蛋白質核酸酵素:生物界間接合 : 大腸菌と酵母の接合の分子機構

シ ョー トレビュー
生 物界間接合
大腸菌と酵母の接合の分子機構
吉田和夫 ・
西川正信
原 核 生 物 の 大 腸 菌 と 真 核 生 物 の 酵 母 菌 と は それ ぞ れ の 生 物 界 に特 徴 的 な 細 胞 構 造 と 性 サ
イ ク ル を も っ て い る。 最 近 , 大 腸 菌 と酵 母 が 接 合 し, 遺 伝 子 が大 腸 菌 か ら酵 母 へ 移行 , 伝
達 され る こ と が見 つ か っ た。 こ の 原 核 ・真 核 生 物 間接 合 と, 伝 達 さ れ た遺 伝 子DNAと
Database Center for Life Science Online Service
主 染 色 体 との 相 互 作 用 の 分 子 機 構 に つ い て , 細 菌 接 合やTiプ
宿
ラ ス ミ ドの 植 物 へ の伝 達 と
を比 較 しな が ら紹 介 す る。
原 核 生 物 の 性 の 起源 は30億
年 前 の始 生 代
a)。 次 い で 接 合 管 が 形 成 され , プ ラス ミ ドの 一 方 の
に , 減 数 分 裂 を 伴 う真 核 生 物 の 性 は10億
年 前 の原 生 代
DNA鎖
は じめ に
の特 定 配 列oriTで
ニ ックが 入 り,5'方 向か ら
に 始 ま る とい わ れ て い る。 原 核生 物 で あ る大 腸 菌 の性 は
受 容 菌 側 へ1本 鎖DNAの
F因 子 の よ うな エ ピ ソー ム に よ り決 定 され て い て, そ の
て 移 行鎖 お よび残 留鎖 を 鋳 型 と してDNA合
接 合 も一 方 向 的 で あ る。一 方, 真核 生 物 で あ る酵 母 菌 に
菌 , 供与 菌 内 で進 む (図1b) 。最 終 的 に は 完 全 な環 状 プ
移 行 が 起 こ る 。そ れ と平 行 し
成 が 受容
は 高 等 動 植物 の よ うに 明 確 な 性 の分 化 が あ り, 無 性 増 殖
ラ ス ミ ドが 複製 され , 接 合 が 完 了 し, 供 与 菌 と受 容 菌 は
可 能 な 接 合 子 が 貧 栄 養 を シ グナ ル に減 数 分 裂 に よ り配 偶
分 離 す る。 受 容 菌 は プ ラ ス ミ ドを受 取 り, トラ ンス コ ソ
子 に 相 当す る胞 子 をつ く り, 発 芽 した 両 性 細 胞 が 同 等 に
ジュ ガ ン トとな る (図1c) 。自 己伝 達 性 プ ラス ミ ドは 最
融 合 して 接合 子 を形 成 す る。
小 限mob,tra,oriT,oriV遺
最 近 , 大 腸菌 と酵 母 とが接 合 し, 大 腸菌 か ら酵 母 菌 へ
DNAが
移 行す る現 象 が 見 い だ され1-5),遺 伝 子 の 水 平 伝
達 を 示す もの で あ り, 生 態 進 化 学 的 に も お お いに 興 味 を
oriT特
伝 子 群 が 必 要 で,mobは
異的 ニ ッ ク酵 素 で,traは 多 数 の 遺 伝 子 群 の総 称
で, 性 繊 毛 形 成 , 接 合 管 形 成 , 接 合 制御 に 関 与 す る遺 伝
子か らな って い る。oriTはmobの
酵 素 に よ り認 識 切 断
プ ラス ミ ドの 複 製 開 始
も たれ て い る。 こ の生 物 界 間 接 合 につ い て, 分 子 生 物 学
され 移 行 開 始 す る点 で,oriVは
的 デ ー タ の蓄 積 が あ るこ ともあ り, 筆 者 らの研 究 を 中 心
点 であ る。mobとtraは
に 紹 介 した い。 説 明 の都 合 上 , まず 細 菌 , と くに 大 腸 菌
ず しも 同 じ プ ラ ス ミ ド上 に な く て も よ く, 別 の プ ラス ミ
の接 合 につ い て簡 単 に触 れ た い。
トラ ン ス に 機 能 す る ので , 必
ド(ヘ ルパ ー)上 で も よい 。 図2(a)
に示 す よ うにF因
子 に は挿 入 配 列IS, γδ(Tn1000) が あ り, これ を 介 して
Ⅰ
.
