第 17 回平和研究会 2007/2/22 掛江朋子 標題 I. :人道的介入の法的 位置付けと mor ality(道徳)の考慮 はじめに NATO による旧ユーゴスラビ ア空爆(1999 年) →「違法だが正当な」介入 の存在可能性認識 →正当性と合法性 のギャップ 違法性の根拠: 武力の行 使又は武力による 威嚇の禁止(国連 憲章 2 条 4 項) 「領土保全又は政治的独立 に対するもの 」「国際連合の 目的と両立しない 」 <人道的介入の法的位置付 けについてのスト ロムゼスによる分 類> ① 現 状 維 持 ②免責さ れる 違反 (stat us quo) (excusable breach)ア アプローチ プローチ 内容 特徴 II. ③慣習法アプ ローチ ④法典化アプ ローチ 人道的 介入が適 法であ る( la wful) のは, 国連安 保理 が容認した場 合, もしく は自衛 権行 使の 場合の み。 人道的 介入は 憲章 違 反で はあ るが, 政治的, 倫理的に 正当とされ る 介入につい ては,そ れ に よって国家が非難され た り処罰され たりしない。 人道的 介入が, 単に道 徳 的または政治的に 正当 化さ れるもの としてで はなく , 規範 的枠組み によっても正当化 され るような, 国際 慣習 法と して規範が徐々に 発展して きてい る。 国連憲 章の 文言を超 えた人道的 介入につい ての 規範 的合 意を考 慮に入れ , 人道的 介 入の 明確な法 原則ま たは「 権利」 の 法典化 を支持する 国家主 権の 保護と 外部干 渉か らの 防 御を目的としてい る 武力行 使禁 止原 則を重視。 現存の 法的 枠組み を肯 定し, それ ぞれの ケー ス ごとに例外的で ,「 アドホ ック」 な憲章 違反とみ な し, 武力行使に 関する 新たな法規 則を検討 し ない 。 慣習法 上の 人道 的介 入 の 権利を 2 条 4 項の 例外と して自衛 権行 使, 憲章 7 章 強制行 動と同 列に考える。 人道的 介入 規範の 発 現 を認めることで 残虐 行為の 犠牲者の 人 権をよりよく 保 護する。 「 権利」 または「 原則 (doctrin e)」 は, 国連 憲章改 正や総 会宣 言 のような形式的なもしく は法典化の 方 法を通 じて確立され るべ き 法と道徳の関係に関する法 理論 (1)自然法理論(nat ur al law t heor y) 人の行為によって作りださ れた実定法 1 の上に,より高次 の法(普遍 的に正しくかつ永 久普 遍の法)たる自然法が存在 すると説き、それ と矛盾する実定法 の規範的拘束力を 否定する という考え方。 ○自然法理論の限界 人間にとって 何が真に自 然である かは,明 白ではない 。歴史的 な変遷や地 域的な多 様性 を考慮すれば,自然概念の 普遍妥当性は一層 疑わしいものとな る。 ①議会による制定法「法律」,②行政庁が出す「命令」,③裁判所による 判例法,④民衆が 慣習を通じて作った法慣習 1 1 第 17 回平和研究会 2007/2/22 掛江朋子 (2)法実証主義(posit ivist ) 認識の対象をもっぱら実証 的経験的所与に限 定し、経験を超え た形而上学的なも のによっ て経験世界を基礎付けたり 方向付けたりしよ うとする一切の試 みを否定する。実 定法のほ かには,法は存在しないと 考える立場。内容 よりも形式,正義 の理念よりも法的 安定性, 理性よりも意思の決定 ,価値よりも事実 と権力を重視 。「法は真理 によってではなく ,権力 によって作られる 」(ルソー )。 ○ 法実証主義の限界 法の内容の「 正当性」に ついて, 法実証主 義は客観的 ,科学的 な判断をす ることが でき ない。 ①両者の発展と歩み寄り ハートの法実証主義 的アプローチ ・ 法と道徳の分離テーゼ ・ 開かれた法の構造と承認の ルール −自然法主義と道徳 道徳と自然法とは、多くの 場合内容的に同一 である。 Moral =実定法の根底をなす規範性(Dwor kin) −法実証主義と道徳 法実証主義の例外としての 衡平 衡平とは:実定法規をそのま ま機械的に適用し たのでは,国際関係の 現実の必要と利 益に適合せず社会的な相当 性を欠く場合に,抽象的 な法規を具体的な 事態に適応させ るための是正基準。 ① 実定法に内在する衡平 (equit y infra legem) ② 実定法の外にある衡平 (equit y praeter legem ③ 実定法に反する衡平 (equit y contra legem) 実定国際法の無条件の適用 をしりぞけるため,こ れに違反して平等・善・正 義に 関する主観的な感情に基づ いて援用されるも の。 III. 4 つのモデルへの適用 ① 現状維持(st at us quo)アプローチ …人道的介入は違法で あり正当でない。 違法性と非正当性 を一致。 問題点)条約の目的を考 えるにあたって も、文言の解釈や 条約の起草過程 から起 草者の意図を探るという 方法しか用いな いため、現実の国 際関係の変化を 反映さ せられない ② 免責される違反(excusable breach)アプローチ …人道的介入は違法で あるが、正当な介 入については免責 される 2 第 17 回平和研究会 2007/2/22 掛江朋子 人道的介入を、「 実定法に反する衡 平」として例外的 に認める法実証主 義的な考 え方 ③ 慣習法アプローチ … 単に 道徳 的または政 治的 に正 当化され るもの としてで はなく, 規範 的 枠組み によっても正 当化され る ような規範が徐々に 発展してきてい ると考える ④ 法典化アプローチ IV. 自然法 理論の 道 徳的 権利の 考え方 伝統的自然法:「 あるべき法」を「ある法」に ―時期 尚早 結論 【参考文献】 ホセ・ヨンパルト『一般法 哲学』( 成文堂,1986 年) 笹倉秀夫『法哲学講義』(東京大学出版会 ,2002 年) 三島淑臣『法哲学入門』(成文堂,2002 年) H.L.A.ハート『法の概念 』(みすず書房、2006 年) N. マコーミック『ハート法理学 の全体像』(晃洋書房、1996 年) 山本草二『国際法 新版 』(有斐閣 、1994 年) 小寺彰=岩沢雄司=森田章 夫『講義国際法 』(有斐閣 、2004 年) Dworkin,Ro nald, A Matter of P rinciple,(H arverd University Pr ess,1985) Schachter, Oscar, INTE RNATIONAL LAW IN T HEORY AND P RACTICE, (Kluwer Academic Publishers, 1991) Stro mset h, Jane, ”Ret hinking humanit ar ian Intervent io n: the case for increment al change”, in J.L.Ho lzgrefe and Ro bert O. Keo hane eds., H umanitar ian Intervention- Ethical,Legal,and Political Dilemmas (Cambrid ge,2003) Henkin, L uis, ‘Ko sovo and t he lawo f “H umanit arian Interventio n”’, American Jo ur nal of Inter nat ional Law, v. 93 No.4(1999) 3
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