3)循環器系

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第2章
人体の働きと医薬品
3)循環器系
体液(血液やリンパ液)を体内に循環させ、酸素、栄養分等を
全身の組織へ送り、老廃物を排泄器官へ運ぶための器官系で、心
リンパ液
リンパ管内を流れる体液のこと。毛細血管から浸み出
ひぞう
臓、血管系、血液、脾臓、リンパ系からなる。
した後、血管内に回収しきれなかった血漿成分が元に
へ い さ じゅんかん
血管系が心臓を中心とする閉じた管(閉鎖 循 環 系)であるの
に対して、リンパ系は末端がリンパ毛細管となって組織の中に開
なっているので、血漿とリンパ液はよく似た成分から
なる。
かいほう
いている開放循環系である。
閉鎖循環器系と開放循環器系
・血管系:閉鎖循環系[心臓→動脈→毛細血管→静脈→心臓]
・リンパ系:開放循環系[(組織間質液)→リンパ毛細管→リンパ管→リンパ節→リンパ管→(左鎖骨下静脈)]
心筋
心臓を構成する筋肉のこと。収縮・弛緩を繰り返すこ
(a) 心臓
とにより、血液を拍出する役割を担う。筋線維が規則
しんきん
きょうこつ
心筋でできた握りこぶし大の袋状の臓器で、 胸 骨 の真下に
位置する。血液は心臓がポンプの役目を果たすことによって循
環している。
正しく並んでいることから
横紋筋
に区分される。
また、自分の意思でコントロールすることができない
ので
不随意筋
に分類される。心筋は、強力な力を
生み出すことができ、しかも、疲労することなく継続
しんぼう
しんしつ
くうどう
心臓の内部は上部左右の心房、下部左右の心室の 4 つの空洞
に分かれている。心房で血液を集めて心室に送り、心室から血
はくどう
液を拍出する。このような心臓の動きを拍動という。その際に
血液が確実に一方向に流れるよう、心室には血液を取り込む側
して運動できる特徴をもつ。
心臓
心臓は、ペースメーカーのように自力で興奮刺激をつ
くりだすことができるので、心臓だけを取り出しても、
ある程度の時間はトックントックンと拍動を繰り返す
べん
と送り出す側にそれぞれ弁があり、拍動と協調して交互に開閉
ことができる。このペースメーカー機能は、房洞結節
する。
(心臓の一つの部位)と呼ばれる部分にあり、ここで
う しんぼう
う しんしつ
心臓の右側部分(右心房、右心室)は、全身から集まってき
た血液を肺へ送り出す。肺でのガス交換が行われた血液は、心
さ
生み出された興奮刺激が、右心房、右心室、左心房、
左心室の 4 つの部屋に
適切なタイムラグ
をつけて
伝送されることにより、血液を拍出することができる。
さ
臓の左側部分(左心房、左心室)に入り、そこから全身に送り
もし、左心房と左心室の収縮に
出される。
が生じない場合には、左心室に血液が満たされないう
適切なタイムラグ
ちに収縮が始まり、血液をうまく拍出することができ
なくなる。心室頻拍とは、心臓がこのような状態とな
っており、酸欠によって失神、あるいは死亡の原因と
もなる。なお、心臓の拍動の強弱や間隔は、自律神経
系による調節を受けている。
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第2章
人体の働きと医薬品
全身へ拍出
肺へ拍出
肺より
左心房
心房
右心房
心室
左心室
心筋
全身より
右心室
心臓の構造
右
左
心臓内での血液の流れ
(全身より)→右心房→右心室→(肺)→左心房→左心室→(全身へ)
(b) 血管系(動脈、静脈、毛細血管)
血液が血管中を流れる方向は一定しており、心臓から拍出さ
れた血液を送る血管を動脈、心臓へ戻る血液を送る血管を静脈
自律神経系
神経の機能分類の一つ。神経系は、脳と脊髄から構成
しかん
という。いずれも血管壁が収縮すると血管は細くなり、弛緩す
じりつ
ると拡張し、心拍数と同様に自律神経系によって制御される。
動脈は弾力性があり、圧力がかかっても耐えられるようにな
けいぶ
っている xi。動脈の多くは体の深部を通っているが、頚部、手
される中枢神経系と、それ以外の末梢神経系に分類さ
れる。さらに、末梢神経系は、体性神経系と自律神経
系に分けられる。自律神経系は、無意識的に体の様々
な機能を調節する役割を担い、交感神経系と副交感神
経系の 2 系統から構成されている。
ひじ
首、肘の内側等では皮膚表面近くを通るため、心拍に合わせて
