航空技術情報 2014年 12月~2015年 1月

航 空 技 術 情 報 2015 年 1 月 ★航 空 局 、 SBAS 補 強 受 け な い 衛 星 航 法 装 置 を 主 要 計 器 に RNAV 航行実施に限り主要計器として使用可能へ(ウイングデイリー0121) 航空局は、広域航法経路(RNAV)航行を行う場合に限り、SBAS(Satellite Based Augmentation System)
による補強を受けない衛星航法装置を主要計器として使用可能とする方針だ。サーキュラー等を改正して、5
月にも適用することを目指す。 SBAS は静止衛星の信号を使って、GPS の誤差を補正・補強する広域補強システムのこと。これまで、この
SBAS による補強を受けない衛星航法装置を計器飛行方式として使用して運航する場合、原則として補助的な
用途にしか認められておらず、GPS による位置等の情報に疑義が生じた場合には、GPS に依存しない従来の航
法により同一経路を飛行可能な場合に限り、使用が認められていた。 そうしたなか、2010 年から日本国内でも航空局が、SBAS による補強を受けない衛星航法装置を主要計器と
した場合の運航及び管制運用への影響等を検証するための評価運用を行ってきた。この評価運用の結果と欧米
の状況を踏まえて、RNAV 航行を行う場合に限っては、SBAS による補強を受けない衛星航法装置を主要計器と
して使用可能とするようにする方針だ。 ★JAL の 787、 2 月 に も 運 航 路 線 の 制 約 解 決 へ (Aviation Wire 1 月 21 日) 日本航空の植木義晴社長は 1 月 21 日、同社のボーイング 787-8 型機がエンジンの仕様で運航路線に制約が
生じている問題について、2 月にも解決するとの見通しを示した。 JAL の 787-8 は、米 GE 製エンジン「GEnx-1B」を搭載。同エンジンは、積乱雲周辺で空気中にある氷の結晶
(氷晶)がエンジンへ入った際、推力が一時的に減少する影響を受けやすい。 このため、ボーイングは同エンジンを搭載する 787 の AFM(飛行規程)を、2013 年 11 月に改定。高度 3 万
フィート(約 9000 メートル)以上の雲の中を飛行する際、積乱雲など活発な雲の周囲約 90 キロメートルの飛
行を禁止している。 JAL では改定前から積乱雲を回避して運航しているが、改定後はさらに大回りしなければならず、気象条件
によっては大幅な遅延や欠航の可能性が高まった。この影響により、飛行中に赤道付近で積乱雲が多く発生す
る空域「熱帯収束帯」を横切る可能性が高いシンガポール線などで、機材を変更している。 植木社長は現状について、「最適な機材繰りになっていない」と述べた上で、GE 側の氷晶対策は「2 月ぐら
いにはメドがつく」と説明。「(3 月 29 日からの)夏ダイヤは、条件がクリアされた中での運航になる」と語
り、夏ダイヤからは機材繰りを最適化できる見通し。 一方、全日本空輸が運航する 787 は、英ロールス・ロイス製エンジンのトレント 1000 を搭載。ロールス・
ロイスは対策済みで、運航路線の制約は生じていない。 ★NTSB の 最 重 要 課 題 リ ス ト 「 手 順 の 順 守 」 と 「 医 学 適 性 」 を 重 視 (Aviation Daily 0115) 2013 年にサンフランシスコ及びバーミンガムで発生した着陸時の死亡事故や、死者は出なかったものの着
陸時に発生した滑走路からの逸脱(2 件)及び誤った滑走路への着陸(2 件)は、国家運輸安全委員会(NTSB) が「安全向上のための最重要課題」に関して作成した年次課題リストに新たに盛り込まれた 2 つの項目の基盤 となってなる。 10 の課題リストの中に新に盛り込まれたのは、航空を含む運輸部門の従事者による「手順順守の強化」と、
これらの従事者が「業務を遂行するに当たっての医学適性の必要性」である。 公的なヘリコプターの安全強化及びジェネアビ(GA)における事故の防止(今年は、昨年とは異なり悪天候の 確認及び情報交換ではなく、GA における航空機が制御不能に陥る事故の防止に重点が置かれている。)は、昨 年から引き続き盛り込まれた。 NTSB では、これまでに連邦航空局(FAA)その他の組織に行った勧告を強調するとともに、最も緊急な対応
が必要な問題についての注目を集めるために用いている。 操縦席における医学適性を確実にするための重要な要素として、睡眠時無呼吸の診断及び予防等がある。こ
