軽水炉燃料の高燃焼時の リム組織の解明

N u c l e a r
p o w e r
軽水炉燃料の高燃焼時の
リム組織の解明
背 景
電気事業では、軽水炉の燃料サイクル費の低減、および使用済み燃料体数の削減のため、燃料の高燃焼度
化が段階的に進められています。燃料に用いられる燃料ペレットでは、高燃焼時に結晶粒が微細化し、微少
な気泡が集積した組織(リム組織)が外周部で観察されています。リム組織の形成される領域は燃焼度とと
もに拡大し、それにより燃料の温度、圧力の上昇が予想されます。高燃焼度まで燃料を健全に確保するには、
リム組織の特性を把握する必要があります。
これまでの研究と主な成果
当所では、リム組織の解明にいち早く取り組み、核特性解析、燃料温度解析から、リム組織の形成条件を
推定しました。リム組織の特性解明を進めるため、当所は国際共同研究HBRPを主催し、照射試験と照射後
試験を実施しました(平成4∼12年度)。HBRPには電気事業、国内燃料メーカ、フランス電力庁、米国
電力研究所、スウェーデン共同体、ノルウェーエネルギー研究所、EU超ウラン元素研究所などの幅広い機
関の参加と協力がありました。HBRPの中で、リム組織が形成される条件、リム組織形成後の物性データ(熱
拡散率、密度変化、ガス保持率)をはじめて明らかにしました。これらの結果から、リム組織形成が燃料健
全性へおよぼす影響を評価することが可能となりました。HBRPの成果は、電気事業の進める高燃焼度化で
既に利用され、さらなる利用拡大が期待されます。
今 後
HBRPの成果を補完するため、新たな国際共同研究HBRP-NTを当所で主催しています。HBRP-NTでは、
高燃焼度化とともに利用の拡大するガドリニア添加燃料について詳細な照射後試験を行い、リム組織の特性
データを取得しています。また、照射期間と費用の縮小を目的とした照射試験技術を開発し、今後の燃料の
大幅高燃焼度化およびウラン−プルトニウム混合燃料の高燃焼度化の確証試験に利用する計画です。
使用済み燃料ペレット断面
リム組織の形成された外周部
(結晶粒の微細化と気泡の集積が観察される)。
リム組織の形成されていない中心部
(製造時と同様な結晶粒が観察される)。
図1 高燃焼時に燃料ペレット外周部で形成されたリム組織の顕微鏡写真
1600
高温部
1400
低温部
照射温度(℃)
1200
1000
リム組織は観察されない
(75MWd/kgU, 1240℃)。
800
600
400
リム組織未形成
200
0
10
20
30
形成過渡
40
50
60
リム組織形成
70
80
90 100 110
燃焼度(MWd/kgU)
リム組織が観察される
(75MWd/kgU, 1000℃)。
図2 リム組織の形成される燃焼度と温度のしきい値の特定
当所が推定したリム組織形成のしきい値とほぼ一致。
0.018
文献値
熱拡散率(cm2/sec)
0.016
HBRP結果
0.014
0.012
リム組織未形成
形成過渡
リム組織形成
0.010
0.008
0.006
0
20
40
60
80
100
燃焼度(MWd/kgU)
図3 燃焼度にともなう熱拡散率の変化とリム組織形成の関係(燃料温度400℃の場合)
リム組織の形成により熱拡散率の低下は加速されない。
お問い合わせ先
財団法人 電力中央研究所
原子力技術研究所 発電基盤技術領域 主任研究員 亀山 高範
電話:(03)3480-2111
(代表) FAX:(03)3480-2493
E-mail:kame@criepi.denken.or.jp
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