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目 次
「水煮鯰魚:渝信川菜にて」上海(四川料理)
随 想 「軍艦島」との不思議な「ご縁」… …………………………………<森 榮>… 278
解 説 シリーズ解説:米の話(第20回)
米の加工利用(9)酒…………………………………………<古川幸子>… 280
解 説 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第19回)
キチンヘテロ2糖(オリゴ糖)… ………………………………<平野貴子>… 288
連載エッセー:食べもの随想
日常生活と健康長寿 ─栄養・運動・休養─…………<田村真八郎>… 294
海外技術・マーケット情報
減塩食品の開発動向……………………………………………………………………… 296
「サステナブル ・プラント・ オブ・ ザ ・ イヤー」受賞の Frito-Lay 社カサ ・ グランデ工場… …… 298
2011年,食品着色料で目立った25の出来事…………………………………………… 300
急成長するパウチフォーム・フィル・シールシステム……………………………… 303
ホーメル社の先進的な食品工場………………………………………………………… 305
キトサン,メチルセルロース,ナノ粒子による革新的複合素材フィルム………… 307
“微生物”の食品加工への利用拡大…………………………………………………… 308
ウメの果実特性とフェノール含量……………………………………………………… 311…
海洋生物資源による栄養補助食品のトレンド………………………………………… 313
特別解説:数値流体力学(CFD)を応用した青果物包装容器の最適化……<北澤裕明>… 316
特別レポート:第1四半期の低アルコール飲料市場動向…………………………………… 322
業界トピックス:家庭用ココア,スティックタイプがけん引……………………………… 325
業界の話題………………………………………………………………………………………… 326
技術用語解説:紙カップの成形法,紙カップの各部名称,カートカン,
テトラパック,乳等省令……………………………………………………… 330
今月の統計………………………………………………………………………………………… 332
最近の技術雑誌から……………………………………………………………………………… 334
野菜・果物を巡って(第四十一話)ハーブを楽しむ……………………<吉田企世子>… 339
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随 想
「軍艦島」との不思議な「ご縁」
もり
さかえ
森 榮
(一般社団法人 楽水会〔東京海洋大学同窓会〕常務理事)
い
わゆる「軍艦島」とは,その島の遠景があ
産」としても,一躍,脚光を浴びることになった
たかも「軍艦」のように見えることからそ
ものである。
う呼称されている島のことをいう。
日本にも,「軍艦島」と呼ばれている島が3島
者とこの「軍艦島」との「ご縁」は昭和37
あり,石川県珠洲市にある見附島(みつけじま)
筆
や佐賀県唐津市沖合の神集島(かしわじま),更
て東シナ海でのトロール実習の帰路,長崎港外の
には,かって三菱炭鉱の島として賑わった長崎県
付近で周囲1km 足らずにも見える小島に高層ア
西彼杵郡端島(当時)などの島々である。
パートが林立するその偉容に接し,「よくも,こ
特に本稿で取り上げる端島という「軍艦島」は,
んな小さな島に生活できるものだ!」と仰天した
夕暮れにかすむ頃,はるか洋上から見るその島影
事が,最初の出会いであったのではないかと思っ
が往時の軍艦「土佐」に似て見えたことから,い
ている。
つしか「軍艦島」と呼ばれるようになったといわ
その後,曲折を経て,「軍艦島」から約5km
れている。
程長崎寄りに所在する「三菱高島炭鉱」に勤務す
この「軍艦島」は,三菱が明治23年から約80余
ることになったわけであるから,これも「何かの
年の間最高級原料炭を採掘し,近代日本経済発展
因縁なのだろうか?」などとつい思ってしまうの
の「縁の下」を担い戦後の復興にも大きな貢献を
である。
果たしてきた島であり,知名度も抜群に高いこと
かくして,毎日のように「軍艦島」を眺めて15
でも知られている。
年近くも高島炭鉱にて過すことになったのだから,
年11月,大学の実習船「神鷹丸」に乗船し
「ご縁」とは不思議なものである。
昭和49年炭鉱の閉山に伴い無人島となり,廃墟
のようになっていたが,平成21年4月「上陸解
「軍艦島」での実生活体験は,研修期間も含め
禁」となったことからマスコミ・メディアにも大
10日足らずしかないが,「大変な生活!」である
きく取りあげられ,日本における貴重な「産業遺
ことは肌で感じていた。
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それは,「軍艦島」が外海であるため島周辺の
即ち長崎市では,「軍艦島」を長崎観光の新し
風波が激しく,とりわけ,台風襲来の時などは大
い「目玉」と位置付け,1億円超を投入,同島の
きな波が来ると,島全体が一瞬波に呑まれてしま
桟橋や見学通路等を整備し,平成21年4月の「上
うのではないかと思われる程のすさまじさであっ
陸解禁」に漕ぎ着けたからである。
たからだ。
最盛期には5,200人もの住民が,この狭い島に
筆すべきは,この「軍艦島」には幾多の高
ひしめいて生活をしていたわけで,人口密度は東
特
京の8倍。ダントツの世界一でもあった。
5年建設の日本最初の鉄筋コンクリート・高層ア
そ れ だ け に, 島 で 暮 ら す 人 々 の 結 束 は 固 く,
パートもあり,廃墟化はしているが建物自体は百
層建造物が残されており,その中には大正
年の風雪に耐え,今尚健在であることである。
「全山一家」ともいうべき強い「絆」が島民の厳
しい日々の暮らしを支えていたのであろう。
更にこの「軍艦島」は,平成20年1月には「九
その「軍艦島」は,平成13年三菱から高島町へ
州・山口近代化産業遺産」の一部として,「世界
と所有権の譲渡が行われたのであるが,筆者は,
遺産暫定リスト」にも追加記載されたため,今や
「産業遺産」としても各方面から「注目の的」と
この「譲渡交渉」にも会社の担当として立会うこ
なっている。
とになったのであるから,なにかしら不思議な
「ご縁」を感ぜずにはいられないわけである。本
また「上陸解禁」の後,
「軍艦島」を訪れた観
「譲渡交渉」は,将来の市町村合併を見越して,
光客は,21年度では5万5千人超,23年10月には
長崎市が「長崎地域における新しい観光資源の振
「軍艦島上陸20万人」の記念企画が行われるほど
興」を更に促進するために,「軍艦島」の譲渡を
の活況振りである。これは22年8月以降,NHK・
高島町を通して三菱に要請してきたものであると
大河番組である「龍馬伝」の主たる舞台が長崎と
もいわれており,当時,本交渉を担当する者とし
なったことによる波及効果でもあろうが,驚くこ
ては精一杯力を尽くさせて戴いた思いがある。か
とに「若いリピーターが圧倒的に多い!」とのこ
くして,平成13年11月,これまで110余年に亘り
とで嬉しい限りだ。
三菱の所有地であった「軍艦島」の所有権を高島
更に,余り知られていないスポットを紹介させ
町に譲渡することに際しては,ひときわ複雑な感
ていただくと,長崎郊外の野母崎半島から遠望す
慨を禁じ得なかったところであり,「どうか,こ
る「軍艦島」も素晴らしいものがある。特に,脇
の島が長崎地域振興のため,立派に貢献してくれ
岬にあるゴルフ場のクラブハウスから見下ろす紺
ますように!」との祈るような思いがこみ上げて
碧の海の彼方に浮かんでいる「軍艦島」の景観は
きたことを,今でも記憶している。
必見の価値があり,今後の PR 次第では,「軍艦
そして「軍艦島」は,平成17年1月,平成の
島」はまだまだ「長崎観光」に貢献する将来の
「大合併」により現在では長崎市の所有地となっ
「可能性」は絶大なるものがある,と期待してや
まないものである。
て新たな展開を見せてきたのである。
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シリーズ解説:米の話(第20回)
●解説●
米の加工利用( 9)酒
ふ る か わ ・さ ち こ
京都府立大学農学部
農芸化学科卒業。黄桜
株式会社入社。現在,
研究所課長心得。
農学博士
古 川 幸 子
● 1.はじめに
●
● 2.清酒と米
●
読者の皆様へ,最初にお断りをしておかなけれ
1)清酒にとっての米とは
ばならない。今回のシリーズ解説:米の話は,「米
清酒は,米,麹(蒸米に麹菌を繁殖させたもの),
の加工利用(9)酒」というテーマである。一般
水を原料とし,酵母の持つ発酵能力を利用して造
的に,「酒」 は,広義には焼酎,ビール,ワインな
られる醸造酒である。清酒の香味を形成するアミ
ど他の酒類も含めたアルコール飲料全般を,狭義
ノ酸やエステル,アルコールなどの成分は,主に
には清酒(日本酒)を示す言葉である。だが,今
原料米の各種成分を出発物質とする酵母の代謝産
回は,米の加工利用という観点から,清酒に限定
物である。それゆえ,原料である米や水の良し悪
して話を進めたいと思う。
しが,そのまま製成酒の品質に反映される。勿論,
清酒は「国酒」である。実際のところ,一般的に
他の要因,たとえば蔵人(酒造りの作業に直接か
は,
「国酒」よりも「日本酒」のほうが通りはいい
かわる人)の持つ高度な酒造技術や,利用する酵
のかもしれない。ともあれ,わが国の伝統的な醸造
母などによって補える部分もあるが,直接的な原
酒である清酒は,現在に至るまでおよそ2,000年に
料である米の品種の選択や扱いによっても,製成
わたり,日本人の生活や文化に根ざして伝承され
酒の香味,個性が左右される。
てきた。その間,清酒醸造に必要な知識やスキル
2)清酒醸造工程
は日本全国各地に広まり,平成22酒造年度(2010
清酒は,ビールやワインと同様に醸造酒である
年7月1日~2011年6月30日)においては,1,272
が,その醸造工程は複雑である(第1図)。清酒の
の酒造場が酒造りに従事している1)。現在,沖縄
原料である米には,あらかじめ酵母が利用できる
県を除く46都道府県に酒造場があるが,兵庫県の
状態の糖分が含まれていない。そこで,麹の酵素
灘,京都府の伏見,広島県の西条などが著名な酒
の働きで米デンプンを分解しグルコースを生成す
どころとして知られている。良い清酒ができると
る「糖化」と,酵母の働きで遊離したグルコース
ころには良い水や良い米があり,酒造りにおいて,
からアルコールを生成する「発酵」が同時に進行
米は極めて重要な意味を持っている。
する。この発酵方式は清酒醸造の最大の特徴であ
こうじ
ちゅう
り,並行複発酵という。これに対して,ビールは
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米の加工利用(9)酒
清酒(並行複発酵)
糖化
米
(デンプン)
アルコール発酵
アルコ
ル発酵
麹
清酒
(エタノール,二酸化炭素)
酵母
(糖分:グルコース)
ビール(単行複発酵)
発芽
大麦
(デンプン)
アルコール発酵
液化
ビール
(エタノール,二酸化炭素)
麦芽
麦汁
(糖分:グルコース)
酵母
アルコール発酵
ワイン(単発酵)
ブドウ
(糖分:グルコース)
(糖分:グルコ
ス)
ワイン
(エタノール,二酸化炭素)
タ
酸 炭素
酵
酵母
第1図 清酒とワイン・ビールの醸造工程比較(カラー図表をHPに掲載 C031)
原料である大麦を発芽させて(麦芽に変えて)デ
れており,これをそのまま発酵させるので,単発
ンプンを糖化する方法で,単行複発酵という。ワ
酵という。
インは原料であるブドウにあらかじめ糖分が含ま
清酒醸造工程の詳細を第2図に示した。まず,
⛸㯔
ⵠ⡷
ⵠ否
Ⓣ⡷
㯔⡷
㯔
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第2図 清酒醸造工程
食品と容器
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シリーズ解説:米の話
玄米を精米して白米にし,洗米,浸漬した後,こ
ていたようである2)。清酒の奥深さを物語る史実
れを蒸きょうして蒸米を得る。麹は,蒸米に黄麹
である。
菌 Aspergillus oryzae を繁殖させたものであるが,
3)清酒の種類
蒸米の溶解と糖化を行うアミラーゼやプロテアー
さて,清酒といってもその種類は多様であり,ひ
ゼなどの酵素類を生成し,酵母の増殖や発酵に必
とくくりにできるものではない。現在の分類方法
要な栄養源を提供する。清酒醸造は,酒 母(水
では,清酒は一般酒(普通酒ともいう)と特定名
と米麹と蒸米のなかで清酒酵母 Saccharomyces
称酒に分類される。特定名称酒は,吟醸酒,純米
cerevisiae を増殖させたもの,酛ともいう)に,水
酒,本醸造酒をいい,それぞれ所定の要件に該当
と米麹と蒸米を3段階に分けて仕込む。この方法
するものにその名称を表示することができる。一
しゅぼ
もと
般酒は,特定名称酒以外の清酒をいう。
(三段仕込み)は,清酒醸造にしか見られない伝統
的な仕込み方法であり,それぞれ,添仕込み,仲仕
特定名称酒は,原料や製造方法等の違いからな
込み,留仕込みと呼ぶ。三段仕込みの目的は,原
る『清酒の製法品質表示基準』によって,さらに
料を順次加えることによって,雑菌汚染と酵母菌
8種類に分類される(第1表)3)。吟醸酒は,高
体数の急激な低下を抑え,発酵を健全に保つこと
度精白した白米を,吟醸造り専用の優良酵母(吟
である。留仕込みの後,10~15℃の低温で約20~
醸酵母という)を用いて低温でゆっくり発酵させ,
40日間発酵させるが,この状態を醪という。十分
酒粕の割合を高くして,固有の芳香を呈するよう
に発酵した醪は,圧搾して上清である清酒と残渣
に醸造した清酒である。この吟醸酒に固有の香り
である酒粕に分離する。清酒醸造では,原料米の
は吟醸香と呼ばれ,果実や花のような華やかな香
約80%は掛米として蒸米の状態で仕込まれ,残り
りと淡麗な味を特徴とする。清酒の香りは,清酒
の20%は麹に用いられる。
の原料である米自体が持っている香りではなく,
余談ではあるが,南北朝末期から室町時代に書
原料米のタンパク質が清酒醪中で麹の持つプロテ
かれたとされる「御酒乃日記(現存する日本最初
アーゼによる分解を受けて生じたアミノ酸を,酵
の酒造技術書)」には,麹と蒸米,水を2回に分け
母が代謝することによって形成されるアルコール
て加える二段仕込みの記述が見られ,現在の酒造
やエステルが主体となっている。吟醸香は,カル
りの基礎は,すでに室町時代には,ほぼ完成され
ボン酸とアルコールの縮合反応から得られるカル
もろみ
さ
かす
第1表 清酒の種類(特定名称酒の分類)3)
特定名称
使用原料
精米歩合
麹米使用割合
香味等の要件
吟醸酒
米,米麹,醸造アルコール
60%以下
15%以上
吟醸造り,固有の香味,色沢が
良好
大吟醸酒
米,米麹,醸造アルコール
50%以下
15%以上
吟醸造り,固有の香味,色沢が
特に良好
純米酒
米,米麹
−
15%以上
香味,色沢が良好
純米吟醸酒
米,米麹
60%以下
15%以上
吟醸造り,固有の香味,色沢が
良好
純米大吟醸酒
米,米麹
50%以下
15%以上
吟醸造り,固有の香味,色沢が
特に良好
特別純米酒
米,米麹
60%以下または特別な
15%以上
製造方法(要説明表示)
香味,色沢が特に良好
本醸造酒
米,米麹,醸造アルコール
70%以下
香味,色沢が良好
特別本醸造酒
米,米麹,醸造アルコール
60%以下または特別な
15%以上
製造方法(要説明表示)
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15%以上
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香味,色沢が特に良好
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米の加工利用(9)酒
ボン酸エステルである酢酸イソアミル(バナナの
コールの使用量には制限があり,白米重量の10%
香り)とカプロン酸エチル(リンゴの香り)が主
を超えない範囲とされている。
要な成分である。純米酒は,米,米麹と水だけを
ちなみに,平成22酒造年度における清酒の製造
原料として醸造した清酒である。純米酒の香味は,
数量(アルコール分20度換算数量)は,439,651kL
吟醸酒のような華やかな香りとは異なり,米の持
の内,特定名称清酒の製造数量(アルコール分20
つふくよかな香りと旨味が特徴で,蔵ごとの個性
度換算数量)は,137,833kL であり1),その割合
を楽しめる酒ともいえる。本醸造酒は,原料とし
はおよそ3割となる。つまり,現在,製造される
て米,米麹,水の他に醸造アルコール(デンプン
清酒のうち,およそ7割が一般酒クラスというこ
質物や含糖質物から醸造されたアルコール)3)を
とになる。
使用する。清酒醪に適量の醸造アルコールを添加
● 3.清酒の米 ●
することで,香りが高く,すっきりした味になり,
さらに,清酒の香味を劣化させる乳酸菌(火落菌)
1)酒造原料米
の増殖を防止するという効果もある3)。醸造アル
清酒の主原料である米は,その成分特性から,
第2表 主な酒造好適米品種(原産地で表示)
地域
都道府県名
品種名
北海道
北海道
初雫,吟風,彗星
東北
青森県
地域
近畿
都道府県名
品種名
滋賀県
玉栄,吟吹雪
古城錦,豊盃,おくほまれ,華吹雪,
京都府
祝
華想い
大阪府
岩手県
ぎんおとめ,吟ぎんが
兵庫県
宮城県
蔵の華,ひより,星あかり
灘錦,兵庫夢錦,兵庫北錦,
秋田県
改良信交,秋の精,秋田酒こまち, いにしえの舞,杜氏の夢,白鶴錦
山田錦,愛山,なだひかり,六甲錦,
美郷錦,吟の精
奈良県
山形県
豊国,出羽燦々,出羽の里
和歌山県
福島県
夢の香
鳥取県
強力
新潟県
五百万石,越淡麗,一本〆,越神楽
島根県
神の舞,佐香錦
富山県
雄山錦
岡山県
雄町
石川県
石川酒 30 号,北陸 12 号
広島県
こいおまち,千本錦,八反錦 1 号,
福井県
越の雫
関東
茨城県
ひたち錦
甲信
栃木県
とちぎ酒 14
群馬県
舞風
香川県
埼玉県
さけ武蔵
愛媛県
千葉県
総の舞
北陸
八反錦2号
山口県
四国
西都の雫
徳島県
高知県
吟の夢,風鳴子
福岡県
夢一献
神奈川県
佐賀県
さがの華
山梨県
長崎県
東京都
長野県
東海
中国
九州
たかね錦,金紋錦,美山錦,
熊本県
しらかば錦,ひとごこち
大分県
岐阜県
ひだほまれ
長崎県
静岡県
誉富士
宮崎県
愛知県
夢山水,若水
鹿児島県
三重県
伊勢錦,神の穂
食品と容器
沖縄
283
はなかぐら
沖縄県
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シリーズ解説:米の話
酒造好適米(酒米)と一般米の2種類に大別され
分)があること
る。醸造用に用いられる酒造好適米は,農林水産
③タンパク質含量が低いこと
省による「玄米の検査規格」4)では,醸造用玄米
④吸水性が良いこと
に区分される。酒造好適米は,長棹で倒伏しやす
⑤麹菌の生育と破精込み(麹菌の蒸米内部への
ながさお
は
いので,非常に高度で繊細な栽培技術を要する上
ぜ
菌糸伸張状態)が良好であること
に,一般米と同様に,気候や土壌などの環境条件
⑥酒母や醪中で溶解が良好であること
によっても,その性質は左右される。最も著名な
また,一般米は,農林水産省による「玄米の検
品種である山田錦が日本における酒造好適米の最
査規格」4)では,水稲うるち玄米に区分され,主
高位にランクされ,中でも兵庫県産は特に評価が
に食用として用いられる。一般米の代表的な品種
高いが,近年は,各都道府県において個性豊かな
には,日本晴や良食味米として知られるコシヒカ
優れた品種が開発されている(第2表)。これらの
リ,ひとめぼれなどがある。
品種の中には,各都道府県の奨励品種に推奨され
2)精米
るものもあり,農林水産省による「地産地消」の
精米は,清酒醸造工程の原料処理で最初に行う
推進と連動して,地域経済の活性化や清酒の多様
非常に重要な工程である。飯米用の精米とは目的
化に貢献している。
が異なるので,目標とする精米歩合や使用する精
それぞれの特徴の詳細は後述するが,酒造好適
米機の様式も異なったものになる。
米は,以下に示すような醸造に適した条件を備え
一般的な飯米用白米としての精米を行う場合は,
ている。
玄米の表層部から7~10%程度を削るので,精米
①千粒重(玄米千粒の重さ)が26g以上である
歩合は90~93%となる。これは,玄米から糠を取
こと
り除くことによって,米の消化吸収と食味を向上
はい
②心白構造(米胚乳中心部にある白色不透明部
させることが目的であり,通常は,摩擦式精米機
や横型研削式精米機を用い
る。
一方で,酒造用原料米の
精米では,『清酒の製法品
質表示基準』によって清酒
のグレードごとに精米歩合
が 定 め ら れ て お り( 第 1
表)3),本醸造酒で精米歩
合70%,吟醸酒で60%,大
吟醸酒では50%まで米を磨
く(第3図)。このような高
度精白を行う目的は,玄米
の表層部に多く含まれるタ
ンパク質や脂肪,ミネラル,
ビタミンを取り除くためで
ある。
第3図 酒造原料米の精米 品種:山田錦(兵庫県産)
(カラー図表を HP に掲載 C032)
食品と容器
284
米のタンパク質は,米粒
内で表層部に多く,中心部
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米の加工利用(9)酒
に近づくほど少なくなる分布をしている5)。清酒
の要となる金剛ロールの調整法は,各社で自前の
醸造において,原料米のタンパク質は,清酒醪中
精米機や使用する米品種,目的とする精米歩合に
で麹の酵素による溶解を受けて清酒の香味を形成
合わせて工夫しており,そのノウハウは機密事項
するアミノ酸やペプチドを供給する必要不可欠な
といえるほど重要なものである。
成分であるが,過多のタンパク質は,清酒の雑味
3)麹米と掛米
ざつみ
(清酒の中で不快さや雑っぽさ,あるいは洗練され
清酒醸造では,米は用途によっても2種類に分
ていないと感じる味の総称)の原因となり,酒質
類され,それぞれ麹米(麹菌を増殖させるための培
を劣化させる6)。上述した酒造好適米の特徴③に
地としての米)と掛米(発酵基質としての米)と
タンパク質含量が低いことを挙げているのは,こ
呼ばれる。1仕込みに用いるすべての原料米(総
の理由によるものであり,良好な酒質の清酒を安
米という)の中で,麹米と掛米の割合は,一般的
定して醸造するためには,原料米の選抜と,清酒
には麹米20%,掛米80%程度である。
醪中での原料米タンパク質の溶解の適切な制御が
麹(米麹)は,蒸した米を培地として,麹菌
重要である7)。
Aspergillus oryzae を増殖させたものである。「一
米に含まれる脂肪も清酒の雑味となるが,胚乳
麹(いちこうじ)二酛(にもと)三造り(さんつ
中心部には存在しないので,精米工程で削除され
くり)」という酒造用語があるほど,麹は清酒醸造
る。ミネラルやビタミンは清酒醪の発酵を促進さ
工程において重要な役割を担っている。麹に含ま
せる作用があるが,過剰に存在すると発酵が進み
れるグルコアミラーゼやα-アミラーゼがデンプ
すぎるため,醪の健全な発酵のためには,適切な
ンをグルコースに分解し,酵母のアルコール発酵
量を保つ必要がある。
を助けるだけではなく,麹にはタンパク質分解酵
酒造用原料米の精米には,縦型研削式精米機を
素も含まれる。麹が持つ酸性プロテアーゼや酸性
用いる。精米機内部にある砥石(金剛ロール)の
カルボキシペプチダーゼなどが米タンパク質を分
回転数や抵抗を調整しながら,ゆっくり時間を掛
解することによって生じたアミノ酸やペプチドは,
けて,原形精米(玄米の原形を残す精米)をして
酵母の生育や酒の香味に大きな影響を与える。良
いく。上述した酒造好適米の特徴①は,長時間の
い麹は,蒸米の表面だけでなく,米粒内部にも菌
精米に耐えて砕けないような大粒の米が酒造用の
糸が伸びている状態であることが望ましく,これ
精米に適していることが,その理由となっている。
を破精込みが良いという。酒造好適米の心白部は,
玄米の米粒は球形ではなく,ラグビーボールの
心白部以外の部分と比較すると米粒内部のデンプ
ような楕円形に近い形をしているが,飯米用の精
ンの詰まりが疎になっているため8),麹菌にとっ
米機の場合は,米粒の長径側から削れていくので,
て生育しやすい状態となっている。上述した酒造
精白米は,どんどん球形に近くなる。醸造用精米
好適米の特徴②,⑤は,この理由によるものであ
機は,長径と短径をできる限り同じ割合で磨いて
る。
いくので,精白米は,玄米のラグビーボール形を
掛米は,酒母および醪に添加する米のことをい
そのまま縮小した楕円形になる。もちろん,大吟
う。使用する品種や精米歩合によっても製成酒の
醸酒では,精米歩合は50%以下となるので,精白
香味が左右されるので,上述した酒造好適米の特
米は球形に近くなる(第3図)。
徴④,⑥が挙げられる。
と
だ
酒造会社では,自社で精米を行うか,精米業者
● 4.最近の市場トレンド ●
などへ委託して精米を行うか,希望の品種を目的
とする精米歩合まで磨いた精白米を購入するか,
最近の酒造技術の向上は目覚しいものがあり,
いずれかの選択をする。自社精米の場合,精米機
酒造好適米を用いることが必ずしも良い酒造りの
食品と容器
285
2012 VOL. 53 NO. 5
シリーズ解説:米の話
条件ではなくなってきている。消費者の多様な
酒質の現状および動向を明らかにし,もって清酒
ニーズに応えるために,従来,酒造用には不向き
12)におい
の品質向上に資することを目的とする)
とされてきた米品種や新品種などの特性を活かし
ても,最近は山田錦を用いたものの出品が年々減
た新しい清酒の開発が進められている9−11)。たと
少傾向にあり,越淡麗(こしたんれい),千本錦
えば,従来の伝統的な酒の醸造では使われていな
(せんぼんにしき),美山錦(みやまにしき)など
かったコシヒカリなどの良食味米品種が積極的に
山田錦以外の品種を原料米に用いたものの出品が
採用され始めている(第4図)。このコシヒカリ
増えている13)。金賞(予審・決審と行われる審査
を原料米に用いる清酒醸造の動きは,業界全体に
を通過した入賞酒のうち,決審で特に成績が優秀
広がっているが,消費者にとってみれば,コシヒ
と認められたものに授与)受賞率も,平成19酒造
カリはおいしいお米の代表的品種で,日本でもっ
年度からは,山田錦を主原料に使用したものより
とも認知度の高い米品種である。消費者にとって
も,山田錦以外の品種を主原料に使用したものが
「おいしさ」が最もイメージしやすい米であること
上回っている13)。こうした傾向は,酒造業界が一
から,酒造原料米として使用することの意味合い
丸となったたゆまぬ努力によるものであり,従来
は大きく,清酒の需要拡大と清酒業界の活性化に
の常識にとらわれない多様な品種選択の可能性は,
貢献することが期待できる。
今後,ますます拡大するものと思われる。
また,独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造
● 5.おわりに ●
組合中央会が共催している全国新酒鑑評会(新酒
を全国的に調査研究することにより,製造技術と
近年は,清酒をもっと楽しんでいただくための
飲み方の提案として,酒と料理の
相性(マリアージュ)が注目され
ている。清酒は,幅広くどんな料
理にも合わせやすい酒であり,酒
造メーカーの中には,直営レスト
ランを経営し,自社製品とそれに
合う料理を提供したり,あるいは
ウェブサイト上でマリアージュの
例を紹介したりするところもある。
少し古い話になるが,2010年8
月付の Web ニュースサイト「フー
ドスタジアム」には,非常に興味
深いコラムが掲載されている14)。
「『日本酒新時代』は来るか・・・?」
というテーマで,東京にあるいく
つかの飲食店を紹介しているのだ
が,各店それぞれに清酒(日本酒)
純米 辛口一献
1.8Lパック
純米 辛口一献
900mL パック
純米 辛口一献
180mL カップ
第4図 良食味米品種コシヒカリを用いた商品
(カラー図表を HP に掲載 C033)
食品と容器
286
の提供の仕方がユニークで面白い。
お酒を飲める人はもちろん,飲め
ない人も行ってみたくなること請
け合いである。このような情報に
2012 VOL. 53 NO. 5
米の加工利用(9)酒
敏感であり,かつ自らも発信していくことが清酒
い。清酒醸造に携わる者の一人としては,ぜひ,
業界にとって,活性化への起爆剤になるのではと
米の加工品であり,
「国酒」である清酒の消費量を
思っている。
増加させることによって,米の需要拡大に貢献し
米の消費量が年々減少していると言われて久し
たいところである。
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食品と容器
287
2012 VOL. 53 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第19回)
◆解説◆
キチンへテロ2糖(オリゴ糖)
ひ ら の・ た か こ
日本大学大学院生物資
源科学研究科生物資源
利用科学専攻博士後期
課程修了。現在,同大
学生物資源科学部生命
化学科助手。
平 野 貴 子
博士(生物資源科学)
が分かってきた。
◆ 1.はじめに ◆
キチン由来ヘテロ2糖の研究はまだ始まったば
キ チ ン は,主 に N-acetyl-D-glucosamine
(GlcNAc)がβ-1,4 結合で重合した不溶性の多
かりであり,多くの知見が得られている訳ではな
糖で(第1図),カニやエビの甲羅やイカの中
かしそれは,機能性を含めてまだ知られていない
骨を構成している。キチンを化学的に加水分解
様々な可能性を持った物質であるともいえる。本
すると GlcNAc のオリゴ糖が生産される。自然
解説では,GlcNAc-GlcN の機能性に注目するに
界では生物がキチン分解酵素を生産し,キチン
至った過程とともに,これまでに判明した本へテ
から GlcNAc 単糖やそのオリゴ糖を産生して栄
ロ2糖の自然界での役割を紹介する。
いし,産業的に利用されるには至っていない。し
養源としている。近年このようなキチン分解・
◆ 2.キチン ◆
利 用 過 程 の 中 で, キ チ ン か ら ホ モ 2 糖 で あ る
N,N ’
-diacetylchitobiose[(GlcNAc)
2]を 生 産 し,
キチンは,甲殻類の殻,糸状菌の細胞壁,昆虫
さらに還元性末端側を脱アセチル化した
の外皮などの構造多糖として自然界に存在してお
4-O-(N-acetyl-β-D-glucosaminyl)
-D-glucosamine
り,セルロースに継ぐ豊富なバイオマス資源とし
(GlcNAc-GlcN) を 生 産 す る 細 菌 が 発 見 さ れ た。
て近年注目されている。しかし,セルロースと異
このヘテロ2糖に関する研究報告は少ないが,最
なりキチンは広く浅く分布していることもあって,
近,本2糖が細菌に対して生理活性を有すること
効率的に利用されているとはいえない。自然界で
のキチンの生産量は年間1億トンとも100億トン
とも推定されているが,利用可能なキチン量は毎
年15万トンであると算出されている。資源の有効
利用が注目される近年では,このキチンも注目さ
れている。例えば,カニ殻やエビ殻の主成分はキ
チンであるが,これらはいわば食品廃棄物であ
り,有効利用が期待できる最も身近なキチンであ
るといえる。その中でも特にキチンの分解物であ
第1図 キチンの構造
食品と容器
288
2012 VOL. 53 NO. 5
キチンへテロ2糖(オリゴ糖)
る GlcNAc のオリゴ糖に機能性が見いだされ,そ
合した構造であるが部分的に脱アセチル化して
の利用についても期待されている。
いる。しかし,その脱アセチル化の割合は生物
◆ 3.N - アセチルアミノ糖を含む
種により異なっている。つまり,天然のキチン
の構造中に GlcN がわずかに存在することになる。
オリゴ糖の機能 ◆
糖質分解酵素ファミリー 19キチナーゼはその中
キチンを分解することにより得られる GlcNAc
の GlcNAc-GlcNAc 結 合 だ け で は な く,GlcN-
やそのホモオリゴ糖の利用価値も見いだされて
GlcNAc 結合も切断するため,天然のキチンから
おり,例えば免疫機能の調節など,様々な生理
(GlcNAc)
2 だけではなく GlcNAc-GlcN も生産さ
機能が報告されている1−11)。さらに,最近の糖
れる可能性がある。一方で,ファミリー 18キチ
鎖に関する研究により,N -アセチルアミノ糖を含
ナ ー ゼ は GlcNAc-GlcNAc の 結 合 だ け ではなく,
むオリゴ糖が注目されている。例えば GlcNAc や
GlcNAc-GlcN の結合も切断するので天然のキチ
N-acetylgalactosamine(GalNAc)を含むミルク
ンから GlcN-GlcNAc も一部生産される23)。この
オリゴ糖には,galactose(Gal)と GlcNAc が結
合した N-acetyllactosamine(Galβ-1,4 GlcNAc)
よ う に GlcNAc-GlcN や GlcN-GlcNAc は, キ チ
ンを分解する中で必然的に生産されているようで
や Lacto-N-Biose I(Galβ-1,3 GlcNAc),さらに
GalNAc と Gal が結合したオリゴ糖(GalNAcβ-
ある。
1,4 Gal,GalNAcβ-1,3 Gal)があり(第2図),こ
よる生産
れらは病原菌の細胞への付着阻害やビフィズス菌
キチン由来へテロ2糖は GlcNAc や GlcN のホ
選択増殖活性といった機能性を示すことが報告さ
モ2糖から脱アセチル化またはアセチル化され
れている12−16)。これらのことから,キチン由来
て生成することも分かっている。GlcN-GlcNAc
へテロ2糖も何らかの機能性を示す可能性がある。
は Colletorichum lindemuthianum 由 来 キ チ ン
4.