じょうわん
脈がふれる。血管壁にかかる圧力(血圧)は、通常、 上 腕 部の動脈で測定される xii。
静脈は皮膚表面近くを通っている部分が多く、皮膚の上から透けて見える。静脈にかかる圧力は比較的低いた
め、血管壁は動脈よりも薄い。四肢を通る静脈では血流が重力の影響を受けやすいため、一定の間隔をおいて内
腔に向かう薄い帆状のひだ(静脈弁)が発達して血液の逆流を防いでいる。
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毛細血管は、動脈と静脈の間をつなぐように体中の組織に細
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門脈
心臓を流れ出た血液は、通常、動脈→毛細血管→静脈
かく張り巡らされている細い血管である。毛細血管の薄い血管
を経由して、再び心臓に回帰する。しかし、動脈→毛
壁を通して、酸素と栄養分が血液中から組織へ運び込まれ、そ
細血管→
門脈
→毛細血管→静脈と流れて、心臓に
れと交換に二酸化炭素や老廃物が組織から血液中へ取り込ま
回帰する場合もある。このように、毛細血管と毛細血
れる。
管をつなぐ太い血管のことを、門脈という。消化管と
もんみゃく
肝臓をつなぐ門脈は、 肝門脈 と呼ばれ、重要な役割
消化管壁を通っている毛細血管の大部分は、 門 脈 と呼ばれ
を担っている。ヒトは、経験や舌先の感覚等で判断し
る血管に集まって肝臓に入る。消化管ではアルコール、毒素等
て、食べ物と判断したものを摂取しているが、場合に
のように生体に悪影響を及ぼす物質が取り込まれることがあ
よっては有毒成分が含まれることもある。消化管より
るため、消化管で吸収された物質が一度肝臓を通って代謝や解
吸収された有毒成分が、ただちに全身循環血に移行し
てしまうと、全身の諸器官が深刻なダメージを受けて
毒を受けた後に、血流に乗って全身を循環する仕組みとなって
しまうことから、消化管吸収された物質は、先ず、高
いる。
い解毒能力をもつ肝臓へと運ばれ、代謝・解毒される
仕組みとなっている。
xi
血漿中の過剰なコレステロールが血管の内壁に蓄積すると、血液が
流れにくくなるとともに、動脈ではその弾力性が損なわれてもろくなる。
xii
心臓が収縮したときの血圧を最大血圧、心臓が弛緩したときの血圧(心臓には圧がかからなくても、血管には血管壁の持
つ弾力のためある程度の圧がある)を最小血圧という。
(c) 血液
血液は、血漿と血球からなり、酸素や栄養分を全身の組織に
ホルモン
供給し、二酸化炭素や老廃物を排泄器官へ運ぶほか、ホルモン
組織で産生・分泌され、異なる組織において、生理作用
の運搬によって体内各所の器官・組織相互の連絡を図る役割も
を発現する物質のこと。蛋白質、ペプチド、アミノ酸
おんねつ
ある。また、血液の循環によって、体内で発生した温熱が体表、
し
誘導体、ステロイド骨格等を持つものが存在する。
し
肺、四肢の末端等に分配され、全身の温度をある程度均等に保
つのに役立っている。
血液の役割
アルブミン
・酸素と栄養分、二酸化炭素と老廃物を輸送する。
血漿中に含まれる蛋白質の過半を占めており、血漿浸
・ホルモンを運搬する。
透圧の維持し、組織中の水分を血管内に呼び戻す役割
・温熱を配送する。
も果たしている。栄養失調等が原因でアルブミンの生
成能力が衰えると、血漿浸透圧が低下することから下
腹部浮腫の原因ともなる。また、アルブミンは、低分
① 血漿
子化合物と複合体を形成し、それらの物質を安定した
たん
90%以上が水分からなり、アルブミン、グロブリン等の蛋
ぱくしつ
ししつ
とうしつ
でんかいしつ
を含む)は、しばしば肝臓での抱合・分解処理、腎臓で
白質のほか、微量の脂質、糖質、電解質を含む。
しんとうあつ
状態とすることができる。低分子化合物(医薬品成分
けっしょう
アルブミンは、血液の浸透圧を保持する( 血 漿 成分が血
も
管から組織中に漏れ出るのを防ぐ)働きがあるほか、ホルモ
の排泄処理の対象となるが、アルブミンに吸着した状
態では肝臓や腎臓での代謝を受けにくくなるので、血
中に長期間存在することが可能となる。
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ンや医薬品の成分等と複合体を形成して、それらが血液によ