れは、2013 年 12 月にニューヨークで発生した鉄道死亡事故の要因でもあり、FAA ではこの問題をどのように
パイロットの航空身体検査で発見するか、ガイダンスの作成に取り組んでいる。 この他に、2013 年 8 月、アラバマ州バーミンガムで発生した UPS1354 便の墜落の要因である疲労管理の問
題もある。NTSB の委員である Earl Weener 氏は、次のように述べている。「この便の副操縦士は、休息するた
めの十分な時間があったにもかかわらず、適切に休息をとらずに出発空港に出勤しており、我々は任務に対す
る適性に関する問題を感じた。」 1354 便は夜明け前の暗闇の中、承認された最低降下高度より低い高度まで非精密進入により降下し、滑走
路手前の丘に衝突した。二人のパイロットは共に死亡した。 Weener 氏によると、NTSB リサーチ・エンジニアリング部門が昨年実施した過去 22 年間の死亡事故における
薬物の使用に関する調査研究の結果も、この医学適性を同リストに盛り込むことに影響したという。 特に NTSB を驚かせたのは、処方箋の必要ない市販薬が検死の際に見つかることが増加しており、多くの制御 不能となる事故でこうした薬物が発見されていたということだった。 また、2013 年 7 月にサンフランシスコで発生したアシアナ航空 214 便の墜落事故や UPS 機の事故には、手
順を順守していなかったという要素が含まれている。 アシアナ航空機の墜落事故では、事故機(777-200ER 型機)を操縦していたパイロットが過度に低い速度で 飛行を行い、滑走路手前の堤防に衝突し、3 名の死者を出した。 「この二つの事故の両方の状況で、パイロットらはトラブルを避けるために、取るべき手順を守らなければな らなかった。」と同氏は述べる。 この手順の順守に関する問題は、まだ調査が終了していない 4 件の死者の出ていない事案(US エアウェイ
ズ A320 型機(フィラデルフィアで発生)及びサウスウェスト航空 737 型機(ラガーディアで発生)の滑走路
逸脱並びにアトラス航空 747 型機(ウィチタで発生)及びサウスウェスト航空 737 型機(ミズーリで発生)に
よる誤った滑走路への着陸)の発生に関与した要因としても考えられている。 同氏は、
「これらは過去 10 年間において手順を順守しなかったことが問題であった多くの事故の中では例外的 なものではない。パイロットが単に手順に従わなかったというものではなく、疎かにされていた手順や訓練で 強調されなかった手順があったのかもしれない。正しい手順と適切な訓練、手順の順守を実施することを重視 することが必要である。」と述べている。 適切な手順の実施に関する安全向上策には、いわゆる「ダイブ・アンド・ダイブ」と呼ばれるバーミンガム
で UPS 機が用いたような承認された最低降下高度まで非精密進入により降下する進入方式を一定の降下角で
進入する方式に置き換えることのほか、大型輸送機において主翼から剥離した空気の流れが主翼に再び沿わせ
るための失速時の回復方法として、エンジンの推力を上げるのではなく機種を下げることを強調することなど
がある。 失速からの回復手順が適切でないことは、多くの GA 機の事故だけでなく、2009 年に発生したコルガン航空
機の墜落事故のように輸送機の事故の要因にもなっている。 「空気の流れを再び主翼に沿わせることによって機体を制御できる状態に戻す、それからスロットルで調整す る。これは手順に関する問題である。」と Weener 氏は述べた。 ★海 で 浮 く ブ ラ ッ ク ボ ッ ク ス 、 エ ア バ ス が 長 距 離 旅 客 機 に 搭 載 へ (AFP=時事 1 月 13 日) 【AFP=時事】欧州航空機大手エアバス(Airbus)の長距離旅客機「A350」と「A380」に、機体から切り離さ
れ水に浮くタイプの新型ブラックボックスが搭載される予定であることが分かった。関係者が 12 日、AFP に
語った。これにより航空機が海に墜落した場合、ブラックボックスの発見が容易になる。 開発に関わったこの関係者によると、エアバスは昨年末、浮上型ブラックボックスを機体後部に搭載する目
的で機体に修正を加える許可を、欧州航空安全局(European Aviation Safety Agency、EASA)から得た。 EASA 広報も、エアバス航空機に新型のフライトレコーダー(飛行記録装置)とボイスレコーダー(音声記録
装置)を搭載するための手続きを進めていると認めた。 既に軍用機には同タイプのブラックボックスが搭載されているものもあるが、民間機には採用されていなか