2)ホモ2糖の脱アセチル化やアセチル化に
また,自然界では GlcNAc を含む化合物はシグ
ナルとしての役割を担っているものがある。例え
-1, 4GlcNAc
ば植物界では,マメ科植物と根粒菌が共生関係を
築く際に Nod ファクターが関与しているが,こ
の化合物の骨格は GlcNAc が3~5残基結合した
ものである17)。また,Vibrio 属,Seratia 属およ
-1, 3GlcNAc
び Streptomyces 属の微生物では,(GlcNAc)
2が
酵素発現の誘導に関与しているという報告があ
る18−22)。
◆ 4.キチン由来ヘテロ2糖 ◆
-1, 4Gal
ここまで,GlcNAc のホモオリゴ糖やその化合
物,N -アセチルアミノ糖を含むオリゴ糖に様々
な利用価値が見いだされてきていることを紹介し
た。ここでは,キチン由来ヘテロ2糖がどのよう
-1, 3Gal
なものか簡単に述べる。
4.
1)キチン加水分解によるヘテロ2糖の生産
自然界に存在するキチンは,主に GlcNAc が重
食品と容器
第2図 N-アセチルアミノ糖を含むオリゴ糖
289
2012 VOL. 53 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
デアセチラーゼや Thermococcus kodakaraensis
有オリゴ糖やその化合物の中には機能性を有して
のリコンビナント酵素により,(GlcNAc)
2 の非
いることが分かっていることから,GlcNAc-GlcN
還元性末端側のみが脱アセチル化して生成され
にも機能性があるのではないかと考えられる。そ
た と い う 報 告 が あ る24,25)。 ま た
GlcNAc-GlcN
して最近,本ヘテロ2糖はこれを生産することが
は,Colletorichum lindemuthianum 由 来 キ チ
できる細菌にとっては重要なシグナルとして働い
ンデアセチラーゼの逆反応により(GlcN)
2 をア
ていることが分かってきた。
セチル化することで得られている26)。さらに近
◆ 5.GlcNAc-GlcN の役割 ◆
年, 海 洋 細 菌 で あ る Vibrio 属 の 一 部 が 生 産 す
るキチンオリゴ糖デアセチラーゼ(COD)によ
GlcNAc-GlcN の機能について述べるには,海
り(GlcNAc)
2 の還元性末端側が脱アセチル化さ
洋ではどのようにキチンが分解されているのか,
れて生産されることも報告されている27−32)。し
またその中でオリゴ糖はどのような役割を担って
か も, こ の COD 生 産 性 Vibrio 属 に と っ て は
いると考えられてきたのかを示す必要がある。ま
GlcNAc-GlcN は偶然の産物ではなく,菌体外の
ず,海底土壌中でのキチン利用システムについて
最終産物として優位に生産されるオリゴ糖である
触 れ, そ の 中 で(GlcNAc)
2 や GlcNAc-GlcN の
ことが分かっている29)。
役割について述べる。
4.
3)Vibrio属細菌によるGlcNAc-GlcNの生産
5.
1)海底土壌中でのキチン利用システム
キチン由来へテロ2糖のうち GlcNAc-GlcN は,
海底土壌中の甲殻類の屍骸などのキチンは,海
一部の海洋細菌が積極的に生産していることが分
洋細菌により資化されている。このときの海洋細
かっている。本へテロ2糖の生産は以下のように
菌はどのような挙動をとると考えられているのか,
行われている。キチンは,自然界において分解と
以下に説明する。まず海洋細菌がキチン塊に接触
合成を繰り返している。海底土壌中では海洋細菌
し,不溶性多糖であるキチンを分解するためにキ
がキチンを分解して GlcNAc のオリゴ糖を生産し,
チナーゼを分泌する。そして(GlcNAc)
2 をはじ
栄養源にしている。海洋細菌である Vibrio 属細
めとする GlcNAc のオリゴ糖を生産し,吸収して
菌は,キチナーゼを分泌しキチンを(GlcNAc)
2
栄養源として増殖している。このとき海洋細菌は
にまで分解し栄養源としている。しかし一部の
周鞭毛を用いてキチン塊上を這うような遊走行動
Vibrio 属細菌は,さらに COD を分泌して還元性
(ソーミング)をしながらキチンを分解している。
末端側を脱アセチル化し,GlcNAc-GlcN を生産
細菌がキチンを資化している間にも,菌体外に分
29)。ここで興味深いのは,これら
する(第3図)
泌されたキチナーゼは海底土壌中を漂っていると
の細菌は(GlcNAc)
2 を栄養源にすることができ
考えられる。その結果,少し離れたところに存在
るため,何故わざわざ GlcNAc-GlcN を生産する
する別のキチン塊にも酵素が触れて,その新しい
のかということである。これまでに,GlcNAc 含
キチン塊からもオリゴ糖が生産されてくる。やが
しがい
べん
は
第3図 GlcNAc-GlcNの生成
食品と容器
290
2012 VOL. 53 NO. 5
キチンへテロ2糖(オリゴ糖)
第4図 海洋細菌のキチンの利用
て,細菌がはじめのキチン塊を資化しつくしてし
素生産誘導因子や遊走性因子として働くことが報
まう。しかし,海底土壌中を漂ってくるキチンオ
告された。この報告を受け,GlcNAc-GlcN は本
リゴ糖を認識して,極鞭毛を用いてそちらに向
ヘテロ2糖を生産することができる菌に特異的に,
かっていく遊走行動(スウィミング)をし,新た
キチン分解酵素生産誘導因子や遊走性因子として
33)。
な栄養源を発見してさらに増殖する(第4図)
働くのではないかと考え検討を行った。
このように,海底土壌中では,菌体による酵素
Vibrio 属 の 中 で も GlcNAc-GlcN を 生 産 す る
の分泌,オリゴ糖の生産,菌体の増殖,菌体の移
ものと生産しないものが存在しており,前述の
動(遊走)により次々に散在するキチンが分解さ
V. furnissii は,GlcNAc-GlcN を生産しないタイ
れて利用されていると考えられている。
プのものである。GlcNAc-GlcN を生産するため
5.
2)ホモオリゴ糖の役割
には,(GlcNAc)
2 の還元性末端側を脱アセチル
近年,Roseman らにより Vibrio furnissii を用
化する酵素である COD を生産する必要がある。
いた研究が行われ,前述のキチン利用システムの
つ ま り,COD 遺 伝 子 を 持 っ て い る Vibrio 属 は
中で本菌が菌体外で生産する(GlcNAc)
2 が,栄
GlcNAc-GlcN 生産性の細菌と考えられる。そこ
養としての役割だけではなく,この菌自身のキチ
で,COD 遺伝子を持つ Vibrio 属細菌とこの遺伝
ン分解酵素の生産を誘導したり遊走行動を引き
子を持たない Vibrio 属細菌を用いて,GlcNAc-
起こすことが報告された18,34,35)。このことから,
GlcN がキチナーゼの生産を誘導するかどうか調
海洋細菌にとってキチンオリゴ糖は,生命を維持
べ た。 そ の 結 果,COD 遺 伝 子 を 持 つ GlcNAc-
するために重 要 な 役 割 を
担っていることが分かった。
以上のことから,キチンか
ら 最 終 的 に GlcNAc-GlcN
を 生 産 す る 一 部 の Vibrio
属 細 菌 で は,GlcNAcGlcN が何らかの役割を持
つのではないかと考えた。
5.
3)ヘテロ2糖の役割
V. furnissii は,キチナー
ゼを生産し,キチンからの
菌体外での最終生産物とし
て(GlcNAc)
2 を生産する。
そしてこれがキチン分解酵
食品と容器
第5図 GlcNAc-GlcNの生理機能
291
2012 VOL. 53 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
GlcN 生産性の Vibrio 属細菌だけが,本へテロ2
に2糖に作用し長鎖には作用しない。COD の酵
糖によりキチナーゼの生産が強く誘導されること
が分かった36)。さらに,遊走行動を引き起こす
素化学的性質について調べられた菌体は Vibrio
alginolyticus H-8 27,38),Vibrio cholerae EI Tor
かどうか調べたところ,GlcNAc-GlcN は本へテ
N1961 28),Vibrio parahaemolyticus KN 1699 30,31),
ロ2糖生産性の Vibrio 属細菌に特異的に遊走因
Vibrio sp. SN184 32)の4菌株だけである。これ
子として働くことも判明した37)。
らの菌由来の COD は,すべて(GlcNAc)
2 の還
これらのことから,本ヘテロ2糖は COD 生産
元性末端側の GlcNAc のみを脱アセチル化する。
菌,つまり GlcNAc-GlcN を生産する能力のある
ま た,(GlcNAc)
3 に も 作 用 し て GlcNAc-GlcN-
菌に特異的に働き,生理機能を発現するシグナル
GlcNAc を生産し,一部は(GlcNAc)
6 まで作用
分子であることが分かった(第5図)。
して非還元性末端側から2番目の GlcNAc を脱ア
セチル化することが報告されているが,2糖に比
◆ 6.キチンオリゴ糖
デアセチラーゼについて ◆
べるとその活性は極わずかである27,28,30−32)。本
酵素に関する情報はいまだ少ないが,今後研究が
す
GlcNAc-GlcN を 生 産 す る の に 必 須 の 酵 素 は,
キ チ ン オ リ ゴ 糖 デ ア セ チ ラ ー ゼ(COD) で あ
進み広い分野で利用されることを期待している。
◆ 7.おわりに ◆
る。本酵素はカーボハイドレートエステラーゼ
ファミリー4に分類される酵素であり,2010年に
キチン由来のヘテロ2糖の生産についての研究
(GlcNAc)
2 に作用する脱アセチル化酵素として
はまだ始まったばかりであり,GlcNAc-GlcN 生
EC 番号 3.5.1.105 と付された比較的新しい酵素
産酵素である COD についての情報もわずかであ
である。
る。しかし,COD により生産されるヘテロ2糖
これまでに GlcNAc 鎖の脱アセチル化を行う酵
は,COD 生産菌にとってのシグナル因子である
素はキチンデアセチラーゼ(EC 3.5.1.
41)が知
ことがわかり,今後さらなる生理機能の解明が期
られているが,この酵素はキチンのように長い
待されるオリゴ糖であると考えられる。
鎖に作用する酵素である。一方で,COD は,主
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32)Sakamoti, Y. et al. : J. Appl. Glycosci., 56, 273−276
(2009)
33)Keyhani, N. O. et al. : Biochem. Biophys. Acta., 1473,
108−122(1999)
34)Bassler, B. et al. : Biochem. Biophys. Res. Commun.,
161, 1172−1176(1989)
35)Bassler, L. B. et al. : J. Biol. Chem., 266, 24268−
24275(1991)
36)Hirano, T. et al. : Glycobiology, 19, 1046−1053(2009)
37)Hirano, T. et al. : Lett. Appl. Microbiol, 53, 161−166
(2011)
38)Ohoishi, K. et al. : J. Biosci. Bioeng., 90, 561−563
(2000)
創包工学研究会 講演会のご案内
第50回講演会 “医薬品情報伝達とバーコード(4)”
◇開催日時:平成24年5月25日(金)
◇演題および講師
9:30 ~ 16:45
○世界の医薬品・医療機器に対する表示・登録・追
◇主催:創包工学研究会
跡義務化の状況
◇会場:品川区民会館(通称“きゅりあん”)
㈶流通システム開発センター研究開発部
東京都品川区東大井5−18−1
黒澤 康雄
◇申込先:創包工学研究会事務局
○調剤薬局における新バーコード対応と国際比較
〒101−0047東京都千代田区内神田 1−18−11−717
㈱スズケンカスタマーサポート部 長谷川フジ子
(住所が変更になりました)
○医薬品容器へのダイレクトマーキング―最新のイ
TEL & FAX:03−3291−3219
ンクジェットおよびサーマル転写―
メール:[email protected]
㈱エムエスティ社長 坂本洋之
参加申し込みがあった場合,請求書(振込先記載)
および参加証を郵送します。
○欧州に於けるバーコードシステムの導入について
興和㈱産業・インフラ事業部 堀部利秀
◇参加費:25,000円/人
○ RSS コード導入の注意点並びに検証と検査
◇参加費振込先:みずほ銀行 神田支店 普通預金
㈱マイクロテクニカ第二営業部 葛生 仁
口座番号:1936457 名義:創包工学研究会
○バーコード印刷への取り組について
㈱岩田レーベル開発部 野田一彦
食品と容器
293
2012 VOL. 53 NO. 5
連載エッセー 食べもの随想
た
むら
しん
ぱち
68
日常生活と健康長寿
― 栄養・運動・休養―
ろう
田 村 真 八 郎
(元農水省食品総合研究所長)
誰でも健康長寿を願うことは間違いないでしょ
現在の日本では栄養上の欠点はカルシウムがや
う。現在の日本人は世界各国の中でも有数の長寿
や不足,ナトリウム(食塩)がやや過剰と理解さ
国民です。女性はこの20数年ほどダントツ1位の
れています。この点は是正する必要がありましょ
長寿になっていて,平均寿命は86才位です。男性
う。
も平均寿命は80才ほどで2,3位の長寿国民です。
柿以外にも日本には何となく食べたほうが良い
ですから全体的にみれば日本人の日常生活はそれ
とされている食品があります。シジミ(蜆),青
ほど悪くない,むしろ良好といって良いようです。
魚( イ ワ シ・ サ バ な ど ), 梅 干 し, 納 豆, カキ
それでも,更に良くしようと,栄養・運動・休
(牡蠣),お酢,海藻(ノリ・ワカメ・ヒジキな
養などについて,いろいろの提言がなされてきま
ど),乳酸菌(ヨーグルト・糠ミソ漬など),など
す。それらは個別的には正しいと思われますが,
などです。
あまりに大きな生活の変化を要請するものには賛
シジミは,土用シジミ・寒シジミといって,夏
成できません。現状が充分良いと思われるからで
の暑さや冬の寒さで心身が弱っている時期に食べ
す。むしろ微調整だと考えたほうが良いと思われ
ると,元気を取り戻すと思われています。オルニ
ます。
チンという特殊なアミノ酸が多く,これが健康に
日本人の日常生活が良好だとして,具体的には
良いとされているようです。
どういう点でしょうか。
梅干しは食べものと薬の中間的な食品と考えら
ハラ
誰でも思いつくのは諺にもなっている「…腹八
れています。予期はしていてもその余りに強い酸
分目に医者要らず…」ではないでしょうか。特に
味と塩味にビックリして,心身をピリッとさせる
現在の日本では食料の自給率は40%ほどで低いの
効果があります。
で問題ですが,充分に豊富で食べ過ぎが注意され
その他にも「…酒は百薬の長…」ともいいます。
ているわけです。それで外国ほど極度に肥ってい
昔は酒・味噌・しょう油などの醸造業が工業の大
る人は少ないようです。昔より労働が少ないです
宗でしたから,それらが呑ん兵衞とグルになって
から八分目よりは七分目位が目標だという識者も
作った諺のような気もします。が,醸造食品を摂
います。
ることは良いようですから,マアそうだとして置
「…柿が赤くなると 医者が青くなる…」など
きましょう。識者は1週間に1日は休肝(閑)日
個別食品に関する諺もあります。柿は日本各地に
を作るようにと進言しています。
植えられている優れた果樹です。特に甘柿は日本
生活総体で考えてみますと「…笑う門には福来
独特のものだそうです。秋になると皆が食べるよ
たる…」が有名でしょうか。外国は知りませんが,
うになります。柿の果実にはビタミンA効果のあ
日本には落語という非常に洗練された話芸があり
るカロテンやビタミンCが多いわけです,それで
ます。普通は面白い話でも何回も繰り返されると
多分栄養的に不充分であった昔の日本国民は,秋
嫌になってしまうものですが,落語は同じ話を何
になって柿を食べるとその欠点が補なわれて医者
回聞いてもおかしくて笑い出してしまいます。日
にかかる人が少なくなり,医者が困って青くなる
本の優れた文化でしょう。特にマクラといわれる
ということだったのでしょう。現在では柿は食べ
前置き話には面白い話がいっぱいあります。今こ
てもらえず,多くがカラスの餌になっているのは
の文章を書きながらも思い出して顔がゆるんでく
残念です。
る位です。
イ
食品と容器
294
カド
2012 VOL. 53 NO. 5
キ
悪口をいわれながらも,オヤジ・ギャグとか駄
のに仰天した日本人が多かったと思います。アメ
ジャレとかも流行しています。NHK などのテレ
リカ兵は紳士的だったし悪気はなかったのですが,
ビ番組の中でも,アナウンサーもゲストの人も
日本の下足を脱ぐ習慣を全く知らなかったわけな
いっしょになって楽しんでいるようです。人を笑
のです。
わせるのですから結構なことといえましょう,こ
休養の本命は睡眠でしょう。それが現在の日本
れらの言葉を通しての笑いと団らんが日本人を長
では,うまく安眠できないとの嘆きが多く聞かれ
寿にしているのではないでしょうか。
ます。その原因の大部分はいろんな心理的なスト
健康長寿には「…栄養・運動・休養…」の3つ
レスのようです。日本人は割と見え坊ですから,
のバランスが肝要といわれています。運動につい
それらのストレスにしっかり対応して解決しよう
ては,ウォーキングやジョギング,階段の昇降な
と考えます。しかし困難な場合が多いわけです。
ども推しょうされ,かなり実行されているようで
それでイヨイヨになればみっともなくても逃げ出
す。東京では皇居一周を反時計回りに走るジョギ
してしまいたくなります。諺にも「…三十六計 ングが盛んです。歩道が狭いところがあり,一般
逃げるにしかず…」がありますが,これが日本人
の歩行者と時にはトラブルがあったりする位混ん
の底の底の本音になっていると思います。それで良
でいるそうです。
いので,それこそ生活の知恵ではないでしょうか。
最近は話題になることも少ないのですが,私は
しかし,どうしても逃げ出せないストレスがあ
ラジオ体操が日本人の健康にかなり役立っている
りました。それが昔の戦争で徴兵された時です。
ように思っています。朝の6時半から10分間ほど
徴兵で兵隊にされるということは殺すか殺され
毎日休むことなく続けられています。現在の歌詞
るかの「…殺し合い…」に行くということです。
は〈…新しい朝が来た 希望の朝だ よろこびに
行かなければ敵前逃亡で銃殺されてしまいます。
胸を開き 大空あおげ…〉となっていますが,昔
日本人の平均寿命は太平洋戦争の前は50才に達
は〈…昇る朝日の 光を浴びて 曲げよ伸ばせよ
していませんでした。それが1945年(昭和20年)
我らがかいな…ラジオは叫ぶ 1・2・3…〉
の敗戦の後は,数年足らずで急速に伸び出します。
だったと記憶しています。何か最初は生命保険会
まだ衣食住のいずれも惨めな時代です。私はこれ
社が始めたのだと聞いたおぼえがあるのですが,
は,日本国民が,自分や親や子供や兄弟がもう
もしそうなら,日本人の寿命を長くする一助に
「…殺し合い…」に行かなくてもいい,すなわち
なって来たのですから,生命保険会社は大当たり
この怖ろしいストレスから解放されたからではな
だったのでしょう。とにかく現在は NHK ラジオ
いかと考えています。
の不動の定番番組となって,日本人の健康長寿を
追記:腹八分目といっても,どんなものを食べ
下支えしているようです。
れば良いのでしょう。多種類の食料品といわれて
休養はいささか問題があるようです。労働時間
も分かりにくいわけです。これについては「…マ
そのものは,かなり減りましたし,労働強度も昔
ゴタチワヤサシイ(孫たちは優しい)…」とすれ
のように苛酷なものはなくなったようです。です
ば良いそうです。つまり,㋮:豆類・大豆・小
から身体のほうの休養はかなりとれていると思い
豆・豆腐などの豆製品,◯
ゴ:ゴマ・アーモンドな
ます。日本人の住生活の大きな特徴でもある,家
どの種実類,㋟:卵・卵加工品,㋠:乳・牛乳や
屋内では下足をぬいで暮らす状況は今も昔も変
チーズなどの乳製品,㋻:ワカメ・コンブ・海苔
わっておりません。これは身体的な休養にも心理
などの海藻類,㋳:野菜・小松菜・ダイコン・ニ
的な休養にも大いに役立っているように思います。
ンジンなど,㋚:サカナ類・イワシ・サバ・アサ
何十年も昔の話ですが,日本は太平洋戦争に負
リ・タコなどの魚介類,㋛:シイタケ・シメジな
けて,アメリカ軍に占領されてしまいました。そ
どのキノコ類,㋑:イモ類・ジャガイモ・サツマ
の頃アメリカ兵が住宅に下足のまま上がって来る
イモなど。
食品と容器
チチ
295
2012 VOL. 53 NO. 5
●
海外技術情報●
減塩食品の開発動向
( Salt Pinches Back )
Food Processing(U. S. A.)p.WF 3( ’
11・8 )文献 № 5713
2010年4月,“アメリカ合衆国でナトリウムの
砂糖に関する誤った憶説を,さも事実であるかの
摂取量低減戦略”というテーマで開催された医学
ように言ってきた。それから20年後,彼らはその
系の研究報告会にて,American Heart Assn. 社
説が誤りであることを認めた」と述べた。
CEO の N. Brown 氏は「ナトリウムの過剰摂取
ナトリウムの含有量を低減することで何らかの
は,心疾患および脳卒中の主な原因となる高血圧
利益が得られる人々のうち,約4%の消費者は塩
を悪化させる主因である」と述べた。また同氏は,
と風味の両立も必要だとしている。風味をほとん
食品内の塩分を徐々に低減させていくよう訴えた。
ど失わずにナトリウムの含有量を低減させる技術
アンチ食塩の相乗効果によって長年繰り返され
は既に確立されている。
た考えの中では,事実かどうかに関係なく,2つ
ニューヨークのパーチェスに位置する PepsiCo
の仮説が存在していた。第1は,摂取するナトリ
社は果敢にチャレンジに踏み切った。同社の商品
ウム量と,心血管疾患および脳卒中にかかるリス
であるレイズポテトは3つの原料から製造されて
クは関連している,ということが科学的に支持さ
おり,塩味はそのうちの1つである。ナトリウム
れているという説。第2は,食品内のナトリウム
の摂取量を低減させるという課題に取り組むため,
量を減少させることで,消費者がより健康的な食
研究開発チームは,食塩の結晶形状の違いに対し
品を口にしやすくなるという説である。
味の知覚がどのように反応するかという新しい探
まず第1の仮説だが,これには十分な証拠がな
求を始めた。
い。過去数十年間で何千もの研究が行われたが,
PepsiCo 社の研究員たちは全世界の研究機関や
健康なヒトのナトリウム摂取量と,疾患のリスク
企業の科学者と共に研究を進め,口内で最も効率
増加の間に,決定的な関係性があることは立証で
的に溶解する食塩の結晶形状を調査していった。
(ポテトチップスにかかっている食塩のうち,舌
きていない(最近,学術的な“意見”は正反対の
方向に進み始めている)。
で味わえるのはその20%のみで,残りはそのまま
第2の仮説は,アンチ食塩を先導する支持者の
