健康食品−薬物相互作用 データベース構築と情報活 用システムの試作

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介 井関 健 [北海道大学大学院薬学研究科臨床薬剤学分野/教授] 介
介 中村 峰夫 [㈲中村薬局/専務取締役]
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介 中橋 望 [㈲PML研究所/代表取締役]
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介 高市 和之 [エーダイ薬品㈱/常務取締役]
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健康食品−薬物相互作用
データベース構築と情報活
用システムの試作
背景・目的
栄養補助食品・健康食品と呼ばれる食品は、
適切に摂取すれば保健
の維持増進に役立つ一方、製品によっては不適切な摂取・医療用薬品
等との併用によって、加療中の疾患を悪化させたり健康を損なうことも考
えられる。近年ではインターネットで直輸入販売されたやせ薬に類する効
果を唄った物にフェンフルラミンが含有されていることが報道されたことは
記憶に新しい。最近の健康食品ブームに影響されて、
現在数多くの製品
が市販されているが、
中には諸外国ですでに医薬品として位置づけられ
ているものもあるにもかかわらず、
本邦では「医薬品」
としての規制がない
ため、
購入者へ製品の情報が正確に伝わっていない場合もある。本研究
では、
上述した状況を踏まえ、
健康食品等と医療用薬品との相互作用に
関するデータベースを作成し、医療従事者および一般市民への正確か
つ有益な情報提供を行うための方法を検討する事とした。
内容・方法
1. 現在販売されている健康食品を調査しエクセル・ファイルメーカー等の
比較的変換しやすいデータベース情報としてまとめた。商品情報につ
いてはインターネット、
実物に記載されている説明の他、
製造・販売元に
電話による聞き取り調査を実施し、
可能な限りの情報を収集した。
成分
に関する薬理学的、薬物動態学的文献情報はMedline等の検索を
行い、
内容を日本語で要約した。
2. 収集データのWeb入力
ホームページ上で検索できるようなデータベースとして公開する目的
で収集した情報をWeb上で入力していくためのサーバーの設置を
行った。
商品情報はweb上からアクセスし直接入力することとし、成分・化
合物の文献情報はファイルメーカーProver.5.0にて作成したデータ
ベース書式に入力し、
それぞれ管理することとした。
これは1商品1文
献の対応ではないため、
それぞれ独立して入力した。
健康食品の種類は膨大であり、
今回は試験的な情報データベース
の構築を目指す事を主目的としていることから、
以下の基準に従って5
種の成分に限定して調査した。
1)外国で、
医薬品として認められ、
日本国内では、
健康食品の分類のもの
メラトニン、
セントジョーンズワート
2)
日本国内では、医薬品と健康食品の両方に分類されてるもの
ローヤルゼリー、
アガリクス
3)世界的にみて医薬品の分類にはならないが、
日本国内では人気のもの
クロレラ、
プロポリス
3. 併用の現状とそれに伴う疾患へ影響の実態を把握する目的で2つの
アンケート方式による調査を実施した。
1)痛風・高尿酸血症で加療中の患者における
「ビール酵母ダイエッ
ト」食品の使用状況に関する調査(アンケート調査1)
2)透析患者における健康食品の使用状況に関する調査(アンケー
ト調査2)
結果・成果
1.
