2016年7月18日 説教補助資料 同仁キリスト教会 飯川雅孝 牧師 これは7月17日の説教の補助資料です。 『天路歴程(The Pilgrim's Progress)』ジョン・バンヤン John Bunyan 著 この書はこの書は世界的古典として、プロテスタントの世界で最も多く読まれた宗教書として評 価が高い。著者の深い信仰体験を寓話としてまとめたため、一読して理解するのではなく、何回も 反芻して、読む都度、著者が得た神からの恩寵をわれわれ読者が自分の信仰生活に照らして共感で きるのではないだろうか。ジョン・バンヤンは1628年に貧しい鋳かけ職人の子としてベッドフ ォード(ロンドンの中心から西へ約32キロ)に生まれ、1688年に没したイギリスの説教者。 幼少時は手の付けられない腕白、16歳にして王と議会の対立するイギリスの政治的混乱の中で国 王に対立するクロムウェル(彼は清教徒として極めて清廉潔白で、自身の軍にもその規律をもとめ た。)の軍に入った。ある包囲網の攻撃に配備されたが、仲間の希望で交代したところ、その男は 頭を狙撃されて即死した。溺死の危険、毒蛇の被害などで死にそうな体験した。彼の持つ罪責感は ルターやトルストイのように通常の人が持つ以上に痛切である。しかし、深い嘆きの底から神の救 いに向かう思いは試みに遭う者に「神は自分を見捨てない。」との確信に導く。この書が真摯な信 仰者を力付けている所以であろう。20歳の時、信仰心厚い若い娘と結婚する。彼女の持参金はわ ずか本2冊、アーサー・デントの 『遇直な者の天国への旅路』Plain Man's Pathway to Heaven と ルイス・ベイリーの 『信仰の実践』Practice of Piety。彼が貧困の中にあって妻と共に読んだと 報告者は考える。彼は熱狂的な信仰を得ても、酷い内面的な苦悩に苛まれる。彼は民衆の強い支持 を得ながらも、説教するとイギリス国教会徒ではないと言う理由で12年間も投獄された。また自 分の生きるこの世を敵の手に渡したのである。彼の手記によれば「神に仕える伝道のため、牢獄に 12年間も入れられたことは、愛する家族に対してわたしは死んだものとみなされ、この世の腐敗 との戦いのためにその渦中に身を置かなければならない。・・妻やかわいい子らと別れることは、 わたしの骨から肉を引きむしるような思い。ことに他の誰よりも可愛がっていた盲目の娘と別れる のはつらかった。おまえはこの世ではなんという悲しみを背負わされているであろう。・・・・今 のわたしは風がお前に吹き付けるのさえ忍べないのに。・・・みんなを神のみ手に任さなければな らない。(報告者の感想の要約)」神はジョン・バンヤンにこのような苦しみを与え、12年の獄 中生活の後、再びご自身の道をこの世に伝えるためにバンヤンを用いた。 1 『天路歴程』の全体の流れ:太字はクリスチャンへの励まし、細字は苦難 1.破滅の町 2. 道徳山の災難 3. 狭き門とイエスの十 字架の丘 4. 困難な山と 美しい宮殿 ・クリスチャンは罪の重荷に ・俗世の住民である世慣 ・狭き門に着くと善意の ・困難な山の途中、臆病 苦しむ。 れた者は道徳という町に 人は「正しい道は真直ぐ 者と疑い深い者が引っ返 ・伝道者は来るべき神の怒 行き、遵法者に聞けと言 で狭い」と教え、解き明 して来て、ライオンがいて りから逃れよと巻物を渡す う かす人へと送った。解き 危険だから行くなと言う。 ・クリスチャンは天国を目 ・クリスチャン道徳山で苦 明かす人は正しい者の ・行くと門番が鎖があるか 指して出発。 難に遭う。自分の力で神 復活を教え、イエスの十 らと教えてくれるたので通 ・頑固者は伝道者を否定す の律法を全うしようとする 字架の丘を案内した。そ 過。信仰的注意の喚起 る。 傲慢 こでクリスチャンは罪赦 ・美しい宮殿では巡礼者 意志薄弱者は初めは着いて ・伝道者は背いたクリスチ すイエスの血を見て感謝 を励まし、旅のため武装 行くがすぐ逃げる 5. 5.屈辱の谷と 死の陰の谷 ・屈辱の谷では破滅の町の ャンを叱責するが赦す。 