飲み込まれてしまうようだ)
一人である W. Willett 博士によって,誤りだと
当初,研究員たちは,舌の広範囲でより味わえ
最近証明されたばかりである。博士は,高血圧症
るような塩の振りかけ方を試した。結果,風味は
の発生率が劇的に上昇しているが,ナトリウムの
増大したが,それがピークに達し,消失するまで
消費は1950年代から変わっていないことを示して
が早すぎた。PepsiCo 社はこの問題を改善するた
いる。ナトリウムを題材にした否定的なキャン
め,ポテトチップスのナトリウム量を4分の1程
ペーンが続いているにも関わらず,アメリカ人が
度に抑えられるような形状の食塩を新たに開発し
1日あたり約8gの食塩を摂取し続けていること
た。開発された食塩と元来の食塩で異なる点は,
は,アメリカ人が塩のきいた味を欲している証拠
結晶の形状の違いのみである。
である。
また,食塩の構成によって違いを生む別の方法
Compass Minerals International 社の研究開発,
は,その化学組成である。味覚は,味覚受容体に
テクニカルサービスの取締役 J. Poe 氏は,「何年
金属イオンが結合することで起こる反応作用であ
もの間,“専門家”たちは,炭水化物,脂肪 ,塩,
る。 事 実 上, 食 塩 の97~99% は い わ ゆ る“ 塩 ”
食品と容器
296
2012 VOL. 53 NO. 5
だが,その他1%にあたるミネラルの内,10分の
の使用量を抑えてくれる。この商品は,コショウ
1程度は異なる結合を行い,さらなる風味の力強
やバター,チーズ,肉と同様に,トマトと特別な
さやニュアンスの違いを生み出す。ナトリウムの
相乗効果がある。「時として,この商品の特徴,
量を低減させ,かつ風味を減少させることなく力
そして食感を高める特質は,味覚特性を維持ある
強さを出すために,海塩を使用する会社もある。
いは高める一方で,時には高価な風味成分の使用
Campbell Soup 社 も,2006年 か ら Healthy
を減らすこともある」と Bernhardt 氏は述べて
Request Soups という商品に海塩を使用し始めた。
いる。
しかし,142年の歴史を持つ同社は,完全にアン
ナトリウムの量を減らす際,特に非ミネラル分
チ食塩の流れに便乗した訳ではない。今年の7月
を用いて生産した代替品を使用する場合には,い
に食塩の調合を元に戻すと公式に発表している。
くつか考慮すべき点がある。ネブラスカ州オマハ
Nu-Tek Products 社は,人工香料や調味料の
の ConAgra Foods 社専務取締役の J. Ferrara 氏
必要性を減少させるような減ナトリウム海塩を天
は以下のように述べた。「我々は食品中のナトリ
然産物として提供している。この商品と食塩を
ウム量を低減させたり,食塩の代わりに別の物質
1:1で使用することで,ナトリウムの量を25~
を使用したりする際,まずは注文に目を通してか
50% 減少させることができると T. Yezzi 社長は
ら,顧客に一人前あたりのナトリウムの許容摂取
言及した。彼は,そのような減塩策の増加につい
量を尋ねている。味がしっかりとした料理に関し
て消費者へ提供するナトリウム量を低減させるこ
て言えば,一般的には材料自体にそれぞれナトリ
とを公約し続けているウォルマートのようなメ
ウムが含まれている。食塩を追加で加えたり,あ
ジャー事業体の刺激を指摘した。
るいは原料を加工したりする際にも,使用する原
Dr. Paul Lohmann 社からも,食塩に関する商
料にナトリウムが含まれていたりする。商品開発
品が作成された。同社は,食卓塩をほかのミネラ
者たちは,ナトリウム量が少量で,かつ風味豊か
ル塩と混合させる手法を用いて,50%減塩とナト
になるよう,ハーブや香料を含めたすべての材料
リ ウ ム フ リ ー バ ー ジ ョ ン を 有 す る Loma Salt
について検討し,要求された風味を作り上げよう
(ローマソルト)の3つの原材料処方を見い出し
としている。特定の植物は適切に使用すると,香
た。North American Sales and Marketing 社 の
りと同様に風味を増大させることができるから,
P. Stano 副社長は「ナトリウムの量を低減させる
非常に魅力的だ」。
ことこそ消費者が求めていることだ。アメリカの
また Ferrara 氏は,コクがあり,かつ素晴らし
食品に含まれるナトリウムの量はまだまだ推奨さ
い食感をもたらすグルタミン酸とヌクレオチドを
れている量をはるかに超えている」と述べた。
含む肉製品,チーズ,トマト,マッシュルームと
ニュージャージ州オレンジの LycoRed 社では,
いった材料からも,塩味を得られるような風味強
トマトを用いて,風味を強化する商品 Sante(サ
化について特に言及している。
ンテ)を開発した。新食品原材料開発の専務取締
Kerry Ingredients & Flavors Americas
役 S. Bernhardt 氏は,「LycoRed の食品開発者は,
Region 社の営業主任 A. Rice 氏は次のように述
トマトに存在する風味を高めるすべての要素を分
べ た。「 我 々 が 所 有 す る フ レ ー バ ー 調 節 技 術
離し,濃縮することに成功した,但しトマトのフ
“fmt”とは,まず,カスタマイズした工程,人
レーバーは除いて。Sante は,何世紀もの間シェ
工香味料,酵母抽出物の組み合わせや,発酵させ
フたちによって本能的に使用されてきた独特のウ
た原料を有効利用することでナトリウムの量を低
マミやコクをもたらしてくれる」と説明した。
減させることである。次に,塩味の感覚を与え,
そのうえ Sante は,人工風味成分やグルタミン
消費者が受け入れやすい風味を維持させつつ,歯
酸ナトリウム,酵母エキス,ヌクレオチド,そし
ごたえや機能的な問題を処理させる。このように,
“fmt”は自然な flavor system の集大成なのであ
てその他の風味成分や原料などの高価なスパイス
食品と容器
297
2012 VOL. 53 NO. 5
る。注文の内容によっては,ナトリウム含有量を
を決める際,Rice 氏が強調した点は「すべての
25~50% 減少させることもできる」。
食品のナトリウム量を低減させる万能の解決策は
海塩や野菜の濃縮液,香料,タンパク質由来の
ない」ということである。
(高橋希元)
ナトリウムの代用品,増進剤を使用するかどうか
●
海外技術情報 ●
「サステナブル ・ プラント ・ オブ ・ ザ ・ イヤー」受賞の
Frito-Lay 社カサ ・ グランデ工場
( Frito-Lay Casa Grande Facillity Attains Near Net Zero )
Food Engineering(U. S. A.)p. 39( ’
11・11)文献 № 5736
食品や飲料の生産で,使う以上のガスや電気や
スは以前の5分の1に減った。この成果は,例え
水を生み出すなどということが果たして可能だろ
ば PepsiCo 社が目標とする水準(9年で電力と
うか。アリゾナ州ソノラ砂漠の283エーカーの敷
水を20%,燃料消費を25%減らす)などをはるか
地に広がる Frito-Lay 社のカサ・グランデ工場は,
に上回り,資源が逼迫する将来において生産を維
将来の資源枯渇に備えたユーティリティー自給自
持するためのロードマップを提供するものである。
足という野心的な目標「ネット・ゼロ」に取り組
同工場プロジェクトチームは,まず照明やコン
んでいる。そこで用いられているエネルギー生成
プレッサーの効率化,モーターの小型化などの改
や水再利用の技術の多くは同社の他工場でも見ら
善によるエネルギーインフラの最適化に取り組ん
れるものであるが,そのためのインフラ諸設備を
だ。そうしたものを改善すれば再生すべき水は少
ここまで総合的にまとめた工場は,カサ・グラン
なくて済み,ボイラーやソーラーパネルもあまり
デが初めてである。 多くは要らないという考え方である。
全米37カ所に展開する Frito-Lay 社工場群から
2008年当時には同工場の廃棄物の14%が埋め立
このカサ・グランデ工場を選定したのは米エネル
て処理に回されていたが,工場各部門から志願し
ギー省。1984年に当時のエネルギー節減モデル工
て集まったチームが廃棄物の流れを分析,これを
場として設立され,1985年には Food Engineering
0.5%にまで減らし,さらにはそれを発電用燃料
誌のプラント・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた同
として電力会社に提供するに至った。
工場は,その立地条件や規模なども選定の理由と
食品にかかわるカーボンフットプリント全体に
された。1年前まで敷地内に排出されていた工場
おいて生産が占める割合は比較的小さい。そこで
排水は,バイオリアクターと低圧逆浸透システム
原材料供給や包装等々,サプライチェーン全体に
(LPRO)の設置によって,使用する水の4分の
かかわる各セクターのプロジェクトへの参加推進
3を循環・再生できるようになった。
が強力に進められ,お互いに協力してそれぞれの
再生水中に含まれる溶解固形物量は同地域の水
分野で資源の節約とそのための技術開発を行って
道水の10分の1である。敷地内耕作地の3分の1
いる。
を使って展開する18,000基のソーラーパネルは,
一例として,Frito-Lay 社はトルティーヤ用の
受電量の約半分の5メガワットを賄うことのでき
トウモロコシ煮沸工程を改善し,使用したタンク
る同工場ソーラー発電システムの一翼を担ってい
内の水を40%残し,次のロット用に使うようにし
る。しかし,エネルギー自給を目指すこの工場の
たが,これなどは2011年度のフード・エンジニア
目玉は1時間あたり6万ポンドのスチームを生み
リング・オブ・ザ・イヤーを受賞した Shearer’
s
出すバイオマスボイラーで,木材チップとパルプ
Foods 社のアイデアによるものである。
を燃やすこのボイラーによって,必要とされるガ
このほかにも,フライヤーに入って行く前にバ
食品と容器
298
2012 VOL. 53 NO. 5
キュームでポテトの水分をとばすシステムを効率
こうしたさまざまな活動の結果,いまやカサ・
化し,フライヤーの熱負荷を軽減するなどの改善
グランデ工場はポテトチップ工場とユーティリ
も行っている。
ティー工場の2つからなっていると,同社は言う。
北緯33度以南にある工場なら太陽エネルギーを
工場全体としてユーティリティーの必要量をいか
活用する条件は十分に備わっているといえるが,
に 減 ら す か と い う こ と が 最 終 目 的 で あ る の で,
カサ・グランデ工場の場合,その283エーカーも
個々の局面において不採用となった技術やシステ
ある敷地を使ってどう電力を作り出すかというこ
ムもある。バイオマスボイラーは廃棄物の熱を利
とが課題であった。さまざまなソーラー技術の活
用して発電するのに有用ではあるが,それを採用
用や財務的な工夫が行われたが,その1つには再
した場合,クーリングタワーのための水が必要と
生可能エネルギーへの投資家との連携というもの
なり,水の再利用という観点からは不利となるの
もあった。特筆すべき技術としては3つあり,1
で,発電用としては採用されなかった。
つは東から西へと向きを変えていくソーラーパネ
経済性の観点からは,水の使用節減を納得させ
ル,2つ目は太陽に焦点を合わせるパネル,そし
るのは難しい。グローバルなメーカーとして,す
て3つ目は巨大なパラボラアンテナのような鏡面
でに Frito-Lay 社は水不足地帯でも操業している
に太陽光を集めるもので,これはヘリウムガスの
が,北米のあちこちの地域で水の供給が問題とな
膨張と収縮によるピストンの運動で発電するス
るにともない,今や水の再利用を考えるべき時だ
ターリンエンジン用としている。
と判断した。GE 社から導入した容量120万ガロ
このパラボラアンテナ状の鏡面体メーカーは,
ン の メ ン ブ レ ン・ バ イ オ リ ア ク タ ー は 1 日
これを数百台並べることを提案したが,Frito-
648,000ガロンの水再生能力があり,これはカサ・
Lay 社では取りあえず10台でスタートし,その結
グランデ工場が使用する水道水の半分に相当する。
果を踏まえてさらに高いレベルを目指すとしてい
Frito-Lay 社 で は「 ネ ッ ト・ ゼ ロ 」 計 画 に 決
る。これによって得られる電力は取りあえず工場
まった予算はつけていないが,それは無制限にお
内搬送用の電気自動車の電源として使われる。
金を使えるということではない。「いくらでも
米南西部の場合,輸送の距離が長くなるので電
使ってよいというのなら,どんな工場でも電気代
気自動車が使えるような環境にはなく,またハイ
ゼロにするのはわけがない。問題は費用対効果で
ブリッド車による実験もまだ良い結果が出ていな
どこにバランスを求めるかということだ」と同社
い。しかし,輸送部門は同社の温室効果ガス排出
は言う。ポテトの80%は水分であり,これを再利
量の3分の1を占めているので,燃料効率の改善
用することができれば,その工場は水のメーカー
は大きな課題となっている。輸送部門の平均燃費
になるだろう。それが現実になるかフィクション
は2010年で18.5 mpg(マイル/ガロン)となって
で終わるかは別として,Frito-Lay 社は資源にか
おり,これを2014年までに25 mpg にするという
かわる軍と共同の緊急時対応計画のメンバーと
目標を掲げている。同社のトラック全14,126台に
なっており,その軍は「ネット・ゼロ」を1つの
はすべて GPS が備えられており,荷卸中のエン
軍備増強とみなしていることから,その意味では
ジン停止の監視や,走行距離短縮のためのルート
産業界の資源枯渇への対応は,国の防衛の要の1
のチェックなども行っている。
つとなるのかもしれない。
食品と容器
299
(大池静男)
2012 VOL. 53 NO. 5
●
海外技術情報 ●
2011年,食品着色料で目立った25の出来事
( 25 Eye-Catching Developments for 2011 )
Food Technology(U. S. A.)p. 49( ’
11・11)文献 № 5734
昨年(2010年)は食品着色料が脚光を浴びた。
ことを示している。
FDA 委員会は合成着色料の警告ラベル反対決議
2.新青色で他の色を創る
に至り,あるカラメル色素はカリフォルニア州法
Wild Flavors 社 で は,Colors from Nature シ
の「プロポジション65」に反すると訴訟に発展し
リーズに新色を加える技術を開発した。アルコー
た。天然着色料は優れた機能と安定性を食品にも
ル/ノンアルコール飲料・菓子・ベーカリー製
たらす一方で,混ぜ物による粗悪品のリスクが大
品・乳製品・ディップ・ソース・ドレッシング・
きな懸念となっている。また2011年には,天然着
漬け汁・サプリメント等に応用できる。「我が社
色料の安定性を増す画期的な開発が相次ぎ,また
の新青色は安定性の高さに特徴がある。青から
食品着色のための新しい乳化剤が GRAS を取得。
緑・紫・黒まで,天然色のスペクトラムを完璧に
そして天然着色料の栄養上や規制上の利点にも焦
再現できる」と同社 T. Truby 氏は語る。緑色は,
点が当てられるなど,昨年に続き食品着色料に
ホウレンソウ等では求める色が出ない上に安定性
とって慌ただしい一年となった。
を欠く。ライムグリーンから森林色まで幅広い陰
着色料は食品の色のばらつきを補正したり,加
影を出せる新青色は問題解決の要である。紫色は
工・保存過程での変色を抑える効果を持つ。見た
ブドウ果汁などのアントシアニンからしか作れず,
目が良くなれば風味も増す。本稿ではこの一年間
色相は赤紫系のみ,しかも退色しやすい。新青色
における着色料に関連した25の主な出来事とその
は pH 調整により青紫の発色も自在である。他の
影響を見ていく。
色素と組み合わせてグレーから黒まで出すことが
1.FDA の合成着色料警告ラベル反対決議
できる。pH は2.5~8.0と,従来製品の5.5~7.0以
3月31日,FDA 召集の委員会は8票対6票で
内でしか安定しない性質を上回る。青果物のみを
合成着色料の警告ラベル表示に対する反対決議を
原料とするため認定は免除される。液状では熱・
採択したが,着色料と子供の多動との関連性につ
光・酸条件下で安定し,水溶性で澄んだ味と香り
いて研究を進めるよう強く求めるというただし書
を持つ。
きを付けた。同委員会文書では以下のように述べ
3.カラメル色素とプロポジション65
ている。「ADHD(注意欠陥多動性障害)など特
カリフォルニア州環境保健有害性評価局
定の患者については,合成着色料に限らないもの
(OEHHA)はプロポジション65に基づき 4−メチ
の,食品中の物質によって症状が悪化する可能性
ルイミダゾール( 4−MEI)を発がん性物質リス
をデータが示している。臨床実験は,患者に与え
トに掲載した。これに対し米飲料業協会(ABA),
る影響が特定物質に対する耐性欠如に起因し,神
米食料雑貨製造者協会(GMA),全米コーヒー協
経を毒する特性が原因ではないことを示唆してい
会(NCA)からなる原告団は OEHHA を起訴し
る」。
た。「 4−MEI は広く食品中に存在し,カラメル
合成着色料を含む食品に特別な警告ラベルは必
色素のような加熱を経た食品からは当然検出され
要ないとする FDA 委員会決議は,大手食品メー
る。カラメル色素は製法により4種類に分類され
カーからも支持を得た。しかし,この課題は解決
るが,どれも遺伝毒性はない。カラメルⅢとⅣは
からは程遠く,そもそも委員会招集が初めてとい
4−MEI を含むが,げっ歯類の毒性テストでいず
うこと自体,政府見解が多少変化したにすぎない
れも発がん性は認められていない。EFSA 食品添
食品と容器
300
2012 VOL. 53 NO. 5
加物委員会は EU 域内で使用されるカラメル色素
7.新カルテノイドの添加
の安全性検証結果を発表し,ヒトの生殖や子ども
DSM Nutritional Products 社の無アレルゲン
の発育に与える有害影響もないとしている」と
赤色 Beta-carotene 10% Emulsion Red は使いや
ABA 副所長 M. Storey 氏は言う。
すい液状でパステルピンクから赤色まであり,安
4.天然色素に対する混ぜ物による粗悪品問題
定性が高く動物性物質を含まないと J. Biggs 氏は
の取り組み
語る。同社は Betanat や Lyconat を主力製品とす
天然色素は機能性と安全性に優れる一方で,不
る Vitatene 社をこのほど合併した。
正な混ぜ物による粗悪品を生むリスクが指摘され
8.天然ミクロエマルションによる安定性強化
る。2011年の IFT 定時総会では“食品着色料:
天然着色料の弱点は安定性の欠如だが,Food
その品質に影響する様々な側面と粗悪化のリス
Ingredient Solutions 社 の FISclear は50~100 nm
ク”を議題に,安全な天然/合成着色料の提供を
の粒子サイズによって色の鮮やかさと高安定性を
求める食品業界・当局・消費者のニーズに応える
実現させた。アスタキサンチン・ベータカロテン
基準大綱についても議論が及んだ。EFSA の J.
等を含み,黄・橙・ピンク・赤色を出すことがで
Serratosa 氏は“混ぜ物の判別”と題して EU 域
きる。透明な菓子や飲料,リカー等に向く。
内リスク管理について述べ,Chr. Hansen 社の
9.屈折作用の魅力?
J. L. Balson 氏は,食品安全性と着色料法規の関
近視の人は青のような短波色,遠視の人は赤の
係に対する産業界の展望を示した。Pharmacopeia
ような長波色を好む傾向があるという。青や紫は
社の M. Lipp 氏は,天然着色料が合成着色料や不
前部に,赤や黄は後部にと,色の波長によって網
活性物質の添加が粗悪品リスクを上げたとして,
膜上の到達点は異なる。「近視の人は光を網膜前
予防のための品質基準厳格化を主張する。
部でとらえるので青や紫を見やすい。しかし赤や
5.コチニールの新表示法
黄を見るには筋肉を緊張させなければならない。
FDA は昨年1月,強度アレルギー反応の報告
遠視の人の場合はこの逆と,楽に見られる色を好
への対応として,コチニール,カルミンの使用明
むという単純な理論だ」と DervalResearch 社創
記を要請した。コチニールカイガラムシ雌を原料
立者の D. Derval 教授は語る。同社は視覚のほか
とする着色料は,アイスクリーム・ヨーグルト・
味覚・触覚・嗅覚・聴覚が人の好みを左右し,さ
飲料・キャンディー等に広く使われる。特徴的な
らにいずれにも出生前ホルモンが関連していると
ピンク・赤・紫色を呈し,耐熱・耐光性も高い。
分析する。同社では25カ国にまたがる何千という
6.赤色の新手法
測定結果により,消費者行動予測指数 Hormonal
Chr. Hansen 社 の Red Strawberry Fragaria
Quotient を開発した。
100 WS はカルミン酸を15%含み,ヨーグルトや
10.画期的なカラメル色素
果物加工品の色を鮮やかにする。水溶性,美しい
従来のクラス1のカラメル色素が安定なのは
ピンク色でシェルフライフが長く,加工耐性も高
pH 3.5以下だが,D. D. Williamson 社の DDW 520
く,従来のカルミンより10~20%使用量を減らせ
は pH2.5未満で安定し,使用量も少なくて済む。
るため,費用を抑えつつ見た目を良くできると同
これはコーラ製造に革命を起こし得る発明だと同
社 R. Roubille 氏は言う。さらに「果物調合時の
社は胸を張る。同社では近くパプリカ色素の飲料
バッチごとの色のばらつきを最小限にし,しかも
エマルションにおける安定性を向上した新製品を
消費者が直接製品に加えることもできる」。また
発売予定である。
FruitMax はこのほど米市場にも導入された。赤
11.栄養サプリメントの新色
から紫まで7つの色は,いずれも天然素材を原料
Ashland Specialty Ingredients 社の栄養サプリ
とする。
メントの錠剤コーティングシステム Aquarius は
「我が社が従来の不安定な天然色素の代替品とし
食品と容器
301
2012 VOL. 53 NO. 5
てアルミニウム顔料の開発を進めたもの」と
ン形成に適しており,着色料の0.1~5%を用途
T. During 氏は言う。さらに「欧米の市場ではサ
に応じて加える。スラリー内の懸濁保持を目的に
プリメントコーティング関連法規が全く異なり,
開発され,低せん断粘度を抑えて高安定性顔料の
Aquarius はいずれにも対応可能だ」。有機/無機
分散を助ける。油中水型エマルションを作れるた
成分を原料に安定性を高め,ラベル表示が容易で
め染料も使いやすくなる。
使いやすい。Aquarius MG と組み合わせれば保
17.植物色素がニーズに合致
湿性を補完することもできる。
植 物 を 原 料 と す る 着 色 料 市 場 の 拡 大 に 伴 い,
12.視覚的効果を与える
Roha Food Colors 社は2006年から年率25%の成
Sensient Colors 社 の SensiPearl は FDA 認 可
長を続けている。
の雲母や二酸化チタニウム素材により光沢と虹色
18.栄養素の色?
