年報35号 - 皇學館大学教育学部のホームページ

ISSN 0388 − 4007
平成 25 年度(2013)年度
皇學館大学教育学会年報
第 35 号
目
次
Ⅰ.最優秀卒業論文要旨
昆虫の生体防御に関する研究
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藤
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竜
志( 2 )
Ⅱ.優秀卒業論文要旨
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察
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江 角 祐 哉( 16 )
ふり遊びからごっこ遊びへ
― 3歳児の観察事例から ― 
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川 岸 亜希帆( 24 )
算数科教育における LOGO の活用
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
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谷 川 純 也( 33 )
寄主アワヨトウ
体内でカリヤサムライコマユバチ
幼虫が異物として排除されない要因





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向
音楽活動を通じた障害のある児童の成長
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和
田
冴
子( 41 )
典
子( 50 )
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Ⅲ.ゼミ選出卒業論文要旨 
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Ⅳ.優秀ポスター発表 
Ⅴ.彙
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報
教育学会活動報告 
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平成 25 年度修士論文・卒業論文題目 
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教育学会規約 
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(173)
皇學館大学教育学会
目
Ⅰ
次
最優秀卒業論文要旨

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
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( 1 )
昆虫の生体防御に関する研究 
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Ⅱ
本
竜
志( 2 )
優秀卒業論文要旨

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( 15 )
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察 

江 角 祐 哉( 16 )
ふり遊びからごっこ遊びへ ― 3歳児の観察事例から ― 
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川 岸 亜希帆( 24 )
算数科教育における LOGO の活用 
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谷 川 純 也( 33 )
寄主アワヨトウ
体内でカリヤサムライコマユバチ
幼虫が異物として排除されない要因 

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向
冴 子( 41 )
音楽活動を通じた障害のある児童の成長 
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和 田 典 子( 50 )
Ⅲ
ゼミ選出卒業論文要旨
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( 59 )
有門 秀記(教育心理学ゼミ)
担任教師の障がい児に対する対応と通常学級の児童の態度との
関係についての研究 
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西 本 紫 乃( 60 )
市田 敏之(教育行政学ゼミ)
教員評価制度の特質と課題 
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川 口 純 平( 64 )
小木曽一之(身体運動学ゼミ)
最大随意収縮時における筋内筋線維伝導速度の変化
― 最大M波を誘発して ― 
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永 田 晃 平( 68 )
片山 靖富(健康科学ゼミ)
家族構成および家族からの協力の有無が減量効果に及ぼす影響
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米 澤 麻 衣( 72 )
加藤茂外次(美術ゼミ)
聖地巡礼によるまちおこしの可能性 
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落 合 瑛 美( 76 )
叶
俊文(体育運動方法学ゼミ)
冒険遊び場に関する調査研究
― 伊勢市への導入を目指して ― 
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小 林 祥 子( 80 )
小孫 康平(教育方法学ゼミ)
教科指導における ICT 活用方法
― 授業での ICT 活用に焦点をあてて ― 
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坂
淑 加( 85 )
杉野 裕子(算数・数学教育ゼミ)
現代の算数科教育における和算の活用について 
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大 薮 容 子( 89 )
田口 鉄久(幼児教育ゼミ)
学童保育支援の在り方 
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小 坂 宗 暉( 93 )
中條 敦仁(国語教育学ゼミ)
携帯メールにおける記号表現力の必要性
― 絵文字の使用によるコミュニケーションのズレの観点から ―
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田 中 柚 衣( 97 )
中松
豊(生物学ゼミ)
内部捕食寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
の寄生が
寄主アワヨトウ
の Hyper spread cell に及ぼす影響について
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森
瑞 紀(101)
中村 哲夫(体育・スポーツ史学ゼミ)
第7回オリンピック・アントワープ大会(1920 年)における
日本陸上競技チームに関する研究 
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池 田 純 樹(106)
錦
かよ子(音楽教育ゼミ)
国語科における「感性」教育 
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川 本 由希子(110)
野々垣明子(教育哲学ゼミ)
「自分でする事を手伝う」保育者の姿
― モンテッソーリの幼児教育から ― 
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大 坪 由 佳(114)
檜垣 博子(保育・心理ゼミ)
教育において「命」を学ぶ意義 
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坂 口 皓太郎(118)
深草 正博(社会科学ゼミ)
大日本帝国憲法の再検討 
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松 田 直 哉(122)
元塚 敏彦(体育科教育ゼミ)
スポーツにおける礼儀作法とスポーツ種目の特性について 
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加 藤 修 平(126)
山本 智子(特別支援教育ゼミ)
知的障害の教育課程の中で学ぶ自閉症児の現状と課題 
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濱 口 夏 希(130)
吉田 明弘(児童福祉・保育ゼミ)
里親制度の現状と課題
― 里親に対するインタビュー調査をもとに ― 
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野 村 美 穂(134)
吉田 直樹(発達心理学ゼミ)
幼児期における自己の表情理解の発達 
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竹 島 志 織(138)
豊住
誠(英語教育ゼミ)
英語教育における音声指導の重要性
― 小学校英語教育における音声指導の確立を目指して ― 
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永 井 航 太(142)
Ⅳ
優秀ポスター発表
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(147)
受動的な短縮性収縮中に行われる急激な筋収縮時にみられる
複数の筋束動態 
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伊 東 孝 樹(148)
高等学校国語科における「思考力」に関する研究
― 論理的で創造的な思考領域の獲得を目指して ― 
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井 上 智 貴(149)
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察 
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江 角 祐 哉(150)
衣服と気候の相関関係 
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志明野 香 織(151)
算数科教育における LOGO の活用 
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谷 川 純 也(152)
昆虫の生体防御に関する研究 
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藤 本 竜 志(153)
意識をすれば印象が変わる
― キャスターの経験をもとにして ― 
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前 田 美 咲(154)
寄主アワヨトウ
体内でカリヤサムライコマユバチ
幼虫が異物として排除されない要因 
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向
冴 子(155)
内部捕食寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
の寄生が
寄主アワヨトウ
の Hyper spread cell に及ぼす影響について
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森
瑞 紀(156)
家族構成および家族からの協力の有無が減量効果に及ぼす影響
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米 澤 麻 衣(157)
音楽活動を通じた障害のある児童の成長 
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和 田 典 子(158)
Ⅴ.彙
報
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(159)
教育学会活動報告 
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(160)
平成25年度修士論文・卒業論文題目 
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(161)
教育学会規約 
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(173)
Ⅰ
最優秀卒業論文要旨
昆虫の生体防御に関する研究
藤 本 竜 志
緒
言
昆虫は細胞性防御反応と液性防御反応の二つの自然免疫によって、病原体
や寄生虫に対抗している(Lemaitre and Hoffmann, 2007)
。細胞性防御反応
には異物を取り込む貪食作用と異物を取り囲む包囲化作用、細菌を貪食した
顆粒細胞同士が小節を形成して引き起こすノジュール形成がある(Salt,
1970; Pech and Strand, 1996; Lavine and Strand, 2002)。液性防御反応には
抗菌物質などの感染防御物質やレクチン、メラニン色素形成および補体関連
因子などがあり、侵入した異物を排除する(和合、1991)
。
これらの生体防御反応には血球が強く関与しており、昆虫の血球は 5 種類
に大きく分類される(Castillo et al., 2006)。顆粒細胞は異物の認識、貪食作
用 お よ び 包 囲 化 作 用 に 関 与 し、プ ラ ズ マ 細 胞 は 異 物 や 傷 上 に 付 着 す る
(Gupta, 1985; Clark et al., 1997; Nakahara et al., 2003; Ribeiro and Brehelin,
2006)。エノシトイドと小球細胞は細胞性防御反応やメラニン色素形成を促
進し、原白血球は顆粒細胞、プラズマ細胞および小球細胞に分化する幹細胞
である(和合, 1994; Lavine and Strand, 2002)。このように昆虫類における
生体防御反応についての概要は知られており、チョウ目昆虫においても貪食
作用、包囲化作用およびノジュール形成によって異物を排除することが知ら
れている(Lavine and Strand, 2002)
。森下(2011)はアワヨトウ
幼虫に異物としてカリヤサムライコマユバチ
(以下
Ck とする)1 齢幼虫(以下異物 Ck とする)を移植した際の異物 Ck の体表
上に付着したメラニン物質の面積の経時的変化を報告し、澤(2011)は異物
Ck の体表を囲む包囲血球群の面積の経時的変化を報告した。しかし、ハス
モンヨトウ
幼虫についてのメラニン化や包囲化作用の知
見はまだない。そこで本研究では、ハスモンヨトウ幼虫を供試してアワヨト
ウ幼虫の場合と比較した。
チョウ目幼虫は包囲化作用によって寄生蜂の卵や幼虫などの異物を排除す
― 2 ―
昆虫の生体防御に関する研究
るため、寄生蜂幼虫は寄主の生体防御反応を回避する必要がある(Lavine
and Strand, 2002; Teramoto and Tanaka, 2004; Castillo et al., 2006)。内部捕
食多寄生蜂である Ck は産卵時にポリドナウイルス polydnavirus(以下
PDV とする)と毒液 venom(以下 V とする)を注入して寄主の生理状態を
制御する(Nakamatsu et al., 2007)。一方、内部捕食単寄生蜂であるギンケ
ハラボソコマユバチ
(以下 Mp とする)は PDV の
代わりに寄主の生理状態を制御するウイルスライクパーティクル virus-like
particle(以下 VLP とする)を毒腺で生産している(Suzuki and Tanaka,
2006)。本研究では、寄生蜂の寄生による寄主の生体防御反応への影響を調
べるため、寄生峰として Ck と Mp を使い寄主としてアワヨトウ幼虫とハス
モンヨトウ幼虫を使うことによって、被寄生寄主体腔中におけるメラニン物
質の付着と包囲化作用が制御されるか否かを調査した。
内部捕食寄生蜂は卵の孵化と同時にテラトサイト teratocyte を寄主幼虫
の体内に遊離させる(Dahlman, 1990)
。Ck や Mp のテラトサイトはコラゲ
ナーゼを分泌することで脂肪体を分解し、脂肪体細胞から栄養分を摂取して
いる(Nakamatsu et al., 2002; Suzuki and Tanaka, 2006)。また、テラトサ
イトは寄主の生体防御反応から寄生蜂幼虫を守 る 役 割 も 果 た し て い る
(Nakamatsu et al., 2002)。しかし、寄生蜂幼虫の体表上に存在するテラト
サイトが寄主の生体防御反応を制御するという知見はまだない。本研究で
は、Ck1 齢幼虫の表皮細胞を観察して、テラトサイトが存在しているか否か
を調査した。
寄生蜂幼虫の栄養分である脂肪体は哺乳類における肝臓に相当する器官で
ある(Haunerland and Shirk, 1995)。ヒトが胚の状態にある時、血球は肝臓
で産生されることは知られており、脂肪体はヒトの肝臓と同じ中胚葉由来で
あるため、血球を産生する可能性がある(Webloy, 1951)。脂肪体が代謝の
中心であることは知られているが、生体防御反応に関与しているという知見
はない。澤(2011)はアワヨトウ幼虫の脂肪体とメラニン物質が付着した異
物 Ck を
で共培養したところ、脂肪体細胞が異物 Ck に移動したこ
とを示し、脂肪体細胞が包囲化作用に関与していることを示唆している(中
松ら、2011)。しかし、澤(2011)は被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪体を供試
していない。そこで本研究では、被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪体を供試し
て、脂肪体細胞が包囲化作用に関与しているか否かを調査した。
― 3 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
材料および方法
1.供試虫
アワヨトウ
の飼育
山際(2013)の方法で飼育を行った。
ハスモンヨトウ
の飼育
加藤(2013)の方法で飼育を行った。
カリヤサムライコマユバチ
の飼育
山際(2013)の方法で飼育を行った。
ギンケハラボソコマユバチ
の飼育
山際(2013)の方法で飼育を行った。
2.未寄生寄主幼虫への異物 Ck の移植
Ck を 6 齢 0 日目のアワヨトウ幼虫に寄生させて 4 日後に解剖し、Ck1 齢
幼虫を摘出して 6 齢 1 日目のアワヨトウ幼虫に20匹移植した。1、2、3、6、
12、24、48、72、96時間後に異物 Ck を摘出し、異物 Ck の体表上に付着し
たメラニン物質の面積と体表を囲む包囲血球群の面積を計測した。また、ハ
スモンヨトウ幼虫を供試して同様の実験を行った。
3.未寄生寄主幼虫の血球数
未寄生アワヨトウ幼虫の 6 齢 0 日目から 6 日目までの血リンパをそれぞれ
パラフィルム上に採取して血リンパ10μl に飽和 PTU10μl を加えて混和さ
せた。その後、トーマ血球計算盤(ミナトメディカル株式会社)を用いて血
球数を計数した。また、ハスモンヨトウ幼虫を供試して同様の実験を行った。
4.異物 Ck の体表上のメラニン物質
6 齢 3 日目の未寄生アワヨトウ幼虫に異物 Ck を20匹移植し、3 時間後に
異物 Ck を摘出した。その後、正立顕微鏡(OLYMPUS BH2)下でメラニ
ン物質が付着した個体を観察した。また、ハスモンヨトウ幼虫を供試して同
様の実験を行った。
5.Ck1 齢幼虫の表皮細胞の観察
寄生後 4 日目の Ck1 齢幼虫をヘキスト(ANA SPEC 社)で30分間染色を
行い、蛍光顕微鏡下で体表上の細胞を観察した。
6.被寄生寄主幼虫への異物 Ck の移植
Ck を寄生させて、3、48、144、192時間後のアワヨトウ幼虫と Mp 成虫を
― 4 ―
昆虫の生体防御に関する研究
寄生させて、3、48、96、144時間後のアワヨトウ幼虫に異物 Ck を10匹移植
した。 3 時間後に摘出した異物 Ck の体表上に付着したメラニン物質の面積
を計測し、48 時間後に摘出した異物 Ck の体表を囲む包囲血球群の面積を計
測した。また、ハスモンヨトウ幼虫を供試して同様の実験を行った。
7.被寄生寄主幼虫の血球数
Ck および Mp を寄生させたアワヨトウ幼虫の血リンパをそれぞれパラ
フィルム上に採取して血リンパ10μl に飽和 PTU10μl を加えて混和させた。
その後、トーマ血球計算盤(ミナトメディカル株式会社)を用いて血球数を
計数した。また、ハスモンヨトウ幼虫を供試して同様の実験を行った。
8.被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪体とメラニン物質が付着した異物 Ck の
共培養
被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪体は Ck および Mp 成虫を 6 齢 0 日目のアワ
ヨトウ幼虫に寄生させて、3 および 6 日後の脂肪体を供試した。クリーンベ
ンチ(SANYO MCV-131BNF)内で被寄生アワヨトウ幼虫を解剖して脂肪体
を摘出し、生理食塩水で洗浄した。その後、セルトラッカーオレンジ(Cell
tracker orange)に浸漬し、遮光した状態で40分間放置した。その後、脂肪
体を取り出して生理食塩水と MGM450培地(Mitsuhashi and Inoue, 1988)で
洗浄し、300μl の MGM450 培地と 3 μl の抗生物質(Penicillin-Streptomycin
Solution × 100、和光薬品株式会社)を入れた培養容器に移した。ここにメ
ラニン物質が付着した異物 Ck を 5 匹程度挿入し、共培養を行った。培養容
器は遮光性のある密閉容器に移して、インキュベーター(SANYO MIR-554)
内で 6 時間培養した。その後、異物 Ck のみを取りだし、スライドグラスに
乗せて50%グリセロールを100μl 滴下し、カバーグラスで封入して脂肪体細
胞の有無を蛍光顕微鏡(OLYMPUS BX53)下で観察した。
9.統計処理
各実験区の母集団の正規性の検定を行ったのち、正規性が認められた場合
は 二 つ の 試 験 区 の 比 較 に お い て 一 元 配 置 分 散 分 析 法(single-factor
ANOVA)、三つ以上の場合は多重比較検定(Tukey-kramer test)を行った。
結
果
1.未寄生寄主幼虫に移植した際の異物 Ck の体表上に付着したメラニン物
質の面積
未寄生アワヨトウ幼虫に移植した異物 Ck の体表上に付着したメラニン物
― 5 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
質の面積が最大の値を示した移植後の経過時間は、3 時間であり、その平均
値は 0.13㎟であった(図1)。一方、未寄生ハスモンヨトウ幼虫の場合、メ
ラニン物質はほぼ見られなかった。
メ
ラ
ニ
ン
物
質
の
面
積
︵
㎟
︶
0.16
0.14
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
1
2
3
6
12
24
48
移植後の経過時間(時間)
72
96
図1.カリヤサムライコマユバチ 1 齢幼虫の体表上に付着したメラニン物質の面積の変化
各値の縦線は標準偏差を示す。同じ移植時間における値の右肩にある異なるアルファベットは
両者間に有意な差があることを示す(p < 0.01 single-factor ANOVA)
。
2.未寄生寄主幼虫に移植した際の異物 Ck の体表を囲む包囲血球群の面積
未寄生アワヨトウ幼虫に移植した異物 Ck の体表を囲む包囲血球群の面積
が最大の値を示した移植後の経過時間は、48時間であり、その平均値は
0.28㎟であった(図2)。未寄生ハスモンヨトウ幼虫に移植した異物 Ck の
体表を囲む包囲血球群の面積が最大の値を示した移植後の経過時間は48時間
であり、その平均値は0.25㎟であった。また、一元配置分散分析法を用いて
検定した結果、移植48時間後において両者に有意な差は見られなかった。
0.3
包
囲
血
球
群
の
面
積
︵
㎟
︶
0.25
0.2
0.15
0.1
アワヨトウ
0.05
0
ハスモンヨトウ
1
2
3
6
12
24
48
72
96
移植後の経過時間(時間)
図2.カリヤサムライコマユバチ 1 齢幼虫の体表を囲む包囲血球群の面積の変化
各値の縦線は標準偏差を示す。同じ移植時間における値の右肩にある異なるアルファベットは
両者間に有意な差があることを示す(p < 0.01 single-factor ANOVA)
。
3.未寄生寄主幼虫の血球数
未寄生アワヨトウ幼虫における血リンパ 1 μl 中の血球数は、6 齢 0 日目
で49360±2915(平均± S.D.)個、1 日目で25400±2550個、2 日目で16545±
1413個、3 日目で13350±1047個、4 日目で8715±1079個、5 日目で7405±
― 6 ―
昆虫の生体防御に関する研究
870個であった(図3)。また、未寄生ハスモンヨトウ幼虫における血リンパ
1 μl 中の血球数は、6 齢 0 日目で33880±2117個、1 日目で19830±2678個、
2 日目で14625±1389個、3 日目で12785±1279個、4 日目で9310±1088個、5
日目で7880±1147個となり、どちらも日毎に減少する傾向が見られた。ま
た、一元配置分散分析法を用いて検定した結果、6 齢 2 日目まではアワヨト
ウ幼虫とハスモンヨトウ幼虫に有意な差が見られた。
血
リ
ン
︵パ
×1
1μ
0l
4中
個の
︶血
球
数
6
5
4
3
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
2
1
0
0
1
2
3
4
5
6齢の発育日数(日目)
図3.未寄生寄主幼虫の血リンパ 1 μl 中の血球数
各値の縦線は標準偏差を示す。同じ発育日数における値右肩にある異なるアルファベットは両
者間に有意な差があることを示す(p < 0.01 single-factor ANOVA)
。
4.異物 Ck へのメラニン物質の付着
アワヨトウ幼虫に移植された異物 Ck については、メラニン物質が体表全
体に付着している様子が見られたが、ハスモンヨトウ幼虫の場合は異物 Ck
の尾胞に付着している様子が見られた(図4)。
B
A
図4.異物 Ck の体表に付着したメラニン物質
A:アワヨトウ幼虫に移植された異物 Ck
B:ハスモンヨトウ幼虫に移植された異物 Ck
5.Ck1 齢幼虫の表皮細胞の観察
寄生後 4 日目の Ck1 齢幼虫の体表をヘキスト蛍光で染色したところ、巨
大な核をもつ細胞が蛍光発色したが、Ck1 齢幼虫の尾胞の細胞の核が蛍光発
色しなかった(図5)。
― 7 ―
皇學館大学教育学会年報
A
第35号(2013年度)
B
図5.カリヤサムライコマユバチ 1 齢幼虫の表皮細胞
A:明視野
B:暗視野
6.被寄生寄主幼虫に移植した際の異物 Ck の体表上に付着したメラニン物
質の面積
Ck に寄生された被寄生寄主幼虫については、アワヨトウの場合、寄生後
の経過日数に伴って異物 Ck の体表上に付着したメラニン物質の面積が減少
した(図6A)。一方、ハスモンヨトウ幼虫の場合は異物 Ck の体表上に付
着したメラニン物質の面積は経過日数に伴ってほとんど変化しなかった。
Mp に寄生された被寄生寄主幼虫についてはどちらも寄生後 2 日目以降に
は異物 Ck の体表上にメラニン物質は見られなかった(図6B)。
メ
ラ
ニ
ン
物
質
の
面
積
︵
㎟
︶
0.016
0.014
0.012
0.01
0.008
0.006
0.004
0.002
0
A
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
0
2
6
寄生後の日数(日)
8
0.025
メ
ラ 0.02
ニ
ン 0.015
物
質 0.01
の
面 0.005
積
0
︵
㎟
︶
B
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
0
2
4
寄生後の日数(日)
6
図6.被寄生寄主幼虫に移植された異物 Ck の体表上に付着したメラニン物質の面積の変化
各値の縦線は標準偏差を示す。各移植時間における値の右肩にある異なるアルファベットは両
者間に有意な差があることを示す(p < 0.01Turkey-kramer test)
。
A:Ck に寄生された被寄生寄主幼虫 B:Mp に寄生された被寄生寄主幼虫
7.被寄生寄主幼虫に移植した際の異物 Ck の体表を囲む包囲血球群の面積
Ck に寄生された被寄生寄主幼虫については、アワヨトウ幼虫の場合、寄
生後 2 日目以降は異物 Ck の体表を囲む包囲血球群が見られなかった(図7
A)。一方、Ck に寄生されたハスモンヨトウ幼虫の場合は異物 Ck の体表を
囲む包囲血球群の面積が高い値を示し、経日的に減少することはなかった。
Mp に寄生された被寄生寄主幼虫については、アワヨトウ幼虫とハスモン
ヨトウ幼虫どちらにおいても異物 Ck に対する包囲化作用は見られなかった
(図7B)。
― 8 ―
昆虫の生体防御に関する研究
0.35
包 0.3
囲 0.25
血
球 0.2
群 0.15
の
面 0.1
積 0.05
︵
0
㎟
︶
A
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
0
2
6
8
寄生後の日数(日)
包
囲
血
球
群
の
面
積
︵
㎟
︶
1
B
0.8
0.6
0.4
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
0.2
0
0
2
4
6
寄生後の日数(日)
図7.被寄生寄主幼虫に移植された異物 Ck の体表を囲む包囲血球群の面積の変化
各値の縦線は標準偏差を示す。各移植時間における値の右肩にある異なるアルファベットは有
意な差があることを示す(p < 0.01Turkey-kramer test)。
A:Ck に寄生された被寄生寄主幼虫 B:Mp に寄生された被寄生寄主幼虫
8.被寄生寄主幼虫の血球数
Ck に寄生された被寄生寄主幼虫については、アワヨトウ幼虫の場合、日
毎に血球数が減少する傾向が見られたが、ハスモンヨトウ幼虫の場合は未寄
生のハスモンヨトウ幼虫の血球数とほぼ同じ値を示した(図8A)。
Mp に寄生された被寄生寄主幼虫については、どの寄生後の経過時間にお
いてもアワヨトウ幼虫とハスモンヨトウ幼虫の間に有意な差は見られなかっ
た(図8B)。
血
リ
ン
︵パ
×1
1μ
0l
4中
個の
︶血
球
数
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
A
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
30 分
1 時間 1 日目 2 日目 3 日目 4 日目 5 日目
6 日目 7 日目 8 日目 9 日目 10日目
寄生後の経過時間
3
血
リ 2.5
ン
︵パ
2
×1
1μ 1.5
0l
1
4中
個の 0.5
︶血
0
球
数
B
アワヨトウ
ハスモンヨトウ
30 分
1 時間
1 日目
2 日目
3 日目
4 日目
5 日目
6 日目
7 日目
8 日目
寄生後の経過時間
図8.被寄生寄主幼虫の血リンパ 1 μl 中の血球数
各値の縦線は標準偏差を示す。同じ寄生後の日数における値の右肩にある異なるアルファベッ
トは有意な差があることを示す(p < 0.01 single-factor ANOVA)
。
A:Ck に寄生された被寄生寄主幼虫 B:Mp に寄生された被寄生寄主幼虫
― 9 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
9.被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪体とメラニン物質が付着した異物 Ck の in
vitro 共培養
Ck 寄生 3 および 6 日後のどちらの脂肪体においてもメラニン物質が付着
した異物 Ck にセルトラッカーでプローブされた脂肪体細胞が観察された
(図5A、B)。一方、Mp 寄生 3 および 6 日後のどちらの脂肪体においても
メラニン物質が付着した異物 Ck にセルトラッカーでプローブされ
た脂肪体細胞は観察されなかった(図5C、D)。
A
B
C
D
A
B
C
D
図5.被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪体とメラニン物質が付着した異物 Ck の
共培養
Ck 寄生 3 および 6 日後のどちらの脂肪体においてもメラニン物質が付着した異物 Ck にセルト
ラッカーでプローブされた脂肪体細胞が観察された。また、Mp 寄生 3 および 6 日後のどちらの
脂肪体においてもメラニン物質が付着した異物 Ck にセルトラッカーでプローブされた脂肪体細
胞は観察されなかった。矢印はセルトラッカーでプローブされた脂肪体細胞を示す。
A:Ck 寄生 3 日後の脂肪体とメラニン物質が付着した異物 Ck の共培養 B:Ck 寄生 6 日後の
脂肪体とメラニン物質が付着した異物 Ck の共培養 C:Mp 寄生 3 日後の脂肪体とメラニン物質
が付着した異物 Ck の共培養 D:Mp 寄生 6 日後の脂肪体とメラニン物質が付着した異物 Ck の
共培養
考
察
アワヨトウ幼虫の場合、体内に侵入した異物に hyper spread cell(以下
HSC とする)が付着し、ドーナツ状の細胞外マトリックスを分泌すること
によってメラニン化が引き起こされる(加藤、2011)
。その後、顆粒細胞と
プラズマ細胞によって包囲化作用が引き起こされる(Pech and Strand, 1996;
Lavine and Strand, 2002)。本研究において、未寄生寄主幼虫に移植した異
物 Ck の体表上におけるメラニン物質の面積と体表を囲む包囲血球群の面積
を経時的に計測したところ、未寄生アワヨトウ幼虫と比較して、未寄生ハス
モンヨトウ幼虫の場合は異物 Ck の体表上におけるメラニン物質の面積が有
意に低かった。一方、包囲血球群の面積が最も高い値を示した経過時間にお
いては二者の間で有意な差は見られなかった。これらの結果より、アワヨト
ウ幼虫は HSC が関与することにより、異物にメラニン物質が付着し、包囲
― 10 ―
昆虫の生体防御に関する研究
化作用が起こるが、ハスモンヨトウ幼虫においては HSC の様な血球が存在
せず、メラニン物質の付着なしに血球による包囲化作用が起こるものと考え
られる。
Ck の PDV と V はアワヨトウ幼虫の血球の中で、造血器官から生産され
る プ ラ ズ マ 細 胞 の 数 を ア ポ ト ー シ ス に よ り 減 少 さ せる(Teramoto and
Tanaka, 2004)
。本研究において Ck に寄生された被寄生寄主幼虫の血球数
を調査したところ、アワヨトウ幼虫の場合、寄生後の経過時間に伴って血球
数が減少する傾向が見られた。一方、ハスモンヨトウ幼虫の場合、その減少
傾向が見られなかったことから、アワヨトウ幼虫においては産卵時に注入さ
れる Ck の PDV と V の効果があり、ハスモンヨトウ幼虫においてはその効
果がないことが考えられる。また、Mp の VLP が寄主幼虫の顆粒細胞を一
時的に破壊する作用があることも分かっている(Suzuki et al., 2008)。本研
究において Mp に寄生された被寄生寄主幼虫の血球数を調査したところ、ア
ワヨトウ幼虫とハスモンヨトウ幼虫どちらにおいても寄生後の経過時間に
伴って血球数が減少する傾向が見られた。また、アワヨトウ幼虫における
Ck および Mp の寄生環境下において被寄生寄主幼虫に異物 Ck を移植した
ところ、未寄生の場合と比較して異物 Ck の体表に付着したメラニン物質と
体表を囲む包囲血球群の面積が抑制された。これらにより、Ck および Mp
のウイルスと V が寄主幼虫の血球数を減少させ、メラニン物質の付着や包
囲化作用の抑制を引き起こしたのではないかと推察される。しかしハスモン
ヨトウ幼虫における Ck の寄生環境下では血球数の減少、メラニン物質の付
着や包囲化作用の抑制は見られなかった。
中松ら(2011)は寄主幼虫の体内に異物が侵入した際に、包囲化作用に関
与した細胞内に脂肪体細胞が存在していると報告している。さらに、澤
(2011)は脂肪体から遊出した細胞が包囲化作用に関与していると報告して
おり、一部の血球は脂肪体で産生されている可能性があることを示唆した。
そこで本研究では、寄生による脂肪体細胞への影響を確かめるため、Ck お
よび Mp 成虫を寄生させた被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪体とメラニン物質が
付着した異物 Ck を
で 6 時間共培養したのち、脂肪体細胞の遊出の
有無を観察したところ、Ck 成虫に寄生された被寄生アワヨトウ幼虫の脂肪
体と共培養したメラニン物質が付着した異物 Ck にセルトラッカーでプロー
ブされた脂肪体細胞が観察された。しかし、Mp 成虫に寄生された被寄生ア
ワヨトウ幼虫の脂肪体と共培養したメラニン物質が付着した異物 Ck にセル
トラッカーでプローブされた脂肪体細胞は観察されなかった。この結果によ
り、寄生蜂が産卵する際に卵とともに寄主幼虫の体内に注入するウイルスや
V もしくは、孵化後に寄主幼虫の体内に遊離する漿膜細胞由来のテラトサ
イトの機能が異なる可能性がある。特に、Mp においては寄主幼虫の生体防
― 11 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
御反応から回避するために、脂肪体細胞の遊出を抑制していることが考えら
れる。
未寄生ハスモンヨトウ幼虫に異物 Ck を移植して、異物 Ck の体表上にメ
ラニン物質が付着する位置を検討したところ異物 Ck の尾胞 caudal vesicle
(以下 Cv とする)に付着していることが分かった。コマユバチ科の内部捕
食寄生蜂の Cv は後腸が露出された状態で形成されている(Edson and
Vinson, 1976)。Ck1 齢幼虫は Cv から寄主幼虫の体内の栄養分を吸収するた
め(Nakamatsu et al., 2002)、その時に寄主幼虫の体内に存在する血球が
Cv に付着してメラニン化が引き起こされた可能性が考えられる。
また、Cv の部位以外にメラニン物質が付着しなかった要因を探るため、
Ck1 齢幼虫の体表をヘキストで蛍光染色して体表上に存在する細胞を観察し
たところ、Ck1 齢幼虫の Cv 以外の体表に巨大な核をもつ細胞が観察された。
内部捕食寄生蜂は卵の孵化と同時に漿膜細胞由来のテラトサイトもしくは巨
大 な 細 胞 giant cells(以 下 Gc と す る)を 寄 主 幼 虫 の 体 内 に 遊 離 さ せ る
(Dahlman, 1990)。本研究より、Ck1 齢幼虫の Cv 以外の体表上に巨大な核
をもつ細胞が観察されたことから、Ck1 齢幼虫の体表に Gc あるいはテラト
サイトが付着している可能性が考えられる。しかし、Gc とテラトサイトが
同じ漿膜由来の細胞か否かは分かっていない。今後は、Gc と寄生後の経過
日数毎のテラトサイトが同じ機能を有するか否かを検証していきたい。
謝
辞
本研究に際して、様々なご指導や助言を頂き、論文校閲の労をとられた皇
學館大学教育学部の中松豊准教授に深謝申し上げる。また、実験器具や実験
材料を提供して下さった農業生物資源研究所の立石剣氏、研究方針や実験方
法において熱心に指導を頂いた名古屋大学大学院生命農学研究科の田中利治
教授に深謝申し上げる。そして、実験の指導や補助を頂いた社会福祉法人洗
心福祉会第二はなこま保育園の山際桃子氏、多くの知識や示唆を頂いた澤友
美氏、山路拓也氏をはじめとする皇學館大学教育学部生物学研究室の皆様に
感謝申し上げる。
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(卒論指導教員
― 14 ―
中松
豊)
Ⅱ
優秀卒業論文要旨
算数科におけるノートの意義と
ノート指導についての考察
江 角 祐 哉
はじめに
本論文では、まず、第 1 章でノートにはどのような役割や種類があるか、
第 2 章で今日までにどのようなノート指導が行われているかについて調べ、
考察していく。第 3 章では今日までに行われているノート指導の改善点など
から、これからどのようなノート指導を行うとよいか提案する。
第1章
第1節
算数科のノートの意義
算数科のノートの特徴
1.算数科のノートと国語科のノート
小林(1990)によると、国語科のノートも算数科のノートも、理解、思考
力、技能を育てることに役立つことがわかる。
『平成20年小学校学習指導要
領解説算数編』によると、算数科の目標は知識や技能、筋道を立てて考えて
表現する能力、算数的活動などを生活などに活用する態度を育てることであ
る。『平成20年小学校学習指導要領解説国語編』によると、国語科では思考
力や想像力、言語感覚や国語を尊重する態度を育てていくことが目標であ
る。このことから、算数科、国語科のノートでは、表現様式や育てることが
できる力に違いがある。
2.算数科のノートと社会科、理科のノート
小林(1990)は、社会科や理科、算数科の違いは、社会科では社会事実や
事象、理科では自然現象、算数科は抽象的な数、量、図形が学習対象である
ことと述べている。『平成20年小学校学習指導要領解説社会編』によると、
社会科では公民的資質の基礎を育てることが目標にされている。
『平成20年
小学校学習指導要領解説理科編』によると、理科では問題解決能力や科学的
な見方、考え方を育てることが目標にされている。これらの教科のノートで
も表現様式や育てることができる力に違いが出てくる。
― 16 ―
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察
算数科では、論理的思考力を高める必要があること、頭の中で予想や見通
し、問題解決をする場面があること、数字や記号、式という独特の表現をす
ること、計算の練習が必要であるという特徴があることがわかる。
第2節
算数科のノートの役割
山戸(1990)が述べた算数科のノートのよさから、以下のノートの役割が
あるとわかった。
1
具体的な操作活動から抽象的な操作活動へ移る際に役立てることが
きる。
2
自分の考えた道筋を、足跡のように残すことができる。
3
他の児童と自分の考えを比較することで、新たな発見をすることがで
きる。
4
授業の内容や、重要な部分を整理することができる。
5
計算の練習をすることができる。
6
見返すことによって、授業の内容を思い出すことができる。
第3節
算数科のノートの種類
1.マス目のノートの利点
小林(1990)は、「数字の書き方の指導、位取りや筆算の指導ではマス目
が有効である」と述べている。低学年では、数字を書く練習や、記号を書く
練習などといった場面で効果を発揮する。他にも、マス目があれば、筆算の
ときに位を揃えやすくしたり、縦線と横線の交点を利用して線や図形を簡単
に書くことが出来たりするということもある。
2.行のノート
行のノートには、縦の線が無い。行のノートには同じ大きさのマス目はな
いため、文字の縦の幅は統一できるが、横の幅は統一しにくいという面があ
る。行のノートは、マス目のノートと比べて、自由度が高いということもい
える。行のノートであれば、マスがないことで、比較的自由に文字や記号を
書くことができる。他にも、行のノートでは、縦線がないため、めもりが見
やすいということがある。
第2章
第1節
今日までのノート指導
ノートを書く際の約束事
ノート指導を行うにあたって、まず、学級内でノートの書き方について、
約束事をつくることがある。中村(2013)は以下のような約束事をつくった。
①
文字を書くときは、原則として鉛筆を使用する。
― 17 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
②
使用する色ペンは、赤色、青色、緑色の 3 色を原則とする。
③
日付を書く。
④
定規を使う
⑤
吹き出しを用いる。
⑥
余白をつくる。
⑦
考え方と考え方の間は、 1 行あける。
⑧
読み取った友達の考えを書く。
⑨
教師が板書で赤を使ったときは、赤ペンを使ってノートに写す。
⑤の補足として、中村は直感的に思ったことや大事なポイントに関しては
ふきだしをつくるように囲み、問題解決の場面で自分の考え方や読み取った
友達の考えはふきだしに入れないで書くようにさせている。
第2節
ふきだし法と○つけ法
1.ふきだし法
まず、ふきだし法というノート指導法についてみていく。ふきだし法と
は、児童が考えたことをノートに、ふきだしで囲むようにして書かせるノー
ト指導法である。亀岡・古本(2002)によると、ふきだし法は考え方を見え
やすくするノート指導法であるとわかる。
亀岡(2010)によると、ふきだし法を用いたノート指導は、自分の考えの
記録や振り返りのためのノートという側面と、他の児童と考え方を共有し、
考えを深めるためのノートという側面を併せ持つ特徴があるとわかる。
2.○つけ法
○つけ法は、問題を解決している児童一人一人に対して、教師が机間指導
で直接児童が座っているところへ行き、赤ペンを使ってノートなどに○をつ
けていく方法である。○つけ法には志水(2006)が立てた以下の基本方針が
ある。
①
全員に○をあげる
②
わかる・できる喜びを与える
③
部分肯定から始める
④
9 割の子どもが見通しを持った時点で回るようにする
志水(2004)は、○つけ法のポイントには「①スピード、②正確さ、③声
かけ、④実態把握、⑤次への指示、⑥判断」の 6 つがあると述べている。教
師は、○つけ法をこれらのポイントに気をつけて行っていく。
― 18 ―
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察
第3節
学習のまとめにおけるノート指導
1.まとめとしてノートに書かせる内容
教師が児童にまとめとして書かせる内容について、小島(2012)は以下の
5 つがあると述べている。
①
知識
②
技能
③
考え方
④
学習体験
⑤
学習感想
④についての補足として、学習体験とは、学習の中で発見した解法、技法な
どのことである。
2.学習のまとめにおけるノート指導
ノートに学習のまとめを書かせる場面においても、いくつかの指導の方法
がある。小島は(2012)は、学習のまとめにおけるノート指導として以下の
ようなことを挙げている。
(1)板書を写させる
(2)教科書のまとめを写させる
(3)(
)に大事なことを入れさせる
(4)視点を示して、自分で書かせる
(5)自分で書かせる
特に(3)以降からは、児童自身のことばが入ったまとめになるような指
導である。
第3章
第1節
これからのノート指導についての提案
ノートを書く際の約束事の提案
前章に挙げたノート指導をもとに、以下の約束事を設けた。
①
ノートに使う色は、黒色、赤色、青色とする。
②
日付を書く。
③
問題や学習のまとめを囲む直線や図形などを書くときは、定規を使う。
④
自分の考え、他の児童の考えは青色で書く。
⑤
余白をつくる。
⑥
教師が板書で赤を使ったときは、赤色を使ってノートに書く。
約束事についての補足として、第 1 学年では、黒色、赤色のみ使い、自分の
考えなどはふきだしなどで囲まないようにする。
― 19 ―
皇學館大学教育学会年報
表1
第35号(2013年度)
学年ごとで行うことができるノートを書く際の約束事
第 1 学年 第 2 学年 第 3 学年 第 4 学年 第 5 学年 第 6 学年
△
(2色)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
×
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○…可能 △…条件によって行う ×…行わない
①
②
③
④
⑤
⑥
第2節
問題解決場面におけるノート指導の提案
1.学習意欲を育てるノート指導
○つけ法というノート指導法は、児童にとっては、○をもらうということ
だけでも学習意欲が芽生える 1 つの要因であるため、学習意欲を育てること
に役立つ。
○つけ法には、6 つのポイントがある。本節では、○つけ法のポイントの
中でも特にスピード、声かけ、次への指示に気をつけることで学習意欲を育
てるような○つけ法について提案していく。
スピードについて、初めは、前時の復習をする場面などで、問題を解かせ
ている間に○つけをしていくと、比較的素早く回りやすい。自力解決場面で
の○つけは、この練習をしてから行うようにする。声かけを行う上では、部
分肯定をすること、ほめ言葉が単調にならないようにすることに気をつけ
る。また、実際に○つけをして回るとき、これらを児童全体に聞こえるよう
に言いながら○つけしていくようにする。次への指示は、同じ問題でも別の
解き方があれば考えさせたり、自分が考えた解き方を他の児童にも説明でき
るようにさせたりする指示をするとよい。
2.児童の思考を深めるノート指導
児童の思考を深めるためには、知的コミュニケーション活動が有効な方法
の 1 つである。本論文では、特にペアでの話し合いにおいて、児童に行わせ
ることについて述べていく。ペアでの話し合いは以下の 3 つを意識させて行
わせる。
①
質問する
ただ聴き合うだけで終わらないように、何か1つ質問をさせる。質問をさ
