米国デュポン社 2009 年自動車人気色調査の中間報告

(参考資料)
2009 年 8 月 7 日
米国デュポン社 2009 年自動車人気色調査の中間報告
社会的地位、富、気分やマーケティングに左右される自動車色の選択
社会科学と行動科学が自動車色の選択に影響
米国デュポン社(本社:デラウエア州ウィルミントン、会長兼最高経営責任者:エレン・J・クルマ
ン)は、7 月 9 日(米国時間)、主要な自動車設計者およびデュポンのカラーデザイナーによるグロ
ーバルチームで行っている今年のカラートレンド調査の中間報告を発表しました。
自動車メーカーが、消費者の心を引きつける色を予測する時、ファッションデザイナーのように、
できるだけ多くの定量的データ(「ハード」データ)を集めます。しかし最終的には、心理学や文化
的影響といった「ソフト」面も考慮することが必要です。なぜなら、色の好みは、ソフト面によっても
影響を受け、特に景気の激動期には、その影響が大きいからです。
デュポンの専門家は、これまで 56 年間にわたって、消費者の自動車色の好みを追跡調査し、
毎年 12 月に DuPont Global Automotive Color Popularity Report(デュポン・世界自動車人気色
調査報告書)を発行してきました。この報告書には、世界の地域別の人気色と一部の国別の人気
色が示され、調査結果は、自動車メーカーの生産データ、自動車登録統計、塗料売上データと
デュポン独自の解析方法に基づいています。デュポンは、世界でトップクラスの新車用塗料と自
動車補修用塗料のメーカーで、世界の大手自動車メーカーのほとんどすべてに塗料を供給して
います。
デュポンは、毎年、自動車メーカー向けに特注色のカラーショーを企画し、消費者の関心を集
めることが予想される色合いを発表しています。世界的景気後退が不透明感をもたらしていること
から、このほど、デュポンのカラーデザイン担当者は、2 人の専門家に対し、カラートレンドを歪め
る可能性のある心理学的要因と人類学的要因についての助言を求めました。
デュポンのカラーマーケティング担当マネージャーのナンシー・ロックハートは、次のように話し
ています。「毎年行っている自動車色データの作成と報告の方法を変えるつもりはありませんが、
国際社会が激動している現状を考えて、消費者の色の好みに影響する可能性のある定性的要因
のいくつかを詳しく調べることに決めました。人々の気持ちとそれを形づくる社会的要因が、色の
選択に重要な意味をもつと考えることは理屈に合っています。」
文化と社会が色の選択に影響する
デュポンは、色の好みに対する文化と社会の影響について、デラウェア大学准教授(文化人類
学)のピーター・ウェイル博士の意見を求めました。ウェイル博士は、世界のさまざまな地域、特に
アフリカで、芸術の比較文化研究を数十年間続けています。
「すべての人間が、同じように色を生物学的に処理することがわかったのは、今からわずか 35
年前のことです。」文化人類学の一分野である「審美人類学」を専門とするウェイル博士は、こう話
しています。文化人類学は、生きた人間とその信仰、習慣、価値観、考え方、技術、経済やその
他の側面を研究する学問です。「多くの伝統的な非工業社会の人々は、基本色が赤、青、黒、白
のわずか 4 色であることを文化的な学習を通じて認識しています。これに対し、工業化社会の
人々は、国際化、マーケティングやその他の要因のために、多彩な色を認識するように慣らされて
いるのです。」
どの社会でも色には特定の価値観が結びついているため、人々がどれほど幅広く色を認識す
るのか、という点は重要だ、とウェイル博士は考えています。
「人が成功していることを示す色がいくつかあります。例えば、シルバーは、特に 9 月 11 日以降
の好景気における高いステータスと関連付けられてきました。ところが、2 年前頃からシルバーの
人気が衰え始めました」とウェイル博士は話します。
シルバーは、「デュポン世界自動車人気色調査報告書」で、2000 年から 2006 年の 7 年間という
驚くほど長期間にわたってナンバーワンカラーの地位を保持しました。そのシルバーに代わって、
ホワイトがナンバーワンになったのは、ウェイル博士や多くのエコノミストが現在の景気後退の始ま
りと推定する時期と重なっています。
ウェイル博士は、「ホワイトは、過渡期と関連付けられる色です。ところが、今回のホワイトへの転
換では、パール顔料のような特殊効果を配合したホワイトへの切替えが相当に多く、興味深いで
す」と話し、人々はホワイトに乗り換えたが、「チョーキング」の起きやすい、平凡で、代わり映えの
しないホワイトではなく、高級感があり、頑丈に見えるホワイトに乗り換えたのだ、と説明していま
す。
特定の色は具体的な社会や文化と結びついているか
伝統的な色合いは、原始社会ですぐに入手できた染料によって作り上げられるのが通例だ、とウ
ェイル博士は言います。こうした伝統的な色合いに影響を与えたのが国際化で、人々は海外に旅
行するようになり、それまで見たことのなかった色の衣服や土産品を持ち帰ったのです。お気に入