の微光を出し,シリアル・冷菓・マシュマロ・ゼ
2011年 Supply Side West におけるセッション
リー・キャンディー・ガムなどに向く。ラベル表
「目に見える栄養素:食品着色料」は着色料の種
示は「天然素材」,SpectraCoat Pearl Dispersion
類やビタミン活性・ラベル表示などを議題とし,
工程により均一なコーティングを実現しており,
BASF 社 J. Foley 氏は「栄養素の色」の販促効果,
少量で効果があるため費用節減につながる。
すなわちカロテノイドの応用法とラベル表示につ
13.ベータカロテン粉末がもたらす高安定性
いて発言した。
LycoRed 社の Lyco-O-Beta 1 % CWS は黄から
19.アントシアニンの使い方
橙色の色鮮やかな天然ベータカロテン粉末で冷水
Naturex 社の Nat Color シリーズは,「アント
にもよく溶ける。「粉末状でも加工工程において
シアニンの特徴や pH 反応を生かした。アントシ
も 高 安 定 性 を 保 つ 」 と 同 社 U. Alroy 氏 は 語 る。
アニン同士および他の植物性分子間の“共着色”
熱・光・酸素に対し安定で,炭酸飲料・アイシン
研究によって安定性をさらに改善した」と
グ・アイスクリーム・果物加工品・ゼリービーン
L. Lesegretain 氏は語る。単体でも混合でも合成
ズなどに向く。
着色料やカルミンに劣らない赤色と高い安定性を
14.パプリカ粉末の色安定性促進
誇る。同社ではアントシアニン・ビート根・カロ
パプリカは明るい赤の天然着色料素材として
テノイドを組み合わせて中性 pH と熱に耐性のあ
様々な食品に使われ,この色の保持が市場での勝
る新製品も開発している。
敗 を 決 め る。Kemin Food Technologies 社 の
20.白の効果
Fortium TR 30 は天然ローズマリー抽出物とトコ
パステルカラーを出したいときは,白の下地が
フェロールの混合液で,酸化遅延効果によりパプ
有効である。Sachtleben Chemie 社では植物を原
リカや赤色香辛料の色を保つ。
料とする白色二酸化チタン顔料を開発した。青み
15.天然色素は弾む
を加えるとさらに白さを増す。天然着色料として
2011年 IFT 食品展において Kalsec 社はポップ
の化学的純度も申し分なく,無味無臭・ノンカロ
コーンやハードキャンディーへの天然着色料応用
リーである。
法を紹介した。ポップコーンには Bloody Mary
21.果物・野菜由来の天然色素がもたらす法的
や Coconut Curry, キ ャ ン デ ィ ー に は Aztec
利益
Spice・Yuzu・Orange Sage・Blackberry Mojito
GNT 社の Exberry シリーズは青果物を原料と
等の製品がある。
し,スナック菓子・パルフェ・フローズンヨーグ
16.着色用乳化剤を GRAS 認定
ルト・飲料・キャンディー等に向く。警告ラベル
Stepan Food & Health Specialties 社の Drewpol
は一切不要である。
PGPR はこのほど GRAS 認定を受けた。加工食
22. 天然色のコーティング剤
品向け染料・顔料や認可不要色素でのエマルショ
Clasen Quality Coatings 社の Star シリーズは
食品と容器
302
2012 VOL. 53 NO. 5
エンロービング・ボトミング・パンニング・ドリ
25.ピンク色
ズリングなど幅広いコーティング方式に適用でき
天然マラスキーノチェリー ( 砂糖漬けされた甘
る。色も豊富で,コーティング剤中の非水素化油
い チ ェ リ ー ) は ピ ン ク 色? Oregon Cherry
など他の素材を補完する効果がある。
Growers 社の Pink Blush は青果物濃縮果汁で着
23.顔料メーカーが活躍
色されている。美しい色は乳がん予防のシンボル
Hilton Davis 社
にも選ばれた。ベーカリー製品・飲料・冷菓など
は Emerald Performance
Materials Specialties Group と合併し,Emerald
に適している。
Hilton Davis 社として食品向け顔料・染料・分散
源に迫る
色素を取り扱っている。
果物の副産物など幅広い資源が,新しい色や合
24.水溶性の新エマルション
成着色料の代替になると考えられるが,手付かず
Wild Flavors 社の Colors from Nature シリー
の分野も多い。鮮やかな赤色を出すため,Suntava
ズに4種の新製品がお目見えした。ベータカロテ
社は紫トウモロコシを,SK Food International
ン・アポカロテナール・パプリカ透明エマルショ
社は Crimson Red Corn を,S & P Marketing 社
ンによって水溶性と酸安定性を実現した。透明な
はヒラウチワサボテンを開発している。新素材か
ため曇りによる変色がない。また同社で既に開発
ら得られる色が,食品メーカーが将来直面する課
済みの赤~橙色パプリカ不透明エマルションは,
題の克服に役立つ可能性もある。
(力丸みほ)
無味で最終製品の味を損なわない。
●
海外技術情報 ●
急成長するパウチフォーム・フィル・シールシステム
( Form-Fill-Seal Pckaging Is on a Roll )
Food & Beverage Packaging(U. S. A.)p. 20( ’
11・20)文献 № 5744
普及してきたフォーム・フィル・シール(成
の場合,シーラーの滞留時間を長くとりながらも
形・充填・シール)システム(FFS システム)
能率の高い同社縦型システムの技術を採用して高
の ト レ ン ド は い ま ど う な っ て い る の だ ろ う か。
能率,高品質,低コストを実現したという。
FFS システムメーカー各社への調査の結果,食
リシール可能なパッケージの機械メーカーであ
品メーカーなど,システムのユーザーは包材を切
る Triangle Packaging Machinery 社が最近開発
断するカッターの刃からリシール用ジッパーの効
した一体型の横型ジッパーのアプリケーター(装
率的な装着に至るまで,あらゆる面に関心がある
着機)は,フィルムケージとアプリケーターを一
ことが分かってきた。システムメーカーの1社,
体化した業界唯一のもので,アプリケーターが
tna solutions 社によれば,FFS システムは,性
フィルムと一緒に移動するので,ジッパー装着が
能,フレキシビリティー,シンプルさの3要件を
正確になり,不良品が少なくなるという。
備えることが必須だという。
Heat and Control 社の最新型 Ishida Atlas 202
かたや,Bosch Packaging Technology 社に言
は ユーザーのマルチタスク,高効率,低コスト
わせると,システムのメーカーは密封性を高める
の要望に応えて平底,縁シール,ガゼット折り,
ことによってユーザーの商品の安全性と品質の向
ピローなどさまざまな袋形状に対応可能だという。
上を図る一方,コストの抑制,能率の改善にも配
また,Bosch 社の SVI という間歇 動作の縦型
慮したシステムを提供しなければならないという。
バッガーにはリシール可能なジッパー付きの「ド
同社の横型 FFS システム Bosch Pack 301 LD
イ」スタイルの袋(底ガゼット三方袋)に対応す
食品と容器
けつ
303
2012 VOL. 53 NO. 5
るオプションがあるが,イニシャルコスト低減の
FFS シ ス テ ム の 今 後 の 方 向 に つ い て 言 え ば,
ため最初はこのオプションなしで設置し,後から
まず,食品メーカーはこれからもますます多種多
簡単にこのオプションを付けることができる。さ
様な商品を多種多様なパッケージで品ぞろえする
らにこの機械は四方シールの袋用のオプションも
ことが求められていることを認識しなければなら
あるので,1台ですべてのスタイルの袋に対応で
ない。今日のスーパーマーケットに並ぶ商品とそ
きるという。変化の激しい消費者の嗜好によって
のパッケージの種類を10年前のそれと比べてみれ
商品のライフサイクルが短くなっており,これに
ば,それは明らかであろう。そこで,食品メー
応じて簡単に包装も変えられるシステムをユー
カーとしては型替えが簡単で,停止時間の少ない,
ザーは望んでいるというわけである。
結果として全体の効率が高いシステムを求めるで
FFS システムにおいて見過ごされがちなのが
あろうし,また特にシールの方式については超音
包材のカッターで,通常のカッターでは数週間か
波を使ったものが注目を集めることになるだろう。
ら 数 カ 月 で 摩 耗 す る の に 対 し て,Ishida Atlas
そういう意味では,システムだけを考えるのでは
バッガーの場合摩擦や,熱,腐食に強いセラミッ
なく,パッケージの素材メーカーも巻き込んだ開
ク合金を使った独自のカッターを採用,保証期間
発というものが重要になってくるであろう。これ
を3年としている。
までのシステムでうまく使えていた素材が高速化
Matrix Packing Machinery 社が世界初として
の進む新しいシステムでも OK とは限らないから
上市した Smart-Gate システムは,ハンドリング
である。
の難しいチューブ形状や小型の袋用に安定的で,
<ケーススタディー1>
タイトかつコンパクトな加工ができ,生産スピー
カナダのレストランチェーン Tim Hortons 社
ドが25%アップし,停止時間も減らせるとうたっ
では,各地の店舗に配送するプレミアムコーヒー
ている。
用に採用した Cloud Packaging Solutions 社の横
一方,この FFS システムの市場には関連業種
型 FFS シ ス テ ム は, 2 〜2.5オ ン ス サ イ ズ の パ
からの参入もみられるようになってきている。
ケットを900個/ 分のスピードで処理,「品質,能
フ ィ ル ム メ ー カ ー で あ る Bemis 社 の 子 会 社
率が向上し,パッケージのデザインも良くなっ
Curwood 社は,2010年に次世代の製品として開
た」という。型替え時間も5分以内で,窒素充填
発 し た13層 の パ ウ チ 用 フ ィ ル ム Liquiflex
のオプションも備えているという。
Advance を使い,豪州の機械メーカー Propac 社
<ケーススタディー2>
との共同開発になる FFS システムを上市,フィ
サラダ,食肉,ドレッシング,ソースなどの
ルムと設備がベストマッチであるうえ,フィルム
パッカー,Deli Star 社は2010年に Curwood 社の
は既存の設備でも使えるとしている。
FFS システム Liquiflex を採用した結果,生産性
シカゴ近郊に本拠を置く Taisei Lamick USA
が倍増し,人件費が節減できた。それまで45ポン
社も新規参入組のひとつで,同社の Dangan III
ド入りの袋で1時間当たりの生産量が4,000ポン
システムはしょうゆなどの液状製品を途切れなく
ドであったものが,新システムでは20ポンド入り
連続的にパックすることによってパウチでは業界
袋 に 変 更 し て, 生 産 量 は8,400ポ ン ド に 上 が り,
最速の500パック / 分というスピードを誇る。
オペレーターは1人で済むようになったという。
化学メーカーの Dow Chemical 社もそのフィ
同社によれば,この種のシステムの習熟に通常な
ルム関連部門において FFS システムを開発,顧
ら半年掛かるところが,ひと月以下で済み,型替
客が新しいフィルム素材によるパッケージをテス
えも柔軟で早く,フィルムも強度が高くロスが出
トする環境を提供すると共に,自社のフレキシブ
ない等,あらゆる面でメリットが得られたという。
(大池静男)
ルパッケージ用のシール材をテストすることもで
きるようになっている。
食品と容器
304
2012 VOL. 53 NO. 5
●
海外技術情報 ●
ホーメル社の先進的な食品工場
( Hormel's Progressive Processing Plant Is Built for the Long Haul )
Food Engineering(U. S. A.)p. 35( ’
11・12)文献 № 5742
Hormel Foods 社は,四半世紀ぶりに Dubuque
あり,結果的に機械の効率と信頼性が増しメンテ
工場を建設するに当たり今後25年間通用する工場
ナンス頻度が少なくなる。他の食品会社は同様の
を目標に設計した。環境順応性はエネルギー効率
熱回収システムの設置を検討しているが,現時点
や水管理などの目標と同様に持続的経営の要素で
では Dubuque 工場が食品業界で最初で唯一の適
あり,市場の変化に対する適応能力は持続可能な
用である。
生産認証と同様に Dubuque 工場の役割である。
機械と電気部門マネジャーの C. Sayles 氏によ
“Progressive Processing” と し て 知 ら れ る
ると,水の再利用は最初からの計画である。例え
342,000平 方 フ ィ ー ト の 工 場 は, 景 気 低 迷 下 の
ば,レトルト冷却水は通常排水溝へ捨てられるが,
2008年7月に着工され,操業開始時は食品購買形
ここでは閉鎖循環系へ送られて熱エネルギーが回
態の縮小が起こっていた。そのため当初計画の電
収され,次のバッチや他の用途に再利用される。
子レンジで調理できるアントレの生産ライン2本
Sayles 氏によると,Dubuque 工場のユーティリ
が中止された。状況変化に対する適応は設計開始
ティーインフラは新しいベンチマークを設定した
当初からの既定事項であり,2010年秋に肉缶詰ラ
が,米国にある38の Hormel 社の食品工場は,他
インに変更された。120年の歴史を持つ同社は食
工場のヒントになるように“the Best of the Best”
品に対する需要の変化や新しい商機を知っている。
を目指して絶えず改善検討を行っている。
LEED(環境性能評価システム)認証は当初計
Dubuque 工場には,天窓が212あり,照明装置
画にはなかったが,与えられた白紙の状態から最
には,点灯させる電球の照度と数を面積や利用で
高のエネルギー効率と資源利用基準を構築するこ
きる自然光に応じて連続的に自動調整するセン
とができた。「LEED システムと我々が達成した
サーが装備されている。
かったものとが合致した」と Hormel 社食品部門
原料が一方の端から入り他方から最終製品が出
の Austin 社副社長の M.Devine 氏は言う。そし
ていく直線的レイアウトがここ数十年業界の主流
て生産開始6カ月後,LEED ゴールド食品工場の
だが,現在は主要な加工を行う部屋をネットワー
候 補 リ ス ト に 挙 げ ら れ た。Dubuque 工 場 で は,
クでつなぐ傾向にある。
“Progressive Processing”
最終製品重量当たりのエネルギーと水の消費量を
は湯がきや,原料の前処理,加熱調理,充填,そ
同社の同規模ライン対比で25%削減の目標を掲げ,
の他の処理を別々のエリアにシフトすることであ
操業初年度でクリアーした。高効率モーターや,
る。1エリアで生産を続けて,他方はクリーニン
熱反射屋根材,高性能照明などに加え閉鎖水循環
グやメンテナンスをする。「稼働を分けることに
システムによる廃熱回収システムが,電力やガス
よって,工場は潜在的に24時間体制で稼働でき
消費量低減に寄与した。コンプレッサーや,ドラ
る」と工場長の M. Zelle 氏は言う。
イヤーなどの装置を冷却した水は125℉から140℉
2004年に電子レンジで調理できる Compleats
に暖まり,直接利用されたり200,000ガロンのタ
トレーを上市してから会社は年間2桁成長し,最
ンクに貯蔵されトイレの洗浄や暖房に再利用され
終 的 に 5 ラ イ ン を 設 置 し た。Dubuque 工 場 は,
る。同様にレトルト後の水は熱交換機に循環され
BEST 社の光走査式検査システムをはじめ数々の
て熱エネルギーが回収される。コンプレッサーの
プロセス革新を自負している。タンパク質調理シ
冷却に水を利用することは運転管理面でも効果が
ステムは,サーマルブレンダーによって,少ない
食品と容器
305
2012 VOL. 53 NO. 5
水で原料を徐々にそして均一に混合する。調理後,
の天井ファンが設置され毎分223,572立方フィー
製品は隣接の充填室に送られトレーに充填される。
トの空気を動かしている。ファンの消費電力は
肉汁などがトレーのフランジ部に付着すると,密
100 W の白熱電球5個以下であり年中動いてい
封不良やレトルト中に包装欠陥を来すので,シー
る。
リング前に識別し排除する視覚検査システムを社
2009年9月~ 12月にメンテナンス作業員と新
内で開発した。製品トレーは,Aagard 社製多機
人オペレーターを対象に労働安全や食品安全,作
能型ロボットによってレトルトバスケットに自動
業指示手順について92~108時間の工場内教育を
積載される。ツインのこの装置はレトルト後の製
行い,2010年1月に生産を開始した。
品を取り出し,仕上がり製品の整列やスリーブ装
持続可能に対する活動
着,ケース詰め,パレットへの積載,ストレッチ
Hormel 社は全工場で,“the Best of the Best”
包装を行う。装置の全長は126フィートで設置面
を目標に改善競争をしている。今年,Dubuque
積は従来の同機能機の約半分である。充填&シー
工場で12の the Best of the Best 提案が実行され
ルラインとレトルト積載システム間のアキューム
た。昨年のエントリーは非可食屑を嫌気性消化の
レーターは2分のバッファーがあり,一時的に不
餌料として再利用するものである。より良い企業
具合なシステムを直すために機械に小窓がついて
市民であるために埋め立てごみゼロ達成にチャレ
いる。
ンジしている。“Progressive Processing”は地方
さらなる削減
自治体や公共福祉での取組みで注目度を増している。
温室効果ガス(GHG)が実質的に0.5ポイント
作 業 者 の 安 全 と 食 品 安 全 は 同 等 に 評 価 さ れ,
増加した昨年,GHG を5年間で10%削減すると
Dubuque 工場の操業初年度の安全優秀賞はエネ
いう社内目標が発表された。カリフォルニア州の
ルギー効率や持続可能性,適応性の達成度と同等
Turlock 工場を閉鎖し,Valley Fresh 缶ラインを
の栄誉である。「私は手順遵守にこだわる人間で,
Dubuque 工場へ移設することで製品市場と原料
社員に『安全に近道はない,手順に近道はない。
供給地が近くなる。また,移転を機に主要設備の
手抜きしてためになっていると思うな』と言って
グレードアップもできる。Turlock 工場ではチキ
いる。私は文化を育てるためにここへ来た。文化
ンをウオーターバスで2時間以上かけて調理して
は,工場長が去っても長く残る」と Zelle 氏は言
いたが,スパイラルオーブンを使えば80%時間短
う。彼が残したいのは,良い製造の実践,食品安
縮ができエネルギー消費も少ない。さらに,調理
全計画,優れた環境,エネルギー効率の追求,開
後に胸肉の外皮を人手ではぎ取る必要がなくなり,
放的なやり方,である。
微細片の発生も少なくなる。エネルギー節減に加
適応性はもうひとつの目標である。工場は4組
えて,品質が向上しマーケットシェアが拡大し
のメンテナンスチームのフレックス制(4日間非
た。
番の後4日間12時間交替勤務)を試行している。
缶サイズは3種類で,最も大きいものは12オン
これは若干の継続課題があるが,初期結果は良好
ス缶である。缶高の低い5オンス缶は,缶が機械
である。同様に,半連続的に稼働している工程の
に転がり込む従来型のラベラーでは,缶の制御や
オペレーターは,工場の他のエリアが停止してい
ラベルの貼付ミスなどの問題があり,水平方向で
る場合に交替を頼まれる場合がある。柔軟性は建
缶を処理する Krones 社製ラベラーに更新した。
築設計で決まる。「ビジネス環境と消費者の選択
ラベラー後,缶をケースに2段積みし,ボード紙
を変えるには柔軟性が必要である。我々は缶詰や,
製トレーやそれに伴う包材屑を排除した。
びん詰め,パウチ,冷凍加工もできるようにした
製品は短期倉庫を兼ねた天井高30フィートの広
い。70年間続いている Spam 缶詰のような製品を
大な余剰スペースに運ばれ出荷前3日間貯蔵され
見つけるのは難しい」と Devine 氏は言う。
る。作業環境を良くするために,直径24フィート
Dubuque 工場は,Hormel 社の他の工場の踏み
食品と容器
306
2012 VOL. 53 NO. 5
台として,また会社の技術者の学習教室としての
工場に移植可能なシステムやアイデアを求めて
役割をしている。最近,125人の社内技術者が自
Dubuque 工場を見学した。
(合田芳宏)
●
海外技術情報 ●
キトサン, メチルセルロース , ナノ粒子による革新的複合素材フィルム
( Innovative Composite Films of Chitosan, Methylcellulose, and Nanoparticles )
Journal of Food Science(U. S. A.)p. N 54( ’
11・9 )文献 № 5732
はじめに
臭性,均一性に問題があった。本研究で,われわ
近年,生分解性を持つプラスチック包材がます
れは高強度,柔軟性,均一性,透明性,および食
ます注目を集めている。そこで食品包装用キトサ
品包装用途に必要な特性に優れるフィルムを得る
ンおよびメチルセルロースのナノ構造フィルムに
ために,無公害で環境に良い新しいフィルム製造
焦点を当て検討した。キトサン(以下,CH と
プロセスを提案する。この研究ではナノ構造体複
略)は生体適合性,生分解性,無毒性といった特
合フィルムの製造とその光学特性,バリアー性,
徴を有する環境にやさしい素材で様々な用途に使
力学特性を調査することを目的とした。本研究に
われているが,その強度と酸素バリアー性を理由
おける新規性は,フィルムマトリクスへナノ粒子
に,食品包装用の可食性フィルムとして使われて
を組み込んだことにある。
いる。食品包装素材には,安全性はもちろんのこ
実験方法
と,機械的な特性やガス透過性,耐久性,弾性,
CH は,乳酸溶液(2% v/v)にて4時間攪 拌
柔軟性などが求められる。この点,キトサンは伸
し2%(w/v)溶液とし,MC は,エタノール溶
長性に難点が見られるため,他のポリマーと混合
液(EtOH/H2O 1: 1(v/v))にて12時間攪拌し
することで柔軟性などを改良する試みが行われて
1%(w/v)溶液として使用した。CH と MC 溶
いる。一方,セルロースの誘導体,例えばメチル
液は所定の割合(CH:MC 100:0~0:100計
セルロース(以下,MC と略)は食品添加物とし
11段階)で10分間混合攪拌後,2種類の1%また
て認められ,乳化剤や増粘剤に使用されている。
は2%のシリカナノ粒子(以下,NPs と略)を
また水に可溶で酸素バリアー性を有する膜を形成
それぞれ溶液に添加した。NPs を添加した溶液
することができ,良好なバリアー性を有した可食
は,1時間攪拌後,20分間超音波処理と4,500 rpm
性包材として,様々な食品のシェルフライフに対
で10分間の遠心処理にて脱気を行った。この溶液
する効果が調査されている。コーティングするこ
80mL をアルミニウムトレイ上に展開し,60℃で
とにより製品外観を改善するほか,腐敗を軽減し
3時間乾燥させた後,20℃まで冷却し,試験用
たり食品成分と環境雰囲気間のガス交換(酸素,
フィルムを作製した。得られたフィルムは,27℃,
二酸化炭素,エチレン)を制御できる。バリアー
相対湿度60% のデシケーター中に,少なくとも
性や機械的特性を強化した新規材料を開発するに
72時間貯蔵後,機械的特性や透過特性の標準試験
は,様々な成分が混和でき,成分個々の特徴を生
(ASTM 1993)に供した。フィルムの特性は,平
かせることが重要である。これらの特性を満たす
衡含水率(ECM%),水への溶解性,フィルムの
ために,昨年 CH フィルムをベースにした多くの
厚 さ, 原 子 間 力 顕 微 鏡(AFM) に よ る 観 察,
研究が行われたが,ほとんどの材料は柔軟性に欠
FTIR 分析,UV−可視光分析,酸素および二酸
け支障をきたした。最近の研究ではこれらバイオ
化 炭 素 の ガ ス 透 過 性(Standard PN−EN ISO
ポ リ マ ー を 組 み 合 わ せ て い る が, 残 念 な が ら,
2556 2002),ナノ粒子の粒径分析,機械的特性解
MC と CH 混合のフィルムは,透明性,強度,無
析によって評価した。
食品と容器
307
かくはん
2012 VOL. 53 NO. 5
結果と考察 フィルム中の NPs の粒径
を 使 用 し た 場 合,CH,MC
溶液に添加前の粒径である
30.8 nm に安定的に維持され
12000
引 張 強 度︵g ︶
は,コロイド状のシリカ粒子
14000
6000
溶液に添加した場合には,ミ
4000
存在していた。フィルムの厚
さ は,CH の み で27.12±2.58
μm,MC の み で15.28±1.71
μm であったが,CH を50%
含有するフィルム(以下,CH 50
Films with (s) NPs 1%
8000
ていたが,NPs 粉末を EtOH
クロンサイズの凝集体として
Films without NPs
10000
Films with (s) NPs 2%
Films with ludox NPs 1%
Films with ludox NPs 2%
CH90 CH80 CH70 CH60 CH50 CH40
フィルムの組成
第1図 キトサンおよびメチルセルロースの比率とナノ粒子を添加した複合素材
フィルムの引張り試験結果
CH90;CH(キトサン)90%,MC(メチルセルロース)10%の複合素材,他の表記も同様。
NPs;ナノ粒子,(s)NPs;粉末状の NPs を添加,LudoxⓇ NPs;コロイド状の NPs を添加。
と表記)では,中間の22.21±1.92μm であった。
引張り試験による機械的特性の検討結果を第1
平 衡含水率は,MC 100フィルムで6%,CH100
図に示した。NPs を含まない素材の引張り強度
フィルムで18% であり,CH の比率が上がるにつ
(tenacity) は,CH40~CH90で4,000~6,000g 程
れて増加傾向にあった。一方,MC0から MC70程
度であったのに対し,NPs を含む素材では大幅
度まで,水への溶解性は70~80%と高かったが,
に強度が増加した。粉末状の NPs を添加した素
それ以降増加傾向にあり,MC100で90%強まで
材 で は, 2 % 添 加 し た CH 50素 材 で12,000g,
上昇した。MC の溶解は,水がポリマーのマトリ
1%添加した素材で11,000g が最大値であったが,
クスに浸透することにより生じると考えられ,水
コロイド状の NPs(図中では Ludox と表示)を
分活性の高い食品を包装した場合バリアー性が失
添加した素材では,2%を添加した CH 50の素材
われ,包装材料としては限界があると考えられる
で約12,000g,1%を添加した素材で最大値の
が,その場合は複層することで解決できる可能性
13,500gを示し,伸展性は100%であった。この
がある。
ことから,コロイド状の NPs を添加した CH と
フィルム組成の再現性とナノ組織化を評価する
MC の複合素材では,フィルムの強度が NPs を
ため,FTIR と UV から可視光領域までの光学的
添加しない場合に比べ約2倍となることが明らか
特性を測定した。FTIR 分析の結果,NPs を含ま
になった。
ない複合素材では,CH 40より CH の比率が大き
また,素材の比率,加熱温度や時間などを統計
なフィルムの場合,構造がほぼ一定となることが
的に解析した結果(SAS を使用),1%の NPs
分かった。NPs を1%添加した CH 50から CH 70
を添加した CH 50の複合素材が最高の品質となる
の素材では,スペクトルに高い再現性が得られ,
ことを確認した。さらに,この条件で作製した素
安定構造が維持されているものと考えられた。特
材を AFM で観察したところ,すべてのサンプル
に,CH の4,500から5,400 cm に由来する特徴的
で,可塑剤を使用していないにもかかわらず,亀
なピークは,NPs を含む混合素材でも高いピー
裂 や 細 孔 が な い こ と が 明 ら か に な っ た。 ま た,
クとして再現された。また,UV−可視光領域で
NPs を添加した素材では平行状に組織化された
のスペクトル解析の結果,NPs を1%添加した
繊維状の構造が観察されたが,NPs を添加しな
場合,NPs を添加しない場合に比べ,274nm の
い素材ではこれらの繊維状構造は観察されず,機
最大ピークが205nm へ青方偏移することが明ら
械的特性の差を説明する裏付けとなると考えられた。
かになった。
ガ ス 透 過 性 の 検 討 結 果 を 第 1 表 に 示 し た。
−1
食品と容器
308
2012 VOL. 53 NO. 5
CH50で1% の NPs を含む素材
(フィルムの厚さ22.21μm)で
は,酸素ガスは二酸化炭素に比
べ低い透過率となった。二酸化
炭素は,フィルムに水が存在す
ることからフィルムへの溶解性
が高く,酸素より高い透過性と
なったものと考えられた。フィ
ルムの透過性は,素材の比率や
NPs の濃度により,目的に応
第1表 ナノ粒子1%および2%を含む,キトサン50%,メチルセルロー
ス50%の複合素材のガス透過性
Sample
Gas
Gas
O 2 Tr flow
Film composition
CO 2 Tr flow
Conditions
Cm3
m
-2
Conditions
24 h
-1
kPa
-1
Cm3 m-2 24 h-1 kPa-1
CH 50 NPs 1%
5,000
80,000
CH 50 NPs 2%
4,500
40,000
CH 50;CH(キトサン)50%,MC(メチルセルロース)50%の複合素材
NPs;ナノ粒子(LudoxⓇ NPs)
じて制御できると考えられる。
性を検討した結果,溶解性は MC の比率の増加
結論
により上昇し,NPs の添加によって UV 特性が
CH(キトサン)と MC(メチルセルロース)
青方偏移し,高い引張り強度,弾性,均質性,機
の比率を変え,NPs(ナノ粒子)を添加した複合
械的特性が付与されることが分かった。
(大谷敏郎)
素材フィルムを作製し,その包装素材としての特
●
海外技術情報 ●
“微生物”の食品加工への利用拡大
( Processing with Microbes )
Food Technology(U. S. A.)p. 77( ’
11・11)文献 № 5735
バクテリア,酵母,カビといった微生物は食品
である。大麦は,コーン,小麦,米などと同様に
に共通の汚染物質である。食品加工および衛生管
それ自身のデンプンを効果的に糖に変える酵素を
理面で重要な事は,いかに殺菌し,微生物の成長
持つ。
を防止するかである。微生物の効能が必要な時は
酵母のタイプは,色や風味に影響する。次の工