せることによって、他の児童の考えをとらえやすくする。
②
他の児童の考えのよいところを見つける
自分の考えにはない部分を見つけさせることによって、ある事柄をそれま
でとは違う視点で見ることができるようにさせる。
③
話し合いの中で気付いたことや考えのよいところはノートに書く
― 20 ―
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察
①や②によって、気付いたことや考えなどのような目に見えないことを、
自分のノートに目に見える形で書き残させる。
第3節
学習のまとめにおけるノート指導の提案
授業の終わりの部分においては、その授業のまとめをノートに書かせるこ
とが多い。本節では、学習のまとめのノート指導について提案していく。
学習のまとめにおいては、以下の順番で指導を行っていく。
(1)板書を写させる
(2)教科書のまとめを写させる
(3)(
)に大事なことを入れさせる
学習のまとめは、中学年以上で(3)ができるように指導を進めていく。図
1 は(2)の指導によって書かれたまとめ、図 2 は(3)の指導によって書か
れたまとめである。
図1
第4節
図2
提案してきたノート指導を活用した授業例
第 5 学年の四角形の内角の和について学習する場面を例に、児童に書かせ
たいノートを考えた。授業の目標、展開は以下のようにした。授業の展開で
網掛けされている部分はノート指導に関連した部分である。図 5 はこの授業
で児童が書くと思われるノートである。
第 5 学年学習指導案
単元:四角形の 4 つの角の大きさの和の求め方を考えよう。
目標:四角形の内角の和は 360°であることを理解し、計算で四角形の角
の大きさを求めることができる。
授業の展開
学習活動
教師の働きかけ
指導上の留意点
1.本時の問題をとらえる。 ・問題を黒板に書き、ノー ・定規を使って、問題を囲
トに書かせる。
ませる。
四角形の 4 つの角の大
・全員で問題を読む。
・読んでいない児童がいな
きさの和は何度になり
・四角形をノートに書かせ
いか注意しておく。
る。
ますか。
― 21 ―
皇學館大学教育学会年報
2.四角形の内角の和の求
め方を考える。
・予想をノートに書く。
・300°くらい
・三角形の180°より大きい
・三角形 2 つに分けられそ
うだから180× 2 = 360°
・考え方をノートに書く。
・三角形 2 つに分けて
180 × 2 = 360°
・三角形 3 つに分けて
180 × 3 − 180 = 360°
第35号(2013年度)
・四角形の内角の和が何度
になりそうか見当をつけ
させることで三角形の内
四角形の 4 つの角の大
角の和が180°であること
きさの和は何度になり
を思い出させる。
そうですか。
・予想を青色でノートに書
かせる。
・机間指導で必要に応じて
・ノート上の図を用いて考
助言をする。
えさせる。
・予想を発表させる。
・考え方は青色でノートに
〈発問2〉
書かせる。
三角形を使って四角形
・発表の後、どの考え方で
の4つの角の大きさの
も 360°になることを確
和を考えましょう。
認する。
〈発問〉
・机間指導で必要に応じて
助言をする。
・発表させる。
3.授業のまとめ
・ノートに書く。
〈まとめ〉
四角形の 4 つの角の大
きさの和は(360°)に
なります。
・まとめをノートに書かせ
る
・括弧の部分は空欄にし、
児童に書かせる。
・黒板に、括弧部分を空欄
にしたまとめを書く。
4.適用問題を解く。
・四角形の分からない角を ・2問出題し、1問目はク
計算で求める問題を解か
ラス全員で見通しを持
ち、机間指導で○つけを
せる。
する。
図5
― 22 ―
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察
おわりに
○つけ法やふきだし法という学習意欲や思考力を高めるノート指導法をも
とに、学習意欲の向上や思考力を深めることを重視したノート指導の提案を
行った。実際に教育実習で○つけ法を行ったとき、○をもらった児童は喜ん
でいて、他の問題にも真剣に取り組む様子であった。
この研究で、児童の書くと思われるノートを考えたことで、授業の構想を
考えることにも役立ち、ノート指導の中で児童に喜びを味わわせたり、わか
るうれしさから笑顔にさせたりすることができることがわかった。
参考文献
・小林敢治郎(1990)新算数教育研究会『新しい算数科指導技術の基本シ
リーズ7
算数ノートのとらせ方・生かし方』東洋館出版社 pp.11-14 p.25
・『平成20年小学校学習指導要領解説算数編』文部科学省 p.21
・『平成20年小学校学習指導要領解説国語編』文部科学省 p.12
・『平成20年小学校学習指導要領解説社会編』文部科学省 p.12
・『平成20年小学校学習指導要領解説理科編』文部科学省 p.10
・山戸敏治(1990)
「私の考えをノートに書こう」
『楽しい算数の授業 10 月
号』明治図書 pp.6-9
・亀岡正睦(2010)「「ふきだし法」の指導法的意義について
Ⅲ
―思考過
程を可視化することの意味―」日本数学教育学会誌
・古本温久・亀岡正睦(2002)「「ふきだし法」による算数的活動の実践的研
究(2)―算数科におけるポートフォリオ評価の可能性について―」日本
数学教育学会誌
・志水廣(2004)『志水流授業理論の実践Ⅰ
算数科:「○つけ法」で授業が
変わる・子どもが変わる』明治図書 pp.16-29
・志水廣(2006)『算数力がつく教え方ガイドブック』明治図書
・小島宏(2012)『小学校算数
「数学的な考え方」を育てるノート指導術』
教育出版
・中村光晴(2013)
『思考過程が見える愉しい算数ノートづくり』東洋館出
版社
(卒論指導教員
― 23 ―
杉野裕子)
ふり遊びからごっこ遊びへ
― 3歳児の観察事例から ―
川
岸
亜希帆
はじめに
子どもの遊びは多種多様であり、大人が見ていても驚いたり不思議に思っ
たりする遊びが多い。特に年長児のごっこ遊びは多彩で奥が深く、初期の遊
びからどのように変容していったのか気になった。ごっこ遊びに関する文献
研究を通して、ごっこ遊び発生以前は見立て遊びやふり行為・ふり遊び等が
その基盤となっていることを知った。そこで、友達と何かになりきったり、
個人で何かのまねをしたりして遊ぶ 3 歳児に着目した。実際に園へ行き 3 歳
児の遊びの様子を観察していると、個人でのふりの行為・ふり遊びが多く見
られた。このふり遊びが後のごっこ遊びへ変容していく過程に興味を持ち、
研究したいと考えた。
第1章
先行研究
第 1 章では、筆者が本研究に取り組むにあたっての動機となり、特に参考
にした先行研究として、高橋たまき(1993)、河崎道夫(1983)
、八木紘一郎
(1992)、田川浩三(2004)、等 4 人の研究を紹介する。
第1節
高橋たまきの研究「ふり遊びの発生」
高橋たまきは著書『子どものふり遊びの世界−現実世界と想像世界の発
達−』において、子どものふりの行為、いわゆるふり遊びに着目している。
子どもが、内心につくり上げたイメージを表出する遊びは、日本において昔
から模倣遊び、想像遊び、ごっこ遊び等と呼ばれてきた。しかし高橋は、こ
こ数年間最も頻繁に用いられている pretend play をそのまま日本語に移し
て「ふり遊び」と呼び、複数の子どもが参加する場合を、
「ごっこ遊び」と
呼ぶことにした。高橋によるふり遊びの定義を以下にまとめる。
ふり遊びは、子どもが、空想、ファンタジー等、さまざまに表現される「虚
― 24 ―
ふり遊びからごっこ遊びへ
構」の世界をつくり、その世界でも機能し始めたことを物語る活動である。
ふり遊びの発生は、現実世界とは別のもう一つの世界の誕生を示す、行動的
な証拠となりうる。初期のふりの行為は、現実場面におけるのと文脈が異な
るのみであり、行為そのものは現実そのものの単純なコピーである。そし
て、次の発達段階において、空想やファンタジーが発生する。「ファンタジー
の世界は、現実そのままのコピーではなく、イマジネーションの優れた働き
によって願望と期待がこめられた世界である」(1)。そしてこの世界は、でき
るだけ面白く、愉快な世界を創出しようとする動機によって維持され、推進
される世界である。
第2節
河崎道夫の研究「ホントとウソッコの世界」
(省略)
第3節
八木紘一郎の研究「ごっこ遊びにおけるオモシロサの5要素」
ごっこ遊びの探求−生活保育の創造をめざして−』は八木紘一郎をはじ
めとした、師岡章、花原幹夫、中村健、飯島敬子、野口勝の保育実践者を中
心とした研究グループによってまとめられた著書である。八木らによるごっ
こ遊びの考察を以下にまとめる。
八木らは第 1 節で取り上げた高橋たまきの考え、まねをするという行為
を、個人的レベルと集団的レベルとで区別し、前者をふり遊び、後者をごっ
こ遊びとだと捉える点を否定している。高橋のように両者を分けて考えるこ
とはできないとしている。八木らが捉えるごっこ遊びとは、
「子どもが日常
生活の中で出会う全ての事柄の中で、出来事そのものに印象づけられたり、
子ども自らが興味や関心を持つ中で、自らをその行為や役割のなり手となっ
て遊ばれるものの総称」(2) のこと。また、「まねることを軸にしながら、現
実生活とは別の、非現実的な虚構世界を自らが主体となって生き、形成する
世界」(3) のこと。そして具体的には、“∼になって遊ぶ(なっている自分を
意識できている)”姿を前提にするため、鬼ごっこといわれるルール制限下
での競いあう遊びや、二歳児初期に見られるなりきる姿としての“まねっこ
(なった自分を意識できていない姿)”のような単純な模倣は含まないことと
している。
ごっこ遊びを成り立たせる要素について、以下の五つに分類できる。①
《役=∼になるオモシロサ》
、②《物=∼をつくる・つかうオモシロサ》
、③
《行為=∼をするオモシロサ》、④《空間=∼にするオモシロサ》、⑤《人・
かかわり・組織=∼とするオモシロサ》。
第4節
田川浩三の研究「想像遊び、うそっこ遊び」
(省略)
― 25 ―
皇學館大学教育学会年報
第2章
第35号(2013年度)
3歳児におけるふり遊びとごっこ遊び
第 2 章では、第 1 章での先行研究、その他の先行研究を踏まえた上で、3
歳児の遊びの特徴を明らかにし、ふり遊びとごっこ遊びの定義、ふり遊びか
らごっこ遊びへのつながりを検討していく。
第1節
3歳児の遊びの特徴
川原佐公編著による『保育者と母親のための共に育てる共育書
3 歳児マ
ニュアル』において、3 歳児は、集団での見立て・つもり遊びができる。言
葉がしっかりし始め、イメージの言語化ができる。
「なりきる」ことに「ら
しさ」が加わる。役割活動ができるようになり、身振り、つもり、役割の三
者が結合したごっこ遊びができるようになる。自分が経験したことをごっこ
に再現することができる。気の合う、好きな友達ができるようになる。遊び
の中で友達を意識し、共有することを求めるようになる、等の特徴があるこ
とが記されている。
また、今井和子は著書『なぜごっこ遊び?−幼児の自己世界のめばえとイ
メージの育ち−』において、実際に保育園に通う子どものごっこ遊びの様子
を記録し、子どもへの理解を深めてきた。今井は、三歳児は、ふり遊びや
ごっこ遊びの中で自分が思い浮かべた未知のことを言葉で表現することが多
くなってくる。その言葉によってこれまでの状況や場面が転換していく楽し
さ、友達とイメージが繋がりあえる喜びを得るようになる。その時々にひら
めいた自分の発想を実現せずにはいられないという意欲が生じてくる。虚構
と現実の世界を行きつ戻りつして遊ぶ、等と明らかにしている。
第2節
ふり遊びとごっこ遊びの定義
ふり遊びとごっこ遊び、呼び名が違うだけで両者とも同じ意味合いである
という考えもあれば、両者の意味・位置づけは異なるという考えもある。先
行研究を基に、筆者が考えたふり遊びとごっこ遊びの定義を述べる。
先ずふり遊びについて述べる。第1章第1節で紹介した高橋の考えに筆者
は納得した。ふり遊びは、子ども個人が内心につくり上げたイメージを表出
する遊びである。今井も高橋の考えに賛同している。今井は「ごっこ遊び
が、複数の子どもたちの参加によって役割を分担し、それにふさわしいふり
行為を伴いながらドラマを展開していく遊びであるとすれば、発達初期のふ
り遊びは、一人一人の子どものイマジネーションの表出と見ることができま
す」(4)と述べている。自分が心を動かされた対象を脳裏に焼き付けて再現す
る模倣(ふり行為)は、自ら積極的に楽しまれる「ふり遊び」になり、ふり
遊びはより多彩なものになっていく。しかし、これらふりの行為・ふり遊び
― 26 ―
ふり遊びからごっこ遊びへ
は個人(solo)でおこなわれることが前提である。
次にごっこ遊びの定義である。保育用語辞典において、野尻裕子はごっこ
遊びについて、
「子どもが日常生活の中で経験したことの蓄積から、つもり
になって『∼のような』模倣をし、身近なものを見たて、役割実現するとい
うような象徴的遊びをいう」(5)と述べており、田川の考えのように「ものま
ね−身ぶり活動」や「みたて−つもり活動」、「役割活動」が総合されたもの
としている。田川は他にも「『ごっこ』という語の本来の大まかな意味は、
『まねごとをして、いっしょに遊ぶ』ということです」(6) と述べており、個
人でなく複数人でのまねごとで成立することとしている。高橋も「ごっこ遊
びは、複数の子どもが参加して、各々が役割を分担し、役割にふさわしい『ふ
り』の行為を演じつつ、一定のテーマを織り成していく遊びである」(7)と述
べており、個人でのふり遊びが社会化された形態がごっこ遊びであるとし
た。また、参加者が同じイメージ、あるいは類似のイメージを持つことが
ごっこ遊びの前提とした。
以上を踏まえ、ごっこ遊びは、自分が今虚構世界の中で活動していること
を意識した状態で「ふり」の行為を演じる遊びであり、個人ではなく集団で
おこなう遊びであると定義する。尚且つ、子ども同士遊びのイメージが共通
していてテーマ性やストーリー性、役割分化があると、より深いごっこ遊び
が成立していると考える。
第3節
ふり遊びからごっこ遊びへのつながり
個人でおこなうふり遊びと、集団でおこなわれ様々なドラマが展開されて
いくごっこ遊び。前者から後者への移行にはどのような過程があるのだろう
か。高橋たまきは「子どもは、独りのふり遊びにおいて、その遊びに必要な
イメージをある程度蓄えてきた。また、イメージ同士を繋いで、新しいイ
メージに再構成することも経験済みである。さらに、いつも一緒に遊ぶ仲間
とは、遊ぶ場面を共有することによって、イメージを共有することも多く
なっている」(8)と述べている。つまり、ふり遊びにはなかった相手との“イ
メージの共有”が移行過程にあり、ごっこ遊びをおこなう上で最も重要とさ
れている。
第3章
第1節
3歳児のふり遊びやごっこ遊びに関する調査研究
研究の目的
第 2 章において、3 歳児の遊びの姿を捉えるとともに、ふり遊びやごっこ
遊びについて検討してきた。本研究では、実際に 3 歳児クラスでの園児の遊
びを観察することによって、3 歳児におけるふり遊びやごっこ遊びの実態を
― 27 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
明らかにしていくとともに、子どもの中で何が変化していったか、友達同士
の間でどのような変化があったか等、検討する。
第2節
研究の方法
【対象】松阪市にある公立S保育園の 3 歳児クラスの園児。
【人数】男児 4 名、女児10名、計14名
【調査期間】2013年 6 月11日から2013年 8 月27日までの毎週火曜日
(08:30∼11:00)、計11日間。
【調査内容】午前中の自由な遊びの時間におこなわれているふり遊びやごっ
こ遊びの様子を参与観察する。観察の結果は、ノートに筆記し
て記録した。
第4章
結果と考察
第 2 章で検討した定義を基に、得られた結果を 3 つの項目に分類すること
とした。①ふり遊び(12事例)、②ふり遊びからごっこ遊びへ発展しつつあ
る(14事例)
、③ごっこ遊び( 9 事例)の計35事例である。事例の中には判
別が難しいものもあったが、遊んでいる人数やイメージの共通性に重きを置
き、分類した。なお、登場人物の表記は以下の方法でおこなう。観察した幼
児を区別するために、男児○、女児○と、名前頭文字のアルファベットで表
記する。観察者(Observer)は O と表記する。
第1節
ふり遊びの事例
<事例1>
2013年 6 月11日(火)09:05
ねんど遊びをやめた男児Gは、真っ先にままごとコーナーへ走る。た
くさんの野菜・果物を「1、2、3、4・・・」と数をかぞえながら 2 つの
鍋に入れる。その後コンロに火をつけ、両手に鍋を持つ。激しく揺ら
し、焼くまねをする。そこに男児Hも入ってきて、コンロに手を近づけ
「あっち!」と叫ぶ。しかしその後すぐに、男児Hはままごとコーナー
から出ていった。
<考察>
第 2 章第 2 節で定義したように、ふり遊びは年少児特有の、虚構
世界に入り自分以外の他者を演じる遊び・子ども自身が内心につくり上げた
イメージを表出する遊びである。事例 1 では男児G、男児Hが二人ともそれ
をよく表している。男児Gは母親かコックさんになったつもりか、慣れた手
つきで調理をしている。誰にも話しかけず自分一人でふりの行為を楽しんで
― 28 ―
ふり遊びからごっこ遊びへ
いるようであった。男児Hは男児Gの調理している姿を見て、実際にそこに
火はないにもかかわらず、あたかも火を触ってしまったかのように「あっ
ち!」と叫んだ。これは男児Hが一瞬でも虚構の世界に入っていったから出
た言葉であると考える。
その他にも、手に何も持っていないにもかかわらず「かき氷、かき氷、冷
たい冷たい」と言いその場で手足をもじもじする子どもの姿、お弁当箱に何
も入れていないがしゃもじを使ってご飯を食べるふりをし「うめ!ごちそう
さまー!」と言う子どもの姿等があった。筆者は、上記どの事例にも共通し
ていることは、日常生活で印象深かった場面や出来事を遊びの中で再現して
いること、モノや生き物を自分がイメージした何かに見立て表現しているこ
と、ホントは違うけどウソッコで○○ということにしていること、だと考え
る。そのような虚構の世界をつくりだしながら、子どもたちはイマジネー
ションの表出を自ら楽しんでおこなっていたのである。
第2節
ふり遊びからごっこ遊びへ発展しつつある事例
<事例 2 >
2013年 7 月23日(火)08:50
女児N、ぽぽちゃんの人形を抱えながら走り回る。
女児N「ちりんちりん!よーしよーし、ちりんちりん!」
ままごとコーナーにて、女児Kもぽぽちゃんの人形を抱いている。
女児K「ねーむれー、ねーむれー。寝た!」
女児N「Nのぽぽちゃん寝やんでー、なかなか」
女児K「見せてみ!うんちかなー?」
女児N「ちりんちりん!N、バイクでそっち行くわー」
(女児Kのもと
を離れ、再び保育室を走り回る)
<考察>
ふり遊びからごっこ遊びに徐々に移行していくには、仲間とのイ
メージの共有が必要となってくる。イメージの共有が多く成された事例、あ
るいはイメージの共有はできずとも仲間と一緒に遊ぼうとする事例、等が見
られた。
事例 2 では、女児Nも女児Kも、偶々ぽぽちゃんの人形を抱えていた。共
通のモノのおかげで、二人は遊ぶ場面を共有している。ぽぽちゃんという赤
ちゃんのぬいぐるみがなかなか寝てくれないという設定にし、二人で解決し
ようとする姿が一瞬ある。しかしその後、女児Nは女児Kのもとを離れ、ウ
ソッコでバイクに乗っている設定にしてふり遊びを再開した。二人が共通の
モノの話題で虚構場面に入ったのは一瞬であったが、イメージの共有が成さ
れたという点においては、ごっこ遊びの第一歩を踏んでいるといえる。
― 29 ―
皇學館大学教育学会年報
第3節
第35号(2013年度)
ごっこ遊びの事例
<事例 3 >
2013年 7 月 2 日(火)09:20
男児G「お熱ですかー?チクッて注射しますねー。チクッ!」
(女児N
の持っているぽぽちゃんの人形に注射を打つふりをする)
女児N「泣いてませんかー?」
男児G「泣いてません。いっぱい血でています。いっぱい血でてるよー」
女児N、バンダナでぽぽちゃんの腕を拭くふりをする。
男児G「チクッ!」(もう一度注射を打つ)
女児N「ぽんぽんはー?」
男児G「服脱いでくださーい。ぽんぽんしまーす」
(ぽぽちゃんの服を
脱がせ、ぽんぽんと指をぽぽちゃんのお腹にあてるふりをする)
女児N「熱上がってきましたねー」
男児G「ちょっとお熱計りまーす。7 ど 8 ぶです」
女児N「ちょっと!救急車呼ばな!」
男児G・女児N「救急車さーん!救急車さーん!救急車さーん!」
<考察>
ごっこ遊びは、第 2 章第 2 節で定義したように、主に虚構世界の
中で活動していることを意識した状態で仲間とふりの行為を演じる遊びであ
る。また、テーマ性やストーリー性が見受けられれば、大人によって○○
ごっこと呼ばれることもあるだろう。
事例 3 では、男児Gと女児Nが病院ごっこまたはお医者さんごっこをして
いることが会話の内容からわかる。男児Gが医者役で、女児Nがぽぽちゃん
の母親役だろう。男児Gの注射を打つまねや聴診器をあてるまね、7 ど 8 ぶ
という単語を知っていることから、日常生活の中で病院での出来事が印象深
く、それがごっこ遊びの中で忠実に再現されていると考える。これは第1章
第 3 節で述べた、八木らが定義するごっこ遊びそのものである。この事例を
八木らが考えるオモシロサの 5 要素で捉えると、
《役=∼になるオモシロ
サ》、《行為=∼をするオモシロサ》が大きな比重を占めていると考える。役
になりきり、役に相応しい行為をすることを仲間と共に楽しんでいる。
その他にも、自らをかみなり、かみなりぼうやだと主張し「ごろごろごろ
ごろごろ・・・」と言い続けるかみなりごっこ、ブロックでウルトラマンの
武器をつくり仲間と撃ちあうウルトラマンごっこ等があった。
― 30 ―
ふり遊びからごっこ遊びへ
第5章
第1節
まとめと今後の課題
まとめ
保育園において 3 歳児のふり遊びやごっこ遊びの観察をおこない、そこで
得られた35事例から、①ふり遊び、②ふり遊びからごっこ遊びへ発展しつつ
ある、③ごっこ遊びの 3 つに分類し、それぞれ考察した。その結果、ふり遊
びからごっこ遊びへの移行過程について、以下のことが明らかになった。
<①から②へ>
・仲間と遊ぶ場を共有することで、イメージの共有がおこなわれるようにな
る。
・仲間と一緒にこのごっこ遊びがしたい、ウソッコで○○にしていることを
仲間にわかってほしい、という思い(イメージの共有を仲間に求める)が
発生してそれを言動で表すようになる。
・一人が虚構の世界で活動していると、周りにいる子どもも影響を受け、同
じ虚構の世界に入ろうとする。
上記のことが考えられる要因として、集団生活を通して友達を意識するよ
うになり、他者を認知する力や相手の言動を受容する力が発達する。積極
性が芽生える、等が挙げられる。
<②から③へ>
・虚構の世界で活動する中で相手の波長をさぐりあい、徐々に波長を合わせ
ることができるようになる。
・双方のイメージが一致しているため、一瞬でなく継続的なごっこ遊びが展
開される。
・仲間の言動によってごっこの内容が多少変化しても、それについていくこ
とができるようになる。
・仲間とイメージを共有しあう経験を積むことで、想像的場面や役の演技が
発達し、ごっこ遊びのオモシロサがわかるようになる。
上記のことが考えられる要因として、仲間とのイメージの共有が成される
ことで協調性が芽生える。周りの状況を把握する力が発達し柔軟性がでてく
る、等が挙げられる。
また、得られた結果のうち、多くのごっこ遊びが、ままごとコーナーを拠
点としたり、ブロックを用いて演じる者の武器や象徴となるものをつくった
りしていたことから、保育室の環境やモノの整備によって、ごっこ遊びが展
開されやすいこともわかった。
第2節
今後の課題
ふり遊びからごっこ遊びへ移行するにあたっての子どもの変化は明らかに
― 31 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
できたが、その要因は筆者の 3ヶ月間の観察事例だけでは断言できない。ま
た、今回 3 歳児に絞ることが適切であったとは思わない。今後は、様々な年
齢における子どもの虚構世界での遊びを見守り、その面白さを追求していき
たい。そして、子どもが虚構世界での遊びを十分に楽しみ、各々の個性を発
揮できるような働きかけや環境づくりをおこなっていきたい。
引用文献
(1)高橋たまき『子どものふり遊びの世界−現実世界と想像世界の発
達−』、ブレーン出版、1993、16頁
(2)八木紘一郎編著『ごっこ遊びの探求−生活保育の創造をめざして−』
、
新読書社、1992、41頁
(3)同上、41頁
(4)今井和子『なぜごっこ遊び?−幼児の自己世界のめばえとイメージの
育ち−』、フレーベル館、1992、72頁
(5)森上史朗、柏女霊峰編『保育用語辞典
第 2 版』
、ミネルヴァ書房、
2002、58頁
(6)田川浩三編著『ごっこ・劇遊び・劇づくりの楽しさ』、かもがわ出版、
2004、38頁
(7)高橋、前掲書、 4 頁
(8)高橋、前掲書、98頁
(卒論指導教員
― 32 ―
田口鉄久)
算数科教育における LOGO の活用
谷 川 純 也
はじめに
本論文においては、第 1 章で LOGO の由来や歴史について触れ、LOGO
の意義について述べていく。第 2 章では、LOGO で算数科教材の作成及び
改変を行い、提示型教材を完成させ、それらについて考察していく。第 3 章
では、従来の電子教材にはあまり見られない、誤答を交えた LOGO 提示型
教材を用いた授業構想を考察し、述べていく。
第1章
第1節
プログラミング言語 LOGO について
LOGO の歴史
(省略)
第2節
LOGO とは
名称はギリシャ語のロゴスに由来し、他の既存の言語は数を処理すること
が中心であるのに対して、単語を処理することを強調して名付けられた。
LOGO は、コンピュータの使用を通じた児童の思考能力の訓練を目的とし
ており、主に 8 歳から12歳の児童にも扱い易いよう配慮された豊富なグラ
フィック関連のコマンドが特徴である。今日の日本では、マイクロワールド
EX 等が使われており、それぞれに特徴を持っているが、共通した機能とし
て、日本語ワ−プロ機能を備えており、教師や、児童にも使用しやすいと言
える。また LOGO におけるシーモア・パパートの当初の理想について佐伯
は、鉛筆のようになることだと述べていた。現在の LOGO は鉛筆とは言え
ないものの、従来のコンピュータ言語の中においては、鉛筆に近いと言える。
LOGO に お け る 鉛 筆 的 特 徴 と し て 次 の よ う な 3 点 が 挙 げ ら れ る と 佐 伯
(1986)は述べている。
(1)タートル・グラフィックスという画像処理機能がある
タートルは自由自在に場所、方向、距離を決めることが出来る。場所、方
― 33 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
向、距離の数値を決め、実行するとタートルが動き、タートルの動いた軌跡
が、画面上に線として残る。もちろん線を残さないことも可能である。この
ように移動したタートルの軌跡が残ることによって、鉛筆と同様にかくこと
が出来る。
(2)フローチャートなしでプログラムを作れる
本来プログラムを組む際には、フローチャートを書き、それに沿ってプロ
グラミングする。しかし、LOGO ではフローチャートは不要である。最終
的に全く違うプランになったとしても目的を達成していれば、プログラムの
内容は様々でよいのである。これは鉛筆で書くように、決まった順序で書く
必要がない点に相当していると言える。
(3)「ことば」の処理が容易である
こ こ で 指 す「こ と ば」と は、文 字 列、単 語、文、文 章 の こ と で あ る。
LOGO においては、単語を組み合わせてプログラミングを進めていく。そ
の中で単語の組み合わせ、それらを並び替えるなどが比較的容易に行うこと
が可能である。そのため児童にも取り扱うことも出来る。これは、鉛筆で文
章を書く際に単語を置き換えたり、文法を変更したりする点に相当すると言
える。
第3節
日本語 LOGO の比較
(省略)
第2章
LOGO による算数教材作成
第1節
作成教材「立体図形と展開図」
第 4 学年の立体図形の学習では、辺、面、頂点といった立方体・直方体の
構成要素の個数や面の形、辺や面の平行、垂直等の関係性や特徴を理解させ
ることを目標としている。しかし、現在使用されている教科書では、取り上
げられている内容は少ない。また展開図を頭の中で立体図形に組み立てるに
は空間認識能力が必要となる。そこで空間認識能力を養い、児童に立体図形
と展開図の関係を理解させるための教材を作成した。図 1 は、問題を提示し
た画面である。図 2 は児童に、正しい展開図を見つけさせるための画面であ
る。図 3 は、立体図形と展開図に色付けをしているものである。動的に接す
る辺を同時に色付けすることで、どの辺と辺とが接するのかを印象に残るよ
うにした。また同時に立体体の対応した辺にも色付けすることで、児童の空
間的に理解させることができる。図 4 は、辺の色付けが終わり、展開図の正
誤判定をしたものである。このように色付けすることで、児童に誤答につい
て考えさせることができる。またあえて誤答を入れることで、より児童に思
考させる事も出来る。
― 34 ―
算数科教育における LOGO の活用
第2節
図1
図2
図3
図4
作成教材「異分母分数の加法」
分数については、第 2 学年で学び始め、第 4 学年において同分母分数の加
法で、答えが仮分数や帯分数にならないものを学習する。第 5 学年は、異分
母の分数の加法を学習する。児童がよく間違う例としてまず分子同士を足
し、次に異分母同士をそのまま足してしまうというものである。しかし、与
えられた分母を通分し、違う分母にすることに児童は、イメージがわきにく
い。児童にイメージをもたせるためには、視覚的に捉えさせることが効果的
である。そこで通分を視覚的に捉えるための教材を作成した。
「異分母分数
の加法」の基本画面が図 5 である。図 5 の基本画面下方にあるボタンを押す
ことでプログラムが動く。プログラムの内容は、
「1/2 + 1/3」を通分し足す
というものである。しかし、単純に足すだけではなく、あえて児童がよくし
てしまう誤答例を入れ、児童になぜ間違っているのかを理解させるようにし
た。図 6 は、間違いを画面上の図を通して確認しているものである。図を色
付けすることで、「1/2 + 1/3 = 2/5」が正しくないことを、視覚的に理解す
ることが出来る。それを踏まえて、正しい異分母の分数の加法について、図
を用いて通分を捉えさせる。まず分母を 6 に通分させ、図を 6 等分にする線
を引く。図 7 は、通分したものである。それを一つずつ動かし、合わせるこ
とで正しい答えを提示する。図 8 は通分したものを合わせたものである。こ
のように視覚的に通分を捉えさせることで、児童に理解をさせることが可能
である。
― 35 ―
皇學館大学教育学会年報
第3節
第35号(2013年度)
図5
図6
図7
図8
作成教材「円の面積の公式」
円の面積の公式は、円の面積=半径×半径×円周率と学習する。円の面積
を求めるためには、円を中心角で等分割し等積変形することで、長方形に限
りなく近い図形にする。長方形の面積=縦×横にあてはめると縦=半径、横
=直径×円周率÷ 2 となる。よって「直径×円周率÷ 2 ×半径」となり、円
の面積=半径×半径×円周率となる。また、円の面積の公式が、「半径×半
径×円周率」であるかを理解しているかを、大学生にアンケート調査したと
ころ、61人中1人のみが正答、3 人は理解しているものの説明が出来ず、そ
れ以外はまったく理解していなかった。この結果を受け、児童は円の面積の
公式が、「半径×半径×円周率」であるのかを理解していないと考えられた。
そこで動きのある教材を作成した。内容は、円を上下で色分けし、それぞれ
8 等分、16等分、32等分、64等分に等分割し、並べるというものである。こ
のプログラムと同じようなことが出来る教具は、様々存在しているが、ひと
つの教具で 8 等分、16等分、32等分、64等分のように違った等分割を出来る
ものはない。さらに市場に出回っている教具の中で最も細かい等分割は32等
分である。実際に32等分し、並べてみると長方形や平行四辺形には、あまり
見えない。これでは児童に円を細かく等分割すると、長方形や平行四辺形に
見えると発見させるには、十分な理解に欠けてしまう。そこで「円の面積の
公式」のプログラムを使用し、64等分を見せることで、より児童に円の面積
の公式の本質に気付かせることが出来る。図 9 と図10は、32等分と64等分の
比較である。
― 36 ―
算数科教育における LOGO の活用
図9
第3章
図10
第1節
誤答のある LOGO 提示型教材の授業提案
立体図形と展開図の学習における授業提案
本節では、
『啓林館のわくわく算数 4 年生下』の「直方体と立方体」の単
元の指導を想定し、本単元は、9 時間構成で、本時は、4 時間目の授業を想
定し、提案する。本時では、展開図の指導を行う。目標は、展開図の書き方
と正しい展開図を見極めるという内容である。教師の準備物としては、マイ
クロワールド EX がインストールしてあるパソコンとプロジェクターもしく
は、電子黒板である。なお直接書き込みすることが出来る電子黒板の方が、
プロジェクターよりも望ましい。電子黒板を使用していることを想定し、述
べていく。本時の学習指導案は以下の通りである。
第4学年
算数科学習指導案
本時の指導
(1)目標
展開図について理解し、展開図が書けるようになる。正しい展開図を見
極めることが出来るようになる。
(2)準備物
教師…「立体図形と展開図」のコンテンツ、電子黒板、教科書、プリン
ト、方眼紙、紙で作成した直方体、ハサミ
児童…教科書、ノート
― 37 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
(3)展開
第2節
異分母分数の加法の学習における授業提案
本節では、
『啓林館のわくわく算数 5 年生上』の「分数」の単元の指導を
想定し、単元は、11時間構成で、本時は、5 時間目の授業を想定し、提案する。
本時は異分母分数の加法を行う。また前節で述べたように、電子黒板を使用
した授業を想定し、述べていく。本時の学習指導案は以下の通りである。
第5学年
算数科学習指導案
本時の指導
(1)目標
異分母分数を通分し、同分母分数にして、足すことが出来るようになる。
― 38 ―
算数科教育における LOGO の活用
(2)準備物
教師…「異分母分数の加法」のコンテンツ、電子黒板、問題文を書いた
模造紙
児童…教科書、ノート
(3)展開
― 39 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
終わりに
LOGO は、教育現場では、ほとんど使用されていないのが現状である。
しかし、本論文で述べてきたように、LOGO で作成した教材は算数科教育
において有効的だと言える。また LOGO で作成した教材の利点は、基盤と
なるコンテンツを完成させれば、児童の学習状況や関連する単元ごとに発展
させた教材を作成することが出来る点である。
私が作成・改変した提示型教材には、改善の余地があると言える。今後は、
誤答のある提示型教材を作成し、現場で使用し、児童の実態を捉え、教育現
場で役立てたい。
引用・参考文献
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算数編
東洋館出版社
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・「わくわく算数」 4 下
5上
6 上(2010)啓林館
(卒論指導教員
― 40 ―
杉野裕子)
寄主アワヨトウ
体内で
カリヤサムライコマユバチ
幼虫が
異物として排除されない要因
向
緒
冴 子
言
昆虫の血体腔内における生体防御反応には細胞性防御反応と液性防御反応
の 2 つがある。細胞性防御反応とは血球による防御反応であり、血球より大
きな異物が侵入した場合異物の周りを多数の血球で取り囲み、生体内で隔離
する包囲化作用などがある(Pech and Strand, 1996)
。液性防御反応とはレ
クチンやメラニン色素形成による防御反応で、異物表面をメラニン色素で包
み、黒色化するメラニン化反応などがある(和合,1991)
。
チョウ目ヤガ科のアワヨトウ
(以下寄主とする)はイ
ネ科の植物を食害する昆虫である。この天敵であるハチ目コマユバチ科のカ
リヤサムライコマユバチ
(以下 Ck とする)は内部捕食多寄
生蜂である。Ck は寄主幼虫の体内に 80 から 150 個程度の卵を生みつけ、そ
の後寄主幼虫体内で成長し、10 日後寄主幼虫から脱出する(Nakamatsu et
al., 2006)
。しかし、寄主幼虫体内で Ck 卵または Ck 幼虫が成長するには寄
主幼虫の生体防御反応を回避しなければならない。そのため、Ck は産卵の
際に毒液 Venom(以下 V とする)とポリドナウイルス Polydnavirus(以下
PDV とする)を注入することで、寄主幼虫の生体防御反応を制御している
(中松,2002)。これらのウイルスは寄主血球のアポトーシスを誘導し、血球
機能を低下させる。さらに、Ck は V と PDV によって制御された寄主幼虫
の生理環境を維持するために、寄生蜂幼虫孵化後は漿膜細胞由来のテラトサ
イトを寄主体腔中に放出する(Dahlman,1990)
。テラトサイトは 1 卵から
約163個放出され(Hotta et al., 2001)、Ck 幼虫が寄主幼虫脂肪体から栄養を
摂取する際に手助けをしたり(Nakamatsu et al., 2002;Tanaka et al., 2006)
、
寄主幼虫の生体防御反応を妨げたりすると言われている(Kitano et al.,
1990)。
V や PDV、テラトサイトが寄主の生体防御反応を制御していることは知
― 41 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
られているが、Ck の発育期間の中でそれぞれがどのように関わっているか
は詳しく分かっていない。そこで、本研究では寄主幼虫の生体防御反応に
V や PDV、テラトサイトが関わるタイミングと反応の度合を定量化した。
材料および方法
1.供試虫
寄主の飼育個体群は名古屋大学大学院生命農学研究科の田中利治教授から
恵与された個体から創設したコロニーを用いて、16時間明期 8 時間暗期の長
日条件に設定した簡易インキュベーター(以下温室とする)内で飼育した。
餌として、幼虫には簡易人工飼料、成虫には10%のショ糖溶液を与えた。
Ck の飼育個体群も寄主と同様のコロニーを用いて、温室内で飼育した。
Ck 雌成虫を 6 齢 0 日目の寄主幼虫に寄生させ、餌として被寄生寄主幼虫に
は簡易人工飼料を、Ck 成虫には10%ショ糖溶液を与えた。
2.Ck の毒液とポリドナウイルスの供試
羽化後 2 日目以降の産卵未経験の Ck 雌成虫を終濃度 8%の飽和 PTU 入り
の PBS(組 成 NaCl 137mmol、KCl 2. 7mmol、Na2 HPO4 10mmol、KH2 PO4
1.76mmol/ℓ pH7.4)を入れたペトリ皿の中でピンセットを用いて解剖し、
毒嚢と卵巣を摘出後、冷却した容器にそれぞれ取り分け、ピンセットを用い
て破砕した。破砕した卵巣をピペッターでエッペンチューブに移し、遠心分
離機(KUBOTA KR-1500)を用いて634g で 5 分間遠心分離し、上澄み液を
別のエッペンチューブに移した。この動作を 3 回繰り返した後、溜まった上
澄み液を15848g で 10 分間遠心分離を行い、上澄み液を取り除いて、残った
沈殿物に PBS を入れて希釈し、1μl あたり 3 分の 1 雌蜂等量に調節したも
のを PDV 液とした。また、破砕した毒嚢も15848g で10分間遠心分離を行っ
た後、PDV 液と同様に 3 分の 1 雌蜂等量になるよう PBS で調節したものを
V 液とした。
3.寄主幼虫への Ck 卵の移植
寄主幼虫は体内に比較的大きな異物が侵入した場合、生体防御反応により
異物をメラニン化した後、血球によって包囲する。今回異物を Ck 卵とし、
移植後どのような変化をするのか経時的に観察するため実験を行った。
Ck 雌成虫を多数寄生させた 6 齢 0 日目の寄主幼虫を二酸化炭素で麻酔し、
飽和 PTU 入りの生理食塩水(0.9% NaCl 水溶液)を入れた解剖シャーレ内
で解剖ばさみを用いて背面を切開し、腹脚をピンセットでつまんで Ck 卵を
遊出させた。その後、6 齢 0 日目の寄主幼虫の腹脚の先端からマイクロキャ
ピラリーを用いて Ck 卵を60個移植した。また、2 の方法に従って抽出した
V 液のみ、PDV 液のみはそれぞれ1μl ずつ、V 液+ PDV 液は合わせて2μl
― 42 ―
寄主アワヨトウ
体内でカリヤサムライコマユバチ
幼虫が異物として排除されない要因
を 6 齢 0 日目の寄主幼虫にマイクロキャピラリーを用いて注入し、その後
Ck 卵を移植した。移植を施した幼虫は、3、24、48、72時間後に解剖し、前
述の方法に従って Ck 卵を摘出して、正立顕微鏡(OLYMPUS
BH-2)下で
撮影を行った。
また、対照区として 6 齢 0 日目の寄主幼虫に Ck 雌成虫を寄生させたもの
も、上記と同様の時間で解剖し、Ck 卵を摘出して同様の方法で撮影を行った。
4.熱処理を施した Ck 卵の寄主幼虫への移植
Ck 卵に熱処理を施すとメラニン物質や包囲血球群がみられるかどうか調
べるため以下の実験を行った。
3 と同様の方法で Ck 卵を摘出し、 6 齢 0 日目の寄主幼虫を二酸化炭素で
麻酔し、腹脚の先端からマイクロキャピラリーを用いて Ck 卵を20個移植し
た。また、摘出した Ck 卵をエッペンチューブに移し、100℃の熱湯に 5 分
間浸漬して熱処理を施した Ck 卵も20個吸い取り同様の方法で移植を行った。
移植を施した幼虫を 6 時間後に 3 と同様の方法で解剖し、Ck 卵を摘出し
て正立顕微鏡下で撮影を行った。
5.Ck 卵表面の経時的変化
Ck 卵が発育する過程で、卵表面がどのように変化するのか走査型電子顕
微鏡(日立 S-3000N)を用いて観察を行った。
3 の方法に従って寄生直後、24、48、72時間後に Ck 卵を摘出し、0.1%
poly-L-lysine で処理したカバーガラスに Ck 卵をそれぞれ付着させた。その
後、 1%四酸化オスミウム液で 1 時間固定し、アルコール脱水を行って酢酸
イソアミルに浸漬し、臨界点乾燥を行った。乾燥後、イオンスパッタで金蒸
着し、両面テープを用いて試料台にマウントし、走査型電子顕微鏡で撮影を
行った。
6.寄主幼虫への Ck 幼虫の移植
Ck は産卵と同時に寄主幼虫体内に V と PDV を注入することで、生体防
御反応を制御している。また、3.5日で孵化する際には漿膜細胞由来のテラ
トサイトを放出する。そこで、テラトサイトがメラニン化反応や包囲化作用
の抑制に関わっているかを調べるため実験を行った。
6 齢 0 日目の寄主幼虫 1 匹に対し Ck 雌成虫を 2 匹ずつ寄生させ 4 日経過
した被寄生寄主幼虫を 3 の方法に従って解剖し、Ck1 齢幼虫を摘出した。そ
の後、V 液のみ、PDV 液のみ、V 液+ PDV 液を注入して 3 日後の寄主幼虫
を二酸化炭素で麻酔し、腹脚の先端からマイクロキャピラリーを用いて Ck1
齢幼虫を20匹移植した。対照区として、 6 齢 3 日目の寄主幼虫にも、同様の
方法で Ck1 齢幼虫を移植した。
移植を施した幼虫は、3、24、48、72、96、120、144時間後にそれぞれ解
剖し、Ck 幼虫を摘出した。摘出した試料の大きさに合わせ、正立顕微鏡ま
― 43 ―
皇學館大学教育学会年報
たは双眼実体顕微鏡(OLYMPUS
第35号(2013年度)
SZ61)下で撮影を行った。メラニン物
質と包囲血球群の面積は、ジャストシステム(株)の花子2012を用いて計測
した。
7.統計処理
正規性の検定を行った結果、正規性を示した場合は 2 つ以上の実験区の比
較において多重比較検定(Tukey-kramer test)を行った。
結
果
1.寄主幼虫に移植した Ck 卵移植後の経時的変化
Ck 雌成虫を寄生させた寄主幼虫を 3、24、48、72時間後に解剖したところ、
全ての時間において正常に発育した Ck 卵が観察された(図1)。6 齢 0 日目
の未処理の寄主幼虫と V 液のみ、PDV 液のみを注入した寄主幼虫に Ck 卵
を移植したところ、48時間後までは正常に発育した Ck 卵が観察されたが、
72時間後には卵殻膜にメラニン物質がみられ、周囲を血球によって包囲され
た Ck 卵が観察された(図 2、3、4 )。V 液+ PDV 液を注入した寄主幼虫に
Ck 卵を移植した場合は、被寄生寄主幼虫の結果と同様に、全ての時間にお
いて正常に発育した Ck 卵が観察された(図 5 )。
↑図1.寄生後の Ck 卵の経時的変化
矢印の C は卵殻膜、L は Ck 幼虫を示す。
↑図2.未処理の寄主幼虫に移植した Ck 卵の経時的変化
矢印の M はメラニン物質が付着した卵殻膜、E は包囲血球群を示す。
↑図3.V 液を注入した寄主幼虫に移植した Ck 卵の経時的変化
矢印の M はメラニン物質が付着した卵殻膜、E は包囲血球群を示す。
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寄主アワヨトウ
体内でカリヤサムライコマユバチ
幼虫が異物として排除されない要因
↑図4.PDV 液を注入した寄主幼虫に移植した Ck 卵の経時的変化
矢印の M はメラニン物質が付着した卵殻膜、E は包囲血球群を示す。
↑図5.V 液と PDV 液を注入した寄主幼虫に移植した Ck 卵の経時的変化
矢印の C は卵殻膜、L は Ck 幼虫を示す。
図1∼5
A:処置後3時間、B:処置後24時間、C:処置後48時間、D:処置後72時間
2.寄主幼虫に移植した熱処理 Ck 卵の経時的変化
未処理の寄主幼虫に未処理の Ck
卵を移植し、6 時間後に摘出したと
ころ正常に発育した Ck 卵が観察さ
れた。熱処理を施した Ck 卵を移植
↑図6.寄主幼虫に移植した未処理および
熱処理を施した Ck 卵の変化
し、6 時間後に摘出したところ卵殻
矢印の M はメラニン物質がみられる
Ck の胚を示す。
A:未処理の Ck 卵、B:熱処理を施
した Ck 卵
血球によって包囲された Ck 卵が観
膜にメラニン物質がみられ、周囲を
察された(図 6 )
。
3.Ck 卵表面の経時的変化
Ck 卵の表面を走査型電子顕微鏡で撮影したところ、72時間後の Ck 卵の
卵殻膜が薄くなりテラトサイトが多数みられた(図 7 )
。
↑図7.Ck 卵表面の経時的変化
矢印はテラトサイトを指す。 A:寄生直後の Ck 卵 B:寄生 24 時間後の Ck 卵
C:寄生 48 時間後の Ck 卵 D:寄生 72 時間後の Ck 卵
4.寄主幼虫に移植した Ck 幼虫のメラニン物質と包囲血球群の経時的観察
6 齢 3 日目の未処理の寄主幼虫と 6 齢 0 日目に V 液のみ、PDV 液のみ、
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皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
V 液+ PDV 液を注入して 3 日後の寄主幼虫に Ck1 齢幼虫を移植し、3、24、
48、72、96、120、144時間後に Ck1 齢幼虫を摘出してメラニン物質と包囲
血球群の面積を計測したところ、移植 3 から96時間後にかけてのメラニン物
質の割合は、未処理区、V 液区、PDV 液区において高い値を示した(図 8)
。
一方、V 液+ PDV 液区においては移植 3 から48時間後まではメラニン物質
がみられず、72から144時間後にわずかにメラニン物質の沈着がみられた。
また、包囲血球群の面積は未処理区において移植48時間後にピークとな
り、その後減少傾向を示した(図 9)
。V 液区、PDV 液区においては移植24
時間後にピークとなった。V 液+ PDV 液区においては移植96時間後にわず
かな包囲血球群がみられたが、それ以外の時間には観察されなかった。
120
メ
ラ
ニ
ン
物
質
の
割
合
︵
%
︶
100
80
未処理
V液+ PDV 液
PDV 液
V液
60
40
20
0
3
24
48 72 96 120 144
移植後の経過時間(時間)
←図8.寄主幼虫に Ck1 齢幼虫を
移植した際の Ck1 齢幼虫体
表面に対するメラニン物質の
割合
各値の縦線は標準偏差を示す。
(p < 0.01 Tukey-Kramer test)
0.25
包 0.2
囲
血 0.15
球
群 0.1
の
面
積 0.05
︵
㎟ 0
︶
考
未処理
V液+ PDV 液
PDV 液
V液
3
24
48
72
96
120
移植後の経過時間(時間)
144
←図9.寄主幼虫に Ck1 齢幼虫を
移植した際の包囲血球群の面
積
各値の縦線は標準偏差を示す。
(p < 0.01 Tukey-Kramer test)
察
寄主幼虫は血体腔内に異物が侵入した場合、hyperspread cell が分泌する
物質によって異物表面にメラニン沈着が誘導され(加藤,2011)、その後顆
粒 細 胞 と プ ラ ズ マ 細 胞 に よ る 包 囲 化 作 用 が 引 き 起 こ さ れる(Pech and
Strand, 1996;Wiegand et al., 2000)
。本研究において、未処理の寄主幼虫と
V 液のみ、PDV 液のみを注入した寄主幼虫に異物として Ck 卵を移植した
ところ、48時間後までは寄主の生体防御反応の影響を受けずに発生が進んで
いた。しかし、72時間後摘出した Ck 卵は卵殻膜にメラニン物質がみられ、
周囲を血球によって包囲されていた。一方、V 液+ PDV 液を注入した寄主
幼虫に Ck 卵を移植した場合は、72時間後でも発生が進んだ状態の Ck 卵が
― 46 ―
寄主アワヨトウ
体内でカリヤサムライコマユバチ
幼虫が異物として排除されない要因
観察された。Tanaka(1987)は、寄主幼虫の生体防御反応から Ck 卵を保
護するには寄主幼虫が V と PDV に感染した状態でなければならないと報告
している。本研究においても、V 液+ PDV 液を注入した場合のみ移植72時
間後に発生が進んだ状態の Ck 卵がみられたため、V と PDV の両方が寄主
体内に感染した状態でなければならないことが示された。
