レア ー ゼ ・GLDH・GLXD化
との 相 関^<10)>
図9.
尿 素 窒 素 標 準 液 の分 析 結 果 の記 録 と検 量 線^<10)>
pH7.5リ
ン酸 緩 衝 液, 0.7mMル
(CN)_6で,
反 応 セ ル流 出 口で の これ ら3種 の試 薬 の混 合
溶 液 のpHが
10.5で
学発光法
ミノ ー ル, 20mM
K_3Fe
発 光 強 度 に大 き く影 響 し, 至 適pHは
約
あっ た。 ル ミノ ー ル溶 液 やK_3Fe (CN)_6溶 液 も
発 光 強 度 に大 き く影 響 す る。 ル ミノ ー ル 溶 液 とK_3Fe
(CN)_6溶 液 のみ を 混 合 して も, か な りの発 光 が認 め られ
るた め, H_2O_2含 有 緩 衝 液 と発 光 試 薬 を 直 接 反 応 させ る
とバ ッ クグ ラウ ン ド値 が非 常 に高 くな って測 定不 可能 に
な る。 そ れ ゆ え, ル ミノー ル 溶 液 とK_3Fe (CN)_6溶 液 を
あ らか じめ プ レ ミキ シ ン グ コイ ル 中 で反 応 させ, 発 光 が
減 衰 した あ る時 間後 にH_2O_2含 有 緩 衝 液 と反 応 させ て,
目的 とす る物 質 に よ る化 学発 光 を 出 現 させ る 必 要 が あ
図11.
る^<8)>。
発 光 計 測 計 は 光 電 子 増 倍 管 の受 光 面 に うず 巻 状 反
固 定化 ウ リカ ー ゼ リア クタ ー (a)
カ ー ゼ (b) の 安 定 性
R.T.:
応 セ ル を密 着 させ た 装 置 を用 い た (図8)。
と溶 液 状 ウ リ
室温。
発光 計測計
は 分 光 光 度 計 に不 可 欠 な 光 源 お よび分 光 器 の必 要 が な
CV =0 .223%で
あ った 。 本 法 に よ り得 られ た 尿 素 窒 素 の
く, 光 子 量 を検 出す る装 置 の み で よい こ とか ら, 装 置 そ
分 析 結果 の記 録 と検 量 線 を 図9に 示 す 。80mg/dlの
の も の は分 光 光 度 計 に 比べ れ ば簡 単 で 小 型 で あ る。流 路
窒 素濃 度 ま で直 線 性 が 得 られ た 。 ま た, 本 法 に よ り得 ら
に は 内径0.5mmの
れ た 尿 素 窒 素 の結 果 と溶 液 状 ウ レ ア ーゼ ・イ ン ドフ ェ ノ
ー ル 比 色 法 に よ り得 られ た 結 果 とは よ く相 関 (γ=0 .997,
タイ ゴ ンチ ュ ー ブを 用 い, 各 試 薬 の
流 速 は0.6ml/minで
あ る。 イ ンジ ェ ク タ ー か ら1μl
の 血 清 を緩 衝 液 チ ュー ブ内 に 注 入 す る と, 約10秒
後に
は デ ー タが 打 ち 出 され て く る。空 気 分節 を 入 れ る方 式 と
違 っ て, FIA方
y=1 .06x+0.36)
尿素
し, 満 足 す べ き結 果 が 得 られ た (図
10)。
式 で は緩 衝 液 チ ュー ブ 内 に 注 入 され た 検
体 のひ ろが りを で き るだ け小 さ く して, 酵 素反 応 を 効 率
IV.
固 定 化 酵 素 リア ク タ ー の 安 定 性
よ く進 行 させ る た め に, 内径 の 小 さ な チ ュー ブを 使 用 し
た り, 流 路 を短 くす る。 そ の 結果, 短 時 間 お よび 高 感 度
測 定 が 可 能 に な る。 使 用 した1μlの
イ ン ジ ェ ク タ ーの
正 確 度 お よび 精 密 度 は1.024±0.005μl (平 均 値 ±2SD),
228
固 定 化 ウ リカ ーゼ (Candida sp.,
東 洋 紡) リア ク タ ー
の安 定 性 を 溶 液 状 ウ リカ ーゼ の安 定 性 と対 比 した 成 績 を
図11に
示 す 。 そ れ ぞ れ の ウ リカ ーゼ リア クタ ー は約
固 定 化 酵 素
175日
間 の 保 存 期 間 の 間 に8回,
1,100件
約25℃
で合 計 約
の試 料 の 分析に 用い られ, 分 析に使用さ れ てい
室 温, 37℃
で, pH7.0の
35
実 用 的 な 診 断 用 バ イ オ リア クタ ーが 市 場 に現 わ れ る 日 も
遠 くな い こ と と思 わ れ る。
文献
ない 間 は4℃,
リ ア ク タ ー
リ ン酸 緩 衝 液
中 に 保 存 され た 。 リア ク タ ーめ大 きさ は 内 径1.0mm,
長 さ20mmで
あ る。pH7.0の
溶 液 状 ウ リカ ーゼ も4℃,
活 性 は25℃
用 後4℃
リ ン酸緩 衝 液 に溶 か した
室 温, 37℃ で 保 存 され, 酵 素
1) 村地
孝 : 化 学 め 領 域,
2) 千畑 一 郎 (編)
で 測 定 され お。 ウ リカー ゼ リア ク ター は 使
3) Cha ng,
で保 存 す れ ば, 175日 後 で もそ の 活 性 は リア ク
T.
tion
s of
タ ー作 製 時 の活 性 と同 じで あ り, 室 温 に 保 存 す れ ば130
日後 で さえ, まだ リア ク タ ー作 製 時 の活 性 の 約40%の
4) 村地
M.
