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高等学校生徒の摂食障害・出現頻度と保健指導

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高等学校生徒の摂食障害一出現頻度と保健指導
北 村 陽 英
(奈良教育大学・学校保健研究室)
EatingDisorderamongHighSChooIStudents
−the Prevalance and SchooIMentalHealth Guidance
Akihide KITAMURA
(NaraUniversityofEducation,Dept.ofSchooIMentalHealth)
要旨:摂食障害生徒(神経性食恩不振症、神経性過食嘔吐症)が近年増加している。2府県の34の
公立高等学校において1991年度に養護教諭により把握された摂食障害生徒は女子39名(女子在校生
の0.18%)、男子5名(0.02%)であり、性比は女:男≒8:1であった。校内において摂食障害
は養護教諭によって最もよく把捉されるが、摂食障害そのもので訴えてきたものよりは他の訴えで
保健室へ来室し、摂食障害であることが養護教諭によって判明される場合が多い。症状は「みんな
から痩せていると言われている」「体重が増えるのが怖いと思っている」「月経が止った事がある」
「食後、嘔吐する」等が多い。学校教育上の支障は、体力的な問題から体育実技授業に支障をきた
す場合が最も多く、次いで出席日数不足が多い。養護教諭には生徒の摂食障害を見極める力が要請
されている。病気の生徒への精神保健指導は、教育の場で個別的に病状を教育的に配慮することで
あると考えられた。
キーワード:摂食障害出現率、高等学校精神保健指導
L はじめに
一般に摂食行動の異常を主症状とする種々の症状を包括して摂食障害と呼ぶ。これに含まれる主
な病態には、神経性食恩不振症、神経性大食症、幼児期の異食症やその他の摂食障害、特定不能な
摂食障害等がある。狭義にはAmericanPsychiatricAssociationの診断基準1)に従って神経性食
恩不振症、神経性大食症、特定不能の摂食障害の3つをまとめて摂食障害と呼ばれることが多い。
この3つの病態の多くが過食と嘔吐を示す。
このような摂食障害の発症時期については、14歳から17歳、すなわち青年期前期から中期の中学・
高校生の時期が最も多いと報告されている5)。この年齢層は第二次性徴が出現して間もない時期に
相当していることから、この病態は性の同一性の発達障害あるいは性の回避に起因するとも考えら
れている。また、青年期はその心身の成熟過程において、自己の変容に大変こだわりを持っ時期で
あり、発達課題をめぐって葛藤に満ちた時期でもある。この変容へのこだわりから、葛藤を解消す
る代償行為として、拒食、やせ、過食、嘔吐等を主症状とする摂食障害が出現するものとも考えら
れる。病院精神科を受診する摂食障害の中学生・高校生は過去30年余りの問に著しく増加してお
北 村 陽 英
り5)、最近の短期大学女子学生の20人に1人は自己誘発性嘔吐を経験しているという7)。
摂食障害が高校生徒に多く見られるため、学校保健の立場から高等学校においては摂食障害生徒
への教育的対応が求められている。ついては、今日の高等学校において摂食障害生徒がどのくらい
存在するか、その精神保健指導がどの程度実施されているか、これらの現状を把握し、その結果よ
り摂食障害生徒へのより有効な学校保健指導の方策を追求することを目的として調査を試みた。
Ⅱ.研究の対象と方法
1)研究対象
調査対象は兵庫県立高等学校11校、大阪府立高等学校23校、の養護教諭34名とその高校在籍生徒
である。この34校は、全日制普通科高校は30校、定時制高校は4校であり、実業高校は含んでいな
い。この34校の1991年度在籍生徒数は、女子21,915名、男子21,870名、合計43,785名であった(表
表1.学年別性別調査対象生徒数
性別 女 男 学年
子
子
計
1 年
2 年
3 年
6,
883
7,
340
7,
629
4 年 (定 時 制 ) 1 63
6,
909
7,
275
7,
572
1 14
13 ,
792
14 ,
6 15
15 ,
20 1
17 7
計
21 ,
915
[
21 即 0
43 ,
785
1参照)。
各校の地域特性は、都市部25校、群部3校、都市部と郡部を含むもの3校であった。
高等学校には、進学校からそうでない学校及び定時制高校等、高校問の違いがあるが、調査対象
校を選ぶにあたってこの違いのどこかに偏らないようにした。実際には、卒業生の進路別にみた調
表2.地域別進路別調査対象校数
都
学
校
数
25
市
都 市 ・郡 部
6
郡
部
3
2 / 3 以上進朝
約半数進学
16
9
2 / 3 以上 就
9
査対象校の数は表2に示すとおりであった。
2)研究方法
現職の高等学校養護教諭に質問紙(1)(2)を送付し、記入の上返送してもらった。