本研究において未処理の寄主幼虫に熱処理を施した Ck 卵を移植し、6 時
間 後 に 摘 出 す る と メ ラ ニ ン 物 質 と 包 囲 血 球 群 が み ら れ た。Asgari and
Schmidt(1994)はハチ目コマユバチ科の
(以下 Cr とする)
卵の表面には絨毛膜構造がみられ、ウイルスタンパク質に似た要素が表面を
覆うことで、卵を寄主幼虫の生体防御反応から保護していると報告してい
る。本研究においても、熱処理を施した Ck 卵にはメラニン物質と包囲血球
群がみられたことから、Ck 卵も Cr 卵と同様に卵表面に付着した熱に弱い
タンパク質などの物質によって卵を保護していると考えられる。また、Ck
卵は3.5日で孵化し、孵化後は漿膜細胞由来のテラトサイトが寄主体腔中に
放出される(Dahlman,1990)。Ck 卵の表面を走査型電子顕微鏡を用いて観
察したところ、寄生72時間後の Ck 卵の表面は卵殻膜が顕著に薄くなり、テ
ラトサイトとみられる多数の丸い突起が観察された。このことから、寄生初
期は上述のようにタンパク質などの物質によって卵を保護していると考えら
れるが、72時間後にはテラトサイトが卵表面に現れ、寄主幼虫が Ck の V や
PDV に感染していないと異物として認識されてしまうのではないかと考え
られる。
さらに本研究では、寄主の生体防御反応の制御において、テラトサイトが
どのように関わっているのかを調査するため、Ck1 齢幼虫の移植実験を行っ
た。未処理の寄主幼虫と V 液のみ、PDV 液のみを注入して 3 日後の寄主幼
虫に Ck1 齢幼虫を移植した実験区では、移植後の Ck 幼虫にメラニン物質と
包囲血球群がみられた。V 液+ PDV 液を注入し 3 日後の寄主幼虫に Ck1 齢
幼虫を移植した場合は、移植72から144時間後の間にわずかなメラニン物質
が み ら れ、96 時 間 後 の み に 包 囲 血 球 群 が み ら れ た。Tanaka and Wago
(1990)は寄主幼虫に Ck1 齢幼虫を移植した際、V、PDV、テラトサイトの
3 種が寄主幼虫に注入された場合のみ包囲化が妨げられたと報告している。
また、テラトサイトはメラニン沈着に関わるフェノールオキシダーゼの活性
を抑制することも報告している。本研究においても、V 液+ PDV 液注入区
で Ck 幼虫にメラニン物質と包囲血球群がみられたため、テラトサイトが寄
主体腔中にない場合、メラニン沈着や包囲化作用などの寄主の生体防御反応
を完全に制御することはできないということが示された。
今後は V 液+ PDV 液を注入して 3 日後に Ck1 齢幼虫を移植し、翌日さら
にテラトサイトを移植することで、Ck 幼虫と V、PDV、テラトサイトの関
― 47 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
係を検証していきたい。
謝
辞
本研究を進めるにあたって、懇切なご指導や助言を頂き、論文校閲の労を
とられた皇學館大学教育学部教育学科の中松豊准教授に心より感謝の意を表
する。また、実験材料や実験器具を提供して下さった農業生物資源研究所の
立石剣博士、名古屋大学大学院生命農学研究科の田中利治教授にも感謝申し
上げる。そして、皇學館大学教育学部教育学科の澤友美氏、山路拓也氏を始
めとする生物学研究室の皆様、社会福祉法人洗心福祉会第二はなこま保育園
の山際桃子氏にも感謝申し上げる。
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(卒論指導教員
― 49 ―
中松
豊)
音楽活動を通じた
障害のある児童の成長
和 田 典 子
はじめに
これまで障害を有しつつ普通学級に在籍する児童の多くは、学級活動など
において、自分やまわりの状況を把握できないまま参加させられてきた。筆
者が通常学級でのお楽しみ会を見学した際にも、そのような傾向が見られ
た。確かに通常学級の児童らと時間や空間を共有することは大切だが、その
活動内容や自分のすべきことが理解できていない状態のまま学習活動が進め
られていては、障害のある児童への教育がなされているとは言い難い。
障害のある児童の音楽会にむけての活動支援を通して、上記の問題の改善
を図りたい。音楽会が障害のある児童にとっても有意義な活動となる音楽活
動の支援を行う。その過程において自分の好きなことから能力開発、自己肯
定感の育成を支援したいと考える。
第1章
日本の障害児教育の大きな流れ
江戸時代から寺子屋や藩校における「学業不振児」などへの教育が行われ
ていたが、ごく一部の障害児に限られていた。
2007年度から始まった「特別支援教育」は、一人一人の教育的ニーズに応
じた教育的支援を行うものであり、きめ細やかな個別的支援を重視している。
そして今後目指すべき教育とされている「インクルーシブ教育」は、障害
のある子と障害のない子が共に学ぶ教育で、自立と社会参加を見据えて教育
環境の整備を行うものである。すべての子どもにとってよい効果をもたらす
とされているが、日本における実施の試みは始まったばかりである。
― 50 ―
音楽活動を通じた障害のある児童の成長
第2章
第1節
音楽活動の実践
研究の目的と方法
ここでは実際に行った音楽活動の実践について述べる。対象としたのは、
鈴鹿市立A小学校の特別支援学級に在籍する4年児3名である。2013年4月
22日から11月6日までの期間に、1回40分程度の授業を計14回行った。
(1)目的
①合奏の場面で、通常学級の仲間と演奏することの楽しさを知る。
②好きなこと、得意なことから能力開発、自己肯定感の育成を図る。
③その他の日常生活場面や学習活動における諸能力の育成を図る。
(2)方法
①音楽の授業を行い、直接的にはたらきかける。
②学習支援や休み時間等におけるかかわりを通して、信頼関係を築く。
③保護者や特別支援学級担任に聞き取りを行い、児童の実態を把握する。
④ビデオ撮影を行い、記録を残し、支援策の改善を図る。
第2節
学習指導案
学習指導案の全体案(略版)を掲載し、本単元の計画等について報告する。
1.単元名
「楽しい音楽の時間です!」
2.単元について
(1)児童観
知的な障害を有する4年生3名(男子1名、女子2名)を対象とする。普
段彼らは国語と算数の時間のみ特別支援学級に通っており、その他の時間は
通常学級で生活している。特別支援学級においては、他学年の児童らと互い
に関わりあうことができている。学習は習熟レベルに応じて個別に支援を受
けている。また教員に対し、自分の意思を言葉や手引きなどで伝える姿があ
るが、一方的に話しかけたり自ら意思を伝えに来ることができなかったりと
コミュニケーションに関する課題も見られる。音楽面では各々が日常生活内
の音に反応したり、進んで音楽を聴いたり歌を歌ったりする様子が見られる。
(2)教材観
①サウンドシェイプ【前期・中期】
扱いの容易な打楽器であり、どの児童も自分で音を鳴らすことができ
る。さらに形や持ち方、たたき方によって音が異なり、授業や子どもたち
の間での変化を持たせることができる。
②リズムカード【前期・後期】
楽譜を見たことのない児童にとっても容易に視覚的理解ができる丸型の
― 51 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
音符カードを用いて、リズム作り、リズム打ちの活動を行う。
③ボディーパーカッション(体)【中期】
体でリズムを取ることの楽しさを感じさせるために取り入れる。
④風船【中期】
音楽の流れている空間で受け渡し、互いのコミュニケーションを図る。
⑤タンブリン【後期】
音楽会で用いる扱いの容易な打楽器で、リズム打ちの練習などを行う。
⑥鈴(装着型)【後期】
全身を使って音楽を楽しめるよう、体の動きに合わせて音が鳴る楽器と
して装着型の鈴を作成した。
⑦絵カード【後期】
言葉リズムを行う際に用いる提示教材である。すぐに言葉が出てこない
児童も一緒になって言葉リズムの活動に参加できる手立てとなると考
える。
(3)指導観
本単元では、手軽な打楽器やのりやすい音楽を用いた活動により、音への
関心を高め、教員や友だちとの関わり合いを深めたいと考えている。
3.単元目標
音楽活動を通じて仲間と演奏すること、かかわりあうことの楽しさを知
り、積極的に仲間と関わることができる。
4.単元設定の理由
音楽会やそれに向けての音楽活動が有意義なものとなれば、社会性、人間
関係形成能力、自己肯定感、その他諸能力を育成することにつながると考え
る。本単元では、障害のある子も障害のない子と一緒になって演奏活動に参
加することができるよう支援を行いたい。
5.単元の進行計画と時間配当
前期】ではリズムの習得に重点を置いた活動、【中期】では音楽や楽器を
用いた活動、
【後期】では中期の継続とそれを踏まえた音楽会の練習を行った。
第3節
実践記録
筆者が実際に行った活動の内容とそこでの児童の様子の概要を記載する。
【前期】(全6回)
リズム模倣、リズム譜作成、サウンドシェイプ演奏、リズムアンサンブル
A児
進んでリズム譜を作成したり、読んだりする。
リズム譜を見て、ある程度リズムを理解することができる。
正確にたたくことができないが、一音ずつ読むことはできる。
新しいリズムを知りたい、みんなと合わせたいという思いがある。
― 52 ―
音楽活動を通じた障害のある児童の成長
B児
リズムを模倣してたたくことができる。
リズム譜を読むことができず、リズムの話になると退屈そうにする。
他児の面倒を見る。他児の様子を見て楽器に触れることができる。
呼びかけや褒めることによって、積極的に楽しんで参加できる。
C児
授業者のはたらきかけに対して積極的に応えようとする。
四分音符のリズムは、見て理解することができる。
授業者や周りに合わせてリズムをとることができる。
楽器(サウンドシェイプ)に興味がある。
【中期】(全3回)
音楽に合わせて体を動かす・打楽器を演奏する、ボディーパーカッション
A児
音楽に合わせて自由に体を動かすのは苦手なようだが、ボディー
パーカッションなどで決められた動きは積極的に習得しようとする。
サウンドシェイプに興味を持ち、たたき方による音の変化を楽しむ。
B児
音楽が流れてくると、喜んで曲に合わせて体を動かす。その際、他
の児童を誘って共に活動しようとする。
誰かを模倣するよりも自分で考えた動きの方が楽しんで参加できる。
C児
他人の模倣をすることは得意で、周りを見ながら音楽の拍子に合わ
せて楽器をたたいたり、足踏みしたりすることができる。
少し難しい活動にも懸命に取り組み、できたときは喜ぶ。
【後期】(全5回)
言葉リズム、リズム打ち練習、音楽に合わせて楽器を演奏する、合奏練習
A児
鈴を身につけたときは、自然とリズムに合わせて体を動かすことが
できる。その際、鈴の付ける位置や鳴らし方による音の違いにも気
づく。
言葉リズム、リズムひざなどにおいて活動内容の理解は早い。
合奏では同じパートの人に合わせてきちんと弾こうとする。
B児
音楽に乗って積極的に体を動かし、他者とのリズム活動を楽しむ。
決められた動きをすることはあまり好きではない。
リコーダーでの演奏活動に意欲的に取り組み、自分の上達を喜びな
がら合奏を楽しんでいるようである。
C児
他者の模倣ではなく自分の意思で動く場面が見られるようになった。
音楽会で担当するタンブリンのリズムを正確に覚えており、音楽が
流れてくるとそれに合わせていつでもたたくことができる。
― 53 ―
皇學館大学教育学会年報
第4節
第35号(2013年度)
実践のまとめ
(1)授業者が教える【前期】
前期は、授業者が「教える」活動が中心となってしまった。全員が楽器を
好みそれをたたくことを楽しんでいるようだったが、リズム譜を中心に用い
たことにより、子どもたちの理解度の差から活動の取り組みにも差が生じた。
(2)子どもたちが活動する【中期】
中期は、子どもたちが自由に楽器をたたいたり音楽に合わせて体を動かし
たりする活動を取り入れた。子どもたちの主体性を重視することにより、前
期よりも積極的に喜んで活動に参加する様子が多く見られるようになった。
一方で「自由に」と言っても、
「自由」がどうすればよいかわからず、立
ち尽くしてしまう児童の姿もあった。
(3)音楽会に向けて、子どもが主体的に活動する【後期】
後期は、中期の活動内容から子どもたちの主体性を活かしつつ、音楽会に
向けての練習に取り組んだ。授業時間すべてを音楽会の練習に費やすのでは
なく、子どもたちが音楽そのものを楽しむことができるよう、教具・楽器・
などを工夫して用いた。子どもたちからは「こんなふうに音が鳴る、楽し
い。」「全部吹けるようになりたい。」などといった前向きな発言があった。
第3章
第1節
音楽会当日とその後の子どもたち
音楽会当日
11月15日(金)音楽会当日、子どもたちは緊張した面持ちだったが、それ
ぞれが集中して通常学級の他の児童らと一緒に合奏に取り組んでいた。
本番の舞台では児童自ら体でリズムをとり、堂々と前を見て演奏していた。
第2節
音楽会を終えて
音楽会終了後に児童自身、保護者、特別支援学級担任に聞き取りを行った。
(1)児童
音楽会や合奏、音楽活動については全員が「楽しかった」「まあまあ楽し
かった」という感想をもっている。上手に演奏できるようになったかという
問いに対しては、A児は「まあまあ」、B児とC児は「はい」と答えた。先
生やお家の人に褒められたかという問いに対しては、A児は「少し」、B児
とC児は「はい」と答えた。また、全員が「自分に自信がついた」
、
「これか
ら色々なことに挑戦しようと思う」と答えている。
(2)保護者
音楽会までの活動や音楽会本番について子どもたちがどのように感じてい
ると思うか尋ねたところ、すべての保護者が子どもたちは「よかった」と感
― 54 ―
音楽活動を通じた障害のある児童の成長
じていると思うと答えた。音楽会までの活動では「友だちや先生と一緒に活
動できたから」、「自信がついたから」、「上達を実感することができたから」、
音楽会本番では「楽しかったから」、「上手に演奏できたから」、
「通常学級の
友だちと一緒に演奏できたから」をその理由として挙げている。さらに、当
日の児童らの緊張感や集中力、舞台で堂々と演奏する姿を見て成長を感じた
という声もあった。
「自己肯定感が高まったと考えられるか」という問いに
対しては、
「どちらかというと高まった」
、
「高まった」という回答が得られた。
すべての活動を終えたあとの家庭で見られる児童の変化として、音楽面で
は「音楽や楽器への興味が深まった」、「リコーダーに対する苦手意識を克服
できた」、日常生活面では「友だちと一緒に何かをしたいという思いが出て
きた」、「以前より日常生活を積極的に送ることができるようになり、家庭で
のコミュニケーション力が向上した。」、学習面では「以前より意欲的に取り
組めるようになった。」などといった意見を聞くことができた。
(3)特別支援学級担任
保護者への質問項目と同様のことが、学校においてはどうであるのかを尋
ねた。音楽面では「音楽や楽器への興味が深まった」
、
「以前より音楽活動に
意欲的に取り組めるようになった」
、日常生活面では「他者との関わりを好
むようになった」、「周りの友だちが頑張りを認めてくれてそれが励みになっ
ている」、「音楽活動を楽しみにしており、そのことが生活面でプラスに働い
た」との回答があった。一方で学習面では「変化は見られなかった」ようで
ある。
第4章
第1節
考
察
聞き取り調査の結果から
3人ともが、音楽会の全体練習や合奏について「楽しかった」、
「よかった」
と感じていることがわかる。筆者が行った音楽活動についても、概ね楽しん
で活動に取り組むことができていたようである。この聞き取り調査は音楽会
終了後に行ったものであり、子どもたちにとって後半の音楽活動や音楽会本
番の印象がよかったためにこのような回答を得ることができたと考えられ
る。また、保護者や先生といった周りの大人にほめられることが、上手に演
奏できるようになったと感じられるもととなっている。活動を終えて、全員
が「自分に自信がついた」と回答していることから、音楽会を通じて自己肯
定感が育まれたと言える。保護者から見ても、子どもたちが他者と一緒に活
動することを楽しんでいたということが窺える。子ども自身に上達の実感や
自信をもたせることが、活動自体を「よかった」と感じさせることにつな
がる。
― 55 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
音楽活動を通じて音楽や楽器に対する興味の深まりや苦手意識の克服を見
ることができた。日常生活において他者との関わりを好むようになる、コ
ミュニケーション能力が向上するなどの成長も見られた。それは音楽で他者
との活動の楽しさを実感したことにより、日常生活を共に過ごしたいという
思いが芽生えてきたからであろう。さらにクラスの友だちに頑張りを認めて
もらえることは、本人にとって大きな励みになる。クラスの友だちにとって
も、障害のある彼らが頑張っている姿を見ることは日常生活の諸側面におい
て励みになるのではないだろうか。
第2節
実践全体を通して
今回実践した音楽活動は、通常の学級の子どもたちと一緒に全員で合奏を
楽しむことを目指した。単元目標として「音楽活動を通じて仲間と演奏する
こと、かかわりあうことの楽しさを知り、積極的に仲間と関わることができ
る。」としたが、前期で行った活動では、技能の習得が目的として前面に出
るとともに、授業者である筆者が「教える」活動が主となってしまった。
その反省から中期の活動では児童の主体性を重視した活動を心がけ、音楽
に合わせて自由に体を動かしたり、楽器をたたいたりする活動を取り入れ
た。すると前期の活動では表情が沈んでいた児童が、いきいきと動き出し
た。一方で「自由」がどうすればよいかわからず戸惑う児童の姿もあったこ
とから、課題を可視化したり、ある程度活動を指定したりすることも大切だ
と感じた。
また、子どもたちに活動内容の定着を促すためには、前期と中期の内容を
入れ替えることが望ましかった。音楽の楽しさを実感させた上で、リズム理
解、技能の習得に向けての取り組みができれば、音楽会を一つの到達点とし
て授業を組み立てることができたと考える。
実践を通して次のようなことがわかった。それは、①個に応じて効果的な
支援策は異なる、②楽しんで活動に参加できるような工夫が必要である、③
授業計画・準備の段階で子どもたちの反応を想像することが大切である、④
個々に達成感を味わわせられるよう心がける必要がある、ということである。
第3節
特別支援教育のこれからを考える
本研究において、すべての子どもにとって楽しく有意義な活動にしたいと
いう思いを持って計画・実践に取り組んだが、一人ひとりの性格や必要とす
る支援が異なるという点で、その難しさを実感した。この実践を通常学級の
子どもたちと一緒に行うとすればなお難しいだろう。それが今後目指してい
くべきだとされるインクルーシブ教育がなかなか教育現場に浸透していかな
い所以である。インクルーシブ教育は障害のある子と障害のない子を分けな
― 56 ―
音楽活動を通じた障害のある児童の成長
いことを前提とするが、そればかり重視すると、障害のない子どもたちに
とっては学習面での成長が妨げられる、障害のある子どもたちにとっては学
習についていけない、内容がわからないままその場にいることになる、など
という懸念があり、双方にとって難しい問題をはらんでいる。
近年、インクルーシブ教育の考えが普及してくるとともに、分けることの
是非が問われている。筆者は必要に応じた個別支援と可能な限りの共同的な
学習を進めるべきだと考える。また将来インクルーシブ社会を実現するため
には、健常者や社会全体の意識改革がなされることが必要である。そのよう
な面でも早期から障害のない子と障害のある子が一緒に学校生活を送ること
の意義は大きい。共に学び、互いに認め合うことのできる学級づくりを行う
ことが、将来的にすべての人間にとって過ごしやすい、思いやりのある社会
の実現につながる。共に過ごす中で子どもたちどうしの学び合いを促し、さ
らには子どもたちのかかわり活動が教師の行う環境整備や授業づくりのヒン
トとなることもあるだろう。教師が責任をもって一人ひとりと向き合い、適
切な支援を子どもの目線で考えることが大切である。
おわりに
本研究では、第1章で現在の特別支援教育の在り方を考えるために、障害
児教育の変遷について調べた。第2章で全 14 回の音楽活動の実践とそこで
の子どもたちの様子について記載した。活動計画を立てる際、初めはリズム
や譜読みの技能習得の授業を考えていたが実際に行ってみたらその活動の面
白みのなさを痛感し、子ども主体の授業づくりの大切さを改めて実感した。
第3章では音楽会の本番や活動を終えた後の子どもたちの様子を述べたが、
本番の舞台上で集中力をもって一生懸命合奏や合唱に取り組む子どもたちの
姿は、筆者の目にもよく焼きついている。活動を終えて、子どもたちの成長
が家庭や学校生活において見られたというのは、一つの成果であると考え
る。第4章の聞き取りや実践を踏まえての考察は、今後筆者自身が障害のあ
る子とない子が共に学ぶ教育を考え、実践していく上でのヒントとなるだ
ろう。
音楽会の練習や本番において、子どもたちの成長した姿を見たり、保護者
の方や先生方から聞いたりして、他者と一緒にいることの楽しさを伝える教
育を行うべきだと考えるようになった。また、障害のある子たちは自己肯定
感が育まれにくいということは以前から言われている。そんな子たちに自信
をつけさせたい。学齢期にたくさんの成功体験をすることによって、自信に
つなげることができる。障害の有無にかかわらず、すべての子どもにとって
集団生活が楽しく、一人ひとりが活躍できる学級づくりに努めたい。
― 57 ―
皇學館大学教育学会年報
謝
第35号(2013年度)
辞
本研究を進めるにあたって、A 小学校には大変貴重な研究の場をいただ
きました。快く調査依頼を引き受けてくださった校長先生はじめ、特別支援
担当の先生方、通常学級担任の先生方、保護者の方々、一生懸命活動に取り
組んでくれた A さん、B さん、C さんに深く感謝申し上げます。
文
献
・中村満紀男、荒川智 2003「障害児教育の歴史」明石書店
・文部科学省 HP http://www.mext.go.jp/
・国立特別支援教育総合研究所 HP http://www.nise.go.jp/cms/
・松樹偕子 1999「障害児の音楽指導
芸術教育研究所編」黎明書房
・山田俊之 2007「体がすべて楽器です! ザ・ボディパーカッション
ほか
ほかパン屋さん」音楽之友社
・ジョン・ビーン、アメリア・オールドフィールド 2003「こころとからだ
を育む音楽ゲーム」音楽之友社
・上原芳枝 2011「発達障害サポートマニュアル
― 国・学校・家庭での実
例集 ―」PHP 研究所
・太田正己 2008「授業案作成と授業実践に役立つ特別支援学校の授業づく
り基本用語集」黎明書房
・堀智晴 2004「ちがうからこそ豊かに学びあえる∼特別支援教育からイン
クルーシブ教育へ∼」明治図書出版
・堀智晴 2004「障害のある子の保育・教育
― 特別支援教育ではなくイン
クルーシブ教育へ ―」明石書店
・菅原弘 2010「自閉症指導・支援のための情報データ活用実践『伝え合う
関係』を大切にした取り組み」明治図書出版
・コレット・ドリフテ 2006「特別支援教育の理念と実践
― 早期から望ま
しい行動を育むために ―」ナカニシヤ出版
・藤田修 1998「普通学級での障害児教育」明石書店
・和田明 2010「特別支援教育からインクルーシブ教育へ∼障害者権利条約
批准にむけた動きの中で∼」www.jec.or.jp/soudan/pdf/70-1.pdf
(卒論指導教員
― 58 ―
錦かよ子)
Ⅲ
ゼミ選出卒業論文要旨
担任教師の障がい児に対する対応と
通常学級の児童の態度との関係についての研究
西 本 紫 乃
1.目
的
本研究は、担任教師の通常の学級に在籍する障がい児への対応が、周囲の
児童の障がい児への対応にどのような影響を与えるかを明らかにするもので
ある。教師が児童に対してどのように指導すべきかといった研究は多くある
が、指導を受けている側から見た影響に関する研究はあまりない。教育は
様々な働きかけがあるが、受け手である児童生徒がどう感じ、指導の仕方に
よってどう教師を見ているかという視点は重要である。このことを明らかに
することによって、教師の立場からだけでなく児童生徒の立場に立った両面
的な指導が得られる。
以上の視点から、本研究では学生に小学校時代や中学校時代の教師の指導
による学級の雰囲気等を尋ね、周りの児童が指導によって障がい児をどのよ
うに受け入れているのか、教師の指導の仕方と障がい児や周りの児童への対
応がどのようであれば学級運営が上手くいくのかを調べることを目的とした。
2.方
法
主に教育学部の大学生を対象に回想法で395名に調査を実施した。アン
ケートは全148項目あり、「フェイスシート」「小学生時代の自分の性格や経
験に対する質問(25項目)」「障がい児に対するイメージに関する質問(30項
目)」「障がい児が学級にいた場合に関する質問(19項目)
」
「障がい児がいる
学級の担任教師の性格や態度に関する質問(38項目)
」
「担任教師の障がい児
への対応に関する質問(27項目)」「教師の対応についての自分の感想に関す
る質問(9 項目)」
(当てはまらない(0)∼とても(5)の 6 点評定)である。
3.結
果
分析には統計ソフト「R」を用い、観点別にステップワイズ法の重回帰分
析を行い、その関連を見出し、T検定により平均の差を調べた。
「担任はクラス全員に分け隔てなく接した」
「担任は問題が起こると積極
的に解決をしようとしていた」
「相手の気持ちを考えるような授業が多かっ
た」等の項目においては、児童は担任の障がい児への対応に不満はなく、障
― 60 ―
担任教師の障がい児に対する対応と通常学級の児童の態度との関係についての研究
がい児に対しても良いイメージをもっていることがわかった。一方で、担任
の障がい児の対応により、障がい児に対して良くないイメージをもつ結果も
見られた。ここでは、担任の障がい児への対応によって児童が障がい児に対
して良くない印象をもったことがわかる結果を取り上げる。
(1)「担任は障がい児を無視した」
担任は障がい児を無視した群では、障がい児と関わらない様に指導した
り、声が小さかったり馬鹿にされていた傾向があった。また、担任が障がい
児 を 無 視 し た 方 が、児 童 も 障 が い 児 を 無 視 し た い と 思 う 傾 向 が あ っ た
(Figure1)。
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
5.118 担任は障がい児を無視した
Figure1
担任は無視
した
そうでない
わ
と
ら
に
障
担
障
な担
気
担
担 付障
が
任 もが
い
よ任 て任 視い か任 かが 意は 感い
うは いは し児 っは ない で児 じ児
た
き
に障 た馬
の た声 い児 た童 なが
鹿 いこ
指害
程が
生 いい
が だい
導児
に
と
徒
て
小 っる
しと
さ
を
を
も
た関
れ
無
さ たこ
注
何
「担任は障がい児を無視した」
におけるT検定結果
無視した担任は、やや児童生徒を注意する
ことができておらず、そのために馬鹿にさ
れていた可能性が考えられる。また、障が
い児への対応が分からないため、関わらな
いように指導し、自分も無視していた可能
性が考えられる。
(2)「担任は障がい児を馬鹿にするような発言をした」
担任は障がい児を馬鹿にするような発言をした群では、担任は児童生徒を
注意することができず、障がい児と関わらないように指導した傾向があっ
た。そして児童は障がい児に対して怒りやすかったり、負のイメージをもっ
たりしている傾向があった。
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
139担任は障がい児を馬鹿にするような発言をした
Figure2
「担任は障がい児を馬鹿にする
ような発言をした」における
T検定結果
馬鹿にする発言をし
た
い5
児.
と1
関2
指わ
導ら6
担
し
たな任
い
よは
う障
にが
対6
し・
て1
負4
持の5
っ
障
たイ
メが
ーい
ジ児
をに
4
を・
注8
意3
で担
き任
なは
か児
っ童
た生
徒
2
・
4
や2
す障
いが
と
思い
う児
は
怒
り
そうでない
馬鹿にするような発言をした担任は、児童
生徒を注意できておらず、障がい児にも注
意ができなかった可能性がある。そのため
児童生徒は障がい児に対して怒りやすい印
象や負のイメージをもっているのではない
かと考える。
(3)「担任は障がい児の親に付き添ってもらっていた」
担任は障がい児の親に付き添ってもらっていた群では、修学旅行や遠足を
休ませていたり、水泳や運動会では見学させていたり、他のクラスではしな
いような障がいについての授業を行ったという傾向があった。児童は担任の
対応に不満を持っていることがわかった(Figure3)
。
― 61 ―
皇學館大学教育学会年報
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
132担任は障がい児の親に付き添ってもらっていた
第35号(2013年度)
Figure3
「担任は障がい児の親に付き
添ってもらっていた」におけ
るT検定結果
5
・
遠1
足3
を4
休担
ま任
せは
た修
い学
た旅
行
や
は5
し・
な1
い2
のよ8
授う担
業な任
を障は
行
っが他
たいの
にク
つラ
いス
てで
4.考
泳5
や・
運1
動3
会5
で担
は任
見は
学障
さが
せい
て児
いを
た水
題5
を・
起1
こ1
す6
にと担
怒自任
ら分は
れ
たは障
悪が
くい
な児
いが
の問
1
・
2
1
私
手に
がは
居
た甘
え
ら
れ
る
相
6
・
1
4
1
不
満
だ
っ
た
5
・
1
が3
配1
慮グ
さル
れ
てー
いプ
た分
け
な
ど
親に付き添っても
らった
そうでない
学校の方針や医療的な面でやむを得ない場
合もある。しかし、担任が親に対しての遠
慮か障がい児に偏った対応をし、他の児童
生徒への対応が疎かになった可能性も考え
られる。そのことが児童生徒の担任への不
満に繋がったのではないかと考えられる。
察
以上の結果より、担任教師の通常の学級に在籍する障がい児への対応が、
周囲の児童の障がい児への対応に影響を与えることが明らかとなった。
「担
任はクラス全員に分け隔てなく接した」、「担任は問題が起こると積極的に解
決しようとしていた」等、担任の積極的な指導においては、児童は担任の対
応に不満は少なく、障がい児に対して正のイメージをもつ者が多かった。反
対に「担任は障がい児を無視した」
「担任は障がい児を馬鹿にするような発
言をした」等、担任の消極的な指導においては、児童は担任の対応に不満を
もったり、障がい児に対して負のイメージをもったりする者が多く、これか
ら関わりたいと思わない者が多かった。さらに、
「担任は障がい児の親に付
き添ってもらっていた」においては、重度の障がいを抱えていたり、医療的
な支援が必要だったりするためやむを得ない場合もあるが、児童は担任の対
応に不満をもち、障がい児の言葉を信じないと思ってしまうような影響を与
える可能性がみられた。
なかでも「担任は障がい児を無視した」という質問項目において、児童は
「障がい児を無視したい」と感じるという結果は、これからの指導の在り方
に大きな警鐘を鳴らすものと考えられる。これはあくまで学生が感じた担任
教師の対応であるため、実際に担任教師が障がい児を無視していたかはわか
らない。しかし、教師が意図しないことでも児童がそう思ってしまうことで
影響を与えてしまうだろう。教師は児童を見る主観的な視点、児童や他の人
から見える自分を見る客観的な視点という 2 つの視点が必要である。担任が
「障がい児を無視し、障がい児と関わらないように指導した」と感じれば、
児童も「障がい児を無視したいと思う」ようになる可能性は高い。教師がど
のように障がい児と関わっていくかによって周囲の児童の障がい児への考え
方が大きく変わる可能性がある以上、担任教師の障がい児や周りの児童への
対応を適切なものにしていく必要がある。また、このような視点をもつこと
で学級運営が上手くできるのではないだろうか。
この研究での問題点をあげると、教育学部生のみという対象者の偏りがあ
― 62 ―
担任教師の障がい児に対する対応と通常学級の児童の態度との関係についての研究
ること、障がい児(者)と関わるボランティア内容による経験差を明らかに
することができなかったことである。
5.引用文献
木舩憲幸
1986
精神薄弱児に対する普通児の態度と交流経験との関係
特
殊教育学研究,24(1),11−19
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2013
通常学級に在籍する発達
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ジ
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生川善雄・梅谷忠勇・前川久男
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献研究 ― 態度の多次元的研究に焦点をあてて ―
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知的障害児(者)に対する健常者の態度に関する研究 ―
大学生の態度と交流経験・接触経験との関連を中心に ―
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研究,40(2),215−222
櫻井久美子・佐久間宏
2007
通常の学級における特別な配慮を要する子ど
もたちへの支援―集団指導の中でできる指導法の工夫に着目して―
都宮大学教育学部
鈴木弘充
2009
教育実践総合センター紀要
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小学校通常学級における巡回相談の課題
湘北紀要(30)
,
15−20
遠山孝司
2005
親子関係、教師生徒関係に関する心理学的研究の展望 ―
親と教師の威厳ある態度研究の提案 ―
名古屋大学大学院教育発達科
学研究科紀要,心理発達学 52,59−76
八島禎宏・池本喜代正
2012
ロールプレイングを活用した個別支援と集団
適応支援に関する実践研究 ― 小学校通常学級における発達障害児への
支援 ―
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要35,別紙133−
140
(卒論指導教員
― 63 ―
有門秀記)
教員評価制度の特質と課題
川 口 純 平
2000年代初頭、我が国において新しい教員評価制度が導入された。この先
駆けとなったのは東京都であり、2000年12月の教育改革国民会議の「教育を
変える17の提案」、2002年 2 月の中央教育審議会答申『今後の教員免許制度
の在り方について』等によって、その流れは全国へと広がっていった。
一方、三重県においては、三重県教職員育成支援システムと呼ばれる制度
を導入している。これは2005年に校長、教頭、事務長といった県立学校管理
職員を対象にしたものから始まり、2009年には対象を一般教職員にまで拡大
したものである。三重県の制度は自己目標設定と面談を軸とした目標管理手
法による能力開発型のシステムであると一般的に言われている。
ところで、新しい教員評価制度の課題として、「評価を過剰に意識するこ
とで、視線が児童生徒でなく、評価者である管理職ばかりに向くようにな
る」、「教員の孤立化及び教師集団の解体が進む」、「評価者の評価能力への不
信」などといったことが指摘される。
以上の関心から、本研究では制度導入から 8 年になる三重県の新しい教員
評価制度を分析し、その諸特徴と意義、課題を明らかにすることを目的とす
る。そのために、評価制度の要綱や評価票の内容を明らかにするとともに、
評価者・被評価者へのインタビューを実施し、同制度の諸特徴、意義、課題
等を分析する。また、海外における教員評価制度を分析・検討することでそ
の諸特徴や意義を見出し、それらと比較することによって、三重県の教員評
価制度の課題や特質を考察する。
第一章
新しい教員評価制度導入の背景
我が国において教員評価は、従来、地方公務員法に定められる勤務評定に
よって行われてきた。1957年、都道府県教育長協議会は「教職員の勤務評定
試案」を発表し、これをもとに各都道府県では勤務評定制度が設けられた。
それによれば、評価者は校長が担い、その校長の評価は市町村教育委員会の
教育長が行うこととなっていた。勤務成績や適性・性格などが絶対評価と同
僚教員との相対評価によって評価されていた。しかし、この勤務評定に対
し、日教組は「権力をもって教師を絶えず束縛し、その自由を圧殺しようと
するものである。また、それは教育の自主性を奪い、創意によるかっ達な教
育実践を抑え、教員組合活動を封じようとする陰険な意図を含むものであ
る」と評し反対運動を展開した。その結果として勤務評定はほとんど意識さ
― 64 ―
教員評価制度の特質と課題
れないものとなっていった。また、この他に制度運用上の課題も存在してい
た。第一に、教職員に対する評定者が校長のみであったことである。校長の
観察内容によって評定が為されており、それを補うものとしての自己申告・
自己評価の制度が存在していなかった。また、教頭等を評定補助者として意
見を聞く制度となっていないので、評定内容の客観性・精度に疑問があった。
第二に、評定結果が本人に対して開示される制度になっていないため、校長
が評定結果から個々の育成課題を把握することができても、本人に対する指
導育成、モラールの向上に十分活用されなかった。第三に、教育活動に対す
る評定は、価値観に左右される度合いが強いことに加え、評定権者の訓練が
十分とはいえず、評定者にとって大きな違いが出てしまうことであった。
このような状況が長く続くなかで、2002年 2 月、中央教育審議会答申『今
後の教員免許制度の在り方について』にて、
「各都道府県教育委員会等にお
いて教員評価について、新しい公務員制度改革の動向を踏まえつつ、新しい
評価システムの導入に向け、早急に検討を開始すること」が提言された。こ
の答申を踏まえて文部科学省は、2003∼2005年にかけて、
「教員の評価に関
する調査研究」を各都道府県・政令指定都市教育委員会に委嘱し、この間に
可及的速やかに教員評価システムの改善を図り、2006年度には本格的導入と
なるよう指導することとなった。これにより、2000年の東京都、2001年の香
川県、2002年の埼玉県、2003年の神奈川県・広島県、2004年の大阪府におい
て、従来の勤務評定に変わる「新しい教員評価」制度が導入され、その後の
全国的導入につながっていくこととなった。
東京都では、まず管理職に対する評価を強化し、その後2000年 4 月に自己
申告・業績評価が一般教員にも導入されることとなった。評価の結果は、給
与、昇任その他の人事管理に適切に反映させるものであり、賃金や処遇、指
導力不足など問題のある教員の研修、主幹・管理職選考等、全ての人事管理
の基礎として使うことが目的とされている。賃金や処遇に反映されるという
点に特に注目しておきたい。
第二章
三重県の教員評価制度
三重県においては、2002年 3 月に示された教育振興ビジョン第二次計画に
おいて、教職員の人材育成のためのシステムを検討・開発する必要があると
いった記述がされ、三重県教職員人材育成支援システムへの方向性が示され
た。この教職員人材育成システムを構築するため同年 8 月に三重県教職員人
材育成検討協議会が設置された。本協議会では、県民に望まれる教職員の姿
を明らかにすることを目的とする県民アンケート調査が実施され、この結果
と教職員に対するアンケート調査を基礎資料として、2003年 6 月には最終報
告として『教職員の人材育成の在り方について』が取りまとめられた。さら
にこの報告書を受けるかたちで同年11月には三重県教職員評価制度検討委員
― 65 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
会が立ち上げられ、新たな評価制度の調査・研究が始まった。この委員会で
は学校の教育目標を踏まえた自己設定目標を設定する目標管理手法による能
力開発型の評価制度の導入が目指され、2005年に最終報告が出され、県立学
校管理職員を対象した制度試行が始まった。その後、2008年には県立学校一
般教職員を対象に、そして2009年には小中学校の一般教職員を対象にした教
員評価が「教職員育成支援システム」という名称で導入された。
三重県教職員育成支援システムの一般教職員用は、三度の面談を軸として
いる。対象者は勤務校の「学校経営の改革方針」を元に自己目標を設定する。
要綱をみると、この自己目標は、
「教科指導」と「学校運営等」といった二
つの目標を立てることになっている。それに対して育成支援者と面談、協議
を行う。所属校の教頭が一次育成支援者、校長が二次育成支援者とされてい
る。目標の変更や修正の必要が生じた場合、中間面談が実施される。そして
期間末の面談では、本人が自己評価を行う。それとは別に育成支援者の評価
結果を本人にフィードバックし来期への指導・助言が行われる。評価は、自
身の立てた目標と能力・意欲、実績についてそれぞれを 4 段階で行われる。
ここで、三重県における教職員育成支援システムの実態を明らかにするた
めに、現場の教員や管理職にインタビューを実施した。県内某中学校に勤務
されるA教師は、評価する側の育成支援者に課題が残っているのではという
ことを話されていた。その一方で、以前は頭の中に留めていた目標を明文
化・宣言することにより、以前より強い意識を持つようになったということ
も話されていた。このことから教職員育成支援システムには制度運用の課題
は存在しつつも、教職員に良い影響も与えていることが窺える。県内某小学
校に勤務されている二人の校長にも話を伺ったが、口を揃えて自身の制度運
用に自信がないと話されていた。一人は校長として初年度の方でもう一人は
ベテランの方である。新任の方にもう少し話を伺うと、決して悪い点ばかり
ではなく、各教員との連携に十分役立つツールであり、学校運営に使ってい
ける制度だということも話されていた。
第三章
世界の教員評価制度
三重県の制度と比較分析する材料として、海外の教員評価制度について調
査を行った。中国の制度は、
「教師法」や「事業機関職員考課に関する暫定
規定」に詳しく定められている。教師の勤務評定の結果は、契約や任用、賞
罰などの証とするといったことや、賞金の支給についての記述がされてい
る。実際に100名余りの教員を転職・辞職させたり、60人が次年度に継続し
て聘用されなかったりといった報道がされている。アメリカにおいても、教
員の評価は採用や解雇といった教員人事における基礎資料として重要な役割
を担っている。アメリカの教員採用制度は、採用後約 3 年の試用期間があ
る。この期間を越えた後でも、能力不足・適正欠如を理由に解雇される場合
― 66 ―
教員評価制度の特質と課題
もある。イギリスの教員制度の特徴として、14段階の昇給制度がある。従来
は 9 段階であったが、優秀教員として認められたものはさらに 5 段階の昇給
ができるようになった。イギリスではパフォーマンスマネジメントという教
員評価がされており、この評価結果が昇給審査の手がかりの一つとなる。
結
論
三重県の制度と勤務評定、新しい教員評価制度、海外の制度との比較、分
析の結果について述べる。上記のとおり勤務評定には、①評価者が単一、②
フィードバックがなく向上につながらない、③評価者の練度不足といった課
題が挙げられた。それに対して三重県の制度は教頭と校長が評価者とされて
おり、一つ目の課題に関して改善が図られていることが窺える。期間末の面
談では評価結果がフィードバックされるので、勤務評定の二つ目の課題につ
いても解決が図られていることがわかる。加えてA教師のインタビューから
も向上につながっていることがわかる。しかし、評価者の練度という点に関
しては三人のインタビューからも窺えるように勤務評定同様、まだ課題が存
在していることがわかる。制度が導入時には制度運用のための研修が実施さ
れ、また、校長に就任するときにも制度運用に関しての研修が行われるそう
だが、それでは不十分な点があると考えられる。今後も継続的に研修を行っ
ていく必要があると考えられる。また、東京都の制度では評価結果を賃金や
処遇に反映するのに対し、三重県の制度は教職員育成支援システムという名
が示す通り、育成のみに主眼をおいており、賃金や処遇などには反映されな
い。つまり、評価者を過剰に意識することや、競争による教師集団の解体・
教員の孤立という新しい教員評価制度の課題は起こりにくい制度設計となっ
ているということができる。このことは育成支援システムの実績の評価観点
に「他の教職員と協力・協働しながら」といった記述があることからもそれ
が窺える。また、中国・アメリカ・イギリスの制度にはそれぞれ処遇や賃金
との関連づけがあるのに対して、育成のみを目的とする点が特徴的である。
三重県教職員育成支援システムの要綱をみると、未だ「試行」という文字
が残されている。そこには制度を運用していくことで課題を発見し、それを
制度改善に反映していくという旨の試行目的が書かれており、未だに制度完
成に至っていないことが窺える。県教育委員会の方に話を伺ったとき、
「処
遇や任用等に結び付けていく動きもある」ともおっしゃっており、今後も制
度が改正されていく可能性が存在する。したがって、今後の動向に注目して
いくことは有意義なことと考えられる。
(卒論指導教員
― 67 ―
市田敏之)
最大随意収縮時における筋内筋線維伝導速度の変化
― 最大M波を誘発して ―
永 田 晃 平
Ⅰ.緒
言
我々の運動は、感覚器で得た情報を感覚ニューロンを介して中枢へと送
り、その情報を元にした中枢からの指令によって適切に修正され続けてい
る。しかし、反射活動は、末梢からの情報が脊髄を介して、そのまま筋へと
命令が下りていく受容器−感覚神経−脊髄−運動神経―筋といった反射弓を
介することになる。
電気刺激によるH反射やM波の誘発は、この反射弓を利用している。神経
に弱い強度の電気刺激を加えると、そこで生じた活動電位が刺激点から脊髄
にかけて上行し、そこからα運動線維を下行して筋へと伝えられる。この
時、筋で観察される筋放電がH反射(H波)である。一方、その電気刺激を
徐々に強くしていくと、その刺激点からの刺激がα運動ニューロンを介して
直接筋へと伝えられるようになる。同時に、α運動ニューロンでは、その刺
激が逆行もすることから、脊髄からの信号を打ち消し、H反射を消失させる。
このときに現れる潜時の短い筋放電がM波である。理論上、この最大M波時
には全ての運動単位が動員されることになる。
一般的に、神経の伝達速度は、その伝導する神経の太さに比例する。しか
し、四肢では、その末端に行けば行くほど神経は細くなるため、その速度は
低下する。筋における活動電位の伝導速度も一定であるとされる。しかし、
羽状筋の急激な力発揮時には、筋線維がその深部腱膜付近で大きく曲がって
収縮することが確認されており5)、活動電位の伝導速度が筋の位置により不
均一で、カエルで見られた2)ような腱に近づくほど活動電位が減速している
可能性も考えさせる。そこで、本研究では、筋収縮中における筋線維動態と
の関係を考慮しながら、最大M波を誘発する神経への電気刺激により生じた
活動電位の伝導速度を測定し、その速度が異なるのかどうかについて検討
した。
Ⅱ.研究方法
本研究の被験者は、日常的に運動を行っている健康的な男子大学生および
大学院生15名(年齢21.5±0.9歳、身長173.1±6.3cm、体重69.6±10.9kg)
であった。
彼らは最初、皮膚と皮膚下にある筋との位置関係を把握するため、多用途
― 68 ―
最大随意収縮時における筋内筋線維伝導速度の変化
筋機能評価運動装置上で座位姿勢をとり、足関
節の底屈を①急激に最大筋力を発揮する試技と
② 5 秒間で最大筋力を発揮する試技の 2 種類で
行った(Fig.1)。試技中のヒラメ筋の動態は、超
音波診断装置を用いて撮影し、その筋束と深部
腱膜の交点(P点)を 36Hz でデジタイズした。
その後、このP点の移動距離と発揮されたトル
Fig.1 足底屈トルク測定
クとの関係を回帰分析した。
次に、力発揮速度の違いが筋活動電位の伝導
速度に及ぼす影響を検討するため、その力発揮
中に、誘発電位検査装置を使用し最大M波を誘
発した。超音波診断装置のプローブが置かれた
位置に、1.5cm の間隔で NCS 電極を 8 つ正確に
貼付し、電気刺激は膝裏の脛骨神経上に固定し
た表面刺激電極を介して行った(Fig.2)。多用途
筋機能評価運動装置上で座位姿勢をとった被験
Fig.2 電極の貼付場所
者は、次のような 5 つの条件で力発揮を行い、その間に最大 M 波が誘発さ
れた。①リラックス時、② 5 秒間かけて最大力を発揮した時、③急激に最大
力を発揮した時の力発揮の瞬間から100msec 後、④200msec 後、⑤300msec
後。ヒラメ筋で誘発された最大M波の潜時と peak-to-peak 振幅が 4 つの電
極間で比較され、その電極間の潜時から各電極間の伝導速度が算出された。
Ⅲ.結
果
最大足底屈トルクと筋線維動態との関係は、5 秒間で MVC を発揮した場
合、足底屈ピークトルクは78.8±23.7Nm、リラックス時からピークトルク
発揮時までの P 点の移動量は1.05±0.34cm となった(Fig.3 左)。急激に
MVC を発揮した場合、足底屈ピークトルクは88.8±22.1Nm、P点の移動
量は0.85±0.27cm となった(Fig.3 右)。
Fig.3 足底屈トルクとP点の移動量の関係
最大M波の潜時は、リラックス時を除き、ヒラメ筋の遠位端に近づけば近
づくほど遅くなる傾向を示し(Fig.4 左)、結果としてその伝導速度も低下
する傾向となった(Fig.4 中央)。また、最大M波の振幅も、急激に力を発
― 69 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
揮した100ms 後を除き、遠位端で小さくなる傾向があった(Fig.4 右)。
力発揮時における皮膚上の電極と皮膚下にある筋線維の位置は変化した
(Fig.3)ため、本研究ではその変化量を考慮する必要があった。5 秒間で
MVC 発揮した時の 5 秒時点でのP点移動量は0.94±0.39cm、急激に MVC
発揮した条件での力発揮開始から100ms 後は0.36±0.20cm、200ms 後は0.