健康食品(商品)情報の収集
収集した製品情報は総数316品目であった。
このうち、
設置したサー
バーへのWebからの入力数は226品目で、
主に製品名・標準価格・1日
の使用量・製造元名、
販売元名、
および住所・電話番号・FAX・メール・
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ホームページアドレス・製品の主成分について入力した。
しかしながら
「健康な人が服用する場合、必要と思われる基本的な情報」
・
「病人
が補助で使う場合に必要と思われる特殊情報。
(糖尿病の場合はカロ
リー、腎臓病ではK,P、Naなど)」
・
「質問などの連絡先と担当者名」に
ついては探索不可能なことも多く販売元に問い合わせてもその商品に
対する情報を正確に把握していないケースも目立った。
一方、相互作用を想像・理解する為に有効と思われる論文情報は
予想通り少なく、且つどの製品を使用したかが明確になっていない論
文が大半であった。収集論文数は288でその殆どはローヤルゼリー、
プ
ロポリス、
アガリクス、
セントジョーンズ・ワート、
クロレラであったが、
他医薬
品との相互作用を検討した例はわずかであり、
これら健康食品の取り
扱いにおける科学的根拠の少なさが強調された形となった。
従来医薬
品の場合にはその製品を使用しての臨床試験データが求められるが、
健康食費の場合は薬事法の縛りを受けないため、
他の製品の学術情
報を転載している場合も多いことが1部指摘されている。
本調査研究で、
それらの指摘が非常に多くの健康食品で生じてい
る実態を明らかにする形となった。
さらに、
主成分を用いた実験では薬
理学的な効果が報告されてはいるものの、
実際の製品を使用している
わけではないために、
個々の製品自体がどの程度それらの効果を生み
出すかについては、
殆ど報告されていないことが明らかであった。
2.
アンケート方式による調査結果
1)痛風・高尿酸血症で加療中の患者における
「ビール酵母ダイエッ
ト」食品の使用状況に関する調査(アンケート調査1)
回収は50名(男性38名、女性12名、年齢層:20歳代1名、40歳
代3名、50歳代8名、60歳代10名、70歳代21名、80歳代7名)
に及
び、血中尿酸値は、14〜22の範囲であった。1部の人でコンドロイ
チン
(3名)、
アガリクス
(1名)、
ノコギリヤシ
(1名)、
クロレラ
(3名)、
健康茶(名称不明、1名)
を併用している例が見いだされたが、
「ビール酵母」
を服用している患者はゼロであった。
今回の調査対象となった薬局は患者への服薬説明を十分に
実施している薬局であり、患者教育が行き届いている施設である
と考えられる。
2)透析患者における健康食品の使用状況に関する調査(アンケート
調査2)
厳密な水分摂取調整・電解質バランスを要求される透析患者で
は、健康食品に含有するリンその他の電解質を過剰に摂取してい
るケースも少なくない。今回のアンケート調査では透析を受けている
患者に特定して健康食品の使用状況を北海道14薬局・2診療施
設外来で194名(男性106名、女性89名)
に対し調査した。
その結
果、透析開始後も健康食品の使用を継続している患者がいること
が判明した。
しかしながら、
医療従事者からの問診は少なく、
十分な
情報を得ることなく漫然と使用している可能性が示唆された。
今後の展望
本調査研究により得られた情報は、今後増加すると予想される補
完・代替医療の活用に科学的根拠を提供する必要があることを示すも
のであり、氾濫する代替医療情報の中から正確性を保つものを選択し、
正しい知識をもってセルフメディケーションを行う事が可能になることが
強く示唆される。氾濫する健康食品の種類はきわめて膨大なうえにそれ
らの医学・薬学的な効果については殆ど学術的には明らかにされてい
ない。学術情報で扱われている化学物質・健康食品原料には統計的
に見ても明らかな効果を示すことが実験研究報告で明らかになってい
ても、実際健康食品のそれぞれにどの程度目的とする物質・原料が含
有されているかは明確ではない。
さらに、
これらの健康食品の成分は漢
方薬(生薬)のように産地・時期が異なれば力価が異なるものであって
も、実際は自社製品でない製品を使用して医学的な見地から検討され
たものを広告資料として使用しているものもあり、
このことが医療従事者
にとっても適切な説明あるいは患者からの質問に答えづらい要因と
なっていると考えられる。
今後は、
これらの製品(商品)情報と学術文献情報の隙間を埋める
ための社内情報提供を各製品の販売会社に求め、
それらとの情報リン
クを行った上でデータベースを再構築してく事が必要と思われる。代替
医療・セルフメディケーションに関する正確な情報はますます重要になっ
てくると考えられ、1日も早い情報提供データベースの完成を目指したい。