週刊ゴールド 金の投資判断に必要な情報がここに凝縮されていま す。 毎週月夕方発行 NY金下落中 発行日 : 2016/11/21 先週末11月18日金曜日のNY金12月限は▲8.2ドル安の1208.7ドル。12月の米利上げ観測で9カ月ぶりの安値 に沈んだあと、大台維持で回復したが、米金融当局者の利上げ支持発言やドル高、長期金利の上昇で値を消した。時 間外取引を1217.5~1201.3ドルのレンジで推移、前日比5.0ドル安の1211.9ドルとなった。12月限は、安寄り したあと反発したが、ドル高・原油安が圧迫して前日安値(1210.5ドル)を下回った。前日の米連邦準備制度理事 会(FRB)のイエレン議長の議会証言を受けた12月の米利上げ観測も圧迫要因。ただ、1200ドル台を維持したあと は、ドルの押しや原油反発、米株価指数先物の下落で戻り歩調となった。立会時間は、ドル安や原油の戻りで 1216.0ドルまで回復したが、プラスに浮上する勢いはなく、ドル高再開や原油反落が圧迫して1205.6ドルまで値 を消した。 前日のイエレンFRB議長の議会証言(利上げは予想より早い)に続き、本日も米金融当局者から利上げを求める発 言が相次ぎ、金市場のムードを悪くした。時間外取引で2月17日以来の安値に沈んだあと、1200ドル台を維持した ことから戻り歩調となったが、プラスに浮上する勢いもなかった。FFレート先物相場から算出した12月の利上げ確 率は91%に上昇した。米大統領選挙でトランプ氏が予想を覆して勝利を収めたあと、トランプ次期大統領の選挙公約 に対する期待でドルが急伸、ダウは史上最高値を更新、10年債利回りも年初来高値を更新と、金融市場は米景気拡大 やインフレ上昇を織り込む展開が続いている。中国人民元の急落など、金にとっての潜在的支援材料もみられるが、 年末に向けて下値を探る展開が続きそうだ。 引け後に米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した11月15日現在の建玉明細によると、大口投機家の金の先物建 玉は17万7660枚の買い越しで、前週の21万5131枚の買い越しから縮小した。銀の先物建玉は6万2606枚の買い 越しで、前週の6万5269枚の買い越しから縮小した。 今日の材料 ・中国上海総合指数は前日比15.60安(0.49%)の3192.86。 ・10月の中国新築住宅価格は前年比12.3%上昇、9月から加速。 ・10月のドイツ生産者物価指数(PPI)は前月比0.7%上昇、前年比0.4%低下。予想は前月比0.1%上昇、前年比 0.9%低下。 ・9月のユーロ圏経常収支、季節調整後で253.0億ユーロの黒字。 ・米セントルイス連銀総裁、市場の12月の利上げ観測を支持。 ・米カンザスシティー連銀総裁、早めの利上げが米経済に恩恵、ただ高金利は経済に有益ではく、利上げはより段階 的にする必要があるとの認識を示す。 ・米NY連銀総裁、米大統領選後の市場の反応は利上げに対する懸念材料とならない。 ・大口投機家の金の先物建玉は17万7660枚の買い越しに縮小。 TOPICs 香港の宝飾品需要は旅行者の減少で低迷 11月15日 GFMS Research 香港の小売り業界は、ぜいたく品の需要が落ち込み、困難な時期となっている。最も大きな要因は中国の経済成長 の伸びが鈍化して、消費が冷え込んでいることだ。香港政庁が発行したデータでは、小売り売上高は19ヶ月連続で減 少している。9月の売り上げ高は338億香港ドル(約43億6千万ドル)で前年比▲4.1%の減少だった。2016年の 9ヶ月の売上高は▲9.6%減少している。9ヶ月の電子製品を含む主要産物の売り上げ高は▲22.1%減で、宝飾品、時 計、その他贅沢品がのカテゴリーは▲21.5%減だった。一方食品、アルコール飲料、たばこの需要はどう期間に少し 増加している。しかし、8月の▲10.5%よりは9月の減少率少し良くなってはいる。これは旅行者の減少率が経った ためと思われる。9月の旅行者は▲3%減で、このうち中国本土からの旅行者は▲5%減だった。その他の国からの旅 行者は▲3.8%減で韓国からの旅行者が増加した。9ヶ月の旅行者は前年比▲6.1%減である。中国本土からの旅行者 の減少と、旅行者一人当たりの消費額が経ったため、宝飾品の売り上げは落ちている。大手宝飾品店の周大福によれ ば、第3四半期の香港とマカオの売り上げは▲39%減で、二店舗を閉鎖したという。人民元は6年ぶりの安値とな り、人民元安/ドル高も現地通貨での買い物を高くしているという。2017年の下半期までこうした状況は続くだろう という人もいる。また、中国における旅行の規制が緩和され、日本や欧州に気軽に行けるようになり、時計等の需要 を香港から奪われているとも言われている。 TOPICs インドネシアの宝飾品需要も引き続き悪い 11月2日 GFMS Research 10月末のインドネシア現地調査によれば、インドネシア国内の宝飾品需要は2014年以来の減少を続けている。イ ンドネシアの宝飾品加工業界は2009年から12年にかけて好調な時期を謳歌していた。2013年は前年比インドネシ アルピーが▲6%減価し、10年ぶりの価格下落により、宝飾品需要は17%増加した。しかし、回復基調は長続きせ ず、5年続くルピー安により現地通貨建ての金価格が上昇して、宝飾品需要に打撃を与えた。現在インドルピーは1万 3050ルピー/ドルであり、5年前の8,900ルピーから大幅に安くなっており、インフレや貿易赤字、経済成長の停滞 を招いている。