59±0.29cm、300ms 後は0.62±0.31cm であり、M波導入時の電極下の筋
線維は、筋から見た場合、リラックス時に比べ、電極 4 は電極 3 へ、電極 3
は電極 2 へ、電極 2 は電極 1 の位置に向かって少し移動していたことに
なる。
Fig.4 最大M波の潜時、伝導速度および振幅
Ⅳ.考
察
本研究において、最大M波による伝導速度は刺激点から遠位に行くほど遅
くなっていく傾向が見られ、活動電位の伝導する速さが均一ではない可能性
が示された。本研究で見られた筋腹側の筋線維活動電位伝導速度の大きさ
は、カエルの摘出筋2)や生体内で観察された値4)と同様のものであり、遠位
端での速度は明らかに遅いものとなった。このことは、急激な筋収縮時に見
られる腱膜近くでのより強い筋収縮5)が活動電位の伝導速度の遅れによる強
縮のようなメカニズムで生じている可能性を示している。
刺激点の近位と遠位では、その最大M波の振幅が異なった。振幅は、5 秒
間で MVC を発揮した場合と急激に MVC を発揮した時ともに、遠位端では
小さくなる傾向が見られた。これは、リラックス時に有意な変化が観察され
なかったこととは対象的であった。このような結果は、力発揮時における皮
― 70 ―
最大随意収縮時における筋内筋線維伝導速度の変化
膚上の電極と皮膚下にある筋線維の位置関係の変化が大きく関わっていると
考えられる。リラックス時を除き、力を発揮する状況では、皮膚下にある筋
線維はより近位に近づくため、電極 4 ではその位置が腱により近づき、振幅
が小さくなったと考えられる。これは、P点が移動していないリラックス時
の遠位端の振幅がすべての条件の中で一番大きく、P点の移動量が一番大き
い 5 秒間で MVC 発揮時の振幅が一番小さくなったことでも裏付けられる。
皮膚下での筋線維の位置の移動は、M波の振幅だけではなく、その伝導速
度の測定にも影響を与えていると考えられる。しかしながら、その筋線維の
近位端への移動が急激な力発揮時よりゆっくりとした 5 秒間での力発揮時に
おいてより大きったにも関わらず、その伝導速度の低下が同様であったこと
は、筋線維が腱膜付近で大きく収縮するといった先行研究の結果17)を伝導速
度の不均一さが説明する可能性をより高くしたことを示唆している。
Ⅴ.結
論
本研究では、リラックス時を除き、伝導速度は筋の遠位端において遅くな
ることが示された。また、最大M波の振幅も遠位端で小さくなることが示さ
れた。これらの結果には、力発揮に伴い筋が近位へと移動する皮膚下の筋線
維動態が深く関わっていると考えられるが、同時にその伝導速度の不均一さ
による腱膜付近での筋束に歪みなどが関連していると考えられた。
参考文献
1)福 永 哲 夫:ス ポ ー ツ に お け る 筋 腱 複 合 体 の 働 き.理 学 療 法 学 34-4.
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千葉医学59.171-179.1983
3)草間貞:一次元潜時等電図による筋活動電位の伝導速度の測定と筋線維
伝導速度分布.千葉医学63.103-111.1987
4)Michael Brun Jensen, Jose Alberto Biurrun Manresa, Ken Steffen
Frahm, Ole Kaeseler Andersen : Analysis of muscle fiber conduction
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Journal of Neuroscience Methods 160-2. 327-334. 2007
5)Ogiso.K, Naruse.K : Funkction of the vastus lateralis muscle fibers
during a rapid knee extension. Book of Abstract, 18thANNUAL
CONGRESS OF THE EUROPEAN COLLEGE OF SPORT SCIENCE.
2013.
(卒論指導教員
― 71 ―
小木曽一之)
家族構成および家族からの協力の有無が
減量効果に及ぼす影響
米 澤 麻 衣
緒
言
1,12)
肥満(体格指数(body mass index:BMI)が 25kg/㎡以上)
とは、余
剰なエネルギーが脂肪として過剰に蓄積された状態を指し、死亡率が高くな
ることが明らかにされている2)。我が国では肥満者や肥満が起因となる生活
習慣病の罹患者の増加と生活習慣病による医療費の増加が社会問題となって
いる。国はこれらの改善のために平成20年度から特定健康診査・特定保健指
導を実施しているが、平成23年度の特定健康診査の参加率(受診率)は45%、
特定保健指導の終了率(完遂率)も15.9%と低い3)。このことから、自治体
等で実施される特定保健指導以外の健康づくり支援事業においても、参加す
べき人の参加が少ないと推察される。松尾ら4)は、肥満者の多くは支援事業
に参加する時間がないことを指摘している。そのため、わずかな時間・機会
で減量効果が得られる工夫が必要である。
肥満は社会的ネットワーク(友人、兄弟姉妹、配偶者など)を通じて伝播
する可能性がある5−7)。一方で妻を通じた夫への生活習慣介入によって、夫
に減量効果がもたらされることも明らかになっている8)。家族構成と生活習
慣に関する研究において、家族と同居している高齢女性の方が独居高齢女性
よりも生活習慣と生きがい感が良好であること9)、未婚の独居者には「朝食
を食べない」、「テイクアウト食品をよく食べる」といった好ましくない食習
慣の者が多いとの報告がある10)。家族は身体的・精神的な支えとなる存在で
あり、家族の存在並びに家族による減量への協力は、より大きな減量効果に
つながる可能性がある。Gorin et al.11)は、子どもらを含めた家族構成が減量
効果に及ぼす影響をより詳細に検討すべきであると指摘している。家族構成
とその家族からの協力の有無が減量効果に与える影響を検討した研究はな
い。配偶者だけでなく親や子どもの協力もある方が、より大きな減量効果が
得られる可能性がある。そこで本研究は、減量実践者の家族構成および家族
からの協力の有無が減量効果に与える影響を明らかにすることを目的とした。
研究方法
(1)対象者
本研究の対象者は、K大学でおこなわれた減量教室に参加した34∼64歳の
女性111名(54.6±6.1歳)とした。教室参加の条件は、①肥満12)、②血圧高
― 72 ―
家族構成および家族からの協力の有無が減量効果に及ぼす影響
値(収縮期:140mmHg 以上、拡張期:90mmHg 以上の両方またはどちら
かに該当)
、③脂質異常(中性脂肪:150㎎ /dL 以上、高比重リポ蛋白コレ
ステロール:40mg/dL 未満の両方またはどちらかに該当)
、④血糖高値(空
腹時:110mg/dL 以上)
、⑤腹囲が90㎝以上の 5 項目のうち 1 項目以上に該
当し、食事制限や運動が禁忌となる内科・外科的疾患を有さないこととした。
対象者は、M県I市および近隣の市町村に配布される地域情報誌に掲載され
た募集要項を通じて自らの意志で集まった。対象者には教室参加に先立ち、
本研究の目的および教室の内容を説明し、書面にて研究参加の同意を得た。
(2)減量教室
減量教室の期間は12週間とし、週に 2 回の頻度で講義をした場合は 1 回あ
たり 1 時間、週に 1 回の場合は 1 回あたり 2 時間とし、合計24時間の講義を
おこなった。教室では、栄養素・エネルギー摂取状況の把握と効果的な減量
を支援するために四群点数法を用いた13)。四群点数法は、食品に含まれる栄
養素や食品の特徴によって 4 つの群(1 群:卵・乳製品、2 群:肉類・魚介類・
豆製品、3 群:野菜類・芋類・海藻類・果物類、4 群:穀類・油脂類・砂糖
などの調味料・嗜好品)に分類し、80kcal を 1 点としてエネルギー計算を
する方法である。エネルギー摂取量の目標は 1 日15点(1200kcal)とし、1
食あたり 1∼3 群は各 1 点、4 群は 2 点、合計 5 点とした。参加者は食事日
記を毎回の教室で提出し、その日記を基にスタッフがエネルギー摂取状況や
各栄養素の過不足をチェックし、参加者に応じて食事量や食習慣の適正化に
向けた個別指導をおこなった。
(3)測定・調査項目およびその方法
身体的特徴として身長、体重および BMI を測定した。また、教室参加当
時の家族構成(続柄と年齢)
、その家族からの協力の有無、協力の内容、協
力して欲しかった内容を質問紙形式で調査し、自由に記述してもらった。
(4)「協力」の定義
表1
協力内容の定義
対象者が家族から協力
を得たと感じた場合は
「有」、協力を得たと感じ
なかった場合は「無」と
した。協力の内容は「食
事」、「運動」、「声掛け」、
「その他」とし、表 1 のように定義した。
(5)家族構成の分類
対象者111名のうち62名から回答(有効回答率:55.9%)を得た。家族の
中に夫がいない 6 名は除外し56名を分析対象とした。家族構成の比率は、夫
のみ24名(42.9%)、夫+親 6 名(10.7%)、夫+子22名(39.3%)、夫+親
― 73 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
+子 4 名(7.1%)であった。このうち教室前の BMI が 25kg/㎡以上だった
者 は 38 名 で あ り、そ の 家 族 構 成 は 夫 の み 14 名(36. 8%)、夫 + 親 5 名
(13.2%)、夫+子17名(44.7%)、夫+親+子 2 名(5.3%)であった。
(6)統計処理
身体的特徴の結果は平均値±標準偏差で表した。教室開始前における各測
定項目の平均値のグループ間比較および協力してくれた内容別における体重
減少率の比較については対応のない一元配置分散分析を、教室開始前と終了
後における各測定項目の平均値の差については対応のある一元配置分散分析
を用いて有意差を検証した。各測定項目の教室開始前と終了後におけるグ
ループ間の差(交互作用の有意性)を検証するために、時間および家族構成
または協力の有無を要因とする繰り返しのある二元配置分散分析を用いた。
統計的有意水準は 5%未満とし、SPSS11.5J(SPSS 社製)を用い解析した。
結
果
各家族構成グ
表2
家族構成別の身体的特徴の変化
表3
家族構成と協力の有無別での身体的特徴の変化
ループの教室開始
前 の 体 重 と BMI
に有意差はなかっ
た。全てのグルー
プ で 体 重 と BMI
は教室開始前から
終了にかけて有意
に減少したが、減
少量・率ともにグ
ループ間に有意な
差はなかった(表
2)。
家族構成と協力 表4 協力の有無別の身体的特徴の変化
の有無別による体
重 と BMI は、全
てのグループで有
意に減少したが減
少量・率ともにグ
ループ間に差はな
かった(表 3)。
家族から減量に対する協力の有無別で体重と BMI の減少量・率を比較し
た結果、差はなかった。教室前の肥満者では、協力の有ったグループの方が
― 74 ―
家族構成および家族からの協力の有無が減量効果に及ぼす影響
体重減少量が大きくなる傾向 表5 協力してくれた内容別の体重減少率
がみられた(表 4)。
協力してくれた内容別グ
ループの体重減少率に差は認
められなかったが、食事によ
る協力があったグループの体
重減少率が高い傾向にあった
(表 5)。
結
論
本研究では、家族構成および家族からの協力の有無が減量効果に及ぼす影
響を検討した。家族構成が減量効果に及ぼす影響は小さいが、家族から食事
に関する協力があったと感じると減量効果が大きくなることが示唆された。
一方で、協力の質や量を定量化できていない。今後はこれらを定量化するこ
とで協力と減量効果との関係をより詳細に明らかにし、効率よく減量効果を
得るためにどのようにして家族へ協力を仰ぐべきか検討すべきである。
参考文献
1)片岡邦三.肥満研究.2003;9(1):3-4.
2)Hayashi R et al. J Epidemiol. 2005; 15
(3): 70-7.
3)厚生労働省.平成 23 年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況(速
報 値)に つ い て.http: //www. mhlw. go. jp/stf/houdou/ 2r9852000002
wcts-att/2r9852000002wcvi.pdf.(2014 年 1 月 4 日、アクセス可能)
4)松尾知明ら.体力科学.2012;61(4):393-402.
5)Christakis NA et al. N Engl J Med. 2007; 357
(4)
: 370-9.
6)Hur YM et al. Physiol Behav. 1998; 64
(5): 629-36.
7)Macken LC et al. J Cardiopulm Rehabil. 2000; 20
(6)
: 361-8.
8)Matsuo T et al. Int J Obes. 2010; 34
(1): 136-45.
9)加藤恵子ら.名古屋文理短期大学紀要.2003;27:45-51.
10)井口美代子ら.日本健康医学会雑誌.2008;17(3)
:48-9.
11)Gorin AA et al. Int J Obes. 2008; 32
(11): 1678-84.
12)日本肥満学会.肥満症診断基準 2011.肥満研究.2011;17.
13)香川芳子.食品 80 キロカロリーガイドブック.女子栄養大学出版部.
東京.2011.
(指導教員
― 75 ―
片山靖富)
聖地巡礼によるまちおこしの可能性
落 合 瑛 美
1.はじめに
筆者は本研究で、「聖地巡礼」によるまちおこしの可能性と留意点を考察
した。
まず、ここでいう「聖地巡礼」とは、その宗教に関する固有の聖地・霊場
を巡拝するという宗教的な意味を持つ「聖地巡礼」ではない。本論文で取り
上げた「聖地巡礼」とは、アニメやマンガ、小説などの舞台となった建物や
地域、ゆかりのある場所を「聖地」とし、その「聖地」をファンが訪れ巡る
というものである。近年、この「聖地巡礼」がまちおこしにつながった事例
が増加しており、自治体などに注目を浴びている。筆者はこの事実から、
「聖
地巡礼」によってまちおこしを行うことへの可能性を感じ、「聖地巡礼」に
よるまちおこしは具体的にどのような可能性を持っているのかを考察するこ
とを本論文の目的とした。さらに、「聖地巡礼」によるまちおこしを行う上
での留意点も考察した。
そして、研究の方法として事例分析を用いた。今回分析に用いた事例は、
つむぐ
伊勢市が舞台となっている橋本紡 氏の小説作品『半分の月がのぼる空』で
ある。事例分析を行う手段としてはフィールドワークを用いた。具体的に
は、「聖地」に設置されている聖地巡礼ノート(「聖地」に訪れた記念にメッ
セージを書き残していくためのノート)を読む、聖地巡礼に関わりのある人
物を対象に聞き取りを行うという方法をとった。今回は、
『半分の月がのぼ
まさのり
る空』の「聖地巡礼」に深く関係している山本雅則氏に話を聞いた。
2.
「聖地巡礼」の定義
「聖地巡礼」という言葉は俗称であるため、「聖地巡礼」に対する認識が人
によって異なり、
「聖地巡礼」の定義が曖昧である。そのため、本論文では
「コンテンツ作品(映画や小説などの著作物をさす)のロケ地またはその作
品・作者に関連する土地で、且つファンによってその価値が認められている
場所を訪ね巡ること」と定義づけた。また、
「聖地巡礼」を行う人々のこと
を「巡礼者」とした。
3.フィールドワークによる事例分析
フィールドワークにより事例分析を行い、得た情報の一部を下記する。
・地域住民と巡礼者共同で「聖地」の清掃活動を行ったり、
「聖地」マップ
― 76 ―
聖地巡礼によるまちおこしの可能性
を制作したりするなど巡礼者もまちを盛り上げる一員、「協力者」として
も扱われていた。そのため、地域側は積極的に巡礼者に意見を聞いていた。
・『半分の月がのぼる空』の「聖地巡礼」が始まった当初、巡礼者は地域住
民に不審者だと認識されていた。そのため、巡礼者の存在を地域住民に正
しい理解をしてもらうために巡礼者と地域住民が共に参加できるイベント
を企画した。
・地域側が製作者側にアプローチをすることでグッズ販売やイベントがス
ムーズに行われた。
・地域の物産品とコンテンツ作品『半分の月がのぼる空』を絡めたグッズを
販売した。
以上のような特徴が事例分析からわかった。そして、今回の事例からみて
も「聖地巡礼」はまちおこしを行う手段として有効であるという結論に至った。
4.
「聖地巡礼」によるまちおこしの考察
そして、得た情報をもとに本論文での「聖地巡礼」によるまちおこしの具
体的な可能性と「聖地巡礼」によるまちおこしを行うにあたっての留意点を
考察した。
(1)「聖地巡礼」によるまちおこしの可能性
まず、「聖地巡礼」によるまちおこしの具体的な可能性を以下の 5 つに分
けた。
①その地域への訪問者の増加
②地域経済の活性化
③その地域の文化・伝統の継承
④巡礼者のその地域への愛着形成(その地域自体へのファンづくり)
⑤地域住民の地元に対する愛着・郷土愛を育む、また、地元の良さ再確認
ファン訪問による地域への訪問者増加は当然のこと、「聖地巡礼」による
まちおこしには③④⑤というような特長的な可能性をもつ。③は、作品と地
域の文化・伝統がコラボしたグッズ・行事化やその行事へのファンの参加に
より、ファンに知ってもらったり、継承したりするきっかけとなる。④は、
「聖地巡礼」がきっかけとしてその地域のものや人の良さにふれることでそ
の地域そのものに魅力を感じ、巡礼者(作品のファン)からその地域自体の
ファン(リピーター的な存在)になってもらえる可能性があるということで
ある。⑤は、地元住民でさえあまり知られていない場所や普段何気なく使っ
ている場所が作品の「聖地」となることで、その地域の人々が地元の良さに
気付く、または再確認するきっかけとなり、地元に対する愛着・郷土愛につ
ながる可能性をもつということである。
― 77 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
(2)「聖地巡礼」によるまちおこしを行うにあたっての留意点
次に、「聖地巡礼」によるまちおこしを行うにあたっての留意点を以下の
6 つに分けた。この留意点は、地域側の視点に立って考えたものである。
①巡礼者(あるコンテンツ作品のファン)の特徴や動向を把握する。
②地域住民への理解を呼びかける。
③巡礼者を「おもてなし」の気持ちで迎える。
④地域のものと絡めてイベントやグッズを企画する。
⑤巡礼者・製作者側との関係
⑥地域・ファン・製作者の間に仲介役を作る。
その地域のものと作品をコラボさせたグッズやイベントを企画するにして
も、巡礼者のニーズをしっかり把握しておかなくてはならない。そのために
も、まずは巡礼者の特徴や動向を把握する必要がある。具体的には、巡礼者
に直接聞く(ヒアリング)、聖地巡礼ノートを読むという方法がある。
そして、それと共に地域住民の呼びかけが重要である。地元が「聖地巡礼」
の「聖地」になっていると知らない地域住民にとって、巡礼者は不審者にみ
えかねない。そのため、「聖地巡礼」や巡礼者のことを地域住民に周知でき
るようなイベントを開催したり、新聞でその地域での「聖地巡礼」を紹介し
たりすることが必要である。
また、巡礼者をおもてなしの気持ちで迎えることが重要である。それは地
域のファンづくりにもつながることである。というのも、誠心誠意のおもて
なしで迎えることにより、大好きな作品の「聖地」だからという理由だけで
なく「またあの居心地の良い場所に訪れたい、あの親身になってくれた人達
に会いたい」というような気持ちが芽生えるからである。
次に、地域のものと絡めてイベントやグッズを企画することが必要であ
る。というのも、地域の物産品・行事とコンテンツ作品を絡めることにより、
その地域の経済利益のみでなく、巡礼者にその地域の魅力を知ってもらう
きっかけとなるからである。それは、先でも述べたように地域のファンづく
りにつながる。
そして、筆者は地域側と巡礼者・製作者側とのそれぞれの間に「win-win
の関係」を築くことが重要だと考える。今回取り上げた事例でも、地域側と
巡礼者側、地域側と製作者側の双方にメリットがあったからこそグッズの販
売、イベントの開催が可能になったといえる。逆にいえば、どちらか一方が
得をする企画では失敗する。そのため、まず自分が『win』になることを考
えるのではなく、
「相手が『win』となるにはどうすればいいのか」を双方
が念頭に置き、まちおこしの企画を考えるべきである。そうすることによっ
て、結果的に「win-win の関係」を築くことが可能になると筆者は考える。
― 78 ―
聖地巡礼によるまちおこしの可能性
さらに、地域・ファン・製作者の間に仲介役を作ることも必要である。今
回分析した事例では、地域側の人物が仲介的な役割を担っていた。だからこ
そ地域・ファン・製作者の 3 者の間で連携がとれ、イベントやグッズ販売な
どをスムーズに行うことが出来たと推測する。このことから、地域・ファ
ン・製作者の間に仲介役を作るべきだと考える。そして、その仲介役を担う
人物またはグループは、地域・ファン・製作者の 3 者と気軽にコミュニケー
ションをとれる「顔見知りの関係」になっておくことが重要であると筆者は
考える。というのも、仲介役は連絡事項を中継して伝えたり、それぞれの立
場からの相談や提案を受けたりする立場となるからだ。そのためにも、まず
は 3 者と面と向き合ってコミュニケーションを取り合える「顔見知りの関
係」になることが重要である。
以上が、事例分析の結果をもとに考察した「聖地巡礼」によるまちおこし
の具体的な可能性と「聖地巡礼」によるまちおこしを行うにあたっての留意
点である。
5.おわりに
事例分析し考察をしていくことで、本研究で取り扱った「聖地巡礼」はま
ちおこしを行う上で有効な手段であるという結論に至った。
「聖地巡礼」に
は地域のファンを作ったり、地域住民の郷土愛を高めたりする可能性が十分
あると筆者は考える。
「聖地巡礼」の「聖地」は観光地に縛られず、普段ス
ポットが当たらない場所が聖地化することもある。そのため、訪問者はもち
ろんのこと地域住民までその地域の隠された良さに気付くきっかけとなり、
訪問者と地域住民双方のその地域への愛着につながる。これは「聖地巡礼」
によるまちおこしの最大の特長ではないだろうか。
本研究では、「聖地巡礼」はまちおこしにつながる可能性を持つというこ
とが結論付けられた。しかし、「聖地巡礼」によるまちおこしの課題をどの
ように対処すればよいかということまで考察することが出来ていないため、
今後の筆者の課題としたい。
[引用・参考文献]
・増淵敏之(2010)
『物語を旅するひとびと コンテンツ・ツーリズムとは
何か』彩流社
・山村高淑(2008)「アニメ聖地の成立とその展開に関する研究∼アニメ作
わし みや まち
『国
品「らき☆すた」による埼玉県鷲宮町の旅客誘致に関する一考察∼」
際広報メディア・観光学ジャーナル』№7
・山村高淑(2011) 『アニメ・マンガで地域振興∼まちのファンを生むコ
ンテンツツーリズム開発法∼』東京法令出版
(卒論指導教員 加藤茂外次)
― 79 ―
冒険遊び場に関する調査研究
― 伊勢市への導入を目指して ―
小 林 祥 子
第1章
問題の所存と目的
子どもの遊びは時代と共に変容してきている。2004 年に全国の小学 5、6
年生を対象に調査を行っている。児童の空間による遊びの特徴として、家の
中ではテレビを見るという活動が最も多く、全体の 6 割を占めている。屋外
で遊ぶことが少ないことから自然体験に結びつく遊びを行う機会が少なく
なっていると考えられる(深谷ら,2006)
。しかし、子どもの頃の自然体験
は、その後の成長や、意識に大きな影響を与える。国立青少年教育振興機構
の調査では子どもの頃に「自然体験」や、
「友だちとの遊び」などの体験が
豊富な人ほど意欲や関心、社会における規範意識、職業意識が高くなるとい
う結果がみられている(国立青少年教育振興機構,2010)
。
このように、現代の子どもたちは遊び離れの傾向にあるが、子どもの成長
過程で遊びは勉強と同じぐらい大切なことである。遊びのなかで体の動かし
方や物事の創意工夫を学びながら子どもは成長していく。
そこで、自分の責任で自由に遊ぶというモットーの中、子どもたちが自主
的に遊びを展開していける冒険遊び場の実態を調査していきたい。そして、
三重県伊勢市に冒険遊び場をつくる方法を考察していくことを本研究の目的
とした。
第2章
方
法
全国にある冒険遊び場(プレイパークとも呼ばれている)4 施設を訪問し、
管理運営者やプレイリーダーに話を聞くという実地調査を行った。選定した
4 施設は毎週開催しており、プレイパークとして定着している。訪問したの
は次の通りである。
施設名
調査日
話を聞いた方
港南台生き生きプレイパーク
2013年 6 月13日
プレイリーダー、管理運営者
羽根木プレーパーク
2013年 6 月14日
プレイリーダー
片倉うさぎ山プレイパーク
2013年 6 月15日
プレイリーダー
ちょっとバン
2013年 7 月10日
管理運営者
― 80 ―
冒険遊び場に関する調査研究
第3章
調査報告
『港南台生き生きプレイパーク』
<運営方法>
主となって運営している組織は、港南台生き生きプレイパーク運営委員会
である。運営委員会のスタッフは地域の民生委員会、町内会の会長、幼稚園
保育園の園長、利用者代表、連合自治会などで構成されている。
常駐のプレイリーダーは男性 1 名、女性 1 名の合計 2 名である。リーダー
の雇用は YPC ネットワークが行っており、横浜市内の各プレイパークに派
遣している。
<子どもたちの遊び、遊具について>
子どもたちの遊び道具として、あると良いものは工作に使うノコギリやカ
ナヅチ、また工作に使えそうな素材である。木材の切れ端や、お菓子の箱、
牛乳パックなどもあると、子どもたちはそれぞれに工作をし始める。夏は水
遊びが人気である。
『羽根木プレーパーク』
<運営方法>
プレイパーク事業は世田谷区から NPO 法人プレーパークせたがやに委託
されている。プレイパーク事業にはそれぞれのプレイパークの世話人会があ
り、世話人会は地域住民によって組織されている。プレイリーダーは 3 名で
男性 1 名、女性 2 名であった。プレイリーダーはプレイパークの現場に常駐
する NPO 法人プレイパークせたがやの職員として位置付けられている。プ
レイリーダーを長く続けてほしいという思いから雇用の改善がなされ、複数
年雇用や昇給性がとられるようになっている。
<子どもの遊び、遊具について>
遊具の配置については、子どもたちは秘密基地のような、自分たちだけの
場所を好むので、あえて小屋の裏や植木の間などを作るようにしている。ま
た、工作ができる場には、子どもが勢いよく入って来られないように小屋で
工作場をL字型に囲い、子どもの同線を遮っている。そして、遊具には段差
を高くしたり、斜面を急にしたりして子どもたちが挑戦できる場を提供して
いる。
『片倉うさぎ山プレイパーク』
<運営方法>
公園の運営を民間に任せるシステムが横浜にはなかったため、公園に関わ
る民間団体として「あそび場管理運営委員会」を設けた。あそび場管理運営委
員会が片倉うさぎ山公園の一角にある片倉うさぎ山プレイパークを管理運営
している。プレイリーダーは 2 名で、男性 1 名、女性 1 名である。リーダー
― 81 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
の雇用は YPC ネットワークが行っており、横浜市内の各プレイパークに派
遣している。
<子どもの遊び、遊具について>
遊具のブランコや、モンキーロープ、ハンモックなどを毎日プレイリー
ダーがロープをくくりつけて作るのだが、その位置を日によって変えてい
る。また、高い場所に柵や手すりをなくすことによって、「怖い」ということ
が身を持って分かり、危険を回避する能力を養えるようにしている。
『冒険遊び場ちょっとバン』
<運営方法>
府が予算を決め、財団法人と 5 年の指定契約を結び、その財団法人から冒
険遊び場ちょっとバン管理運営の依頼を「NPO 法人 Kid's ぽけっと」が受
け持っている。公設民営なので助成金が出るのだが、それで全てを運営して
いくのは難しい。ちょっとバンには「プレイリーダー」と呼ばれる人はいな
い。しかし、管理運営を行っている全員が最前線に立ちうるという考えのも
と、管理者の中から 5 人の有償スタッフがシフト制で常駐している。
<子どもたちの遊び、遊具について>
砂場で遊ぶ子どもも多いのだが、冒険遊び場が住宅地の中にあるため、猫
の糞など衛生面に不安がある。そのため、閉めているときは砂場にネットを
かけるようにし、衛生面にも気を配っている。また、ちょっとバンには奥に
森があり、普段はスタッフと一緒であれば入って良いというルールになって
いる。会員制の活動では、森の中で自然体験を実施している。
第4章
冒険遊び場の伊勢市への導入
三重県内でも子どもの外遊び離れの傾向がみられる。三重県名張市内の小
学 6 年生の運動・遊びの現状(叶・木戸 2009)の調査によれば、放課後に
おいても週末・休日においても半数以上の子どもが自宅の中か友だちの家で
遊んでいる。また同調査では、子どもたちのやってみたい遊びについても尋
ねており、そこではアウトドアの活動を求めている子どもの姿がうかがえ
る。比較的自然豊かな三重県だが、子どもたちが自然の中で思い切り遊ぶこ
とができる場が必要なのではないかと考えた。そこで、三重県伊勢市への冒
険遊び場の導入を考えていきたい。
伊勢市への導入方法
<場所>
神宮徴古館農業館の東側と、神宮徴古館の南東側に位置する森を利用した
い。神宮徴古館農業館の東側の森(図1)は太く大きな木が多く、形も様々
なため木を活かす遊びに最適である。また、神宮徴古館南側の森(図2)は
広場の部分があるため子どもが集える場として使用したい。近隣には子ども
― 82 ―
冒険遊び場に関する調査研究
園が 2 園、幼稚園が 1 園、小学校が 4 校、中学校が 3 校あるため、非常に多
くの子どもたちが当施設を利用できる。
図1
神宮徴古館農業館の東
図2
神宮徴古館の南側の森
<運営について>
伊勢の冒険遊び場の運営は、伊勢神宮、皇學館大学、行政、地域住民で担っ
ていく。神宮徴古館の敷地は伊勢神宮所有の土地である。そこで、伊勢神宮
の協力が欠かせない。
また、皇學館大学も運営に関わっていきたい。皇學館大学の有志の学生を
スタッフとして配置する。遊びに来る子どもたちと遊び、子どもたちが楽し
めるような企画を考えるのである。
行政、地域住民の協力も必須である。行政の後押しなしでは運営は困難で
ある。共に運営に関わっていく地域の代表団体を組織し、そこを発信源とし
て地域住民に冒険遊び場への理解を呼びかけていきたいと考える。
<プレイリーダーについて>
伊勢市のプレイパークには常駐のプレイリーダーと共に学生プレイリー
ダーも採用していきたい。プレイリーダーと教師とでは、子どもへの関わり
方が少し異なる。子どもと教師が縦関係にあるならば、プレイリーダーは横
関係なのである。しかし、横関係だからこそみえる子どもの一面がある。そ
れを知ることで、学生たちがより子どもに寄り添える教師となると考える。
子どもとの関わり方は実践でしか身につかない。そのためにも、皇學館大学
の学生が大いに関わりを持つことは、学生にとってもプレイパークにとって
も有効なものになるだろう。
<遊び場について>
神宮徴古館農業館の東側の森には大きな木が多く、また形も様々である。
そこで、木登りや木のブランコなど森の木を使った遊びを展開していく。ま
た、自然がそのまま残っているため、現状の森を維持し、昆虫を探したり、
散策をしたりという自然体験活動を行う場としても利用したい。
神宮徴古館南側に位置する森には、図1の構想で遊び場を展開していく。
中央の広場には滑り台(図 3 ①)や、釜戸(図 3 ⑤)を設置し、子どもや保
護者が集い交流できる場としていきたい。
また、中央の広場の近くに工作場(図 3 ②)を設置する。ノコギリやカナヅ
― 83 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
チなどの工具を使うため人が集う中央の広場から
目が届くようにするためだ。そして、その周りを
図3のように物置で囲い子どもの同線を遮断する。
図 3 ③、④には大きな木が多いため、その木の
高さに挑戦していけるよう設定する。その一つと
して、ツリーハウス(図 3 ③)を作り、周りの木
との間に木材を組み合わせ、子どもたちが工夫して
木登りを楽しめるようにしたい。
現代の子どもは数多くの問題を抱えて生きてい
る。その原因は、子どもたちの世界の狭さなので
はないかと考える。それを打開する 1 つの方法と
して考えられるものが冒険遊び場ではないだろう 図3 伊勢市プレイパーク
か。自分の好きなことが思い切りでき、試行錯誤
イメージ図
を重ねながら挑戦できる空間、人同士の関わりなど時代が進み、便利になる
につれて失われていったものが冒険遊び場にはあるのだ。冒険遊び場で目を
輝かせながら遊ぶ子どもたちを実際に見て、冒険遊び場の可能性に確信を
得た。
引用・参考
文献
・独立行政法人国立青少年教育振興機構(2010)子どもの体験活動の実態に
関する調査研究(中間報告)
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/59/
・叶俊文・木戸啓登(2009)名張市内の小学 6 年生の運動・遊びの現状
皇
學館大学地域福祉文化研究所年報 No.4(pp.23∼36)
・瀬渡章子(2005)プレイリーダーのいる冒険遊び場の利用実態と利用者の
評価−てんぱくプレーパーク(名古屋市天白区)における調査事例(2002
年)プ レ イ リ ー ダ ー の 常 駐 す る 冒 険 遊 び 場 の 成 立 要 件 に 関 す る 研 究
pp.3-12
・髙旗正人・深谷和子・深谷昌志(2006)いま、子どもの放課後はどうなっ
ているのか
北大路書房
(卒論指導教員
― 84 ―
叶
俊文)
教科指導における ICT 活用方法
― 授業での ICT 活用に焦点をあてて ―
坂
淑 加
1.はじめに
教育実習校では電子黒板はまだ設置されておらず、プレゼンテーションソ
フトや実物投影機などの ICT 機器が整備され使用されていた。小学校1年
生の授業では教師の「教科書○ページを開きます。」という指示後、実物投
影機でそのページを映していた。動作の遅い児童もそれを見ることで今どこ
をしているかわかるというように実物投影機を使用して授業を焦点化し工夫
していた。この経験から電子黒板やデジタル教科書だけでなく、多くの学校
で使用されている実物投影機やプレゼンテーションソフト等も含めて ICT
について研究しようと考えた。
そこで本研究では、授業における ICT 活用の現状を明らかにし、授業に
おける ICT の効果的な活用方法を検討することを目的とする。
2.ICT について
ICT とは Information and Communication Technology の略であり、情報
コミュニケーション技術のことである。例えば、プロジェクタや実物投影
機、電子黒板、デジタルテレビ、デジタルカメラ、教科書準拠デジタルコン
テンツなどがある(1)。
教科指導における ICT 活用とは、文部科学省「教科の情報化に関する手
引」(1)によると教科の目標を達成するために教員や児童生徒が ICT を活用
することである。学習指導要領解説では、各教科等において随所に ICT 活
用が例示されている。これらは、1)学習指導の準備と評価のための教員に
よる ICT 活用、2)授業での教員による ICT 活用、3)児童生徒による
ICT 活用の3つに分けられる。
本研究では2)、3)の授業での ICT 活用に焦点をあてる。
3.研究方法
(1)教師の教科指導における ICT 活用の調査
教師の教科指導における ICT 活用の実態を明らかにし、ICT の効果的な
活用方法を検討するため、小学校教諭4名にインタビューを行った。
― 85 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
(2)大学生の電子黒板・デジタル教科書に対する意識の調査
教師志望の大学生の電子黒板・デジタル教科書に対する意識を明らかにし
検討するため、皇學館大学教育学部の大学生 9 名にインタビューを行った。
4.調査結果
(1)教師の教科指導における ICT 活用の調査結果
ICT を使用した学年、教科に注目すると全学年、全教科で使用されている。
使用目的、使用方法は、拡大するため、特別な支援を必要とする児童のた
めに使用することが多かった。拡大するものは、児童のノートや教師が説明
するときの手元が主であった。また、拡大するため、特別な支援を必要とす
る児童のための使用だけでなく、教師の説明を少なくするため、体育科のダ
ンスのとき自分の踊っている様子をビデオカメラで撮影し見るというように
児童に客観的視点で見せるため、視覚的に理解させるため、児童の興味をひ
くため、ICT に慣れさせるためなどの理由が挙げられた。
ICT を使用したことでの児童の変化は授業に集中する、ひきつけられる、
興味を持つが多く挙げられた。また、児童がイメージしやすくなった、PC
への抵抗感がなくなったという変化も挙げられた。
(2)大学生の電子黒板・デジタル教科書に対する意識の調査結果
「①電子黒板の導入に賛成・反対ですか。」に対し「教科による」や「場合
による」という意見もあるが、全員が賛成であった。賛成の理由では、
「興
味」「視覚」という言葉が多く出てきた。また、「場合による」と答えた理由
に視力の心配や操作方法の不安など電子黒板の問題点が挙げられた。
「②将来、電子黒板を使用したいですか。」に対し、全員が使いたいと回答
した。しかし、使用したいが操作方法に不安を持っている大学生もいた。
「③デジタル教科書の導入に賛成・反対ですか。」に対しては「何とも言え
ない」「まあまあ」など曖昧な回答や賛成の面も反対の面もあるという回答
が目立った。このような回答が多かった理由は、デジタル教科書にメリッ
ト、デメリットがあるからやどんなものかわからないからであった。大学生
が考えるデジタル教科書のメリットは「聞く」である。例えば、外国語活動
のとき、ネイティブの発音を聞くことができることである。また、拡大でき
ること、社会や理科などの資料を豊富に得ることができることも挙げられ
た。一方、デメリットは、「書く」「読む」である。「読む」については視力
の問題や読んでいるときに手が触れ、ページが移動してしまうということが
挙げられた。また、データの破損などの取り扱いを心配する声、授業中に遊
ぶのではないかと懸念する声があった。
「④将来、児童にデジタル教科書を使用させて授業を行いたいですか。」に
対しては、「必要に応じて」という回答が多かった。
― 86 ―
教科指導における ICT 活用方法
5.考
察
(1)教師の教科指導における ICT 活用の調査
ICT はどの学年、教科でも使用でき、効果的である。しかし、学年、場
面に合わせて ICT 機器を選び、目的を持って使用する必要がある。C 教諭
も「電子黒板を使った授業のほとんどがプロジェクタなどででき、わざわざ
電子黒板でしなくていいことをしている」と ICT の現在の問題を挙げていた。
使用目的、使用方法の拡大するためは、ノートを拡大することで式や意見
を体で隠さず全員に見えるように児童が発表でき、児童のノートを大きく映
すことでノート指導ができる。また、教師が説明するときの手元を拡大する
ことで前に集まっても手元の細かい作業が見えないということを防ぐことが
(2)
の任天堂 DS
できる。特別支援の ICT 使用において、北澤・永井(2010)
(3)
を用いた漢字学習についての先行研究や佐原(2012) のマウスやキーボー
ドによる操作のコンピュータとタッチパネル操作によるタブレット端末につ
いての先行研究から、特別支援でも有効的である。使用目的、使用方法の結
果から、ICT を使うことで興味関心を高める、教師の説明を端的に伝えら
れる、児童が客観的視点で自分を見ることができる、ICT に慣れさせるこ
とができることが示唆される。教師の説明を端的に伝えることで、授業中の
児童の考えを深める時間や実験・観察する時間を増やすことができる。
(2)大学生の電子黒板・デジタル教科書に対する意識の調査
「電子黒板の導入に賛成」の理由は、「興味」「視覚」という言葉から、電
子黒板には児童の興味をひきつけたり、視覚的に訴えたりする効果があると
考えている大学生が多いことがわかる。
電子黒板の使用に対して全員が使いたいと回答した背景には、大学や教育
実習において、実際に電子黒板に触れたり、電子黒板を用いた授業を見たり
したことがあるからではないかと考える。
デジタル教科書のメリットに資料を豊富に得ることができることが挙げら
れたことから、実際に見たり、触れたりすることが困難な事物を視覚的に捉
えることができることはメリットであると考える。一方、
「書く」がデメリッ
トと考える背景には、多くの大学生が所持するスマートフォンで書くことの
(4)
は、デジタル教科書は
困難さを感じているからだと考える。新井(2012)
障がいのある児童に福音となると述べている。しかし、デメリットとして耐
久性が劣る、高価である、目や精神への不安、複数の資料を一覧できないと
(5)
は、デジタル教科書のメリットは教科書が一冊
述べている。片山(2010)
で済む、音声・動画が学習効果を高める、子どもの書き込んだものを電子黒
板に投影できると述べている。また、本研究の大学生のデジタル教科書に対
する調査にあった、外国語活動のとき、ネイティブの発音を聞くことができ
るという意見に加え、片山は、繰り返し聞くことができることもメリットに
― 87 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
挙げている。デメリットは書く学習が身につかない、値段が高い、壊れる、
充電をする場所を挙げているが、対処できない問題ではないと述べている。
児童のデジタル教科書の使用に対し、
「必要に応じて」という回答が多かっ
た理由は、導入に対して、「賛成、反対の面があるため何とも言えない」「そ
もそもデジタル教科書が何かわからない」と考えているからだとわかる。
6.ま と め
本研究では、授業における ICT 活用の現状を明らかにし、効果的な活用
方法を検討することを目的とし、教員と大学生にインタビューを行った。そ
の結果、どの学年、教科、場面でも使用でき、使用場面の多くは拡大や特別
な支援が必要な児童の学習支援に使用しているという現状が明らかになっ
た。そして、ICT は興味関心を高める、教師の説明を端的に伝える、客観
的視点で自分を見ることができる。しかし、ICT を使用する際には目的を
持って、目的にあった ICT を選択する必要がある。
以上のことを踏まえ、授業における ICT の効果的な活用方法を提案する。
授業の導入では、書写において、手元を映し教師が書いて見せ、とめ、はね、
はらいを観察させることで、興味関心を高める。振り返りでは、体育科のバ
スケットボールにおいて、試合中の子どもの動きや様子を iPad で撮影し、
それを見ながら次の作戦を考えることで、客観的視点で自分を見させる。
今後の課題は、デジタル教科書を知らないという大学生の実態を知ること
ができたが、実際にデジタル教科書を体験してもらい、回答してもらう。ま
た、デジタル教科書について、指導者用のことを回答した大学生もいれば、
児童用のことを回答した大学生もいた。今後は両観点から回答してもらう。
7.文
献
(1)文部科学省 2010 教育の情報化に関する手引,46,50,179-181.