質問紙(1)の主な内容は、①生徒数、②学校の所在地域、③卒業生の進路、④摂食障害生徒の有無
と人数、⑤発見された経緯、⑥学校生活上の支障の内容、⑦治療の有無、⑧発症の時期、⑨その他、
である。
質問紙(2)は摂食障害生徒個々について症状等を聞いたものであり、永田らによる摂食障害症状評
価尺度6)を参考に筆者が作成したものである。その主な内容は、①性別、②年齢、③体重、身長、
④31項目からなる摂食障害の症状の有無、である。
以上の内容の質問紙を大阪府と兵庫県の34の高等学校の養護教諭へ、1991年11月2日から1992年
1月24日にかけて郵便送付し、1992年3月25日までに全てを回収した。尚、個人の秘密遵守のため
に、質問紙(1)(2)の記入にあたっては、生徒名はもちろん学校名、養護教諭名も無記入とした。
高等学校生徒の摂食障害一出現頻度と保健指導
Ⅲ.調査結果と考察
1)摂食障害生徒の出現率
調査対象校34校のうち、該当生徒ありの回答があったのは24校(70.6%)であった。今日の高等
学校の約7割には養護教諭に相談された摂食障害の生徒がいると言える。
養護教諭に把握された摂食障害生徒は44名(女子39名、男子5名)であった。学年別性別症例数
表3.学年別性別摂食障害生徒数と出現率
学 年
性 別
実 数
出現 率 (%)
1 女
年
2 男
l
7
1
】
0.
10
0.
01
年
女
3 男
女
10
3
20
0 .14
0.
04
0.
26
年
4 年 (定 時 制 )
男
女
1
】 0.
01
計
l
男
女 男
2
0
39
5
3.
17
0.
00
0 .18
0.
02
と出現頻度を表3に示した。女子の摂食障害の生徒は全女子生徒の0.18%、男子の摂食障害生徒は
全男子生徒の0.02%であった。女子高校生は学年が上がるに従って摂食障害の出現率が高くなり、
3年生女子のそれは1年生の2倍を越えている。近年の他調査によると、一般に都市部の女子高校
生の500人に1人の割合で摂食障害生徒がいるといわれているが2)、本調査もそれに近い値を示す
結果となった。
定時制女子4年の出現率が非常に高くなっていた。調査対象校のうちの4校の定時制高校につい
表4.定時制高校・学年別性別生徒数・摂食障害数・出現率
学
年
性
別
1 女
年
2 男
女
生
徒
数
55
150
30
摂 食 障害 数
2
0
0
3.
64
0.
00
0.
00
出 現 率 (%)
i 年
[
男
】
3 女
年
i
4 男
年
計
男
女
男
女
13 5
49
10 9
63
1 14
19 7
438
o
1
0
2
0
5
0
0.
00
2.
04
0.
00
3.
17
0.
00
2.
54
0.
00
て摂食障害生徒数を学年別にみると(表4参照)、5名の摂食障害生徒が認められた。定時制高校
の摂食障害生徒数の出現率は全調査対象校のそれの約4倍におよんでいる。中学校時代に摂食障害
を発症した生徒の多くは、中学校生活に支障をきたして全日制高校へ進学できずに定時制高校に入
学しているし、全日制高校で発症した生徒が高校生活に支障をきたして定時制高校へ進路変更して
いることも考えられる。
表5.郡部高等学校・性別生徒数・摂食障害数・出現率
女
男
’郡部の高校生と都市部の高校生を比較してみると、表5に示すように摂食障害は郡部の高等学校
での出現率が全体の出現率の2倍以上におよんだ。かつて摂食障害は、都市型の知的な比較的裕福
な家庭出身の青年に多くみられる病理像と言われていたが4)、本調査結果では郡部と都市部での摂
食障害の出現率に差がないというよりはむしろ逆転して郡部に多くみられる。今日の我が国におい
北 村 陽 英
ては郡部も都市部も生活様式や生活感覚に差がなくなっていると解釈すべきであろう。もっとも摂
食障害の病理を考えるとき、出身家庭の生活感覚や家族関係をみないと確かなことはいえない3)。
本調査での郡部高等学校はいわゆる進学校であり、そこの摂食障害生徒の家庭は多分に知的で裕福
な方である可能性もあるが、本調査では生徒の出身家庭に関する調査は行っていない。また郡部高
校の学校規模(生徒数)は都市部高校のそれの約半分から2/3くらいであるため、郡部の高等学
校の養護教諭にとっては都市部大規模校(生徒数1,000∼2,000人)と比べて一人一人の生徒に目が
届きやすく、従って摂食障害生徒も把握されやすいことも考えておかねばならない。
摂食障害生徒の性比は女子:男子≒8:1であった。圧倒的に女子が男子より多いが、筆者らが
過去に治療した摂食障害青年についての病院精神科統計5)では女子:男子≒13:1であり、この結
果と比較してみると近年は男子例が増加しているといえる。
2)発見の経緯
表6.発見の経緯
発見の経緯について、回答を表6に示した。これらを大まかなカテゴリーにわけると、本人が養
護教諭へ訴え、相談した例(29例、65.9%)が最も多く、次いで健康診断で発見された例(9例、
20.5%)、養護教諭以外の教員が把握した例(9例、20.5%)、保護者からの相談(5例、11.4%)、
