動物の輸入届出制度について(2) 感染症法の見直しと動物検疫 動物由来感染症のアウトブレイクを阻止するためには、各感染症の実態を把握する必要があ るが、野生動物では一部サーベランスが行われたもの以外、満足なデータを入手することは困 難です。このことから動物由来感染症の国内への侵入を阻止するという観点から動物検疫の 制度が今回見直される事となった。 動物由来感染症のリスク管理 現行法 リスク 新管理方式 輸入禁止 輸入禁止:サル(アフリカ)プレーリード サル(アフリカ) ッグ、ハクビシン、コウモリ、マストミス プレーリードック 非繁殖げっ歯類 検疫 検疫:サル(アジア、南米)犬、猫、キツネ スカンク、アライグマ サル(アジア、南米) 犬、猫、キツネ 係留:鳥類(WNV フリー証明なし) スカンク、アライグマ その他の動物については 完全にフリー 届出(衛生証明書、特定病原体フリー証明) : 繁殖げっ歯類(繁殖施設登録、健康証明書他) 、その他の哺乳類(届出) 鳥類(繁殖 WNV フリー証明書) 国内での衛生管理: モニタリング:届出輸入動物の抜き取りモニタリング 衛生管理:輸入業者、動物取り扱い者の衛生管理 サーベランス:野生動物サーベランス 侵入動物(鼠族、昆虫)サーベランス 情報提供:動物由来感染症の情報提供、人材育成 1 動物別感染症重要度分類 動 物 対象動物 感染症の重要性 レベル5 レベル4 レベル3 霊長類 エボラ出血熱, マールブルク 病 B ウイルス病 黄熱 赤痢、アメーバ赤痢、サル 痘、結核、デング熱、デン グ出血熱 げっ歯類、ベクター (鼠属、節足動物な ど侵入動物を含む) 狂犬病 ラッサ熱、ペス ト、HPS、HFRS、 クリミア・コンゴ 出血熱、黄熱 日本脳炎、LCM、トリパノ ソーマ症、デング熱、デン グ出血熱、サル痘、マラリ ア、リフトバレー熱、Q 熱 サルモネラ症、ツツガムシ 病、日本紅斑熱、ライム病、 レプトスピラ症 レプトスピラ症、ライム病 野兎病、エキノコックス症 トリパノソーマ症 Ⅰ Ⅱ 食肉類(イヌ、猫等) 狂犬病 翼手類(コウモリ) 狂犬病 リッサ、ヘンドラ ニパウイルス病 鳥類 西ナイル熱、クリ ミア・コンゴ出血 熱 Ⅲ 両生類・爬虫類 家畜 レベル2 発疹熱、鼠咬症、 回帰熱、発疹チフ ス、リーシュマニ ア症、 広東住血 線虫病 仮性結核、トキソ プラズマ症、リー シュマニア症 オウム病、ライム病、高病 原性トリインフルエンザ レベル1 糞線虫症、ジアルジ ア症、エルシニア 症、カンピロバクタ ー症 エルシニア症、カン ピロバクター症 トキソカラ症、パス ツレラ症、アライグ マ回虫症、ジアルジ ア症、糞線虫症、ネ コひっかき病 クリプトコックス 症 サルモネラ症 狂犬病 炭疽、クリミア・ コンゴ出血熱 Ⅳ リフトバレー熱、結核 、 O157、リステリア症、 サルモネラ症、エキノコッ クス症、Q熱、レプトスピ ラ症、ライム病 鼻疽、プルセラ 症、トキソプラズ マ症 クリプトスポリジ ウム症、ジアルジア 症、エルシニア症、 類丹毒カンピロバ クター症、肝蛭 動物別感染症の重要度分類は、感染症の推移に伴い平成9年度WG(ワーキン ググループ)の評価から一部変更した。 ・ エボラ出血熱、マールブルグ病と並んで、狂犬病を最も危険性の高い感染症 (レベル5)とした。 狂犬病が世界的に制圧できておらず、国内に侵入する可能性がある。 発症後、治療法がなく100%死亡する為。 ・ 黄熱及び炭疽は、あるが発症時の重篤性や致死量が高い為にレベル4とした。 ・ 日本脳炎、Q熱、サルモネラ症、日本紅斑熱、ツツガムシ病、ライム病、野兎病レ プトスピラ症、エキノコックス症(多包虫及び単包虫)、トリパノソーマ症腸管出 血性大腸菌症、リステリア症についてはワクチンの有無、発症時の臨床症状重症化 率を基にレベル3とした。 ・ エルシニア症、類丹毒、カンピロバクター症に関しては発症率、臨床症状、の有無 などをもとにレベル1とした。 2 輸入動物への公衆衛生対策の概要 強 規制対象(全ての哺乳動物と鳥類) 弱 禁止動物 検疫動物 届出動物 アフリカのサル 他の地域のサル げっ歯類(約80万匹) プレーリードック (約5千匹) その他の哺乳類(数万匹) ハクビシン等 × 鳥類(約20万匹) 1.地域の指定 1.必要事項の届出 2.係留検査の実施 2.衛生証明書の添付 3.衛生証明書の添付 事前届出(農水省) 届出事項と衛生証明書の確認(厚労省) 係留検査(農水省) 結果判定(農水省) 輸入届出の受理(厚労省) 動物の国内流通(動物取り扱い者の責務) 今回の感染症法の見直しは、リスクレベルの評価と動物由来感染症重要度分類のレベル を組み合わせ付帯評価とした上で包括的リスク分析として、地域・動物種別総合評価を し、従来の輸入全面禁止あるいはフリーの二者択一でなく、リスクに応じた多様性のあ る行政対応になっている。 参考資料;「人獣共通感染症について」 吉川 泰弘 (感染症の見直しなど最近の話題から) 3
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