(2)北澤武・永井正洋 2010 小学校特別支援教室におけるモバイル機器
を 利 用 し た 漢 字 学 習 支 援 の 効 果 日 本 教 育 情 報 学 会 第 26 回 年 会,
122-125.
(3)佐原恒一郎 2012 重度知的障害児の ICT 利用教育におけるタブ
レット端末を使用した事例的検討 日本教育情報学会 第28回年会,
214-217.
(4)新井紀子 2012 ほんとうにいいの?デジタル教科書 岩波タブレッ
ト,6-7,14-15.
(5)片山敏郎 2010 児童用デジタル教科書入門 みんなのデジタル教科
書教育研究会,5-6,8-10.
(卒論指導教員
― 88 ―
小孫康平)
現代の算数科教育における
和算の活用について
大 薮 容 子
1.はじめに
本研究は、和算を現代の算数科教育で活用することを目的とする。和算と
は、古代から西洋数学が輸入される明治時代までに、日本で独自に発展した
数学のことである。特に、武士の争いがなく平穏だった江戸時代に、大きく
発展した。なぜならば、そろばん塾や寺子屋が現れ、一般庶民にまで数学が
広まったためである。また、多くの和算家達によって数学が研究されたため
である。
2.
『塵劫記』
和算が大きく発展した江戸時代におい
て、ベストセラーとなった数学書が、吉田
光由(1598∼1672)著作の『塵劫記』であ
る。光由は、寛永四年(1627)、中国の数
学書『算法統宗』等の古来の算術書を手本
に、『四巻二十六条本塵劫記』を刊行した。
この『四巻二十六条本』は、日常生活を主
とした生活数学の本であり、基本的な数や
計算方法、そろばんの使い方について詳し
図1
く説明している。その一つに九九がある
(図1)。これまで、九九は「九九八十一」から始まることが一般的だった。
しかし、より暗記しやすいようにと考えた光由は、
『算法統宗』を参考に、
「一
一の一」から始まる九九表を掲載したのである。また、このような基本的な
知識だけでなく、文章問題も掲載した。その題材には、日常生活や身近にあ
るものが取り上げられたため、分かりやすく、かつ、庶民が関心を持てる実
用的な問題となっていた。例えば、米の売買を題材にした問題がある。年貢
として米をおさめた江戸時代、米の売買は人々にとって身近で重要な問題で
あったと考えられる。また、単価と個数から総売値を求める問題、総売値と
単価から個数を求める問題、総売値と個数から単価を求める問題等、同じ米
の売買を題材としても、様々な問題を掲載した。このように、『四巻二十六
条本』は、遊戯的な内容は、あまり含まなかった。しかし、数学にはじめて
触れる人々のことを考え、基本的な数や計算方法、身近な題材を用いた実用
的な問題を取り上げた。光由の創意工夫により、初版『塵劫記』は、多くの
人々に歓迎された。一方で、
『塵劫記』の売り上げを知った版木屋が、勝手
― 89 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
に増刷し、すぐに海賊版が出回るようになった。
これに対抗して、寛永六年(1629)に刊行されたの
が、『五巻本塵劫記』である。『五巻本』の特徴は、遊
戯的な問題と多くの挿絵が加えられたことである。こ
の遊戯的な問題の例として、「入れ子算」がある(図
2)。入れ子とは、同形で大きさの異なる、いくつか
の入れ物で、大きさの順に収納する枡や鍋のことであ
る。大きさが変わると、値段も一定に変化したため、
次の問題が作られた。
[問題]入れ子の鍋六個を大きい順に並べると、
その値段は順に銀八分ずつ少なくなっている。六
個全部の値段は二十一匁であるという。一番目の
鍋はいくらか。
[答え]五匁五分
図2
光由は、庶民が楽しく数学に触れられるよう、工夫を凝らして『塵劫記』
を書き上げた。『塵劫記』における遊戯的・実用的な問題や、基本的な知識、
九九の表などは、現代の算数科において、活用することができるであろう。
当時の九九表に触れたり、入れ子算のような遊戯的な問題を考えたりするこ
とは、児童が算数に興味関心を持つきっかけとなる。また思考力を深めるこ
とにも効果的である。和算の問題が、方程式を使わずに表や図を使って考え
るためである。小学校で和算に触れることは、豊かな授業を作るために役立
つと考える。
3.各教科書における和算の取り扱いの比較
現在の算数科において、和算がどの程度取り入れられているのかを調べる
ため、6社ある教科書の比較、検証を行った。表1は、各教科書における和
算の取り扱いについて整理したものである。
表1
大日本図書
教科書における和算の扱い
啓林館
学校図書
教育出版
東京書籍 日本文教出版
単元間コラム
×
×
○(2)
○(4)
○(1)
○(3)
巻末応用問題
×
○(1)
×
×
○(4)
○(1)
和算の説明
×
×
×
×
○
○
※〇…和算の取り扱いあり
×…和算の取り扱いなし
(
)…頁数
それぞれの教科書において、和算の取り扱い方、量に差があることが分か
る。教科書によっては、和算を全く扱わない場合があったり、和算の問題を
解くことが無かったり、和算についての説明が無かったりして、必ず和算に
触れられるわけではない。また、和算の活用方法も、学習指導要領の内容に
― 90 ―
現代の算数科教育における和算の活用について
合わせて活用する場合、トピック教材として活用する場合等、様々である。
4.教科書比較を受けて
教科書の比較から、和算の選び方2点と、和算を授業で取り扱う際に工夫
すべき3点を見出した。
(1)和算の選び方
①学習した内容に合った和算を選ぶ
単元と単元の間にある、和算に関するコラムの多くは、直前まで学習し
ていた内容に沿ったものとなっている。学習した内容の補足や、学習した
内容の発展問題として、和算を取り入れているのである。
②児童が興味を持てる和算を選ぶ
教育出版では、トピック的な題材として、和算を取り扱っている。児童
が興味を持つことができる和算を選び、学習した内容とは別物として取り
扱っている。
(2)工夫するべき点
①和算とは何かを説明する
東京書籍と日本文教出版は、和算を取り扱うだけでなく、和算について
の説明もしている。児童は、和算がどのようなものなのかを知ることがで
きる。
②和算書や算額の写真を見せる
多くの教科書には、和算書の挿絵や算額等の写真が載っている。文章だ
けでなく、写真があることで,児童はより興味関心を持つことができる。
③現代で日常的に使用しない言葉・単位に注意する
和算の問題には,現代の児童等が知らない言葉や単位が多く出てくる。
そのため,言葉や単位の説明を行う必要がある。あるいは、
「升」を「d L」
に変換したように、現代の言葉や単位に置き換える必要がある。
5.橋本由美子氏の実践授業に見られる工夫点
各教科書で和算の取り上げが少ない中、橋本は、「まま子立て」を活用し
た授業を行っている。橋本は、まま子立てについて、現代に合わせて教材化
を行い、和算に楽しく触れることのできる授業を実践した(実践内容は略)
。
授業の中で、児童が、楽しく理解し易いように工夫された点は、次の6点で
あると考える。
①数値や場面を、理解し易いものに変更する
橋本は、「継子は今の時代にそぐわない」とし、勝ち抜きゲームの場面
に変えている。江戸時代の実用性を、現代の実用性に変換しているのである。
②ルールを簡潔に示す
原題は物語調になっており、場面の説明が非常に長い。橋本は、児童が
場面を把握や、取り出し方のルールを理解しやすいように、簡潔にまとめて
いる。
― 91 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
③活動的な学習を取り入れる
橋本は、実際に児童達を円の形にさせ、ゲームを行っている。児童は自
分達で実際に動いてみることで、楽しみながら学習できる。
④表を使って整理させる
橋本は、ゲームの結果を表にまとめ、児童に、その関係性(きまり)に
気づかせようとしている。
⑤原題であるまま子立てを紹介する
橋本は、授業の最後に、原題である「まま子立て」や『塵劫記』につい
て紹介している。これにより、児童は和算について知ることができる。
⑥学習の感想を書かせる
児童の感想は、次回の授業をより良くするための大切な資料である。ま
た、その感想には、「楽しかった」「昔の人はすごいと思った」等、肯定的
なものが多く、和算を上手く活用できたことが伺える。
(この後、見出した点を受けて、和算を活用した学習指導案を提案したが、
頁数の都合上、省略する。)
6.終わりに
現行の学習指導要領は、厳選された内容で構成されている。そして、過去
の文化である和算を組み込む余裕はなく、学習指導要領に和算の記述はな
い。しかしながら、この研究を通して、和算は、現代でも十分に楽しめるこ
とが分かった。そして、和算を授業に活用することで、学習指導要領の内容
について、発展的に学習できたり、復習できたり、トピック的教材として興
味を持たせたりできることも分かった。伝統と文化の充実が求められる中
で、算数科において、和算は有効的であると考える。そのため、これからも、
算数科のなかで和算を活用できるよう、研究を続けていきたい。そして、児
童が和算をきっかけにして、算数に興味関心を持てるようにしたい。
【引用参考文献】
・中原忠男(2000)『算数・数学科重要語 300 の基礎知識』明治図書
・佐藤健一(2000)
『江戸のミリオンセラー「塵劫記」の魅力−吉田光由の
発想』研成社
・東京書籍(2011)『新しい算数』
・啓林館(2011)『わくわく算数』
・日本文教出版(2011)『小学算数』
・教育出版(2011)『小学算数』
・学校図書(2011)『みんなと学ぶ小学算数』
・大日本図書(2011)『たのしい算数』
・橋本由美子(2008)「塵劫記を算数・数学教育に取り入れる意義と教材化」
『第40回数学教育論文発表会論文集』
(卒論指導教員 杉野裕子)
― 92 ―
学童保育支援の在り方
小 坂 宗 暉
1.研究の目的と方法
筆者は大学 1 年生の 10 月からX市Y1学童部(※同系列の学童がX市内
に 3 か所存在し、仮にY1学童部・Y2学童部・Y3学童部とする)にて学
童補助指導員をしている。当時から現在に至るまで、様々な学童保育利用児
を保育・指導してきた。「学童」は「学校」ではなく、「家庭」でもない。そ
の中間地点に位置しているように思う。故に、
「教師」ではなく、
「保護者」
でもない「指導員」としての微妙な立場で子どもと接するのである。子ども
を援助し、安全に生活を送ることが出来るように配慮するため、「教育者」
というよりも「保育者」の役割に重きを置いているように感じる。学校から
離れ、家庭的な環境で小学生を保育する学童保育という貴重な場面に立ち会
えたからこそ、学童内での子どもの生活を通して微妙な心の変化・成長を異
年齢同士の関わりを踏まえた上で観察し、
「学童保育支援の在り方」を考察
していきたい。
本研究にあたり、学童児の事例調査を行った。実施要項を以下に示す。
<実施要項>
場所:X市Y1学童部
期間:平成22年10月頃∼平成25年12月頃
対象:Y1学童部利用児 3 名
2.調査結果と部分考察
Ⅰ.対象児A【1 年男児】
Aは平成25年 4 月頃からY1学童部を利用している、他学区の小学 1 年男
児である。発達の遅れが見受けられ、様々な場面でより丁寧な養護的配慮が
必要である。就学前の園では「気になる子」として、丁寧な保育・細やかな
配慮をされていた。全 5 事例を取り上げ、Aが葛藤しながらも自分らしく学
童で過ごす姿を捉えた。手先がおぼつかなかったり、友達との交流が上手く
いかなかったりする中で、Aなりに楽しく過ごしている様子を垣間見ること
が出来た。また、Aは母親のことが大好きで、学童内でもよく呼びかけてい
る。Aは周りの人々へ認めてもらいたい気持ちが非常に強く、その気持ちに
指導員は応えていかなければならないと考える。以下に一事例挙げる。
【事例A−2】日程:平成25年 6 月 3 日(月)
Aは国語の宿題プリントをしていた。内容は平仮名の「ぬ」を何度もな
ぞったり、書いたりするものである。
W「Aくんどうかな?」
― 93 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
A「うーん、もーいやー。」
W「えー、でもみんな宿題やってるし、Aくんもやろやー。
」
A「わぁああーお。」
Aは鉛筆の先をプリントに強く押しつけ、乱雑に線を書き、落書きを始
めた。
W「Aくん、大事な宿題なのに、そんなことしたらあかんよ。」
A「はい、もう終わりでーす。」
W「はいはい、Aさんまだ終わってませんよー。」
上記のようなやり取りを数回繰り返した。
A「うー、もうAやりたくなーい。」
Aは鉛筆を口内へ含み、しゃぶり始めた。
W「ほらほら、Aさん、お口の中に入れちゃ駄目ですよ。」
A「うー。」
結局、宿題は自宅へ持ち帰りすることとなった。
Ⅱ.対象児B【2年女児】
Bは平成24年 4 月頃からY1学童部を利用しているハーフの 2 年女児であ
る。日本語は饒舌。いつも明るく、元気に活動している。人形を使ったごっ
こ遊びをよく好んでおこなっている。短気で、怒りやすい面があるが、基本
的に思いやりのある優しい子である。全 3 事例を取り上げた。約 1 年間を通
して、Bは怒りやすい面が表面に表れはじめた。事例研究をする中で、その
主たる要因であろう考えが判明した。それは、
「甘え」である。Bが怒りを
示す際は、必ず筆者に甘えることが出来なかった時で、それ以外は常時温厚
にしている。筆者は「甘え」を受け止めることは大切なことであると考える。
しかし、「甘やかす」のとは違う。指導員はその時と場合によって、適切な
援助が求められる。以下に一時例挙げる。
【事例B−3】日程:平成25年12月14日(土)
Bは 3 年女児と筆者と遊んでいた。
B「はい、先生、足(※筆者の膝に座る)。」
次にBは筆者の肩に太ももを乗せ、肩車をしようと試みた。
W「こら、肩車は危ないから。」
B「はぁ?乗せろや、ごらあー。」
sⅢ「あー、私もー。あのジェットコースターのやつやってー。
」
B「ちょ、やめ・・・(※腕でsⅢを振り払う)。」
sⅢ「あははは(※笑いながらBの手を払いのけ、筆者の背中に寄り添
う)。」
B「おらぁ、やめろー。」
W「おらぁ、じゃないでしょ。口悪いよ。2人共赤ちゃんじゃないんや
― 94 ―
学童保育支援の在り方
から、そんなことで人を叩かんといて。」
sⅢとBは留まることなく、このやりとりを繰り返し続けた。
Ⅲ.対象児C【4 年男児】
Cは平成22年 4 月頃からY1学童部を利用しているハーフの 4 年男児であ
る。B同様、日本語は饒舌。1 年時からY1学童部を利用している。感情表
現が豊かで、善・悪の判断がしっかりと出来る子である。全 3 事例を取り上
げた。Cは言葉にしないが、母国を愛している。友達がCの母国を中傷した
際も、感極まって泣いてしまう面も見受けられた。情緒豊かで、学童内では
頼もしい兄のような存在である。Cがそのような存在になったのは、学童内
の環境や人間関係の変化がもたらしたものである。今では、年下の子ども達
を統率する力も持ち合わせている。以下に一事例挙げる。
【事例C− 3】日時:11月11日(火)
Cは他児(※SⅢa・SⅢb・SⅡa・SⅡb)とごっこ遊びを始め、
筆者も誘われた。ごっこ遊びの設定は、お化けが出る家に家族で住んで
いるというもので、筆者は父役を演じた。
C「じゃあ、先生お父さん役で、俺ら子ども役なー。」
AS「はーい。」
W「さぁ、みんな早く寝ないとお化けが出るぞー。
」
SⅢa・b「ひー。」
SⅡa・b「うわあー。」
そのとき、ブロックを持っていたacが筆者に向かって投げたり、ぶつ
けたりし始めた。
SⅢa・SⅢb・SⅡa・SⅡb「うわあー。」
ついに 4 人とも暴れ始めた。
C「・・・。」
しばらくCは 4 人の様子をじっと見つめている。
C「あのさ、お前らさ、そうやってふざけてばっかで楽しい?」
AS「・・・。」
C「なんかさ、そーやっとらんと、ちゃんと遊んでほしいんさ。だから
さ、次は先生にごっこの設定を決めてもらって、ちゃんと遊ぼや。」
AS「はい。」
その後ASは少し落ち込み気味ながらも、筆者を含めたごっこ遊びを始
めた。
― 95 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
3.全体考察
今回の事例調査の結果、A・B・Cに共通して「成長」していることが見
て取れる。
ここでいう「成長」だが、筆者が考える「成長」とは、
「何かが出来る・
出来ない」という固定観念を含まない。「子どもの頑張る姿」であり、極論、
学童でただ過ごすだけでも「成長」すると考える。Aは周りに評価を求めつ
つ、学童へ来ようとがんばっている姿、Bは甘えたい気持ちをコントロール
出来ず身体的接触を求める姿、Cは環境や立場の変化とともに自分の立場に
責任を持った言動をしようとする姿。どの姿もそれぞれの「成長」の形である。
4.まとめ
指導員の力だけでは子どもは「成長」しない。様々な人的環境・物的環境
の変化が子どもに作用している。上記のような筆者の考えに基づくと、子ど
もに対しての指導員や友達、家族の関わりが、一つの事象であると考えられ
る。子どもへの関わりの積み重ねが、未来の子どもを形成していく。筆者は
長期間、事例調査した結果、どれだけ指導員の責任が重大であるか改めて感
じた。日々の関わりの積み重ねによって子どもが変化するなら、指導員はよ
り子どもが「成長」出来るような働きかけをするべきである。
5.今後の課題
学童には、「学童に行きたくない子」も幾人か存在する。筆者はこのよう
な学童児が少しでも「学童に行きたい」と思えるように援助する力が指導員
には必要であると考える。例えば毎年、Y 1・2・3 学童部は合同で、
「春の
集い」「夏祭り」「芋掘り」などの様々な行事を企画し、開催している。それ
だけでなく、Y 1 学童部は「いつもとちがう水曜日」と題して、指導員がレ
クリエーションを考えて、みんなで遊ぶという習慣も根付いている。これら
の行事や習慣は、
「またそれするのー?」と、やや退屈そうな態度を示す学
童児もいるが、いざ始まると夢中になって遊ぶ姿をよく見る。やはり一番重
要なポイントは「子どもと関わる指導員の姿」である。指導員が楽しい雰囲
気を作り出し、それを指導員自身が味わいながら子どもに関わることで、
「ちょっとやってみようかな」と気持ちが揺れ動くのである。子どもと関わ
る際の指導員の日々の心掛けや、環境設定の方法が、今後の学童保育を左右
すると考える。
【参考・引用文献】
(1)「学童保育の歩み」 『全国学童保育連絡協議会ホームページ』
〈http://www2s.biglobe.ne.jp/~Gakudou/〉
(2)『学童保育研究 第 3 号』かもがわ出版 2002 年 11 月 所収 16 項
(卒論指導教員 田口鉄久)
― 96 ―
携帯メールにおける記号表現力の必要性
― 絵文字の使用によるコミュニケーションのズレの観点から ―
田 中 柚 衣
はじめに
高度情報化社会の中、携帯電話は、単なる電話から様々な機能を兼ね備え
たメディアとなっている。我が国では、明治中期に電話の実用化が開始さ
れ、ここ数年間の携帯電話の急激な普及は私たちの対人コミュニケーション
の様相を変貌させた。インターネットやメールだけではなく、カメラ機能の
充実、LINE や twitter などの SNS の普及により多機能通信端末として我々
の生活から切り離せない存在となった。
メールは、音声ではなく文字によるコミュニケーションがなされる。文字
ならではのコミュニケーションにおける対人配慮や気遣いを効果的にするた
め、絵文字や顔文字が利用されることもある。絵文字は使用することで効果
的なコミュニケーションを図ることのできるプラスの側面をもつ一方で、絵
文字の捉え方や感じ方の違いからコミュニケーションにズレを生じさせてし
まう。本研究では携帯メールの絵文字に関する事例から、コミュニケーショ
ンにおいての記号表現力の必要性を明らかにすることを目的とする。
第1章
記号表現力について
文部科学省と経済産業省の見解をもとに、記号表現力を定義づける。
第1節
記号表現力の定義
「記号表現力」ということばに対する定義はない。これから新たに社会に
出ていく人、企業だけではなく学校や保育所で働き教育者となる人もいれ
ば、子どもが生まれ親になり養育者になっていく人もいる。これらの人が、
新たな人間関係を構築していく中で何かを伝えるとき、必ず記号を使用す
る。よりよい記号表現ができるよう、文部科学省と経済産業省の提言を参考
に記号表現力について定義する。
(1)文部科学省の見解の整理
文部科学省(2008)は、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をは
じめ社会のあらゆる領域での基盤として飛躍的に重要性を増す「知識基盤社
会」の時代であるとしている。次代を担う子どもたちには、幅広い知識と柔
軟な思考力に基づいて判断することや、他者と切磋琢磨しつつ異なる文化や
― 97 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
歴史に立脚する人々との共存を図ることなど、変化に対応する能力や資質が
一層求められている。しかし、我が国の子どもたちには思考力・判断力・表
現力等に課題が見られると記されている。特に小学校国語科では、言葉を通
して的確に理解し、論理的に思考し表現する能力、互いの立場や考えを尊重
して言葉で伝え合う能力を育成することが重要視されている。以上のことか
ら、物事を表現するためには、思考・判断するという過程が不可欠であるこ
とがわかる。
(2)経済産業省の見解の整理
経済産業省(2010)は、2006年から「職場や地域社会で多様な人々と仕事
をしていくために必要な基礎的な力」として、「前に踏み出す力」、
「考え抜
く力」、
「チームで働く力」の 3 つの能力(12の能力要素)から構成される「社
会人基礎力」を提唱している。「基礎学力」や「専門知識」に加え、それら
をうまく活用していくための社会人基礎力を育成していくことを重要として
いる。特に私は「チームで働く力」のうちの「発信力」に重点を置く。
第3節
記号表現力とは
すべてのコミュニケーションには記号が不可欠である。ことばだけではな
く、文字、ジェスチャー、携帯メールの絵文字を使用する場合も、記号表現
力が必要となる。
自分の考えや思いを相手に表現する際、どのようにすれば相手にうまく伝
えることができるのかを思考し、考えた伝え方が場面や意図に合っているの
かを判断し、そして相手に表現するという過程が必要である。尚且つ、自分
の意見を相手に伝えるだけではなくわかりやすく発信することが大切であ
る。よって、記号表現力とはふさわしい記号を思考・判断し相手にわかりや
すく表現する力といえる。
携帯メールの絵文字の場合、文章
にどの絵文字が合っているか思考
し、相手の立場に立って自分の選ん
だ絵文字が本当に伝わるのか判断
し、思考・判断を繰り返し、相手に
わかりやすく絵文字だけではなく、
ことばで補いながら表現できる力を
つけなければならない。図 1 はこの
定義をもとに記号表現力を図化した
ものである。
(図1)記号表現力
― 98 ―
携帯メールにおける記号表現力の必要性
第2章
大学生の携帯メールにおける絵文字の使用実態の調査
大学生の携帯メールにおける絵文字の使用実態を調査し、その結果を考察
する。また実態を参考に絵文字によるコミュニケーションのズレを明らかに
し、課題を見つけ出す。
第1節
調査内容
絵文字によって送り手と受け手のあいだにコミュニケーションのズレが生
じてしまうことを明らかにするため、国語教育ゼミ 4 年生14名を対象とし、
調査を行った。
(1)調査内容
携帯メールの画面を提示し、文章と絵文字からの印象を回答してもらうこ
とにした。場面設定は、私(送り手)がゼミの忘年会の日付を聞く。受け手
は忘年会の日付を答え、返信する。そのメールに対し私が感謝し、忘年会が
楽しみであることを伝えるという設定である。
使用した絵文字はドコモの「猫」の絵文字である。送り手がなんとなく絵
文字をつけたとしても、メールを見た受け手はどのように感じてしまうのか
を調査した。
(2)実
態
メールの文章・絵文字から受けたあたたかさ(冷たく感じたかあたたかく
感じたか)と感情(楽しみではなさそうか楽しみにしていそうか)をそれぞ
れ10段階で評価をしてもらい、グラフに表し、どれほど人によって感じ方や
捉え方に違いが出るのかを調査した。
以下のようにメールの文章と絵文字から文章のあたたかさと感情をそれぞ
れ10段階評価してもらい、該当する数字に丸を付けてもらった。
文章のあたたかさ(当てはまる数字に○をつけてください)
感情(当てはまる数字に○をつけてください)
それぞれの10段階評価をグラフに表した結果、以下のグラフ(グラフ1)の
ようになった。
― 99 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
グラフに示したように、点がひとつの所にとどまらずにばらばらに散ら
ばった。全員同じメールを見ているにも関わらず、感じ方や捉え方が人に
よってさまざまであった。コミュニケーションとは送り手と受け手がイコー
ルの関係でなくてはならない。すなわち、送り手の意図や感情が完全に伝
わったときコミュニケーションは成立しているといえる。しかし、このグラ
フを見ると送り手と受け手の間には大きなズレが生じていることがわかる。
おわりに
以上の結果から、私たち若者は携帯メールにおいて絵文字を多用し、感情
表現やコミュニケーションのやりとりをしていることがわかった。近年はス
マートフォンの普及によりメールだけではなく LINE によるコミュニケー
ションも増えたことから、絵文字の代わりにスタンプを使用することも多く
なった。
今回のアンケート調査や実験結果では、絵文字を使用するにあたってどれ
だけコミュニケーションにズレが生じてしまうのかを調査した。絵文字ひと
つをとっても、絵文字の使い方や解釈の仕方は様々であり、まだまだ認識が
足りず共通としての認知度が低いのが現状である。携帯メールは対面による
コミュニケーションではないため誤解を招きやすい。絵文字を効果的に使用
しよりよいコミュニケーションを図るためにはやはり、記号表現力を身に付
ける必要がある。絵文字に限らず、効果的にこのような記号を用いるために
も記号表現力を養い、よりよいコミュニケーションを目指していきたい。
本論文はあくまでも大学生の実態と、実態からみた課題を見つけ出した論
文である。今後はいかにして改善していくかを具体的に考えていきたい。
(卒論指導教員
― 100 ―
中條敦仁)
内部捕食寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
の寄生が
寄主アワヨトウ
の
Hyper spread cell に及ぼす影響について
森
概
瑞 紀
要
昆虫の体腔中には血球が存在し、皮膚あるいは消化管などの物理的防御壁
を突破し、侵入する外的病原体と対抗している。血球の種類や割合は種に
よって大きく異なり(和合,1995)、チョウ目昆虫の血球は顆粒細胞、プラズ
マ細胞、エノシトイド、小球細胞、原白血球の 5 種類に分類される(Ribeiro and
Brehelin, 2006)。し か し Kato (2011) は チ ョ ウ 目 の ア ワ ヨ ト ウ
幼虫において、小さな異物に対して食作用を示し、包囲化やノ
ジュール形成の初期段階に関与している Hyper spread cell (以下 HSC とす
る)を新たに同定した。この血球は異物表面にメラニン物質を沈着させるた
めの足場を形成し、その下流に存在する包囲作用などのカスケードを誘導す
る(Kato, 2011)。
アワヨトウ幼虫に寄生する内部捕食
多寄生蜂のカリヤサムライコマユバチ
(以 下 Ck と す る) は、
寄生を成功させるためにホスト幼虫の
生理状態や行動を卵と同時に注入する
毒液 venom(以下 V とする)とポリド
ナウイルス polydnavirus(以下 PDV と
する)で制御している(Nakamatsu et 図1 カリヤサムライコマユバチのポリ
ドナウイルスと毒液を人工注入した
al., 2001)。 Ck の V は寄生後早期の段
アワヨトウ幼虫の総接着血球数に対
する HSC 数の割合
階でアワヨトウ幼虫の体内の血球を減
被寄生:カリヤサムライコマユバチ(以下Ckとする)を未
少 さ せ、寄 生 4 時 間 後 に 発 現 し た 寄生6齢0日目のアワヨトウ幼虫に一度寄生させた。
アワヨトウ幼虫から採取した体液20㎕をスライドグラス
PDV が血球のアポトーシスを誘発し、 上に滴下してインキュベーターで30分間培養した。培養
後、画像を正立顕微鏡下で撮影した。総接着数に対する
血球数は更に減少する(Teramoto and HSC数の割合の算出方法は以下に示す。
総接着血球数に対するHSC数の割合=HSC数/総接着血球
Tanaka, 2004)。しかしアワヨトウ幼 数×100
各値の縦線は標準偏差を示す。グラフの右肩にある異な
虫の HSC に対する Ck の V と PDV が るアルファベットは有意な差があることを示す(p<0.05
Tukey-Kramer test)。
及ぼす影響についての知見はまだない。 PDV+V:一匹のCkが持つPDVとVの全量に対する1/3量
(以下1/3雌蜂等量)をそれぞれ1㎕ずつ人工的に6齢0日目
そこで、本研究では未寄生のアワヨ の未寄生アワヨトウ幼虫に注入した。
PDV:1/3雌蜂等量のPDVを1㎕未寄生アワヨトウ幼虫に
トウ幼虫及び Ck の V や PDV を注入 人工注入した。
V:1/3雌蜂等量のVを1㎕未寄生アワヨトウ幼虫に人工
注入した。
したアワヨトウ幼虫の体液中の総接着 PBS:PBSを1㎕未寄生アワヨトウ幼虫に人工注入した。
― 101 ―
皇學館大学教育学会年報
図2 体液のメラニン化速度の違いで系統分
けした6齢のアワヨトウ幼虫の血球密度の
経日的変化
1㎕あたりの血球密度はトーマ血球計算盤を用いて計算した。
各値の縦線は標準偏差を示す。グラフの右肩にある値の異なる
アルファベットは有意な差があることを示す(p<0.05 Tukeykramer test)。
供試虫には、山路(2013)の方法で系統分けしたアワヨトウ幼
虫を用いた。BL:黒Black系統(体液を滴下して10分32秒以
内にメラニン化する系統)
WH:白White系統(体液を滴下してメラニン化するまでの時
間が37分50秒以上かかる系統)
第35号(2013年度)
図3
体液の培養時間が異なる場合の接着血球
数に対するHSC数の割合
供試虫には、白系統の6齢3日目のアワヨトウ幼虫を用いた。
アワヨトウ幼虫から採取した体液10㎕をスライドガラス上
に滴下し、30、45、75分間で培養した。培養後、画像を正
立顕微鏡下で撮影した。
各値の縦線は標準偏差を示す。グラフの右肩にある同じア
ルファベットは有意な差がないことを示す(p<0.01 Tukeykramer test)。
A
B
血球数に対する HSC 数の割合を算出し、
Ck の V、PDV が HSC に及ぼす影響につ
いて調べた。
C
はじめに V、PDV が HSC に及ぼす影
響 を 調 べ た 結 果、Ck の PDV と V が
HSC 数の抑制を誘導することは示され
体液の培養時間が異なる場合の接着
たが、標準偏差が大きくなった(図1)。 図4 血球数に対するHSC数の割合
供試虫には、白系統の6齢1日目のアワヨトウ幼虫を用いた。
この原因としては、他の血球と HSC の
アワヨトウ幼虫から採取した体液10㎕をスライドガラ
判別が容易ではないことと、血球の凝集 ス上に滴下し、一定時間で培養した。
培養後、画像を正立顕微鏡下で撮影した。
によって血球の計数が困難となることが A:30分間培養 B:45分間培養 C:75分間培養
原因であると考えられた。そこで、より
正確なデータを得るために、総血球数及
び HSC 数の測定方法の検討を行った。
まず、山路(2013)の方法にしたがい、
血漿のメラニン化速度の違いによりアワ
ヨトウを 2 つの系統に分けた。BL 系統
(メラニン化が早い)と WH 系統(メラニ
ン化が遅い)を用いて、血球密度の経日
図5 異なる培地で培養した場合の接着
的変化を比較した。その結果、両区間で
血球数に対するHSC数の割合
供試虫には、白系統の6齢1日目のアワヨトウ幼虫を用いた。
有意な差がみられたため、以降は系統別 エッペンチューブ内で培地と体液を混和させたものを
スライドグラス上に滴下後、75分間培養し、培養後、
に実験を行った(図 2 )。次に血球の培養 画像を正立顕微鏡下で撮影した。
各値の縦線は標準偏差を示す。グラフの右肩にある同
時間の検討を行ったところ、培養時間の じアルファベットは有意な差がないことを示す(p<0.01
Tukey-kramer test)。
違いにおける有意差がみられなかったた
め、それ以降は培養時間を45分に設定した(図 3、4)。 さらに、HSC である
ことを正確に判断するために、体液に培地を加えて血球密度を低下させるこ
との検討を加えた。その結果、どの培地においても有意な差が認められな
― 102 ―
内部捕食寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
図6
の寄生が寄主アワヨトウ
アワヨトウ幼虫体液を血漿で希釈した場
合の総接着血球数に対するHSC数の割合
供試虫には、白系統の6齢4日目のアワヨトウ幼虫を用いた。
エッペンチューブ内で培地と体液を混和させたものをスラ
イドグラス上に滴下した後、6齢の未寄生アワヨトウ幼虫
の体液の血漿を加えて75分間培養した。
培養後、画像を正立顕微鏡下で撮影した。
各値の縦線は標準偏差を示す。グラフの右肩にある異なる
ア ル フ ァ ベ ッ ト は 有 意 な 差 が な い こ と を 示 す (p < 0. 01
Tukey-kramer test)。
の Hyper spread cell に及ぼす影響について
図7 血球凝集阻害剤を注入した場合のアワヨト
ウ幼虫の総接着血球数に対するHSC数の割合
供試虫には、白系統の6齢4日目のアワヨトウ幼虫を用いた。
血球凝集阻害剤(TES)をアワヨトウ幼虫に注入し、腹脚を傷
つけて体液10㎕を滴下した後に45分間培養した。培養後、画
像を正立顕微鏡下で撮影した。
かったため、培地を加えないことに
した(図 5)。HSC は異物表面に接着
し、メラニン沈着のための足場を形
成するので(Kato, 2011)、他の血球
との判別が容易である。そこで、メ
ラニン沈着を促進するために必要と 図8 アワヨトウ幼虫の体液に血球凝集阻
害剤を混和した場合の総接着血球数に
なるチロシンやドーパのような基質
対するHSC数の割合
供試虫には、白系統の6齢5日目 アワヨトウ幼虫を用いた。
を多くするため、別個体のアワヨト アワヨトウ幼虫から採取した体液10㎕を滴下し、10%の血球
凝集阻害剤(TES)を1㎕加えて45分間培養した。
ウ幼虫の血漿を添加した。その結 培養後、画像を正立顕微鏡下で撮影した。
各値の縦線は標準偏差を示す。グラフの右肩にある異なる
果、どの区画も有意な差はみられ アルファベットは有意な差があることを示す(p<0.01 singlefactor ANOVA)。
ず、HSC の識別は容易ではなかっ
た(図 6)。
血球が凝集すると、HSC を観察することが困難となるため、血球凝集阻
害剤(Tris EDTA Saline 以下 TES)を用いて HSC を観察した。まず各濃度
の血球凝集阻害剤をアワヨトウ幼虫体内に注入した結果、どの区画も血球が
全くみられなかった(図 7)。次に体外に滴下したアワヨトウ幼虫の体液上に
TES を添加したところ、血球凝集阻害剤を添加した区画の方が総接着血球
数に対する HSC 数の割合が低下したが、HSC の判別が容易になった(図 8)
。
そこで、HSC の判別が容易で、かつ総接着血球数に対する HSC 数の割合が
低下しない程度の TES の量を決定するため定量をおこない、総接着血球数
に対する HSC の割合を比較した。その結果、TES を PBS で10倍希釈した
ものを体液に直接添加する区画が最も総接着血球数に対する HSC 数の割合
が高くなった(図 9、10)。そこで、検討した実験方法をもとに、再度、Ck
の寄生がアワヨトウ幼虫の HSC 数に及ぼす影響を調べた。未寄生のアワヨ
トウ幼虫の HSC 数の割合が齢期進むにつれ増加するのに対して、被寄生の
アワヨトウ幼虫は 1 日目から HSC の割合が有意に抑制される結果となった
― 103 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
A
B
図9 アワヨトウ幼虫の体液に様々な濃度
の血球凝集阻害剤を混和した場合の総
接着血球数に対するHSC数の割合
供試虫には、白系統の6齢5日目のアワヨトウ幼虫を用いた。
血球凝集阻害剤(TES)を1㎕滴下後、アワヨトウ幼虫から
採取した体液1㎕を加えて、45分間培養した。
培養後、画像を正立顕微鏡下で撮影した。
T/PはTES/PBS(V/V)を示し、後ろに続く数値はTESを
PBSで希釈した倍率を示す。
各値の縦線は標準偏差を示す。グラフの右肩にある異なる
ア ル フ ァ ベ ッ ト は 有 意 な 差 が あ る こ と を 示 す (p < 0. 01
Tukey-kramer test)。
(図 11)。また、実験方法を検討す
る前と比べて、標準偏差が小さくな
り、データの信頼性も向上したこと
が考えられた。このことから、Ck
の PDV や V がアワヨトウ幼虫の生
体防御に関わる HSC 数の減少に直
接関わっているのではないかと推察
された。
謝
図10 TESを体液と混和させた場合のアワ
ヨトウ幼虫接着血球とHSC
A:系統分けを行っていない6齢4日目のアワヨトウ幼虫
の体液20㎕をスライドグラス上に滴下し、30分間培養した
後、上澄みをPBSで流水した後、画像をそれぞれ正立顕微
鏡下で撮影した。
B:PBSで10倍に希釈した5%のTES1㎕と未寄生のWH6
齢4日目のアワヨトウ幼虫の体液9㎕を混和させたものを
スライドグラス上に滴下し、45分間培養したのち、上澄み
を生理食塩水で流水した後、画像をそれぞれ正立顕微鏡下
で撮影した。図中の矢印はHSCを表す。
図11 カリヤサムライコマユバチをアワヨト
ウ幼虫に寄生させた場合の総接着血球
数に対するHSC数の割合
辞
供試虫には白系統6齢のアワヨトウ幼虫を用いた。
1㎕をス
本研究に際し、度重なる懇切丁寧 PBSで10倍に希釈した5%の血球凝集阻害剤(TES)
ライドグラス上に滴下後、アワヨトウ幼虫から採取した体
液9㎕を加え、45分間培養した。培養後、画像を正立顕微
なご指導・ご助言及び論文校閲の労 鏡下で撮影した。
各値の縦線は標準偏差を示す。同じ発育段階の値の右肩に
をとられた皇學館大学教育学部の中 ある各値の異なるアルファベットは有意な差があることを
示す(p<0.01 single-factor ANOVA)。
松豊准教授に深謝申し上げる。ま
た、実験材料を提供してくださった
農業生物資源研究所の立石剣氏、名古屋大学大学院生命農学研究科の田中利
治教授に深謝申し上げる。そして、実験を進めるにあたり、再三助言を下
さった皇學館大学教育学部生物学研究室の澤友美氏、山路拓也氏、藤本竜志
氏をはじめ研究室の皆様に感謝申し上げる。
― 104 ―
内部捕食寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
の寄生が寄主アワヨトウ
の Hyper spread cell に及ぼす影響について
引用文献
加藤良晃(2011)アワヨトウ幼虫で見いだされた新規血球に関する研究
─ その正確付けと局所的メラニン化への関与 ─ 名古屋大学大学院生命
農学研究科修士論文
Nakamatsu, Y., Y. Gyotoku., T. Tanaka (2001) The endoparasitoid
(Ck) regulates the growth and metabolic efficiency of
larvae by venom and Ck polydnavirus, Journal of
Insect Physiology, 47:573-584
Ribeiro,C., M.Brehelin (2006) Insect haemocytes: What type of cell is that?