友達から本人について相談(4例、9.1%)は比較的多く認められる。校内において摂食障害は教
員の中で養護教諭に最もよく把握される。生徒本人が養護教諭に訴えてきた場合が多いが、摂食障
害そのもので訴えてきたものよりは、他の訴えで保健室へ来室し、摂食障害であることが養護教諭
高等学校生徒の摂食障害一出現頻度と保健指導
によって判明される場合が多い。
養護教諭には生徒が摂食障害か否かを見極める知識が要求されていると考えられる。思いのほか
担任や教科指導教員に発見される例は少なかった。その理由としては、摂食障害の生徒自身が外見
上の異常(例えば極端な痩せ)以外は、どちらかといえば活発で明るく、成績も比較的良いことが
多く、そのうえに拒食にしろ過食・嘔吐などの自己の摂食行動を隠すために、特に過食・嘔吐期に
は学校を欠席することも多く、また体重が正常範囲かそれ以上の場合も多いため、摂食障害は教員
だけでなく養護教諭にとっても目にとまりにくいことが考えられる。それでも摂食障害生徒が直接
相談する人は、担任や教科指導教員ではなく擁護教諭が多いのは、摂食障害の生徒は女子に多く見
られることと、養護教諭もまた女性が殆どということから、女性同士として相談しやすいからとも
思われる。また、たとえ担任や教科指導教員が女性であったとしても、今日の高等学校では生徒に
とってプライベートなことは相談をかけにくい雰囲気があるものと思われる。
3)発症の時期
本調査の摂食障害生徒44名のうち、発症の時期についての回答が得られたのは31名であった。発
症した時期を学年別にまとめると、小学5年1例3.2%、中学2年 3例9.7%、中学3年 4例
12.9%、高校1年 8例25.8%、高校2年 9例29.0%、高校3年 6例19,4%であった。
養護教諭が把握した摂食障害の発症時期は、高校2年、1年あたりが最も多く、この結果は病院
精神科からの報告(216例の発症時期の平均は16.4歳)6)とほぼ一致している。
4)摂食障害の症状
本調査の摂食障害生徒44例のうち、31項目からなる摂食障害に関する質問の回答が得られたのは
37例(女子34例、男子3例)についてであった。養護教諭が摂食障害生徒について見聞きして把握
できた症状、本人の食行動、体形(スタイル)や体重についての本人、家族や友達の意識について、
調査結果を表7に示した。もっと食べるように家族が望んでいる78.4%、みんなから痩せていると
言われている73.0%、体重にとらわれ過ぎている70.3%、体重が増えるのが怖いと思っている67.6
%、月経が止まったことがある67.6%、食べた後、後悔している64.9%、体重が増え過ぎるのでは
ないかと心配している62.2%、食後、嘔吐する62.2%、等が高い頻度で認められる。また、食後に
関する問題で、仕事や学校に差し支えがでているものが過半数の54.5%であった。
摂食障害生徒の多くが自己の体重に非常に強い関心をもっており、その一方で食べ物への執着心
も強く、食行動を自己の意志でコントロールできなくなるのではないかと恐怖心を抱いている。実
際にコントロールできなくなり、約半数(45.9%)が非常に多くの量の食物を無茶食いし、13.5%
はそれが毎日であり、食べ過ぎたと恩って後悔し(64.9%)、62.2%が食後に嘔吐している。24.3%
が体重を減らすために下剤を使用している。
この摂食障害の症状調査から、食欲は普通にありながら自己の意志で食事をとらないで(拒食)、
ひたすら痩せようとし(痩せ希求、肥満恐怖)、食欲を満足させていないために猛烈に食物を意識
するタイプ(Anorexianervosa神経性食恩不振症、PubertAtsmagersucht思春期痩せ症)と、痩
せ希求・肥満恐怖はありながらも自己の意志で拒食しきれないで、食衝動をコントロールできなく
なって過食そして多くが体重を増やさないために嘔吐をし、そんな自己を嫌悪しているタイプ
(Bulimianervosa神経性過食嘔吐症)、の2つのタイプが存在することがうかがわれる。どちらの
タイプにしても、これほど強烈な痩せ希求、肥満恐怖、過食、嘔吐を示す心理状態は、単なるスタ
イルへのこだわりだけでは解釈しきれず、口唇愛期へ強く固着していることを考えておかねばなら
ない。
北 村 陽 英
表7.摂食障害評価尺度への回答
質 問 番 号 1 質 回答実数
問 内 谷
いや な時 、 つ ら い時 、 た くさん 食 べ て しま い ま すか
男
女
計
出現 率 (%)
1
12
13
3 5 .1
2 ま る一 日、 全 く食 事 を取 らな い ことが あ りま す か
3
15
18
4 8 .6
3 食 事 に 関 す る問 題 で 、 仕 事 や 学 校 に差 し支 え が で て い ます か
2
18
20
54 .1
4 毎 日の 生 活 が 、 食 べ 物 の こ と に費 や され て しま って い ます か
l
12
13
3 5 .1
5 食 べ 出 した ら止 め られ ず 、 お な か が い た くな る 程無 茶 食 い す る こ
2
13
15
40 .