第2章
人体の働きと医薬品
リポ蛋白質
って運ばれるときに代謝や排泄を受けにくくする。
コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)は脂質
グロブリンは、その多くが、免疫反応において、体内に侵
成分であるので、そのままでは水性の性質をもつ血漿
入した細菌やウイルス等の異物を特異的に認識する抗体と
に溶け込むことができない。そこで、リポ蛋白質と呼
めんえき
しての役割を担うため、そういったものは免疫グロブリンと
ばれる
ミセル構造
をつくり、その構成成分となる
けんだく
ことによって、血漿中に懸濁した状態で存在している。
も呼ばれる。
脂質(中性脂肪、コレステロール等)は、血漿中の蛋白質
と結合してリポ蛋白質を形成し、血漿中に分散している。なお、血液の粘稠性は、主として血漿の水分量や赤
血球の量で決まり、血中脂質量はほとんど影響を与えない xiii。
xiii
ねんちょう
高脂血症や動脈硬化症に伴う血行障害は、血管の病変によるものであり、血液自体の 粘 稠 性とは直接関係しない。
② 血球(赤血球、白血球、血小板)
【赤血球】
えんばん
中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約 40%を占
けつしきそ
ヘモグロビン
赤血球には、ヘム鉄とグロビンとが結合した色素蛋白
め xiv、赤い血色素(ヘモグロビン)を含む。
ヘモグロビンは鉄分と結合した蛋白質で、酸素量の多いと
質が存在しており、これがヘモグロビンのことである。
ヘモグロビンは、酸素濃度の高い肺胞周囲において、
ころ(肺胞の毛細血管)で酸素分子と結合し、酸素が少なく
酸素と結合してオキシヘモグロビンとなり、一方、酸
まっしょう
二酸化炭素が多いところ( 末 梢 組織の毛細血管)で酸素分子
素濃度の低い末梢では、酸素を手放し、組織に酸素を
を放出する性質がある。このようなヘモグロビンの性質によ
供給する働きを行う。
って、肺で取り込まれた酸素が、全身の組織へ供給される(二
けっしょう
酸化炭素はヘモグロビンとほとんど結合せず、血 漿 中に溶け
込んで末梢組織から肺へ運ばれる)。
骨髄
骨の中に存在する柔組織のことで、この部分に造血幹
細胞が存在している。造血幹細胞が分化を重ねること
により、赤血球の他に、白血球、血小板が産生される。
こつずい
赤血球は骨髄で産生されるが、赤血球の数が少なすぎたり、
xv
赤血球中のヘモグロビン量が欠乏すると、血液は酸素を十分に供給できず、疲労や血色不良などの貧血症状
が現れる。その原因としては、食事の偏りや胃腸障害等のため赤血球の産生に必要なビタミンが不足すること
げっけい か
た
による場合(ビタミン欠乏性貧血)や、月経過多や消化管出血等による血液損失等のためヘモグロビンの生合
成に必要な鉄分が不足することによる場合(鉄欠乏性貧血)などがある。
xiv
xv
ひょうこう
標 高 の高い土地での生活や重度の喫煙など、酸素が少ない環境で長期間過ごすと、血液中の赤血球の割合が増加する。
きりつせい
ぞく
心臓機能や自律神経系の障害による立ちくらみ(起立性低血圧)やめまいなどの症状が俗に貧血と呼ばれることがあり、誤
って混同されやすい。
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【白血球】
第2章
人体の働きと医薬品
好中球
体内に侵入した細菌やウイルス等の異物に対する防御を
受け持つ細胞である。形態や機能等の違いにより、数種類
強い貪食作用(食作用のこと)を示し、生体内に侵襲
した細菌等を排除する役割を担っている。普段は骨髄
内に存在しているが、炎症や細菌の侵入を感知すると、
に細分類される。
炎症部位に向かって遊走し、これらの異物の排除を行
こうちゅうきゅう
(1) 好 中 球 は、最も数が多く、白血球の約 60%を占め
う。
ている。血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むことがで
白血球
き、感染が起きた組織に遊走して集まり、細菌やウイルス
人体におよそ 2 兆個が存在して免疫の役割を担ってお
り、顆粒球、リンパ球、単球等に分類することができ
しょく
等を 食 作用によって取り込んで分解する。(2) リンパ球は、