どうなのか? いくぶん単純に言い過ぎかもしれ
程で,ろ過しホップを加える。また,エールビー
ないが,まずは微生物の増殖に最適な条件は何か,
ルは通常ビールより色が濃いが,大麦麦芽がより
そして我々に何をもたらすかをよく知る必要があ
長時間加熱されることによる。
る。そこで,発酵や,微生物の作用による食品の
ワインは主にぶどうを発酵して作られる。果物
いくつかを考察し,かかるプロセスに関する知見
の糖分は,調理し酵素的に転換する必要のある穀
について論じる。
類のデンプンに比べ,直ちに使用可能である。ワ
飲料
インの風味は,ぶどうの種類,地域,土壌,気候,
ビール,ワインそして,ウイスキーはみな酵母
農作業に影響される。赤ワインは皮も含めた果汁
株の発酵で作られる。製品の違いは基質の違い,
を発酵させ,白ワインは皮を取り除いた果汁を発
酵母の菌株,発酵条件,次工程の処理による。
酵させる。赤ワインは白ワインより概して,高温
エジプト人は大麦のパンを水に浸しておいた時,
で発酵させ,白ワインは通常冷やした容器で発酵
おいしく,安定し,栄養価の高い飲み物になるこ
させる。糖をエチルアルコールと二酸化炭素に変
とを発見した。今日でもビールは液体パンと呼ば
える発酵は熱を排出するが,温度が上がりすぎる
れている,というのも発芽の途中で発酵性糖質と
と,風味が損なわれる。発泡性ワインは,炭酸ガ
なるデンプンを含んでいる穀類から作られるから
スを封じ込め,泡立ちのないワインは発散させる。
食品と容器
309
2012 VOL. 53 NO. 5
おり
ワ イ ン は 沈 殿 や ろ 過 に よ っ て 澱 を 取 り 除 き,
後,残りの粉を加えるようなものもある。要はグ
オークの木樽に入れ熟成される。樽は大体4~5
ルテンと言う小麦の中のたんぱく質を水和させる
回使われる。熟成ではワインから樽へ,そして樽
ことにより,グルテンは,網目状の組織を形成し
からワインへ成分が移動する。また,木材は通気
炭酸ガスとデンプンの発泡体を支えるようになる。
性があるため,酸化や,濃縮もゆっくり起こる。
発酵した生地はさまざまな形に成形し,焼いた
ワインはびん詰めされた後も,多くは良い方向に
り,揚げたりすることで水分を飛ばし,外側をこ
変化を続ける。ワインは高温によって好ましくな
んがりとした色にする。また,水分が水蒸気にな
い変化が加速されるため,華氏50度以下で保存さ
り,炭酸ガスが膨張し,さらに膨らむ。
れる。
パンは化学的,物理的に不安定で,デンプンの
ウイスキーやその他の蒸留酒の製法は、作り始
再結晶により比較的早く質感が変化する。
めがビールによく似ている。発酵した後,マッ
バイオガス
シュ(すりつぶした麦芽をお湯に浸したもの)は,
食物や有機性廃棄物は,微生物による好気性,
アルコールを除くため加熱して蒸留される。化学
嫌気性排水処理を通して分解される。好気性処理
工学の用語でいえば,この蒸留は,理論段数が1
は,沈殿スラッジの中で菌が培養されているため
のバッチ処理である。伝統的なウイスキーでは,
活性汚泥法とも言うが,スラッジの一部は再投入
三度,再蒸留し,その度残留分は次のバッチに再
され,残りは処分される。好気性処理は空気を必
投入される。収量や効率は低い。
要とし,二酸化炭素,水,細胞集団を産する。嫌
ウォッカ,ジン,ラムといった蒸留酒は連続式
気性処理は空気の無いところで行われ,メタン,
多段カラムで蒸留される。ウイスキー類は樽での
水蒸気,二酸化炭素を産出する。水を除去すると,
熟成で色や風味がつく。バーボンの原材料の51%
バイオガスとなり,可燃性で燃料となる。
以上はコーンを使用し,新しい焦がした樽で4年
野菜
以上熟成する。アイリッシュ,カナディアン,ス
ザワークラウト,キムチ,ピクルスはキャベツ
コッチは,バーボンかワインの熟成に使われた樽
やきゅうりに塩を加え,乳酸発酵で作られる。塩
で熟成しなければならない。ブレンドウイスキー
は,腐敗菌や病原性細菌を排除し,必要なバクテ
はモルトかコーンのシングルグレインウイスキー,
リアに適した環境を作り出す。酸はそのうえ,特
およびコーンから蒸留されて,熟成していない柔
有の風味や,食感を生む。通常,加熱や植菌は必
らかな風味の調合用醸造アルコールを含む。ラム
要ない。微生物は空気中に存在し,条件が整えば,
酒はサトウキビの絞り汁や糖蜜から作る。ジンは
活性化する。
調合用醸造アルコールにさまざまなハーブを加え
肉
て,風味をつける。
イタリアンサラミは豚のひき肉,塩,その他の
パン
調味料で作られる。多孔質の皮に詰められ,30日
パンは,多様ではあるが,穀類の生地を発酵さ
ほどつるされる。塩分,水分の除去により水分活
せて作られ,主に小麦粉とイースト菌が用いられ
性は下がり,乳酸菌の増殖により pH が低下する。
る。生地は炭酸ガスを中にとじこめて,膨らみ,
これにより,腐敗を抑え独特の風味をつける。
質感が生まれる。長い時間をかけ,ゆっくり膨ら
チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品について
むのを待つと,通常,風味や食感は良くなるのだ
語るには紙面が足りないが,時に私たちの敵とみ
が,採算の面でこの過程は急かされることになる。
なされる微生物たちが,時に私たちのおいしく安
パンの製法はさまざまだが,粉の一部にイース
全な食品のパートナーとなることは間違いない。
せ
(伊藤るり)
トと水を加え,薄いスラリー状にして発酵させた
食品と容器
310
2012 VOL. 53 NO. 5
●
海外技術情報 ●
ウメの果実特性とフェノール含量
( Prunus Mume-Fruit Characteristc and Phenolics )
Fruit Processing(DEU)p. 28( ’
11・11/12)文献 № 5739
ウメはアジアで3000年以上前から栽培されてお
がん関連では,正常細胞にはほとんど影響を及
り,200種類ほど存在する。花が目的であったが,
ぼさないが,がん細胞に顕著な阻害作用を示す新
約2000年前からはウメ果実の医薬特性が注目され
規化合物がウメ果実から単離された。高速液クロ
はじめた。ウメ果実は韓国,中国,日本で消費さ
分析では,ウメ果実に含まれる新規化合物の量は
れており,韓国で2,700 ha,中国で9,000 ha,日本
1.47~1.70 g / kg である。本活性成分は,現在市
で17,000 ha 栽培され,平均収量は6.7トン/ ha で
販されているウメ果実のアルコール飲料や果汁飲
ある。
料向けの機能性成分として利用できるであろう。
配糖体プルドメニン,リンゴ酸,クエン酸に富
健康機能に加えウメ果実濃縮ジュースはヒトイ
んだ酸味の強い果実は,熟す前に採取され,加塩
ンフルエンザAウイルスの感染を阻害することが
や乾燥により水分活性を低下させた後,保存され
報告されている。濃縮果汁による細胞処理は,ウ
る。アジアでは熟期の異なる品種が存在し,収穫
イルス吸着以前の場合にのみ有効である。すなわ
時期は3~4カ月間と長期間になる。
ち,宿主細胞の表面にウイルスのヘマグルチニン
ウメとアプリコットは近縁種であり,多くの自
が付着するのを濃縮果汁が妨害するためであろう。
然交配種が存在する。ウメ果実のほうが高価であ
ヒトの体内における生体分子の酸化傷害は,が
ることから,遺伝子レベルで判別する手法も開発
んのような退行的あるいは病理学的過程を経る。
されており,未成熟のアプリコットをウメと偽装
それ故に,これらの化合物の有効性は抗変異原性,
することの検知に使われている。
抗がん性,抗酸化性等の健康機能の化学的な基盤
ウメの薬効特性
をもたらすであろう。食品が反応性酸素を消去す
種々のウメ加工品は,生理活性物質に富むこと
る能力は,実験動物における薬効と関連するであ
から抗がん作用,抗酸化成分といった健康食品や
ろう。しかし,食品の特性や栄養成分含量は加工
疾 病 治 療 を 目 的 に 消 費 さ れ て い る。 濃 縮 ウ メ
工程中に変化することも考慮する必要がある。
ジュースは,ネズミにおいて血液の流動性を改善
試験に用いたウメ果実
する効果が認められた。コラーゲン-アラキドン
ブラジルのサンパウロ州の高度737mで収穫さ
酸と ADP 誘導血小板凝集作用,トロンビンに
れたウメ果実を供試した。開花から約88日で,自
よって誘導されるフィブリノーゲンからフィブリ
然に落下する直前の緑から黄色の色調の果実であ
ンへの変換作用に対して阻害作用を示す主要成分
り,完全に熟すまで26℃で6日間保存した。
は,クエン酸とムメフラールである。ウメを原料
物理的,科学的特性
とする加工食品が,慢性胃炎,消化性潰瘍,化生
ウメ果実の重量は6.11±1.93gであり,これま
ならびにがん等の胃の不調に対して保護的な効果
でに報告されているものよりも小粒である。大量
を示すことは,伝統的に知られている。ピロリ菌
に消費され,伝統食品の一部となっているアジア
を感染させたスナネズミに,ウメ果汁濃縮物を
諸国においては品種改良のため果実は5~30gと
1%,10週間摂取させると慢性胃炎の抑制が認め
大粒である。西洋諸国ではウメ果実は,ほとんど
られた。加熱濃縮により調製した乾燥親油性抽出
の人が知識を持ってないため消費されないが,ア
物は3種類のヒト結腸がん細胞に対して抗腫瘍効
ジア系子孫の間では,ウメは抵抗性があるため殺
果を示した。
虫剤を使用せずに普通に栽培されている。ウメの
食品と容器
311
2012 VOL. 53 NO. 5
仲間であるモモ,ネクタリン,ア
プリコット,プルーン,スモモは
栽培され,品種改良され,各地域
に適応している。
ブラジルにおいては,ウメは耐
病性に優れるため,モモ,ネクタ
リン,スモモの台木として利用さ
れている。施肥をしないし,摘果
もしないことからウメ果実は小粒
である。また,ブラジルでは耐寒
性が要求されないことも重要であ
る。
可溶性固形分と全滴定酸度は,
ウメ果実の熟成度と品質を表すこ
とから重要である。ウメのような
追熟型の果実は,収穫後に代謝と
呼吸が増加する。追熟の後半では
果実中の酸は揮発性物質に分解さ
れる。ウメ果実中の可溶性固形分
は9.125±0.177°Brix,全滴定酸度
300
250
X軸 各種部位と処理方法
Y軸 全フェノール含量(カテキン当量mg /新鮮物)
200
150
100
50
0
CMA CA0 CN0 RA0 RMA RN0 PA0 PA1 PB4 PA2 PA4 PB2 PB1 PN0 PMA
第1図 ウメの各種部位と処理方法による全フェノール含量の変化
<図の記号説明>
3文字の1番目の文字,C:種皮,R:種子,P:パルプ果肉.
3文字の2−3番目の文字,MA:手選別,空気混入無し,26℃1時間後,A0:
パルピング後に直ちにブランチング加熱,N0:パルピング後にブランチング加
熱無し,A1:ブランチング加熱,100℃1時間加熱,A2:ブランチング加熱,
100℃2時間加熱,A4 : ブランチング加熱 ,100℃4時間加熱,B1:ブランチング加
熱,真空下で100℃1時間加熱,B2:ブランチング加熱,真空下で100℃2時間加熱,
B4:ブランチング加熱 , 真空下で100℃4時間加熱 .
は5.205±0.098gクエン酸/ 100g であった。糖酸
れた。
比は1.75であり,生鮮果実は生食に適さない。ブ
種 子 に お い て は, フ ェ ノ ー ル 含 量 は10~
ドウやモモの糖酸比はウメよりもはるかに高く16
13.5 mg カテキン当量/ 100gであった。ブラン
~20である。
チング処理した種子では,高温での種皮との接触,
全フェノール含量
パルプ工程の廃棄物における高湿度のためフェ
第1図にウメの各種部位と処理方法による全
ノール含量が増加した。
フェノール含量の変化を示した。種皮には20mg
果肉パルプにおいては,ブランチング処理しな
カテキン当量/ 100gと多くのフェノールが含有
かったものを除いて大きな変化はなかった。手選
されており,次いで種子であった。この結果は,
別処理は,果皮の場合と反対に果肉では最も低い
パルプよりも種皮にフェノールが多く含まれてい
フェノール含量となった。このことは,パルプに
るとのモモの報告と類似している。
存在する酵素反応が早いことで説明できる。手選
種皮においては,「手選別やパルピング後に直
別パルプ(PMA)は,室温で1時間放置された。
ちにブランチング加熱」の場合は,「パルピング
パルピング後のブランチング処理しなかった試料
後にブランチング加熱無し」の場合よりも全フェ
(PN0)と比較すると,この放置の間に35%減少
ノール含量は35~14%高かった。「種皮の手選別」
している点は,注目すべきである。
で高いフェノール含量が認められたのは,機械パ
パルプのブランチング処理は,100℃という高
ルピング中に組織が傷つけられなかったためと推
温にもかかわらず4時間の加熱時間でも全フェ
察される。手選別の種皮では,エタノール溶液に
ノール含量は変化しなかったし,真空条件なしで
浸漬する前に26℃で1時間放置されている点は重
も変化しなかった。このことは,フェノール化合
要である。また,CA0と CN0の結果より,ブラ
物が耐熱性に優れているとするこれまでの報告と
ンチング処理によりフェノール含量が高く保持さ
一致する。大半の市販の冷凍フルーツパルプに含
食品と容器
312
2012 VOL. 53 NO. 5
まれる全フェノール量は0.05~7.88 mg カテキン
ルプ/種子の比が小さくなり,パルプ収率も低
当量/ 100gであり,最も高いのはアセロラであ
かった。パルプ収率は処理方法により,とりわけ
る。これに比べ,ウメのパルプは7.8~9mg カテ
種皮とパルプの選別方法により変動する。ウメの
キン当量/ 100gと高かった。
機能性成分である全フェノールは,種皮に多く存
結論
在した。種皮のパルプへの混入に関しては,最終
本報告で使用したウメ果実は,遺伝的要因や栽
産物の特性や受容性に関する研究が必要である。
(林 清)
培方法の違いを反映し小粒である。そのため,パ
●
海外技術情報 ●
海洋生物資源による栄養補助食品のトレンド
( Global Trends in Marine Nutraceuticals )
Food Technology(U. S. A.)p. 22( ’
11・12)文献 № 5740
研究者はいつの日か長寿の薬,記憶力をよくす
様々な形態で市販されている。歩留まりの向上と
る薬,あるいは万能薬を海から見つけるかもしれ
酸化安定性を保つため,Ocean Nutrition Canada
ない。海洋は栄養補助食品や薬品の宝庫として多
社においては,複合コアサベーション(液滴化)
くの注目を集めている。市場に供給されている栄
技術に基づき油脂の酵素濃縮およびマイクロカプ
養補助食品の大部分が植物由来であるが,海洋由
セル化を行っている。
来の栄養補助食品は陸上には無い独特の構造を有
微細藻類の商業的重要性
するものがあることから大きな注目を集めている。
商業的な微細藻類の養殖は日本で1960年代の初
海洋由来物質の研究が現在進行していることは,
期からクロレラを端緒として始まった。それから
海洋環境が機能性食品の供給源であることを示唆
40年経った現在,微細藻類産業は進歩し,広がり
している。近年,有望な海洋由来の栄養補助食品
を見せている。現在,微細藻類市場は乾物重量で
が次々と市場に導入されている。本文では,これ
年間5,000トン,金額で12億5,000万ドルの規模で
ら海洋由来の栄養補助食品について議論する。
ある。
n-3(w-3)系高度不飽和脂肪酸
クロレラは,クロロフィル,カロテノイドおよ
n-3 系脂肪酸は,血管性の病気のリスクを軽減
びタンパク質に富む。これは,発がんの抑制,免
すること,視覚機能を改善すること,脳の健康,
疫向上,脂質抑制,消化管内の粘液物質の増大,
リウマチによる関節炎の軽減といった健康上の効
および体内の解毒作用を有することが見込まれて
能を提供する。現在,これを含む油脂は,魚類,
いる。
エビ類およびごく最近はアザラシからも抽出され
スペルリナは数少ないビタミン B12の供給源の
るようになった。n-3 系脂肪酸を含有する魚油は,
一つである。これは免疫向上作用を有し,タンパ
2005~2006年にかけその売り上げが35~40%も増
ク質の供給源となり,また,貧血の防止,コレス
大 し た。GOED Omega-3(Global Organization
テロール低下,抗酸化,肝機能向上,および抗ア
for EPA and DHA Omega-3)によると,魚油と
レルギー作用などの健康機能性を有することも見
これを添加して強化した食品の売り上げは,世界
込まれている。
中で190億ドル で あ る。 魚 油 は, ア ン チ ョ ビ ー,
ドナリエラサルナは藻類のうち最もベータカロ
メンヘーデン,ニシン,サバ,サケ,およびタラ
テンを含むことで知られており,老化防止および
肝油から製造され,ソフトジェルに入れた濃縮
免疫の向上作用を有することで知られている。こ
n-3系油脂やマイクロカプセル化された粉末の他,
れはまた,バイオグリセロールを産出する能力も
食品と容器
313
2012 VOL. 53 NO. 5
有している。
知られている。
海藻
キトサンオリゴ糖は,D−グルコキトサンのオ
近年,海藻は栄養補助食品としてその高い可能
リゴマーでキトサンをキトサナーゼにより酵素的
性と,世界中,特に日本,中国および韓国で見ら
加水分解することにより得られることが知られて
れる海藻を主体とした機能性食品および栄養補助
いる。これは,余剰な脂肪分と結びついて脂肪の
食品の発展のために大きな注目を集めている。
吸収を抑制する LDL を低減させる,HDL コレス
栄養補助食品としての適性を有し,機能性食品の
テロールを上昇させる,抗がん性,抗菌性,免疫
原料となり得る多くの種類の海藻がある。それら
向上性,血糖値降下作用,血圧調整作用,カルシ
には,ワカメ,コンブ,アオサなどが含まれる。
ウム吸収促進作用,心臓血管病のリスク軽減,お
海藻は,抗酸化性,脂質燃焼作用,脂質吸収抑制,
よび痛風を抑制する効果等の機能性を有する。
コレステロール低下作用,免疫向上,2型糖尿病
その他の海洋機能性補助食品の供給源
の抑制,抗高血圧作用(アンギオテンシン変換酵
加水分解したカツオから得られる生物活性ペプ
素(ACE)阻害),抗炎症性,制がん作用などの
チドは ACE 阻害活性を有する。ACE は血管末
栄養補助食品および,これらに加えて薬用化粧品
端の血圧を抑制する重要な酵素で,アンジオテン
としての適性を有している。さらに海藻は紫外線
シンⅠをアンジオテンシンⅡに変換させる。この
からの保護剤,日焼け防止剤,およびスキンケア
酵素は血管中の血流を増大させる効果および血管
商品としての適性を有しているかもしれない。
の構築を促進させる2つの効果を持つ。これらの
海藻に含まれる栄養補助機能作用を有する物質に,
ペプチドは ACE を阻害することにより血圧を低
フコイダン,フコキサンチン,フコステロール,
下させ,健康的な血圧を維持することを手助けす
フロログリシノールを骨格とするポリフェノール,
る。
グリコプロテイン,およびペプチドがある。
スキンケアのためのコラーゲンは主にタラ,ハ
フコイダンは硫酸基を有する多糖で,心臓血管
ドック,およびサケの皮から抽出される。一方で
系,関節,および消化器系の疾患に効果があるこ
近年は,ティラピアなどのうろこから脱カルシウ
とが研究により明らかにされている。また,フコ
ム後に酵素的加水分解で抽出される。うろこコ
イダンは免疫系の向上,甲状腺およびその他のが
ラーゲンの特徴は,皮コラーゲンよりも分子量が
んの予防効果,血糖値および血中コレステロール
低いことであり1000以下である。
の制御,および体内からの重金属および放射性物
産業界
質の除去に効果があることが知られている。また,
Ocean Nutrition Canada 社はヒトの健康に寄
ある概説記事ではフコイダンが有する炎症低減作
与する海産由来の物質を発見,生産,そして販売
用について述べている。
する企業である。この会社は n-3 魚油の濃縮物お
フ コ キ サ ン チ ン は カ ロ テ ノ イ ド の 一 種 で,
よび機能性食品材料としての n-3 系油脂のマイク
UCP1(uncoupling protein 1 ) の 発 現 を 増 大 さ
ロカプセル化した粉末を生産する世界のリーディ
せることにより,脂肪細胞内における脂肪の燃焼
ングカンパニーである。同社の n-3 系脂肪酸の生
を促進することが知られている。
産技術は発展し続けている。
フコステロールはコレステロール低減作用,抗
Capalis 社,Portel 社,France 社は水産加工副
酸化作用,および抗糖尿病作用を有することが知
産物を加水分解あるいは分画して生化学に有用な
られている。
物質にしたものを海洋由来の天然栄養補助食品,
フロロタンニンは抗酸化作用,α−グルコシ
機能性食品,およびスキンケア商品として販売し
ダーゼおよびα−アミラーゼが2型ダイアベシス
ている世界的な大企業である。
に結合するのを抑制する効果,および天然の日焼
NutraMara 社はアイルランドのダブリンに拠
け止めとして紫外線バリアー効果を有することが
点を構える会社であり,水産加工屑,未利用原料,
食品と容器
314
2012 VOL. 53 NO. 5
および未利用魚種や未利用海藻を高いレベルの研
に重点を置いている企業である。
究機関や栄養補助食品のメーカーなどとコラボ
生合成により得られる生産物は,ターゲットで
レートしながら海洋性機能性食品を開発している
ある生理活性物質を得るために,今後,膜限外ろ
会社である。「われわれの海は生物活性物質の宝
過やある特定の荷重での遠心分離などの分離技術
庫であり,それらを食品添加物として用いること
を開発する必要がある。
によりヒトの健康に貢献できる」と同社のプロ
現在の海洋性栄養補助食品と今後の展望
ジェクトマネジャーは述べている。
海洋由来の栄養補助食品は現在の世界の栄養補
海洋生化学的物質と加工副産物の生合成
助食品の市場の中で220億ドルという小さなシェ
生合成は原料や基質を一般的には内因性酵素や
アしか有していない。海洋機能性物質は世界の注
添加酵素により有用で高付加価値なものに変える
目を集めており,そのため2010年にノルウェーの
技術である。世界規模で見ると,直接利用可能な
オスロで開催された“Marine Ingredients”,フ
海洋バイオマスは年間1億トンにも上り,これは
ラ ン ス で 昨 年 の 9 月 に 開 催 さ れ た“Biomarine
甲殻類,軟体動物,および魚類を含む。これら水
Business Convention”などの学会にこの分野で
産資源のうち約半分が利用されていない。このほ
の活発さが見られる。海洋機能性補助食品の分野
とんど利用されていないバイオマスは生物学的に
は,世界規模での栄養補助食品や機能性食品の発
活性を持つ物質の重要な供給源である。
達に伴い着実に成長していくと思われる。
さまざまな研究プロジェクトが EU の研究プロ
海洋機能性補助食品や海洋由来生材料の開発担
グラムの中の一つの SEAFOODplus のもとで行
当者やマーケティング担当者は,地域市場あるい
われている。SEAFOODplus の大きな目的の一
は世界市場におけるその商品の独自性に着目しな
つは新しい生化学的活性を持った機能性海洋物質
くてはならない。すなわち,地域市場における固
を開発するために,最先端の生合成技術を用いて
有の生材料を探索し,既存のインフラの上にしっ
探索することにある。
かりと立脚し,世界市場に向けて大きく売り出し
SEAFOODplus の研究によれば,すべての魚
ていく必要がある。
類の加水分解物は,弱い ACE 阻害活性を有する
海洋栄養補助食品とその原料の開発は市場に大
ことが明らかにされており,このことは魚類のペ
きく影響され,より良いマーケティングの方法が
プチドから血圧降下剤が得られることを示してい
要求される。商品の種類(例えば海洋栄養補助食
る。
品であるか機能性食品であるか)の選択および適
加水分解ペプチドはまた,抗酸化機能とフリー
合性,安定性,消費者の受容性,および地域の特
ラジカル消去能を有する。アイスランドのレイ
性に合わせることには大いに注意を払わなくては
キャビクに拠点を構える Matis 社は特殊なペプチ
ならない。市場において成功することはその商品
ドを得るために,アルカリ処理をして得られるタ
の特性が科学的に裏打ちされたものでなくてはな
ンパク質を用いている。ノルウェーに拠点を構え
らない。n-3 系脂肪酸は着実に今後も成長を続け,
る Marine Bioproducts 社は水産物由来の新鮮な
一方で海藻由来製品は爆発的にヒットする機会を
原料を自然な方法で加工する方法を開発すること
うかがっている。
食品と容器
315
(大迫一史)
2012 VOL. 53 NO. 5
●
特別解説
●
数値流体力学(CFD)を応用した
青果物包装容器の最適化
き た ざ わ・ひ ろ あ き
鳥取大学大学院連合農
学研究科生物生産科学
専攻修了。(独)農業・
食品産業技術総合研究
機構食品総合研究所食
品工学研究領域研究員。
北 澤 裕 明
博士(農学)
における食品の流動シミュレーション7)といっ
1.はじめに
た生物物理学に至るまで幅広い分野で利用され
青果物は通常,収穫後速やかに冷却する必要が
ており,近年では,温室内の空気の流れや温度
ある。冷却により呼吸を抑え,呼吸基質となる糖
分布のシミュレーション8),9)といった農産分野
や有機酸の消耗を抑えることは,収穫後の品質劣
や,食品の加熱プロセスの解析10)をはじめとし
化を抑制するための基本事項である。予冷は,こ
た食品加工分野における応用事例11)も増えてい
の点を踏まえて実施されるものであるが,この工
る。この手法を青果物の包装容器内部の空間にお
程は,段ボール箱をはじめとした包装容器内に青
ける空気の流れの解析に応用することにより,包
果物を梱包した後に実施されることが多い。また,
装容器における通気や予冷効率の改善を効率的に
CA 貯 蔵(Controlled Atmosphere Storage) や
図れるものと期待され,既に包装分野においても
エチレン除去など,容器内部と外部とのガス交換
CFD を応用した研究事例も見られるようになっ
を安定的に行いたい,といった状況も収穫後の工
てきた12)~17)。
程において発生しうる。これらいずれの状況下に
ここでは,青果物包装容器内の空気の流れや冷
おいても,包装容器には,内部に迅速かつ均等な
却効率を解析した研究事例を紹介するとともに,
流れを確保できる機能が求められる。これらの機
今後期待される研究の方向性について述べる。
こん
能が最大限発揮されるような包装容器を得るため
2.解析の流れ
に,様々な形状の容器を実際に試作し,通風効率
や冷却効率を把握するという作業には,時として
事例を紹介する前に,おおまかな解析の流れ
膨大な時間と労力を要する。また,狭く閉じた空
を説明する。包装容器に限らず,CFD 解析では,
間内における,部位ごとの流れを実測により詳細
まず対象となる空間ないし物体の形状を作成し,
に把握することは難しい。
形状内の領域を後の数値計算のためにさらに小さ
一方,空間における流体の挙動を解析する手
な領域に分割する。このように分割された領域は
法として,数値流体力学(Computational Fluid
メッシュ,または(計算)格子,グリッドなどと
Dynamics,CFD)がある。CFD は,気象学 1),2),
呼ばれ,この工程を,「メッシュを切る」などと
建築学 3),4),自動車工学 5),6)から人間の胃内
表現する。なお,メッシュを使わない解析手法
食品と容器
316
2012 VOL. 53 NO. 5
で流入させた際の温度変化を CFD によりシミュ
(粒子法など)もあるが,ここでは詳細は割愛さ
せていただく。メッシュの品質(形および数)は,
レーションした結果と,熱電対により実測した結
後の数値計算の結果に大きく影響するので,メッ
果とを比較したものである18)。壁面(この場合,段
シュの品質を良好に保つため,形状の作成におい
ボール箱の内壁および内部トレーの表面)の温度
ては,鋭角となる部位の角度を鈍くしたり,曲線
変化を境界条件として設定せずに計算を行ったと
にしたりするなどのアレンジを加えることもある。
ころ,実測とはまったくかけ離れた結果がはじき
さらに,部位によってメッシュの数や大きさに勾
出されていることが分かる。熱移動を計算に入れ
配をつけたり,大本の形状自体をあらかじめ分割
た解析を行う場合は,輻射や固体内の熱伝導と
したりすることもある。第1図にイチゴ用一段ト
いった対流以外の要因についても計算条件に組み
レー包装容器内の空間形状の作成例を示すが,こ
入れないと実測値とまったく合わないことが多
の例においても通気孔周辺および壁の近辺では
い(逆にいえば,数値計算に用いるモデルの選択
メッシュサイズを小さくするとともに,メッシュ
や各種パラメータが適切であれば,精度の高い結
数を多くしている。さらに空間を幾つかの部位に
果が得られる)。当たり前のことかもしれないが,
分割している。また,その後の解析においてメッ
実測による検証を行わなければ,まったくかけ離
シュ数の妥当性を確認するために,メッシュ数だ
れた結果であることに気づかない危険性がある。
けが異なる同一形状を幾つか作成しておくことも
青果物19)や段ボール紙,各種プラスチックなど
ある。メッシュの作成が完了すれば,壁面や空間,
の熱物性値に関しては入手可能かつ汎用的なデー
流体の入出などの境界条件を設定する。通常,こ
タはあるとしても,他者が既に行った試験を追証
こまでの工程は CAD ソフトウエアをはじめとし
したい場合を除けば,自分が目的としたい解析と
たプリプロセッサにより行われ,その後,流体解
まったく同じ条件での事例は皆無といえる。その
析ソフトウエア上で解析を行うこととなる。流体
ため,実測との整合性の評価はどうしてもつきま
解析ソフトウエア上では,空間内の温度,流入す
とう。解析に応用できそうな先行事例が見つから
る流体の種類,温度,流速などの初期条件や,乱
ない場合,あるいは,応用した結果,実測と大き
流や輻射,固体内熱伝導などの数値計算モデルの
くかけ離れた結果が得られてしまう場合には,こ
こう
ふく
選択,何分後までの変化を何
分刻みで解析する,といった
運転条件を設定する。これら
の条件で計算を開始すれば,
メッシュごとの流れ方程式の
近似解が得られる。この計算
結果として得られた温度や流
れなどの分布や変化は,コン
ター(等高線)図やベクトル
図としてグラフィック上で確
認することができる。
3.注意点
第 2 図 は 内 部 温 度 が12~
16℃の第1図の包装容器に
おいて,片側 の 通 気 孔 か ら
21.5 ℃ の 空 気 を 流 速1.2 m/s
食品と容器
第1図 イチゴ用一段トレー包装容器とプリプロセッサ
(GAMBIT 2.4.6,ANSYS 社)により作成した容器内空間の形状
317
2012 VOL. 53 NO. 5
の例において壁面温度の経時変化を実測により得
究13)~17)を紹介したい。同氏らはイチゴを詰めた
たように,自身で解析の下地となるデータを取得
パックを複数配列した段ボール箱内に冷気を強制
せざるを得ないこともある。
通風させた際の,箱内およびパック内の空気の流
れおよび温度変化を CFD によりシミュレーショ
4.解析事例
ンするとともに,解析で得られた予測値と実測値
4.