5
とが あ り ます か
6 食 べ 物 の こ とで 頑 が い っぱ いで す か
2
14
16
43 .
2
7 生 徒 は 自分 の 食 生 活 を 恥 ず か しい と思 って い ます か
2
9
11
29 .
7
8 食 べ る量 を コ ン トロー ルで きな いので は ない か と心配 して い ます か
2
1.
7
19
5 1.
4
9 無 茶 食 いす るた め に、 はめ を はず して しま い ます か
3
8
11
29 .
7
10 1
23
24
64 .
9
2
27
29
78 .
4
27
27
73 ,
0
食 べ過 ぎた後 、後 悔 して い ます か
1 1 生 徒 が も っ と食 べ るよ う、 家族 が 望 ん で い る と思 い ま す か
12 み ん な か らや せ て い る とい わ れ て いま す か
]3 み ん な が少 しで も多 く生 徒 に食 べ させ よ う と してい ます か
1
18
19
5 1.
4
14 体重 が増 え過 ぎ るの で は な いか と心配 して い ます か
1
22
23
62 .
2
15 下剤 を使 って い ま す か
1
7
8
2 1,
6
16 食 べ た カ ロ リー を使 い は た そ う と一 生 懸 命 に 運 動 を しま す か
12
12
32 ,
4
17 いっ も胃 の 中 を空 っぽ に して お きた い と思 って いま す か
9
12
3 2 .4
15
15
4 0 .5
3
18 食 後 、 嘔吐 した い衝 動 に か られ て い ま す か
19 体 重 が増 え る の が恐 い と患 って い ま す か
1
24
25
6 7 .6
2 0 生徒 は 体重 に と らわ れ す ぎて い る と思 い ます か
2
24
26
70 .
3
2 1 み ん な か ら非 常 に や せ て い る と思 わ れ て い ま す か
1
21
22
59 .
5
2
21
23
62 .
2
17
17
45 .
9
1
20
21
56 .
8
1
8
9
2 4 .3
2 2 食 後 、 嘔吐 しま す か
2 3 普 通 に ご飯 を食 べ た後 で も、太 った気 に な って いま す か
2 4 少 しで も体 重 が増 え る と、 ず っ と増 え 続 け るの で は な い か と心 配
して い ます か
2 5 生 徒 は役 に立 つ人 間 で、 み ん な に必 要 だ と思 わ れ て い る と思 っ て
いますか
この 頃、 異 性 に対 して 関心 が な くな って い ます か
1
4
5
13 .
