7.11 災害時の情報通信手段とは? 災害時に使える主な通信手段として,次の A.~C.の手段があります。 A.情報収集 ラジオ,テレビ,携帯電話,ワンセグ,インターネット,専用情報収集ネットワーク など B.情報発信 SOS 救難信号(煙 3 本,懐中電灯・鏡・笛などによる SOS 発信) 注)SOS:Save our Souls=救助されたし(海難の場合の遭難信号) C.情報受発信(双方向) a.電話 ・災害時優先電話(固定,携帯):災害時に優先的に取扱う固定電話及び携帯電話。 特定電話からの発信が優先されます。発信専用の電話機として使用するのが有効 です。これは,主に消防,警察,官公庁,公共機関,報道機関などで使用されま す。 ・衛星携帯電話:NTT ドコモグループ,KDDI ネットワーク&ソリューションズなど が提供しています。 ・固定電話 ・携帯電話:FOMA,AU,PHS などの携帯電話 ・災害用伝言ダイヤル 171:7.8.1 参照 災害時には,電話(優先電話を除く)が通じないという事例が非常に多くなります。市 区町村水準までのきめ細かい連絡手段としての電話の途絶は,最も大きな問題です。電 話の途絶の原因として次の要因があります。 ・地震による電話線の断線,私設電話交換機(PBX),中継機などの機器の転倒,蓄 電池放電などのハードの問題。 ・被害を受けた機器の補修のための設備技術者の参集遅れ(大地震直後の道路では 無理)。 ・通信回線の混雑,リダイヤルによって,ますます通じ難くなる。 b.無線 ・防災無線:中央防災無線[国水準で,総理官邸,各省庁,公共機関(NTT,電力, ガス会社他)],都道府県防災無線,市区町村防災無線,消防防災無線。 ・船舶無線,タクシー無線:業務用無線ですが,災害時使用を協定している都道府 県もあります。 ・アマチュア無線: 通信回線不通区間を対象に音声による通信,文字データの伝達,映像の伝達。都 道府県市区町村町内会防災組織ごとに災害支援協定の締結が望ましい。 1 例えば,阪神・淡路地震では,250 台の携帯式アマチュア無線機が貸し出されま した。能登半島沖地震では,EchoLink,Wires などによって,インターネットとア マチュア無線とが中継され,通信回線不通区間のデータ交換に寄与した例がありま す((社)日本アマチュア無線連盟)。 c.メール:携帯電話メール,インターネットメール d.インターネット:災害用ブロードバンド伝言板(web171),ケータイ災害用伝言板 e.専用情報通信ネットワーク f.自動 2 輪車,自転車,徒歩による人力を利用した情報収集・伝達など 7.11.1 携帯電話の多機能化(IC タグ,GPS,ラジオ,テレビ)とは? 携帯電話の保有が一人1台に接近し,情報通信の道具として生活の中に溶け込んでき ており,地震などの災害時には有効な道具として利用できる情報機器になってきていま す。携帯電話は,通話という機能の他に,色々機能を追加して利便性が増しています。 A.IC タグ付きの携帯電話 主要幹線道路に,災害時の帰宅困難者が携帯電話を利用して情報提供(住所,避 難先,交通機関,歩行距離など)が受けられる情報基盤の整備検討が始まっていま す。 B.GPS 機能付きの携帯電話 有料で運用されていますが,遠距離通学又は越境入学している児童,老人の震災 後の安否及び位置確認に有効です。携帯電話は,インターネットとの接続で,災害 時の道路情報(国土交通省),交通情報(警視庁)も見られると利便性が向上します。 C.カメラ機能付き携帯電話 被災現場の写真をデータとして送ることができます。GPS 機能と組合せることで 機能は更に向上していきます。 D.ラジオ,デジタルラジオ機能付き携帯電話 地震発生後の情報収集は,使い慣れているラジオ,テレビから入手するのが,過 去の被災で確認されてきています。携帯電話にラジオ又はこれから運用が計画され ているデジタルラジオ機能を付加することで携帯電話の利用価値は,更に向上して いきます。 E.デジタル放送(ワンセグ)受信機能付き携帯電話 地上波テレビ放送のデジタル化に併せて,携帯電話などの移動体向け地上デジタ ル放送の 1 セグメント(通称:ワンセグ)が 2006(平成 18)年 4 月より全日本で順次 始まりました。テレビジョン放送を携帯電話で視聴できるようになり,防災情報の 入手手段として有効です。携帯電話からインターネットにも接続でき情報検索・道 路情報等の入手も可能です。 2 7.11.2 ワンセグとは? ワンセグメント(1 segment)は,日本において,主に携帯電話などの携帯機器を受信 対象とする地上デジタルテレビ放送で,正式名称は“携帯電話・移動体端末向けの 1 セ グメント部分受信サービス”です。 2006 年 4 月 1 日より,東京・名古屋・大阪など全日本 29 都府県で開始し,2006 年 12 月 1 日にハイビジョン放送と同時に全都道府県で放送を開始しました。現在は,ほぼ全 ての放送局で行われています。東京地方の放送局は,NHK,日本テレビ,TBS,フジテレ ビ,テレビ朝日,テレビ東京です。 日本の地上デジタルテレビ放送(ISDB-T)では,一つのチャネルが 13 のセグメントに 分かれた構造となっており,そのうち,ハイビジョン放送(HDTV)には 12 セグメント, 通常画質の放送には 4 セグメント割り当てられています。モバイル端末(主に携帯電話) は画面が小さく性能が低いため,1 セグメントを割り当てて低解像度の放送を行うこと となりました。この“1 セグメント”を略して“ワンセグ”と呼ばれています。防災に も活用でき,持ち運びできる新しいメディアとして期待されています。UHF 帯の電波を 利用するため,携帯電話などで見る場合でもテレビ放送の視聴及びデータ放送は無料で す(ただし,データ放送から詳しい内容(コンテンツ)を受信するために放送局とパケッ ト通信する場合はパケット通信料が掛かります。受信可能な機器は放送開始当初は携帯 電話 3 機種だけでしたが,チューナを安価で搭載でき,移動時でも安定した受信が可能 であることから,放送開始直後から一気に拡大し,各情報運搬者(キャリア)の携帯電話 だけでなく,ポータブルテレビ,カーナビゲーション,ノートパソコン,電子辞書,携 帯型ゲーム機,USB 接続型チューナなど多岐にわたっています。 3
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