1)青 果物包装容器の通風・予冷シミュレー
との比較を行うことで流れおよびエネルギー(熱)
ションとそれらに基づく改良容器の提案
に関する数値計算モデルの実証を行っている。さ
ここでは,Ferrua and Singh 両氏により行わ
らに,それらの研究を前提とし,通風効率を高め
れたイチゴの包装用容器の改良に関する一連の研
るための改善点を CFD により予測し,実際に形
状を作成した上で実測による評価を行
い,最終的に改良された包装容器形状
箱内上部空間
を提案している。この一連の研究は,
21
箱内温度(℃)
CFD の応用による青果物包装容器の
改良に関する,現時点で最も新しく,
19
そして最も成功した研究事例の一つで
ある。同氏らの研究に敬意を表すると
17
ともに,CFD の応用による青果物の
15
包装容器最適化の好例として,この研
計算値(壁面温度変化・考慮せず)
究スキームを第3図に示す。
実測値
13
4.2)
‘あたりをつける’という使い
計算値(壁面温度変化・考慮)
方
11
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
4.
1)で紹介したような研究の進め
方は理想的である。しかし,熱移動を
時間(分)
含め,多くの要因を CFD により解析
箱内下部空間
しようとすると,数値モデルの選択お
よび検証の余地が増えるとともに,計
21
箱内温度
(℃)
算に要する時間を含め膨大な手間を要
19
する。また,1.で述べたように,そ
もそも(設備上の制約も含め)実測に
17
よる評価が難しいから,CFD を応用
したい。といった状況を抱えているこ
15
ともあり,得られたデータの信頼性を
計算値(壁面温度変化・考慮せず)
13
評価するにあたって難航を余儀なくさ
実測値
れることもある。
計算値(壁面温度変化・考慮)
11
0
2
4
6
8
10
12
14
16
時間(分)
18
一方,ただ単に容器内の流れの概要
を把握し,改良すべき点を見いだすた
めの‘あたりをつける’といった使い
第2図 イチゴ用一段トレー包装容器内の温度変化
シミュレーションの‘失敗’例
方であれば,話は単純である。ここで
通気孔径:13 mm,流入温度:21.5℃,流入速度:1.2 m/s,実測
値は熱電対による。壁面の温度変化を考慮しなかった場合,実際
とかけ離れた結果が算出された。
トレー包装容器内の空気の流れに及ぼ
食品と容器
318
は,筆者らが実施した,イチゴの一段
す,空気の流入速度および通気孔径の
2012 VOL. 53 NO. 5
影響に関するシミュレーションを紹介する。解析
対象とした包装形態は,第1図と同様のものであ
り,内寸は約210×290×45.3 mm である。形状の
作成には,流体解析プリプロセッサ(GAMBIT
2.4.6,ANSYS 社)を用いている。容器の形状
が左右対称であることに着目し,数値計算におけ
る計算負荷を軽減し,計算時間を短縮するため
に,symmetry スキームを適用し,この容器を長
辺上で半分に切った形状を作成し,解析に供し
た。解析対象とする通気孔の直径は,13,17およ
び21 mm とした。この形状において片側の通気
孔から空気を流入させた際に発生する容器内の空
気の流れを CFD 解析ソフトウエア(FLUENT 6.
3.26,ANSYS 社)により再現した。通気孔から
の空気の流入速度は0.6および1.2 m/s とした。な
お,通気孔より流入した空気の流れは,ごく一
部領域において乱流場となることが予想された
第3図 Ferrua and Singh 両氏による CFD を応用した
イチゴ用包装容器改良に関する研究の流れ
が,本解析では容器内全体での通風状態の把握を
主眼とするため,より解析が
容易な層流状態を仮定してい
る。シミュレーションは定常
計算で行い, 流 速 に 関 す る
数値計算の残差が10−3未満と
なった際に,数値計算が収束
したものと判定した。計算に
はパーソナルコンピューター
(OPTIPLEX 740,Dell Japan
社。CPU ; AMDAthlon64 X 2
4000+Dual coreprocessor,
RAM ; 1.93 GB)を用いた。
解析結果をみると,流入速
度が0.6 m/s の 場 合, い ず れ
の通気孔径であっても,通気
孔から流入した空気の大半は
容器の中心部位近傍しか流
れてないものと想定された
(第4図)。一方,流入速度が
1.2 m/s の場合,いずれの通
気孔径においても,通気孔よ
り流入した空気は,まず,排
気孔側の壁付近まで到達した
食品と容器
第4図 イチゴ用一段トレー包装容器(第1図)内部の流れに及ぼす通気孔径
および通気速度の影響
(カラー図表をHPに掲載 C034)
箱内の高さ位置 =34.6 mm,図下↑から通気。
Symmetry スキームによる対称面は各図中の右端。
319
2012 VOL. 53 NO. 5
後,一部は排出され,残りはその壁に沿って循環
例えば,4.
2)のように流れに関する部分にお
(再び中心部の流れに合流)する流れを生成しつ
ける問題点の把握および改良案の提示を CFD に
つあることが確認できた。しかし,いずれの解析
よって行い,その後,実際の形状を作成し内部空
条件においても,上部空間の通気孔側および排気
間や内容物の温度変化が従来のものと比較し均等
孔側壁面の端,ならびに中央付近に流れが発生し
かつ速くなっていれば,シミュレーション結果は
ない箇所が存在することが示唆された。
おおむね妥当であったと判断できるであろう。
この結果に関しても当然,実測との整合性を検
5.
3)あくまで主体は青果物
証する余地はあり,メッシュサイズを含め,解析
5.
2)とも関連するが,青果物用の包装容器改
条件についても,さらに検討する余地はあるが,
良の終着点は,あくまで青果物の品質保持でなけ
少なくとも解析対象とした包装容器において,内
ればならない。包装容器形状の改良により冷却効
部空間の通風状態にムラがあること,および通気
率がX%改善したとして,果たしてそれが店持ち
孔径あるいは流入させる空気の流速を大きくして
期間や,腐敗の抑制にどれほど影響するのか?と
も,容器内の通風状態が均一とならないといった,
いった,青果物の品質に即した検証が不可欠であ
おおまかな傾向は把握することができる。このよ
る。極端にいえば,いくら通風や冷却の効率が改
うに改善すべき点の見当さえつけることができれ
善することを提示できたところで,対象物の品質
ば,後々実際の評価試験を伴う場合でも,試作品
自体に何にも正の影響がないのであれば,無意味
の数や試験に要する時間は大幅に短縮されるであ
なのである。
ろう。
CFD 解析の立場からしても,青果物の品質を
主体に考えれば,ある温度まで冷却するのに必要
5.今後の展開
な時間をあと何%短くすれば良い,といったよう
5.
1)包装容器の強度や積載効率とのかかわり
に,具体的な研究目標を立てやすくなるとともに,
流通中において包装容器が単独で置かれるよう
数値計算モデルの選定や許容できる計算誤差の設
な状況はまずほとんど無く,通常はパレットなど
定もしやすくなる。
に多段に積み上げられた状態で取り扱われる。通
6.まとめ
気効率がいくら高まるからといって,むやみに通
気孔を大きくしたり,数をふやしたりしても,実
CFD を応用した包装容器の改良を効率的に実
用に耐えうる強度を保持できなければ使い物には
施するためには,どの部分を CFD 解析で行い,
ならない。また,内部形状の複雑化や内部空間の
どの部分を実評価とするかといった場合分けが重
縮小は輸送効率の悪化にもつながる。従って,包
要となる。計算結果の妥当性の評価においても,
装容器の改良にあたってはこれらの点について常
定量的に妥当であると判断できる点,定性的に妥
に意識しておく必要があり,最終的に改良された
当であると判断できる点とをそれぞれ整理するこ
形状を提案する際にあたっては,この点に関する
とが必要である。それらの判断は,自身が有して
評価(強度試験や経済性評価)が不可欠である。
いる技術,設備,資材および時間などの制約によ
5.
2)「定量的」か「定性的」か
り左右される部分が大きいが,5.で述べたよう
実測が難しいから,シミュレーション。でもシ
に CFD を応用した研究であっても,CFD のみに
ミュレーションの妥当性を確認するためには実測。
囚われることなく,容器の強度,青果物の品質な
とら
という堂々巡りに陥ることを避けるためには,定
ど多面的な視点を有していることによって,より
量的な評価に拘らず,定性的な評価を試みるとい
適切となるであろう。包装容器を巡って理学・農
う手段もある。小さな空間内における空気の流れ
学・工学といった各分野の連携が今後より一層深
を計測することは難しいが,髪の毛程度の細さの
まることを期待する。
こだわ
熱電対もあり,温度の計測は比較的容易である。
食品と容器
320
2012 VOL. 53 NO. 5
測標準研究部門流量計測科・気体流量標準研究
謝 辞
室・舩木達也博士に多大なるご協力を賜った。こ
包装容器内へ通風した際の温度変化の実測にあ
こに記して御礼申し上げる。
たっては,独立行政法人産業技術総合研究所・計
参 考 文 献
1)Flaherty, J. E. et al. : J. Appl. Meteor. Climatol., 46,
2110−2126(2006)
2)Hanna, S. R. et al. : Bull. Am. Meteor. Soc., 87, 1713−
1726(2006)
3)Awbi, H. B. : Build. Environ., 24, 73−84(1989)
4)富 永禎秀他:日本建築学会計画系論文集,556,47−
54(2002)
5)Takagi, M. : J. Wind Eng. Indust. Aerodyn., 33, 419−
428(1990)
6)Fu, L. et al. : J. Therm. Sci. Technol., 4, 53−62(2009)
7)Kozu, H. et al. : Food Biophys., 5, 330−336(2010)
8)Kacira, K. et al. : Trans. ASAE., 41, 833−836(1998)
9)Kim, K. et al. : JARQ., 41, 283−290(2007)
10)Mondal, A. and Datta, A. K. J. Food Eng., 99, 166−
174(2010)
11)S cott, G. and Richardson, P. : Trends Food Sci.
Technol., 8, 119−124(1999)
12)Zou, Q. et al. : J. Food Eng., 77, 1048−1058(2006)
13)Ferrua, M. J. and Singh, R. P. : Int. J. Refrig., 32, 335
−348(2009)
14)Ferrua, M. J. and Singh, R. P. : Int. J. Refrig., 32, 349
−358(2009)
15)Ferrua, M. J. and Singh, R. P. : Int. J. Refrig., 32, 359
−368(2009)
16)Ferrua, M. J. and Singh, R. P. : Int. J. Refrig., 32,
1932−1943(2009)
17)Ferrua, M. J. and Singh, R. P. : Int. J. Refrig., 34,
1162−1173(2011)
18)北澤裕明他:日本包装学会第20回年次大会研究発表会
予稿集,20,50−51(2011)
19)Scheerlinck, N. et al. : Postharvest Biol. Technol., 34,
39−52(2004)
2012年度総会・研究例会のご案内
食品膜・分離研究会(MRC)2012年度総会・第24回春季研究例会
◇日 時:2012年6月19日(火)
◇プログラム (12:20 〜 16:55)
◇場 所:川口総合文化センター リリア
2012年度総会(MRC 会長挨拶 議事)
〒332−0015埼玉県川口市川口 3−1−1
研究例会
TEL:048−258−2000 FAX:048−258−2100
①原子力発電所の安全と電気エネルギーの円滑な供
(京浜東北線川口駅西口下車至近)
給—日本工学アカデミーからの提言—
◇主 催:食品膜・分離技術研究会(MRC)
古崎新太郎(東京大学名誉教授,
◇協力機関:東京農工大学農学部付属硬蛋白質利用研
㈳日本工学アカデミー監事)
究施設
②液状食品包装技術の進歩と品質保持
◇参加 費(円/人):民間会社・特例会員=20,000円
石谷孝佑(㈳日本食品包装技術協会 理事長)
/人,非会員=30,000円/人,当会顧問・国公立
③セラミック膜の発展とゼオライト無機膜を用いた
研究機関・大学等教育機関:会員=12,000/人,
非会員=18,000円/人(5/21以降の申し込みは
バイオエタノール濃縮・脱水技術の開発
藤田 優(日立造船㈱事業・製品開発本部)
+5,000円)
④水処理プラント向け膜処理プロセスのファウリン
◇最終締切日:2012年6月16日(土)
グ抑制と低コスト化に向けた取り組み—温度応答
◇参加申し込みおよび問い合わせ
性膜の利用—
食品膜・分離技術研究会(MRC)本部事務局
松代武士(㈱東芝 電力システム社
〒332−0015 川口市川口 1−1−3−3211
電力・社会システム技術開発センター)
交流会(17:10 〜 19:00)
TEL & FAX 048−224−3336(事務局 渡辺敦夫)
e-mail:[email protected]
食品と容器
321
2012 VOL. 53 NO. 5
特別レポート
第1四半期の低アルコール飲料市場動向
1~
〈焼酎ハイボール〉は28%増の91万箱と好調を維
3 月は主要 4 社計で 5 %増
持した。この4ブランドとアサヒ〈すらっと〉を
醸造産業新聞社が集計した主要4社(サント
加えた上位5ブランドの合計は1,044万箱で,低
リー・キリン・宝酒造・アサヒ)の第1四半期
アル総市場(推定約1,900万箱)の55%を占めた。
(1~3月累計)の低アルコール飲料市場規模は
「ストロング系」26%増と
好調維持
前 年 比 5 % 増 の 約1,610万 箱(350 mL ×24本 換
算)となった。これで4年連続の増加となり過去
最高を更新した。社別にはキリン9%増,宝酒造
分野別にはアル分8~9%の「ストロング系」
12%増など3社が前年を上回った。4社の総市場
分 野 は26 % 増 の435万 箱 と な り,27 % を 占 め た。
に占める割合は85%程度とみられる。
〈氷結ストロング〉〈−196℃ストロングゼロ〉が
ブランド別には,トップブランドのキリン〈氷
結〉は7%増の443万箱。「スタンダード」「スト
第2表 2012年第1四半期の低アル主要4社の
ブランド別販売数量 ロング」をはじめ堅調に推移した。続くサント
リー〈−196℃〉は9%増の285万箱。「ストロン
銘柄名
グゼロ」が44%増の246万箱と底上げした。サン
数量
(万箱)
前年比
(%)
トリー〈ほろよい〉は3月6日発売の「ワインサ
キリン〈氷結〉
443
107
ワー」の寄与もあ り 5 % 増 の153万 箱。 宝 酒 造
サントリー〈−196℃〉
285
109
サントリー〈ほろよい〉
153
105
宝酒造〈焼酎ハイボール〉
91
128
アサヒ〈すらっと〉
72
84
サントリー〈カロリ。〉
71
75
第1表 2012年第1四半期の主要4社実績
数量
(万箱)
前年比
(%)
アサヒ〈カクテルパートナー〉
59
98
サントリー
647
101
宝酒造〈直搾り〉
49
112
キリン
520
109
アサヒ〈スパークス〉
45
114
宝酒造
225
112
宝酒造〈can チューハイ〉
38
104
アサヒ
218
99
アサヒ〈果実の瞬間〉
32
128
1,610
105
キリン〈本搾り〉
26
171
キリン〈スミノフアイス〉
16
131
計
《注》1 箱=350 mL×24 本換算。合計にウイスキーベースの
ハイボール缶商品含む。
食品と容器
《注》1箱 =350mL×24本換算
322
2012 VOL. 53 NO. 5
ともにプラスとなり底上げ。アル分2~4%の
「『白いサワー』『青空りんご』など自由な発想で
「ライト系」分野は2%増の470万箱で約30%を占
の商品作り,『ながら飲み』など飲むシーンをイ
めたとみられる。昨年6月発売の〈氷結やさしい
メージさせる訴求が奏功している」と同社。〈カ
果実の3%〉が底上げした。
ロ リ。〉〈 カ ク テ ル カ ロ リ。〉 と と も に,さらに
なお,本紙が推計したノンアルコールチューハ
シェアを伸ばせるか。
イ・カクテル風味飲料の規模は約80万箱となった。
挑む各社。キリンは昨年発売した〈氷結やさし
〈のんある気分〉51万箱などサントリーが7割超
い果実の3%〉を3月14日から一新,合わせて
を占めた。アサヒ〈ダブルゼロカクテル〉も前年
「白桃」を発売。5月16日から「シチリア産レモ
を上回る着地。 ン」を期間限定発売する。トップブランド〈氷
新商品では2月8日から発売したキリン〈ワイ
結〉の認知度を生かし,年間で昨年実績の2倍以
ンスプリッツァ白〉は22万箱を記録。当初年間販
上の225万箱を目指す。
売計画(約60万箱)に対し,「まずまずの出足」
アサヒは1月から,果肉パルプ入り〈カクテル
パートナー・フワリッチ〉を一新。1月から〈す
(同社)。5月9日から「ロゼ」を発売。販売計画
らっと〉を一新,3月21日から新フレーバーとし
を約90万箱に上方修正した。
て「乳性サワー&つぶつぶアロエ」を発売。この
最大の焦点は「ライト系」分野での
20代の取り込み
2ブランドと〈果実の瞬間〉で「食感」「果汁感」
をキーワードに訴求していく。
宝酒造は3月27日から〈直搾り・くちどけ〉を
主要社にとって今年の最大の焦点は,2011年年
間で約2,500万箱と総市場の約3割を占めた「ラ
イト系」分野でいかにシェアを拡大させるかだ。
この分野は10年に急拡大したものの,昨年は一
転して前年割れとなった。「伸びは止まった」と
みる声が聞かれ始める中,それでも各社が注力す
るのは「昨年は震災の影響もあり度外視すべき。
長期的には幼い頃から甘い味に慣れ親しんだ世代
の飲酒が増えるため,甘くてアルコール感の少な
い商品は伸長する」(アサヒ)とみるからだ。各
社は年初から春先にかけて,新商品の発売・リ
ニューアルなど様々な手を打ってきた。
この分野の7割を占めるサントリーは3月6日
か ら〈 ほ ろ よ い・ ワ イ ン サ ワ ー〉 を 発 売 す る。
<新フレーバー>
<中味・パッケージリニューアル>
<6缶バラエティパック>
キリンは〈ワインスプリッツァ白〉,サントリーは〈ほろよいワインサワー〉を発売。伸長するワインを使った商品の発
売が相次ぐ。アサヒは〈すらっと・乳性サワー&つぶつぶアロエ〉で食感を訴求。
食品と容器
323
2012 VOL. 53 NO. 5
発売。女性層の取り込みを図る。サッポロは1月
べく,サントリーは昨年8月から〈−196℃スト
18日から〈CJおいしいマッコリ〉を発売,3月
ロングゼロ・ダブル完熟梅〉を,アサヒは2月7
21日から〈ネクターサワー〉を一新。アル分を
日から〈スパークス・刺激的カシスオレンジ〉を
4%から3%に変更した。拡大の続くマッコリや,
発売した。この分野の商品はこれまでレモン・グ
〈ネクター〉ブランドカルピスは3月19日から
レープフルーツがほとんどで,女性には「酒好き
〈カルピスサワー〉を一新,3月26日からアル分
の男性が飲むお酒」という印象が強かった。異な
2%〈カルピスのやさしいお酒・もも〉を一新,
るフレーバーを発売することでイメージを変え,
潜在的な需要を掘り起こしたいとの狙いがあるよ
〈同・スイートレモン〉を発売した。
うだ。
ただ,各社にとってこの分野でシェアを伸ばす
し
ことはそう簡単ではない。中心飲用層の20代は嗜
「ノンアルチューハイ・カクテル」
好が幅広く複雑すぎて把握するのが難しい。
あるメーカーの担当者は「甘い味・辛い味,高
アル分・低アル分。これだけ嗜好がばらつくと,
分野,急拡大予想
これまでにない商品の発売も目立つ。キリン
〈氷結〉のような規模のブランドはもう出ないだ
〈ワインスプリッツァ白〉,サントリー〈ほろよい
ろう」とみる。別のメーカーの担当者はこの分野
ワインサワー〉など,ワインを使った商品が発売
の難しさについて,「似た商品が多く,販売デー
された。またサントリーは6月19日から〈ストー
タが悪いとすぐ店頭から棚落ちしてしまう。かと
ンズバー〉シリーズでウイスキーベースのハイ
いって,それを防ごうとして新商品を発売しすぎ
ボール,エナジーテイスト商品を発売する。「各
ると,ブランドの価値がなくなってしまう」と話
社とも果物の果汁を前面に出した従来型商品を出
す。
し尽くした観はあるが,こうした果汁を使わない
分野にはまだ商品がない。手の打ちようはある」
「ストロング系」は女性の
取り込みが鍵
(大手メーカー)との声は多く,この分野からの
新商品がさらに予想される。
続いて注目が集まるのが「ストロング系」分野
このほか,今年拡大しそうなのがアル分0.00%
だ。昨年急拡大し1,700万箱と総市場の約2割を
のノンアルコールチューハイ・カクテル風味飲料
占めた。1~3月でもサントリー〈−196℃スト
分野だ。昨年10月にサントリーが〈のんある気
ロングゼロ〉,アサヒ〈スパークス〉が2ケタ増,
分〉を発売して急拡大した。同商品の今年の販売
キリン〈氷結ストロング〉,宝酒造〈can チュー
目標は53%増の150万箱で,アサヒ〈ダブルゼロ
ハイ〉も前年を上回るなど好調が続く。
カクテル〉の販売目標は46%増の約180万箱。サ
従来,この分野の飲用層は30~40代の男性がほ
ントリーは今年の市場規模について約360万箱と
とんどだったが,近年は30~40代の女性の飲用が
みているが,このほかにも新商品の発売が予想さ
増えているという。「女性の社会進出が進み,手
れることから,昨年年間の約250万箱を超える規
軽に飲める高アル分を求めるようになったのでは
模に拡大する可能性は高い。
(醸造産業新聞社 編集部)
ないか」(大手メーカー)。この女性層を取り込む
食品と容器
324
2012 VOL. 53 NO. 5
業
T
界
O
ト
P
ピ
I
ッ
C
ク
S
ス
個包装タイプは現在,分包タイプとスティック
の2タイプに大きく分かれている。ココアの個包
装は,従来から長方形型の分包タイプが主流であ
ったが,縦長でスリムなスティックタイプが年々
11年度の家庭用ココア市場(11年4~ 12年3
拡大している。昨シーズンは,新規メーカーの参
月)は,残暑の影響でスロースタートとなったも
入などもあり,全体としては分包タイプがやや伸
のの,後半気温が下がったことで需要が盛り返し
び悩み,スティックタイプが好調な動きとなった。
たほか,新規参入メーカーもありプラスの着地と
ピュアココアは,ほぼ前年並みの着地。このタ
なった。家庭用ココアは長らく横ばいの状況が続
イプは,製菓材料などに使用されることが多く1
いたが,ファミリー向けの「ミルクココア」に加
~2月の需要が高いが,最近はメーカーによる料
え,現在伸長著しいスティックタイプの商品の品
ぞろ
はん
理などへの汎用性も訴求され,年間を通して利用
揃えも拡大するなど,明るい兆しが見えている。
一方,原料価格は高止まりが続くが,店頭価格は
の幅が広がることが期待されている。
下落傾向にあるなど,市場環境は依然として厳し
ココアパウダー供給状況
い状況だ。
原料となるココアパウダーの供給量は,11年
11年家庭用ココア,微増で着地
(1~ 12月累計)実績で国内生産は,無糖はマイ
11年は震災による包装資材や原料の供給不足な
ナスとなるも,加糖が1.3%増と伸長し,0.5%増
どはなかったが,春夏の棚替えが遅れたことや,
の1万5,154トン。輸入は数量ベースで7.5%減の
夏場は節電などの影響で室内の冷房を控えるなど
1万7,361トン,金額は10.4%増と高騰。トータル
消費が進まず,上期はやや苦戦した。
(4~3月)では,数量ベースで3.9%減の3万
最需要期の下期は,残暑が長引いたこともあり,
2,515トンで着地した。
し
スロースタートとなった。ココアは他の嗜好飲料
今後の市場
今シーズンのココア市場は,震災の影響やステ
に比べて気温の影響に大きく左右され,12月前半
ィックタイプの商品の寄与で,2年連続のプラス
まではやや低迷傾向が続いた。その後12月中旬か
となった。一方で,スティックのプレミックス飲
ら徐々に気温が下がり,商品の動きが活発化し持
料など他の嗜好飲料の影響を受け,店頭価格の低
ち直した。また,テレビなどで「冷え症改善」な
下なども課題となっている。
どココアの健康効果が取り上げられたことも需要
今後は,ココアが嗜好飲料の中の品揃えの一つ
を刺激。続く1~3月も気温が低めだったことか
として埋没しないような,積極的な施策がさらに
ら荷動きが好調で,通期では3%増となった。
必要となろう。ココアは,カフェなどの外食チェ
商品では,依然として徳用袋タイプが全体の7
ーンでも人気の高いメニューの一つで,潜在的な
~8割を占める。中身は,主力のファミリー向け
需要は高いといえる。消費者の需要の刺激となる
「ミルクココア」が中心となっているが,ホワイ
ような商品,飲み方の提案などに期待したい。
トチョコレートを使用した商品や,カカオ分が高
(業界誌記者 稲野結子)
いものなどバラエティー化が進んでいる。
家庭用ココア,スティックタイプがけん引
第1表 家庭用ココアメーカー別実績
メーカー
年度
森永製菓
明治
片岡物産
ネスレ日本
AGF
和光堂
名糖産業
日本ヒルスコーヒー
その他
合計
2008年
金額
シェア
40.8
6,800
28.2
4,700
19.6
3,270
5.6
930
−
−
1.0
160
1.4
230
0.4
70
2.9
490
16,650
100.0
2009年
金額
シェア
43.1
7,200
28.1
4,690
19.6
3,270
5.6
930
−
−
1.0
160
1.3
220
0.3
50
1.2
200
16,720
100.0
日刊経済通信社調(単位:百万円)
2010年
金額
シェア
42.2
7,150
27.1
4,600
20.1
3,400
7.1
1,200
−
−
1.1
180
1.1
180
0.3
50
1.1
190
16,950
100.0
2011年見込み
金額
シェア
39.2
6,860
26.0
4,550
19.4
3,400
6.3
1,100
6.0
1,050
1.0
175
0.9
155
0.3
50
1.0
170
17,510
100.0
注)1.年度は各企業決算年度 2.一部本誌推定 3.金額は出荷ベース 4.ハウス,グリコはその他に合算
食品と容器
325
2012 VOL. 52 NO. 5
業界の話題
日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
若い層で「内食」頻度増加 日
また,こだわりの項目について,