細 菌 一大 腸 菌 の 接 合 伝 達6)
大 腸 菌 染 色 体 に組 み 込 まれ てHfrと
な り, 染 色 体 全 体
を可 動 化 す る こ とは よ く知 られ て い る。
プ ラ ス ミ ドの細 菌 内共 存 性 は 不 和 合 性 遺 伝 子incが
大 腸 菌 のF因 子 の接 合 伝 達 を一 般 化 した 模 式 図 が 図1
であ る。 接 合 伝 達 プ ラ ス ミ ドを もつ 供 与 菌 (
雄 ) か らの
め て いて , 同 一inc種
性 繊 毛 を介 して ,受 容 菌 (
雌 )とペ アが 形 成 され る (図1
のヘ ル パ ーがB細 胞 に 自己 伝 達 し,Bの
Kazuo
Yoshida,Masanobu
of
Molecular
Mechanism
【原 核
60
Nishikawa,
Science,Hiroshima
広 島 大 学 理 学 部 植 物 学 教 室
(〒724東
University,Kagamiyama,Higashi-Hiroshima
of
Trans-kingdom
Conjugation
between
広 島 市 鏡 山1−3−1)
724,Japan]
Escherichia
・真 核 生 物 間 接 合 】 【伝 達 性 シ ャ トル プ ラ ス ミ ド】 【性 進 化 】
coli
and
決
は共 存 で きな い 。 しか し,細 胞A
Yeasts
[Botanical
同incプ
ラス ミ
Institute,Faculty
生
物
界
間
接
合
61
ドをC細 胞 へ 伝 達 す る こ とが 可 能 で, これ を 図1の 通 常
の 二 親 接 合 に 対 して 三 親 接 合 (triparental mating)
よぶ 。 こ のヘ ル パ ー は い ず れBか
と
ら脱 落す る。
Ⅱ
. 原 核 ・真 核 生 物 間 接 合
大 腸 菌 と酵 母 の 接 合2∼3)
原 核 ・真 核 生 物 界 間 接 合 用 に 筆 者 ら の構 築 した伝 達 性
’
シ ャ トル プ ラ ス ミ ドの一 部 を 図2(b)
に示 す 。 大 腸 菌
で働 くmob,oriT,oriVと
く複 製 配 列ARS,
マ ー カ ー 遺伝 子 ,酵 母 で働
動 原 体CEN,マ
ー カ ー遺 伝 子 な どか
ら構 築 され て い る。 真 核 生 物 で働 く遺伝 子 は 白 抜 き ブ ロ
ックで 示 され て い る。 これ ら プ ラ ス ミ ドは ヘ ル パ ー上 の
traとmobの
トラ ンス機 能 に よ っ て可 動 化 され る。す な
わ ち, プ ラス ミ ドは種 属 ・生 物 界 間 障 壁 を越 え て可 動 化
Database Center for Life Science Online Service
す る機 能 と移 動DNAの
図2(b)
安 定 化 維 持 機 能 が必 要 で あ る。
の プ ラ ス ミ ドを形 質 転 換 で導 入 した大 腸 菌
と酵 母 の接 合 伝 達 を行 な った 結 果 の ま とめ が 表1で
あ
る。 接 合 は大 腸 菌 で使 わ れ る メ ン ブ レン フ ィル タ ー法 を
使 用 した。 表1か
らわ か る よ うに , 栄 養 要 求 性 酵 母 か ら
非 要 求 性 酵 母 が 出現 す るが (No.1,2,6∼8),oriTや
ヘ ルパ ーや プ ラス ミ ドが な い と, こ の 出現 は 見 られ な い
(No.3∼5)。 これ は 大 腸菌 か ら酵 母 ヘ プ ラス ミ ドが 接 合
伝 達 され る こ とを示 して い る。 こ の結 果 を分 子 レベ ル で
確 認 す るた め に , 出現 した酵 母 トラ ンス コ ン ジ ュガ ン ト
か らDNAを
抽 出 し, サ ザ ソブ ロ ッ ト解 析 を 行 な った。
確 か に プ ラス ミ ドが どの トラ ン ス コ ンジ ュガ ン トに も存