5
2 7 非 常 に多 くの量 を無 茶 食 い した こ とが あ りま す か
3
14
17
4 5 .9
11
11
2 9 .7
2
2
5 .4
6
8
2 1 .6
5
5
1 3 .5
13
15
4 0 .5
9
9
2 4 .3
23
23
6 7 .6
2 6 2 8 も しそ うな ら (2 7 よ り)、 そ の 時 み じめ な気 持 ち に な って い ま す か
2 9 も し無 茶 食 い を す る な ら、 どれ く らい の 回数 して い ま す か
数回/月
数回/過
2
毎日
3 0 体 重 を減 らす た め に、 下 記 の こ とを しま した か
嘔吐
下剤
2
利尿剤
3 1 生 理 が 止 ま った こと が あ りま す か (女 子 の場 合 )
高等学校生徒の摂食障害一出現頻度と保健指導
5)痩せ・肥満の程度
摂食障害生徒のうち、身長(cm)、体重(kg)の数値が判明している女子31例、男子3例につい
て痩せあるいは肥満の程度をローレル指数(RohrerIndex:体重(kg)÷身長(cm)3×107)をも
表8.摂食障害生徒・身長・体重・ローレル指数
身長(cm) 体重(kg) ロー
平均体重からの増減
3
1
0
41%
2
3
1
7
5
2
0
0
3
仁
0
3
U
4
0
O
0
3
3
2
0
4
3
4
0
94:−30%
5
4
0
8
9
3
0
0
5
107:−20%
3
6
4
4
5
4
1
0
4
2
9
5
4
4
5
0
4
9
0
0
9
4
5
5
4
5
1
5
6
0
4
3
0
6
0
0
5
全国平均134
2
4
9
4
0
5
2
0
5
1
5
5
頁
U
0
5
仁
0
4
161:+20%
U
175:+30%
7 41
2 0
5 0
1
男 子 172.2 56.0 110
全国平均125
168.6 71.0 148
149:+20%
162:+30%
161.0 69.0 165
北 村 陽 英
ちいて調べてみた結果が表8である。全国平均からみて30%以上痩せている例は8例、最も痩せて
いる例は身長157.0cm、体重31.0kgで41%の痩せであった。他方、30%以上の肥満が3例見られ、
最も肥満度の強い例は身長160.0cm、体重110.0kgで204%の肥満であった。34例のうち21例(61.8%)
は全国平均の20%の痩せまたは肥満の範囲内にあり、言い換えれば正常体重の範囲にある。このこ
とから摂食障害の多くが外見観察だけでは判断されにくいものであることがわかる。
6)学校教育上の支障の内容
学校において、摂食障害生徒が教育上の支障をきたすことがあるとしたらどのような場合かを養
表9.学校教育上の支障
支
障
の
内
容
例
数
・体 力 の低 下 等 で体 育 授 業 が受 け られ な い
8
・体 調 気 分 不 良 で授 業 を受 け られ ず、 欠 席 ・早 退 をせ ざ るを 得 な い
3
・体 重 減 少 と ク ラス か らの孤 立 とで、 学 校 を休 みが ち
2
・不 登 校 状 態 、 休 学 中
2
・学 校 生 活 に根 気 が な い、 勉 強 に身 が 入 らず ボ ンヤ リ して い る
2
・進 学 勉 強 で 落 ち込 む
1
・寒 くな る と授 業 を受 け に くい
1
・家 庭 科 の調 理 実 習 の際 、 作 った料 理 を食 べ な い
1
・食 べ 物 が な くな る と落 ち着 かず 、 授 業 中廊 下 を うろつ く
1
・過 労 に陥 っ て も休 養 せ ず 、 自傷 行 為 防 止 の た め同 級 生 が 支 援
1
・昼 食 時 、 弁 当を あ た りに零 す
1
・ク ラ ブ活 動 中 いっ も何 か を食 べ て い る
1
・服 装 等 が 派 手 に な り、 欠 席 も増 えて い る
1
・逸 脱 行 為 (万 引 き等 )
1
護教諭に自由記載で問うたところ、表9に示すような回答を得た。おおまかなカテゴリーに分ける
と、授業を受けることに支障をきたす場合が多く(29.5%)、この中でも体力的な問題から体育授
業に支障をきたす場合が半数を占めている。多くの摂食障害生徒が、しんどいながらも登校して、
冬の寒さで体全体が紫色になっても授業を受け、頑張り屋さんで、大学・短大に合格すると比較的
落ち着き、卒業式のころは少し顔色もよくなりふっくらとしてくる場合が多い。次いで出席H数ひ
いては進級・卒業判定に支障をきたす場合が多く(18.2%)、食べ物に関する支障(6.8%)、逸脱
行為(6.8%)等が認められる。学校での食べ物に関する支障については、例えば、家庭科の調理
実習の際に、作った料理を試食するのが嫌なために家庭科の授業を受けないと言い出す生徒がいた。
この場合、養護教諭がこの生徒の摂食障害に気づき、調理をするのは好きだが試食をするのが嫌さ
に家庭科の授業に出席しにくいと感じていることがわかった。そこで養護教諭と家庭科の教師との