った。数年前まで航空事故は離着陸時に発生する場合がほとんどで、陸上でのブラックボックス発見は難しく
はなかった。 だが近年になって海上での墜落事故が増え、海でのブラックボックス発見を容易にする技術の必要性が高ま
っていた。 ★エ ア ア ジ ア 機 墜 落 原 因 は 、 落 雷 か ・ 竜 巻 の 猛 烈 風 で 急 上 昇 し て の 失 速 か (Global News Asia 1 月 21
日) 2015 年 1 月 21 日、昨年 12 月 28 日午前 6 時 17 分(日本時間 8 時 17 分)に消息を絶ったインドネシア・スラ
バヤ発シンガポール行の、エアアジア 8501 便(乗客乗員 162 名)エアバス A320 型機の事故原因の究明が続行さ
れている。 現地メディアによると、ブラックボックス(フライトレコーダーとボイスレコーダー)を回収して解析中で、
28 日解析結果の概要を発表する。また詳細なデータの分析には 6 カ月以上かかるとみられている。 現在、事故原因の見方は二つある。既定の最高上昇スピードの 2 倍の戦闘機並みの速度で上昇していることか
ら、一つは、巨大な竜巻の猛烈風にあおられて急上昇してしまい、雲の中は氷の粒子を含む氷点下 80 度の超
低温。この氷が機体やエンジンに着氷してエンジントラブルを起こし失速、機体後方から急落下し海面に衝突
したと見られている説。 もう一つは、戦闘機並みの速度で急上昇した後、落雷を受け機材トラブルが発生して失速。機体は空中分解
して海面に落下した説だ。 エアアジア機は、スラバヤを離陸して 36 分後の 28 日午前 6 時 12 分ジャカルタの管制塔に「天候が悪いの
で左向きに針路を変えたい」とリクエスト。管制官からの許可後、さらに「6000 フィート(約 1800 メートル)
高度を上昇して 3 万 8000 フィートにしたい」と再度リクエストしてきた。管制官は周辺の航空機の状況を確
認後、6 時 14 分に 2000 フィート(約 600 メートル)の上昇を許可すると伝えたが、エアアジア機からの応答が
ないまま、6 時 17 分に管制塔のレーダーから機影が消えた。 エアアジアグループの航空機は、すべて新造機を購入しており新しい機材が多い。既存の航空会社の中でも、
安全性は平均よりも高いと言われてきた。LCC もフルサービスの航空会社も同様の安全基準で運航している。 ★欧 州 委 員 会 が 改 良 型 フ ラ イ ト 追 跡 シ ス テ ム の 一 方 的 な 導 入 を 準 備 (欧州コンサル 141225) 2009 年 6 月に大西洋で消息不明となったエールフランス 447 便の事故の後で、欧州委員会は SESAR 共同事
業体(SJU)に対して海洋上および遠隔地の空域における航空機の追跡システムの改良を行う解決策を研究する
ことを要請した。SESAR JU が立ち上げた海洋位置追跡改良および監視プロジェクト(OPTIMI)を担当するコン ソーシャムが提言した技術、運航、技術的および法制上の変更に関する勧告事項が 2010 年における第二次の 研究活動の基礎となった。 この第二次 SAT-OPTIMI の研究では、短期的および中期的時間枠に分けて、地球全体を走査することのでき る衛星システムの技術革新を評価した。この第二次研究から得られた種々の推薦事項から、多くの対策が展 開されてきた。2013 年に通信衛星による全地球無線通信網システムに従事している Iridium 社とカナダの航 空航法サービス会社の NAV CANADA 社によって Aereon のベンチャー会社が創設された。海洋上と他の「地球 上の盲点となる地点」を航行する航空機を追跡するために、66 機の Iridium NEXT 衛星群を使用して宇宙に 展開された航空機追跡センサーを統合配備する計画が生まれた。この計画は 2015 年に着手される。 このような種々のプロジェクトが進行中であるが、2014 年 3 月に起こったマレーシア航空 MH370 便の行方
不明の事故を機に航空機が完全に行方不明となる事故を防止するために充分な活動が成されていないとの議
論が再燃した。ICAO は基準策定のプロセスが遅く、航空業界でさえも、2014 年 9 月までには ICAO は自発的な
提案を提出すべきであると合意した。しかし、その時に国際航空運送協会(IATA)は原因究明にはもっと時間 がかかり、年末までにその事案に取り組むとの結論に至った。IATA のトニー・タイラー氏は MH370 の行方不 明の事故は二度と繰り返されてはならないと強調し、ICAO が 2~3 年のうちに然るべき基準を認定すべきであ ると言明した。 2014 年 5 月 12 日と 13 日に行われた ICAO の会議でフライト追跡システムに関する技術と基準についての議