白血球の約 1/3 を占め、血液のほかリンパ液にも分布して
ひぞう
循環している。リンパ節、脾臓等のリンパ組織で増殖し、
細菌、ウイルス等の異物を認識したり(T 細胞リンパ球)、
る。顆粒球は好中球、好酸球、好塩基球に、リンパ球
は T 細胞リンパ球、B 細胞リンパ球などに区分される。
リンパ節
リンパ管の途中に位置する。リンパ節の内部には、多
量のリンパ球が密集して存在しており、高い免疫活性
それらに対する抗体(免疫グロブリン)を産生する(B 細
をもつ。
たんきゅう
胞リンパ球)
。(3) 単 球 は、白血球の約 5%と少ないが最も
大きく、強い食作用を持つ。血管壁を通り抜けて組織の中
に入り込むことができ、組織の中ではマクロファージ
脾臓
腹腔の左上部、横隔膜に接したところに存在する臓器。
リンパ球の成熟する場であり、また、古くなった赤血
球がマクロファージにより処理される場となってい
どんしょく
( 貪 食 細胞)と呼ばれる。(4) これらのほか、アレルギー
に関与する白血球もある。
る。ちなみに、中医学という
でいう
きょうどう
これら種々の白血球が 協 働 して、生体の免疫機能が発揮
される。感染や炎症などが起きると全体の数が増加すると
膵臓
脾臓
とは、西洋医学
をさす。
単球
血流を流れる以外に、アメーバ運動により血管外に移
動することもでき、各組織に定住したものはマクロフ
ともに、種類ごとの割合も変化する。
ァージと呼ばれる。細菌を貪食してこれを排除すると
ともに、T 細胞リンパ球に抗原(細菌を分解した断片の
こと)を提示する役割を担う。
【血小板】
血管が破れたり切れたりすると、血液が血管外に漏れ出
す。血管だけでなく皮膚まで傷ついて血液が体の外に流れ
がいしゅつけつ
出す出血(外 出 血 )に対し、血液が組織の隙間や器官の内
血小板
骨髄の造血幹細胞より分化して産生され、核をもたな
い細胞体である。損傷した血管壁の様々な刺激物質に
ない
部に流れ込むことを内出血という。生体には損傷した血管
けっしょうばん
からの血液の流出を抑える仕組みが備わっており、血 小 板
反応して、血小板の形態が変化し、また、細胞膜に 接
着因子
が発現することにより、血管壁や他の血小板
との結合性が出現する。血小板の顆粒内には、血液凝
がその仕組みにおいて重要な役割を担っている。
固に関係する種々の因子が存在しており、これらが放
損傷した血管は、血管壁が収縮することで血流を減少さ
出されることにより血小板凝集反応が促進する。なお、
せ、大量の血液が流出するのを防ぐ。同時に、損傷部位に
血液中の血小板数が減少した状態を血小板減少症とい
血小板が粘着、凝集して傷口を覆う。このとき血小板から
い、血が止まりにくくなり、また、傷がないのに出血
放出される酵素によって血液を凝固させる一連の反応が起
が起こる症状が現れる。
こり、血漿蛋白質の一種であるフィブリノゲンが傷口で重
せんい
ぎょうこぶつ
けっぺい
合して線維状のフィブリンとなる。フィブリン線維に赤血球や血小板などが絡まり合い、血の凝固物(血餅xvi)
となって傷口をふさぎ、止血がなされる。
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第2章
人体の働きと医薬品
フィブリノゲン(フィブリノーゲン)
xvi
うわず
けっせい
採血した血液が凝固して血餅が沈殿したときの上澄みを血清と
血液凝固因子の一つ。第Ⅰ因子、あるいは線維素元と
も称される肝臓由来の蛋白質で、他の血液凝固因子の
いい、血漿からフィブリノゲンが除かれたものである。
作用を受けて、フィブリノゲンからフィブリンへと変
換される。その後、フィブリン同士が架橋(イソペプ
チド結合という)してフィブリン線維となり、これに
赤血球や血小板が絡まり合うことにより、強固な凝固
血栓が構築される。
(d) 脾臓
ひだりじょうふく
握りこぶし大のスポンジ状臓器で、胃の後方の 左 上 腹
ひぞう
部に位置する。主な働きは、脾臓内を流れる血液から古く
こ
なった赤血球を濾し取って処理することである。健康な赤
マクロファージ
単球(白血球の一つ)のうち、組織に移動して常在化
したものをマクロファージという。マクロファージの
うち、脳、胸腺、肺、肝臓、脾臓、骨、腹腔に定住す
あみめ
血球には柔軟性があるので脾臓内の網目構造をすり抜けら
れるが、古くなって柔軟性が失われた赤血球は引っかかり、