清オイリオグループが意識調査
50代までは「おいしさ」だが,
(日食 2012/03/19 日付)
● 顕著な節約・健康志向 高
年齢層ほど“こだわり”
の把握を目指している。
60代は「野菜を多く食べられる
地理的表示制度創設へ 農水省,
こと」がトップで健康志向の高
検討始める
さがうかがえる。20~30代男性
(日食 2012/03/28 日付)
日清オイリオグループの生活科
と20代女性のみ「ボリューム」
日本の地域名を冠した食品が
学研究室は昨年11月に内食に関
と「お金をかけないこと」が上
外国などで商品化されている問
する意識調査を実施したが,こ
位に入っている点も特徴。
題への対策や,日本の農林水産
のほどその結果をまとめた。東
内食に満足している割合は大
物や食品の高付加価値化などへ
日本大震災以降,家族の絆が高
半の世代で80%を超えているが,
の施策の一環として,
「壱岐焼酎」
まったことを受けて再度「内食
30代女性のみが73%で低くなっ
など酒類以外への地理的表示制
回帰」の傾向が強まっていると
ている。また,満足している項目
度の創設に向けて,農林水産省
いわれているが,1年前と比べ,
は50代までは「ボリューム」が
の地理的表示保護制度研究会が
世代が若いほど内食の頻度が増
上位に入る一方,高齢層では「健
26日から始まった。他の知的財
加している。また,「こだわり」
康によい食事」
「野菜を多く食べ
産権保護との整合性,品質管理
と「満足」のギャップに関して
られる」など健康に関する項目が
措置などを検討する。検討会は
も調査し,節約志向や健康的価
多くランクインしている。若者・
7月までに報告書をまとめる。
値などが挙がっている。調査は
中年層と高齢層の意識差が浮き
研究会では農水省が日本の不
インターネット形式で,週に1
彫りになっているといえるだろう。
正競争防止法,地域団体商標権
日以上内食をする20~60代の男
「こだわり」と「満足」の度
などの現行制度や米国,欧州の
女2,060人を対象に行われた。
合いを項目ごとに比較すると,
状況などを説明し想定される課
夕食の内食頻度を調べたとこ
男性はほぼすべての項目で「満
題などを示した。研究会では地
ろ,週5回以上は男性で78%,
足」が「こだわり」を上回って
理的表示制度の導入には賛意を
女性で89%となり,男女ともに
いる。一方,女性は男性と比較
示したものの,委員からは「伝統
年代が高いほど頻度が上昇する
して「こだわり」を求める意識
的製造方法などが品質管理の一
傾向がみられたという。一方で,
が高く,特に健康や節約に関す
つとしてあるが,いつまでさかの
1年前との比較では全世代で内
る項目で「満足」が「こだわり」
ぼって伝統的にするか」
「日本の
食頻度は増加しているものの,
に至っていない。今以上に健康
地域名を冠した他国の商品への
年代が若いほどその傾向が強く,
的かつ節約メニューを希望して
規制には中長期的には有効だが,
20代が最も増加した。結婚や出
いることが浮き彫りとなった。
短期的には外交で要望するしか
産など生活環境の変化に加え,
同社生活科学研究室では社会
ない」
「めんたいこのように北海
全体的には節約などの経済的理
環境や生活者の価値観の変化や,
道で収穫したタラコを福岡県で加
由が挙がっている。
それに起因する生活習慣などの
工する場合はどうするか」など明
内食へこだわりを持つ消費層
動向を調査・発信している。定
治時代以降急速に変化してきた
は,40代までは男性で50%,女
期的に一般消費者を対象とする
日本の製造技術,日本独自の原
性で60%程度だが,高齢層では
アンケートを実施し現代社会にお
料調達,加工の実態との整合性,
これが上昇。特に60代では男性
けるニーズを分析,さまざまな題
海外市場の動きを検討する必要
で68%,女性で80%に達した。
材で日本の食に関する環境変化
性が浮き彫りになった。
食品と容器
326
2012 VOL. 53 NO. 5
日本では外国の地域名を冠し
能 性食品素材の総合メーカー・
進。本社工場内(伊丹市)と香
た商品も流通しているが,地理
松谷化学工業と香川大学ら共同
川県内に含有シロップ生産設備
的表示制度が導入されれば商品
研究チームが,希少糖の一種で
設置準備を進めている。目下同
名の変更となる可能性もある。4
あり,ノンカロリーで砂糖とほぼ
県内でテスト販売中だが6月初旬,
月下旬に開く研究会で伝統的な
同等の甘みを有する「D−プシコ
全国発売に乗り出す計画だ。
地域ブランド加工食品メーカー,
ース」が,線虫を用いた実験で
外国の地名を冠した製造する加
平均20%の寿命延長効果がある
食品産業の将来ビジョン,地域
工メーカーの双方の立場の関係
ことを確認。23日開催の「日本農
戦略などが重要 農水省
者から意見を聞く。
芸化学会」で発表した。
地理的表示は地域の名称を商
摂取カロリーの制限が延命に
農林水産省の食料・農業・農
品名に冠する制度で,日本では
つながることがマウスやサルなど
村政策審議会食料産業部会は27
不正競争防止法,地域団体商標
多くの実験動物で知られており,
日,食品産業の将来ビジョンを
制度などで保護され,一部の酒
人間でもカロリー制限が加齢性
まとめ,消費者,地域,グロー
類などが保護されている。世界
疾患の発症を遅らせ,寿命を延
バルを起点にして戦略を立て展
貿易機関(WTO)協定ではワ
ばすと考察されている。しかし,
開していく必要性を訴えた。食
イン,スピリッツで地理的表示
生涯カロリー制限を続けることは
品関連産業全体の市場拡大と,
の保護が認められていて,WTO
困難を極める。そこで摂取するこ
国内の農林漁業の成長産業化を
交渉で保護制度が確立している
とがそのままカロリー制限につな
業界全体の目標にして,その達
欧 州は世界的に拡大を目指し,
がる「カロリー制限模擬物質」
成状況を検証しながら改善して
米国が反対,日本は中立の立場
に注目が集まっている。同チーム
いくよう求めた。
だ。日本ではパルマ風ハムは認
は希少糖にこの機能があるとい
新たな需要,市場の開拓では
められていても,ボルドー風ワイ
う仮説を立て研究をスタート。モ
医食農連携による病気予防食の
ンは名乗れない。
デル生物である線虫を用いて実
開発,健康・介護向け市場への
農水省は日本の地域特産品と
験した結果,ノンカロリー甘味
対応,地域ごとの食を尊重した
なっている農林水産物や食品で,
料「D−プシコース」に,平均
地産地消商品の販売促進などを
高付加価値化・ブランド化を一
20%の寿命延長が確認された。
示した。2010年に6,000億円だっ
層推進して,農山漁村の活性化
そもそも希少糖とは,自然界
た市場規模だが,15年に3兆円,
を図るためには,その地域に由
に微 量しか存 在しない糖だが,
20年には6兆円を目標にする。
来する品質や特徴について適切
松谷化学工業は香川大学や香川
今後の重点課題として(1)農
な評価を与える地理的表示の保
県との産官学 共同 研 究により,
林漁業者が加工や流通などに進
護 制 度 の 導 入 が 必 要と判 断。
大量生産技術を確立するととも
出する6次産業化への参画(2)
WTO 交渉でも日本は欧州と連
に,多様な生理活性を確認して
新たな需要・市場の開拓(3)食
携するために地理的表示につい
いる。特にその一種「D−プシ
品の量・質の面での安定供給(4)
て肯定する方向だ。
コース」に,食後血糖上昇や内
持続可能な循環資源型社会の構
臓脂肪蓄積抑制作用が認められ
築(5)企業の社会的責任(CSR)
希少糖に延命効果 松谷化学工
るほか,抗酸化・血圧低下作用
――などを挙げた。
業と香川大,共同研究で確認
などの生理活性があり,医薬品
ビジョンは食品産業の目指す
や機能性食品,化粧品への応用
べき方向として国内外の市場で
【関西】希少糖に寿命延長(ア
開発が行われている。
バランスよく収益を確保するグ
ンチエージング)効果があること
一方,松谷化学では,希少糖
ローバル企業の一翼を担う企業
が分かった。でんぷん加工と機
の事業化に向けての取組みを推
群が形成されている状態と,多
(日食 2012/03/30 日付)
食品と容器
327
(日食 2012/03/30 日付)
2012 VOL. 53 NO. 5
様な農林水産物や地域の食文化
リー別に購入者の属性を分析し
農業を相互補完する仕組みを作
を背景とする独創的な食や関連
た。分析対象は,ノンアルコール
ることで食料問題や情報共有に
サービスを生み出す中小企業の
のビール・テイスト飲料,同チュ
取り組むための基盤を得られる
事業活動が活性化している状態
ーハイ(カクテル)テイスト飲
――。 日 中 韓 自 由 貿 易 協 定
の併存を描いた。
料である。対照はビールとした。
(FTA)産学官共同研究委員会
分析結果を見ると,ビールは男
が考える食料分野での将来の日
消費トレンド分析(1)ノンア
性の購入者の比率が6割近い。
中韓 FTA への提言だ。この基
ルコール飲料 ビール・テイスト
一方,ノンアルコールのビール・
盤に基づく3国の緊密な協同作
30代女性が支持
テイスト飲料,チューハイ(カ
業を通じて食品安全はより確か
クテル)飲料は男女が半々程度
なものになるという。経済産業省
新連載「消費トレンド分析」
であった。
と外務省が3月30日に公表した日
は,市場の新たな商品動向ある
年代別に見ると,ビール・テイ
中韓自由貿易協定(FTA)産
いは消費変化を消費者購買デー
スト飲料は女性30代の比率が高
学官共同研究報告書の全文から
タ「 マ ク ロ ミ ル QPR デ ー タ 」
く,ビール,チューハイ(カクテル)
分かった。研究の成果は,12年
から読み解く。4月から毎月1
テイストの約1.5倍の差が見られた
中に開催する日中韓サミットに日
(男性30代はビールで12.6%,ビ
中韓経済貿易大臣会合と日中韓
*
ール・テイスト飲料で11.8%とほ
外務大臣会合を通じて報告する。
「キリンフリー」が市場に導
ぼ同じ比率だった)。また,チュ
同委員会は,世界貿易機関
入されて以来,ノンアルコール
ーハイ(カクテル)テイスト飲料は
(WTO)のルールとの整合性を
飲料の市場は拡大している。
「キ
40代以上の女性が全体の36.2%
図り各国のセンシティブ(敏感)
リンフリー」が導入された直後
を占め,ビールよりも8.1ポイント
分野に配慮するなどを基本原則
はビール・テイストの飲料しか
高い。一方,男性の40代と50代
とし,日中韓 FTA は実現可能
なかったが,昨年はサントリー
では,ビールと比較すると,ビー
で3国すべてに利益をもたらす
酒類「のんある気分」やアサヒ
ル・テイスト飲 料10.6ポイント,
との共通認識を10年5月から11
ビール「アサヒダブルゼロカク
チューハイ(カクテル)テイス
年12月までの7回の会合を通じ
テル」のようにチューハイ(カ
ト飲料で10.7ポイント低かった。
て得たという。それに基づき,
クテル)テイストの飲料やワイ
ビール・テイスト飲料は30代女
各国政府に,進め方の決定,行
ンなど,ビール・テイスト飲料
性,チューハイ(カクテル)テ
動方針の公表を提言した。
以外の商品も市場に導入され,
イスト飲料は40代以上の女性か
食 料 分 野での将 来の日中韓
サブ・カテゴリーを形成している。
ら支持を受けていることが明らか
FTA への提言では,3国の農業
現状のノンアルコール飲料市
になった。ノンアルコール飲料と
を相互補完する仕組みを作るこ
場には,複数のサブ・カテゴリー
いってもサブ・カテゴリーによっ
とのほか,(1)農業の生産性と
が存在するため,サブ・カテゴリ
て支持層が異なり,今後は,そ
成長の促進(2)食料貿易の円滑
ー別にマーケティング戦略を採用
れぞれのユーザーの特徴を踏ま
化と食料安全保障の改善確保
することが望ましい。そのために
えた働きかけをする必要がある。
(3)新しい農業技術の開発と移
(日食 2012/04/06 日付)
テーマを掲載していく。
転の奨励――も,食料問題や情
はサブ・カテゴリー別に購入者の
特徴を把握し,購入者の特徴に
食料は3国の農業相互補完が基
報共有への基盤を得るための要
見合った戦略を立案するべきで
盤 日中韓 FTA で産学官共同
件に挙げた。
ある。そこで,消費者の購買履
研究報告書
その上で(1)には,環境面で
歴データである QPR を用い,ノ
ンアルコール飲料のサブ・カテゴ
食品と容器
(日食 2012/04/09 日付)
日本,中国,韓国は,3国の
328
持続可能な農業生産方式の認知
度の向上,病害虫の調査・管理
2012 VOL. 53 NO. 5
の改善,農業分野への投融資の
み調整食品など,2月末現在762
技術改良を進めながらサンプル
促進,正しく機能する市場と規
品目ある。会員数は48社。
提供を行い,2013年量産化を目
制の枠組みの構築,農業の多様
中国や韓国の人口構成も日本
指す。白金をベースとした新たな
な役割を強化する共同プロジェ
に近く,急激に高齢 化が進み,
触媒層を構築したことで,従来
クトの検討,国際連合食糧農業
わが国の介護食品の仕組みや市
の40倍という高い生成効率を世
機関のような国際的な機関によ
場性は,諸国の手本とされている。
界で初めて実現した。
る一貫性のある活動の支持など
以前の介護食品はメーカーご
田中貴金属工業は田中貴金属
を含められるとした。
とに規格や表示が異なり,利用
グループの製造事業を展開して
また,
(2)には WTO ドーハ・
者の不便が指摘されていた。そ
いる。今回,同社が開発に成功
ラウンド交渉を成功裏に妥結す
こで02年4月に日本介護食品協
した白金系電極は,水を電気分
るよう支持,3国間食料貿易増
議会が発足し,介護食品の統一
解して高効率でオゾンを生成で
加への努力,食料自給率向上の
規格を制定。堅さや粘度により
き,1平方 cm 当たり0.1A(ア
ための政策や取組みの情報交換,
4区分の自主規格を設け,製品
ンペア)という低い電流条件で
WTO ル ー ル 順 守 な ど を,(3)
に表示している。
30分 間 水 を 電 気 分 解 すると,
については,農業の革新の共有,
今後は在宅療養で適切な栄養
3. 6 ppm(ppm は100万分の1)
農業の研究開発に資する環境の
管理を持続できる環境の充実が
のオゾンを生成することが可能
整備,農業所得と生産能力の向
急務。協議会は消費者が的確に
だ。従来の白金電極は,同条件
上,農業生産基盤の改良,研究
UDF を選び利用するための情
下 で 生 成 で きるオゾ ン 水 が
開発と成果の普及の奨励,バイ
報発信や自主規格の整備を行い,
0.09 ppm で,生成効率が低いと
オテクノロジーや気候変動と食
業界の健全な発展と食べる楽し
いう問題があった。白金をベース
品安全に関する相互の情報交換
み,QOL( 生 活 の 質 ) 向 上 へ
とした新たな触媒層を構築したこ
の実施などを含められるとした。
の貢献を目指す。
とで,従来の40倍という高い生
成効率を世界で初めて実現した。
第15回ファベックス2012:特
田中貴金属工業,
オゾン水を40倍
電極の特徴は(1)オゾン生成
別セミナー=日本介護食品協議
の高効率で生成できる電極開発
効率が従来の白金電極より40倍
会・藤崎享事務局長
(日食 2012/04/16 日付)
高い(2)従来の白金電極に比べ
田中貴金属グループ(TANAKA
て低エネルギー条件下でオゾン
ホールディングス傘下)の田中貴
を生成することができ,ランニ
金属工業は4月,殺菌や消臭な
ングコストを10分の1に減らす
日本介護食品協議会の藤崎享
どの用途で幅広く使われているオ
ことが期待できる(3)水からオ
事務局長は,高齢化の進展で,
ゾン水を従来技術より40倍高い
ゾンを生成させるため,窒素酸
国際的にも需要が高まっているユ
効率で生成できる白金系電極の
化物を副次的に生成しない(4)
ニバーサルデザインフード
(UDF)
開発に成功した。殺菌や消臭,
鉛などの有害物質を含まないの
について「日常の食事から介護食
ウイルスの不活性化,有機物の
で,食品や医療関連用途にも安
まで幅広く使える,食べやすさに
除去などが可能な非常に酸化力
心して使用できる(5)比較的小
配慮した食品。かむ力,飲み込
の強い物質で,常温で自然に酸
さな装置で生成できる―など。
む力の弱い人だけでなく,一般
素へと分 解されるので,次亜塩
主な用途は,ホテル・冷蔵庫
に広く活用できる」と説明した。
素酸などの酸化剤に比べても安
の消臭,食品・食品工場の殺菌,
10年の UDF 生産額は約83億
全だ。食品から排水処理まで幅
産業排水の排水処理,PET ボ
円で2桁成長が続く。レトルト,
広い用途で使用される。当面は
トル・食品容器の洗浄,床の清
冷凍などの調理加工食品やとろ
電極の長寿命化や品質安定化の
掃―など。
(日食 2012/04/13 日付)
●栄養管理,持続できる環境
の充実急務
食品と容器
329
2012 VOL. 53 NO. 5
技術用語
解説
「容器の事典」(缶詰技術研究会編)から抜粋
在では,あらかじめ接着剤の役割をかねたポリエ
紙カップの成形法
チレンをラミネートした紙を用いるのが一般的で
紙カップが世の中へ出てきたのは1910年代,ア
ある。
メリカ南東部でデキシーカップとして生まれ,広
紙容器を構成する材料である底部用の原紙は帯
く水飲み用カップとして普及した。アメリカにお
状にスリットされたロール紙をカップ成形機に供
いては禁酒法の1920年代を経て,特にアイスクリ
給し,成形機内で丸く打ち抜かれ,円周部は直角
ーム用として多く用いられるようになり,日本で
に折り曲げられた状態で金型(マンドレル)の底
も1930年代にはアイスクリーム用の紙容器として
部に納められ,同時に胴部用の原紙も同様にロー
登場した。その当時,アイスクリーム用の紙カッ
ル状で供給し,成形機内で略扇型(ブランクとい
プは蝋引き加工が主流であった。
う)に打ち抜かれて,あるいはあらかじめブラン
紙カップが大きな成長期を迎えたのは1960年代
ク形状にした状態で供給され,胴部の端の重ね合
で,東京オリンピックを機にカップ用の自動販売
わさる部分のポリエチレン面側に熱をかけ,ポリ
機の普及やファストフード店の日本進出に伴う紙
エチレンを溶融した状態で底部を納めた同じ金型
カップの需要増による。そのために大量生産ので
に巻きつけ,重ねしろの部分を圧着しながら,底
きるカップ成形機が多く導入されるようになった。
部とドッキングさせ円錐状のカップの形状にする。
紙カップの製造方法は紙容器と同様,胴部の紙
この状態を維持しながら,胴部内面の底部のポリ
部材と底部の紙部材を接合して成形するが,作り
エチレンを加熱溶融して,胴部の底面にあたる外
方に大きな差異はない。一般的にどちらも紙カッ
側部分を内側に折り曲げながら接着させる。
プ成形機を用いて成形する。材料には壁部にあた
次に,口にあたる部分あるいは充填時にシール
る胴部材と底部に当たる底部材の2つの材料から
する部分(フランジ部)を胴部の上部付近の紙を
構成され,それらをカップ成形機で接合する。現
一部,外側に巻き込みながらカール状に成形して
ろう
サイド成型の略図
ボトム成型の略図
トップ成型の略図
プレカール
ヒーターで加熱
仕上げカール
金型に巻き付けて成型
接着はヒートシール
素早くカールする
フラットプレス
サイド、ボトム部を成型機内で打
抜き、同時にボトムを絞り成型する
強く押さえつけながら
超音波などで接着させ
かしめてボトム接合
ながらフラットにする
(エキスパンド)
食品と容器
330
2012 VOL. 53 NO. 5
技術用語
「容器の事典」(缶詰技術研究会編)から抜粋
解説
いく。さらに,充填後のシール適性を付与するた
が正式名称。日本では学校給食にて三角パックの
め,フランジの上面部は押しつぶしながら平らに
呼称で浸透した。屋根型のテトラ・レックスⓇ,レ
仕上げる。この仕上げ工程をフラットプレスとい
ンガ型のテトラ・ブリック Ⓡ,テトラ・ブリッ
い,超音波シールで形くずれしないようにしっか
ク・アセプティックⓇ(常温保存可能),テトラ・
り固着させるのが一般的である。
プリズマ・アセプティックⓇ(胴体部が八角形),
テトラ・トップ Ⓡ(開口部が樹脂製),テトラ・
紙カップの各部名称
テトラ・クラシック
(TC)
フランジ又はブリム
テトラブリック
(TB)
テトラ・ブリック・
アセプティック
(TBA)
ブリム厚(フランジ厚)
サイドシーム
サイド原紙
カップテーパー
テトラ・プリズマ・
アセプティック
(TPA)
ボトム原紙
ボトムスペーシング
カートカン
テトラ・
トップ・ミニ
(TT)
テトラ・レックス
(TR)
紙を主体とした円筒あるいは角柱状の,凸版印
刷㈱が開発した紙製飲料容器の登録商標である。
容器部材の素材としてアルミを積層しないで,無
リカルトⓇ(レトルト紙容器)等がある。
機酸化物を蒸着したフィルムを用いることにより
乳等省令
酸素および水蒸気バリアー性を付与し,容器殺菌
正式名称は「乳及び乳製品の成分規格等に関す
方法として過酸化水素を利用したアセプティック
る省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号)で,
充填により長期常温保存適性を持たせた飲料向け
乳等省令と略される。食品衛生法に基づく省令で,
金属缶代替の容器である。国産の間伐材を使用し,
乳・乳製品およびこれらを主要原料とする食品に
森林育成により地球温暖化防止に貢献する容器と
ついて,その成分規格や表示の要領,製造方法の
して,第3回エコプロダクツ大賞を受賞した。
基準等について定めたものである。乳等の販売用
〔Tetra
テトラパック の容器包装の規格基準については,前記省令の別
Pak〕
表4の(二)に「乳等の容器包装又はこれらの原
1951年スウェーデンのテトラパック社が発表し
材料の規格及び製造方法の基準」に記されてい
た四面体の紙容器で,現在はテトラ・クラシックⓇ
る。
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食品と容器
331
2012 VOL. 53 NO. 5
今月の統計
(℃)
30
平年値
25
2011年
20
2012年
2010年
15
10
5
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
第1図 平均気温の推移(1~3月・東京)
(千kL)
500
(千kL)
500
2010年
2012年
2011年
2010年
ビン
400
2011年
2012年
新分野
400
大樽
300
300
発泡酒
缶
200
200
ビール
100
100
0
0
1月
2月
1月
3月
2月
3月
第3図 ビール・発泡酒・新分野別課税数量推移
第2図 ビールの容器別課税数量推移
(発泡酒・新分野込み)
(万箱)
6,000
2011年
2010年
5,000
2009年
その他
紅茶
果実飲料
お茶類
4,000
3,000
炭酸飲料
2,000
コーヒー
1,000
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
第4図 清涼飲料缶の月別・主要品種別生産推移
食品と容器
332
2012 VOL. 53 NO. 5
今月の統計
(千kL)
3,500
(社団法人全国清涼飲料工業会調)
2009年
2010年
2011年
3,000
2,500
その他容器
紙
2,000
PET
びん
1,500
アルミ缶
スチール缶
アルミボトル缶
1,000
スチールボトル缶
500
0
炭酸飲料
果実飲料
コーヒー
ウーロン茶
紅茶
緑茶
ブレンド茶
スポーツD.
第5図 清涼飲料の品種別容器別生産対比
第 1表
2012年 (1 ~ 3 月 ) ビ ー ル 課 税 数 量 の 前 年 比 ・構 成 比 , 容 量 ベ ー ス (発 泡 酒 ・ 新 分 野 込 み )
容 器 別 (% )
前年比
構成比
前年構成比
缶
99.8
68.8
大樽
105.1
19.6
ビン
99.6
11.6
100.0
69.5
18.8
11.7
第 2 表 2011年 (1 ~ 12月 )
前年比
構成比
前年構成比
ビ ー ル ・ 発 泡 酒 ・ 新 分 野 別 (% )
合計
100.8
100.0
前年比
構成比
合計
96.9
100.0
ビール
95.9
48.6
発泡酒
87.1
15.2
新分野
101.8
36.2
前年構成比
100.0
47.8
16.7
35.4
清涼飲料缶生産実績の前年比・構成比,箱数ベース
合計
100.7
100.0
コーヒー
99.5
59.9
品 種
炭酸飲料
107.7
19.9
別 (% )
お茶類
92.5
5.2
果実飲料
96.9
5.4
紅 茶
99.1
3.7
100.0
59.8
18.3
5.6
5.5
3.7
第3表
平 均 気 温, 降 水 量, 日 照 時 間
平 均 気 温 (℃)
平年差
前年差
月間
14.5
+0.1
+2.1
月間
18.5
-0.2
-0.5
月間
22.8
+1.0
-0.8
月間
27.3
+1.9
-0.7
月間
27.5
+0.4
-2.1
月間
25.1
+1.6
+0.0
月間
19.5
+1.3
+0.6
月間
14.9
+1.9
+1.4
月間
7.5
-0.9
-2.4
月間
4.8
-1.0
-0.3
月間
5.4
-0.7
-1.6
下旬
10.5
+0.3
+2.1
月間
8.8
-0.1
+0.7
4月 上旬
12.4
+0.0
-0.4
中旬
14.3
-0.1
+0.0
注)平年値は1971年~2000年の月,旬平均値
96.0
213.5
116.5
54.5
244.0
235.0
119.5
112.5
59.5
50.0
94.0
22.5
144.5
22.0
53.5
食品と容器
333
74
167
71
34
157
113
73
122
150
103
156
39
126
50
129
45
187
108
78
904
55
57
119
41
1429
62
64
195
440
151
その他
79.8
3.4
2.7
4.3
(4月中旬まで・東京)
降 水 量 (mm)
平年比(%) 前年比(%)
2011年 4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2012年 1月
2月
3月
87.9
2.4
ス ポ ー ツ D.
日
204.0
146.3
105.1
186.2
168.9
165.8
141.3
143.4
187.6
183.0
148.6
67.8
149.7
89.1
43.2
照 時 間 (h)
平年比(%) 前年比(%)
124
81
88
126
95
147
109
101
110
101
92
118
94
172
79
146
74
65
102
76
100
174
90
96
75
100
89
70
143
56
2012 VOL. 53 NO. 5
最近の技術雑誌から
○カセット式迅速細菌数計測装置「カセットラボ ® ONE」
………………………………武井三雄・佐々木康彦
○清涼飲料水の開封・口飲み保管により検出される微生
物………………………………………………後藤慶一
国 内 編
分 析 ・ 測 定
〔解説〕分析・計測技術/におい・味・テクスチャー・
色の客観評価を目指して
編集部:食品と開発,47(4)17∼22('12).