論がなされた。しかし、2009 年のエールフランス 447 便の事故の後で行動が呼びかけられたにもかかわらず、 ICAO は追跡システムに関する提案作りには既に余りにも時間がかかりすぎる進展しか示していない。世界中 から完全な合意を得ようとすることに問題がある。各国が ICAO を通して効力のある世界的な基準を策定し実 施する仕組みである。 しかし、個々の航空会社の方がそれよりも早くリアルタイムでの航空機追跡システムを配備し、ブラックボ ックスのデータを常時伝送することまでもできてしまう。そして英国航空とイベリア航空が構成する IAG グ ループによって運航される航空機では「航空機空対地データ通信システム」 (ACARS)によって航空機の現 在の位置も含めた航行データを 30 分毎に発信している。エールフランス-KLM の 2009 年の事故以来、エール フランスの航空機は 10 分おきに航空機の現在位置を伝送しているとエールフランスが言明している。もしも 異常が起これば、その伝送間隔は 1 分に短縮できる。KLM もこれに合わせることを決定している。 EU レベルでは、マレーシア航空 MH370 便の行方不明の事故の後、欧州委員会は航空機の正確な現在位置を
常に把握することを担保する、数多くの措置を講じる準備をしている。欧州委員会は事故が起こった場合に位 置を特定することが実際に出来るように航空機の信頼性と抵抗力を高めるようにしたい。欧州委員会は EU の 航空安全規則の改正も視野に入れた幾つかのレベルでの措置を検討している。欧州委員会は追跡の向上が成 されれば救急隊が墜落地点にもっと速く到着し、将来の事故を防止するために調査官がフライト・データ・ レコーダーを再生することもできる。 2014 年 6 月 5 日に行われた運輸 EU 理事会の会議では EU 各国の運輸大臣が航空機の追跡システムに関する
種々の対策を集中的に議論した。EU 航空安全規則の修正となれば、航空会社に対する技術的要求事項を規定
している規則 965/2012 in 2014-15 が修正されることになる。いくつかの航空会社が頻度の高い現在位置の送 信を行ういくつかの技術を使用しているところから、欧州航空協会は欧州委員会に対してフライト追跡に関 する命令規則の検討を据え置き、ICAO によって行われる幅広い会合からの成果を促し、その時機を待つよう 申し入れた。 また、彼らは欧州委員会に対して全く新規ではなく、現存している技術を利用する解決策に集中すべきであ ると申し入れた。欧州航空協会によれば新規のシステムの開発は「生み出される付加価値に比して不釣り合 いである」とのことである。航空会社側からの見方からすると、欧州委員会の現在の行動は航空産業に対す る EU-ETS システムを導入した EU 政府の一方的な行動を巡る論争を惹き起こしかねない。航空会社は欧州に のみ新しい規則枠組が設定されれば、大きな追加コストを強いられ、航空料金の値上げに追い込まれ、いろ いろな分野からの規則の制定の動きが立ちはだかる。航空会社と EU 官僚はこの問題を巡る論争を鎮めるため に話し合いを行うべきである。 ★EU 加 盟 国 は EU-ETS 規 則 を 遵 守 し て い な い 航 空 会 社 を 名 指 し し 、処 罰 す る こ と に 依 然 と し て 消 極 的
で あ る (欧州コンサル 141225) 2012 年 1 月 1 日に EU 政府は航空産業を対象とした欧州排出権取引制度を導入し、当初は EU の空港を往来
する第三国のフライトも対象としていた。そのため EU 政府は影響を受ける第三国の航空会社とその政府から
多大の批判を受けた。EU 域外の政府は EU の航空会社に対して法的措置や制裁を加えると脅迫した。しかし、
こうした状況によって国際間の航空からの GHG 排出量の規制に関する国際民間航空機関 (ICAO)の 10 年に及ぶ
無策状態に終止符を打つための活動が始まった。ICAO は 2016 年までに航空からの排出量に対するグローバル な市場原理に基づく措置 (MBM)の制度を策定することに合意を形成した。 この進展に鑑み、欧州委員会は ICAO が策定する MBMs が 2020 年までに国際間の航空からの排出量に対して