し、重荷が降りた。 してくれる。 6.旅の出会い 7.虚栄の市 8.命の川 と疑いの城・ (信仰者と偽信仰者) (信仰者の殉教) ・信仰者という良き友が道 ・二人は悪名高い虚栄の 橋のない川 ・虚栄の市で見ていた希 支配者アポルオン(悪魔)が 連れになり、心地よい旅を 市に入る。人々はふしだら 望を抱く者が加わる。彼 クリスチャンを殺そうとする 共にする。 が、美しい宮殿でもらった武 ・おしゃべりな者が仲間 で、下品なことばで話し、く らは命の川で生気を得た だらないものばかり販売。 が、絶望させる巨人に疑 器で勝つ。 に入る。信仰者は初め信 二人は騒乱罪で火あぶり いの城で殺されそうにな ・死の谷ではもっと恐ろしい ずるが、彼に罪意識がな の刑で信仰者は殉教し、 るが、約束の鍵で逃れ 危険があったが祈りの一本 いことを知り、騙される危 天国の迎が来る。クリスチ る。橋のない川も、信仰 槍で勝つ。 険を脱する。 ャンは免れる。 で助かる。 1.出発(クリスチャンは故郷の破滅の町から出て行く) クリスチャンという名の主人公は聖書を読んで、神の示された真理に捕らえられる。人間は罪と いう重荷を追っている。死ぬ運命にあり、その後は神の審判に遭うのに自分はその準備が出来て いない。「一体どうしよう。神の怒りから救われる道はないのか。」と半狂乱になっている。こ の破滅の町から出て行かなければならない。家族に言っても理解してもらえない。 そこに伝道者(Evangelist)という導き手に会う。伝道者はクリスチャンがこの世がこんなに 苦しいことで満ちているのになぜ死にたくないかと聞く。彼は自分のこの重荷が地獄の底まで 落とすので泣かざるを得ないと言う。それに対して、伝道者は「来るべき神の怒りから逃れよ」 と書いてある巻物 を渡し、はるか向こうの狭き門(wicket-gate)に行けばなすべきことが教 えられると指示する。彼は「命、命、永遠の命!」と叫んで道を目指した。彼を引き戻そうと、 頑固者と意志薄弱者が説得を試みる。頑固者は失敗し、意志薄弱者は初めは付いて行くが底な しの沼に落ちる困難に会うと怒って戻ってしまう。初めに水を掛けよという教訓。 2 2.世に慣れた者(Worldly Wiseman)に会う。彼は俗世(carnal policy)の住民。彼はクリ スチャンの重荷を負った足取りを見て助言する。彼はこの世の知識に基づき、重荷を下ろす 解決策として、道徳(Morality)という町に遵法者(Legality)という評判の良い人のとこ ろに行って話を聞くようにガイドする。しかし、道徳では神の戒めは守れない。そこに行こ うとすると高い山に阻まれ、その頂は崩れそうになる。また山からの火の閃光のため苦しん だ。結局、神の教えを道徳として守ろうとすることは人を苦しめるだけであることを知る。 伝道者がそこに現れ、叱責し、元の道に戻す。道を志す者には岐路がある。 3. 狭き門(wicket-gate)と解き明かす人(the interpreter’s House) 「叩けよ、さらば開かれん。」と門に書いてある家に着くと、善意の人(Good-Will)という人が出て来た。 しかし、その近くには堅固な城があり、悪魔がいて彼らに戦いを挑み、巡礼者たちを見つけると取り 入れて殺してしまう所であった。善意の人は神から逸れる道に注意し、「正しい道は真直ぐで、狭 い。」と、キリストに会うまでは重荷に耐えながら進みなさいと言った。やがて解き明かす人の家に来 ると、ある勇気ある者が戦を挑み、そこを潜り抜けると歓喜の中を宮殿の中に導かれるのを見た。また、 彼はクリスチャンに審判の時は天使を引き連れたキリストが毒麦と正しいものを振り分け、正しいもの を復活させた夢を伝え、彼の心構えを正した。彼はクリスチャンの道はこの世の悪に対して審判の恐 れを抱きつつも希望を持ち、「救いの垣根」で守られていることを話し、十字架の丘を案内した。そこ で彼はご自身の血を流して彼の罪を赦すイエスの愛に触れ、罪の重荷から解き放たれた。彼は涙を 流して感謝した。