Journal of Insect Physiology, 52:417-429
Teramoto,T.,T.Tanaka (2004) Mechanism of reduction in the number of
the circulating hemocytes in the
host parasitized
by
, Journal of Insect Physiology, 50:1103-1111
和合治久(2005)昆虫の生体防御反応 日本応用動物昆虫学会誌,39(1):
1-13
山路拓也(2013)シロヘリクチブトカメムシ
の飼育方
法の検討と唾液腺に関する研究,皇學館大学教育学部教育学科卒業論文
(指導教員
― 105 ―
中松
豊)
第7回オリンピック・アントワープ大会(1920年)
における日本陸上競技チームに関する研究
池 田 純 樹
1.問題意識及び研究の目的
日本人が初めてオリンピックに参加したのは、1912年に行われた第5回ス
トックホルム大会であった。参加者は、陸上競技の100m、200 m、400mに
出場した三島弥彦とマラソンに出場した金栗四三の 2 人である。結果も予選
敗退や途中棄権に終わった。しかし、第一次世界大戦のため中止になった第
6 回大会(ベルリン)後の第 7 回アントワープ以降の大会では、参加者は増
加し、メダルを獲得する選手も出てきた。
下記の表 1 は、第 5 回大会から第11回大会までの陸上競技における我が国
の出場競技者数、メダル獲得数、4 位から 6 位の入賞者数をまとめたもので
ある。
表 1、第 5 回∼第11回までのオリンピック大会陸上競技の推移
大会名
出場者数
出場者数
(男)
(女)
メダル数
入賞者数
第5回
ストックホルム大会(1912)
2
0
0
第7回
アントワープ大会(1920)
11
0
0
第8回
パリ大会(1924)
9
0
1
第9回
アムステルダム大会(1928)
15
1
1
5
第10回
ロサンゼルス大会(1932)
26
9
4
10
第11回
ベルリン大会(1936)
40
8
7
10
(「日本陸上競技連盟七十年史」等より作成)
なぜこの20年余でオリンピックの出場者数が増加し、メダルを獲得する選
手や入賞する選手も増えてきたのか。本研究では、1920年ベルギーのアント
ワープで開催された第 7 回大会に注目する。第 5 回ストックホルム大会は、
我が国にとって初出場であり、しかも出場選手は 2 名だけだったが、アント
ワープ大会には11名の陸上競技選手が参加し、しかも、遠征過程における各
国でのトレーニングの実施、大会後もヨーロッパ諸国での外国人競技者との
トレーニングや視察等の経験を経て帰国している。これら一連の遠征経験
が、以後の我が国の陸上競技発展の基礎となったのではないかと思われる。
日本陸上競技連盟が編集した「日本陸上競技史」
(1956 年)において、第 7
回アントワープ大会の意義が、陸上競技に出場した選手たちの成績は、結果
― 106 ―
第7回オリンピック・アントワープ大会(1920年)における日本陸上競技チームに関する研究
としては「大敗ではあったが、此の大会から受けた収穫は非常に多く、日本
の競技界が啓発されたところがすくなくなかった。組織的練習は此大会以後
に始まったと云っても差支えないほどで、国際選手のお土産である欧米諸国
選手のフォームや練習方法が伝えられ、より科学的になって、我が競技界は
面目を一新した」と記され、その一例として、
「やり投げの助走なども、従
来やりを引きずって一寸走っただけであったが、やりをかついで疾走する目
覚ましさは、著しいフォームの革新であった」と述べられている。このよう
に、アントワープ大会への参加は、その後の我が国の陸上競技界にとって大
きな影響を与えたと思われる。
以上のような問題意識の下、本研究の目的は、第一に、アントワープ大会
のための陸上競技チームの結成から帰国までのおよそ半年間を対象に、遠征
過程の詳細を明らかにすること、そして第二に、この遠征によって出場選手
たちは何を学び、何を我が国にもたらしたのかについて検討することであ
る。使用する資料は、アントワープ大会出場の陸上チームの主将であり、後
に陸上競技の指導者となった野口源三郎の遠征体験を記した二つの書籍、
「第七回オリンピック陸上競技の印象」
(1921 年)と「『オリンピア』への旅」
(1924 年)が中心となる。
2.日本陸上チームの遠征過程
アントワープ大会のためのチーム結成については、まず一次予選が全国10
カ所で行われ、そこで優秀な成績を残した競技者が、東京で行われた二次予
選に進むことになった。そして二次予選から選抜された11名(短距離 2 名、
中・長距離 3 名、マラソン 4 名、混成 2 名)が決定する。1920年 5 月14日、
日本陸上チームは横浜港を出発し、16日間の航海をへて、アメリカ・サンフ
ランシスコ港に到着する。そこではカリフォルニア大学の学生といっしょに
2 週間の練習を行い、その後シカゴ大学で、さらにニューヨーク市立大学で、
それぞれアメリカのコーチの下に、大学生といっしょに練習を行った。アメ
リカでの約一ヶ月間のトレーニングは日本チームの各競技者にとってコーチ
の指導や大学生のアドバイスは的確なもので、野口は「私たちに本当に好い
修養であった」と記している。ニューヨーク滞在中に、アメリカ陸上チーム
結成のためのオリンピック予選会が開催されており、日本の競技者たちはそ
れを見学している。
日本陸上チームは大西洋を横断し、7 月19日にイギリスのサウサンプトン
港に到着した。そしてロンドンのスタンフォード・スタジアムで約 2 週間の
練習を行った。ここでは、イギリス、カナダ、インドを代表する競技者たち
といっしょに練習をしている。そして、いよいよイギリスを離れ、8 月 7 日、
ベルギー・アントワープに到着する。8 月14日の開会式までの 1 週間、オリ
ンピック競技場で練習した。練習時間の制約はなく、午前中を練習時間と
し、アメリカ、イギリス、スウェーデンの選手たちといっしょに大会前の練
習・調整を行った。
― 107 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
オリンピック大会の陸上競技の会期は、8 月15日から23日までの 9 日間で
あった。日本陸上チームは大会後そのまま日本に帰らなかった。目的として
はヨーロッパの強豪国の大学やスポーツ施設、競技会を見学し、スポーツ事
情を視察するためである。まずスウェーデンを 9 月 2 日に訪れ、施設の見学
と競技会の見学を行う。9 月13日ドイツに渡り、大学や競技場の見学を行い、
ドイツ体育大学を訪問し関係者と協議している。9 月20日パリに移り観光を
楽しむ。その後、9 月27日、日本へ向けマルセイユ港出港した。地中海を通
り、エジプト・ポートセード港で降り、そこから紅海を通る船に乗り換え、
インド洋を通り、10月29日に香港に到着する。その後、11月 2 日に上海を経
由し、そして11月 6 日に神戸港に到着した。これで、約半年に及ぶ日本陸上
チームの遠征は終わったのである。
3.日本陸上チームの遠征の成果
上で述べた遠征により、日本陸上チームは多くのことを学んだ。練習方
法、練習環境、陸上競技の振興策の 3 つの点から特に大事な点を見ていく。
(1)練習方法について:この事項については各種目別にも多くのことを学
んでいる。種目を横断するかたちで2点について言及すると、第一は練
習する種目を兼ね、練習計画を明確に立てることである。試合で良い成
績を残している選手は、1 人 1 種目∼2 種目の練習をしている。日本に
はまだ立派な指導者がいない結果、自分で練習をしなければならかった
ので、2 つ以上の種目を練習することは難しかった。また、日本はまだ
自分がどの種目に向いているか理解していない選手が多いため、まず自
分がどの種目に向いているのかを考え見極める必要がある。その為に、
練習にはコーチをつけて練習計画を立て、それに従った練習の大事さが
自覚された。
第二は、専門種目の練習だけをするのではなく、他の補助的運動も取
り入れることである。まず、どの種目でも全身の基礎を作らなければな
らないので、その方法としてスウェーデン体操を取り入れること、もう
1 つは補助的運動または補助的競技を取り入れることである。例えば競
走の補助運動としては、特に両足を前後に開脚する運動の動き、棒高跳
の補助運動としては鉄棒の懸垂運動などを練習に取り入れることであ
る。補助的競技の点では、アントワープ大会の各種目で優勝した選手
は、100mなら200mを、400mなら800mと 2 種目以上兼ねている選手が
多いからである。
(2)練習環境について:アメリカではテニスコート・遊具・フットボール
場・ベースボール場が都市の公園に設置されていて、大学にも同様に
整った運動施設が設置されていること、またさらにほとんどの都市にプ
レーグランドがあり、全米で 200 弱のスタジアムがあるということに、
野口たちは驚かされた。イギリスでもアメリカほどではないが、整った
運動施設・設備があり、立派なクリケット場やゴルフ場もある。他の
― 108 ―
第7回オリンピック・アントワープ大会(1920年)における日本陸上競技チームに関する研究
ヨーロッパ諸国でも、スポーツ施設は立派であり、各都市に完備して
あった。野口は「設備が無くても競技はできるし、努力しだいだと言う
人もいるが、実際に設備が豊富な国には結果負けている。つまり運動設
備は大きなハンデだと言える。まず、大都市から公共の運動場を作るこ
とが大事だ」と述べている。日本における施設やコーチ制度等の練習環
境の貧弱さを、野口等は思い知らされている。
(3)陸上競技の振興策について:第一は陸上競技に関する国内の組織に関
してである。諸外国のモデルを参考に、野口は各地域で陸上競技の団体
を結成し、それを束ねる組織として大日本体育協会を構想している。
第二は、国のかかわり方に関してである。日本は外国と比べるとス
ポーツへの補助や援助がとても少なかった。例えばアメリカはアント
ワープ港の真横に船をつけることができ大会中も船を宿泊所にし、軍の
車を使って各競技場に選手たちは通った。イギリスは代表チームに2000
ポンドも派遣費として渡している。それに比べ日本は、野口によれば、
「アントワープへ渡航するにあたり、政府へ遠征費の国庫補助を願い出
た。しかし、まだスポーツが国民全体の指示を受けるに至っていないと
の理由から却下され、役員たちは再び維持金、寄付金集めをすることと
なる。ようやく集めた 2 万円をとりあえず選手の支度金と往復の旅費に
あて、不足額は出発後に送金することとした。こうして選手団は、遠征
費不足のまま見切り発車の状態での出発を余儀なくされていた」のであ
る。他にも「その日その日に為替のレートが変わるので、毎日銀行や両
替屋へ行ってはポンドをベルギー・フランに交換して、1 日分ずつ選手
に渡す日が続いた」ことや、ニューヨークで募金活動を行っていたこと、
また金銭不足から試合に棒高跳びのポールを持って行くことができず、
試合では他の国の選手のポールを借りて跳ぶというありさまだった。こ
のように日本は他の国に比べると金銭面でかなり苦労していたことがわ
かる。また、強豪国の補助や援助の例から今回大会で優勝選手がいる国
は大方、国から国費を補助してもらっていることがわかる。そのため、
日本も今後多くの選手をオリンピックに派遣し、競技力を向上させてい
こうとすれば、積極的に政府と連絡を取り、協力・援助してもらえるよ
うにすることが課題となるのである。
4.まとめ
日本陸上チームはその他様々なことを学んで帰国したが、大きくまとめる
と上の3点(練習方法、施設・設備、組織体制と国の補助)で述べたことが
主要な事項であり、これらの改善や取り組みがその後の陸上競技発展の基礎
となったと言えよう。
(卒論指導教員
― 109 ―
中村哲夫)
国語科における「感性」教育
川
本
由希子
はじめに
近年社会では経営、工学、医療など、様々な分野において「感性」が必要
な力とされている。大学にも「感性」と名のつく学部があったり、会社向け
に「感性」を育てる研修を行う団体があったりするなど、
「感性」への関心
は高まっていると言える。このことから、「感性」教育について研究するこ
とは非常に有用であると考えた。
1.
「感性」とはなにか
これまで「感性」は、感情や感受性、美術や芸術に関わることだと考えら
れがちで、受け身的で知性とは切り離されたものであるとされることが多
かった。しかし、桑子敏雄氏はそのような受動性が強調される「感性」の捉
え方を否定し、感じたことから新たに作りだす、能動的で創造的な能力であ
1)
また、遠藤友麗氏は「感性」と「知性」は相互に関わりあい、
るとしている。
2)
高めあう関係にあるという。
私はこれらに共感し、
「感性」と「知性」を一本の木と捉えた。木の葉が
「感性」で、根が「知性」である。木の葉が少なすぎては日の光という刺激
を受け取れる量も少ない。そのため栄養分を作ることができず、根は十分に
成長しない。しかし葉を増やそうとすれば、まず根を育てなければ木は倒れ
てしまう。根が育っていれば葉も多く茂り、多くの日光を受け取れるように
なる。葉からたくさんの栄養分を送られて根はまた大きく育ち、そのことが
葉をさらに増やすことにつながっていく。こうして立派に育った木はやがて
想像の花を咲かせ、創造の実をつける。このように、
「知性」を育てるため
に、学ぶためには「感性」は重要な役割を担っている。
2.学校現場の「感性」教育
では、「感性」は学校現場においてどのように教育されているのだろうか。
三重県内の小中学校の教諭4人に対して行った聞き取りや、池田紀子氏が
行ったアンケート3)を参考に考察したところ、学校現場で行われている「感
性」を育むための取り組みは大まかに体験的な活動と、美術館や音楽会に足
を運ぶなど、本物の芸術に触れる活動に分類することができた。この結果か
ら学校現場において「感性」とは知性から切り離されたもので、特に美術や
芸術に関わるものであるという考えが強いことがわかる。しかし、これらの
― 110 ―
国語科における「感性」教育
特別な活動には授業時数や費用の関係から頻繁に行うことができないという
問題点がある。このことから教科活動を離れた特別な活動は「感性」教育と
して十分な効果を発揮しているとは考えにくい。
片岡徳雄氏もまた、著書『心を育て感性を生かす』
(1998年、黎明書房)
の中で、音楽や美術に偏った「感性」教育を否定し、その他すべての教科に
おいて「感性」教育は行われるべきであるとしている。もちろん、このよう
な意見が聞き取りやアンケートの結果に全くなかったわけではないが、それ
は少数で、学校現場で広く行われているとは言い難い状況である。子どもの
「感性」をより良く伸ばしてやるためには、「感性」教育についてその在り方
を学校全体で見直していく必要がある。
3.新たに考える「感性」教育
本論文では今後実施されていくべき「感性」教育として教科学習における
指導、中でも国語科の「書く」単元における指導について考察していく。
片岡徳雄氏は「感性」を育むものとして『「自発的・能動的に」
「身体を動
かし」「相手からの動きを受け止め相互作用しながら」』4) 行われる「体験」
と、「体験」の最中やその後に行われる「表現」の二つを挙げている。ただ、
片岡氏は活動後に行われる「表現」について、その過程で技巧が加わったり
表現のきまりに縛られたりするなどして「感性」が深化する一方で、感じた
そのままからは離れてしまうことが難点であると言う。しかし、どのような
技巧を使うのか、どのような方法で表現するのかという選択自体が一人ひと
りの「感性」そのものではないか。感じたそのままのものをより美しく、唯
一無二のものになるよう磨いていくことは、
「体験」した時そのままの感じ
方からは離れてしまっても一人ひとりの「感性」をより濃く表していく活動
だと言える。「表現」の問題は、語彙や表現の方法といった知識的な要素が
充分に身につけられていないために自分の思うように表現できず、「表現」
がしぼんでしまう可能性があるという点にあるのではないか。
国語科における「表現」の最たるものは作文だろう。廣井嗣雄氏は「体験」
の振り返りとして安易に作文で書かせることを批判し、
「書き方や書く視点
を耕す指導が十分でない作文指導では、作文力の向上は望めない。
」5)と言
う。どんなに素晴らしい感じ方をしていてもそれを表す言葉や方法を知らな
ければなにも生みだせない。教師は子どもたちが自分の感じたことを自分の
思うように表現できるように、
「感性」と「知性」を結びつける指導をして
いく必要がある。
では、実際の学校現場では「書く」指導でどのようなことを行っているの
だろうか。三重県で三省堂と並んで最も採用されている光村の教科書をもと
に分析を行った。その結果、感想文を書くことをはじめ新聞や詩歌の制作な
― 111 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
ど様々な教材をもとに文章の書き方や表現の工夫が教えられていることがわ
かった。一方で、多くの教材で例文と詳しい書き方の説明が載せられてお
り、子ども達は教科書に従って書けばそれなりの文章が書けるという状況が
あることもわかった。廣井氏はこうした問題を解消するためには、「読む」
ことの教材でその文章の良さや表現の美しさ、分かりやすさなどが子どもに
伝わるような授業展開を行うべきだとしている。
「書く」ことの授業のため
に「読む」ことの教材を活用しようというのだ。たしかに、教科書に載って
いるような作品は構成や表現がわかりやすく、手本にするにはふさわしいと
言える。書き方ばかりを学ぶのではなく、様々な表現の良さに触れさせ、そこ
から自分だけの文章を書くヒントを見つけさせるということも必要なのだろう。
以上のことをふまえ、自分らしい文章、「感性」の表れた文章を書くため
に必要なことは次の3点であると私は考えた。
①文章の書き方、きまり、表現の工夫について学ぶ
②良い文章、美しい表現とはどんなものなのか自分の目で確かめる
③教科に関わらず日常的に書き続ける
これをもとに「書く」ことの授業提案を行いたい。
4.お笑いを教材とする授業提案
教科書をもとに様々な文章の書き方や、表現の工夫について学んだあとに
行うべきことは、それらの知識と「感性」を活かして、創作するということ
だろう。その位置づけに教科書では物語を書くという教材が用意されている
が、私はお笑いを教材とすることを提案したい。
お笑いといえば、漫才とコントが主たるものではないか。漫才とはボケと
ツッコミにわかれた二人がおもしろい掛け合いをするもののことで、コント
とは滑稽な寸劇のことである。少し前にはお笑いブームがあり、エンタの神
様やM−1グランプリなどたくさんのお笑い番組が放送され、観る人を楽し
ませていた。お笑いブームが去った今でもお笑い芸人がテレビに出ない日は
なく、ネタ以外にもトークやものまねなどで番組を盛り上げている。このよ
うに、日常的に目にするお笑いを教材として扱うことは子ども達にとって非
常に興味深く、楽しいことであると言える。
お笑いを教材として扱うことの良さはそれだけではない。お笑いのネタは
よくある日常の一コマを表したものが多い。「最近こんなことがあってな…」
という一言から始まる漫才を見たことはないか。このようなスタイルのネタ
は少なくないが、まさにこれは日常会話の様子を表現しているといえる。一
方でコントの舞台となるものも、学校や家をはじめ日常生活と関わりがある
ものが多いように感じる。日常のよくある風景において、目の付け所が少し
変わるだけで面白い漫才、コントが誕生する。その目の付け所の違いがそれ
― 112 ―
国語科における「感性」教育
ぞれの「感性」なのだ。
実際の授業では、事前に日常生活の中から「面白いこと探し」をさせてお
く。その時に見つけたことを作文で書かせるが、これまでに学習してきた書
き方のルールや表現の工夫などを確認してから取り組ませたい。最初から書
くための武器が揃っている状態を作ってやることで書きやすくなると考える。
その後、書いた作文を利用して漫才やコントの台本を作るという活動を行
いたい。比喩や誇張した表現、言葉の使い方などお笑いならではの工夫を実
際の漫才やコントを教材にして学ばせることで、書くことへの抵抗を減らし
意欲的に取り組んでくれることを期待する。
また、最後に自分たちの作った漫才やコントを発表する場を設けることで
話すときの工夫についても考えさせ、その後の学習につなげていきたい。
おわりに
「感性」とはなにか、ということから本研究を始めたが、研究を進めれば
進めるほどその多様な解釈に気づかされることとなった。
「感性」とはなに
か、「感性」を育む方法とはどんなものがあるのか、ということについては
これからも考え続けていきたいと思う。
もう一つ、これからの課題として持っておきたいことは、自分自身の「感
性」を磨き続けるということだ。様々な物事に関連している「感性」だから
こそ磨くための方法も様々で、一人ひとりにあった磨き方があるだろう。ま
ずは教師が自分の「感性」を磨くことで、子ども達に差し出せる支援の形や
数も増えるのではないか。私も積極的に見たり聞いたりやってみたりしなが
ら「感性」を磨き、子ども達に適切な支援ができる教師を目指したい。
引用文献・参考文献
1)「新しい感性教育論」、
〈http://home.hiroshima-u.ac.jp/higuchis/chugoku%20koen%202007.pdf〉
2)「日本感性教育学会
山形支部みちのく」、
〈http://www3.omn.ne.jp/~michiko3/kouwa-endou01.html〉
3)池田紀子、2008年、「しなやかな思考を育てる感性教育の一考察 ― 感性
教育に関する中高校アンケート結果分析を鑑みて ― 」、日本私学教究所
紀要第 43 号、37 頁、財団法人日本私学教育研究所
4)片岡徳雄、1998年、『心を育て感性を生かす』、黎明書房、136頁
5)廣井嗣雄、2006年、
「書くことの抵抗感をなくし、書くことに面白さを
味わわせる工夫」
、『作文力を高める新提言』
、須田実
他、明治図書出
版株式会社
(卒論指導教員
― 113 ―
錦かよ子)
「自分でする事を手伝う」保育者の姿
― モンテッソーリの幼児教育から ―
大 坪 由 佳
1.はじめに
近年、子どもたちの遊びが著しく変化している。外遊びが減り活動性が低
い内遊びが増えその結果、子どもの体力は低下し言語発達や対人関係への重
大な影響が懸念されている。こうした最近の子どもたちの状況を考えると、
乳幼児期から自発性を高める必要があるのではなかろうか。そこで筆者はイ
タリアの教育者マリア・モンテッソーリ(Maria Montessori 1870-1952)が
考案した「モンテッソーリ・メソッド」に着目し、現代の子どもたちの問題
を解決するための手立てを見出す。さらに現代の子どもの自発性を高める保
育構想を提案することをねらいとする。
2.マリア・モンテッソーリについて
モンテッソーリは1870年 8 月31日にイタリア、アンコナ地方のキエラヴァ
レというという町に生まれた。父親は古風な雰囲気を持っており、母親は当
時としては珍しく高い教養を身に付けていた人であった。モンテッソーリは
そんな母親から厳しくしつけられていた。初めは技師を目指していたもの
の、進路を変え医師を目指すことにした。1890年にローマ大学に入学したモ
ンテッソーリは 6 年後の1896年 7 月、医学士号を授与され、大学付属病院で
働く傍ら個人診療所を開いた。ある時、パン屑で遊んでいた発達に困難さを
抱える子どもたちと出会い、モンテッソーリはそのうちの何人かを病院に連
れてきて観察し、彼らの注意をひきつけるための活動を行った。この活動を
きっかけにモンテッソーリは教育の世界へと活動を広げていくことになるの
である(クレーマー1981)。
モンテッソーリは独自の方法を試しているうちにイタール(Jean Marc
Gaspard Itard 1774-1838)やセガン(1812-1880)をも超える、発達に困難
さを抱える子どもたちに読み書きを教える方法を開発するに至った。さらに
そこから考えを発展させ、
「抑制され、進歩を遅らせる」かわりに「発達を
刺激されたら普通児はどうなるのだろうか」という疑問を抱くようになった
(クレーマー1981)。様々な経験、研究を経てモンテッソーリは1907年に「子
どもの家」という施設を開く。ここは共働きの親から子どもを預かり、モン
テッソーリが開発した教具を使わせる実験の場であり、観察するための施設
であった。ここで考えだされた教育方法には「モンテッソーリ・メソッド」
― 114 ―
「自分でする事を手伝う」保育者の姿
という名前が付けられ、イタリアのみならず、他国でも使われるようになっ
ていった。モンテッソーリは教具の研究、改良を続けながら「モンテッソー
リ・メソッド」を広めるための講演旅行を世界各国で行っていた。1952年 5
月 6 日、モンテッソーリは81年の生涯をとじた(クレーマー1981)
。
3.モンテッソーリ・メソッドを構築するもの
(1)敏感期
「モンテッソーリ・メソッド」を理解するために必要になるキーワードが
ある。それは「敏感期」と呼ばれる言葉である。「敏感期(sensitive period)」
という言葉はオランダの植物学者・遺伝学者であるユーゴー・ド・フリース
(Hugo de Vries 1848-1935)が使い始めた言葉である。敏感期とは、子ども
が先の将来を生きていくために獲得しなければならない能力を得るための感
受性が特別に敏感になっている限られた期間のことをいう。子どもは自然か
らさまざまな能力を取得するため、自分の力で成し遂げなければならない
「宿題」をもらう。その「宿題」は自然が幼児期の生命そのものに課してい
ることなので、子どもは自分の全存在をかけて自分でやり遂げなければなら
ない。例えば 0∼3 歳の敏感期は①話し言葉の敏感期②秩序の敏感期③小さ
いものへの敏感期④運動の敏感期⑤感覚の敏感期の 5 つがある。3∼6 歳か
らはそれまでに溜めこんだ感覚的印象を整理し、分類し、秩序化し、頭の引
き出しの中に整然と片付けていくために感覚の敏感期が働く(松浦2005)
。
その時期だけに自然から与えられている幼児期 1 回限りの生命力を大切に
し、子どもが自然の力に従ってより良く生きる事ができるようにしてやると
いうことである。大人は子どもが自然から宿題を直接もらっているというこ
とを見極め、それに立ち向かっていくのを助ける義務がある。
(2)教具
モンテッソーリ・メソッドは「日常生活の練習」、
「感覚教育」
、
「文化教育」、
「言語教育」、「算数教育」の 5 分野にわかれており、教具はそれぞれの分野
に特化されたものを使っている(藤原ら2007)。
モンテッソーリは教具について「子どもが生活している環境の中で出会い
接触するものはすべて、発達を助けるものなる」とかなり広い意味でとらえ
ている(藤原ら2007)
。とはいえ、教具としてクリアしておかなければなら
ない条件が 7 つあるので、全てのものが教具として使えるとは言い切れな
い。また、たとえ 7 つの条件をクリアしていても、教具の方法を提示する教
師の力量が備わっていないと教具の力は存分に発揮されない。
教具を使うことで、子どもたちの集中力、忍耐力、自信、落ち着き、思考
力などを伸ばすことができると考えられる。しかし、子どもたちは個別に教
材で活動をしているため、集団での活動に苦手意識を持ってしまうことが懸
― 115 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
念される。
(3)教師
モンテッソーリは「教師」を「新しい教師」と呼び、その存在を独自の考
え方で捉えていた。モンテッソーリは「教師は教えるというよりも子どもを
本来持っている自然のエネルギーを導き出す」ととらえ、「教師」という言
葉ではなく、「新しい教師」という言葉で表現していた(モンテッソーリ
1974)。
「新しい教師」は子どもを見守り、子どものありのままを受け止め、どう
するべきか困っていたり、落ち着きがなかったりする子どもの心を救い、惹
きつけ、導く役目を担う。
そして、子どもとのより良い関係を築くための指針として「教師の12個条」
というものを掲げている。この 12 個条はモンテッソーリ教育に関わってい
ない保育士や教師でも大切にしなければならない内容で作られている(モン
テッソーリ1974)。
5.子どもが「自分ですることを手伝う」保育の構想
(1)保育者として
モンテッソーリは子どもと教師がより良い関係を築く事が出来るように
「教師の12個条」を作った。保育者は子どもの貴重な時間を子どもと一緒に
過ごさせてもらうという謙虚な気持ちをもち、子どもから多くの事を学ぶ姿
勢を常に持つ必要がある。筆者はモンテッソーリの「教師の12個条」と自分
の理想とする保育士像を重ね合わせ、卒業論文において新たに「保育者の11
カ条」を作った。筆者は保育者に無理がないように「最低限これだけのこと
をしてあげたい」という思いで考案した。「こうしてあげなければ」という
思いに縛られるのではなく、子どもと保育者が共に生き生きとした毎日を送
ることが出来るようになってほしいと筆者は考えている。
(2)保護者として
さらに、モンテッソーリの考えを参考にしながら筆者は「保護者の 8 カ条」
を提案した。家庭状況は様々であるために、全てを実践できないこともある
であろう。だが、少しでも時間を見つけて、子どもと向き合う時間だけは確
保してほしいと筆者は願っている。
「○○が出来ないなんて、うちの子はダメなのかしら」と子どもを否定的
にとらえるのではなく「うちの子はこんな事が出来るようになったのね」と
肯定的に受け止める必要がある。肯定的な目で見ることは出産から子どもの
今までを見てきた保護者にしかできないことなのである。
― 116 ―
「自分でする事を手伝う」保育者の姿
(3)環境構成
環境は子どもがのびのびと作業が出来るように構成されなければならな
い。モンテッソーリ・メソッドでもそれは重要視されている。環境は人的環
境と物的環境に分かれ、その 2 つのバランスが取れていなければいけないの
である。園の大きさ、立地条件、子どもの人数などの違いで変わってくるた
め、臨機応変に対応したい。だが、子どもの様子を観察し、より良い空間、
環境を子ども達に提供することができるように工夫を重ねていく必要がある
と筆者は考える。
6.おわりに
モンテッソーリが子どもを観察していくなかで作り出した「モンテッソー
リ・メソッド」は子どもが持っている自主性を高めながら心も体も鍛える事
が出来る教育だということが分かった。それにより筆者は現代の子どもが抱
える問題を解決するための手立てとして「モンテッソーリ・メソッド」は十
分使えるものと判断する。だが、モンテッソーリ・メソッドを教える資格を
保有していない教師が教えることで子どもを間違った方向へ導いてしまうか
もしれないというリスクが伴う。
筆者は「モンテッソーリ・メソッド」が全てではないと考えている。なぜ
なら時代も変わり、生まれてくる子どもも変わり、子どもを取り巻く環境も
変わってきているからである。いつまでもモンテッソーリ・メソッドがどの
時代の子どもにも合うとは思えない。子どもや時代、環境に合わせて新しい
教具を追加させたり、減らしたりする必要もあるのではないかと筆者は考え
ている。世の中にある他の教具を融合させ、新しい幼児教育を生み出すこと
は出来ないかと考えることを今後の課題としたい。
[参考・引用文献]
1)相良敦子著『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!―モンテッソーリの
幼児教育―』講談社 1985 年
2)藤原元一、桂子、江里子著『モンテッソーリ教育
やさしい解説』学苑
社 2007 年
3)松浦公紀著『0∼3 歳のちから
モンテッソーリ教育が見守る乳幼児の
育ちと大人の心得』学習研究社 2005 年
4)モンテッソーリ著
阿部真美子訳『世界教育学選集 77
モンテッソー
リ・メソッド』明治図書、1974 年
5)リタ・クレーマー著
テッソーリ
三谷嘉明・佐藤敬子・村瀬亜里訳『マリア・モン
子どもへの愛と生涯』新曜社 1981 年
(卒論指導教員
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野々垣明子)
教育において「命」を学ぶ意義
坂
口
皓太郎
現在、子どもたちが、
「命について理解していない」
、「死について理解し
ていない」と論じられている。それは、マスコミやメディアによって少年犯
罪や自殺、いじめなどの問題が大きく報道されるたび問題となる。そして、
子どもたちは、「命を粗末に考えている」、「死んだらどうなるか分かってい
ない」などと解釈される。そのように解釈される背景としては二つあり、一
つ目は、核家族化が進展し人が病院で最期を迎えることが増えたことであ
る。家族や身近な人の死に出会う機会のない、あるいは死についての対話の
機会がない現代の子どもたちは、「死について、出会う体験がないから、人
間の死について理解できていないのだ」とする見解である。二つ目は、テレ
ビゲームやビデオの影響である。殺人などの過激な内容やスイッチ一つで何
度でもやり直せるゲームを日々楽しむことによって、「死んでも生き返ると
考えている」という見解だ。そして、これらの理由から子どもたちに命の大
切さについて教えなければならないと「命」の教育の必要性が強く叫ばれる。
しかし、筆者は、本当に子どもたちが一概に命の大切さについて分かってい
ないのか疑問である。そして、分かっていないために上記のような子どもた
ちによる問題が起こっているのかも疑問である。これらの問題を起こす子ど
もたちはごく一部ではないだろうか。
メディアが過剰に取り上げる子どもたちの命に対する意識であるが、今の
大部分の子どもたちが命を軽視しているとは言い難いと考える。そして、子
どもたちの問題は、他者への攻撃よりも自分への攻撃に向かっているのでは
ないかとも考える。それは、薬物乱用、リストカット、摂食障害、引きこも
り、不登校などの問題に表れているのではないだろうか。こうした問題もあ
る中で今の大部分の子どもたちは、生きる充実感が薄く、今を生きる生きづ
らさを持っていると考える。実際、筆者が行かせていただいた教育実習先で
もそういった子どもたちの心の叫びを聞くことができた。小学六年生の学級
であったが、
「学校がつまらない」
「学校の勉強をしていても意味がない」
「家
に帰っても塾に行くから楽しいことはない」「毎日疲れた」など、小学生と
は思えない苦痛を抱えていた。そして、それは子どもたちの荒れにつながっ
ていた。こういった、生きる充実感が薄い子どもたちは現在の学校に多くい
るのではないだろうか。
では、今の子どもたちに必要な教育とは何であろうか。筆者は、命(「生」
― 118 ―
教育において「命」を学ぶ意義
と「死」)について子どもたちと考えていくことではないかと考える。私た
ちが、生きる意味とは何であろうか、何のために生きているのだろうか、死
をどのように受け止めたらよいのであろうか。それは、算数や理科、社会な
どの各教科の学習のように答えがない。答えのない意味を考え合う、問い続
ける、それは子どもたちにとって生きる充実感や生きる意味を実感する意味
のある学びになるだろう。筆者は、この学びが今の子どもたちが求めている
教育だと考えている。
「命」の教育は、現在日本で多様に広がりつつある。そして、その目的や
方法、考え方も様々である。筆者は、これらについて研究し、今の子どもた
ちにあった命の教育を考えていきたい。
日本では、アルフォンス・デーケン(Alfons Deeken)が、死への準備教
育(Death Education)として、初めて命の教育の必要性を説いた。死への
準備教育(Death Education)の目的は、自分に与えられた死までの時間を
どう生きるかと考えるための教育である。私たちは、生きている時間が限ら
れているからこそ、命が尊いのだと気づくことができる。このように、死を
考えることは、決して悲観的なことではなく、人間として当然の学問である。
この「死への準備教育」は同時に「生への準備教育」になる。死を見つめる
ということは、私たちが、どう生きなければならないのか考えることになる
からだ。この、死を見つめるという教育は、学校教育では、あまり取り扱わ
れていない。しかし、自分自身の命の尊さ、生きる意味を考える上で重要な
教育であると言える。
次に、それとは違う形で命の教育を理論展開しているのが近藤氏である。
違う形ではあるが、デーケン氏と共通する部分もあるためここで考察してい
きたい。近藤氏は、
「命の誕生」
「性教育」「死」などの教育は狭義の命の教
育であると述べている。これらの命の教育も大きな意味をなすと述べなが
ら、様々な学校の教育活動でいのちの教育を取り入れていくことの重要性を
説いている。また、取り入れていく中で命に関するものを直接取り上げなく
ても、共有体験があればいのちの教育は成立するとしている。デーケン氏の
死への準備教育も、この共有体験を基にして学級で死について考えあい、共
有することで学校教育に取り入れていけるはずだ。そして、子どもたちが自
分自身の心に響いたものを隣にいる誰か、学級の誰か、学級全員と共有する
ことこそが近藤氏が考えるいのちの教育である。
現在理論としては様々に考えられている命の教育であるが、次に教育現場
における実践を見ていきたい。ここでは、金森俊朗氏が、小学校で展開され
ている命の教育を取り上げることとする。金森氏は、命の教育の目的を生き
ることへの希望を生み出すためであるとしている。金森氏は、様々な授業実
践をしておられるが、ここでは、三年生理科「ちょうの一生」について考察
― 119 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
していきたい。
「ちょうの一生」は、その授業の枠内を超えて、様々な時間(放課後、朝
休み、昼休みなど)に行われる。子どもたちが、ちょうに拘らず、どんどん
生き物を集め持ってくる。大量に集めたその生き物たちを飼育し、学級で小
さな虫たちとの共存生活を進めていく。その中で、誕生の神秘、成長するこ
との困難さ、生き物の死について、生で感じることで、仲間と実感し、学ん
でいく。金森氏は、この学びを、人間とは違う、しかし同じ生き物として共
通の「いのち」を持ったものと触れ合う「学びの世界」だ、と述べている。
この授業は、生物の「生」と「死」に直接触れるものである。その学びの
中で、子どもたちは、ちょうが、幼虫からさなぎになり、成虫となっていく
過程に釘付けとなっていった。幼虫からさなぎになる中でも、命に関する数
多くの困難がある。寄生虫によって殺されたり、踏みつぶされたり、成虫に
なれる確率は私たちの想像よりも低い。小さい生物ではあるが、「生」と
「死」をセットで学んでいる。その様子に子どもたちはその、自分の命と重
ねたり、死について考えたりと、それぞれ、友と共有しながら、命の尊さ、
ギリギリのところでつながっている命、自然の厳しさを学んでいった。
筆者は、教育において命を扱う意義を、「命の意味を問い、生きる意味を
考えること」と結論付けたい。現代の子どもたちは、生きる意味を求め、知
りたがっている。それは、筆者の経験や不登校の急速な増加や子どもが自分
に向ける攻撃性などから見て取れた。そして、自尊感情が低く、自分に自信
を持てていない子どもたちも多いことも分かった。人間は、人生で幸福な出
来事より、挫折などの不安や苦しい出来事の方が多く経験する。それは、子
どもたちも同様である。その挫折や苦悩を乗り越えるためにも、人生を充実
させて生きるためにも、現代の子どもたちには「生き方を問い、生きる意味
を考える」命の教育が必要である。子どもたちが、命の意味を様々な視点か
ら問いかけ、その命の尊さについて感動する、生きることの意味を考える。
この教育は、答えがただ一つではない。子どもたち一人一人が、その答えを
自分なりに考えていくことに意味がある。そして、その考えを学校の仲間と
共有する。この体験が、より深い命への意味の問いかけとなっていくだろう。
命を考える視点は、「生」と「死」の二つである。
「生」の側面からは、命
の誕生、つながりなどから見て取れる命の輝きや奇跡を実感させること。
「死」の側面では、様々な人々(偉人など)の死までの生き方、身近な人の
死などを考えていくことが命の教育の内容である。筆者は、この卒業論文に
取り掛かるまでは、どちらかというと「生」の方面を重視した命の教育を考
えていた。
「生」を考えることは、命の輝きや奇跡、感動など、直接的に生
きる喜びになると考えていたからだ。しかし、研究する中で「死」の側面の
重要性についても考えさせられた。どちらかと言うと死にはネガティブなイ
― 120 ―
教育において「命」を学ぶ意義
メージを持っていたが、研究していく中で私たちの命は、死をもってこそ完
成されることに改めて気付かされた。そして、生きるということは、「死」
を完成させるための準備期間であり、より良く死ぬために今を生きていると
も考えることができる。死があるからこそ、命の尊さを実感できるのであ
る。死をこの世に生きるもの誰も経験したことはない。そのため、それを教
えることができる者はいない。しかし、様々な人の生き方、身近な人との死
別体験などから、それを考えていくことはできる。「死」について考えるこ
とは、「生」の重み、「死」の重みを直接私たちの心に訴えかける。そして、
その輝かしくも苦しくもある「死」が、人間の命の重さ、存在の重さ、人生
の重さの実感を与えてくれる。もちろん、
「生」の視点から、命の奇跡、喜び、
感動、輝きなどを実感することも重要である。しかし、命のゴールともいえ
る「死」を考えていくことは、生きることにもろに訴えかけるのではないか
と考える。筆者は、この答えのない命という学びは、今の子どもたちに生き
る喜びや希望を与え、命の尊さを実感させる最も重要な教育であると考える。
子どもたちと、命について「生」と「死」の視点から考える。それは、生
きる意味、命の意味の問いかけである。この教育は、教師も含めすべての人
間のための教育である。死までの時間をどのように生きるのか、私たちは自
分自身で考え、命を輝かせていかなければならない。筆者は、子どもたちが
命を輝かせ、生きる希望を持って幸せにそして、力強く生きていけるように
するために、また、私自身がそれをできるようにするためにも教師として、
一人間として命の教育を研究し続けたい。
(卒業論文指導員
― 121 ―
檜垣博子)
大日本帝国憲法の再検討
松 田 直 哉
はじめに
私は、歴史教育及び公民教育を通じ、大日本帝国憲法は非民主主義的であ
り、日本国憲法は民主主義的である、つまり「旧憲法=悪、現憲法=善」と
いうイメージを植え付けられたのではないかと感じた。これは、大日本帝国
憲法の本質を捉えていない状態で価値判断をしており、一面的な理解といえ
る。これらを相対化し、大日本帝国憲法を再検討し、その“真の姿”を明ら
かにすることを本論文の目的とする。
1.Not 非民主主義
大日本帝国憲法を誤解する原因として「天皇」が挙げられる。明治国家は、
“王政復古”を理念とする明治維新が達成された結果、樹立された国家で
あったため、政府は天皇を中心に据える国家を目指し、国造りを推進した。
その中で、伊藤博文らは、欧州にない日本独特で伝統的な存在である天皇を
どのように立憲君主制の中に位置付けるかを特に重視且つ苦心した。
大日本帝国憲法では、天皇については第 1 章に明記されている(1)。現代
では、これらの条文から天皇主権であったと判断してしまう。しかし、伊藤
は天皇を能動的に政を指揮する君主と規定しようとはせず、総理大臣が能動
的に政を指揮する内閣を中心とした政治体制を制度化しようとしていた。
そこで、伊藤が天皇に期待していた役割は、
“國家ノ機軸”である。彼は
1888(明治 21)年 6 月18日午前、枢密院において、
憲法ヲ制定セラルヽニ方テハ先ツ我國ノ機軸ヲ…確定セサルヘカラス
機軸ナクシテ政治ヲ人民ノ妄議ニ任ス時ハ政其統紀ヲ失ヒ國家亦隨テ廢
亡ス…抑歐洲ニ於テハ…宗教…カ機軸ヲ為シ深ク人心ニ浸潤シテ人心此
ニ歸一セリ然ルニ我國ニ在テハ宗教…其力微弱ニシテ一モ國家ノ機軸タ
ルヘキモノナシ…我國ニ在テ機軸トスヘキハ獨リ皇室アルノミ(2)。
と述べ、日本においては、欧州のように宗教ではなく、皇室つまり天皇を
“國家の機軸”に据えるべきとしている。そして、第 4 条を「天皇ハ國ノ元
首ニシテ統治権ヲ總攬シテ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ」とし、天皇は憲
法により拘束を受ける立憲君主であるとし、超憲法的存在としなかった。
大日本帝国憲法の基本原則は、万世一系の天皇を統治権の総攬者とする民