S.
(ed)
Immobilized
Vol.1, 2,
721
東 京
: Biochemical
Press,
・田 畑 勝 好
(1980)
, 講 談 社,
Enzymes
Plenum
孝
34,
: 固 定 化 酵 素
and
New
: 化 学 の 領 域,
(1975)
Applica
Protein,
York
(1977)
増 刊,
134,
55(1982)
活 性 を保 持 してい た 。酵 素 は固 定 化 され る と, 一 般 に安
定 化 され る といわ れ てい るが, こ の成 績 か ら も固 定 化 ウ
リ カ ー ゼ リア クタ ー は溶 液 状 ウ リカ ーゼ に 比 べ て, は る
か に安 定 で あ る とい うこ とが わ か る であ ろ う^<20)>。
Database Center for Life Science Online Service
7)
お わ りに
酵 素 を 固 定 化 し, カ ラ ム状 の リア ク タ ー と
して臨 床 化 学 分 析 に 用 い る技 術 の基礎 と, そ の2∼3の
8)
9)
実 用 例 につ い て解 説 した 。 単 に 酵 素 試 薬 が 反 復 使 用 で き
る とい う メ リ ッ トのほ か に, 次 の よ うな 有 用 性 の あ る こ
(1)
10)
固 定 化 酵 素 リア クタ ーを 使 用 す る こ と に よ っ
中 性 付 近 のpHで
差 を 小 さ くす る と と もに,
11)
測 定 す る こ とが 可 能 とな り, し か も
12)
効 率 よ く2つの 酵 素 反 応 が 連 続 的 に 進 行 して, 能 率 よい
リア クタ ー を作 成 す る こ とが で きた (図4)。
(2)
さ らに
働 いた (図5,
(3)
図6)。
孝 : 日本 臨 床 検 査 自
Tabata, M., Murachi, T., Kusakabe, H.: 3rd
Congr. of the Federation of Asian and Ocea
nianBiochemists,
November, Bangkok (1983)
(Abstr., p. 115)
Tabata, M., Endo, J., Murachi, T.: J. Appl.
Biochem., 3, 84 (1981)
村地
孝 ・遠 藤 治 郎 ・田 畑 勝 好 ・中 島 孝 夫 ・寺 田
清 : 臨 床 病 理,
27,
1002
(1979)
13)
Tabata, M., Endo, J., Hara, A., Murachi, T.:
1st South East and Pacific Congr. Clin. Bio
chem.,Singapore
(1979) (Abstr., p. 150)
14)
中 根 清 可 ・村 井 誓 子 ・高 阪 彰 : 臨床病理 (補),
複 数 の酵 素 反 応 が 同 じ場 で一 緒 に 進 行 して は 困 る よ うな
反 応 系 にお い て, 固 定 化 酵 素 リア クタ ーは 非 常 に 有 効 に
田畑 勝 好 ・木 戸 隆 宏 ・村 地
正 文 ・服 部
固 定 化 酵 素 リア ク タ ーに は方 向 性 が あ るた め,
プ レカ ラ ム と して使 用 す る こ と も で き (図2),
K., Kawaoi, A.: J. Histochem.
22, 1084 (1974)
Fukunaga, T., Ohyabu, M., Mura
Appl. Biochem., 6, 251 (1984)
動 化 学 会 会 誌, 8, 142 (1983)
と も知 られ た。
て, 2つ の酵 素 の至 適pHの
Nakane, P.
Cytochem.,
Tabata, M.,
chi,T.:
J.
24,
200
(1976)
15) Tabata, M., Kido, T., Totani, M., Murachi, T.:Anal. Biochem., 134, 44 (1983)
16) Murachi, T.: Enzyme Engineering, 6, 369(1982)
2種 の酵 素 を固 定 化 して 用 い る場 合, 同 じ担 体
に 同時 に固 定 化 した 固 定 化 酵 素 を 用 い るほ うが, 酵 素 を
17) Murachi, T., Tabata, M.: Methods in Enzymology(Immobilized Enzymes, Mosbach, K.,ed.) ˆó•
1種 ず つ 別 々 の担 体 に固 定 化 した あ と一 定 の 割 合 で混 合
して用 い る よ りも調 節 操 作 が よ り簡 単 で,
しか も, よ り
18)
Shevlin, P. B., Neufeld, H. A.: J. Org. Chem.,
35, 2178 (1970)
19)
佐 伯 行 一 ・野 崎 光 洋 ・村 地
高 感 度 のバ イ オ リア クタ ー を作 成 す る こ とが で きた^<11)>。
(4)
一 見 異 な った 多 様 な 酵 素 反 応 で も方 向 性 を も っ
た リア クタ ーを 通 して行 な わ せ る こ とに よ って, 最 終 信
286
20)
号 を統 一 で きた 。
これ ら の有 用 性 を組 み 合 わ せ て利 用 す る こ と に よ り,
10,
田 畑 勝 好 ・池 本 正 生 ・福 永 千 佳 子 ・戸 谷 誠 之 ・村
地
21)
孝 : 臨 床 化 学,
(1981)
孝 : 臨 床 病 理 (補),
田 畑 勝 好 ・村 地
33,
371
孝 : ぶ ん せ き,
(1985)
1980-726
5