在 した (図3a) 。 また ,継 代 培 養 した トラ ンス コ ソ ジュ
ガ ン ト酵 母 か ら この プ ラス ミ ドを抽 出 し, 大 腸菌 を 形 質
転 換 し,形 質 転 換 体 か ら抽 出 したDNAを
解 析 した結 果
は, プ ラス ミ ドは機 能 的 に も構 造 的 に も変 化 して い な い
こ とを示 して い る。 これ らの プ ラス ミ ドは 富 栄 養 培 地 で
培 養 す る こ とでキ ュ ア リン グ (curing: プ ラ ス ミ ドを宿
主 か ら除 去 す る こ と) で き るが , まれ に キ ュ ア リン グ で
きな い トラ ンス コ ン ジ ュ ガ ン トが 出 現 す る (表1のNo.
2)。 こ の酵 母 のDNAの
が 図3(b)
図1.
(a)
(b)
物 理 的 接 触 と対合 :tra遺 伝 子発 現 に よ る 性 繊 毛 形 成
と凝 集 塊 中 で の ペ ア形 成
DNA移
行 と 相 補 鎖 合 成 :traに よ る 接 合 管 形 成 ,
mobに
よ るoriT部
位 の ニ ック と5, 端 か ら の1本 鎖
DNAの
移行。移行鎖,残留鎖の相補鎖合成,再 環状
化 。DNA,RNAポ
(c)
細菌の接合過程
リメ ラ ーゼ ,DNA結
合蛋 白質は
パ ル ス フ ィー ル ド電 気 泳 動 結 果
で , 大 部分 は プ ラ ス ミ ド伝 達 前 の酵 母 と の
明 瞭 な 差 は 認 め られ な い が (レー ン1,3), 明 らか に新 し
い バ ン ドの 出 現 した トラ ンス コン ジ ュガ ン ト(レー ン2)
が 一 株 得 られ た 。 前 者 は プ ラス ミ ドのURA3遺
伝 子の
み が , 後 者 は プ ラス ミ ド全 体 が 染 色 体 に 組 み 込 まれ て い
る こ とが , 図3(c)
の サ ザ ン プ ロ ット の 結 果か らわか
宿 主 染 色 体 由来 , か っ こ内 はF因 子遺 伝 子 名 。
プ ラス ミ ドの 安 定 化 と トラ ンス コ ン ジュ ガ ン ト の 分
る。 さ らに 組 込 み機 構 を 知 るた め に, トラ ンス コ ン ジュ
離。
ガ ン ト のURA3遺
伝 子 座付 近 の 構 造 を 解 析 した (図
61
Database Center for Life Science Online Service
62
蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol.38 No.1 (1993)
図2.Fプ
ラス ミ ドの遺 伝子 地 図 (a)
と原 核 ・ 真 核 生 物 間 接 合 用 シ ャ ト
ル プ ラス ミ ドの構 造 (b)2 5,10)
(a)oriTは
伝 達 開始 起 点 ,oriVは
複製 開
始 起 点 ,mobはoriT特
異 的 ニ ック酵 素 ,
traは 伝 達 に 関 与 す る遺 伝 子 ,finは 稔 性
抑 制 遺 伝 子 ,phiは
フ ァ ー ジ抑 制 遺 伝 子 ,
incは 不 和 合 性 遺 伝 子 ,IS, γδ(Tn1000)
は 挿 入 配 列 , 内 部 の サ ー クル はkbス ケ ー
ル , 内 部 円 弧 は 他 のincFⅠ ,FⅡ タ イ プ プ
ラス ミ ド との 相 同 領 域 を 示 す 。 挿 入 配 列
と大 腸菌 染 色 体 に 相 同組 換 え に よ り, 染
色 体へ 組 み込 まれ,Hfr菌
とな る 。F因 子
はincFIタ
イ プ プ ラス ミ ド。
(b)ARS1,CEN4,LEU2,TRP1,URA3,
GAL10-proは
, そ れ ぞれ パ ン酵 母 の 複
製 配 列 , 動 原 体 , ロイ シ ン合 成 , トリプ
トフ ァン合 成 , ウ ラ シ ル合 成 , ガ ラ ク ト
ー ス資 化 性 遺 伝 子 プロ モ ー タ ー を 示 す 。
GUSは
グ ル ク ロ ニ ダー ゼ の 遺 伝 子 ,