相談の結果、本人は授業中に食べなくても良いという扱いにしたところ、以後の授業に本人は出席
するようになり、家庭科を欠課とならずにすんだ。このように授業に支障をきたす場合、本人の症
状をよく理解しておれば、わざわざ生徒を欠課扱いにすることも避けられる。出席目数に支障をき
たす場合は、教室に入れないのであれば保健室登校として、それを出席扱いにすれば、生徒を少し
でも進級・卒業の方向へもっていける。ただし、摂食障害について、全の教職員の共通理解が必要
である。
高等学校生徒の摂食障害一出現頻度と保健指導
7)医療機関受診状況
養護教諭は摂食障害生徒の医療機関受診状況をよく把握していた。44名の摂食障害生徒のうち医
療機関で治療歴(目下治療中、治療中断を含む)のあるものは32例(72.7%、内中断4例9.1%)、
医療機関での治療歴のないもの7例(15.9%、この内で医療機関ではないカウンセラーによるもの
表10.医療機関受診歴
受 診 状 況・経 過
例 数
思春期精神科、定期的(月1回)
親に勧められて精神科受診
精神科で対症療法(精神不調、脱水状態、下痢、腹痛、便秘、悪心、嘔吐)
精神科受診中(前年に母親元を離れて姉元で生活)
心療内科不定期受診、カウンセリングと服薬
心療内科受診、カウンセリングの実施、現在中断
不登校の兆候、神経内科受診、3回で中断
某施設に入所し治療中
過1回父親と共に精神科へ通院(入院1回、転地1回)
発症後1年程精神科で入院治療、現在通院中
数回思春期内科カウンセリング、入院治療(夏休み中)、治癒
各診療科訪問、思春期内科入院、自己退院、精神科再入院、通院中
内科入院(3カ月)、通院中(2∼3週毎)
入院(2,週間)、現在通院中断
小児科入院、通院中断
内科受診・諸検査・通院治療(点滴等)
肝臓障害、検査、治療
咳が止まらず内科受診、気管支炎の診断
肥満度が急に上昇、内科受診、クッシング病の疑いで入院
内科月1回受診、食事指導、ビタミン剤投与
無月経、産婦人科受診、ホルモン投与
カウンセリング適所
カウンセリング(本人、両菓臥養護教諭)
心理療法の実施、色々聞かれるのを嫌って中断
養護教諭が2回カウンセリング、母親に知れるのを嫌って中断
保健所の精神科受診を母親に勧める
6例、養護教諭によるカウンセリング1例)、不明5例(11.4%)であった。表10に示すように、
9名に医療機関への入院歴が認められ、この疾患の深刻さがうかがわれる。治療歴があるものが多
いが、それと同時に治療を中断した例も多い。個々の例なりに内科、心療内科、精神科、小児科、
婦人科等を受診したりカウンセリングを受けに行っているが、中断例が多いのはこの病態の経過が
長期間に渡ることが多いこと、本人が病気であるとは思っていないこと、などによると思われる。
本調査の対象になった高等学校において摂食障害だった卒業生2名が1992年と1993年に死亡した。
拒食と痩せにともなう衰弱死であったが、入院による栄養補給を拒否した結果であった。摂食障害
の死亡例には自殺死が多いが5)、拒食と著しい痩せのはてには身体衰弱による死亡が稀にみられる。
衰弱死が稀なのは、入院による栄養補給をして体力が回復して死に至らなくて済んでいる例が多い
からである。極度に痩せて衰弱した身体でありながら本人には病気という自覚はなく、保護者も本
北 村 陽 英
人へ栄養摂取のための入院を説得あるいは強制できないとき、衰弱はさらに著しくなりこのような
不幸な死に至る例が出現する。
いずれにせよ学校としては、生徒として摂食障害患者が学校へ来ている限りは、学校生活を送れ
るように保健指導をしなければならないし、かろうじて体力が授業に耐えられる場合は授業が受け
られるように、進級・卒業ができるように教育的配慮による工夫が求められている。
8)養護教諭による摂食障害生徒への保健指導の困難
自由記載で養護教諭に、個々の事例、過去から経験した事例の集積、その他摂食障害生徒につい
て思い感じていることを問うたところ、様々な角度から多くの回答を得た。幾っかの項目にわけて
次に紹介しておきたい。
(彰摂食障害生徒について
i)自分から治そうとする気のある生徒と、その姿勢がなく学校として非常にてこずったり、学校
中を振り回す生徒とがある。ii)普通に食べているのにどんどん痩せていき本人もびっくりしてい
た。学年が変わりクラス替えとなり以前のクラスの生徒が一人しか一緒でなかったので、そのせい
かなと本人は言う。iii)定期健康診断はいっも未受診。高校1年時肥満が目立っようになり、2年
に不登校気味となり、3年に過食・肥満が郎著となってから完全に不登校。肥満のため制服が入ら
ない。母子ともに不登校は学校に申し訳ないので、登校できるようになったらよろしくお願いしま
すと言った感じで学校へ連絡も相談もしてこない。本人は家に閉じこもっており電話口に出ないし、
訪問しても会わない。iv)摂食障害というより色々な異常行動の一つに食べないということもある
例で、入学時から表情が乏しく話もしない。Ⅴ)修学旅行で親しくなった友人の影響で、きれいに
なりたい、細くなりたいという思いがつよくなり、急に痩せた。生徒の間では、細くなることは異