どんしょく
脾臓の組織に存在するマクロファージ( 貪 食 細胞)によっ
るものが、それぞれ、ミクログリア、胸腺マクロファ
ージ、肺胞マクロファージ、クッパー細胞、脾臓マク
ロファージ、破骨細胞、腹腔マクロファージと呼ばれ
る。食作用により細菌等の排除を行うとともに、細菌
て壊される。
の分解断片を細胞表面に提示し、T 細胞リンパ球を活性
また、脾臓にはリンパ球が増殖、密集する組織(リンパ
化させる役割を担う。また、サイトカイン(細胞間伝
組織)があり、血流中の細菌やウイルス等の異物に対する
達物質の一つ)を分泌して、他の免疫系細胞の活性化
免疫反応が行われる。
や遊走を誘導する働きを行う。
《補足解説》
脾臓では、古くなった赤血球の処理が行われるが、その際、赤血球中のヘモグロビンが分解してビリルビンが
生じる。ビリルビンは、身体にとって不要なものなので、肝臓で胆汁成分となって胆管排泄され、糞便とともに
体外に排出される。糞便が茶褐色をしているのは、ビリルビンの影響によるものである。なお、肝機能が衰える
と、ビリルビンを円滑に胆管排泄することができなくなるので、皮膚や白目の部分が黄色くなるなど黄疸の症状
が現れる。
(e) リンパ系(リンパ液、リンパ管、リンパ節)
リンパ液が循環するリンパ系は、血管系とは半ば独立した循環系として存在する。リンパ系には心臓のように
ポンプの働きをする器官がなく、リンパ液の流れは主に骨格筋の収縮によるものであり、流速は血流に比べて緩
やかである。
にじ
リンパ液は、血漿の一部が毛細血管から組織の中へ滲み出して組織液(組織中の細胞と細胞の間に存在する体
液)となったもので、血漿とほとんど同じ成分からなるが、蛋白質が少なく、リンパ球を含む。組織液は、組織
中の細胞に酸素や栄養分を供給して二酸化炭素や老廃物を回収したのち、そのほとんどは毛細血管で吸収されて
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第2章
人体の働きと医薬品
血液に還元されるが、一部はリンパ管に入ってリンパ液となる。その際、組織中に侵入した細菌、ウイルス等の
異物もリンパ管に取り込まれる。
リンパ管には逆流防止のための弁があって、リンパ液は一定の方向に流れている。リンパ管は互いに合流して
けっせつ
次第に太くなり、最終的に鎖骨の下にある静脈につながるが、途中にリンパ節と呼ばれる結節がある xvii。リンパ
どんしょく
節の内部にはリンパ球やマクロファージ( 貪 食 細胞)が密集していて、リンパ液で運ばれてきた細菌やウイルス
等は、ここで免疫反応によって排除される。
xvii
わき
リンパ節は、首筋、脇の下、もものつけ根に多く集まっており、これらリンパ節が集まっている部位が、俗に「リンパ腺」
と呼ばれることがある。
リンパ系の役割
・毛細血管より漏出した血漿成分を回収する。
・免疫反応により異物を除去する。
■■出題パターンを確認しながら、頭の中を整理しよう■■
問題 1 循環系に関する次の記述のうち、誤っているものを 1 つ選びなさい。
1 循環器系は体液を体内に循環させ、酸素、栄養分等を全身の組織へ送り、老廃物を排泄器官へ運ぶ
ひ
ための器官系で、心臓、血管系、血液、脾臓、リンパ系からなる。
2 心臓の内部は上部左右の心房、下部左右の心室の 4 つの空洞に分かれている。
3
消化管壁を通っている毛細血管の大部分は、門脈と呼ばれる血管に集まって肝臓に入る。消化管で
はアルコール、毒素等のように生体に悪影響を及ぼす物質が取り込まれることがあるため、消化管
で吸収された物質が一度肝臓を通って代謝や解毒を受けた後に、血流に乗って全身を循環する仕組み
となっている。
4 アルブミンは、血液の浸透圧を保持する働きがあるほか、ホルモンや医薬品の成分等と複合体を形
成して、それらが血液によって運ばれるときに代謝や排泄を受けにくくする。
〈鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
平成 20 年 8 月 26 日実施分〉
解答・解説
1
循環器系(心臓、血管系、血液、脾臓、リンパ系)は、体液(血液やリンパ液)を体内に循環させ、酸素、栄養分等を全身
の組織へ送り、老廃物を排泄器官へ運ぶための器官系で、2 系統が存在する。
(1)
血管系:閉鎖循環系〔心臓→動脈毛細血管→静脈→心臓〕