インドネシア国内のルピー建て金価格は年初から17%上昇している。そのためスクラップ価値は上昇 しているため、金の資産を売却する動きが拡がっている。ドル建て金価格は2011年のピークから下落している が、ルピー建て金価格は、7月に過去最高となっている。 インドネシアの金宝飾品市場ではリサイクルが盛んに行われており、小売り店が金の宝飾品を買い取り再溶解する のは、ことに地方では日常的に行われている。買い取られた宝飾品はそのまま中古品として売られることもある。今 年の顧客の傾向は、古い宝飾品を現金化することが多くなっている。第3四半期の地方の金の販売量は▲26%減と なっている。そのため、小売り店の金の在庫は増加し、在庫の現金化が行われている。今年は宝飾品のスクラップが 増加しているという。 インドで突然の通貨廃止 インドの税金逃れやブラックマネーが金の需要を引き出している 11月12日 GFMS Research インド政府はわずか4時間の事前通告で11月8日、500ルピー (約815円)と1000ルピー札(約1630円)合計220万枚の紙幣 一夜にして廃止した。ナレンドラ・モディ首相は11月8日夜に国民 への演説を行い、500ルピー紙幣および1,000ルピー紙幣の無効 化、ならびに新500ルピー紙幣および2,000ルピー紙幣の導入を発 表した。現行の500ルピー紙幣および1,000ルピー紙幣(以下、旧 高額紙幣)は11月9日午前0時以降、法定通貨としての効力を失 い、使用できなくなっている。 首相によれば、理由はテロ行為の資金源にもなっているとされる 偽札対策だ。また、脱税や汚職に絡んで流通するブラックマネーを 一掃するためでもあるという。インド中央銀行が9月に公表した データによれば、2015年と16年に発行された通貨量のうち、 500ルピー(約815円)と1000ルピー札(約1630円)の割合 は、それぞれ47%、38%であった。インド政府は12月30日まで にこれらの紙幣を銀行に預金することを認めている。この発表の後 で、500ルピーを使って食料品や日用品を買う人が長蛇の列を作っ た。釣銭切れのため500ルピーの倍数の買い物をする必要がある。 銀行にも多くの人が殺到し、500ルピーを小銭に替える行列ができ 米紙ニューヨーク・タイムズによると、使用できなくなった紙幣を持っている人は、郵便局か銀行に預金することを 求められている。その際には、持ち込んだ金額が約3,700ドル(約40万円)に相当する25万ルピー以上だった場 合、どこから入手した紙幣かを説明し、納税済みであること証明しなければならない。 だが、この高額紙幣の廃止とそれによる混乱によって、インドではクレジットカードやデビットカード、その他の電 子決済による支払い方法を持たない貧困層が大きな打撃を受けている。食料品や生活必需品が、現金では買えなくなっ ているのだ。病院は患者を門前払いにし、食べ物を変えない人が急増し、薬を買えない子どもたちが、文字通り命を落 としているという。 一方、廃貨は圧倒的な量で銀行預金の増加をもたらす。銀行は維持するべき現金準備率(CRR)があり、預金が増 えれば融資を増やせるため、融資活動を増強することになる。与信(融資)が容易になり、金利が下落しそうだ。こう して、近い将来により大きな海外投資を誘致することになる。 さらに、この措置は恐らく地価を含めて不動産価格を押し下げる。と言うのも、投資家は不動産に持ち金を利用する ことができず、建設業者はより安価での販売を強いられる。インドの不動産部門におけるより大きな透明性は、この国 のイメージ改善に役立ち、より大きな海外投資を引きつける。 金にとっては、高額紙幣による金の購入が進むと期待されている。11月8日の高額紙幣廃止のアナウンスの後、宝 飾店には多くの人が押し寄せている。人々は金の価格を交渉することなく改求めている。宝飾品やコインが売り切れ、 高額のダイヤモンドが売れている。インド国内金価格は、ロンドン渡金価格に10%の関税を足した価格に約29%、 415ドルのプレミアムとなっており、プレミアムは更に高くなりつつある。インド国内金価格は、不明な収入を申告 する要求が出る前は、3%のプレミアムであった。顧客は、手持ちの高額紙幣の現金を使い果たすために金を購入して いる。価値の無くなった通貨を金に替える動きである。 ただ、いくぶん驚くことに現在のところ、こうした金の急激な売れ行きが金の輸入量に反映されていない。GFMS の調査では11月8日~10日のインドの金の輸入量は、17トンであった。小売り店では通常の7~10倍の金が売れて いる。小売り店は在庫を売り尽すつもりのようである。こうした小売店や銀行に対し中央銀行や政府の職員が在庫や売 り上げの調査に入っていおり、申告漏れの収入は摘発されている。 金の密輸業者は現金不足に直面している。地下金融組織の現金が不足しているからだ。監視当局は通貨の動きを追っ ている。申告漏れの収入をあぶり出し、ブラックマネーを失くす動きとなている。ただ、インド経済の伸び率に影響を もたらし、2017年のGDPは予想よりも下がると見られており、回復には1年はかかるだろうという。また、どの取 引でも税金をはらうことによる損失を取り返すために値上げが行われ、インフレが亢進すると見られている。 いずれにせよインドの申告漏れやブラックマネーの現金は金に転換され、インドの金の需要は増加するだろう。イン ドルピーが13~15%下落することも金の需要を増やすものと思われる。 