性を引き付ける一つの手段としていることが多いように患われる。Vi)ダイエットがきっかけ。痩
せが目立っようになった。同級生に馴染めず、孤立しており、学校を休みがち。Vii)演劇部上演
に向けてダイェット(1200∼1600カロリー/目)を開始。演劇のことで頑が一杯。入院中も抜け出
して発表を見に来る。直線距離を見ると、歩いたりゆっくり行くということができず、全力疾走し
たくなる。Viii)親の言葉をきっかけに、ダイェットを始め、拒食となった。体操服姿がすごく痩
せて見えた。ix)居間で父親と向き合って座っているとき「お前、足が太いなぁ」といわれたのが
きっかけで、痩せようと決心し、節食を開始した。Ⅹ)祖母が非常に肥満しており本人はそんな体
型になるのに恐怖感を抱いていた。そのころクラブ活動(テニス)で激しい練習が続き、食事がと
れなくなったのを機会に体重を減らそうと思いカロリー計算をしながら食事をするようになった。
Ⅹi)学習熱心で良くできて、頑張り屋・勝ち気な生徒に多い。必ずしも肥満が先行しない。初期は
減食(ダイエット)から始めている。Ⅹii)学習意欲旺盛で、精一杯頑張って成績は上位。自分の
都合の良いように人を振り回そうとする。家庭では母親に、学校では勝手なときだけ保健室を利用
したり、養護教諭に母親代わりを求めようとする。目標を達すると次の目標を目指してまた悩む。
親に要求ばかりしているように見えるが、結局は人からの注目を期待しているように見える。Ⅹiii)
摂食障害になるのは高校1年が多い。成績不振や学校に馴染めない、友人関係などから起こるケー
スが多い。どちらかと言うと、幼い感じの少女っぽい女子がなっているようだ。Ⅹiv)一般生徒に
おいて、ダイェットをしたいと思ったことがあるもの:男子21%、女子72%。ダイェットの方法:
絶食男14%、女7%、間食をしない男32%、女52%、スポーツ男19%、女15%、食事の量・回
数を減らす男19%、女22%、ダイエット食品を利用男4%、女2%、ダイエットに成功したもの
男56%、女60%。ⅩⅤ)予備軍と患われる生徒が1989年頃より急増した。増加状況は男子生徒に激
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高等学校生徒の摂食障害一出現頻度と保健指導
しい。予備軍として指導の必要を感じていた生徒が摂食障害以外の精神保健上の問題で発症する場
合も多い。
②家庭について
i)兄、姉、本人(女)、母の4人家族。父親が別居し、母親が別な男性と付き合うようになった頃、
姉は母親に気持ちを自分に向けて欲しいということで拒食症となり、入院するまでになった。自分
(妹)も姉の症状を見ていたので同じこと(拒食)をしていることに気づいた。父親は東京で現在
は一人子持ちの女性と再婚し家庭はうまくいっているらしい。母親は父と離婚後3人の男性と付き
合い援助してもらっている。母親は働いており家庭には余り帰って釆ないし、東京より単身赴任で
来ている上司(年下)と半同居生活をしている。姉は勤務先で知り合った男性と最近結婚した。こ
んな母に対して本人は反発する一方で心配をかけたくないからといって、本人の状態について母親
に知らせていないし、学校としても連絡をとれない。その分だけ養護教諭に本人は話相手になって
欲しがる。ii)拒食になりやすい家庭があるように思う。表向きは家庭として問題ないように見え
るが、本人から話を聞いて家庭内問題に気づいても学校として踏み込めない部分もあり、家庭・学
校・医療機関の連携が難しい。iii)小学校1年の頃より母子家庭。iv)他校から転入、父不在。母
親とも1年前から会わず、姉のところで生活。Ⅴ)中学3年時母親死亡(胃癌)、その頃からおか
しいと父親談。Vi)痩せ、過食、嘔吐について家庭に連絡されることを強硬に拒む。保護者は病状
を全く知らない。Vii)母親が養護教諭として勤務したことがあり、専門家なのにこのような子に
なって恥ずかしいと訴えている。Viii)養護教諭の過去の経験では、兄弟姉妹のなかで長女(長男)
第一子が殆どであった。ix)家庭では早くから症状がみられ、保護者は気にしているが学校へは隠
すために相談が遅れる。本人も知られたくないと恩っている。Ⅹ)養護教諭と担任が母親と面談し
ようとしたが母親から断って来た。担任に話しても仕方がないと母親は思っている。Ⅹi)父親は女
性軽視、母親はチャキチャキしている場合が多い。
③医療機関について
i)郡部では専門医療機関がなくて紹介するのに困る。ii)医療機関受診を勧めるも当初は拒否。そ
のうち本人が希望して来たので、養護教諭が医療機関を紹介した。iii)身体管理、逸脱行為、aCting
outの防止のため治療者、家族、校内の連携を密接にする。
④校内支援組織について
i)学校内でチームを組んで対処しているが、そのメンバーも一人一人の意見が強く難しい。ii)校
内に教育相談委員会を作り研修会をして対処しているが、委員会メンバーと保護者との話し合いに
おいて教員と気の合わない保護者は保護者同士で努力している。教員同士も生徒を巻き込みながら