(2)
リンパ系:開放循環系〔(組織間質液)→リンパ毛細管→リンパ管→リンパ節→リンパ管→(左鎖骨下静脈)〕
したがって、「1」は正しい。
2
血液は、次のとおり心臓内を流れる。
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第2章
人体の働きと医薬品
(全身より)→右心房→右心室→(肺)→左心房→左心室→(全身へ)
したがって、「2」は誤りである。
3
心臓を流れ出た血液は、通常、動脈→末梢血管→静脈を経由して、再び心臓に回帰する。しかし、動脈→末梢血管→ 門脈
→末梢血管→静脈と流れて、心臓に回帰する場合もある。このように、末梢血管と末梢血管をつなぐ太い血管のことを門脈と
呼んでいる。とりわけ、人体では消化管と肝臓をつなぐ 肝門脈 が重要な役割を果たしている。ヒトは、経験や舌先の感覚
等で判断して、食べ物と判断したものを摂取しているが、中には、有毒成分の含まれるものを飲食してしまう場合もある。消
化管より吸収された有毒成分が、ただちに全身循環血に移行してしまうと、全身に多大なダメージを受けてしまうことから、
消化管吸収された物質は、先ず、高い解毒能力をもつ肝臓へと運ばれる仕組みとなっている。したがって、「3」は正しい。
4
アルブミンは、血漿中に含まれる蛋白質の過半を占めており、血漿浸透圧の維持し、組織中の水分を血管内に呼び戻す役割
も果たしている。栄養失調等が原因でアルブミンの生成能力が衰えると、血漿浸透圧が低下することから下腹部浮腫の原因と
もなる。また、アルブミンは、低分子化合物と複合体を形成し、それらの物質を安定した状態とすることができる。低分子化
合物(医薬品成分を含む)は、しばしば肝臓での抱合・分解処理、腎臓での排泄処理の対象となるが、アルブミンに吸着した
状態では肝臓や腎臓での代謝を受けにくくなるので、血中に長期間存在することが可能となる。したがって、「4」は正しい。
問題 2 循環器系に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
1 血液が血液中を流れる方向は一定しており、心臓から拍出された血液を送る血管を動脈、心臓へ戻
る血液を送る血管を静脈という。
2 心臓の左側部分(左心房、左心室)は、全身から集まってきた血液を肺へ送り出す。
ひ
こ
3 脾臓は、血液から古くなった赤血球を濾しとって処理するスポンジ状の臓器である。
4 消化管壁を通っている毛細血管の大部分は、門脈と呼ばれる血管に集まって肝臓に入る。
〈京都府
平成 20 年 8 月 31 日実施分〉
解答・解説
1
血液が血管中を流れる方向は一定しており、心臓から拍出された血液を送る血管を動脈、心臓へ戻る血液を送る血管を静脈
という。いずれも血管壁が収縮すると血管の口径が細くなり、弛緩すると拡張する。なお、動脈と静脈の間には、毛細血管が
存在している。したがって、「1」は正しい。
2
血液は、次のような流れで、心臓内を通過する。
(全身より)→右心房→右心室→(肺)→左心房→左心室→(全身へ)
したがって、「2」は誤りである。
3
脾臓は。握りこぶし大のスポンジ状臓器で、脾臓内を流れる血液から古くなった赤血球を濾し取って処理する働きを行う。
古くなって柔軟性が失われた赤血球は脾臓内の網目構造に引っかかり、脾臓の組織に存在するマクロファージ(貪食細胞)に
よる破壊の対象となる。したがって、「3」は正しい。
4
消化管では、生体に悪影響を及ぼす物質が取り込まれることがあるため、消化管壁を通っている毛細血管の大部分は、門脈
と呼ばれる血管に集まって肝臓に入り、ある程度の代謝や解毒を受けた後に、血流に乗って全身を循環する仕組みとなってい
る。したがって、「4」は正しい。
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第2章
人体の働きと医薬品
問題 3 血液に関する記述のうち、正しいものはどれか。
しょう
a
血液は、血 漿 と血球からなり、酸素や栄養分を全身の組織に供給し、二酸化炭素や老廃物を排
出・排泄する器官へ運ぶ。
b
アルブミンは、血液の浸透圧を保持する働きがあるほか、ホルモンや医薬品の成分と複合体を形
成する。
c
血小板は、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物に対する防御を受け持つ細胞である。