主主義である。それに則り、政府は統治方法として議会制を採用し、法律も
予算も議会の議決を必要とし、法律の定める所により、自由や権利を保障し
た。また、天皇は憲法の規定に基づき統治権を行使するものとされ、行使の
― 122 ―
大日本帝国憲法の再検討
際には内閣、帝国議会、裁判所が関与する体制であった。完全な三権分立と
はいえなかったが、国家機関が天皇の統治権行使を補佐する形で実質的に三
権を担い、それらは全て天皇に直属していたため、相互に独立していた。
2.欽定憲法
私は、歴史教育及び公民教育においてなされている「欽定憲法」と「民定
憲法」の“区別”もまた、大日本帝国憲法を誤解する原因と考えている。
大日本帝国憲法は、確かに欽定憲法であるが、この時の“欽定”は、
「君
主による選定」ではなかった。憲法発布当時、民権派の人々は大日本帝国憲
法を概ね高く評価した。天皇及び政府関係者のみで作成されたのであれば、
国民の多数が反発するのではと思うが、そうではなかった。なぜなら、大日
本帝国憲法が官僚や庶民を問わず日本国民の叡智を結集させ、完成した憲法
であったからだと考えられる。
伊藤らが憲法起草を開始したとされる明治10年代は、憲法を巡り、様々な
議論が交わされるなど、激動の期間であった。大隈重信と岩倉具視の意見書
を見ると、両者とも欽定憲法の体裁を求めていた。また、私擬憲法も国民の
権利及び自由の保障を求めながら、欽定憲法の方式を取っていた。ここで、
自由民権運動の“民権”を欧米流の“民権”の概念で捉えると、誤解が生じ
る。自由民権運動は、藩閥政治に反対し、“民権”の伸長を主張するもので
あったが、尊皇思想を根底に有していた点では、民権派も政府と同じであっ
た。つまり、“君権”に敵対する“民権”ではなく、
“官権”に対する“民
権”の伸長運動であり、天皇の権威あってこその運動で、天皇を否定するよ
うな発想はなかったのである(3)。
以上のことから、天皇による憲法制定は、官民問わず日本国民の共通理解
であり、当時においては、自然のことであったと考えられる。
紆余曲折を経て、制定された大日本帝国憲法であるが、日本国憲法同様、
1 度も改正されなかった。これは、天皇から賜った憲法を保守しなければな
らないという思いが人々にあったからだと私は考えている。
大日本帝国憲法制定史』で、憲法欽定の史的意義が次のように述べられ
ている。
憲法は、国民の意思と能力とによって、またその実情の程度に応じて、
君民一致の大道を進むことができるやうに欽定されたものであった。こ
の賢明にして創造的なる「欽定」は、数千年の高貴なる君民一致の伝統
を恢弘し給へる明治天皇の御存在、そして、そのなみなみならぬ御心労
なくしては到底望み得ないことであった。その光輝ある実績は、まさに
東洋萬邦の民をして則る所あるを知らしむるものであり、日本の国史上
赫々たる文明の記録として銘記される(4)。
もとづ
欽定憲法は、諸事神武創業の始に原いた日本の歴史と伝統を反映している
― 123 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
といえ、決して悪ではないと私は考えている。
3.日本独自
1882(明治15)年 3 月14日、伊藤らは憲法調査のため欧州に向った。そこ
でローレンツ・フォン・シュタインと出会い、立憲政体に関する認識を一層
深化させた。シュタインは、歴史法学の立場から伊藤らへ憲法編纂にあたっ
ての助言を与えた。彼は、憲法は自国の歴史や文化に根差したものでなけれ
ばならないとし、まず日本の歴史を研究するようにと説いた。ここから伊藤
は、日本の歴史や伝統に基づく憲法を作ること、そして民権派や大隈、福澤
らのように、欧米の制度を模倣するだけでは意味がないことを認識した。完
成した憲法は、諸事神武創業の始以来の日本の歴史と伝統を継承し、制定さ
れ、欧米の模倣ではなかった点が当時国内外から高い評価を受けた。
大日本帝国憲法は、起草者による自国の歴史・伝統への回帰ないしは再認
識といった現象の上に成立したものであったが、この視点が現代では見失わ
れていると私は感じる。私は、8 年近くもの間慎重に議論を重ね、完成され
た大日本帝国憲法こそ、日本の歴史の所産であり、真の憲法といえるのでは
ないかと考えている。そして、大隈や岩倉など政府関係者のみでなく、民権
派の人々などが表した私擬憲法も大日本帝国憲法に影響を及ぼしていること
から、大日本帝国憲法は官僚や庶民を問わず日本国民の叡智を結集させ、完
成した日本独自の憲法であると私は位置づけた。
4.Constitution
今日、「憲法」と聞いて思い浮かべるのは、日本国憲法など国家の基本法
であろうが、これは「憲法」本来の意味が失われてしまっているのである。
憲法とは、元々 constitution の訳語であり、国柄を表している。つまり、憲
法は“国のかたち”を表現するものなのである。
現在、平和主義は日本国憲法が、軍国主義は大日本帝国憲法がもたらした
と理解されることが少なくないが、そうではない。大石義雄氏は「本来、憲
法は国家秩序をもたらし平和を維持することを目的とするものだから、憲法
に平和憲法だの戦争憲法だのという区別…はない」と述べている(5)。また
坂本多加雄氏は、日本国憲法のお蔭で平和だというが、それは憲法でなく、
米軍の影響を受け、日本が安定していたと指摘し、次のように述べている。
帝国憲法…は若干親切に…、日本国憲法…は若干厳しくみてやれ…。
…帝国憲法が戦後の…平和な時代のなかに置かれていたら、…議会優位
の…制度になっていたと思います。…逆に、日本国憲法で戦前…の時期
を迎えていたら、…帝国憲法以上にうまく対応できたか分からない。し
たがって憲法…は、そのように置かれている政治状況との関連で考えて
いかなければならないのではないかという気がいたします(6)。
― 124 ―
大日本帝国憲法の再検討
伊藤は、憲法の条文について次のように述べている。
憲法は國政を統理運用するための大體を規定するもので、君權、議會
の權力、大臣の責任、その他、政治上の要領だけを示せば足る。故に簡
單明瞭であればよい。且つ、その尊嚴のために、相成るべくは餘り屢々
改正變更しないがよい。そこで豫め將來の進展に順應し得るやうに、伸
縮自在ならしめる餘地を殘して置く(7)。
大日本帝国憲法には、起草者の様々な思いが込められている。先に述べた
歴史や伝統を重視したこと、そして時代の推移に応じた柔軟な運用が可能な
憲法にしたことである。しかし、これらを十分に理解せず、欧米式を憲法解
釈に無理やり当てはめる者が出てきた。起草者の思いを汲んだ憲法解釈及び
運用をすることも憲法の“真の姿”を明らかにするために必要と私は考える。
おわりに
私は、大日本帝国憲法を再検討し、その“真の姿”を明らかにするという
目的を設定した。また、日本が持った 2 つの憲法の善悪を判断するのではな
く、大日本帝国憲法が着せられた不当な評価を相対化し、両者をバイアスの
かかった見方で判断しないようにしていただきたく、本論文を作成した。
本論文を通じて伝えたいことは、大日本帝国憲法が悪であると言い難いと
いうことは勿論であるが、憲法は国そのものを表現したものということであ
る。そして、普段当たり前のようになっている事柄を、違う角度から見るこ
とで新たな側面が見えてくるということである。これが歴史的事象のみに当
てはまることではなく、日常生活にも繋がることであると、多くの人々に気
づいてもらうことが今後の課題である。
註
(1)稲田正次『明治憲法成立史 下巻』有斐閣、1962年、852−854頁。
(2)「憲法草案樞密院會議筆記」明治21年 6 月18日午前、樞密院『樞密院
會議議事錄 一』東京大学出版会、1984年、所収、156−157頁。
(3)勝岡寛次『明治の御代 御製とお言葉から見えてくるもの』明成社、
2012年、73−74頁。
(4)明 治 神 宮 編『大 日 本 帝 国 憲 法 制 定 史』サ ン ケ イ 新 聞 社、1980 年、
696−697頁。
(5)大石義雄『日本憲法史と日本国憲法』嵯峨野書院、1984年、96頁。
(6)坂本多加雄『問われる日本人の歴史感覚』勁草書房、2001年、201−
202頁。
(7)藤井新一『帝国憲法と金子伯』大日本雄辯會講談社、1942年、273−
274頁。
(卒論指導教員 深草正博)
― 125 ―
スポーツにおける礼儀作法と
スポーツ種目の特性について
加 藤 修 平
Ⅰ
はじめに
スポーツは、基本的に相手と競争することで成り立つものである。そこで
はお互いが同じルールのもと競い合い、他者との比較で勝敗が決定される。
そのような他者との競争を中心とするスポーツであるが、試合前や試合後に
「握手」や「礼」などの挨拶が行われている。
その挨拶の仕方をみると様々な様式や方法があり、スポーツによって方法
が異なっている。挨拶の意義にも違いが認められるであろう。レスリングで
は試合前の「握手」で試合を始めるが、柔道では「礼」のあと試合を始めて
いる。この2つの競技は同じように体をぶつけ合い、防具などを装着せず、
けがをしやすい競技にも関わらず、試合前や試合後の礼儀がこのように違う
のはなぜであろうか。例えば、柔道と同じ武道である相撲や剣道においても
対戦者同士が距離をあけて丁寧な礼が行われている。一方、レスリングと同
様に日本以外の欧米で盛んに行われるボクシングやフェンシングでは両者が
握手できる距離に接近し握手という身体的接触を試合前に行っている。
この例にみる違いは、その発祥が日本と西洋の違いによるものなのか、そ
れとも発祥以外の他の特徴によるものなのかに興味をもった。そこで、柔道
とレスリングを例に、礼の方法や意義を文献に求めてみた。
武道の「礼」は中学校学習指導要領解説保健体育編の態度内容に次のよう
に示されている1)。
武道に積極的に取り組むとともに、相手を尊重し、伝統的な行動の仕
方を守ろうとすること、分担した役割を果たそうとすることなどや、禁
じ技を用いないなど健康・安全に気を配ることができるようにする。
そして、「相手を尊重し、伝統的な行動の仕方を守ろうとする」ことにつ
いて「相手と直接的に攻防するという特徴があるので、相手を尊重し合うた
めの独自の作法、所法を守ることに取り組むことを示している」と解説して
いる。このことから、武道における礼は相手を尊重しているという態度を示
すための独自の作法として行われていると考えられる。
筆者は教育実習で柔道の授業を担当した際に礼や握手をさせていたが、そ
― 126 ―
スポーツにおける礼儀作法とスポーツ種目の特性について
こにどのような意味があるのかを全く指導せず、ただ試合前の動作の一つと
してしか指導してこなかった。今、改めて実習中を振り返り、指導しなかっ
たのではなく、指導できなかった、指導できる知識を持っていなかったこと
よる拙い指導でありその未熟さに猛省をしているところである。
一方、レスリングの「握手」は国際ルールにおいて次のように記載されて
いる2)。レスリングの試合をみると柔道のような立礼ではなく、握手という
動作で礼が行われている。そして、その動作は柔道に比べて極めてラフなよ
うに見え、選手によって異なり、一律ではないようにみえる。しかし、ラフ
に見えるレスリングには以下のような握手をするという決まりがあり、行わ
なかった選手には罰則が適用される。一方の柔道では自主的な礼が促されて
いるが、ルール的に罰則規定は設けられていない。
試合前の握手は、レフリーが両選手をマットの中央によび、握手をす
る。そのあとに選手同士が挨拶を交わし握手を行う。試合後の握手は、
終了後に握手を行い、判定を待つ。判定後、レフリーと握手をし、互い
の相手コーチと握手を行う。このような規定に従わないと罰せられる。
柔道とレスリングにおけるこのような礼に関する違いは、柔道の礼は道を
追究することから発生した動作、レスリングの握手はチャンピオンを決定す
ることから発生した動作であると考えられる。
このように柔道の礼とレスリングの握手の違いを競争形式や規則、その種
目の起源などから考えることができる。
学習指導要領の改訂で中学校保健体育の武道が必修になった。このことに
より武道の授業が行われ、礼儀作法の指導を取り入れた取り組みが多く報告
されている 3)、4)、5)、6)、7)。
しかし、相手の身体を直接攻撃し合う武道に限らず、相手と何らかの方法
で戦い、勝敗を決めるというスポーツにおいては武道と同様に礼や握手とい
う動作が意義あるものであり、必要なものである。
このようなスポーツにおける礼の意義と必要性から、いろいろなスポーツ
における礼の方法とスポーツ種目の特性の関係を文献やインターネットの論
文検索サイトである CiNii に求めた結果、田中による礼儀作法の様式化と礼
儀作法の変化に関する論述8)、崔による学校教育の中での儀礼や挨拶の機能、
実態に関する研究9)がみられただけで、管見の範囲ではスポーツにおける礼
儀作法とスポーツ種目の特性に関する研究をみることはできなかった。
そこで、本研究ではスポーツにおける礼儀作法の実施状況の実態を明らか
にし、さらにスポーツにおける礼儀作法とスポーツ種目の特性の関係を明ら
かにすることにした。
― 127 ―
皇學館大学教育学会年報
Ⅱ
第35号(2013年度)
研究方法
本研究では以下のように中学、高校、大学における試合前・後の礼儀作法
に関する調査から礼儀作法の実施状況の実態を明らかにし、さらにスポーツ
における礼儀作法とスポーツ種目の特性の関係について考察した。
1
調査対象
試合前・後の礼法を調査するために全国中学校体育大会(22種目)
、全国
高等学校総合体育大会(39種目)
、全日本学生選手権大会(39種目)の実施
競技を調査対象とした。
2
調査内容
ア
各試合における試合前・後の礼法の有無
イ
その礼法は誰に向けた礼であるのか
ウ
礼法がルールとして記載されているのか
3
調査方法
ア
各競技団体事務局への電話による問い合わせ(33件)
イ
各競技団体独自の問い合わせ先へのメールによる問い合わせ(10件)
ウ
全国高等学校総合体育大会のホームページの動画(全国高等学校総合
体育大会のみ)による確認(9 件)
Ⅲ
まとめ
調査結果から以下のようにスポーツにおける礼儀作法の実施状況とスポー
ツ種目の特性と礼儀作法の関係が明らかになった。
1
試合前・後の礼儀作法の実施状況
試合前では平均約70%、試合後では平均約80%と高い実施率であった。礼
儀作法の行われていない種目には、試合会場の環境的条件や時間的条件から
礼の実施が困難なものもあり、それらの種目を除くと実施率はさらに高くな
ると考えられる。スポーツの試合では、試合前・後に礼儀作法が行われてい
るものと考えられる。
2
スポーツ種目の特性と礼儀作法の関係
ア
中学、高校、大学のすべてにおいて、実施率の高いスポーツの特性は、
集団的スポーツと、身体接触のあるスポーツであった。
イ
実施率の低いスポーツの特性は、技術そのものの向上を目的とするス
― 128 ―
スポーツにおける礼儀作法とスポーツ種目の特性について
ポーツと身体接触のないスポーツであった。
ウ
道具の使用に関する分類による特性は礼儀作法実施率との関係性が低
いことが明らかになった。
以上から礼儀作法の実施には身体接触の有無が影響していると考えた。
また、このような身体接触の有無に関わって、さらに付け加えればラグ
ビーでは試合終了をノーサイドと呼ばれている。このノーサイドの意味はそ
れまで敵同士として戦っていたチームやメンバーの対決を解き、敵味方の区
別をなくす意味であると聞く。身体接触のあるスポーツでは礼儀作法によっ
て身体接触の終了を強調し、試合中の出来事を試合後にまで引きずったトラ
ブルを防止する意味からも礼儀作法が大切にされているのではないかと思わ
れる。
引用・参考文献
1
文部科学省、
『中学校学習指導要領解説
保健体育編』、東山書房、2008、
p.105
2
日本レスリング協会、「レスリング国際ルール」
、
http://www.japan-wrestling.org/special/RULES2010Japanese.pdf、
2013年12月 5 日付掲載
3
本村清人、「「伝統や文化」は「武道」でどう受け止めるのか」、
『体育科
教育』、大修館書店、第56巻 5 号、2008、pp.24-27
4
本村清人、
「武道に独自の「礼」、その意味と価値は何か」
、
『体育科教育』
、
大修館書店、第57巻15号、2009、p.9
5
小山吉明、
「いま、体育教師は武道の必修化にどう向き合うべきか」、
『体
育科教育』、大修館書店、第57巻15号、2009、pp.11-12
6
浅見裕、「武道を初めて学ぶ生徒が楽しく取り組める学習指導」、『体育
科教育』、大修館書店、第60巻 1 号、2012、p.17
7
有山篤利、「武道必修化と柔道授業の安全をどう考えるか」、『体育科教
育』、大修館書店、第60巻 7 号、2012、p.75
8
田里千代、「スポーツ界の礼儀作法のハ・テ・ナ?」
、
『体育科教育』
、大
修館書店、第61巻第 4 号、2013、口絵
9
崔成坤・沖原謙、
「学校教育における儀礼・挨拶の意義に関する研究」
、
日 本 教 育 教 科 学 会、『日 本 教 科 教 育 学 会 誌』、第 21 巻 第 2 号、1998、
pp.53-63
(卒業指導教員
― 129 ―
元塚敏彦)
知的障害の教育課程の中で学ぶ
自閉症児の現状と課題
濱 口 夏 希
1、はじめに
筆者が特別支援教育コースで学ぶことを決めたのは、小学校で自閉的な障
害のある同級生と共に学んだ経験があったからである。その後、大学に進学
し、当時気づかなかった自閉症の特性や指導法などを専門的に学んだ。そし
て実際に、特別支援学級での学習支援や一日実習、ボランティア活動を通じ
て、自閉症と知的障害の特性は異なり、必要な支援やアプローチ方法も異な
ることを体験した。しかし、知的障害を伴う自閉症児に対する教育が、知的
障害の教育課程で行われており、自閉症に焦点を当てた教育課程がみられな
いことに疑問を持った。
この筆者の疑問は、2001年に「21世紀の特殊教育の在り方について∼一人
一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について∼(最終報告)」
(以下、
最終報告という)においても示されており、
「知的障害教育の内容や方法だ
けでは適切ではない場合がある」とされたことと一致した。
そこで、本稿では、知的障害の教育課程で学ぶ自閉症児の現状を明らかに
し、障害特性の違いに考慮した自閉症児に適した教育課程や指導について考
察する。なかでも社会性・対人関係の困難さ、コミュニケーションの困難さ
に焦点をあて、集団活動における指導や集団の在り方について、筆者が経験
した大学での活動の記録とともに先行研究や教育雑誌等の関係資料、東京都
立知的障害特別支援学校小学部自閉症学級指導書などを用いて検討する。
尚、本稿で取り上げる自閉症児は、「知的障害を伴う自閉症児」である。
2、論文の概要
知的障害の教育課程には、教科の内容の系統性を意識した「教科別の指
導」、道徳や特別活動、自立活動といった領域別に指導する「領域別の指導」、
そして各教科や領域を全部又は一部を適切に組み合わせて行う「領域・教科
を合わせた指導」という 3 つの指導の形態がある。この中でも「領域・教科
を合わせた指導」は、効果的である場合が多いという考えから、知的障害特
別支援学校の中心的な指導の形態として考えられてきた。この指導の代表的
ものとして、日常生活の指導、遊びの指導、生活単元学習、作業学習などが
挙げられる。これらの指導は、知的障害の学習上の特性から考えられたもの
― 130 ―
知的障害の教育課程の中で学ぶ自閉症児の現状と課題
であり、主体的な学習活動が求められ、集団活動が多いことが特徴である。
筆者は、大学での活動おいて、A中学校特別支援学級での学習支援やD特
別支援学校(以下、D校という)
、H特別支援学校での一日実習で「領域・
教科を合わせた指導」の活動を経験した。これらの経験から、自閉症児の現
状として、好きなことや、一つのことを繰り返すなどといった得意な分野で
は、長い時間集中して活動ができるという素晴らしい力を発揮する一方、授
業の中で、知的障害児に比べ、活躍できる場面が見られず、活躍しづらい学
習であったと感じた。その理由として、以下の三点が挙げられる。
○学習が展開していく中で、活動内容を理解できていない。曖昧な状態
で活動を行うことで、表面的な活動になってしまう。
○主体的な活動が求められる学習は、目的や見通しが持てず、不安に
なってしまう。
○集団活動では、社会性・対人関係の困難さやコミュニケーションの困
難さにより、困り感を表す。
これらのことから、自閉症という障害にあった学習内容であるのかという
疑問を持ち、知的障害の特性のみにあった学習であることが否めないと感じた。
ここで、視点を変えてこれらの活動を振り返る。D校の「紙すきをしよう」
という活動は、自閉症児にビニールを剥がすことや紙をちぎることといった
役割を与えている。これを太田(1979)や中村・高木(1982)の「役割取得」
の視点から見れば、共同作業の一工程(役割)を担い、黙々とこなすという
活動は、自閉症児にとって得意な分野であり、集団の中の自己や他者を意識
し、社会性を育むという意味のある活動であるいえる。また、この経験を繰
り返すことにより、「役割取得能力」を育成していくことができる。この力
は、将来作業所などで働くために必要な能力であり、自立した生活を送って
行くために必要な学習である。
このように集団の中で主体的な経験を繰り返すことが求められる活動は、
自閉症児にとって、表面的な活動となり、見通しや目的が持ちづらい活動で
はあるが、「役割取得」を行う上で意味があり、効果的な学習であるといえ
る。また、自分の役割を持ち、こなすことで、他者から褒められ、必要とさ
れていることを感じるという成功経験は、自己評価が低いと言われる子ども
たちにとって自信となり、自己肯定感を高めてくれる。こういった経験を積
み重ねることは、褒められること、認められることを期待した次の行動や学
習につながっていく。目の前の活動の成果ばかりに目をやるのではなく、児
童生徒の力となる活動という視点で課題を設定することが重要ではないだろ
うか。こういった学習を行う際は、その児童生徒の実態にあった課題(役割)
― 131 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
と環境を準備することを念頭においておくことが必要である。
また、自閉症児には、社会性の障害があることから、人との関わり方や行
動の仕方を自然に学習することが難しく、そのために様々なトラブルになっ
てしまうことがある。そこで、集団活動を行う上で、社会性・対人関係、コ
ミュニケーションに対する指導は、重要である。
図1
社会性の障害
これに対しては、東京都の「社会性の学習」が有効であると考える。東京
都は、平成 22 年度までに知的障害特別支援学校すべてに自閉症学級を設置
し、「領域・教科を合わせた指導」の中に新たな指導の形態である「社会性
の学習」を創設している。このような東京都の独自の取り組みは、全国に先
駆けたものである。
この学習は、自閉症児がトラブルとなることなく生活や社会参加を行う上
で必要な事柄を具体的に構築したソーシャルスキルトレーニング(以下、
SST という)のような学習だといえる。SST を含むスキルトレーニングは、
資格を認定された者が行うトレーニングであるため、指導を行うことができ
る者は多くない。そのため、学校現場で行うことが難しい。しかし、
「社会
性の学習」では、それに類似した内容が設定され、その指導内容も指導書の
中に示されているため、すべての教師が指導することが可能である。これ
は、いわば、「SST の学校教育化」といえる。また、授業の中で指導するこ
とにより、学校という日常の中で教師が意図的に環境調整や場面設定を行う
ことができ、親しみのある集団を入り口とできる。また、この学習で身につ
けた力は、全教師の配慮や指導のもとで他の教科指導の学習態勢や学校生活
の様々な場面で発揮されることが期待できる。しかしながら、多くの学校で
知的障害の教育課程の「領域・教科を合わせた指導」を主として行われてい
る現状があり、すぐに「社会性の学習」のように教育課程として編成するこ
とは難しい。よって、現在、知的障害特別支援学校で学んでいる自閉症児に
対しては、集団の中で「役割取得」活動を行う基礎として、自立活動などの
時間に個別指導の中で、
「社会性の学習」のような学習を参考に工夫した指
導をしていくことが集団活動などの生活上の困難さに対応する手段の一つと
なるだろう。そして、個別の良さを活かしながら、自閉症児と知的障害児の
― 132 ―
知的障害の教育課程の中で学ぶ自閉症児の現状と課題
集団を上手く活用することで、さらに互いの関わりの量や質を高めることに
つながっていくのではないだろうか。
また、教師は指導の仕方に注意をしなければならない。自閉症や知的障害
といった障害のある子どもたちは、大人に支配されやすい傾向がある。その
ため、教師の「教える」という行為も一歩間違えば、支配的になってしまい、
学校や教室のみでしか発揮できない力となってしまう恐れもあるのである。
子どもたちの興味や自由な表現を受け止め、授業展開を検討することで見え
てくる学びもあるだろう。そこには、教師が臨機応変に対応できる専門性も
必要となってくる。
3、おわりに
ここまで、自閉症児の受けてきた教育について、「知的障害教育の内容や
方法だけでは適切な指導がなされない」理由や自閉症児に適した教育課程や
指導について、自閉症の障害特性や先行研究、自らの大学での活動の経験か
ら考察してきた。しかし、これまでの大学での活動やボランティア活動、指
導教員やゼミの仲間との会話、そして本研究を行う中で、障害についての知
識や指導方法、配慮といったことはもちろん重要なことであるが、それ以上
に大切なことがあると感じた。それは、子どもを思い、その可能性を信じる
教師の使命感である。
自閉症児の離席や常同行動といった言動がしばしば問題行動として捉えら
れ、教師の指導の困難な理由として挙げられている。しかし、それらは、障
害の特性からくるものもあり、本人にすればどうしようもない困り感を表し
ているものである。そういった行動に対して、理由や対策を考えることな
く、叱ることや教え込むこと、無理に慣れさせることは、何の解決にもなら
ない。「この子は何に対して困り感を感じているのだろう。」と考え、
「待っ
ているよ。」と子どもを信じ、受け止める姿勢でいること、「支援が必要な時
いつでも助けるよ。」と伝えることで、子どもたちは、教師を信頼できるの
ではないだろうか。その関係性が授業をより良いものとし、豊かにしていく
のである。
これまでも教師たちによって、個別のニーズに対応した熱心な指導が続け
られてきた。しかし、今、その中身が問われている。子どもたちのより良い
学びのために教師は、授業に対する使命感を持ち、常に子どもと向き合い、
授業研究を行うことが必要である。本研究を今後の教員生活に生かし、
「子
どものための指導」を行うことができる教師でありたい。
(卒論指導教員
― 133 ―
山本智子)
里親制度の現状と課題
― 里親に対するインタビュー調査をもとに ―
野 村 美 穂
1.研究の動機・方法・目的
現在、社会的養護では、施設養護より里親優先ということが課題になって
いる。里親のもとでは、より親密な愛着関係を築くことができる。したがっ
て、親に育てられない子どもにとって、里親は最適の居場所であると考える。
児童養護施設の実習最終日に、施設の先生から、施設で生活している子ど
もを里親に委託するのか、それとも、そのまま施設で暮らすのかを、悩んで
いるという話を聞く機会があった。その際、里親制度の知識が無いなりに、
「里親さんは、若い人ばかりなのですか?」「里親さんは、自分の子どもがい
ないのですか?」と様々な質問をしたことを覚えている。また、里親に委託
する際、施設で暮らしている兄弟の場合は、兄弟のどちらか一人だけを委託
するのか、それとも兄弟揃って委託するのかなど、多くの問題が生じると感
じた。これらが、里親制度に関心を持つようになったきっかけである。
だが、子どもを育てるという面において、最適と思われる里親制度は、日
本での委託率が 13.5%と、まだまだ広く知られていないのが現状である。そ
こで、里親制度の概要や課題、制度などを調べ、実際に里親をされている方
と、里親経験がある 4 名の里親にインタビューを行うことにした。
里親になった動機や日々の喜び、苦悩の中には、文献に書いてあることば
かりでなく、実際に会い、インタビューを行ったからこそ発見できることが
多くあった。この研究を通して里親制度がどのような制度であるかを明らか
にし、一人でも多くの人が里親制度を認知していけるような社会を目指した
い。そして、たとえ 1%であっても、里親委託率を上げていけるような意味
のある研究に繋がれば良いと考えている。
2.諸外国の委託率
世界の先進国の委託率は2013(平成25)年現在、オーストラリア93.5%、
アメリカ77.0%、イギリス71.7%と 7 割以上を占めているのに対し、日本は
13.5%である。この数値の違いは、日本と各国の法律が大きく関係してい
る。諸外国では、親の養育が適当でない場合、司法が介入し、親権を制限し
ていのに対し、日本では、児童相談所の職種に委ねられている。
アメリカでは1997(平成 9)年に、
「ASFA」という法律ができた。これは、
子どもが親から引き離されてから22ヵ月の間に、15ヵ月フォスターケア(要
保護児童を一時的に保護するための里親制度)に入っている場合は親権を停
― 134 ―
里親制度の現状と課題
止するという内容の法律である。15ヵ月の間に、実親が養育不可能であれ
ば、親権が停止されるこの法律は、非常に厳しい法律である。親権に対する
法の介入は、賛否両論があるが、筆者は法の介入に賛成である。なぜなら、
親からの虐待を受け、子どもが亡くなるというニュースが連日放送される中
で、これまでの対応は、不十分だったのではないだろうか。だからこそ、親
権を制限するなど、制度や法律を見直すことが必要だろうと考える。
3.里親に対するインタビュー
ではここで、里親へのインタビューを整理していく。
まず里親Aさんは、62歳の女性で、里親年数は、週末里親が10年、養育里
親が 2 年であり、現在小学 3 年生の子どもD子を委託している。D子は問題
行動が多く、実際にD子に会った際にも、Aさんを叩く、自分の意見を貫き
たいなど、行動や言動に問題行動が見られた。
Aさんは、幼少期に母親を亡くし、小学校 1 年生になったときに、
「現在
の母が、後妻に入ってくれた」という。Aさんは当時を振り返り、
「育てて
くれて、感謝はしているが、その後母には実子(妹)が生まれ、悩んだり寂
しい思いをしたことは、当然あるんですよね」と話した。また、Aさんは自
身の経験から、「それで、なんとはなしに、私も里親になって、その時には、
もう、もっともっと、自分なら、気持ちが分かるからもっと可愛がってあげ
れると思って始めた」と振り返った。この経験こそが、Aさんが里親になろ
うと思った動機である。
Aさんのインタビューを通して、一番印象的であったことは、「日々の苦
悩」についてのことである。筆者は、当然D子の問題行動を、苦悩だと答え
るだろうと思い込んでいた。しかしAさんの口からそれらが出てくることは
無く、「里子と家族との折り合い」が苦悩として挙げられた。それでも尚、
Aさんが苦悩についてD子の「問題行動」に触れなかったことが気になり、
インタビューを終えたあと、
「D子の『問題行動』について、苦悩だと感じ
たことはありますか」と後日質問をした。するとAさんは「D子の問題行動
と向き合うのは苦悩の連続でしたよ。でも、D子も家から離れて我が家の暮
らしに慣れるのも大変だったでしょう。自分のどこがいけないのか、分から
なかったんじゃないですかね? 家でしてきたことを、『それはいけない』
といわれる訳ですから」といった。この内容から、Aさんはあくまで、D子
の気持ちを尊重しているように思えた。また、そこからAさんの人間性や、
D子に対する思いがうかがわれる。
次に里親Bさん(男性52歳)、BB さん(女性49歳)は夫婦であり、現在 6
歳の子どもH男を委託している。H男は、見るからに素直な子どもであり、
Bさん BB さんとの愛着形成も良好に図れていることが見受けられた。
BB さんは幼少期の頃、母親に虐待を受けており、考えられないような両
― 135 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
親や、生活環境の中、暮らしていたと振り返った。小学校 1 年の時に両親が
離婚をしてからは、父方の祖母に、育てられていたが、病気で倒れた祖母の
代わりに一番下の妹(乳児)を、1ヵ月小学校を休んで面倒を見ていたとい
う。だからこそ、
「虐待を受ける辛さや、親に愛してもらえない辛さを、身
に染みて分かっており、子どもを持つことは嫌だった」と BB さんは話した。
しかし、40歳になり、ふと考えたときに、
「おごりかもしれないけども、私
だから、あの虐待受けてきた私だから、そういう風な境遇に遭う子どものこ
とを、もしかしたら、分かってあげる、本当の意味で分かってあげれるかも
しれない」と思うようになったという。これが、BB さんが里親になろうと
思った動機である。
Bさんに「日々の喜び」について伺うと、「喜びってもう、毎日です。い
てくれてるだけでも」と答えた。続けて BB さんに伺うと、「喜びはもうこ
う居てくれるだけで嬉しいですし、全く里子っていう感じがない。私はもう
毎日、楽しい、嬉しい、ばっかり」と笑顔で話した。この背景には、2 歳児
未満での委託ということが、大きく関係していると考える。実際に、H男は
委託当時、1 歳11カ月であった。だからこそ、より親密な愛着形成を図るこ
とができたのだろう。
最後に、Cさんは64歳の女性で、一昨年までの 5 年間、季節里親として夏
休み冬休みを通して 3 人兄弟の委託を受けてきた。一昨年以降は長男L男の
受験にともない、M男、N男もCさんの家に行くことができなくなった。
Cさんは、若い頃から青年海外協力隊の隊員であったこともあり、海外で、
子どもが一人で生きていく姿を幾度となく見てきたという。だからこそ、C
さんが言う、「人種や、血の繋がりに『無頓着』な考え方」ができ、里親に
なることにそれほど戸惑いが無かったのだろうと考える。
インタビューの中で、Cさんは幼少期の頃を振り返った。Cさんは、「自
分の両親であるにも関わらず、かなりの間‥私と両親の間には、布が一枚
あったような感覚がずっとあったの」と思い返した。「褒められるより、叱
られる方が多いと、それが親であれ、気持ちの中でその間には、布のような
ベールが一枚ある」という。Cさんは、家族や周りの大人がたくさんいるに
も関わらず、幼少期の頃、少なからず孤独を感じていたのだ。また、それら
の経験から、孤独を感じているような子どもには、例え血が繋がっていなく
ても、「自分を気にかけてくれる、自分のことを見ていてくれる大人」が、
必要であると思ったのではないだろうか。そのようなこともあり、
「里親に
なってもかまわないな」と思うようになったのだろう。
インタビューを通して、印象的であった C さんの言葉がある。
「私はお母
さんになりたいとか、そういう気持ちはないのね。ある意味で。だから、
『自
分のことを一生懸命になってくれる、おじちゃん、おばちゃん』であって、
その子が『お母さん』と呼びたければ呼べばいいし、自分の、親のことをしっ
― 136 ―
里親制度の現状と課題
かり覚えているから、
『おじちゃん、おばちゃん』だったら、それはそれで
いい」と語った。また、自分の親じゃない人達に、
「例えば叱られたり、苦
言を呈されたとしても、普段が、あなたのこと大事だよとか、一生懸命思っ
てるっていうのが、伝わればそれはそれでそのうち分かってくれるだろう」
という。おそらく、3 人の兄弟は、Cさんこそが「安心できる居場所」だっ
たのだろう。
4 名の里親さんの喜びから、里子との日々の関わりの中で、情緒が安定し
ていくことなどが明らかとなった。里親制度は、家庭の中で子ども 1 人を見
守っていくことができる。したがって愛着形成を図るという点から考える
と、子どもの養育にあたって、最適の環境であるだろう。
4.委託率を上げるための方策
本研究の一番の目的は、委託率を 1%でも上げるということである。イン
タビューを通して、委託率が上がらない原因の一つに、実親の承認が取れない
ということがあった。したがって、法的な整備を考えていくことが必要である。
親権停止ということは、人権に関与することであるため、慎重になるべきで
あるが、子どもの幸せを一番に考えるのであれば、見直す必要があるだろう。
更に、子どもを受け入れる里親の質と量の向上が伴わなければならない。
里親制度を啓発し、社会的認知を高めていくことも大切であるが、里親自身
の意識や、力量を高め、子どものニーズに合わせた、子どもの選択肢を増や
すことができる里親が必要である。そのためには、里親に対する研修や講習
会などに、全ての里親が参加する条件を整える対策が必要ではないだろう
か。また、里親自身が「社会的養護を担っており、どのような子どもや、状
況にも対応していける態勢や意識をもつ」ことも必要と考える。全ての里親
が意識を変えていくことで、必然的に里親の質が向上していくだろう。
この研究を振り返り、研究にあたって快くインタビューを引き受けて頂い
た 4 名の里親さんには、言い表すことができない程、感謝の気持ちでいっぱ
いである。なにより、筆者は里親さん一人ひとりの人柄に惹かれていた。
また、笑顔で筆者を迎えてくれた 2 人の子どもと、写真の中の 3 人の子ど
もの、これからの成長が気になって仕方がない。今後も可能であれば交流を
続けていきたい。
最後に、社会的養護の理想ともいえる「家庭養育」
、すなわち「里親」に
委託される子どもが、一人でも多くなるように、そして、その子ども達が幸
せであり続けることを願う。
なお、本研究は、社会学における「オーラルヒストリー研究」の方法を用
いた。
(卒論指導教員 吉田明弘)
― 137 ―
幼児期における自己の表情理解の発達
竹 島 志 織
問
題
表情とは,感情や情緒を顔つきによって表し出すものである。言語・ジェ
スチャー・非言語音声情報とともに、表情はコミュニケーションにおいて重
要な役割を果たしている。他者の行為を予測し、適切なコミュニケーション
をとるためには、他者の表情を理解するだけでなく、他者の行動の要因と
なっている自分自身の表情がどのようなものであるかを理解し調整しなけれ
ばならない。他者とのコミュニケーションを円滑にするためには、自己の表
情に対する認知も重要になることが示唆される。
自己表情の理解に関する研究はあまり行われていないことから、対人関係
場面で表出している自身の表情を幼児がどのように認知しているのかを明ら
かにする。
方
法
被験者:3 歳児 23 名、4 歳児 24 名、5 歳児 23 名
手続き:被験者に「嬉しい」「悲しい」「怒り」
「普通」の表情をさせ、写真
撮影した。1 週間後に自身の写真を見せ、その表情を 4 つに分類さ
せた。また、他者の写真を見せ、同様に 4 つの表情に分類させた。
結
果
他者表情の認知について
他者の表情認知について正答率を求め、各正答率を逆正弦変換し、年齢
(3:3 歳,4 歳,5 歳)×表情(4:嬉しい,悲しい,怒り,普通)の 2 要因
についてχ2分布を利用した逆正弦変換法(森・吉田,1990)による分散分
析を行った。年齢の主効果(χ2= 0.21,
6.29,
= 2,n.s.)
、表情の主効果(χ2=
= 3,n.s.)で有意差は認められなかった。また、図 1 のように、年
齢×表情の交互作用でも、有意差は認められなかった(χ2= 4.89,
n.s.)。
― 138 ―
= 6,
幼児期における自己の表情理解の発達
表1
他者の表情認知における分散分析表
変動因
2
χ2(SS/ σ2e)
0.21
SS
A(年齢の主効果)
7.51
B(表情の主効果)
221.38
3
6.29
A×Bの相互作用
172.11
6
4.89
2
群内分析
σ e = 35.21
図1
他者の表情認知における正答率
自己表情の認知について
自己の表情認知について正答率を求め、各正答率を逆正弦変換し、年齢
(3:3 歳,4 歳,5 歳)×表情(4:嬉しい,悲しい,怒り,普通)の 2 要因
についてχ2分布を利用した逆正弦変換法(森・吉田,1990)による分散分
析を行った。年齢の主効果(χ2= 2.25,
1.67,
= 2,n.s.)
、表情の主効果(χ2=
= 3,n.s.)で有意差は認められなかった。また図 2 のように、年齢
×表情の交互作用が有意であった(χ2= 13.75,
表2
= 6,p <.05)
。
他者の表情認知における分散分析表
χ2(SS/ σ2e)
2.25
変動因
SS
A(年齢の主効果)
79.13
2
B(表情の主効果)
58.82
3
1.67
483.97
6
13.75**
A×Bの相互作用
群内分析
σ2e = 35.21
**
― 139 ―
(p <.05)
皇學館大学教育学会年報
図2
第35号(2013年度)
自己の表情認知における正答率
そこで、表情の各水準における年齢の単純主効果を求めたところ、「嬉し
い」における年齢の単純主効果(χ2= 2.13,
ける年齢の単純主効果(χ2= 0.77,
単純主効果(χ2= 0.05,
= 1,n.s.)、
「悲しい」にお
= 1,n.s.)、
「怒り」における年齢の
= 1,n.s.)には、それぞれ有意差は認められな
かった。これに対し、「普通」における年齢の単純主効果
(χ2 = 6.42,
= 1,p <.05)で有意差が認められたため、ライアン法による多重比較を
行ったところ、
「普通」において 3 歳児と 4 歳児間(χ2= 0.79, = 1,n.s.)、
3 歳児と 5 歳児間(χ2= 2.59, = 1,n.s.)の有意差は認められなかったが、
。
4 歳児と 5 歳児の比較では有意差が認められた(χ2= 6.25, = 1,p<.05)
図 3 に示すように、5 歳児では 4 歳児に比べ「普通」の表情に対する正答率
が有意に高かった。
図3
自己の「普通」における表情認知の正答率
考
察
幼児の表情認知に関して
他者の表情認知について、全ての条件で正答したことから、情動語と表情
の結びつきは 2 歳までに発達し始めているという説を支持している。自己の
表情認知について有意な違いは見られなかったが、4 歳児の正答率が低い傾
向がうかがえたことから、4 歳の時期に表情の認知方略に関する何らかの発
― 140 ―
幼児期における自己の表情理解の発達
達的変化が推測された。
このことから 4 歳を境に転換する以下のようなプロセスが考えられる。
①
3 歳児は、自己の表情と他者の表情が分化していないため、自他の表
情を区別することなく認知している。
②
4 歳児では、ようやく遅延映像の自己を認知できはじめる(木下,
2001)と指摘されるように、表情認知においても自己の表情と他者の
表情が分化する途上にあるため混乱が生じる。
③
自己の表情と他者の表情の分化が進む 5 歳児では、自己の表情を客体
化できるようになることから認知処理が正確になる。
各々の自己表情の認知に関して
「嬉しい」「悲しい」といった表情では年齢による違いが観察されなかっ
たのは、ステレオタイプ的な関係が存在し、表情を作り出す表情筋の動作感
覚も繰り返し経験することから、自身の表情理解の手がかかりとして利用さ
れるのかもしれない。それに対し、「普通」の表情において 4 歳児の正答率
が有意に低く、「怒り」の表情についても同様の傾向がうかがわれたのは、
表出当時の自己の表情が保持されていない幼児の場合に混乱が生じ認知が曖
昧になることが考えられる。
これらのことから、表情を他者とのコミュニケーションとして有効なもの
にするためには、自分自身の表情がどのようなものであるか認知しておくこ
とが必要であり、表情の表出をコミュニケーションの手段と考えると、自己
の感情を適切に、またある程度一貫性をもって表出することが、感情を正し
く伝達する上で必要となる。こういった側面を含め表情認知に影響すると推
測される要因と発達との関連を検討し、表情の機能的な意味を捉え直すこと
が今後の課題である。
文
木下孝司
献
2001 遅延提示された自己映像に関する用事の理解:自己認知・
時間的視点・「心の理論」の関連
森敏昭・吉田寿夫
発達心理学研究、12,3,185−194.
1990
心理学のためのデータ解析テクニカルブック
北
2001
2∼4 歳児における情動語の理解力と表情認知能
大路書房.
櫻庭京子・今泉敏
力の発達的比較
発達心理学研究
12,1,36−45.
