当院における原因不明の骨折発症の現状と今後の課題 -リハビリテーションスタッフが果たすべき課題とは- 医療法人 渓仁会 札幌西円山病院 リハビリテーション部1) 医療安全管理室2) 石川朝子1) 久保進也1) 渋谷洋子2) 伊藤隆1) はじめに 当院における医療事故の規定 医療従事者の医療・診療補助行為により、患者の身体に障害を与えうる 内容のものをいう(インシデントも含む). また,患者の疾患や病態による身体の変化は医療事故より除外する. インシデント レベル0;間違ったことが患者様に行なわれる前に気づいた. レベル1;間違ったことが行われたが患者様に変化がなかった. レベル2;間違ったことが行われたが治療の必要がなかった. アクシデント レベル3;事故により治療が必要になった. レベル4;事故により障害が残った. レベル5;事故が死因となった. 事故を6段階のレベルに分類し レポートを作成 事故対応/是正等を実施 →再発防止へ 本発表の目的; 演者のリハ担当患者様が原因不明の骨折を受傷… 当院で発生している事故の現状を踏まえ,リハビリ視点から もっと積極的な事故防止への働きかけはできないのか?? 研究の目的 当院で発生している医療事故の現状把握,とりわけ骨折事故に関して発生の特 徴を調査する 事故対応を振り返り,今後の検討課題を明確し予防的介入の余地を検討する 研究方法 2008年度∼2010年度の院内医療事故報告から以下の点について調査 1)過去3年間の院内医療事故の発生件数/内訳/患者重症度/事故レベルの状況 2)骨折事故の3年間の発生状況 -1 年齢/NM scale/N-ADLの推移(事故全体との比較)/骨折部位/重症度 (重症度はN-ADL得点にて寝たきり;0・1,それ以外;3以上で分類) -2 原因不明の骨折事故の発生率 -3 患者重症度と原因不明の事故発生状況の関連性 3)現状の医療事故発生時の対応をまとめ、課題を検討し考察 結果 1) 過去3年間の医療事故発生状況と内訳 ■事故件数推移 400 1400 1337 1350 350 1300 300 1250 250 1218 1200 1150 ■事故レベル推移 ■事故内訳 200 150 1138 100 1100 50 1050 0 1000 2008 2009 2010 2008 2009 2010 結果 2) 骨折事故の分析 -1 2008 2009 2010 19 (1.7%) 24 (2.0%) 18 (1.4%) 事故全体 80.7±11.03 80.3±11.70 80.8±11.2 骨折 85.2±9.31 82.1±6.41 83.9±8.81 事故全体 23.1±14.73 21.0±15.11 20.2±14.56 骨折 20.6±14.39 21.6±15.88 17.8±11.84 事故全体 15.6±12.45 14.9±12.62 13.3±12.61 骨折 12.9±11.16 17.1±12.14 13.3±11.87 骨折件数 平均年齢 NM平均 N-ADL平均 骨折事故の患者は年齢がやや高い傾向/その他は骨折事故患者に強い特徴はみられず 結果 2) 骨折事故の分析 –1 ■骨折部位の内訳 ■患者重症度数 結果 2) 骨折事故の分析 –2 原因確定:転倒,転落,その他の骨折場面が明確であるもの 原因不明:腫脹や疼痛の訴え/発見により発見し,骨折の具体的場面は不特定なもの ■各年度における骨折原因の確定者および不明者の人数 事故件数 結果 2) 骨折事故の分析 –3 ■患者重症度別の原因不明者の割合 原因不明の割合 * * * (%) *:p<.05 結果 3) 事故発生時の対応 ■現場における事故対応の主な流れ 事故発生/発見 発見部署にて事故報告 個別/該当部署内での是正等の対応 必要に応じ他部署への報告 情報/評価etc.の協力依頼 部署内での事故対応・検討→職種間での情報不足 課題 ・部門に関係なく,院内での事故事例を集約/発信できる環境の必要性 (医療安全管理室の活動の活発化) ・生活場面へのリハ自身が積極的に介入し,”リスクの拾い上げ“を ・事故に対する意識/関心の増大 事故発生後に情報・協力依頼→予防的介入の不足 ・ケアプラン作成時にリスクを含めて一緒に検討 ・ヒヤリハット事例へのチームでの積極的な働きかけ 結果 3) 今後の検討課題 寝たきり症例における原因不明の骨折発生率の高さ 身体的要因 介助場面における要因 骨強度の低下/重度の関節拘縮/抵抗症 etc. 不的確な介助技術/重力/評価・注意不足 etc. 回避し難い事例あるが,骨折要因となる直達/介達外力,疲労を極力掛けない配慮と技術が必要 リハ視点での問題点 寝たきり症例に対するリハの生活機能への働きかけ不足 生活のリスクを回避するための情報収集/予防的視点の欠落 病棟で発生/発見する事故へのリハの関心/危機管理の薄さ 検討すべき課題は… 患者重症度に適した新しい介助技術の習得 no-lift法等の習得/ケアスタッフと介助法の共同検討 リハの予防的介入の視点での生活介入/ケアとの協業 直接的なADL訓練/実際のケア場面でのリスク評価
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