改正「セクハラ指針」が平成 26 年 7 月 1 日から施行されて

<2014.11 月号> 株式会社フォーラムジャパン
東京都千代田区神田小川町 3-20 第 2 龍名館ビル 6F
改正「セクハラ指針」が平成 26 年 7 月 1 日から施行されて
セクハラについては、平成 19 年 4 月 1 日施行の男女雇用機会均等法において、それまで、女性労働者を対象とする
事業主の雇用管理上の配慮義務が定められていたのが、男女労働者を対象とする事業主の雇用管理上の措置義務が定め
られました(均等法 11 条第 1 項)
そして、このセクハラに関する事業主の雇用管理上の措置義務について定められたのがいわゆる「セクハラ指針」
です。セクハラ指針には、職場におけるセクハラの内容(セクハラの意義、職場の意義、労働者の意義等)および事業
主の雇用管理上の措置の内容が定められています。そのセクハラ指針が改正され、平成 26 年 7 月 1 日から施行されて
います。また、男女雇用機会均等法施行規則も改正され、同日施行されています。今回は、改正された指針のうち特に
ポイントとなる 3 つに加え、改正された施行規則について解説したいと思います。
1.セクハラ指針の主な改正内容(3つのポイント)
(1)同性への性的言動もセクハラに!
職場におけるセクシャルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものであることが明示されています。
セクハラというと、男性上司が女性部下にわいせつな言動を取るイメージですが、同性間でも、相手の意に反するもの
であればセクハラになります。全国の労働局に寄せられる相談において同性間のセクハラ被害を訴えるケースが増えてい
ることが改正の背景にあります。具体例としては、
「女性上司が女性の部下をしつこく食事に誘う」、
「男性間で性的なから
かいやうわさ話をしたりする」といった行為が該当します。
(2)性別の役割分担意識に基づく言動にも注意!
性別の役割分担に基づく言動について以下の 2 つが明示されています。
①
セクシャルハラスメントに関する方針の明確化とその周知・啓発に当たっては、その発生の原因や背景に、性別の
役割分担意識に基づく言動があることも考えられます。そのため、こうした言動をなくしていくことがセクシャル
ハラスメントの防止の効果を高める上で重要であること。
②
セクシャルハラスメントの相談対応に当たっては、その発生のおそれがある場合や該当するかどうか微妙な場合で
も広く相談に応じることとしています。その対象に、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、性別役割
分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシャルハラスメントが生じるおそれがある場合などが含まれるこ
と。
セクハラの原因や背景には、「女は家にいて男を支えるべきもの」とか「女は職場の花であればいい」というように、
性別役割分担意識や差別意識が原因となっていることが多くあります。今回の改正では、こうした性別役割分担意識に
基づく言動をなくしていくことがセクハラ防止のために重要だということを明記し、事業者は、セクハラに該当するか
どうか微妙な場合であっても、広く相談に対応すべきことが定められました。
◇◇性別役割分担意識の言動の具体例(厚生労働省)◇◇
・女性にだけお茶くみを強要する
・「女性は職場の花でよい」
「男のくせに」
「女のくせに」「女には仕事を任せられない」などと言う
・「結婚はまだか」
「子どもはまだか」と尋ねる
・職場の宴会で、上司の近くに座席を指定したり、お酌やカラオケのデュエットを強要したりする
これらの言動は、今までもセクハラになると言われてきましたが、実際には直接的な性的な言動とまではいえないた
め、職場において軽く扱われたり、問題視する女性の方が悪いかのように言われたりすることがありました。しかし、
今後事業主は、こういった性別役割分担に基づくような、セクハラに該当するか微妙な場合でも、広く相談に応じ適切
な対応を行うべきことが明示されたのです。
(3)被害者のメンタルヘルス不調への対応を追加
職場においてセクハラが繰り返されると、就業環境は不快なものになります。被害者がセクハラを受けたことにより
苦痛を受けると、多大なストレスを抱え仕事が手につかなくなったり、メンタル面に不調を来たしたりすることが多い
ものです。そのため、今回の改正では、被害者に対する事後対応の措置の例として、管理監督者または事業場内の産業
保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応が追加されました。
2.間接差別となり得る措置の範囲の見直し(省令の改正)
これまで
総合職の労働者を募集、採用する際に、合理的な理由がないにもかかわらず転勤
要件を設けることは、
「間接差別」として禁止されてきました。
改正後
すべての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更をする際に、合理的な理由がな
いにもかかわらず転勤要件を設けることは、
「間接差別」として禁止されます。
「間接差別」となるおそれがあるものとして禁止される措置の例
・ 労働者の募集にあたって、長期間にわたり、転居を伴う転勤の実態がないにもかかわらず、
全国転勤ができることを要件としている。
・ 部長への昇進に当たり、広域にわたり展開する支店、支社などがないにもかかわらず、
・ 全国転勤ができることを要件としている。
この改正で、大きく何かが変わったわけではありませんが、今までセクハラかどうか微妙な場合、相談できない
ケースがありましたが、指針に明記されたことにより、今後は従業員が声をあげ相談しやすくなりました。一方、
企業においても、予防や事後対策のためにしっかりとした対応が期待されることになります。
セクハラ規定を見直す必要が!
セクハラ指針では、事業主の雇用管理上の措置を具体化するために、就業規則その他の服務規律等を定めた文書に
おいて、事業主の雇用管理上の措置の内容を規定し、労働者に周知・啓発することが求められています。
平成 26 年 7 月 1 日から改正セクハラ指針が施行されたことにより、セクハラ規定を見直す必要があります。
職場におけるセクシャルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものであることが明示されました。規定
に、セクハラの対象を女性に限定していなければ、この部分は、改正に対応する必要はありません。
性別の役割分担に基づく言動と被害者にメンタルヘルス不調への対応については、セクハラ規定にその旨を規定す
るようにしましょう。
パワーハラスメントも増えています(パワハラ予防のために「パワハラ規定」を作りましょう)!
パワハラに関しては、セクハラのように法律上、事業主の講ずべき措置が定められているわけではありません。
しかし、職場でパワハラが生じた場合、パワハラの加害者が刑事責任や民事上の不法行為責任を負うだけではなく、
企業が加害者の雇い主として使用者責任を負い、または被害者の雇い主として民事上の債務不履行(安全配慮義務違
反)責任を負う可能性があります。そこで、企業は、パワハラ規定を設け、パワハラの予防、解決を図ることが考え
られます。
厚生労働省の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議の報告書では、職場のパワハラを予防するために次の
方法が挙げられています。
①トップのメッセージを明確に示す、②就業規則や労使協定、ガイドライン等により予防解決のためにルールを決
める、③実態を把握する、④教育する、⑤周知する