TOPICs トランプ旋風で、価格は大きく動いている 13年ぶりのドル高 2016年11月18日のドルインデックスは、101.21となり、2003年3月21日以来13年8ヶ月ぶりの高値となっ た。 5月の底値92.626に比べると半年で+8.584、約9.3%ドル高となっている。 ユーロ安・円安に ユーロドルは下落中で更に安くなる可能性あり。パリティー(1.0)に近づいている。 またドル高は円安になっている。 8年振りの人民元安 人民元は8年振りの安さとなり、新興国通貨も安い 国債金利が急上昇 各国の10年物国債金利 2.500 2.000 1.500 2.337 2.086 1.018 米国 イタリア 1.458 1.000 0.761 スペイン 0.500 0.282 英国 0.000 -0.500 フランス ドイツ トランプ次期大統領が減税やインフラ投資を行うために多額の借り入れを行わねばならないという予想から、米国 債金利が急騰し、各国の国債利回りも急上昇している。このため、世界の債券投資家は債券価格の急落に見舞わ れ、債券の投げ売り状態となっている。 材料価格が中国の投機熱により高騰 トランプ次期大統領のインフラ投資に期待して、中国において銅・アルミ・天然ゴム等の価格が一時高騰した。ま たチャートは無いが原料炭や鋼材価格が上昇している。 トランプ政策評価でドル高になっている 金の動きの予想 もし、トランプ大統領の誕生とい うハプニングが無ければ、12月の利 上げは昨年同様ドル高の転換点とな り、それまで買われていた大量のド ルが売られてドル安になり、株価は 利上げにより下落し、 ドル安・株安は金高の背景となり、 金価格は利上げ時期を底にして反転 上昇することになるだろうと予想し ていた。 12月14日のFOMCで利上げはほぼ確定的 利上げがあれば、昨年と同じならドル安に転換して株価は下落する ドル安・株価下落に対して、金価格は底を打ち上昇に転じる 但し、1月の新大統領就任でドル高は継続するかもしれない。 しかし、トランプ新大統領は1月に就任演説を行い、新しいスタッフと共にホワイトハウスの住人となる。当然新た な政策が打ち出され、人々は期待をもってこれを迎えることだろう。 こうした事態は12月の利上げで沈静化された株式市場やドル相場を再び盛り上げる可能性がある。そうなれば、金は セーフヘブンとしての役どころを発揮する場は無くなるだろう。 つまり、一筋縄では行かない状況となっている。 今後の予想 上記のように、12月14日に利上げが行われても、ドル高がどこまで続き、NYなどの株高が1月のトランプ就 任前後まで持ちこたえるかどうかが金価格を占う焦点となっている。金の国際価格は中国や香港における金の売 れ行きの鈍化やインドにおける狂乱的な金需要の発現という現物の動きとは少々かけ離れた金融市場の動きに左 右されやすい。 現在は債券市場で混乱が生じているが、株式市場は栄華を享受している。金に資金が逃避するまでもない。 そうした観点から下落している金の復活がすぐにくるとは思えないような状況である。ただ、長期投資の金買 いなら、1200ドルを切れば買ごろであろう。 掲載される情報は株式会社コモディティー インテリジェンス (以下「COMMi」という) が信頼できると判断した情報源をもとにCOMMiが作 成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、COMMiは保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つも のでもありません。 本資料に記載された内容は、資料作成時点において作成されたものであり、予告なく変更する場合があります。 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権はCOMMiに帰属し、事前にCOMMiへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物 に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。 COMMiが提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。 本資料に掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情などの影響により、その価値を増大または減 少することもあり、価値を失う場合があります。 本資料は、投資された資金がその価値を維持または増大を補償するものではなく、本資料に基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの障害が 発生した場合でも、COMMiは、理由のいかんを問わず、責任を負いません。 COMMiおよび関連会社とその取締役、役員、従業員は、本資料に掲載されている金融商品について保有している場合があります。 投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。 以上の点をご了承の上、ご利用ください。 発行元 : 株式会社コモディティー インテリジェンス4東京都中央区日本橋蛎殼町1丁目11-3-310 会社電話: 03-3667-6130 会社ファックス 03-3667-3692 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