エッセイ 「くつろぎのひと時 ∼隠れ家にて∼」 安田 吉秀 だいにんぐかふぇ えるみたーじゅ オーナー 私がサラリーマンを退職し 田園地帯が広がる神野町にフ ランス料理店を開業しようと 思い立ったのは 年前のこと、 店名をフランス家庭料理店 ﹃え るみたーじゅ﹄とつけました。 ﹃えるみたーじゅ﹄とはフラ ンス語で〝隠れ家〟という意 味で、都会の喧騒を逃れゆっ たりとした気分で、フランス 料理を気軽においしく安心し て食べていただけたらとの思 いから名付けたものです。折 しも息子がフランスのアヌシ ーで修業を終え帰国したばか りで、﹁では一緒にやろう。﹂ ということで始めたわけです。 ちょっとしたエピソードを 住 所: 加古川市神野町西条1310-1 T E L: 079-438-6123 営業内容: 飲食(欧風家庭料理) 10 よしひで やすだ 思い出しました。息子の修行先のアヌ シーという土地はアヌシー湖を擁した 風光明媚な土地で、リゾート地として 多くの観光客が訪れます。修行中の息 子に会うため妻と一緒にパリからアヌ シーまでTGV︵新幹線︶に乗った時 のこと、何と行きと帰りの料金が違う のです。﹁何故・・?﹂車掌につたな い英語で聞いたのですが、この車掌が フランス語しか話せず困っていると、 前後の乗客が私たちにフランス語でま くしたてるのです。訳もわからず﹁ウィ、 ウィ。﹂と言ってわかったようにその 場は終えましたが、後になってわかっ たのですが、早朝などの乗車率が低い 時間帯は安く、反対に乗車率が高い時 間帯は料金が上がる、なるほどと今思 えば異国での面白い経験をいたしまし た。 また当店には、ワンちゃんと一緒に 食事やお茶のできる部屋を設けていま す。というのは私たちは大の犬好きで、 これまで3匹の犬を飼っていました。 この犬たちは﹁保護犬﹂といい、飼い 主が現れなければ殺処分される犬たち で、1匹でも助けようとの思いがあり ました。人間のエゴで犬の生死を決め るというのは随分と不合理なことでは ないでしょうか? また日本では犬は〝物〟としか扱わ れず、欧米では〝命ある生き物〟とし て大切に扱われており、例えばゲージ に入れずに一緒に乗り物に乗ったり、 レストランに入るのも日常茶飯事とな っています。最近になって日本でも犬 は〝家族〟という考え方が一般的とな りドッグカフェが徐々に普及している ようですが、レストランに一緒に入っ て食事のできるお店はまだまだ少ない ようです。そんな私たちのお店がブロ グに紹介され、おかげ様でワンちゃん と行動を共にするお客さまから重宝し ていただくようになり、遠くは北海道 等各地からご来店いただいています。 先日もブログで知り合ったワンちゃ んを飼っている仲間たちのオフ会が当 店でありましたが、大型観光バスで東 京から一行がお見えになった時はさす がにビックリ、そして現在では全国各 地から〝ワンちゃん好き〟のお客様が 当店でオフ会を開催され、親睦を深め ながら楽しい一時を過ごされています。 現在、息子がシェフとして料理を、 私がワイン等を、妻が喫茶・ホールを 担当し、家族ぐるみで営んでいます。 また地場の野菜やパン・メインディッ シュ等の食材を充分吟味した手作り料 理とオリジナルワイン、それに加えて 何よりも料理を引き立てるほっと一息、 ゆったりとくつろぎのひと時を味わっ ていただくことを心がけています。そ して﹁おいしかった、ありがとう。﹂ そんな声を励みに営業している毎日で す。
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