そこに3人の光輝く者が現れ、初めの者は「平安あれ。あなたの罪は赦された。」と、 第二の者はボロを脱がせ、新しい服を着せた。第三の者は彼の額に徴を付け、巻物を与え、天の門 で差し出すように命じ、そこを去った。 4. 登るに困難な山と美しい宮殿(The Hill Difficulty and The Palace Beautiful) 彼は巡礼者の登らなければならない困難な山を喘ぎ喘ぎ上って行くとそこに休憩場があった ので眠ってしまった。そこに「なまけ者よ、蟻のところに行ってそれを見てかしこくなれと」 という言葉を聞いて目を覚ました。急いで行くと臆病者と疑い深い者が自分たちもあなたと 同じシオンの山を目指して来たが、先は危険で二頭のライオンがいるから戻って来たと言う。 彼は非常に不安になった。それは天国への通行証となる巻物を落として来たからだ。慌てて 戻り見つけられたので神に感謝した。しかし、深く後悔して泣いた。そのうち、美しい宮殿 を前にしてライオンのところに来て怖くなって通れないと思った。しかし、そこにいた門番 がライオンは鎖に繋がれているからと彼に教えてくれたので、恐れながらもそこを通過した、 注意深さが彼に欠けていた。とうとう、巡礼者たちのために主が建てられた美しい宮殿に着 いた。そこでは明子(Discretion)という娘さんが優しく迎えてくれ、他に聡子、敬子、愛 子(Prudence,Piety,Charity)という娘さんたちとも良き話し合いを持った。次の日、遠方 にある歓喜の山を見せ、森、ぶどう、果物、花、湧水の美しい山を見せた。そこは神共にい ます(インマヌエル)地で、そこは羊飼いが天の都を見せてくれると言う。旅の武装を彼に させて送り出した。 5. 屈辱の谷(The Valley of Humiliation)と死の陰の谷(The Valley of the Shadow of Death) 3 天国に行くためにはクリスチャンは屈辱の谷と死の陰の谷を通らなければならない。初めに アポルオン(悪魔)が襲って来た。魚の鱗、熊の足、龍の翼を持ち、腹から火と煙を吐き、 口はライオンのようであった。その怪物はクリスチャンのいた破滅の町の支配者で裏切り者 は帰らないと殺すと言う。キリストに対する押し問答が始まる。クリスチャンはキリストが すぐ助けないのは試すためだと言う。彼は自分の町に戻れば楽になると言う。いやお前の支 配下では苦しみのみだと言う。クリスチャンの最後は恥ずべき死に方だ。いや、それは栄光 に包まれた殉教だ。おまえはこの巡礼の旅でもキリストに不忠実であった。出発で泥沼には まり気落ちした。間違った道徳の道に迷いこんだ。怠けて居眠りをして巻物を落とした。ラ イオンを恐れて戻ろうとした。クリスチャンはそれに対してキリストの憐みによって赦し、 再び召して下さっていると反論した。ここで両者は剣を抜いて死闘する。クリスチャンは疲 れて命を取られそうになるが、美しい宮殿で娘さんたちが武装してくれたおかげで持ちこた え、アポルオンを撃退した。苦難の時、勝ち得て余りがあった。悪は神によって屈辱させられる。 次に死の陰の谷ではもっと恐ろしいことがあった。預言者エレミヤは「あの荒野、荒涼とし た、穴だらけの地 乾ききった、暗黒の地 だれひとりそこを通らず 人の住まない地(2: 6)。」 そこで、竜のような獣と戦ったが祈りの一本槍で凌ぐことができた。前方で「死の陰の谷を 行くときも わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる。」という声を聞 いて、自分と同じように神を畏れる人がいることを聞いて希望を持った。 6. 信仰深い者(Faithful)と おしゃべりな者(Talkative) クリスチャンには旅の途中、心を同じくする信仰深い者という良き友が現れ、共に喜びにあ ふれた旅をするようになった。しかし、途中でおしゃべりな者が仲間に入った。信仰深い者は 初めは彼のいろいろ知っていることに驚き、良き道連れと思ったが、クリスチャンから、彼に は罪の意識がないこと、邪悪な生活によって多くの人を躓かせる者であることを教えられる。 