栄 養 ・ 健 康
〔解説〕2008年農芸化学研究企画賞/血管病の発症メカ
ニズムと食品成分によるその予防の可能性
加治屋勝子:化学と生物,50(4)269∼276('12).
〔解説〕特集―微生物管理技術の近況―
ジャパンフードサイエンス,51(4)21∼47('12).
○ISO関連試薬による汚染指標菌検査∼生肉食中毒を契機
とした汚染指標の動き∼……………………久保亮一
○効果的な洗浄方法の確立と清浄性の維持確認―ATP
ふき取り検査を用いて―……………………本間 茂
○PCRテクノロジーによる食品微生物管理
………………………………タカラバイオ株式会社
○微生物迅速検査装置「バイオプローラ」の計測原理と
計測例…………………………………………井出真作
○飲料および食品中の微生物を全自動のATP法で迅速
に検出「Celsis社セルスキャン・イノベート」
…………………………………株式会社 ベリタス
食
品
衛
生
〔解説〕食品における有害微生物の増殖予測
藤川 浩:乳業技術,61 64∼73('12.2).
〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術―
食品機械装置,49(4)52∼62('12).
○食品工場に潜むリスクへの対応(その1)
………………………………………………岩瀬昌敏
〔解説〕特集①―食品工場の衛生管理技術―
食品機械装置,49(4)63∼85('12).
○食品工場の最新有害生物防除システム
………………………………………………尾野一雄
○食品工場総合衛生管理システムについて
…………………………………松本 登/大倉浩二
○食の安全と機械安全操作を両立/異物混入対策を考え
て……………………………アンドリュー ラスカム
〔解説〕特集②―食品の殺菌技術―
食品機械装置,49(4)86∼97('12).
○高電界殺菌技術の紹介と実用化活用について
………………………………………………井川重信
○品質・色調・フレーバーを損なわない・低含水食品の
パスツール技術/食品原料由来リスクを回避する低
温殺菌システム………………………マルコ ケラー
〔解説〕特集―食品・飲料の微生物混入対策/衛生管理
下における食品中の細菌を迅速検出/微生物検査最
前線―
食品工業,55(8)42∼99('12.4/30).
○細胞外酵素の検出による,現場でのバクテリア検査に
ついて…………………………………………庫内康博
○腸炎ビブリオの免疫学的手法による迅速同定法
…………………坂田淳子・川津健太郎・岩崎 忠
○清浄度簡易評価のための拭き取り操作法の標準化
…………………………………福﨑智司・浦野博水
○洗浄における問題ポイントの発見とその監視
………………………………………………本間 茂
食品と容器
〔解説〕特集―放射性物質の新基準値と業界対応を考
える―
月刊HACCP,18(4)15∼35('12).
○放射性物質の新しい基準値に対する考え方と対応につ
いて……………………………………………寺田 宙
○食品に含まれる放射性物質の基準値引き下げ∼国民に
かかる照射線量の低減∼
……ガリーナ カジミーロヴァ・ヴラディミール
ブィコヴスキー・セルゲイ グリーシン
○消費者や食品企業の不安残しつつ新基準施行/放射線
物質の検査体制整備やリスコミが重要に
……………………………………………本誌編集部
○内部・外部の精度管理を重視し,信頼度の高い放射線
量測定サービスを提供∼東京食肉市場における全頭
検査も受託∼
……………………(株)らいふ 環境分析センター
〔解説〕安全な食鳥肉を提供するための食鳥処理場にお
ける衛生対策
熊元一徳:食と健康,56(4)10∼23('12).
〔解説〕きほんは一般的衛生管理
田村延一:食と健康,56(4)52∼62('12).
334
2012 VOL. 53 NO. 5
最近の技術雑誌から
〔解説〕特集―防虫管理技術の動向―
ジャパンフードサイエンス,51(4)49∼65('12).
○食品工場等における害虫の防除・駆除技術
………………………………………………森岡健志
○飛来昆虫類対策「グリーン防除」の提案
………………………………………………白石啓悟
○防虫用エアカーテン/エアカーテンの原理から導入事
例とその効果………………………………大須賀延王
〔解説〕品質・安全対策Ⅰ/食品安全マネジメントシス
テムの最新動向
編集部:食品と開発,47(4)35∼38('12).
飲 料 ・ 醸 造
〔解説〕2011年輸入酒市場 品目別・銘柄別動向(1)
/ワインの持つ多様性が需要支える
酒類食品統計月報,54(1)2∼18('12.3).
〔解説〕【データで見る】11年ビール類の地域別容器・
タイプ構成比/「缶」「業務用樽」の構成比上昇続
く
酒類食品統計月報,54(1)37∼45('12.3).
〔解説〕2年連続成長したPETボトル飲料/需要創造に
向けた積極的なチャレンジを
酒類食品統計月報,54(1)81∼86('12.3).
品
一
般
〔解説〕特集―パン・菓子・デザートの世界―
食品工業,55(5)33∼62('12.3/15).
○ベーカリー市場の現状と今後…………………光山華代
○「消費者ニーズ対応型ベーカリー」こそ繁盛店への確
かな道すじ……………………………………保住光男
○米粉パン大規模製パンに向けての研究開発
………………………………………………奥西智哉
○子どものおやつ…………………………………高橋敦子
○2012年バレンタイン最新事情/今年のキーワードは
「絆チョコ」……………………………………編集部
〔解説〕特集―機内食,弁当,食堂車∼これからの食の
サービス/機内食,弁当,食堂車の今,そして今後
の新展開。―
食品工業,55(7)33∼66('12.4/15).
○航空会社のマーケティング戦略─商品としての機内食
の検証─………………………………………大島愼子
○“弁当の日”という子育て……………………竹下和男
○プロフェッショナルとの「コラボ」で新生JALの機内食
開発が推進中
…………………………………田中誠二・尾崎 綾
○食堂車について………………………………宇都宮照信
〔解説〕特別企画―豆乳市場と原料・プロセス処理―
Beverage Japan,№363 69∼82('12.4).
○過去最高の生産量を記録,高い健康感が市場牽引
燥
〔解説〕特集―大震災の混乱の中でも市場拡大/ステー
ジが変わった冷凍食品市場/有力メーカーの商品戦
略を探る―
総合食品,35(11)49∼59('12.4).
〔解説〕特集―食品分野における知的財産権―
食品と科学,54(4)57∼63('12).
○食品企業の知財戦略―企業コンプライアンスと知的財
産権―…………………………………………井上裕史
缶びん詰・レトルト食品
〔解説〕ツナ缶市場,未曾有の魚価髙で採算ピンチ/昨
食品と容器
食
〔解説〕ペットフード,機能性商品の開発活発化/引き
続き,シニアカテゴリー好調
酒類食品統計月報,54(1)51∼54('12.3).
〔解説〕飲料特集―大震災を乗り切った興奮冷めやらぬ
が再び価格競争の泥沼も予想される飲料業界―
総合食品,35(11)22∼33('12.4).
凍 ・ 乾
〔解説〕レトルト食品の最近の情勢と今後の取り組み
上原真紀子:缶詰時報,91(4)2∼7('12).
〔解説〕特集1―製菓・スナック製造の最新動向―
フードケミカル,28(3)17∼52('12).
○製菓・スナックの技術と開発の動向…………中山正夫
○菓子の包装形態と技術の動向…………………羽藤公一
○スナック向けセイボリーフレーバーの開発…中里貴浩
○高甘味度甘味料による製菓・スナックのおいしさ向上
…………………………………松田康正・竹村優子
○糖アルコールの菓子類への利用………………栃尾 巧
○製菓・スナック製造に役立つ各社の製品・技術
…………………………………………………編集部
〔解説〕引き続き減少続く2011年の緑茶市場/セシウ
ム検出騒動で贈答用など苦戦
酒類食品統計月報,54(1)33∼36('12.3).
冷
年のバンコク相場,市場最高記録
酒類食品統計月報,54(1)55∼63('12.3).
335
2012 VOL. 53 NO. 5
最近の技術雑誌から
食品加工・保蔵
容 器 ・ 包 装
〔解説〕支援技術/食品の付加価値を高める分離・ろ過
技術
編集部:食品と開発,47(4)23∼26('12).
〔解説〕特集―容器包装の開発―
包装技術,50(4)4∼35('12).
○容器包装の成形・加工技術の変遷と最近の傾向
………………………………………………葛良忠彦
○「ねりスパイス」シリーズのパッケージ改良に関する
取組み…………………………………………加藤健吾
○Rootsタンブラー缶の開発……………………新名剛仁
○Panasonicデジタルカメラ“LUMIX”の三次元包装
………………………………………………辻 憲司
○新断熱紙容器Hot Magic Cupの開発………長瀬勇二
○液体容器PIDの開発……………………………二瀬克規
○オリジナルボトル対応ブロー成形技術
………………………………藏田広明・大川奈緒美
〔解説〕支援技術Ⅱ/無菌化包装食品・飲料製造技術の
最新動向∼シェルフライフ延長に加えて浮上する高
品質ニーズと省エネ対応∼
編集部:食品と開発,47(4)27∼33('12).
市場調査・流通
〔解説〕2011年百貨店歳暮商戦,酒類・食料品ギフト
の動向∼東京・大阪・名古屋地区∼
酒類食品統計月報,54(1)87∼91('12.3).
〔解説〕特集1―スイーツを演出する食品包装のチカ
ラ!∼大切な想いを伝えたくて…∼―
食品包装,56(4)17∼27('12).
○地方発ブランド戦略/神戸スイーツ学会/業界活性化
へ,魅力を世界に発信/よりよい包装のあり方も重
要な研究課題の1つに浮上
○注目企業のユニーク展開/クラスター・エム・エス/
小売店にプレミアムスイーツギフトを通販/“菓子
業界の一員”のアイデンティティーで提案
○デザイナー的アプローチ/資生堂パーラー/パーラー
ブルーと唐草模様/ブランド力が際立つパッケージ
○注目トレンド最前線/伸長するコンビニスイーツ市場
/高い“ブランド力”が掴む消費者のハート
○話題クローズアップ/山田屋/“白”ベースの清楚な
パッケージに刷新/多様なシーンに合うデザインで
長寿和菓子の顧客層拡大を図る
○話題クローズアップ/全国スイーツマラソン/第8回
大会が横浜で盛大に開催/同時開催の物産展にはス
イーツショップも多数
〔解説〕特集―成長するアジアの食品市場―
食品と開発,47(4)4∼16('12).
○インドの食品市場と市場参入の課題
…………………………ジュネジャ レカ ラジュ
○中国保健食品市場と市場参入の課題
………………………………………………陳 建君
○ベトナム食品市場と市場参入の課題
………………………………………………齋藤正之
○成長するアジアのハラル市場とは
………………………………………………錫村民生
管
理
技
術
〔解説〕特集2―恒例!高度化する品質管理システム最
前線―
食品包装,56(4)33∼41('12).
○寄稿/山口陽平/食品工場の充填・包装工程も管理/
「CyberChefood」を核にきめ細やかなサポートを
実現
○寄稿/兒山悠二/ダイエット飲料の新たな品質管理手
法/複雑な組成に対応し,迅速な分析を可能にする
システム提案
○話題クローズアップ/アントンパール・ジャパン/内
覧室・研修室を新たに開設/ほぼ全ての機種を展示
し顧客との関係強化へ
〔解説〕特集―ガラスびん―
Beverage Japan,№363 37∼53('12.4).
○容器産業を先導するガラスびんと将来
○特別インタビュー/ガラスびんの使命と未来
……………丸橋吉次(日本ガラスびん協会会長)
○事例研究/キンキサイン株式会社/日本最大のリター
ナブルびん受託工場の活性化戦略
〔解説〕品質・安全対策/食品品質のカギを握る温度管
理技術∼生食用食肉の表面加熱殺菌義務付けで注目
される温度モニタリング∼
編集部:食品と開発,47(4)40∼47('12).
食品と容器
法 規 ・ 法 令
〔解説〕食品表示に関する消費者の意向等調査
消費者庁食品表示課: 缶詰時報,91(4)12∼21
('12).
336
2012 VOL. 53 NO. 5
最近の技術雑誌から
Aging Americans Rely on Proteins
M.Anthony, Ph. D.… ……………………… WF 3 ~WF 8
海 外 編
○工場の総合管理用ソフトウェアの現状
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
Software Puts Your Plant on Fast-Forward
ご興味のある雑誌・記事がございました
らいつでも閲覧できますので,当会宛ご
連絡ください。
Pest Control-Inside, Outside and in the Cloud
B. Sperber……………………………………………61~66
○総合的な害虫管理プログラム
D.Phillips… …………………………………………69~70
○食品製造業者が期待する管理ソフトウエア
Fast and Transparent
D. Phillips… …………………………………………72~73
Prepared Foods (U.S.A.) Vol. 181 Feb. (2012)
○食品市場を牽引する調味料とソース
Food Technology (U.S.A.) Vol. 66 Feb. (2012)
Sauces and Condiments Are Hot…………………25~30
○米国食品技術者の雇用と給与状況調査
○地元産食品のマーケティングチャネル
Economy Keeps Salaries Flat
Supplying the Locavore Movement
M. E. Kuhn… ………………………………………26~38
……………………………………37~38
○伝統的料理のインスピレーションから現代料理を開発
○米,大豆,唐辛子だけでない韓国料理の数々
Old World Inspiration Informs Contemporary Cuisine
Korean Cuisine : More than Rice, Soy and Chilies
K. Nachay……………………………………………40~46
M. Formichella and T. Rowan… …………………43~49
○代替甘味料を使用した低カロリー,機能性飲料
○冷凍デザートアプリケーションの現状
Formulating Lower-Calorie Sweet Drinks
Filling Frozen Desserts : No Rocky Road
……………………………………49~59
D. Feder, RD,… ……………………………………55~61
○ナッツや豆類の豊富な栄養と健康効能
○脂肪と油,その健康と機能
Little Packages, Big Nutrition
Fats, Oils, Health and Functionality
L. M. Ohr… …………………………………………61~64
……………………………………63~68
○チョコレート製品生産における品質検査
Chocolate Quality Testing
Food Engineering (U.S.A.) Vol. 84 Feb. (2012)
N. H. Mermelstein… ………………………………66~70
○包装ラインの総合設備効率(OEE)の取り組み
○食品加工技術の実用化の進歩
Focus on OEE Increased Plant Floor Visibility Pays Off
Commercializing Advances in Processing Technology
K. T. Higgins…………………………………………38~44
J. P. Clark……………………………………… 71~72,75
○食品製造業における安全と品質の適正なバランス
○マイクロエレクトロニクスとナノテクを応用した最近
のパッケージ
Striking the Right Balance between Safety and
Quality
H ow Microelectronics and Nanotechnology Will
K. T. Higgins…………………………………………45~51
Shape Packaging
○食品工場におけるポンプのメンテナンス計画
A. L. Brody… ………………………………………73~75
Maintain Pumps on Your Schedule
Food Manufacture (U.K.) Vol. 87 Feb. (2012)
W. Labs………………………………………………53~62
○シニア消費者のニーズに応えるパッケージ開発
Food Processing (U.S.A.) Vol. 73 Feb. (2012)
Get a Grip
○食品産業における“肥満”“成分”“安全”のキーは?
L. Mullaney… ………………………………………38~39
The Food Industry Fights Back
○食中毒の原因となる交差汚染を回避するには
D.Fusaro… …………………………………………24~30
Kick in the Guts
○ベーカリーのトレンドは満足感と低カロリーのバランス
R. Pendrous… ………………………………………46~47
Baking Up a Storm
D. Toops… …………………………………………33~41
Packaging Digest (U.S.A.) Vol. 49 Feb. (2012)
○体重管理にプロテインを活用する米国シニア世代
○濃縮詰替えポッドと審美的ボトルデザイン 食品と容器
337
2012 VOL. 53 NO. 5
最近の技術雑誌から
Replenish Concentrates on Conserving
Kegs & Kegging : Petainer PET Kegs
L. M. Pierce… ………………………………………20~25
……………………………………30~31
○パッケージの「持続可能性」を実現する手順
Packaging Gets Lean and Green
Beverage World (U.S.A.) Vol. 131 Feb. (2012)
J. Spinner… …………………………………………26~31
○次世代のスーパーフルーツ
○パッケージデザインでブレイクする5つの方法
Next Generation Superfruits
5 Ways to Break the Rules in Packaging Design
H. Landi………………………………………………48~49
T. Mininni……………………………………………40~41
Journal of Food Science (U.S.A.) Vol. 77 Feb. (2012)
Beverage Industry (U.S.A.) Vol. 103 Feb. (2012)
○リンゴ酸,チアミンラウリル硫酸塩を用いたアルファ
○成長期の子供向け飲料の関心事
ルファ種子の大腸菌 O157:H 7数減少とスプラウト
Addressing Growing Concerns
の品質評価
E. Coli O157 : H7 Population Reduction from Alfalfa
J. Jacobsen……………………………………………14~17
○健康とウエルネスのトレンド
Seeds with Malic Acid and Thiamine Dilauryl Sulfate
and Quality Evaluation of the Resulting Sprouts
A Pitcher of Health
S. Hildebrandt… ……………………………………22~25
L. Fransisca et al.………………………… M 121~M 126
○色彩や伸縮性に優れたシュリンクフィルム
○高脂肪食餌誘発肥満ラットにおけるD−プシコース摂
取による内臓脂肪の低減
The Value of Conformity
J. Zegler………………………………………………37~40
D ietary D-Psicose Reduced Visceral Fat Mass in
○脳の健康に良い機能性飲料
High-Fat Diet-Induced Obese Rats
Drinking to a Healthier Mind
Y. Chung et al.………………………………… H 53~H 58
S. Hildebrandt… ……………………………………41~44
○糖尿病ラットにおけるアスタキサンチンの抗血液凝固
効果と抗炎症効果
○最近の親水性コロイドの紹介
Anticoagulatory and Antiinflammatory Effects of
The Ingredients That Bind
Astaxanthin in Diabetic Rats
J. Zegler………………………………………………45~48
K. Chan et al.… ……………………………… H 76~H 80
Food & Beverage Packaging (U.S.A.) Vol. 76
Jan. / Feb (2012)
Food Manufacture (U.K.) Vol. 87 Mar. (2012)
○2012年持続可能性への対処は6R
○脂肪や塩分削減表示をめぐる課題
Sustainability in 2012 : Putting the 6Rs into Thought
Less Is More
and Action
L. Mullaney… ………………………………………28~29
○クラウドコンピューティングを活用した中小企業の管
R. Lingle………………………………………………18~23
○小売対応包装用ケースパッカーの近況
理システム
Making a Case for Retail-Ready Packaging
It’
s in the Clouds
E. Cuneo… …………………………………………24~26
P. Gander… …………………………………………34~35
○フレキシブルパウチのパワフルな伸長
○パン,菓子のシェルフライフに寄与するスマートパッ
ケージ
Pouches Flex Marketing Muscle
R. Lingle………………………………………………28~29
Mould Breaker
○金属リングプルから変換!革新的なシーリング技術
A. Williams… ………………………………………43~44
C o n s u m e r s R e a c t t o I n n o v a t i o n s i n S e a l i n g
The Canmaker (U.K.) Vol. 25 Mar. (2012)
Technology
○躍進する中国の2ピース缶ライン
A. Holay………………………………………………32~33
Chasing the Dragon
Int. Bottler & Packer (U.K.) Vol. 86 Feb. (2012)
J. Nutting… …………………………………………28~30
○ GEA Procomac 社の PET ボトル無菌充填システム
○飲料および製缶会社の最近のトレンド
130 Aseptic Lines to Date…………………………14~16
Growing Trends
○軽量で環境に優しい PET 製ビール樽
A. Stupay… …………………………………………34~35
食品と容器
338
2012 VOL. 53 NO. 5
成分にも関心が高まっていたので,抗酸化成分で
野菜・果物を巡って
(第四十一話)
もあるビタミン類の測定には意味があることを認
識した。
ハーブの種類によっても異なるが,一般的にカ
ハーブを楽しむ
よし だ
き
よ
ロテン,ビタミンC,Eなどの含量が多く,ポリ
こ
フェノール含量も多いという特徴が把握できた。
吉 田 企 世 子
そのようなことからハーブが身近な香辛野菜と
(女子栄養大学名誉教授)
なり,サラダなどによく用いるようになった。少
住まいの近くに神田川があり,日頃は水が澄み,
量のコリアンダーなどが加わると単純なサラダも
流れも浅く,川底がよく見える穏やかな川である。
ひと味異なって美味しく感じる。
ところが,大雨が降るとあっという間に濁流とな
成分分析をしていた頃,アロマテラピーが流行
り,水嵩がまして,恐怖を感じる川に変貌する。
しており,特に,ストレスの多い社会に住む日本
日頃の顔とあまりにも異なるその変化に驚かされ
人には求められたようである。
るのである。しかし,氾濫することはない。
花や木など植物に由来する芳香性成分(主に精
ここに居を得て50数年になるが,当時は,大雨
油)を用いて心身の健康や美容を増進するとして
が降ると簡単に氾濫し,床下に浸水したことも
導入されているのがアロマテラピーであるが,現
あった。現在では放水路や護岸工事がしっかりで
在はかなり普及した技術(療法)となっている。
きて,氾濫の心配は全くなくなった。
生活の中に自然の香りを取り入れることで,ス
その工事の折に,川沿いの路がコンクリートで
トレスを解消したり,心身をリラックスさせるこ
舗装され(これがよかったのかどうかは評価がわ
となどに効果があるとされている。
かれる),併せて桜の木が植えられ,現在ではそ
イギリスに滞在した折,有名な化粧品店で,各
の桜が見事に咲いて,美しい桜並木で知られるよ
種のハーブから抽出した液を小瓶に入れて販売し
うになった。開花期には遠方からも桜見に訪れる
ていた。睡眠に効果があるとか,精神を安らかに
人々で,日頃は閑静なその路も俄然賑やかな通り
するなどそれぞれに効果が示されており,人気の
になる。季節を問わず,日向で読書をする人,散
ある商品であった。合成品とは異なって穏やかな
策する人,ジョギングをする人などが活用する静
香りがいかにも自然で好ましい。部屋の片隅の
かな通りである。
テーブルに置くと空気というか雰囲気というか,
時折,エクササイズのためにその路を歩くので
近寄らないと感じない程度のわずかな香りである
あるが,小さな庭に数種のハーブを育てている家
が,部屋が落ち着くので,滞在中にはよく愛用し
があり,とくにミントの香りは気分を爽やかにし
た。帰国後,日本にも進出しているその店に出か
てくれる。
け,定期的に求めている。日本は湿度が高いので,
かつては,パセリ,クレソン,シソの葉,山椒,
部屋の空気が重く感じられることがあるが,この
ミントなどが日常的なハーブであり,その他はあ
ほのかな香気の小瓶が雰囲気を和らげてくれる。
まり利用することがなかったので,関心が薄かっ
昨 年, イ ギ リ ス の Marlborough College の
た。しかし,在職中のある時,香辛料を扱ってい
Summer School に出席した折,「ハーブと健康」
る企業からの依頼で各種ハーブの成分を分析する
という講座を受講した。ハーブと健康,料理など
機会を得た。
に関するお話が伺えると期待しての受講であった
ハーブは香辛成分を活用する素材で,使用量が
が,薬理作用に関する講義が主で,実習では2種
少なく,ビタミンやミネラル含量を把握すること
類の軟膏と2種類の飲み物を試作した。用いた
にどの程度の意味があるかなどと疑問を抱きつつ
ハーブはほとんど馴染みのないものであったが,
分析をはじめたのであるが,当時,食品の機能性
カモミール,ローズマリー,フェンネルなどはか
食品と容器
339
2012 VOL. 53 NO. 5
つて料理に使用したことがあったので,親しみを
このような話を聞くと,簡便性を取り入れた日常
感じたことである。
の食事づくりに少々反省させられるのである。
軟膏は筋肉痛に効果があるとのことであったが,
チャツネというインドの漬物があるが,これには
その効果は自覚していない。飲み物は美味しく味
コリアンダーが用いられているようである。種子
わった。
の方は豆料理やシチュー,ピクルスのスパイスな
ある時,テレビの料理番組を見ていたら,各種
どに用いられる。
のハーブを取り入れた料理が紹介されていた。料
バジルは一年生草本で葉は長楕円形で緑色。魚,
理の専門家は上手に活用するものだと感心したが,
肉料理に用い,ソース,ドレッシングなどに加え
かといって,それを取り入れてはいない自分の食
るのも一般的である。オーブンで焼く魚料理など
生活の現実があり,食事の豊かさの違いを感じて
で時折用いるが,好みに合う香りである。
いる。
種子を目に入れると,寒天状にふくらみ,目の
ごく一般的なハーブといえばミントであろう。
ゴミがとれるとのことである。それゆえ,メボウ
ミントはハッカの仲間で多くの変種がある。多年
キとの別名があるとのこと。
生草本で,地下茎が地表近くを横走りして繁茂す
ローズマリーは最も古くから利用されている香
る。草丈は系統によって30~100 cm にも伸びる。
辛野菜と伝えられている。多年生小低木で,葉は
葉は一般に卵形で緑色であるが,種類により大き
細長く線形。耐寒,耐暑性があり栽培しやすい。
さ,色は変化に富む。ペパーミント(西洋ハッカ,
香気が穏やかでいろいろな料理に活用できる。
レモンミント,オーデコロンミントはこの仲間),
ハーブティーにも用いられる。
メグサハッカ,スペアミント(オランダハッカ),
数年前,スペイン在住の娘宅に滞在した折,近
アップルミント(マルバハッカ,パイナップルミ
くの公園にローズマリーが繁茂していて,野生化
ントはこの仲間)などは香辛野菜として用いられ
していることに驚いた。
ている。
最近は乾燥ハーブがポプリとして販売されてお
コリアンダーの青葉と未熟果は南京虫に似たに
り,若い女性に人気がある。好みのハーブやスパ
おいがして臭いが,完熟すると甘くて美味しそう
イス,花などを組み合わせて,自家製のポプリを
な芳香に変わるのである。
楽しむ女性も増えているとのこと。
生葉は鶏肉やその他の肉料理に用いられる。料
食事づくりには手を抜くが,ハーブの香気は楽
理に凝っている友人はカレーに用いるとのこと。
しむという現状をどう理解すればよいのか。食べ
最近は市販のカレールーを用いることが多いので,
ることにも同様に手をかけてほしいことである。
編
集
後
記
●娘の結婚式でバージンロードを歩きました。緊張しま
したが事前練習もあり,ドレスも踏まず無事に終了。披
露宴では折角のおいしい料理も最後の方は何を食べたか
第53巻 第5号
FOOD & PACKAGING 平成24年5月 1 日発行
分からなく,自分では絶対に泣かないと思っていました
発行所 缶
が,最後の両親への手紙の所で……親ばかですかね?
〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4
TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1
定 価
FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
1部 800円
Eメール:[email protected]
年間 8,000円
郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5
(送 料 共)
塚 秀 夫
編 集 人 飯
●3月末に定年を迎えました。まだ体力があるうちに何
か記念になる資格を取りたいと考え,趣味のダイビング
のプロコース(ダイブマスター)に挑戦しました。プー
ルでの体力テストでは筋肉痛,受験勉強並に分厚い参考
書等と格闘,寒い海での厳しいトレーニング……何とか
発 行 人 合格。GW は息子と一緒に海外へダイビングに行くので,
−禁無断転載−
少しは親父のスキルを自慢したいと考えています。(一)
食品と容器
詰 技 術 研 究 会
田
嶋
一
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
340
雄
印 刷 所 大和サービス株式会社
2012 VOL. 53 NO. 5