映画「ウォール街」より 金融ビジネスは虚業であるか? 実業たる長期投資

2015.2.27
さわかみファンド 月次レポート
虚業と実業
代表取締役社長 澤上 龍
映画「ウォール街」より
世の中の株式投資の状況を俯瞰すると、自己の けのみ
を期待したものがほとんどのように見えます。それはデイ
1987 年 10 月、ニューヨーク株式市場の暴落に端を発
トレーダー含む短期投資家だけにとどまらず、長期で資産
した世界同時株安が起こりました。暗黒の月曜日「ブラッ
運用を実践している投資家も同様です。当然ながら株式投
クマンデー」です。背景にある世界経済、そして米国自身
資とは投資家だけでは成立しません。必ず企業という相手
が抱える諸問題など要因はいくつも挙げられると思います。
が必要です。しかし投資家が意識しているのは、自らが出
しかし今回はブラックマンデーがターゲットではありません
した資金とその利回りです。語弊を恐れずに言うと、資産
…同じ年に製作された映画「ウォール街」
、その中のセリ
が増えるのであればどの企業に投資しようともお構いなし。
フについて考えてみたいと思います。
インデックス投資も、配当や優待期待の個別株投資も、結
蛇足ですが、映画製作は企画ありきで委員会が設立され、
局は自己の けのためだけの活動なのです。
撮影、編集、プロモーション、配給・興行という流れが一
対して長期投資とは虚業ではなく実業であると私は確信
般的です。映画「ウォール街」がどういう過程をとったか
します。単なる期間の長さを言う長期投資ではなく、企業
は知りませんが、ブラックマンデーより先に企画が成され
を応援し社会を創造しうる「さわかみファンド」の長期投
ていたと考えるのが普通かと思います。虚業としての金融
資です。
の危険性を示唆した映画「ウォール街」
。その先のブラッ
実業たる長期投資を社会文化としたい
クマンデーの事実は運命の悪戯でしょうか? ちなみに、
投資銀行家ゲッコーを演じた俳優マイケル・ダグラスに憧
さわかみファンドの実践する長期投資とは、10 年後 20
れ真似する金融マンが後に増えたと聞いたことがあります。
年後も世の中に必要とされ続ける企業に対し、誰もが逃げ
ブラックマンデーを経てなお虚業に身を投じるところが人
たくなるような厳しい相場環境の中で果敢に応援すること
の凄さというか、怖い部分ですね。
です。企業活動とは世の中、つまりそこに住む私たちの生
さて私は、この映画「ウォール街」を十数年前にレンタ
ルして観たことがありました。
活と表裏一体の関係です。消費者なくして企業活動なし、
けのためにインサイダー
また逆も然り。世の中が必要とする企業とは多くの消費者
情報に手を出し崩壊の結末へ。演出など映画自体も素晴ら
に支えられている企業のはずです。成熟経済下において消
しい出来だと思いますが、それ以上に今観ても色褪せない
費者は選択する自由を持っています。仮に同じサービスを
内容に感嘆符が飛び出ます。そんな映画の最後に「虚業で
提供する企業であっても、環境配慮や社会貢献など消費者
はなく実業が良い」のようなセリフがあったと記憶してお
からの共感を得る企業が選ばれ、選ばれない企業は消えて
り、再度そのセリフの意味を考えたいと正月に改めて観賞
いくか改善努力をするしかありません。結果的に世の中は
しました(不思議なことに、そのようなセリフは見当たら
より良い企業で
なかった、勘違いだったのか?)
。
れ、未来は豊かになっていきます。豊か
な世の中に貢献する企業だからこそ、消費者が企業業績に
金融ビジネスは虚業であるか?
寄与し、株価にも反映されます。そのような企業に投資を
するということは、企業成長がリターンとして戻ってくるだ
インターネット検索してみると、虚業とは「価値を生ま
けでなく、投資を通じて企業と共に付加価値を生み出すこ
ない、堅実でない事業」のような意味として考えられてい
とに他なりません。つまりプラスサムの世界です。
るようです。例えばねずみ講とか土地転がしとか。そこに
さわかみファンドは、世の中の創造に資する長期投資を
見過ごせない文字がありました…株式投資です。株式投資
実践しています。そして株価暴落時こそ長期投資家の出番
は本当に虚業なのでしょうか? 例えば麻雀、パチンコ、
です。いずれ調整相場が来ると思われますが、その時、共
カジノ、宝くじのようなゼロサムゲームの世界では、いくら
に新たな価値を生み出す投資を歩んでいただけませんか?
けてもそれは虚業だと言えます。誰かのお金が他の人の
実業たる長期投資が文化になれば世界は変わります。
懐に入るだけで、その世界の中で資金は動いているものの
足してみて価値が増えていない(ゼロサム)からです。
【2015 年 2 月 26 日記】
※さわかみファンドにおけるリスク・手数料については、最終ページに記載の「ご留意事項」をご覧ください。
2