秩父の山々に囲まれた緑豊かな「結界」

秩父の山々に囲まれた緑豊かな「結界」
秩父病院(埼玉県秩父市)
病院のシンボル・ふくろう像。
はりの上から院内に目を向けている
管理部門を除くと、
すべて1階建て。
ヘリポートも隣接し、植栽にも気を配る
東
旧病院の隣にあった秩父神社から分霊いただいた
「秩父妙見社」
。
背後の山々の紅葉が映える
病院裏側の畑。
赤そばや落花生、
四季の花々が植えられる。
地域住民がボランティアで参加
病棟は木造。
天窓が広く取られた造り。
院内は照明なしでも十分明るい
重症室に窓が必要なため設けられた中庭。
敷地をゆったり活用
患者図書室。
かつて院内で使用した古い医療機器も展示してある
日本大震災の3日前、昨年3月8日に新しい
中や心筋梗塞への対処は花輪氏が医師になった
で365日、24時間対応できる態勢が整いました。
「近所の人が散歩の途中で病院の周りに来る。
病院へと移転。開院を迎えた。旧病院は
当時と
「あまり変わらない」
。この分野での高度な
県内でヘリが必要なのは秩父くらいです」
季節ごとの花々や作物を楽しみにしています」
市内中心部、秩父神社の隣で1887年の開院以来、
医療は残念ながらできないのが現状だという。
広い土地は確保できた。52床の病院である以
緑化への取り組みは
「第4回彩の国みどりのプラ
124年もの歴史を重ねてきた。足の便はこの上なく
こうして新病院構想には
「ヘリポート」
が欠かせな
上、高い建物を造る必要はない。平屋でできれば
ン賞」
を受賞。県に届け出のあった緑化計画の中
よかったが、駐車場が手狭なことが悩みの種だった。
いものとなった。だが、秩父は四方を山に囲まれ
木造に──と構想は徐々に具体化していった。
で特に優れたものに与えられる。600件以上の候
「
『白い巨塔』
ではありませんが、コンクリートが
た盆地。これといった土地が見つからない。
病院のシンボルマークには
「HUMAN COMM-
補の中から選ばれたのはわずか6件にすぎない。
嫌いでした。あえてこういう造りにしたんです。こん
十数年前、浦山ダムを造った際、残土を荒川
UNICATION」のロゴが入る。秩父の豊かな自然
患者アンケートを見る限り、新病院や環境への
な形の急性期病院があってもいいんじゃないかと
河川敷に埋め立てた。40mかさ上げして2万坪の
に抱かれた新病院。環境と雰囲気は一変した。
評判は上々のようだ。旧病院のお隣さんは秩父神
思いまして」
(花輪峰夫・第4代院長)
広大な土地が生まれた。そのうちの約5000坪を借
病院の周囲は植物で彩られている。現在はカエ
社。宮司に頼み、神様に鎮座してもらう小さな社
秩父医療圏ではすべての医療を完結することは
り受け、新病院が建設されることが決まった。
デを植えているところだ。夏場はゴーヤやキュウリ
を新病院の敷地内に設えた。
「神社のある病院」
できない。完結型を目指してはいるが、特に脳卒
「埼玉県にも掛け合い、ドクターヘリと防災ヘリ
がグリーンカーテンの役割を果たしている。
の風景は患者にも好意的に迎えられている。
2012.12
2012.12
Art in Hospital