NPTIIは
ネ オ マ イ シ ン ポ ス ホ トラ ンス
フ ェ ラ ー ゼ遺 伝 子 ,Km「 ,Tc「 は カナ マ
イ シ ソ, テ トラサ イ ク リン 耐 性 遺 伝 子 を
示 す 。 他 は (a)に 同じ 。LBとRBはTi
プ ラス ミ ドのT-DNAの
境界配列。白抜
き ブ ロ ッ クは 真 核 生 物 で 機 能 す る 遺 伝 子
を 示 す 。pAY-GUSは
発現 用 ,pBASG
は 動 物 用 プ ラ ス ミ ド。pAY100シ
リー ズ
はincPタ
イ プ,pAY200シ
incQタ イ プ プ ラス ミ ド。
62
リーズ は
Database Center for Life Science Online Service
a)curable型
お よびnon-curable型
生
物
界
間
接
合
表1.
大 腸 菌 と 酵 母 の 接 合
63
の トラ ンス コ ソ ジュ ガ ン トの 出 現 頻 度 は受 容 菌 あた りの 出現 トラ ン ス コ ン ジュ ガ ン ト数 で表
わ して あ る 。 キ ュア リン グは 完 全 栄 養 培 地 で12時
間 行 な った 。 出 現 頻 度 の あ との [] 内 の 記 号 は プ ラス ミ ド型 [P] か 染 色
体 組 込 み 型 [C] か を 示 す 。
b) ( ) 内 は 大 腸 菌 また は 大 腸 菌 ミニ セル の保 持 す る プ ラス ミ ドを 示す 。
c) プ ラ ス ミ ドpRK2013,pRH210,pRH220はtra,mobを
HB101,J53,P678-54は
もつ 可 動 化 用 ヘ ル パ ー プ ラス ミ ドを 示 す 。
大 腸 菌 で最 後は ミニ セ ル 生 産 菌 。YNN281は
トリプ トフ ァ ン, ヒ スチ ジ ン, ウ ラ シル 要 求 性 ,YN3は
トリプ トフ ァ ン, ロイ シ ソ, ウラ シ ル要 求 性 パ ン酵 母 。D1−15は ウ ラ シル , ヒス チ ジ ン要 求 性 の クル ー ベ リ酵 母 。
d) プ ラス ミ ドYRp7は
上 記 ヘ ル パ ー で可 動 化 され るoriTを
もた な い非 伝 達 性 プ ラス ミ ド。
e)
ミニ セ ル は 通 常 ,核 (
核 様 体 ) を も た な い が , プ ラス ミ ドは 保 持 で きる 。
No.3,7,12,13,14は 二 親 接 合 , そ れ 以 外 は 三 親 接 合 (triparental mating) 。
3d) 。 パ ル ス フ ィー ル ド電気 泳 動 でバ ン ドシ フ トを生 じ
後 (b),(c)の プ ロセ ス に 進 む と考 え られ て い る。 図4
な い トラ ソス コ ソジュ ガ ソ トか らは全 部5.5kbのURA3
に 示す よ うに , 大 腸菌 ・酵 母 間 の接 合 で も液 体培 地 で の
を含 むBamHI断
接 合 に は 凝 集 塊 形 成 は 必 須 で , これ を抑 制す る と接 合 が
片 しか 見 られ な い が (レー ソ1∼3,5) ,
バ ン ドシ フ トの あ る酵 母 で は ,15,11,3,1.5kbの4個
阻 害 され る。 この 凝 集 に は 大 腸 菌 と酵 母 の細 胞 表 層物 質
のBαmHI断
片 が検 出 され た (レー ン4)。この こ とか ら,
も関与 して い る ら しい 。
図3(e,f)
に示 す よ うな組 換 え が原 核 ・真 核生 物 間 接
合 の 際 に起 こ った と考 え ら れ る。 す なわ ち , 染 色 体 の
ura3-52と
プ ラ ス ミ ド のURA3と
pAY201(
図2参 照 )は酵 母 で の 複 製 配 列ARSを
も
って い な い の で酵 母 内 で は 増 殖 で き な い が ,酵 母 へ 伝 達
が2回 組換 え に よ り
され た プ ラス ミ ド遺伝 子 が一 過 発 現 して , 図4の よ うな