d
アルブミンは、免疫反応において、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物を特異的に認識する
抗体としての役割を担う。
〈京都府
平成 20 年 8 月 31 日実施分
改題〉
解答・解説
a
血液の働きは、次のとおりである。
(1)
酸素と栄養分を全身の組織に供給し、二酸化炭素と老廃物を排泄器官に運搬する。
(2)
ホルモンを運搬する。
(3)
温熱を配送する。
したがって、「a」は正しい。
b
アルブミンは、血液の浸透圧を維持し、血漿成分が血管から組織中に漏れ出るのを防ぐ役割を果たしている。栄養失調等が
原因でアルブミンの産生量が減少すると、血液の浸透圧が低下することから、下腹部浮腫の原因ともなる。また、低分子化合
物(医薬品成分を含む)と複合体を形成し、それらの物質を安定した状態とすることができる。低分子化合物は、しばしば肝
臓での抱合・分解処理を受けるが、アルブミンに吸着した状態では肝臓での代謝を受けにくくなるので、血中に長期間存在す
ることが可能となる。したがって、「b」は正しい。
c
白血球 は、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物に対する防御を受け持つ細胞である。なお、血小板は、損傷した血
管からの血液の流出を抑える仕組みにおいて、重要な役割を担う血球細胞である。したがって、「c」は誤りである。
d
免疫グロブリン は、免疫反応において、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物を特異的に認識する抗体としての役割
を担う。したがって、「d」は誤りである。
問題 4 血液成分に関する記述のうち、誤っているものを 1 つ選びなさい。
1 赤血球は、中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約 90%を占め、赤い血色素(ヘモグロビ
ン)を含む。
2 白血球は、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物に対する防御を受け持つ細胞である。
3 アルブミンは、血液の浸透圧を保持する働きがある。
4 グロブリンは、その多くが、免疫反応において、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物を特異的
に認識する抗体としての役割を担うため、免疫グロブリンとも呼ばれる。
〈奈良県
平成 20 年 8 月 31 日実施分〉
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登録販売者試験スーパーテキスト
第2章
人体の働きと医薬品
解答・解説
1
赤血球は、中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約 40% を占め、赤い血色素(ヘモグロビン)を含み、酸素の運
搬に関与する。したがって、「1」は誤りである。
2
白血球は、血液中には 1mm3 あたり 7,000 個程度が存在し、リンパ球、単球、顆粒球に大別される。体内に侵入した細菌やウ
イルス等の異物に対する防御を受け持つ細胞である。したがって、「2」は正しい。
3
アルブミンは、肝臓で産生される可溶性の蛋白質で、血清蛋白質の過半を占めている。血漿浸透圧の維持、遊離脂肪酸や低
分子化合物の保持・運搬等の役割を担う。したがって、「3」は正しい。
4
グロブリンは、B 細胞リンパ球で産生される可溶性の蛋白質で、抗体(又は免疫グロブリン)とも呼ばれる。その多くが、
免疫反応において、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物を特異的に認識する役割を担っている。したがって、「4」は正し
い。
4)泌尿器系
血液中の老廃物を、尿として体外へ排泄するための器官系である。
泌尿器のほかに、広義の排泄器官としては、二酸化炭素を排
出する呼吸器や、老廃物を汗として排出する外皮等も含まれる
尿細管
腎臓のネフロンにおいて、ボウマン嚢と尿管の間に位
が、生命活動によって生じた老廃物の排出のほとんどは、泌尿
置する器官である。近位尿細管、ヘンレループ、遠尿
