日本の「約束草案(政府原案)」についての意見

平成27年6月29日
日本の「約束草案(政府原案)
」についての意見
生活協同組合連合会コープネット事業連合
世界の人口増加と経済成長に比例して、エネルギー使用量、水使用量、食料生産量、
温室効果ガスの排出量が増え続け、森林面積は減り続けています。そして、大気中の二
酸化炭素の濃度は増加しており、比例して地球の平均気温も上昇しています。IPCC(国
連の気候変動に関する政府間パネル)第 5 次報告書では「温暖化の主要な原因は、人間
による影響であることは極めて可能性が高い」と結論づけています。また、20 世紀末よ
り気温が 2℃上昇すると、熱帯や温帯地域は主要穀物の生産量が減少し、4℃以上の上昇
で世界は深刻な食料危機に見舞われると指摘しています。
国際的合意である「産業革命以降の気温上昇を 2℃未満に抑える」という目標を達
成するためには、世界各国が一致して温室効果ガス排出量の削減に取り組むことが、
残された唯一の選択肢です。世界の目指すべき方向は「持続可能な社会」です。将来世
代が安心して暮らすことのできる地球環境を引き継いでいかなければなりません。原子
力や石炭にウエイトを置くエネルギーミックスでは、持続可能な社会から遠ざかってい
くことになります。
当事業連合は、人と自然が共生する社会と平和な未来を追求しています。この立場か
ら日本の「約束草案(政府原案)」について以下の意見を提出します。
1.「②日本の約束草案」についての意見
(1)意見の概要
2030 年度に 2013 年度比 26.0%削減では、産業革命以降の気温上昇を 2℃以下に抑
えるための水準としては十分ではありません。
(2)意見および理由
「約束草案」は、本年 12 月に開催される気候変動枠組条約第 21 回締約国会議
(COP21)において、温室効果ガス削減に向けた取り組みに対する、日本の意志と姿
勢を示すものです。交渉ごととはいえ、これまで相応の温室効果ガスを排出してき
た国として、2030 年度に 2013 年度比 26.0%削減は妥当な水準であると、自信をもっ
ていえるのでしょうか。IPCC 第 5 次評価報告書では、世界の気温上昇を 2℃以下に
抑えるためには、2050 年までに 2010 年比で約 40~70%の温室効果ガスの削減が必要
であり、特に 2030 年までの追加的対策が重要であることが示されています。日本は
国際社会の一員として責任ある水準を約束し、あわせて開発途上国の技術支援や
JCM(二国間クレジット制度)を通して、世界全体の温室効果ガス排出量の削減に貢
献すべきです。
2.「⑤温室効果ガス削減目標積み上げに用いたエネルギーミックス」
(1)意見の概要
2030 年のエネルギーミックスについて、原子力は数値化せず、再生可能エネルギ
ーは 30%以上とすべきです。
(2)意見および理由
原子力は現時点で先行きはまったく見通せない状況であり、電源構成の数値化は
見送ることが現実的です。東京電力福島第一原子力発電所の事故は、未だ原因究明
と総括が行われず、事態は収束と言える状況ではまったくありません。国民的合意
もなく、再稼動が見通せない状況で原子力を数値化することは、約束草案の具体性
を欠くものではないでしょうか。
一方、再生可能エネルギーは原発事故の不安にさらされることもなく、温室効果
ガスの削減効果がもっとも高く、国民からの支持も期待も大きくあります。持続可
能な社会を目指すために、原子力に頼らない、再生可能エネルギーを中心としたエ
ネルギーミックスとすべきです。
3.「⑥〔6〕分野横断的施策」についての意見
(1)意見の概要
低炭素社会に向けて、炭素価格付け(カーボンプライシング)の制度を導入すべ
きです。
(2)意見および理由
温室効果ガス排出量の削減は、現在の対策の積み上げだけでは十分ではありませ
ん。二酸化炭素排出量に価格をつけて、見える化することにより、排出量の削減を
より効果的に進めることができます。企業および使用者のコスト意識を高め、社会・
経済全体が排出量削減に向けた努力と創意工夫を積み重ねることにより、低炭素社
会の実現につながります。なお、炭素価格付けの制度検討においては、諸外国の事
例等も踏まえて制度を創設すべきであると考えます。
以上