口で言うことと行いが伴わなければ形骸に過ぎないこと、良い木は良い実を結び、悪い木は悪 い実を結ぶことを教えられる。信仰者でも相手が分からないことがあるとの教訓。 7. 虚栄の市(Vanity Fair) クリスチャンと信仰者は虚栄の市が開かれている町を通らなければならなかった。五千年も 前から巡礼者たちが通る町に、この市をベルゼブル、アポルオン、レギオンという善くない輩 が市を開いた。住民はふしだらで、二人の巡礼者にとって彼らの言葉は聞き慣れない下品なも のであった。売る商品のすべては巡礼者にとっては価値のあるものではなかった。町の商人が 二人に何が欲しいかというと「真理が欲しい」と答える。町中が彼らを訴える理由が出来た。 二人はどんなに侮辱を加えようと、悪に対して善意を持って答えた。町の中にはわずかだがこ れを見て二人に味方する人たちも出たので、町中は一層逆上して混乱した。町中を騒がした廉 で彼らは裁判に掛けられ、火あぶりの刑が執行されることになった。まず、信仰者がそうされ た。しかし、その後ろで待っていた二頭立ての兵車が彼を載せてラッパの音と共に天国に乗せ て行った。クリスチャンは牢獄に戻されたが、神は彼をそこから解き、次の道を進ませた。ジ 4 ョン・バンヤンはまさにこの世に遣わされ、そのような悪の強い現実を見た。 8. 希望を抱く者(Hopeful)と人を絶望させる巨人(Giant Despair) 虚栄の町でクリスチャンと信仰者の行動に感激した希望を抱く者がクリスチャンに申し出 て巡礼を共にするようになった。彼らの先を行く、下心という者に会って、いろいろ話を聞 くと、彼は巧言令色という町の出身であることが分かるのだが、自分はそういう者ではない、 それは勝手に他人が付けた名であると言い張る。二人はそれを見透かして、もし彼が反省し て自分を変えなければ旅の友ではないと突き放す。次いで二人の巡礼者はダビデが神の川、 ヨハネが命の水の川に着いた。そこで二人は喜んで歩き、その水を飲んだが心を癒し生気を 与えれた。傍には良き牧草が育っていた。また行くと川と水が分かれたが、どちらが良いか 分からず、クリスチャンの選んだ道を歩んだ。結果的にそれは間違っていた。クリスチャン 自身もこういう経験がある。それから彼らは疑いの城で人を絶望させる巨人に捕まって何日 間も牢に入れられたが、出発の初めに伝道者から渡された約束という鍵で牢を抜け出した。 その後、楽しい軽やかな旅を続けたが、天国に行く前にまだ困難が待ち受けていた。橋のな い川を自力で進むことになるが、神を信ずるかどうかにより、その川は浅くも深くもなる。 二人は互いに励まし合った。沈みそうになる時、「イエス・キリストが癒して下さる」と信 じて乗り越えることができた。 9. 天の都(Celestial City)彼らが受け入れられた都は黙示録が示している (以下報告者の解釈)。 「わたしはまた、新しい天と新しい地を見た。最初の天と最初の地は去って行き、もはや海もなくな った。 更にわたしは、聖なる都、新しいエルサレムが、夫のために着飾った花嫁のように用意を整え て、神のもとを離れ、天から下って来るのを見た。そのとき、わたしは玉座から語りかける大きな声を 聞いた。「見よ、神の幕屋が人の間にあって、神が人と共に住み、人は神の民となる。神は自ら人と 共にいて、その神となり、彼らの目の涙をことごとくぬぐい取ってくださる。もはや死はなく、もはや悲 しみも嘆きも労苦もない。最初のものは過ぎ去ったからである。」」(黙示録 21:1-4)そこではセラピ ムが「彼らは、昼も夜も絶え間なく言い続けた。「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、全能者である 神、主、かつておられ、今おられ、やがて来られる方。」と(同4:8) 5
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