入 れ 替 わ るか (図3e),接 合 時 に プ ラ ス ミ ドが 多重 複製 し
マ イ ク ロ コ ロニ ー を形 成 す る こ とを 見 いだ した。 こ の接
て2回 組換え で 入れ 替 わ り (図3f) , バ ン ドシ フ トを 起
合 をabortive
こす ほ ど大 き なDNA挿
conjugationと
よんでいる。
入 と な った 。 ま た ,形 質転 換 に
以上 の 大 腸菌 とパ ン酵 母 の 接 合 の結 果 を推 測 も まじえ
比 べ て接 合 伝 達 で は2回 組 換 え が起 こ りや す い の は接 合
て 模式 的 に ま とめ た の が 図5で あ る。 大 腸 菌 内 の伝 達 性
伝 達 時 のDNA構
プ ラス ミ ドのtra遺
造 の相 違 に よ る可 能 性 が 高 い (
未発表)。
大 腸 菌 ど う しの接 合 で は 図1(a)
に示 す よ うに 性 繊
毛 に よ る凝 集 塊 が形 成 され , そ の中 で ペ ア が で き , そ の
伝 子 の 働 き で酵 母菌 と接着 ,凝 集 塊
を 形 成 し (図5a) ,そ の中 で対 を つ く り,接 合 管 を形 成
す る。mobの
作 用 に よ りoriT部
位 で 切 断 され ,5'方
63
蛋
白 質 核 酸 酵 素 Vol.38
Na.1
(1993)
Database Center for Life Science Online Service
64
図3.
(a)
(b)
トのDNA,4は
(c)
(d)
解 析2,3)
伝 達 前 の 酵 母DNA,
左 端 ロー マ数 字 は 染 色 体 番 号 。
(b) の サ ザ ンプ ロ ッ ト。1∼4は プ ロ ー ブにURA3の
な いpAY201(pKT230)
を ,5∼8はpAY201を
使用。
(b) の トラ ソス コ ン ジ ュ ガ ン ト酵 母DNAのBamHIダ
イ ジェ ス トの サザ ンプ ロ ッ ト。1∼3,5は バ ン ドシ フ トの な か っ
た トラ ンス コ ソジ ュガ ン ト,4は
(b) の2の バ ソ ドシ フ トの あ った トラ ン ス コ ンジ ュガ ン ト,6は 伝 達 前 のYNN281酵
母 か らのDNA。
(e)
(f)
トラ ン ス コ ン ジュ ガ ソ ト酵 母 の プ ラ ス ミ ドDNAの
pAY101を
伝 達 され た 酵 母DNAの
サ ザ ンブ ロ ッ ト。1は 対 照,2,3は
トラ ンス コ ン ジ ュ ガ ン ト,4,5は 通 常 の形 質転 換
体 ,6,7は 伝 達 前 の酵 母 ,8,9はpAY101のDNAを
示 す 。 奇 数 はPstI処
理 し, プ ロ ー ブ はpAY101。
ア リ ング され な い トラス コ ン ジ ュ ガ ソ ト酵 母 の電 気 泳 動 核 型 。1∼3はpAY201伝
達 で 得 られキュ
た トラ ンス コ ソ ジ ュガ ン
(d) の1∼3,5の
(d) の4の
向 か ら1本 鎖DNAは
プロ 一ブ はpAY201。
トラ ンス コ ン ジ ュ ガ ン トの 説 明 図 。H,BはHindⅢ
トラソ ス コ ソジ ュガ ン トの 説 明 図 。H,Bは
酵 母 内へ 入 り.核 膜 を 通 過 し核 へ
,BamHI切
断 個 所 。chrV:
第5染
色体。
(e) に 同 じ。
ARSを
も っ て いな け れば , 一 過 性 発 現 して マ イ ク ロ コ
移 行 し, そ こで 相補 鎖 が 合 成 され て再 環 状 化 して元 の プ
ロニ ー を形 成 す るが ,最 終 的 に は 消 失 す る (図5d,eI) 。
ラ ス ミ ドと同 じ構 造 に な る (図5b,c) 。 プ ラス ミ ドが
ARSが
64
あ れ ば プ ラス ミ ドと して 安 定 保 持 され て , キ ュ
Database Center for Life Science Online Service
生
図4.