(卒論指導教員
― 141 ―
吉田直樹)
英語教育における音声指導の重要性
― 小学校英語教育における音声指導の確立を目指して ―
永 井 航 太
人間はコミュニケーションの主な手段として、音声言語(話す・聞く)と
文字言語 読む・書く を用いる。文字を持たない言語は存在するが、音声の
ない言語は存在しないということからもわかるように、言語というものに
とって音声が重視されることが理解できるだろう1)。
日本語と英語を音声という観点から比較すると、音韻的特徴において異な
る点が多くみられる。日本語は五つの母音が中心となる音声構造の言語であ
るのに対して、英語は子音も重要な役割を果たす言語である。言語にはそれ
ぞれ特有の音声的特徴があり、人間は喉や舌などの音声器官を自由自在に使
い様々な音を作り出す。例えば、英語には24個の子音と30個の母音2)がある
が、それらが多種多様に組み合わさり、英語特有の音声やリズムを作り出し
ている。日本語には存在しない子音が連続することによる音の連なりは、英
語特有のものである。
それでは果たして、日本の英語教育において、このような英語の日本語と
は全く異なる音声規則に関する指導は十分に行われているのであろうか。小
学校外国語活動導入の背景には、臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)
があるといわれているが、音声や音韻体系に敏感なこの時期には、特に慎重
で適切な音声指導が行われるべきであると考えられている。そこで、本論文
では小学校外国語活動を重点的に視野に入れ、諸外国の事例も参考にしなが
ら日本の英語教育における音声指導の在り方について考察を行いたい。
小学校における外国語活動が国際理解の一環として導入されたとはいえ、
「英語を取り扱うこと」を原則としており、音声言語を中心として活動を行
うことが求められていることから、これが実質的に英語音声教育のもっとも
最初の部分にあたるということは間違いない。学習指導要領にも示されてい
るが、小学校での外国語活動では、コミュニケーション能力の素地の育成と
柔軟な適応力を生かした音声感覚の育成を主な目標として掲げている。小学
校外国語活動導入の背景には臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)があ
ることは前述のとおりであるが、音韻形態の認識に敏感であるこの時期は、
特に慎重で適切な音声指導がなされるべきであると考える。なぜなら学習に
関わる個人要因(学習者要因)の中でも、「年齢」要因は変わりにくい要因、
すなわち本人の努力や教育的介入によっては変えることができない要因であ
る3)ため、この時期に適切な指導が行われなければ、高い到達度が期待でき
― 142 ―
英語教育における音声指導の重要性
なくなる可能性があるからである。
外国語学習者が母語話者と同じレベルの発音の正確さや自然さを獲得する
のは容易なことではなく、発音指導を受けないまま学習が進むと、後から発
音を矯正することは難しい4)。コミュニケーションにおいて「発音」は絶対
的な要素ではないかもしれないが、かなり重要な要素の一つであることは間
違いない。初期英語教育において「流ちょうな発音」の基礎を築けるかどう
か、指導者の手腕が最も問われるところである。
音声指導の理論はいくつも存在するが、ここでは特にフォニックスとフォ
ネミック・アウェアネスを取り上げる。
フォネミック・アウェアネス(Phonemic Awareness)とは、近年アメリ
カの小学校で注目されている理論であり、子どもに文字を教える前に話し言
葉の音に焦点を当て、耳を鍛えるというものだ。これは“the ability to
hear and manipulate the sounds in spoken words and the understanding
that spoken words and syllables are made up of sequences of speech
5)
、すなわち一連の発話の中で構成された音や音節を聴き、操作し、
sounds”
理解する能力の養成である。小学校第 3 学年ですでにローマ字を学習し、ア
ルファベットを知っている小学校第 5、6 学年であれば、音声から文字の世
界に入っていくのも抵抗がなくなると考えられる。また言葉に対する感覚が
磨かれることで、英語を含めた外国語と日本語を相対化し、その違いやバッ
クボーンとなる文化、生活に対する興味、日本語の良さなどの学びも深まる
のではないだろうか。これもまた国際的志向性を育む一つの方法であり、外
国語活動のベクトルは正しい。ただ楽しくゲームをするのではなく、活動を
行う上で目的がはっきりしている。楽しく活動することは大前提ではある
が、中身のないものでは休み時間の遊びとさして変わらない。そうならない
ためにも Phonemic Awareness の理論を学び実践していくべきだと筆者は
考えている。
フォニックスは、英語における綴り字と音声の関係をルール化したもので
あり、文字から音声化する際に大きな役割を果たす。天満(1991)は、英語
学習の入門期の子どもが最も「つまづき」を覚えるのは、英語の文字と音を
結びつける学習に入ったときであり、これは英語嫌いを早い段階で生んでし
まう一つの要因でもあると指摘している6)。アルファベットの26文字はすべ
て認識できても、それらの音は必ずしも一対一の対応をしてはくれない。こ
れは、文字と音が一対一の対応をする「仮名文字」に慣れ親しんでいる子ど
もにとって理解しがたい事実である。「イングリッシュ・ディバイド」7)を小
学校段階で生まないためにも、音素アルファベットを早期段階で導入し、ア
ルファベットには文字の名前とは別に単語を読むときの音があることをわか
らせる必要がある。
初等音声教育に期待できる点として第一に挙げられるのは、学習者の不安
― 143 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
感の現象ではないだろうか。小学校外国語活動では、音声中心で行うとは
言っても文字は必然的に出てきてしまう。そこで、文字と音声とを結びつけ
ることができないと、「読めない」という意識からか学習者は不安感を抱き、
苦手意識を持ってしまうと考えられる。
第二に、指導可能性が挙げられる。文法事項と同じように、英語の音声に
おいても、実は、教室での指導によって比較的容易に習得できる音と、習得
するのが非常に難しい音がある。一般的には、文節音の発音に比べると、感
情表現等のプロソディ(ストレス、リズム、イントネーション等の超文節的
要素)に関わる音声的要素の方が難しいとされる。特にイントネーションに
関する規則は、複雑で場の状況に大きく左右されるために、一対一の対応関
係を見出すことが非常に難しく、冠詞の習得のように、「習うより慣れる」
しかないのである。このように指導可能性の低い音声的要素が、意味理解に
大きな影響を及ぼさない場合には積極的に指導する必要はないだろうが、意
味理解に重要である場合は、できるだけ早い段階から触れさせ、慣れさせる
ことが重要になる。
留意点・課題点としては、第一に音声から導入すれば「目標言語の習得が
早い」また「母語話者並みの発音能力が育つ」というような音声重視の教育
に過度の期待を抱くことが挙げられる。ここで英語教育は音声指導だけでな
く、その他のいくつもの要因が絡み合って外国語学習が成り立っていること
を常に意識することが重要になる。
第二に、母語以外の言語を新たに学習するとき、その習得過程に、母語が
様々な形で影響を与えることが挙げられる。この母語の影響は、文法や語彙
よりも、音声面ではるかに大きな影響を与えると考えられている。母語にな
い音や非常に異なる音を発音しようとすれば、これまでに経験したことのな
いような口の開け方や、舌の筋肉の動かし方が必要になる。このような発音
の煩わしさや難しさのために、学習初期にはこうした音の習得がとても困難
に感じる。しかし、最終的に習得するのが難しいのは、実は、母語と似たよ
うな音である。なぜなら、人間の脳は、新しい言語音を聞いたときに、すで
に知っている母語の音に置き換えてしまう習性を持っているからだ。このよ
うな意味合いから、音声指導においては、日本語と大きく異なる英語の音以
上に、日本語とよく似た英語の音声に留意する必要がある。
英語教育において「音声」や「発音」というと、とかくミクロな視点に捉
えられがちであるが、本論文は日本の音声教育の充実による可能性に焦点を
当てて考察を行った。
言葉の教育は、流暢な発音を身につけることよりも話す内容に豊かさと
メッセージ性がなければ意味がないのではないか、という指摘があるかもし
れない。確かに発音よりも話す内容の方が一層重要であるという考えにも同
感である。しかし、本論文の意図するところは、英語教育において音声指導
― 144 ―
英語教育における音声指導の重要性
こそが重要であるといった短絡的なものではない。英語教育の現場で、発音
指導を含めた音声指導が十分に行われずして、「日本語訛りでもよい」、
「発
音が悪くても、言いたいことが通じればよい」といった考えが横行している
ことに警鐘を鳴らしているである。問題なのは、発音に関する指導が適切に
行われていない現状である。発音指導が適切に行われずして、
「カタカナ英
語でもよい」というのであれば、それは本質を取り違えていると言わざるを
得ない。
コミュニケーションにおいて、話の内容の豊かさはもちろんのこと、音声
の流暢さと適切さを兼ね備えていることがより望ましいことは言うまでもな
い。国際社会における英語音声の在り方として、「英語は国際語であり、国
際的に通用する英語を発音する必要がある」8) という見解も示されている。
日本の英語教育界における音声指導に対する認識は、全般的に甘いと言わざ
るを得ない。英語教育に携わる我々指導者は、この現状を認識することが肝
心である。その上で、音声指導の有用性に関する認識を高め、理解を深める
とともに、その指導法と指導技術の向上を図らないといけない。そのために
も、英語教育において音声指導がどのように位置づけられ、どのように指導
されているかについて調査・研究を行い、その有用性について持続的に提唱
していく必要がある。日本の英語教育において効果的な音声教授法を確立す
ることの重要性を強調して、本論文を締めくくることとする。
参考文献
1)
窪園晴夫(2005)『音声学・音韻論』くろしお出版 p.6
竹林滋、斉藤弘子(2009)
『英語音声学入門』大修館書店 音声記号表参照
3)
小嶋英夫、尾関直子、廣森友人(2010)『成長する英語学習者 ― 学習者要
因と自立学習 ―』英語教育学大系 第 6 巻、大修館書店 p.5
4)
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Language Teaching, 42, pp.476490
5)
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6)
天満美智子(1982)
『子どもが英語につまづくとき ― 学校英語への提
言 ―』研究社出版 p.113
7)
鳥飼玖美子(2006)『危うし!小学校英語』文春新書 p.100
8)
見上晃、西堀ゆり、中野美知子(2011)
『英語教育におけるメディア利用
― CALL から NBLT まで ―』英語教育学大系 第12巻 大修館書店 p.205
2)
(卒論指導教員
― 145 ―
豊住
誠)
Ⅳ
優秀ポスター発表
受動的な短縮性収縮中に行われる
急激な筋収縮時にみられる複数の筋束動態
伊 東 孝 樹
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研究結果で最も言いたいことをまとめ、緒言から結論まで話がつなが
るような文になるよう心がけました。また、専門的な内容になるため、
図を用いて解説を行い、わかりやすくなるようにしました。
(卒論指導教員
― 148 ―
小木曽一之)
高等学校国語科における「思考力」に関する研究
−論理的で創造的な思考領域の獲得を目指して−
井 上 智 貴
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「研究目的と結論との関係性」に留意して作成しました。また、大き
く二つの観点から成る論文の内容がひと目で分かるよう各項目を配置
し、かつ見ていて楽しくなるようなポスターを目指しました。
(卒論指導教員
― 149 ―
中條敦仁)
算数科におけるノートの意義と
ノート指導についての考察
江 角 祐 哉
ポスター製作に関して意識したのは、私が提案したノート指導にした
がって色の制限をしたことです。ノートと同じく、見た人に伝わりやす
い色の使い方、構成、自分が発表しやすいような書き方にしました。
(卒論指導教員
― 150 ―
杉野裕子)
衣服と気候の相関関係
志明野
香
織
書き入れる文字を必要最小限にとどめ、研究内容を端的に伝えられる
ようまとめた。また、図やイラストの配置、配色などに関しても、読み
手の立場に立って見やすいよう配慮した。
(卒論指導教員
― 151 ―
深草正博)
算数科教育における LOGO の活用
谷 川 純 也
初めて見て頂く方にも伝えるため、簡潔に論文の主軸だけをまとめ、
おおまかな流れを作るように心がけました。また発表時に電子黒板を使
用したので、準備や口頭での説明にも注意を払いました。
(卒論指導教員
― 152 ―
杉野裕子)
昆虫の生体防御に関する研究
藤 本 竜 志
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ポスターを製作するにあたって研究の流れを明確に伝えるということ
を第一に製作しました。文章で伝えることは困難だと判断したので、文
章を端的にして図やグラフを用いて視覚的に訴える工夫を行いました。
(卒論指導教員
― 153 ―
中松
豊)
意識をすれば印象が変わる
― キャスターの経験をもとにして ―
前 田 美 咲
私は人前で話すことについて研究をしたので、プレゼンテーションに
力を入れました。パネルは、プレゼンテーションの補助として使おうと
考えたためあえてシンプルに仕上げました。
(卒論指導教員
― 154 ―
中條敦仁)
寄主アワヨトウ
体内で
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幼虫
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供試虫の発育や生態について説明しやすいように色分けをしました。
また、実験の目的や結果に目が行くよう文章を囲ったり、何を示す図か
わかりやすいようにグラフの文字を大きくしたりするなどの工夫をしま
した。
(卒論指導教員
― 155 ―
中松
豊)
内部捕食寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
の寄生が
寄主アワヨトウ
の
Hyper spread cell に及ぼす影響について
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ポスター制作に関して、見映えの良さとわかりやすさを念頭におきま
した。生物学ゼミは他のゼミとは研究内容が大きく異なるため、初見の
方でもなるべく理解出来るようにコメントを挿入するなどの工夫をこら
しました。
(卒論指導教員
― 156 ―
中松
豊)
家族構成および家族からの協力
の有無が減量効果に及ぼす影響
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できる限り文字を減らし、かつ、ポスターを見るだけで本研究の流れ
が分かるように努めました。特に結果のところでは、内容から主要な一
部分をピックアップした図を作成し、より分かりやすく見やすくなるよ
うに工夫しました。
(卒論指導教員
― 157 ―
片山靖富)
音楽活動を通じた
障害のある児童の成長
和 田 典 子
要点をしぼり、シンプルに内容を整理することを心がけました。見や
すく、自分自身も説明しやすいように配置を工夫しました。写真を入
れ、見ていただく方に活動の様子が伝わりやすいように考えて作成しま
した。
(卒論指導教員
― 158 ―
錦かよ子)
Ⅴ
彙
報
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
教育学会活動報告
【行事】
(平成 25 年)
5 ・10
総会
11・ 3
倉陵祭
12・ 6
教育エキスポ 2013
教育AWARD 2013 表彰式
〈論文の部〉
★グランプリ
「様々な子どもたちへの学童保育支援の在り方」
4年生
小坂
宗暉
☆準グランプリ「幼児期におけるごっこ遊び−ごっこ遊びから育つもの
とは−」
4年生
田村友惟子
☆準グランプリ「音楽を取り入れた英語教育が生徒に与える影響」
4年生
雑賀
瞳
〈活動の部〉
★グランプリ
「ジャパニーズクエスト∼言葉のヒーローは君や∼」
3年生
☆準グランプリ「漫才ミュージカル」
国語教育学(中條)ゼミ
3年生
音楽教育( 錦 )ゼミ
☆準グランプリ「小孫劇場∼教師も仰天ニュース SP∼」
3年生
教育方法学(小孫)ゼミ
教育学会スポーツ大会(ソフトバレーボール)
(平成 26 年)
3 ・31
『教育学部研究報告集』第 6 号発行
3 ・31
『年報』第35号発行
【研究部会】
算数教育研究部会
杉野
裕子
准教授
幼児教育研究部会
田口
鉄久
教
授
身体運動学研究部会
小木曽一之
教
授
健康科学研究部会
片山
靖富
准教授
国語教育研究部会
中條
敦仁
准教授
教育ボランティア研究部会
有門
秀記
准教授
児童福祉研究部会
吉田
明弘
准教授
特別支援教育研究部会
山本
智子
准教授
生物学研究部会
中松
豊
准教授
― 160 ―
彙
平成25年度
入山
怜紗
報
教育学専攻修士論文題目
スタートから最大速度出現時までの動作アナロゴンとしてスプ
リントドリルの検討
堤
扶子
持久的な連続ホッピング時のコンタクトタイムがそのジャンプ
パフォーマンスに及ぼす影響
廣瀬
勝矢
水本
縁
力発揮時に得られる運動感覚と実際の筋活動との関係
2−3歳児におけることばの育ち
― 他者との関わりの中で ―
中川
博加
通常の学級における特別な教育ニーズがある子どもに対する周
囲の子どもたちのかかわりについて
― インクルーシブ教育の観点から ―
窪田
純子
児童虐待の早期発見・対応に向けての養護教諭の取り組みにつ
いての研究
平成25年度
家田
拓馬
教育学科卒業論文題目
バスケットボールに関する歴史的研究
― その誕生、日本への導入とオリンピック大会(1936年)で
の実施 ―
山村
亮太
小学校における英語教育の在り方
― 韓国の英語教育との比較から ―
赤井
秀徳
筋収縮時に見られる筋腱複合体の動態
明石
佑太
自然体験活動が子どもの自然環境への意識に及ぼす影響について
赤塚
友香
中学校英語教育におけるコミュニケーション活動
新子
知佳
生活単元学習の成立と変遷
阿部
美紀
女子生徒における体育への参加意欲
有川
貴史
サッカーに関する有能感と言語技術の関係性について
池田
純樹
第 7 回オリンピック・アントワープ大会(1920年)における日
井坂
和紗
子どもたちの遊びの多様性
石川
隆博
絵画に見る黄金比の使い方
― 表面腱膜の動きを妨げない場合 ―
本陸上競技チームに関する研究
― 遊びから子どもたちが得られるもの ―
― 161 ―
皇學館大学教育学会年報
石川満樹也
第35号(2013年度)
国際人としての日本人育成のための外国語教育
― アメリカ偏重から英語の多様性へ ―
石坂
健太
スポーツとのファーストコンタクトに関する研究
石谷
将大
行動主義的授業観と構成主義的授業観からみたよりよい体育授
石田
奈々
― 子どもがスポーツに関わるきっかけ ―
業の方法の検討
異年齢保育の必要性
― 異年齢保育の教育的効果と課題 ―
石原ゆかり
フレーベルの恩物における遊びを通した学び
出岡
教科体育の存立根拠とは何か
祐紀
― 雑誌「体育科教育」で展開された中村=円田論争を中心と
して ―
伊東
麗
トリックアート
― 錯視は目をだます ―
伊東
孝樹
受動的な短縮性収縮中に行われる急激な筋収縮時にみられる複
伊藤
詩織
伊藤
大値
小学校における体積の指導について
伊藤
郁弥
テーマ単元による体育授業の可能性に関する検討
伊藤
睦季
アワヨトウ
数の筋束動態
K大学排球部におけるツーセッターシステムの有効性に関する
検討
に寄生する 2 種類の内部捕食寄
生蜂の異種間競争について
稲見
友里
子どもを育てる効果的な叱り方
井上
貴史
スポーツ基本法に関する研究
井上
智貴
高等学校国語科における「思考力」に関する研究
上川
由衣
親と子の音楽的コミュニケーションについての研究
上村
竜平
小学校英語教育の必要性について
内田
早紀
子どものためになる「叱り方」とは
― 論理的で創造的な思考領域の獲得を目指して ―
― 教育哲学者ジョン・ロックの「叱り方」は現代の学校でど
う活かすことができるか ―
内山
翔太
今後の部活動の在り方
江角
祐哉
算数科におけるノートの意義とノート指導についての考察
大川あかね
学級崩壊を防ぐ学級づくり
大川
博子
英語学習における動機づけについて
逢坂
伸幸
「教育」における価値
― 河合隼雄を中心に考える ―
― 162 ―
彙
大﨑
大輔
報
保護者の責任
― 小学生が携帯電話を持つことをめぐって ―
大坪
由佳
大西
京
大西
里奈
「自分でする事を手伝う」保育者の姿
― モンテッソーリの幼児教育から ―
給食による年中行事の再興
ヤヌシュ・コルチャックの実践からみる児童養護観
― コルチャックの精神を現代に継承して ―
大薮
容子
現代の算数科教育における和算の活用について
岡﨑あかり
数量に対する親しみや興味・関心をはぐくむ保育について
岡田裕美子
小学校外国語活動について
岡野
沙紀
異なる文化を持つ子どものいる保育
小川
萌
― 現状と課題そして未来 ―
障害児の進学問題についての現状と課題
― 通常学級で共に学ぶために ―
奥出
雄一
現代の大学生の恋愛と傾向に関する研究
奥野
卓
子どもたちの「生きる力」を育むために
奥林
悠
吃音者のイメージについての研究
落合
瑛美
― 吃音の情報経験の有無及び性格・行動・感情的特性から ―
「聖地巡礼」によるまちおこしの可能性
尾上奈津美
家庭教育の重要性に関する研究
小野原佑樹
学級崩壊を防ぐ学級経営
樫野
有美
最大膝伸展運動の反復が筋腱複合体の動態に及ぼす影響
片岡
宜子
チョウ目幼虫アワヨトウ
加藤
慶士
マンガを教育に活かす手立て
加藤
小景
健康習慣づくりを目的としたウォーキング活動の効果と問題点
加藤
修平
スポーツにおける礼儀作法とスポーツ種目の特性について
― 親子で過ごす時間に着目して ―
とハスモンヨトウ
の血リンパのメラニン化についての研究
― 伊勢市の取り組みを参考にして ―
加藤有莉奈
ウォータレスリトグラフ
角谷
千尋
情報社会に生きる現代の大学生の携帯電話についての考え方・
河合
達也
高校時代の体育授業の経験が大学生のライフスキルに与える影響
川合
祥希
小学校学習指導要領体育科の変遷
― 様々な描画材について ―
付き合い方の研究
― 陸上運動に焦点をあてて ―
― 163 ―
皇學館大学教育学会年報
川上
裕斗
第35号(2013年度)
最大膝伸展運動の反復が急激な筋収縮時における筋活動に及ぼ
す影響
川岸亜希帆
ふり遊びからごっこ遊びへ
川口
純平
教員評価制度の特質と課題
川瀬
秀一
学習意欲向上に焦点をあてた三重県学力問題改善に向けた取り
― 3 歳児の観察事例から ―
組み
― 小学校国語を中心に ―
川村
忠洋
若者に支持されるロックとは
― 音楽性、ロック音楽の歴史、楽曲分析より考察する ―
川本
愛理
幼児期の子どもをもつ保護者への食育について
― 食材に関する観点から ―
川本由希子
国語科における「感性」教育
川原田将太
子どものスキー・スノーボード経験に及ぼす親のスキー・ス
ノーボード経験
喜多
愛
喜多
玲衣
音楽劇実践の意義と有用性
北浦
里菜
あなたも OK、私も OK
北岡
香穂
幼児期における絵本の必要性
東京ディズニーランドへの修学旅行を通じたキャリア教育の可
能性
― シュタイナー教育の素話との比較から ―
北川ひとみ
男子学生柔道選手における体力についての一考察
鬼頭
菜摘
予備緊張および力発揮に要する時間が最大等尺性収縮時におけ
木下
祥伍
野球投手における投球内容前後の動作と心の変化について
木場
柊斗
よさこいを小学校現場に取り入れることによって生まれる効果
― 新体力テストを用いての比較 ―
る筋線維動態に及ぼす影響
について
― 集団活動の意義に着目して ―
紀平
類
新聞メディアに見る 2020 年オリンピック東京大会招致報道の
特徴
楠
竜矢
久保井一樹
待機児童対策と保育の質
戦後教育における道徳教育問題について
― 昭和33年の「道徳の時間」特設をめぐる日教組の抵抗運動
と文部省の対応について ―
幸田
美緒
上杉鷹山に学ぶ
小坂
宗暉
学童保育支援の在り方
― 164 ―
彙
報
小﨑
遥
大学生における友人との相性に関する研究
小島
優之
ロバート・オウエンにおける「教育福祉」
小島
綾太
現代の若者の結婚観が子どもに及ぼす影響についての研究
小瀧
雄基
日本しあわせ論
小林
祥子
冒険遊び場に関する調査研究
小藤
美紀
学校給食における食育と地産地消の取り組み
駒田
一眞
背中を見せる教育法の可能性
小南
勇太
オリンピックの商業主義化に関する研究
小山
千里
アスコルビン酸がハスモンヨトウ
近藤
圭
運動有能感を高める効果的な「教具」の活用法
後藤
健太
突然の最大収縮時に見られる筋腱複合体の動態
雑賀
瞳
― 伊勢市への導入を目指して ―
の成長・
発育に及ぼす影響について
― 開脚前転の授業を例に ―
― 最大収縮が受動的な伸張性収縮中に行われた場合 ―
中学校における歌を活用した英語の授業
― 歌で生徒と英語をつなぐ ―
坂
淑加
教科指導における ICT 活用方法
― 授業での ICT 活用に焦点をあてて ―
坂井
真美
小学生の自尊感情を育む指導のあり方
坂口
和宏
算数・数学科における電子黒板の活用
坂口
一将
小学校における生徒指導の現状と課題
坂口皓太郎
教育において「命」を学ぶ意義
阪田
安美
妊婦における座位、立位の姿勢変化に伴う身体動作の特徴
坂田
詩史
世界の時間感覚に関する研究
佐脇
千裕
ドラえもんの指導力
柴田
朋久
幼児教育と演劇の関係性
柴田
泰希
嘉納治五郎における国民体育に関する研究
清水
聡吉
ハスモンヨトウ
― 負担軽減のための椅子の開発 ―
― コーチと教師の比較を通して ―
― こどものための演劇とはなにか ―
の人工飼料の開発
志明野香織
衣服と気候の相関関係
下村
竜之
ドルトン・プランに関する一考察
下山
里絵
子どもの遊びに関する一考察
末澤
孝浩
小学校における国際理解教育
― 奈良女子高等師範附属小学校を題材に ―
― 165 ―
皇學館大学教育学会年報
菅井
北斗
第35号(2013年度)
我が国におけるサッカーの発展に関する研究
― 戦前期日本代表チームの戦歴を中心として ―
鈴木
康太
「伊勢フットボールヴィレッジ」が伊勢市に与える経済効果
鈴木
宏尚
戦後学校体育の改革に関する研究
鈴木
美帆
寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
鈴木
唯
曽根
沙織
「板書に関する研究」
田尾
智久
日本の文化としての浮世絵
高木
麻衣
童話『ムーミン』から学ぶ家庭教育
寄主アワヨトウ
の産卵数と
の体重量の関係について
リトグラフによるポスター芸術
― アルフォンス・ミュシャを通して ―
高須真由香
子どもと絵本の世界
高橋
正しい発声法を用いたコミュニケーションの重要性
春菜
― 明確にことばを伝えるために ―
髙森
彩緒
減量中における食べ物の好みの変化
竹内
浩晃
寄主アワヨトウをめぐる外部寄生蜂アワヨトウウスマユヒメコ
バチと内部寄生蜂ギンケハラボソコマユバチの異種間競争
竹島
志織
幼児における自己の表情理解の発達
竹中
宏太
開国期の日本文明
竹中
睦
田中
菜千
地面の違いが歩行動作に及ぼす影響
育児休業制度の現状と課題
― ワーク・ライフ・バランスの実現を目指して ―
田中
柚衣
携帯メールにおける記号表現力の必要性
― 絵文字の使用によるコミュニケーションのズレの観点から ―
田邉
理香
小学校における読書活動の在り方について
谷川
純也
算数科教育における LOGO の活用
田畑
徳大
スピード社の高速水着の妥当性について
― 読書嫌いを克服するために ―
田村友惟子
幼児期におけるごっこ遊び
中條
香南
「特攻隊」と「特攻隊員」の授業を考える
辻岡
美紀
保育者による家庭との連携のあり方
津田
大樹
日本の「かわいい」の国際的影響について
堤
貴之
小学生の通学距離が体力に及ぼす影響
寺井
昌広
スポーツドーピングに関する歴史についての研究
寺平
智咲
やきものの研究
― ごっこ遊びから育つものとは ―
― 釉薬を中心に ―
― 166 ―
彙
富永
早紀
報
知的障害児(者)施設退所後の進路問題
― 障害者雇用における企業との協同 ―
土井萌恵子
子どもの思考を促す教師の発言
中川
早期英語教育について
奈穂
― 小学校入学以前の教育のあり方 ―
中川
美月
フィリピンのストリートチルドレンの現状と課題
― ストリートチルドレンとの交流を通じて ―
中嶋
章人
甲子園とはなにか
中田
勝裕
シンガポールの教師力
中野
里歩
ベビーサインによってどのような影響が与えられるか
中目
陽子
漫画『よつばと!』に見る子どもへの言葉かけ
中林
美和
キリスト教の世界的拡散に関する一考察
中村
光明
教育技術法則化運動の研究
中村
翔紀
総合保育の課題
中村
幸葉
保育士の音楽的資質
永井
航太
英語教育における音声指導の重要性
― 高校球児が描く甲子園のイメージ ―
― 養成・採用・研修・評価の観点から ―
― その可能性と課題 ―
― 子どもが受ける影響 ―
― J-POP の歌を保育に取り入れる効果 ―
― 小学校英語教育における音声指導の確立を目指して ―
長岡
大地
ジャンプ中の主動筋への電気刺激がそのパフォーマンスに及ぼ
す影響について
長田健太郎
誰もが楽しいと感じる持久走授業の作成
永田
最大随意収縮時における筋内筋線維伝導速度の変化
晃平
― 最大M波を誘発して ―
成合
宏之
ギンケハラボソコマユバチ
の毒液と
が寄主アワヨトウ
の成
長・発育に及ぼす影響
成川
大和
フットボールのオフサイドに関する研究
生川
結莉
障害児保育の現状と課題
西尾
直人
内部捕食寄生蜂ギンケハラボソコマユバチ
― インクルーシブ保育から学ぶべきもの ―
の寄生が寄主アワヨトウ
の hyper spread cell に
及ぼす影響について
西川
愛里
児童虐待の現状と課題と社会的ケアについて
― 167 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
西﨑
久和
低学年における時間と時刻の指導法について
西村
夢路
モスクワオリンピック大会(1980年)のボイコットに関する研究
西本
紫乃
担任教師の障がい児に対する対応と通常学級の児童の態度との
西本
真朋
アメリカ英語とイギリス英語
野口
和輝
子どもの描画の発達段階と絵からよみとる子どものサイン
野村
美穂
里親制度の現状と課題
野呂
亜以
授業で英語を使う意義
橋口
徹也
歌詞をもとにした国語科実践の教材開発
関係についての研究
― 中学校英語教育における位置づけ ―
― 里親に対するインタビュー調査をもとに ―
― RADWIMPS の『謎謎』を用いて ―
長谷奈瑠美
話し合い活動を見つめ直す
― 新しい指導目標の提案 ―
長谷川未来
レクリエーションゲームの実践における子どもの変化
長谷川公咲
幼児期における家庭での絵本の読み聞かせが学童期にもたらす
効果について
長谷川由依
国際化に伴った大学英語教育のあり方
濱口
夏希
知的障害の教育課程で学ぶ自閉症児の現状と課題
濱田
八重
サイドストーリーに注目した『バムとケロ』の活用法
春木
歌帆
漫画におけるセリフと表情の共感理解
― 子どもたちの興味・関心をより引き出すために ―
― ONE PIECE アラバスタ編のモンキー・D・ルフィの場合 ―
東谷亜香里
韓国の英語教育から学ぶ日本の英語教育への示唆
日野
健
ヨーロッパ中心史観の克服
平生
葉月
伊勢市における幼児の運動能力の傾向
平岡
知美
特別支援教育の観点を取り入れた授業づくり
廣瀬
未紗
大学生が考えるいじめを判断する基準について
廣田
直輝
ネットいじめの「痛み」と学校現場のネットリテラシー教育に
福岡
宏
福島
隼人
― ラス・カサスの視座を手がかりに ―
ついて
学習指導要領の求めに応じる剣道授業の作成
共通語との比較を通して使用言語と地域の関係を知る
― 方言を使用した授業提案 ―
福田
和司
バスケットボール嫌いの子どもに「楽しさ」を体験させる体育
授業の条件
― 168 ―
彙
福田
翔平
報
通常の学級において、障害児と健常児がよりよい関係を築ける
学級経営に関する研究
― 健常児に視点をおいて ―
福村
麻衣
伊勢市における幼児の調整力に関する調査
藤田
章良
小学校体育における個人差を縮めるサッカー授業づくり
藤本
竜志
昆虫の生体防御に関する研究
舟戸
駿
舟橋
奈穂
読み聞かせの効果と絵本・紙芝居の魅力に関する研究
古川
恵理
特別支援教育に関する研究
古川
楓
若年登山初心者における登山時の生理・心理的影響
― 読み聞かせをどのように行うと効果があるのか ―
インクルーシブ保育(教育)の歴史と意義
― 保育所聖愛園における保育の実践を通して ―
本多
彩乃
幼稚園における「預かり保育」の現状と課題
― 三重県津市の公立幼稚園の実態から ―
本多裕太郎
イソップ寓話』を取り入れた道徳教育の有効性について
前川
浩平
睡眠時間の違いが身体活動量に及ぼす影響
前田
美咲
意識をすれば印象が変わる
眞柄
夏実
糸賀一雄と福井達雨の教育・福祉観
蒔田
遥奈
高校における文化祭が生徒に及ぼす影響に関する研究
増田
彩
松井
大貴
中学校学習指導要領英語科の変遷
松井
梨子
児童養護施設入所児への援助
― キャスターの経験をもとにして ―
― 2 人の思想の相違点を中心に ―
メアリー・リッチモンドのソーシャルワーク観
―『貧しい人々への友愛訪問』の翻訳を通して ―
― 語彙における考察と今後の英語教育に焦点を当てて ―
― 入所児の問題行動を中心に ―
松田
直哉
大日本帝国憲法の再検討
松原
良太
学習指導要領における「歩く」ことに関する指導内容と大学生
松見
和輝
現在の大学生が考える「浮気」についての研究
松本
知浩
女子柔道の歴史とこれからの発展について
松本
聖
の歩き方や「歩く」ことに関する意識の実態について
異なる走環境での快適自己ペース走による運動強度および気分
について
丸山
莉沙
幼児に身につけさせたい擬態語と保育者の役割
水谷
真子
子どもの自発的な遊びの重要性
― 名のない遊びに着目して ―
― 169 ―
皇學館大学教育学会年報
水野
隼人
第35号(2013年度)
いじめとは何か?
― 今、いじめ問題を考える ―
水野
雄斗
算数科文章問題をどのように指導するか
水橋
春菜
対人関係におけるトラブルを引き起こす要因とその解決
― どういった人に対してどのような解決と指導をしていくべ
きなのか ―
湊谷
汐里
森のようちえん
南
秀美
体罰についての考察
南川
奈保
絵本から育つもの
三村
友希
利き手の研究
宮瀬
遥
宮田
桃佳
我が国のブックスタートの歴史と課題
宮間
銀児
早口言葉による滑舌練習
向
冴子
寄主アワヨトウ
― 一般の幼稚園で同様の効果を見出すためには ―
― 日本の昔話から学ぶ絵本の可能性 ―
― 左利きから見た右利き社会 ―
「夏休み子どもキャンプ」における子どもの変化
― 三重県松阪市のブックスタート事業を中心に ―
体内でカリヤサムライコマ
ユバチ
幼虫が異物として排除されない要因
向田
梨紗
地域子育て支援活動について
村井
志帆
力発揮のタイミングのズレを認識できる条件
村井
悠
村上
彰子
秋田県の教育に学ぶ
村木
佑希
バスケットボールのシュート動作の違いによる筋活動の変化
村田
歩
村田
一紀
― 多気町子育て支援センターを中心に ―
― 動作角度と動作速度に着目して ―
学校教育における成果主義といじめの問題
CM音楽の効果
全国学力・学習状況調査と学力向上政策
村田かの子
部活動で人間関係が良くなる要因・悪くなる要因に関する研究
村田
淳哉
高校野球に坊主頭が多い理由,礼儀を重んじる理由,体罰の多
村田
友里
村野
心
い理由についての研究
「街頭紙芝居」に関する研究
― 教育紙芝居に対するアンチテーゼ ―
PISA 型学力からみるこれからの日本の教育
村脇佐知子
乳幼児期におけるよりよい音楽表現活動
本居
児童の読書活動推進の取り組みについて
佳奈
― 170 ―
彙
森
瑞紀
報
内部捕食寄生蜂カリヤサムライコマユバチ
寄生が寄主アワヨトウ
の
の hyper spread
cell に及ぼす影響について
守田
由衣
子どものごっこ遊びにおける社会的ルールの発達
保田
勇武
部活動における人間形成の在り方に関する研究
柳瀬
貴史
体育嫌いの児童における体育授業について
薮内
一希
親・教師の関わり方が子どもに及ぼす影響に関する研究
― 学習面とパフォーマンス面に着目して ―
山岡亜弥子
男と女についての研究
山岡
憲二
異なる筋収縮中の最大筋力発揮時に見られる筋活動
山際
真由
子どもの意欲・活動を高める算数教具の作製
山口
真也
あお色についての研究
― Silent period に着目して ―
― あお色の歴史と文化 ―
山口
真理
特別支援教育の視点を取り入れた授業とその必要性
山舖
智大
電子黒板活用促進に関する一考察
山下
敦
山下
亜美
教師を目指す学生が考える慕われる教師の理想像に関する研究
山下
拓也
大衆娯楽としてのプロ野球の誕生
思考のネオテニー
― 子ども観の再検討 ―
― 慕われる教師像とその留意点 ―
山下ひかり
ことわざ、慣用句の認知度から考える学習指導の在り方
山下茉布子
幼児期における言語発達を促進させることば遊び
山田
将士
教育における「共同」と「競争」
山中
章裕
疲労部位の違いによるドロップジャンプパフォーマンスの変容
山村
麻菜
適切な学校給食指導法に関する一考察
山本
貫介
野球のグローバル化に関する研究
山本
ひな
コツと勘を踏まえた指導の必要性に関する研究
横山
晴華
知的障害教育における教材の活用の在り方
横山
麻衣
効果的なほめ方に関する研究
― 電気刺激により疲労の誘発をした場合 ―
― なぜ、学校給食には牛乳なのか ―
― ソフトテニスのアンダーストロークの打ち方を例に ―
― ほめられるとやる気は出るのか ―
余郷
甲将
教育現場における平和学の展開
吉川
さち
子どもの自信のために必要な指導や配慮に関する研究
吉川
美里
成功体験から得られるやる気について
― 171 ―
皇學館大学教育学会年報
吉田
純
第35号(2013年度)
学校の組織運営と課題
― 教育の質の保証のための校務分掌を中心として ―
米奥
舞佳
小学校における外国語活動の展望
米澤
麻衣
家族構成および家族からの協力の有無が減量効果に及ぼす影響
渡邊
絵理
健康の維持・増進を目的とした観光推進の可能性
和田
典子
音楽活動を通じた障害のある児童の成長
― 地域のウォーキングルートを活用して ―
― 172 ―
彙
報
皇學館大学教育学会規約
第1条
(総則) 本会は、皇學館大学教育学会と称し、事務所を皇學館大学
教育学部教育学科に置く。
第2条 (目的) 本会は、教育諸科学の研究及びその実践活動を行い、学術
の発展に寄与するとともに、会員同士の相互理解を図ることを目的
とする。
第3条 (事業) 本会は、前条の目的を達成するために、次の事業を行う。
1 機関紙「教育学会年報」の発行(年1回)
2 機関紙「教育学部研究報告集」の発行及び教育学部ホームページへの
掲載(年1回)
3 会報「歩み」の発行及び教育学部ホームページへの掲載(年1回)
4 講演会、研究会等の開催
5 研究調査の実施
6 教育史蹟・教育施設の見学及び教育実践活動の観察・実践
7 国内外との学術的交流
8 その他必要な事項
第4条 (会員) 本会は、次の会員をもって組織する。
1 正会員 (皇學館大学教育学部教育学科現教員、学生全員)
2 準会員 (理事会で推薦・承認した文学部教育学科ならびに教育学部
教育学科旧教員及びその卒業生、その他)
第5条 (役員) 本会には、次の役員を置く。
1 会長
2 理事 (うち1名を代表理事とする。)
3 幹事 (うち1名を代表幹事とする。)
4 委員 16 名(うち1名を代表委員とする。)
5 会計監査 2名
第6条 (任務) 役員の任務及び選出方法は次の如くとする。
1 会長は、教育学部長をもってこれにあてる。
2 代表理事は、教育学科主任をもってこれにあて、本会を統轄する。
3 理事は、教育学部教育学科所属の専任教員全員をもってこれにあて、
本会の事業に関する会務を審議決定する。
4 幹事は、理事の互選によって選出され、理事会の議に基づいて会務を
処理する。
5 代表幹事は、幹事の互選により選出され、幹事会を代表する。
― 173 ―
皇學館大学教育学会年報
第 35 号(2013 年度)
6
委員は、教育学部教育学科各学年から選出された4名をもってこれに
あて、幹事を補佐して会務の処理にあたる。
7 代表委員は委員の中より代表理事の委嘱によって選出され、委員会を
代表する。
8 会計監査は、正会員の互選によって選出され、会計監査する。
第7条 (任期) 役員の任期は次の如くである。
1 会
長(教育学部長の在任期間中とする。)
2 代表理事(教育学部教育学科主任の在任期間中とする。
)
3 理
事(現職教員在任期間中とする。)
4 代表幹事(原則として4年とする。)
5 幹
事(4年として再任を妨げない。)
6 代表委員(1年とする。)
7 委
員(学部学生は原則として4年とする。
)
8 会計監査(4年とし再任を妨げない。)
第8条 (会議) 本会は、会の意志を決定するために次の会議をもつ。
1 総 会 (最高の意志決定機関であって、通常総会を年1回開催する。
代表理事が必要と認めた場合及び会員の3分の1が要求した
場合は、臨時総会を開催する。総会成立には正会員総数の過
半数の出席を必要とする。)
2 理事会 (会務に関する審議決定の機関であって、年1回以上代表理
事が招集する。代表理事が必要と認めた場合には臨時に開催
する。)
3 幹事会 (会務処理に関する審議執行の機関であって、代表幹事が臨
時招集開催する。)
4 委員会 (幹事会の意向に対して代表委員が随時招集開催する。
)
第9条 (研究部会) 研究活動を盛んにするために研究部会を設ける。研究
部会については別にこれを定める。
第10条 (会費) 本会は、左の会費等によって維持運営される。徴収等につ
いては別にこれを定める。
1 正会員 年額3,600円
2 寄付金
3 その他の収入
第11条 (会計年度) 本会の会計年度は、本年4月1日に始まり、翌年3月
31日をもって終る。
第12条 (会則改正) 本会は会則の改正は、総会出席者の過半数の承認を得
なければならない。
この規約は、平成21年5月7日から施行される。
― 174 ―
彙
報
編 集 後 記
本年度も無事に皇學館大学教育学会年報第35号を発行することができまし
た。ご多忙中にもかかわりませず、原稿をお寄せいただきました各位に御礼
申し上げます。
今号では、最優秀卒業論文要旨 1 篇,優秀卒業論文要旨 5 篇,ゼミ選出卒
業論文要旨21篇,優秀ポスター発表11篇を掲載いたしました。今年度の教育
学科を代表する研究として、幅広い分野の様々なテーマが揃い、より充実し
た内容をお届けすることができました。会員の皆様にご高覧いただけました
ら幸甚に存じます。
今後とも、本学会の発展に向けて、皆様のご支援ご協力を賜りますよう、
よろしくお願い申し上げます。
― 175 ―
皇學館大学教育学会年報
第35号(2013年度)
― 執筆者紹介 ―
教育学科 4 年生
― 編集委員 ―
池田
純樹
会長
深草
正博
伊東
孝樹
同代表理事
小孫
康平
井上
智貴
同代表幹事
有門
秀記
江角
祐哉
同
市田
敏之
大坪
由佳
井上
兼一
大薮
容子
片山
靖富
落合
瑛美
杉野
裕子
加藤
修平
中條
敦仁
川岸亜希帆
長尾
陽子
川口
純平
中松
豊
川本由希子
元塚
敏彦
小坂
宗暉
山本
智子
小林
祥子
吉田
明弘
坂
淑加
渡邊
毅
教育学会
幹事
坂口皓太郎
野々垣明子
志明野香織
佐藤
竹島
志織
田中
柚衣
谷川
純也
永井
航太
永田
晃平
西本
紫乃
野村
美穂
濱口
夏希
藤本
竜志
前田
美咲
松田
直哉
向
冴子
森
瑞紀
米澤
麻衣
和田
典子
― 176 ―
武尊
平成 26 年3月 31 日印刷
平成 26 年3月 31 日発行
発行者
〒 516-8555
三重県伊勢市神田久志本町 1704
皇
教
學
館
育
代表者
印刷所
〒 516-0036
大
学
学
会
中村哲夫
三重県伊勢市岡本1丁目2− 24
有限会社 青木印刷
ISSN 0388 − 4007
ANNUAL
REPORT
of
EDUCATIONAL
NO.
RESERCHES
35
2013
CONTENTS
Ⅰ.Purport of the Best Graduation Thesis
Ryushi FUJIMOTO:Study on the biological defense of insects 





















( 2 )
Ⅱ.Purports of Excellent Graduation Theses
Yuya EZUMI:Consideration to the meaning of the note
in the department of arithmetic and note instruction 














( 16 )
Akiho KAWAGISHI:From pretend play to mimic play































( 24 )
― From the observation example to the 3 years old child ―
Junya TANIGAWA:Activities of LOGO in the arithmetic department education












































































( 33 )
Saeko MUKAI:Reason for
larvae are not excluded as
foreign bodies from the
host body cavity














( 41 )
Noriko WADA:Growth of children with obstacles through musical activities

















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( 50 )
Ⅲ.Purports of Seminar election Graduation Theses 
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( 59 )
Ⅳ.Excellent Poster Announcement of Graduation Theses
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(147)
Ⅴ.Bulletin 
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(159)
The Report of the Acts of the Educational Research Institute 
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(160)
List of Graduation Theses in Department of Education
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(161)
The Regulations of the Educational Research Institute 
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(173)
The Educational Research Institute of
Kogakkan
University