適用されるまでは、2014~2020 年の期間において、欧州経済領域 (EEA)の空域におけるフライトにのみ限定し て、すべての航空会社に EU-ETS 制度を適用する提案を提出した。2014 年 3 月 4 日に欧州議会と欧州理事会は 全ての第三国から EU を往来するすべてのフライトからの GHG 排出量を適用除外する妥協案に合意した。この ことは特に EU 域外の航空会社の国際間のフライトに対して“時計の針を止める”(STC)措置であり、2016 年 までこの状態が継続するであろう。このため、第三国の航空会社は航空業界への EU-ETS から適用除外とさ れた。 しかしながら、第三国の航空会社に対しても、EU 内の航路を飛行する場合には EU-ETS は適用となる。欧 州内のフライトを行う全ての企業は航空機運航者保有口座(AOHA)を開設しなければならない。各運航企業 の検証済みの排出量と排出量を補うために提供される排出権に関する情報が EU 共同体取引ログに明示され る。 2014 年 2 月 20 日の期限までに EU 加盟国は 2012 年を対象として規則の執行に着手せねばならず、その際に
は航空会社に対して何百万ユーロもの罰金を課すことになる。単に政治的な都合のために決定の刑罰を猶予す
ることはできず、どこかの時点で不遵守の企業は EU 規則に従い全て名指しされ、処罰されねばならない。欧
州委員会は排出量の 98%を占めるほとんどの航空会社が規則を遵守していると言明しているが、自社の排出 量を報告していない航空会社を処罰することは EU 加盟国の責任である。しかし同時に米国の航空会社は EU 加盟国政府に対して航空産業の EU-ETS 規則への違反容疑に対して罰金を課すべきでないと圧力をかけてい る。 EU-ETS 指令 2003/87/EC の第 16.2 条に基づき、EU 加盟国は充分な排出権を返却すべき義務に違反した航空
会社の社名を必ず発表しなければならない。加盟国政府は補償すべき排出権を返却していない航空会社に対し て、CO2 トン当たり 100 ユーロの罰金を課す義務を負っている。EU 加盟国政府は 2012 年中に規則を遵守して いない航空会社と商用のジェット機運航会社に対して通知書を送付した。幾つかの EU 加盟国の当局は 2012 年における欧州内フライトを運航した中国、インド、およびロシアの企業に対して罰金を執行せねばならな い。 しかし、EU 加盟国、特にフランス、ドイツおよび英国の政府は第三国の航空会社からの GHG 排出量に対す
る規則の執行のために第三国との摩擦を回避したい模様である。航空会社が欧州経済領域 (EEA)における 2013 年と 2014 年の排出量を報告すべき時期に 3 ヵ月しか残っていない現在で、非常に数多くの小規模運航会 社と幾つかの大手の航空会社は 2012 年に発効となった EU-ETS 規則を未だに遵守していない。 また、この措置が実行されるべき時期が定められておらず、各加盟国は上記の指令を異なる態様で自国の 法律枠組に組み変えている。2014 年 4 月にドイツ政府はロシアや他の国々など 61 社の航空会社(そのうちの 44 社は欧州域外に本拠地を有す)に対して合計で 2.7 百万ユーロ (3.4 百万ドル)の罰金を課したと発表し た。しかし、20 ヵ月を経ても、特にインド、中国およびロシアの航空会社は 2012 年に欧州において運航し たフライトに対する排出権の返却をしていない。このような不遵守が行われているにもかかわらず、EU の管 理当局は政治的なリスクを考慮するあまり、処罰の対象となる航空会社の社名を一社も発表していない。 実際にオランダ政府は社名が発表されていないが、中国の航空会社で中国南方航空と推測される企業に対し て、同社が 2012 年にアムステルダムとウィーン間での定期運航にかかわる年間排出量の報告書を提出してい ないことに対して行政的罰金を課したと伝えられている。同社は 2012 年中の EU 域内におけるフライトによ り排出した約 5,900 トンの CO2 を補う排出権の返却を行わなかった。さらにドイツにおける EU-ETS を管理す るドイツ連邦環境庁排出量取引局 (DEHSt)は排出権を返却していない航空会社の社名を 2014 年 7 月に公表す ると示唆した。しかし、その時期は秋まで引き伸ばされ、今となっては 2015 年第 1 四半期まで延期となっ た。 現在に至るまで、DEHSt に対して報告義務のある中華航空やアエロフロートなどの航空会社は 2012 年の排