器系によって行われている。
細管、集合管に区分される。尿細管において、原尿中
に含まれるブドウ糖、アミノ酸、ナトリウム、そして、
水分の大部分が再吸収される等して、尿が形成される。
(a) 腎臓
おうかくまく
機能単位
そらまめ
横隔膜の下、背骨の左右両側に位置する一対の空豆状の臓
腎臓に存在する尿産生装置の基本単位
ネフロン
の
器で、内側中央部のくびれた部分に尿管、動脈、静脈、リン
こと。尿の生成過程を担う一連の器官系(糸球体、ボ
パ管等がつながっている。
ウマン嚢、尿細管)をさす。
腎臓に入る動脈は細かく枝分かれして、毛細血管が小さな
し きゅうたい
球状になった糸 球 体 を形成する。糸球体の外側を袋状のボウ
のう
原尿
腎小体で濾過され、尿細管に移行した血漿成分のこと。
尿細管において、ブドウ糖や水分、アミノ酸、ナトリ
じんしょうたい
マン嚢が包み込んでおり、これを腎 小 体 という。ボウマン嚢
にょうさいかん
から 1 本の尿 細 管 が伸びて、腎小体と尿細管とで腎臓の基本
ウム等が再吸収され、あるいは、生体内不要物が分泌
される過程を経て、原尿から尿が生成する。
重要な役割
的な機能単位を構成している。
この場合、尿量を制御することをいう。血圧の調節方
腎小体では、肝臓でアミノ酸が分解されて生成する尿素な
法は、大きく 3 つに分けることができる。1 つ目は自律
げんにょう
ど、血液中の老廃物が濾過され、 原 尿 として尿細管へ入る。
ろ
か
そのほか、血球や蛋白質以外の血漿成分も、腎小体で濾過さ
れる。尿細管では、原尿中のブドウ糖やアミノ酸等の栄養分
神経系で、心血管系の収縮・弛緩を行うことにより、
秒 単位で血圧を調節する。2 つ目はホルモンで、心
血管系の収縮・弛緩を行い、 分 単位で調節する。3
つ目が腎臓の働きで、尿量を加減し、血液中の水分量
及び血液の維持に必要な水分や電解質が再吸収される。その
を適切に保つことにより、血圧を
結果、老廃物が濃縮され、余分な水分、電解質とともに最終
する役割を果たしている。
時間
単位で調節
的に尿となる。
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人体の構造
と働き
目、鼻、耳
等の感覚器
官
胃・腸、肝
臓、肺、心
臓等の内臓
器官
耳
鼻
目
概説
泌尿器系
循環器系
循環器系
65
68(b,c,d)
副鼻腔
67
64(c)
8(3,4)
第21-40問
26(d)
10(3,4)
10(1,2)
8
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4(c,d)
52(3)
70(4)
26(c)
26(b)
26(a)
25
6
内耳
16(b)
70(3)
70(1,2)
69(d)
69(a,b,c)
62
67(3)
4(b)
68(b,c)
20
19
68(c)
52(4)
68(a)
67
66
64(b)
7(a,c)
7(b)
7(d)
中耳
52(1,2)
51
50
49(d)
49(a,b,c)
48(3)
43(b)
8(2)
24(4)
4(a)
51
50
31
30
29(c)
64(a)
8(1)
24(3)
第1-20問
愛媛県
四国
外耳
概説
68(a)
66(c,d)
鼻腔
概説
眼筋
涙器
眼瞼
眼球
概説
膀胱、尿道
66(b)
副腎
63(2)
66(a)
血小板
29(a)
48
白血球
42
43(a)
68(b,d)
29(b)
赤血球
血漿
腎臓
概説
リンパ系
脾臓
血液
67(1,4)
68(a)
48(4)
67(2)
第61-80問
概説
47
第1-20問
広島県
中国
64
65
第61-80問
京都府
近畿5県
血管系
62
第61-80問
奈良県
24(1)
48(1,2)
第41-60問
大阪府
24(2)
28
第21-40問
富山県
北陸・
東海
63(1,3,4)
第41-60問
第61-80問
神奈川県
東京都
心臓
栃木県
北海道
南関東
概説
北関東・
甲信越
北海道・
東北
第2章〔人体の働きと医薬品〕の出題傾向分析 登録販売者試験 平成20年度第1回実施分
28(ウ)
28(エ)
28(ア,イ)
24(イ)
24(ア,ウ,エ)
26(ウ)
26(ア,イ,エ)
第21-40問
福岡県
九州・
沖縄
第1回登録販売者試験出題傾向分析