物
界
間
接
65
合
大 腸 菌 と酵 母 の 接 合凝 集 と マ イ ク ロコ ロニ ー 形 成4)
(a) 大 腸 菌 と酵 母 の凝 集 (左) と凝 集 抑 制。 (b) (a) の 左 の 顕 微 鏡 写 真 。 (c) (a) の 右 の顕 微 鏡
写 真 。 (d)ARSの
な い プ ラス ミ ド伝 達 と一 過 発現 に よる マ イ ク ロ コ ロ ニ ー形 成 。 大 きい の が 正常 コ
ロ ニー で , 周 りの 小 さ い コ ロニ ー が マ イ ク ロ コ ロニ ー。
ア リン グ可 能 な正 常 コ ロ ニ ーを 形 成 す る (図5d,eⅡ
ARSの
)。
Ⅲ
. 原 核 ・真 核 生 物 間 接 合 とTiプ
有 無 にか か わ らず2回 組 換 え に よ り染 色 体 に 組
ラ
ス ミド 系 の 類 似 性7)
み 込 まれ る こ とが低 頻 度 で起 こ り, キュ ア リン グ され な
い 正 常 コ ロ ニー を形 成 す る (図5d,eⅢ )。 酵 母 受 容 菌 に
つ い て は 何 もわか っ てお らず , 菌 株 に よ って 受 容 能 に大
き な 差 が あ るが, 遺 伝 的 に は まだ 不 明 で あ る。
この よ うな 接合 は パ ン酵 母 以 外 の, 系 統 分 類 学 的 に も
ア グ ロバ クテ リア に よ る植 物 腫 瘍 (ク ラ ウ ン ゴー ル)
形 成 は古 くか ら知 られ て い る現 象 であ る。 これ は この細
菌 の 巨 大Tiプ
ラス ミ ドのT-DNAの
植 物 細胞 へ の伝
か な り離 れ た クル ー ベ リ酵母4,5)や分 裂 酵 母 (Sikorski:私
達 に よ る こ とが 最 近 , 分 子 生 物 学 的 に も明 らか に な って
信) と大 腸菌 の あ いだ で も起 こ る こ とが 明 らか に な って
き た 。 この プ ロセ ス を 模 式 化 した のが 図6で あ る。 植 物
い る。 表1のNo.9∼11は
傷 害 が 刺 激 とな り, 細 菌 が 植 物 に接 着 し,virA,virGを
クル ー ベ リ酵 母 の場 合 を示 し
て い る。面 白 い こ とにパ ン酵 母 のARSの
な いpAY201
で も正 常 コ ロ ニー を形 成 す る とこ ろか ら, こ の プ ラス ミ
活 性 化す る。これ が 他 のvir遺 伝 子 群 を活 性 化 し,virD
酵 素 に よ り1本 鎖T−DNAが
切 り出 され ,virEの 蛋 白 質
ドの どこか の個 所 が こ の酵 母 のARS機
能 を示 す もの と
と結 合 して 植 物 細 胞 内 に移 行 し, 核 で染 色 体 に組 み 込 ま
考 え られ る。 また , パ ソ酵 母 のCEVが
あ る とプ ラス ミ
れ る とい う。T-DNAの
ドが キ ュア リン グ しやす くな る な ど興 味深 い現 象 が 見 ら
は 上 述 の 大 腸 菌 と酵 母 の接 合 に きわ め て類 似 して い る点
れ る。
核 (
核 様 体 ) を もた な い 大腸 菌 ミニ セ ル と酵 母 の 接台
を 試 み た のが 表1のNo.13で