出権の返却義務を果たしていない。ブリュッセルのフラマン地域の管理当局によれば、ベルギー政府は最近、 おそらくサウジアラビア航空と思われる EU 域外の大手航空会社に対して罰金を課したと見られているとのこ とである。公表されている EU 共同体取引ログにある情報に基づけば、不遵守による罰金で最高額となると予 想されるのはエチオピア航空で、同社は 2012 年中の EEA 内の 1,200 回のフライトにより約 2 万トンの CO2 を
排出しており、必要な排出権を返却していないようである。 英国においては、英国環境庁は不遵守の航空会社のリストを公表する義務を負っているが、2012 年を対象
としたそのリストは 2014 年 6 月には公表されるはずであった。しかし、英国環境庁は全ての上訴手続きが完
了していないとの理由で公表しなかった。英国政府は、「民事罰則金が課され、上訴がなされずに上訴期間が 経過し、あるいは上訴者に対する判決が確定されるか、又は撤回された場合」、英国環境庁はそのリストを 2015 年 6 月 30 日に公表すると言明した。欧州委員会は EU 加盟国政府に対して行動を起こし、加盟国が EU 法
の執行を行わなければ、加盟国を欧州裁判所に告訴することもできる。 ★欧 州 委 員 会 、乗 り 入 れ 禁 止 航 空 会 社 リ ス ト を 更 新 、リ ビ ア の 全 航 空 会 社 を 追 加(欧州コンサル 141216) 規則(EC)No 2111/2005、及び 2006 年 3 月 22 日の規則 No 474/2006 に基づいて、欧州委員会は乗り入れ禁 止航空会社のリスト、いわゆる「EU 航空安全リスト」を作成している。このリストの更新に関する委員会の
決定は、28 の加盟国に加え、ノルウェー、アイスランド、スイス、及び欧州航空安全庁(EASA)の安全の専
門家からなる EU の航空安全委員会による全会一致の意見に基づいて行われる。 2014 年 12 月 11 日、欧州委員会は EU 航空安全リスト内の乗り入れ禁止航空会社の最新リストを発表した。
委員会の決定は、2014 年 11 月 25、26 日に開かれた EU 航空安全委員会の全会一致の意見に基づいたものであ
る。 最新の EU 航空安全リストには、以下の 21 カ国で認可され、EU への乗り入れが禁止されたすべての航空会
社が含まれている; アフガニスタン、アンゴラ、ベニン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ジブチ、赤道ギニア、エリトリア、 ガボン(制限及び条件の下での運航が認められる 3 つの航空会社を除く)、インドネシア(5 社を除く)、カザ フスタン(制限及び条件の下での運航が認められる 1 社を除く)キルギスタン、リベリア、リビア、モザン ビーク、ネパール、フィリピン(2 社を除く)、シエラレオネ、サントメ・プリンシペ、スーダン、及びザン ビア。リストにはまた、個別の 2 つの航空会社、ブルーウイング航空(スリナム)とメリディアン航空(ガー ナ)も含まれている。乗り入れが禁止された航空会社の数は合計 310 社となった。 さらに、一部の航空会社は特定の機体に限って EU への飛行を認められている。そうした航空会社は、エア・
アスタナ(カザフスタン)、アフリジェット、ガボン航空、及び SN2A(ガボン)、高麗航空(北朝鮮)、エア リフト・インターナショナル(ガーナ)、コモロ・エア・サービス(コモロ)、イラン航空(イラン)、 TAAG アンゴラ航空(アンゴラ)、ならびにマダガスカル航空(マダガスカル)である。 2014 年 4 月にリストの更新を実施する際に、欧州委員会はリビアにおける進捗に注目したが、リビアは自
主規制を続け EU への飛行を止めていた。しかしながら、12 月に行われたばかりの更新では、リビアのすべて
の航空会社が EU 航空安全リストに加えられ、欧州空域内の飛行を新たに禁止された。EU はアフリキヤ航空、
エア・リビア、リビア航空をはじめとするリビアの全航空会社 7 社を安全ブラックリストに加えた。一方、航
空会社がリストに含まれている国をリストから除外するという決定はなされなかった。 リビアのすべての航空会社の乗り入れ禁止は、リビア民間航空局が同国の航空セクターの安全に関する国際
的義務を果たすことを不可能にしている、現在のリビアの状況を踏まえて決定された。しかし同時に欧州委員
会は、今後現状によって可能になった時点で、速やかにリビアの航空セクターを支援する用意ができていると
も示唆している。また、航空会社がリストに含まれているいくつかの国、とりわけフィリピンやスーダン、モ
ザンビーク、ザンビアの状況にはかなりの進展がみられる。