自らの評価を作り、生徒を点数化し、点数によって言葉かけと待遇が違い、生徒はとまどい、クー
ルに受け止められない生徒は教員から人間失格の扱いを受けている。iii)1年時出席日数が足りず、
病院から診断書を学校へ出すように指示して進級した。iv)担任が摂食障害についての知識がない
ままに担任のみでかかわったため、連携が遅れ初期対応ができなかった。Ⅴ)耐寒ハイキングに参
加させないよう学校から本人へ説得してほしいと母親から担任へ依頼があり、指導したが本人は強
硬に参加を希望し、断念させるのに困難を感じた。
⑤養護教諭の対応の仕方について
i)最初のかかわり、発見、言葉かけが本人に対してその後の経過に何らかの形で影響を与えてい
ると思う。発見もしやすいようでしにくい。ii)しんどくなると保健室で休養をして何とか学校生
活を送った。iii)予備軍的な生徒が発見されても、現実の執務繁雑な中でなかなか発症予防の対応
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北 村 陽 英
ができない。iv)的確な方法により実態を明らかにして、一次、二次予防にもっと力を注ぐことが
効果的である。その具体策を探り、実践を踏まえて具体化することが大切である。それが今日の学
校精神保健の課題であると最近痛感している。Ⅴ)昼食(弁当)時に行き場がないので保健室で過
ごすことにした。Vi)卒業が近づき相談に来ることが多くなった。Vii)養護教諭の出張が多く、
生徒の病状を把握しきれていない。Viii)日ごろの健康観察でおかしいと判断し保護者に連絡して
わかることが多い。ix)母親との電話連絡で摂食障害であることがわかった。Ⅹ)体重は戻りつつ
あるが、糖尿病の心配や心理テストの必要があるような状態になった。Ⅹi)「生理が止まった」と
生徒から養護教諭に相談され専門医を紹介したところ、在学中に回復したので母親から大変感謝さ
れた。
⑥卒業後の付き合い
i)前任校の1名は10年たった今もかかわっている。ii)在籍中は学校中が振り回された元生徒が、
進学先の大学の大学祭の最中に帰郷し、保健室に顔をみせてくれた。大学では伸び伸び生活してお
り、高等学校とは何だろうと改めて考えさせられた。iii)在学中に成績は下がる一方だったが、な
んとか卒業して4年制大学へ進学した。iv)大学合格が決まると徐々に食事が回復してくる。Ⅴ)
体力がなく欠席が多いため自ら希望して体力作りのため一年休学して3年をやり直して卒業し、大
学へ進学した。
Ⅳ.おわリに
今日の高等学校において少なくともおよそ500人の女子に対して1人の割りで治療の必要な摂食
障害生徒が存在する。養護教諭には生徒の精神保健相談において、生徒の摂食障害を見極める力と
的確な保健指導が要請されている。教員全員が摂食障害についてより深い理解をし、各教科担当教
員の共通理解の上で、生徒の精神保健上の個別的事情を教育的に配慮することが必要な時代になっ
ている。
稿を終えるにあたり、本研究調査にご協力いただいた34名の養護教諭の皆様に深謝の意を表しま
す。尚、本稿の主旨は第39回近畿学校保健学会並びに第34回日本児童青年精神医学会において発表
したことを付記します。
引用文献
1)AmericanPsychiatricAssociation:QuickreferencetothediagnosticcriteriafromDSM−I
II−R.高橋三郎,花田耕一,藤縄昭訳「DSM−III−R・精神障害の分類と診断の手引き」医学
書院;60−61,1988
2)東 淑江,辺見真知子:中・高・大学生における神経性食思不振症状調査.厚生省特定疾患・
中枢性摂食異常調査研究班・昭和56年度研究報告書;30−34.1982.3
3)井上洋一,北村陽英:長年にわたって食品窃盗を繰り返した一男子摂食障害例一食べることへ
の罪悪感について.臨床精神病理,12;275−282,1991
4)石川 清,岩田由子,平野源一:Anorexianervosaの症状と成因について.精神神経学雑誌,
62;1203−1221,1960
5)北村陽英,藤本淳三,井上洋一,豊永公司,窪田直美,館 直彦:痩せを伴うEatingdisorder
の臨床的研究一22年間の216症例について.精神医学,27;107−116,1985
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高等学校生徒の摂食障害一出現頻度と保健指導
6)永田利彦,切池信夫,中西垂柘,松永寿人,川北幸男:新しい摂食障害症状評価尺度Symptom
ratingscaleforeatingdisorders(SRSED)の開発とその適用.精神科診断学,2;247−258,
1991
7)山本イツ子,北村陽英:短期大学生における摂食行動についての調査.学校保健研究(第39回
日本学校保健学会講演集),34,Suppl.;227.1992
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