ホ ル モ ン遺 伝 子 の発 現 に よ り,
植 物 細 胞 は 異 常 増 殖 して腫 瘍 化 す る。 こ の一 連 の過 程 に
, ミニ セ ルか ら酵 母 へ の
が あ る。Tiプ
ラス ミ ド自身 伝 達 性 プ ラス ミ ドで , そ の
traの 作用 で 他 の ア グ ロバ クテ リアへ 伝 達 さ れ る。vir
プ ラ ス ミ ド伝 達 を 示す が , ま だ完 全 とは い い が た い とこ
がtraの
ろ が あ る。
ア 間 に伝 達 す る とい う最 近 の 報 告 もあ る8)
。 原核 ・真 核
働 きを してIncQプ
ラス ミ ドを ア グ ロバ クテ リ
生 物 間 接 合 が高 度 に進 化 適 応 した の がTiプ
ラ ス ミ ド伝
65
66
Vol.38 No.1 (1993)
Database Center for Life Science Online Service
蛋 白 質 核 酸 酵 素 図5.
大 腸 菌 と酵 母 の 接 合 過 程3)
二親 接 合 の み 示 し, 三 親 接 合 は 示 して い な い 。
達系 な のか も しれ な い。
で あ る。 この こ とが 図2の 筆 者 ら のpAYベ
DNAのRB,LBが
クタ ー にT−
入 っ て い る理 由 であ る。残 念 な が ら
まだ この 系 の 確 立 に は 至 って い な い 。現 在 で は原 核 ・真
筆 者 ら が こ の一 連 の 研 究 を 開 始 した のは ,
核 生 物 間 接合 も確 立 され て きた の で, 大 腸菌 か ら直 接 動
酵 母 の接 合 現 象 の研 究 を通 して 性 の 起 源 ・進 化 に興 味 を
お わ りに
植物 へ伝 達す る系 の 開 発 の試 み に重 点 を 移 しつ つ あ る。
も って いた こ と と, ア グ ロバ クテ リア か ら酵 母 へ のT−
DNA伝
生 物 界間 接 合 に よ る遺 伝 子 の水 平 伝 達 の生 物 学 的 意 義
達 系 の開 発 を試 み て い た こ と に よ る。 この 系 が
や 応 用 につ い て は, す ぐに さ ま ざ ま な こ とが考 え られ よ
確 立 され れ ば 分 子 生 物 学 的 手 法 が 駆 使 で き る酵 母 に よ
う。 生 物 学的 意義 の 考 察 や 応 用 は も ち ろ ん た いせ つ であ
り, 植 物 細胞 よ りも 明 解 な 結 果 が 得 られ る と考 え たか ら
るが, 今 は この 性現 象 の 自然 界 で の 存在 例 を よ り多 く確
66
物
界
間
接
67
合
Database Center for Life Science Online Service
生
LB,RBは
図6・
ア グロ バ クテ リア か ら植 物 へ のT−DNA伝
達機構
そ れ ぞ れ レ フ トボ ー ダー, ラ イ トボ ー ダ ー,EはvirE遺
伝 子 産 物 の1本 鎖DNA結
合 蛋 白 質 ,D2はvirD
伝 子 産 物 のDNAニ
ッ ク酵 素 ,● はvirB遺
伝 子 の膜 蛋 白 質 ,cenは 動 原 体 ,telは テ ロ メア , ?は 予 想 を
遺示 す 。?