りの新色に出会った人々は、伝統を捨ててしまう、とウェイル博士は指摘しています。
色の選択は、安心感やリスクと結びつくこともあります。西欧では、ブラックとグレーが高級車の塗
色に使われることが多く、安心感、富、リスク回避を象徴しています。これに対して、若年層は、より
小型の低価格車種を保有し、鮮やかで人目を引く色を指定して、より積極的にリスクを負っていま
す。
色の心理学
デュポンは、色の背後にある心理について、ケイテイ・ガイドス博士に解説を求めました。同博士
は、ペンシルベニア州で開業している精神分析医で、色を心理療法のツールに使っています。彼
女は、ペンシルベニア州心理学会とデラウェア州心理学会の会員で、心理的問題に関するコラム
「Mind Matters」を執筆しています。このコラムは、www.chaddsfordlive.com と彼女個人のウェブサ
イト www.drgajdos.com で公開されており、月 2 回更新されています。
「色の選択は、その人の気分を示していることがあり、具体的な色が特定の気持ちを引き起こすこ
ともあります。色によって、心が高ぶることもあり、落ち着くこともあるのです」とガイドス博士は話し
ています。「生活にもっと色を取り入れて、気分を良くする必要があります。不景気の時は、なおさ
らです」と同博士は続けます。
そしてガイドス博士は、心を落ち着かせる効果のある色の利用が大事なことを示す経験談をしまし
た。彼女が、最近、ある空港を訪れた時、乗客を並ばせて検査を行う連邦運輸保安庁の職員が
全員ダークブルーのシャツを着ていることに気づきました。
「ブルーは、落ち着きとコミュニケーションを表す色です。ピリピリしている旅行客に対応する当局
の担当者にとって、ブルーは極めて適切な色のチョイスだと思いました」と彼女は言いました。
景気の悪化といった最近の出来事は、色の好みを弱める傾向があるのでしょうか。
ガイドス博士は、人には、長年にわたって培われ、人格と結びついた特定の色の好みがあるもの
の、実際の色の選択は、気分や出来事によって変化することがある、と説明しています。また、色
の好みに対する影響の点で、年齢は、人格ほど大きな影響を及ぼさない、とも話しています。
性別も色の好みに必ず影響するわけではありません。
「性別に基づく一般論はできません。私が知っている女性で、テールライトの形が気に入らない車
は買わないという人がいます。色は関係ないのだそうです」とガイドス博士は話します。
個人の色の好みは、左脳と右脳のいずれが優勢か、という点に関連しているとも考えられます。左
脳型の人は、意思決定において、論理的、分析的かつ客観的な傾向が見られる、とガイドス博士
は話します。また、左脳型の人は、美観よりも実用性によって強く影響される可能性があります。
例えば、左脳の優勢な人は、汚れの目立たない色や暗闇で目立つ色を好むかもしれないので
す。
これに対して、右脳で考える人は、その思考が、より直感的でランダムなことが多くなります。「部
分」よりも「全体」を見る傾向が強く、論理よりも主観的要因に強く影響されます。右脳型の人は、
ごく自然に色を選択する傾向が強いのです。
色の本当の意味とは
人気色の予測は、使える色の種類があまりにも多いために複雑化している、とガイドス博士は話し
ています。確かに自動車メーカーは広範な色彩や色彩効果を新車に使っていますが、テキサス
州の精神分析医スティーブン・R・バスケス氏のような専門家は、一定の色彩連想が一般的に成立
するという考え方に賛同しています。同氏は、Emotional Transformation Therapy(感情転換療法)
の考案者です。
レッド又はライトバイオレット ― 情熱
濃いレッド ― 安心感
ブルー ― コミュニケーション
ブルーグリーン ― 完全性
インディゴ ― 理解
イエローグリーン ― 力をもつこと/自己主張
オレンジ ― 自尊心/自信
世界の自動車産業をサポートするデュポン
デュポン社、色と塗料の専門知識のほか、ホース、ベルトその他部品用のエラストマー、成形部品
用のエンジニアリングプラスチック、超小型回路、フレキシブル回路、プリント回路用の電子製品、
各種ポリエステルフィルムなど、幅広い製品を供給し、世界の自動車産業と運輸産業を支えてい
ます。
また、合わせガラス製品、燃料電池部品、冷媒、断熱材などもデュポンの製品です。デュポンでは、
石油資源に対する依存を減らし、車両の軽量化と燃費の向上をもたらす様々な繊維、エンジニア
リングポリマー、燃料など、持続可能なバイオベース材料を導入すべく積極的な活動を展開して
います。
デュポンは、科学的な発見や発明を基盤に製品やサービスを提供する企業です。創立は 1802
年、本社は米国デラウェア州ウィルミントンに置かれています。世界 70 カ国余りに拠点があり、農
業・食品関連、建築・建設、通信、輸送の分野で、革新的な製品やサービスをお届けしています。
世界中の人々の生活をより安全、健康的で豊かにするために、科学の力を生かした持続可能な
ソリューションを創出しています。
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