は促 進制 御 ,→
は 遺 伝 子 発 現, 物 質 の移 動 , ⇒ は 移 行 結 果 を 示す 。
認 して い く こ とが た いせ つ で あ ろ う。 現 在 ま でに 知 られ
て い る種 ・属 あ るい は 生 物 界 を越 えた 代 表 的 接 合現 象 の
関 係 を 系 統 関係 と関 連 させ て ま とめ た の が 図7で あ る9)
。
この 図 の矢 印 の 広 が りが 今後 の研 究 の進 展 に よ りど うな
3)Nishikawa,M.,Suzuki,K.,Yoshida,K.:Curr.
Genet.,21,101-108(1992)
4)Nishikawa,M.,Inomata,K.,Sekito,T.,Suzuki,
K.,Yoshida,K.:in
Tubigen
Endocytobiology
University
5)Inomata,K.,Nishikawa,M.,Yoshida,K.:
って い くか 興味 深 い 。
.Mol.Microbiol.
,印 刷 中
6)Willets,N.,Skurray,R.:in
文
V,p.105,
Press(1992)
献
Salmonella
Escherichia
coli
and
typhimurium(ed.Neidhardt,F.
C.),vol.2,pp.1110-1133,Am.Soc.Microbiol.,
1)Heinemann,J.A.,Sprague,G.F.J.:Nature,
340,205-209(1989)
2)Nishikawa,M.,Suzuki,K.,Yoshida,K.:Jpn.
Washington,D.C.(1987)
7)Ream,N.:in
ModernMicrobial
Genetics(eds.
Streips,N.W.,Yasbin,R.E.),pp.431-453,
Wiley-Liss,New
York(1991)
67
Database Center for Life Science Online Service
68
蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol.38 No.1 (1993)
図7. 生物系統樹 と遺伝子の生物界間接合,生 物界内接合に よる伝達
矢印は伝達方向を示 し,系統樹は三生物界説 に よる無根系統樹。
8)Beijersbergen,A.,Dulk-Ras,A.D.,Schilperoort,
R.A.,Hooykaas,P.J.J.:Science,256,13241327(1992)
9)Hirsh,P.R.:in
Bacterial Genetics in Natural
Environments(eds.Fry,J.C.,Martin,J.D.),
pp.31-40,Chapman
and Hall,London(1990)
10)Shapiro,J.A.:in
DNA
Insertion Elements,
Plasmids and Episomes(eds.Bukhari,A.I.,
Shapiro,J.A.,Adhya,S.),p.671,Cold
Spring
Harbor Laboratory(1977)
お知 らせ
教育講 座
細 胞 培 養 コ ー ス ・セ ミナ ー と 実 習
対 象 者 :企業 などに おいて新 たにバイオテクノロジーに
関す る研究開発に携わ るもの
開講期間 :平成5年3月1日
(
月)
∼6日 (
土)
開講場所 :実習場所 北里大学 衛生学部2号 棟3階 パ イオ
実習室
セ ミナー場所 北里大学衛生学部2号 棟6階 セ
ー室
ミナ
総合討論 か なが わサイエソスパー ク会議室
募集人員 :20人
セ ミナー ・実習 のテー マおよび講師3
無菌操作 と細胞培養
柴 忠義 (
北里大学 衛生学 部)
培養一般一 その 基礎技術 と応用
黒田行昭 (
麻布大学環境保健学部)
昆虫 (
シ ョウジ ョウバエ)細 胞培養 と細胞への遺伝子導
68
入 三宅 端 (
三菱化成生命科学研究所)
トリ初代培養細胞 と細胞への遺伝子導 入
ニワ
伊 庭英夫 (
東京大学 医科学研究所)
植物 細胞培 養 と細胞への遺伝子導入
島本 功 (植物工学 研究所)
実習/ 無菌操 作, 代培養●継 代培養法の手技 ,細胞株
へ の遺伝子導 入,導 入 された遺伝子産物の解析
柴 忠義 (
北里大 学衛生学 部)
受 講 料 :140,000円
連 絡 先 :(
財)神奈川科学技術ア カデ ミー
教育部教育研修科
〒213川 崎市高津区坂戸3-2-1
かながわサイエ ンスパ ーク西棟6F
Tel.044-819-2033,FAX044-819-2026